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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】SOIウェーハ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20220203BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20220203BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20220203BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20220203BHJP
   H01L 21/314 20060101ALI20220203BHJP
   C30B 25/02 20060101ALI20220203BHJP
   C30B 29/36 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
H01L27/12 B
H01L21/02 B
H01L21/20
H01L21/316 M
H01L21/314 M
C30B25/02 P
C30B29/36 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018165750
(22)【出願日】2018-09-05
(65)【公開番号】P2020038917
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2020-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】古賀 祥泰
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-114326(JP,A)
【文献】特開2008-041830(JP,A)
【文献】特開2016-092122(JP,A)
【文献】特開平05-152180(JP,A)
【文献】特開平02-206118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/20
H01L 21/316
H01L 21/314
H01L 27/12
C30B 25/02
C30B 29/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板シリコンウェーハと、
該支持基板上の単結晶シリコンからなる活性層と、
前記支持基板シリコンウェーハ及び前記活性層との間に設けられた埋め込み絶縁層と、
を有するSOIウェーハであって、
前記埋め込み絶縁層は、(i)単結晶SiC及びアモルファスSiCのいずれかからなる絶縁層と、(ii)酸化シリコンからなる密着層と、を備え、
該密着層は、前記埋め込み絶縁層の内部に設けられることを特徴とするSOIウェーハ。
【請求項2】
前記埋め込み絶縁層における、前記絶縁層の膜厚が1μm以上である、請求項1に記載のSOIウェーハ。
【請求項3】
前記埋め込み絶縁層における、前記密着層の膜厚が100nm以上200nm以下である、請求項1又は2に記載のSOIウェーハ。
【請求項4】
請求項1に記載のSOIウェーハの製造方法であって、
支持基板シリコンウェーハ及び活性層用シリコンウェーハの表面上に第1絶縁層及び第2絶縁層をそれぞれ形成する絶縁層形成工程と、
前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層の少なくともいずれか一方の表面上に酸化シリコンからなる密着層を形成する密着層形成工程と、
前記密着層を介して、前記支持基板シリコンウェーハ及び前記活性層用シリコンウェーハを貼り合わせる接合工程と、
前記活性層用シリコンウェーハを、前記貼り合わせた面とは反対側から減厚して単結晶シリコンからなる活性層とする減厚工程と、を含み、
前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層はともに、単結晶SiC及びアモルファスSiCのいずれかからなる、SOIウェーハの製造方法。
【請求項5】
前記接合工程に先立ち、前記密着層の平坦化処理を行う工程をさらに含む、請求項に記載のSOIウェーハの製造方法。
【請求項6】
前記接合工程に先立ち、前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層の平坦化処理を行う工程をさらに含む、請求項に記載のSOIウェーハの製造方法。
【請求項7】
前記接合工程において、酸化性ガス雰囲気下において800℃以上かつ1時間以上の貼り合わせ強化熱処理を施す、請求項のいずれか1項に記載のSOIウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SOIウェーハ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高耐圧素子として、SOI(Silicon On Insulator)構造を有するSOIウェーハが注目されている。従来知られる一般的なSOIウェーハは、シリコン単結晶からなる支持基板上に、絶縁性の高い酸化シリコン(SiO)からなる埋め込み絶縁層およびシリコン単結晶からなる活性層が順次形成された構造を有する(例えば特許文献1を参照)。この埋め込み絶縁層は、酸化シリコンに由来してBOX(Buried Oxide)層と呼ばれる。
【0003】
ところで、埋め込み絶縁層は酸化シリコンにより形成されるため、その熱伝導率がシリコンに比べて小さい。そのため、高耐圧デバイスにおける自己発熱が問題となり、放熱性を改善する取り組みが求められている。例えば特許文献2では、SOIウェーハに形成される半導体デバイス構造により放熱性を改善することが試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-21338号公報
【文献】特開2016-63099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SOIウェーハの熱伝導率そのものを改善することができれば、SOIウェーハに形成される半導体デバイス構造に制約はない。そこで本発明は、高い熱伝導率を有するSOIウェーハ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討し、埋め込み絶縁層として一般的に用いられてきた酸化シリコンに替えて、酸化シリコンよりも熱伝導率が比較的高い炭化ケイ素(SiC)を用いることを検討した。しかしながら、埋め込み絶縁層としてのSiCを設けたシリコンウェーハと、それに貼り合わせるシリコンウェーハとの接合は困難であった。本発明者はさらに鋭意検討し、埋め込み絶縁層に単結晶SiC及びアモルファスSiCのいずれかからなる絶縁層と、酸化シリコンからなる密着層とを設けることで、上記接合の課題を解決した。そして、こうして得られるSOIウェーハが高い熱伝導率を有することを本発明者は知見した。本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、その要旨構成は以下のとおりである。
【0007】
(1)支持基板シリコンウェーハと、
該支持基板上の単結晶シリコンからなる活性層と、
前記支持基板シリコンウェーハ及び前記活性層との間に設けられた埋め込み絶縁層と、を有するSOIウェーハであって、
前記埋め込み絶縁層は、(i)単結晶SiC及びアモルファスSiCのいずれかからなる絶縁層と、(ii)酸化シリコンからなる密着層と、を備え、
該密着層は、(a)前記埋め込み絶縁層の、前記活性層の側の表面、(b)前記埋め込み絶縁層の、前記支持基板シリコンウェーハの側の表面、及び(c)前記埋め込み絶縁層の内部、のいずれかに設けられることを特徴とするSOIウェーハ。
【0008】
(2)前記埋め込み絶縁層における、前記絶縁層の膜厚が1μm以上である、前記(1)に記載のSOIウェーハ。
【0009】
(3)前記埋め込み絶縁層における、前記密着層の膜厚が100nm以上200nm以下である、前記(1)又は(2)に記載のSOIウェーハ。
【0010】
(4)前記(1)に記載のSOIウェーハの製造方法であって、
支持基板シリコンウェーハの表面上に、単結晶SiC又はアモルファスSiCからなる絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記絶縁層及び活性層用シリコンウェーハの少なくともいずれか一方の表面上に酸化シリコンからなる密着層を形成する密着層形成工程と、
前記密着層を介して、前記支持基板シリコンウェーハ及び前記活性層用シリコンウェーハを貼り合わせる接合工程と、
前記活性層用シリコンウェーハを、前記貼り合わせた面とは反対側から減厚して単結晶シリコンからなる活性層とする減厚工程と、を含む、
SOIウェーハの製造方法。
【0011】
(5)前記(1)に記載のSOIウェーハの製造方法であって、
活性層用シリコンウェーハの表面上に、単結晶SiC又はアモルファスSiCからなる絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
支持基板シリコンウェーハ及び前記絶縁層の少なくともいずれか一方の表面上に酸化シリコンからなる密着層を形成する密着層形成工程と、
前記密着層を介して、前記支持基板シリコンウェーハ及び前記活性層用シリコンウェーハを貼り合わせる接合工程と、
前記活性層用シリコンウェーハを、前記貼り合わせた面とは反対側から減厚して単結晶シリコンからなる活性層とする減厚工程と、
を含む、SOIウェーハの製造方法。
【0012】
(6)前記(1)に記載のSOIウェーハの製造方法であって、
支持基板シリコンウェーハ及び活性層用シリコンウェーハの表面上に第1絶縁層及び第2絶縁層をそれぞれ形成する絶縁層形成工程と、
前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層の少なくともいずれか一方の表面上に酸化シリコンからなる密着層を形成する密着層形成工程と、
前記密着層を介して、前記支持基板シリコンウェーハ及び前記活性層用シリコンウェーハを貼り合わせる接合工程と、
前記活性層用シリコンウェーハを、前記貼り合わせた面とは反対側から減厚して単結晶シリコンからなる活性層とする減厚工程と、を含み、
前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層はともに、単結晶SiC及びアモルファスSiCのいずれかからなる、SOIウェーハの製造方法。
【0013】
(7)前記接合工程に先立ち、前記密着層の平坦化処理を行う工程をさらに含む、前記(4)又は(5)に記載のSOIウェーハの製造方法。
【0014】
(8)前記接合工程に先立ち、前記第1絶縁層及び前記第2絶縁層の平坦化処理を行う工程をさらに含む、前記(6)に記載のSOIウェーハの製造方法。
【0015】
(9)前記接合工程において、酸化性ガス雰囲気下において800℃以上かつ1時間以上の貼り合わせ強化熱処理を施す、前記(5)~(8)のいずれかに記載のSOIウェーハの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高い熱伝導率を有するSOIウェーハ及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明によるSOIウェーハを説明する模式断面図である。
図2A】本発明によるSOIウェーハの埋め込み絶縁層の第1の態様を説明する模式断面図である。
図2B】本発明によるSOIウェーハの埋め込み絶縁層の第2の態様を説明する模式断面図である。
図2C】本発明によるSOIウェーハの埋め込み絶縁層の第3の態様を説明する模式断面図である。
図3】本発明によるSOIウェーハの製造方法の第1実施形態を説明する模式断面図である。
図4】本発明によるSOIウェーハの製造方法の第2実施形態を説明する模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1.概要)
本発明に従う実施形態の説明に先立ち、各図面の対応関係について説明する。図1は本発明に従うSOIウェーハ1の模式断面図である。図2A図2Cは、図1に示したSOIウェーハにおける埋め込み絶縁層の3つの態様を示し、以下ではそれぞれ第1態様、第2態様及び第3態様と称する。
【0019】
図3は、第1態様による埋め込み絶縁層を有するSOIウェーハの製造方法の実施形態(以下、第1実施形態)を説明する模式断面図である。なお、図3に示す第1実施形態では、支持基板シリコンウェーハ110に絶縁層131を形成しているが、これに替えて、活性層用シリコンウェーハ120に絶縁層を形成すれば第2態様による埋め込み絶縁層を有するSOIウェーハを製造することができる。
【0020】
図4は、第3態様による埋め込み絶縁層を有するSOIウェーハの製造方法の実施形態(以下、第2実施形態)を説明する模式断面図である。
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態を詳細に説明する。まず、図1及び図2A図2Cを参照して本発明によるSOIウェーハ1の概要を説明する。次に、SOIウェーハ1を得るための第1、第2実施形態によるSOIウェーハの製造方法を説明しつつ、併せて各構成の詳細を説明する。その後、本発明に適用可能な具体的態様を説明する。なお、各図面では説明の便宜上、各構成の厚さを誇張して示す。そのため、各構成の厚さは、実際の厚さの割合とは異なる。
【0022】
(2.SOIウェーハ)
図1を参照する。本発明によるSOIウェーハ1は、支持基板シリコンウェーハ10と、支持基板シリコンウェーハ10上の単結晶シリコンからなる活性層21と、支持基板シリコンウェーハ10及び活性層21との間に設けられた埋め込み絶縁層30と、を有する。そして、埋め込み絶縁層30は、(i)単結晶SiC及びアモルファスSiCのいずれかからなる絶縁層31と、(ii)酸化シリコンからなる密着層35と、を備える。
【0023】
図2A図2Cのそれぞれに、埋め込み絶縁層30の第1態様~第3態様を模式的に示すように、密着層35は以下のいずれかの態様となる。すなわち、密着層35は、(a)埋め込み絶縁層30の、活性層21の側の表面(図2A参照)、(b)埋め込み絶縁層30の、支持基板シリコンウェーハ10の側の表面(図2B参照)、及び(c)埋め込み絶縁層の内部(図2C参照)、のいずれかに設けられる。なお、図2Cに示す第3態様の埋め込み絶縁層30において、絶縁層31は支持基板シリコンウェーハ10及び活性層21の両方の表面側にそれぞれ設けられた第1絶縁層31a及び第2絶縁層31bを有する。密着層35は第1絶縁層31a及び第2絶縁層31bの間に設けられる。
【0024】
第1態様から第3態様のいずれの場合であっても、本発明によるSOIウェーハ1であれば、後述の実施例により実証されたとおり、絶縁層に含まれるSiCの熱伝導率がSiよりも高い。そのため、本発明によるSOIウェーハ1は、酸化シリコンからなるBOX層を用いた従来公知のSOIウェーハに比べて熱伝導率が高く、放熱性に優れる。以下、SOIウェーハ1を製造するための実施形態を順次説明する。
【0025】
(3.SOIウェーハの製造方法の第1実施形態)
図3を参照して、第1実施形態によるSOIウェーハ100の製造方法を説明する。本実施形態は、図2Aの第1態様のSOIウェーハを製造する方法である。
【0026】
SOIウェーハ100の製造方法は、支持基板シリコンウェーハ110の表面上に絶縁層131を形成する絶縁層形成工程(図3のS110、S120参照)と、絶縁層131及び活性層用シリコンウェーハ120の少なくともいずれか一方の表面上に酸化シリコンからなる密着層135を形成する密着層形成工程(図3のS130、S130A~S130Cを参照)と、密着層135を介して、支持基板シリコンウェーハ110及び活性層用シリコンウェーハ120を貼り合わせる接合工程(図3のS140参照)と、活性層用シリコンウェーハ120を、貼り合わせた面とは反対側から減厚して単結晶シリコンからなる活性層121とする減厚工程(図3のS150参照)と、を含む。そして、絶縁層131は単結晶SiC又はアモルファスSiCからなる。以下、各工程の詳細を順次説明する。
【0027】
<絶縁層形成工程>
絶縁層形成工程(図3のS110、S120参照)では支持基板シリコンウェーハ110の表面上に、単結晶SiC又はアモルファスSiCからなる絶縁層131を形成する。単結晶SiC及びアモルファスSiCのいずれも、一般的な手法により形成することができる。ここで形成する絶縁層131の膜厚は、絶縁性が確保される限りは特に制限されないが、SOIウェーハとしての耐圧性を確保するため1μm以上とすることが好ましく、10μm以上とすることが好ましい。膜厚の上限は特に制限されないが、工業的な生産性を考慮すれば膜厚の上限は50μm程度である。
【0028】
<<炭化処理法によるSiCの形成>>
例えば、支持基板シリコンウェーハ110の表面を炭化処理することにより、単結晶SiCからなる絶縁層131を形成することができる。炭化処理は、例えば、熱処理炉内にプロパンガス、メタンガス、エタンガス等の炭素系ガスと、キャリアガスとしての水素ガスを導入する。そして、炭素雰囲気で、支持基板シリコンウェーハ110の温度を900~1300℃として、1~60分、より好ましくは30分以上の炭化処理を行う。こうすることで、単結晶SiCを支持基板シリコンウェーハ110の表面部に形成することができる。また、支持基板シリコンウェーハ110の温度を900℃未満とすれば、アモルファスSiCを形成することもできる。
【0029】
<<CVD法によるSiCの形成>>
また、プラズマCVD法などのCVD法を用いて、支持基板シリコンウェーハ110の表面上にSiCからなる絶縁層131を成膜することもできる。支持基板シリコンウェーハ110の温度を900℃以上1400℃以下にした状態で成膜すれば、単結晶SiCをエピタキシャル成長させることができる。また、支持基板シリコンウェーハ110の温度を250℃以上890℃以下にした状態で成膜すれば、アモルファスSiCを成長させることができる。
【0030】
<密着層形成工程>
次に、密着層形成工程(図3のS130参照)では、絶縁層131及び活性層用シリコンウェーハ120の少なくともいずれか一方の表面上に酸化シリコンからなる密着層135を形成する。
【0031】
本工程では、絶縁層131の表面上に密着層135を形成してもよい(図3のS130A参照)。この場合、活性層用シリコンウェーハ120の表面には膜厚が数Å程度の自然酸化膜(図示せず、以下同様。)が形成されている。
【0032】
また、本工程において、活性層用シリコンウェーハ120の表面上に密着層135を形成してもよい(図3のS130B参照)。この場合、単結晶SiC又はアモルファスSiCからなる絶縁層131の表面には膜厚が数Å程度の自然酸化膜が形成されている。
【0033】
さらにまた、本工程において、絶縁層131及び活性層用シリコンウェーハ120の両方の表面上に密着層135を形成してもよい(図3のS130C参照)。
【0034】
<<密着層の形成膜厚>>
次工程の接合工程において支持基板シリコンウェーハ110と活性層用シリコンウェーハ120とを密着層135を介して接合できる限りは、密着層の形成膜厚は特に制限されない。ただし、次工程での接合をより確実に行うため、本工程において形成する密着層135の膜厚を100nm以上200nm以下とすることが好ましい。また、この目的のため、図3のS130Cに示すように、絶縁層131及び活性層用シリコンウェーハ120の両方の表面上に密着層135を形成する場合は、密着層135の合計膜厚を上記範囲とすることが好ましい。
【0035】
<<CVD法による密着層の形成>>
例えば、プラズマCVD法などのCVD法を用いて、酸化シリコンからなる密着層135を所望の膜厚で形成することができる。
【0036】
<<熱酸化法による密着層の形成>>
また、公知の熱酸化法を用いても、酸化シリコンからなる密着層135を所望の膜厚で形成することができる。なお、酸化膜の品質を高めるためには、基板温度を900℃よりも高温にすることが好ましい。
【0037】
<<窒化シリコン保護膜>>
なお、密着層135の形成に先立ち、支持基板シリコンウェーハ110、活性層用シリコンウェーハ120及び絶縁層131のそれぞれの表面上に、窒化シリコン(SiN)保護膜(図示せず)を形成してもよい。特に、単結晶SiC又はアモルファスSiCからなる絶縁層131の表面上に、熱酸化法により酸化シリコンからなる密着層135を形成する場合には、密着層135の形成に先立ち、窒化シリコン保護膜を絶縁層131の表面に形成することが好ましい。こうすることで、絶縁層131の表面上に密着層135を確実に形成することができる。窒化シリコン保護膜の膜厚を20nm~100nm程度とすれば、十分に保護膜として機能する。また、窒化シリコン保護膜は、窒化処理及びCVD法等の公知の手法を用いて形成することができる。
【0038】
<接合工程>
密着層形成工程に続く接合工程(図3のS140参照)において、密着層135を介して、支持基板シリコンウェーハ110及び活性層用シリコンウェーハ120を貼り合わせる。
【0039】
図3のS130Aに示すように絶縁層131の表面上に密着層135を設けた場合、密着層135を活性層用シリコンウェーハ120の自然酸化膜と接合させることができる。密着層135の表面上に窒化シリコン保護膜を形成した場合は、当該窒化シリコン保護膜と、活性層用シリコンウェーハ120の自然酸化膜とで接合させることとなる。また、活性層用シリコンウェーハ120の表面上に窒化シリコン保護膜を形成した場合は、密着層135と当該窒化シリコン保護膜とで接合することとなる。
【0040】
また、図3のS130Bに示すように活性層用シリコンウェーハ120の表面上に密着層135を設けた場合、密着層135を絶縁層131の自然酸化膜と接合させることができる。密着層135の表面上に窒化シリコン保護膜を形成した場合は、当該窒化シリコン保護膜と、絶縁層131の自然酸化膜とで接合させることとなる。また、絶縁層131の表面上に窒化シリコン保護膜を形成した場合は、密着層135と当該窒化シリコン保護膜とで接合することとなる。
【0041】
さらにまた、図3のS130Cに示すように絶縁層131及び活性層用シリコンウェーハの両方の表面上に密着層135を設けた場合、密着層135同士で接合させることができる。
【0042】
なお、密着性を高めるため、本工程では、酸化性ガス雰囲気下において800℃以上かつ1時間以上の貼り合わせ強化熱処理を施すことが好ましい。酸化性ガス雰囲気は、例えば酸素雰囲気とすることができ、酸素に加えて不活性ガスなどが含まれてもよい。また、強化熱処理の温度及び処理時間の上限は特に制限されないが、工業的生産性を考慮すれば、それぞれ1300℃以下、5時間以下である。
【0043】
<活性層用シリコンウェーハの減厚工程>
上述した接合工程を経た後、活性層用シリコンウェーハ120の減厚工程(図3のS150参照)を行う。本工程では、活性層用シリコンウェーハ120を、貼り合わせた面とは反対側から減厚することで単結晶シリコンからなる活性層121を得る。減厚するためには、例えば活性層用シリコンウェーハ120を研削及び研磨すればよい。これにより、所望厚さの活性層121を有するSOIウェーハ100を得ることができる。活性層121の厚さは、そこに形成するデバイスに応じて適宜決定することができ、100nm~1mmの範囲で適宜定めればよい。なお、この研削および研磨には、公知の研削法および研磨法を好適に用いることができ、具体的には平面研削法および鏡面研磨法を用いることができる。
【0044】
こうして得られるSOIウェーハ100は、支持基板シリコンウェーハ10と、支持基板シリコンウェーハ10上の単結晶シリコンからなる活性層21と、支持基板シリコンウェーハ10及び活性層21との間に設けられた埋め込み絶縁層30と、を有する。そして、埋め込み絶縁層30は、(i)単結晶SiC及びアモルファスSiCのいずれかからなる絶縁層31と、(ii)酸化シリコンからなる密着層35と、を備え、密着層35は、(a)埋め込み絶縁層30の、活性層21の側の表面(図2A参照)に設けられる。なお、埋め込み絶縁層130は、前述した窒化シリコン保護膜を備えてもよい。
【0045】
以上、図3を参照して前述の第1態様によるSOIウェーハの製造方法の第1実施形態を説明した。この第1実施形態では支持基板シリコンウェーハ110に絶縁層131を形成したものの、これに替えて、活性層用シリコンウェーハ120に絶縁層131を形成する以外は、上記第1実施形態と同様の工程を経ることにより、図2Bに示す第2態様のSOIウェーハを製造することができる。すなわち、活性層用シリコンウェーハ120の表面上に絶縁層131を形成する絶縁層形成工程と、支持基板シリコンウェーハ110及び絶縁層131の少なくともいずれか一方の表面上に酸化シリコンからなる密着層135を形成する密着層形成工程と、密着層135を介して、支持基板シリコンウェーハ110及び活性層用シリコンウェーハ120を貼り合わせる接合工程と、活性層用シリコンウェーハ120を、貼り合わせた面とは反対側から減厚して単結晶シリコンからなる活性層121とする減厚工程と、により、第2態様によるSOIウェーハを製造することができる。第2態様によるSOIウェーハは、(i)単結晶SiC及びアモルファスSiCのいずれかからなる絶縁層と、(ii)酸化シリコンからなる密着層と、を備え、密着層は、(b)埋め込み絶縁層の、支持基板シリコンウェーハ110の側の表面(図2B参照)に設けられる。なお、絶縁層131、密着層135、窒化シリコン保護膜の形成、接合工程及びその強化熱処理、減厚のための研削及び研磨手法等については第1実施形態において上述したのと同様の手法を用いることができるため、重複する説明を省略する。
【0046】
(4.SOIウェーハの製造方法の第2実施形態)
図4を参照して、第2実施形態によるSOIウェーハ200の製造方法を説明する。本実施形態は、図2Cの第3態様のSOIウェーハを製造する方法である。なお、簡潔な説明のため、第1実施形態と同一の構成要素及び同一ステップには原則として一及び十の位が同一の参照番号を付して構成の詳細な説明を省略し、以降も同様とする。
【0047】
SOIウェーハ200の製造方法は、支持基板シリコンウェーハ210及び活性層用シリコンウェーハ220の表面上に第1絶縁層231a及び第2絶縁層231bをそれぞれ形成する絶縁層形成工程(図4のS210、S220参照)と、第1絶縁層231a及び第2絶縁層231bの少なくともいずれか一方の表面上に酸化シリコンからなる密着層235を形成する密着層形成工程(図4のS230、S230A~S230Cを参照)と、密着層235を介して、支持基板シリコンウェーハ210及び活性層用シリコンウェーハ220を貼り合わせる接合工程(図4のS240参照)と、活性層用シリコンウェーハ220を、貼り合わせた面とは反対側から減厚して単結晶シリコンからなる活性層221とする減厚工程(図4のS250参照)と、を含む。また、第1絶縁層231a及び第2絶縁層231bはともに、単結晶SiC及びアモルファスSiCのいずれかからなる。
【0048】
<絶縁層形成工程>
第1実施形態では絶縁層231を支持基板シリコンウェーハ210にのみ形成していたところ、第2実施形態では支持基板シリコンウェーハ210及び活性層用シリコンウェーハ220のそれぞれに絶縁層231a,231bを形成する点で異なる。単結晶SiC又はアモルファスSiCからなる第1及び第2絶縁層231a,231bの形成手法は第1実施形態と同様であり、炭化処理法及びCVD法などを適用することができる。また、耐圧性を確保するためには、絶縁層231a,231bの合計の膜厚を第1実施形態で述べた膜厚とすることが好ましい。
【0049】
<密着層形成工程>
密着層形成工程については、第1実施形態と同様にして行うことができる。密着層同士の接合のため、密着層235の合計膜厚を第1実施形態に述べた膜厚とすることが好ましい。また、密着層235の形成に先立ち窒化シリコン保護膜を形成してもよいことも前述のとおりである。
【0050】
<接合工程>
密着層形成工程についても、第1実施形態と同様にして行うことができる。密着性を高めるため、酸化性ガス雰囲気下において800℃以上かつ1時間以上の貼り合わせ強化熱処理を施すことが好ましいことも、同様である。
【0051】
<減厚工程>
減厚工程も、第1実施形態と同様にして行うことができる。
【0052】
こうして得られるSOIウェーハ200は、支持基板シリコンウェーハ210と、支持基板シリコンウェーハ210上の活性層221と、支持基板シリコンウェーハ210及び活性層221との間に設けられた埋め込み絶縁層230と、を有する。そして、埋め込み絶縁層230は、(i)単結晶SiC及びアモルファスSiCのいずれかからなる絶縁層231(231a,231b)と、(ii)酸化シリコンからなる密着層235と、を備え、密着層235は、(c)埋め込み絶縁層230の内部に設けられる。また、埋め込み絶縁層230が、第1実施形態において前述した窒化シリコン保護膜を備えてもよい。
【0053】
なお、上述した製造方法の各実施形態において、接合工程に先立ち、密着層の平坦化処理を行うことも好ましい。すなわち、第1実施形態では密着層135の平坦化を行うことが好ましく、第2実施形態では密着層235の平坦化を行うことが好ましい。
【0054】
平坦化の条件は特に制限されないが、密着層の表面粗さRaが3nm以下となるように平坦化することが好ましく、研磨代を30nm以内とすることがより好ましい。平坦化を行うことにより、密着層を介した支持基板シリコンウェーハ及び活性層用シリコンウェーハの接合をより確実に行うことができるためである。なお、平坦化には、公知の化学機械研磨(CMP:chemical mechanical polishing)法等を好適に用いることができる。また、本明細書における表面粗さRaとは、JIS B 0601(2001)に規定の算術平均粗さRaの定義に従う。
【0055】
また、接合工程後には、強化熱処理及び平坦化処理によって、酸化シリコンからなる密着層135,235の膜厚が密着層形成直後の膜厚よりも薄くなりうる。そのため、得られるSOIウェーハ100,200における密着層の膜厚を100~200nmとするように、密着層を研磨代分厚く形成する必要がある。
【0056】
以上の製造方法の実施形態に従うことで、本発明によるSOIウェーハを製造することができる。
【0057】
(5.具体的態様)
以下では、本発明において用いることができる支持基板シリコンウェーハ10、活性層用シリコンウェーハ20(活性層21)に適用可能なシリコンウェーハの具体的態様を説明する。
【0058】
シリコンウェーハの面方位は任意であり、(100)面のウェーハを用いてもよいし、(110)面のウェーハなどを用いてもよい。
【0059】
シリコンウェーハの厚さは、用いる用途に応じて適宜決定することができ、300μm~1.5mmとすることができる。活性層用シリコンウェーハから得られる単結晶シリコンからなる活性層の膜厚を100nm~1mmの範囲で適宜定めることは既に述べたとおりである。
【0060】
また、シリコンウェーハにボロン(B)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)などのドーパントがドープされていてもよいし、所望の特性を得るため炭素(C)又は窒素(N)などがドープされていてもよい。
【0061】
シリコンウェーハの直径は何ら制限されない。一般的な直径300mm又は200mmなどのシリコンウェーハに本発明を適用することができる。もちろん、直径300mmよりも直径の大きいシリコンウェーハに対しても、直径の小さいシリコンウェーハに対しても本発明を適用することができる。
【0062】
なお、本明細書における「シリコンウェーハ」とは、表面にエピタキシャル層又は酸化シリコンなどからなる絶縁層などの別の層が形成されていない、いわゆる「バルク」のシリコンウェーハを用いてもよいし、エピタキシャル層などの別の層を別途形成したエピタキシャルシリコンウェーハを用いても構わない。なお、シリコンウェーハの表面には数Å程度の膜厚の自然酸化膜が形成されうるが、こうした自然酸化膜があってもよいし、必要に応じて公知の洗浄方法等を用いて除去してもよい。
【実施例
【0063】
(実験概要)
支持基板シリコンウェーハ及び活性層用シリコンウェーハとして、直径:2インチ(50.8mm)、厚み:500μmのn型CZシリコンウェーハ(ドーパント:リン)を用意した。評価用実験1として、本発明に従うSOIウェーハの熱伝導率を評価するため、絶縁層及び密着層をシリコンウェーハ上に成膜し、埋め込み絶縁層を露出させた状態での熱伝導率を評価した。次に、評価用実験2として、SOIウェーハの耐圧評価を行うために絶縁層の膜厚を比較的薄く成膜したSOIウェーハを作製し、耐圧評価を行った。
【0064】
<評価用実験1>
-サンプル1-
支持基板シリコンウェーハの表面に、プラズマCVD法により、基板温度を300℃に維持した状態で、CHガスを130sccm、CHSiHガスを25sccm流して、アモルファスSiCからなる絶縁層を膜厚5μmで形成した。
【0065】
絶縁層上に、プラズマCVD法により、基板温度を300℃に維持した状態で、CHSiHガスを55sccm、Oガスを110sccm流して、酸化シリコン(SiO)からなる密着層を膜厚50nmで形成し、埋め込み絶縁層を形成した。
【0066】
-サンプル2-
サンプル1における密着層の膜厚を50nmから150nmに変えた以外は、サンプル1と同様にして埋め込み絶縁層を形成した。
【0067】
-サンプル3-
サンプル1における密着層の膜厚を50nmから200nmに変えた以外は、サンプル1と同様にして埋め込み絶縁層を形成した。
【0068】
-サンプル4-
サンプル1における密着層の膜厚を50nmから1000nmに変えた以外は、サンプル1と同様にして埋め込み絶縁層を形成した。
【0069】
-サンプル5-
支持基板シリコンウェーハの表面に、CH雰囲気下で、1050℃にてウェーハ表面をSiC化しつつ、さらにCHガスを130sccm、CHSiHガスを25sccm流すことで、単結晶SiCからなる絶縁層を膜厚5μmで形成した。さらに、サンプル1と同様にして、酸化シリコン(SiO)からなる密着層を膜厚50nmで形成し、埋め込み絶縁層とした。
【0070】
-サンプル6-
支持基板シリコンウェーハの表面に、熱酸化法を用いてSiOからなる絶縁層を膜厚5μmで形成した。
【0071】
-評価1-
サンプル1~6のそれぞれの表面に対して、熱印加して熱印加前後の抵抗を測定することにより、埋め込み絶縁層の熱伝導率を評価した。結果を表1に示す。なお、表1では絶縁層を形成しないバルクのシリコンウェーハからなる支持基板の熱伝導率を基準として相対化した測定値を示す。サンプル1~サンプル3(アモルファスSiC)、サンプル5(単結晶SiC)の熱伝導率はサンプル6(SiO)の熱伝導率の約2倍以上ある。また、サンプル4の熱伝導率も、サンプル6の熱伝導率よりは高い。したがって、絶縁層として単結晶SiC又はアモルファスSiCを用いることで、酸化シリコンをBOX層として用いる従来一般的なSOIウェーハ(サンプル3相当)に比べて、放熱性を大幅に向上できることが確認できた。なお、サンプル1~4に見られるように、密着層の膜厚が大きくなるほど熱伝導率が低くなるため、密着性を確保できる範囲で密着層の膜厚を薄くした方がよいと言える。
【0072】
【表1】
【0073】
<評価用実験2>
図3(S130工程がS130Aの場合)に示す製造方法の模式断面図に従い、サンプル7~サンプル10に係るSOIウェーハを作製した。
【0074】
-サンプル7-
支持基板シリコンウェーハの表面に、プラズマCVD法により、支持基板の温度を300℃に維持した状態で、CHガスを130sccm、CHSiHガスを25sccm流して、アモルファスSiCからなる絶縁層を膜厚100nmで形成した。
【0075】
支持基板シリコンウェーハの絶縁層表面に対して、プラズマCVD法により、支持基板の温度を300℃に維持した状態で、CHSiHガスを55sccm、Oガスを110sccm流して、絶縁層表面上にSiOからなる密着層を130nm形成した。
【0076】
研磨代を30nm以内に設定して化学機械研磨により表面平坦化処理を行い、密着層の表面粗さRaが3nm以下となるよう、平坦化を行った。なお、平坦化による研磨代は25nm、平坦化後のRaは2.3nm、平坦化前のRaは13nmであった。
【0077】
支持基板シリコンウェーハ及び活性層用シリコンウェーハを密着層を介して貼り合わせ、酸素雰囲気下において800℃の2時間、1150℃の1時間の高温処理により接合強化のための熱処理を施した。
【0078】
活性層用シリコンウェーハの厚みを20μm残すよう、貼り合せ面とは反対側から、研削及び研磨を行い、活性層を得た。こうして、サンプル7に係るSOIウェーハを得た。
【0079】
-サンプル8-
サンプル7におけるアモルファスSiCからなる絶縁層の形成に替えて、CH雰囲気下で980℃にてウェーハ表面をSiC化し、引き続きCHガスを130sccm、CHSiHガスを25sccm流して、単結晶SiCからなる絶縁層を膜厚100nmで形成した。その他の条件はサンプル7と同様にして、サンプル8に係るSOIウェーハを得た。なお、平坦化による研磨代は23nm、平坦化後のRaは2.2nm、平坦化前のRaは12nmであった。
【0080】
-サンプル9-
サンプル7におけるアモルファスSiCからなる絶縁層の形成に替えて、CH雰囲気下で980℃にてウェーハ表面をSiC化し、さらに800℃に降温後、CHガスを130sccm、CHSiHガスを25sccm流して、多結晶SiCからなる絶縁層を膜厚100nmで形成した。その他の条件はサンプル7と同様にして、サンプル9に係るSOIウェーハを得た。なお、平坦化による研磨代は29nm、平坦化後のRaは2.8nm、平坦化前のRaは20nmであった。
【0081】
-サンプル10-
サンプル7におけるアモルファスSiCからなる絶縁層の形成に替えて、SiOからなる絶縁層を熱酸化法を用いて膜厚130nmで形成した。その他の条件はサンプル7と同様にして、サンプル8に係るSOIウェーハを得た。なお、サンプル7と同様にSiOを平坦化処理した。サンプル10のSOIウェーハでは、SiO膜の仕上り膜厚は112nmである。なお、平坦化による研磨代は18nm、平坦化後のRaは1.0nm、平坦化前のRaは4nmであった。
【0082】
-評価-
活性層へ電極を形成し、TZDB(タイムゼロ絶縁破壊:Time Zero Dielectric Breakdown)測定を行った。評価にあたり、単位面積当たりの電流が1×10-4A/cmを超えた場合に、絶縁破壊したと判断し、そのときの絶縁耐圧を求めた。結果を表2に示す。
【0083】
【表2】
【0084】
本発明に従う単結晶SiC又はアモルファスSiCからなる絶縁層を埋め込み絶縁層として用いたSOIウェーハの絶縁耐圧は約11MV/cmであり、サンプル10の耐圧性と同等である。したがって、本発明によるSOIウェーハは、先の評価用実験1と照らし合わせて、高い熱伝導率を有するSOIウェーハとして機能することが確認できた。なお、絶縁層として多結晶SiCを形成する場合、熱伝導率はSiより優れると考えられるものの、上記サンプル9の結果に示されるように耐圧性に若干劣る。多結晶SiCの場合、膜厚を厚く設定する必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、高い熱伝導率を有するSOIウェーハを得ることができる。
【符号の説明】
【0086】
1,100,200 SOIウェーハ
21,121,221 活性層
30,130,230 埋め込み絶縁層
31,131,231 絶縁層
35,135,235 密着層
10,110,210 支持基板シリコンウェーハ
120,220 活性層用シリコンウェーハ
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4