(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-07
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220117BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20220117BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220117BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220117BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220117BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20220117BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
G09F9/00 313
G09F9/30 308Z
H01L27/32
H05B33/02
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2021040656
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2020178924
(32)【優先日】2020-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 恵啓
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-126226(JP,A)
【文献】特開2017-129859(JP,A)
【文献】特開2017-120276(JP,A)
【文献】国際公開第2016/056600(WO,A1)
【文献】特開2020-164803(JP,A)
【文献】特開2020-024364(JP,A)
【文献】特開2014-006505(JP,A)
【文献】国際公開第2019/188779(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/013948(WO,A1)
【文献】特開2009-104062(JP,A)
【文献】特開平9-184915(JP,A)
【文献】特開2011-203641(JP,A)
【文献】特開2013-37222(JP,A)
【文献】特開2016-71348(JP,A)
【文献】特開2017-58519(JP,A)
【文献】特開2017-211434(JP,A)
【文献】国際公開第2019/244499(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0024748(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護フィルムと偏光子とが積層されてな
り、前記偏光子の片面にのみ前記保護フィルムが積層されている偏光板であって、
前記保護フィルムは、下記の手順で算出される突刺し弾性率が300g/mm以上550g/mm以下であり、厚みが25μm以下であり、かつ、温度40℃相対湿度92%RHの透湿度が300g/(m
2・24時間)以下であり、
前記偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂及びホウ素を含有し、ホウ素含有量が3.0質量%以上4.5質量%以下であり、フレキシブル表示装置に用いられる偏光板。
[突刺し弾性率の算出手順]
突刺し弾性率は、保護フィルムを中央部が30mm×30mmの正方形で切り抜かれた糊付き台紙に貼合した測定試料を用い、先端径が1mmφ0.5Rのニードルを0.33cm/秒の速度で、該保護フィルムの面に対し垂直に突刺し、破断が生じたときに測定される、該保護フィルムの突刺し方向の撓みによる変位量をひずみ量S(mm)とし、該保護フィルムに加えられた応力をF(g)としたとき、応力FとひずみSとの間の比例定数(応力F/ひずみS)として、式(1):
突刺し弾性率A(g/mm)=F(g)/S(mm) (1)
により算出される物性値である。
【請求項2】
前記保護フィルムの前記突刺し弾性率は、500g/mm以下である、請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記偏光子は、厚みが12μm以下である、請求項1または2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記保護フィルムは、樹脂フィルムと保護層とを有し、
前記保護層は、有機物層である、請求項1~3のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項5】
前記保護フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂からなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項6】
前記偏光子の前記保護フィルム側とは反対側に配置された位相差体をさらに有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項7】
前記位相差体は、重合性液晶化合物が硬化してなる層を有する、請求項6に記載の偏光板。
【請求項8】
前記偏光板は、厚みが40μm以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の偏光板。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の偏光板を備える、表示装置。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の偏光板を備える、フレキシブル表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル表示装置に用いられる偏光板に関し、さらにはそれを備えるフレキシブル表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力装置として、タッチセンサ機能を設けた表示装置が、スマートフォン等の小型電子機器に使用されている。かかる表示装置は、小型電子機器に用いられることから小型化・薄型化が必要であり、さらに、その表示面を指先やペンを接触することで、データ入力等を行うことから、表示面に対する指先等の接触により劣化しないような特性が必要となる。そのため、表示面の接触による劣化を抑制できる程度の表示装置の耐衝撃性が求められ、これにともなって当該表示装置に適用される部材も耐衝撃性が求められる。さらに、近年、当該表示装置が折り畳み可能なフレキシブル表示装置が注目されてきている。このようなフレキシブル表示装置に適用される部材は、耐衝撃性に加え、折り曲げ可能な程度のフレキシブル性が求められる。特許文献1には、粘着剤層と光学フィルムとを含むフレキシブル表示装置用積層体であって、積層体を折り曲げた場合の凸側の最外面の粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率G’が、他の粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率G’と略同一、又は小さいことを特徴とする積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のとおり、小型電子機器に使用される、タッチセンサ機能を備えた表示装置に適用される部材(偏光板等)には、耐衝撃性に優れていることが求められる。さらに、表示装置のフレキシブル化が求められる場合には、当該表示装置(フレキシブル表示装置)に用いられる偏光板は、薄型で屈曲し易いことに加え、実用的な回数の屈曲により大きく劣化しないことが求められる。つまり、衝撃に強い、さらには、衝撃及び屈曲に強い偏光板が求められているのである。かかる偏光板には、これまで、引張弾性率等の機械強度に優れる保護フィルムを有するものが汎用されてきた。しかしながら、薄型の偏光板(耐屈曲性に優れる偏光板)では特に耐衝撃性の点では満足できるものではなかった。本発明の目的は、薄型に構成しても、耐衝撃性に優れる偏光板、特に、薄型に構成しても、耐衝撃性及び耐屈曲性に優れる偏光板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、驚くべきことに、フレキシブル表示装置に適用する偏光板において、当該偏光板を構成する保護フィルムが、特定の突刺し弾性率及び厚みを有するものであると、特定の偏光子と組み合わせて、優れた耐衝撃性及び対屈曲性を両立できることを見出した。そこで、本発明は、以下の偏光板及びフレキシブル表示装置を提供する。
【0006】
[1] 保護フィルムと偏光子とが積層されてなる偏光板であって、
前記保護フィルムは、突刺し弾性率が200g/mm以上550g/mm以下であり、かつ厚みが25μm以下であり、
前記偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂及びホウ素を含有し、ホウ素含有量が4.5質量%以下であり、フレキシブル表示装置に用いられる偏光板。
【0007】
[2] 前記偏光子は、ホウ素含有量が3.0質量%以上である、[1]に記載の偏光板。
【0008】
[3] 前記偏光子は、厚みが12μm以下である、[1]または[2]に記載の偏光板。
【0009】
[4] 前記保護フィルムは、温度40℃相対湿度92%RHの透湿度が300g/(m2・24時間)以下である[1]~[3]のいずれか1項に記載の偏光板。
【0010】
[5] 前記保護フィルムは、(メタ)アクリル系樹脂からなる、[1]~[4]のいずれか1項に記載の偏光板。
【0011】
[6] 前記偏光子の前記保護フィルム側とは反対側に配置された位相差体をさらに有する、[1]~[5]のいずれか1項に記載の偏光板。
【0012】
[7] 前記位相差体は、重合性液晶化合物が硬化してなる層を有する、[6]に記載の偏光板。
【0013】
[8] 前記偏光板は、厚みが40μm以下である、[1]~[7]のいずれか1項に記載の偏光板。
【0014】
[9] [1]~[8]のいずれか1項に記載の偏光板を備える、表示装置。
【0015】
[10] [1]~[8]のいずれか1項に記載の偏光板を備える、フレキシブル表示装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、薄型に構成しても、耐衝撃性に優れる偏光板、さらには、フレキシブル表示装置に適用できる程度の薄型に構成した場合に、耐衝撃性及び耐屈曲性に優れる偏光板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の偏光板の一形態を模式的に示す概略断面図である。
【
図2】本発明の偏光板の他の一形態を模式的に示す概略断面図である。
【
図3】突刺し弾性率の測定に使用する空隙部を有する糊付き台紙(以下、場合により「糊付き台紙」という)を上面からみた模式図である。
【
図4】(a)は、糊付き台紙に測定フィルムを貼り合わせる際の要部を示す模式斜視図であり、(b)は、糊付き台紙に測定フィルムを貼り合わせた後の上部を模式的に示す図である。
【
図5】糊付き台紙に測定フィルムを貼り合わせた後のサンプル(以下、場合により「測定フィルム付き台紙」という)にニードルを突刺す際の断面を模式的に示す図である。
【
図6】突刺し弾性率測定時の断面を模式的に示す図であり、(a)及び(b)は、ニードルをフィルムに突刺すことにより、フィルムに変形が生じている状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の全ての図面においては、各構成要素を理解し易くするために縮尺を適宜調整して示しており、図面に示される各構成要素の縮尺と実際の構成要素の縮尺とは必ずしも一致しない。
【0019】
<偏光板>
図1は、本発明の偏光板の一形態を模式的に示す概略断面図である。
図1に示す偏光板100は、保護フィルム20と偏光子10とを含む。
図2は、本発明の偏光板の他の一形態を模式的に示す概略断面図である。
図2に示す偏光板200は、保護フィルム20と、偏光子10と、層間貼合層40と、位相差板30とを含む。位相差板30は、偏光子10側から、第1位相差層31と第2位相差層32とをこの順に含む。第1位相差層31と第2位相差層32とは、層間貼合層33により貼合されている構成であってもよい。偏光板100,200は、
図1,
図2に示す各層間を貼合するための不図示の層間貼合層をさらに備えていてもよく、また
図1,
図2に示す各層以外の他の層をさらに備えていてもよい。
【0020】
偏光板100,200は、保護フィルム20の厚みが後述のようであると、耐衝撃性と、フレキシブル性とを高度に両立することができる。この場合の偏光板100,200は、保護フィルム20側を内側にして屈曲すること(以下、「インフォールド」ともいう)ができる。本明細書において、屈曲させることが可能であるとは、屈曲半径3mmでインフォールドで屈曲させても偏光子10にクラックを生じさせることなく偏光板を屈曲させ得ることとする。偏光板100,200の屈曲形態として、屈曲半径は限定されない。また、屈曲には、内面の屈折角が0°より大きく180°未満である屈折の形態、および内面の屈曲半径がゼロに近似、または内面の屈折角が0°である折り畳みの形態が含まれる。保護フィルム20の厚みが後述のようである本発明の偏光板は、屈曲することが可能であり、フレキシブル性に優れることからフレキシブル表示装置に好適である。
【0021】
偏光板100,200は、平面視において、例えば方形形状であってよく、好ましくは長辺と短辺とを有する方形形状であり、より好ましくは長方形である。偏光板100を構成する各層は、角部がR加工されたり、端部が切り欠き加工されたり、穴あき加工されたりしていてもよい。
【0022】
偏光板100,200は、保護フィルムの厚みが特定のものであり、フレキシブル表示装置に好適な耐屈曲性を有するものである。偏光板全体の厚みは、層構成によって好適な範囲は異なるものの、好ましくは40μm以下であり、より好ましくは30μm以下である。偏光板100,200の厚みが40μm以下であることにより、偏光板のさらなる薄型化を実現することができ、またフレキシブル表示装置のさらなる薄型化を実現するとともに、屈曲に強い(耐屈曲性に優れた)フレキシブル表示装置を実現することができる。なお、ここでいう偏光板全体の厚みとは、当該偏光板を構成する偏光子10及び保護フィルム20の厚みの合計と、これら同士を接合する層間貼合層の厚みとの合計である。偏光板100,200の薄型化を実現するための方法として、各層(層間貼合層を含む)の厚みを薄くする方法、合計の層数を少なくする方法、等が挙げられ、具体的には、保護フィルム20の厚みを20μm以下にする、偏光子10の厚みを12μm以下にする、保護フィルム20以外の保護フィルムを備えない構成にする、等の方法が挙げられる。
【0023】
[耐屈曲性]
以下、本発明の偏光板において、耐衝撃性に加え、フレキシブル表示装置に好適な耐屈曲性を高度に両立するものについて詳述する。耐屈曲性に優れたフレキシブル表示装置を実現するためには、当該フレキシブル表示装置に適用される偏光板も耐屈曲性に優れたものでなければならない。
【0024】
偏光板100,200は、温度25℃の環境下において、屈曲半径3mmであるインフォールドで繰返しの屈曲を行ったときに、偏光板100,200内で最初にクラックが生じる屈曲回数は、好ましくは10万回以上であり、より好ましくは20万回以上であり、さらに好ましくは30万回以上である。本発明者らは、偏光板において、インフォールドでの屈曲を繰り返した場合に、内側となる保護フィルムにクラックが発生しやすいとの知見を得た。本発明者らは、保護フィルム20として、実施例に詳述する耐屈曲性試験においてクラックが生じない、またはクラック長が5mm以下である樹脂フィルムを用いることにより、優れた耐屈曲性を有する偏光板を提供できることを確認した。本発明によると、温度25℃の環境下において、屈曲半径3mmであるインフォールドで10万回繰り返しの屈曲を行っても偏光板内でのクラックの発生を抑制することができる偏光板を提供することができる。
【0025】
[耐衝撃性]
偏光板100,200は耐衝撃性に優れたものである。本発明によると、実施例に詳述する、評価用ペンを用いた対衝撃性試験において、偏光子に割れが生じない耐衝撃性に優れた偏光板を提供することができる。
【0026】
[保護フィルム]
保護フィルム20は偏光子10の表面を保護する機能を有する。偏光板100,200は、フレキシブル表示装置において、表示素子の視認側に配置して用いることができる。
偏光板100,200において、保護フィルム20は偏光子10より視認側となるように配置して用いることができる。
【0027】
保護フィルム20は、突刺し弾性率が、200g/mm以上550g/mm以下である。保護フィルム20の突刺し弾性率は、好ましくは230g/mm以上であり、より好ましくは250g/mm以上であり、特に好ましくは300g/mm以上であり、また好ましくは530g/mm以下であり、より好ましくは500g/mm以下であり、さらに好ましくは450g/mm以下であり、特に好ましくは、400g/mm以下である。保護フィルム20として、上述のような突刺し弾性率を有する保護フィルムを用いることにより、厚さが20μm以下の保護フィルムを用いた場合であっても、耐衝撃性及び耐屈曲性に優れた偏光板を提供することができる。
【0028】
ここで、実施例にも記載するが、保護フィルムの突刺し弾性率を測定する手段を、図面を参照しながら説明する。本明細書において、突刺し弾性率は、保護フィルムを中央部が30mm×30mmの正方形で切り抜かれた糊付き台紙に貼合した測定試料を用い、先端径が1mmφ0.5Rのニードルを0.33cm/秒の速度で、該保護フィルムの面に対し垂直に突刺し、破断が生じたときに測定される、該保護フィルムの突刺し方向の撓みによる変位量をひずみ量S(mm)とし、該保護フィルムに加えられた応力をF(g)としたとき、応力FとひずみSの間の比例定数(応力F/ひずみS)として、式(1):
突刺し弾性率A(g/mm)=F(g)/S(mm) (1)
により算出される物性値である。突刺し弾性率の測定は、ロードセルを備えた圧縮試験機を用いて行うことができ、圧縮試験機の例としては、カトーテック株式会社製の突刺し試験機「NDG5」、ハンディー圧縮試験機「KES-G5」、株式会社島津製作所の小型卓上試験機「EZTest」等が挙げられる。この様な圧縮試験機を用いて求められる応力―ひずみ曲線から、破断が生じた際にフィルムに加えられた応力とそれまでにフィルムに生じたひずみ量を測定することができる。なお、突刺し冶具を押圧時にフィルムに生じる破断には、冶具先端によりフィルムに貫通穴が生じる場合も含まれる。突刺し弾性率の測定は、具体的には、実施例に記載の通り、中央部が30mm×30mmの正方形で切り抜かれた空隙部を有する糊付き台紙にフィルムを貼合した測定試料を用いて、空隙部にあるフィルムの略中央に先端径が1mmφ0.5Rのニードルを0.33cm/秒の速度で、該フィルムの面に対し略垂直に突刺し、破断が生じたときに測定される、該フィルムの突刺し方向の撓みによる変位量をひずみ量S(mm)と該フィルムに加えられた応力F(g)から、上記の式(1)により算出される。
【0029】
図面を用いて、カトーテック株式会社製の突刺し試験機「NDG5」を用いた場合の突刺し弾性率の測定手段に関して、要部を説明する。
【0030】
図3は、保護フィルムの突刺し弾性率を求めるための空隙部を有する糊付き台紙(糊付き台紙7)を上部からみた模式図である。糊付き台紙7は、中央部に、測定に供する保護フィルム(以下、「測定フィルム12」ともいう)を貼り合わせる部分となる、30mm×30mmの正方形に刳り貫かれた部分(空隙部6)を有する。
【0031】
図4は、糊付き台紙7に測定フィルム12を貼り合わせる際の要部を示す模式図であり、(a)は、糊付き台紙7に測定フィルム12を貼り合わせる際の斜視図であり、(b)は、糊付き台紙7に測定フィルム12を貼り合わせた後の測定フィルム付き台紙1を上部(
図4(a)の方向A)からみた模式図である。点線は空隙部6の外周8を示す。空隙部6の略中央部に位置する、ニードルNを突刺す位置Mは、空隙部6の外周8の斜め方向に対向する点(R及びR’)を結んだ2つの直線の交点である。
図5は、測定フィルム付き台紙1において、I-I’に沿った断面図(ニードルNを突刺す前)を模式的に示す。
【0032】
ニードルNを測定フィルム12の略中央M(例えば、
図4(b)の空隙部の外周8の頂点のうち、R及びR’を結ぶ対角線2つの交点)に突刺す。かかる突刺しにおいて、ニードルNに印加した応力F(g)をフィルムの突刺し方向の撓みによるひずみ量S(mm)の相関を求め、フィルムの破断が生じた際の応力F(g)及びひずみ量S(mm)から、上記式(1)に応じて突刺し弾性率を求める。突刺し弾性率を求める際には、フィルムに変形が生じた状態で破断が生じる場合(
図6(a)の状態で破断が生じる場合)、フィルムにさらに変形が生じた状態で破断が生じる場合(
図6(b)の状態で破断が生じる場合)があるが、本発明における突刺し弾性率は、前記突刺し試験機における印加応力と、ひずみ量Sとから求めることとし、ひずみ量Sは、
図6(a)の状態で破断が生じる場合のSであってもよいし、
図6(b)の状態で破断が生じる場合のSであってもよい。なお、フィルムに破断が生じることによって、印加応力が上昇傾向から低下傾向に代わるため、この変更点で破断が生じたと理解することができる。
【0033】
糊付き台紙7において、測定フィルムを固定するための糊は、突刺し弾性率測定の途中で、測定フィルム付き台紙から部分的にでも、測定フィルムが剥がれないようにできるものであれば、特に限定されない。突刺し弾性率測定に用いる糊付き台紙7の糊を見出すための、適当な予備実験を行ってもよい。
【0034】
保護フィルム20は、厚みが、25μm以下であり、好ましくは20μm以下である。この保護フィルム20の厚みが25μm以下であって、突刺し弾性率が上記の範囲であると、驚くべきことに、得られる偏光板の耐衝撃性が優れたものとなる。さらに、その厚みが20μm以下であれば、耐衝撃性に加え、フレキシブル性が良好の偏光板を得ることができる。保護フィルム20の厚みの下限は、例えば8μm以上であり、好ましくは10μm以上であり、特に、好ましくは、15μm以上である。保護フィルム20の厚みが25μm以下であることにより、薄型の偏光板100,200を容易に構成することができる。
【0035】
保護フィルム20は、上記のとおり、厚みが薄いながら、温度40℃相対湿度92%RHの透湿度が、好ましくは300g/(m2・24時間)以下であり、より好ましくは250g/(m2・24時間)以下である。保護フィルム20の透湿度が上述の範囲であることにより、湿熱環境下でも偏光子10と保護フィルム20の間での端部位置のズレが生じにくくなり、耐湿熱性に優れた偏光板を提供することができる。
【0036】
保護フィルム20としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性、延伸性等に優れる樹脂フィルムを用いることもできる。樹脂フィルムは熱可塑性樹脂フィルムであってもよい。このような樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;シクロ系及びノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂ともいう);(メタ)アクリル系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリビニルアルコール系樹脂、並びにこれらの混合物を挙げることができる。かかる材質の保護フィルム20は市場から容易に入手でき、このような市販品の中から厚みが20μm以下のものを選択し、上記した方法によって、突刺し弾性率を求めることによって、本発明に適用する保護フィルム20を選択する。なお、保護フィルム20の市販品において、厚みの具体的な値は、厚み精度±10%程度、好ましくは±5%程度を許容する値である。
【0037】
保護フィルム20としては、厚みが薄いながら、透湿度について上述の範囲のものを得やすい観点から、(メタ)アクリル系樹脂からなる保護フィルムが好適に用いられる。(メタ)アクリル系樹脂からなる保護フィルムは厚みが薄いながら、適度な突刺し弾性率のものが得られることからも、特に好ましい。かかる効果は、(メタ)アクリル系樹脂からなる保護フィルムにおいては、厚みが15~25μmの場合に顕著である。
【0038】
保護フィルム20は、有機物層または無機物層である保護層を有するものであることができる。有機物層は、保護層形成用組成物、例えば(メタ)アクリル系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ポリイミド系樹脂組成物等を用いて形成することができる。保護層形成用組成物は、活性エネルギー線硬化型であってもよいし、熱硬化型であってもよい。無機物層は、例えばシリコン酸化物等から形成することができる。保護層が有機物層である場合、保護層はハードコート層と呼ばれるものであってもよい。透湿度が高い保護フィルムに保護層を設けることにより、当該保護フィルムの透湿度を低下させることもできる。
このようにして、保護層を設けた保護フィルムは、厚みが薄いながら、透湿度について上述の好ましい範囲のものを得やすいという効果がある。
【0039】
保護フィルム20が有機物層の保護層を有するものである場合、例えば活性エネルギー線硬化型の保護層形成用組成物を基材フィルム上に塗布し、活性エネルギーを照射して硬化させることにより保護層を作製することができる。基材フィルムは保護フィルム20の構成要素として残してもよいし、剥離して除去されるものであってもよい。基材フィルムとしては、上述した樹脂フィルムを用いることができる。保護層形成用組成物を塗布する方法としては、例えばスピンコート法等が挙げられる。保護フィルム20が無機物層の保護層を有するものである場合、例えばスパッタリング法、蒸着法等によって保護層を形成することができる。
【0040】
[偏光子]
偏光子10は、自然光等の非偏光な光線から直線偏光を選択的に透過させる機能を有する。本発明の偏光板100,又は偏光板200に含まれる偏光子10は、ポリビニルアルコール系樹脂及びホウ素を含有する。偏光子10は、二色性色素を吸着させた延伸フィルムであることが好ましい。二色性色素が、延伸により異方性が生じた高分子鎖(ポリビニルアルコール系樹脂鎖)に分散していると、ある方向からは着色して見え、それと垂直な方向からはほとんど無色に見えることがある。二色性色素としては、ヨウ素が好適に用いられる。また、二色性色素を吸着させた延伸フィルムとして、単体の樹脂フィルムに二色性色素を吸着・延伸して得られる偏光子のほか、例えば、特開2012-73563号公報に記載されているような、エステル系熱可塑性樹脂基材のような基材フィルム(熱可塑性樹脂フィルム)上に、ポリビニルアルコール系樹脂層を設け、この樹脂層を基材ごとに延伸してから、二色性色素を吸着・配向するようにして、偏光子を製造することもできる。このような方法により得られる偏光子を以下、「延伸層」ということもある。なお、この延伸層を製造するための一般的な方法については後述する。
【0041】
偏光子10が延伸層である場合に、上記に示すように適当な基材フィルム(熱可塑性樹脂フィルム)を用いて製造されることから、延伸層である偏光子を基材フィルム(熱可塑性樹脂フィルム)で支持した構成となる。偏光板100,200は、偏光子10を支持する基材フィルムが偏光子10の保護フィルム20とされているような構成であってもよい。
【0042】
偏光子10は、収縮力が好ましくは2.4N/2mm以下であり、より好ましくは2.1N/2mm以下である。偏光子10の収縮力が上述の数値範囲であると、衝撃を受けても偏光子10に割れが生じにくく、耐衝撃性に優れた偏光板を提供することができる。また、湿熱環境における偏光子10の収縮を抑制することができる。偏光子10の収縮力は、通常、1.0N/2mm以上である。偏光子10の収縮力の測定は後述の実施例に記載の方法による。偏光子10の収縮力は、偏光子10がポリビニルアルコール系樹脂フィルム(層)を用いて製造される延伸フィルム又は延伸層である場合には、後述のホウ素の含有量によって調整できる。また、用いる二色性色素の種類やその量によっても制御できる。偏光子10が液晶層である場合、液晶層を構成する重合性液晶化合物の架橋度によって制御できる。これらの中でも、偏光子10は、収縮力を制御し易い点から見ても、ポリビニルアルコール系樹脂を含むものが好ましい。
【0043】
以下、ポリビニルアルコール系樹脂を含む偏光子10を「ポリビニルアルコール系樹脂含有偏光子」ともいう。ホウ素の含有率(以下、「ホウ素含有率」という)が4.5質量%以下であるポリビニルアルコール系樹脂含有偏光子が好ましく、4.3質量%以下であるとさらに好ましい。ホウ素含有率が上述の数値範囲であることにより、衝撃を受けても偏光子10に割れが生じにくく、耐衝撃性に優れた偏光板を提供することができる。また、湿熱環境における偏光子10の収縮を抑制することができる。偏光子10のホウ素含有率は、例えば2.5質量%以上とすることができ、3.0質量%以上であることが好ましい。このポリビニルアルコール系樹脂を含む偏光子10のホウ素含有率は、偏光子の全質量に対する、含有するホウ素の質量の比であり、その測定手段は後述する。
【0044】
(二色性色素を吸着させた延伸フィルムまたは延伸層である偏光子)
ここで、ポリビニルアルコール系樹脂含有偏光子の製造方法について簡単に説明する。
二色性色素を吸着させた延伸フィルムである偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをヨウ素等の二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、およびホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。かかるポリビニルアルコール系樹脂フィルム(一軸延伸前)は、市場から容易に入手できるし、後述のように、ポリ酢酸ビニル系樹脂を公知の手段により製造し、ケン化して、ポリビニルアルコール系樹脂を製造し、当該ポリビニルアルコール系樹脂をフィルム化してもよい。また、ポリ酢酸ビニル系樹脂の段階でフィルム化し、当該フィルムに含まれるポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化してもよい。
【0045】
ポリビニルアルコール系樹脂含有偏光子のホウ素含有率は、上記した製造方法により、当該ポリビニルアルコール系樹脂含有偏光子を製造する場合、特に、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程の条件を調節することで制御できる。例えば、当該ホウ酸水溶液におけるホウ酸の濃度・使用量を変えたり、ホウ酸水溶液の温度を変えたりすることで、ポリビニルアルコール系樹脂含有偏光子のホウ素含有率を制御することができる。適当な予備実験を行って、ポリビニルアルコール系樹脂含有偏光子が、所望のホウ素含有率となる条件を導き出すこともできる。
【0046】
偏光子の厚みは、通常30μm以下であり、好ましくは18μm以下、より好ましくは12μm以下である。偏光子の厚みを薄くすることは、偏光板100,200の薄膜化に有利である。偏光子の厚みは、通常1μm以上であり、例えば5μm以上であってよい。
かかる好ましい偏光子の厚みは、偏光子が二色性色素を吸着させた延伸フィルムである場合は、延伸フィルムとする前の原料フィルム(延伸前)の厚みと、延伸倍率とから制御できる。後述のように、偏光子が二色性色素を吸着させた延伸層である場合は、基材上に形成する塗工膜の厚みと、延伸倍率とから制御できる。
【0047】
偏光子の厚みは例えば、後述の実施例に示すように、接触式膜厚計で測定することができる。
【0048】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することによって得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体が用いられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば不飽和カルボン酸系化合物、オレフィン系化合物、ビニルエーテル系化合物、不飽和スルホン系化合物、アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド系化合物等が挙げられる。
【0049】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85モル%以上100モル%以下程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等も使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1000以上10000以下であり、好ましくは1500以上5000以下である。
【0050】
二色性色素を吸着させた延伸層であるポリビニルアルコール系樹脂含有偏光子は、通常、上記ポリビニルアルコール系樹脂を含む塗布液を基材フィルム上に塗布して積層フィルムとする工程、得られた積層フィルムを一軸延伸する工程、一軸延伸された積層フィルムのポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色することにより、樹脂層に二色性色素を吸着させて偏光子とする工程、二色性色素が吸着された樹脂層をホウ酸水溶液で処理する工程、およびホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。偏光子を形成するために用いる基材フィルムは、偏光子上の保護フィルムとして用いてもよい。必要に応じて、基材フィルムを偏光子から剥離除去してもよい。基材フィルムの材料および厚みは、後述する保護フィルム20の材料および厚みと同様であってよい。また、このような二色性色素を吸着させた延伸層であるポリビニルアルコール系樹脂含有偏光子の製造においても、後述するホウ酸水溶液で処理する工程におけるホウ酸の使用量を制御することで、偏光子10のホウ素含有率を所望の範囲にすることができる。
【0051】
二色性色素としては、ヨウ素や有機染料が使用可能であるが、本発明の偏光子に用いる二色性色素としては、ヨウ素が特に好ましい。
【0052】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する染色浴に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム又は、基材フィルム及びポリビニルアルコール系樹脂フィルムを含む積層フィルムを浸漬して、ポリビニルアルコール系樹脂をヨウ素で染色する。この染色浴におけるヨウ素の含有量は、水100質量部あたり0.003~1質量部程度であることができる。ヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり0.15~20質量部程度であることができる。また染色浴の温度は、10~45℃程度であることができる。
【0053】
二色性色素、特にヨウ素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルム又は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム及び基材フィルムを含む積層フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程では、通常、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液(架橋浴)に浸漬する。ホウ酸水溶液に含まれるホウ酸源としては、ホウ酸、ホウ砂のようなホウ素化合物を用いる。また、ホウ素化合物とともに、グリオキザール、グルタルアルデヒド等の架橋剤を用いてもよい。ホウ酸水溶液の溶媒としては、水が使用できるが、水と相溶性のある有機溶媒をさらに含んでもよい。偏光子のホウ素含有率を調整するためには、ホウ酸水溶液におけるホウ酸の濃度を、3~8質量%とし、架橋浴への浸漬時間を適宜調整することが好ましく、ホウ酸の濃度を4~7質量%とし、架橋浴への浸漬時間を適宜調整することがより好ましい。
【0054】
ホウ酸水溶液はヨウ化物をさらに含むことができる。ヨウ化物の添加により、得られる偏光子の面内における偏光性能をより均一化させることができる。ヨウ化物の具体例は上記と同様である。ホウ酸水溶液におけるヨウ化物の濃度は、好ましくは0.1~20質量部である。
【0055】
ホウ酸水溶液による架橋処理は、通常40~80℃、好ましくは50~70℃の温度で行われる。温度が低すぎると、架橋反応の進行が不十分になりやすく、一方で温度が高すぎると、架橋処理浴中でフィルムの切断が起きやすくなって、加工安定性が著しく低下しやすい。また、架橋処理の時間は、通常10~600秒、好ましくは60~420秒、より好ましくは90~300秒である。かかる架橋処理の条件は後述のとおり、所望のホウ素含有率によって調節する。
【0056】
偏光子10中のホウ素含有率が前記の範囲であることは、偏光板100,200の耐衝撃性が優れたものになることに加え、偏光板100,200の耐クラック性向上の点で有利であり、さらには偏光子の光学特性の点でも有利となり得る。偏光子中のホウ素は、ホウ酸(H3BO3)として遊離の状態で存在するか、又はホウ酸がポリビニルアルコール系樹脂のユニットと架橋構造を形成した状態で存在すると考えられるが、本発明でいうホウ素含有率は、このように化合物の状態で存在するものを含めてホウ素原子(B)自体の量である。
【0057】
偏光子中のホウ素含有率は、例えば、当該偏光子を純水に溶解させた後、マンニトールを添加し、得られた溶液に対して、水酸化ナトリウム水溶液による滴定を行うことによってホウ素量を定量し、当該偏光子の質量に対するホウ素量の質量百分率として算出できる。また、高周波誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光分析法により、偏光子中のホウ素量を定量し、偏光子の質量に対するホウ素の質量百分率としても算出できる。
【0058】
フレキシブル表示装置が有機EL(有機エレクトロルミネクス)表示装置である場合、本発明の偏光板は、さらに位相差板を組みわせて、有機EL表示装置の反射防止板である円偏光板として使用することもできる。以下、この位相差板について説明する。
【0059】
[位相差板]
偏光板200は、偏光子10と位相差板30とを備えることにより円偏光板としての機能を有することができる。以下、偏光子10と位相差板30とを備える構成を円偏光板ともいう。
【0060】
位相差板30は、第1位相差層31と第2位相差層32とを含む。第1位相差層31及び第2位相差層32は、層間貼合層33により貼合されていることが好ましい。第1位相差層31及び第2位相差層32は、その表面を保護するオーバーコート層、及び第1位相差層31及び第2位相差層32を支持する基材フィルム等を有していてもよい。第1位相差層31及び第2位相差層32としては、例えばλ/4の位相差を与える位相差層(λ/4層)、λ/2の位相差を与える位相差層(λ/2層)及びポジティブC層等が挙げられる。位相差板30は、好ましくはλ/4層を含み、さらに好ましくはλ/4層とλ/2層またはポジティブC層の少なくともいずれかとを含む。
【0061】
位相差板30は、偏光子10側から順に第1位相差層31及び第2位相差層32が積層される。位相差板がλ/2層を含む場合、第1位相差層31がλ/2層であり、第2位相差層32がλ/4層である。位相差板30がポジティブC層を含む場合、第1位相差層31がポジティブC層であり、かつ第2位相差層32がλ/4層であるか、又は第1位相差層31がλ/4層であり、かつ第2位相差層32がポジティブC層である。位相差板30の厚みは、例えば0.1μm以上50μm以下であり、好ましくは0.5μm以上30μm以下であり、より好ましくは1μm以上10μm以下である。
【0062】
第1位相差層31及び第2位相差層32は、上述した保護フィルムの樹脂フィルムの材料として例示した樹脂フィルムから形成してもよいし、重合性液晶化合物が硬化してなる層から形成してもよい。第1位相差層31及び第2位相差層32は、重合性液晶化合物が硬化してなる層に加えて配向膜及び基材フィルムを含んでいてもよい。
【0063】
第1位相差層31及び第2位相差層32を、重合性液晶化合物を硬化してなる層から形成する場合、重合性液晶化合物を含む組成物を、基材フィルムに塗布し硬化させることにより形成することができる。基材フィルムと塗布層との間に配向膜を形成してもよい。基材フィルムの材料及び厚みは、上記樹脂フィルムの材料及び厚みと同じであってよい。第1位相差層31及び第2位相差層32は、重合性液晶化合物を硬化してなる層から形成する場合、配向膜及び基材フィルムを有する形態で積層体に組み込まれてもよい。
【0064】
偏光子10の吸収軸と位相差板30の遅相軸とが所定の角度となるように、偏光子10と位相差板30とが配置された偏光板は、反射防止機能を有する、すなわち円偏光板として機能し得る。位相差板30がλ/4層を含む場合、偏光子10の吸収軸とλ/4層の遅相軸とのなす角度は、45°±10°であることができる。第1位相差層31及び第2位相差層32は正波長分散性を有していてもよく、逆波長分散性を有していてもよい。λ/4層は、好ましくは逆波長分散性を有する。偏光子10と、位相差板30とは層間貼合層40により貼合されていてよい。
【0065】
[層間貼合層]
偏光板100,200において、二つの層を貼合するために、その層間に層間貼合層を用いることができる。
図2において、偏光子10と位相差板30とを貼合するために層間貼合層40が用いられている。また、位相差板30において、第1位相差層31と第2位相差層32とを貼合するために、層間貼合層33が用いられている。層間貼合層は、接着剤層又は粘着剤層とすることができる。層間貼合層40は好ましくは粘着剤層であり、層間貼合層33は好ましくは接着剤層である。
【0066】
層間貼合層の厚みは特に限定されないが、層間貼合層として粘着剤層を使用する場合、1μm以上であることが好ましく、5μm以上であってもよく、通常50μm以下であり、25μm以下であってもよい。層間貼合層として接着剤層を使用する場合、層間貼合層の厚みは、0.1μm以上であることが好ましく、0.5μm以上であってもよく、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であってもよい。
【0067】
本明細書において「粘着剤」とは、硬化反応後の状態が液状であり、常温で短時間、僅かな圧力を加えるだけで接着できるもの、例えば感圧式接着剤とも呼ばれるものである。
一方、本明細書において「接着剤」とは、粘着剤(感圧式接着剤)以外の接着剤をいい、硬化反応後の状態が固体状であり、硬化後の弾性率の範囲が100MPa以上のものをいう。層間貼合層に用いられる粘着剤層は、1層であってもよく、または2層以上からなるものであってもよいが、好ましくは1層である。
【0068】
粘着剤層は、(メタ)アクリル系、ゴム系、ウレタン系、エステル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系のような樹脂を主成分とする粘着剤組成物で構成することができる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂をベースポリマーとする粘着剤組成物が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型、熱硬化型であってもよい。
【0069】
粘着剤組成物に用いられる(メタ)アクリル系樹脂(ベースポリマー)としては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルのような(メタ)アクリル酸エステルの1種または2種以上をモノマーとする重合体または共重合体が好適に用いられる。ベースポリマーには、極性モノマーを共重合させることが好ましい。極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートのような、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等を有するモノマーを挙げることができる。
【0070】
粘着剤組成物は、上記ベースポリマーのみを含むものであってもよいが、通常は架橋剤をさらに含有する。架橋剤としては、2価以上の金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成するもの;ポリアミン化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するもの;ポリエポキシ化合物やポリオールであって、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するもの;ポリイソシアネート化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するものが例示される。中でも、ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0071】
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物とは、紫外線や電子線のような活性エネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有しており、活性エネルギー線照射前においても粘着性を有してフィルム等の被着体に密着させることができ、活性エネルギー線の照射によって硬化して密着力の調整ができる性質を有する粘着剤組成物である。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線硬化型であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、ベースポリマー、架橋剤に加えて、活性エネルギー線重合性化合物をさらに含有する。さらに必要に応じて、光重合開始剤や光増感剤等を含有させることもある。
【0072】
粘着剤組成物は、光散乱性を付与するための微粒子、ビーズ(樹脂ビーズ、ガラスビーズ等)、ガラス繊維、ベースポリマー以外の樹脂、粘着性付与剤、充填剤(金属粉やその他の無機粉末等)、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、着色剤、消泡剤、腐食防止剤、光重合開始剤等の添加剤を含むことができる。
【0073】
粘着剤層は、上記粘着剤組成物の有機溶剤希釈液を基材上に塗布し、乾燥させることにより形成することができる。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物を用いた場合は、形成された粘着剤層に、活性エネルギー線を照射することにより所望の硬化度を有する硬化物とすることができる。
【0074】
接着剤としては、例えば水系接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤等のうち1種または2種以上を組み合わせて形成することができる。水系接着剤としては、例えばポリビニルアルコール系樹脂水溶液、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤等を挙げることができる。活性エネルギー線硬化型接着剤は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することによって硬化する接着剤であり、例えば重合性化合物および光重合性開始剤を含む接着剤、光反応性樹脂を含む接着剤、バインダー樹脂および光反応性架橋剤を含む接着剤等を挙げることができる。上記重合性化合物としては、光硬化性エポキシ系モノマー、光硬化性アクリル系モノマー、光硬化性ウレタン系モノマー等の光重合性モノマー、およびこれらモノマーに由来するオリゴマー等を挙げることができる。上記光重合開始剤としては、紫外線等の活性エネルギー線を照射して中性ラジカル、アニオンラジカル、カチオンラジカルといった活性種を発生する物質を含む化合物を挙げることができる。
【0075】
[偏光板の製造方法]
偏光板100,200は、偏光子と保護フィルムとを適当な接着剤から形成される層間貼合層を介して層同士を貼合する工程を含む方法によって製造することができる。層間貼合層を介して層同士を貼合する場合には、密着力を調整する目的で貼合面の一方または両方に対して、コロナ処理等の表面活性化処理を施すことが好ましい。コロナ処理の条件は適宜設定することができ、貼合面の一方の面と他の面とで条件が異なっていてもよい。なお、層間貼合層を用いることなく、保護フィルムに例えば、コロナ処理のような処理を行ってから、コロナ処理済保護フィルムと偏光子とを貼合することもできる。このように、偏光子と保護フィルムとの貼合は、保護フィルムの種類に応じて、適宜、最適のものを選択できる。
【0076】
[表示装置]
本発明に係る偏光板は表示装置に用いることができ、フレキシブル表示装置にも用いることができる。表示装置は、表示素子と、表示素子の視認側に積層された偏光板とを備える構成とすることができる。表示装置は特に限定されず、例えば有機EL表示装置、無機EL表示装置、液晶表示装置、電界発光表示装置等の画像表示装置が挙げられる。表示装置はタッチパネル機能を有していてもよい。偏光板は、屈曲または折り曲げ等が可能な可撓性を有するフレキシブル表示装置に好適である。表示装置において、偏光板は、表示素子の視認側に、保護フィルム20が偏光子10よりも視認側に位置するように配置される。
【0077】
本発明に係る表示装置は、スマートフォン、タブレット等のモバイル機器、テレビ、デジタルフォトフレーム、電子看板、測定器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器等として用いることができるが、特に、今後も一層の小型化が求められるモバイル機器に搭載される表示装置として、特に好適である。
【実施例】
【0078】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0079】
[厚みの測定]
偏光子の厚みは、接触式膜厚計〔株式会社ニコン製の商品名“DIGIMICRO(登録商標) MH-15M”〕で測定した。
【0080】
[偏光子]
(偏光子aの作製)
厚み20μm、重合度2400、ケン化度99%以上のポリビニルアルコールフィルムを、熱ロール上で延伸倍率4.1倍に一軸延伸し、緊張状態を保ったまま、水100質量部あたりヨウ素0.05質量部及びヨウ化カリウム5質量部を含有する染色浴に28℃で60秒間浸漬した。
【0081】
次いで、水100質量部あたりホウ酸5.5質量部及びヨウ化カリウム15質量部を含有するホウ酸水溶液1に、64℃で110秒間浸漬した。次いで、水100質量部あたりホウ酸3.9質量部およびヨウ化カリウム15質量部を含有するホウ酸水溶液2に、67℃で30秒間浸漬した。その後、10℃の純水を用いて水洗し、乾燥して、偏光子aを得た。得られた偏光子aの厚みは8μmであり、収縮力は1.8N/2mm、ホウ素含有率は3.6質量%であった。
【0082】
(偏光子bの作製)
ホウ酸水溶液2のホウ酸含有量を、水100質量部あたり2.3質量部に変更した点以外は、偏光子aと同じ方法で偏光子bを作製した。得られた偏光子bの厚みは8μmであり、収縮力は1.5N/2mm、ホウ素含有率は3.0質量%であった。
【0083】
(偏光子cの作製)
ホウ酸水溶液2のホウ酸含有量を、水100質量部あたり5.5質量部に変更した点以外は、偏光子aと同じ方法で偏光子cを作製した。得られた偏光子cの厚みは8μmであり、収縮力は2.1N/2mm、ホウ素含有率は4.3質量%であった。
【0084】
(偏光子dの作製)
ホウ酸水溶液2のホウ酸含有量を、水100質量部あたり6.8質量部に変更した点以外は、偏光子aと同じ方法で偏光子cを作製した。得られた偏光子cの厚みは8μmであり、収縮力は2.5N/2mm、ホウ素含有率は5.0質量%であった。
【0085】
(偏光子eの作製)
ホウ酸水溶液2のホウ酸含有量を、水100質量部あたり1.5質量部に変更した点以外は、偏光子aと同じ方法で偏光子eを作製した。得られた偏光子eの厚みは8μmであり、収縮力は1.2N/2mm、ホウ素含有率は2.5質量%であった。
【0086】
(偏光子のホウ素含有率の測定)
偏光子0.2gを1.9質量%マンニトール水溶液200gに溶解した。得られた水溶液を1mol/L NaOH水溶液で滴定し、中和に要したNaOH液の量と検量線の比較により、偏光子のホウ素含有率を算出した。
【0087】
(偏光子の収縮力の測定)
偏光子の遅相軸が長辺と一致するように、偏光子を短辺2mm、長辺50mmの矩形にスーパーカッター(株式会社荻野精機製作所製)により切り出し、試験片とした。試験片の収縮力を熱機械分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、型式TMA/6100)を用いて測定した。この測定は、寸法一定モードにおいて実施し(チャック間距離を10mmとした)、試験片を20℃の室内に十分な時間放置した後サンプルの室内の温度設定を20℃から80℃まで10分間で昇温させ、昇温後はサンプルの室内の温度を80℃で維持するように設定した。昇温後さらに4時間放置した後、80℃の環境下で試験片の長辺方向の収縮力を測定した。この測定において静荷重は0mNとし、治具にはSUS製のプローブを使用した。
【0088】
[接着剤1の調整]
水100質量部に対し、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(株式会社クラレ、商品名「KL-318」)を3質量部溶解し、その水溶液に水溶性エポキシ樹脂であるポリアミドエポキシ系添加剤(田岡化学工業株式会社、商品名「スミレーズレジン(登録商標)650(30)、固形分濃度30質量%の水溶液)を1.5質量部添加して、水系接着剤を調製した。この水系接着剤を接着剤1とする。
【0089】
[接着剤2の調整]
ポリエステルウレタン(第一工業製薬製、商品名:スーパーフレックス210、固形分:33%)16.8g、架橋剤(オキサゾリン含有ポリマー、日本触媒製、商品名:エポクロスWS-700、固形分:25%)4.2g、1質量%のアンモニア水2.0g、コロイダルシリカ(扶桑化学工業製、クォートロンPL-3、固形分:20質量%)0.42gおよび純水76.6gを混合し、接着剤組成物を得た。この接着剤組成物を接着剤2とする。
【0090】
[保護フィルム]
(保護フィルムaの準備)
保護フィルムaとして、厚み20μmのトリアセチルセルロース(TAC)からなるフィルム(コニカミノルタ株式会社製、商品名「KC2CT」)を用いた。
【0091】
(保護フィルムbの準備)
ノルボルネン重合体を含む熱可塑性樹脂のペレット(ガラス転移点137℃)を、100℃で5時間乾燥した。前記ペレットを押出機に供給し、押出機内で溶融させ、ポリマーパイプ及びポリマーフィルターを経て、Tダイからキャスティングドラム上にフィルム状に押出した。押し出された樹脂はキャスティングドラムで冷却されて、厚み55μm、幅1500mmの長尺の未延伸フィルムを得た。こうして得た未延伸フィルムを、長手方向に、延伸温度145℃、延伸倍率1.5倍で延伸して、厚み45μm、幅1000mmの長尺の縦延伸フィルムを得た。
【0092】
内側クリップチェーン及び外側クリップチェーンを備えたテンター延伸装置と、このテンター延伸装置を覆うオーブンとを備えた製造装置を用意した。テンター延伸装置に樹脂フィルムとして前記の縦延伸フィルムを連続的に供給して、斜め延伸を行った。延伸条件は、延伸倍率2.0倍、延伸温度142℃、内側クリップチェーン及び外側クリップチェーンの張力比率Tin/Tout×100は105%であった。これにより、厚み22μm、幅1330mmの長尺の斜め延伸フィルムを得た。得られた延伸フィルムの表面に厚み3μmのアクリル系ハードコートを塗工し、厚み25μmの保護フィルムbを得た。
【0093】
(保護フィルムcの準備)
ノルボルネン重合体を含む熱可塑性樹脂のペレット(ガラス転移点137℃)を、100℃で5時間乾燥した。前記ペレットを押出機に供給し、押出機内で溶融させ、ポリマーパイプ及びポリマーフィルターを経て、Tダイからキャスティングドラム上にフィルム状に押出した。押し出された樹脂はキャスティングドラムで冷却されて、厚み50μm、幅1500mmの長尺の未延伸フィルムを得た。こうして得た未延伸フィルムを、長手方向に、延伸温度145℃、延伸倍率1.5倍で延伸して、厚み40μm、幅1000mmの長尺の縦延伸フィルムを得た。
【0094】
内側クリップチェーン及び外側クリップチェーンを備えたテンター延伸装置と、このテンター延伸装置を覆うオーブンとを備えた製造装置を用意した。テンター延伸装置に樹脂フィルムとして前記の縦延伸フィルムを連続的に供給して、斜め延伸を行った。延伸条件は、延伸倍率2.1倍、延伸温度142℃、内側クリップチェーン及び外側クリップチェーンの張力比率Tin/Tout×100は105%であった。これにより、厚み18μm、幅1330mmの保護フィルムcを得た。
【0095】
(保護フィルムdの準備)
アクリル系樹脂[ガラス転移温度:135℃、溶融粘度:700Pa・s(温度270℃、せん断速度100(1/sec))]のペレットを、単軸押出機(φ=20.0mm、L/D=25)及びコートハンガータイプTダイ(幅150mm)を用いて280℃で溶融押出し、110℃に保持した冷却ロールに溶融状態の上記樹脂組成物を吐出して、厚さ80μmのアクリル系樹脂フィルムを形成した。次に、アクリル系樹脂フィルムの一方の表面に、上記で得られた易接着組成物を、バーコーターを用いて塗布した後、熱風乾燥機に投入して100℃で90秒間乾燥した。そして、テーブル延伸機を用いて当該フィルムを一軸延伸(延伸倍率:4倍)し、厚み20μmの保護フィルムdを得た。
【0096】
(保護フィルムeの準備)
保護フィルムdの表面に厚み3μmのアクリル系ハードコートを塗工し、厚み23μmの保護フィルムeを得た。
【0097】
(保護フィルムの透湿度の測定)
保護フィルムの透湿度を、JIS Z 0208に規定されるカップ法により、温度40℃、相対湿度92%RHで測定した。表1に結果を示す。
【0098】
(保護フィルムの突刺し弾性率の測定)
測定対象の保護フィルムを、中央部が30mm×30mmの正方形で切り抜かれた糊付き台紙に貼合してなる測定試料を作製する。当該糊付き台紙の切り抜かれた部分に貼り付けられた保護フィルムの中央部を、先端径1mmφ0.5Rのニードルを0.33cm/秒の速度で、当該保護フィルムの面に対して略垂直に突き刺す。そして、破断が生じた時点で測定される当該保護フィルムの突き差し方向の撓みによる変位量をひずみ量S(mm)とし、当該保護フィルムに加えられた応力をF(g)とし、応力Fをひずみ量Sで除して突刺し弾性率A(g/mm)を求めた。すなわち、以下の式(1)により突刺し弾性率を求めた。表1に結果を示す。
【0099】
突刺し弾性率A(g/mm)=F(g)/S(mm) (1)
(保護フィルムの耐屈曲性試験)
測定対象の保護フィルムを、屈曲評価設備(Science Town社製、STS-VRT-500)を用いて、25℃の温度において、曲げに対する耐久性を確認する評価試験を行った。屈曲軸を決め、屈曲軸に沿って屈曲半径が1.5mmでかつ屈曲軸の両側の領域が平行となるように対向するまで屈曲させてその後屈曲を解放する動きを13万5千回繰り返して行った。その後、屈曲軸に沿って生じたクラックの長さを測定した。表1に結果を示す。
【0100】
【0101】
[位相差体の準備]
(1)「配向層/第1液晶硬化層」の準備
基材フィルム上に形成された、配向層とネマチック液晶化合物が硬化した層であるλ/4位相差層(第1液晶硬化層)を準備した。なお、「配向層/第1液晶硬化層」の合計の厚みは2μmであった。
【0102】
(2)「配向層/第2液晶硬化層」の作製
配向層形成用の組成物として、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(新中村化学工業株式会社製、A-600)10.0質量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業株式会社製、A-TMPT)10.0質量部と、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート(新中村化学工業株式会社製、A-HD-N)10.0質量部と、光重合開始剤としてイルガキュア907(BASF社製、Irg-907)1.50質量部とを、溶媒メチルエチルケトン70.0質量部中で溶解させ、配向層形成用塗工液を調整した。
【0103】
基材フィルムとして厚み20μmの長尺状の環状オレフィン系樹脂(COP)フィルム(日本ゼオン株式会社製)を準備し、基材フィルムの片面に、配向層形成用塗工液をバーコーターにて塗布した。
【0104】
塗工後の塗布層に温度80℃で60秒間の熱処理を施した後、紫外線(UVB)を220mJ/cm2照射し、配向層形成用の組成物を重合し、硬化させて、基材フィルム上に厚み2.3μmの配向層を形成した。
【0105】
位相差層形成用の組成物として、光重合性ネマチック液晶化合物(メルク社製、RMM28B)20.0質量部と、光重合開始剤としてイルガキュア907(BASF社製、Irg-907)1.0質量部とを、溶媒プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート80.0質量部中に溶解させ、位相差層形成用塗工液を調整した。
【0106】
先に得られた配向層上に位相差層形成用塗工液を塗布し、塗布層に温度80℃で60秒間の熱処理を施した。その後、紫外線(UVB)を220mJ/cm2照射し、位相差層形成用の組成物を重合し、硬化させて、配向層上に厚み0.7μmの位相差層(第2液晶硬化層)を形成した。この様にして基材フィルム上に合計厚み3μmの「配向層/第2液晶硬化層」を得た。
【0107】
(3)位相差体の作製
基材フィルム上に積層された「配向層/第1液晶硬化層」と、基材フィルム上に積層された「配向層/第2液晶硬化層」とを、紫外線硬化型接着剤(厚み1μm)により、それぞれの液晶硬化層面(基材フィルムとは反対側の面)が貼合面となるように貼り合わせた。次いで、紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を硬化させて、第1液晶硬化層と第2液晶硬化層の2層の液晶硬化層を含む位相差体を作製した。
【0108】
[実施例1~7、比較例1~2]
表2に示す保護フィルム、表2に示す偏光子、及び上述の位相差体を用いて、
図2に示す構成の偏光板を作製した。
【0109】
[耐衝撃性試験]
各実施例および比較例の偏光板から、長辺150mm×短辺70mmの長方形の大きさの小片をスーパーカッターを用いて切り出し、小片の位相差体側表面を粘着剤層を介してアクリル板に貼合した。そして、温度23℃、相対湿度55%RHの環境下で、小片に対して、評価用ペンを小片の保護フィルムの最表面から5cmの高さにペン先が位置しかつペン先が下向きとなるように保持し、その位置から評価用ペンを落下させた。評価用ペンとして、質量が11gであり、ペン先の直径が0.7mmのペンを用いた。評価用ペンを落下させた後の小片について、目視での観察を行い、以下の基準で評価を行った。表2に評価結果を示す。
A:偏光子及び保護フィルムに割れ及び傷なし。
B:偏光子に割れなし、保護フィルムに傷あり。
C:偏光子に傷あり。
【0110】
[耐屈曲性評価]
各実施例および比較例の偏光板の耐屈曲性について、用いた保護フィルムの耐屈曲性試験の結果に基づいて以下の基準で評価を行った。表2に評価結果を示す。
A:保護フィルムについて、耐屈曲性試験においてクラックが発生しない(クラック長が0mmである)。
B:保護フィルムについて、耐屈曲性試験におけるクラック長が0mm超5mm以下である。
C:保護フィルムについて、耐屈曲性試験におけるクラック長が5mm超である。
【0111】
[耐湿熱性試験]
各実施例及び比較例の偏光板から、長辺140mm×短辺65mmの長方形の大きさの小片をスーパーカッターを用いて切り出し、小片の位相差体側表面を粘着剤層を介して無アルカリガラス板にハンドローラーを用いて貼り合わせた。この試験片を、温度65℃相対湿度90%RHの恒温恒湿槽に投入し、500時間静置した後に取り出した。試験片の偏光板と標準偏光板とをクロスニコルに配置して、試験片の偏光板のコーナー付近を光学顕微鏡で観察し、偏光子端部からのヨウ素抜け長さを測定し、以下の基準で評価を行った。表2に評価結果を示す。
【0112】
A:端部ヨウ素抜け長さ0.3mm未満
B:端部ヨウ素抜け長さ0.3mm~0.6mm未満
C:端部ヨウ素抜け長さ0.6mm以上
【0113】
【0114】
なお、実施例1~3及び実施例5、実施例7、比較例2は、偏光子と保護フィルム(PMMA)を接着剤2から形成された貼合層を介して貼合し、
実施例4は、偏光子と保護フィルム(TAC)を接着剤1から形成された貼合層を介して貼合した。
実施例6は、偏光子と保護フィルム(COP)を貼合するに際し、当該保護フィルムの表面にコロナ処理を施し、貼合層を介することなく貼合した。
【0115】
比較例1は、偏光子と保護フィルム(COP)を貼合するに際し、当該保護フィルムの表面にコロナ処理を施し、貼合層を介することなく貼合した。
【符号の説明】
【0116】
1 測定フィルム付き台紙、6 空隙部、7 糊付き台紙、8 外周、10 偏光子、12 測定フィルム、20 保護フィルム、30 位相差板、31 第1位相差層、32 第2位相差層、33,40 層間貼合層、100,200 偏光板、N ニードル、M ニードルNを突刺す位置、S ひずみ量。
【要約】
【課題】薄型に構成しても、耐衝撃性に優れる偏光板、さらに耐衝撃性及び耐屈曲性を高度に両立し得る偏光板を提供する。
【解決手段】保護フィルムと偏光子とが積層されてなる偏光板であって、前記保護フィルムは、突刺し弾性率が200g/mm以上550g/mm以下であり、かつ厚みが25μm以下であり、前記偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂及びホウ素を含有し、ホウ素含有量が4.5質量%以下であり、フレキシブル表示装置に用いられる偏光板。
【選択図】
図1