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特許7006593集積回路に使用するための焼成多層スタック及び太陽電池
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】集積回路に使用するための焼成多層スタック及び太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0224 20060101AFI20220117BHJP
   H01L 31/068 20120101ALI20220117BHJP
【FI】
H01L31/04 264
H01L31/06 300
【請求項の数】 43
(21)【出願番号】P 2018526714
(86)(22)【出願日】2016-11-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-29
(86)【国際出願番号】 US2016063696
(87)【国際公開番号】W WO2017091782
(87)【国際公開日】2017-06-01
【審査請求日】2019-08-08
(31)【優先権主張番号】62/259,636
(32)【優先日】2015-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/318,566
(32)【優先日】2016-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/371,236
(32)【優先日】2016-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/423,020
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ハーディン
(72)【発明者】
【氏名】エリック サウアー
(72)【発明者】
【氏名】デア スセーノ
(72)【発明者】
【氏名】ジェシー ヒンリチャー
(72)【発明者】
【氏名】ジェニファー ファン
(72)【発明者】
【氏名】トム ユ-タン リン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン コナー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ヘレブッシュ
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ ピーターズ
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-109809(JP,A)
【文献】特開2014-214340(JP,A)
【文献】特開2012-109314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/078
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面を有する基板と、
前記基板表面の少なくとも一部上に存在して金属粒子を含む金属粒子層と、
前記基板表面の少なくとも一部上に存在する改質金属粒子層と、
前記改質金属粒子層の少なくとも一部の直上に存在して半田付け可能な表面を有する改質インターカレーション層とを含む焼成多層スタックであって、
前記改質金属粒子層は、前記金属粒子と、前記改質インターカレーション層からの少なくとも1つの材料とを含み、
前記改質インターカレーション層は、貴金属と、アンチモン、ヒ素、バリウム、ビスマス、ホウ素、カドミウム、カルシウム、セリウム、セシウム、クロム、コバルト、ガリウム、ゲルマニウム、ハフニウム、インジウム、鉄、ランタン、鉛、リチウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニオブ、リン、カリウム、レニウム、セレン、ケイ素、ナトリウム、ストロンチウム、硫黄、テルル、錫、バナジウム、亜鉛、ジルコニウム、これらの組み合わせ、及びこれらの合金、これらの酸化物、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせからなる群から選択される材料とを含み、
前記改質インターカレーション層は、少なくともビスマスを含み、
前記改質金属粒子層中の、総金属の質量に対するビスマスの質量比(ビスマス:総金属)、又はビスマスと鉛とアルミニウムの総質量に対するビスマスと鉛の総質量の比[( Bi+Pb):(Bi+Pb+Al)]が、1:10~1:10である、焼成多層スタック。
【請求項23】
基板と、
前記基板の少なくとも一部上に存在する金属粒子層と、
前記基板の少なくとも一部上に存在する改質金属粒子層と、
前記改質金属粒子層の少なくとも一部の直上に存在する改質インターカレーション層とを含む焼成多層スタックであって、
前記改質インターカレーション層は、前記改質金属粒子層の少なくとも一部の直上に存在するインターカレーション副層と、前記インターカレーション副層の少なくとも一部の直上に存在する貴金属副層との2つの副層を含み、
前記改質金属粒子層は、金属粒子と、前記インターカレーション副層からの少なくとも1つの材料とを含み、
前記インターカレーション副層は、アンチモン、ヒ素、バリウム、ビスマス、ホウ素、カドミウム、カルシウム、セリウム、セシウム、クロム、コバルト、ガリウム、ゲルマニウム、ハフニウム、インジウム、鉄、ランタン、鉛、リチウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニオブ、リン、カリウム、レニウム、セレン、ケイ素、ナトリウム、ストロンチウム、硫黄、テルル、錫、バナジウム、亜鉛、ジルコニウム、これらの組み合わせ、及びこれらの合金、これらの酸化物、これらの複合材、これらの他の組み合わせからなる群から選択される材料を含み、
前記インターカレーション副層は、少なくともビスマスを含み、
前記改質金属粒子層中の総金属の質量に対するビスマスの質量(ビスマス:総金属)、又はビスマスと鉛とアルミニウムの総質量に対するビスマスと鉛の総質量の比[(B i+Pb):(Bi+Pb+Al)]が、1:10 ~1:10である、焼成多層スタック。
【請求項26】
シリコン基板と、
前記シリコン基板の少なくとも一部の上に存在するアルミニウム粒子層と、
前記シリコン基板の少なくとも一部の上に存在する改質アルミニウム粒子層と、
前記改質アルミニウム粒子層の直上に存在する改質インターカレーション層と
を含む焼成多層スタックであって、
前記改質インターカレーション層が、前記改質アルミニウム粒子層の直上に存在してビスマスに富む副層と、前記ビスマスに富む副層の直上に存在する銀に富む副層との2層の層を含み、
前記改質アルミニウム粒子層は、アルミニウム粒子と、ビスマス、及び酸化ビスマスからなる群から選択される少なくとも1つの材料とを含み、
前記改質アルミニウム粒子層中のアルミニウムとビスマスの総質量に対するビスマスの質量の割合(ビスマス/(ビスマス+アルミニウム))が、前記アルミニウム粒子層中の前記改質アルミニウム粒子層から少なくとも500μm離れた領域でのアルミニウムとビスマスの総質量に対するビスマスの質量の割合(ビスマス/(ビスマス+アルミニウム))よりも20%以上高い、焼成多層スタック。
【請求項27】
前面及び背面を有するシリコン基板と、
前記シリコン基板の前記前面の少なくとも一部の直上に存在する少なくとも1つの前面誘電体層と、
前記シリコン基板の前記前面の一部の上に存在する複数の微細なグリッド線と、
前記複数の微細なグリッド線の少なくとも1つと電気的に接触する少なくとも1つの前面バスバー層と、
前記シリコン基板の前記背面の少なくとも一部の上に存在するアルミニウム粒子層であって、アルミニウム粒子を含むアルミニウム粒子層と、
前記シリコン基板の前記背面の一部の上に存在する背面タブ層と
を含む太陽電池であって、
前記背面タブ層は、
前記シリコン基板の前記背面の一部の上に存在する改質アルミニウム粒子層と、
前記改質アルミニウム粒子層の少なくとも一部の直上に存在して半田付け可能な表面を有する改質インターカレーション層とを含み、
前記改質アルミニウム粒子層は、前記アルミニウム粒子と前記改質インターカレーション層からの少なくとも1つの材料とを含み、
前記改質インターカレーション層は、貴金属と、アンチモン、ヒ素、バリウム、ビスマス、ホウ素、カドミウム、カルシウム、セリウム、セシウム、クロム、コバルト、ガリウム、ゲルマニウム、ハフニウム、インジウム、鉄、ランタン、鉛、リチウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニオブ、リン、カリウム、レニウム、セレン、ケイ素、ナトリウム、ストロンチウム、硫黄、テルル、錫、バナジウム、亜鉛、ジルコニウム、これらの組み合わせ、及びこれらの合金、これらの酸化物、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせからなる群から選択される材料を含み、
前記改質インターカレーション層は、少なくともビスマスを含み、
前記改質アルミニウム粒子層中の、ビスマスとアルミニウムの総質量に対するビスマス の質量の比[Bi:(Al+Bi)]、又はビスマスと鉛とアルミニウムの総質量に対す るビスマスと鉛の総質量の比[(Bi+Pb):(Bi+Pb+Al)]が、1:10 ~1:10である、太陽電池。
【請求項28】
前面及び背面を有するシリコン基板と、
前記シリコン基板の前記前面の少なくとも一部の直上に存在する少なくとも1つの前面誘電体層と、
前記シリコン基板の前記前面の一部の上に存在する複数の微細なグリッド線と、
前記複数の微細なグリッド線の少なくとも1つと電気的に接触する少なくとも1つの前面バスバー層と、
前記シリコン基板の前記背面の少なくとも一部の上に存在するアルミニウム粒子層であって、アルミニウム粒子を含むアルミニウム粒子層と、
前記シリコン基板の前記背面の一部の上に存在する背面タブ層と
を含む太陽電池であって、
前記背面タブ層は、
前記シリコン基板の前記背面の一部の上に存在する改質アルミニウム粒子層と、
前記改質アルミニウム粒子層の少なくとも一部の直上に存在して半田付け可能な表面を有する改質インターカレーション層とを含み、
前記改質アルミニウム粒子層は、前記アルミニウム粒子と前記改質インターカレーション層からの少なくとも1つの材料とを含み、
前記改質インターカレーション層は、貴金属と、アンチモン、ヒ素、バリウム、ビスマス、ホウ素、カドミウム、カルシウム、セリウム、セシウム、クロム、コバルト、ガリウム、ゲルマニウム、ハフニウム、インジウム、鉄、ランタン、鉛、リチウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニオブ、リン、カリウム、レニウム、セレン、ケイ素、ナトリウム、ストロンチウム、硫黄、テルル、錫、バナジウム、亜鉛、ジルコニウム、これらの組み合わせ、及びこれらの合金、これらの酸化物、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせからなる群から選択される材料を含み、
前記改質インターカレーション層は、少なくともビスマスを含み、
前記改質アルミニウム粒子層中の、ビスマスとアルミニウムの総質量に対するビスマス の質量の比[Bi:(Al+Bi)]が、前記アルミニウム粒子層中の前記改質アルミニ ウム粒子層から少なくとも500μm離れた領域でのビスマスとアルミニウムの総質量に 対するビスマスの質量の比[Bi:(Al+Bi)]よりも20%以上高い、太陽電池。
【請求項29】
前記改質インターカレーション層が、貴金属相及びインターカレーション相の2つの相を含み、
前記半田付け可能な表面の50%より多くが前記貴金属相を含み、
前記改質アルミニウム粒子層が、前記アルミニウム粒子と前記インターカレーション相からの少なくとも1つの材料とを含み、
前記インターカレーション相が、アンチモン、ヒ素、バリウム、ビスマス、ホウ素、カドミウム、カルシウム、セリウム、セシウム、クロム、コバルト、ガリウム、ゲルマニウム、ハフニウム、インジウム、鉄、ランタン、鉛、リチウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニオブ、リン、カリウム、レニウム、セレン、ケイ素、ナトリウム、ストロンチウム、イオウ、テルル、錫、バナジウム、亜鉛、ジルコニウム、これらの組み合わせ、及びこれらの合金、これらの酸化物、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせからなる群から選択される材料を含み、
前記インターカレーション相は、少なくともビスマスを含む、請求項27又は請求項2 に記載の太陽電池。
【請求項30】
前記改質インターカレーション層が、前記改質アルミニウム粒子層の少なくとも一部の直上に存在するインターカレーション副層と、前記インターカレーション副層の少なくとも一部の直上に存在する貴金属副層との2つの副層を含み、
前記半田付け可能な表面は前記貴金属副層を含み、
前記改質アルミニウム粒子層が、前記アルミニウム粒子と前記インターカレーション副層からの少なくとも1つの材料とを含み、
前記インターカレーション副層は、アンチモン、ヒ素、バリウム、ビスマス、ホウ素、カドミウム、カルシウム、セリウム、セシウム、クロム、コバルト、ガリウム、ゲルマニウム、ハフニウム、インジウム、鉄、ランタン、鉛、リチウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニオブ、リン、カリウム、レニウム、セレン、ケイ素、ナトリウム、ストロンチウム、イオウ、テルル、錫、バナジウム、亜鉛、ジルコニウム、これらの組み合わせ、及びこれらの合金、これらの酸化物、これらの複合材、これらの他の組み合わせからなる群から選択される材料を含み、
前記インターカレーション副層は、少なくともビスマスを含む、請求項27又は請求項 28に記載の太陽電池。
【請求項32】
前記貴金属が、銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの合金、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせからなる群から選択される材料を含む、請求項27又 は請求項28に記載の太陽電池。
【請求項38】
前記半田付け可能な表面が、少なくとも70量%の銀を含む、請求項27又は請求項 28に記載の太陽電池。
【請求項40】
前面及び背面を有するシリコン基板と、
前記シリコン基板の前記前面の少なくとも一部の直上に存在する少なくとも1つの前面誘電体層と、
前記シリコン基板の前記前面の一部の上に存在する複数の微細なグリッド線と、
前記複数の微細なグリッド線の少なくとも1つと電気的に接触する少なくとも1つの前面バスバー層と、
前記シリコン基板の背面の少なくとも一部の上に存在してアルミニウム粒子を含むアルミニウム粒子層と、
前記シリコン基板の背面の一部の上に存在する背面タブ層と、
を含む太陽電池であって、
前記背面タブ層は半田付け可能な表面を有し、前記背面タブ層が、
前記シリコン基板の背面の少なくとも一部の上に存在する改質アルミニウム粒子層と、
前記改質アルミニウム粒子層の少なくとも一部の直上に存在してビスマスに富む副層と、
前記ビスマスに富む副層の少なくとも一部の直上に存在して銀に富む副層とを含み、
前記改質アルミニウム粒子層は、前記アルミニウム粒子と、酸化アルミニウム、ビスマス及び酸化ビスマスからなる群から選択される少なくとも1つの材料とを含み、
前記改質アルミニウム粒子層中のアルミニウムとビスマスの総質量に対するビスマスの 質量の比[Bi:(Al+Bi)]、又はビスマスと鉛とアルミニウムの総質量に対する ビスマスと鉛の総質量の比[(Bi+Pb):(Bi+Pb+Al)]が、1:10 1:10である、太陽電池。
【請求項41】
前面及び背面を有するシリコン基板と、
前記シリコン基板の前記前面の少なくとも一部の直上に存在する少なくとも1つの前面誘電体層と、
前記シリコン基板の前記前面の一部の上に存在する複数の微細なグリッド線と、
前記複数の微細なグリッド線の少なくとも1つと電気的に接触する少なくとも1つの前面バスバー層と、
前記シリコン基板の背面の少なくとも一部の上に存在してアルミニウム粒子を含むアルミニウム粒子層と、
前記シリコン基板の背面の一部の上に存在する背面タブ層と、
を含む太陽電池であって、
前記背面タブ層は半田付け可能な表面を有し、前記背面タブ層が、
前記シリコン基板の背面の少なくとも一部の上に存在する改質アルミニウム粒子層と、
前記改質アルミニウム粒子層の少なくとも一部の直上に存在してビスマスに富む副層と、
前記ビスマスに富む副層の少なくとも一部の直上に存在して銀に富む副層とを含み、
前記改質アルミニウム粒子層は、前記アルミニウム粒子と、酸化アルミニウム、ビスマス及び酸化ビスマスからなる群から選択される少なくとも1つの材料とを含み、
前記改質アルミニウム粒子層中の、ビスマスとアルミニウムの総質量に対するビスマス の質量の比[Bi:(Al+Bi)]が、前記アルミニウム粒子層中の前記改質アルミニ ウム粒子層から少なくとも500μm離れた領域でのビスマスとアルミニウムの総質量に 対するビスマスの質量の比[Bi:(Al+Bi)]よりも20%以上高い、太陽電池。
【請求項42】
太陽電池モジュールであって、
前面及び背面を有する前面シートと、
前記前面シートの前記背面の上に存在する前面封止層と、
前記前面封止層の上にある第1のシリコン太陽電池及び第2のシリコン太陽電池とを備え、各シリコン太陽電池は、
前面及び背面を有するシリコン基板と、
前記シリコン基板の前記前面の少なくとも一部の直上に存在する少なくとも1つの前面誘電体層と、
前記シリコン基板の前記前面の一部に存在する複数の微細なグリッド線と、
前記複数の微細なグリッド線の少なくとも1つと電気的に接触する少なくとも1つの前面バスバー層と、
前記シリコン基板の前記背面の少なくとも一部の上に存在してアルミニウム粒子を含むアルミニウム粒子層と、
前記シリコン基板の前記背面の一部の上に存在する背面タブ層と、を含み、
前記背面タブ層は、
前記シリコン基板の背面の一部の上に存在する改質アルミニウム粒子層と、
前記改質アルミニウム粒子層の少なくとも一部の直上に存在して半田付け可能な表面を有する改質インターカレーション層と、を含み、
前記改質インターカレーション層は、貴金属と、アンチモン、ヒ素、バリウム、ビスマス、ホウ素、カドミウム、カルシウム、セリウム、セシウム、クロム、コバルト、ガリウム、ゲルマニウム、ハフニウム、インジウム、鉄、ランタン、鉛、リチウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、リン、カリウム、レニウム、セレン、ケイ素、ナトリウム、ストロンチウム、硫黄、テルル、錫、バナジウム、亜鉛、ジルコニウム、これらの組み合わせ、及びこれらの合金、これらの酸化物、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせからなる群から選択される1つの材料とを含み、
前記改質インターカレーション層は、少なくともビスマスを含み、
前記改質アルミニウム粒子層は、前記アルミニウム粒子と、前記改質インターカレーション層からの少なくとも1つの材料とを含み、
前記太陽電池モジュールは、第1のセル相互接続をさらに含み、前記第1のセル相互接続は、
前記第1のシリコン太陽電池の前面バスバー層及び第2のシリコン太陽電池の前記背面タブ層の両方と電気的に接触する第1のタブリボンと、
前面と背面を有する背面シートであって、前記背面シートの前記背面が外部環境に露出された背面シートと、
前記背面シートの前記前面の上に存在する背面封止層と、を含み、
前記第1のシリコン太陽電池及び第2の太陽電池の上の前記背面封止層の第1の部分と、前記前面封止層の上の前記背面封止層の第2の部分とを含み、
前記改質アルミニウム粒子層中のアルミニウムとビスマスの総質量に対するビスマスの 質量の比[Bi:(Al+Bi)]、又はビスマスと鉛とアルミニウムの総質量に対する ビスマスと鉛の総質量の比[(Bi+Pb):(Bi+Pb+Al)]が、1:10 1:10である、太陽電池モジュール。
【請求項43】
太陽電池モジュールであって、
前面及び背面を有する前面シートと、
前記前面シートの前記背面の上に存在する前面封止層と、
前記前面封止層の上にある第1のシリコン太陽電池及び第2のシリコン太陽電池とを備え、各シリコン太陽電池は、
前面及び背面を有するシリコン基板と、
前記シリコン基板の前記前面の少なくとも一部の直上に存在する少なくとも1つの前面誘電体層と、
前記シリコン基板の前記前面の一部に存在する複数の微細なグリッド線と、
前記複数の微細なグリッド線の少なくとも1つと電気的に接触する少なくとも1つの前面バスバー層と、
前記シリコン基板の前記背面の少なくとも一部の上に存在してアルミニウム粒子を含むアルミニウム粒子層と、
前記シリコン基板の前記背面の一部の上に存在する背面タブ層と、を含み、
前記背面タブ層は、
前記シリコン基板の背面の一部の上に存在する改質アルミニウム粒子層と、
前記改質アルミニウム粒子層の少なくとも一部の直上に存在して半田付け可能な表面を有する改質インターカレーション層と、を含み、
前記改質インターカレーション層は、貴金属と、アンチモン、ヒ素、バリウム、ビスマス、ホウ素、カドミウム、カルシウム、セリウム、セシウム、クロム、コバルト、ガリウム、ゲルマニウム、ハフニウム、インジウム、鉄、ランタン、鉛、リチウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、リン、カリウム、レニウム、セレン、ケイ素、ナトリウム、ストロンチウム、硫黄、テルル、錫、バナジウム、亜鉛、ジルコニウム、これらの組み合わせ、及びこれらの合金、これらの酸化物、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせからなる群から選択される1つの材料とを含み、
前記改質インターカレーション層は、少なくともビスマスを含み、
前記改質アルミニウム粒子層は、前記アルミニウム粒子と、前記改質インターカレーション層からの少なくとも1つの材料とを含み、
前記太陽電池モジュールは、第1のセル相互接続をさらに含み、前記第1のセル相互接続は、
前記第1のシリコン太陽電池の前面バスバー層及び第2のシリコン太陽電池の前記背面タブ層の両方と電気的に接触する第1のタブリボンと、
前面と背面を有する背面シートであって、前記背面シートの前記背面が外部環境に露出された背面シートと、
前記背面シートの前記前面の上に存在する背面封止層と、を含み、
前記第1のシリコン太陽電池及び第2の太陽電池の上の前記背面封止層の第1の部分と、前記前面封止層の上の前記背面封止層の第2の部分とを含み、
前記改質アルミニウム粒子層中の、ビスマスとアルミニウムの総質量に対するビスマス の質量の比[Bi:(Al+Bi)]が、前記アルミニウム粒子層中の前記改質アルミニ ウム粒子層から少なくとも500μm離れた領域でのビスマスとアルミニウムの総質量に 対するビスマスの質量の比[Bi:(Al+Bi)]よりも20%以上高い、太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年11月24日に出願された米国仮特許出願第62/259,636号、2016年4月5日に出願された米国仮特許出願第62/318,566号、2016年4月5日に出願された米国仮特許出願第62/371,236号、 2016年8月5日に出願された米国仮特許出願第62/371,236号、及び2016年11月16日に出願された米国仮特許出願第62/423,020号の優先権を主張し、これらはすべて参照により本明細書に援用される。
政府の支援に関する陳述
本発明は、NSFによって授与された契約番号IIP-1430721による政府の支援によってなされた。政府は、本発明に一定の権利を有することができる。
【0002】
本発明は、貴金属粒子、インターカレーション粒子及び有機ビヒクルを含有するインターカレーションペーストに関する。
【背景技術】
【0003】
インターカレーションペーストは、太陽電池の電力変換効率を改善するために使用することができる。銀系のインターカレーションペーストは、焼成され続いてタブリボンに半田付けされた後、中程度の剥離強度を有するアルミニウム層上に印刷される。そのようなペーストは、アルミニウム裏面電界(BSF)を使用するシリコン系太陽電池での使用に特に適している。一般に、工業的に製造されている単結晶及び多結晶シリコン太陽電池のシリコンウェハにおける背面領域の85~92%がアルミニウム粒子層で覆われ、これが裏面電界を形成してシリコンにオーミック接触させる。背面におけるシリコン表面の残りの5~10%は銀の背面タブ層によって覆われ、これは電界を生成せず、シリコンウェハにオーミック接触しない。背面タブ層は、主に太陽電池を電気的に接続するためにタブリボンを半田付けするために使用される。
【発明の概要】
【0004】
太陽電池の背面側のシリコン基板に銀層が直接接触すると、シリコン基板に銀層が接触する代わりに、太陽電池の電力変換効率が絶対値で0.1%~0.2%低下すると推定される。従って、太陽電池の背面全体をアルミニウム粒子層で覆い、引き続いてタブリボンを用いて太陽電池同士を接続することができることが非常に望ましい。過去には、アルミニウム粒子層の上面に銀ペーストを直接印刷しようと試みたが、空気中にて高温で焼成する間にアルミニウムと銀の層が相互拡散して、結果として生じる層表面が酸化されて半田付け性を失うことになる。研究者によっては、酸化を減少させるために大気条件を変えようと試みたものもある。しかし、前面側の銀ペーストは、乾燥空気などの酸化雰囲気で最もよく機能し、不活性雰囲気中で処理した後には、全体の太陽電池効率が低下する。他にも、相互拡散を低減するためにウェハのピーク焼成温度を低下させようと試みた研究者はあるが、前面側の銀ペーストは高いピーク焼成温度(即ち、650℃以上)を必要とし、シリコン基板にオーミック接触させるために窒化ケイ素全体を焼成することになる。最近になって、研究者らは、半田付け可能な表面を創出するために、アルミニウムの上面に直接錫合金を半田付けする超音波半田付けを使用している。この技術は、適切な剥離強度(即ち、1~1.5N/mm)を達成したが、追加の設備を必要とし、錫を多量に使用するためコストを増加させる。さらに、アルミニウムやシリコンウェハのような脆い材料に超音波半田付けを使用すると、ウェハの破損が増加し、処理の歩留まりを低下させる可能性がある。
【0005】
焼成中に下地金属粒子層の材料特性を修正することができる印刷可能なペーストを開発する必要がある。例えば、アルミニウム上に直接印刷され、標準的な太陽電池処理条件を用いて焼成される貴金属含有ペーストは、太陽電池効率を改善することができる可能性がある。このペーストを使えば、タブリボンに半田付け可能な状態を維持するために、Ag/Alの相互拡散を減少させられるはずである。このペーストはスクリーン印刷が可能でドロップインの代替品として機能することが望ましく、これにより追加の設備費が不要となり、既存の生産ラインに直ちに組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
前述の態様及び他の態様は、添付の図面と併せて精読することにより、例示的な実施形態の以下の説明から当業者によって容易に理解されるであろう。図は一定の縮尺で通りに描かれていない。図面は例示的なものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
図1】本発明の一実施形態による、焼成前の多層スタックの概略断面図である。
図2】本発明の一実施形態による、焼成多層スタックの概略断面図である。
図3】インターカレーション層が相分離している焼成多層スタックの概略断面図である
図4】インターカレーション層が2つの副層に相分離している焼成多層スタックの概略断面図である。
図5】本発明の一実施形態による、図2に示した焼成多層スタックの一部の概略断面図である。
図6】本発明の一実施形態による、同時焼成多層スタックの走査型電子顕微鏡(SEM)断面画像である。
図7】銀-ビスマスフリット層を有する同時焼成多層スタックの走査電子顕微鏡写真(SEM)断面画像である。
図8】シリコン基板上のアルミニウム粒子層の走査型電子顕微鏡(SEM)断面画像(SE2モードでの)である。
図9図8に示すシリコン基板上のアルミニウム粒子層の(InLensモードでの)走査型電子顕微鏡(SEM)断面像である。
図10】同時焼成後の多層スタックを含むシリコン太陽電池の一部の走査型電子顕微鏡(SEM)断面画像(InLensモードでの)である。
図11図10に示す同時焼成後の多層スタックを含むシリコン太陽電池の部分の走査型電子顕微鏡(SEM)断面画像(SE2モードでの)である。
図12】本発明の一実施形態による、アルミニウム粒子層及び改質アルミニウム粒子層からのエネルギー分散型X線(EDX)スペクトルである。
図13】本発明の一実施形態による、銀-ビスマスインターカレーション層を含む背面タブ層の表面のEDXスペクトルである。
図14】シリコン太陽電池の背面タブ層上で同時焼成された多層フィルムスタックからのX線回折パターンである。
図15】本発明の一実施形態による、焼成前の誘電体層を含む多層フィルムスタックの概略断面図である。
図16】本発明の一実施形態による、誘電体層を含む焼成された多層膜スタックの概略断面図である。
図17】座屈が発生した同時焼成された多層フィルムスタックの平面光学顕微鏡写真である。
図18】本発明の一実施形態による、湿潤金属粒子層の堆積中に使用することができるスクリーン設計(縮尺通りに描かれていない)である。
図19】本発明の一実施形態による、図18のスクリーンを使用して堆積された変厚な乾燥金属粒子層の概略断面図である。
図20】本発明の一実施形態による、図18のスクリーンを使用して堆積され、次に同時焼成された、変厚な改質金属粒子層の概略断面図である。
図21図20に示した同時焼成後の多層スタックの平面図光学顕微鏡写真である。
図22】変厚な焼成多層スタックの一部の断面SEM画像である。
図23】平坦な厚さを有するシリコン基板上におけるアルミニウム粒子膜の一部を示す断面SEM画像である。
図24】変厚な焼成多層スタックの表面トポロジースキャンである。
図25】焼成したアルミニウム粒子層の表面トポロジースキャンである。
図26】シリコン太陽電池の前面(又は照射面)を示す概略図である。
図27】シリコン太陽電池の後面を示す概略図である。
図28】本発明の一実施形態による、焼成多層スタックを含む太陽電池モジュールの概略断面図である。
図29】本発明の一実施形態による、焼成多層スタック及び半田付けタブリボンを含む太陽電池の背面の走査電子顕微鏡写真(SEM)断面図である。
図30】ケイ素上の従来の銀背面タブ層の透過線測定プロットである。
図31】ケイ素上の背面タブ層として使用することができる、アルミニウム粒子層上の銀-ビスマスインターカレーション層の透過線測定プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
焼成多層スタックを開示する。本発明の一実施形態では、スタックは、基板と、基板表面の少なくとも一部分上の金属粒子層と、基板表面の少なくとも一部上の改質金属粒子層と、改質金属粒子層の少なくとも一部分の直上に存在する改質インターカレーション層とを含む。改質インターカレーション層は、基板から離れて面する半田付け可能な表面を有する。改質金属粒子層は、金属粒子層中に存在するのと同じ金属粒子と、改質インターカレーション層からの少なくとも1つの物質とを含む。改質インターカレーション層は、貴金属と、アンチモン、ヒ素、バリウム、ビスマス、ホウ素、カドミウム、カルシウム、セリウム、セシウム、クロム、コバルト、ガリウム、ゲルマニウム、ハフニウム、インジウム、鉄、ランタン、鉛、リチウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニオブ、リン、カリウム、レニウム、セレン、ケイ素、ナトリウム、ストロンチウム、イオウ、テルル、錫、バナジウム、亜鉛、ジルコニウム、これらの組み合わせ、及びこれらの合金、これらの酸化物、これらの複合材、及び他の組み合わせからなる群から選択される材料とを含む。1つの構成arrangementでは、改質インターカレーション層は、貴金属と、ビスマス、ホウ素、インジウム、鉛、ケイ素、テルル、錫、バナジウム、亜鉛、これらの組み合わせ、及びこれらの合金、これらの酸化物、及びこれらの他の組み合わせからなる群から選択される材料とを含む。
【0008】
本発明の一実施形態では、改質インターカレーション層は、貴金属相とインターカレーション相の2つの相を有する。改質インターカレーション層の半田付け可能な表面の50%超が貴金属相を含むことができる。改質金属粒子層は、上述の金属粒子と、インターカレーション相からの少なくとも1つの材料とを含むことができる。インターカレーション相は、アンチモン、ヒ素、バリウム、ビスマス、ホウ素、カドミウム、カルシウム、セリウム、セシウム、クロム、コバルト、ガリウム、ゲルマニウム、ハフニウム、インジウム、鉄、ランタン、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニオブ、リン、カリウム、レニウム、セレン、ケイ素、ナトリウム、ストロンチウム、イオウ、テルル、錫、バナジウム、亜鉛、ジルコニウム、これらの組み合わせ、及びこれらの合金、これらの酸化物、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。貴金属相は、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの合金、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0009】
本発明の別の実施形態では、改質インターカレーション層は、2つの副層、即ち、改質された金属粒子層の少なくとも一部の直上に存在するインターカレーション副層と、インターカレーション副層の少なくとも一部の直上に存在する貴金属副層とを有する。改質インターカレーション層の半田付け可能な表面は、貴金属副層を含む。改質金属粒子層は、上記の金属粒子と、インターカレーション副層からの少なくとも1つの材料とを含むことができる。インターカレーション副層のための可能な材料は、インターカレーション相について上記したものと同じである。貴金属副層のための可能な材料は、貴金属相について上記したものと同じである。
【0010】
本発明の別の実施形態では、焼成多層スタックは、その改質金属粒子層として改質アルミニウム粒子層を有する。これは、2つの副層、即ち、改質アルミニウム粒子層の直上にあるビスマスに富む副層と、このビスマスに富む副層の直上にある銀に富む副層からなる改質インターカレーション層を有する。改質インターカレーション層の半田付け可能な表面は、銀に富む副層を含む。改質アルミニウム粒子は、アルミニウム粒子を含み、また、酸化アルミニウム、ビスマス及び酸化ビスマスからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含むことができる。
【0011】
一構成において、基板表面の少なくとも一部の直上に少なくとも1つの誘電体層が存在する。誘電体層は、ケイ素、アルミニウム、ゲルマニウム、ハフニウム、ガリウム、及びこれらの酸化物、窒化物、複合材、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。別の構成では、基板表面の少なくとも一部の直上に酸化アルミニウム誘電体層が存在し、酸化アルミニウム誘電体層の直上に窒化シリコン誘電体層がある。
【0012】
一構成において、基板表面の直上に固体(例えば、共晶の)化合物層が存在する。 固体化合物層は、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、モリブデン、タングステン、タンタル、チタンからなる群から選択される1つ以上の金属とケイ素、酸素、炭素、ゲルマニウム、ガリウム、ヒ素、窒素、インジウム及びリンからなる群から選択される1つ以上の材料とを含む。
【0013】
基板表面に隣接する基板の一部は、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、モリブデン、タングステン、タンタル、チタン、鋼及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料でドープすることができる。
【0014】
本発明の一実施形態では、焼成多層スタックの一部は、変厚を有する。焼成多層スタックは、12μmを超える山谷間の平均高さを有することができる。
改質インターカレーション層における半田付け可能な表面の少なくとも70重量%は、銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの合金、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせからなる群から選択される材料を含むことができる。
【0015】
基板は、ケイ素、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、サファイア、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、窒化ガリウム、及びリン化インジウムからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含むことができる。あるいは、基板は、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、チタン、鋼、亜鉛、及びこれらの合金、複合材、及び他の組み合わせからなる群から選択される材料を含むことができる。金属粒子層は、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、モリブデン、タングステン、タンタル、チタン、鋼及びこれらの合金、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせからなる群から選択される材料を含むことができる。貴金属は、銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの合金、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせからなる群から選択される材料を含むことができる。
【0016】
金属粒子層は、0.5μm~100μmの間の厚さ及び/又は1~50%の間の気孔率を有することができる。改質インターカレーション層は、0.5μm~10μmの厚さを有することができる。焼成後の多層スタックは、伝送線路測定によって決定されるように0~5mオームの接触抵抗を有することができる。
【0017】
改質インターカレーション層における半田付け可能な表面の少なくとも一部の直上にタブリボンが存在してもよい。一構成において、タブリボンと改質インターカレーション層との間の剥離強度は1N/mmより大きい。
【0018】
本発明の別の実施形態では、焼成多層スタックは、基材と、基材の少なくとも一部分上の金属粒子層と、基材の少なくとも一部の改質金属粒子層と、改質された金属粒子層の少なくとも一部の直上に存在する改質インターカレーション層を有する。改質インターカレーション層は、2つの副層、即ち、改質金属粒子層の少なくとも一部の直上に存在するインターカレーション副層と、インターカレーション副層の少なくとも一部の直上に存在する貴金属副層とを有する。改質された金属粒子層は、金属粒子と、インターカレーション副層からの少なくとも1つの材料とを含む。インターカレーション副層のための可能な材料は、上記のとおりである。
【0019】
本発明の別の実施形態では、焼成多層スタックは、シリコン基板と、基板の少なくとも一部分上のアルミニウム粒子層と、基板の少なくとも一部上の改質アルミニウム粒子層と、改質アルミニウム粒子層の直上に存在する改質インターカレーション層を有する。改質されたインターカレーション層は、2つの副層、即ち、改質アルミニウム粒子層の直上に存在するビスマスに富んだ副層と、ビスマスに富む副層上の直上に存在する銀に富んだ副層とを有する。改質アルミニウム粒子層は、アルミニウム、酸化アルミニウム、ビスマス、及び酸化ビスマスからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0020】
本発明の一実施形態では、太陽電池は、シリコン基板と、シリコン基板の前面の少なくとも一部の直上に存在する少なくとも1つの前面誘電体層と、シリコン基板の表面の一部に存在する複数の微細なグリッド線と、複数の微細なグリッド線の少なくとも1つと電気的に接触する少なくとも1つの前面バスバー層と、シリコン基板の背面の少なくとも一部の上に存在するアルミニウム粒子層と、シリコン基板の背面の一部に存在する背面タブ層を有している。背面タブ層は、シリコン基板の背面の一部上に存在する改質アルミニウム粒子層と、改質アルミニウム粒子層の少なくとも一部の直上に存在する改質されたインターカレーション層とを含む。改質インターカレーション層は、シリコン基板から離れて面する半田付け可能な表面を有する。改質アルミニウム粒子層は、アルミニウム粒子と、改質されたインターカレーション層からの少なくとも1つの材料とを含む。改質インターカレーション層のための可能な材料は、上記のとおりである。アルミニウム粒子層は、1μm~50μmの間の厚さ及び/又は3~20%の間の気孔率を有することができる。背面タブ層の厚さは、1μm~50μmであってもよい。シリコン基板は、p型基又はn型基いずれかの単結晶シリコンウェハであってもよい。シリコン基板は、p型基又はn型基いずれかの多結晶シリコンウェハであってもよい。
【0021】
本発明の一実施形態では、改質インターカレーション層は、貴金属相とインターカレーション相の2つの相を含む。半田付け可能な表面の50%以上が貴金属相で構成されていてもよい。改質アルミニウム粒子層は、アルミニウム粒子とインターカレーション相からの少なくとも1つの材料とを含む。インターカレーション相を形成するための可能な材料は上記のとおりである。貴金属相のための可能な材料も上記のとおりである。
【0022】
本発明の別の実施形態では、改質されたインターカレーション層は、2つの副層、即ち、改質された金属粒子層の少なくとも一部の直上に存在するインターカレーション副層、及びインターカレーション副層の少なくとも一部の直上に存在する貴金属副層を含む。半田付け可能な表面は、貴金属副層を含む。改質アルミニウム粒子層は、アルミニウム粒子と、インターカレーション副層からの少なくとも1つの材料とを含む。インターカレーション副層を形成するための可能な材料は、上記のとおりである。貴金属副層のための可能な材料も上記のとおりである。
【0023】
本発明の別の実施形態では、改質インターカレーション層は、2つの副層、即ち、改質アルミニウム粒子層の直上に存在するビスマスに富んだ副層、及びビスマスに富む副層の直上に存在する銀に富んだ副層を含む。改質アルミニウム粒子層は、酸化アルミニウム、ビスマス及び酸化ビスマスからなる群から選択される少なくとも1つの材料をさらに含む。一構成において、改質アルミニウム粒子層は、ビスマス及び/又はビスマス酸化物をさらに含み、ビスマスとビスマス及びアルミニウムとの重量比(Bi:(Bi+Al))は、改質アルミニウム粒子層においてはアルミニウム粒子層におけるものより少なくとも20%高い。ビスマスに富む副層は、0.01μm~5μm、又は0.25μm~5μmの厚さを有することができる。
【0024】
一構成において、少なくとも1つの背面誘電体層が、シリコン基板の背面の少なくとも一部の直上に存在する。背面誘電体層は、ケイ素、アルミニウム、ゲルマニウム、ハフニウム、ガリウム、及びこれらの酸化物、窒化物、複合物、及びこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む。背面誘電体層は、窒化ケイ素を含むことができる。別の構成では、シリコン基板の背面の少なくとも一部の直上に酸化アルミニウム背面誘電体層が存在し、この酸化アルミニウム背面誘電体層の直上に窒化シリコン背面誘電体層がある。一構成において、シリコン基板上に直接固化したアルミニウム-ケイ素共晶層が存在する。一構成において、シリコン基板の背面に隣接するシリコン基板の一部は裏面電界をさらに含み、裏面電界はcm3につき1017~1020原子にp型ドープされる。
【0025】
本発明の一実施形態では、背面タブ層の一部分は変厚を有し、12μmを超える山から谷までの平均高さを有することができる。
改質インターカレーション層における半田付け可能な表面の少なくとも一部の直上にタブリボンが存在してもよい。半田付け可能な表面は、銀が豊富なものであってもよい。半田付け可能な表面は、少なくとも75重量%の銀を含むことができる。銀に富む半田付け可能な表面に半田付けされたタブリボンは、1N/mmより大きい剥離強度を有することができる。
【0026】
改質アルミニウム粒子層の一部は、変厚を有することができる。改質アルミニウム粒子層の一部は、12μmを超える山から谷までの平均高さを有することができる。背面タブ層とアルミニウム粒子層との間の接触抵抗は、伝送線路測定によって決定されるように0~5mオームであり得る。
【0027】
本発明の別の実施形態では、太陽電池は、シリコン基板と、シリコン基板の前面の少なくとも一部の直上に存在する少なくとも1つの前面誘電体層と、複数の微細なグリッド線の少なくとも1つと電気的に接触する少なくとも1つの前面バスバー層と、シリコン基板の背面の少なくとも一部の上に存在するアルミニウム粒子層と、シリコン基板の背面の一部の上に存在する背面タブ層を有している。背面タブ層は、半田付け可能な表面を有する。背面タブ層は、シリコン基板の背面の少なくとも一部の上に存在する改質アルミニウム粒子層と、改質アルミニウム粒子層の少なくとも一部の直上に存在するビスマスに富んだ副層と、ビスマスに富む副層の少なくとも一部の直上に存在する銀に富んだ副層を含む。改質アルミニウム粒子層は、アルミニウム粒子と、酸化アルミニウム、ビスマス及び酸化ビスマスからなる群から選択される少なくとも1つの材料とを含む。
【0028】
本発明の別の実施形態では、太陽電池モジュールは、前面シートと、前面シートの背面上に存在する前面封止層と、前面封止層上の第1のシリコン太陽電池及び第2のシリコン太陽電池とを有する。各シリコン太陽電池は、本明細書に記載のシリコン太陽電池のいずれかとすることができる。太陽電池モジュールはまた、第1のシリコン太陽電池の前面バスバー層及び第2のシリコン太陽電池の背面タブ層の両方に電気接触する第1のタブリボンと、背面シートと、背面シートの背面に存在する背面封止層とを有する第1の電池相互接続を含む。背面封止層の第1の部分は、第1のシリコン太陽電池及び第2の太陽電池と接触し、背面封止層の第2の部分は、前面封入層と接触する。
【0029】
第1の電池相互接続はまた、背面シートと接触する接続箱を含むことができる。接続箱は、少なくとも1つのバイパスダイオードを含むことができる。これらは、第1のタブリボンに接続する少なくとも1つのバスバーリボンでよい。
【0030】
本発明の一実施形態では、ペーストが開示される。このペーストは、10重量%~70重量%の貴金属粒子、少なくとも10重量%のインターカレーション粒子及び有機ビヒクルを含有する。インターカレーション粒子は、低温卑金属粒子、結晶性金属酸化物粒子、及びガラスフリット粒子からなる群から選択される1つ以上を含む。インターカレーション粒子と貴金属粒子との重量比は、少なくとも1:5でよい。
【0031】
貴金属粒子は、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの合金、これらの複合材、及びこれらの他の組合せからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含むことができる。貴金属粒子は、100nm~50μmの間のD50及び0.4~7.0m2/gの比表面積を有することができる。貴金属粒子の一部は、球状、フレーク状、及び/又は細長い形などの形状を有することができる。貴金属粒子は、単峰型粒度分布又は多峰型粒度分布を呈することができる。一構成において、貴金属粒子は銀であり、300nm~2.5μmのD50及び1.0~3.0m2/gの比表面積を有する。
【0032】
インターカレーション粒子は、100nm~50μmのD50及び0.1~6.0m2/gの比表面積を有し得る。インターカレーション粒子の一部は、球形、フレーク形、及び/又は細長い形などの形状を有することができる。インターカレーション粒子は、単峰型粒度分布又は多峰型粒度分布を呈し得る。
【0033】
低温卑金属粒子は、ビスマス、錫、テルル、アンチモン、鉛、及びこれらの合金、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせからなる群から選択される材料を含むことができる。一構成において、低温卑金属粒子はビスマスを含み、1.5~4.0μmのD50及び1.0~2.0m2/gの比表面積を有する。
【0034】
本発明の一実施形態では、低温卑金属粒子の少なくとも一部は、銀、ニッケル、ニッケル-ホウ素、錫、テルル、アンチモン、鉛、モリブデン、チタン、及びこれらの合金、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせからなる群から選択される材料を含む単一シェルによって囲まれたビスマスコア粒子を有する。別の実施形態では、低温卑金属粒子の少なくとも一部は、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ホウ素、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される材料を含む単一シェルによって囲まれたビスマスコア粒子を有する。
【0035】
結晶性金属酸化物粒子は、酸素と、ビスマス、錫、テルル、アンチモン、鉛、バナジウム、クロム、モリブデン、ホウ素、マンガン、コバルト及びこれらの合金、これらの複合材及びこれらの他の組合せからなる群から選択される金属とを含んでもよい。
【0036】
ガラスフリット粒子は、アンチモン、ヒ素、バリウム、ビスマス、ホウ素、カドミウム、カルシウム、セリウム、セシウム、クロム、コバルト、フッ素、ガリウム、ゲルマニウム、ハフニウム、インジウム、ヨウ素、鉄、ランタン、鉛、リチウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ニオブ、カリウム、レニウム、セレン、ケイ素、ナトリウム、ストロンチウム、テルル、錫、バナジウム、亜鉛、ジルコニウム、これらの合金、これらの酸化物、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせからなる群から選択される金属を含んでもよい。
【0037】
ペーストは、30重量%~80重量%の固形分を有することができる。インターカレーション粒子は、ペーストの少なくとも15重量%を占めることができる。一構成において、ペーストは45重量%のAg粒子、30重量%のビスマス粒子、及び25重量%の有機ビヒクルを含む。別の構成では、ペーストは、Ag粒子30重量%、ビスマス粒子20重量%、及び有機ビヒクル50重量%を含む。このペーストは、4秒-1のせん断速度にて25℃で10,000~200,000cPの粘性を有することができる。
【0038】
本発明の一実施形態では、焼成多層スタックを形成する同時焼成法を記載する。この方法は、a)基材の表面の少なくとも一部に湿潤金属粒子層を塗布するステップと、b)湿潤金属粒子層を乾燥させて乾燥金属粒子層を形成するステップと、c)乾燥した金属粒子層の少なくとも一部に湿式インターカレーション層を直接塗布して多層スタックを形成するステップと、d)多層スタックを乾燥するステップと、e)多層スタックを同時焼成して、焼成多層スタックを形成するステップとを含む。
本発明の別の実施形態では、焼成多層スタックを形成する逐次法を記載する。この方法は、a)基材の表面の少なくとも一部に湿潤金属粒子層を塗布するステップと、b)湿潤金属粒子層を乾燥させて乾燥金属粒子層を形成するステップと、c)乾燥した金属粒子層を焼成して金属粒子層を形成するステップと、d)金属粒子層の少なくとも一部の上に湿潤インターカレーション層を直接塗布して多層スタックを形成するステップと、e)多層スタックを乾燥させるステップと、f)多層スタックを焼成して、焼成多層スタックを形成するステップとを含む。
【0039】
一構成において、同時焼成法及び逐次法の両方において、湿潤インターカレーション層は、10重量%~70重量%の貴金属粒子、少なくとも10重量%のインターカレーション粒子、及び有機ビヒクルを有する。インターカレーション粒子は、低温卑金属粒子、結晶性金属酸化物粒子、及びガラスフリット粒子からなる群から選択される1つ以上を含み得る。湿潤金属粒子層は、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、モリブデン、タングステン、タンタル、チタン、鋼及びこれらの合金、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせを含む群から選択される材料からなる金属粒子を含むことができる。
【0040】
一構成において、同時焼成法及び逐次法の両方について、ステップa)の前に追加のステップが存在する。追加のステップは、少なくとも1つの誘電体層を基板の表面の少なくとも一部分上に堆積させることを含む。この構成では、ステップa)は、湿潤金属粒子層を誘電体層の少なくとも一部に直接塗布することを含む。
【0041】
同時焼成法及び逐次法のいずれの場合も、各塗布ステップは、スクリーン印刷、グラビア印刷、スプレー塗布、スロットコーティング、3D印刷及びインクジェット印刷からなる群から選択される方法を含むことができる。一構成において、ステップa)は、変厚を有する湿潤金属粒子層を生成するためにパターン化されたスクリーンを介してスクリーン印刷することを含む。
【0042】
同時焼成法及び逐次法の両方について、ステップb)及びd)は、500℃未満の温度で1秒間~90分間、又は150℃~300℃の温度で1秒間~60分間乾燥することを伴い得る。ステップe)は、大気中で600℃を超える温度に0.5秒~60分間急速加熱し、又は大気中で700℃を超える温度に0.5秒~3秒間急速加熱することを伴い得る。
【0043】
一構成において、同時焼成法及び逐次法の両方について、追加のステップf)は、焼成多層スタックの一部にタブリボンを半田付けすることを含む。
低温卑金属粒子、結晶性金属酸化物粒子、ガラスフリット粒子、及び金属粒子層は、上記に詳細に記載されている。
【0044】
本発明の別の実施形態では、太陽電池を製造する方法は、a)シリコンウェハを準備するステップと、b)シリコンウェハの背面の少なくとも一部に湿潤アルミニウム粒子層を塗布するステップと、c)湿潤アルミニウム粒子層を乾燥させてアルミニウム粒子層を形成するステップと、d)湿潤インターカレーション層をアルミニウム粒子層の少なくとも一部に直接塗布して多層スタックを形成するステップと、e)多層スタックを乾燥させるステップと、f)複数の微細グリッド線及び少なくとも1つの前面バスバー層をシリコンウェハの前面上に塗布するステップと、g)複数の微細グリッド線及び少なくとも1つの前面バスバー層を乾燥して構造体を形成するステップと、h)構造体を同時焼成してシリコン太陽電池を形成するステップとを含む。
【0045】
湿式インターカレーション層については上述した。
1つの構成では、ステップa)とステップb)との間に追加のステップが存在する。追加のステップは、少なくとも1つの誘電体層をシリコンウェハの背面の少なくとも一部の上に堆積させることを含む。この構成では、ステップb)は、湿潤アルミニウム粒子層を誘電体層の少なくとも一部に直接塗布することを伴う。
【0046】
各塗布ステップは、スクリーン印刷、グラビア印刷、スプレー塗布、スロットコーティング、3D印刷及びインクジェット印刷からなる群から選択される方法を含むことができる。一構成において、ステップb)は、変厚を有する湿潤アルミニウム粒子層を生成するために、パターン化されたスクリーンを介してスクリーン印刷することを伴う。
【0047】
同時焼成法及び逐次法の両方について、ステップe)及びg)は、500℃未満の温度で1秒間~90分間、又は150℃~300℃の温度で1秒~60分の間乾燥させることを伴い得る。ステップh)は、大気中で0.5秒~60分間に600℃より高い温度に急速に加熱すること、又は大気中で0.5秒間から3秒間に700℃より高い温度に急速加熱することを伴い得る。
低温卑金属粒子、結晶性金属酸化物粒子、及びガラスフリット粒子は、上記で詳述した。
【0048】
好ましい実施形態を、金属粒子層上の焼成されたインターカレーションペーストに照らして示す。しかし、当業者であれば、本明細書に開示した材料及び方法が、良好な接着性、高性能及び低コストが重要な場合には、半導体又は導電性材料との良好な電気的接触を行うことが望ましい多くの状況での用途を有することを容易に理解するであろう。
【0049】
本明細書で言及される全ての刊行物は、本明細書に完全に記載されているかのように、全ての目的のためにその全体が参考として援用される。
本明細書では、貴金属粒子及びインターカレーションされた粒子を含むインターカレーションペーストの組成物及び使用が開示されており、これは金属粒子層に印刷されて、焼成されて焼成後多層スタックとなった後、金属粒子層の特性を変えることができる。本発明の一実施形態では、インターカレーションペーストを使用して、それ自体は半田付け可能ではない金属粒子層に半田付け可能な表面を提供する。インターカレーションペーストはまた、焼成多層スタック内の接着を改善するために、又は下地基材との金属粒子層の相互作用を変化させるために使用することができる。インターカレーションペーストは、トランジスタ、発光ダイオード、及び集積回路を含む多くの用途に広く適用可能であるが、以下に開示する実施例の大半では太陽電池に焦点を合わせる。
定義と方法
ここで使用する走査型電子顕微鏡(SEM)及びエネルギー分散型X線分光法(EDX)(まとめてSEM/EDXと呼ぶ)は、Bruker XFlash(R)6|60検出器を備えたZeiss Gemini Ultra-55分析フィールド放射型走査電子顕微鏡を用いて行われた。操作条件の詳細は、分析ごとに記載されている。焼成した多層スタックの断面SEM画像をイオンミリングによって準備した。薄いエポキシ層を焼成多層スタックの上面に塗布し、少なくとも30分間乾燥した。次いで、サンプルをEOL IB-03010CPイオンミルに移して、5kV及び120uAで8時間作動させてサンプルの縁から80ミクロンを除去した。粉砕されたサンプルをSEM/EDX操作する前に窒素グローブボックスに貯蔵した。
【0050】
用語「乾燥」は、500℃以下で、又は400℃未満で、又は300℃未満で1秒~90分の間の時間又はこれに含まれる任意の範囲の時間での熱処理を表す。ペーストは、一般にはスクリーン印刷又は別の堆積方法によって基材に塗布されると「湿潤」層を生成する。この湿潤層を乾燥させて、溶媒などの揮発性有機スピーシーズを低減又は除去し、「乾燥」層を生成することができる。
【0051】
「焼成」という用語は、500℃超、600℃超又は700℃超の温度で、1秒~60分又はこれに含まれる任意の範囲の時間での加熱を表す。用語「焼成層」は、焼成された乾燥層を表す。
【0052】
「多層スタック」という用語は、本明細書では、異なる材料の2つ以上の層をその上に有する基板の記載に使用される。「焼成多層スタック」は、その層が乾燥され焼成された多層スタックである。このような多層スタックを焼成するにはいくつかの方法がある。「同時焼成」という用語は、一度しか焼成されない多層積層体の処理の記載に使用される。例えば、シリコン太陽電池の製造中に、アルミニウム粒子ペーストの層をまず基板に塗布し、乾燥させる。次いで、乾燥されたアルミニウム粒子層の一部にリアタブペースト層を塗布し、乾燥させて、乾燥アルミニウム粒子層及び乾燥した背面タブ層を得る。同時焼成では、両方の乾燥層を同時に1つの工程で焼成する。用語「逐次焼成」は、複数回焼成される多層積層体の処理の記載に使用される。逐次処理では、金属粒子ペーストが基材上に塗布され、乾燥され、次いで、焼成される。インターカレーションペーストを乾燥し焼成した金属粒子ペースト(金属粒子層と称する)の一部に塗布する。次に、多層スタック全体を乾燥させ、2回目の焼成を行う。尚、同時焼成後の多層スタック又は構造を説明する本発明の実施形態も、逐次焼成後の多層スタック又は構造体にも適している。
【0053】
「インターカレーション」という用語は、本明細書では、多孔質材料への浸透の記載に使用される。本明細書に記載の実施形態では、用語「インターカレーション」は、焼成プロセス中にインターカレーション層内のインターカレーション粒子が隣接する多孔質の乾燥金属粒子層への材料の浸透することを示し、これにより金属粒子の少なくとも一部分を被覆する(部分的又は完全に)インターカレーション粒子材料となる。用語「改質金属粒子層」は、本明細書ではインターカレーション粒子からの材料が浸透した焼成金属粒子層を記載するために使用される。
【0054】
隣接する層間の関係を説明する際に、前置詞「on」は、層が互いに直接物理的に接触していてもいなくてもよいことを意味するために使用される。例えば、層が基板上に存在すると言うことは、その層が基板に直接隣接するか、間接的にその上に又は隣接して構成されるということである。特定の層が間接的に基材の上に存在する又は基材に隣接していると言うことは、特定の層と基材との間に1つ又は複数の追加の層が存在してもいなくてもよいということである。隣接する層間の関係を説明するにあたり、本明細書では、「直上に」という前置詞は、層が互いに直接物理的に接触していることを意味するために使用される。例えば、層が基板上に直上に存在するとは、層が基板に直接隣接して構成されるということである。
【0055】
金属粒子層が主に金属Aの粒子からなる場合、それは「金属A粒子層」と呼ぶことができる。例えば、金属粒子層がアルミニウム粒子を主体とする場合、それはアルミニウム粒子層と呼ぶことができる。改質金属粒子層が主として金属Aの粒子からなる場合、それは「金属A改質粒子層」と呼ぶことができる。例えば、改質金属粒子層がアルミニウム粒子を主成分とする場合には、改質アルミニウム粒子層と呼ぶことができる。
【0056】
「半田付け可能な表面」という用語は、当該技術分野において周知である。「半田付け可能な表面」とは、半田付けリボンに半田付け可能な表面を指す。当業者は、半田付け可能な表面の概念に精通している。半田付け可能な表面を作り出す材料の例としては、錫、カドミウム、金、銀、パラジウム、ロジウム、銅、亜鉛、鉛、ニッケル、これらの合金、これらの組合せ、これらの複合材及びこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されるものでもない。一実施形態では、表面の少なくとも70重量%が、銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの合金、これらの複合材、及び他の組み合わせなどの材料からなる場合、表面は半田付け可能である。
【0057】
本明細書に記載の粒子は、様々な形状、サイズ、比表面積、及び酸素含有量を示すことができる。粒子は、ISO3252で定義されているように、球状、針状、角状、樹枝状、繊維状、薄片状、顆粒状、不規則、及び結節状であってもよい。「球状」という用語は、本明細書では一般に球形を指すために使用され、回転楕円形、顆粒状、結節状、及び時には不規則な形状を含み得ることを理解されたい。用語「フレーク」は、薄片状、時には角状、繊維状、及び不規則な形状を指す。用語「細長い」は、ISO3252:1999によって定義されている針状、時には角状、樹枝状、繊維状、及び不規則形状を意味する。粒子形状、形態、粒度及び粒度分布は、しばしば合成技術に依存する。一粒子群は、異なる形状及び粒度の粒子の組み合わせを含むことができる。
【0058】
球形又は細長い粒子は、一般には、これらのD50、比表面積及び粒度分布によって記載される。D50値は、粒子母集団の半分が値以下の直径を有し、粒子母集団の半分が値以上の直径を有する値として定義される。粒径分布の測定は、一般には、Horiba LA-950のようなレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて行われる。例えば、球状粒子は、それらがよく分離されている溶媒中に分散され、透過光の散乱は最小寸法から最大寸法までの粒度分布に直接相関する。レーザー回折結果を表す一般なアプローチは、体積分布に基づいてD50値を報告することである。粒子サイズの統計的分布は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定することもできる。貴金属粒子は、単峰又は多峰粒度分布を有することが一般である。単峰分布では、粒度は単分散であり、D50は単一分布の中心にある。多峰粒度分布は、粒度分布において2つ以上のモード(又はピーク)を有する。多峰粒度分布は粉末のタップ密度を増加させることがあり、これは一般に、より高いグリーンフィルム密度をもたらすことになる。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態では、粒子は、上記で定義したフレーク又は細長い形状を有してもよい。フレークは、1μm~100μm又は1μm~15μmの直径及び100nm~500nmの厚さを有することができる。細長い形状は、200nm~1000nmの直径と1μmを超える長さを有することができる。本発明の別の実施形態では、粒子の形状に制限はなく、その最大寸法が50μm、5μm、又は1μm以下である限り、任意の粒子形状を使用することができる。
【0060】
粒子の比表面積は、DIN ISO 9277,2003-05に従ってBET(Brunauer-Emmett-Teller)法を用いて測定することができる。本明細書中に開示される粒子、特に銀粒子及びビスマス粒子の比表面積は、以下の試験方法によって測定される。即ち、BET測定は、物理吸着分析技術に基づいて動作するTriStar 3000(Micromeritics Instrument Corporation製)を用いて行われる。試料調製には、吸着された分子を除去するための脱気が含まれる。窒素は分析ガスであり、ヘリウムは試料管の空隙容量を測定するために使用される。粉体工学は、調製手順及び試験条件とともに、参照材料として使用するためのシリカアルミナを提供する。測定は、既知の質量の基準物質を試料管に加え、試料管をBET装置マニホールドに取り付けることによって開始される。熱的に安定な投与マニホールド、サンプルチューブ、及び飽和圧力(P0)を測定するための専用チューブが排気される。十分な真空が達成されると、マニホールドはヘリウム(非吸収性ガス)で満たされ、サンプルポートは室温でサンプルの暖かい自由空間を測定するために開放される。基準物質を有する試料管を液体窒素に浸し、約77Kに冷却し、再び自由空間分析を行う。吸着剤の飽和圧力は、P0管を用いて測定し、続いて、大気圧を超える圧力でマニホールドに窒素を注入する。窒素の圧力及び温度を記録し、次いで、試料ポートを開放して窒素を試料に吸着させる。しばらくすると、吸着が平衡に達するようにポートが閉じられる。吸着された量は、マニホールドから取り出された窒素の量から試料管内の残留窒素を差し引いた量である。吸着等温線に沿った測定点を使用して、標準物質についての比面積をm2/gで計算するが、この手順は、本明細書に記載される粒子などのあらゆる対象試料で繰り返されるものである。
【0061】
本明細書に記載される粒子は、顕著な熱的特性、即ち、融点及び/又は軟化点を有し、その両方が材料の結晶化度に依存する。粒子の融点は、TA Instruments製のDSC 2500示差走査熱量計を用い、ASTM E794-06(2012)に記載の方法を用いて、示差走査熱量測定によって測定することができる。結晶質材料の融点は、加熱段階及びX線回折を用いて測定することもできる。結晶材料が融点以上に加熱されると、回折ピークが消滅し始める。軟化点は、非晶質又はガラス状の粒子が軟化し始める温度である。ガラス粒子の軟化点は、膨張計を用いて測定することができる。軟化点は、ASTM C338-57に記載の繊維伸長法によっても得ることができる。
焼成多層スタックを作製するための材料
本発明の一実施形態では、基板、金属粒子ペースト、及びインターカレーションペーストが焼成多層スタックを形成する。基板は、固体材料、平面材料、又は剛性材料でよい。一実施形態では、基板は、ケイ素、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、サファイア、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、窒化ガリウム及びリン化インジウムからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。このような基板は、トランジスタ、発光ダイオード、集積回路及び光起電力セルを構成する層の堆積に一般に使用される。基板は、電子的に導電性及び/又は可撓性でよい。別の実施形態では、基材は、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、チタン、鋼、亜鉛、及びこれらの合金、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0062】
本発明の一実施形態において、金属粒子ペーストは、金属粒子及び有機ビヒクルを含む。一構成において、金属粒子ペーストはまた、ガラスフリットなどの無機結合剤を含む。一構成において、一般な市販の金属粒子ペーストが使用される。シリコン太陽電池に一般に使用されるアルミニウムを含む金属ペーストは、Ruxing Technology社(例えば、RX8252H1)、Monocrystal社(例えば、EFX-39)、及びGigaSolar Materials社(例えば、M7)によって販売されている。金属粒子は、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、モリブデン、タングステン、タンタル、チタン、又はこれらの合金、これらの複合材、又はこれらの他の組み合わせのうちの少なくとも1つを含むことができる。様々な構成において、金属粒子は、100nm~100μm、500nm~50μm、500nm~20μm、又はここに含まれる任意の範囲のD50を有する。金属粒子は、球形、細長形状又はフレーク形状を有してもよく、単峰性又は多峰性の粒度分布を有してもよい。ガラスフリットは、少量(即ち、5重量%未満)の金属粒子ペーストに含まれていてもよい。一実施形態では、金属粒子ペーストは、70重量%~80重量%のアルミニウム粒子、2重量%未満のガラスフリット、及び有機ビヒクルを含む。
【0063】
本発明の一実施形態では、インターカレーションペーストは、貴金属粒子、インターカレーション粒子及び有機ビヒクルを含む。用語「固体含量」は、ペースト中の貴金属及びインターカレーション粒子固体の量又は割合を記載するためにペーストと併せて使用する場合がある。本明細書に記載のペーストには、有機ビヒクルも含まれるが、必ずしも明示されていなくてもよい。
インターカレーション粒子成分
本発明の一実施形態において、本明細書に記載の貴金属粒子は、金、銀、白金、パラジウム、及びロジウム、及びこれらの合金、これらの複合材、又はこれらの他の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。一実施形態では、貴金属粒子はペーストの10重量%~70重量%を構成する。様々な実施形態において、貴金属粒子は、約100nmと50μmとの間、300nmと10μmの間、300nmと5μmとの間、又はここに含まれる任意の範囲のD50を有する。種々の実施形態において、貴金属粒子は、約0.4~7.0m2/g又は約1~5m2/gの範囲又はここに含まれる任意の範囲の比表面積を有する。貴金属は、2重量%までの酸素含有量を有することができるが、酸素は、粒子全体にわたって均一に混合されてもよく、又は酸素は、500nmまでの厚さを有する酸化物シェルとして存在してもよい。貴金属粒子は、球形、細長形状、又はフレーク形状を有し、単峰性又は多峰性の粒度分布を有することができる。銀粒子は、ソーラー産業で金属化ペーストに一般に使用されている。例示的な実施形態では、少なくともいくつかの貴金属粒子は、300nm~2.5μmのD50及び1~3m2/gの比表面積を有する銀である。
【0064】
用語「インターカレーション粒子」は、加熱すると変形し、他の金属粒子の多孔質層に隣接して構成されたときに、多孔質金属粒子層に少なくとも部分的にインターカレーションし、熱の影響を受けて他の金属粒子から相分離し得る粒子の記載に使用される。様々な構成において、インターカレーション粒子は、50nm~50μmの間、50nm~10μmの間、300nm~5μmの間又はここに含まれる任意の範囲のD50を有する。一実施形態では、インターカレーション粒子は300nm~3μmのD50を有する。様々な実施形態において、インターカレーション粒子は、約0.1~6m2/g、約0.5~3m2/g又は約0.5~4m2/gの範囲又はここに含まれる任意の範囲の比表面積を有する。一実施形態によれば、インターカレーション粒子はフレーク状であり、約1.0~3.0m2/gの比表面積を有する。インターカレーション粒子は、球形、細長い又はフレーク形状を有してもよく、単峰性又は多峰性の粒度分布を有することができる。
【0065】
インターカレーション粒子として使用することができる粒子の3つのグループには、低温ベース金属粒子(LTBM)、結晶性金属酸化物粒子、及びガラスフリット粒子がある。いくつかの構成では、インターカレーション粒子は、低温卑金属粒子、又は結晶性金属酸化物粒子、又はガラスフリット粒子のいずれかのみからなる。別の構成では、インターカレーション粒子は、これらの2つ以上からの粒子の混合物である。インターカレーション粒子の成分は、隣接する金属粒子層中の成分との溶解性が低く、合金化しないことが望ましい。
【0066】
一実施形態では、インターカレーション粒子は、低温卑金属粒子である。用語「低温卑金属粒子」(LTBM)は、本明細書では、低温融点、即ち、450℃未満の融点を有する任意の卑金属又は金属合金のみからなるか、又は本質的にこれらからなる粒子を記載するために使用される。いくつかの配合では、LTBMはまた、2重量%までの酸素を含むが、酸素は、粒子全体に均一に混合されてもよく、又は、酸素が500nmまでの厚さを有する酸化物シェル中に存在することができ、粒子を被覆又は部分的に被覆する。いくつかの構成では、LTMBの融点は、350℃未満又は300℃未満など、さらに低い。本発明の一実施形態では、LTBMは、ビスマス、錫、テルル、アンチモン、鉛、又はこれらの合金、これらの複合材、又はこれらの他の組み合わせのみから、又は本質的にこれらから調整される。一実施形態では、インターカレーション粒子はビスマスのみを含み、1.5~4μmのD50及び1~2m2/gの比表面積を有する。
【0067】
別の実施形態では、LTBMインターカレーション粒子は、金属又は金属酸化物シェルによって囲まれたビスマスコア粒子である。別の実施形態において、LTBMインターカレーション粒子は、ニッケルホウ素、錫、テルル、アンチモン、鉛、モリブデン、チタン、これらの複合物及び/又はこれらの他の組み合わせなどの銀、ニッケル、ニッケル合金でなる単一のシェルで囲まれたビスマスコア粒子である。別の実施形態では、LTBMインターカレーション粒子は、ケイ素の酸化物、マグネシウムの酸化物、ホウ素の酸化物、又はこれらの任意の組み合わせである単一のシェルによって囲まれたビスマスコア粒子である。これらのシェルのいずれも、0.5nm~1μm、又は0.5nm~200nmの範囲、又はここに含まれる任意の範囲の厚さを有することができる。
【0068】
別の実施形態では、インターカレーション粒子は、結晶性金属酸化物粒子である。金属酸化物は、少なくとも1つの酸素原子(酸化状態が-2の陰イオン)と少なくとも1つの金属原子とを有する化合物である。数多くの金属酸化物は、すべて同じ金属又は様々な金属を含み得る複数の金属原子を含む。当業者には理解されるように、広範囲の金属対酸素原子比が可能である。金属酸化物が規則正しい周期構造を形成する場合、それらは結晶質である。このような結晶性金属酸化物は、これらの結晶構造に特徴的で様々な強度のピークパターンでX線放射線を回折することができる。一実施形態では、結晶性金属酸化物粒子は、排他的に又は本質的に、ビスマス、錫、テルル、アンチモン、鉛、バナジウム、クロム、モリブデン、ホウ素、マンガン、コバルト、及びこれらの合金、これらの複合材又はこれらの他の組み合わせの少なくとも1つの酸化物からなる。
【0069】
本明細書に開示され、以下により詳細に説明される構造については、結晶性金属酸化物粒子が加熱されると、著しい相互拡散が異なる組成の金属粒子の間で構造内に生じ得る温度よりも低い温度で溶融し始める場合(即ち、融点(TM)に達するならば)、その粒子は有用である。試料がその融点以上に加熱されると、回折ピークが消滅してその後は消失するため、混合層中の結晶材料の融点は、試料加熱ステージ及びX線回折を用いて測定することができる。いくつかの例示的な実施形態では、酸化硼素(III)(B23M=450℃)、酸化バナジウム(V)(V25M=690℃)、酸化テルル(IV)(TeO2M=733oC)、及び酸化ビスマス(III)(Bi23M=817oC)は、焼成プロセス中に変形し、隣接する多孔質金属粒子層にインターカレーションして、改質金属粒子層を生成することができる。例示的な実施形態では、インターカレーション粒子は、50nm~2μmのD50及び1~5m2/gの比表面積を有する結晶性ビスマス酸化物である。別の実施形態では、結晶性金属酸化物粒子は、粒子の融点を調節することができる1つ以上の添加成分も少量(即ち、10重量%未満)含んでいる。このような添加成分には、ケイ素、ゲルマニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、マンガン、レニウム、鉄、コバルト、亜鉛、カドミウム、ガリウム、硫黄、セレン、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ランタン、及びセリウムが含まれるが、これらに限定されるものでもない。
【0070】
別の実施形態では、インターカレーション粒子は、ガラスフリット粒子である。一実施形態では、ガラスフリット粒子は、排他的に又は本質的に、酸素と、シリコン、ホウ素、ゲルマニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、マンガン、レニウム、鉄、コバルト、亜鉛、カドミウム、ガリウム、インジウム、炭素、錫、鉛、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、硫黄、セレン、テルル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ランタン、セリウム、酸素、及びこれらの合金、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせからなる少なくとも1つの成分とからなる。焼成中に効果的に変形させるためには、ガラスフリットが900℃未満又は800℃未満の軟化点を有していれば有用である。例示的な実施形態では、インターカレーション粒子は、50nm~2μmのD50及び1~5m2/gの比表面積を有するケイ酸ビスマスガラスフリット粒子である。
【0071】
用語「有機ビヒクル」は、ペースト中への固体成分の溶解、分散及び/又は懸濁を支援する有機化学物質又は化合物の混合物又は溶液をいう。本明細書に記載のインターカレーションペーストについては、多くの異なる有機ビヒクル混合物を使用することができる。このような有機ビヒクルは、チキソトロープ、安定剤、乳化剤、増粘剤、可塑剤、界面活性剤及び/又は他の一般な添加剤を含んでも含まなくてもよい。
【0072】
有機ビヒクルの成分は、当業者に周知である。有機ビヒクルの主成分には、1種以上の結合剤及び1種以上の溶媒が含まれる。結合剤は、ポリマー性又はモノマー性の有機化合物、「樹脂」、又はこの2つの混合物であってもよい。ポリマー結合剤は、様々な分子量及び多様な多分散指数を有し得る。ポリマー結合剤は、モノマー単位が単独又は大きなブロック(ブロック共重合体)のいずれかで交互に存在し得る共重合体として知られる2つの異なるモノマー単位の組み合わせを含み得る。ポリ糖類には、一般に使用される高分子結合剤であり、これらには限定されないが、アルキルセルロース及びアルキル誘導体、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ブチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、その誘導体及び混合物が含まれる。他の高分子結合剤としては、これらには限定されないが、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアクリレート(ポリメタクリレート及びポリメタクリレートを含む)、ポリビニル(ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニルを含む)、ポリアミド、ポリグリコール(ポリエチレングリコールを含む)、フェノール樹脂、ポリテルペン、これらの誘導体及びこれらの組み合わせが挙げられる。有機ビヒクル結合剤は、1~30重量%の結合剤を含むことができる。
【0073】
溶媒は、気化などの熱手段による処理中にペーストから通常除去される有機化学種である。一般に、本明細書に記載のペーストに使用することができる溶媒には、極性、非極性、プロトン性、非プロトン性、芳香族、非芳香族、塩素化及び非塩素化溶媒が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に記載のペーストに使用することができる溶媒の例としては、アルコール、ジアルコール(グリコールを含む)、多価アルコール(グリセロールを含む)、モノ-及びポリ-エーテル、モノ-及びポリ-エステル、アルコールエーテル、アルコールエステル、モノ-及びジ-置換アジペートエステル、モノ-及びポリ-アセテート、エーテルアセテート、グリコールアセテート、グリコールエーテル(エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルを含む)、グリコールエーテルアセテート(エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを含む)、直鎖又は分岐飽和及び不飽和アルキル鎖(ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン及びデカンを含む)、テルペン(アルファ-、ベータ-、ガンマ-、及び4-テルピネオールを含む)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート(texanol(登録商標)としても知られている)、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール(carbitol(登録商標)としても知られている)、これらの誘導体、これらの組み合わせ、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものでもない。
【0074】
一構成において、有機ビヒクルは70~100重量%の溶媒を含有する。結合剤、溶媒及び任意の添加剤の割合及び組成は、当業者に理解されるように、ペースト粒子の所望の分散又は懸濁液、所望の炭素含有量、及び/又は所望のレオロジー特性を達成するように調整することができる。例えば、ペーストレオロジーは、Thixatrol Max(商標)(チキサトロール マックス)などのチキソトロープ剤を添加することによって改変することができる。別の実施例では、有機ビヒクルの炭素含有量は、結合剤及びチキソトロープ剤を改変し、ピーク焼成温度、焼成プロファイル、及び熱アニーリングの間に生じる気流を考慮に入れて、増加又は減少させることができる。少量の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、チキソトロープ剤及び界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。そのような添加剤は当該技術分野において周知であり、このような成分の有効量は、デバイスの効率及び信頼性を最大にするための日常的な実験によって決定することができる。本発明の一実施形態では、金属化ペーストは、温度制御ブルックフィールドRVDV-II+Pro粘度計を使用して測定したように、25℃及び4秒-1の剪断速度において10,000~200,000cPの粘着度を有する。
インターカレーション粒子配合組成
インターカレーションペーストの例示的な組成範囲を、本発明のいくつかの実施形態による表Iに示す。様々な実施形態において、インターカレーションペーストは、30重量%~80重量%の固体含量を有し、貴金属粒子はインターカレーションペーストの10重量%~70重量%を構成し、インターカレーション粒子はインターカレーションペーストの少なくとも10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、又は40重量%を構成し、そして、インターカレーション粒子と貴金属粒子との比は少なくとも1:5である。例示的な実施形態では、貴金属粒子含有量は50重量%であり、インターカレーション粒子はインターカレーションペーストの少なくとも10重量%を構成する。種々の実施形態において、インターカレーションペースト中でインターカレーション粒子対貴金属粒子の比は、重量比で少なくとも1:5、又は2:5、又は3:5、又は1:1、あるいは5:2である。
【0075】
【表1】
【0076】
本発明の一実施形態では、太陽電池用途のために、インターカレーションペーストは、20~50重量%の貴金属粒子(即ち、表Iのインターカレーションペースト範囲II)と、LTBM、結晶性金属酸化物、ガラスフリット、又はこれらの組み合わせを含むことができる10~35重量%のインターカレーション粒子とを含有する。一実施形態では、インターカレーション粒子は金属ビスマス粒子である。インターカレーションペーストA(表I)は、50重量%の銀粒子、12.5重量%のビスマス粒子、及び37.5重量%の有機ビヒクルを含み、インターカレーション粒子と貴金属粒子との比(重量比)が1:4となる。インターカレーションペーストC(表I)は、45重量%の銀粒子、30重量%のビスマス粒子、及び25重量%の有機ビヒクルを含み、インターカレーション粒子対貴金属粒子の比が1:1.5(重量)となる。インターカレーションペーストが銀及びビスマス粒子を含む場合、表記Ag:Biが使用される。
【0077】
別の実施形態では、インターカレーション粒子はガラスフリット粒子である。インターカレーションペーストB(表I)は、45重量%の銀粒子、30重量%のビスマス系ガラスフリット粒子、及び25重量%の有機ビヒクルを含み、インターカレーション粒子対貴金属粒子は1:1.5(重量比)となる。別の実施形態では、インターカレーション粒子は、LTBM、結晶性金属酸化物粒子、及びガラスフリット粒子の混合物である。インターカレーションペーストD(表I)は、30重量%の銀粒子、15重量%の金属ビスマス粒子、5重量%の高鉛含有ガラスフリットした粒子及び50重量%の有機ビヒクルを含み得る。インターカレーションペーストの配合組成は、特定の金属層のために所望のバルク抵抗、接触抵抗、層厚、及び/又は剥離強度を達成するように調節することができる。
【0078】
本発明の別の実施形態において、インターカレーションペーストを形成する方法は、貴金属粒子を提供するステップと、インターカレーション粒子を提供するステップと、貴金属粒子とインターカレーション粒子を有機ビヒクル中で混合するステップとを含む。一構成において、インターカレーション粒子を有機ビヒクルに添加し、遊星型ミキサー(例えば、Thinky AR-100)で混合し、次いで、貴金属粒子(及び必要に応じて追加の有機ビヒクル)を添加し、そして、遊星型ミキサーで混合する。インターカレーションペーストは、例えば、三本ロール練り機(例えば、Exakt 50I)を使用することによって粉砕することができるが、これをしなくてもよい。一構成において、インターカレーションペーストは、10~70重量%の貴金属粒子と10重量%を超えるインターカレーション粒子とを含有する。
焼成多層スタックを形成する方法
本発明の一実施形態では、焼成多層スタックは、少なくとも1つの金属粒子層及び少なくとも1つのインターカレーション層が存在する基板を含む。一実施形態では、焼成多層スタックは、基板表面に金属粒子層を塗布し、金属粒子層を乾燥させ、乾燥金属の一部に直接インターカレーション層を塗布し、インターカレーション層を乾燥させ、次いで、多層スタックを同時焼成するステップを伴う同時焼成プロセスを用いることによって形成される。別の実施形態では、焼成多層スタックは、金属粒子層を基板表面に塗布し、金属粒子層を乾燥させ、金属粒子層を焼成し、インターカレーション層を乾燥させた後、多層スタックを焼成するステップを伴う逐次プロセスを用いることによって形成され、一実施形態では、焼成中、インターカレーション層の一部が金属粒子層に浸透し、それによって金属粒子層を改質金属粒子層に変換する。いくつかの実施形態では、各塗布ステップは、スクリーン印刷、グラビア印刷、スプレー塗布、スロット塗布、3D印刷及びインクジェット印刷からなる群から独立して選択される方法を含む。一実施形態では、基板の一部に金属粒子ペーストをスクリーン印刷して金属粒子層を塗布し、乾燥金属粒子層の一部にインターカレーションペーストをスクリーン印刷してインターカレーション層を塗布する。一実施形態では、基板表面の一部分が少なくとも1つの誘電体層によって覆われ、金属粒子層が誘電体層の一部分に塗布される。
乾燥して焼成した多層スタックの形態
図1は、本発明の一実施形態による、同時焼成される前の多層スタック100を示す概略断面図である。乾燥した金属粒子層120は、基板110の一部の直上に存在する。上述したように、インターカレーション粒子と貴金属粒子とからなるインターカレーション層130が、乾燥金属粒子層120の一部の直上に存在する。本発明の様々な実施形態において、インターカレーション層130は、0.25μm~50μm、1μm~25μm、1μm~10μm、又はここに含まれる任意の範囲の平均厚さを有する。本発明の一実施形態では、インターカレーション層130は、貴金属粒子、インターカレーション粒子、及び任意の有機結合剤(乾燥後にインターカレーション層130に残存してもよい)を含む。同時焼成の前に、貴金属粒子及びインターカレーション粒子は、インターカレーション層130内に均一に分布することができる。一構成において、貴金属粒子及びインターカレーション粒子は、乾燥後(及び焼成前に)変形せず、元のサイズと形状を保持する。
【0079】
本発明の一実施形態では、乾燥金属粒子層120は多孔質であり、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、モリブデン、タングステン、タンタル、チタン及びこれらの合金、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせの少なくとも1つを含む。一構成において、同時焼成の前に、乾燥金属粒子層120は金属粒子を含み、有機結合剤を含んでも含まなくてもよく、そして、ガラスフリットなどの非金属粒子を含んでも含まなくてもよい。金属粒子は、一般には、乾燥後(及び焼成前に)変形せず、その元のサイズ及び形状を保持する。
【0080】
焼成する間に、インターカレーション層130からのインターカレーション粒子は、インターカレーション層130に隣接する乾燥金属粒子層120の一部にインターカレーションする(図1において以下に示す)。本開示の目的において、インターカレーション層130に隣接し、インターカレーション粒子材料が浸透する乾燥金属粒子層120の部分を「改質金属粒子層」と称する。焼成後、インターカレーション層に隣接しておらず、インターカレーション粒子材料が浸透していない、又は痕跡量しかインターカレーションされていない乾燥金属粒子層120の残りの部分は、本開示の目的において「金属粒子層」と称する。一構成において、焼成の間に、乾燥金属粒子層120中の粒子が焼結又は溶融することにより、この金属粒子層は乾燥金属粒子層120とは異なる形態及びより程度の低い多孔性を有することができる。焼成中に起こる変動及び焼成多層スタック構造については、以下でより詳細に説明する。
【0081】
図2は、本発明の一実施形態による、焼成多層スタック200(焼成後の図1の構造体100)を示す概略断面図である。焼成多層スタック200は、基板210の少なくとも一部に隣接する改質(焼成による)金属粒子層222と、改質金属粒子層222に隣接する改質(焼成による)インターカレーション層230とを含む。焼成中に、インターカレーション層(焼成前に図1の130で示す)内の貴金属粒子及びインターカレートした粒子の少なくとも一部は、互いに相分離する相を形成する。貴金属粒子は焼結又は溶融して、改質インターカレーション層230の形態を変動させ、多孔度を減少させることができる。貴金属粒子の少なくとも一部(焼結又は溶融し得る)が改質インターカレーション層230の半田付け可能な表面230Sに向かって移動するにつれて、インターカレーション粒子の少なくとも一部が溶融して、隣接する改質金属粒子層222に流入、すなわちインターカレーションする。改質金属粒子層222は金属粒子を含む。この金属粒子に、インターカレーション層(焼成前を図1の130として示す)内のインターカレーション粒子からの材料が浸透し、乾燥金属粒子層(焼成前を図1の120として示す)の一部の材料特性を変えて改質金属粒子層222を形成している。インターカレーション粒子からの材料は、改質金属粒子層222内の緩く繋がっている金属粒子を結合する、あるいは、改質金属粒子層222内で既に互いに接触している金属粒子を被覆することができる。
【0082】
いくつかの構成では、僅かな又は痕跡量のインターカレーション粒子材料が浸透した金属粒子領域220も存在する。一構成において、改質されたインターカレーション層230と直接接触していない金属粒子層220は、インターカレーション粒子からの成分を濃度が高くなるようには含有していない。いくつかの構成では、金属粒子層220及び改質金属粒子層222は、同時焼成中に基板210と化合物(単数又は複数)を形成するか、基板210をドープする(図示せず)。図2は、金属粒子層領域220と改質金属粒子層222との間の鋭尖境界部を示しているが、境界は一般に鮮明ではないことを理解されたい。いくつかの構成では、境界は、同時焼成時に起こる改質インターカレーション層230材料の金属粒子層220への側方拡散の程度によって決定される。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態では、図2の改質インターカレーション層230内の材料は、インターカレーション粒子からの材料を含む相と、貴金属を含む相とに相分離される。図3は、焼成多層スタック390(図2の構造体200と同等)を示し、インターカレーション層330が相分離している模式的な断面図である。焼成多層スタック390(領域350内のみ)は、基板300の一部と改質(焼成により)インターカレーション層330との間の領域350内に改質(焼成により)金属粒子層322を含む。金属粒子392を含有する金属粒子層320は、多層スタック領域350に隣接する基板300上に存在する。
【0084】
改質インターカレーション層330は、貴金属相335及びインターカレーション相333の2つの相を含むとともに、半田付け可能な表面335Sを有する。半田付け可能な表面の大部分(少なくとも50%以上)は、貴金属相335で構成されている。いくつかの構成では、貴金属相335及びインターカレーション相333は、焼成中に完全に相分離しないので、半田付け可能な表面335Sにいくつかのインターカレーション相333も存在する。改質金属粒子層322は、金属粒子392と、インターカレーション相333からの材料の一部とを含む。改質インターカレーション領域330と、改質金属粒子層322内の隣接する金属粒子392との間に界面322Iが存在する。界面322Iは滑らかではない場合があり、焼成条件のみならず、金属粒子392のサイズ及び形状に依存するものである。焼成前に任意のガラスフリットが乾燥金属粒子層(図1の120)に含まれている実施形態では、改質金属粒子層322及び金属粒子層320は、3重量%未満の層を構成することになる少量のガラスフリット(図示せず)も含むことができる。
【0085】
他の実施形態では、図2の改質インターカレーション層230内の材料は、相分離して層状構造を形成する。図4は、2つの副層を有するインターカレーション層を含む焼成多層スタック400(図2の構造体200に相当)を示す概略断面図である。焼成多層スタック400(領域450内のみ)は、基板410の一部と改質(焼成により)インターカレーション層430との間の領域450に改質(焼成により)金属粒子層422を含む。金属粒子層420は、多層スタック領域450に隣接する基板410上に存在する金属粒子402を含む。
【0086】
改質インターカレーション層430は、2つの副層、即ち、改質金属粒子層422の直上に存在するインターカレーション層433と、改質インターカレーション層433の直上に存在する貴金属副層435とを含む。貴金属副層435は、半田付け可能な表面435Sを有する。改質金属粒子層422は、金属粒子402と、インターカレーション副層433からのいくつかの材料403とを含む。改質インターカレーション層430(又は改質インターカレーション層433)と、改質金属粒子層422の最上部の金属粒子402との間には、界面4221が存在する。焼成前に任意のガラスフリットが乾燥金属粒子層(図1の120)に含まれている実施形態では、改質金属粒子層422及び金属粒子層420は、3重量%未満の層を構成することになる少量のガラスフリット(図示せず)も含むことができる。
【0087】
断面SEM画像化を用いてこうした複数層を識別し、多層スタック内の層の厚さを測定した。焼成多層スタック中の層の平均層厚を、少なくとも10回の厚さ測定値を平均することによって得、断面画像全体にわたって各々を少なくとも10μmで分けた。本発明の様々な実施形態において、金属粒子層(図2の220など)は、0.5μm~100μm、1μm~50μm、2μm~40μm、20μm~30μm、又はここに含まれる任意の範囲にある平均厚さを有する。基板上のこうした金属粒子層は、一般には平滑で、1×1mmの領域にわたった平均金属粒子層厚さの20%以内の最小及び最大層厚さを有する。断面SEMに加えて記載した領域にわたる層の厚さ及び変動を、オリンパスLEXT OLS4000 3Dレーザー測定顕微鏡及び/又はVeeco Dektak 150などのプロフィルメーターを用いて正確に測定することができる。
【0088】
例示的な実施形態では、金属粒子層(図2の220など)は、焼結アルミニウム粒子でできており、25μmの平均厚さを有している。この金属粒子層の気孔率は、CE機器パスカル140(低圧)又はパスカル440(高圧)などの水銀ポロシメータを使用して0.01kPa~2MPaの範囲で測定することができる。焼成金属粒子層は、1%~50%、2%~30%、3%~20%、又はここに含まれる任意の範囲の気孔率を有することができる。アルミニウム粒子で作製され、太陽電池用途として使用される焼成金属粒子層は、10%~18%の間の気孔率を有し得る。
【0089】
図4の433及び435としてそれぞれ概略的に示した例などのインターカレーション副層及び貴金属副層の厚さを、横断面SEM/EDXを用いて実際の多層スタックで測定した。インターカレーションと貴金属相との間のコントラストの違いにより、副層はSEMで区別された。EDXマッピングを使用して、図4の4321で示されるインターフェースの場所を特定した。様々な実施形態において、貴金属副層は、0.5μm~10μm、0.5μm~5μm、1μm~4μm、又は任意の範囲内に含まれる厚さを有する。様々な実施形態において、インターカレーション副層は、0.01μm~5μm、0.25μm~5μm、0.5μm~2μm、又は任意の範囲内に含まれる厚さを有する。
【0090】
本発明の一実施形態では、改質インターカレーション層は、2つの相、即ち、貴金属相及びインターカレーション相を含む。この構造を図4に詳細に示す。通常、インターカレーション相は半田付けができないので、半田付け可能な表面230Sが、半田付け性を保証する貴金属相を主に含んでいれば有用である。様々な構成において、半田付け可能な表面は、50%超、60%超、又は70%超の貴金属相を含む。一構成において、改質インターカレーション層の半田付け可能な表面は、主に貴金属を含む。平面図EDXを用いて、改質インターカレーション層の表面上の成分の濃度を測定した。上記の装置を用いて、加速電圧10kV、試料作動距離7mm、倍率500倍でSEM/EDXを実施した。様々な実施形態では、改質インターカレーション層230の外側表面230Sの少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、又は少なくとも98重量%が、1つ以上の金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの合金、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせを含む。焼成条件、インターカレーション粒子及び貴金属粒子の種類及び粒度はすべて、改質インターカレーション層形態における相分離の程度に影響を及ぼす。
【0091】
改質金属粒子層(図2では222として示す)は、金属粒子層(図2では220で示す)よりもはるかに高い濃度のインターカレーション粒子材料を含有する。実際の多層スタックにおける改質金属粒子層及び金属粒子層の断面から採取したEDXスペクトルの比較を用いて、改質金属粒子層にインターカレーションした改質インターカレーション層からの材料の濃度を測定することができる。サンプル作動距離7mmにおいて20kVで作動させた上記SEM/EDX装置を用いて、改質金属粒子層の断面サンプル中のインターカレーション粒子(例えば、ビスマス)から総金属(例えば、ビスマス及びアルミニウム)に対する金属の比を測定した。重量比(総金属に対するインターカレーション金属)は、IM:M比と呼ばれる。ベースラインEDX分析は、再現性のある測定を確実にするために、改質金属粒子層から少なくとも500μm離れた金属粒子層の領域で実施した。改質金属粒子層から第2のEDXスペクトルを収集し、スペクトルを比較した。IM:M比を測定するに当たっては、金属成分のピークのみを考慮した(即ち、炭素、硫黄及び酸素からのピークは無視した)。この比を分析する際に、信頼性の低い結果となることを防ぐため、基板からの貴金属及び金属成分は除外した。例示的な一実施形態では、乾燥金属粒子層(図1の120として示す)がアルミニウム粒子を含み、インターカレーション層130がビスマス粒子及び銀粒子を含んでいた場合、金属粒子層(即ち、焼成後)は、約1重量%のビスマス及び1:99のBi:(Al+Bi)(IM:M)比を有する98重量%超のアルミニウムを含んでいた。他のインターカレーション金属成分は、0.25wt%未満の改質金属粒子層を構成するが、IM:M比の計算には考慮されない。様々な他の実施形態において、IM:M比は、1:106,1:1000,1:100,1:50,1:25又は1:10である。
【0092】
尚、基材は、ある程度の表面粗さを有する場合があり、それらとの界面も粗くなる可能性がある。図5は、本発明の一実施形態による、そのような基板510の一部分、改質金属粒子層522、及び改質インターカレーション層530を示す概略断面図である。基板510と改質金属粒子層522との間に非平面の界面501Bが存在する。改質金属粒子層522と改質インターカレーション層530との間に非平面界面522Bが存在する。線502は、改質金属粒子層522への基板510の最も深い侵入を示す。線504は、改質金属粒子層522への改質インターカレーション層530の最も深い侵入を示す。線502と線504との間の改質金属粒子層522の領域は、サンプリング領域522Aとして称することができる。改質金属粒子層522におけるIM:M比の特定において、界面粗さに起因して結果が偽性とならないよう、このような分析をサンプリング領域522Aに限定することが有用であり得る。
【0093】
例示的な実施形態では、改質金属粒子層中のIM:M比は、金属粒子層中(改質金属粒子層から少なくとも500μm離れた領域で)よりも20%高い、50%高い、100%高い、200%高い、500%高い、又は1000%も高い。例示的な一実施形態では、ビスマス粒子を含むインターカレーション層がアルミニウム粒子層上に存在し、改質金属粒子層(図5では522Aとして示す例などのサンプリング領域で分析される)は、4重量%のビスマス及び96重量%のアルミニウムを含有し、Bi:(Al+Bi)(又はIM:M)比が1:25である。改質金属粒子層中におけるBi:(Al+Bi)比は、金属粒子層中においてよりも400%高い。
【0094】
インターカレーション層が、結晶性金属酸化物及び/又は2つ以上の金属を含むガラスフリットを含む場合、インターカレーション金属成分をEDXによって定量し、合計してIM:M比を判定する。例えば、ガラスフリットがビスマスと鉛の両方を含む場合、その比は(Bi+Pb):(Bi+Pb+Al)と定義される。
【0095】
様々な実施形態において、焼成多層スタックはまた、焼成中に乾燥金属粒子層中の金属粒子と基材との間の相互作用から形成される固体化合物層を含む。この固体化合物層は、合金、共晶、これらの複合材、これらの混合物、又はこれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。一構成において、改質金属粒子層及び基材は、これらの界面に固体化合物領域(単数又は複数)を形成する。固体化合物領域は、1つ以上の合金を含み得る。固体化合物領域(単数又は複数)は、連続(層)であっても、半連続であってもよい。基板及び金属粒子層の組成に応じて、形成される合金又は他の化合物は、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、モリブデン、タングステン、タンタル、チタン、ケイ素、酸素、炭素、ゲルマニウム、ガリウム、ヒ素、インジウム及びリンのうちの1つ以上を含むことができる。例えば、アルミニウム及びケイ素は、660℃を超えると共晶を形成することができ、これを冷却すると、シリコン界面に固体アルミニウム-ケイ素(Al-Si)共晶層をもたらす。例示的な一実施形態では、この固体化合物層は、シリコン基板の一部に形成された固体Al-Si共晶層である。固体Al-Si共晶層の形成及び形態は、シリコン太陽電池において周知である。別の実施形態では、基板は、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、モリブデン、タングステン、タンタル、チタン、及びこれらの合金、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせのうちの少なくとも1つでドープされる。一実施例では、アルミニウムがシリコン中のp型ドーパントであり、焼成中、基板に隣接するアルミニウム粒子層からのアルミニウムがより多くのアルミニウムドーパントを提供して、シリコン基板中に高度なp型のドーピング領域を形成する。これは裏面電界として知られている。
【0096】
大気条件によっては、インターカレーション粒子は、溶融して、焼成多層スタック中の改質金属粒子層にインターカレーションする際に多重相転移を被ることがある。改質金属粒子層及び基材中の材料に依存して、インターカレーション粒子は、改質金属粒子層にインターカレーションする際に、結晶化合物を形成することができる。このような結晶性化合物は、改質金属粒子層中の金属粒子間の凝集を改善し、特定の成分の相互拡散を阻止し、及び/又は焼成多層スタック内の金属層間の電気接触抵抗を低減することができる。一実施形態では、改質インターカレーション層及び改質金属粒子層は、ビスマスと、酸素、ケイ素及び銀及びこれらの合金、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせの少なくとも1つとからなる結晶子を含む。
【0097】
本発明の一実施形態では、貴金属相は、金、銀、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの合金、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。一構成において、貴金属相は本質的にこれらの材料の1つ以上からなる。これらの材料の1つが貴金属相の大部分を占める場合、貴金属相をその材料が豊むと記載する。例えば、貴金属相、貴金属層又は貴金属副層が主として銀を含む場合、それはそれぞれ銀に富む領域、銀に富む層、又は銀に富む副層と称することができる。
【0098】
インターカレーション相は、インターカレーション粒子からの成分を含み、また、外部環境からの成分(例えば、酸素)と、隣接する金属粒子層の貴金属粒子から、さらに焼成中に組み入れられた近傍の基材からの少量の成分も含み得る。低温卑金属、結晶性金属酸化物及び/又はガラスフリットがインターカレーション粒子として使用されるかどうかに応じて、幅広い成分の配列がインターカレーション相に存在し得る。1つの実施形態(インターカレーション粒子が低温卑金属のみである場合)では、インターカレーション相は、ビスマス、ホウ素、錫、テルル、アンチモン、鉛、酸素、及びこれらの合金、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。別の実施形態(インターカレーション粒子が結晶性金属酸化物のみである場合)では、インターカレーション相は、
ビスマス、錫、テルル、アンチモン、鉛、バナジウムクロム、モリブデン、ホウ素、マンガン、コバルト、及びこれらの合金、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせの酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。別の実施形態(インターカレートした粒子が専らガラスフリットである場合)、インターカレーション相は酸素と、以下の成分、即ち、ケイ素、ホウ素、ゲルマニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、クロム、モリブデン、マンガン、レニウム、鉄、コバルト、亜鉛、カドミウム、ガリウム、インジウム、炭素、錫、鉛、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、ビスマス、硫黄、セレン、テルル、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ランタン、セリウム、及びこれらの合金、これらの複合材、及びこれらの他の組み合わせの少なくとも1つの成分とを含有する。これらの材料の1つがインターカレーション領域の大部分を占める場合、インターカレーション領域はその材料が豊むと記載される。例えば、インターカレーション領域、インターカレーション層又はインターカレーション副層が主としてビスマスを含む場合、それらは、それぞれビスマスに富む領域、ビスマスに富む層、又はビスマスに富む副層と称することができる。
焼成後多層スタックの実施例及び適用
アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、モリブデン、タングステン、タンタル及びチタンを主に含む金属粒子層は、焼成後に穏やかに活性化された(RMA)フラックス及び錫系半田とは半田付けできない。しかし、太陽電池及び他のデバイスでは、アルミニウム粒子層などの金属粒子層と電気的接続を行うために、リボンを半田付けすることが非常に望ましい。本明細書で開示するように、銀及び金などの貴金属を含む本発明のインターカレーションペーストは、金属粒子層上で使用され、大気中で焼成されて、半田付け性の高い表面を生成することができる。これは、貴金属を添加することによって金属粒子層の半田付け性を増加させる他の試みであって、貴金属が多層スタック内での焼成時に金属粒子層(例えば、アルミニウム)と通常は相互拡散するため、その結果、半田付け可能な表面には貴金属がほぼ含まれないために良好な半田付けがなされないという他の試みとは対照的である。例えば、アルミニウム粒子層上に10重量%未満のガラスフリットを含む市販の銀含有リアタブペーストの層を焼成しても、半田付け可能な表面は得られない。そのような層は、焼成ステップ中にかなりの銀-アルミニウム相互拡散を受けるため、得られる銀アルミナ表面は半田付け可能なものとはならない。
【0099】
本明細書に開示するインターカレーション層は、1)貴金属の拡散をブロックし、半田付け可能な表面を提供する、2)金属粒子層を機械的に強化する、3)金属粒子層の下に層のエッチングを支援する、との目的で金属粒子層の材料特性を修正するために使用可能である。本発明の一実施形態では、銀からなる貴金属粒子及びビスマス金属又はビスマス系ガラスフリットからなるインターカレーション粒子を含むインターカレーションペーストと、アルミニウム粒子を含む隣接の金属粒子層とを用いて多層スタックを形成した。焼成多層スタックは、ベアシリコンウェハ上のアルミニウムペースト(一般に太陽電池用途に使用される)をスクリーン印刷し、サンプルを250℃で30秒間乾燥させ、乾燥したアルミニウム粒子層の一部にインターカレーションペーストをスクリーン印刷し、サンプルを250℃で30秒間加熱し、700℃~820℃のピーク温度と10℃/秒を超えるランプアップ及び冷却速度を持つスパイク焼成プロファイルを使用してサンプルを同時焼成して形成させた。すべての乾燥及び焼成ステップは、シリコン太陽電池の製造に一般に使用されているDespatch CDF7210炉を使用して実施した。
【0100】
SEM/EDS分析を用いて、研磨された断面における焼成多層スタック中の様々な領域の成分組成を特定し、インターカレーションプロセスを研究した。SEM/EDXは、2つの異なる操作モードを用いて前述の装置を用いて行った。SEM顕微鏡写真は、SE2及びインレンズ(Inlens)と呼ばれる2つのモードを使用してZeiss Gemini Ultra-55分析電界放出SEMで画像化した。SE2モードは、5~10kV、SE2二次電子検出器を使用した5~7mmの作動距離、及び10秒の走査サイクル時間で操作した。インターカレーション領域とAl粒子との間のコントラストを最大にするために、輝度及びコントラストをそれぞれ0~50%及び0~60%の間で変化させた。Inlensモードは、1~3kV、InLens二次電子検出器を使用した3~7mmの作動距離、及び10秒の走査サイクル時間で操作した。BSFをInlensモードで画像化するため、明るさは0%に、コントラストは約40%に設定した。
【0101】
本発明の一実施形態では、インターカレーション粒子を10~15重量%含むインターカレーション粒子は、貴金属(即ち、銀)と金属粒子(即ち、アルミニウム)との間の相互拡散をブロックする。インターカレーションペーストA(表Iに示す)は、12.5重量%のビスマス粒子と50重量%のAgを含み、貴金属粒子に対するインターカレーション粒子の重量比は1:4である。焼成多層スタックを上述のように作製した。焼成多層スタックのSEMを、上記の装置を用いて加速電圧5kV、作動距離7mm、及び倍率4000倍でSE2モードにて実施した。
【0102】
図6は、同時焼成多層スタックの走査型電子顕微鏡断面画像である。改質インターカレーション層630は、改質金属粒子層622の直上にある。改質インターカレーション層630は、酸化ビスマスを含むビスマスに富む(インターカレーション相)副層632と銀(貴金属)に富む副層634とを含む。改質金属粒子層622は、アルミニウム粒子621と、ビスマスに富む副層632から広がったインターカレーション相材料623とを含む。インターカレーション領域632は、少なくとも界面領域631の近くでアルミニウム粒子621の直上に存在する。インターカレーション副層632が、同時焼成プロセスの間に、改質インターカレーション層630からの銀と改質金属粒子層622からのアルミニウムとの相互拡散を防止すると思われる。図6は、上記の図4で説明した階層構造の例である。貴金属副層634は、半田付け性が高い(改質金属粒子層622から離れた)表面を提供する。インターカレーション相材料623は、改質金属粒子層622の深部に侵入していない。改質金属粒子層622は、同時に弱焼結されたアルミニウム粒子を主として含有し、同時焼成後の機械的強度が低い。金属粒子層622に深く浸透するのに十分なビスマスがなく、インターカレーション副層632は、同時焼成多層スタックを機械的に弱めることができる改質金属粒子層622に応力を加えることが可能である。このような同時焼成後の多層スタックの剥離強度は、Al粒子間の主な破壊メカニズムを伴う0.4N/mm(ニュートン/ミリメートル)未満である。現在のソーラ産業基準においては、商業的に実現可能と見なされるには1N/mmを超える剥離強度が必要である。
【0103】
インターカレーションペーストB(表Iに表示)は、半田付け可能な表面を実現するためにインターカレーション粒子としてガラスフリットを使用する。インターカレーションペーストBは、30重量%のビスマス系ガラスフリット(インターカレーションした)粒子と45重量%のAgを含み、インターカレーション粒子に対する貴金属粒子の重量比は1:1.5である。ガラスフリットは、主にビスマスを含み、ガラス転移温度が387℃、軟化点が419℃である。焼成多層スタックのSEMを、上記の装置を用いて加速電圧5kV、作動距離7mm、及び倍率4000倍でSE2モードにて実施した。図7は、本発明の一実施形態による、このような同時焼成多層スタックの走査型電子顕微鏡断面図である。改質金属粒子層722は、アルミニウム粒子730を含んでいる。同時焼成の間、ビスマス系ガラスフリットはAg粒子から完全に相分離しないので、2つの相、即ち、貴金属相721及び上記の図3に示したものと類似のビスマス系インターカレーション相740を有する改質インターカレーション層750が得られる。改質インターカレーション層750上の表面750Sは、50%超の貴金属相721を含む。表面750Sは、ソーラ電池産業において一般に使用されるフラックス(例えば、Kester 952S、Kester 951及びAlpha NR205)により半田付け可能である。焼成多層スタック全体の剥離強度は0.5N/mm未満であり、これは、ビスマスインターカレーション相740の改質アルミニウム粒子層722への比較的低い浸透によるものであり得る。一般に、改質インターカレーション層の形態は、インターカレーション粒子の組成及びインターカレーション層への含有量を変えることによって修正することができる。
成分の相互拡散をブロックして下地金属粒子層を強化するするインターカレーションペースト
上記の実施例は、貴金属(即ち、銀)と金属粒子(即ち、アルミニウム)との間の相互拡散をブロックするように設計された2つのペースト配合物を例示しているが、その焼成された層は、半田付けされたときに適切な機械的強度に欠けている。インターカレーションペーストC(表Iに表示)は、30重量%のビスマス粒子と45重量%の銀粒子(即ち、Ag:Biインターカレーションペースト)を含み、貴金属粒子に対するインターカレーション粒子の重量比は1:1.5である。ペースト中のインターカレーション粒子含有量の増加は、改質金属粒子層中のインターカレーション材料の濃度を高め、機械的により強い焼成多層スタックをもたらす。このインターカレーションペーストCを、BSF多結晶p型太陽電池の製造中に市販のシルバーリアタブペーストのドロップイン代替物として使用した。インターカレーションペーストCを、アルミニウム上の銀(Ag-on-Al)、リアタブ、フローティングリアタブ、又はタブインベーションペーストとも称することができる。得られた焼成多層スタックに対して一連の評価ツールを使用して、IM:M(インターカレーション金属:金属)比、貴金属表面被覆率を評価し、インターカレーション領域に晶子が形成されているかどうかを判定した。
【0104】
インターカレーション層が金属粒子層に及ぼす影響は、インターカレーション層が存在しないシリコン基板上で焼成されたアルミニウム粒子層の形態を最初に示すことによって最もよく実証される。図8は、インターカレーション層を含まないシリコン太陽電池の領域から採取されたシリコン基板810上のこのように焼成されたアルミニウム粒子層822をSE2モードにて走査型電子顕微鏡(SEM)で撮った断面画像である。焼成されたアルミニウム粒子層822は、約20μmの厚さであり、アルミニウム粒子821及び少量の無機結合剤(即ち、ガラスフリット)840を含む。同じアルミニウム粒子層のInLensモード走査電子顕微鏡写真を図9に示す。InLensモードでは、裏面電界領域970及び凝固したアルミニウム-ケイ素(Al-Si)共晶層980に加えて、アルミニウム粒子層922、アルミニウム粒子921及びシリコン基板910が鮮明に見て取れる。
【0105】
同時焼成後の改質金属粒子層を生成する際のインターカレーション層の影響は、図10を参照することにより理解することができる。図10は、図8に示す画像で使用した同じシリコン太陽電池のInLensSEM断面画像であるが、インターカレーションペーストC(表Iに表示)を用いて作製した同時焼成多層スタックを含む領域から撮影したものである。同時焼成多層スタック1000は、改質インターカレーション層1030、改質アルミニウム粒子層1022、凝固Al-Si共晶層1080、アルミニウムドープ裏面電界(BSF)領域1070、及びシリコン基板1010を含んでいる。例示的な実施形態では、シリコン基板中のBSFは、1cm3あたり1017~1020原子の間でp型にドープされる。
【0106】
図10の同時焼成多層スタックのSE2モード走査型電子顕微鏡写真を図11に示す。InLensモードがBSF領域を明瞭に示しているのに対し、SE2モードは、改質アルミニウム粒子層中のビスマス(インターカレーション相)を画像化するのに好ましいモードである。同時焼成多層スタック1100は、改質インターカレーション層1130、改質アルミニウム粒子層1122、及びシリコン基板1110を含む。改質インターカレーション層1130中の銀副層1134及びビスマスインターカレーション副層1132も目視することができる。BSF領域及び凝固したAl-Si共晶層は、この画像では明瞭に見て取れない。改質アルミニウム粒子層1122は、同時焼成中にアルミニウム粒子1102の周りにインターカレーションした大量のビスマスインターカレーション材料1103を含有する。場合によっては、ビスマスと銀との間のコントラストは、その副層と、アルミニウム粒子層へのビスマスインターカレーションの程度とを明確に識別するのに十分に強くないことがある。このような場合、同時焼成多層スタック中の銀及びビスマスの配置を完全に特定するために、SEM/EDXを用いて断面の成分マップを作成することができる。
【0107】
インターカレーションにより改質アルミニウム粒子層中おけるインターカレーション金属(即ち、ビスマス)の量は、同じ断面サンプル中の改質アルミニウム粒子層領域及びアルミニウム粒子層領域から得られたEDXスペクトルを比較することによって特定することができる。これは領域が互いに1μm以上離れている場合に最も有効である。この比較方法は、IM:M又はBi:(Bi+Al)比として上記で説明した。このような分析は、インターカレーションペーストが太陽電池の製造に使用されたかどうかを判定するのに有用となり得る。太陽電池のメタライズ層は、一般には、アルミニウム、銀、ビスマス、鉛、及び亜鉛を含む金属の狭い部分集合(subset)からなる。市販の太陽電池では、アルミニウム粒子層はほぼアルミニウムのみを含有する。
【0108】
一実施例では、インターカレーションペーストC中のインターカレーション粒子はビスマスのみを含み、金属粒子層中の金属粒子は大部分がアルミニウムである。アルミニウム粒子層(即ち、インターカレーションペーストとの相互作用を有さない)及び改質アルミニウム粒子層におけるビスマスとビスマス+アルミニウムの比(Bi:(Bi+Al))を比較することは、インターカレーションペーストが太陽電池に組み込まれたかどうかを判定する上で有用な基準である。この2層のEDXスペクトルを、加速電圧20kV、作動距離7mmで上記装置を用いて約3分間測定した。図8の焼成アルミニウム粒子層822のEDXスペクトルを領域898から収集した。図11の改質アルミニウム粒子層1122のEDXスペクトルを領域1199から収集した。自動成分同定、バックグラウンド除去、及びピークフィッティング(peak fitting)のためにBruker Quantax Esprit 2.0ソフトウェアを使用して、これらのスペクトルについて成分定量を行った。EDXスペクトルを図12に示す。2層について図12のEDXスペクトルからアルミニウム及びビスマス金属のピーク面積を定量し、重量%を計算した。以下の表IIに要約する。このEDXスペクトルでは他の金属で顕著な量は同定できなかった。表IIに示すように、図12Aに示すアルミニウム粒子層のEDXスペクトルからは1:244のBi:(Bi+Al)重量%比が得られ、図12Bに示す改質アルミニウム粒子層のスペクトルからは約1:4のBi:(Bi+Al)重量%比が得られる。改質アルミニウム粒子層1122におけるBi:(Bi+Al)重量%比は、Ag:Biインターカレーション層と接触していない焼成アルミニウム粒子層822より約62倍も高い。様々な実施形態では、作製される焼成多層スタックにおけるBi:(Bi+Al)比は、改質アルミニウム粒子層中ではアルミニウム粒子層中よりも少なくとも20%、又は少なくとも50%、又は少なくとも2倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも10倍又は少なくとも50倍も高い。
【0109】
【表2】
【0110】
平面図EDXを使用して、シリコン太陽電池における背面タブ層の表面上の成分濃度を測定することができる。平面図では、EDXは約4μm以下の深さまで表面を探査したが、これは同時焼成後の多層スタックの相互拡散の程度を特定するのに有効なテクニックで、貴金属の濃度が高いということは、相互拡散が少ないことを意味し、より低い貴金属濃度は、より多くの相互拡散があったことを意味する。図13は、本発明の一実施形態によるAg:Biインターカレーション層を含む背面タブ層の表面から撮った平面図EDXスペクトルである。EDXスペクトルは、加速電圧10kV、作動距離7mm、倍率500倍で操作したSEMを用いて収集した。3.5keV~4keVの主要なピークと、これより小さい0.3keVにおけるピークはすべて銀と識別される。スペクトル中の残りの小さいピークは、以下のように、即ち、0.3keVの炭素(小さな銀のピークで巻き込まれている)、0.52keVの酸素、1.48keVのアルミニウム、及び2.4keVのビスマスと識別される。Bruker Quantax Esprit 2.0ソフトウェアを用いて成分定量を自動的に行い、バックグラウンドを減算し、成分ピークを特定し、次いで、X線エネルギーのピーク強度を適合させた。各成分の正規化重量パーセントを以下の表IIIに示す。背面タブ層表面全体における銀被覆率は、96.3重量パーセント(wt%)である。
【0111】
【表3】
【0112】
銀及びビスマスを含むインターカレーション層は、乾燥したアルミニウム系金属粒子層上で焼成されると、いくつかの独特な結晶相を形成することができる。XRDは、インターカレーション層中のビスマス粒子を使用する焼成多層スタックと、無機結合剤として10重量%未満のガラスフリットを有する従来の銀系のタブ付けペーストを使用する焼成多層スタックとを区別するために使用することができる。XRDは、VANTEC-500エリア検出器及び35kV及び40mAで動作するコバルトX線源を備えたBruker ZXS D8 Discover GADDS X線回折装置を用いて行った。シリコン太陽電池の背面タブ層上に焼成した多層スタックのXRDパターンを図14に示す。ディフラクトグラムは、2θで25~80°の全体窓(window)に対して組み合わされた2つの25°フレームにおけるコバルトKα波長を用いて測定した。X線照射下で各フレームを30分間測定した。図14の2つの回折パターンに対してバックグラウンドの減算は行わなかった。パターンを最大ピークに対して1に正規化し、0.01バックグラウンドをデータに加えてLog(強度)にプロットした。
【0113】
XRD回折パターンは、太陽電池内のAg:Biインターカレーション層又は背面タブ層で形成された焼成多層スタックが、ビスマスを含まずに形成されたものとは異なるパターンを有していることを示す。XRDパターンAは、シリコン太陽電池における背面タブ層上の同時焼成多層スタックからのものである。この同時焼成多層スタックは、約45重量%の銀、30重量%のBi、及び25重量%の有機ビヒクル(上記の表IのペーストCについて)を含有するインターカレーション粒子を用いて形成された改質インターカレーション層を含んでいた。ピーク1410は銀として識別され、ピーク1420は酸化ビスマス(Bi)の微結晶である。XRDパターンBは、アルミニウム粒子層上のインターカレーション層として10重量%未満のガラスフリットを含む市販のリアタブペーストを用いて形成されたシリコン太陽電池における背面タブ層上の同時焼成多層スタックからのものである。この同時焼成後の多層スタックは暗色であり、顕著な銀-アルミニウム相互拡散を示している。ピーク1450は、ケイ素アルミニウム共晶相として識別される。ピーク1460は、銀-アルミニウム合金相(即ち、Ag2Al)として識別される。銀ピーク1410は、酸化ビスマス化合物とともにパターンAに観察され、銀が銀-アルミニウム合金1450の一部としてのみ観察されるパターンBでは観察されない。これは、ビスマスが焼成多層スタックにおける相互拡散を防止するというさらなる証拠である。一実施形態では、シリコン太陽電池の背面タブ層は、ビスマスの微結晶と、ケイ素、銀、及びこれらの酸化物、これらの合金、これらの複合材、又はこれらの他の組み合わせなどの少なくとも1つの他の成分を含む。別の実施形態では、背面タブ層は、酸化ビスマス微結晶を含む。別の実施形態では、インターカレーション領域は、焼成中に多重相変態を被る。
インターカレーション層は焼成中に誘電層を介してエッチングすることができる
いくつかのデバイス用途では、基板表面を不動態化し、電子特性を改善するために、金属層の堆積前に誘電体層が基板表面上に堆積される。誘電体層はまた、基板と隣接する金属粒子層との間における種間相互拡散を防止することができる。場合によっては、基板と金属粒子層との間の電気伝導を改善する目的で、基板と金属粒子層との間に化合物を形成するために誘電体層をエッチングすることが非常に望ましい。ビスマス及び鉛を含むガラスフリットは、シリコン太陽電池の同時焼成中に様々な誘電体層(例えば、窒化ケイ素)を貫通することが知られている。例示的な実施形態では、インターカレーションペーストDは、約30重量%の銀、20重量%のインターカレーション粒子(15重量%の金属ビスマス粒子、5重量%の高鉛含有ガラスフリット)及び50重量%の有機ビヒクルを含有する。このようなインターカレーションペーストは、エッチングが誘電体層を貫通する場合に特に有用となり得る。
【0114】
図15は、本発明の一実施形態による、焼成前に少なくとも1つの誘電体層1513で被覆された基板1510を含む多層スタック1500の概略断面図を示す。乾燥金属粒子層1520は、誘電体層1513の一部分上に存在する。インターカレーション層1530は、上述したように、インターカレーション粒子と貴金属粒子とで構成され、乾燥金属粒子層1520の一部上にある。焼成に先立って、貴金属粒子及びインターカレーション粒子は、インターカレーション層1530内に均一に分布させることができる。誘電層は、ケイ素、アルミニウム、ゲルマニウム、ハフニウム、ガリウム、これらの酸化物、これらの窒化物、これらの複合体、及びこれらの組み合わせの少なくとも1つを含有する。一構成において、誘電体層1513は厚さ75nmの窒化ケイ素層である。別の実施形態では、誘電体層1513と基板1510との間に第2の誘電体層(図示せず)が存在する。一構成において、第2の誘電体層は、基板1510の直上に存在する厚さ10nmのアルミナ層であり、誘電体層1513は、アルミナ層の直上に存在する厚さ75nmの窒化ケイ素層である。乾燥金属粒子層1520は、誘電体層1513上に金属粒子ペーストを堆積させ、続いて、乾燥することによって形成される。一構成において、乾燥した金属粒子層1520は20μmの厚さであり、アルミニウム粒子を含む。鉛又はビスマスを含むガラスフリットなどのインターカレーション粒子を含有するインターカレーション層1530が、乾燥金属粒子層1520の少なくとも一部を覆うようにこの乾燥金属粒子層1520上に堆積され、乾燥される。
【0115】
図16は、本発明の一実施形態による、焼成多層スタック1600(焼成された後の図15の構造体1500)を示す概略断面図である。同時焼成の間、改質インターカレーション層1630中のインターカレーション粒子(図15を参照して説明したガラスフリットを含む)の少なくともいくつかが溶融し流動し始め、改質金属粒子層1622にインターカレーションする。一構成において、改質インターカレーション層1630中のガラスフリット粒子からの材料が、改質金属粒子層1622内の金属粒子中に浸透し、誘電体層1613(焼成前には1513)中にエッチングされ、改質金属粒子層1622からのある種の金属が基板1610と化学的及び電気的に相互作用し、1つ又は複数の新しい化合物1614を形成することを可能にする。改質インターカレーション層1630からの他のインターカレーション粒子(例えば、ビスマス粒子)もまた、改質金属粒子層1622にインターカレーションすることができ、構造的支持体を提供することができる。一構成において、図2を参照しながら既により詳細に説明したように、改質インターカレーション層1630内の貴金属粒子及びインターカレーション粒子の少なくとも一部は、互いに相分離する相を形成する。いくつかの構成では、(誘電体層1613上の)金属粒子領域1620も存在し、その中には、微量又は痕跡量のインターカレーション粒子材料しか浸透しない。例示的な実施形態では、ンターカレーションした粒子はビスマス粒子及びガラスフリット粒子であり、金属粒子はアルミニウムである。
座屈を低減するために金属粒子層の層厚ばらつきを導入する
インターカレーション層は、焼成中に下地改質金属粒子層に応力を生じさせる可能性があり、これにより座屈又はしわを生じさせることがあり、よって層間の強度及び電気的連通が不十分となる。例えば、インターカレーション層は、隣接する改質金属粒子層とは異なる熱膨張係数を有することがあり、焼成中に層が異なって膨張又は収縮する。隣接する改質金属粒子層における別の応力源は、金属粒子間に溶融するインターカレーション粒子材料のインターカレーションであり得る。そのような応力が、改質金属粒子層及び/又は改質インターカレーション層に座屈又はしわを生じさせる可能性がある。座屈又はしわは、層の厚さにおいて、重要な、周期的な又は非周期的な偏差として類型化することができる。多くの場合、これが層間での層間剥離をもたらす。例えば、乾燥した金属粒子層上のインターカレーション層が焼成される前に、インターカレーション層及び乾燥した金属粒子層を含むスタックの初期の厚さは、どこでもほぼ同じである。同時焼成後、改質インターカレーション層及び改質金属粒子層を含有する焼成多層スタックの厚さは、いくつかの領域では初期の厚さの3倍も大きくなり得る。
【0116】
図17は、座屈が発生した同時焼成多層スタックの平面図光学顕微鏡写真である。 改質インターカレーション層1730が見て取れる。改質インターカレーション層1730は座屈しており、いくつかのピーク領域1712が図17に示されている。隣接する金属粒子層1720は座屈しておらず、平滑又は略平坦なままである。インターカレーション層1730が座屈しても、同時焼成後の多層スタックの機械的健全性は、1N/mmより大きい剥離強度において依然として堅固である。しかし、座屈は、改質インターカレーション層1730とタブリボン(図示せず)とを一緒に半田田付けするときに、良好かつ強固な接触を困難にする可能性がある。改質インターカレーション層1730の座屈された表面は、インターカレーション層1730の範囲にわたって不完全な半田濡れを生じ、剥離強度及び半田接合の信頼性を低下させる可能性がある。タブリボンへの半田付けを確実にするために、同時焼成後の多層スタックの座屈を低減又は排除することが有効であり得る。
【0117】
層の座屈及び/又はしわを大幅に低減するために、変厚を焼成多層スタックに組み込むことができる。1つ以上の層が変厚を有する場合、そのような層の間に非平面界面が生じることがある。変厚の示度は、焼成された多層フィルムスタック内の層の間の非平面界面である。変厚は、第1の層の一部をパターニングし、続いて、第1の層のパターン形成された部分上に直接第2の層を印刷して、2つの層の間に非平面界面を作り出すことによって作成することができる。一構成において、1つの層は、パターン化されたスクリーンを使用して印刷された結果、様々な厚さを有することになる。焼成後、個々の層の厚さを減少させることができるが、焼成しても様々な厚さの層は均一な厚さの層とはならない。この層の様々な厚さは、焼成前後に断面SEM及び表面トポロジ技術の両方を用いて測定及び定量化することができる。様々な実施形態において、層が1×1mm内で測定された層の平均厚さよりも少なくとも20%大きい又は少なくとも20%小さい厚さ変動を有する場合、その相は変厚を有すると記載することができる。
【0118】
図18は、本発明の一実施形態による、乾燥した金属粒子層に変厚を達成するために金属粒子ペーストを堆積する間に使用することができるスクリーンである。スクリーン1800は、開口しているメッシュ1810といくつかのパターン領域1820とを有する。パターン領域1820は、閉囲領域1821と開口領域1822とを含む。湿潤金属粒子層の印刷中にスクリーン1800が使用されるとき、ペーストは開口1822を通って流れ、開口メッシュ1810は閉囲領域1821によって塞がれ、堆積した湿潤金属粒子層の厚さを変動させる。一実施形態では、その後、湿潤金属粒子層を乾燥させて変厚の乾燥金属粒子層を形成し、インターカレーションペーストを変厚の乾燥金属粒子層上に直接堆積させる。
【0119】
メッシュ数、ワイヤの直径及び形状、フレームに対するワイヤ角度、エマルジョンの厚さ及びスクリーン設計のような、乾燥金属粒子層における変厚に影響を及ぼすことができるいくつかの要因がある。メッシュサイズ及びワイヤの直径は、印刷可能な最小のパターン形状及び開口を決定する。乾燥金属粒子層の厚さ変動は、層の崩壊に影響を及ぼす金属粒子ペーストのレオロジーによっても影響される。ペーストは、基板上に堆積する場所を正確に制御するために、高粘度及びチキソトロピーで設計することができる。スクリーンのエマルジョン厚さを調節することによって金属粒子層の厚さ変動の大きさを変えることも可能である。スクリーンは、変動する層の厚さを全体的に、又は特定の領域のみで、基板表面上で連続的に乾燥金属粒子層を確実に堆積するように設計することもできる。例示的な実施形態において、金属粒子ペーストは、5μmのエマルジョン厚さを有する230-メッシュスクリーンを使用して印刷される。一構成において、パターン1820は、100μm×3mmの閉囲領域1821に隣接する一連の100μm×3mmの開口領域1822を有する。パターンの種類、周期性(又はその欠如)、又はサイズに制限はない。多くのパターンは変厚をもたらすことができ、パターンは様々な印刷条件及びペースト配合物のために調整することができる。
【0120】
図19は、本発明の一実施形態による、図18のスクリーン1800を使用して、基板1910上に堆積された変厚を有する乾燥金属粒子層を示す概略断面図である。領域1825の外側の乾燥金属粒子層1920は、スクリーン1800の開口メッシュ領域1810を通して金属粒子ペーストを堆積し、次いで、金属粒子ペーストを乾燥することによって形成された。領域1925内における変厚の乾燥金属粒子層1922は、スクリーン1800のマスク領域1820を介して堆積され、変厚を有する。次いで、インターカレーションペーストを領域1925内における変厚の乾燥金属粒子層1922上に直接印刷し、乾燥させてインターカレーション層1930を形成した。
【0121】
図20は、本発明の一実施形態による、同時焼成後の図19の構造を示す概略断面図である。上述したように、同時焼成は、インターカレーション層1930(図19)からの材料を、その下地である変厚の乾燥金属粒子層1922(図19)にインターカレーションさせ、変厚の金属粒子層1922を、変厚の改質金属粒子層2022に変換し、そして、インターカレーション層1930を、改質インターカレーション層2030に変換させることができる。一構成において、改質金属粒子層2022は、周期的なバンプ、隆起部、エッジ及び他の顕著な形状を含むが、これらに限定されないパターン化された厚さ変動を有する。尚、改質インターカレーション層1930の厚さはしばしば均一であり、改質インターカレーション層と改質金属粒子層との間の非平面界面(その変厚さに起因する)は、多層スタックの全層厚における変動を測定することによって推測が可能である。
【0122】
図21は、図18に示すようなスクリーンを使用して、金属粒子ペーストが(いくつかの領域で)様々な厚さで印刷された同時焼成多層スタックの平面図光学顕微鏡写真である。金属粒子層の可変厚領域上に直接積層し、多層スタックを同時焼成して、ほぼ平面の金属粒子層2120によっていずれかの側に隣接する改質インターカレーション層2121を上面に形成した。金属粒子層2120は、平坦な上面を有する。改質インターカレーション層2121の表面は、下地改質金属粒子層の厚さの変動を反映するパターンと非平面である。改質インターカレーション層2121の表面は、図17の改質インターカレーション層1730においてはっきりと見て取れるように、座屈又はしわの徴候を示さない。本発明の一実施形態では、同時焼成多層スタックの一部は変厚を有する。
【0123】
変厚を説明する有用な基準は、ピーク厚さと谷の厚さを平均厚さと比較することである。いずれの層においても意図しない厚さの変動があり得るが、そのような変動は通常、層の平均厚さの20%未満である。層の厚さが層の平均厚さの20%未満で変動する場合、層は平面である(均一な厚さを有する)とみなすことができる。金属粒子ペーストを印刷するためのスクリーンを慎重に設計することにより、1×1mmの領域内で測定された場合に、層の平均厚さよりも少なくとも20%大きい又は少なくとも20%より小さい厚さ変動を有する変厚を伴った層を作製することが可能である。
【0124】
焼成多層スタックの変厚は、研磨された断面サンプルのSEM画像から測定することができる。図22は、本発明の一実施形態による、変厚を有する焼成多層スタック2210おける一部の断面SEM画像である。断面サンプルを準備し、上記の方法を使用して画像化した。焼成多層スタック2210は、改質インターカレーション層2211、改質アルミニウム粒子層2212、及びシリコン基板2213を含む。改質アルミニウム粒子層2212の両側の2つの界面、即ち、シリコン基板2213と改質アルミニウム粒子層2212との界面2218と、改質アルミニウム粒子層2212と改質インターカレーション層2211との間の界面2217が画像において識別される。界面2216は半田付け可能な表面である。比較のために、図23は、変厚を伴わない平面アルミニウム粒子膜2321を有するシリコン基板2322を示す。
【0125】
図22の改質アルミニウム粒子層2212の平均厚さは、厚さ測定値を平均化することによって計算される。図22の2つの界面2217と2218との間の厚さは、サンプルの全体にわたって規則的な間隔(例えば、10ミクロン)で測定された。厚さはまた、極大値及び極小値で測定した。ImageJ 1.50aなどのソフトウェアを使用して、平均厚さ、最小厚さ及び最大厚さを得ることができる。単一の断面サンプルに見られるピーク及び谷は、焼成多層スタック全体を代表するものではない可能性がある。従って、非常に多くのピークと谷が測定されることを確実にするために、いくつかの断面サンプルにわたってそのような測定を行うことは有用である。これらは、当業者には知られている方法である。
【0126】
図22に示すサンプルの場合、改質アルミニウム粒子層2212は11.3μmの平均厚さ、18.4μmのピーク厚さ、及び5.2μmの谷部分の厚さを有する。ピーク厚さは平均厚さより64%大きく、谷部分は平均厚さより54%小さい。様々な実施形態において、変厚を有する層は、層の平均厚さよりも少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%大きいピーク厚さを有する。様々な実施形態において、変厚を有する層は、層の平均厚さよりも少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%小さい谷部分の厚さを有する。
【0127】
改質インターカレーション層2211が連続的で厚さがほぼ均一である場合、改質インターカレーション層2211の半田付け可能な表面2216は、界面2217にほぼ平行である。本発明の一実施形態では、改質アルミニウム粒子層2212について上述した全ての測定は、はんだ付け可能な表面2216と界面2217との間に存在する改質アルミニウム粒子層2212と改質インターカレーション層2211の合計厚さに対して行うことができる。2つの組み合わされた層の厚さ測定値の比較は、改質アルミニウム粒子層2212のみについての厚さ測定値の比較のための良好な近似値である。図22の組み合わされた層の場合、ピークの厚さは13.2μmの平均全厚のよりも44%大きく、谷部分の厚さは平均全厚よりも43%小さい。この代替方法は、焼成多層スタックの厚さ変動を体系的に測定していない可能性がある。
【0128】
いくつかの用途では、焼成多層スタックの一部のみが変厚を有することが望ましい場合がある。例えば、シリコン太陽電池の背面アルミニウム粒子層は、一般には平坦である。そのようなセルの裏側に、背面タブ層部分(改質インターカレーション層を含む)に変厚を導入することは有用であり得る。周囲のアルミニウム粒子層の一部における厚さの変動と背面タブ層の一部の厚さの変動を比較して、変厚を有する層が太陽電池の裏側に使用されたかどうかを判定することができた。
【0129】
焼成多層フィルムスタックにおける変厚を判定するための別の有用な基準は、山から谷までの平均高さであり、これは局所最大値の平均と局所最小値の平均との間の差である。断面SEM画像では、画像内の極大及び極小が保証されていないため、プロフィロメトリ、コヒーレント走査干渉法、及び焦点変動顕微鏡法などの表面形状測定法がより有用である。プロフィルメーターの一例は、Bruker又はVeeco Dektak150又は同等のものである。コヒーレント走査干渉法は、オリンパスLEXT OLS4000 3Dレーザー測定顕微鏡を用いて行うことができる。これらの方法に付随するソフトウェアは、平均的な山から谷までの差を自動的に計算することができる。
【0130】
例示的な実施形態では、同じサンプル内で、異なる厚さを有する焼成多層スタックと、均一な厚さを有するアルミニウム粒子層との両方について、山から谷までの平均高さを測定するためにプロファイル測定が用いられる。Veeco Dektak 150を使用して、半径12.5mmのプローブを用い、1×1mmの領域の表面を測定し、3Dトポロジカル表面マップを作成した。図24は、変動する厚さを有する焼成多層スタックの3D表面トポロジーマップであり、図25は、均一な厚さを有する(隣接する)アルミニウム粒子層の3D表面トポロジーマップである。図中の最も明るい領域は極大を示し、最も暗い領域は極小を示す。図24は、厚さの変動(-20.2μmから15.9μmまで)を示しており、変厚の改質金属粒子層を含む焼成多層スタックに期待されものである。図25は、均一な厚さを有するアルミニウム粒子層に期待される厚さ変動(-4.9μm~5.5μm)を示す。Veeco Vision v4.20プログラムを使用して、山から谷までの平均高さを計算し、極大値と極小を自動的に特定して平均し、その差を減算した。図24の焼成多層スタックの山から谷までの平均的な高さは35.54μmであり、図25のアルミニウム層は9.51μmである。様々な実施形態では、山から谷までの平均高さが10μmを超える場合、12μmを超える場合、又は15μmを超える場合、層は変厚を有している。
【0131】
本発明の一実施形態では、図20に示されるような同時焼成された変厚の多層スタックの改質インターカレーション層がタブリボンに半田付けされるとき、変厚を有さない焼成多層スタックの剥離強度の2倍の剥離強度を有することになる。一構成において、このような変厚の焼成された多層積層体の表面上にある改質インターカレーション層は、錫系のタブリボンに半田付けされ、1.5N/mmより大きい、又は2N/mmより大きい、又は3N/mmより大きい剥離強度を有する。厚さ変動は、シリコン太陽電池用の基板上に連続的な金属粒子層及び裏面電界を提供するように最適化することができる。そのような同時焼成された変厚の多層スタックにおける接触抵抗が、ほぼ平面の同時焼成後の多層スタックの接触抵抗と同等かそれよりも低くなるように、厚さの変動を最適化することができる。例示的な実施形態では、誘電体層を貫通してエッチングするためにインターカレーションペーストを使用する場合、乾燥金属粒子層及び改質金属粒子層における厚さ変動は、20μm、10μm、5μm又は2μm未満の領域を含む。
【0132】
上述の1つ以上の層厚可変な層は、本明細書に記載の焼成多層スタックのいずれかの1つ以上の構成要素として使用することができる。変厚の乾燥金属粒子層及び改質金属粒子層などの層厚可変な1つ以上の層を、あらゆるシリコン太陽電池に使用して、背面タブ層の座屈を減少させることができる。
シリコン太陽電池における置き換えとしてのインターカレーションペースト
一実施形態では、45重量%の貴金属粒子、30重量%のインターカレーション粒子、及び25重量%の有機ビヒクル(上記の表IのペーストC)を含むインターカレーションペーストを、シリコン太陽電池内の背面タブ層を形成するための置き換えとして使用することができる。p-n接合シリコン太陽電池の製造は、当該技術分野において周知である。グッドリッチら(Goodrich et al.)は、裏面電界シリコン太陽電池を製造するための完全なプロセスフローを提供しているが、これは「標準c-Si太陽電池(standard c-Si solar cell)」と呼ばれる。グッドリッチら(Goodrich et al.)による「ウェハベースの単結晶シリコン光起電力ロードマップ:製造コストのさらなる削減のために既知の技術改善機会を利用」、Solar Energy Materials and Solar Cells(2013年)110~135ページを参照されたい。これを参照により本明細書に組み込む。一実施形態では、太陽電池電極を製造する方法は、前面の一部が少なくとも1つの誘電体層で覆われたシリコンウェハを提供するステップと、シリコンウェハの背面にアルミニウム粒子層を塗布するステップと、乾燥するステップと、アルミニウム粒子層の一部にインターカレーションペースト(リアタブ)層を塗布し、インターカレーションペースト層を乾燥させ、複数の微細なグリッド線及び少なくとも1つの前面バスバー層をシリコンウェハ前面の誘電体層に塗布し、そして、シリコンウェハを乾燥させ同時焼成するステップを含む。スクリーン印刷、グラビア印刷、スプレー堆積、スロットコーティング、3D印刷及び/又はインクジェット印刷などの方法を用いて、様々な層を塗布することができる。一実施例として、Ekra又はBacciniスクリーンプリンタを使用して、アルミニウム粒子層、インターカレーションペースト層及び前面側グリッド線及びバスバー層を堆積させることができる。別の実施形態では、太陽電池は、シリコンウェハの背面の少なくとも一部を覆う少なくとも1つの誘電体層を有する。PERC(不動態化エミッタリアセル)アーキテクチャでは、アルミニウム粒子層の適用に先立って、2つの誘電体層(即ち、アルミナ及び窒化ケイ素)がシリコン太陽電池の背面に塗布される。様々な層の乾燥は、150℃~300℃の温度のベルト炉で30秒~15分間行うことができる。一構成において、Despatch CDF7210ベルト炉を使用して、本明細書に記載の焼成多層スタックを含むシリコン太陽電池を乾燥及び同時焼成する。一構成において、同時焼成は急速加熱技術を用い、空気中で0.5秒~3秒間760℃以上の温度に加熱することで行われ、これはアルミニウム裏面電界シリコン太陽電池の一般な温度プロファイルである。ウェハの温度プロファイルは、ベアウェハに取り付けられた熱電対を備えるDataPaq(商標)システムを用いて較正されることが多い。
【0133】
図26は、シリコン太陽電池2600の正面(又は照射面)を示す概略図である。シリコン太陽電池2600は、少なくとも1つの誘電体層(図示せず)を伴うシリコンウェハ2610を有し、その上に微細なグリッド線2620と前面側バスバー線2630が存在する。一実施形態では、シリコンウェハの前面側サイド誘電体層は、ケイ素、窒素、アルミニウム、酸素、ゲルマニウム、ハフニウム、ガリウム、これらの複合材、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。別の実施形態では、シリコンウェハの前面側の誘電体層は窒化ケイ素であり、厚さは200nm未満である。当業界で知られている市販の前面側銀メタライズペーストを使用して、微細なグリッド線2620及び前面バスバー線2630を形成することができる。前面側シルバー層(すなわち、銀メタライズペーストから作られた微細ないグリッド線2620及び前面バスバー線2630)は、同時焼成の間に誘電体層を貫通してエッチングされ、シリコンウェハ2610と直接接触する。一実施形態では、シリコンウェハ2610は単結晶であり、n型又はp型のいずれかにドープされる。別の実施形態では、シリコンウェハ2610は多結晶であり、n型又はp型のいずれかにドープされる。例示的な実施形態では、基板は、n型エミッタを有する多結晶のp型シリコンウェハである。
【0134】
図27は、シリコン太陽電池2700の背面を示す概略図である。この背面はアルミニウム粒子層2730で被覆され、シリコンウェハ2710上に分布された背面タブ層2740を有する。一実施形態では、背面側の誘電体層は、シリコンウェハの前面に、ケイ素、窒素、アルミニウム、酸素、ゲルマニウム、ハフニウム、ガリウム、これらの複合材、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの材料を含む。別の例示的な実施形態では、シリコンウェハ前面上の誘電体層は窒化ケイ素であり、厚さは200nm未満である。一実施形態では、シリコンウェハの背面に誘電体層は存在しない。当業界で知られている市販のアルミニウムペーストは、焼成前にシリコンウェハ背面の全表面積の少なくとも85%、又は少なくとも90%又は少なくとも95%、又は少なくとも97%に印刷することができ、これを完全なAl被覆と記載することができる。アルミニウム粒子層(同時焼成後)2730の平均厚さは20~30μmである。様々な実施形態において、アルミニウム粒子層2730は、3~20%、10~18%、又はここに含まれる任意の範囲の気孔率を有する。従来のBSF(背面電界)太陽電池アーキテクチャでは、背面タブ層がシリコンウェハに直接的に塗布される。しかし、太陽電池の電力変換効率を改善するには、アルミニウム粒子層上に背面タブ層を印刷することが有用となり得る。一実施形態では、インターカレーション層が、乾燥アルミニウム粒子層の一部分上に直接塗布され、背面タブ層2740を形成する。図27は、背面タブ層2740の1つの可能なパターンを示している。インターカレーション層及びその下のアルミニウム粒子層は同時焼成されて、本明細書に記載の焼成多層スタックを形成する。様々な構成において、改質インターカレーション層(又は背面タブ層)2740は、1μm~20μm、又は2μm~10μm、又は2.5μm~8μmの平均厚さを有する。
【0135】
先に説明した変厚の金属(アルミニウム)粒子層を、シリコン太陽電池の裏側に使用して背面タブ層の座屈を低減し、接着及び電気接触を改善することができる。本発明の一実施形態では、背面タブ層の一部は変厚を有する。本発明の別の実施形態では、改質アルミニウム粒子層の一部は、変厚を有する。一構成において、そのような変厚の改質アルミニウム粒子層の表面上に存在する背面タブ層は、錫系タブリングリボンにはんだ付けされ、0.7N/mm超の、1.5N/mm超の、又は2N超の剥離強度をもたらす。この厚さ変動は、シリコン太陽電池用の基板上に連続金属粒子層及び裏面電界を提供するように最適化することができる。別の実施形態では、背面タブ層領域において、その領域の複合層(改質アルミニウム粒子層及び背面タブ層)の一部は、1×1mmの面積にわたって測定した複合層の平均的な厚さよりも少なくとも20%、30%、又は40%大きい厚さを有する。別の実施形態では、背面タブ層領域において、その領域の複合層(改質アルミニウム粒子層及び背面タブ層)の一部は、1×1mmの面積にわたって測定した複合層の平均的な厚さよりも少なくとも20%、30%、又は40%大きい厚さを有する。
【0136】
本発明の一実施形態では、本明細書で論じる焼成多層スタックのいずれかを含む太陽電池を、ソーラーモジュールに組み込むことができる。当業者に知られているように、そのような太陽電池が使用される多くの可能な太陽電池の設計が存在する。モジュール内の太陽電池の数を制限することを意図するものではない。一般には、60又は72個の太陽電池が市販のモジュールに組み込まれているが、用途(即ち、民生用電子機器、住宅、商業、ユーティリティなど)に応じて多かれ少なかれ組み込むことが可能である。モジュールは通常、太陽電池に直接接触しないバイパスダイオード(図示せず)、接続箱(図示せず)及び支持フレーム(図示せず)を備える。バイパスダイオード及び接続箱は、セル相互接続の一部とみなすこともできる。
【0137】
図28は、本発明の一実施形態による太陽電池モジュールの一部を示す概略断面図である。この太陽電池モジュールは、少なくとも1つのシリコン太陽電池2840を含む。シリコン太陽電池2840の前面2840Fは、第1のタブリボン2832(ページに前後方向に位置)に取り付けられ、その上には前面封止層2820及び前面シート2810が存在する。シリコン太陽電池2840の背面側2840Bは、第2のタブリボン2834に取り付けられ、その上には背面封止層2850及びバックシート2860が存在する。タブリボン2832,2834は、隣接する太陽電池を、半田付け接続を介して1つのセルの前側(すなわち、前側の前面バスバー)と隣接する太陽電池セルの裏側(即ち、裏側の背面タブ層)に電気的接続する。ソーラーモジュール内の多数の太陽電池は、セルの相互接続としてタブリボンを使用し互いに電気的に結合させることができる。
【0138】
典型的なセル相互接続には、太陽電池に半田付けされた金属タブリボンと、タブリボンを接続する金属バスリボンが含まれる。本発明の一実施形態では、タブリボンは、半田コーティングを有する金属リボンである。このような半田コーティングされたタブリボンは、20~1000μm、100~500μm、50~300μmの厚さの範囲、又はここに含まれる任意の範囲の厚さを有することができる。半田でコーティングされたタブリボンの幅は、0.1~10mm、0.2~1.5mm、又はここに含まれる任意の範囲であり得る。タブリボンの長さは、用途、デザイン、基板の寸法によって決まる。半田コーティングの厚さは、0.5~100μm、10~50μm、又はここに含まれる任意の範囲の厚さを有することができる。半田コーティングは、錫、鉛、銀、ビスマス、銅、亜鉛、アンチモン、マンガン、インジウム、又はこれらの合金、これらの複合材、又はこれらの他の組み合わせを含むことができる。金属タブリボンは、1μm~1000μm、50~500μm、75~200μm、又はここに含まれる任意の範囲の厚さを有し得る。金属タブリボンは、銅、アルミニウム、銀、金、炭素、タングステン、亜鉛、鉄、錫又はこれらの合金、これらの複合材、又はこれらの他の組み合わせを含むことができる。金属タブリボンの幅は、0.1~10mm、0.2~1.5mm、又はここに含まれる任意の範囲とすることができる。一実施形態では、タブリボンは、厚さ200μm、幅1mmの銅リボンであり、全面に厚さ20μmの錫:鉛(60:40重量%)の半田でコーティングされている。
【0139】
図28の前面シート2810は、モジュールに何らかの機械的支保を提供し、太陽電池2840が吸収するように設計された太陽スペクトルの部分にわたって良好な光伝送特性を有する。ソーラーモジュールは、前面シート2810が太陽光2860などの照明源に対向するように構成される。前面シート2810は、一般には、鉄含有量が低いソーダ石灰ガラスで作られる。前面封止層2820及び背面封止層2850は、動作中に太陽電池2840を電気的、化学的及び物理的ストレス要因から保護する。封入剤は、一般にはポリマーシートの形態である。封入剤として使用できる材料の例には、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリエチレン-コ-メタクリル酸(イオノマー)、ポリビニルブチラール(PVB)、熱可塑性ウレタン(TPU)、ポリ-α-オレフィン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、他のポリシロキサン(即ち、シリコン)、及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0140】
バックシート2860は、裏側から太陽電池2840を保護し、光学的に透明であってもなくてもよい。ソーラーモジュールは、バックシート2860が太陽光2860のような照明源から離れて面するように構成される。バックシート2860は、3つのポリマーフィルムからなる多層構造であってもよい。DuPont(登録商標)Tedlar(商標)ポリフッ化ビニル(PVF)フィルムは、一般にはバックシートに使用される。フルオロポリマー及びポリエチレンテレフタレート(PET)もバックシートに使用することができる。バックシートとしてガラスシートを使用することもでき、ソーラーモジュールに構造的支持を提供するのを支援することができる。支持フレーム(図示せず)を用いて構造的支持を改善することもでき、支持フレームは、一般にはアルミニウム製である。
【0141】
本発明の一実施形態では、太陽電池モジュールを形成する方法が提供される。半田タブを、手動で又は自動タブ付け又はストリング装置を使用して、個々の太陽電池(本明細書に記載の焼成多層スタックのいずれかを含む)に塗布する。次いで、個々のセルを、タブリボンに直接半田付けすることによって、直列に電気的接続する。結果として生じた構造を「セルストリング(cell string)」と称する。複数のセルストリングが、前面シートに貼り付けられた前面封止層上に構成されることが多い。これらの複数のセルストリングは、バスリボンを使用して互いに接続されて電気回路を形成する。バスリボンは、セルストリングに使用されているタブリボンよりも幅が広い。すべてのセルストリング間の電気回路が完成すると、後部封止材料が接続されたセルストリングの背面に塗布され、バックシートが背面封止材料上に構成される。次いで、真空積層法を用いてアセンブリを封止し、封入材料を重合させるために加熱する(一般には200℃未満)。一般に、前面シートの周りにフレームが取り付けられ、構造的支持を提供する。最後に、接続箱がセル相互接続に接続され、ソーラーモジュールに取り付けられる。バイパスダイオードはセル相互接続処理時に、接続箱内に入れられる又はモジュール内部に取り付けられる。
【0142】
本発明の一実施形態では、ソーラーモジュールを形成する方法は、a)前面と焼成多層スタックを含む背面とを有する少なくとも1つの太陽電池を提供するステップと、b)タブリボンの一部を背面タブ層及び前面バスバー層の一部分に半田付けしてセルストリングを形成するステップと、c)任意に、電気回路を完成させるためにタブリボンをバスリボンに半田付けするステップと、d)前面シートに塗布された前面カプセル化層上にセルストリングを構成するステップと、e)セルストリングにリアカプセル化層を塗布し、バックシートを前記リアカプセル化層に取り付けてモジュールアセンブリを形成するステップと、f)モジュールアセンブリをラミネートするステップと、g)接続箱を電気的に接続し物理的に取り付けるステップとを含む。
【0143】
ソーラーモジュールを分解して、本明細書に記載の焼成多層スタックが以下のステップを使用して組み込まれているかどうかを判定することが可能である。バックシートと背面封止材を取り外して、太陽電池のタブ付き背面を露出させる。タブリボンと太陽電池の背面周囲に速硬化エポキシを塗布する。エポキシが硬化した後、モジュールからセルを取り出し、ダイヤモンドソーを使用してリボン/太陽電池タブを切断する。前述のイオンミルを使用して断面を研磨し、SEM/EDXを実行して、構造が本発明の実施形態に記載されているものであるかどうかを判定する。図29は、太陽電池の背面(非照射面)の研磨された断面SEM画像である。このサンプルは、ソーラーモジュールに組み込まれた太陽電池(新規の焼成多層スタックを含む)からのものであり、次いで、上記のように外された。画像は、焼成多層スタック2902に半田付けされた金属タブリボン2932及びその半田コーティング2931を示す。焼成多層スタック2902の構成層がはっきりと見て取れる。半田コーティング2931の直下には、改質インターカレーション層2945、改質金属粒子層2944、及びシリコン基板2941が存在する。図で識別された層は、EDXを用いてより容易に識別することができる。
他のPVセルのアーキテクチャ
インターカレーションペーストを用いて、多くの異なる太陽電池のアーキテクチャ(基本設計概念)の前面及び背面におけるメタライズ層として使用できる様々な焼成多層スタックを作製することができる。本明細書で開示するインターカレーションペースト及び焼成多層スタックは、BSFシリコン太陽電池、不動態化したエミッタ及びリアコンタクト(PERC)太陽電池、及び二面及び櫛形バックコンタクト太陽電池を含む太陽電池のアーキテクチャに使用することができるが、これらに限定されるものでもない。
【0144】
PERC太陽電池のアーキテクチャは、シリコン基板とバックコンタクトとの間の誘電体バリアを使用して、バックコンタクト表面再結合を低減することによってBSF太陽電池のアーキテクチャを改善する。PERCセルでは、シリコンウェハの背面の一部(即ち、非照射面)が少なくとも1つの誘電体層で不動態化され、電流キャリア再結合が低減される。本明細書に開示した新規な焼成多層スタックは、PERC太陽電池に使用可能である。一実施形態では、シリコンウェハの背面の誘電体層は、ケイ素、窒素、アルミニウム、酸素、ゲルマニウム、ハフニウム、ガリウム、これらの複合材、又はこれらの組み合わせの少なくとも1つを含む。別の実施形態では、シリコンウェハの背面の誘電体層は、シリコン表面上に厚さ10nmのアルミナ層と、アルミナ層上に厚さ75nmの窒化シリコン層とを含む。PERCセル用に設計された一般に使用されるアルミニウムペースト(例えば、単結晶EFX-39、EFX-85)は、誘電体層(単数又は複数)を貫通しない。アルミニウム粒子層が化学的に相互作用してシリコンとオーミック接触するためには、アルミニウム粒子層の堆積に先立って、誘電体層のいくつかの領域をレーザアブレーションによって除去する。
【0145】
PERL(背面が局所的に拡散した不動態化エミッタ)及びPERT(不動態化エミッタ、背面が完全に拡散したもの)は、デバイスの性能をさらに改善するPERCセルにおけるアーキテクチャの2つのバリエーションである。それら両方のバリエーションは、BSFセルの背面電界に類似した役割を果たす背面接触部での再結合をさらに抑制するために、シリコン基板の後部をドーピングすることに依存する。PERLセルでは、シリコン基板の背面は、リアアルミニウム層と接触する誘電体の開口の周りでドープされる。ドーピングは、通常、BSF製造プロセスと同様に、背面接触を構成するアルミニウム粒子からホウ素化合物又はアルミニウムを用い、誘電体開口部を通してドーパントを拡散させることによって達成される。PERTセルは同類のPERLであるが、背面誘電体層と接触するシリコン全体が、背面コンタクトと接触する誘電体開口部に隣接するシリコンに加えてドープされる。
【0146】
一実施形態では、誘電体層(単数又は複数)を貫通してエッチングしないインターカレーション粒子を含むインターカレーションペーストが、PERC、PERL、又はPERTセルの背面タブ層として使用される。「非エッチング」インターカレーションペーストは、半田付け可能な銀表面を提供するとともに、下地(改質された)アルミニウム粒子層を機械的に強化するために使用される。得られた焼成多層スタックは、少なくとも1つの誘電体層、改質アルミニウム粒子層及び改質インターカレーション層で覆われたシリコンウェハを含み、PERL又はPERTの場合、シリコンは、誘電体開口部のみ又は同様に誘電体界面全体にそれぞれドープされる。非エッチングインターカレーションペーストを使用することにより、誘電体層(単数又は複数)のエッチングをさらに低減し、表面再結合を減らすことができる。例えば、PERCセルの背面タブ層に従来使用されていたバスバーペーストを誘電体層上に直接印刷すると、誘電体層を部分的にエッチングして同時焼成中に表面再結合を増加させてしまう。
【0147】
本発明の一実施形態によれば、背面誘電体層(即ち、PERC、PERL、PERT)を使用するセルでは、インターカレーションペーストを改質誘電体層をエッチングし、誘電体開口部におけるシリコン領域の拡散ドーピングを支援することができる。「エッチング」インターカレーションペースト(例えば、表IのインターカレーションペーストD)を用いて、半田付け可能な銀表面を提供し、下地(改質)アルミニウム粒子層を機械的に強化し、誘電体層をエッチングして、シリコン表面をアルミニウム粒子に暴露すると、露出したシリコンのアルミニウムドーピングを引き起こすことができる。得られる焼成多層スタックは、シリコンウェハ、改質アルミニウム粒子層及び改質インターカレーション層を含む。この焼成多層スタックは、シリコン表面付近のAlドープ領域(BSFセルの裏面電界に類似)と、シリコンウェハと改質アルミニウム粒子層との間の界面に固体ケイ素アルミニウム共晶層とをさらに含むことができる。インターカレーションペーストを使用して誘電体層(単数又は複数)をエッチングすることは、いくつかの利点を有する。第1に、これは、過去において高価で信頼性が低いことが証明されているレーザアブレーションステップの安価な代替である。第2に、レーザアブレーションは、多くの場合、数十~数百ミクロンのシリコン基板材料を除去することができるため、ウェハの同時焼成時にシリコン基板とアルミニウム粒子層との間に大きな空孔形成をもたらす可能性がある。エッチングインターカレーションペーストは同時焼成前にウェハ表面に変動を生じさせないため、これにより結合形成が改善され、空孔形成が低減され、レーザアブレーション使用の場合よりも再現性が向上する。
【0148】
本発明の一実施形態によれば、インターカレーションペーストを使用して、アルミニウム粒子層に依存してp型シリコンとオーミック接触させるセルのアーキテクチャにおける半田付け可能な表面を提供することができる。このアーキテクチャの実施例には、相互に噛み合ったバックコンタクト太陽電池、n型BSFセル構造及び二面太陽電池が含まれる。一実施形態では、インターカレーションペーストC(表Iから)が、ゼブラ(Zebra)セルなどの櫛形裏面電極型太陽電池アーキテクチャ上のAl層に塗布される。完全にAl被覆されたセルに対して20%の電力変換効率を得たn型BSFのアーキテクチャでは、インターカレーション粒子はシリコンに直接接触する従来のリアタブAgペーストに取って代わることができ、これにより太陽電池のVocを低減する。いくつかのn型ウェハ系の太陽電池アーキテクチャでは、インターカレーションペーストを前面(即ち、照射面)に使用することができる。インターカレーションペーストは、両面太陽電池のコストを低減するために、Alペーストと併用可能である。現在、両面太陽電池アーキテクチャは、少量のアルミニウム(即ち、5重量%未満のAl)を含むAgペーストを使用して、p型シリコン層とオーミック接触させる。現在の二面体アーキテクチャでは、BSFのアーキテクチャと比較してほぼ2倍の量の銀を使用するが、これではコストが高くなる可能性がある。二重構造で純粋なアルミニウムペーストを使用することは有用であるが、Alは半田付けできない。銀を含有するインターカレーションペースト(例えば、表IのペーストC)であれば、二面設計のAlペースト上に印刷することができ、使用するAgの量を低減しながら機械的安定性と半田付け可能な表面との両方を提供する。
焼成多層スタックの材料特性とシリコン太陽電池への影響
太陽電池及び他の電子デバイスで使用するための焼成多層スタックにおける重要な材料特性には、半田付け性、剥離強度、及び接触抵抗が含まれる。
【0149】
半田付け性は、400℃未満の温度で溶融金属半田を2つの金属表面間に流すことにより、その金属表面間に強い物理的結合を形成する能力である。焼成多層スタックの改質インターカレーション層への半田付けは、大気中で650℃以上に加熱した後に行うことができる。半田付けは、溶融した半田の再流前に表面の一方又は両方を洗浄又はエッチングする任意の化学薬品であるフラックスの使用を伴う。RMA(例えば、Kester(商標)186)又はR(例えば、Kester(商標)952)と呼ばれる太陽電池に一般に使用される半田フラックスが、タブリボン上に配置され、70℃で乾燥される。これらのフラックスは、大気中で焼成されるとアルミニウム粒子上に形成されるアルミナ(Al23)などの多くの金属酸化物のエッチングには有効ではない。
【0150】
剥離強度は、半田接合強度の指標であり、集積回路、発光ダイオード及び太陽電池活用における信頼性の指標である。幅が0.8~20mmで厚さが100~300μmである半田被覆金属リボンをフラックスに浸漬して乾燥させることができる。これを改質インターカレーション層上に置き、200℃~400℃の温度で半田ごてを用いて半田付けすることができる。剥離強度とは、半田付け方向から180°の角度で、所与の剥離速度に対して半田付けしたリボンの幅で割り、剥離するのに必要な力である。この半田付けプロセスで形成される半田接合部は、1mm/秒において1N/mmより大きい平均剥離強度を有する(例えば、2mmのタブリボンは、1mm/秒で2Nより大きい剥離力を必要とする)。太陽電池は、タブリボンによって電気的に接続されており、このタブリボンは、1つのセルの前面バスバー及び隣接するセルの背面タブ層に半田付けされたものである。市販されている太陽電池のタブリボンとの接触では剥離強度が1.5~4N/mmであることが一般である。背面タブ層として焼成した多層スタックを使用する場合、一次故障モード(primary failure mode)はAl-Si界面の近くにあり、これは平面図SEM/EDXを用いて判定することができる。例示的な実施形態では、(改質インターカレーション層の)銀に富む副層が錫系タブリボンで半田付けされると、剥離強度は1N/mmを超える。
【0151】
マイヤーら(Meier et al.)は、完成した太陽電池上の各メタライズ層の抵抗率を測定するために、4点プローブの電気測定をどのように使用するかを説明している。Meierらによる「完成したセルにおける測定から直列抵抗の成分判定(Determining components of series resistance from measurements on a finished cell)」、IEEE(2006年)pp.21615を参照されたい。メタライズ層のバルク抵抗は、それが作製される材料のバルク抵抗に直接関係する。本発明の一実施形態では、純Agのバルク抵抗は1.5×10-8Ω-mであり、産業用ソーラ電池に使用される純粋なAgメタライズ層は、純粋なAgのバルク抵抗の1.5倍から5倍高いバルク抵抗を有する。バルク抵抗は、比較的長い(即ち、1cm以上の)長さにわたって電流を輸送しなければならない微細なグリッド線にとって重要である。セルがモジュール内でタブ付けされている場合、前面バスバーと背面タブ層の抵抗はあまり重要ではない。
【0152】
ほとんどの集積回路、LED及び太陽電池のアーキテクチャでは、電流は、金属粒子層から改質金属粒子層を通って、改質インターカレーション層に流れる。焼成多層スタックの場合、これらの3つの層の間の接触抵抗は、デバイス性能において重要な役割を果たすことができる。焼成多層スタックにおけるそれら層間の接触抵抗は、伝送線路測定(TLM)を使用することによって測定することができる(参考文献:Meierらによる、「銅のCu裏面バスバーテープ(Cu Backside Busbar Tape):結晶性シリコン太陽電池及びモジュールにおけるAgの除去及び完全なアルミニウムカバレッジを有用にする(Eliminating Ag and Enabling Full Al coverage in Crystalline Silicon Solar Cells and Modules)」、IEEE PVSC(2015年)pp.1-6)。このTLMは、抵抗対電極間の距離としてプロットされる。TLMは、具体的には、1)金属粒子層と改質金属粒子層との接触抵抗、2)改質金属粒子層と改質層間の接触抵抗を測定するために用いた。焼成多層スタックの接触抵抗は、上記の接触抵抗1)及び2)の合計である。焼成多層スタックの接触抵抗は、抵抗対距離測定のリニアフィットのy切片値の半分である。バスバー間の電気抵抗は、Keithley 2410 Sourcemeterを使用して、-0.5Aと+0.5Aの間で電流を供給し、電圧を測定した4点プローブ設定で測定した。様々な実施形態において、焼成多層スタックの接触抵抗は、0~5mオーム、0.25~3mオーム、0.3~1mオーム、又はここに含まれる任意の範囲である。金属粒子層のシート抵抗は、線の傾きと電極の長さの積によって決定される。接触抵抗及びシート抵抗は、転写長及びその後の接触抵抗率を数値的に判定するために使用される。直列抵抗の変動は、接触抵抗率を改質インターカレーション層の面積被覆率で割ることによって判定される。様々な実施形態において、直列抵抗の変動は、0.200Ω-cm2未満、0.100Ω-cm2未満、0.050Ω-cm2未満、0.010Ω-cm2未満、又は0.001Ω-cm2未満である。
【0153】
背面タブ層とアルミニウム粒子層との間の接触抵抗は、太陽電池の直列抵抗及び電力変換効率に影響を及ぼす可能性がある。このような接触抵抗は、伝送線路測定によって判定することができる。アルミニウム粒子層と300μmの重なりを有するシリコン上の従来の銀背面タブ層の透過線プロットを図30に示す。図31には、アルミニウム粒子層上で背面タブ層として使用される改質インターカレーション層の透過線プロットが示されている。図31のy切片値は、図30のy切片値0.88と比較して1.11mmオームである。背面タブ(インターカレーション)層とアルミニウム粒子層との間の接触抵抗は0.56mオームである。従来のリアタブ構造の接触抵抗は0.44mオームである。様々な実施形態において、背面タブ(インターカレーション)層とアルミニウム粒子層との間の接触抵抗は、0~5mオーム、0.25~3mオーム、又は0.3~1mオーム、又はここに含まれる任意の範囲である。アルミニウム層のシート抵抗は、線の傾き×電極の長さによって判定され、図30及び31では約9mオーム/平方である。
【0154】
TLMは、焼成多層スタック(即ち、背面タブ層及びアルミニウム粒子層)の接触抵抗を正確に抽出するための好ましい方法であり、4点プローブ法を用いて完全な太陽電池の接触抵抗を測定することが可能である。この方法は、最初に2つの背面タブ層(RAg-to-Ag)間の抵抗を測定し、続いて、プローブをアルミニウム粒子層上(背面タブ層の1mm以内で)に移動させてRAl-Alを取得する。この接触抵抗は、RAl-to-AlからRAg-to-Agを引いて2で割ることによって特定される。これは、TLM測定ほど正確ではないが、複数の太陽電池からの測定値を平均すると、0.50mオーム以内に近似させることができる。
【0155】
接触抵抗及びシート抵抗は、転写長及びその後の接触抵抗率を数値的に特定するために使用される。図31において、同時焼成後の多層スタックの転写長は5mmであり、接触抵抗は2.2mΩである。直列抵抗の変動は、この数をインターカレーション層の面積被覆率で割ることによって推定することができる。図31において、直列抵抗の推定変動は0.023Ω-cm2であり、これは図30で測定した従来の背面タブ層について計算した直列抵抗0.020Ω-cm2の推定変動に等しい。直列抵抗の変動は、完全なAlカバレッジ及び背面タブ層のない制御BSF(裏面電界)シリコン太陽電池を製造し、完全なアルミニウムカバレッジ及びAg:Biインターカレーション層を有するBSFシリコン太陽電池を製造することによって直接測定することができる。セルの直列抵抗は、様々な光強度下での電流-電圧曲線を介して導き出すことができ、直列抵抗の差は、リアタブと焼成アルミニウム粒子層との間の接触抵抗の増加に帰することができる。様々な実施形態において、太陽電池における直列抵抗の変動は、0.200Ω-cm2未満、0.100Ω-cm2未満、0.050Ω-cm2未満、0.010Ω-cm2未満、又は0.001Ω-cm2未満である。
【産業上の利用可能性】
【0156】
シリコン太陽電池上にインターカレーション層を使用することの1つの利点は、シリコンウェハにおける連続的な裏面電界形成によって生じる開回路電圧(Voc)の改善である。両方のデバイスが同じリアバスバー表面積を有する場合、本明細書に記載されるように、従来のBSF太陽電池をAg:Biインターカレーションペーストを含むBSF太陽電池と比較することにより、Voc利得を直接測定することができる。従来のBSFシリコン太陽電池は、銀系のリアタブペーストがシリコンウェハ上に直接印刷され、アルミニウム粒子層によって取り囲まれて製造される。インターカレーション層(例えば、インターカレーションペーストCを使用して製造されたもの)は、完全なアルミニウム表面被覆率を有するシリコン太陽電池に使用することができる。両方の太陽電池のVocは、1つの太陽光強度下で電流-電圧試験によって測定される。リアタブ表面積が5cm2を超える太陽電池の場合、インターカレーショ層を使用して従来のシリコンのアーキテクチャ上の背面タブ層と比較すると、Vocを少なくとも0.5mV、少なくとも1mV、少なくとも2mV、又は少なくとも4mV増加させることができる。最後に、短絡電流密度(Jsc)及びフィルファクタは、従来のリアタブブ設計の代わりにインターカレーション層のアーキテクチャを使用する場合にも改善され得る。銀はp型シリコンとオーミック接触しない。p型シリコンの直上に存在する銀のタブ層は、完全又は不完全な太陽電池上でエレクトロルミネッセンス又はフォトルミネセンス測定を行うことによって推定できる電流収集を減少させる。Jscの増加は、インターカレーションのアーキテクチャと背面タブ層とをシリコン上で直接試験することによっても測定することができる。もう1つの利点はフィルファクタの増加であり、これはVocの増加、接触抵抗の減少、及び/又は太陽電池の背面上における再結合ダイナミクスの変動により積極的に変更可能である。
【0157】
本明細書に記載された発明は、異なる装置、材料及び装置によって実施することができ、装置及び操作手順の両方に関する様々な変更を、本発明そのものの範囲から逸脱することなく達成することができることを理解されたい。
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