(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】賦形粘着シート積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/40 20180101AFI20220117BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220117BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220117BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20220117BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220117BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20220117BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20220117BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
C09J7/40
C09J7/38
C09J201/00
C09J133/00
C09J11/06
B32B7/06
B32B7/12
B32B27/00 M
(21)【出願番号】P 2017171752
(22)【出願日】2017-09-07
【審査請求日】2020-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2017007721
(32)【優先日】2017-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 記央
(72)【発明者】
【氏名】稲永 誠
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/174392(WO,A1)
【文献】特開昭61-278585(JP,A)
【文献】特開2010-83915(JP,A)
【文献】特開昭59-51966(JP,A)
【文献】特開2004-75845(JP,A)
【文献】特開2015-193754(JP,A)
【文献】特開2016-210900(JP,A)
【文献】特開2016-151006(JP,A)
【文献】特開2018-115310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00- 5/10
7/00- 7/50
9/00-201/10
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着材層と、当該粘着材層の一面に剥離可能に積層してなる被覆部Iとを備え、当該粘着材の一面には凹部又は凸部又は凹凸部(「粘着材層表面凹凸部」と称する)が賦形されてなる構成を備えた賦形粘着シート積層体の製造方法において、
粘着材層と、当該粘着材層の一面に剥離可能に積層してなる被覆部Iとを備えた粘着シート積層体を加熱し、加熱された粘着シート積層体を金型により成形して賦形粘着シート積層体を製造する製造方法であって、
前記粘着材層の100℃における損失正接tanδ(SA)が1.0以上であり、且つ、前記粘着材層の30℃における損失正接tanδ(SB)が1.0未満であり、
粘着シート積層体を加熱して、被覆部Iの表面温度が70~180℃の状態で成形を開始し、被覆部Iの表面温度が60℃未満になった後に金型から賦形粘着シート積層体を取り出すことを特徴とする賦形粘着シート積層体の製造方法。
【請求項2】
プレス成形、真空成形、圧空成形、ロールフォーミング成形及び圧縮成形のうちの何れかの成形方法によって成形することを特徴とする請求項1に記載の賦形粘着シート積層体の製造方法。
【請求項3】
前記成形方法を用いて連続して製造することを特徴とする請求項1又は2に記載の賦形粘着シート積層体の製造方法。
【請求項4】
前記被覆部Iは、被覆基材層と離形層とを備えており、
当該被覆基材層が、無延伸ポリエステル、延伸ポリエステル、共重合ポリエステル、無延伸ポリオレフィン、延伸ポリオレフィンおよび共重合ポリオレフィンからなる群から選択される1種の樹脂又は2種以上の樹脂を主成分とする層を有することを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の賦形粘着シート積層体の製造方法。
【請求項5】
前記粘着材層は、(メタ)アクリル系共重合体(a)、架橋剤(b)及び光重合開始剤(c)を含有する樹脂組成物から形成されるものであることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の賦形粘着シート積層体の製造方法。
【請求項6】
前記賦形粘着シート積層体は、前記粘着材層は、表裏一側表面に凹部又は凸部又は凹凸部(「粘着材層表面凹凸部」と称する)を備え、且つ、
前記被覆部Iは、前記粘着材層の表裏一側表面に密着し、表裏一側表面に凹部又は凸部又は凹凸部(「被覆部表面凹凸部」と称する)を備え、且つ、前記表裏一側とは反対側の表裏他側表面に前記被覆部表面凹凸部に対応して凹凸をなした凸部又は凹部又は凸凹部(「被覆部裏面凸凹部」と称する)を備えた賦形粘着シート積層体であることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の賦形粘着シート積層体の製造方法。
【請求項7】
前記粘着材層は、2つの被着体を貼り合わせるための両面粘着シートであり、
前記粘着材層表面凹凸部は、前記
2つの被着体のうちの何れかの被着体の被着面における凹部又は凸部又は凹凸部(「被着体表面凹凸部」と称する)と符合するものであることを特徴とする請求項6に記載の賦形粘着シート積層体の製造方法。
【請求項8】
前記
2つの被着体のうちの何れかの被着体は、表面保護パネル、タッチパネル及び画像表示パネルからなる群から選択される何れかであることを特徴とする請求項7に記載の賦形粘着シート積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばパーソナルコンピュータ、モバイル端末(PDA)、ゲーム機、テレビ(TV)、カーナビゲーションシステム、タッチパネル、ペンタブレットなどのような画像表示装置を形成する際に好適に用いることができる賦形粘着シート積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル方式の画像表示装置は、通常、表面保護パネル、タッチパネル及び画像表示パネル(総称して、「画像表示装置用構成部材」ともいう)が組み合わされて構成されている。
近年、スマートフォンやタブレット端末などのタッチパネル方式の画像表示装置の表面保護パネルは、強化ガラスと共にアクリル樹脂板やポリカーボネート板などのプラスチック材が用いられており、該表面保護パネルの視認開口面部以外の周縁部は、黒色印刷されている。
また、タッチパネルでは、ガラスセンサーと共にプラスチックフィルムセンサーを用いたり、タッチパネル機能が表面保護パネルと一体化されたタッチオンレンズ(TOL)なる部材が用いられたり、タッチパネル機能が画像表示パネルに一体化されたオンセルやインセルなる部材が用いられたりしている。
【0003】
この種の画像表示装置においては、画像視認性をより向上させるために、各画像表示装置用構成部材間の空隙を、液状接着剤、熱可塑性接着シート材、粘着シート材などの透明な樹脂で埋める構造が一般的である。
ところで、携帯電話やモバイル端末を中心とする画像表示装置の分野では、薄肉化、高精密化に加えて、デザインの多様化が進んでおり、表面保護パネルの周縁部には、枠状に黒色の隠蔽部を印刷するのが従来は一般的であったが、デザインの多様化に伴い、この枠状の隠蔽部を、黒色以外の色で形成することが行われ始めている。黒色以外の色で隠蔽部を形成する場合、隠蔽性が低いため、黒色に比べて隠蔽部、すなわち印刷部の高さが高くなる傾向にある。そのため、このような印刷部を備えた構成部材を貼り合わせるための粘着シートには、大きな印刷段差に追従して隅々まで充填することが求められている。
そこで従来から、印刷段差を埋めるための方法が種々提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、粘着シートを貼合する被着面に印刷などによる段差を有していても、被着面に隙間なく密着状に貼合することができる、新たな画像表示装置用両面粘着シートとして、表面保護パネル、タッチパネル及び画像表示パネルの画像表示装置用構成部材から選択されるいずれか2つの被着体を貼合するための両面粘着シートであって、少なくとも一方の被着体は、両面粘着シートを被着する被着面に段差部を有し、両面粘着シートは、前記被着面に貼合する貼合面の形状を前記被着面の面形状に沿わせて賦形してなる、画像表示装置用両面粘着シートが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、表面保護パネル、タッチパネル及び画像表示パネルから選択されるいずれか2つの被着体を貼合するための両面粘着シートの製造方法について、貼合前の両面粘着シートは、ゲル分率が40%未満である粘着剤組成物を用い、前記被着体の貼合面の凹凸形状と同一の面形状に賦形することを特徴とする画像表示装置用両面粘着シートの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2014/073316 A1
【文献】WO2015/174392 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、携帯電話やモバイル端末を中心とする画像表示装置の分野では、薄肉化、高精密化がさらに要求されており、画像表示装置構成部材を貼り合わせるための粘着シートにも、印刷段差などの被着体表面の凹凸部を精度高く充填することができ、それでいて粘着材が外側にはみ出ることがないことが求められている。そのための対策として、上述の先行特許文献に開示されているように、粘着シートの表面形状を、予め被着体の表面形状に沿わせて形成しておくことが検討されている。
【0008】
そして、そのように粘着シートの表面形状を、予め被着体の表面形状に沿わせて形成するためには、粘着シートの両側に離形シートが積層してなる粘着シート積層体をプレス成形して、被着体表面の凹凸部と符合する凹凸形状を形成する方法が想定される。
しかし、通常の離形シートが粘着シートの両側に積層してなる粘着シート積層体を使用して、前記方法を実際に実施してみた結果、被着体表面の凹凸部と符合する凹凸形状を精度高く粘着シート表面に形成することが難しいという課題が明らかになってきた。
【0009】
そこで本発明は、粘着材層と、当該粘着材層の一面に剥離可能に積層してなる被覆部Iとを備え、当該粘着材の一面には凹部又は凸部又は凹凸部(「粘着材層表面凹凸部」と称する)が賦形されてなる構成を備えた賦形粘着シート積層体の製造方法に関し、被着体表面の凹凸部と符合する粘着材層表面凹凸部を精度高く粘着材層表面に形成することができる新たな賦形粘着シート積層体の製造方法を提案せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、粘着材層と、当該粘着材層の一面に剥離可能に積層してなる被覆部Iとを備え、当該粘着材の一面には凹部又は凸部又は凹凸部(「粘着材層表面凹凸部」と称する)が賦形されてなる構成を備えた賦形粘着シート積層体の製造方法において、
粘着材層と、当該粘着材層の一面に剥離可能に積層してなる被覆部Iとを備えた粘着シート積層体を加熱し、加熱された粘着シート積層体を金型により成形して賦形粘着シート積層体を製造する製造方法であって、
前記粘着材層の100℃における損失正接tanδ(SA)が1.0以上であり、且つ、前記粘着材層の30℃における損失正接tanδ(SB)が1.0未満であり、
粘着シート積層体を加熱して、被覆部Iの表面温度が70~180℃の状態で成形を開始し、被覆部Iの表面温度が60℃未満になった後に金型から賦形粘着シート積層体を取り出すことを特徴とする賦形粘着シート積層体の製造方法を提案する。
【発明の効果】
【0011】
本発明が提案する賦形粘着シート積層体の製造方法によれば、粘着シート積層体を加熱して、被覆部Iの表面温度が70~180℃の状態で成形を開始し、被覆部Iの表面温度が60℃未満になった後に金型から賦形粘着シート積層体を取り出すことにより、例えば被着体表面の凹凸部と符合する凹凸形状を粘着材層表面に精度高く形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例である粘着シート積層体の一例を模式的に示した断面図である。
【
図2】本発明の実施例である粘着シート積層体の一例を用いて、賦形粘着シート積層体を製造する際のプレス工程の一例を説明するための断面図である。
【
図3】本発明の実施例である賦形粘着シート積層体の一例を模式的に示した図であり、(A)は断面図、(B)は斜視図である。
【
図4】実施例・比較例で使用した金型の一方を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施形態の一例について説明する。ただし、本発明が下記実施形態に制限されるものではない。
【0014】
[本製造方法]
本実施形態の一例に係る賦形粘着シート積層体の製造方法(「本製造方法」と称する)は、後述する粘着シート積層体を加熱し(加熱工程)、加熱された粘着シート積層体を成形すると共に冷却する(成形・冷却工程)工程を備えた製造方法である。
【0015】
本製造方法は、前記加熱工程及び前記成形・冷却工程を備えていれば、他の工程を備えていてもよい。例えば熱処理工程、搬送工程、スリット工程、裁断工程などの工程を必要に応じて備えていてもよい。但し、これらの工程に限定するものではない。
【0016】
<粘着シート積層体>
本製造方法における出発部材としての粘着シート積層体は、粘着材層と、当該粘着材層の一面に剥離可能に積層してなる被覆部Iとを備えていればよく、他の部材を備えていてもよい。例えば
図1に示すように、粘着材層と、当該粘着材層の表裏一側に剥離可能に積層してなる被覆部Iと、当該粘着材層の表裏他側に剥離可能に積層してなる被覆部IIとを備えた粘着シート積層体を例示することができる。但し、被覆部IIを備えるか否かは任意であり、被覆部IIを積層しない構成としてもよい。
なお、粘着シート積層体の詳細については、後述する。
【0017】
<加熱工程>
本工程では、前記粘着シート積層体を加熱して、被覆部Iの表面温度が70~180℃となるようにする。
被覆部Iの表面温度が70℃以上であれば、粘着材層が十分に軟化し、且つ、被覆部Iを十分に変形可能とすることができ、180℃以下であれば、熱収縮によるシワの発生や、熱による粘着材層の分解等の弊害を抑制できることから、好ましい。
かかる観点から、前記粘着シート積層体を加熱して、被覆部Iの表面温度が70~180℃となるようにするのが好ましく、中でも75℃以上或いは150℃以下、その中でも80℃以上或いは120℃以下となるようにするのがより一層好ましい。
【0018】
粘着シート積層体の加熱方法としては、例えば、電熱ヒーターなどの加熱体を内部に備えた上下の加熱板の間に粘着シート積層体を存在させて上下から加熱する方法や、加熱板で直接挟む方法、加熱ロールを用いる方法、熱水に浸漬させる方法等を挙げることができる。但し、これらの方法に限定するものではない。
【0019】
<成形・冷却工程>
本工程では、前記のように被覆部Iの表面温度が70~180℃に加熱された状態で粘着シート積層体の成形を開始するのが好ましい。すなわち、粘着材層及び被覆部Iが積層されて一体となった状態の粘着シート積層体をそのまま成形するのが好ましい。このようにすれば、被覆部Iを成形すると同時に、当該被覆部Iを介して粘着材層も成形することができる。
【0020】
本工程では、加熱された粘着シート積層体を成形した後、冷却してもよいし、また、成形と同時に冷却してもよい。例えば冷却した金型でプレスすることにより、成形と冷却を同時に行い同時に終了することができる。これにより、後述するように、連続的に本製造方法を実施することができる。
【0021】
成形方法としては、粘着シート積層体に対して一体的に凹凸形状を賦形することができれば、特に成形方法を限定するものではない。例えばプレス成形、真空成形、圧空成形、ロールによる賦形(ロールフォーミング成形)、圧縮成形、積層による賦形などを挙げることができる。中でも成形性及び加工性の観点から、プレス成形が特に好ましい。
【0022】
金型を用いて成形する場合、金型の材質は特に限定するものではない。例えばシリコーン樹脂やフッ素樹脂等の樹脂系材料、ステンレスやアルミなどの金属系材料等を挙げることができる。中でも被着体の凹凸賦形には高精度の成形性が求められることから、成形時の温度コントロールが可能な金属系の金型が特に好ましい。
金型の冷却手段は、通常行われている冷却手段を採用することができる。例えば、水冷や圧縮エアーによる冷却手段を挙げることができる。
【0023】
金型は、例えば
図2に示すように、開閉する一対の金型のうちの少なくとも一方の金型の内壁面に所定の凹凸形状、例えば粘着材層を被着する被着体の貼り合わせ面(「貼合面」とも称する)における凹部又は凸部又は凹凸部と符合する凹凸形状を設けておくことで、当該金型を用いて粘着シート積層体をプレス成形、真空成形、圧空成形又はロール成形することによって、粘着シート積層体に前記凹凸形状を転写して賦形することができる。
【0024】
上述したように、前記被覆部Iの表面温度が70~180℃である状態で成形を開始するのが好ましい。当該被覆部Iの表面温度が70℃以上であれば、粘着材層が十分に軟化し、且つ、被覆部Iを十分に変形可能とすることができ、180℃以下であれば、熱収縮によるシワの発生や、熱による粘着材層の分解等の弊害を抑制できることから好ましい。
よって、被覆部Iの表面温度が70~180℃である状態で成形を開始するのが好ましく、中でも75℃以上或いは150℃以下、その中でも80℃以上或いは120℃以下となるようにするのがより一層好ましい。
【0025】
他方、本工程では、前記被覆部Iの表面温度が60℃未満になった状態で成形を終了するのが好ましい。例えば、プレス成形の場合には表面温度が60℃未満になった状態で金型を型開きするのが好ましい。
ここで、「成形を終了する」とは、粘着シート積層体に対して成形圧力を加えるのを終了することを意味し、金型成形であれば、金型を開くことを意味する。
【0026】
被覆部Iの表面温度が60℃未満であれば、成形終了後に成形体を取り出す際に変形したり、被覆部Iの熱収縮に伴う反りが発生したりするのを抑制することができるから好ましい。
かかる観点から、被覆部Iの表面温度が60℃未満になった状態、中でも0℃以上或いは50℃以下になった状態、その中でも10℃以上或いは40℃以下になった状態で成形を終了するのが好ましい。
【0027】
繰り返しになるが、本製造方法では、金型でプレス成形し、型開き後に冷却してもよいし、金型を冷却しておき、プレス成形と同時に冷却するようにしてもよい。このように金型を冷却しておき、プレス成形と同時に冷却するようにすれば、成形と同時に冷却を終了することができる。よって、成形及び冷却を終了した後すぐに賦形粘着シート積層体を次工程に搬送することができるから、賦形粘着シート積層体を連続的に製造することができる。
【0028】
金型成形と同時に冷却する場合、金型の表面温度は60℃未満であるのが好ましい。
金型の表面温度が60℃未満であれば、短時間で粘着シート積層体の形状を固定することができ、得られる成形体が精度良く、且つ成形後の冷却過程における熱収縮に伴う反りを抑制できる観点から好ましい。
よって、金型の表面温度は60℃未満であるのが好ましく、中でも0℃以上或いは50℃以下、その中でも10℃以上或いは40℃以下であるのがさらに好ましい。
【0029】
また、成形開始時と成形終了時の被覆部Iの表面温度の差は、10~100℃であることが好ましく、中でも20℃以上或いは90℃以下がさらに好ましい。前記被覆部Iの表面温度の差が10~100℃であることによって、例えば粘着シート積層体に前記凹凸形状を転写して賦形する際、成形及び冷却を終了した後すぐに賦形粘着シート積層体を次工程に搬送することができるから、賦形粘着シート積層体を連続的に製造することができる。
【0030】
なお、プレス圧、プレス時間等のプレス成形にかかる条件は特に限定するものではなく、成形される寸法や形状、使用する材料等によって適宜調整すればよい。
【0031】
<その他>
前記成形・冷却工程で得られた賦形粘着シート積層体は、そのまま巻き取ってもよいし、また、熱処理してもよいし、また、所定の大きさ及び形状に裁断してもよい。
裁断する際には、例えばトムソン刃やロータリー刃等を用いて裁断する方法を挙げることができる。
【0032】
本製造方法では、連続して賦形粘着シート積層体を製造するのが好ましい。
例えば粘着シート積層体を加熱ユニット例えばヒーターに搬送して、当該加熱ユニットでは、所定時間搬送を停止して加熱するか或いは搬送しながら加熱するかした後、加熱された粘着シート積層体を成形ユニット例えば成形金型に搬送して、該成形ユニットでは、例えば冷却された金型でプレスして成形と同時に冷却を行い、さらに必要に応じて次のユニットに搬送するようにして、連続的に賦形粘着シート積層体を製造することができる。
【0033】
[本粘着シート積層体]
次に、本製造方法で使用する粘着シート積層体の好適な一例(「本粘着シート積層体」と称する)について説明する。
【0034】
本粘着シート積層体は、
図1に示すように、粘着材層と、当該粘着材層の表裏一側に剥離可能に積層してなる被覆部Iと、当該粘着材層の表裏他側に剥離可能に積層してなる被覆部IIとを備えた粘着シート積層体である。なお、被覆部IIを備えるか否かは任意である。
【0035】
<粘着材層>
本粘着シート積層体の粘着材層は、被覆部I及び被覆部IIを剥離すると、両面粘着シートとして機能し得るものであって、加熱すると柔軟化乃至溶融するホットメルト性を備えたものであればよい。
【0036】
本粘着シート積層体は通常70~180℃で加熱成形し、その後30~50℃まで冷却を行い、成形を完了する。例えば本粘着シート積層体を100℃で加熱成形を開始し、30℃で加熱成形を終了する場合、粘着材層は、加熱成形開始温度である100℃における損失正接tanδ(SA)が1.0以上であるのが好ましく、また、加熱成形終了温度である30℃における損失正接tanδ(SB)が1.0未満であるのが好ましい。
加熱成形開始温度における損失正接tanδ(SA)が1.0以上であることによって、粘着材層表面に凹凸形状を成形することが容易となる。
また、粘着材層の加熱成形終了温度における損失正接tanδ(SB)が1.0未満であれば、常態においてシート形状を保持することができるため、被着体表面の凹凸部と符合する凹凸形状を精度高く粘着材層表面に形成した状態を保持することができる。
ここで、損失正接tanδは、損失弾性率G’’と貯蔵弾性率G’との比(G’’/G’)を意味する。
一般に高分子材料は粘性的性質と弾性的性質を兼ね備えており、損失正接tanδが1.0以上、更にその値が大きくなるほど粘性的性質が強くなる。一方、損失正接tanδが1.0未満、更にその値が小さくなるほど弾性的性質が強くなる。このため、粘着材層の異なる温度における損失正接tanδを制御することにより、成形性と形状保持性を兼備することが可能となる。
【0037】
かかる観点から、粘着材層の加熱成形開始温度における損失正接tanδ(SA)は1.0以上であるのが好ましく、中でも1.5以上或いは30以下、その中でも3.0以上或いは20以下であるのが好ましい。
他方、粘着材層の加熱成形終了温度における損失正接tanδ(SB)は1.0未満であるのが好ましく、中でも0.01以上或いは0.9以下、その中でも0.1以上或いは0.8以下であるのが好ましい。
【0038】
ここで、粘着材層の加熱成形開始温度における損失正接tanδ(SA)及び加熱成形終了温度における損失正接tanδ(SB)は、粘着材層を構成する組成物の成分やゲル分率、重量平均分子量等を調整することによって前記範囲に調整することができる。
【0039】
さらに、粘着材層の加熱成形開始温度における貯蔵弾性率G’(SA)が1.0×104Pa未満であるのが好ましい。また、前記粘着材層の加熱成形終了温度における貯蔵弾性率G’(SB)は1.0×104Pa以上であるのが好ましい。
粘着材層の加熱成形開始温度における貯蔵弾性率G’(SA)が1.0×104Pa未満であれば、十分な成形性が得られるため好ましく、他方、粘着材層の加熱成形終了温度における貯蔵弾性率G’(SB)が1.0×104Pa以上であれば、成形後の形状安定性の観点で好ましい。
【0040】
かかる観点から、粘着材層の加熱成形開始温度における貯蔵弾性率G’(SA)は1.0×104Pa未満であるのが好ましく、中でも5.0×101Pa以上或いは5.0×103Pa以下であるのがさらに好ましく、その中でも1.0×102Pa以上或いは1.0×103Pa以下であるのがさらに好ましい。
また、かかる観点から、粘着材層の加熱成形終了温度における貯蔵弾性率G’(SB)は1.0×104Pa以上であるのが好ましく、中でも2.0×104Pa以上或いは1.0×107Pa以下であるのがさらに好ましく、その中でも5.0×104Pa以上或いは1.0×106Pa以下であるのがさらに好ましい。
【0041】
ここで、粘着材層の加熱成形開始温度における貯蔵弾性率G’(SA)及び粘着材層の加熱成形終了温度における貯蔵弾性率G’(SB)は、粘着材層を構成する組成物の成分やゲル分率、重量平均分子量等を調整することにより前記範囲に調整することができる。
【0042】
粘着材層の損失正接tanδが1.0となる温度は、50~150℃であるのが好ましく、中でも50℃以上或いは130℃以下、その中でも50℃以上或いは110℃以下であるのがさらに好ましい。
粘着材層の損失正接tanδが1.0となる温度が50~150℃であれば、本粘着シート積層体を50~150℃に加熱しておくことで金型成形することができる。
【0043】
粘着材層のベース樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-50~40℃であるのが好ましく、中でも-30℃以上或いは25℃以下、その中でも-10℃以上或いは20℃以下であるのがさらに好ましい。ここで、ガラス転移温度の測定は、示差走査熱量計(DSC)を使用し、3℃/分の速度で昇温した際の、ベースラインシフトの変曲点間の中点をいう。
粘着材層のベース樹脂のガラス転移温度(Tg)が前記範囲であれば、粘着材層に粘着性を付与することができ、さらに、粘着材層の損失正接tanδが1.0となる温度を50~150℃に調整することが可能である。
【0044】
粘着材層の材料としては、所定の粘弾性挙動に調製可能な材料であれば、従来公知の粘着シートを用いることができる。
例えば、1)(メタ)アクリル酸エステル系重合体(共重合体を含む意で、以下「アクリル酸エステル系(共)重合体」と称する。)をベース樹脂として用い、これに架橋モノマー、必要に応じて架橋開始剤や反応触媒などを配合して、架橋反応させて形成した粘着シートや、
2)ブタジエン又はイソプレン系共重合体をベース樹脂として用い、これに架橋モノマー、必要に応じて架橋開始剤や反応触媒などを配合して、架橋反応させて形成した粘着シートや、
3)シリコーン系重合体をベース樹脂と用い、これに架橋モノマー、必要に応じて架橋開始剤や反応触媒などを配合して、架橋反応させて形成した粘着シートや、
4)ポリウレタン系重合体をベース樹脂として用いたポリウレタン系粘着シートなどを挙げることができる。
【0045】
粘着材層そのものの物性は、前記した粘弾性的性質や熱的性質を除いては、本発明では本質的な問題ではない。ただし、粘着性、透明性、及び耐候性などの観点から、前記1)のアクリル酸エステル系(共)重合体をベース樹脂とするものが好ましい。
電気的特性、低屈折率などの性能が求められる場合は、前記2)のブタジエン又はイソプレン系共重合体をベース樹脂とするものが好ましい。
耐熱性、広い温度域におけるゴム弾性などの性能が求められる場合は、前記3)のシリコーン系共重合体をベース樹脂とするものが好ましい。
再剥離性等の性能が求められる場合は、前記4)のポリウレタン系重合体をベース樹脂とするものが好ましい。
【0046】
前記粘着材層の一例として、ベース樹脂としての(メタ)アクリル系共重合体(a)と、架橋剤(b)と、光重合開始剤(c)とを含有する樹脂組成物から形成された粘着シートを例示することができる。
この場合、未架橋状態すなわち光重合される前の状態で、前記の粘弾性特性を満足することが必要である。かかる観点から、粘着材層のゲル分率は40%以下であるのが好ましい。
【0047】
粘着材層のゲル分率が40%以下であれば、粘着材層を構成する分子鎖同士の結合が適切な範囲に抑えられるため、賦形粘着シート積層体に成形する際に適度な流動性を備えることができるようになる。
かかる観点から、粘着材層のゲル分率は40%以下であるのが好ましく、中でも20%以下、その中でも10%以下であるのが特に好ましい。なお、粘着材層のゲル分率の下限は限定されず、0%でもよい。
なお、前記の粘着材層のゲル分率は、ベース樹脂として(メタ)アクリル系共重合体(a)と、架橋剤(b)と、光重合開始剤(c)とを含有する樹脂組成物を用いる場合に限らず、粘着材層として他の樹脂組成物を用いる場合についても同様である。
【0048】
((メタ)アクリル系共重合体(a))
(メタ)アクリル系共重合体(a)は、これを重合するために用いられるアクリルモノマーやメタクリルモノマーの種類、組成比率、さらには重合条件等によって、ガラス転移温度(Tg)等の特性を適宜調整することが可能である。
【0049】
アクリル酸エステル重合体を重合するために用いられるアクリルモノマーやメタクリルモノマーとしては、例えば2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリート、n-ブチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート等を挙げることができる。これらに親水基や有機官能基などを共重合させた酢酸ビニル、ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、グリシジルアクリレート、アクリルアミド、アクリルニトリル、メタクリルニトリル、フッ素アクリレート、シリコーンアクリレートなども用いることができる。
【0050】
アクリル酸エステル重合体の中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体が特に好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体を形成するために用いる(メタ)アクリレート、即ち、アルキルアクリレート又はアルキルメタクリレート成分としては、アルキル基がn-オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、n-ブチル、イソブチル、メチル、エチル、イソプロピルのうちのいずれか1つであるアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートの1種又はこれらから選ばれた2種以上の混合物であるのが好ましい。
【0051】
その他の成分として、カルボキシル基、水酸基、グリシジル基等の有機官能基を有するアクリレート又はメタクリレートを共重合させてもよい。具体的には、前記アルキル(メタ)アクリレート成分と有機官能基を有する(メタ)アクリレート成分とを適宜に選択的に組み合わせたモノマー成分を出発原料として加熱重合して(メタ)アクリル酸エステル系共重合体ポリマーを得ることができる。
中でも好ましくは、イソ-オクチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレートの1種又はこれらから選ばれた2種以上の混合物か、或いは、イソ-オクチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等から少なくとも1種類以上と、アクリル酸とを共重合させたものを挙げることができる。
【0052】
これらのモノマーを用いた重合処理としては、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などの公知の重合方法が採用可能であり、その際に重合方法に応じて熱重合開始剤や光重合開始剤などの重合開始剤を用いることによりアクリル酸エステル共重合体を得ることができる。
【0053】
(アクリル系共重合体(A1))
粘着材層の好ましいベースポリマーの一例として、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなる(メタ)アクリル系共重合体(A1)を挙げることができる。
【0054】
前記アクリル系共重合体(A1)をベース樹脂として粘着材層を構成すれば、粘着材層は、室温状態でシート状を保持しつつ自着性を示すことができ、未架橋状態において加熱すると溶融乃至流動するホットメルト性を有し、さらには光硬化させることができ、光硬化後は優れた凝集力を発揮させて接着させることができる。
よって、粘着材層のベースポリマーとしてアクリル系共重合体(A1)を使用すれば、未架橋状態であっても、室温(20℃)において粘着性を示し、且つ、50~100℃、より好ましくは60℃以上或いは90℃以下の温度に加熱すると軟化乃至流動化する性質を備えることができる。
【0055】
前記アクリル系共重合体(A1)の幹成分を構成する共重合体のガラス転移温度は-70~0℃であるのが好ましい。
この際、幹成分を構成する共重合体成分のガラス転移温度とは、アクリル系共重合体(A1)の幹成分を組成するモノマー成分のみを共重合して得られるポリマーのガラス転移温度を指す。具体的には、当該共重合体各成分のホモポリマーから得られるポリマーのガラス転移温度と構成比率から、Foxの計算式によって算出される値を意味する。
なお、Foxの計算式とは、以下の式により求められる計算値であり、ポリマーハンドブック〔Polymer HandBook,J.Brandrup,Interscience,1989〕に記載されている値を用いて求めることができる。
1/(273+Tg)=Σ(Wi/(273+Tgi))
[式中、Wiはモノマーiの重量分率、TgiはモノマーiのホモポリマーのTg(℃)を示す。]
【0056】
前記アクリル系共重合体(A1)の幹成分を構成する共重合体成分のガラス転移温度は、室温状態での粘着材層の柔軟性や、被着体への粘着材層の濡れ性、すなわち接着性に影響するため、粘着材層が室温状態で適度な接着性(タック性)を得るためには、当該ガラス転移温度は、-70℃~0℃であるのが好ましく、中でも-65℃以上或いは-5℃以下、その中でも-60℃以上或いは-10℃以下であるのが特に好ましい。
但し、当該共重合体成分のガラス転移温度が同じ温度であったとしても、分子量を調整することにより粘弾性を調整することができる。例えば共重合体成分の分子量を小さくすることにより、より柔軟化させることができる。
【0057】
前記アクリル系共重合体(A1)の幹成分が含有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキサンアクリレート、p-クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらに、親水基や有機官能基などをもつヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートや、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル等のエポキシ基含有モノマー、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、(メタ)アクリルアミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基を含有するモノマー、ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環系塩基性モノマー等を用いることもできる。
また、前記アクリルモノマーやメタクリルモノマーと共重合可能な、スチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルキルビニルモノマー等の各種ビニルモノマーも適宜用いることができる。
【0058】
また、アクリル系共重合体(A1)の幹成分は、疎水性の(メタ)アクリレートモノマーと、親水性の(メタ)アクリレートモノマーとを構成単位として含有するのが好ましい。
アクリル系共重合体(A1)の幹成分が、疎水性モノマーのみから構成されると、湿熱白化する傾向が認められるため、親水性モノマーも幹成分に導入して湿熱白化を防止するのが好ましい。
【0059】
具体的には、前記アクリル系共重合体(A1)の幹成分として、疎水性の(メタ)アクリレートモノマーと、親水性の(メタ)アクリレートモノマーと、マクロモノマーの末端の重合性官能基とがランダム共重合してなる共重合体成分を挙げることができる。
【0060】
ここで、前記の疎水性の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えばn-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ-ト、メチルメタクリレートを挙げることができる。
また、疎水性のビニルモノマーとしては酢酸ビニル、スチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、アルキルビニルモノマーなどを挙げることができる。
【0061】
前記の親水性の(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えばメチルアクリレート、(メタ)アクリル酸、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートや、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートや、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル、α-エチルアクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3,4-エポキシブチル等のエポキシ基含有モノマー、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド等などを挙げることができる。
【0062】
アクリル系共重合体(A1)は、グラフト共重合体の枝成分として、マクロモノマーを導入し、マクロモノマー由来の繰り返し単位を含有することが好ましい。
マクロモノマーとは、末端の重合性官能基と高分子量骨格成分とを有する高分子単量体である。
【0063】
マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は、前記アクリル系共重合体(A1)を構成する共重合体成分のガラス転移温度よりも高いことが好ましい。
具体的には、マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は、粘着材層2の加熱溶融温度(ホットメルト温度)に影響するため、マクロモノマーのガラス転移温度(Tg)は30℃~120℃であるのが好ましく、中でも40℃以上或いは110℃以下、その中でも50℃以上或いは100℃以下であるのがさらに好ましい。
このようなガラス転移温度(Tg)であれば、分子量を調整することにより、優れた加工性や保管安定性を保持できると共に、80℃付近でホットメルトするように調整することができる。
マクロモノマーのガラス転移温度とは、当該マクロモノマー自体のガラス転移温度をさし、示差走査熱量計(DSC)で測定することができる。
【0064】
また、室温状態では、枝成分同士が引き寄せ合って粘着剤組成物として物理的架橋をしたような状態を維持することができ、しかも、適度な温度に加熱することで前記物理的架橋が解れて流動性を得ることができるようにするためには、マクロモノマーの分子量や含有量を調整することも好ましいことである。
かかる観点から、マクロモノマーは、アクリル系共重合体(A1)中に5質量%~30質量%の割合で含有することが好ましく、中でも6質量%以上或いは25質量%以下、その中でも8質量%以上或いは20質量%以下であるのが好ましい。
また、マクロモノマーの数平均分子量は500以上8000未満であることが好ましく、中でも800以上或いは7500未満、その中でも1000以上或いは7000未満であるのが好ましい。
マクロモノマーは、一般に製造されているもの(例えば、東亜合成社製マクロモノマーなど)を適宜使用することができる。
【0065】
マクロモノマーの高分子量骨格成分は、アクリル系重合体またはビニル系重合体から構成されるのが好ましい。
前記マクロモノマーの高分子量骨格成分としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-オクチルアクリート、イソオクチルアクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキサンアクリレート、p-クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N、N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルニトリル、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートモノマーや、スチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、アルキルビニルモノマー、酢酸ビニル、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル等の各種ビニルモノマーが挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
前記マクロモノマーの末端重合性官能基としては、例えば、メタクリロイル基、アクリロイル基、ビニル基などを挙げることができる。
【0067】
(架橋剤(b))
架橋剤(b)は、アクリル酸エステル重合体を架橋する際に用いる架橋モノマーを使用することができる。例えば(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、イソシアネート基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、アジリジン基、ビニル基、アミノ基、イミノ基、アミド基から選ばれる少なくとも1種の架橋性官能基を有する架橋剤を挙げることができ、1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、前記架橋性官能基は、脱保護可能な保護基で保護されていてもよい。
【0068】
中でも、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレート、イソシアネート基、エポキシ基、メラミン基、グリコール基、シロキサン基、アミノ基などの有機官能基を2個以上有する多官能有機官能基樹脂、亜鉛、アルミ、ナトリウム、ジルコニウム、カルシウムなどの金属錯体を有する有機金属化合物を好ましく用いることができる。
【0069】
前記の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリングリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリアルコキシジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリアルコキシジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシビバリン酸ネオペングリコールのε-カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルコキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の紫外線硬化型の多官能モノマー類のほか、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の多官能アクリルオリゴマー類を挙げることができる。
【0070】
前記に挙げた中でも、被着体への密着性や湿熱白化抑制の効果を向上させる観点から、前記多官能(メタ)アクリル酸エステルモノマーの中でも、水酸基やカルボキシル基、アミド基等の極性官能基を含有する多官能モノマーもしくはオリゴマーが好ましい。その中でも、水酸基又はアミド基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステルを用いるのが好ましい。
湿熱白化を防止する観点からは、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体、例えばグラフト共重合体の幹成分として、疎水性のアクリレートモノマーと、親水性のアクリレートモノマーとを含有するのが好ましく、さらには、架橋剤として、水酸基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステルを用いるのが好ましい。
また、密着性や耐湿熱性、耐熱性等の効果を調整するために、架橋剤と反応する、単官能又は多官能の(メタ)アクリル酸エステルを、更に加えてもよい。
【0071】
架橋剤の含有量は、粘着剤組成物たる柔軟性と凝集力をバランスさせる観点から、前記(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して、0.1~20質量部の割合で含有するのが好ましく、中でも0.5質量部以上或いは15質量部以下、その中でも1質量部以上或いは13質量部以下の割合であるのが特に好ましい。
【0072】
(光重合開始剤(c))
アクリル酸エステル重合体を架橋する際には、架橋開始剤(過酸化開始剤、光重合開始剤)や反応触媒(三級アミン系化合物、四級アンモニウム系化合物、ラウリル酸スズ化合物など)を適宜添加すると効果的である。
【0073】
紫外線照射架橋の場合には、光重合開始剤(c)を配合するのが好ましい。
光重合開始剤(c)は、ラジカル発生機構によって大きく2つに分類され、光重合性開始剤自身の単結合を開裂分解してラジカルを発生させることができる開裂型光重合開始剤と、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させることができる水素引抜型光重合開始剤と、に大別される。
これらのうちの開裂型光重合開始剤は、光照射によってラジカルを発生する際に分解して別の化合物となり、一度励起されると反応開始剤としての機能をもたなくなる。このため、可視光線域に吸収波長をもつ光重合開始剤として該分子内開裂型を用いると、水素引抜型を用いる場合に比べて、光線照射によって粘着シートを架橋した後、光線反応性の光重合性開始剤が本粘着剤組成物中に未反応残渣として残り、粘着シートの予期せぬ経時変化や架橋の促進を招く可能性が低いため好ましい。また、光重合性開始剤特有の着色についても、反応分解物となることで、可視光線域の吸収がなくなり、消色するものを適宜選択することができるため好ましい。
他方、水素引抜型の光重合開始剤は、紫外線などの活性エネルギー線照射によるラジカル発生反応時に、開裂型光重合開始剤のような分解物を生じないので、反応終了後に揮発成分となりにくく、被着体へのダメージを低減させることができる。
【0074】
前記開裂型光重合開始剤としては、例えば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-[4-{4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)ベンジル}フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オン、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)、フェニルグリオキシリック酸メチル、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドや、それらの誘導体などを挙げることができる。
【0075】
この中でも、開裂型光重合性開始剤で、反応後に分解物となり消色する点で、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系光開始剤が好ましい。
さらに、枝成分としてマクロモノマーを備えたグラフト共重合体からなるアクリル系共重合体との相性からは、光重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどを用いるのが好ましい。
【0076】
光重合開始剤の含有量は、特に制限されるものではない。例えば(メタ)アクリル系共重合体100質量部に対して0.1~10質量部、中でも0.2質量部以上或いは5質量部以下、その中でも0.5質量部以上或いは3質量部以下の割合で含入するのが特に好ましい。但し、他の要素とのバランスでこの範囲を超えてもよい。
光重合開始剤は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0077】
前記成分のほか、必要に応じて、近赤外線吸収特性を有する顔料や染料などの色素、粘着付与剤、酸化防止剤、老化防止剤、吸湿剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、天然物や合成物の樹脂類、ガラス繊維やガラスビーズなどの各種の添加剤を適宜配合することもできる。
【0078】
(粘着材層の層構造及び厚さ)
粘着材層は、単層のほか、二層、三層などの複数層でもよい。
また、粘着材層は、芯層として基材層(粘着性を有さない層)を有し、該基材層の両側に、粘着材からなる層が積層してなる構成であってもよい。このような構成の場合、芯層としての基材層は粘着シート積層体が加熱成形可能となるような材質や特性を有することが好ましい。また、基材層を除いた粘着材層が、損失正接tanδ(SA)、損失正接tanδ(SB)、貯蔵弾性率G’(SA)及び貯蔵弾性率G’(SB)について前記特性を備えているのが好ましい。
【0079】
粘着材層の厚さは特に限定されない。中でも20μm~500μmの範囲が好ましい。この範囲であれば、例えば厚さ20μmのような薄い粘着材層であれば、印刷段差追従性に優れた粘着シートが提供できる。また、厚さ500μmのような厚い粘着材層では印刷段差相当分が予め賦形されていることにより、貼合時の粘着材のオーバーフローを抑制することも可能になる。
したがって、粘着材層の厚さは20μm~500μmであるのが好ましく、中でも30μm以上或いは300μm以下、その中でも50μm以上或いは200μm以下であるのがさらに好ましい。
【0080】
<被覆部I>
本粘着シート積層体は、
図1に示すように、粘着材層の表裏一側、例えば表面に凹凸を賦形する側に剥離可能に積層してなる被覆部Iを備えている。
【0081】
本粘着シート積層体は通常70~180℃で加熱成形し、その後30~50℃まで冷却を行い、成形を完了する。例えば本粘着シート積層体を100℃で加熱成形を開始し、30℃で加熱成形を終了する場合、被覆部Iの加熱成形開始温度である100℃における貯蔵弾性率E’(MA)は1.0×106~2.0×109Paであるのが好ましい。
加熱成形開始温度における貯蔵弾性率E’(MA)が1.0×106~2.0×109Paであれば、前記粘着剤組成物が可塑化乃至流動する温度領域において、被覆部Iも凹凸形状を十分追随して変形可能であるばかりか、成形時に被覆部Iによって押圧される粘着材層の表面に所望の凹凸形状を精度高く、例えば角部が丸くならないように成形することができる。
【0082】
従来、粘着シートに積層する離型フィルムとして、貯蔵弾性率の高い、換言すると“硬い”材料が多用されてきた。これは、離型フィルムに要求される特性が、主として粘着材層の保護と、離型性であったためである。しかしながら、本発明者らの検討によれば、粘着シートに離型フィルムを積層した状態で加熱成形するという新たな用途において、加熱成形性という新たな課題が要求された場合には、従来の離型フィルムに備わっていた前記のような物理的特性では達成できないことが見出された。このため、加熱成形時に生じている現象や、粘着材層のもつ特性等を精査した結果、これまで一般に用いられてきた離型フィルムとは異なる特性とした方が、加熱成形性という新たな課題を解決するためには有利であることを見出したものである。特に、特定の温度における貯蔵弾性率を特定範囲に制御することによって、前記の課題が解決し得ることが見出された。
【0083】
かかる観点から、被覆部Iの加熱成形開始温度における貯蔵弾性率E’(MA)は1.0×106~2.0×109Paであるのが好ましく、中でも5.0×106Pa以上或いは1.0×109Pa以下、その中でも1.0×107Pa以上或いは5.0×108Pa以下であるのがさらに好ましい。
【0084】
また、被覆部Iの加熱成形終了温度における貯蔵弾性率E’(MB)は5.0×107~1.0×1010Paであるのが好ましい。
被覆部Iの加熱成形終了温度における貯蔵弾性率E’(MB)が5.0×107~1.0×1010Paであれば、常態において形状保持性を維持することができるから、取り扱いが容易であり、例えば剥離し易いばかりか、硬過ぎないから、粘着材層に不要な意図しない凹凸をつけることを抑制することができる。
かかる観点から、被覆部Iの加熱成形終了温度における貯蔵弾性率E’(MB)は5.0×107~1.0×1010Paであるのが好ましく、中でも1.0×108Pa以上或いは8.0×109Pa以下、その中でも1.0×109Pa以上或いは5.0×109Pa以下であるのがさらに好ましい。
【0085】
被覆部Iの貯蔵弾性率E’を前記のように調整するには、例えばベース樹脂の種類、共重合樹脂成分、重量平均分子量、ガラス転移温度、結晶性などの被覆部Iの材料の条件を調整する共に、延伸の有無、成形条件、延伸する場合には延伸条件などの製造条件を調整することで調整できる。但し、これらの方法に限定するものではない。
【0086】
さらに、被覆部Iの加熱成形開始温度における貯蔵弾性率E’(MA)と、被覆部Iの30℃における貯蔵弾性率E’(MB)とが以下の関係式(1)を満たすことが好ましい。
(1)・・E’(MB)/E’(MA)≧1.3
【0087】
被覆部Iの加熱成形開始温度における貯蔵弾性率E’(MA)と、被覆部Iの30℃における貯蔵弾性率E’(MB)とが前記関係式(1)を満たせば、十分な成形性が得られるからである。
かかる観点から、E’(MB)/E’(MA)≧1.3であるのが好ましく、中でも100≧E’(MB)/E’(MA)或いはE’(MB)/E’(MA)≧3.0であるのがさらに好ましく、その中でも50≧E’(MB)/E’(MA)或いはE’(MB)/E’(MA)≧5.0であるのが特に好ましい。但し、E’(MF)/E’(MS)の上限はこれに限定されるものではない。
【0088】
E’(MB)とE’(MA)が前記関係になるように調整するには、例えばベース樹脂の種類、共重合樹脂成分、重量平均分子量、ガラス転移温度、結晶性などの被覆部Iの材料の条件を調整する共に、延伸の有無、成形条件、延伸する場合には延伸条件などの製造条件を調整することで調整できる。但し、これらの方法に限定するものではない。
【0089】
またさらに、前記粘着材層の加熱成形開始温度における貯蔵弾性率G’(SA)と、前記被覆部Iの加熱成形開始温度における貯蔵弾性率E’(MA)とが以下の関係式(2)を満たすことが好ましい。
(2)・・E’(MA)/G’(SA)≦1.0×107
【0090】
前記粘着材層の加熱成形開始温度における貯蔵弾性率G’(SA)と、前記被覆部Iの加熱成形開始温度における貯蔵弾性率E’(MA)とが前記関係式(2)を満たせば、十分な成形性が得られるからさらに好ましい。
かかる観点から、E’(MA)/G’(SA)は1.0~1.0×107であるのが好ましく、中でも1.0×101以上或いは5.0×106以下、その中でも5.0×101以上或いは1.0×106以下であるのが特に好ましい。
【0091】
E’(MA)及びG’(SA)が前記関係になるように調整するには、粘着材層或いは被覆部Iの特性を調整すればよい。粘着材層の特性としては、例えば、粘着材層を構成する組成物の成分やゲル分率、重量平均分子量等を調整することによって達成することができる。また、被覆部Iの特性としては、例えばベース樹脂の種類、共重合樹脂成分、重量平均分子量、ガラス転移温度、結晶性などの被覆部Iの材料の条件を調整する共に、延伸の有無、成形条件、延伸する場合には延伸条件などの製造条件を調整することで調整できる。但し、これらの方法に限定するものではない。
【0092】
被覆部Iはさらに、30℃雰囲気下において、粘着材層から前記被覆部Iを剥離する際の剥離力F(C)が0.2N/cm以下であるのが好ましい。
剥離力F(C)が0.2N/cm以下であれば、粘着材層から前記被覆部Iを容易に剥離することができる。
かかる観点から、当該剥離力F(C)は0.2N/cm以下であるのが好ましく、中でも0.01N/cm以上或いは0.15N/cm以下であるのがさらに好ましく、その中でも0.02N/cm以上或いは0.1N/cm以下であるのがさらに好ましい。
【0093】
被覆部Iはさらに、成形加工時に一般に加熱工程を経ることから、加熱後においても剥離力が変わらないことが好ましい。具体的には粘着シート積層体を100℃で5分間加熱後30℃まで冷却させ、30℃雰囲気下において前記粘着材層から前記被覆部Iを剥離する際の剥離力F(D)が0.2N/cm以下であるのが好ましい。
粘着シート積層体を100℃で5分間加熱後30℃まで冷却させて、30℃雰囲気下で測定して得られる剥離力F(D)が、前記剥離力F(C)と同程度であれば、粘着シート積層体を加熱成形しても、剥離力F(D)が変化しないから、粘着材層から前記被覆部Iを容易に剥離することができる。
かかる観点から、当該剥離力F(D)は0.2N/cm以下であるのが好ましく、中でも0.01N/cm以上或いは0.15N/cm以下であるのがさらに好ましく、その中でも0.02N/cm以上或いは0.1N/cm以下であるのがさらに好ましい。
【0094】
被覆部Iはさらに、前記剥離力F(C)と前記剥離力F(D)の差の絶対値が0.1N/cm以下であるのが好ましい。
粘着シート積層体を100℃で5分間加熱後30℃まで冷却させて、30℃雰囲気下で測定して得られる剥離力F(D)と、通常状態での剥離力F(C)と差の絶対値が0.1N/cm以下であれば、粘着シート積層体を加熱成形しても、剥離力F(D)が変化しないから、粘着材層から前記被覆部Iを容易に剥離することができる。
かかる観点から、剥離力F(C)と剥離力F(D)の差の絶対値は0.1N/cm以下であるのが好ましく、中でも0.08N/cm以下、その中でも0.05N/cm以下であるのがさらに好ましい。
【0095】
なお、被覆部Iの剥離力F(C)及び剥離力F(D)は、被覆部Iの一側に形成する離形層の種類などにより調製することができる。ただし、この方法に限定するものではない。
【0096】
被覆部Iの構成例としては、被覆基材層と離形層とを備えた構成例を挙げることができる。被覆基材層の片面に離形層を積層することで、被覆部Iが粘着材層から剥離し易いように構成することができる。
【0097】
この際、当該被覆基材層は、例えばポリエステル、共重合ポリエステル、ポリオレフィンおよび共重合ポリオレフィンからなる群から選択される1種の樹脂又は2種以上の樹脂を主成分とする延伸又は無延伸の層、すなわち、これらの樹脂を主成分とする延伸又は無延伸のフィルムからなる層を備えた単層又は複層であるのが好ましい。
【0098】
中でも、前記被覆部Iを構成する被覆基材層は、機械的強度や耐薬品性等の観点から、例えば共重合ポリエステル、ポリオレフィン、又は、共重合ポリオレフィンを主成分とする延伸又は無延伸のフィルムからなる層を備えた単層又は複層であるのが好ましい。
前記共重合ポリエステルの具体例としては、例えばジカルボン酸としてのイソフタル酸や、ジオールとしてのシクロヘキサンジメタノール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール等を任意に共重合した、共重合ポリエチレンテレフタレートを挙げることができる。
前記ポリオレフィンの具体例としてはα-オレフィン単独重合体が挙げられ、例えばプロピレン単独重合体や4-メチルペンテン-1の単独重合体を挙げることができる。
前記ポリオレフィン共重合体の具体例としては、例えばエチレン、プロピレン、その他のα-オレフィンやビニルモノマー等の共重合体を挙げることができる。
【0099】
前記離形層は、シリコーンなどの離形剤のほか、変性ポリオレフィンを含む層とするのが好ましい。
ここで、前記離形層を構成する変性オレフィンとしては、不飽和カルボン酸又はその無水物、あるいはシラン系カップリング剤で変性されたポリオレフィンを主成分とする樹脂を挙げることができる。
【0100】
前記不飽和カルボン酸又はその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸あるいはこれらの誘導体のモノエポキシ化合物と前記酸とのエステル化合物、分子内にこれらの酸と反応し得る基を有する重合体と酸との反応生成物などを挙げることができる。また、これらの金属塩も使用することができる。これらの中でも、無水マレイン酸がより好ましく用いられる。また、これらの共重合体は、各々単独に、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0101】
変性ポリオレフィン系樹脂を製造するには、例えば、予めポリマーを重合する段階でこれらの変性モノマーを共重合させることもできるし、一旦重合したポリマーにこれらの変性モノマーをグラフト共重合させることもできる。また変性ポリオレフィン系樹脂としては、これらの変性モノマーを単独で又は複数を併用し、その含有率が0.1質量%以上、好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、5質量%以下、好ましくは4.5質量%以下、さらに好ましくは4.0質量%以下の範囲のものが好適に使用される。この中でもグラフト変性したものが好適に用いられる。
【0102】
変性ポリオレフィン系樹脂の好適な例としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂、無水マレイン酸エチレン-酢酸ビニル共重合体などを挙げることができる。
【0103】
被覆部Iの厚さは、成形性の観点から、10μm~500μmであるのが好ましく、中でも20μm以上或いは300μm以下、その中でも30μm以上或いは150μm以下であるのが特に好ましい。
【0104】
<被覆部II>
上述のように、本粘着シート積層体は、粘着材層の表裏一側に剥離可能に被覆部Iを積層し、該被覆部Iとは反対側すなわち粘着材層の表裏他側に剥離可能に被覆部IIを積層してなる構成とすることができる。このように、粘着材層の表裏他側に剥離可能に被覆部IIを積層することで、ハンドリング性を高めることができる。
【0105】
被覆部IIは、粘着材層の表裏他側に剥離可能に積層してなるものであれば、特にその材料及び構成を限定するものではない。
【0106】
被覆部IIは、例えば、前記被覆部Iと同じ積層構成及び材料であってもよく、その際、前記被覆部Iと同じ厚さであっても、異なる厚さであってもよい。
被覆部IIが被覆部Iと同じ積層構成及び材料であれば、本粘着シート積層体を加熱した際などに反りが発生するのを防止することができる。
【0107】
被覆部IIは、被覆部Iと同じ構成としつつ、加熱成形開始温度における貯蔵弾性率E’(MA)、加熱成形終了温度における貯蔵弾性率E’(MB)、それらの比率(E’(MB)/E’(MA))、剥離力F(C)、剥離力F(D)等が被覆部Iと異なるものを採用することもできる。
さらに被覆部IIは、前記被覆部Iと異なる積層構成及び材料であってもよい。
被覆部IIには、例えば通常使用されている離形フィルム(「剥離フィルム」とも称されている)を使用することもできる。具体的には、加熱成形開始温度における貯蔵弾性率E’(MC)が2.0×109~1.0×1011Paであるような材料が挙げられ、例えば2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどを用いることができる。
【0108】
(本粘着シート積層体の製造方法)
本粘着シート積層体の製造方法の一例としては、例えば、粘着剤組成物を被覆部I又はIIの2枚で挟み、ラミネータを用いて粘着材層を形成する方法を挙げることができる。また、その他の方法として、被覆部I又はIIに粘着剤組成物を塗布して粘着材層を形成する方法を挙げることができる。但し、かかる製造方法に限定するものではない。
粘着剤組成物を塗布する方法としては、例えばリバースロールコート、グラビアコート、バーコート、ドクターブレードコート等、従来公知の塗工方式を挙げることができる。
【0109】
[本賦形粘着シート積層体]
次に、本製造方法で製造することができる賦形粘着シート積層体の好適な一例としての賦形粘着シート積層体1(「本賦形粘着シート積層体1」と称する)について説明する。
【0110】
本賦形粘着シート積層体1は、
図3に示すように、粘着材層2と、当該粘着材層2の表裏一側に剥離可能に積層してなる被覆部Iと、当該粘着材層2の表裏他側に剥離可能に積層してなる被覆部IIとを備え、
粘着材層2は、表裏一側表面2Aに凹部又は凸部又は凹凸部(「粘着シート表面凹凸部2B」と称する)を備え、且つ、表裏他側表面2Cは平坦面であり、
被覆部Iは、前記粘着シート2の表裏一側表面2Aに密着しており、表裏一側表面3Aに凹部又は凸部又は凹凸部(「被覆部表面凹凸部3B」と称する)を備え、且つ、シート裏面3Cに前記粘着シート表面凹凸部2Bと符合する、言い換えれば嵌合する凹凸をなす凸部又は凹部又は凸凹部(「保護シート裏面凸凹部3D」と称する)を備え、
被覆部IIは、前記粘着シート2の表裏他側表面2Cに沿って平坦面からなる構成を備えたものとすることができる。
【0111】
なお、表裏他側表面2Cは、
図3に示すように、平坦面とすることもできるし、また、表裏他側表面2Cにも、凹部又は凸部又は凹凸部を備えるように形成することもできる。
【0112】
このような構成を備えた本賦形粘着シート積層体1は、本製造方法により、例えば
図2に示すように、前記本粘着シート積層体をプレス成形、真空成形、圧空成形、ロールフォーミング成形又は圧縮成形することによって、本粘着シート積層体に対して一体的に凹凸形状を賦形することにより製造することができる。
このように製造することにより、粘着材層2の粘着シート表面凹凸部2B、被覆部Iの保護シート表面凹凸部3B及び保護シート裏面凸凹部3Dは、同一箇所にそれぞれ対応して凹凸をなすものとすることができる。
【0113】
粘着材層2は、例えば画像表示装置を構成する2つの画像表示装置構成部材(それぞれ「被着体」とも称する)を貼り合わせるための両面粘着シートとして用いることができる。
すなわち、前記粘着材層2における粘着シート表面凹凸部2Bは、前記被着体の貼り合わせ面(「貼合面」とも称する)における凹部又は凸部又は凹凸部(「被着体表面凹凸部」と称する)と符合するように、好ましくは同一輪郭形状に形成することができる。よって、被着体としての画像表示装置構成部材における被着体表面凹凸部に対して、本賦形粘着シート積層体1における粘着シート表面凹凸部2Bを嵌め合わせることができる。
【0114】
ここで、前記画像表示装置としては、例えば液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置(OLED)、電子ペーパー、微小電気機械システム(MEMS)ディスプレイ及びプラズマディスプレイ(PDP)などを備えたスマートフォン、タブレット端末、携帯電話、テレビ、ゲーム機、パーソナルコンピュータ、カーナビゲーションシステム、ATM、魚群探知機などを挙げることができる。ただし、これらに限定するものではない。
そして、被着体としての画像表示装置構成部材とは、これら画像表示装置を構成する部材であり、例えば表面保護パネル、タッチパネル、画像表示パネルなどを挙げることができ、本賦形粘着シート積層体1は、例えば、表面保護パネル、タッチパネル及び画像表示パネルから選択されるいずれか2つの被着体を貼合するために用いることができる。例えば、表面保護パネルとタッチパネルとを、或いは、タッチパネルと画像表示パネルとを貼合するために用いることができる。ただし、被着体をこれらに限定するものではない。
【0115】
<用途>
本賦形粘着シート積層体1の利用用途の一例について説明する。
近年、携帯電話やスマートフォン、タブレット端末などが汎用化されるに従い、使用者が誤って落下させる等によって画像表示部を破損する事例は多い。特に画像表示装置がタッチパネル方式である場合は、破損によって表示が見づらくなるばかりでなく、物理的障害や水の浸入等によってタッチパネル操作自体が不能となったり、故障の原因となったりする。そこで、画像表示部のみを交換するリペアすなわち修理が行われる場合がある。
画像表示装置のリペアにおいて、新たな画像表示部を装填する際にも粘着シートは使用される。通常、リペアは修理作業者による手作業として行われる場合が多く、修理作業者の熟練が必要である。すなわち、熟練者でないと、粘着シートを介して画像表示部を装填する際に、内部に空気が入ってしまったり、粘着材が食み出したりしてしまう。
これに対し、本賦形粘着シート積層体1を用いれば、予め精度の高い段差形状等を付与することができるため、例えば画像表示装置の機種に応じた段差形状を予め粘着材層に付与しておくことにより、リペア作業が大幅に簡便化され、修理作業者の熟練を要しなくても実施することが可能となる。このように、本発明の粘着シート積層体は、画像表示装置のリペア用として有用に用いることができる。
【0116】
<語句の説明>
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【0117】
本発明において、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【実施例】
【0118】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明が実施例に限定されるものではない。
【0119】
<測定及び評価方法>
先ずは、実施例・比較例で得たサンプルの各種物性値の測定方法及び評価方法について説明する。
【0120】
(被覆部の弾性率)
被覆部Iの貯蔵弾性率は、長さ50mm、幅4mmに切り出し、動的粘弾性装置(アイティー計測制御株式会社 DVA-200)を用いてチャック間距離は25mm、1%の歪みをかけて測定した。測定温度範囲は-50℃~150℃、周波数は1Hz、昇温速度は3℃/minの条件で測定した。
得られたデータにおいて、30℃における被覆部Iの貯蔵弾性率の値をE’(MB)、100℃における被覆部Iの貯蔵弾性率の値をE’(MA)とした。
【0121】
(粘着材層の弾性率)
実施例及び比較例で得られた粘着材層を重ねて1mmの厚さに積層させ、レオメータ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製 MARSII)を用いて測定した。測定温度範囲は-50℃~150℃、周波数は1Hz、昇温速度は3℃/minの条件で測定した。
得られたデータにおいて、100℃における貯蔵弾性率の値をG’(SA)、損失弾性率の値をG’’(SA)、30℃における貯蔵弾性率の値をG’(SB)、損失弾性率の値をG’’(SB)として、各温度条件下におけるG’’/G’の値をそれぞれの粘着材層の損失正接tanδ(SA,SB)とした。
【0122】
(成形性)
実施例及び比較例で得られた、凹凸を賦形した賦形粘着シート積層体の被覆部Iを剥離し、印刷段差に相当する凹部とディスプレイ面に相当する凸部との高さを、それぞれ走査型白色干渉顕微鏡を用いて非接触方式で計測した。
金型の深さ100μmに対する成形体の凸部(凹部とのエッジ部)の高さhを計測し、下記計算式より導かれる転写率が50%以上のものを「○」、50%未満のものを「×」とそれぞれ評価した。
転写率(%)=h(成形体高さ)/100(金型深さ)×100
【0123】
(反り・うねり)
実施例及び比較例の各成形条件で作製した粘着シート積層体を長さ100mmの正方形に切出し、各頂点の高さを計測した。得られた4点の高さを平均してその値を反りとした。反りの高さが10mm未満のものを「○」、10mm以上のものを「×」とそれぞれ判定した。
【0124】
(剥離力)
実施例及び比較例で作製した粘着シート積層体を長さ150mm、幅50mmに切り出し、被覆部Iと粘着材層との界面について、試験速度300mm/minで180°剥離試験を行った。
30℃環境下での剥離力をF(C)、100℃で5分間加熱後、30℃まで自然冷却させた後における剥離力をF(D)として得られた値をそれぞれ被覆部Iの剥離力とした。
【0125】
<被覆部I>
実施例及び比較例における粘着シート積層体の被覆部Iとして、二軸延伸イソフタル酸共重合PETフィルム(厚さ:75μm)の片面にシリコーン系化合物からなる離型層(厚さ:2μm)を積層してなるフィルムを用いた。各々の貯蔵弾性率の値は表1に示した。
【0126】
<実施例1>
(両面粘着シートの作製)
(メタ)アクリル系共重合体(a)として、数平均分子量2400のポリメタクリル酸メチルマクロモノマー(Tg:105℃)15質量部(18mol%)とブチルアクリレート(Tg:-55℃)81質量部(75mol%)とアクリル酸(Tg:106℃)4質量部(7mol%)とがランダム共重合してなるアクリル系共重合体(a-1)(重量平均分子量23万)1kgと、架橋剤(b)として、グリセリンジメタクリレート(日油社製、製品名:GMR)(b-1)90gと、光重合開始剤(c)として、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンと4-メチルベンゾフェノンの混合物(Lanberti社製、製品名:エザキュアTZT)(c-1)15gを均一混合し、粘着材層に用いる樹脂組成物1を作製した。得られた樹脂組成物のガラス転移温度は-5℃であった。
【0127】
得られた樹脂組成物1を離形処理したPETフィルム(三菱樹脂社製、製品名:ダイアホイルMRV-V06、厚さ:100μm)と、被覆部Iとの2枚で挟み、ラミネータを用いて樹脂組成物1の厚さが100μmとなるようにシート状に賦形し、粘着シート積層体1を作製した。なお、被覆部Iの離型層側を樹脂組成物1に接するように配置した。
【0128】
得られた粘着シート積層体1は、真空圧空成形機(第一実業社製、FKS-0632-20形)及び成形用金型を用いて以下のプロセスで熱成形を行い、賦形粘着シート積層体1を作製した。
成形用の金型は、上下一方の金型が、
図4に示すように、長さ270mm、幅170mm、厚さ40mmの凸金型であり、上下他方の金型は、長さ270mm、幅170mm、厚さ40mmのアルミ平板であった。前記凸金型の成形面には、
図4に示すように、縦187mm、横125mm、高さ1mmの凸部を中央に設け、さらにその凸部の成形面内に、深さが25μm、50μm、75μm、100μmの4つの平面視長方形状(縦89mm、横58mm)の成形凹部を設けた。
【0129】
400℃に予熱したIRヒーターで、粘着シート積層体1の被覆部Iの表面が100℃になるまで加熱し、その加熱状態の粘着シート積層体1を、金型表面温度を30℃に冷却した成形用金型を用いて、型締圧8MPaの条件で5秒間プレス成形を行った後に金型を開き、表面に凹凸賦形してなる賦形粘着シート積層体1を作製した。
【0130】
<実施例2>
実施例1で用いた粘着シート積層体1を、400℃に予熱したIRヒーターを用いて、粘着シート積層体2の被覆部Iの表面が70℃になるまで加熱し、その加熱状態の粘着シート積層体1を、金型表面温度を30℃に冷却した成形用金型を用いて、型締圧8MPaの条件で5秒間プレス成形を行った後に金型を開き、表面に凹凸賦形してなる賦形粘着シート積層体2を作製した。
【0131】
<実施例3>
実施例1で用いた粘着シート積層体1を、400℃に予熱したIRヒーターを用いて、粘着シート積層体3の被覆部Iの表面が100℃になるまで加熱し、その加熱状態の粘着シート積層体1を、金型表面温度を50℃に調整した成形用金型を用いて、型締圧8MPaの条件で5秒間プレス成形を行った後に金型を開き、表面に凹凸賦形してなる賦形粘着シート積層体3を作製した。
【0132】
<比較例1>
実施例1で用いた粘着シート積層体1を、400℃に予熱したIRヒーターを用いて、粘着シート積層体5の被覆部Iの表面が60℃になるまで加熱し、その加熱状態の粘着シート積層体1を、金型表面温度を30℃に冷却した成形用金型を用いて、型締圧8MPaの条件で5秒間プレス成形を行プレス成形を行った後に金型を開き、表面に凹凸賦形してなる賦形粘着シート積層体4を作製した。
【0133】
<比較例2>
実施例1で用いた粘着シート積層体1を、400℃に予熱したIRヒーターを用いて、粘着シート積層体5の被覆部Iの表面が100℃になるまで加熱し、その加熱状態の粘着シート積層体1を、金型表面温度を80℃に調整した成形用金型を用いて、型締圧8MPaの条件で5秒間プレス成形を行プレス成形を行った後に金型を開き、表面に凹凸賦形してなる賦形粘着シート積層体5を作製した。
【0134】
実施例1~3及び比較例1~2で得られた賦形粘着シート積層体1~5の評価結果を表1に示した。
【0135】
【0136】
表1の結果並びにこれまで行ってきた試験結果から、実施例1乃至実施例3に示すように、被覆部Iの表面温度が70~180℃の状態で成形を開始し、被覆部Iの表面温度が60℃未満になった後で、成形を終了して金型から成形品を取り出すように成形することで、粘着材層に精度高く凹凸形状を賦形することができることを確認した。
一方、比較例1が示すように、成形開始時における被覆部Iの温度が70℃未満であると、熱成形をしても粘着材層に十分な凹凸を賦形することができなかった。
また、比較例2が示すように、成形を終了して金型から成形品を取り出す時に被覆部Iの表面温度が70℃以上であると、シートの熱収縮に伴い、成形品に反りやうねりが発生して好ましくないことが分かった。
以上のことから、より精度高く凹凸賦形をするためには、被覆部Iの表面温度が70~180℃の状態で成形を開始し、被覆部Iの表面温度が60℃未満になった後で、成形を終了して金型から成形品を取り出すように成形を行うことが好ましいことが分かった。
【0137】
よって、前記のような粘着シート積層体を用いて、被着体となる画像表示装置の印刷段差に相当する凹凸を精度良く賦形することで、被着体との間に隙間なく、且つ印刷部が狭額縁デザインのような被着体においても粘着材がオーバーフローすることなく良好に密着貼合することのできる画像表示装置用賦形粘着シート積層体が製造可能であることを確認することができた。
【0138】
また、剥離力についてみると、剥離力F(D)を測定した際の加熱冷却条件、すなわち100℃で5分間加熱後、30℃まで自然冷却させる条件は、賦形粘着シート積層体を製造する際の典型的な加熱冷却条件である。前記実施例の何れも、剥離力F(C)と剥離力F(D)の差の絶対値は0.1N/cm以下であったことから剥離力が加熱前後においてほとんど変化がないことが確認された。