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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20220117BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220117BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20220117BHJP
   C08F 210/16 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
B65D65/40 D
B32B27/32 E
C08F210/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019504629
(86)(22)【出願日】2018-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2018008712
(87)【国際公開番号】W WO2018164169
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2020-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2017045771
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】越智 直子
(72)【発明者】
【氏名】安永 智和
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-118576(JP,A)
【文献】国際公開第2016/133012(WO,A1)
【文献】特表平08-502532(JP,A)
【文献】特開平10-237187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
B32B 27/00-27/42
C08F 210/16
B65D 65/40
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成分を含むフィルムであって、
樹脂密度が920kg/m以上930kg/m以下であり、
少なくとも一方のフィルム表面の表面粗さ曲線の切断レベル50%における負荷長さ率(Tp(50))が0.01%以上29.0%以下であり、
下記成分(A)と下記成分(B)とを含み、
成分(A)の含有量が、フィルムの樹脂成分100重量%に対して、1重量%以上30重量%以下であり、成分(B)の含有量が、フィルムの樹脂成分100重量%に対して、50重量%以上99重量%以下である、フィルム。

成分(A):
エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有し、密度が915kg/m3以上950kg/m3以下であり、MFRが0.0001g/10分以上0.2g/10分以下であり、温度190℃におけるゼロせん断粘度が1×10Pa・sec以上1×10Pa・sec以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体
成分(B):
エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有し、密度が890kg/m以上930kg/m以下であり、MFRが0.5g/10分以上5g/10分以下であり、MFRRが10以上30以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体。
【請求項2】
少なくとも一方のフィルム表面の表面粗さ曲線の切断レベル50%における負荷長さ率(Tp(50))が、0.05%以上26%以下である、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
滑剤および/またはアンチブロッキング剤の含有量が200重量ppm以下である、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルムからなる層αを含む多層フィルムであって、
該多層フィルムが有する2つの表面層のうち、少なくとも一方の表面層が、層αである多層フィルム。
【請求項5】
エチレン系重合体を含む層β(ただし、層βは層αとは異なる)を含む、請求項4に記載の多層フィルム。
【請求項6】
エチレン系重合体を含まない層γ(ただし、層γは層αとは異なる)を含む、請求項4または5に記載の多層フィルム。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載のフィルムを含む包装容器。
【請求項8】
請求項4~6のいずれか一項に記載の多層フィルムを含む包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムおよび該フィルムを含む包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エチレン-α-オレフィン共重合体および高圧ラジカル重合法により得られる低密度ポリエチレンを含有する樹脂組成物からなるフィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-181173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のエチレン-α-オ レフィン共重合体を含有するフィルムは、滑り性が十分ではなかった。
【0005】
かかる状況のもと、本発明が解決しようとする課題は、滑り性に優れるフィルムおよびエチレン系重合体への少ない添加量で、エチレン系重合体からなるフィルムの滑り性を向上させることができるエチレン-α-オレフィン共重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記[1]~[18]を提供する。
[1] 樹脂成分を含むフィルムであって、
樹脂密度が900kg/m以上930kg/m以下であり、
少なくとも一方のフィルム表面の表面粗さ曲線の切断レベル50%における負荷長さ率(Tp(50))が0.01%以上29.0%以下であるフィルム。
[2] 樹脂密度が900kg/m以上920kg/m未満である[1]に記載のフィルム。
[3] 樹脂密度が920kg/m以上930kg/m以下である[1]に記載のフィルム。
[4] 少なくとも一方のフィルム表面の表面粗さ曲線の切断レベル50%における負荷長さ率(Tp(50))が、0.05%以上26%以下である[1]~[3]のいずれか一つに記載のフィルム。
[5] 滑剤および/またはアンチブロッキング剤の含有量が200重量ppm以下である[1]~[4]のいずれか一つに記載のフィルム。
[6] [1]~[5]のいずれか一つに記載のフィルムからなる層αを含む多層フィルムであって、
該多層フィルムが有する2つの表面層のうち、少なくとも一方の表面層が、層αである多層フィルム。
[7] エチレン系重合体を含む層β(ただし、層βは層αとは異なる)を含む[6]に記載の多層フィルム。

[8] エチレン系重合体を含まない層γ(ただし、層γは層αとは異なる)を含む[6]または[7]に記載の多層フィルム。
[9] [1]~[5]のいずれか一つに記載のフィルムを含む包装容器。
[10] [6]~[8]のいずれか一つに記載の多層フィルムを含む包装容器。
[11] エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有し、密度が915kg/m3以上950kg/m3以下であり、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートが0.0001g/10分以上0.2g/10分以下であり、温度190℃におけるゼロせん断粘度が1×10Pa・sec以上1×10Pa・sec以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体。
[12] [11]に記載のエチレン-α-オレフィン共重合体である成分(A)と、下記成分(B)とを含有するエチレン系樹脂組成物であって、
成分(A)と成分(B)の合計量を100重量%に対して、成分(A)の含有量が1重量%以上30重量%以下であるエチレン系樹脂組成物。
成分(B):エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを含有し、密度が890kg/m以上930kg/m以下であり、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートが0.5g/10分以上5g/10分以下であり、下記メルトフローレート比が10以上30以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体。
メルトフローレート比:温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートに対する、温度190℃、荷重211.82Nの条件で測定されるメルトフローレートの比。
[13] さらに下記成分(C)を含有する[12]に記載のエチレン系樹脂組成物であって、
成分(A)と成分(B)と成分(C)の合計量を100重量%に対して、
成分(C)の含有量が1重量%以上50重量%以下である[8]に記載のエチレン系樹脂組成物。
成分(C):下記成分(D)および下記成分(E)からなる群より選ばれる一種以上のエチレン系重合体
成分(D):密度が890kg/m以上930kg/m以下であり、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートが0.5g/10分以上5g/10分以下であり、下記メルトフローレート比が31以上150以下である高圧法低密度ポリエチレン
成分(E):エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有し、密度が890kg/m以上930kg/m以下であり、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートが0.5g/10分以上5g/10分以下であり、下記メルトフローレート比が31以上150以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体
メルトフローレート比:温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートに対する、温度190℃、荷重211.82Nの条件で測定されるメルトフローレートの比。
[14] 滑剤および/またはアンチブロッキング剤の含有量が200重量ppm以下である[12]または[13]に記載のエチレン系樹脂組成物。
[15] [12]~[14]のいずれか一つに記載のエチレン系樹脂組成物を含むフィルム。
[16] [12]~[14]のいずれか一つに記載のエチレン系樹脂組成物を含む層と、エチレン系重合体を含む層とを有する多層フィルムであって、
該多層フィルムが有する2つの表面層のうち、少なくとも一方の表面層が、[12]~[14]のいずれか一つに記載のエチレン系樹脂組成物からなる層である多層フィルム。
[17] [12]~[14]のいずれか一項に記載のエチレン系樹脂組成物からなる層と、エチレン系重合体を含まない層とを有する多層フィルムであって、
該多層フィルムが有する2つの表面層のうち、少なくとも一方の表面層が、[12]~[14]のいずれか一項に記載のエチレン系樹脂組成物からなる層である多層フィルム。
[18] フィルムの滑り性を向上させるための、[11]に記載のエチレン-α-オレフィン共重合体の使用。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、滑り性に優れるフィルムを提供することができる。また、本発明のエチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレン系重合体への少ない添加量で、エチレン系重合体からなるフィルムの滑り性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[定義]
本明細書において、下記の用語は次のように定義されるか、または説明される。
「エチレン系重合体」とは、エチレンに基づく単量体単位を有する重合体であって、該重合体の全重量を100重量%に対して、エチレンに基づく単量体単位の含有量が50重量%以上である重合体である。
「エチレン-α-オレフィン共重合体」とは、エチレンに基づく単量体単位とのα-オレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体であって、該共重合体の全重量を100重量%に対して、エチレンに基づく単量体単位とα-オレフィンに基づく単量体単位との合計量が95重量%以上である共重合体である。
「α-オレフィン」とは、α位に炭素-炭素不飽和二重結合を有する直鎖状または分岐状のオレフィンである。
「エチレン系樹脂組成物」とは、エチレン系重合体を含有する組成物をいう。
「高圧法低密度ポリエチレン」とは、100~400MPaの圧力下でラジカル重合によりエチレン、もしくはエチレンと少量の共重合成分とを重合して製造される密度が930kg/m以下の重合体をいう。
「滑剤」とは、それが加えられる材料の摩擦係数を低下させる作用を有する剤をいう。
「アンチブロッキング剤」とは、フィルムの保存中又は使用中にフィルム同士が互着、粘着または融着して剥がれなくなるのを防止する機能を有する剤をいう。
【0009】
本明細書における密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980に規定されたA法に従い測定される値である。
本明細書におけるメルトフローレート(以下、MFRと記載することがある;単位はg/10分である)は、JIS K7210-1995に規定された方法に従い、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定される値である。
本明細書におけるメルトフローレート比(以下、MFRRと記載することがある)は、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定されるメルトフローレートに対する、温度190℃、荷重211.82Nの条件で測定されるメルトフローレートの比である。
本明細書において、数平均分子量(以下、Mnと記載することがある)、重量平均分子量(以下、Mwと記載することがある)、z平均分子量(以下、Mzと記載することがある)は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法により求められる。また、GPC測定は、次の条件(1)~(8)で行う。
(1)装置:Waters製Waters150C
(2)分離カラム:TOSOH TSKgelGMH-HT
(3)測定温度:140℃
(4)キャリア:オルトジクロロベンゼン
(5)流量:1.0mL/分
(6)注入量:500μL
(7)検出器:示差屈折
(8)分子量標準物質:標準ポリスチレン
【0010】
<フィルム>
本発明に係るフィルムは、樹脂成分を含む。
フィルムの樹脂密度が900kg/m以上930kg/m以下であり、少なくとも一方のフィルム表面の表面粗さ曲線の切断レベル50%における負荷長さ率(Tp(50))が0.01%以上29.0%以下であるフィルムである。
【0011】
本明細書において、「樹脂密度」とは、該フィルムに含まれる樹脂成分の密度をいう。フィルムは、無機成分を含んでいてもよい。フィルムが無機成分を含まない場合は、フィルムの密度をフィルムの樹脂密度とする。樹脂成分と無機成分とからなるフィルムである場合、フィルムの樹脂密度は、フィルムから無機物を除いた樹脂成分の密度である。
樹脂成分とは、フィルム中の無機成分以外の成分をいう。
【0012】
本発明に係るフィルムは、少なくとも一方のフィルム表面の表面粗さ曲線の切断レベル50%における負荷長さ率(Tp(50))が0.01%以上29.0%以下である。
表面粗さ曲線の負荷長さ率は、JIS B0601-1994に規定された方法に従い求められる。切断レベル50%における負荷長さ率(Tp(50))は、JIS B0601-1994に記載の切断レベルcを50%にすることで求められる。
Tp(50)はフィルム表面の粗さを表す指標である。Tp(50)の値が小さい場合は、フィルム表面の凹凸は疎に分散していることを表す。
【0013】
フィルムのTp(50)は、0.05%以上26%以下であることが好ましく、0.1%以上23%以下であることがより好ましく、0.5%以上20%以下であることがさらに好ましい。
【0014】
滑り性の観点から、フィルムのJIS B0601-1994に規定される方法により求められる算術平均粗さRaは、0.01μm以上1μm以下であることが好ましく、0.02μm以上0.5μm以下であることがより好ましく、0.03μm以上0.2μm以下であることがさらに好ましい。
滑り性の観点から、フィルムのJIS B0601-1994に規定される方法により求められる最大高さ粗さRyは、0.1μm以上5μm以下であることが好ましく、0.2μm以上2μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上1.5μm以下であることがさらに好ましい。
【0015】
本発明の一態様として、樹脂密度が900kg/m以上920kg/m未満であり、フィルムの表面の表面粗さ曲線の切断レベル50%における負荷長さ率(Tp(50))が0.01%以上29.0%以下であるフィルムが挙げられる。該フィルムは、低温ヒートシール性に優れる。
【0016】
本発明の一態様として、樹脂密度が920kg/m以上930kg/m以下であり、フィルムの表面の表面粗さ曲線の切断レベル50%における負荷長さ率(Tp(50))が0.01%以上29.0%以下であるフィルムが挙げられる。該フィルムは、滑り性により優れる。
【0017】
フィルムは、例えば、下記成分(A)と下記成分(B)とを含むことが好ましい。
成分(A):エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有し、密度が915kg/m3以上950kg/m3以下であり、MFRが0.0001g/10分以上0.2g/10分以下であり、温度190℃におけるゼロせん断粘度が1×10Pa・sec以上1×10Pa・sec以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体。
成分(B):エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有し、密度が890kg/m以上930kg/m以下であり、MFRが0.5g/10分以上5g/10分以下であり、MFRRが10以上30以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体。
フィルム中の成分(A)の含有量は、フィルムの樹脂成分100重量%に対して、1重量%以上30重量%以下であることが好ましく、2重量%以上20重量%以下であることがより好ましく、3重量%以上15重量%以下であることがさらに好ましい。
フィルム中の成分(B)の含有量は、フィルムの樹脂成分100重量%に対して、50重量%以上99重量%以下であることが好ましく、55重量%以上97重量%以下であることがより好ましく、60重量%以上95重量%以下であることがさらに好ましい。
【0018】
フィルムは、さらに下記成分(C)を含むことが好ましい。
成分(C):密度が890kg/m以上930kg/m以下であり、MFRが0.5g/10分以上5g/10分以下であり、MFRRが31以上150以下である高圧法低密度ポリエチレン(以下、成分(D)と記載することがある)、および、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有し、密度が890kg/m以上930kg/m以下であり、MFRが0.5g/10分以上5g/10分以下であり、MFRRが31以上150以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体(以下、成分(E)と記載することがある)からなる群より選ばれる一種以上のエチレン系重合体で。
フィルム中の成分(C)の含有量は、フィルムの樹脂成分100重量%に対して、1重量%以上50重量%以下が好ましく、5重量%以上40重量%以下がより好ましく、10重量%以上30重量%以下がさらに好ましい。
【0019】
フィルム中の成分(A)、成分(B)または成分(C)の含有量もしくは密度を調整することによって、フィルムの樹脂密度を制御することができる。
フィルムの樹脂成分100重量%に対して、成分(A)の含有量を5重量%以上20重量%以下、成分(B)の含有量を65重量%以上95重量%以下および成分(C)の含有量を0重量%以上15重量%以下とすることで、フィルムの樹脂密度を900kg/m以上930kg/m以下とすることができる。
フィルムに含有される成分(A)の密度を900kg/m以上930kg/m以下、成分(B)の密度を900kg/m以上930kg/m以下、成分(C)の密度を900kg/m以上930kg/m以下とすることで、フィルムの樹脂密度を900kg/m以上930kg/m以下とすることができる。
フィルムに含有される成分(A)の密度を900kg/m以上928kg/m以下、成分(B)の密度を900kg/m以上915kg/m以下、成分(C)の密度を900kg/m以上928kg/m以下とすることで、フィルムの樹脂密度を900kg/m以上920kg/m未満とすることができる。
フィルムに含有される成分(A)の密度を922kg/m以上930kg/m以下、成分(B)の密度を919kg/m以上930kg/m以下、成分(C)の密度を922kg/m以上930kg/m以下とすることで、フィルムの樹脂密度を920kg/m以上930kg/m以下とすることができる。
【0020】
フィルムに含まれる成分(A)の含有量を調整すること、フィルム製膜時のダイのリップギャップを調整すること、またはフィルムの引取り速度を調整することによって、フィルムのTp(50)を制御することができる。
フィルムの樹脂成分100重量%に対して、成分(A)の含有量を5~20重量%とすることによって、フィルムのTp(50)を0.01%以上29.0%以下とすることができる。
【0021】
フィルムは、滑剤および/またはアンチブロッキング剤を含んでいてもよい。
さらに、添加剤として、例えば、酸化防止剤、中和剤、耐候剤、帯電防止剤、防曇剤、無滴剤、顔料またはフィラーを含んでいてもよい。
フィルムは、滑剤および/またはアンチブロッキング剤の含有量が200重量ppm以下であることが好ましい。フィルム中の滑剤および/またはアンチブロッキング剤の含有量は、100重量ppm以下であることがより好ましく、50重量ppm以下であることがさらに好ましく、30重量ppm以下であることが特に好ましい。フィルムは、滑剤および/またはアンチブロッキング剤を実質的に含有しないことが好ましい。
【0022】
滑り性の観点から、本発明に係るフィルムのヘイズが4~18%であることが好ましい。 ヘイズは、ASTM D1003に規定された方法に従い測定される。
外部ヘイズは、ヘイズと内部ヘイズとの差である。内部ヘイズは、石英ガラス製のセル中にジメチルフタレートを満たし、ジメチルフタレート中にフィルムを沈めた状態で、ASTM D1003に規定された方法に従い測定される。外部ヘイズは、フィルム表面の粗さを表す指標である。
【0023】
本発明に係るフィルムは、
樹脂密度が900kg/m以上930kg/m以下であり、表面粗さ曲線の切断レベル50%における負荷長さ率(Tp(50))が0.01%以上29.0%以下である単層フィルムであってもよい。
【0024】
<多層フィルム>
本願発明に係る多層フィルムは、
樹脂密度が900kg/m以上930kg/m以下であり、表面粗さ曲線の切断レベル50%における負荷長さ率(Tp(50))が0.01%以上29.0%以下であるフィルムからなる層(以下、層αと記載することがある)を含む多層フィルムであって、多層フィルムが有する2つの表面層のうち、すくなくとも一方の表面層が、層αである多層フィルムであってもよい。
本発明の一態様は、層αと、エチレン系重合体を含む層β(ただし、層βは層αとは異なる)とを有する多層フィルムであって、
該多層フィルムが有する2つの表面層のうち、少なくとも一方の表面層が、層αである多層フィルムであってもよい。
【0025】
本発明の一態様は、層αと、エチレン系重合体を含まない層γ(ただし、層γは前記層αとは異なる)とを有する多層フィルムであって、
該多層フィルムが有する2つの表面層のうち、少なくとも一方の表面層が、層αである多層フィルムであってもよい。
【0026】
前記多層フィルムにおいて、層βに含まれるエチレン系重合体としては、例えば、高圧法低密度ポリエチレン、成分(A)を含まないエチレン-α-オレフィン共重合体が挙げられる。
【0027】
前記多層フィルムにおいて、層γを構成する材料としては、例えば、セロハン、紙、板紙、織物、アルミニウム箔、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂が挙げられる。
【0028】
層αと、層γとを有する多層フィルムであって、該多層フィルムが有する2つの表面層のうち、少なくとも一方の表面層が、層αである多層フィルムとしては、例えば、層αと層γとを有する二層フィルムであって、一方の表面層が、層αであり、他方の表面層が層γである二層フィルムが挙げられる。
層αと層γとを有する多層フィルムであって、該多層フィルムが有する2つの表面層のうち、少なくとも一方の表面層が、層αである多層フィルム様としては、例えば、層α、層βおよび層γとを有する多層フィルムであって、一方の表面層が、層αであり、他方の表面層が層γである多層フィルムが挙げられる。
【0029】
単層フィルムおよび多層フィルムの製造方法としては、例えば、インフレーションフィルム成形法やTダイフィルム成形法などの押出成形法、射出成形法、圧縮成形法が挙げられる。単層フィルムおよび多層フィルムの製造方法は、インフレーションフィルム成形法が好ましい。
【0030】
多層フィルムが、層αと、層γとを有する多層フィルムである場合、該多層フィルムの製造方法としては、例えば、層αのみからなる単層フィルム、または、層αと層βとを有する多層フィルムを、層γにラミネートするラミネーション法が挙げられる。ラミネーション法としては、例えば、ドライラミネート法、ウェットラミネート法およびサンドラミネート法が挙げられる。ラミネーション法は、ドライラミネート法が好ましい。
【0031】
本発明の多層フィルムは、包装容器として使用することができ、種々の内容物の包装に用いられる。内容物としては、例えば、食品、飲料、調味料、乳等、乳製品、医薬品、半導体製品等電子部品、ペットフード、ペットケア用品、洗剤およびトイレタリー用品が挙げられる。
【0032】
<成分(A)>
成分(A)中の炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位を形成する炭素原子数3~20のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、および4-メチル-1-ヘキセンが挙げられる。成分(A)は、これらの炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位を一種のみ有してもよく、2種以上有してもよい。炭素原子数3~20のα-オレフィンは、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、または1-オクテンであることが好ましく、1-ヘキセン、または1-オクテンであることがより好ましい。
【0033】
成分(A)中のエチレンに基づく単量体単位の含有量は、成分(A)の全重量を100重量%に対して、80~97重量%であることが好ましい。またα-オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、成分(A)の全重量を100重量%に対して、3~20重量%であることが好ましい。
【0034】
成分(A)は、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン以外の単量体に基づく単量体単位を有していてもよい。エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン以外の単量体としては、例えば、ブタジエンまたはイソプレン等の共役ジエン;1,4-ペンタジエン等の非共役ジエン;アクリル酸;アクリル酸メチルまたはアクリル酸エチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸;メタクリル酸メチルまたはメタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル;および酢酸ビニルが挙げられる。
【0035】
成分(A)は、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数4~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体であることが好ましく、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数5~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体であることがより好ましく、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数6~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体であることがさらに好ましい。
【0036】
成分(A)としては、例えば、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-ブテン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、およびエチレン-1-ブテン-1-オクテン共重合体が挙げられる。成分(A)は、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-ブテン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン-1-オクテン共重合体、またはエチレン-1-ブテン-1-オクテン共重合体であることが好ましく、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、またはエチレン-1-ブテン-1-オクテン共重合体であることがより好ましく、エチレン-1-ヘキセン共重合体、またはエチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体であることがさらに好ましい。
【0037】
成分(A)の密度は、フィルムの滑り性をより向上させる観点から、918kg/m3以上であることが好ましく、921kg/m3以上であることがより好ましく、924kg/m3以上であることがさらに好ましい。成分(A)の密度は、フィルムのフィッシュアイのような外観不良を低減する観点から、945kg/m3以下であることが好ましく、940kg/m3以下であることがより好ましく、930kg/m3以下であることがさらに好ましい。
一つの態様において、成分(A)の密度は、918kg/m3以上945kg/m3以下であり、他の態様において、成分(A)の密度は、921kg/m3以上940kg/m3以下であり、更に他の態様において、成分(A)の密度は、924kg/m3以上930kg/m3以下である。
【0038】
成分(A)のMFRは、フィルムの製膜時の押出負荷を低減する観点から、0.0005g/10分以上であること好ましく、0.001g/10分以上であることがより好ましい。成分(A)のMFRは、フィルムの滑り性をより向上させる観点から、0.1g/10分以下であることが好ましく、0.08g/10分以下であることがより好ましく、0.05g/10分以下であることがさらに好ましい。
一つの態様において、成分(A)のMFRは、0.0005g/10分以上0.1g/10分以下であり、他の態様において、成分(A)のMFRは、0.001g/10分以上0.08g/10分以下であり、更に他の態様において、成分(A)のMFRは、0.003g/10分以上0.05g/10分以下である。なお、成分(A)のMFRの測定では、通常、成分(A)に酸化防止剤を1000ppm程度配合した試料を用いる。
【0039】
成分(A)の温度190℃におけるゼロせん断粘度(以下、ηと表記する;単位はPa・secである。)は、フィルムの滑り性をより向上させる観点から、2×10Pa・sec以上であることが好ましく、3×10Pa・sec以上であることがより好ましく、5×10Pa・sec以上であることがさらに好ましい。成分(A)のηは、フィルムの製膜時の押出負荷を低減する観点から、5×10Pa・sec以下であることが好ましく、3×10Pa・sec以下であることがより好ましく、1×10Pa・sec以下であることがさらに好ましい。
一つの態様において、成分(A)のηは、2×10Pa・sec以上5×10Pa・sec以下であり、他の態様において、成分(A)のηは、3×10Pa・sec以上3×10Pa・sec以下であり、更に他の態様において、成分(A)のηは、5×10Pa・sec以上1×10Pa・sec以下である。
【0040】
成分(A)は、後述の助触媒担体(以下、成分(H)と記載する。)とメタロセン系錯体と有機アルミニウム化合物と電子供与性化合物とを接触させることにより得られる重合触媒の存在下、スラリー重合法、または、気相重合法で、エチレンとα-オレフィンとを共重合することにより得られる。該共重合では、該重合触媒の有機アルミニウム化合物100mol%に対して、電子供与性化合物の比率を2~50mol%とし、かつ、エチレン100mol%に対して水素の比率を0.01~1.1mol%とすることにより、得られる成分(A)のηを1×10Pa・sec以上1×10Pa・sec以下とすることができる。
【0041】
温度190℃におけるηは、下記式(1)で表されるCarreau―Yasudaモデルを非線形最小二乗法により、測定温度190℃におけるせん断粘度(η*;単位はPa・secである。)-角周波数(ω、単位はrad/secである)曲線にフィッティングさせることにより算出される値である。
η*=η(1+(λω)(n-1)/a (1)
λ: 時定数 (Time constant)
a:幅パラメータ (Breadth parameter)
n:べき乗則インデックス (Power-Law index)
せん断粘度測定は、粘弾性測定装置(例えば、レオメトリックス社製Rheometrics社製Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS800など。)を用い、通常、ジオメトリー:パラレルプレート、プレート直径:25mm、測定試料の厚み:約2.0mm、角周波数:0.1~100rad/sec、測定点:ω一桁当たり5点の条件で行われる。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、3~10%の範囲で適宜選択する。測定試料は、150℃の熱プレス機により2MPaの圧力で5分間プレスした後、30℃の冷却プレス機により5分間冷却して、厚さ2mmにプレス成形することにより調製される。
【0042】
成分(A)の流動の活性化エネルギー(以下、Eaと表記する;単位はkJ/molである。)は、フィルムの滑り性をより向上させる観点から、50kJ/mol以上であることが好ましく、60kJ/mol以上であることがより好ましく、70kJ/mol以上であることがさらに好ましい。また、フィルムの製膜時の押出負荷を低減する観点から、成分(A)のEaは、120kJ/mol以下であることが好ましく、110kJ/mol以下であることがより好ましく、100kJ/mol以下であることがさらに好ましい。一つの態様において、成分(A)のEaは、50kJ/mol以上120kJ/mol以下であり、他の態様において、成分(A)のEaは、60kJ/mol以上110kJ/mol以下であり、更に他の態様において、成分(A)のEaは、70kJ/mol以上100kJ/mol以下である。
【0043】
流動の活性化エネルギー(Ea)は、温度-時間重ね合わせ原理に基づいて、190℃での溶融複素粘度(単位はPa・secである。)の角周波数(単位はrad/secである。)への依存性を示すマスターカーブを作成する際のシフトファクター(aT)からアレニウス型方程式により算出される数値である。Eaは、以下の方法により求められる値である。130℃、150℃、170℃および190℃それぞれの温度(Tと表記する;単位:℃)におけるエチレン-α-オレフィン共重合体の溶融複素粘度-角周波数曲線を、温度-時間重ね合わせ原理に基づいて、各温度(T)での溶融複素粘度-角周波数曲線に、190℃でのエチレン-α-オレフィン共重合体の溶融複素粘度-角周波数曲線に重ね合わせた際に得られる各温度(T)でのシフトファクター(aT)を求める。各温度(T)と、各温度(T)でのシフトファクター(aT)とから、最小二乗法により[ln(aT)]と[1/(T+273.16)]との一次近似式(下記(I)式)を算出し、一次式の傾きmと下記式(II)とからEaを求める。
ln(aT) = m(1/(T+273.16))+n (I)
Ea = |0.008314×m| (II)
T :シフトファクター
Ea:流動の活性化エネルギー(単位:kJ/mol)
T :温度(単位:℃)
上記計算には、市販の計算ソフトウェアを用いてもよい。計算ソフトウェアとしては、例えば、Rheometrics社製 Rhios V.4.4.4などが挙げられる。
なお、シフトファクター(aT)は、それぞれの温度(T)における溶融複素粘度の常用対数をX軸とし、角周波数の常用対数をY軸としてプロットして溶融複素粘度-角周波数の両対数曲線を作成し、130℃、150℃および170℃での溶融複素粘度-角周波数の両対数曲線をそれぞれX軸方向に移動させて、190℃での溶融複素粘度-角周波数の両対数曲線に重ね合わせた際の移動量である。該重ね合わせでは、各温度(T)における溶融複素粘度-角周波数の両対数曲線を、角周波数をaT倍に、溶融複素粘度を1/aT倍に移動させる。また、130℃、150℃、170℃および190℃の4点の値から(I)式を最小二乗法で求めるときの相関係数は、通常、0.99以上である。
【0044】
溶融複素粘度-角周波数曲線の測定は、粘弾性測定装置(例えば、Rheometrics社製Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS-800など。)を用い、通常、ジオメトリー:パラレルプレート、プレート直径:25mm、プレート間隔:1.5~2mm、ストレイン:5%、角周波数:0.1~100rad/秒の条件で行われる。なお、測定は窒素雰囲気下で行われ、また、測定試料には予め酸化防止剤を適量(例えば1000ppm。)を配合することが好ましい。
【0045】
成分(A)の、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(以下、Mw/Mnと表記する。)は、フィルムの滑り性をより向上させる観点から、6.0以上であることが好ましく、6.5以上であることがより好ましく、7.0以上であることがさらに好ましい。成分(A)のMw/Mnは、フィルムの製膜時の押出負荷を低減する観点から、15以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。成分(A)のMw/Mnは、6.0以上15以下であることが好ましく、6.5以上12以下であることがより好ましく、7.0以上10以下であることがさらに好ましい。
【0046】
成分(A)の、重量平均分子量に対するz平均分子量の比(以下、Mz/Mwと表記する。)は、フィルムの滑り性をより向上させる観点から、2.0以上であることが好ましく、2.1以上であることがより好ましく、2.2以上であることがさらに好ましい。成分(A)のMz/Mwは、フィルムのフィッシュアイのような外観不良を低減する観点から、5以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、3以下であることがさらに好ましい。成分(A)のMz/Mwは、2.0以上5以下であることが好ましく、2.1以上4以下であることがより好ましく、2.2以上3以下であることがさらに好ましい。
【0047】
成分(A)の引張衝撃強度(単位はkJ/mである。)は、フィルムの機械強度を高める観点から、400kJ/m以上であることが好ましく、500kJ/m以上であることがより好ましく、600kJ/m以上であることがさらに好ましい。また、フィルムを含む包装容器の開封性を高める観点から、2000kJ/m以下であることが好ましく、1800kJ/m以下であることがより好ましく、1500kJ/m以下であることがさらに好ましい。成分(A)の引張衝撃強度は、400kJ/m以上で2000kJ/m以下あることが好ましく、500kJ/m以上1800kJ/m以下であることがより好ましく、600kJ/m以上1500kJ/m以下であることがさらに好ましい。
成分(A)の引張衝撃強度は、ASTM D1822-68に従って、成形温度190℃、予熱時間10分、圧縮時間5分、圧縮圧力5MPaの条件で圧縮成形された厚み2mmのシートで測定される。
重合時のエチレンとα-オレフィンの比率を調整することにより、成分(A)の引張衝撃強度を調節することができる。エチレンに対するα-オレフィンの比率を増加させると、成分(A)の引張衝撃強度は大きくなり、比率を減少させると、成分(A)の引張衝撃強度は小さくなる。
エチレンと共重合させるα-オレフィンの炭素原子数を調整することによっても、成分(A)の引張衝撃強度を調節することができる。α-オレフィンの炭素原子数を増加させると、成分(A)の引張衝撃強度は大きくなり、炭素原子数を減少させると、成分(A)の引張衝撃強度は小さくなる。
【0048】
成分(A)の極限粘度(以下、[η]と表記する;単位はdl/gである。)は、フィルムの滑り性をより向上させる観点から、1.0dl/g以上であることが好ましく、1.2dl/g以上であることがより好ましく、1.3dl/g以上であることがさらに好ましい。成分(A)の[η]は、フィルムのフィッシュアイのような外観不良を低減する観点から、2.0dl/g以下であることが好ましく、1.9dl/g以下であることがより好ましく、1.7dl/g以下であることがさらに好ましい。成分(A)の[η]は、1.0dl/g以上2.0dl/g以下であることが好ましく、1.2dl/g以上1.9dl/g以下であることがより好ましく、1.3dl/g以上1.7dl/g以下であることがさらに好ましい。成分(A)の[η]は、テトラリンを溶媒として用い、温度135℃でウベローデ型粘度計を用いて測定される。
【0049】
成分(A)の溶融張力(以下、MTと表記する;単位はcNである。)は、フィルムをインフレーション製膜法にて製膜する際のバブルの安定性を高める観点から、7以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましく、9以上であることがさらに好ましく、10以上であることが特に好ましい。成分(A)のMTは、フィルムをインフレーション製膜法にて製膜する際のフィルム引取り性を高める観点から、30以下であることが好ましく、25以下であることがより好ましく、20以下であることがさらに好ましい。成分(A)のMTは、7以上30以下であることが好ましく、8以上25以下であることがより好ましく、9以上20以下であることがさらに好ましく、10以上20以下であることが特に好ましい。エチレンとα-オレフィンとを重合する際の、エチレンに対する水素の比を調整することにより、成分(A)のMTを調節することができる。スラリー重合では、エチレンに対する水素の比を0.3~1.1mol%に制御することで、成分(A)のMTを7以上30以下とすることができる。ガス重合では、エチレンに対する水素の比を0.1~0.8mol%に制御することで、成分(A)のMTを7以上30以下とすることができる。
【0050】
溶融張力は以下の条件で測定される。
株式会社東洋精機製作所製 メルトテンションテスターを用いて、温度190℃で、直径9.5mmのバレルに充填した溶融樹脂を、ピストン降下速度5.5mm/分(剪断速度7.4sec-1)で、直径が2.09mm、長さ8mmのオリフィスから押出す。押し出された溶融樹脂を、直径が50mmの巻き取りロールを用い、40rpm/分の巻き取り上昇速度で巻き取り、溶融樹脂が破断する直前の張力値を、MTとする。
【0051】
成分(A)の特性緩和時間(τ;単位は秒である。)は、フィルムの滑り性をより向上させる観点から、10秒以上であることが好ましく、15秒以上であることがより好ましく、25秒以上であることがさらに好ましく、30秒以上であることが特に好ましい。また、フィルムの製膜時の押出負荷を低減する観点およびフィルム外観の観点から、成分(A)の特性緩和時間は、60秒以下であることが好ましく、55秒以下であることがより好ましく、50秒以下であることがさらに好ましく、45秒以下であることが特に好ましい。成分(A)の特性緩和時間は、10秒以上60秒以下であることが好ましく、15秒以上55秒以下であることがより好ましく、25秒以上50秒以下であることがさらに好ましく、30秒以上45秒以下であることが特に好ましい。
【0052】
特性緩和時間(τ)は、エチレン-α-オレフィン共重合体が有する長鎖分岐の長さと長鎖分岐の量、および分子量分布に関係する数値である。長鎖分岐が短い、長鎖分岐量が少ないまたは、高分子量成分が少ない、と特性緩和時間は小さな値となる。長鎖分枝が長い、長鎖分岐量が多いまたは、高分子量成分が多い、と特性緩和時間は大きな値となる。特性緩和時間が長いエチレン-α-オレフィン共重合体は、インフレーション製膜機のダイから押し出された後、分子鎖絡み合いが十分緩和するより前に冷却ラインを越えて固化する。特性緩和時間が10秒以上である成分(A)を含むフィルムは、緩和が不十分な分子鎖の絡み合い由来する凹凸をフィルム表面に有しており、フィルムの滑り性がより優れる。
【0053】
特性緩和時間は、温度-時間重ね合わせ原理に基づいて作成される、190℃での溶融複素粘度(単位:Pa・sec)の角周波数(単位:rad/sec)依存性を示すマスターカーブから算出される数値である。特性緩和時間は、以下に示す方法により求められる。130℃、150℃、170℃および190℃それぞれの温度(T、単位:℃)におけるエチレン-α-オレフィン共重合体の溶融複素粘度-角周波数曲線(溶融複素粘度の単位はPa・sec、角周波数の単位はrad/secである。)を、温度-時間重ね合わせ原理に基づいて、190℃における溶融複素粘度-角周波数曲線に重ね合わせてマスターカーブを作成し、得られたマスターカーブを下記式(5)で近似することにより算出される値である。
η=η0/[1+(τ×ω)n] (5)
η:溶融複素粘度(単位:Pa・sec)
ω:角周波数(単位:rad/sec)
τ:特性緩和時間(単位:sec)
η0:エチレン-α-オレフィン共重合体毎に求まる定数(単位:Pa・sec)
n:エチレン-α-オレフィン共重合体毎に求まる定数
上記計算は、市販の計算ソフトウェアを用いてもよい。計算ソフトウェアとしては、例えば、Rheometrics社製 Rhios V.4.4.4が挙げられる。
【0054】
溶融複素粘度-角周波数曲線の測定は、前述の流動の活性化エネルギーを算出するために測定する溶融複素粘度-角周波数曲線と同様に測定する。
【0055】
成分(A)の、温度170℃および角周波数0.1rad/秒における溶融複素粘度(η*0.1;単位はPa・秒である。)と、温度170℃および角周波数100rad/秒における溶融複素粘度(η*100;単位はPa・秒である)の比、η*0.1/η*100は、フィルムの製膜時の押出負荷を低減する観点から、50以上であることが好ましく、70以上であることがより好ましく、90以上であることがさらに好ましく、100以上であることが特に好ましい。また、フィルムのフィッシュアイのような外観不良を低減する観点から、成分(A)のη*0.1/η*100は、200以下であることが好ましく、180以下であることがより好ましく、160以下であることがさらに好ましく、130以下であることが特に好ましい。成分(A)のη*0.1/η*100は、50以上200以下であることが好ましく、70以上180以下であることがより好ましく、90以上160以下であることがさらに好ましく、100以上130以下であることが特に好ましい。
【0056】
溶融複素粘度-角周波数曲線の測定は、粘弾性測定装置(例えば、Rheometrics社製Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS-800など。)を用い、通常、ジオメトリー:パラレルプレート、プレート直径:25mm、プレート間隔:1.5~2mm、ストレイン:5%、角周波数:0.1~100rad/秒の条件で行われる。なお、測定は窒素雰囲気下で行われ、また、測定試料には予め酸化防止剤を適量(例えば1000ppm。)を配合することが好ましい。
【0057】
成分(A)の製造方法としては、活性化助触媒成分(以下、成分(I)と称する。)が微粒子状担体に担持されてなる成分(H)と、メタロセン系錯体と、電子供与性化合物と、を接触させてなるオレフィン重合触媒の存在下、エチレンとα-オレフィンとを共重合する方法が挙げられる。
【0058】
成分(I)としては、亜鉛化合物が挙げられる。 亜鉛化合物としては、例えば、ジエチル亜鉛とフッ素化フェノールと水とを接触させることにより得られる化合物が挙げられる。
【0059】
微粒子状担体とは、50%体積平均粒子径が10~500μmである多孔質の物質である。50%体積平均粒子径は、例えば、光散乱式レーザー回折法により測定される。
微粒子状担体としては、例えば、無機物質、有機ポリマーが挙げられる。無機物質としては、例えば、SiO2、Al23、MgO、ZrO2、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaO、ThO2等の無機酸化物;スメクタイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ラポナイト、サポナイト等の粘土および粘土鉱物が挙げられる。有機ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体が挙げられる。微粒子状担体は、無機物質からなる微粒子状担体(以下、無機微粒子状担体と称する)が好ましい。
微粒子状担体の細孔容量は、通常0.3~10ml/gである。微粒子状担体の比表面積は、通常10~1000m2/gである。細孔容量と比表面積は、ガス吸着法により測定され、細孔容量はガス脱着量をBJH法で、比表面積はガス吸着量をBET法で解析することにより求められる。
【0060】
[成分(H)]
成分(H)は、成分(I)が微粒子状担体に担持されてなる担体である。
成分(H)は、ジエチル亜鉛(以下、成分(a)と称する)、フッ素化フェノール(以下、成分(b)と称する)、水(以下、成分(c)と称する)、無機微粒子状担体(以下、成分(d)と称する)、およびトリメチルジシラザン(((CH33Si)2NH)(以下、成分(e)と称する)を接触させて得ることができる。
【0061】
成分(b)としては、例えば、3,4,5-トリフルオロフェノール、3,4,5-トリス(トリフルオロメチル)フェノール、3,4,5-トリス(ペンタフルオロフェニル)フェノール、3,5-ジフルオロ-4-ペンタフルオロフェニルフェノール、または4,5,6,7,8-ペンタフルオロ-2-ナフトールが挙げられ、3,4,5-トリフルオロフェノールであることが好ましい。
【0062】
成分(d)は、シリカゲルであることが好ましい。
【0063】
成分(I)の製造方法において、成分(a)、成分(b)、成分(c)の各成分の使用量が、各成分の使用量のモル比率を成分(a):成分(b):成分(c)=1:y:zとするとき、yおよびzが下記式を満足するように使用することがきでる。
|2-y-2z|≦1 (2)
z≧-2.5y+2.48 (3)
y<1 (4)
(上記式(2)~(4)において、yおよびzは0よりも大きな数を表す。)
成分(a)の使用量に対する成分(b)の使用量のモル比率y、および成分(a)の使用量に対する成分(c)の使用量のモル比率zは、上記式(2)、(3)および(4)を満たす限り特に制限されない。yは、通常0.55~0.99であり、0.55~0.95であることが好ましく、0.6~0.9であることがよりに好ましく、0.7~0.8であることがさらに好ましい。η*0.1/η*100が50以上のエチレン-α-オレフィン共重合体を得るためには、yが0.55以上であることが好ましい。yが1以上の場合、得られるエチレン-α-オレフィン共重合体を含むフィルムは、フィッシュアイのような外観不良が生じる。
【0064】
成分(a)と成分(d)との接触により得られる粒子1gに含まれる成分(a)に由来する亜鉛原子のモル数が、好ましくは0.1mmol以上、より好ましくは0.5~20mmolとなるように成分(a)と成分(d)との使用量を調整する。成分(d)に対して、成分(e)の使用量は、成分(d)1gに対して、成分(e)0.1mmol以上あることが好ましく、0.5~20mmolであることがより好ましい。
【0065】
メタロセン系錯体とは、シクロペンタジエン形アニオン骨格を含む配位子を有する遷移金属化合物である。
メタロセン系錯体としては、下記一般式[1]で表される遷移金属化合物、または、そのμ-オキソタイプの遷移金属化合物二量体が好ましい。
2 a21 b [1]
(式中、M2は周期律表第3~11族もしくはランタノイド系列の遷移金属原子である。L2はシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基であり、複数のL2は互いに直接連結されているか、または、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子もしくはリン原子を含有する残基を介して連結されていてもよい。X1はハロゲン原子、炭化水素基(但し、シクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基を除く)、または炭化水素オキシ基である。aは2、bは2を表す。)
【0066】
一般式[1]において、M2は周期律表(IUPAC1989年)第3~11族もしくはランタノイド系列の遷移金属原子であり、例えば、スカンジウム原子、イットリウム原子、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、バナジウム原子、ニオビウム原子、タンタル原子、クロム原子、鉄原子、ルテニウム原子、コバルト原子、ロジウム原子、ニッケル原子、パラジウム原子、サマリウム原子、イッテルビウム原子が挙げられる。一般式[1]におけるM2は、チタン原子、ジルコニウム原子、ハフニウム原子、バナジウム原子、クロム原子、鉄原子、コバルト原子またはニッケル原子であることが好ましく、はチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子であることがより好ましく、ジルコニウム原子であることがさらに好ましい。
【0067】
一般式[1]において、L2はη5-(置換)インデニル基であり、2つのL2は同じであっても異なっていてもよい。2つのL2は互いに、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子もしくはリン原子を含有する架橋基を介して連結されている。
η5-(置換)インデニル基とは、置換基を有していてもよいη5-インデニル基を表す。
【0068】
2におけるη5-(置換)インデニル基としては、少なくとも、5位、6位が水素原子であるη5-(置換)インデニル基であり、具体的には、η5-インデニル基、η5-2-メチルインデニル基、η5-3-メチルインデニル基、η5-4-メチルインデニル基、η5-7-メチルインデニル基、η5-2-tert-ブチルインデニル基、η5-3-tert-ブチルインデニル基、η5-4-tert-ブチルインデニル基、η5-7-tert-ブチルインデニル基、η5-2,3-ジメチルインデニル基、η5-4,7-ジメチルインデニル基、η5-2,4,7-トリメチルインデニル基、η5-2-メチル-4-イソプロピルインデニル基、η5-4-フェニルインデニル基、η5-2-メチル-4-フェニルインデニル基、η5-2-メチル-4-ナフチルインデニル基、およびこれらの置換体が挙げられる。
本明細書においては、遷移金属化合物の名称については「η5-」を省略することがある。L2は、インデニル基であることが好ましい。
【0069】
2つの(置換)インデニル基は、炭素原子、ケイ素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子もしくはリン原子を含有する架橋基を介して連結されている。架橋基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基;ジメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基などの置換アルキレン基;またはシリレン基、ジメチルシリレン基、ジフェニルシリレン基、テトラメチルジシリレン基などの置換シリレン基;窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子などのヘテロ原子が挙げられる。 架橋基は、エチレン基、ジメチルメチレン基、ジメチルシリレン基が好ましく、エチレン基であることがより好ましい。
【0070】
一般式[1]におけるX1は、ハロゲン原子、炭化水素基(但し、シクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基を除く)、または炭化水素オキシ基である。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。ここでいう炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。炭化水素オキシ基としては、例えば、アルコキシ基、アラルキルオキシ基やアリールオキシ基が挙げられる。
【0071】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、アミル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-ペンタデシル基、n-エイコシル基が挙げられ。アルキル基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子で置換されたアルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、フルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、パークロロプロピル基、パークロロブチル基、パーブロモプロピル基が挙げられる。これらのアルキル基はいずれも、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基などのアリールオキシ基;またはベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基などで、その一部の水素原子が置換されていてもよい。
【0072】
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、(2-メチルフェニル)メチル基、(3-メチルフェニル)メチル基、(4-メチルフェニル)メチル基、(2,3-ジメチルフェニル)メチル基、(2,4-ジメチルフェニル)メチル基、(2,5-ジメチルフェニル)メチル基、(2,6-ジメチルフェニル)メチル基、(3,4-ジメチルフェニル)メチル基、(3,5-ジメチルフェニル)メチル基、(2,3,4-トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,5-トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,6-トリメチルフェニル)メチル基、(3,4,5-トリメチルフェニル)メチル基、(2,4,6-トリメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,5-テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,4,6-テトラメチルフェニル)メチル基、(2,3,5,6-テトラメチルフェニル)メチル基、(ペンタメチルフェニル)メチル基、(エチルフェニル)メチル基、(n-プロピルフェニル)メチル基、(イソプロピルフェニル)メチル基、(n-ブチルフェニル)メチル基、(sec-ブチルフェニル)メチル基、(tert-ブチルフェニル)メチル基、(n-ペンチルフェニル)メチル基、(ネオペンチルフェニル)メチル基、(n-ヘキシルフェニル)メチル基、(n-オクチルフェニル)メチル基、(n-デシルフェニル)メチル基、(n-ドデシルフェニル)メチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基が挙げられる。アラルキル基は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基などのアリールオキシ基;またはベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基を置換基として有していてもよい。
【0073】
アリール基としては、例えば、フェニル基、2-トリル基、3-トリル基、4-トリル基、2,3-キシリル基、2,4-キシリル基、2,5-キシリル基、2,6-キシリル基、3,4-キシリル基、3,5-キシリル基、2,3,4-トリメチルフェニル基、2,3,5-トリメチルフェニル基、2,3,6-トリメチルフェニル基、-トリメチルフェニル基、3,4,5-トリメチルフェニル基、2,3,4,5-テトラメチルフェニル基、2,3,4,6-テトラメチルフェニル基、2,3,5,6-テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、エチルフェニル基、n-プロピルフェニル基、イソプロピルフェニル基、n-ブチルフェニル基、sec-ブチルフェニル基、tert-ブチルフェニル基、n-ペンチルフェニル基、ネオペンチルフェニル基、n-ヘキシルフェニル基、n-オクチルフェニル基、n-デシルフェニル基、n-ドデシルフェニル基、n-テトラデシルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基が挙げられる。アリール基は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基を置換基として有していてもよい。
【0074】
アルケニル基としては、例えば、アリル基、メタリル基、クロチル基、1,3-ジフェニル-2-プロペニル基が挙げられる。
【0075】
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、ネオペントキシ基、n-ヘキソキシ基、n-オクトキシ基、n-ドデソキシ基、n-ペンタデソキシ基、n-イコソキシ基が挙げられる。アルコキシ基は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基を置換基として有していてもよい。
【0076】
アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、(2-メチルフェニル)メトキシ基、(3-メチルフェニル)メトキシ基、(4-メチルフェニル)メトキシ基、(2、3-ジメチルフェニル)メトキシ基、(2、4-ジメチルフェニル)メトキシ基、(2、5-ジメチルフェニル)メトキシ基、(2、6-ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,4-ジメチルフェニル)メトキシ基、(3,5-ジメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4-トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5-トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,6-トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,5-トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,4,6-トリメチルフェニル)メトキシ基、(3,4,5-トリメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,5-テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,4,6-テトラメチルフェニル)メトキシ基、(2,3,5,6-テトラメチルフェニル)メトキシ基、(ペンタメチルフェニル)メトキシ基、(エチルフェニル)メトキシ基、(n-プロピルフェニル)メトキシ基、(イソプロピルフェニル)メトキシ基、(n-ブチルフェニル)メトキシ基、(sec-ブチルフェニル)メトキシ基、(tert-ブチルフェニル)メトキシ基、(n-ヘキシルフェニル)メトキシ基、(n-オクチルフェニル)メトキシ基、(n-デシルフェニル)メトキシ基、ナフチルメトキシ基、アントラセニルメトキシ基が挙げられる。アラルキルオキシ基は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基を置換基として有していてもよい。
【0077】
アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、2-メチルフェノキシ基、3-メチルフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、2、3-ジメチルフェノキシ基、2、4-ジメチルフェノキシ基、2、5-ジメチルフェノキシ基、2、6-ジメチルフェノキシ基、3,4-ジメチルフェノキシ基、3,5-ジメチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-3-メチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-5-メチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-メチルフェノキシ基、2,3,4-トリメチルフェノキシ基、2,3,5-トリメチルフェノキシ基、2,3,6-トリメチルフェノキシ基、2,4,5-トリメチルフェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-3,4-ジメチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-3,5-ジメチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-3,6-ジメチルフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチル-3-メチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-4,5-ジメチルフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ基、3,4,5-トリメチルフェノキシ基、2,3,4,5-テトラメチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-3,4,5-トリメチルフェノキシ基、2,3,4,6-テトラメチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-3,4,6-トリメチルフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチル-3,4-ジメチルフェノキシ基、2,3,5,6-テトラメチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-3,5,6-トリメチルフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチル-3,5-ジメチルフェノキシ基、ペンタメチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、n-プロピルフェノキシ基、イソプロピルフェノキシ基、n-ブチルフェノキシ基、sec-ブチルフェノキシ基、tert-ブチルフェノキシ基、n-ヘキシルフェノキシ基、n-オクチルフェノキシ基、n-デシルフェノキシ基、n-テトラデシルフェノキシ基、ナフトキシ基、アントラセノキシ基が挙げられる。アリールオキシ基は、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基などのアリールオキシ基またはベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基を置換基として有していてもよい。X1は、塩素原子、メトキシ基、フェノキシ基であることが好ましく、塩素原子、フェノキシ基であることがより好ましく、フェノキシ基であることがさらに好ましい。
【0078】
一般式[1]におけるaは2を、bは2を表す。
【0079】
メタロセン系錯体の具体例としては、 ジメチルシリレンビス(インデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2-メチルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2-tert-ブチルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2,3-ジメチルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2,4,7-トリメチルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-イソプロピルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2-フェニルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(4-フェニルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)チタンジクロライド、ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-ナフチルインデニル)チタンジクロライドや、これらの化合物のチタンをジルコニウムまたはハフニウムに変更した化合物、ジメチルシリレンをメチレン、エチレン、ジメチルメチレン(イソプロピリデン)、ジフェニルメチレン、ジエチルシリレン、ジフェニルシリレン、またはジメトキシシリレンに変更した化合物、ジクロライドをジフルオライド、ジブロマイド、ジアイオダイド、ジメチル、ジエチル、ジイソプロピル、ジフェニル、ジベンジル、ジメトキシド、ジエトキシド、ジ(n-プロポキシド)、ジ(イソプロポキシド)、ジフェノキシド、またはジ(ペンタフルオロフェノキシド)に変更した化合物が挙げられる。
【0080】
メタロセン系錯体は、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、ジメチルメチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジフェノキシド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジフェノキシド、ジメチルメチレンビス(インデニル)ジルコニウムジフェノキシドであることが好ましく、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジフェノキシドであることがより好ましい。
【0081】
成分(H)とメタロセン系錯体とを接触させてなるオレフィン重合触媒は、成分(H)と、メタロセン系錯体と、有機アルミニウム化合物とを接触させてなるオレフィン重合触媒が好ましい。
【0082】
有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウムトリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウムが挙げられ、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウムであることが好ましく、トリイソブチルアルミニウムであることがより好ましい。
【0083】
電子供与性化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリイソブチルアミン、トリノルマルオクチルアミンが挙げられ、トリエチルアミンであることが好ましい。
【0084】
メタロセン系錯体の使用量は、成分(H)1gに対し、5×10-6~5×10-4molであることが好ましい。有機アルミニウム化合物の使用量は、メタロセン系錯体の金属原子モル数に対する有機アルミニウム化合物のアルミニウム原子のモル数の比(Al/M)で表して、1~2000であることが好ましい。
【0085】
上記の成分(H)とメタロセン系錯体と有機アルミニウム化合物と電子供与性化合物とを接触させてなる重合触媒においては、必要に応じて、酸素を接触させてなる重合触媒としてもよい。
【0086】
電子供与性化合物の使用量は、有機アルミニウム化合物のアルミニウム原子のモル数に対して、1~50mol%であることが好ましく、3~20mol%であることがより好ましい。
【0087】
酸素の使用量は、有機アルミニウム化合物のアルミニウム原子のモル数に対して、1~100mol%であることが好ましく、5~80mol%であることがより好ましく、10~40mol%であることがさらに好ましい。
【0088】
オレフィン重合触媒は、前記成分(H)と、メタロセン系錯体と、有機アルミニウム化合物とを接触させてなる触媒成分の存在下、少量のオレフィンを重合(以下、予備重合と称する。)して得られた予備重合触媒成分が好ましい。
【0089】
前記予備重合触媒成分の製造方法としては、下記工程(1)、(2)、(3)および(4)を有する予備重合触媒成分の製造方法が挙げられる。
工程(1):メタロセン系錯体を含有する飽和脂肪族炭化水素化合物溶液を40℃以上で熱処理して熱処理物を得る工程。
工程(2):工程(1)で得られた熱処理物と成分(H)とを接触させ、接触処理物を得る工程。
工程(3):工程(2)で得られた接触処理物と有機アルミニウム化合物とを接触させ、触媒成分を得る工程。
工程(4):工程(3)で得られた触媒成分の存在下、オレフィンを予備重合して予備重合触媒成分を得る工程。
【0090】
工程(1)における、メタロセン系錯体を含有する飽和脂肪族炭化水素化合物溶液は、例えば、飽和脂肪族炭化水素化合物溶媒中にメタロセン系錯体を添加する方法により調製される。メタロセン系錯体は、通常、粉体、あるいは、飽和脂肪族炭化水素化合物液のスラリーとして、添加される。
【0091】
メタロセン系錯体を含有する飽和脂肪族炭化水素化合物溶液の調製に用いられる飽和脂肪族炭化水素化合物としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンが挙げられる。飽和脂肪族炭化水素化合物溶液は、これら飽和脂肪族炭化水素化合物を1種のみ含んでもよく、2種以上含んでもよい。飽和脂肪族炭化水素化合物は、常圧における沸点が100℃以下であることが好ましく、常圧における沸点が90℃以下であることがより好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサンであることがさらに好ましい。
【0092】
メタロセン系錯体を含有する飽和脂肪族炭化水素化合物溶液の熱処理は、メタロセン系錯体を含有する飽和脂肪族炭化水素化合物溶媒の温度を、40℃以上の温度に調整すればよい。熱処理中は、溶媒を静置してもよく、溶媒を撹拌してもよい。該温度は、フィルムの成形加工性を高める観点から、45℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましい。また、触媒活性を高める観点から、100℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましい。熱処理の時間は、通常、0.5~12時間である。該時間は、フィルムの成形加工性を高める観点から、1時間以上であることが好ましく、2時間以上であることがより好ましい。触媒性能の安定性から、6時間以下であることが好ましく、4時間以下であることがより好ましい。
【0093】
工程(2)では、熱処理物と成分(H)とが接触すればよい。接触させる方法としては、例えば、熱処理物に成分(H)を添加する方法、または、飽和脂肪族炭化水素化合物中に、熱処理物と成分(H)とを添加する方法が挙げられる。成分(H)は、通常、粉体、あるいは、飽和脂肪族炭化水素化合物溶媒のスラリーとして添加される。
【0094】
工程(2)での接触処理の温度は、70℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましく、10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましい。接触処理の時間は、通常、0.1時間~2時間である。
【0095】
工程(3)では、工程(2)で得られた接触処理物と有機アルミニウム化合物とが接触すればよい。接触させる方法としては、例えば、工程(2)で得られた接触処理物に有機アルミニウム化合物を添加する方法、または、飽和脂肪族炭化水素化合物中に、工程(2)で得られた接触処理物と有機アルミニウム化合物とを添加する方法が用いられる。
【0096】
工程(3)での接触処理の温度は、70℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましい。また、予備重合の活性の発現を効率的に行う観点から、10℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましい。接触処理の時間は、通常、0.01時間~0.5時間である。
【0097】
工程(3)の接触処理は、オレフィンの存在下で行うことが好ましい。該オレフィンとしては、通常、予備重合での原料となるオレフィンが挙げられる。オレフィンの量としては、成分(H)1gあたり、0.05~1gであることが好ましい。
【0098】
上記の工程(1)~(3)は、飽和脂肪族炭化水素化合物と成分(H)とメタロセン系錯体と有機アルミニウム化合物とを、予備重合反応器に、別々に添加することにより、工程(1)~(3)の全ての工程を予備重合反応器内で行ってもよく、工程(2)および(3)を予備重合反応器内で行ってもよく、または、工程(3)を予備重合反応器内で行ってもよい。
【0099】
工程(4)は、工程(3)で得られた触媒成分の存在下、オレフィンを予備重合(少量のオレフィンを重合)して予備重合触媒成分を得る工程である。該予備重合は、通常、スラリー重合法で行われ、該予備重合は、回分式、半回分式、連続式のいずれの方式を用いてもよい。更には、該予備重合は、水素等の連鎖移動剤を添加して行ってもよい。
【0100】
予備重合をスラリー重合法で行う場合、溶媒としては、通常、飽和脂肪族炭化水素化合物が用いられる。飽和脂肪族炭化水素化合物は、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタンが挙げられる。これらは単独あるいは2種以上組み合わせて用いられる。飽和脂肪族炭化水素化合物としては、常圧における沸点が100℃以下であることが好ましく、常圧における沸点が90℃以下であることがより好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサンであることがさらに好ましい。
【0101】
予備重合をスラリー重合法で行う場合、スラリー濃度としては、溶媒1リットル当たりの成分(H)の量が、通常0.1~600gであり、0.5~300gであることが好ましい。予備重合温度は、通常、-20~100℃であり、0~80℃であることが好ましい。予備重合中、重合温度は適宜変更してもよいが、予備重合を開始する温度は、45℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましい。また、予備重合中の気相部でのオレフィン類の分圧は、通常0.001~2MPaであり、0.01~1MPaであることがより好ましい。予備重合時間は、通常、2分間~15時間である。
【0102】
予備重合に用いられるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、シクロペンテン、シクロヘキセンが挙げられる。これらは、1種または2種以上組み合わせて用いることができ、エチレンのみ、あるいはエチレンとα-オレフィンとを併用することが好ましく、エチレンのみ、あるいは1-ブテン、1-ヘキセンおよび1-オクテンから選ばれる少なくとも1種のα-オレフィンとエチレンとを併用することがより好ましい。
【0103】
予備重合触媒成分中の予備重合された重合体の含有量は、成分(H)1g当たり、通常0.01~1000gであり、0.05~500gであることが好ましく、0.1~200gであることがより好ましい。
【0104】
成分(A)の製造方法としては、スラリー重合、または、気相重合法が好ましく、連続気相重合法がより好ましい。該スラリー重合法に用いられる溶媒としては、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の不活性炭化水素溶媒が挙げられる。該連続気相重合法に用いられる気相重合反応装置としては、通常、流動層型反応槽を有する装置であり、拡大部を有する流動層型反応槽を有する装置であることが好ましい。反応槽内に撹拌翼が設置されていてもよい。
【0105】
オレフィン重合触媒が、予備重合触媒成分を含むオレフィン重合触媒である場合、成分(A)の粒子の形成を行う連続重合反応槽に予備重合触媒成分を供給する方法としては、通常、アルゴン等の不活性ガス、窒素、水素またはエチレンを用いて、水分のない状態で供給する方法、または、各成分を溶媒に溶解または稀釈して、溶液またはスラリー状態で供給する方法が用いられる。
【0106】
成分(A)の気相重合の重合温度としては、通常、成分(A)が溶融する温度未満であり、0~150℃であることが好ましく、30~100℃であることがより好ましく、70℃~87℃であることがさらに好ましい。成分(A)の溶融流動性を調節するために、水素を添加してもよい。水素は、エチレン100mol%に対して、0.01~1.1mol%となるように制御することが好ましい。気相重合中のエチレンに対する水素の比率は、重合中に発生する水素の量および重合中に添加する水素の量によって、制御することができる。重合反応槽の混合ガス中に不活性ガスを共存させてもよい。オレフィン重合触媒が予備重合触媒成分を含むオレフィン重合触媒である場合、オレフィン重合触媒は、有機アルミニウム化合物等の助触媒成分を含んでもよい。
【0107】
成分(A)を、成分(B)または成分(C)へ添加してフィルムを作製することにより、滑り性が向上したフィルムを得ることができる。成分(A)は、滑り改質剤として使用できる。
フィルムの滑り性を改良するために、フィルムの樹脂成分100重量%に対して、成分(A)を1重量%以上30重量%以下含有することが好ましい。
【0108】
<エチレン系樹脂組成物>
フィルムは、フィルムの滑り性の観点から、成分(A)と成分(B)とを含むエチレン系樹脂組成物を含み、成分(A)と成分(B)の合計量を100重量%に対して、成分(A)の含有量が1重量%以上30重量%以下であるフィルムが好ましい。
エチレン系樹脂組成物は、エチレン系樹脂組成物の全重量を100重量%に対して、成分(A)および成分(B)の合計量が50重量%以上であることが好ましい。
【0109】
エチレン系樹脂組成物は、成分(A)および成分(B)の合計量を100重量%に対して、成分(A)の含有量が1重量%以上30重量%以下であり、2重量%以上20重量%以下であることが好ましく、3重量%以上15重量%以下であることがより好ましい。
【0110】
<成分(B)>
成分(B)中の炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位を形成する炭素原子数3~20のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテン、および4-メチル-1-ヘキセンが挙げられる。成分(B)は、これらの炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位を一種のみ有してもよく、2種以上有してもよい。炭素原子数3~20のα-オレフィンとは、好ましくは1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、または1-オクテンであり、より好ましくは1-ヘキセン、または1-オクテンである。
【0111】
成分(B)中のエチレンに基づく単量体単位の含有量は、成分(B)の全重量を100重量%に対して、50~99.5重量%であることが好ましい。またα-オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、成分(B)の全重量100重量%に対して、0.5~50重量%であることが好ましい。
【0112】
成分(B)は、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン以外の単量体に基づく単量体単位を有していてもよい。エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン以外の単量体としては、例えば、ブタジエンまたはイソプレン等の共役ジエン;1,4-ペンタジエン等の非共役ジエン:アクリル酸;アクリル酸メチルやアクリル酸エチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸;メタクリル酸メチルまたはメタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル;および酢酸ビニルが挙げられる。
【0113】
成分(B)は、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数4~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体であることが好ましく、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数5~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体であることがより好ましく、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数6~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体であることがさらに好ましい。
【0114】
成分(B)としては、例えば、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-ブテン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、およびエチレン-1-ブテン-1-オクテン共重合体が挙げられる。成分(B)は、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、またはエチレン-1-オクテン共重合体であることが好ましく、エチレン-1-ヘキセン共重合体であることがより好ましい。
【0115】
成分(B)の密度は、890kg/m3以上930kg/m3以下である。フィルムの滑り性をより向上させる観点から、895kg/m3以上であることが好ましく、900kg/m3以上であることがより好ましく、905kg/m3以上であることがさらに好ましく、910kg/m3以上であることが特に好ましい。また、成分(B)の密度は、フィルムの強度の観点から、925kg/m3以下であることが好ましく、920kg/m3以下であることがより好ましく、915kg/m3以下であることがさらに好ましい。成分(B)の密度は、895kg/m3以上925kg/m3以下であることが好ましく、900kg/m3以上920kg/m3以下であることがより好ましく、905kg/m3以上915kg/m3以下であることがさらに好ましく、910kg/m3以上915kg/m3以下であることが特に好ましい。
【0116】
成分(B)のMFRは、0.5g/10分5g/10分以下である。成分(B)のMFRは、フィルムの成形加工性の観点、特にフィルムの製膜時の押出負荷を低減する観点から、0.8g/10分以上であることが好ましく、1.0g/10分以上であることがより好ましい。成分(B)のMFRは、フィルムの強度の観点から、4.0g/10分以下であることが好ましく、3.0g/10分以下であることがより好ましく、2.5g/10分以下であることがさらに好ましい。成分(B)のMFRは、0.8g/10分以上4.0g/10分以下であることが好ましく、1.0g/10分以上3g/10分以下であることがより好ましく、1g/10分以上2.5g/10分以下であることがさらに好ましい。MFRの測定では、通常、成分(B)に酸化防止剤を1000ppm程度配合した試料を用いる。
【0117】
成分(B)のMFRRは、10以上30以下である。成分(B)のMFRRは、フィルムの成形加工性の観点、特にフィルムの製膜時の押出負荷を低減する観点から、15以上であることが好ましく、17以上であることがより好ましく、20以上であることがさらに好ましい。成分(B)のMFRRは、フィルムの強度の観点から、28以下であることが好ましく、26以下であることがより好ましい。成分(B)のMFRRは、15以上28以下であることが好ましく、17以上26以下であることがより好ましく、20以上26以下であることがさらに好ましい。
成分(B)のMFRRの測定には、通常、成分(B)に酸化防止剤を1000ppm配合した試料を用いる。
【0118】
成分(B)の、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)は、フィルムをインフレーション製膜法にて製膜する際のバブルの安定性の観点から、2以上であることが好ましく、2.1以上であることがより好ましく、2.2以上であることがさらに好ましく、2.3以上であることが特に好ましい。成分(B)のMw/Mnは、フィルムの強度の観点から、7以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましく、4以下であることが特に好ましい。成分(B)のMw/Mnは、2以上7以下であることが好ましく、2.1以上6以下であることがより好ましく、2.2以上5以下であることがさらに好ましく、2.3以上4以下であることが特に好ましい。成分(B)のMw/Mnは、成分(A)のMw/Mnと同様の方法により測定される。
【0119】
成分(B)のEaは、フィルムをインフレーション製膜法にて製膜する際のバブルの安定性の観点から、15kJ/mol以上であることが好ましく、20kJ/mol以上であることがより好ましく、25kJ/mol以上であることがさらに好ましい。フィルムの強度の観点から、成分(B)のEaは、50kJ/mol以下であることが好ましく、45kJ/mol以下であることがより好ましく、40kJ/mol以下であることがさらに好ましい。成分(B)のEaは、15kJ/mol以上50kJ/mol以下であることが好ましく、20kJ/mol以上45kJ/mol以下であることがより好ましく、25kJ/mol以上40kJ/mol以下であることがさらに好ましい。該Eaは、成分(A)のEaと同様の方法により測定される。
【0120】
成分(B)は、メタロセン系重合触媒、または、チーグラー・ナッタ系重合触媒の存在下、エチレンとα-オレフィンとを共重合することにより製造することができる。
【0121】
メタロセン系重合触媒としては、例えば、次の(1)~(4)の触媒等が挙げられる。
(1)シクロペンタジエン形骨格を有する基を有する遷移金属化合物を含む成分と、アルモキサン化合物とを含む成分からなる触媒
(2)前記遷移金属化合物を含む成分と、トリチルボレート、アニリニウムボレート等のイオン性化合物とを含む成分からなる触媒
(3)前記遷移金属化合物を含む成分と、前記イオン性化合物を含む成分と、有機アルミニウム化合物とを含む成分からなる触媒
(4)(1)~(3)のいずれか一つに記載の各成分をSiO2、Al23等の無機粒子状担体や、エチレン、スチレン等のオレフィン重合体等の粒子状ポリマー担体に担持または含浸させて得られる触媒
【0122】
チーグラー・ナッタ系重合触媒としては、マグネシウム化合物にチタニウム化合物を担持させた固体触媒成分と有機アルミニウムを組合せたいわゆるMg-Ti系チーグラー触媒(例えば「触媒活用大辞典;2004年工業調査会発行」、「出願系統図-オレフィン重合触媒の変遷-;1995年発明協会発行」等を参照)が好ましい。
【0123】
成分(B)の製造に用いられる触媒は、フィルムの強度の観点から、メタロセン系重合触媒が好ましい。
【0124】
成分(B)の重合方法としては、例えば、バルク重合、溶液重合、スラリー重合、気相重合、または、高圧イオン重合法が挙げられる。ここでバルク重合とは、重合温度において液状のオレフィンを媒体として重合を行う方法をいい、溶液重合又はスラリー重合とは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の不活性炭化水素溶媒中で重合を行う方法をいう。また気相重合とは、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中で気体状態の単量体を重合する方法をいう。 これらの重合方法は、バッチ式および連続式のいずれでもよく、また、単一の重合槽で行われる単段式および複数の重合反応槽を直列に連結させた重合装置で行われる多段式のいずれでもよい。なお、重合工程における各種条件(重合温度、重合圧力、モノマー濃度、触媒添加量、重合時間等)は、適宜決定すればよい。
【0125】
エチレン系樹脂組成物は、さらに成分(C)を含有することが好ましい。エチレン系樹脂組成物中の成分(C)の含有量は、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計量を100重量%に対して、1重量%以上50重量%以下が好ましく、5重量%以上40重量%以下がより好ましく、10重量%以上30重量%以下がさらに好ましい。
【0126】
<成分(C)>
成分(C)は、密度が890kg/m以上930kg/m以下であり、MFRが0.5g/10分以上5g/10分以下であり、MFRRが31以上150以下である高圧法低密度ポリエチレン(以下、成分(D)と記載することがある)、および、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有し、密度が890kg/m以上930kg/m以下であり、MFRが0.5g/10分以上5g/10分以下であり、MFRRが31以上150以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体(以下、成分(E)と記載することがある)からなる群より選ばれる一種以上のエチレン系重合体である。
【0127】
<成分(D)>
成分(D)は、高圧ラジカル重合法により製造される低密度ポリエチレンである。
高圧法低密度ポリエチレンの一般的な製造方法としては、槽型反応器または管型反応器中、ラジカル発生剤の存在下、重合圧力140~300MPa、重合温度200~300℃の条件でエチレンを重合する方法が挙げられる(佐伯康治、「ポリマー製造プロセス」、工業調査会(1971)等)。
【0128】
成分(D)の密度は、890kg/m3以上940kg/m3以下である。成分(D)の密度は、フィルムの滑り性をより向上させる観点から、895kg/m3以上であることが好ましく、900kg/m3以上であることがより好ましく、905kg/m3以上であることがさらに好ましく、910kg/m3以上であることが特に好ましい。フィルムの透明性の観点から、935kg/m3以下であることが好ましく、930kg/m3以下であることがより好ましく、925kg/m3以下であることがさらに好ましい。成分(D)の密度は、895kg/m3以上935kg/m3以下であることが好ましく、900kg/m3以上930kg/m3以下であることがより好ましく、905kg/m3以上925kg/m3以下であることがさらに好ましく、910kg/m3以上925kg/m3以下であることが特に好ましい。
【0129】
成分(D)のMFRは、0.5g/10分以上5g/10分以下である。成分(D)のMFRは、フィルムの成形加工性の観点、特にフィルムの製膜時の押出負荷を低減する観点から、0.8g/10分以上であることが好ましく、0.9g/10分以上であることがより好ましい。成分(D)のMFRは、フィルムの強度の観点から、4.0g/10分以下であることが好ましく、3.0g/10分以下であることがより好ましく、2.5g/10分以下であることがさらに好ましい。成分(D)のMFRは、0.8g/10分以上4.0g/10分以下であることが好ましく、0.9g/10分以上3.0g/10分以下であることがより好ましく、0.9g/10分以上2.5g/10分以下であることがさらに好ましい。
成分(D)のMFRの測定では、通常、成分(D)に酸化防止剤を1000ppm程度配合した試料を用いる。 成分(D)のMFRは、重合時に使用する分子量調節剤である水素、メタンやエタン等の炭化水素の量を調整することで制御できる。
【0130】
成分(D)のMFRRは、31以上150以下である。成分(D)のMFRRは、フィルム成形時の押出し負荷を低減する観点から、35以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、45以上であることがさらに好ましい。 成分(D)のMFRRは、フィルムの強度の観点から、120以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましい。
成分(D)のMFRRの測定には、通常、成分(D)に酸化防止剤を1000ppm配合した試料を用いる。
【0131】
成分(D)の、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)は、フィルムの滑り性をより向上させる観点から、3以上であることが好ましく、3.5以上であることがより好ましく、4以上であることがさらに好ましい。成分(D)のMw/Mnは、フィルムの強度の観点から、10以下であることが好ましく、9以下であることがより好ましく、8以下であることがさらに好ましく、7以下であることが特に好ましい。成分(D)のMw/Mnは、3以上10以下であることが好ましく、3.5以上9以下であることがより好ましく、4以上8以下であることがさらに好ましく、4以上7以下であることが特に好ましい。成分(D)の分子量分布(Mw/Mn)は、 成分(A)のMw/Mnと同様の方法により測定される。
【0132】
成分(D)のEaは、フィルムをインフレーション製膜法にて製膜する際のバブルの安定性の観点から、は30kJ/mol以上であることが好ましく、40kJ/mol以上であることがより好ましく、50kJ/mol以上であることがさらに好ましい。成分(D)のEaは、フィルムの強度の観点から、80kJ/mol以下であることが好ましく、75kJ/mol以下であることがより好ましく、70kJ/mol以下であることがさらに好ましい。成分(D)のEaは、は30kJ/mol以上80kJ/mol以下であることが好ましく、40kJ/mol以上75kJ/mol以下であることがより好ましく、50kJ/mol以上70kJ/mol以下であることがさらに好ましい。成分(D)のEaは、成分(A)のEaと同様の方法により測定される。
【0133】
<成分(E)>
成分(E)は、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位を有し、密度が890kg/m以上930kg/m以下であり、MFRが0.5g/10分以上5g/10分以下であり、MFRRが31以上150以下であるエチレン-α-オレフィン共重合体である。
成分(E)中の炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位を形成する炭素原子数3~20のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテンおよび4-メチル-1-ヘキセンが挙げられる。成分(E)は、これらの炭素原子数3~20のα-オレフィンに基づく単量体単位を一種のみ有してもよく、2種以上有してもよい。炭素原子数3~20のα-オレフィンは、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、または1-オクテンであることが好ましく、1-ブテン、または1-ヘキセンであることがより好ましい。
【0134】
成分(E)中のエチレンに基づく単量体単位の含有量は、成分(E)の全重量100重量%に対して、50~99.5重量%であることが好ましい。α-オレフィンに基づく単量体単位の含有量は、成分(E)の全重量100重量%に対して、0.5~50重量%であることが好ましい。
【0135】
成分(E)は、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン以外の単量体に基づく単量体単位を有していてもよい。エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン以外の単量体としては、例えば、ブタジエンまたはイソプレン等の共役ジエン;1,4-ペンタジエン等の非共役ジエン;アクリル酸;アクリル酸メチルやアクリル酸エチル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸;メタクリル酸メチルまたはメタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル;および酢酸ビニルが挙げられる。
【0136】
成分(E)は、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数4~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体であることが好ましく、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数5~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体であることがより好ましく、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数6~20のα-オレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体であることがさらに好ましい。
【0137】
成分(E)としては、例えば、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-ブテン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、およびエチレン-1-ブテン-1-オクテン共重合体が挙げられる。成分(E)は、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、またはエチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体であることが好ましい。
【0138】
成分(E)の密度は、890kg/m3以上940kg/m3以下である。成分(E)の密度は、フィルムの滑り性をより向上させる観点から、895kg/m3以上であることが好ましく、900kg/m3以上であることがより好ましく、905kg/m3以上であることがさらに好ましく、910kg/m3以上であることが特に好ましい。成分(E)の密度は、フィルムの透明性の観点から、935kg/m3以下であることが好ましく、930kg/m3以下であることがより好ましく、925kg/m3以下であることがさらに好ましい。成分(E)の密度は、895kg/m3以上935kg/m3以下であることが好ましく、900kg/m3以上930kg/m3以下であることがより好ましく、905kg/m3以上925kg/m3以下であることがさらに好ましく、910kg/m3以上925kg/m3以下であることが特に好ましい。
【0139】
成分(E)のMFRは、0.5g/10分以上5g/10分以下である。 成分(E)のMFRは、フィルムの成形加工性の観点、特にフィルムの製膜時の押出負荷を低減する観点から、0.8g/10分以上であることが好ましく、0.9g/10分以上であることがより好ましい。成分(E)のMFRは、フィルムの強度の観点から、4.0g/10分以下であることが好ましく、3.0g/10分以下であることがより好ましく、2.5g/10分以下であることがさらに好ましい。成分(E)のMFRは、0.8g/10分以上4.0g/10分以下であることが好ましく、0.9g/10分以上3.0g/10分以下であることがより好ましく、0.9g/10分以上2.5g/10分以下であることがさらに好ましい。
成分(E)のMFRの測定では、通常、成分(E)に酸化防止剤を1000ppm程度配合した試料を用いる。
【0140】
成分(E)のMFRRは、31以上150以下である。成分(E)のMFRRは、フィルム成形時の押出し負荷を低減する観点から、35以上であることが好ましく、40以上であることがより好ましく、45以上であることがさらに好ましい。成分(E)のMFRRは、フィルムの強度の観点から、120以下であることが好ましく、100以下であることがより好ましい。成分(E)のMFRRは、フィルム成形時の押出し負荷を低減する観点から、35以上120以下であることが好ましく、40以上100以下であることがより好ましく、45以上100以下であることがさらに好ましい。成分(E)のMFRRの測定には、通常、成分(E)に酸化防止剤を1000ppm配合した試料を用いる。
【0141】
成分(E)の、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)は、フィルムの滑り性をより向上させる観点から、3以上であることが好ましく、3.5以上であることがより好ましく、4以上であることがさらに好ましい。成分(E)のMw/Mnは、フィルムの強度の観点から、15以下であることが好ましく、13以下であることがより好ましく、11以下であることがさらに好ましく、9以下であることが特に好ましい。成分(E)のMw/Mnは、3以上15以下であることが好ましく、3.5以上13以下であることがより好ましく、4以上11以下であることがさらに好ましく、4以上9以下であることが特に好ましい。成分(E)の分子量分布(Mw/Mn)は、 成分(A)のMw/Mnと同様の方法により測定される。
【0142】
成分(E)のEaは、フィルムをインフレーション製膜法にて製膜する際のバブルの安定性の観点から、30kJ/mol以上であることが好ましく、40kJ/mol以上であることがより好ましく、50kJ/mol以上であることがさらに好ましい。成分(E)のEaは、フィルムの強度の観点から、80kJ/mol以下であることが好ましく、75kJ/mol以下であることがよりに好ましく、70kJ/mol以下であることがさらに好ましい。成分(E)のEaは、30kJ/mol以上80kJ/mol以下であることが好ましく、40kJ/mol以上75kJ/mol以下であることがよりに好ましく、50kJ/mol以上70kJ/mol以下であることがさらに好ましい。成分(E)のEaは、成分(A)のEaと同様の方法により測定される。
【0143】
成分(E)は、メタロセン系重合触媒、または、チーグラー・ナッタ系重合触媒の存在下、エチレンとα-オレフィンとを共重合することにより製造することができる。フィルムをインフレーション製膜法にて製膜する際のバブルの安定性の観点から、成分(E)の製造に用いられる触媒は、メタロセン系重合触媒が好ましい。
【0144】
成分(E)の製造に用いられるメタロセン系オレフィン重合触媒は、特に限定はされないが、成分(A)の製造に用いられるオレフィン重合触媒と同じオレフィン重合用触媒が挙げられる。
【0145】
成分(E)の製造方法としては、特に限定はされず、例えば、前述の成分(H)とメタロセン系錯体と有機アルミニウム化合物と電子供与性化合物とを接触させてなる重合触媒の存在下、スラリー重合法、または、気相重合法で、エチレンとα-オレフィンとを共重合することにより得られる。成分(E)は、共重合時、エチレン100mol%に対して、1.1mol%より多く水素を存在させることにより、得られる。成分(E)の重合法は気相重合法が好ましいまた、該気相重合には、電子供与性化合物としてトリエチルアミン、トリイソブチルアミン、トリノルマルオクチルアミンを添加してもよい。
【0146】
前記エチレン系樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のブレンド方法が挙げられる。公知のブレンド方法としては、例えば、各重合体をドライブレンドする方法、メルトブレンドする方法等が挙げられる。ドライブレンドする方法としては、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の各種ブレンダーを用いる方法が挙げられる。メルトブレンドする方法としては、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の各種ミキサーを用いる方法が挙げられる。
【実施例
【0147】
実施例および比較例での各項目の測定値は、次の方法に従って測定した。
【0148】
[成分(H)]
(1)元素分析
Zn:試料を硫酸水溶液(濃度1M)を入れ、その後超音波を照射して金属成分を抽出した。得られた溶液を、ICP発光分析法により定量した。
F:酸素を充填させたフラスコ中で試料を燃焼させ、生じた燃焼ガスを水酸化ナトリウム水溶液(10%)に吸収させ、得られた水溶液をイオン電極法により定量した。
【0149】
[成分(A)の物性]
(2)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210-1995に規定された方法に従い、温度190℃、荷重21.18Nの条件で、A法により測定した。
【0150】
(3)密度(単位:kg/m3
JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980に規定された方法に従い、A法により測定した。
【0151】
(4)Mw/Mn、Mz/Mw
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)およびZ平均分子量(Mz)を求めた。MwをMnで除して、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。MzをMwで除してMz/Mwを求めた。
装置 :Waters製Waters150C
分離カラム:TOSOH TSKgelGMH-HT
測定温度 :140℃
キャリア :オルトジクロロベンゼン
流量 :1.0mL/分
注入量 :500μL
検出器:示差屈折
分子量標準物質:標準ポリスチレン
【0152】
(5)η*0.1/η*100
歪制御型の回転式粘度計(レオメーター)を用いて、下記の条件で角周波数0.1rad/秒から100rad/秒までの動的複素粘度を測定した。次に、角周波数0.1rad/秒における動的複素粘度(η*0.1)を角周波数100rad/秒における動的複素粘度(η*100)で除して、η*0.1/η*100を求めた。
温度 :170℃
ジオメトリー:パラレルプレート
プレート直径:25mm
プレート間隔:1.5~2mm
ストレイン :5%
角周波数 :0.1~100rad/秒
測定雰囲気 :窒素
【0153】
(6)流動の活性化エネルギー(Ea、単位:kJ/mol)
流動の活性化エネルギーEaは、歪制御型の回転式粘度計(レオメーター)により、下記の条件(a)~(d)で、各温度T(単位:℃)におけるエチレン-α-オレフィン共重合体の溶融複素粘度-角周波数曲線(溶融複素粘度の単位はPa・sec、角周波数の単位はrad/secである。)を測定した。次に、温度-時間重ね合わせ原理に基づいて、各温度(T)での溶融複素粘度-角周波数曲線毎に、190℃でのエチレン-α-オレフィン共重合体の溶融複素粘度-角周波数曲線に重ね合わせた際に得られる各温度(T)でのシフトファクター(aT)を求めた。次に、各温度(T)と、各温度(T)でのシフトファクター(aT)とから、最小二乗法により[ln(aT)]と[1/(T+273.16)]との一次近似式(下記(I)式)を算出した。次に、該一次式の傾きmと下記式(II)とからEaを求めた。
ln(aT) = m(1/(T+273.16))+n (I)
Ea = |0.008314×m| (II)
T :シフトファクター
Ea:流動の活性化エネルギー(単位:kJ/mol)
T :温度(単位:℃)
計算ソフトウェアには、Reometrics社 Rhios V.4.4.4を使用した。各温度(T)の値から(I)式を最小二乗法で算出したときの相関係数r2が、0.99以上の場合のEa値を採用した。溶融複素粘度-角周波数曲線の測定は窒素雰囲気下で実施した。
(a)ジオメトリー:パラレルプレート、プレート直径25mm、プレート間隔:1.5~2mm
(b)ストレイン:5%
(c)剪断速度:0.1~100rad/秒
(d)温度:130℃、150℃、170℃、190℃
【0154】
(7)引張衝撃強度(単位:kJ/m2
成形温度190℃、予熱時間10分、圧縮時間5分、圧縮圧力5MPaの条件で圧縮成形された厚み2mmのシートの引張衝撃強度を、ASTM D1822-68に従って測定した。
【0155】
(8)特性緩和時間(τ)(sec)
粘弾性測定装置(Rheometrics社製 Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS-800)を用いて、下記測定条件で130℃、150℃、170℃および190℃での溶融複素粘度-角周波数曲線を測定した。次に、得られた溶融複素粘度-角周波数曲線から、Rheometrics社製計算ソフトウェア Rhios V.4.4.4を用いて、190℃での溶融複素粘度-角周波数曲線のマスターカーブを作成した。得られたマスターカーブを下記式(5)で近似することにより、特性緩和時間(τ)を求めた。
<測定条件>
ジオメトリー:パラレルプレート
プレート直径:25mm
プレート間隔:1.5~2mm
ストレイン :5%
角周波数 :0.1~100rad/秒
測定雰囲気 :窒素
【0156】
(9)融点(Tm、単位:℃)、結晶化温度(Tc、単位:℃)
熱分析装置 示差走査熱量計(Diamond DSC Perkin Elmer社製)を用いて下記の方法により測定した。 融点は、段階3)中に観測されるヒートフロー曲線の吸熱ピークとして、結晶化温度は段階2)中に観測されるヒートフロー曲線の発熱ピークとして、それぞれ求めた
1)サンプル約10mgを窒素雰囲気下、150℃ 5分間保持
2)冷却 150℃~20℃(5℃/分)2分間保持
3)昇温 20℃~150℃(5℃/分)
【0157】
(10)溶融張力(MT、単位:cN)
メルトテンションテスター(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、温度が190℃で、直径9.55mmのバレルに充填した溶融樹脂を、ピストン降下速度5.5mm/分で、径が2.09mm、長さ8mmのオリフィスから押出した。押し出された溶融樹脂を、径が50mmの巻き取りロールを用い、巻き取り上昇速度40rpm/分で巻き取り、溶融樹脂が破断する直前の張力を測定した。引取開始からフィラメント状の成分(A)が切断するまでの間の最大張力をメルトテンションとした。
【0158】
(11) 極限粘度([η]、単位:dl/g)
テトラリン溶媒に重合体を溶解し、ウベローデ型粘度計を用いて135℃にて測定した。
【0159】
[フィルムの物性]
(12)ヘイズ、単位:%
ASTM D1003に規定された方法に従って測定した。
【0160】
(13)内部ヘイズ、単位:%
石英ガラス製のセル中にジメチルフタレートを満たし、ジメチルフタレート中にフィルムを沈めた状態で、ASTM D1003に規定された方法に従いヘイズの測定を行った。
【0161】
(14)外部ヘイズ、単位:%
ヘイズから内部ヘイズを引いた値を外部ヘイズとした。
【0162】
(15)引張破断強度(単位:MPa)
製膜したフィルムから、JIS K 6781 6.4記載の引張切断荷重測定用サンプル採取法に従って、長手方向が、それぞれ、引取り方向(MD)およびMD方向に対して直交する方向(TD)となる試験片を作成した。得られた試験片を用いて、チャック間80mm、標線間40mm、引張速度500mm/minの条件で引張試験を行い、引張破断強度を求めた。
【0163】
(16)引張破断伸び(単位:%)
製膜したフィルムから、JIS K 6781 6.4記載の引張切断荷重測定用サンプル採取法に従って、長手方向が、それぞれ、引取り方向(MD)およびMD方向に対して直交する方向(TD)となる試験片を作成した。得られた該試験片を用いて、チャック間80mm、標線間40mm、引張速度500mm/minの条件で引張試験を行い、引張破断伸びを求めた。
【0164】
(17)tanθ(滑り性)
作製したインフレーションフィルムから、160mm(長さ)×80mm(幅)のフィルムを二枚切り出した。摩擦角測定器(株式会社東洋精機製作所製)の傾斜板上に、二枚のうちの一方のフィルム(以下、試料フィルム(1)とする)を載置した。この時、試料フィルム(1)の上面を、インフレーションフィルム成形時のチューブ内面であった面とした。100mm(長さ)×65mm(幅)のスレッド(重さ1kg)の下面に、他方のフィルム(以下、試料フィルム(2))を取り付けた。
この時、スレッド面と、試料フィルム(2)のインフレーションフィルム成形時のチューブ外面であった面とが接するように試料フィルム(2)を取り付けた。

スレッドに取り付けられた試料フィルム(2)が傾斜板上に載置された試料フィルム(1)に接するように置いた。
傾斜上昇速度2.7°/秒で傾斜板を傾け、スレッドが動き始めた角度θを測定し、tanθ(面-面)で表示した。tanθ(面-面)が小さい方が、フィルムの滑り性は良好である。
なお、前記摩擦角測定器は、θを70°より大きくすることができないため、θが70°の時点でスレッドが動き始めない場合は、「測定不可」と記載した。
【0165】
(18)Tp(50)(単位:%)、Ra(単位:μm)、Ry(単位:μm)
レーザー顕微鏡(VK-8500、株式会社キーエンス製)と解析ソフト(VK形状解析アプリケーション version 1.06、株式会社キーエンス製)を使用し、下記の方法でフィルムの表面粗さ曲線を測定し、Tp(50)を算出した。
1)スライドガラスに微量のフタル酸ジメチルを付着させ、その上に20mm×50mmの作製したインフレーションフィルムを、インフレーションフィルム成形時のチューブ内面であった面が上になるように置いた。
2)レーザー顕微鏡の対物レンズを100倍にセットし、測定条件を下記の条件に設定した。ピント調整のため、レーザーON/OFFボタンをONにした後、レーザーが一番狭くなるように試料台を上下に調整し、その後レーザーON/OFFボタンをOFFにし、測定を開始した。
シャッタースピード: オート
ゲイン: オート
デジタルズーム: 1倍
光学ズーム: 1倍
VIEW MODE: カラー生画
RAN NODE: カラー超深度
PITCH: 0.02μm
測定範囲: 上下に3μm
3)測定した画像を以下の条件で平滑化処理を行った。
処理対象: 高さ
サイズ: 5×5
実行回数: 1回
ファイルタイプ: メディアン
4)測定した画像を以下の条件で傾き補正を行った。
補正方法: 曲面補正
処理対象: 高さ
5)解析表面粗さを実行し、Tp(50)、Ra、Ryの数値を得た。
【0166】
(19)ヒートシール(HS)強度(単位:N/15mm)
インフレーションフィルム成形時のチューブ内面であった面同士が接するように重ね、下記シール条件により、ヒートシーラー(テスター産業社製)を用いて、シールの方向がTD方向に平行になるようにヒートシールを行い、サンプルを得た。得られたサンプルを23℃で24時間以上放置した後、シール幅方向に対して直角方向にシール部を有する試験片を切り出した(シール幅×シールの長さ=10mm×15mm)。次に、得られた試験片のシール部を引張試験機により、300mm/分の速度で180°剥離して、幅15mmあたりのヒートシール強度を測定した。 得られたヒートシール強度の最大値を採用した。ヒートシール強度が5N/15mm以上であれば、低温ヒートシール性に優れる。
【0167】
<ヒートシール条件>
シール温度:110℃
シール時間:1秒
シール幅:10mm
シール圧力:100kPa
【0168】
[フィルムの成形性]
(20)樹脂圧力(単位:MPa) 、モーター電流(A)
プラコー社製インフレーションフィルム成形機(フルフライトタイプスクリューの単軸押出機(直径30mm、L/D=28)、ダイス(ダイ直径50mm、リップギャップ2.0mm)、二重スリットエアリング)を用い、加工温度170℃、押出量5.5kg/hr、フロストラインディスタンス(FLD)200mm、ブロー比1.8の加工条件で、厚み50μmのインフレーションフィルムを成形する際の押出機の樹脂圧力、および、モーター電流を測定した。該値が低いほど、フィルムの成形性に優れる。
【0169】
[成分(A)の製造例]
[実施例1]
(1)成分(H)の製造
特開2009-79180号公報に記載された実施例1(1)および(2)の成分(A)の調製と同様の方法で、成分(H)を製造した。元素分析の結果、Zn=11重量%、F=6.4重量%であった。
(2)予備重合触媒成分の製造
予め窒素置換した内容積210リットルの撹拌機付きオートクレーブに、ブタン45.5リットルを添加した後、ラセミ-エチレンビス(1-インデニル)ジルコニウムジフェノキシド58.6mmolを添加し、オートクレーブを50℃まで昇温して撹拌を2時間行った。次に、オートクレーブに上記(1)で得られた成分(H)1.17kgを添加した。その後、オートクレーブを31℃まで降温し、系内が安定した後、オートクレーブにエチレン0.1kg、水素(常温常圧)0.1リットルを添加し、続いてトリイソブチルアルミニウム234mmolを添加して予備重合を開始した。エチレンと水素(常温常圧)をそれぞれ1.0kg/hrと2.0リットル/hrで、30分間オートクレーブに供給し、その後、50℃へ昇温するとともに、エチレンと水素(常温常圧)をそれぞれ5.2kg/hrと16.7リットル/hrでオートクレーブに供給した。合計6.3時間の予備重合を実施した。予備重合終了後、エチレン、ブタンおよび水素などをパージし、残った固体を室温にて真空乾燥し、成分(H)1g当り28.3gのポリエチレンを含有する予備重合触媒成分を得た。該ポリエチレンの[η]は1.30dl/gであった。
(3)成分(A)(LLDPE1-1)の製造
減圧乾燥後、アルゴンで置換した内容積3リットルの撹拌機付きオートクレーブ内を真空にした。その後、オートクレーブに、水素を分圧で0.010MPa加え、ヘキセン-1 90mlおよびブタン 657gを添加し、オートクレーブを70℃まで昇温した。その後、エチレンを、その分圧が1.6MPaになるようにオートクレーブに加え、系内を安定させた。これに、濃度を1mmol/mlに調製したトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液 1.5mlを添加した。次に、濃度を0.1mmol/mlに調製したトリエチルアミンのトルエン溶液を0.75mlを加えた。更に、上記実施例1(2)で得られた予備重合触媒成分2427.9mgを添加した。全圧を一定に保つようにエチレン/水素混合ガス(水素0.05mol%)をフィードしながら70℃で、90分間重合を行った。重合中のオートクレーブ内のエチレン100mol%に対して、水素量の平均は0.47mol%であった。その結果、エチレン-1-ヘキセン共重合体(以下、LLDPE1-1と称する)のパウダー355gが得られた。成分(H)1g当りの重合活性は、4282g/gであった。
LLDPE1-1パウダーを、15mm卓上超小型押出機(有限会社マゴシ精密製作所製 LMEX)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、樹脂温度200~230℃の条件で造粒し、LLDPE1-1のペレットを得た。得られたLLDPE1-1のペレットの物性を評価し、結果を表1に示す。
【0170】
[実施例2]
(1)成分(A)(LLDPE1-2)の製造
減圧乾燥後、アルゴンで置換した内容積3リットルの撹拌機付きオートクレーブ内を真空にした。その後、オートクレーブに水素を分圧で0.014MPa加え、ヘキセン-1 90mlおよびブタン 657gを添加し、オートクレーブを70℃まで昇温した。その後、エチレンを、その分圧が1.6MPaになるようにオートクレーブに加え、系内を安定させた。これに、濃度を1mmol/mlに調製したトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液 1.5mlを添加した。次に、濃度を0.1mmol/mlに調製したトリエチルアミンのトルエン溶液を0.75ml加えた。更に、上記実施例1(2)で得られた予備重合触媒成分2446.7mgをした。全圧を一定に保つようにエチレン/水素混合ガス(水素0.05mol%)をフィードしながら70℃で、90分間重合を行った。重合中のオートクレーブ内のエチレン100mol%に対して、水素量の平均は0.55mol%であった。その結果、エチレン-1-ヘキセン共重合体(以下、LLDPE1-2と称する)のパウダー440gが得られた。成分(H)1g当りの重合活性は、5146g/gであった。LLDPE1-2のパウダーを、実施例1(3)と同様の条件で造粒し、LLDPE1-2のペレットを得ら。得られたLLDPE1-2ペレットの物性を評価し、結果を表1に示す。
【0171】
[実施例3]
(1)成分(A)(LLDPE1-3)の製造
減圧乾燥後、アルゴンで置換した内容積3リットルの撹拌機付きオートクレーブ内を真空にした。その後、オートクレーブに水素を分圧で0.020MPa加え、ヘキセン-1 90mlおよびブタン 657gを添加し添加、オートクレーブを70℃まで昇温した。その後、エチレンを、その分圧が1.6MPaになるように加え系内を安定させた。これに、濃度を1mmol/mlに調製したトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液 1.5mlを添加添加した。次に、濃度を0.1mmol/mlに調製したトリエチルアミンのトルエン溶液を0.75ml加えた。更に、上記実施例1(2)で得られた予備重合触媒成分2435.7mgを添加添加した。全圧を一定に保つようにエチレン/水素混合ガス(水素0.1mol%)をフィードしながら70℃で、90分間重合を行った。重合中のオートクレーブ内のエチレン100mol%に対して、水素量の平均は0.97mol%であった。その結果、エチレン-1-ヘキセン共重合体(以下、LLDPE1-3と称する)のパウダー440gが得られた。成分(H)1g当りの重合活性は、5295g/gであった。LLDPE1-3のパウダーを、実施例1(3)と同様の条件で造粒し、LLDPE1-3のペレットを得た。得られたLLDPE1-3ペレットの物性を評価し、結果を表1に示す。
【0172】
[実施例4]
(1)成分(A)(LLDPE1-4)の製造
減圧乾燥後、アルゴンで置換した内容積5リットルの撹拌機付きオートクレーブ内を真空にした。オートクレーブに水素を分圧で0.015MPa加え、ヘキセン-1 150mlおよびブタン 1099g添加添加し、70℃まで昇温した。その後、エチレンを、その分圧が1.6MPaになるように加え系内を安定させた。これに、濃度を1mmol/mlに調製したトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液 2.0mlを添加した。次に、濃度を0.1mmol/mlに調製したトリエチルアミンのトルエン溶液を1.0ml加えた。更に、上記実施例1(2)で得られた予備重合触媒成分1316.9mgを添加した。全圧を一定に保つようにエチレン/水素混合ガス(水素0.13mol%)をフィードしながら70℃で、3時間重合を行った。重合中のオートクレーブ内のエチレン100mol%に対して、水素量の平均は0.73mol%であった。その結果、エチレン-1-ヘキセン共重合体(以下、LLDPE1-4と称する)のパウダー581gが得られた。成分(H)1g当りの重合活性は、12480g/gであった。LLDPE1-4のパウダーを、実施例1(3)と同様の条件で造粒し、LLDPE1-4のペレットを得た。得られた該LLDPE1-4のペレットの物性を評価し、結果を表1に示す。
【0173】
[実施例5]
(1)成分(A)(LLDPE1-5)の製造
減圧乾燥後、アルゴンで置換した内容積5リットルの撹拌機付きオートクレーブ内を真空にした。その後、オートクレーブに水素を分圧で0.020MPa加え、ヘキセン-1 150mlおよびブタン 1099g添加し、オートクレーブを70℃まで昇温した。その後、エチレンを、その分圧が1.6MPaになるようにオートクレーブに加え、系内を安定させた。これに、濃度を1mmol/mlに調製したトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液 3.0mlを添加した。次に、濃度を0.1mmol/mlに調製したトリエチルアミンのトルエン溶液を1.0ml加えた。更に、上記実施例1(2)で得られた予備重合触媒成分1490.3mgを添加した。全圧を一定に保つようにエチレン/水素混合ガス(水素0.14mol%)をフィードしながら70℃で、3時間重合を行った。重合中のオートクレーブ内のエチレン100mol%に対して、水素量の平均は1.00mol%であった。その結果、エチレン-1-ヘキセン共重合体(以下、LLDPE1-5と称する)のパウダー559gが得られた。成分(H)1g当りの重合活性は、10619g/gであった。LLDPE1-5のパウダーを、実施例1(3)と同様の条件で造粒し、LLDPE1-5ペレットを得た。得られたLLDPE1-5ペレットの物性を評価し、結果を表1に示す。
【0174】
[実施例6]
(1)予備重合触媒成分の製造
予め窒素置換した内容積210リットルの撹拌機付きオートクレーブに、ブタン41リットルを添加した後、ラセミ-エチレンビス(1-インデニル)ジルコニウムジフェノキシド60.9mmolを添加し、オートクレーブを50℃まで昇温して撹拌を2時間行った。次に、オートクレーブに上記実施例1(1)で得られた成分(H)0.60kgを添加した。その後、オートクレーブを31℃まで降温し、系内が安定した後、オートクレーブにエチレン0.1kg、水素(常温常圧)0.1リットル添加し、続いてトリイソブチルアルミニウム240mmolを添加して予備重合を開始した。エチレンと水素(常温常圧)をそれぞれ0.5kg/hrと1.1リットル/hrで、30分間オートクレーブに供給し、その後、50℃へ昇温するとともに、エチレンと水素(常温常圧)をそれぞれ2.7kg/hrと8.2リットル/hrでオートクレーブに供給した。合計10.0時間の予備重合を実施した。予備重合終了後、エチレン、ブタンおよび水素などをパージし、残った固体を室温にて真空乾燥し、成分(H)1g当り39.6gのポリエチレンを含有する予備重合触媒成分を得た。該ポリエチレンの[η]は1.17dl/gであった。
(2)成分(A)(LLDPE1-6)の製造
上記(1)で得た予備重合触媒成分の存在下、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1-ブテンと1-ヘキセンとの共重合を実施し、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体(以下、LLDPE1-6と称する)のパウダーを得た。重合条件としては、重合温度を89℃;重合圧力を2MPa;エチレン100mol%に対して、水素量の平均を0.21%;エチレンと1-ブテンと1-ヘキセンとの合計に対して、1-ブテンのモル比を1.36%、1-ヘキセンのモル比を0.59%とした。重合中はガス組成を一定に維持するために、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセンおよび水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウム、およびトリエチルアミン(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比3%)を連続的に供給し、流動床の総パウダー重量80kgを一定に維持した。平均重合時間3.8hrであった。得られたLLDPE1-6のパウダーを、押出機(株式会社神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200~230℃の条件で造粒し、LLDPE1-6のペレットを得た。得られたLLDPE1-6のペレットの物性を評価し、結果を表2に示した。
【0175】
[実施例7]
(1)成分(A)(LLDPE1-7)の製造
実施例6(1)で得た予備重合触媒成分の存在下、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1-ブテンと1-ヘキセンとの共重合を実施し、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体(以下、LLDPE1-7と称する)のパウダーを得た。重合条件としては、重合温度を89℃;重合圧力を2MPa;エチレン100mol%に対する、水素量の平均比を0.07%;エチレンと1-ブテンと1-ヘキセンとの合計に対する1-ブテンのモル比を1.23%、1-ヘキセンのモル比を0.56%とした。重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1-ブテン、1-ヘキセンおよび水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウム、およびトリエチルアミン(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比3%)を連続的に供給し、流動床の総パウダー重量80kgを一定に維持した。平均重合時間5.5hrであった。LLDPE1-7のパウダーを、押出機(株式会社神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200~230℃の条件で造粒し、LLDPE1-7のペレットを得た。得られたLLDPE1-7のペレットの物性を評価し、結果を表2に示した。
【0176】
[実施例8]
(1)成分(A)(LLDPE1-8)の製造
実施例6(1)で得た予備重合触媒成分の存在下、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1-ブテンと1-ヘキセンとの共重合を実施し、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体(以下、LLDPE1-8と称する)のパウダーを得た。重合条件としては、重合温度を89℃;重合圧力を2MPa;エチレン100mol%に対する、水素量の平均を0.37%;エチレンと1-ブテンと1-ヘキセンとの合計に対する1-ブテンのモル比を1.37%、1-ヘキセンのモル比を0.69%とした。重合中はガス組成を一定に維持するために、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウム、トリエチルアミン(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比3%)および、酸素(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比24%)を連続的に供給し、流動床の総パウダー重量80kgを一定に維持した。平均重合時間4.0hrであった。得られたLLDPE1-8のパウダーを、押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200~230℃の条件で造粒し、LLDPE1-8のペレットを得た。得られたLLDPE1-8のペレットの物性を評価した。結果を表2に示した。
【0177】
[実施例9]
(1)成分(A)(LLDPE1-9)の製造
実施例6(1)で得た予備重合触媒成分の存在下、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1-ブテンと1-ヘキセンとの共重合を実施し、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体(以下、LLDPE1-9と称する)のパウダーを得た。重合条件としては、重合温度を89℃;重合圧力を2MPa;エチレン100mol%に対する、水素量の平均を0.16%;エチレンと1-ブテンと1-ヘキセンとの合計に対する1-ブテンのモル比を1.27%、1-ヘキセンのモル比を0.58%とした。重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウム、トリエチルアミン(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比3%)酸素(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比28%)を連続的に供給し、流動床の総パウダー重量80kgを一定に維持した。平均重合時間5.3hrであった。得られたLLDPE1-9のパウダーを、押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200~230℃の条件で造粒し、LLDPE1-9ペレットを得た。得られたLLDPE1-9ペレットの物性を評価した。結果を表2に示した。
【0178】
[実施例10]
(1)成分(A)(LLDPE1-10)の製造
実施例6(1)で得た予備重合触媒成分の存在下、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1-ヘキセンとの共重合を実施し、エチレン-1-ヘキセン共重合体(以下、LLDPE1-10と称する)のパウダーを得た。重合条件としては、重合温度を96℃、重合圧力を2MPa、エチレン100mol%に対する、水素量の平均を0.56%、エチレンと1-ヘキセンとの合計に対する1-ヘキセンのモル比を1.09%とした。重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1-ヘキセン、水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウム、トリエチルアミン(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比30%)、酸素(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比12%)を連続的に供給し、流動床の総パウダー重量80kgを一定に維持した。平均重合時間3.4hrであった。得られたLLDPE1-10のパウダーを、押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200~230℃の条件で造粒してLLDPE1-10のペレットを得た。得られた該LLDPE1-10のペレットの物性を評価し、結果を表3に示した。
【0179】
[実施例11]
(1)成分(A)(LLDPE1-11)の製造
上記実施例6(1)で得た予備重合触媒成分の存在下、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1-ヘキセンとの共重合を実施し、エチレン-1-ヘキセン共重合体(以下、LLDPE1-11と称する)のパウダーを得た。重合条件としては、重合温度を96℃、重合圧力を2MPa、エチレン100mol%に対する、水素量の平均を0.40%、エチレンと1-ヘキセンとの合計に対する1-ヘキセンのモル比を1.05%とした。重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1-ヘキセンおよび水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウム、トリエチルアミン(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比30%)および酸素(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比12%)を連続的に供給し、流動床の総パウダー重量80kgを一定に維持した。平均重合時間3.7hrであった。得られたLLDPE1-11のパウダーを、押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200~230℃の条件で造粒してLLDPE1-11ペレットを得た。得られたLLDPE1-11のペレットの物性を評価し、結果を表3に示した。
【0180】
[実施例12]
(1)成分(A)(LLDPE1-12)の製造
実施例6(1)で得た予備重合触媒成分の存在下、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1-ヘキセンとの共重合を実施し、エチレン-1-ヘキセン共重合体(以下、LLDPE1-12と称する)パウダーを得た。重合条件としては、重合温度を96℃、重合圧力を2MPa、エチレン100mol%に対する、水素量の平均を0.36%、エチレンと1-ヘキセンとの合計に対する1-ヘキセンのモル比を1.12%とした。重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1-ヘキセンおよび水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウム、トリエチルアミン(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比30%)、酸素(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比24%)を連続的に供給し、流動床の総パウダー重量80kgを一定に維持した。平均重合時間6.4hrであった。得られたLLDPE1-12のパウダーを、押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200~230℃の条件で造粒してLLDPE1-12のペレットを得た。得られたLLDPE1-12のペレットの物性を評価し、結果を表3に示した。
【0181】
[実施例13]
(1)成分(A)(LLDPE1-13)の製造
実施例6(1)で得た予備重合触媒成分の存在下、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1-ヘキセンとの共重合を実施し、エチレン-1-ヘキセン共重合体(以下、LLDPE1-13と称する)パウダーを得た。重合条件としては、重合温度を96℃、重合圧力を2MPa、エチレン100mol%に対する、水素量の平均を0.35%、エチレンと1-ヘキセンとの合計に対する1-ヘキセンのモル比を1.12%とした。重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1-ヘキセンおよび水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウム、トリエチルアミン(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比31%)および酸素(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比18%)を連続的に供給し、流動床の総パウダー重量80kgを一定に維持した。平均重合時間8.2hrであった。得られたLLDPE1-13のパウダーを、押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200~230℃の条件で造粒してLLDPE1-13ペレットを得た。得られたLLDPE1-13のペレットの物性を評価し、結果を表3に示した。
【0182】
[実施例14]
(1)成分(A)(LLDPE1-14)の製造
実施例6(1)で得た予備重合触媒成分の存在下、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1-ヘキセンとの共重合を実施し、エチレン-1-ヘキセン共重合体(以下、LLDPE1-14と称する)パウダーを得た。重合条件としては、重合温度を96℃、重合圧力を2MPa、エチレン100mol%に対する、水素量の平均を0.30%、エチレンと1-ヘキセンとの合計に対する1-ヘキセンのモル比を0.86%とした。重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1-ヘキセンおよび水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウム、トリエチルアミン(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比29%)、酸素(トリイソブチルアルミニウムに対するモル比21%)を連続的に供給し、流動床の総パウダー重量80kgを一定に維持した。平均重合時間3.7hrであった。得られたLLDPE1-14のパウダーを、押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/hr、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200~230℃の条件で造粒してLLDPE1-14のペレットを得た。得られたLLDPE1-14ペレットの物性を評価し、結果を表4に示した。
【0183】
[インフレーションフィルム成形]
実施例に記載した成分(B)、および、成分(C)は下記のものを使用した。
【0184】
成分(B)
エチレン-1-ヘキセン共重合体2-1(LLDPE2-1):メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン スミカセンE FV203N(住友化学株式会社製、エチレン-1-ヘキセン共重合体(添加剤無添加)、MFR 2.0g/10分、密度 913kg/m、MFRR=16.7)
エチレン-1-ヘキセン共重合体2-2(LLDPE2-2):メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン スミカセンE FV205(住友化学株式会社製、エチレン-1-ヘキセン共重合体(滑剤、アンチブロッキング剤無添加)、MFR 2.0g/10分、密度 922kg/m、MFRR=16.8)
成分(C)
高圧法低密度ポリエチレン1(LDPE1):高圧法低密度ポリエチレン スミカセン F200-0(住友化学株式会社製、高圧法低密度ポリエチレン(添加剤無添加)、MFR 2.0g/10分、密度 923kg/m、MFRR=53)
高圧法低密度ポリエチレン2(LDPE2):高圧法低密度ポリエチレン スミカセン G201-F(住友化学株式会社製、高圧法低密度ポリエチレン(添加剤無添加)、MFR 2.0g/10分、密度 919kg/m、MFRR=41)
【0185】
[実施例15]
LLDPE1-1、LLDPE2-1、および、LDPE1を表5に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した。次に、得られた混合物をプラコー社製インフレーションフィルム成形機(フルフライトタイプスクリューの単軸押出機(径30mmφ、L/D=28)、ダイス(ダイ径50mmφ、リップギャップ2.0mm)、二重スリットエアリング)を用い、加工温度170℃、押出量5.5kg/hr、フロストラインディスタンス(FLD)200mm、ブロー比1.8の加工条件で、厚み50μmのインフレーションフィルムを成形した。得られたインフレーションフィルムの物性を表5に示す。
【0186】
[実施例16]
LLDPE1-2、LLDPE2-1、および、LDPE1を表5に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表5に示す。
【0187】
[実施例17]
LLDPE1-3、LLDPE2-1、およびLDPE1を表5に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表5に示す。
【0188】
[実施例18]
LLDPE1-4、LLDPE2-2、およびLDPE1を表14に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表14に示す。
【0189】
[実施例19]
LLDPE1-5、LLDPE2-2、およびLDPE1を表14に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表14に示す。
【0190】
[実施例20]
LLDPE1-6、LLDPE2-1、およびLDPE1を表6に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表6に示す。
【0191】
[実施例21]
LLDPE1-7、LLDPE2-1、およびLDPE1を表6に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表6に示す。
【0192】
[実施例22]
LLDPE1-6、LLDPE2-2、およびLDPE2を表15に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表15に示す。
【0193】
[実施例23]
LLDPE1-7、LLDPE2-2、およびLDPE2を表15に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表15に示す。
【0194】
[実施例24]
LLDPE1-8、LLDPE2-1、およびLDPE1を表7に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表7に示す。
【0195】
[実施例25]
LLDPE1-8、LLDPE2-1、およびLDPE1を表7に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表7に示す。
【0196】
[実施例26]
LLDPE1-9、LLDPE2-1、およびLDPE1を表7に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表7に示す。
【0197】
[実施例27]
LLDPE1-9、LLDPE2-1、およびLDPE1を表8に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表8に示す。
【0198】
[実施例28]
LLDPE1-10、LLDPE2-1、およびLDPE1を表9に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表9に示す。
【0199】
[実施例29]
LLDPE1-10、およびLLDPE2-1を表9に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表9に示す。
【0200】
[実施例30]
LLDPE1-11、LLDPE2-1、およびLDPE1を表9に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表9に示す。
【0201】
[実施例31]
LLDPE1-11、およびLLDPE2-1を表10に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表10に示す。
【0202】
[実施例32]
LLDPE1-14、LLDPE2-1、およびLDPE1を表10に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表10に示す。
【0203】
[実施例33]
LLDPE1-14、およびLLDPE2-1を表10に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表10に示す。
【0204】
[実施例34]
LLDPE1-12、LLDPE2-1、およびLDPE1を表11に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表11に示す。
【0205】
[実施例35]
LLDPE1-12、LLDPE2-1、およびLDPE1を表11に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表11に示す。
【0206】
[実施例36]
LLDPE1-12、およびLLDPE2-1を表11に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表11に示す。
【0207】
[実施例37]
LLDPE1-13、LLDPE2-1、およびLDPE1を表11に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表11に示す。
【0208】
[実施例38]
LLDPE1-13、LLDPE2-1、およびLDPE1を表11に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表11に示す。
【0209】
[実施例39]
LLDPE1-13、およびLLDPE2-1を表12に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表13に示す。
【0210】
[実施例40]
LLDPE1-10、LLDPE2-1、およびLDPE2を表13に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表13に示す。
【0211】
[実施例41]
LLDPE1-11、LLDPE2-1、およびLDPE2を表13に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表13に示す。
【0212】
[実施例42]
LLDPE1-11、LLDPE2-1、およびLDPE2を表13に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表13に示す。
【0213】
[実施例43]
LLDPE1-10、LLDPE2-2、およびLDPE1を表16に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表16に示す。
【0214】
[実施例44]
LLDPE1-10、LLDPE2-2、およびLDPE1を表16に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表16に示す。
【0215】
[実施例45]
LLDPE1-10、およびLLDPE2-2を表16に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表16に示す。
【0216】
[実施例46]
LLDPE1-12、LLDPE2-2、およびLDPE1を表16に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表16に示す。
【0217】
[実施例47]
LLDPE1-12、LLDPE2-2、およびLDPE1を表16に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表16に示す。
【0218】
[実施例48]
LLDPE1-12、およびLLDPE2-2を表17に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表17に示す。
【0219】
[実施例49]
LLDPE1-10、LLDPE2-2、およびLDPE2を表18に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表18に示す。
【0220】
[実施例50]
LLDPE1-10、LLDPE2-2、およびLDPE2を表18に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表18に示す。
【0221】
[実施例51]
LLDPE1-12、LLDPE2-2、およびLDPE2を表18に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表18に示す。
【0222】
[実施例52]
LLDPE1-12、LLDPE2-2、およびLDPE2を表18に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表18に示す。
【0223】
[比較例1]
LLDPE2-1、およびLDPE1を表13に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表13に示す。
【0224】
[比較例2]
LLDPE2-2、およびLDPE1を表19に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表19に示す。
【0225】
[比較例3]
LLDPE2-2、およびLDPE2を表19に示す配合組成にてタンブルミキサーで混合した以外は、実施例15と同様にしてインフレーションフィルムを得た。得られたインフレーションフィルムの物性を表19に示す。

【0226】
【表1】
【0227】
【表2】









【0228】
【表3】
【0229】
【表4】












【0230】
【表5】
【0231】
【表6】


【0232】
【表7】
【0233】
【表8】



【0234】
【表9】
【0235】
【表10】

























【0236】
【表11】
【0237】
【表12】

















































【0238】
【表13】





















【0239】
【表14】
【0240】
【表15】



【0241】
【表16】
【0242】
【表17】


















































【0243】
【表18】
【0244】
【表19】
【0245】
本特許出願は、日本国特許出願第2017-045771号(出願日2017年3月10日)について優先権を主張するものであり、ここに参照することによって、それらの全体が本明細書中へ組み込まれるものとする。