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特許7006778添加剤の分析のための高速処理ガスクロマトグラフィーシステム及びそれを用いた分析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】添加剤の分析のための高速処理ガスクロマトグラフィーシステム及びそれを用いた分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/88 20060101AFI20220117BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20220117BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20220117BHJP
   G01N 30/68 20060101ALI20220117BHJP
   G01N 30/06 20060101ALI20220117BHJP
   G01N 30/60 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
G01N30/88 G
G01N30/02 Z
G01N30/72 F
G01N30/68 C
G01N30/06 Z
G01N30/88 P
G01N30/60 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020517331
(86)(22)【出願日】2018-10-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 KR2018012904
(87)【国際公開番号】W WO2019164087
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-04-01
(31)【優先権主張番号】10-2018-0021608
(32)【優先日】2018-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、リン
(72)【発明者】
【氏名】ジン、ミ キョン
(72)【発明者】
【氏名】ナム、ムーン ジャ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ビョン ヒョン
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-149844(JP,A)
【文献】特開2004-205313(JP,A)
【文献】特開2013-061324(JP,A)
【文献】特開2001-221786(JP,A)
【文献】国際公開第2014/175307(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101936973(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105954449(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106596745(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0157871(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102662020(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/281-20/292
G01N 1/00 - 1/44
G01N 27/60 -27/92
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)添加剤が含有された高分子試料に、前記高分子試料1gに対して第1溶媒を5~40mL使用して、前記高分子試料を溶解させる段階と、
(ii)前記(i)からの溶液に、前記高分子試料1gに対して第2溶媒を10~100mL使用して、前記高分子試料を沈殿させ、濾過して、前記高分子試料と前記添加剤とが含有された溶液に分離する段階と、
(iii)前記添加剤が含有された溶液を高速処理ガスクロマトグラフィー(GC)システムを用いて定性分析と定量分析とを同時に行う段階と、
を含む高分子中の添加剤の定性及び定量分析用の高温分析方法であって、
(iii)段階の前記高速処理ガスクロマトグラフィー(GC)システムにおいて、前記添加剤が含有された溶液の分析は、350~450℃で高温分析用カラムを使用して行われ、
前記高速処理ガスクロマトグラフィー(GC)システムは、
試料が注入される注入口と、
前記注入口から注入された試料が導入され、350~450℃で分析が可能な高温分析用カラムであるカラムと、
前記カラムに導入された試料を水素炎イオン化検出器(FID)及び質量分析器(MS)に分配するためのスプリッタと、
前記スプリッタと前記水素炎イオン化検出器との間に前記試料が移動する通路である第1リストリクターと、
前記スプリッタと前記質量分析器との間に前記試料が移動する通路である第2リストリクターと、
前記試料の定性分析を行う前記質量分析器と、
前記試料の定量分析を行う前記水素炎イオン化検出器と、を含み、
前記高分子試料が、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、及びポリウレタン(PU)からなるグループから選択され、
前記添加剤は、分子量が500Da以上であり、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、トリメリット酸トリエチルヘキシル(TOTM)、トリメリット酸トリイソノニル(TINTM)、トリメリット酸トリイソデシル(TIDTM)、及びイルガノックスからなるグループから選択され、
前記第1溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル(EA)、ベンゼン、トリクロロエチレン(TCE)、アセトン、二塩化エチレン、メチルエチルケトン、及びクロロホルムからなるグループから選択され、前記第2溶媒が、メタノール、エタノール、プロピレングリコール、及びジメチルスルホキシドからなるグループから選択される、高分子中の添加剤の定性及び定量分析用の高温分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年2月23日付の大韓民国特許出願第10-2018-0021608号に基づいた優先権の利益を主張し、当該大韓民国特許出願の文献に開示されたあらゆる内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、高分子材料中の高分子量添加剤の分析のための高速処理ガスクロマトグラフィーシステム及びそれを用いた分析方法に係り、より具体的には、高分子材料中の高分子量添加剤の定性分析及び定量分析を同時に進行し、昇温速度とカラム最大温度とを高めて、分析時間を短縮可能にした高速処理ガスクロマトグラフィーシステム及びそれを用いた分析方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、高分子の特性を強化するために、分子量が500Da以上である高分子量添加剤が多く使われており、この場合、ガスクロマトグラフィー(Gas Chromatography、GC)のランタイム(runtime、RT)が通常1時間以上かかる。一方、従来技術によれば、GC/MS(GC-Mass Spectrometry)によって定性分析を、GC/FID(GC with Flame Ionization Detector)によっては定量分析を行うが、定性分析と定量分析とを行うための機器を別途に使用して、それぞれ進行するために、このような分析を行うのには長時間がかかるという短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、前記従来技術の短所を克服するために、高分子材料中の高分子量添加剤の定性分析と定量分析とを同時に進行し、分析時間を短縮することができる高速処理ガスクロマトグラフィーシステム及びそれを用いた分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、添加剤の分析のための高速処理ガスクロマトグラフィー(GC)システムであって、試料が注入される注入口(inlet);前記注入口から注入された試料が導入されるカラム(column);前記カラムに導入された試料を水素炎イオン化検出器(Flame Ionization Detector、FID)及び質量分析器(Mass Spectrometry、MS)に分配するためのスプリッタ(splitter);前記スプリッタと前記水素炎イオン化検出器との間に前記試料が移動する通路である第1リストリクター(first restrictor);前記スプリッタと前記質量分析器との間に前記試料が移動する通路である第2リストリクター(second restrictor);前記試料の定性分析を行う前記質量分析器;及び前記試料の定量分析を行う前記水素炎イオン化検出器;を含み、前記高速処理ガスクロマトグラフィーシステムは、高分子試料の定性分析及び定量分析を同時に行う添加剤の分析のための高速処理ガスクロマトグラフィーシステムを提供する。
【0006】
前記課題を解決するために、さらに、本発明は、(i)添加剤が含有された高分子試料に、前記試料1gに対して第1溶媒を5~40mL使用して、前記試料を溶解させる段階;(ii)前記(i)からの溶液に、前記試料1gに対して第2溶媒を10~100mL使用して、前記試料を沈殿させ、濾過して、前記試料と前記添加剤とが含有された溶液に分離する段階;及び(iii)前記添加剤が含有された溶液を請求項1に記載の高速処理ガスクロマトグラフィー(GC)システムを用いて定性及び定量分析を同時に行う段階;を含む高分子試料中の添加剤の定性及び定量分析方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明による高分子量添加剤分析用の高速処理ガスクロマトグラフィーシステム及びそれを用いた分析方法によれば、定性分析と定量分析とを同時に進行しながらも、カラム最大温度を高めることにより、従来の定性/定量分析に比べて、分析時間を大きく短縮することができるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施様態による高速処理ガスクロマトグラフィーシステムの概略図を示した図面である。
図2図1による高速処理ガスクロマトグラフィーシステムでのスプリッタ300と他の構成要素との連結関係を示した図面である。
図3図1による高速処理ガスクロマトグラフィーシステムを用いて行われる高分子量可塑剤の定性分析及び定量分析を同時に行った場合の結果を示すグラフである。
図4A】従来技術によって高分子量可塑剤の定性分析を行った結果を示すグラフである。
図4B】従来技術によって高分子量可塑剤の定量分析を行った結果を示すグラフである。
図5図1による高速処理ガスクロマトグラフィーシステムを用いて行われる高分子量酸化防止剤の定性分析及び定量分析を同時に行った場合の結果を示すグラフである。
図6A】従来技術によって高分子量酸化防止剤の定性分析を行った結果を示すグラフである。
図6B】従来技術によって高分子量酸化防止剤の定量分析を行った結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施様態による高速処理ガスクロマトグラフィーシステム及び分析方法を詳しく説明する。添付図面は、本発明の例示的な形態を図示したものであって、これは、本発明をより詳しく説明するために提供されるものであり、これにより、本発明の技術的な範囲が限定されるものではない。
【0010】
また、図面符号に関係なく同一または対応する構成要素は、同じ参照番号を付与し、これについての重複説明は省略し、説明の便宜上、示された各構成部材の大きさ及び形状は、誇張または縮小されうる。
【0011】
図1は、本発明の一実施様態による高速処理ガスクロマトグラフィーシステム10の概略図を示したものである。
【0012】
高速処理ガスクロマトグラフィーシステム10は、注入口100、カラム200、スプリッタ300、第1リストリクター400、第2リストリクター500、水素炎イオン化検出器(FID)600、質量分析器(MS)700、及び定圧補助ガス供給部(constant pressure makeup gas supply)800を含む。
【0013】
本発明の一実施様態による高速処理ガスクロマトグラフィーシステム10で分析される試料は、一実施様態として高分子量添加剤であるか、2つ以上の高分子量添加剤が混合された試料であり、例えば、分子量が500Da以上である酸化防止剤及び/または可塑剤である。このような添加剤試料は、注入口100を通じて注入される。
【0014】
注入口100を通じて注入された試料は、カラム200に移動する。カラム200は、高温(例えば、450℃以下、または420℃以下、より具体的に、350~400℃)でも分析が可能なカラムからなっている。一実施様態において、カラム200は、350~450℃で分析が可能な高温分析用カラムである。高温でも分析が可能な前記カラムとして、例えば、ステンレススチール(SUS)、外部がポリイミドでコーティングされた溶融シリカ材質からなるカラムなどを使用することができる。
【0015】
カラム200としては、キャピラリー(capillary)カラムを使用し、その内径は、例えば、0.10μm~0.53μmである。しかし、本発明による高速処理ガスクロマトグラフィーシステム10でのカラム200の種類、寸法、材質などは、前述したものに限定されず、本発明が具現される多様な環境によって、多様な変形及び変更が可能である。
【0016】
試料は、前記のようなカラム200を通ってスプリッタ300を通過する。スプリッタ300には、水素炎イオン化検出器600及び質量分析器700がそれぞれ第1リストリクター400及び第2リストリクター500を経由して連結される。また、スプリッタ300には、定圧補助ガス供給部800も連結されている。
【0017】
図2は、スプリッタ300と各構成要素との連結関係を概略的に図示したものである。カラム200から導入された試料は、水素炎イオン化検出器600及び質量分析器700で同時に定性/定量分析が行われるようにスプリッタ300から分配される。
【0018】
一方、水素炎イオン化検出器600での定量分析は、常圧で行われ、質量分析器700での定性分析は、真空状態(vacuum)で行われるので、水素炎イオン化検出器600と質量分析器700とに圧力差が発生する。本発明による高速処理ガスクロマトグラフィーシステム10のスプリッタ300では、試料分配時に水素炎イオン化検出器600と質量分析器700とに圧力差を最小化して試料を分配することができる。
【0019】
より具体的には、スプリッタ300から供給される第1リストリクター400及び第2リストリクター500に試料を分配する場合に、第1リストリクター400及び第2リストリクター500にそれぞれ分配される試料の量の比率を調節して供給することができる。例えば、水素炎イオン化検出器600に連結された第1リストリクター400に供給される試料の量対質量分析器700に連結された第2リストリクター500に供給される試料の量の比率は、例えば、10:90~90:10である。このような試料の量の比率範囲は、リストリクターの適当な長さ調節を考慮したものである。
【0020】
そのために、第1リストリクター400及び第2リストリクター500の長さ及び/または内径を調節する方式で第1リストリクター400及び第2リストリクター500にそれぞれ分配される試料の量の比率を調節することができる。第1リストリクター400及び第2リストリクター500は、それぞれ管状を有するものである。一実施様態として、第1リストリクター400の長さ対第2リストリクター500の長さの比率は、例えば、水素炎イオン化検出器600に連結された第1リストリクター400に供給される試料の量対質量分析器700に連結された第2リストリクター500に供給される試料の量の比率が、50:50である場合、定圧補助ガス供給部800でカラム200と同じ流量を供給する状態で同じ内径である時、26.9:73.1である。または、他の実施様態として、水素炎イオン化検出器600に連結された第1リストリクター400に供給される試料の量対質量分析器700に連結された第2リストリクター500に供給される試料の量の比率が、20:80である場合、定圧補助ガス供給部800でカラム200と80:20の比率で流量を供給する状態で同じ内径である時、59.6:40.4である。一実施様態において、前記第1リストリクターの長さ対前記第2リストリクターの長さの比率が、3.5:96.5~76.8:23.2である。このようなリストリクターの長さ調節によって、MSとFIDとの間のスプリット比率(split ratio)が調節される。
【0021】
また、スプリッタ300から第1リストリクター400及び第2リストリクター500をそれぞれ経由して水素炎イオン化検出器600と質量分析器700とに試料が分配される時、圧力差を最小化するために、スプリッタ300に定圧補助ガス供給部800が連結されて、微量の補助ガスを質量分析器700に連結された第2リストリクター500に供給することができる。定圧補助ガス供給部800は、ガスクロマトグラフィー製造社と同じ会社で提供する機器であって、例えば、Agilent社のAux EPC(G3440A Option 301)を使用することができる。補助ガスとしては、例えば、ヘリウム(He)などが使われる。第2リストリクター500に供給される補助ガスの量は、例えば、分当たり1~10mLである。しかし、本発明による高速処理ガスクロマトグラフィーシステム10で定圧補助ガス供給部800からスプリッタ300を通じて第2リストリクター500に供給される補助ガスの種類、量などは、前述したものに限定されず、本発明が具現される多様な環境によって、多様な変形及び変更が可能である。
【0022】
例えば、第1リストリクター400の長さを1.026mにし、内径を0.15μmにし、第2リストリクター500の長さを21.475mにし、内径を0.25μmにする方式で定圧補助ガス供給部800でカラム200と同じ流量を供給する状態で第1リストリクターに供給される試料の量対第2リストリクターに供給される試料の量の比率を50:50に具現することができる。
【0023】
高温分析のために、スプリッタ300、第1リストリクター400及び第2リストリクター500も、高温(例えば、450℃以下、または420℃以下、より具体的に、350~400℃)に耐える材質であることが望ましい。スプリッタ300の材質は、例えば、ステンレススチール(SUS)などでもある。また、第1リストリクター400及び第2リストリクター500のそれぞれの材質は、例えば、ステンレススチール(SUS)などでもある。例えば、スプリッタ300は、ガスクロマトグラフィー製造社と同じ会社で提供するパートであって、例えば、Agilent社のTwo-way Splitter with Makeup Gas Accessory for Existing 7890Aまたは6890N GCs(G3180B)を使用して具現することもでき、第1リストリクター400及び第2リストリクター500は、それぞれFrontier Laboratories社のUltra ALLOY Deactivated Tubeを使用して具現することもできる。
【0024】
本発明による高速処理ガスクロマトグラフィーシステム10でのスプリッタ300、第1リストリクター400及び第2リストリクター500の寸法、材質などは、前述したものに限定されず、本発明が具現される多様な環境によって、多様な変形及び変更が可能である。
【0025】
さらに、本発明は、前記添加剤分析用システムを用いて高分子試料中の添加剤を定性及び定量分析する方法を提供する。本発明の分析方法によれば、前記添加剤の定性及び定量分析が同時に可能であって、分析時間を短縮することができる。
【0026】
具体的に、本発明の分析方法は、(i)添加剤が含有された高分子試料に、前記試料1gに対して第1溶媒を5~40mL使用して、前記試料を溶解させる段階;(ii)前記(i)からの溶液に、前記試料1gに対して第2溶媒を10~100mL使用して、前記試料を沈殿させ、濾過して、前記試料と前記添加剤とが含有された溶液に分離する段階;及び(iii)前記添加剤が含有された溶液を、本発明による高速処理ガスクロマトグラフィー(GC)システムを用いて定性及び定量分析を同時に行う段階;を含む。
【0027】
本発明の一実施様態によれば、(iii)段階の前記高速処理ガスクロマトグラフィー(GC)システムにおいて、前記添加剤が含有された溶液の分析は、350~450℃で高温分析用カラムを使用して行う。
【0028】
本発明の一実施様態によれば、前記高分子試料は、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン(PU)などでもある。
【0029】
本発明の一実施様態によれば、前記添加剤は、高分子量添加剤、例えば、分子量が500Da以上である添加剤であって、可塑剤、酸化防止剤、UV安定剤、増白剤、光開始剤、貯蔵安定剤、滑沢剤などでもある。具体的に、前記添加剤は、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、トリメリット酸トリエチルヘキシル(TOTM)、トリメリット酸トリイソノニル(TINTM)、トリメリット酸トリイソデシル(TIDTM)のような可塑剤、または、フェノール系酸化防止剤、例えば、Ciba社のイルガノックス(Irganox )シリーズを利用することができる。
【0030】
本発明の一実施様態によれば、前記第1溶媒は、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル(EA)、ベンゼン、トリクロロエチレン(TCE)、アセトン、二塩化エチレン、メチルエチルケトン、クロロホルムなどであり、前記第2溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシドなどであり得るが、これに限定されるものではない。
【0031】
以下、当業者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳しく説明する。しかし、本発明は、さまざまな異なる形態として具現可能であり、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0032】
実施例1:添加剤としての高分子量可塑剤の定性分析及び定量分析
本実施例では、高分子試料としてのポリ塩化ビニル(PVC)内の高分子量可塑剤としてのトリメリット酸トリイソノニル(TINTM:分子量588.87)の定性分析及び定量分析を、本発明による高速処理ガスクロマトグラフィーシステムを用いて同時に行った。
【0033】
具体的に、TINTMを含有するポリ塩化ビニル(PVC)0.5gをテトラヒドロフラン(THF)5mLに溶解させ、この溶液にメタノール20mLを添加して上澄み液を取ることにより、TINTMが含有された溶液を収得した。前記TINTMが含有された溶液を、本発明による高速処理ガスクロマトグラフィーシステムを用いて、次のような条件下に分析した:
【0034】
カラム:UA-5(HT/MS)(0.25mm ID×30mL、0.25m d.f.capillary)
インジェクタ(injector):split/splitless
インジェクタ温度:320℃
ガス流速:カラム(He):2mL/min
オーブン(oven)温度:初期値&時間:100℃、3min
プログラム速度(program rate):15℃/min
最終値&時間:400℃、10min
インターフェース(interface)温度:320℃
FID温度:320℃
【0035】
収得した定性分析及び定量分析の結果を図3に示した。図3から、分析にかかった時間が25分であることを確認することができる。
【0036】
比較例1
本比較例では、実施例1と同じ工程でPVC試料中のTINTMの定性分析をGC/MSで、前記可塑剤の定量分析をGC/FIDで、それぞれ次のような条件下で行った:
【0037】
GC/MS分析条件
カラム:Rxi-5ms(0.25mm ID×30mL、0.25m d.f.capillary)
インジェクタ:split/splitless
インジェクタ温度:300℃
ガス流速:カラム(He):1mL/min
オーブン温度:初期値&時間:100℃、3min
プログラム速度:15℃/min
最終値&時間:300℃、40min
インターフェース温度:300℃
【0038】
GC/FID分析条件
カラム:HP-5(0.32mm ID×30mL、0.25m d.f.capillary)
インジェクタ:split/splitless
インジェクタ温度:300℃
ガス流速:カラム(He):1mL/min
オーブン温度:初期値&時間:100℃、3min
プログラム速度:15℃/min
最終値&時間:300℃、40min
FID温度:300℃
【0039】
収得した定性分析及び定量分析の結果をそれぞれ図4A及び図4Bに示した。これら図面から、分析にかかった時間が90分であることを確認することができる。
【0040】
実施例2:添加剤としての高分子量酸化防止剤の定性分析及び定量分析
本実施例では、高分子試料としての耐熱性ポリプロピレン(PP)内の高分子量可塑剤としてのイルガノックス(Irganox)PS802(分子量683.2)の定性分析及び定量分析を、本発明による高速処理ガスクロマトグラフィーシステムを用いて同時に行った。
【0041】
具体的に、イルガノックスPS802(構造式:
【化1】

を含有するポリプロピレン(PP)0.5gをブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)5mg及びトリフェニルホスフェート(TPP)5mgが含まれたキシレン(xylene)10mLに140℃で溶解させ、この溶液にエタノール10mLを添加して、前記PPとイルガノックスPS802とが含有された溶液を収得した。前記イルガノックスPS802が含有された溶液を、本発明による高速処理ガスクロマトグラフィーシステムを用いて、次のような条件下に分析した:
【0042】
カラム:UA-5(HT/MS)(0.25mm ID×30mL、0.25m d.f.capillary)
インジェクタ:split/splitless
インジェクタ温度:320℃
ガス流速:カラム(He):2mL/min
オーブン温度:初期値&時間:100℃、3min
プログラム速度:15℃/min
最終値&時間:400℃、10min
インターフェース温度:320℃
FID温度:320℃
【0043】
収得した定性分析及び定量分析の結果を図5に示した。図5から、分析にかかった時間が25分であることを確認することができる。
【0044】
比較例2
本比較例では、実施例2と同じ工程でPP試料中のイルガノックスPS802の定性分析をGC/MSで、前記イルガノックスPS802の定量分析をGC/FIDで、それぞれ次のような条件下で行った:
【0045】
GC/MS分析条件
カラム:ZB-5MS(0.25mm ID×30mL、0.25m d.f.capillary)
インジェクタ:split/splitless
インジェクタ温度:300℃
ガス流速:カラム(He):1mL/min
オーブン温度:初期値&時間:100℃、3min
プログラム速度:15℃/min
最終値&時間:300℃、55min
インターフェース温度:300℃
【0046】
GC/FID分析条件
カラム:HP-5(0.32mm ID×30mL、0.25m d.f.capillary)
インジェクタ:split/splitless
インジェクタ温度:300℃
ガス流速:カラム(He):1mL/min
オーブン温度:初期値&時間:100℃、3min
プログラム速度:15℃/min
最終値&時間:300℃、55min
FID温度:300℃
【0047】
収得した定性分析及び定量分析の結果をそれぞれ図6A及び図6Bに示した。これら図面から、分析にかかった時間が110分であることを確認することができる。
【0048】
前記の実施例及び比較例から分かるように、本発明による高速処理ガスクロマトグラフィーシステムを用いて高分子試料中の可塑剤または酸化防止剤の定性分析及び定量分析を同時に行うことが、従来技術によって高分子試料中の可塑剤または酸化防止剤の定性分析をGC/MSで、定量分析をGC/FIDで、それぞれ行った場合に比べて、分析にかかる時間が著しく短縮されることを確認した。したがって、本発明は、従来技術と差別化された技術構成を備えることにより、従来技術から容易に予測することができない効果を提供すると言える。
【0049】
前述した本発明の技術的構成は、当業者が、本発明のその技術的思想や必須的な特徴を変更せずとも、他の具体的な形態で実施可能であることを理解できるであろう。したがって、前述した実施例は、あらゆる面で例示的なものであり、限定的ではないということを理解しなければならない。また、本発明の範囲は、前記の詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって表われる。また、特許請求の範囲の意味及び範囲、そして、その等価概念から導出されるあらゆる変更または変形された形態が、本発明の範囲に含まれると解釈されねばならない。
【符号の説明】
【0050】
10:高速処理ガスクロマトグラフィーシステム
100:注入口
200:カラム
300:スプリッタ
400:第1リストリクター
500:第2リストリクター
600:水素炎イオン化検出器
700:質量分析器
800:定圧補助ガス供給部
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6a
図6b