(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】組成物およびそれを用いた有機薄膜トランジスタ
(51)【国際特許分類】
C08G 61/12 20060101AFI20220117BHJP
C08K 3/10 20180101ALI20220117BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20220117BHJP
C08L 65/00 20060101ALI20220117BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
C08G61/12
C08K3/10
C08K3/32
C08L65/00
H01L29/78 618B
(21)【出願番号】P 2017563807
(86)(22)【出願日】2017-01-26
(86)【国際出願番号】 JP2017002673
(87)【国際公開番号】W WO2017131074
(87)【国際公開日】2017-08-03
【審査請求日】2019-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2016015249
(32)【優先日】2016-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】金坂 将
(72)【発明者】
【氏名】吉田 秀和
(72)【発明者】
【氏名】樫木 友也
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/013460(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G61/00-61/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1-1)で表される構造単位、式(1-2)で表される構造単位または式(1-3)で表される構造単位を含む高分子化合物と、
Pdを含む化合物、Pを含む化合物、ならびにPdおよびPを含む化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物とを有する組成物であって、高分子化合物の含有率が95質量%以上であり、Pdの含有率が1.1質量ppm以上50質量ppm以下であり、かつ、Pの含有率が11質量ppm以上60質量ppm以下である組成物。
〔式中、
環Cは、置換基を有していてもよいベンゼン環、置換基を有していてもよいナフタレン環、または置換基を有していてもよいベンゾチオフェン環を表す。
Z
1は、式(Z-1)で表される基を表す。複数存在するZ
1は、互いに同一でも異なっていてもよい。
〔式中、
R
1は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30のシクロアルキル基または置換基を有していてもよい炭素原子数6~30のアリール基を表す。R
1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
X
1は、硫黄原子を表す。
Y
1は、-CH=で表される基を表す。〕
【請求項2】
式(1-1)で表される構造単位、式(1-2)で表される構造単位または式(1-3)で表される構造単位を含む高分子化合物と、
Pdを含む化合物、Pを含む化合物、ならびにPdおよびPを含む化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物とを有する組成物であって、高分子化合物の含有率が95質量%以上であり、Pdの含有率が1.1質量ppm以上50質量ppm以下であり、かつPの含有率が11質量ppm以上30質量ppm以下である組成物。
〔式中、
環Cは、置換基を有していてもよいベンゼン環、置換基を有していてもよいナフタレン環、または置換基を有していてもよいベンゾチオフェン環を表す。
Z
1
は、式(Z-1)で表される基を表す。複数存在するZ
1
は、互いに同一でも異なっていてもよい。
〔式中、
R
1
は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30のシクロアルキル基または置換基を有していてもよい炭素原子数6~30のアリール基を表す。R
1
が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
X
1
は、硫黄原子を表す。
Y
1
は、-CH=で表される基を表す。〕
【請求項3】
式(2)で表される構造単位(但し
、式(1)で表される構造単位とは異なる。)をさらに含む、請求項1または2に記載の組成物。
〔式中、Arは、置換基を有していてもよい炭素原子数6~60のアリーレン基または置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の2価のヘテロ環基を表す。これらの基が有していてもよい置換基は、下記群2から選ばれる。但し、式(2)で表される構造単位は、式(1)で表される構造単位とは異なる。
群2:炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数1~30のアルコキシ基、炭素原子数3~30のシクロアルコキシ基、炭素原子数1~30のアルキルチオ基、炭素原子数3~30のシクロアルキルチオ基、炭素原子数6~30の1価のアリール基、炭素原子数2~30の1価のヘテロ環基およびハロゲン原子。〕
〔式中、
環Aおよび環Bは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数2~30のヘテロ環を表す。
環Cは、置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環または置換基を有していてもよい炭素原子数2~30のヘテロ環を表す。これらの基が有していてもよい置換基は、下記群1から選ばれる。
Z
1
は、式(Z-1)で表される基、式(Z-2)で表される基、式(Z-3)で表される基、式(Z-4)で表される基または式(Z-5)で表される基を表す。複数存在するZ
1
は、互いに同一でも異なっていてもよい。
群1:炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数1~30のアルコキシ基、炭素原子数3~30のシクロアルコキシ基、炭素原子数1~30のアルキルチオ基、炭素原子数3~30のシクロアルキルチオ基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数2~30の1価のヘテロ環基、ハロゲン原子、-Si(R’)
3
で表される基(2つのR’はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基又はアルキル基を有していてもよい炭素原子数2~30の1価のヘテロ環基を表す。)、-N(R’)
2
(2つのR’は前述と同じ意味を表す。)で表される基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数3~30のシクロアルケニル基、炭素原子数2~30のアルキニル基、炭素原子数3~30のシクロアルキニル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、炭素原子数2~30のアルキルカルボニル基、炭素原子数4~30のシクロアルキルカルボニル基、炭素原子数2~30アルコキシカルボニル基、炭素原子数4~30のシクロアルコキシカルボニル基。〕
〔式中、
R
1
は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30のシクロアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30のシクロアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6~30のアリール基または置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の1価のヘテロ環基を表す。R
1
が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。〕
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物と、有機溶媒とを含み、(組成物の質量)/(組成物および有機溶媒の質量)×100の値が0.1質量%以上20質量%以下であるインク組成物。
【請求項5】
ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、有機半導体層およびゲート絶縁層を有する有機薄膜有機トランジスタであって、前記有機半導体層が、請求項1~3のいずれか一項記載の組成物を含む、有機薄膜トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物およびそれを用いた有機薄膜トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料を用いた有機薄膜トランジスタは、従来の無機半導体材料を用いたトランジスタと比較して、低温で製造できるほか、デバイスの軽量化や製造コストの低下が期待されるため、盛んに研究開発が行われている。有機半導体材料に用いられる組成物としては、Pdを含む化合物と下記式で表される高分子化合物とを含み、組成物中のPdの含有率が508~3124ppmである組成物が報告されている(非特許文献1)。
また、これらの組成物において、組成物中のPdの含有率は電界効果移動度に影響しないことが報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Org.Electron.、2009、10、215-221
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、有機半導体材料の種類によっては、その有機半導体材料を用いた有機薄膜トランジスタは、電界効果移動度が必ずしも十分ではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、電界効果移動度が高い有機薄膜トランジスタの製造に有用な組成物及び当該有機薄膜トランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のとおりである。
【0007】
[1]式(1)で表される構造単位を含む高分子化合物と、
Pdを含む化合物、Pを含む化合物、ならびにPdおよびPを含む化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物とを有する組成物であって、高分子化合物の含有率が95質量%以上であり、Pdの含有率が50質量ppm以下であり、かつPの含有率が60質量ppm以下である組成物。
【0008】
【化1】
〔式中、
環Aおよび環Bは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数2~30のヘテロ環を表す。
環Cは、置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環または置換基を有していてもよい炭素原子数2~30のヘテロ環を表す。これらの基が有していてもよい置換基は、下記群1から選ばれる。
Z
1は、式(Z-1)で表される基、式(Z-2)で表される基、式(Z-3)で表される基、式(Z-4)で表される基または式(Z-5)で表される基を表す。複数存在するZ
1は、互いに同一でも異なっていてもよい。
群1:炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数1~30のアルコキシ基、炭素原子数3~30のシクロアルコキシ基、炭素原子数1~30のアルキルチオ基、炭素原子数3~30のシクロアルキルチオ基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数2~30の1価のヘテロ環基、ハロゲン原子、-Si(R’)
3で表される基(3つのR’はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基又はアルキル基を有していてもよい炭素原子数2~30の1価のヘテロ環基を表す。)、-N(R’)
2(2つのR’は前述と同じ意味を表す。)で表される基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数3~30のシクロアルケニル基、炭素原子数2~30のアルキニル基、炭素原子数3~30のシクロアルキニル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、炭素原子数2~30のアルキルカルボニル基、炭素原子数4~30のシクロアルキルカルボニル基、炭素原子数2~30アルコキシカルボニル基、炭素原子数4~30のシクロアルコキシカルボニル基。〕
【0009】
【化2】
〔式中、
R
1は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30のシクロアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30のシクロアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6~30のアリール基または置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の1価のヘテロ環基を表す。R
1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。〕
[2] 式(1)で表される構造単位を含む高分子化合物と、
Pdを含む化合物、Pを含む化合物、ならびにPdおよびPを含む化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物とを有する組成物であって、高分子化合物の含有率が95質量%以上であり、Pdの含有率が50質量ppm以下であり、かつPの含有率が30質量ppm以下である[1]に記載の組成物。
[3]前記式(1)で表される構造単位が、式(1-1)で表される構造単位、式(1-2)で表される構造単位または式(1-3)で表される構造単位である、[1]または[2]記載の組成物。
【0010】
【化3】
〔式中、
環CおよびZ
1は、前記と同じ意味を表す。
X
1は、酸素原子、硫黄原子またはセレン原子を表す。複数存在するX
1は、互いに同一でも異なっていてもよい。
Y
1は、窒素原子または-CR
2=(R
2は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30のシクロアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30のシクロアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の1価のヘテロ環基またはハロゲン原子を表す。)で表される基を表す。複数存在するY
1は、互いに同一でも異なっていてもよい。〕
[4]前記式(1)における環Aおよび環Bがそれぞれ独立に置換基を有していてもよい、5員環および/または6員環のヘテロ環から構成されている炭素原子数3~10のヘテロ環である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の組成物。
[5]前記式(1)における環Aおよび環Bが同一であり、置換基を有していてもよいチオフェン環または置換基を有していてもよいチエノチオフェン環である、[4]に記載の組成物。
[6]前記環Cが、置換基を有していてもよいベンゼン環、置換基を有していてもよいナフタレン環、置換基を有していてもよいベンゾジチオフェン環、置換基を有していてもよいベンゾチオフェン環、またはチエノチオフェン環である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の組成物。
[7]前記環Cが、置換基を有していてもよいベンゼン環、または置換基を有していてもよいナフタレン環である、[6]記載の組成物。
[8]前記X
1が、硫黄原子である、[3]、[6]または[7]記載の組成物。
[9]前記Y
1が、-CH=で表される基である、[3]、[6]、[7]または[8]記載の組成物。
[10]前記Z
1が、前記式(Z-1)で表される基である、[1]~[9]のいずれか記載の組成物。
[11]前記式(1)で表される構造単位を含む高分子化合物が、式(2)で表される構造単位(但し、前記式(1)で表される構造単位とは異なる。)をさらに含む、[1]~[10]のいずれか一項に記載の組成物。
【0011】
【化4】
〔式中、Arは、置換基を有していてもよい炭素原子数6~60のアリーレン基または置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の2価のヘテロ環基を表す。これらの基が有していてもよい置換基は、下記群2から選ばれる。但し、式(2)で表される構造単位は、式(1)で表される構造単位とは異なる。
群2:炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数1~30のアルコキシ基、炭素原子数3~30のシクロアルコキシ基、炭素原子数1~30のアルキルチオ基、炭素原子数3~30のシクロアルキルチオ基、炭素原子数6~30の1価のアリール基、炭素原子数2~30の1価のヘテロ環基およびハロゲン原子。〕
[12][1]~[11]のいずれか一項記載の組成物と、有機溶媒とを含み、(組成物の質量)/(組成物および有機溶媒の質量)×100の値が0.1質量%以上20質量%以下であるインク組成物。
[13]ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、有機半導体層およびゲート絶縁層を有する有機薄膜有機トランジスタであって、前記有機半導体層が、[1]~[11]のいずれか記載の組成物を含む、有機薄膜トランジスタ。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【
図2】第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【
図3】第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【
図4】第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【
図5】第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【
図6】第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【
図7】第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタの模式断面図である。
【
図8】高分子化合物に含有されるPdの量に対する実施例7~9、比較例6~8の有機薄膜トランジスタを用いて測定された移動度の依存性を示すグラフである。
【
図9】高分子化合物に含有されるPの量に対する実施例7~9、比較例6~8の有機薄膜トランジスタを用いて測定された移動度の依存性を示すグラフである。
【
図10】高分子化合物に含有されるPdの量に対する実施例10~14、比較例9~12の有機薄膜トランジスタを用いて測定された移動度の依存性を示すグラフである。
【
図11】高分子化合物に含有されるPの量に対する実施例10~14、比較例9~12の有機薄膜トランジスタを用いて測定された移動度の依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、必要に応じて図面を参照することにより、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
<共通する用語の説明>
以下、本明細書で共通して用いられる用語は、特記しない限り、以下の意味である。
【0015】
(PdおよびP)
PdおよびPは、それぞれパラジウム原子およびリン原子を意味する。
Pdを含む化合物は、Pdを含み、Pを含まない化合物を意味し、Pを含む化合物は、Pを含み、Pdを含まない化合物を意味する。
【0016】
(炭素原子数)
炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。
【0017】
(ヘテロ環)
ヘテロ環の炭素原子数は、2~30であり、2~14であることが好ましく、3~10であることがより好ましい。
ヘテロ環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、チエノチオフェン環、2,1,3-ベンゾチアジアゾール環が挙げられる。
【0018】
(芳香族炭化水素環)
芳香族炭化水素環の炭素原子数は、6~30であり、6~24であることが好ましく、6~18であることがより好ましい。
芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環、フルオレン環が挙げられる。
【0019】
(アルキル基)
アルキル基は、直鎖アルキル基または分岐アルキル基のいずれでもよい。
直鎖アルキル基が有する炭素原子数は、通常1~30であり、1~20であることが好ましい。分岐アルキル基が有する炭素原子数は、通常3~30であり、3~20であることが好ましい。
直鎖アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ドデシル基、n-ヘキサデシル基等が挙げられる。分岐アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基等が挙げられる。
【0020】
(シクロアルキル基)
シクロアルキル基が有する炭素原子数は、通常3~30であり、3~20であることが好ましい。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0021】
(アルコキシ基)
アルコキシ基は、直鎖アルコキシ基または分岐アルコキシ基のいずれでもよい。
直鎖アルコキシ基が有する炭素原子数は、通常1~30であり、1~20であることが好ましい。分岐アルコキシ基が有する炭素原子数は、通常3~30であり、3~20であることが好ましい。
直鎖アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-オクチルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基等が挙げられ、分岐アルコキシ基としては、イソプロピルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基等が挙げられる。
【0022】
(シクロアルコキシ基)
シクロアルコキシ基が有する炭素原子数は、通常3~30であり、3~20であることが好ましい。
シクロアルコキシ基としては、例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0023】
(アルキルチオ基)
アルキルチオ基は、直鎖アルキルチオ基または分岐アルキルチオ基のいずれでもよい。
直鎖アルキルチオ基が有する炭素原子数は、通常1~30であり、1~20であることが好ましい。分岐アルキルチオ基が有する炭素原子数は、通常3~30であり、3~20であることが好ましい。
直鎖アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、n-ヘキシルチオ基、n-オクチルチオ基、n-ドデシルチオ基、n-ヘキサデシルチオ基等が挙げられる。分岐アルキルチオ基としては、イソプロピルチオ基、イソブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、tert-ブチルチオ基、2-エチルヘキシルチオ基、3,7-ジメチルオクチルチオ基等が挙げられる。
【0024】
(シクロアルキルチオ基)
シクロアルキルチオ基が有する炭素原子数は、通常3~30であり、3~20であることが好ましい。
シクロアルキルチオ基としては、例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基が挙げられる。
【0025】
(アリール基)
アリール基は、芳香族炭化水素から、環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団であり、縮合環を有する基、ベンゼン環および縮合環からなる群から選ばれる2個以上が直接結合した基を含む。
アリール基が有する炭素原子数は、通常6~30であり、6~20であることが好ましい。
アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、4-フルオレニル基、4-フェニルフェニル基が挙げられる。
【0026】
(1価のヘテロ環基)
1価のヘテロ環基は、ヘテロ環式化合物から、環を構成する炭素原子またはヘテロ原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団であり、縮合環を有する基、ヘテロ環および縮合環からなる群から選ばれる2個以上が直接結合した基を含む。
1価のヘテロ環基が有する炭素原子数は、通常2~30であり、3~20であることが好ましい。
1価のヘテロ環基としては、例えば、2-フリル基、3-フリル基、2-チエニル基、3-チエニル基、2-ピロリル基、3-ピロリル基、2-オキサゾリル基、2-チアゾリル基、2-イミダゾリル基、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、2-ベンゾフリル基、2-ベンゾチエニル基、2-チエノチエニル基、4-(2,1,3-ベンゾチアジアゾリル)基が挙げられる。
【0027】
(ハロゲン原子)
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を意味する。
【0028】
(-Si(R’)3で表される基)
-Si(R’)3で表される基(3つのR’はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基又はアルキル基を有していてもよい炭素原子数2~30の1価のヘテロ環基を表す。)としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、フェニルシリル基、トリフェニルシリル基が挙げられる。
【0029】
(-N(R’)2で表される基)
-N(R’)2(2つのR’は前述と同じ意味を表す。)で表される基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジフェニルアミノ基が挙げられる。
【0030】
(アルケニル基)
アルケニル基は、直鎖アルケニル基または分岐アルケニル基のいずれでもよい。
直鎖アルケニル基が有する炭素原子数は、通常2~30であり、2~20であることが好ましい。分岐アルケニル基が有する炭素原子数は、通常3~30であり、3~20であることが好ましい。
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ヘキセニル基、1-ドデセニル基、1-ヘキサデセニル基が挙げられる。
【0031】
(シクロアルケニル基)
シクロアルケニル基が有する炭素原子数は、通常3~30であり、3~20であることが好ましい。
シクロアルケニル基としては、例えば、1-シクロヘキセニル基が挙げられる。
【0032】
(アルキニル基)
アルキニル基は、直鎖アルキニル基または分岐アルキニル基のいずれでもよい。
直鎖アルキニル基が有する炭素原子数は、通常2~30であり、2~20であることが好ましい。分岐アルキニル基が有する炭素原子数は、通常4~30であり、4~20であることが好ましい。
アルキニル基としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、1-ヘキシニル基、1-ドデシニル基、1-ヘキサデシニル基が挙げられる。
【0033】
(シクロアルキニル基)
シクロアルキニル基が有する炭素原子数は、通常3~30であり、3~20であることが好ましい。
【0034】
(アルキルカルボニル基)
アルキルカルボニル基は、直鎖アルキルカルボニル基または分岐アルキルカルボニル基のいずれでもよい。
例えば、上記のアルキル基とカルボニル基とが結合した基が挙げられる。
直鎖アルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル基、n-プロパノイル基、n-ブタイル基、n-ヘキサノイル基、n-オクタノイル基、n-ドデカノイル基、n-ヘキサデカノイル基等が挙げられる。分岐アルキルカルボニル基としては、例えば、イソブタノイル基、sec-ブタノイル基、tert-ブタノイル基、2-エチルヘキサノイル基等が挙げられる。
【0035】
(シクロアルキルカルボニル基)
例えば、上記のシクロアルキル基とカルボニル基とが結合した基が挙げられる。
シクロアルキルカルボニル基としては、例えば、シクロペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基が挙げられる。
【0036】
(アルコキシカルボニル基)
アルコキシカルボニル基は、直鎖アルコキシカルボニル基または分岐アルコキシカルボニル基のいずれでもよい。
アルコキシカルボニル基としては、例えば、上記のアルコキシ基とカルボニル基とが結合した基が挙げられる。
直鎖アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロピルオキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基、n-ヘキシルオキシカルボニル基、n-オクチルオキシカルボニル基、n-ドデシルオキシカルボニル基、n-ヘキサデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。分岐アルコキシカルボニル基としては、例えば、イソプロピルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec-ブチルオキシカルボニル基、tert-ブチルオキシカルボニル基、2-エチルヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0037】
(シクロアルコキシカルボニル基)
シクロアルコキシカルボニル基としては、例えば、上記のシクロアルコキシ基とカルボニル基とが結合した基が挙げられる。
シクロアルコキシカルボニル基としては、例えば、シクロペンチルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0038】
(アリーレン基)
アリーレン基は、芳香族炭化水素から、環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団であり、縮合環を有する基、ベンゼン環および縮合環からなる群から選ばれる2個以上が直接結合した基、ベンゼン環および縮合環からなる群から選ばれる2個以上がビニレン等を介して結合した基を含む。アリーレン基が有する炭素原子数は、通常6~60であり、6~20であることが好ましい。
【0039】
(2価のヘテロ環基)
2価のヘテロ環基は、ヘテロ環式化合物から、環を構成する炭素原子またはヘテロ原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団であり、縮合環を有する基、ヘテロ環および縮合環からなる群から選ばれる2個以上が直接結合した基を含む。2価のヘテロ環基が有する炭素原子数は、通常2~30であり、3~20であることが好ましい。
【0040】
<組成物>
本発明に係る組成物は、
式(1)で表される構造単位を含む高分子化合物と、
Pdを含む化合物、Pを含む化合物、ならびにPdおよびPを含む化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物とを有する組成物であって、高分子化合物の含有率が95質量%以上であり、Pdの含有率が50質量ppm以下であり、Pの含有率が60質量ppm以下である。
本発明に係る組成物は、
式(1)で表される構造単位を含む高分子化合物と、
Pdを含む化合物、Pを含む化合物、ならびにPdおよびPを含む化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物とを有する組成物であって、高分子化合物の含有率が95質量%以上であり、Pdの含有率が50質量ppm以下であり、かつPの含有率が30質量ppm以下であってもよい。また、適度な不純物が存在すると式(1)で表される構造単位を含む高分子化合物が規則構造を形成することを阻害し、アモルファス性を高める傾向があることからPdおよびPの合計の含有率が0.01質量ppm以上であることが好ましく、0.1質量ppm以上であることがより好ましい。
【0041】
<高分子化合物>
(第1構造単位)
本発明の組成物が有する高分子化合物は、式(1)で表される構造単位(以下、「第1構造単位」ということがある。)を含む。第1構造単位は、高分子化合物中に一種のみ含まれていても二種以上含まれていてもよい。高分子化合物は、共役高分子化合物であることが好ましい。
【0042】
【化5】
〔式中、
環Aおよび環Bは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数2~30のヘテロ環を表す。
環Cは、置換基を有していてもよい炭素原子数6~30の芳香族炭化水素環または置換基を有していてもよい炭素原子数2~30のヘテロ環を表す。これらの基が有していてもよい置換基は、下記群1から選ばれる。
Z
1は、式(Z-1)で表される基、式(Z-2)で表される基、式(Z-3)で表される基、式(Z-4)で表される基または式(Z-5)で表される基を表す。複数存在するZ
1は、互いに同一でも異なっていてもよい。
群1:炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数1~30のアルコキシ基、炭素原子数3~30のシクロアルコキシ基、炭素原子数1~30のアルキルチオ基、炭素原子数3~30のシクロアルキルチオ基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数2~30の1価のヘテロ環基、ハロゲン原子、-Si(R’)
3で表される基(3つのR’はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基又はアルキル基を有していてもよい炭素原子数2~30の1価のヘテロ環基を表す。)、-N(R’)
2(2つのR’は前述と同じ意味を表す。)で表される基、炭素原子数2~30のアルケニル基、炭素原子数3~30のシクロアルケニル基、炭素原子数2~30のアルキニル基、炭素原子数3~30のシクロアルキニル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、炭素原子数2~30のアルキルカルボニル基、炭素原子数4~30のシクロアルキルカルボニル基、炭素原子数2~30アルコキシカルボニル基、炭素原子数4~30のシクロアルコキシカルボニル基。〕
【0043】
【化6】
〔式中、
R
1は、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30のシクロアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30のシクロアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6~30のアリール基または置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の1価のヘテロ環基を表す。R
1が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。〕
【0044】
R1で表されるアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子が挙げられる。
R1で表されるアルコキシ基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子が挙げられる。
R1で表されるアルキルチオ基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子が挙げられる。
R1で表されるアリール基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、1価のヘテロ環基、ハロゲン原子が挙げられる。置換基を有しているアリール基としては、例えば、4-ヘキサデシルフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。アリール基が置換基を有する場合、置換基としてはアルキル基が好ましい。
R1で表されるヘテロ環基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリール基、ハロゲン原子が挙げられる。置換基を有している1価のヘテロ環基としては、例えば、5-オクチル-2-チエニル基、5-フェニル-2-フリル基が挙げられる。1価のヘテロ環基が置換基を有する場合、置換基としてはアルキル基が好ましい。
【0045】
(環Aおよび環Bについて)
式(1)中、本発明の高分子化合物の合成が容易となるため、環Aおよび環Bは、同一のヘテロ環であることが好ましい。
【0046】
本発明の組成物を用いて製造される有機薄膜トランジスタの電界効果移動度がより優れるため、環Aおよび環Bは、それぞれ独立に置換基を有していてもよい、5員環および/または6員環のヘテロ環から構成されていることが好ましく、それぞれ独立に置換基を有していてもよい、5員環および/または6員環のヘテロ環から構成されている炭素原子数3~10のヘテロ環であることがより好ましい。
このようなヘテロ環の例としては、置換基を有していてもよい5員環のヘテロ環、置換基を有していてもよい6員環のヘテロ環、置換基を有していてもよい5員環のヘテロ環が2個以上縮合して構成されるヘテロ環、置換基を有していてもよい6員環のヘテロ環が2個以上縮合して構成されるヘテロ環、置換基を有していてもよい5員環のヘテロ環1個以上と、置換基を有していてもよい6員環のヘテロ環1個以上とが縮合して構成されるヘテロ環が挙げられる。ここに置換基を有していてもよい5員環のヘテロ環としては置換基を有していてもよいチオフェン環が好ましい。
本発明の組成物を用いて製造される有機薄膜トランジスタの電界効果移動度をより向上させる観点から置換基を有していてもよい5員環のヘテロ環のみから構成されていることがさらに好ましく、溶解性を低下させないためには置換基を有していてもよいチオフェン環、または置換基を有していてもよいチエノチオフェン環であることが特に好ましい。
【0047】
(環Cについて)
式(1)中、環Cは、本発明の組成物を用いて製造される有機薄膜トランジスタの電界効果移動度がより優れるため、芳香族炭化水素環またはヘテロ環であることが好ましく、置換基を有していてもよいベンゼン環、置換基を有していてもよいナフタレン環、置換基を有していてもよいベンゾジチオフェン環、置換基を有していてもよいベンゾチオフェン環、チエノチオフェン環がより好ましく、置換基を有していてもよいベンゼン環、置換基を有していてもよいナフタレン環、または置換基を有していてもよいベンゾチオフェン環が特に好ましい。
【0048】
環Cは、置換基として、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数1~30のアルコキシ基、炭素原子数3~30のシクロアルコキシ基、炭素原子数1~30のアルキルチオ基、炭素原子数3~30のシクロアルキルチオ基、-N(R’)2で表される基(2つのR’は前述と同じ意味を表す。)またはヒドロキシ基を有することが好ましく、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数1~30のアルコキシ基または炭素原子数3~30のシクロアルコキシ基を有することがより好ましく、炭素原子数1~30のアルコキシ基または炭素原子数3~30のシクロアルコキシ基を有することがさらに好ましい。
【0049】
(Z1について)
式(1)中、本発明の高分子化合物の合成が容易となるため、複数存在するZ1は、同一の基であることが好ましい。
【0050】
本発明の組成物を用いて製造される有機薄膜トランジスタの電界効果移動度がより優れるため、Z1は、式(Z-1)または式(Z-2)で表される基であることが好ましく、式(Z-1)で表される基であることがより好ましい。
【0051】
式(Z-1)~式(Z-5)中、本発明の組成物を用いて製造される有機薄膜トランジスタの電界効果移動度をより向上させる観点から、R1は、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基または炭素原子数6~30のアリール基であることが好ましい。
【0052】
本発明の組成物を用いて製造される有機薄膜トランジスタの電界効果移動度をより向上させる観点から、式(1)で表される構造単位は、式(1-1)で表される構造単位、式(1-2)で表される構造単位または式(1-3)で表される構造単位であることが好ましく、式(1-1)で表される構造単位であることがより好ましい。
【0053】
【化7】
〔式中、
環CおよびZ
1は、前記と同じ意味を表す。
X
1は、酸素原子、硫黄原子またはセレン原子を表す。複数存在するX
1は、互いに同一でも異なっていてもよい。
Y
1は、窒素原子または-CR
2=(R
2は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30のシクロアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30のシクロアルキルチオ基、置換基を有していてもよい炭素原子数6~30のアリール基、置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の1価のヘテロ環基またはハロゲン原子を表す。)で表される基を表す。複数存在するY
1は、互いに同一でも異なっていてもよい。〕
【0054】
R2で表されるアルキル基が有していてもよい置換基としては、R1で表されるアルキル基が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
R2で表されるアルコキシ基が有していてもよい置換基としては、R1で表されるアルコキシ基が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
R2で表されるアルキルチオ基が有していてもよい置換基としては、R1で表されるアルキルチオ基が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
R2で表されるアリール基が有していてもよい置換基としては、R1で表されるアリール基が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
R2で表されるヘテロ環基が有していてもよい置換基としては、R1で表されるヘテロ環基が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0055】
本発明の組成物を用いて製造される有機薄膜トランジスタの電界効果移動度をより向上させる観点から、X1は硫黄原子であることが好ましい。
【0056】
式(1)で表される構造単位を含む高分子化合物の合成が容易となるため、Y1は-CR2=で表される基であることが好ましく、R2は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30のシクロアルコキシ基またはハロゲン原子であることが好ましく、水素原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~30のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数3~30のシクロアルキル基またはハロゲン原子であることがより好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
【0057】
式(1)で表される構造単位(式(1-1)~式(1-3)で表される構造単位であってもよい)としては、例えば、式(1-11-1)~式(1-11-11)、式(1-12-1)~式(1-12-10)および式(1-13-1)~式(1-13-10)で表される構造単位が挙げられる。
本発明の組成物を用いて製造される有機薄膜トランジスタの電界効果移動度をより向上させる観点から、式(1)で表される構造単位は、式(1-11-1)、式(1-11-2)、式(1-11-3)、式(1-11-11)、式(1-12-1)、式(1-12-3)、式(1-12-5)、式(1-13-1)、式(1-13-3)または式(1-13-5)で表される構造単位であることが好ましく、式(1-11-1)、式(1-11-2)、式(1-11-3)、式(1-11-11)、式(1-12-1)、式(1-12-3)、式(1-13-1)または式(1-13-3)で表される構造単位であることがより好ましく、式(1-11-1)、式(1-11-2)、式(1-11-3)または式(1-11-11)で表される構造単位であることがさらに好ましい。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
(第2構造単位)
式(1)で表される構造単位を含む高分子化合物は、式(1)で表される構造単位のほかに、式(2)で表される構造単位(但し、前記式(1)で表される構造単位とは異なる。)(以下、「第2構造単位」ということがある。)をさらに含んでいることが好ましい。
【0062】
【化11】
〔式中、Arは、置換基を有していてもよい炭素原子数6~60のアリーレン基または置換基を有していてもよい炭素原子数2~30の2価のヘテロ環基を表す。これらの基が有していてもよい置換基は、下記群2から選ばれる。但し、式(2)で表される構造単位は、式(1)で表される構造単位とは異なる。
群2:炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数1~30のアルコキシ基、炭素原子数3~30のシクロアルコキシ基、炭素原子数1~30のアルキルチオ基、炭素原子数3~30のシクロアルキルチオ基、炭素原子数6~30の1価のアリール基、炭素原子数2~30の1価のヘテロ環基およびハロゲン原子。〕
【0063】
本発明の高分子化合物が第2構造単位を含む場合、式(1)で表される構造単位(式(1-1)~式(1-3)で表される構造単位であってもよい)と、式(2)で表される構造単位とが、共役を形成していることが好ましい。
本明細書において、共役とは、分子の構造において不飽和結合と単結合が交互に連なり、結合電子が局在化することなく存在している状態のことを指す。ここで不飽和結合とは、二重結合や三重結合を指す。
【0064】
Arで表されるアリーレン基としては、例えば、下記式1~12で表されるアリーレン基が挙げられる。
【0065】
【0066】
【化13】
〔式1~12中、
R''は、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基、炭素原子数1~30のアルコキシ基、炭素原子数3~30のシクロアルコキシ基、炭素原子数1~30のアルキルチオ基、炭素原子数3~30のシクロアルキルチオ基、炭素原子数6~30のアリール基、炭素原子数2~30の1価のヘテロ環基またはハロゲン原子を表す。複数存在するR''は、同一でも異なっていてもよい。〕
【0067】
Arで表される2価のヘテロ環基としては、2価の芳香族ヘテロ環基であることが好ましい。
【0068】
Arで表される2価のヘテロ環基としては、例えば、下記式13~65で表される2価のヘテロ環基が挙げられる。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【化22】
〔式13~65中、R''は、前記と同じ意味を表す。aおよびbは、それぞれ独立に、繰り返しの数を表し、通常0~5の整数であり、好ましくは0~3の整数であり、より好ましくは0~1の整数である。〕
【0078】
本発明の組成物を用いて製造される有機薄膜トランジスタの電界効果移動度をより向上させる観点で、第2構造単位は、2価のヘテロ環基であることが好ましく、式49~式54、式59~62、式64で表される2価のヘテロ環基であることがより好ましく、式51、式54、式64で表される2価のヘテロ環基であることがさらに好ましく、式65(式65は式51においてa=b=0である場合を表す)で表される2価のヘテロ環基であることが特に好ましい。
【0079】
式(1)で表される構造単位を含む高分子化合物のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と言う。)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、通常、1×103~1×107である。良好な薄膜を形成する観点から、数平均分子量は3×103以上が好ましい。溶媒への溶解性を高め、薄膜形成を容易にする観点から、数平均分子量は1×106以下であることが好ましい。
【0080】
また、式(1)で表される構造単位を含む高分子化合物は、溶媒(好ましくは、有機溶媒)への溶解性が高いものであるが、具体的には、式(1)で表される構造単位を含む高分子化合物を0.1質量%(以下、「wt%」ということがある。)以上含む溶液を調製し得る溶解性を有することが好ましく、0.4質量%以上含む溶液を調製し得る溶解性を有することがより好ましい。
【0081】
本発明の高分子化合物において、式(1)で表される構造単位の含有量は、高分子化合物中に少なくとも1つ含まれていればよいが、高分子化合物中に3つ以上含まれていることが好ましく、高分子化合物中に5つ以上含まれていることがより好ましい。
式(1)で表される構造単位の含有量は、高分子化合物が有する全構成単位に対して
通常25~100モル%である。
【0082】
本発明の高分子化合物は、いかなる種類の共重合体であってもよく、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。本発明の組成物を用いて製造される有機薄膜トランジスタの電界効果移動度をより向上させる観点で、本発明の高分子化合物は、式(1)で表される構造単位と、式(2)で表される構造単位との共重合体であることが好ましく、式(1)で表される構造単位と、式(2)で表される構造単位との交互共重合体であることがより好ましい。
本発明の高分子化合物が式(2)で表される構造単位を有する場合、式(2)で表される構造単位の含有量は、式(1)で表される構造単位1モルに対して通常0モルを超え2モル以下の範囲である。
【0083】
高分子化合物は、分子鎖末端に重合反応に活性である基が残っていると、本発明の高分子化合物を用いて製造される有機薄膜トランジスタの電界効果移動度が低下する可能性がある。そのため、該分子鎖末端は、アリール基、1価の芳香族ヘテロ環基等の安定な基であることが好ましい。
【0084】
(Pdを含む化合物、Pを含む化合物並びにPd及びPを含む化合物について)
本発明の組成物は、合成に用いる器具や化合物、雰囲気等に由来して、Pdを含む化合物、Pを含む化合物、ならびにPdおよびPを含む化合物からなる群より選ばれる1以上の化合物を有する。
本発明の組成物に含まれるPdの含有率、およびPの含有率は、それぞれ50質量ppm以下、60質量ppm以下である。
本発明の組成物に含まれるPdの含有率、およびPの含有率は、それぞれ50質量ppm以下、30質量ppm以下であってもよい。
本発明の組成物に含まれるPdとPの含有率の合計は、60質量ppm以下であってもよい。
本発明の組成物は、後述する組成物の精製方法を適宜採用することで、PdおよびPの含有率を所望の範囲に調整することができる。
精製することによって得られた組成物に、PdおよびPを含む化合物からなる群より選ばれる1以上の化合物を適宜添加してもよい。添加する場合、例えば、後述する重合に用いられる塩基及び触媒として挙げられている化合物を添加してもよい。
【0085】
式(1)で表される構造単位を含む高分子化合物はアモルファス性高分子であり、結晶性高分子と比較してPd化合物、P化合物、Pd及びPを含む化合物からなる群より選ばれる1以上の化合物と相互作用しやすいと考えられる。したがって、相互作用を抑制する観点から、Pdの含有率は、20質量ppm以下であることがより好ましい。
また、相互作用を抑制する観点から、PdとPの含有率の合計は60質量ppm以下であることがより好ましく、PdとPの含有率の合計は60質量ppm以下であり、かつPdの含有率は、20質量ppm以下であることがさらに好ましい。
ここで、結晶性高分子とは例えば常温常圧で空間的に規則的な構造をとる高分子を意味し、アモルファス性高分子とは例えば常温常圧で空間的に規則的な構造をとらない高分子を意味する。規則的な構造をとるか否かは例えばX線回折法などの方法により測定することができる。
【0086】
組成物に含まれるP及びPdの含有率は以下のように測定する。
組成物を乾燥させ、秤量する。この値を組成物の質量とする。
乾燥して得られた組成物を、塩酸、硝酸とともにマイクロウェーブ分解装置に密封し、分解する。分解された組成物を試料として、黒鉛炉原子吸光装置を用いてPdの含有量(質量)を測定する。分解された組成物を試料として、ICP-AES装置を用いてPの含有量(質量)を測定する。
(Pの含有量(質量))/(組成物の質量)、(Pdの含有量(質量))/(組成物の質量)の値(質量ppm)をそれぞれPの含有率、Pdの含有率とする。
組成物と溶媒とを含むインク組成物の場合も、同様の方法で測定する。インク組成物を乾燥させたものを、組成物として秤量する。この値を組成物の質量とする。
乾燥して得られた組成物を、塩酸、硝酸とともにマイクロウェーブ分解装置に密封し、分解する。分解された組成物を試料として、黒鉛炉原子吸光装置を用いてPdの含有量を測定する。分解された組成物を試料として、ICP-AES装置を用いてPの含有量(質量)を測定する。
(Pの含有量(質量))/(組成物の質量)、(Pdの含有量(質量))/(組成物の質量)の値(質量ppm)をそれぞれPの含有率、Pdの含有率とする。
【0087】
<組成物の製造方法>
以下に本発明の組成物の製造方法を説明するが、本発明の組成物の製造方法はこれに限定されるものではない。
(高分子化合物の重合)
以下に式(1)で表される構造単位と、式(2)で表される構造単位とを有する高分子化合物の重合方法を示す。
高分子化合物は、いかなる方法で重合してもよいが、例えば、式(11)で表される化合物と、式(12)で表される化合物とを、必要に応じて有機溶媒に溶解し、必要に応じて塩基を加え、適切な触媒を用いる公知のアリールカップリング等の重合方法が挙げられる。
【0088】
X21-A11-X22 (11)
〔A11は、式(1)で表される構造単位を表す。X21およびX22は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ホウ酸残基、ホウ酸エステル残基、有機スズ残基を表す。〕
X23-A12-X24 (12)
〔A12は式(2)で表される構造単位を表す。X23およびX24は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ホウ酸残基、ホウ酸エステル残基、有機スズ残基を表す。〕
【0089】
X21、X22、X23またはX24で表されるホウ酸残基とは、-B(OH)2で表される基を意味する。
【0090】
X21、X22、X23またはX24で表されるホウ酸エステル残基としては、例えば、下記式で示される基が挙げられる。
【0091】
【0092】
X21、X22、X23またはX24で表される有機スズ残基とは、-SnRe
3で表される基(Reは、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数3~30のシクロアルキル基又は炭素原子数6~30のアリール基を表す)を意味する。
有機スズ残基としては、トリアルキルスタンニル基、トリシクロアルキルスタンニル基が挙げられ、具体的には、トリメチルスタンニル基、トリブチルスタンニル基、トリシクロヘキシルスタンニル基が挙げられる。
【0093】
上記のアリールカップリング等の重合方法としては、例えば、Suzukiカップリング反応により重合する方法(Chemical Review、1995年、第95巻、2457-2483頁)、Stilleカップリング反応により重合する方法(European Polymer Journal、2005年、第41巻、2923-2933頁)が挙げられる。
【0094】
X21、X22、X23およびX24で表される基は、Suzukiカップリング反応等のニッケル触媒またはパラジウム触媒を用いる場合には、ハロゲン原子、ホウ酸エステル残基またはホウ酸残基であることが好ましく、重合反応の簡便となるため、臭素原子、ヨウ素原子またはホウ酸エステル残基であることが好ましい。
本発明の高分子化合物をSuzukiカップリング反応により重合する場合は、上記の重合反応性基である臭素原子およびヨウ素原子の合計モル数と、上記の重合反応性基であるホウ酸エステル残基の合計モル数との比率が、0.7~1.3とすることが好ましく、0.8~1.2とすることがより好ましい。
【0095】
X21、X22、X23およびX24で表される基は、Stilleカップリング反応等のパラジウム触媒を用いる場合には、ハロゲン原子、または、3つのアルキル基で置換された有機スズ残基であることが好ましく、重合反応が簡便となるため、臭素原子、ヨウ素原子、または、3つのアルキル基若しくは3つのシクロアルキル基で置換された有機スズ残基であることが好ましい。
本発明の高分子化合物をStilleカップリング反応により重合する場合は、上記の重合反応性基である臭素原子およびヨウ素原子の合計モル数と、上記の重合反応性基である3つのアルキル基若しくは3つのシクロアルキル基で置換された有機スズ残基の合計モル数との比率が、0.7~1.3とすることが好ましく、0.8~1.2とすることがより好ましい。
【0096】
重合に用いられる有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、テトラヒドロフラン、ジオキサンが挙げられる。これらの有機溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0097】
重合に用いられる塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、リン酸三カリウム等の無機塩基、フッ化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の有機塩基が挙げられる。
【0098】
重合に用いられる触媒としては、例えば、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、パラジウムアセテート、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム等の市販されているパラジウム錯体等の遷移金属錯体と、必要に応じて、トリフェニルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の市販されている配位子とからなる触媒であることが好ましい。これらの触媒は、予め合成したものを用いてもよいし、反応系中で調製したものをそのまま用いてもよい。
また、これらの触媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0099】
重合の反応温度は、好ましくは0~200℃であり、より好ましくは0~150℃であり、更に好ましくは0~60℃であり、更に好ましくは0~30℃である。
【0100】
重合の反応時間は、通常1時間以上であり、好ましくは2~500時間である。
【0101】
重合の後処理は、公知の方法で行うことができ、例えば、メタノール等の低級アルコールに上記重合で得られた反応液を加えて析出させた沈殿をろ過、乾燥させる方法が挙げられる。
【0102】
(組成物の精製方法)
高分子化合物は、前記重合方法により組成物として得られるため、通常、精製をおこなう。
組成物を精製する方法としては、水、メタノール等のアルコール、酸、塩基、キレート剤、アルミナ、シリカゲルもしくはアセトンを含む洗浄液による洗浄;再結晶;ソックスレー抽出器による連続抽出;または固定相がシリカゲル、アルミナもしくは活性炭であるカラムクロマトグラフィー等が挙げられ、これらの精製方法を適宜組み合わせることで、
所望のPd及びPの含有率を有する組成物、例えばPdの含有率が50質量ppm以下であり、Pの含有率が60質量ppm以下である組成物を得ることができる。
【0103】
本発明に係る組成物を得るための精製方法としては、例えば、キレート剤を含む洗浄液による洗浄をおこない、かつアルミナを含む洗浄液による洗浄をおこなう精製方法、およびキレート剤を含む洗浄液による洗浄をおこない、かつアルミナを固定相とするカラムクロマトグラフィーによる精製をおこなう精製方法が好ましい。
これら精製方法には、さらに別の精製方法を併用してもよく、例えば、水、メタノール等のアルコール、塩基又は酸を含む洗浄液による洗浄を併用してもよい。
【0104】
洗浄液に含まれるキレート剤としては、N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム、エチレンジアミン、ビピリジン、エチレンジアミン四酢酸、フェナントロリン、ポルフィリン、クラウンエーテルなどが挙げられる。また、これらのキレート剤は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
洗浄液に含まれる酸としては、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸などが挙げられる。
これらの酸は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
洗浄液に含まれる塩基としては、アンモニア、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、リン酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。これらの塩基は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0105】
カラムクロマトグラフィーにより組成物を精製する場合、効率よく固定相と接触させる観点から、事前に固定相と高分子溶液を混合し攪拌することが好ましい。
カラムクロマトグラフィーで用いる固定相は、高分子化合物に対して、0.5倍量~200倍量用いるのが好ましく、1倍量~100倍量用いるのがより好ましい。
カラムクロマトグラフィーで用いる溶媒は、例えば、芳香族炭化水素溶媒のベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンや、脂肪族炭化水素溶媒のヘキサン、ヘプタン、クロロホルム、ジクロロメタンなどが挙げられる。これらの有機溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。上記の高分子化合物が溶解する溶媒が好ましい。カラムクロマトグラフィーで用いる溶媒は、高分子化合物を溶解させるために、溶液を加熱してもよい。
カラムクロマトグラフィーで用いる溶媒は、高分子化合物の分解を防ぐため、安定剤や酸化防止剤等の添加剤を加えてもよい。
【0106】
(式(11)で表される化合物)
【0107】
式(11)で表される化合物は、合成が容易であるという観点から、式(11-1)で表される化合物、式(11-2)で表される化合物または式(11-3)で表される化合物であることが好ましい。
【0108】
【0109】
〔式(11-1)~式(11-3)中、
環C、Z1、X1およびY1は、前記と同じ意味を表す。
M1は、ハロゲン原子、ホウ酸残基、ホウ酸エステル残基または有機スズ残基を表す。複数存在するM1は、同一でも異なっていてもよい。〕
M1で表されるハロゲン原子、ホウ酸残基、ホウ酸エステル残基および有機スズ残基の定義および具体例は、X21、X22、X23またはX24で表されるそれらの基と同義である。
【0110】
式(11)で表される化合物(式(11-1)~式(11-3)で表される化合物であってもよい)としては、例えば、式(5a-11-1)~式(5a-11-11)、式(5a-12-1)~式(5a-12-10)および式(5a-13-1)~式(5a-13-10)で表される化合物が挙げられる。式(11)で表される化合物の合成が容易となるため、式(5a-11-1)、式(5a-11-2)、式(5a-11-3)、式(5a-11-11)、式(5a-12-1)、式(5a-12-3)、式(5a-12-5)、式(5a-13-1)、式(5a-13-3)または式(5a-13-5)で表される化合物であることが好ましく、式(5a-11-1)、式(5a-11-2)、式(5a-11-3)、式(5a-11-11)、式(5a-12-1)、式(5a-12-3)、式(5a-13-1)または式(5a-13-3)で表される化合物であることがより好ましく、式(5a-11-1)、式(5a-11-2)、式(5a-11-3)または式(5a-11-11)で表される化合物であることがさらに好ましい。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
(式(11)で表される化合物の製造方法)
次に、式(11)で表される化合物の製造方法を説明する。
式(11)で表される化合物は、いかなる方法で製造してもよいが、例えば、以下に説明するように、臭素化反応、Suzukiカップリング反応、Wolff-Kishner還元反応、Buchwald-Hartwigアミノ化反応、酸化的環化反応により製造することができる。
【0115】
式(11)に含まれる式(1)で表される構成単位中のZ1が、式(Z-5)で表される基の場合、式(11)で表される化合物は、例えば、
式(S1)で表される化合物と、式(S2)で表される化合物と、式(S3)で表される化合物とをSuzukiカップリング反応により反応させ、式(S4)で表される化合物を合成する第一工程と、
第一工程で得られた式(S4)で表される化合物を分子内環化させ、式(S5)で表される化合物を合成する第二工程と、
第二工程で得られた式(S5)で表される化合物を、
(I)N-ブロモスクシンイミド等のハロゲン化剤と反応させることにより、
(II)パラジウム触媒等を用いたカップリング反応によりまたは
(III)アルキルリチウムと反応させてリチオ化し、さらに、塩化トリブチルブチルスズ等と反応させることにより、
式(11)で表される化合物を合成する第三工程とを含む製造方法によって得ることができる。
【0116】
【化28】
〔式(S1)~(S5)中、環A、環Bおよび環Cは、前記と同じ意味を表す。M
2は、ホウ酸残基(-B(OH)
2で表される基)またはホウ酸エステル残基を表す。複数あるM
2は、同一であっても異なっていてもよい。Halは、ヨウ素原子、臭素原子または塩素原子を表す。式(S2)のHalと式(S3)のHalは、同一でも異なっていてもよい。〕
【0117】
式(11)に含まれる式(1)で表される構成単位中のZ1が、式(Z-1)で表される基の場合、式(11)で表される化合物は、例えば、
上記の式(S5)で表される化合物をWolff-Kishner還元反応により反応させ、式(S6)で表される化合物を合成する第一工程と、
第一工程で得られた式(S6)で表される化合物と、ナトリウムアルコキシド等の塩基と、アルキルハライドとを反応させ、式(S7)で表される化合物を合成する第二工程と、
第二工程で得られた式(S7)で表される化合物を
(I)N-ブロモスクシンイミド等のハロゲン化剤と反応させることにより、
(II)パラジウム触媒等を用いたカップリング反応によりまたは
(III)アルキルリチウムと反応させてリチオ化し、さらに、塩化トリブチルブチルスズ等と反応させることにより、
式(11)で表される化合物を合成する第三工程とを含む製造方法によって得ることができる。
【0118】
【化29】
〔式(S5)~(S7)中、R
1、環A、環B、環CおよびHalは、前記と同じ意味を表す。〕
【0119】
式(11)に含まれる式(1)で表される構成単位中のZ1が、式(Z-1)で表される基の場合、式(11)で表される化合物は、他にも、
式(S1)で表される化合物と、式(S8)で表される化合物と、式(S9)で表される化合物とをSuzukiカップリング反応により反応させ、式(S10)で表される化合物を合成する第一工程と、
第一工程で得られた式(S10)で表される化合物と、ブチルリチウムとを反応させてリチオ化し、さらに、ケトンと反応させ、式(S11)で表される化合物を合成する第二工程と、
第二工程で得られた式(S11)で表される化合物と、トリフルオロホウ酸や硫酸等の酸とを反応させて環化させ、式(S7)で表される化合物を合成する第三工程と、
第三工程で得られた式(S7)で表される化合物を、
(I)N-ブロモスクシンイミド等のハロゲン化剤と反応させることにより、
(II)パラジウム触媒等を用いたカップリング反応によりまたは
(III)アルキルリチウムと反応させてリチオ化し、さらに、塩化トリブチルブチルスズ等と反応させることにより、
式(11)で表される化合物を合成する第四工程とを含む製造方法によって得ることができる。
【0120】
【化30】
〔式(S1)および(S7)~(S11)中、R
1、M
2、環A、環B、環CおよびHalは、前記と同じ意味を表す。式(S8)に複数存在するHalは、同一でも異なっていてもよく、式(S9)に複数存在するHalは、同一でも異なっていてもよく、式(S8)のHalと式(S9)のHalは、同一でも異なっていてもよい。〕
【0121】
式(11)に含まれる式(1)で表される構成単位中のZ1が、式(Z-2)または式(Z-3)で表される基の場合、式(11)で表される化合物は、例えば、
式(S10)で表される化合物と、N-ブロモスクシンイミド等のハロゲン化剤とを反応させ、式(S12)で表される化合物を合成する第一工程と、
第一工程で得られた式(S12)で表される化合物と、ブチルリチウムとを反応させてリチオ化し、さらに、式:R2ECl2で表される化合物(Eは、ケイ素原子またはゲルマニウム原子を表す。)等と反応させ、式(S13)で表される化合物を合成する第二工程と、
第二工程で得られる式(S13)で表される化合物を、
(I)N-ブロモスクシンイミド等のハロゲン化剤と反応させることにより、
(II)パラジウム触媒等を用いたカップリング反応によりまたは
(III)アルキルリチウムと反応させてリチオ化し、さらに、塩化トリブチルブチルスズ等と反応させることにより、
式(11)で表される化合物合成する第三工程とを含む製造方法によって得ることができる。
【0122】
【化31】
〔式(S10)、(S12)および(S13)中、R
1、環A、環B、環CおよびHal、Eは、前記と同じ意味を表す。式(S10)に複数存在するHalは、同一でも異なっていてもよく、(S12)に複数存在するHalは、同一でも異なっていてもよく、式(S10)のHalと式(S12)のHalは、同一でも異なっていてもよい。〕
【0123】
式(11)に含まれる式(1)で表される構成単位中のZ1が式(Z-4)で表される基の場合、式(11)で表される化合物は、例えば、
式(S12)で表される化合物と、式(S14)で表される化合物とをBuchwald-Hartwigアミノ化反応により反応させることにより、式(S15)で表される化合物を合成する第一工程と、第一工程で得られた式(S15)で表される化合物を、
(I)N-ブロモスクシンイミド等のハロゲン化剤と反応させることにより、
(II)パラジウム触媒等を用いたカップリング反応によりまたは
(III)アルキルリチウムと反応させてリチオ化し、さらに、塩化トリブチルブチルスズ等と反応させることにより、
式(11)で表される化合物を合成する第二工程とを含む製造方法によって得ることができる。
【0124】
【化32】
〔式(S12)、(S14)および(S15)中、R
1、環A、環B、環CおよびHalは、前記と同じ意味を表す。式(S12)に複数存在するHalは、同一でも異なっていてもよい。〕
【0125】
式(11)に含まれる式(1)で表される構成単位中のZ1が、
Z1が、式(Z-5)で表される基の場合、式(11)で表される化合物は、他にも、 式(S16)で表される化合物と、式(S19)で表される化合物と、式(S20)で表される化合物とをSuzukiカップリング反応により反応させて式(S21)で表される化合物を合成する第一工程と、
第一工程で得られた式(S21)で表される化合物を分子内環化させ、式(S7)で表される化合物を合成する第二工程と、
第二工程で得られた式(S7)で表される化合物を、
(I)N-ブロモスクシンイミド等のハロゲン化剤と反応させることにより、
(II)パラジウム触媒等を用いたカップリング反応によりまたは
(III)アルキルリチウムと反応させてリチオ化し、さらに、塩化トリブチルブチルスズ等と反応させることにより、
式(11)で表される化合物合成する第三工程とを含む製造方法によって得ることができる。
【0126】
【0127】
〔式(S7)、(S16)、(S19)、(S20)および(S21)中、R1、環A、環BおよびHalは、前記と同じ意味を表す。Rpは、炭素原子数1~30のアルキル基、-Si(R’)3で表される基(3つのR’はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~30のアルキル基又はアルキル基を有していてもよい炭素原子数2~30のヘテロ環基を表す。)またはアセチル基を表す。式(S16)に複数存在するHalは、同一でも異なっていてもよい。式(S19)のRpと式(S20)のRpは、同一でも異なっていてもよく、式(S21)に複数あるRpは同一でも異なっていてもよい。〕
【0128】
式(11)で表される化合物は、例えば、特開2009-155648号公報、特開2009-209134号公報、特表2012-500308号公報、特表2013-501076号公報、国際公開第2013/010614号に記載の方法に準じて合成することもできる。
【0129】
<組成物と有機溶媒とを含むインク組成物>
本発明は、塗布等の作業を容易にする観点から、本発明に係る組成物と有機溶媒とを含むインク組成物であってもよい。当該インク組成物は、溶液であってもよく、分散液であってもよい。インク組成物としては、例えば、組成物と、有機溶媒とを含み、(組成物の質量)/(組成物および有機溶媒の質量)×100の値が0.1質量%以上20質量%以下であるインク組成物が挙げられる。
インク組成物は、(組成物の質量)/(組成物および有機溶媒の質量)×100の値が、0.4質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
有機溶媒は、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロブタン、ブロモブタン、クロロペンタン、ブロモペンタン、クロロヘキサン、ブロモヘキサン、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン等のハロゲン化飽和炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化不飽和炭化水素系溶媒のほか、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、ビシクロヘキシル、シクロヘキシルベンゼン、シクロヘキサンであることが好ましい。
【0130】
インク組成物は、後述するような塗布方法に対して好適な粘度を有することが好ましい。
インク組成物は、その他の添加物をさらに含んでいてもよい。
【0131】
<有機薄膜>
上述したインク組成物を用いて有機薄膜を製造することができる。
有機薄膜は、主として、本発明の式(1)で表される構造単位を含む高分子化合物によって構成される薄膜であるが、一部に有機溶媒やその他の不可避成分が含まれていてもよい。
有機薄膜の厚さは、好ましくは1nm~100μmであり、より好ましくは2nm~1000nmであり、さらに好ましくは5nm~500nmであり、特に好ましくは20nm~200nmである。このような厚さの有機薄膜によれば、良好なキャリア輸送性を有し、強度等も十分な有機半導体素子を形成することができる。
【0132】
有機薄膜は、上述したインク組成物を所定の基板上に塗布するなどして形成することができる。インク組成物の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、プッシュコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、マイクロコンタクト印刷法、ノズルコート法、キャピラリーコート法の塗布法が挙げられる。これらの中でも、スピンコート法、プッシュコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ディスペンサー印刷法、マイクロコンタクト印刷法、ノズルコート法またはキャピラリーコート法が好ましい。
【0133】
なお、塗布は、加熱した状態で行ってもよい。これにより、高濃度の溶液または分散液を塗布することが可能となり、より均質な有機薄膜を形成できるほか、室温での塗布が困難であった材料等を選択して用いることも可能となる。加熱した状態での塗布は、例えば、予め加熱した溶液または分散液を用いるか、または、基板を加熱しながら塗布することによって行うことができる。
【0134】
インク組成物の粘度は、例えば、グラビアコート法により有機薄膜を形成する場合は、0.01~1Pa・sであることが好ましく、0.05~0.2Pa・sであることがより好ましく、スクリーン印刷法により有機薄膜を形成する場合は、0.1~100Pa・sであることが好ましく、0.5~50Pa・sであることがより好ましく、フレキソ印刷法により有機薄膜を形成する場合は、0.01~1Pa・sであることが好ましく、0.05~0.5Pa・sであることがより好ましく、オフセット印刷法により有機薄膜を形成する場合は、1~500Pa・sであることが好ましく、20~100Pa・sであることがより好ましく、インクジェット印刷法により有機薄膜を形成する場合は、0.1Pa・s以下であることが好ましく、0.02Pa・s以下であることがより好ましい。
【0135】
上述の形成方法により有機薄膜を形成する工程は、有機半導体素子の製造における一工程として行うこともできる。この場合、例えば、有機薄膜を形成させる基板が、有機半導体素子の製造過程で生じた構造体となる。そして、有機半導体素子において、有機薄膜のキャリア輸送性を更に高める観点からは、このようにして形成された有機薄膜に対し、所定の配向を付与する工程を更に実施してもよい。配向された有機薄膜においては、これを構成している式(1)で表される構造単位を含む高分子化合物が一方向に並ぶため、キャリア輸送性が一層高められる傾向にある。
【0136】
配向方法としては、例えば、液晶の配向手法として知られている方法を用いることができる。なかでも、ラビング法、光配向法、シェアリング法(ずり応力印加法)、引き上げ塗布法等が配向方法として簡便であるため利用し易く、特に、ラビング法またはシェアリング法が好ましい。
【0137】
<有機半導体素子>
本発明の高分子化合物を含有する有機薄膜は、高いキャリア(電子またはホール)輸送性を発揮し得ることから、これらの有機薄膜に設けられた電極から注入された電子やホール、或いは、光吸収によって発生した電荷を輸送することができる。また、有機半導体素子の製造時において、溶液または分散液の粘度等を調製しやすく、しかも結晶化もしにくいため、大面積のものとした場合であっても均一な特性が得られる。したがって、これらの特性を活かして、有機薄膜トランジスタ、有機薄膜太陽電池、光センサ等の種々の有機半導体子に適用することができる。
【0138】
(有機薄膜トランジスタ)
上述した有機薄膜を用いた有機薄膜トランジスタとしては、ソース電極およびドレイン電極と、これらの電極間の電流経路となる有機半導体層(活性層)と、この電流経路を通る電流量を制御するゲート電極とを備えた構成を有するものが挙げられ、有機半導体層が、本発明の高分子化合物を含有する有機薄膜によって構成されるものである。このような有機薄膜トランジスタとしては、例えば、電界効果型有機薄膜トランジスタ、静電誘導型有機薄膜トランジスタが挙げられる。
【0139】
電界効果型有機薄膜トランジスタは、ソース電極およびドレイン電極、これらの間の電流経路となる有機半導体層(活性層)、この電流経路を通る電流量を制御するゲート電極、並びに、有機半導体層とゲート電極との間に配置される絶縁層を備えることが好ましい。特に、ソース電極およびドレイン電極が、有機半導体層(活性層)に接して設けられており、さらに有機半導体層に接した絶縁層を挟んでゲート電極が設けられていることが好ましい。電界効果型有機薄膜トランジスタにおいては、有機半導体層が、本発明の組成物を含有する有機薄膜によって構成される。
【0140】
静電誘導型有機薄膜トランジスタは、ソース電極およびドレイン電極、これらの間の電流経路となる有機半導体層(活性層)、並びに電流経路を通る電流量を制御するゲート電極を有し、このゲート電極が有機半導体層中に設けられていることが好ましい。特に、ソース電極、ドレイン電極および有機半導体層中に設けられたゲート電極が、有機半導体層に接して設けられていることが好ましい。ここで、ゲート電極の構造としては、ソース電極からドレイン電極へ流れる電流経路が形成され、且つゲート電極に印加した電圧で電流経路を流れる電流量が制御できる構造であればよく、例えば、くし形電極が挙げられる。
静電誘導型有機薄膜トランジスタにおいても、有機半導体層が、本発明の組成物を含有する有機薄膜によって構成される。
【0141】
有機半導体層は、一部に製造時に用いた溶媒やその他の不可避成分が含まれていてもよい。良好なキャリア輸送性を有する観点および十分な強度の有機薄膜を容易に形成する観点からは、好ましくは1nm~100μmであり、より好ましくは2nm~1000nmであり、さらに好ましくは5nm~500nmであり、特に好ましくは20nm~200nmである。
【0142】
ゲート絶縁層には、無機絶縁体または有機絶縁体からなるゲート絶縁膜を用いることができる。無機絶縁体としては、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタンが挙げられる。有機絶縁体としては、ポリエチレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、有機ガラス、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリパラキシレン、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、サイトップ(登録商標)、ポリフッ化ビニリデン、ポリスチレン、スチレン及びスチレン誘導体を含む共重合ポリマー、ポリメタクリレート、メタクリレート及びメタクリレート誘導体を含む共重合ポリマー等が挙げられる。なお、無機絶縁体および有機絶縁体は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。ゲート絶縁層の厚さは、好ましくは50~1000nmである。
【0143】
ゲート電極には、金、白金、銀、銅、クロム、パラジウム、アルミニウム、インジウム、モリブデン、低抵抗ポリシリコン、低抵抗アモルファスシリコン等の金属や錫酸化物、酸化インジウム、インジウム・錫酸化物(ITO)等の材料を用いることができる。これらの材料は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。また、ゲート電極としては、高濃度にドープされたシリコン基板を用いてもよい。高濃度にドープされたシリコン基板は、ゲート電極としての性質と、基板としての性質とを併有する。従って、高濃度にドープされたシリコン基板を用いる場合には、基板とゲート電極とが接している有機薄膜トランジスタにおいて、以下の図中の基板の表記を省略してもよい。ゲート電極の厚さは、好ましくは0.02~100μmである。
【0144】
ソース電極およびドレイン電極は、低抵抗の材料から構成されることが好ましく、ソース電極およびドレイン電極の厚さは、各々、好ましくは0.02~1000μmである。
【0145】
基板としては、ガラス基板、フレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板等が挙げられる。基板の厚さは、好ましくは10~2000μmである。
【0146】
有機薄膜トランジスタは、ソース電極およびドレイン電極と、有機半導体層との間に、有機半導体層に含まれる有機半導体材料とは異なる化合物からなる層を介在させてもよい。このような層を介在させることにより、ソース電極およびドレイン電極と有機半導体層との間の接触抵抗が低減され、有機薄膜トランジスタのキャリア移動度を更に高めることができる場合がある。
【0147】
有機半導体層に含まれる本発明の組成物とは異なる化合物を含有する層としては、例えば、電子またはホール輸送性を有する低分子化合物;アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、これらの金属と有機化合物との錯体;ヨウ素、臭素、塩素、塩化ヨウ素等のハロゲン;硫酸、無水硫酸、二酸化硫黄、硫酸塩等の酸化硫黄化合物;硝酸、二酸化窒素、硝酸塩等の酸化窒素化合物;過塩素酸、次亜塩素酸等のハロゲン化化合物;アルキルチオール化合物、芳香族チオール類、フッ素化アルキル芳香族チオール類等の芳香族チオール化合物を含有する層が挙げられる。
【0148】
次に、電界効果型有機薄膜トランジスタの代表例について、図面を参照しつつ、説明する。
【0149】
図1は第1実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。
図1に示す有機薄膜トランジスタ100は、基板1と、基板1上に所定の間隔をもって形成されたソース電極5およびドレイン電極6と、ソース電極5およびドレイン電極6を覆うようにして基板1上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0150】
図2は第2実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。
図2に示す有機薄膜トランジスタ110は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を覆うようにして基板1上に形成された有機半導体層2と、ソース電極5と所定の間隔を持って有機半導体層2上に形成されたドレイン電極6と、有機半導体層2およびドレイン電極6上に形成された絶縁層3と、ソース電極5とドレイン電極6との間の絶縁層3の領域を覆うように絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0151】
図3は第3実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。
図3に示す有機薄膜トランジスタ120は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように、絶縁層3上に所定の間隔を持って形成されたソース電極5およびドレイン電極6と、ソース電極5およびドレイン電極6を一部覆うように絶縁層3上に形成された有機半導体層2と、を備えるものである。
【0152】
図4は第4実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。
図4に示す有機薄膜トランジスタ130は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を一部覆うように絶縁層3上に形成されたソース電極5と、ソース電極5を一部覆うようにして絶縁層3上に形成された有機半導体層2と、ゲート電極4が下部に形成されている有機半導体層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔を持って絶縁層3上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0153】
図5は第5実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(静電誘導型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。
図5に示す有機薄膜トランジスタ140は、基板1と、基板1上に形成されたソース電極5と、ソース電極5上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に所定の間隔をもって複数形成されたゲート電極4と、ゲート電極4の全てを覆うようにして有機半導体層2上に形成された有機半導体層2a(有機半導体層2aを構成する材料は、有機半導体層2と同一でも異なっていてもよい)と、有機半導体層2a上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0154】
図6は第6実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。
図6に示す有機薄膜トランジスタ150は、基板1と、基板1上に形成された有機半導体層2と、有機半導体層2上に所定の間隔をもって形成されたソース電極5およびドレイン電極6と、ソース電極5およびドレイン電極6を一部覆うようにして有機半導体層2上に形成された絶縁層3と、ソース電極5が下部に形成されている絶縁層3の領域とドレイン電極6が下部に形成されている絶縁層3の領域とをそれぞれ一部覆うように、絶縁層3上に形成されたゲート電極4と、を備えるものである。
【0155】
図7は第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタ(電界効果型有機薄膜トランジスタ)の模式断面図である。
図7に示す有機薄膜トランジスタ160は、基板1と、基板1上に形成されたゲート電極4と、ゲート電極4を覆うようにして基板1上に形成された絶縁層3と、ゲート電極4が下部に形成されている絶縁層3の領域を覆うように形成された有機半導体層2と、ゲート電極4が下部に形成されている有機半導体層2の領域を一部覆うように有機半導体層2上に形成されたソース電極5と、ゲート電極4が下部に形成されている有機半導体層2の領域を一部覆うように、ソース電極5と所定の間隔をもって有機半導体層2上に形成されたドレイン電極6と、を備えるものである。
【0156】
第1~第7実施形態に係る有機薄膜トランジスタにおいて、有機半導体層2および/または有機半導体層2aは、上述した好適な実施形態の高分子化合物からなる有機薄膜によって構成され、ソース電極5とドレイン電極6の間の電流通路(チャネル)となる。また、ゲート電極4は、電圧を印加することにより有機半導体層2および/または有機半導体層2aにおける電流通路(チャネル)を通る電流量を制御する。
【0157】
(有機薄膜トランジスタの製造方法)
以下、
図3に示される第3実施形態の有機薄膜トランジスタを一例として、有機薄膜トランジスタの製造方法を説明する。
【0158】
基板1は、有機薄膜トランジスタとしての特性を阻害しなければ特に制限されないが、ガラス基板やフレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板も用いることができる。
【0159】
まず、基板1上にゲート電極4を、蒸着法、スパッタリング法、めっき法、CVD法等により形成する。なお、ゲート電極4として、高濃度にドープされたn-型シリコン基板を用いてもよい。
【0160】
次に、ゲート電極4上に絶縁層3を、CVD法、プラズマCVD法、プラズマ重合法、熱蒸着法、熱酸化法、陽極酸化法、クラスタイオンビーム蒸着法、LB法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等により形成する。なお、ゲート電極4として、高濃度にドープされたn-型シリコン基板を用いる場合には、その表面を熱酸化することにより酸化シリコンの膜を形成することができ、この酸化シリコンの膜を絶縁層3として用いてもよい。
【0161】
次に、ソース電極5およびドレイン電極6を、蒸着法、スパッタリング法、めっき法、CVD法等により、絶縁層3上に形成する。
図3には図示していないが、その後、ソース電極5およびドレイン電極6と有機半導体層2との間に、電荷注入を促進する層を設けてもよい。
【0162】
そして、絶縁層3上に有機半導体層2を形成する際には、上述した溶液または分散液を用いることが製造上好ましい。本発明の有機薄膜トランジスタは、溶液または分散液を用いて、スピンコート法、キャスティング法、プッシュコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、マイクロコンタクト印刷法、グラビア・オフセット印刷法等により製造することができる。
【0163】
有機薄膜トランジスタを作製後、素子を保護するために有機薄膜トランジスタ上に保護膜を形成することが好ましい。この保護膜により、有機薄膜トランジスタが、大気から遮断され、有機薄膜トランジスタの特性の低下を抑えることができる。また、保護膜により有機薄膜トランジスタの上に駆動する表示デバイスを形成するときの影響を低減することができる。
【0164】
保護膜を形成する方法としては、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂や無機のSiONx膜等でカバーする方法等が挙げられる。大気との遮断を効果的に行うために、有機薄膜トランジスタを作製後、保護膜を形成するまでの工程を大気に曝すことなく(例えば、乾燥した窒素雰囲気中、真空中等)行うことが好ましい。
【0165】
本発明の有機薄膜トランジスタは、有機エレクトロルミネッセンス素子、電子タグ、液晶表示素子に好適に用いることができる。
【0166】
(光センサ)
本発明の組成物は、OFETセンサの製造に用いることもできる。本発明のOFETセンサは、入力信号を電気信号に出力する信号変換素子として有機電界効果型トランジスタを用いたものであり、金属、絶縁膜および有機半導体層のいずれかの構造中に、感応性機能または選択性機能を付与したものである。本発明のOFETセンサとしては、例えば、バイオセンサ、ガスセンサ、イオンセンサ、湿度センサが挙げられる。
【0167】
バイオセンサは、基板と基板上に設けられた有機薄膜トランジスタとを備える。有機薄膜トランジスタは、有機半導体層と、有機半導体に接触して設けられたソース領域およびドレイン領域と、ソース領域とドレイン領域との間に設けられた有機半導体層内のチャネル領域と、チャネル領域に電界を印加可能なゲート電極と、チャネル領域とゲート電極との間に設けられたゲート絶縁膜とを有する。そして、有機薄膜トランジスタは、チャネル領域および/またはゲート絶縁膜に、標的物質と特異的に相互作用するプローブ(感応性領域)を有し、標的物質が濃度変化した際に、プローブの特性変化が生じることにより、バイオセンサとして機能する。
【0168】
被検試料中の標的物質を検出する手法としては、例えば、核酸、タンパク質等の生体分子、または、人工的に合成した官能基を、プローブとして固相担体表面に固定したバイオセンサが挙げられる。
【0169】
この方法では、相補核酸鎖の相互作用、抗原-抗体反応の相互作用、酵素-基質反応の相互作用、受容体-リガンドの相互作用等の生体分子の特異的な親和性を利用して、標的物質を固相担体表面に捕捉する。そのため、標的物質に対して特異的な親和性を有する物質が、プローブとして選択される。
【0170】
プローブは、プローブの種類や固相担体の種類に応じた方法により、固相担体表面に固定される。また、固相担体表面上でプローブを合成(例えば、核酸伸長反応によりプローブを合成する方法)することもできる。いずれの場合も、プローブが固定された固相担体表面と被検試料とを接触させ、適当な条件下で培養することにより、固相担体表面上でプローブ-標的物質複合体が形成される。有機薄膜トランジスタが有するチャネル領域および/またはゲート絶縁膜自体が、プローブとして機能してもよい。
【0171】
ガスセンサは、基板と基板上に設けられた有機薄膜トランジスタとを備える。有機薄膜トランジスタは、有機半導体層と、有機半導体に接触して設けられたソース領域およびドレイン領域と、ソース領域とドレイン領域との間に設けられた半導体層内のチャネル領域と、チャネル領域に電界を印加可能なゲート電極と、チャネル領域とゲート電極との間に設けられたゲート絶縁膜とを有する。そして、有機薄膜トランジスタは、チャネル領域および/またはゲート絶縁膜が、ガス感応部として機能する。ガス感応部に検知ガスが吸着脱離した際に、ガス感応部の特性変化(導電率、誘電率等)が生じることにより、ガスセンサとして機能する。
【0172】
検知するガスとしては、例えば、電子受容性ガス、電子供与性ガスが挙げられる。電子受容性ガスとしては、例えば、F2、Cl2等のハロゲンガス;窒素酸化物ガス;硫黄酸化物ガス;酢酸等の有機酸ガスが挙げられる。電子供与性ガスとしては、例えば、アンモニアガス;アニリン等のアミン類ガス;一酸化炭素ガス;水素ガスが挙げられる。
【0173】
本発明の組成物は、圧力センサの製造に用いることもできる。本発明の圧力センサは、基板と基板上に設けられた有機薄膜トランジスタとを備える。有機薄膜トランジスタは、有機半導体層と、有機半導体に接触して設けられたソース領域およびドレイン領域と、ソース領域とドレイン領域との間に設けられた有機半導体層内のチャネル領域と、チャネル領域に電界を印加可能なゲート電極と、チャネル領域とゲート電極との間に設けられたゲート絶縁膜とを有する。そして、有機薄膜トランジスタは、チャネル領域および/またはゲート絶縁膜が、感圧部として機能する。感圧部が感圧した際に、感圧部の特性変化が生じることにより、感圧センサとして機能する。
【0174】
ゲート絶縁膜が感圧部として機能する場合、有機材料は無機材料に対して柔軟性、伸縮性が優れるため、ゲート絶縁膜は有機材料を含有することが好ましい。
チャネル領域が感圧部として機能する場合、チャネル領域に含有される有機半導体の結晶性をより高めるため、有機薄膜トランジスタは更に配向層を有していてもよい。配向層としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン等のシランカップリング剤を用いてゲート絶縁膜上に形成された単分子膜が挙げられる。
【0175】
また、本発明の組成物は、電導度変調型センサの製造に用いることもできる。本発明の電導度変調型センサは、入力信号を電気信号に出力する信号変換素子として電導度計測素子を用いたものであり、本発明の組成物を含有する膜、または、本発明の組成物を含有する膜の被覆に、センサ対象の入力に対する感応性機能または選択性機能を付与したものである。本発明の電導度変調型センサは、センサ対象の入力を、本発明の組成物の電導度の変化として検出するものである。本発明の電導度変調型センサとしては、例えば、バイオセンサ、ガスセンサ、イオンセンサ、湿度センサが挙げられる。
【0176】
また、本発明の組成物は、別個に形成されたバイオセンサ、ガスセンサ、イオンセンサ、湿度センサ、圧力センサ等の各種センサからの出力信号を増幅するための増幅回路として、有機電界効果型トランジスタを含む、増幅回路の製造に用いることもできる。
【0177】
また、本発明の組成物は、バイオセンサ、ガスセンサ、イオンセンサ、湿度センサ、圧力センサ等の各種センサを複数含むセンサアレイの製造に用いることもできる。
【0178】
また、本発明の組成物は、別個に形成されたバイオセンサ、ガスセンサ、イオンセンサ、湿度センサ、圧力センサ等の各種センサを複数含み、各センサからの出力信号を個別に増幅するための増幅回路として、有機電界効果型トランジスタを含む、増幅回路付きセンサアレイの製造に用いることもできる。
【実施例】
【0179】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0180】
(NMR分析)
NMR測定は、化合物を重クロロホルムに溶解させ、NMR装置(Varian社製、INOVA300)を用いて行った。
【0181】
(分子量分析)
高分子化合物の数平均分子量および重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC、Waters社製、商品名:Alliance GPC 2000)を用いて求めた。測定する高分子化合物は、オルトジクロロベンゼンに溶解させ、GPCに注入した。
GPCの移動相にはオルトジクロロベンゼンを用いた。カラムは、TSKgel GMHHR-H(S)HT(2本連結、東ソー製)を用いた。検出器にはUV検出器を用いた。
【0182】
(Pd及びPの含有率の測定)
組成物に含まれるP及びPdの含有率は以下のように測定した。
組成物を乾燥させ、秤量した。この値を組成物の質量とした。
乾燥して得られた組成物を、塩酸、硝酸とともにマイクロウェーブ分解装置(Anton Paar社製Multi Wave3000)に密封し、分解した。分解した組成物を試料として、黒鉛炉原子吸光装置(日立社製Z2010)を用いてPdの含有量を測定した。分解した組成物を試料として、ICP-AES装置(SII社製SPS300)を用いてPの含有量を測定した。
(Pの含有量(質量))/(組成物の質量)、(Pdの含有量(質量))/(組成物の質量)の値をそれぞれPの含有率(質量ppm)、Pdの含有率(質量ppm)とした。
【0183】
合成例1
(化合物2の合成)
【0184】
【化34】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物1(32g、0.20mol)および脱水ジエチルエーテル(470mL)を加え、均一な溶液とした。得られた溶液を-68℃に保ちながら、1.60Mのn-ブチルリチウムのヘキサン溶液(135mL、0.22mol)を30分間かけて滴下した。その後、-68℃で2時間攪拌した。その後、そこへ、18-ペントリアコンタノン(69.7g、0.14mol)を加え、-78℃で10分間攪拌し、次いで、室温(25℃)で5時間攪拌した。その後、そこへ、水(200mL)を加えて反応を停止させ、10wt%の酢酸水溶液を加え、反応溶液を酸性にした。その後、ヘキサンを用いて反応生成物を抽出した。得られた有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。得られたろ液をエバポレーターで濃縮した後、溶媒を留去することで、化合物2を125g得た。収率は100%であった。
【0185】
1H-NMR(300MHz、CDCl3):δ(ppm)=0.88(t、6H)、1.25(m、60H)、1.75(m、4H)、6.96(d、1H)、7.27(d、1H).
【0186】
合成例2
(化合物3の合成)
【0187】
【化35】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物2(232g、0.39mol)および脱水エタノール(880mL)とヘキサン(350mL)を加え、懸濁液とした。得られた懸濁液に96wt%の濃硫酸(31mL、0.59mol)を加えた後、室温で6時間攪拌した。その後、そこへ、水(200mL)を加えて反応を停止させ、ヘキサンを用いて反応生成物を抽出した。得られた有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。得られたろ液をエバポレーターで濃縮した後、溶媒を留去した。得られた残渣をヘキサンを移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィを用いて精製することで、化合物3を104g得た。収率は43%であった。
【0188】
1H-NMR(300MHz、CDCl3):δ(ppm)=0.88(t、6H)、1.13(t、3H)、1.24(m、60H)、1.77(m、4H)、3.15(q、2H)、7.05(m、2H)、7.24(d、1H).
【0189】
合成例3
(化合物4の合成)
【0190】
【化36】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物3(104g、0.17mol)および脱水ジエチルエーテル(1020mL)を加え、均一な溶液とした。得られた溶液を-68℃に保ちながら、1.60Mのn-ブチルリチウムのヘキサン溶液(136mL、0.22mol)を10分間かけて滴下した。その後、-68℃で10分間攪拌し、次いで、室温(25℃)で1.5時間攪拌した。その後、得られた溶液を-68℃に保ちながら、2-イソプロポキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(62.5g、0.34mmol)を加えた。その後、-68℃で10分間攪拌し、次いで、室温(25℃)で2時間攪拌した。その後、そこへ、水(100mL)を加えて反応を停止させ、ジエチルエーテルを用いて反応生成物を抽出した。得られた有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。得られたろ液をエバポレーターで濃縮した後、溶媒を留去することで、化合物4を117g得た。収率は93%であった。
【0191】
1H-NMR(300MHz、CDCl3):δ(ppm)=1.34(s、12H)、1.99(m、4H)、3.22(q、2H)、7.26(d、1H)、7.42(d、1H).
【0192】
合成例4
(化合物6の合成)
【0193】
【化37】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、ジイソプロピルアミン(13.3mL、93.9mmol)および脱水THF(196mL)を加え、均一な溶液とした。その後、そこへ、1.65Mのn-ブチルリチウムのヘキサン溶液(58.9mL、93.9mmol)を10分間かけて滴下し、-50℃で0.5時間攪拌した後、6-ブロモベンゾチオフェン(10.0g、46.9mmol)を加え、-50℃で3間攪拌した。そこへ、1,2-ジブロモエタン(17.6g、93.9mmol)を加え、室温に昇温した。2時間撹拌後、水(20mL)を加えて反応を停止させ、トルエンを用いて反応生成物を抽出した。得られた有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。得られたろ液をエバポレーターで濃縮した後、溶媒を留去した。得られた残渣をクロロホルムおよびメタノールの混合溶媒を用いて再結晶することで、化合物6を8.5g得た。収率は62%であった。
【0194】
1H-NMR(300MHz、CDCl3):δ(ppm)=7.28(s,1H)、7.43(dd、1H)、7.54(d、1H)、7.87(d、1H)。
【0195】
合成例5
(化合物7の合成)
【0196】
【化38】
還流管を取り付けた反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物4(3.5g、12.0mmol)および乾燥THF(100mL)、を加え、アルゴンガスバブリングによって30分間脱気した。その後、そこへ、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.11g、0.12mmol)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(0.14g、0.48mmol)および3Mリン酸カリウム水溶液(44mL)を加え、80℃に加熱した。その後、そこへ、アルゴンガスバブリングによって30分間脱気した化合物6(22.8g、30.0mmol)の乾燥THF(3mL)溶液を80℃で2分間かけて滴下し、同温で2.5時間加熱した。その後、ヘキサンを用いて反応生成物を抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。得られたろ液をエバポレーターで濃縮した後、溶媒を留去した。得られた残渣をヘキサンおよびクロロホルムの混合溶媒を移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィを用いて精製することで、化合物7を9g得た。収率は22%であった。
【0197】
1H-NMR(300MHz、CDCl3):δ(ppm)=0.89(t,12H)、1.05(m,126H)、1.55(m,4H)、1.85(m,4H)、3.23(m,4H)、7.05(d,2H)、7.20(d,1H)、7.27(d,1H)、7.37(dd,1H)、7.41(s、1H)、7.67(d、1H)、7.78(s、1H)。
【0198】
合成例6
(化合物8の合成)
【0199】
【化39】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物7(7.61g、5.56mmol)および乾燥塩化メチレン(129mL)を加えた。その後、そこへ、1Mの三臭化ホウ素の塩化メチレン溶液(22.2mL、22.2mmol)を0℃で加え、24時間室温(25℃)で攪拌した。その後、そこへ、水を加え、クロロホルムを用いて反応生成物を抽出した。得られた有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。得られたろ液をエバポレーターで濃縮した後、溶媒を留去した。得られた残渣をヘキサンを移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィを用いて精製することで、化合物8を4.5g得た。収率は53%であった。
【0200】
1H-NMR(300MHz、CDCl3):δ(ppm)=0.89(t,12H)、1.23(m,120H)、2.11(m,8H)、7.03(m,2H)、7.23(d,1H)、7.28(d,1H)、7.47(d,1H)、7.65(d,1H).
【0201】
合成例7
(化合物9の合成)
【0202】
【化40】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物8(7.6g、5.56mmol)および乾燥THF(130mL)を加えた。その後、そこへ、N-ブロモこはく酸イミド(5.57g、22.2mmol)を室温で加え、3時間室温で攪拌した。その後、そこへ、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(2mL)および水(100mL)を加え、5分間室温で攪拌した後、ヘキサンを用いて反応生成物を抽出した。得られた有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。得られたろ液をエバポレーターで濃縮した後、溶媒を留去した。得られた残渣をヘキサンを移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィを用いて精製し、ヘキサンを用いて再結晶することで、化合物9を4.5g得た。収率は53%であった。
【0203】
1H-NMR(300MHz、CDCl3):δ(ppm)=0.85(t,12H)、1.05(m,120H)、2.06(m,8H)、7.03(s,1H)、7.04(s,1H)、7.40(d,1H)、7.62(d,1H).
【0204】
実施例1
(組成物PB-2の合成)
【0205】
【化41】
反応容器内の気体を窒素ガスで置換した後に、化合物9(6232.40mg)、特許文献WO2011-052805に記載の方法で合成した化合物10(1793.02mg)、テトラヒドロフランを413.7mL、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウムを107.3mgを加えて、撹拌した。得られた反応溶液に、3mol/Lのリン酸カリウム水溶液を21mL滴下し、3時間還流させた。得られた反応溶液に、フェニルボロン酸を512mg加えて、1時間還流させた。得られた反応溶液に、N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(キレート剤)を35g加えて、1時間還流させた。得られた反応溶液を水に注ぎ、トルエンを加え、トルエン層を抽出した。得られたトルエン溶液を、酢酸水溶液および水で洗浄した後、メタノールに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物をトルエン(1392mL)に溶解させた後、アルミナ(326g)を加え、室温で3時間攪拌後、ろ過によってアルミナを除去した。得られたトルエン溶液をアセトンに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物を、アセトンを溶媒として用いてソックスレー洗浄し、固体Aが得られた。
固体A(0.2g)に12N塩酸55mLとトルエン42mLを加え80℃で6時間攪拌した。冷却したのち、水で洗浄後、得られたトルエン溶液をメタノールに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物をろ過によって回収し、減圧乾燥することで組成物PB-2を得た。得量は0.2gであった。
ポリスチレン換算の数平均分子量は5.6×10
4であり、重量平均分子量は1.1×10
5であった。
組成物PB-2に含まれるパラジウム(Pd)およびリン(P)の含有率は、それぞれ1.8質量ppmおよび22質量ppmであった。
【0206】
実施例2
(組成物PB-1の合成)
実施例1で得られた組成物PB-2(0.1g)に2N塩酸55mLとトルエン42mLを加え80℃で6時間攪拌した。冷却したのち、水で洗浄後、得られたトルエン溶液をメタノールに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物をろ過によって回収し、減圧乾燥することで組成物PB-1を得た。得量は0.05gであった。
ポリスチレン換算の数平均分子量は5.6×104であり、重量平均分子量は1.1×105であった。
組成物PB-1に含まれるパラジウム(Pd)およびリン(P)の含有率は、それぞれ1.1質量ppmおよび27質量ppmであった。
【0207】
実施例3
(組成物PB-3の合成)
反応容器内の気体を窒素ガスで置換した後に、化合物9(296.78mg)、化合物10(85.38mg)、テトラヒドロフランを20mL、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウムを5.1mgを加えて、撹拌した。得られた反応溶液に、3mol/Lのリン酸カリウム水溶液を1mL滴下し、3時間還流させた。得られた反応溶液に、フェニルボロン酸を24.4mg加えて、1時間還流させた。得られた反応溶液に、N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(キレート剤)を1.7g加えて、1時間還流させた。得られた反応溶液を水に注ぎ、トルエンを加え、トルエン層を抽出した。得られたトルエン溶液を、酢酸水溶液および水で洗浄した後、メタノールに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物をトルエン(66.3mL)に溶解させた後、アルミナ(15.5g)を加え、室温で3時間攪拌後、ろ過によってアルミナを除去した。得られたトルエン溶液をアセトンに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物を、アセトンを溶媒として用いてソックスレー洗浄し、組成物PB-3が得られた。得量は0.18gであった。
ポリスチレン換算の数平均分子量は2.1×104であり、重量平均分子量は3.6×104であった。
組成物PB-3に含まれるパラジウム(Pd)およびリン(P)の含有率は、それぞれ2.0質量ppmおよび26質量ppmであった。
【0208】
実施例4
(組成物PB-4の合成)
反応容器内の気体を窒素ガスで置換した後に、化合物9(289.22mg)、化合物10(85.38mg)、テトラヒドロフランを20mL、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウムを10.2mg加えて、撹拌した。得られた反応溶液に、3mol/Lのリン酸カリウム水溶液を1mL滴下し、3時間室温(25℃)で攪拌した。得られた反応溶液に、フェニルボロン酸を24.4mg加えて、1時間室温(25℃)で攪拌した。得られた反応溶液に、N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(キレート剤)を1.7g加えて、1時間還流させた。得られた反応溶液を水に注ぎ、トルエンを加え、トルエン層を抽出した。得られた反応溶液を水に注ぎ、トルエンを加え、トルエン層を抽出した。得られたトルエン溶液を、酢酸水溶液および水で洗浄した後、メタノールに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物をトルエン(66mL)に溶解させた後、アルミナ(16g)を加えた。室温で3時間攪拌後、ろ過によってアルミナを除去した。得られたトルエン溶液をアセトンに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物を、アセトンを溶媒として用いてソックスレー洗浄し、組成物PB-4が得られた。得量は0.23gであった。
ポリスチレン換算の数平均分子量は7.5×104であり、重量平均分子量は2.9×105であった。
組成物PB-4に含まれるパラジウム(Pd)およびリン(P)の含有率は、それぞれ3.6質量ppmおよび11質量ppmであった。
【0209】
実施例5
(組成物PB-5の合成)
反応容器内の気体を窒素ガスで置換した後に、化合物9(1780.69mg)、化合物10(479.69mg)、テトラヒドロフランを120mL、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウムを30.7mg加えて、撹拌した。得られた反応溶液に、3mol/Lのリン酸カリウム水溶液を1mL滴下し、3時間還流させた。得られた反応溶液に、フェニルボロン酸を146.3mg加えて、1時間還流させた。得られた反応溶液に、N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(キレート剤)を10g加えて、1時間還流させた。得られた反応溶液を水に注ぎ、トルエンを加え、トルエン層を抽出した。得られた反応溶液を水に注ぎ、トルエンを加え、トルエン層を抽出した。
得られたトルエン溶液を、酢酸水溶液および水で洗浄した後、メタノールに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物をトルエン(392mL)に溶解させた後、アルミナ(92g)を加えた。室温で3時間攪拌後、ろ過によってアルミナを除去した。得られたトルエン溶液をアセトンに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物をトルエン(392mL)に溶解させた後、アルミナ(92g)を加えた。室温で3時間攪拌後、ろ過によってアルミナを除去した。得られたトルエン溶液をアセトンに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物をトルエン(392mL)に溶解させた後、アルミナ(92g)を加えた。室温で3時間攪拌後、ろ過によってアルミナを除去した。得られたトルエン溶液をアセトンに滴下したところ、析出物が得られた。合計3回繰り返した。得られた析出物を、アセトンを溶媒として用いてソックスレー洗浄し、組成物PB-5が得られた。得量は0.2gであった。
ポリスチレン換算の数平均分子量は4.4×104であり、重量平均分子量は1.1×105であった。
組成物PB-5に含まれるパラジウム(Pd)およびリン(P)の含有率は、それぞれ5.0質量ppmおよび24質量ppmであった。
【0210】
比較例1
(組成物PB-6の合成)
【0211】
反応容器内の気体を窒素ガスで置換した後に、化合物9(290.0mg)、化合物10(62.1mg)、テトラヒドロフランを20mL、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウムを5.1mg加えて、撹拌した。得られた反応溶液に、3mol/Lのリン酸カリウム水溶液を1mL滴下し、3時間還流させた。得られた反応溶液に、フェニルボロン酸を24.4mg加えて、1時間還流させた。得られた反応溶液に、N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(キレート剤)を1.7g加えて、1時間還流させた。得られた反応溶液を水に注ぎ、トルエンを加え、トルエン層を抽出した。得られた反応溶液を水に注ぎ、トルエンを加え、トルエン層を抽出した。得られたトルエン溶液を、酢酸水溶液および水で洗浄した後、メタノールに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物をトルエン(42mL)に溶解させた後、シリカゲル(1.9g)に通液した。得られたトルエン溶液をアセトンに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物をろ過で回収し乾燥することで、組成物PB-6が得られた。得量は0.19gであった。
ポリスチレン換算の数平均分子量は2.3×104であり、重量平均分子量は4.8×104であった。
組成物PB-6に含まれるパラジウム(Pd)およびリン(P)の含有率は、それぞれ56質量ppmおよび32質量ppmであった。
【0212】
比較例2
(組成物PB-7の合成)
【0213】
反応容器内の気体を窒素ガスで置換した後に、化合物9(290.0mg)、化合物10(76.1mg)、テトラヒドロフランを20mL、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウムを5.1mg加えて、撹拌した。得られた反応溶液に、3mol/Lのリン酸カリウム水溶液を1mL滴下し、3時間還流させた。得られた反応溶液に、フェニルボロン酸を24.4mg加えて、1時間還流させた。得られた反応溶液を水に注ぎ、トルエンを加え、トルエン層を抽出した。得られた反応溶液を水に注ぎ、トルエンを加え、トルエン層を抽出した。得られたトルエン溶液を、酢酸水溶液(酸)および水で洗浄した後、メタノールに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物をトルエン(42mL)に溶解させた後、シリカゲル(1.9g)に通液した。得られたトルエン溶液をアセトンに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物をろ過で回収し乾燥することで、組成物PB-7が得られた。得量は0.19gであった。
ポリスチレン換算の数平均分子量は3.7×104であり、重量平均分子量は7.6×104であった。
組成物PB-7に含まれるパラジウム(Pd)およびリン(P)の含有率は、それぞれ100質量ppmおよび51質量ppmであった。
【0214】
比較例3
(組成物PB-8の合成)
【0215】
反応容器内の気体を窒素ガスで置換した後に、化合物9(1780.69mg)、化合物10(512.29mg)、テトラヒドロフランを120mL、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウムを30.7mg加えて、撹拌した。得られた反応溶液に、3mol/Lのリン酸カリウム水溶液(塩基)を1mL滴下し、3時間還流させた。得られた反応溶液のうち60mLを、メタノールに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物をろ過で回収し乾燥することで、組成物PB-8が得られた。得量は0.19gであった。
ポリスチレン換算の数平均分子量は9.4×104であり、重量平均分子量は1.7×105であった。
組成物PB-8に含まれるパラジウム(Pd)およびリン(P)の含有率は、それぞれ140質量ppmおよび73質量ppmであった。
【0216】
比較例4
(組成物PB-9の合成)
【0217】
反応容器内の気体を窒素ガスで置換した後に、化合物9(1780.69mg)、化合物10(512.29mg)、テトラヒドロフランを120mL、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウムを30.7mg加えて、撹拌した。得られた反応溶液に、3mol/Lのリン酸カリウム水溶液(塩基)を1mL滴下し、3時間還流させた。得られた反応溶液に、フェニルボロン酸を146.3mg加えて、1時間還流させた。得られた反応溶液のうち25mLを、メタノールに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物をろ過で回収し乾燥することで、組成物PB-9が得られた。得量は0.10gであった。
ポリスチレン換算の数平均分子量は1.7×104であり、重量平均分子量は3.8×105であった。
組成物PB-9に含まれるパラジウム(Pd)およびリン(P)の含有率は、それぞれ190質量ppmおよび71質量ppmであった。
【0218】
比較例5
(組成物PA-2の合成)
【0219】
【化42】
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物10(89.26mg)、「J.Am.Chem.Soc.,2010,132,11437-11439」に記載の方法に従って合成した化合物11(319.77mg)、テトラヒドロフラン(20mL)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(5.1mg)を加え、撹拌した。得られた反応溶液に、3mol/Lのリン酸カリウム水溶液を1mL滴下し、3時間還流させた。得られた反応溶液に、フェニルボロン酸を24.4mg加えて、1時間還流させ、反応溶液Aを得た。
得られた反応溶液A(10mL)をメタノールに滴下したところ、析出物が得られた。
得られた析出物をろ過で回収し乾燥することで、組成物PA-2が得られた。得量は0.14gであった。
ポリスチレン換算の数平均分子量は7.7×10
4であり、重量平均分子量は1.7×10
5であった。組成物PA-2に含まれるパラジウム(Pd)およびリン(P)の含有率は、それぞれ1400質量ppmおよび470質量ppmであった。
【0220】
実施例6
(組成物PA-1の合成)
【0221】
比較例5で得られた反応溶液A(10mL)にN,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(キレート剤)を1.7g加えて、1時間還流させた。得られた反応溶液を水に注ぎ、トルエンを加え、トルエン層を抽出した。得られたトルエン溶液を、酢酸水溶液および水で洗浄した後、メタノールに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物をトルエン(42mL)に溶解させた後、アルミナ(10.5g)を加え、室温で3時間攪拌後、ろ過によってアルミナを除去した。得られたトルエン溶液をアセトンに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物を、アセトンを溶媒として用いてソックスレー洗浄し、組成物PA-1が得られた。得量は0.15gであった。
ポリスチレン換算の数平均分子量は8.2×104であり、重量平均分子量は1.7×105であった。
組成物PA-1に含まれるパラジウム(Pd)およびリン(P)の含有率は、それぞれ9.0質量ppmおよび50質量ppmであった。
【0222】
参考例1(組成物PC-1の合成)
四つ口フラスコに、WO2011-052709に記載の方法で合成した化合物12を1520mg、及び、クロロベンゼンを30mL加え、室温(25℃)で30分間アルゴンバブリングを行った。その後、反応液にトリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムを26.47mg、[トリ(ターシャリーブチル)ホスホニウム]テトラフルオロボレートを34.82mg、3mol/Lのリン酸カリウム水溶液を3.33加えた。反応液をオイルバス温度80℃で撹拌しながら、361.3mgの化合物10を30mLのテトラヒドロフランに溶解させた溶液を10分かけて滴下し、1時間攪拌した。その後、反応液にフェニルホウ酸を100.0mg加え、さらに1時間攪拌した後、反応を停止した。なお、反応はアルゴン雰囲気下で行った。
その後、反応液にN,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(キレート剤)を10g及び純水を90mL加え、3時間還流しながら攪拌を行った。反応液中の水層を除去後、有機層を水90mlで2回、3質量(wt)%の酢酸水溶液100mLで2回、さらに水100mLで2回洗浄し、メタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーをろ過後、乾燥し、得られたポリマーをトルエンに溶解させた。トルエン溶液をアルミナ/シリカゲルカラムに通し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーろ過後、乾燥し、組成物PC-1を745mg得た。組成物PC-1に含まれるパラジウム(Pd)およびリン(P)の含有率は、それぞれ20質量ppmおよび20質量ppmであった。
【0223】
参考例2(組成物PC-2の合成)
四つ口フラスコに、WO2011-052709に記載の方法で合成した化合物12を1520mg、及び、テトラヒドロフランを100mL加え、室温(25℃)で30分間アルゴンバブリングを行った。その後、反応液にトリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムを9.11mg、[トリ(ターシャリーブチル)ホスホニウム]テトラフルオロボレートを11.61mg、3mol/Lのリン酸カリウム水溶液を3.33mL加えた。
反応液をオイルバス温度80℃で撹拌しながら、357.1mgの化合物10を30mLのテトラヒドロフランに溶解させた溶液を10分かけて滴下し、1時間攪拌した。その後、反応液にフェニルホウ酸を100.0mg加え、さらに1時間攪拌した後、反応を停止した。なお、反応はアルゴン雰囲気下で行った。
その後、反応液にN,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(キレート剤)を10g及び純水を90mL加え、3時間還流しながら攪拌を行った。反応液中の水層を除去後、有機層を水90mlで2回、3質量(wt)%の酢酸水溶液100mLで2回、さらに水100mLで2回洗浄し、メタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーをろ過後、乾燥し、得られたポリマーをトルエンに溶解させた。トルエン溶液をアルミナ/シリカゲルカラムに通し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーろ過後、乾燥し、組成物PC-2を965.1mg得た。組成物PC-2に含まれるパラジウム(Pd)およびリン(P)の含有率は、それぞれ30質量ppmおよび10質量ppmであった。
【0224】
参考例3(組成物PC-3の合成)
四つ口フラスコに、WO2011-052709に記載の方法で合成した化合物12を1520mg、及び、テトラヒドロフランを70mL加え、室温(25℃)で30分間アルゴンバブリングを行った。その後、反応液にトリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムを45.79mg、[トリ(ターシャリーブチル)ホスホニウム]テトラフルオロボレートを58.03mg、3mol/Lのリン酸カリウム水溶液を3.33mL加えた。
反応液をオイルバス温度80℃で撹拌しながら、351.2mgの化合物10を30mLのテトラヒドロフランに溶解させた溶液を10分かけて滴下し、1時間攪拌した。その後、反応液にフェニルホウ酸を100.0mg加え、さらに1時間攪拌した後、反応を停止した。なお、反応はアルゴン雰囲気下で行った。
その後、反応液にN,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(キレート剤)を10g及び純水を90mL加え、3時間還流しながら攪拌を行った。反応液中の水層を除去後、有機層を水90mlで2回、3質量(wt)%の酢酸水溶液100mLで2回、さらに水100mLで2回洗浄し、メタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーをろ過後、乾燥し、得られたポリマーをトルエンに溶解させた。トルエン溶液をアルミナ/シリカゲルカラムに通し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーろ過後、乾燥し、組成物PC-3を956.5mg得た。
組成物PC-3に含まれるパラジウム(Pd)およびリン(P)の含有率は、それぞれ20質量ppmおよび40質量ppmであった。
【0225】
参考例4(組成物PC-4の合成)
四つ口フラスコに、WO2011-052709に記載の方法で合成した化合物12を1520mg、及び、テトラヒドロフランを70mL加え、室温(25℃)で30分間アルゴンバブリングを行った。その後、反応液にトリス(ジベンジリデンアセトン)パラジウムを9.16mg、[トリ(ターシャリーブチル)ホスホニウム]テトラフルオロボレートを11.61mg、3mol/Lのリン酸カリウム水溶液を3.33mL加えた。反応液をオイルバス温度80℃で撹拌しながら、342.7mgの化合物10を30mLのテトラヒドロフランに溶解させた溶液を10分かけて滴下し、1時間攪拌した。その後、反応液にフェニルホウ酸を100.0mg加え、さらに1時間攪拌した後、反応を停止した。なお、反応はアルゴン雰囲気下で行った。
その後、反応液にN,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(キレート剤)を10g及び純水を90mL加え、3時間還流しながら攪拌を行った。反応液中の水層を除去後、有機層を水90mlで2回、3質量(wt)%の酢酸水溶液100mLで2回、さらに水100mLで2回洗浄し、メタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーをろ過後、乾燥し、得られたポリマーをトルエンに溶解させた。トルエン溶液をアルミナ/シリカゲルカラムに通し、得られた溶液をメタノールに注いでポリマーを析出させた。ポリマーろ過後、乾燥し、組成物PC-4を781.4mg得た。
組成物PC-4に含まれるパラジウム(Pd)およびリン(P)の含有率は、それぞれ340質量ppmおよび10質量ppmであった。
【0226】
合成例8(高分子化合物PG-1の合成)
スチレン(和光純薬製)2.06g、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン(アルドリッチ製)2.43g、2-〔O-[1’-メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ〕エチル-メタクリレート(昭和電工製、商品名:カレンズMOI-BM)1.00g、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)0.06g、PGMEA(和光純薬製)14.06gを、50ml耐圧容器(エース製)に入れ、窒素をバブリングした後、密栓し、60℃のオイルバス中で16時間重合させて、高分子化合物PG-1が溶解している粘稠なPGMEA溶液を得た。ポリスチレン換算の数平均分子量は1.1×105であり、重量平均分子量は2.3×105であった。高分子化合物PG-1の構造は次の通りである。
【0227】
【0228】
合成例9(高分子化合物PG-2の合成)
4-アミノスチレン(アルドリッチ製)3.50g、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン(アルドリッチ製)13.32g、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)0.08g、PGMEA(和光純薬製)25.36gを、125ml耐圧容器(エース製)に入れ、窒素をバブリングした後、密栓し、60℃のオイルバス中で48時間重合させて、高分子化合物PG-2が溶解している粘稠なPGMEA溶液を得た。
【0229】
【0230】
合成例10(塗布溶液1の調製)
合成例8で得た高分子化合物PG-1のPGMEA溶液2.00gと、合成例9で得た高分子化合物PG-2のPGMEA溶液0.79gと、PGMEA2.00gとをサンプル瓶に入れ、撹拌溶解して均一な塗布溶液1を調製した。
【0231】
実施例7(有機薄膜トランジスタSA-1の作製および評価)
実施例6で得られた組成物PA-1を含む溶液を用いて、
図3に示す構造を有するボトムゲートボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタ素子を作製した。
基板1上にスパッター蒸着法によりクロム(Cr)層を蒸着した。フォトリソグラフィ工程により、ゲート電極4を形成した。合成例10で調製した塗布溶液1をスピンコート法により塗布し、ホットプレート上で180℃、30分乾燥させ、絶縁層3を形成した。
次にシャドウマスクを用いた蒸着法により金(Au)層を蒸着し、ソース電極5およびドレイン電極6を形成した。このときのソース電極5およびドレイン電極6のチャネル長は20μm、チャンネル幅は2mmであった。さらに、パーフルオロベンゼンチオールのイソプロピルアルコール溶液に、上記の基板を2分間浸漬することにより、基板上に形成した金電極の表面を修飾した。続いて0.5質量%の高分子化合物PA-1のトルエン溶液をスピンコートし、ホットプレートで120℃で30分間乾燥することで、有機半導体層2を形成し、有機薄膜トランジスタSA-1を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSA-1のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、0.16cm
2/Vsであった。結果を表1に表す。
【0232】
比較例17(有機薄膜トランジスタSA-2の作製および評価)
組成物PA-1を含有するトルエン溶液(0.5質量%)に替えて組成物PA-1と組成物PA-2とを含有するトルエン溶液(0.5質量%、組成物PA-1/組成物PA-2=96質量部/4質量部)を用いたこと以外は実施例7と同様にして有機薄膜トランジスタSA-2を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSA-2のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、0.11cm2/Vsであった。結果を表1に表す。
【0233】
比較例18(有機薄膜トランジスタSA-3の作製および評価)
組成物PA-1を含有するトルエン溶液(0.5質量%)に替えて組成物PA-1と組成物PA-2とを含有するトルエン溶液(0.5質量%、組成物PA-1/組成物PA-2=87質量部/13質量部)を用いたこと以外は実施例7と同様にして有機薄膜トランジスタSA-3を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSA-3のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、0.06cm2/Vsであった。結果を表1に表す。
【0234】
比較例6(有機薄膜トランジスタSA-4の作製および評価)
組成物PA-1を含有するトルエン溶液(0.5質量%)に替えて組成物PA-1と組成物PA-2とを含有するトルエン溶液(0.5質量%、組成物PA-1/組成物PA-2=61質量部/39質量部)を用いたこと以外は実施例7と同様にして有機薄膜トランジスタSA-4を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSA-4のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、0.015cm2/Vsであった。結果を表1に表す。
【0235】
比較例7(有機薄膜トランジスタSA-5の作製および評価)
組成物PA-1を含有するトルエン溶液(0.5質量%)に替えて組成物PA-1と組成物PA-2とを含有するトルエン溶液(0.5質量%、組成物PA-1/組成物PA-2=50質量部/50質量部)を用いたこと以外は実施例7と同様にして有機薄膜トランジスタSA-5を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSA-5のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、0.005cm2/Vsであった。結果を表1に表す。
【0236】
比較例8(有機薄膜トランジスタSA-6の作製および評価)
組成物PA-1を含有するトルエン溶液(0.5質量%)に替えて組成物PA-1と組成物PA-2とを含有するトルエン溶液(0.5質量%、組成物PA-1/組成物PA-2=24質量部/76質量部)を用いたこと以外は実施例7と同様にして有機薄膜トランジスタSA-6を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSA-6のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、0.0003cm2/Vsであった。結果を表1に表す。
【0237】
実施例10(有機薄膜トランジスタSB-1の作製および評価)
実施例2で得られた組成物PB-1を含む溶液を用いて、
図1に示す構造を有するトップゲートボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタ素子を作製した。
基板1上にシャドウマスクを用いた蒸着法によりクロム(Cr)層および金(Au)層を蒸着し、ソース電極5およびドレイン電極6を形成した。このときのソース電極5およびドレイン電極6のチャネル長は20μm、チャンネル幅は2mmであった。次に、フェニルエチルトリクロロシランのトルエン溶液に、上記の基板を2分間浸漬することにより、基板表面をシラン処理した。その後、さらに、パーフルオロベンゼンチオールのイソプロピルアルコール溶液に、上記の基板を2分間浸漬することにより、基板上に形成した金電極の表面を修飾した。続いて0.5質量%の高分子化合物PB-1のトルエン溶液(0.5質量%)をスピンコートし、ホットプレートで120℃で30分間乾燥することで、有機半導体層2を形成した。テフロン(登録商標)製の絶縁膜をスピンコート法により約600nmの厚さになるよう成膜し、ホットプレート上で80℃、10分間加熱することで、絶縁層3を形成した。この絶縁膜3上に、シャドウマスクを用いた蒸着法によりゲート電極4となるアルミニウムを形成することで、有機薄膜トランジスタSB-1を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSB-1のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、1.58cm
2/Vsであった。結果を表2に表す。
【0238】
実施例11(有機薄膜トランジスタSB-2の作製および評価)
組成物PB-1を含有するトルエン溶液(0.5質量%)に替えて、実施例1で得られた組成物PB-2を含有するトルエン溶液(0.5質量%)を用いたこと以外は実施例10と同様にして有機薄膜トランジスタSB-2を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSB-2のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、1.61cm2/Vsであった。結果を表2に表す。
【0239】
実施例12(有機薄膜トランジスタSB-3の作製および評価)
組成物PB-1を含有するトルエン溶液(0.5質量%)に替えて、実施例3で得られた組成物PB-3を含有するトルエン溶液(0.5質量%)を用いたこと以外は実施例10と同様にして有機薄膜トランジスタSB-3を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSB-3のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、1.23cm2/Vsであった。結果を表2に表す。
【0240】
実施例13(有機薄膜トランジスタSB-4の作製および評価)
組成物PB-1を含有するトルエン溶液(0.5質量%)に替えて、実施例4で得られた組成物PB-4を含有するトルエン溶液(0.5質量%)を用いたこと以外は実施例10と同様にして有機薄膜トランジスタSB-4を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSB-4のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、1.91cm2/Vsであった。結果を表2に表す。
【0241】
実施例14(有機薄膜トランジスタSB-5の作製および評価)
組成物PB-1を含有するトルエン溶液(0.5質量%)に替えて、実施例5で得られた組成物PB-5を含有するトルエン溶液(0.5質量%)を用いたこと以外は実施例10と同様にして有機薄膜トランジスタSB-5を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSB-5のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、1.49cm2/Vsであった。結果を表2に表す。
【0242】
比較例9(有機薄膜トランジスタSB-6の作製および評価)
組成物PB-1を含有するトルエン溶液(0.5質量%)に替えて、比較例1で得られた組成物PB-6を含有するトルエン溶液(0.5質量%)を用いたこと以外は実施例10同様にして有機薄膜トランジスタSB-6を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSB-6のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、0.59cm2/Vsであった。結果を表2に表す。
【0243】
比較例10(有機薄膜トランジスタSB-7の作製および評価)
組成物PB-1を含有するトルエン溶液(0.5質量%)に替えて、比較例2で得られた組成物PB-7を含有するトルエン溶液(0.5質量%)を用いたこと以外は実施例10と同様にして有機薄膜トランジスタSB-7を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSB-7のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、0.84cm2/Vsであった。結果を表2に表す。
【0244】
比較例11(有機薄膜トランジスタSB-8の作製および評価)
組成物PB-1を含有するトルエン溶液(0.5質量%)に替えて、比較例3で得られた組成物PB-8を含有するトルエン溶液(0.5質量%)を用いたこと以外は実施例10と同様にして有機薄膜トランジスタSB-8を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSB-8のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、0.80cm2/Vsであった。結果を表2に表す。
【0245】
比較例12(有機薄膜トランジスタSB-9の作製および評価)
組成物PB-1を含有するトルエン溶液(0.5質量%)に替えて、比較例4で得られた組成物PB-9を含有するトルエン溶液(0.5質量%)を用いたこと以外は実施例10と同様にして有機薄膜トランジスタSB-9を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSB-9のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、0.63cm2/Vsであった。結果を表2に表す。
【0246】
参考例5(有機薄膜トランジスタSC-1の作製および評価)
組成物PC-1を含む溶液を用いて、
図3に示す構造を有するボトムゲートボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタ素子を作製した。
ゲート電極4となる高濃度にドーピングされたn-型シリコン基板の表面を熱酸化し、絶縁層3としてシリコン酸化膜(以下、「熱酸化膜」という。)を形成した。次にフォトリソグラフィー工程により熱酸化膜上にクロム(Cr)層、金(Au)層からなるソース電極5およびドレイン電極6を形成した。このときのソース電極5およびドレイン電極6のチャネル長は20μm、チャネル幅は2mmであった。次に、フェニルエチルトリクロロシランのトルエン溶液に、上記の基板を2分間浸漬することにより、基板表面をシラン処理した。その後、さらに、パーフルオロベンゼンチオールのイソプロピルアルコール溶液に、上記の基板を2分間浸漬することにより、基板上に形成した金電極の表面を修飾した。次に、0.5質量%の組成物PC-1のオルトジクロロベンゼン溶液をスピンコートし、有機半導体層2を形成した。その後、窒素ガス雰囲気下において170℃で30分間加熱することでし、有機薄膜トランジスタSC-1を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSC-1のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、0.4cm
2/Vsであった。結果を表3に表す。
【0247】
参考例6(有機薄膜トランジスタSC-2の作製および評価)
組成物PC-1を含有するオルトジクロロベンゼン溶液(0.5質量%)に替えて高分子化合物PC-2を含有するオルトジクロロベンゼン溶液(0.5質量%)を用いたこと以外は参考例5と同様にして有機薄膜トランジスタSC-2を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSC-2のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、0.19cm2/Vsであった。結果を表3に表す。
【0248】
参考例7(有機薄膜トランジスタSC-3の作製および評価)
組成物PC-1を含有するオルトジクロロベンゼン溶液(0.5質量%)に替えて組成物PC-3を含有するオルトジクロロベンゼン溶液(0.5質量%)を用いたこと以外は参考例5と同様にして有機薄膜トランジスタSC-3を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSC-3のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、0.04cm2/Vsであった。結果を表3に表す。
【0249】
参考例8(有機薄膜トランジスタSC-4の作製および評価)
組成物PC-1を含有するオルトジクロロベンゼン溶液(0.5質量%)に替えて組成物PC-4を含有するオルトジクロロベンゼン溶液(0.5質量%)を用いたこと以外は参考例5と同様にして有機薄膜トランジスタSC-4を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSC-4のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、0.77cm2/Vsであった。結果を表3に表す。
【0250】
【0251】
【0252】
【0253】
合成例8
(化合物14の合成)
【0254】
【0255】
還流管を取り付けた反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物13(4.80g、16.8mmol)および乾燥THF(280mL)を加え、アルゴンガスバブリングによって30分間脱気した。その後、そこへ、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(769mg、0.839mmol)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボラート(1.02g、3.36mmol)および3Mリン酸カリウム水溶液(84mL)を加え、80℃に加熱した。その後、そこへ、アルゴンガスバブリングによって30分間脱気した化合物4(44.7g、42.0mmol)の乾燥THF(170mL)溶液を80℃で5分間かけて滴下し、同温で4.5時間加熱した。その後、ヘキサン(200mL)を用いて反応生成物を抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。得られたろ液をエバポレーターで濃縮した後、溶媒を留去した。得られた残渣をヘキサンおよびクロロホルムの混合溶媒を移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィを用いて精製することで、化合物14を6.8g得た。収率は30%であった。この操作を繰り返し行うことで、化合物14の必要量を得た。
【0256】
1H-NMR(300MHz、CDCl3):δ(ppm)=0.88(t、12H)、0.98(t、6H)、1.24(m、120H)、1.66(m、8H)、3.21(q、4H)、7.10(d、2H)、7.22(d、2H)、7.53(d、2H)、7.74(d、2H)、7.85(s、2H).
【0257】
合成例9
(化合物15の合成)
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物14(7.68g、5.78mmol)および乾燥塩化メチレン(190mL)を加えた。その後、そこへ、1Mの三臭化ホウ素の塩化メチレン溶液(23.1mL、23.1mmol)を-78℃で加えた後、室温まで昇温し、室温で4時間攪拌した。その後、そこへ、水を加え、クロロホルムを用いて反応生成物を抽出した。得られた有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。得られたろ液をエバポレーターで濃縮した後、溶媒を留去した。得られた残渣をヘキサンを移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィを用いて精製することで、化合物15を4.78g得た。収率は67%であった。
【0258】
1H-NMR(300MHz、CD2Cl2):δ(ppm)=0.93(t、12H)、1.24(m、120H)、2.35(m、8H)、7.13(d、2H)、7.40(d、2H)、7.74(d、2H)、8.18(d、2H).
【0259】
合成例10
(化合物16の合成)
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物15(4.77g、3.78mmol)および乾燥THF(375mL)を加えた。その後、そこへ、N-ブロモこはく酸イミド(1.47g、8.26mmol)を室温で加え、3時間室温で攪拌した。その後、そこへ、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液(10mL)および水(20mL)を加え、5分間攪拌した。その後、ヘキサンを用いて反応生成物を抽出した。得られた有機層を水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。得られたろ液をエバポレーターで濃縮した後、溶媒を留去した。得られた残渣をヘキサンを移動層とするシリカゲルカラムクロマトグラフィを用いて精製し、ヘキサンを用いて再結晶することで、化合物16を4.06g得た。収率は76%であった。
【0260】
1H-NMR(300MHz、CDCl3):δ(ppm)=0.88(t、12H)、1.24(m、120H)、2.22(m、8H)、7.052(s、2H)、7.57(d、2H)、7.04(d、2H).
【0261】
実施例15
(組成物PD-1の合成)
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物16(0.285g、0.200mmol)、化合物10(0.078g、0.200mmol)、テトラヒドロフラン(20mL)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(10.2mg)を加え、撹拌した。その後、そこへ、2mol/Lの炭酸カリウム水溶液(1.00mL)を加え、25℃で3時間攪拌した。その後、そこへ、フェニルボロン酸(10.0mg)を加え、25℃で1時間攪拌した。その後、そこへ、N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(0.1g)を加え、80℃で3時間攪拌した。得られた反応液を水に滴下した後、トルエンを用いて抽出した。得られた有機層を酢酸水溶液および水で洗浄した後、メタノールに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物をトルエン(63mL)に溶解させた後、アルミナ(15g)を加え、室温で3時間攪拌後、ろ過によってアルミナを除去した。得られた溶液をアセトンに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物を、アセトンを溶媒として用いてソックスレー洗浄し、乾燥することで、組成物PD-1を得た。ポリスチレン換算の数平均分子量は5.6×10
4であり、重量平均分子量は1.2×10
5であった。
組成物PD-1に含まれるパラジウム(Pd)およびリン(P)の含有率は、それぞれ3質量ppmおよび10質量ppmであった。
【0262】
実施例16
(組成物PD-2の合成)
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物16(0.285g、0.200mmol)、化合物10(0.078g、0.200mmol)、テトラヒドロフラン(20mL)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(10.2mg)を加え、撹拌した。その後、そこへ、2mol/Lの炭酸カリウム水溶液(1.00mL)を加え、50℃まで昇温した後、50℃で3時間攪拌した。その後、そこへ、フェニルボロン酸(10.0mg)を加え、50℃で1時間攪拌した。その後、そこへ、N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(0.1g)を加え、80℃で3時間攪拌した。得られた反応液を水に滴下した後、トルエンを用いて抽出した。得られた有機層を酢酸水溶液および水で洗浄した後、メタノールに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物をトルエン(63mL)に溶解させた後、アルミナ(15g)を加え、室温で3時間攪拌後、ろ過によってアルミナを除去した。得られた溶液をアセトンに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物を、アセトンを溶媒として用いてソックスレー洗浄し、乾燥することで、組成物PD-2を得た。ポリスチレン換算の数平均分子量は9.5×104であり、重量平均分子量は2.0×105であった。
組成物PD-2に含まれるパラジウム(Pd)およびリン(P)の含有率は、それぞれ5質量ppmおよび24質量ppmであった。
【0263】
比較例13
(組成物PD-3の合成)
反応容器内を窒素ガス雰囲気とした後、化合物16(0.285g、0.200mmol)、化合物10(0.078g、0.200mmol)、テトラヒドロフラン(20mL)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(10.2mg)を加え、撹拌した。その後、そこへ、2mol/Lの炭酸カリウム水溶液(1.00mL)を加え、45℃まで昇温した後、45℃で3時間攪拌した。その後、そこへ、フェニルボロン酸(10.0mg)を加え、45℃で1時間攪拌した。その後、そこへ、N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(0.1g)を加え、80℃で3時間攪拌した。得られた反応液を水に滴下した後、トルエンを用いて抽出した。得られた有機層を酢酸水溶液および水で洗浄した後、シリカゲルカラムを用いて精製した。得られた有機層をアセトンに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物を、アセトンを溶媒として用いてソックスレー洗浄し、乾燥することで、組成物PD-3を得た。ポリスチレン換算の数平均分子量は3.5×104であり、重量平均分子量は1.1×105であった。
組成物PD-3に含まれるパラジウム(Pd)およびリン(P)の含有率は、それぞれ17質量ppmおよび145質量ppmであった。
【0264】
比較例14
(組成物PB-10の合成)
反応容器内の気体を窒素ガスで置換した後に、化合物9(6232.40mg)、化合物10(1793.02mg)、テトラヒドロフランを413.7mL、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウムを107.3mg加えて、撹拌した。得られた反応溶液に、3mol/Lのリン酸カリウム水溶液を21mL滴下し、3時間25℃で攪拌した。得られた反応溶液のうち17mlをメタノールに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物をろ過によって回収し、減圧乾燥することで組成物PB-10を得た。
ポリスチレン換算の数平均分子量は4.5×104であり、重量平均分子量は1.1×105であった。
組成物PB-10に含まれるパラジウム(Pd)およびリン(P)の含有率は、それぞれ1300質量ppmおよび37質量ppmであった。
【0265】
実施例17
(組成物PB-11の合成)
比較例14で得られた組成物PB-10(0.1g)をトルエンに溶解させて、N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(0.1g)を加え、80℃で1時間攪拌した。得られた有機層を酢酸水溶液および水で洗浄した後、メタノールに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物をトルエン(63mL)に溶解させた後、アルミナ(15g)を加え、室温で3時間攪拌後、ろ過によってアルミナを除去した。得られた溶液をアセトンに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物を再度、トルエン(63mL)に溶解させた後、アルミナ(15g)を加え、室温で3時間攪拌後、ろ過によってアルミナを除去した。得られた溶液をアセトンに滴下したところ、析出物が得られた。得られた析出物をろ過によって回収し、減圧乾燥することで組成物PB-11を得た。
ポリスチレン換算の数平均分子量は4.3×104であり、重量平均分子量は1.1×105であった。
組成物PB-11に含まれるパラジウム(Pd)およびリン(P)の含有率は、それぞれ3質量ppmおよび12質量ppmであった。
【0266】
実施例18(有機薄膜トランジスタSD-1の作製および評価)
組成物PB-1を含有するトルエン溶液(0.5質量%)に替えて、実施例15で得られた組成物PD-1を含有するトルエン溶液(0.5質量%)を用いたこと以外は実施例10と同様にして有機薄膜トランジスタSD-1を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSD-1のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、1.31cm2/Vsであった。
【0267】
実施例19(有機薄膜トランジスタSD-2の作製および評価)
組成物PB-1を含有するトルエン溶液(0.5質量%)に替えて、実施例16で得られた組成物PD-2を含有するトルエン溶液(0.5質量%)を用いたこと以外は実施例10と同様にして有機薄膜トランジスタSD-2を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSD-2のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、2.08cm2/Vsであった。
【0268】
比較例15(有機薄膜トランジスタSD-3の作製および評価)
組成物PB-1を含有するトルエン溶液(0.5質量%)に替えて、比較例13で得られた組成物PD-3を含有するトルエン溶液(0.5質量%)を用いたこと以外は実施例10と同様にして有機薄膜トランジスタSD-3を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSD-3のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、1.05cm2/Vsであった。
【0269】
比較例16(有機薄膜トランジスタSB-10の作製および評価)
組成物PB-1を含有するトルエン溶液(0.5質量%)に替えて、
組成物PB-10と組成物PA-11とを含有するトルエン溶液(0.5質量%、組成物PB-10/組成物PB-11=50質量部/50質量部)を用いたこと以外は実施例10と同様にして有機薄膜トランジスタSB-10を作製した。
得られた有機薄膜トランジスタSB-10のゲート電圧Vg、ソース・ドレイン間電圧Vsdを変化させ、トランジスタ特性を測定した。キャリア移動度は、0.94cm2/Vsであった。
【産業上の利用可能性】
【0270】
本発明によれば、電界効果移動度が高い有機薄膜トランジスタの製造に有用な高分子化合物を含む組成物及び当該有機薄膜トランジスタを提供することができる。
【符号の説明】
【0271】
1…基板、2…有機半導体層、3…絶縁層、4…ゲート電極、5…ソース電極、6…ドレイン電極、100…有機薄膜トランジスタ、110…有機薄膜トランジスタ、120…有機薄膜トランジスタ、130…有機薄膜トランジスタ、140…有機薄膜トランジスタ、150…有機薄膜トランジスタ、160…有機薄膜トランジスタ