(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】画像表示装置、共重合体溶液、及びフィルム材
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20220117BHJP
C08F 220/10 20060101ALI20220117BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20220117BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
G09F9/00 302
G09F9/00 313
C08F220/10
C08F290/06
B32B27/30 A
(21)【出願番号】P 2018053102
(22)【出願日】2018-03-20
【審査請求日】2021-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】古園 圭俊
(72)【発明者】
【氏名】満生 要一郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏明
(72)【発明者】
【氏名】石川 栄作
(72)【発明者】
【氏名】高原 直己
【審査官】小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0170218(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102754003(CN,A)
【文献】特表2018-507276(JP,A)
【文献】特開2009-209321(JP,A)
【文献】特開2013-121990(JP,A)
【文献】特開2018-022135(JP,A)
【文献】特開2014-156603(JP,A)
【文献】特表2011-527774(JP,A)
【文献】特開2017-122154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00-9/46
C08C 19/00-19/44
C08F 6/00-246/00
283/01
290/00-290/14
299/00-301/00
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示部材と、前記画像表示部材の片側又は両側に配置された衝撃吸収層と、を備え、
前記衝撃吸収層が、炭素数1~18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する単量体単位50~90質量部、水酸基を有する(メタ)アクリレートに由来する単量体単位5~30質量部、及びエチレン性不飽和基を有するシロキサン化合物に由来する単量体単位5~30質量部を含む共重合体を含有し、
前記共重合体の重量平均分子量が300,000~1,500,000であり、
前記共重合体のガラス転移点が-75~-45℃であり、
前記共重合体が互いに架橋されていてもよい、画像表示装置。
【請求項2】
炭素数1~18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する単量体単位50~90質量部、水酸基を有する(メタ)アクリレートに由来する単量体単位5~30質量部、及びエチレン性不飽和基を有するシロキサン化合物に由来する単量体単位5~30質量部を含む共重合体と、有機溶剤と、を含有し、
前記共重合体の重量平均分子量が300,000~1,500,000であり、
前記共重合体のガラス転移点が-75~-45℃であり、
画像表示装置の衝撃吸収層を形成するために用いられる、共重合体溶液。
【請求項3】
基材と、前記基材上に配置された樹脂層と、を備え、前記樹脂層が画像表示装置の衝撃吸収層を形成するために用いられる、フィルム材であって、
前記樹脂層が、炭素数1~18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する単量体単位50~90質量部、水酸基を有する(メタ)アクリレートに由来する単量体単位5~30質量部、及びエチレン性不飽和基を有するシロキサン化合物に由来する単量体単位5~30質量部を含む共重合体を含有し、
前記共重合体の重量平均分子量が300,000~1,500,000であり、
前記共重合体のガラス転移点が-75~-45℃であり、
前記共重合体が互いに架橋されていてもよい、フィルム材。
【請求項4】
前記樹脂層のヘーズが5%以下である、請求項3に記載のフィルム材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置、共重合体溶液、及びフィルム材に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)、液晶等の画像表示装置は、画像表示部材、画像表示部材から放出される光の特性を向上させる機能向上部材、画像表示部材を酸素、湿気等から保護するためのバリア部材、これらの部材を固定する固定部材などの複数の部材を積層することによって構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、画像表示装置の軽量化、薄型化又はフレキシブル化が検討されている。しかし、このような検討に伴い、各部材の強度は低下する傾向にある。例えば、画像表示装置に対して、外部応力、画像表示装置組立時の圧力等の衝撃が加わると、画像表示部材、バリア部材等が損傷してしまう場合がある。そのため、画像表示装置には、固定部材としても作用し得る衝撃吸収層を導入することが検討されている。衝撃吸収層には、固定部材としての接着性の観点から、高温環境下において、浮き、剥がれ、発泡等が発生しないことも同時に求められる。
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、耐衝撃性及び耐熱性に優れる衝撃吸収層を備える画像表示装置、並びにこのような衝撃吸収層を形成することが可能な共重合体溶液及びフィルム材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、画像表示部材と、画像表示部材の片側又は両側に配置された衝撃吸収層と、を備え、衝撃吸収層が、炭素数1~18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する単量体単位50~90質量部、水酸基を有する(メタ)アクリレートに由来する単量体単位5~30質量部、及びエチレン性不飽和基を有するシロキサン化合物に由来する単量体単位5~30質量部を含む共重合体を含有し、共重合体の重量平均分子量が300,000~1,500,000であり、共重合体のガラス転移点が-75~-45℃であり、共重合体が互いに架橋されていてもよい、画像表示装置を提供する。
【0007】
別の側面において、本発明は、炭素数1~18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する単量体単位50~90質量部、水酸基を有する(メタ)アクリレートに由来する単量体単位5~30質量部、及びエチレン性不飽和基を有するシロキサン化合物に由来する単量体単位5~30質量部を含む共重合体と、有機溶剤と、を含有し、共重合体の重量平均分子量が300,000~1,500,000であり、共重合体のガラス転移点が-75~-45℃であり、画像表示装置の衝撃吸収層を形成するために用いられる、共重合体溶液を提供する。
【0008】
本発明は、上記共重合体溶液の、画像表示装置の衝撃吸収層を製造するための応用、及び画像表示装置を製造するための応用に関してもよい。
【0009】
別の側面において、本発明は、基材と、基材上に配置された樹脂層と、を備え、樹脂層が画像表示装置の衝撃吸収層を形成するために用いられる、フィルム材であって、樹脂層が、炭素数1~18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する単量体単位50~90質量部、水酸基を有する(メタ)アクリレートに由来する単量体単位5~30質量部、及びエチレン性不飽和基を有するシロキサン化合物に由来する単量体単位5~30質量部を含む共重合体を含有し、共重合体の重量平均分子量が300,000~1,500,000であり、共重合体のガラス転移点が-75~-45℃であり、共重合体が互いに架橋されていてもよい、フィルム材を提供する。樹脂層のヘーズは5%以下であってよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐衝撃性及び耐熱性に優れる衝撃吸収層を備える画像表示装置、並びにこのような衝撃吸収層を形成することが可能な共重合体溶液及びフィルム材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】画像表示装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図2】フィルム材の一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図3】加速度減衰率の測定装置の一例を模式的に示す概略図である。
【
図4】耐衝撃性の評価装置の一例を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を適宜参照しながら、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリロイル基等の他の類似表現についても同様である。
【0014】
<画像表示装置>
一実施形態に係る画像表示装置は、画像表示部材と、画像表示部材の片側又は両側に配置された衝撃吸収層と、を備える。
図1は、画像表示装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図1に示す画像表示装置10は、基板12、衝撃吸収層11、画像表示部材13、機能向上部材14、及びバリア部材15をこの順に備える。画像表示装置10は、基板12、画像表示部材13、衝撃吸収層11、機能向上部材14、及びバリア部材15をこの順に備えるものであってもよい。衝撃吸収層11は、基板12の画像表示部材13の反対側、機能向上部材14とバリア部材15との間、又はバリア部材15の機能向上部材14とは反対側のいずれかにさらに配置されていてもよい。
【0015】
画像表示装置10は、特に制限されないが、液晶装置、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)装置等であってよい。画像表示装置10は、有機EL装置であることが好ましい。
【0016】
基板12は、ガラス基板、金属基板、樹脂基板等であってよい。基板12は、フレキシブル基板であってよく、薄型ガラス基板であってもよい。
【0017】
画像表示部材13は、一実施形態において、画素電極、有機発光層を含む中間層、及び対向電極をこの順に備える有機EL発光素子であってよい。画素電極は、反射電極であってよい。対向電極は、透明電極であってよい。中間層は、有機発光層を含み、有機発光層以外に、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)等を含んでいてもよい。
【0018】
機能向上部材14は、画像表示部材13から放出される光の特性を向上させる機能を有する層であり、有機EL分野で一般的に使用されているものを使用することができる。
【0019】
バリア部材15は、酸素、湿気等から保護するための封止層であり、有機EL分野で一般的に使用されているものを使用することができる。
【0020】
衝撃吸収層11は、後述の特定の共重合体を含有する。衝撃吸収層11が特定の共重合体を含有することによって、柔軟性及び強靭性を付与することができ、高い耐衝撃性を有することが可能となる。共重合体は、互いに架橋されていてもよい。すなわち、共重合体は、共重合体と共重合体とが直接又は架橋剤を介して架橋されていてもよい。本明細書において、「共重合体が互いに架橋されている」とは、2以上の共重合体同士が直接又は架橋剤を介して架橋されていることを意味する。衝撃吸収層11は、後述の共重合体溶液又はフィルム材から形成することができる。
【0021】
<共重合体溶液>
一実施形態に係る共重合体溶液は、特定の共重合体と、有機溶剤と、を含有し、画像表示装置の衝撃吸収層を形成するために用いられる。
【0022】
共重合体は、炭素数1~18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(以下、「単量体(A)」という場合がある。)に由来する単量体単位50~90質量部、水酸基を有する(メタ)アクリレート(以下、「単量体(B)」という場合がある。)に由来する単量体単位5~30質量部、及びエチレン性不飽和基を有するシロキサン化合物(以下、「単量体(C)」という場合がある。)に由来する単量体単位5~30質量部を含む。このような共重合体は、各単量体単位の含有割合と同じ含有割合の単量体混合物を共重合させることによって得ることができる。重合率は、実質的に100質量%に近いことがより好ましい。
【0023】
単量体(A)は、炭素数1~18の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基と1つの(メタ)アクリロイル基とを有する化合物である。単量体(A)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。単量体(A)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。単量体(A)は、炭素数1~18の直鎖状又は分岐状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、又はn-オクチル(メタ)アクリレートを含むことがより好ましく、n-ブチル(メタ)アクリレート又は2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートを含むことがさらに好ましい。また、単量体(A)は、アルキルメタクリレートよりもアルキルアクリレートの方が好ましい。
【0024】
単量体(A)に由来する単量体単位の含有量は、共重合体の全単量体単位100質量部に対して、50~90質量部であり、好ましくは60~90質量部、より好ましくは65~85質量部である。単量体(A)に由来する単量体単位の含有量がこのような範囲にあると、樹脂層を形成したときに、樹脂層と基材との密着性をより向上させることができる傾向にある。
【0025】
単量体(B)は、水酸基と1つの(メタ)アクリロイル基とを有する化合物である。単量体(B)としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。単量体(B)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。単量体(B)は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。
【0026】
単量体(B)に由来する単量体単位の含有量は、共重合体の全単量体単位100質量部に対して、5~30質量部であり、好ましくは10~25質量部である。単量体(B)に由来する単量体単位の含有量がこのような範囲にあると、湿熱による白化をより抑制し、凝集性をより向上させることができる傾向にある。
【0027】
単量体(C)は、例えば、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、ケイ皮酸エステル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和基を有し、かつシロキサン構造を有する化合物である。単量体(C)としては、例えば、下記一般式(a)又は(b)で表される化合物等が挙げられる。単量体(C)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
【0029】
式(a)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2、R3、R4、R5、R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、R8は1価の炭化水素基を示し、L1は酸素原子が介在してもよい2価の炭化水素基又は単結合を示し、mは1以上の整数を示す。
【0030】
【0031】
式(b)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2、R3、R4、R5、R6及びR7はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を示し、L1及びL2はそれぞれ独立に酸素原子が介在してもよい2価の炭化水素基又は単結合を示し、nは1以上の整数を示す。
【0032】
1価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基が挙げられる。2価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20のアルキレン基が挙げられる。
【0033】
単量体(C)に由来する単量体単位の含有量は、共重合体の全単量体単位100質量部に対して、5~30質量部であり、好ましくは5~20質量部、より好ましくは5~15質量部である。単量体(C)に由来する単量体単位の含有量がこのような範囲にあると、得られる樹脂層の柔軟性及び強靭性を向上させることができ、より高い耐衝撃性を得ることができる傾向にある。
【0034】
共重合体は、本発明の奏する効果を著しく損なわない範囲であれば、単量体(A)、単量体(B)、及び単量体(C)に由来する単量体単位以外のその他の単量体に由来する単量体単位をさらに含んでいてもよい。その他の単量体としては、例えば、単量体(A)、単量体(B)、及び単量体(C)以外の(メタ)アクリロイル基を1つ有する化合物、(メタ)アクリロイル基以外の重合性基を有する化合物等が挙げられる。(メタ)アクリロイル基を1つ有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体、アルキレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレート、芳香環を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリロイル基以外の重合性基を有する化合物としては、例えば、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、エチレン、プロピレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0035】
(メタ)アクリルアミド誘導体としては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。アルキレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート;ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート;ジブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート;メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシオクタエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシノナエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘプタプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。芳香環を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-(2-メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等が挙げられる。
【0036】
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、300,000~1,500,000であり、好ましくは350,000~1,200,000である。共重合体の重量平均分子量(Mw)が300,000以上であると、凝集性が高まり、耐熱性が得られ易い傾向にある。共重合体の重量平均分子量(Mw)が1,500,000以下であると、フィルム材を形成するに際して、均一な厚みを有する樹脂層(衝撃吸収層)が得られ易い傾向にある。なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した値から求めることができる。
【0037】
共重合体のガラス転移点(Tg)は、-75~-45℃であり、好ましくは-70~-50℃である。共重合体のガラス転移点(Tg)が-75℃以上であると、凝集性が高まり、良好なハンドリング性が得られ易くなる傾向にある。共重合体のガラス転移点(Tg)が-45℃以下であると、得られる樹脂層の柔軟性を向上させ、高い耐衝撃性を付与することができる傾向にある。
【0038】
なお、共重合体のガラス転移点(Tg)は、以下の関係式(FOX式)によって算出したものを意味する。
1/Tg=Σ(Xi/Tgi)
[上記式中、Tgは、共重合体のガラス転移点(K)を示す。Xiは、各単量体の質量分率を示し、X1+X2+…+Xi+…+Xn=1である。Tgiは、各単量体の単独重合体のガラス転移点(K)を示す。]
【0039】
共重合体の含有量は、共重合体溶液全質量を基準として、好ましくは10~80質量%、より好ましくは15~70質量%、さらに好ましくは20~60質量%である。
【0040】
有機溶剤は、特に制限されないが、後述の溶液重合で使用可能な有機溶剤であることが好ましい。このような有機溶剤を用いることによって、共重合体の単離操作を行うことなく、そのまま共重合体溶液として使用することが可能となる。このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等が挙げられる。これらの中でも、有機溶剤は、共重合体の分子量制御の観点から、好ましくは酢酸エチル、メチルエチルケトン、又はトルエンである。
【0041】
有機溶剤の含有量は、共重合体溶液全質量を基準として、好ましくは20~90質量%、より好ましくは30~85質量%、さらに好ましくは40~80質量%である。
【0042】
共重合体溶液は、例えば、有機溶剤中で各単量体を溶液重合することによって作製することができる。有機溶剤を用いて各単量体を溶液重合することによって、親水性の高い単量体(B)と疎水性の高い単量体(C)とを溶媒和の効果により均一に共重合することができ、樹脂層(衝撃吸収層)において、高い透明性(例えば、ヘーズが5.0%以下)を付与することが可能となる。また、共重合体溶液は、例えば、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等の既知の重合方法を用いて共重合体を得た後、得られた共重合体を有機溶剤と混合することによっても作製することができる。
【0043】
共重合体を合成する際の重合開始剤として、熱によってラジカルを発生する化合物を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキシド等の有機過酸化物;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)等のアゾ系化合物が挙げられる。
【0044】
共重合体溶液は、必要に応じて、各種添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、共重合体の凝集力を高める観点から、光架橋剤、熱架橋剤等の架橋剤が挙げられる。
【0045】
光架橋剤としては、例えば、炭素数1~20のアルキレン基を有するアルキレンジオールジ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート等のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレート;ウレタン結合を有するウレタンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0046】
ウレタン結合を有するウレタンジ(メタ)アクリレートは、他の成分との相溶性が良好である観点から、ポリアルキレングリコール鎖を有していてもよく、透明性を確保する観点から、脂環式構造を有していてもよい。光架橋剤と共重合体との相溶性が低い場合、共重合体溶液から形成される樹脂層(衝撃吸収層)が白濁する可能性がある。
【0047】
高温又は高温高湿下における気泡及び剥がれの発生をより抑制できる観点から、光架橋剤の重量平均分子量は、好ましくは100,000以下、より好ましくは300~100,000、さらに好ましくは500~80,000である。
【0048】
光架橋剤を用いる場合の含有量は、共重合体全質量を基準として、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下である。このような範囲であると、充分な密着性を有する樹脂層(衝撃吸収層)を得ることができる傾向にある。光架橋剤の含有量の下限については、特に制限されないが、フィルム形成性をより良好にする観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。
【0049】
熱架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物等が挙げられる。熱架橋剤は、樹脂層(衝撃吸収層)中に緩やかに広がった網目状構造を形成する観点から、3官能、4官能といった多官能の熱架橋剤を用いることが好ましい。
【0050】
熱架橋剤は、反応性の観点から、好ましくはイソシアネート化合物、より好ましくはポリイソシアネート化合物である。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、トリメチロールプロパン等のトリオール、ジオール又は単官能アルコールと、ヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物である多官能性ヘキサメチレンジイソシアネート化合物が挙げられる。
【0051】
熱架橋剤を用いる場合の含有量は、共重合体全質量を基準として、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。熱架橋剤の含有量がこのような範囲であると、充分な密着性を有する樹脂層(衝撃吸収層)を得ることができる。熱架橋剤の含有量の下限については、特に制限されないが、フィルム形成性をより良好にする観点から、好ましくは0.01質量%以上である。
【0052】
共重合体又は架橋剤のいずれかが活性エネルギー線による硬化系である場合、光重合開始剤が必要となる。光重合開始剤は、活性エネルギー線の照射によって硬化反応を促進させるものである。活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等をいう。
【0053】
光重合開始剤は、特に限定されないが、ベンゾフェノン化合物、アントラキノン化合物、ベンゾイル化合物、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩、オニウム塩等の公知の材料を使用することが可能である。
【0054】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N,N’,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N,N’,N’-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、2-エチルアントラキノン、t-ブチルアントラキノン、1,4-ジメチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2,3-ジクロロアントラキノン、3-クロロ-2-メチルアントラキノン、1,2-ベンゾアントラキノン、2-フェニルアントラキノン、1,4-ナフトキノン、9,10-フェナントラキノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,2-ジエトキシアセトフェノン等の芳香族ケトン化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンジル、ベンジルジメチルケタール等のベンジル化合物;β-(アクリジン-9-イル)(メタ)アクリル酸等のエステル化合物;9-フェニルアクリジン、9-ピリジルアクリジン、1,7-ジアクリジノヘプタン等のアクリジン化合物;2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)5-フェニルイミダゾール二量体、2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(p-メチルメルカプトフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モリホリノフェニル)-1-ブタノン;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-1-プロパン;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド;オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
共重合体溶液を着色させない光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン等のα-ヒドロキシアルキルフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物;オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)が挙げられる。
【0056】
特に厚い樹脂層(衝撃吸収層)を形成するためには、光重合開始剤は、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物を含んでもよい。
【0057】
光重合開始剤の含有量は、共重合体溶液全質量を基準として、好ましくは0.05~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%、さらに好ましくは0.1~1.5質量%である。光重合開始剤の含有量が5質量%以下であることによって、透過率が高く、また色相も黄味を帯びることがなく、透明性に優れる樹脂層(衝撃吸収層)を得ることができる傾向にある。
【0058】
架橋剤以外の添加剤としては、例えば、共重合体溶液の保存安定性を高める目的で添加するパラメトキシフェノール等の重合禁止剤、共重合体溶液を光硬化させて得られる樹脂層(衝撃吸収層)の耐熱性を高める目的で添加するトリフェニルホスファイト等の酸化防止剤、紫外線等の光に対する共重合体溶液の耐性を高める目的で添加するHALS(Hindered Amine Light Stabilizer)等の光安定化剤、ガラスに対する共重合体溶液の密着性を高めるために添加するシランカップリング剤が挙げられる。
【0059】
<フィルム材>
一実施形態に係るフィルム材は、基材と、基材上に配置された樹脂層と、を備え、樹脂層が、画像表示装置の衝撃吸収層を形成するために用いられる。当該樹脂層は、上述した共重合体溶液から形成することができる。
【0060】
図2は、フィルム材の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2に示されるように、フィルム材20は、樹脂層21と、樹脂層21を挟むように積層された一方の基材22及び他方の基材23と、を備えていてもよい。
【0061】
基材22は、基材23よりも重剥離性の基材であることが好ましい。基材22としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリエチレン等の重合体フィルムが挙げられる。これらの中でも、基材22は、PETフィルムであることが好ましい。基材22の厚みは、作業性の観点から、好ましくは50~200μm、より好ましくは60~150μm、さらに好ましくは70~130μmである。
【0062】
基材22の平面形状は、樹脂層21の平面形状よりも大きく、基材22の外縁が樹脂層21の外縁よりも外側に張り出していることが好ましい。基材22の外縁が樹脂層21の外縁よりも張り出す幅は、取り扱い易さ、剥がし易さ、埃等の付着をより低減できる観点から、好ましくは2~20mm、より好ましくは4~10mmである。樹脂層21及び基材22の平面形状が略長方形等の略矩形状である場合には、基材22の外縁が樹脂層21の外縁よりも張り出す幅は、好ましくは少なくとも1つの辺において2~20mm、より好ましくは少なくとも1つの辺において4~10mm、さらに好ましくは全ての辺において2~20mm、特に好ましくは全ての辺において4~10mmである。
【0063】
基材23は、基材22よりも軽剥離性の基材を用いることが好ましい。基材23としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリエチレン等の重合体フィルムが挙げられる。これらの中でも、基材23は、PETフィルムであることが好ましい。基材23の厚みは、作業性の観点から、25~150μmであることが好ましく、30~100μmであることがより好ましく、40~80μmであることが更に好ましい。
【0064】
基材23の平面形状は、樹脂層21の平面形状よりも大きく、基材23の外縁が樹脂層21の外縁よりも外側に張り出していることが好ましい。基材23の外縁が樹脂層21の外縁よりも張り出す幅は、取り扱い易さ、剥がし易さ、埃等の付着をより低減できる観点から、好ましくは2~20mm、より好ましくは4~10mmである。樹脂層21及び基材23の平面形状が略長方形等の略矩形状である場合には、基材23の外縁が樹脂層21の外縁よりも張り出す幅は、好ましくは少なくとも1つの辺において2~20mm、より好ましくは少なくとも1つの辺において4~10mm、さらに好ましくは全ての辺において2~20mm、特に好ましくは全ての辺において4~10mmである。
【0065】
基材23と樹脂層21との間の剥離強度は、基材22と樹脂層21との間の剥離強度よりも低いことが好ましい。これによって、基材22は基材23よりも樹脂層21から剥離し難くなる。剥離強度は、例えば、基材22及び基材23の表面処理を施すことによって調整することができる。表面処理方法としては、例えば、シリコーン系化合物又はフッ素系化合物で、基材を離型処理することが挙げられる。
【0066】
樹脂層21を形成する方法は、公知の技術を使用することができる。例えば、上述の共重合体溶液を、基材22上に塗布し、有機溶剤を乾燥することにより除去して、任意の厚みを有する樹脂層21を形成することができる。このとき、樹脂層21において、共重合体は、互いに架橋されていてもよい。すなわち、共重合体は、共重合体と共重合体とが直接又は架橋剤を介して架橋されていてもよい。塗布方法としては、例えば、フローコート法、ロールコート法、グラビアコート法、ワイヤーバーコート法、リップダイコート法等の公知の方法を用いることができる。
【0067】
基材22上に樹脂層21を形成した後、樹脂層21上に基材23を積層することで、フィルム材が作製される。樹脂層21は基材23及び基材22で挟まれる構成となる。樹脂層21と、基材23及び基材22との剥離性を制御するために、共重合体溶液に、ポリジメチルシロキサン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の界面活性剤を含有させてもよい。
【0068】
樹脂層21の厚みは、使用用途及び方法により適宜調整されるため特に限定されないが、10~5000μm、25~200μm、25~180μm、又は25~150μmであってもよい。樹脂層21の厚みがこのような範囲であると、外部から加えられた衝撃に対して、より耐性を有する衝撃吸収層となり得る。
【0069】
樹脂層21の可視光領域(波長:380nm~780nm)の光線に対する光透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。
【0070】
樹脂層21のヘーズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下である。なお、ヘーズ(Haze)とは、濁度を表わす値(%)であり、ランプにより照射され、試料中を透過した光の全透過率Ttと、試料中で拡散され散乱した光の透過率Tdより、(Td/Tt)×100として求められる。これらはJIS K 7136により規定されており、市販の濁度計(例えば、日本電色工業株式会社製、製品名「NDH-5000」)によって容易に測定可能である。
【0071】
本実施形態に係るフィルム材によれば、樹脂層21を傷つけることなく、保管及び運搬を容易にすることができる。
【0072】
樹脂層21は、例えば、画像表示部材の片側又は両側に配置することによって、画像表示装置の衝撃吸収層として用いることができる。
【実施例】
【0073】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0074】
<共重合体溶液の作製>
実施例で作製した共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した値から求めた。GPC測定装置及び測定条件は、下記のとおりである。
RI検出器:L-3350(株式会社日立ハイテクサイエンス製)
溶離液:THF
カラム:Gelpac GL-R420+R430+R440(日立化成株式会社製)
カラム温度:40℃
流量:2.0mL/分
【0075】
実施例で作製した共重合体のガラス転移点(Tg)は、上述の関係式(FOX式)により算出した。
【0076】
実施例1-1
冷却管、温度計、撹拌装置、滴下漏斗、及び窒素導入管の付いた反応容器に、2-エチルヘキシルアクリレート70.0g、2-ヒドロキシエチルアクリレート20.0g、片末端メタクリロイル変性ポリシロキサン化合物(信越化学工業株式会製、製品名「X-22-2426」、エチレン性不飽和基当量:12000g/mol)10.0g、及び酢酸エチル145.0gを加え、100mL/分の風量で窒素置換しながら、15分間で常温(25℃)から65℃まで加熱した。次いで、65℃に保ちながら、酢酸エチル5.0gにラウロイルパーオキシド0.1gを溶解した溶液を投入し、8時間反応させて、固形分濃度40質量%の共重合体(Mw:800,000、ガラス転移点:-68.5℃)溶液A-1を得た。
【0077】
実施例1-2
反応容器に、n-ブチルアクリレート70.0g、2-ヒドロキシエチルアクリレート20.0g、実施例1-1で用いた片末端メタクリロイル変性ポリシロキサン化合物10.0g、及び酢酸エチル145.0gを加えた以外は実施例1-1と同様に操作して、固形分濃度40質量%の共重合体(Mw:850,000、ガラス転移点:-57.4℃)溶液A-2を得た。
【0078】
実施例1-3
反応容器に、n-ブチルアクリレート70.0g、2-ヒドロキシエチルアクリレート25.0g、実施例1-1で用いた片末端メタクリロイル変性ポリシロキサン化合物5.0g、及び酢酸エチル145.0gを加えた以外は実施例1-1と同様に操作して、固形分濃度40質量%の共重合体(Mw:850,000、ガラス転移点:-50.7℃)溶液A-3を得た。
【0079】
実施例1-4
反応容器に、n-ブチルアクリレート70.0g、2-ヒドロキシエチルアクリレート20.0g、実施例1-1で用いた片末端メタクリロイル変性ポリシロキサン化合物10.0g、酢酸エチル72.5g、及びメチルエチルケトン72.5gを加えた以外は実施例1-1と同様に操作して、固形分濃度40質量%の共重合体(Mw:500,000、ガラス転移点:-57.4℃)溶液A-4を得た。
【0080】
比較例1-1
反応容器に、2-エチルヘキシルアクリレート80.0g、2-ヒドロキシエチルアクリレート20.0g、及び酢酸エチル145.0gを加えた以外は実施例1-1と同様に操作して、固形分濃度40質量%の共重合体(Mw:800,000、ガラス転移点:-61.0℃)溶液A-5を得た。
【0081】
比較例1-2
反応容器に、2-エチルヘキシルアクリレート90.0g、実施例1-1で用いた片末端メタクリロイル変性ポリシロキサン化合物10.0g、及び酢酸エチル145.0gを加えた以外は実施例1-1と同様に操作して、固形分濃度40質量%の共重合体(Mw:750,000、ガラス転移点:-76.9℃)溶液A-6を得た。
【0082】
比較例1-3
反応容器に、n-ブチルアクリレート80.0g、2-ヒドロキシエチルアクリレート20.0g、及び酢酸エチル145.0gを加えた以外は実施例1-1と同様に操作して、固形分濃度40質量%の共重合体(Mw:850,000、ガラス転移点:-47.2℃)溶液A-7を得た。
【0083】
比較例1-4
反応容器に、2-エチルヘキシルアクリレート70.0g、2-ヒドロキシエチルアクリレート20.0g、実施例1-1で用いた片末端メタクリロイル変性ポリシロキサン化合物10.0g、及びメチルエチルケトン145.0gを加えた以外は実施例1-1と同様に操作して、固形分濃度40質量%の共重合体(Mw:200,000、ガラス転移点:-68.5℃)溶液A-8を得た。
【0084】
比較例1-5
反応容器に、n-ブチルアクリレート70.0g、2-ヒドロキシエチルアクリレート28.0g、実施例1-1で用いた片末端メタクリロイル変性ポリシロキサン化合物2.0g、及びメチルエチルケトン145.0gを加えた以外は実施例1-1と同様に操作して、固形分濃度40%の共重合体(Mw:700,000、ガラス転移点:-46.5℃)溶液A-9を得た。
【0085】
比較例1-6
反応容器に、2-エチルヘキシルアクリレート50.0g、メチルメタクリレート5.0g、イソボルニルアクリレート20.0g、2-ヒドロキシエチルアクリレート25.0g、及び酢酸エチル145.0gを加えた以外は共重合体造例1と同様に操作して、固形分濃度40%の共重合体(Mw:850,000、ガラス転移点:-29.4℃)溶液A-10を得た。
【0086】
<フィルム材の作製>
実施例2-1
実施例1-1で得られた共重合体溶液A-1の共重合体100質量部に対して、熱架橋剤としてポリイソシアネート化合物(東ソー株式会社製、製品名「コロネートHL」)0.15質量部を混合し、混合溶液を調製した。次いで、表面に離型処理が施された厚み75μmのポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム(基材フィルムA)に、上記混合溶液を乾燥後の厚みが100μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し、塗布された混合溶液を100℃で10分間加熱乾燥して、樹脂層を形成した。その後、樹脂層上に、離型処理した厚み75μmのPETフィルム(基材フィルムB)を被せ、9.8N(1.0kgf)でハンドローラーを用いて貼り付け、フィルム材を作製した。
【0087】
実施例2-2~2-4及び比較例2-1~2-6
各成分の配合量を表1に示すものに変更した以外は、実施例2-1と同様にして、実施例2-2~2-4及び比較例2-1~2-6のフィルム材を作製した。なお、表1中、配合量の数値の単位は質量部であり、共重合体溶液の数値は固形分(共重合体)の配合量を意味する。
【0088】
<評価>
各実施例及び比較例で得られたフィルム材について、以下の方法により評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
1.加速度減衰率の測定
図3は、加速度減衰率の測定装置の一例を模式的に示す概略図である。
図3に示す加速度減衰率の測定装置30は、主に、フィルム材が備える樹脂層31と、樹脂層31を貼り付けるための固定板32(ポリメチルメタクリレート板)と、固定板32を支持する金属板33と、鉄球34を備えるハンマー35と、ハンマー35の鉄球34の反対側の先端に配置された加速度センサ36と、から構成されている。
【0090】
実施例2-1~2-4及び比較例2-1~2-6のフィルム材を50mm×50mmのサイズに切り出し、切り出したフィルム材の基材フィルムBを剥離して樹脂層31の表面を露出させた。その後、露出させた樹脂層31の表面を固定板32(縦100mm×横100mm×厚み3.0mm)に貼り付け、ローラーで押し付けた。次いで、固定板32に貼り付けた樹脂層31から基材フィルムAを剥離し、樹脂層31の表面を露出させ、固定板32と金属板33(縦150mm×横150mm×厚み10mm)が接するように配置することによって、測定サンプルを得た。次いで、直径11mmの鉄球34を固定したハンマー35(質量280g)を、測定サンプルの樹脂層31から垂直方向で高さ20mmの位置から落下させ、加速度センサ36(昭和測器株式会社製、製品名「MODEL-1340B」)を用いてピーク加速度を計測した。なお、ピーク加速度は、加速度センサに内蔵されているピークホールド機能を使用したときに、絶対値を検出した波形からピーク値(衝撃加速度)を読み取ったものである。測定は23℃の環境下で行った。加速度減衰率は、下記式(A)に基づいて算出した。式(A)内の「樹脂層を設けなかった場合のピーク加速度」とは、樹脂層31を設けず、固定板32のみで計測した場合のピーク加速度を意味する。
加速度減衰率(%)
=(樹脂層を設けなかった場合のピーク加速度[m/s2]-樹脂層を設けた場合のピーク加速度[m/s2])/樹脂層を設けなかった場合のピーク加速度[m/s2]×100 (A)
【0091】
2.耐衝撃性の評価
図4は、耐衝撃性の評価装置の一例を模式的に示す概略図である。
図4に示す耐衝撃性の評価装置40は、主に、フィルム材が備える樹脂層41と、樹脂層41を貼り付けるためのガラス板47(フロートガラス)と、ガラス板47を固定するための固定板42(ポリメチルメタクリレート板)と、固定板42を支持する金属板43と、鉄球44を有するハンマー45と、から構成されている。
【0092】
実施例2-1~2-4及び比較例2-1~2-6のフィルム材を90mm×90mmのサイズに切り出し、切り出したフィルム材の基材フィルムBを剥離して樹脂層41の表面を露出させた。その後、露出させた樹脂層41の表面をガラス板47(フロートガラス、大阪硝子株式会社製、縦100mm×横100mm×厚み0.55mm)に貼り付け、ローラーで押し付けた。次いで、ガラス板47に貼り付けた樹脂層41から基材フィルムAを剥離し、樹脂層41の表面を露出させ、ガラス板47、固定板42(縦100mm×横100mm×厚み3.0mm)、及び金属板43(縦150mm×横150mm×厚み10mm)の順となるように積層することによって、評価サンプルを得た。次いで、直径11mmの鉄球44を固定したハンマー45(質量280g)を、評価サンプルの樹脂層41から垂直方向で高さ10mmの位置から落下させ、フロートガラスの割れ又はヒビの有無を評価した。なお、落下させた際にフロートガラスに割れ又はヒビが生じていない場合は、落下場所をずらして、ハンマー45を繰り返し落下させた。測定は23℃の環境下で行った。耐衝撃性の評価基準は以下のとおりである。
A:10回のハンマー落下で、フロートガラスに割れ又はヒビが発生しなかった。
B:10回未満のハンマーの落下で、フロートガラスに割れ又はヒビが発生した。
【0093】
3.耐熱性の評価
耐熱性は、樹脂層が高温下で応力を受けた際の変形率によって評価した。実施例2-1~2-4及び比較例2-1~2-6のフィルム材を縦7.0mm×横10mmのサイズに切り出し、切り出したフィルム材の基材フィルムBを剥離して樹脂層の表面を露出させた。その後、露出させた樹脂層の表面をΦ10mmの石英ガラスに手で押し付けて貼り付けた。次いで、石英ガラスに貼り付けた基材フィルムAを剥離して評価サンプルとした。熱機械分析装置(セイコーインスツル株式会社製、製品名「EXSTAR6000」)の圧縮荷重法において、Φ1.0mmの圧縮圧子を評価サンプルの樹脂層表面に接触させ、荷重をかけずに1分間静置した後、30mNの荷重にて5分間クリープさせたときの変形量を測定し、変形率を下記式(B)に基づいて算出した。測定は95℃で行った。なお、変形率が小さいほど、高温下での耐久性が高いことを示しており、耐熱性が高いことを意味する。
95℃変形率(%)=圧縮後の変形量(μm)/圧縮前の樹脂層厚み(μm)×100 (B)
【0094】
4.ヘーズの測定
実施例2-1~2-4及び比較例2-1~2-6のフィルム材を50mm×50mmのサイズに切り出し、切り出したフィルム材の基材フィルムBを剥離して樹脂層の表面を露出させた。その後、フィルム材の露出させた樹脂層の表面をフロートガラス(縦50mm×横50mm×厚み2.7mm)に貼り付け、ローラーで押し付けた。次いで、フロートガラスに貼り付けた樹脂層から基材フィルムAを剥離し、真空積層機を用いて、真空状態で樹脂層の表面を、フロートガラス(縦50mm×横50mm×厚み2.7mm)に貼り付けて積層体を作製した。その後、作製した積層体を、温度50℃、圧力0.5MPa、30分間保持する条件で加熱加圧処理(オートクレーブ処理)し、測定サンプルを得た。得られたサンプルについて、濁度計(日本電色工業株式会社製、製品名「NDH-5000」)を用いてJIS K7361に準じ、下記式(C)に基づき、ヘーズを測定した。
ヘーズ(%)=(Td/Tt)×100 (C)
Td:拡散透過率、Tt:全光線透過率
【0095】
【0096】
実施例1-1~1-4の共重合体溶液A-1~A-4を用いて作製した実施例2-1~2-4のフィルム材の樹脂層は、比較例1-1~1-6の共重合体溶液A-5~A-10を用いて作製した比較例2-1~2-6のフィルム材の樹脂層に比べて、耐衝撃性及び耐熱性に優れていた。このことから、実施例2-1~2-4のフィルム材の樹脂層を画像表示装置に適用した場合において、衝撃吸収層として作用し得ることが示唆された。
【符号の説明】
【0097】
10…画像表示装置、11…衝撃吸収層、12…基板、13…画像表示部材、14…機能向上部材、15…バリア部材、20…フィルム材、21…樹脂層、22、23…基材、30…加速度減衰率の測定装置、40…耐衝撃性の評価装置、31、41…樹脂層、32、42…固定板、33、43…金属板、34、44…鉄球、35、45…ハンマー、36…加速度センサ、47…ガラス板。