(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】両面銅張積層板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20220117BHJP
B32B 37/02 20060101ALI20220117BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220117BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20220117BHJP
H05K 3/02 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
B32B15/08 A
B32B37/02
H05K1/03 670A
H05K1/03 630H
H05K3/00 R
H05K3/02 Z
(21)【出願番号】P 2017240985
(22)【出願日】2017-12-15
【審査請求日】2020-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【氏名又は名称】辻川 典範
(72)【発明者】
【氏名】富澤 基行
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/069789(WO,A1)
【文献】特開2017-125222(JP,A)
【文献】特開2009-164562(JP,A)
【文献】特開2011-255611(JP,A)
【文献】特開2004-130748(JP,A)
【文献】特開平04-329690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
H05K 1/03
H05K 3/02- 3/08
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の絶縁性フィルムの一方の面側に1回目のスパッタリングにより第1金属層を形成する第1工程と、前記第1金属層の上に1回目の電解めっきにより第2金属層を形成する第2工程と、前記絶縁性フィルムの他方の面側に2回目のスパッタリングにより第1金属層を形成する第3工程と、前記一方の面側の第2金属層の上に保護フィルムを設けた状態で、前記他方の面側に形成した第1金属層の上に2回目の電解めっきにより第2金属層を形成した後、該保護フィルムを除去する第4工程とをこれら記載順に行うことを特徴とする両面銅張積層基板の製造方法。
【請求項2】
前記保護フィルムは、前記第
2工程と前記第3工程との間、又は前記第3工程と前記第4工程との間に前記一方の面側の第2金属層の上に設けることを特徴とする、請求項1に記載の両面銅張積層基板の製造方法。
【請求項3】
前記両面銅張積層基板の両面に対して配線形成加工を施した時の寸法変化率の平均値が長手方向及び幅方向共に0.03%以下であることを特徴とする
、請求項1又は2に記載の両面銅張積層基板
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面銅張積層板とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートパソコンや携帯電話等の電子機器に用いられるフレキシブル配線基板は、銅張積層基板(CCL:Copper Clad Laminate)をパターニング加工(配線形成加工)することで作製されている。従来、この銅張積層基板は、耐熱性樹脂フィルムの片面に、ニッケル・クロム層と銅層とがこの順で成膜された片面銅張積層基板が主に使用されてきたが、近年は電子機器の高機能化や軽薄短小化等に伴い、両面に配線が形成されたフレキシブル配線基板用の両面銅張積層基板の需要が高まっている。
【0003】
この両面銅張積層基板の製造方法としては、例えば特許文献1のように、樹脂フィルムの両面にニッケル・クロム合金層と銅層とからなる積層構造の金属層をスパッタリング法により成膜した後、湿式めっき法により銅層を厚膜化する方法が開示されている。しかし、この両面銅張積層基板の両面の金属層に対してパターニング加工を行って両面に配線を形成すると、片面銅張積層基板の片面の金属層に対してパターニング加工を行って片面に配線を形成する場合に比べて基板の表面方向により大きく伸び、パターニング加工の前後で配線間の離間距離や配線の寸法がより増加する方向に変形することが知られている。
【0004】
このようなCCLのパターニング加工による配線間の離間距離や配線寸法の変化の度合い、すなわちCCLの寸法安定性を評価する方法としては、IPC-TM-650(Test Method Manual)の2.2.4が知られている。この評価方法は、予め複数のパンチ穴が穿設された試験片に対して、(1)23℃×55%RHで保管した後、該パンチ穴間の初期寸法L1を測定し、(2)金属層をエッチングで除去後、同様に23℃×55%RHで保管してから該パンチ穴間の寸法L2を測定し、(3)更に150℃×30分の加熱処理を行った上、23℃×55%RHで保管してから該パンチ穴間の寸法L3を測定する。そして、これら(1)~(3)の測定値L1、L2、及びL3を用いて算出したMethodB=(L2-L1)/L1(%)、MethodC=(L3-L1)/L1(%)を指標として評価することが行われている。
【0005】
上記の寸法変化は、通常は配線加工メーカーで行われる配線加工の前後で生じるため、ますます高密度化が進むフレキシブル配線基板の配線回路をより高い精度で作製するためには、上記の寸法変化率を指標として品質管理することが重要になりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した金属層が樹脂フィルムの片面のみに形成されている片面銅張積層基板では、樹脂フィルムにおいて該金属層が成膜されていない側の面からの吸湿により樹脂フィルムを吸湿平衡状態にできることから、上記MethodCの寸法変化率を、樹脂フィルムの幅方向(TD)では0.03±0.02%程度、長手方向(MD)では0.00±0.05%程度にすることができ、配線加工の前後の寸法変化率を±0.05%以内に抑えることができる。
【0008】
しかしながら、両面銅張積層基板では、樹脂フィルムの吸湿が両面に成膜した金属層によって阻止されるので寸法変化率(MethodC)が樹脂フィルムの幅方向(TD)では0.05±0.02%程度、長手方向(MD)では0.05±0.05%程度になり、片面銅張積層基板の場合に比べてプラス側(膨張する側)に大きく変形している。よって、両面銅張積層基板においては加工精度上の問題が生ずることがあった。本発明は、かかる両面銅張積層基板が抱える問題点に鑑みてなされたものであり、配線形成時における幅方向と長手方向の寸法変化率が抑えられた両面銅張積層基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る両面銅張積層基板の製造方法は、帯状の絶縁性フィルムの一方の面側に1回目のスパッタリングにより第1金属層を形成する第1工程と、前記第1金属層の上に1回目の電解めっきにより第2金属層を形成する第2工程と、前記絶縁性フィルムの他方の面側に2回目のスパッタリングにより第1金属層を形成する第3工程と、前記一方の面側の第2金属層の上に保護フィルムを設けた状態で、前記他方の面側に形成した第1金属層の上に2回目の電解めっきにより第2金属層を形成した後、該保護フィルムを除去する第4工程とをこれら記載順に行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来の両面銅張積層基板に比べて配線形成時における幅方向及び長手方向の寸法変化率を抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態の両面銅張積層基板の製造方法の工程フロー図が、従来の片面銅張積層基板及び両面銅張積層基板の製造方法の工程フロー図と並べて示されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
従来、片面銅張積層板を作製する場合は、
図1の左側の工程フロー図に示すように、先ず、樹脂フィルム1の片面にスパッタリングにより例えばニッケル・クロム層と銅層とからなる第1金属層2を成膜し(スパッタリング工程)次に、銅層の厚膜化のため該第1金属層2の上に電解めっきにより銅層からなる第2金属層3を成膜すること(電解めっき工程)が行われている。そして、これら第1金属層2と第2金属層3とからなる金属積層膜に対して、リソグラフィ、エッチング等の一般的なパターニング加工を行うことで所定の回路パターンを有するフレキシブル配線基板が作製されている(配線形成工程)。
【0014】
上記の種々の工程を経て作製された片面銅張積層基板に対して施される配線形成工程の前後では、任意の離間する2点間の離間距離に寸法変化が生じるのを避けることができない。その理由は、吸湿性を有する樹脂フィルムは、上記の各工程で生じる吸湿や乾燥により樹脂フィルムに伸び縮みが生じるからである。すなわち、乾燥状態にある帯状の樹脂フィルム1に予めマーキングしておいた2点間の距離がL0の場合、この樹脂フィルム1にスパッタリングにより第1金属層2を成膜すべく、例えばロール状に巻かれた帯状樹脂フィルム1をロールツーロールスパッタ装置にセットする迄の間に、大気中の湿気による吸湿により樹脂フィルム1には伸びが生じて上記2点間距離はL0からL1になり、よって該2点間はL1-L0=dL1のプラス側の寸法変化が生じる。
【0015】
上記のスパッタ装置では、減圧雰囲気の真空チャンバー内で樹脂フィルム1にスパッタリング処理を施すので当該樹脂フィルム1は乾燥により収縮し、上記2点間の距離はL1から当初の伸び0(ゼロ)の状態のL0に戻る。これにより、スパッタリング工程では伸びゼロの樹脂フィルム1に対してニッケル・クロム層と銅層とからなる第1金属層2が成膜される。上記の第1金属層2の上に銅層からなる第2金属層3を形成する次工程の電解めっき工程では、樹脂フィルム1において該電解めっきされる面とは反対側の面が露出しているため、空気中の湿気やめっき液への浸漬により吸湿し、樹脂フィルム1には伸びようとする力が働く。しかし、該樹脂フィルム1の片面には上記の第1金属層2が形成されているため自由な伸びが抑制され、上記2点間の距離はL1よりは短いL2となる。すなわち、上記2点間のL0からの伸びL2-L0=dL2は、dL1より小さくなる。
【0016】
上記の2点間の伸びdL2の片面銅張積層基板に対して、配線形成工程において所定の回路パターンを有する配線回路を形成すると、隣接する配線の間から樹脂フィルム1が露出することになるので、上記の第1金属層2及び第2金属層3からなる積層金属膜によって抑制されていた伸びが解放されると共に吸湿による自由な伸びが生じて、上記の2点間の距離はL2からL1に変化する。すなわち、配線形成工程の前後では、上記2点間の距離にL1-L2の伸び(すなわち、dL1-dL2に等しい)が生じるように変形する。
【0017】
他方、両面銅張積層基板を作製する場合は、従来、
図1の中央の工程フロー図に沿って行われていた。すなわち、先ず樹脂フィルム11の一方の面にスパッタリングにより例えばニッケル・クロム層と銅層とからなる第1金属層12Aを成膜した後(1回目のスパッタリング工程)、同様に該樹脂フィルム11の他方の面にスパッタリングによりニッケル・クロム層と銅層とからなる第1金属層12Bを成膜する(2回目のスパッタリング工程)。
【0018】
次に、銅層の厚膜化のため、樹脂フィルム11の両面に成膜した両第1金属層12A、12Bの上に、電解めっきにより銅層からなる第2金属層13A、13Bを成膜する(電解めっき工程)。そして、各面に成膜された第1金属層12A、12Bと第2金属層13A、13Bとからなる金属積層膜に対してパターニング加工を行うことで、両面に所定の回路パターンを有するフレキシブル配線基板が作成される。(配線形成工程)。
【0019】
上記の種々の工程を経て作製された両面銅張積層基板においては、2回目のスパッタリング工程までは前述した片面銅張積層基板と同様に樹脂フィルム11上の任意の離間する2点間の離間距離が変化する。すなわち、大気中の湿気による吸湿によって該2点間の距離が乾燥時のL0からL1までdL1の伸びが生じた樹脂フィルム11は、1回目のスパッタリング工程における真空チャンバー内でのスパッタリング処理による乾燥によって上記2点間の距離がL1からL0に戻り、伸び0(ゼロ)の状態の樹脂フィルム11の一方の面にニッケル・クロム層と銅層とからなる第1金属層12Aが形成される。2回目のスパッタリング工程で引き続き行われる反対面側へのスパッタリング処理においても、真空チャンバー内で行われるため、上記2点間の距離はL0からの伸び0(ゼロ)の状態のままニッケル・クロム層と銅層とからなる第1金属層12Bが形成される。
【0020】
前述した片面銅張積層基板の製造方法では、スパッタリング工程の次に行われる電解めっき工程の際、樹脂フィルムの片面が露出しているので該樹脂フィルム11に吸湿が生じるが、両面に第1金属層12A、12Bが形成された樹脂フィルム11に銅層の厚膜化のため電解めっきによって第2金属層13A、13Bを形成する場合は、上記の両面の第1金属層12A、12Bによって樹脂フィルム11の吸湿が阻止されるので、伸びが0(ゼロ)のままの状態で電解めっき処理が行われることになる。
【0021】
このようにして作製された両面銅張積層基板に対して、配線形成工程において所定の回路パターンを有する配線回路を形成すると、隣接する配線の間から樹脂フィルム11が露出することになるので、上記の両面の第1金属層12A、12B及び第2金属層13A、13Bからなる積層金属層によって抑制されていた伸びが解放されて上記の2点間の距離はL0からL1までdL1の伸びを生じることになる。このように、配線形成工程の前後において、片面銅張積層基板ではL1-L2の伸び(すなわちdL1-dL2に等しい)が生じるのに対して、両面銅張積層基板ではこれより大きいL1-L0の伸び(すなわちdL1に等しい)が生じるため、高密度化された回路パターンを形成する際に精度上の問題が生じることがあった。
【0022】
そこで、本発明の実施形態の両面銅張積層基板の製造方法においては、
図1の右側の工程フローに沿って製造を行っている。すなわち、この本発明の実施形態の製造方法は、樹脂フィルム11の片方の面に第1及び第2金属層を成膜するまでは前述した片面銅張積層基板の製造方法と同様であり、先ず樹脂フィルム11の一方の面にスパッタリングにより例えばニッケル・クロム層と銅層とからなる第1金属層12Aを成膜した後(1回目のスパッタリング工程)、銅層の厚膜化のため該第1金属層12Aの上に電解めっきにより銅層からなる第2金属層13Aを成膜する(1回目の電解めっき工程)。
【0023】
次に、上記の第2金属層13Aが後述する2回目の電解めっき工程で更に厚膜化されるのを防ぐため、該第2金属層13Aの表面に保護フィルム14を貼り付けた後、樹脂フィルム11の他方の面に上記と同様にスパッタリングによりニッケル・クロム層と銅層とからなる第1金属層12Bを成膜する(2回目のスパッタリング工程)。次に、銅層の厚膜化のため、該第1金属層12Bの上に電解めっきにより銅層からなる第2金属層13Bを成膜する(2回目の電解めっき工程)。
【0024】
上記の第2金属層13Bの成膜後は、第2金属層13Aの表面の保護フィルム14を取り除く。以降は前述した従来の製造方法で作製した両面銅張積層基板の場合と同様に、各面に成膜された第1金属層12A、12Bと第2金属層13A、13Bとからなる金属積層膜に対してパターニング加工を行うことで、両面に所定の回路パターンを有するフレキシブル配線基板が作製される(配線形成工程)。
【0025】
なお、上記の本発明の実施形態の製造方法は、2回目のスパッタリング工程の前に第2金属層13Aの表面に保護フィルム14を貼り付けたが、例えばスパッタリング工程を行うスパッタ装置に、樹脂フィルムをキャンロールの外周面に巻き付けて裏面側から冷却しながら表面側からスパッタ成膜を行うロールツーロール方式のスパッタリングウェブコータを用いる場合は、成膜面とは反対側の裏面には成膜されないので、2回目のスパッタリング工程と2回目の電解めっき工程との間に保護フィルム14を貼り付けてもよい。
【0026】
上記の本発明の実施形態の製造方法で作製された両面銅張積層基板においては、1回目の電解めっき工程までは前述した片面銅張積層基板の場合と同様に樹脂フィルム11上の任意の離間する2点間の離間距離が変化する。すなわち、大気中の湿気による吸湿によって該2点間の距離が乾燥時のL0からL1までdL1の伸びが生じた樹脂フィルム11は1回目のスパッタリング工程における真空チャンバー内でのスパッタリングによる乾燥によって上記2点間の距離がL1からL0に戻り、伸び0(ゼロ)の状態の樹脂フィルム11の一方の面にニッケル・クロム層と銅層とからなる第1金属層12Aが成膜される。
【0027】
上記の第1金属層12Aの上に銅層からなる第2金属層13Aを形成する電解めっき工程では、樹脂フィルム11において該第2金属層13Aが成膜される面とは反対側の面が露出しているものの、該樹脂フィルム11の片面側は上記の第1金属層12Aが形成されているので自由な伸びが抑制されるため、上記2点間の距離はL1より短いL2となる。すなわち、上記2点間のL0からの伸びはdL1より小さいdL2に留まる。
【0028】
次に、上記したdL2の伸びが生じた樹脂フィルム11において第1及び第2金属層12A、13Aが成膜されている面とは反対側の面にスパッタリング工程で第1金属層12Bを形成する際、真空チャンバー内でのスパッタリングによる乾燥によって樹脂フィルム11には収縮する力が働くが、上記のように片面側には第1及び第2金属層12A、13Aが成膜されているので自由な伸縮が制限され、上記2点間の伸びは0(ゼロ)には戻らず、該2点間の距離はL2よりは短いL3となる。すなわち、該2点間にdL2より小さいdL3の伸びが生じた状態の樹脂フィルム11に対して第1金属層12Bが形成される。次に上記の第1金属層12Bの上に電解めっき工程で第2金属層13Bを形成する際、樹脂フィルム11の両面に金属層が形成されているため、上記のdL3の伸びが維持されたまま、第2金属層13Bが形成される。
【0029】
このように作製された両面銅張積層基板に対して、配線形成工程において保護フィルム14の剥離後に所定の回路パターンを有する配線回路を形成すると、隣接する配線間から樹脂フィルム11が露出するので上記2点間の距離はL3からL1までの伸びを生じる。このように本発明の実施形態の両面銅張積層基板の製造方法では、配線形成工程における2点間の距離の変化がL1-L3(すなわちdL1-dL3に等しい)となり、この変化は従来の両面銅張積層基板の配線形成工程時の変化であるL1-L0(すなわちdL1に等しい)よりも小さい。つまり、本発明の実施形態の製造方法を構成する各工程は従来の製造方法と同じであっても、金属層を形成する順序を変更することによって、配線形成時における寸法変化の小さい両面銅張積層基板が得られる。
【実施例】
【0030】
帯状の絶縁性フィルムとして、カタログ値において吸湿膨張係数(CHE)がTD:5ppm/%RH、MD:10ppm/%RHの宇部興産株式会社製の厚み35μmの長尺のポリイミドフィルムUpilex-35CV1(登録商標)を用意し、このポリイミドフィルムに対して
図1に示す工程フロー図に沿って片面銅張積層基板(片面CCL)と、従来技術による両面銅張積層基板(両面CCL)と、本発明の実施形態の両面銅張積層基板(両面CCL)とをそれぞれ作製した。
【0031】
得られた片面CCL又は両面CCLの各々に対して、任意の場所から切り取った3枚の試験片の配線形成時の寸法変化をIPC-TM-650の2.2.4のMethodCに準拠した寸法変化率で評価した。なお、
図1のスパッタリング工程では一般的なロールツーロール方式のスパッタリングウェブコータを使用し、電解めっき工程においても一般的なロールツーロール方式の電解めっき装置を用いた。また、保護フィルムには、トーヨーケム株式会社製のLE951F-NJを用いた。
【0032】
上記の評価の結果、片面CCL(銅厚8.5μm)では寸法変化率は、TD:0.03±0.02%、MD:0.00±0.05%となり、従来技術で製作した両面CCL(銅厚2.0μm)ではTD:0.05±0.02%、MD:0.05±0.05%の値となった。一方、本発明の実施形態の製造方法で製作した両面CCL(銅厚2.0μm)では、TD:0.02±0.02%、MD:0.01±0.05%となった。このように、従来の両面銅張積層基板は配線形成時の寸法変化率の平均値が幅方向0.05%、長手方向0.05%といずれも0.03%を超えたのに対して、本発明の実施例の両面銅張積層基板は配線形成時の寸法変化率の平均値が幅方向0.02%、長手方向0.01%といずれも0.03%以下の低い値に抑えることができることから、本発明によれば高密度化に対応するファインピッチ配線基板に適した寸法安定性に優れた両面銅張積層基板が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0033】
1 樹脂フィルム
2 第1金属層
3 第2金属層
11 樹脂フィルム
12A、12B 第1金属層
13A、13B 第2金属層
14 保護フィルム