(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】樹脂製歯車
(51)【国際特許分類】
F16H 55/06 20060101AFI20220117BHJP
F16H 55/14 20060101ALI20220117BHJP
F16F 15/126 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
F16H55/06
F16H55/14
F16F15/126 B
F16F15/126 D
(21)【出願番号】P 2018012832
(22)【出願日】2018-01-29
【審査請求日】2020-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】飛石 好輝
(72)【発明者】
【氏名】森尾 洋一
(72)【発明者】
【氏名】青柳 達也
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-089778(JP,A)
【文献】特開2008-019928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/06
F16H 55/14
F16F 15/126
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の金属製ブッシュと、
前記金属製ブッシュの周囲に設けられ、外周部に歯形が形成された環状の樹脂部材と、
前記金属製ブッシュと前記樹脂部材との間に設けられた弾性部材と、を備え、
前記弾性部材は、
前記金属製ブッシュ及び前記樹脂部材の軸方向に沿って並ぶ一対の第1弾性ゴム層と、
一対の前記第1弾性ゴム層の間に配置された1又は複数の第2弾性ゴム層と、を含み、
前記第1弾性ゴム層の耐油性は、前記第2弾性ゴム層の耐油性よりも高い、樹脂製歯車。
【請求項2】
前記第1弾性ゴム層は、前記金属製ブッシュと前記樹脂部材との間にゴム成形又は圧入されている、請求項1に記載の樹脂製歯車。
【請求項3】
前記第1弾性ゴム層は、前記金属製ブッシュと前記樹脂部材との間から取り外された状態において径方向の幅が第1幅の環状に設けられ、
前記第2弾性ゴム層は、前記金属製ブッシュと前記樹脂部材との間から取り外された状態において径方向の幅が第2幅の環状に設けられ、
前記第1幅は、前記第2幅よりも大きい、請求項2に記載の樹脂製歯車。
【請求項4】
前記金属製ブッシュの外周面及び前記樹脂部材の内周面の少なくとも何れかには、環状の凹部が形成されており、
前記第1弾性ゴム層は、前記凹部に嵌められている、請求項1~3の何れか一項に記載の樹脂製歯車。
【請求項5】
前記第1弾性ゴム層及び前記第2弾性ゴム層は、前記金属製ブッシュに接着されており、
前記第2弾性ゴム層の接着性は、前記第1弾性ゴム層の接着性よりも高い、請求項1~4の何れか一項に記載の樹脂製歯車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製歯車に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製歯車は、軽量で且つ静粛性に優れており、例えば車両用又は産業用の歯車として広く用いられている。樹脂製歯車としては、環状の金属製ブッシュと、金属製ブッシュの周囲に設けられ外周部に歯形が形成された環状の樹脂部材と、金属製ブッシュと樹脂部材との間に設けられた弾性部材と、を備えた樹脂製歯車が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような樹脂製歯車では、他の歯車との噛み合いで衝撃が生じた場合、弾性部材の弾性変形によって当該衝撃が吸収されて減衰される、すなわち、弾性部材の減衰機能が作用する。しかし、オイルにより潤滑されるオイル潤滑下では、弾性部材の材質の如何によっては、弾性部材が劣化し、所望の減衰機能を得ることが困難になる。
【0005】
そこで、本発明は、オイル潤滑下においても所望の減衰機能を得ることが可能な樹脂製歯車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る樹脂製歯車は、環状の金属製ブッシュと、金属製ブッシュの周囲に設けられ、外周部に歯形が形成された環状の樹脂部材と、金属製ブッシュと樹脂部材との間に設けられた弾性部材と、を備え、弾性部材は、金属製ブッシュ及び樹脂部材の軸方向に沿って並ぶ一対の第1弾性ゴム層と、一対の第1弾性ゴム層の間に配置された1又は複数の第2弾性ゴム層と、を含み、第1弾性ゴム層の耐油性は、第2弾性ゴム層の耐油性よりも高い。
【0007】
この樹脂製歯車では、オイル潤滑下で用いられた場合、そのオイルに対して第2弾性ゴム層をそれよりも耐油性が高い一対の第1弾性ゴム層でシールすることができる。これにより、第2弾性ゴム層の材質の如何にかかわらず、弾性部材が劣化するのを抑制できる。ひいては、弾性部材の劣化を抑制しながら、所望の減衰機能が得られるように当該第2弾性ゴム層の材質を適宜に調整することが可能となる。すなわち、オイル潤滑下においても所望の減衰機能を得ることが可能となる。
【0008】
本発明の一態様に係る樹脂製歯車では、第1弾性ゴム層は、金属製ブッシュと樹脂部材との間にゴム成形又は圧入されていてもよい。この構成によれば、金属製ブッシュと樹脂部材との間を、一対の第1弾性ゴム層によって確実にシールすることができる。オイル潤滑のオイルに対し第2弾性ゴム層を一対の第1弾性ゴム層で確実にシールすることが可能となる。
【0009】
本発明の一態様に係る樹脂製歯車では、第1弾性ゴム層は、金属製ブッシュと樹脂部材との間から取り外された状態において径方向の幅が第1幅の環状に設けられ、第2弾性ゴム層は、金属製ブッシュと樹脂部材との間から取り外された状態において径方向の幅が第2幅の環状に設けられ、第1幅は、第2幅よりも大きくてもよい。この構成によれば、第1弾性ゴム層が第2弾性ゴム層に比べて径方向に潰れるように使用される。これにより、オイル潤滑のオイルに対し第2弾性ゴム層を一対の第1弾性ゴム層で一層確実にシールすることが可能となる。
【0010】
本発明の一態様に係る樹脂製歯車では、金属製ブッシュの外周面及び樹脂部材の内周面の少なくとも何れかには、環状の凹部が形成されており、第1弾性ゴム層は、凹部に嵌められていてもよい。この構成によれば、凹部を利用して、金属製ブッシュ及び樹脂部材の少なくとも何れかに第1弾性ゴム層を確実に取り付けることができる。オイル潤滑のオイルに対し第2弾性ゴム層を一対の第1弾性ゴム層で確実にシールすることが可能となる。
【0011】
本発明の一態様に係る樹脂製歯車では、第1弾性ゴム層及び第2弾性ゴム層は、金属製ブッシュに接着されており、第2弾性ゴム層の接着性は、第1弾性ゴム層の接着性よりも高くてもよい。この構成によれば、一対の第1弾性ゴム層でシールされた第2弾性ゴム層によって弾性部材の接着性を高めることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、オイル潤滑下においても所望の減衰機能を得ることが可能な樹脂製歯車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る樹脂製歯車の正面図である。
【
図3】
図3は、変形例に係る第1弾性ゴム層及び第2弾性ゴム層の
図2に対応する断面を拡大して示す図である。
【
図4】
図4は、他の変形例に係る弾性部材の
図2に対応する断面を拡大して示す図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る樹脂製歯車の
図2に対応する断面を拡大して示す図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態に係る樹脂製歯車の
図2に対応する断面を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
[第1実施形態]
図1及び
図2に示されるように、樹脂製歯車1は、いわゆる高強度樹脂ギヤであって、車両用又は産業用の歯車として用いられる。例えば樹脂製歯車1は、エンジン内のバランスシャフトギヤ及びカムシャフトギヤ等に使用できる。樹脂製歯車1は、金属製ブッシュ3と、弾性部材5と、樹脂部材7と、を備える。樹脂製歯車1は、平歯車である。
【0016】
金属製ブッシュ3は、例えば回転軸(図示省略)に取り付けられる部材である。金属製ブッシュ3は、円環状である。金属製ブッシュ3は、例えば、ステンレス鋼等の金属で形成されている。金属製ブッシュ3には、貫通孔3hが設けられている。貫通孔3hは、金属製ブッシュ3の一方の端面3aと他方の端面3bとを貫通している。貫通孔3hには、回転軸が挿入される。金属製ブッシュ3は、内周面4aと、外周面4bと、を有している。内周面4aは、貫通孔3hを画成している。外周面4bは、弾性部材5と対向する面である。
【0017】
弾性部材5は、樹脂製歯車1が他の歯車と噛み合うことで発生する衝撃を減衰する部材である。弾性部材5は、その弾性変形によって当該衝撃を吸収して減衰する。弾性部材5は、円環状である。弾性部材5は、金属製ブッシュ3の周囲に設けられている。ここでの弾性部材5は、金属製ブッシュ3の外周面4bに接着部9を介して接するように設けられている。金属製ブッシュ3と弾性部材5とは、接着部9により接着されている。なお、金属製ブッシュ3の周囲に設けられることには、金属製ブッシュ3の周りに直接接するように設けられることだけでなく、金属製ブッシュ3の周りに他の部材を介して設けられることを含む。
【0018】
弾性部材5は、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間に設けられている。弾性部材5は、複数の部材(ゴム層)が積層されることにより構成されている(詳しくは後述)。弾性部材5の厚みは、適宜設定される。弾性部材5は、ゴムにより形成されている。
【0019】
樹脂部材7は、他の歯車と噛み合う部材である。樹脂部材7は、環状である。樹脂部材7は、樹脂で形成されている。用いる樹脂としては、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の何れであってもよいが、製造される樹脂製歯車1の強度を向上させる観点から、熱硬化性樹脂であると好ましい。より具体的には、エポキシ樹脂、ポリアミノアミド樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等から選ばれた1以上の樹脂と、選択された樹脂の種類に応じた硬化剤とを組み合わせたものが使用できる。これらの中でも、樹脂硬化物の強度、耐熱性等の点からポリアミノアミド樹脂が好ましく、耐熱性、強度が優れる2,2’-(1,3フェニレン)ビス2-オキサゾリンとアミン硬化剤の混合物100質量部に対し、触媒には硬化促進剤として、例えば、n-オクチルブロマイドが5質量部以下からなる樹脂を使用することが好ましい。
【0020】
樹脂部材7は、金属製ブッシュ3の周囲、ひいては、弾性部材5の周囲に設けられている。ここでの樹脂部材7は、弾性部材5の外周面に接するように設けられている。樹脂部材7の外周部には、歯形7aが形成されている。歯形7aは、樹脂部材7の周方向において、所定の間隔をあけて複数形成されている。なお、弾性部材5の周囲に設けられることには、弾性部材5の周りに直接接するように設けられることだけでなく、弾性部材5の周りに他の部材を介して設けられることを含む。
【0021】
本実施形態の樹脂製歯車1では、弾性部材5は、金属製ブッシュ3及び樹脂部材7の軸方向(以下、単に「軸方向」という)に沿って並ぶ一対の第1弾性ゴム層51と、一対の第1弾性ゴム層51の間に配置された第2弾性ゴム層52と、を含む。
【0022】
第1弾性ゴム層51は、円環状に設けられている。第1弾性ゴム層51は、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間における軸方向の一端部と他端部とに設けられている。第2弾性ゴム層52は、円環状に設けられている。第2弾性ゴム層52は、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間における軸方向の中央部に設けられている。
【0023】
一対の第1弾性ゴム層51及び第2弾性ゴム層52は、軸方向において所定の隙間をあけて並んでいる。第1弾性ゴム層51及び第2弾性ゴム層52の内周面は、金属製ブッシュ3の外周面4bに、接着部9を介して接着している。第1弾性ゴム層51及び第2弾性ゴム層52の外周面は、樹脂部材7の内周面に接している。
【0024】
第1弾性ゴム層51の耐油性は、第2弾性ゴム層52の耐油性よりも高い。第1弾性ゴム層51の耐薬品性は、第2弾性ゴム層52の耐薬品性よりも高い。第1弾性ゴム層51の耐溶剤性は、第2弾性ゴム層52の耐溶剤性よりも高い。第1弾性ゴム層51の耐熱性は、第2弾性ゴム層52の耐熱性よりも高い。金属製ブッシュ3に対する接着部9を介した第2弾性ゴム層52の接着性(密着性)は、金属製ブッシュ3に対する接着部9を介した第1弾性ゴム層51の接着性よりも高い。
【0025】
耐油性は、油状物質による影響の受けにくさであって、オイル中で使用した場合における外観変化、物性変化及び膨潤等に耐える性質である。耐薬品性は、薬品による影響の受けにくさであって、薬品中で使用した場合における外観変化、物性変化及び膨潤等に耐える性質である。耐溶剤性は、溶剤(物体を溶かすのに用いる液体)による影響の受けにくさであって、溶剤中で使用した場合における外観変化、物性変化及び膨潤等に耐える性質である。接着性は、接着しやすさ及び接着したときのはがれにくさである。
【0026】
このような第1弾性ゴム層51及び第2弾性ゴム層52の各特性を実現するために、例えば、第1弾性ゴム層51はフッ素ゴムで形成され、第2弾性ゴム層52は例えばニトリルゴムで形成されている。なお、第1弾性ゴム層51及び第2弾性ゴム層52の各特性は、公知の手法により求めることができる。
【0027】
以上のように構成された樹脂製歯車1は、公知の種々の手法を用いて製造することができる。
【0028】
以上、樹脂製歯車1では、弾性部材5は、軸方向に沿って並ぶ一対の第1弾性ゴム層51と、一対の第1弾性ゴム層51の間に配置された第2弾性ゴム層52と、を含んでいる。第1弾性ゴム層51の耐油性は、第2弾性ゴム層52の耐油性よりも高い。したがって、オイル潤滑下で用いられた場合、第2弾性ゴム層52を、それよりも耐油性が高い一対の第1弾性ゴム層51でオイルからシール(遮蔽)することができる。第2弾性ゴム層52の材質の如何にかかわらず、弾性部材5が劣化するのを抑制でき、オイル中でも樹脂製歯車1を有効的に使用可能となる。ひいては、弾性部材5の劣化を抑制しながら、所望の減衰機能が得られるように当該第2弾性ゴム層52の材質を適宜に調整することが可能となる。すなわち、オイル潤滑下においても所望の減衰機能を得ることが可能となる。
【0029】
樹脂製歯車1では、第1弾性ゴム層51及び第2弾性ゴム層52は、金属製ブッシュ3に接着部9を介して接着されている。金属製ブッシュ3に対する接着部9を介した第2弾性ゴム層52の接着性は、第1弾性ゴム層51のそれよりも高い。よって、上述したように一対の第1弾性ゴム層51で第2弾性ゴム層52をシールして弾性部材5の劣化を抑制しながら、当該第2弾性ゴム層52によって弾性部材5の接着性を高めることができる。
【0030】
なお、樹脂製歯車1では、第1弾性ゴム層51及び第2弾性ゴム層52のうち少なくとも第1弾性ゴム層51は、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間に圧入されていてもよい。この構成によれば、第1弾性ゴム層51には、圧入による変形から元に戻ろうとする力(弾発力)が生じる。よって、当該力を利用して、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間を、一対の第1弾性ゴム層51によって確実にシールすることができる。オイル潤滑のオイルに対し、第2弾性ゴム層52を一対の第1弾性ゴム層51で確実にシールすることが可能となる。このように第1弾性ゴム層51が圧入される場合には、樹脂製歯車1は、抄造法を用いた製造方法で製造されてもよいし、それ以外の公知手法で製造されてもよい。
【0031】
また、第1弾性ゴム層51及び第2弾性ゴム層52のうち少なくとも第1弾性ゴム層51は、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間にゴム成形されていてもよい(ゴム材料で形成された成形品であってもよい)。この場合においても、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間を、一対の第1弾性ゴム層51によって確実にシールし、オイル潤滑のオイルに対して第2弾性ゴム層52を確実にシールすることが可能となる。このようにゴム成形される場合には、樹脂製歯車1は、種々のゴム成形法を用いた公知手法によって製造される。
【0032】
また、樹脂製歯車1では、
図3に示されるように、第1弾性ゴム層51は、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間から取り外された状態において径方向の幅が第1幅D1の環状に設けられていてもよい。第2弾性ゴム層52は、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間から取り外された状態において径方向の幅が第2幅D2の環状に設けられていてもよい。そして、第1幅D1は、第2幅D2よりも大きくてもよい。
【0033】
この構成によれば、第1弾性ゴム層51が第2弾性ゴム層52に比べて径方向に潰れるように使用される。これにより、第1弾性ゴム層51には、その変形(潰れ)から元に戻ろうとする力が効果的に生じ、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間を一対の第1弾性ゴム層51によって確実にシールすることができる。オイル潤滑のオイルに対し第2弾性ゴム層52を一対の第1弾性ゴム層51で一層確実にシールすることが可能となる。このように第1弾性ゴム層51の第1幅D1が第2弾性ゴム層42の第2幅D2よりも大きい場合、樹脂製歯車1は、抄造法を用いた製造方法で製造されてもよいし、それ以外の公知手法で製造されてもよい。
【0034】
また、樹脂製歯車1は、
図4に示されるように、一対の第1弾性ゴム層51及び第2弾性ゴム層52が軸方向に隙間無く並んでいてもよい。
【0035】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態と重複する説明を省略する。
【0036】
図5に示されるように、第2実施形態に係る樹脂製歯車101は、弾性部材105を備える。弾性部材105は、上記第1弾性ゴム層51と同様な一対の第1弾性ゴム層151、及び、上記第2弾性ゴム層52と同様な第2弾性ゴム層152を有する。
【0037】
金属製ブッシュ3の外周面4bにおいて軸方向の両端部には、第1弾性ゴム層151が嵌められる環状の第1凹部(凹部)3xが形成されている。第1凹部3xの形状は、第1弾性ゴム層151の形状に対応する。金属製ブッシュ3の外周面4bにおいて軸方向の中央には、第2弾性ゴム層152が嵌められる環状の第2凹部3yが形成されている。第2凹部3yの形状は、第2弾性ゴム層152の形状に対応する。
【0038】
樹脂部材7の内周面7bにおいて軸方向の両端部には、第1弾性ゴム層151が嵌められる環状の第1凹部(凹部)7xが形成されている。第1凹部7xの形状は、第1弾性ゴム層151の形状に対応する。樹脂部材7の内周面7bにおいて軸方向の中央には、第2弾性ゴム層152が嵌められる環状の第2凹部7yが形成されている。第2凹部7yの形状は、第2弾性ゴム層152の形状に対応する。
【0039】
このような樹脂製歯車101においても、樹脂製歯車1と同様に、オイル潤滑下で所望の減衰機能を得ることが可能となるという効果が奏される。また、樹脂製歯車101によれば、第1弾性ゴム層151が第1凹部5x,7xに嵌められていることから、第1凹部5x,7xを利用して、金属製ブッシュ3及び樹脂部材7に第1弾性ゴム層151を確実に取り付けることができる。オイル潤滑のオイルに対し第2弾性ゴム層152を一対の第1弾性ゴム層151で確実にシールでき、シール性を向上することが可能となる。
【0040】
なお、樹脂製歯車101では、第1弾性ゴム層151が嵌められる凹部として第1凹部5x,7xを形成したが、第1凹部5x,7xの少なくとも何れかのみを形成してもよい。樹脂製歯車101では、第2弾性ゴム層152が嵌められる第2凹部3y,7yについては、その少なくとも何れかを形成しなくてもよい。
【0041】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。
【0042】
図6に示されるように、第3実施形態に係る樹脂製歯車201は、弾性部材205を備える。弾性部材205は、上記第1弾性ゴム層51と同様な一対の第1弾性ゴム層251、及び、上記第2弾性ゴム層52と同様な複数(ここでは一対)の第2弾性ゴム層252を有する。このような樹脂製歯車201においても、樹脂製歯車1と同様に、オイル潤滑下で所望の減衰機能を得ることが可能となるという効果が奏される。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0044】
上記実施形態では、樹脂製歯車1,101,201が平歯車である形態を一例に説明したが、樹脂製歯車1,101,201は、はすば歯車等であってもよい。上記実施形態では、第1弾性ゴム層の耐薬品性、耐溶剤性及び耐熱性のそれぞれが、第2弾性ゴム層のそれよりも高いが、これに限定されない。第1弾性ゴム層51の耐薬品性、耐溶剤性及び耐熱性のうちの少なくとも何れかが、第2弾性ゴム層のそれよりも低い又は同じであってもよい。上記実施形態では、第2弾性ゴム層の接着性が第1弾性ゴム層のそれよりも高いが、第2弾性ゴム層の接着性が第1弾性ゴム層のそれよりも低い又は同じであってもよい。
【0045】
上記実施形態では、弾性部材5と樹脂部材7との間に、上記接着部9と同様な接着部が介在していてもよい。つまり、樹脂部材7の内周面は、弾性部材5の外周面に接着部を介して接するように設けられ、弾性部材5と樹脂部材7とが当該接着部で接着されていてもよい。
【0046】
本発明では、上記実施形態及び上記変形例の各構成を適宜組み合わせてもよい。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1,101,201…樹脂製歯車、3…金属製ブッシュ、3a,3b…端面、3x,7x…第1凹部(凹部)、3y,7y…第2凹部、4a…内周面、4b…外周面、5,105,205…弾性部材、7…樹脂部材、7a…歯形、7b…内周面、9…接着部、51,151,251…第1弾性ゴム層、52,152,252…第2弾性ゴム層。