IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

特許7006783薄膜クロマトグラフィーを利用したアルデヒド及びケトンの検出方法
<>
  • 特許-薄膜クロマトグラフィーを利用したアルデヒド及びケトンの検出方法 図1
  • 特許-薄膜クロマトグラフィーを利用したアルデヒド及びケトンの検出方法 図2
  • 特許-薄膜クロマトグラフィーを利用したアルデヒド及びケトンの検出方法 図3
  • 特許-薄膜クロマトグラフィーを利用したアルデヒド及びケトンの検出方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】薄膜クロマトグラフィーを利用したアルデヒド及びケトンの検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/90 20060101AFI20220117BHJP
   G01N 30/06 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
G01N30/90
G01N30/06 E
G01N30/06 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020524271
(86)(22)【出願日】2019-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 KR2019000890
(87)【国際公開番号】W WO2019240349
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-05-05
(31)【優先権主張番号】10-2018-0066797
(32)【優先日】2018-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ス ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ビヨン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ビュン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ギョンジン
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-136294(JP,A)
【文献】特開平08-233797(JP,A)
【文献】国際公開第2011/149041(WO,A1)
【文献】特開2009-168623(JP,A)
【文献】特開2017-032403(JP,A)
【文献】特開2011-093813(JP,A)
【文献】特開平11-124382(JP,A)
【文献】米国特許第06060601(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0067996(US,A1)
【文献】Erno Tyihak et al.,Behavior of the Dinitrophenylhydrazones of Saturated Aldehydes and Ketones in Normal and Reversed Phase TLC and OPLC,Journal of planar chromatography,英国,1992年01月,vol.5, No.5,P376-382
【文献】Kochy Fung et al.,Measurement of Formaldehyde,Aerosol Science and Technology,1990年,Vol.12, No.1,P44-48
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/281-20/292
G01N 1/00 - 1/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)アルデヒド類またはケトン類試料を2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(2,4-DNPH)含有カートリッジに注入して、2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体を取得する段階と、
(ii)前記段階(i)からの2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体を溶媒を使用して抽出する段階と、
(iii)前記段階(ii)からの抽出物をTLCで分析する段階と、を含むアルデヒドまたはケトンの定性及び定量分析方法であって、
前記アルデヒド類またはケトン類試料を0.3~0.7μLの量で注入し、
前記段階(iii)で、TLC展開溶媒として酢酸エチル(EA)とヘキサン(Hex)との1:8~1:12の混合溶媒が使われる、アルデヒドまたはケトンの定性及び定量分析方法。
【請求項2】
前記段階(i)で、前記アルデヒド類またはケトン類試料が、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、アセトン、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、イソバレルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、o-トルアルデヒド、m-トルアルデヒド、p-トルアルデヒド、ヘキサアルデヒド、及び2,5-ジメチルベンズアルデヒドからなるグループから選択される1つ以上のものを含む、請求項1に記載のアルデヒドまたはケトンの定性及び定量分析方法。
【請求項3】
前記段階(ii)で、溶媒が、アセトニトリル(AN)である、請求項1または2に記載のアルデヒドまたはケトンの定性及び定量分析方法。
【請求項4】
前記段階(ii)で、2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体が、ホルムアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン、アセトアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン、アクロレイン-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン、アセトン-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン、プロピオンアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン、ブチルアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン、ベンズアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン、クロトンアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン、メタクロレイン-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン、2-ブタノン-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン、バレルアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン、m-トルアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン、及びヘキサアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾンからなるグループから選択される1つ以上のものである、請求項1からの何れか一項に記載のアルデヒドまたはケトンの定性及び定量分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年6月11日付の大韓民国特許出願第10-2018-0066797号に基づいた優先権の利益を主張し、当該大韓民国特許出願の文献に開示されたあらゆる内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、薄膜クロマトグラフィー(Thin Layer Chromatography、以下、「TLC」と略称する)を用いてアルデヒド類及び/またはケトン類化合物を検出する方法に係り、具体的には、最適のTLC分析条件を用いてアルデヒド類及び/またはケトン類化合物を短縮された時間内に同時に定性及び定量分析する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アルデヒド及びケトンのようなカルボニル(carbonyl)化合物は、都市及び地球大気の重要な構成成分であって、光化学スモッグを形成し、オゾン形成反応を進行させ、悪臭を発生させる。特に、ホルムアルデヒド(formaldehyde)は、短期間の露出でも、目、皮膚または呼吸器の粘液質膜を刺激し、気管支喘息またはアレルギーを起こし、動物実験の結果、発癌性物質とされており、人体に及ぼす影響についての研究が続けられている。このようなカルボニル化合物は、自動車排気ガス、断熱材、タバコの煙、家具など、屋内及び屋外に広く分布されており、環境汚染に対する憂慮も提起されている。
【0004】
低いレベルのカルボニル化合物を測定するためには、精密でありがらも、妨害要因がない技術が必要であるが、カルボニル化合物は、発色団(chromophore)を有しておらず、UV検出器としては検出することができない。これにより、空気及び水内の低分子量のアルデヒド及びケトンに対して、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(2,4-dinitrophenylhydrazine、以下、「2,4-DNPH」と略称する)を用いてカルボニル化合物をそのヒドラゾン誘導体で誘導体化(以下の図式参照)することにより、容易に視覚化して誘導体化合物を高性能液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography、以下、「HPLC」と略称する)で検出する方法が開発された。
【0005】
【化1】
【0006】
このような化学的誘導体化法を兼備したクロマトグラフィー法は、代表的なカルボニル化合物の測定方法であって、感度に優れ、選択的な検出が可能であるという長所がある。ところで、HPLC法は、高価なHPLC装備で進行するために、経済的利点がなかった。次いで、HPLC方法よりも便利な方法としてTLCを用いる方法が提案された。この方法の一様態では、試料抽出溶媒または展開溶媒として硫酸(HSO)、塩酸(HCl)などの強酸またはジクロロメタン(CHCl)が使われたが、強酸は、取り扱いが難しい問題があり、ジクロロメタンは、高温に露出される場合、有毒性塩化物ガスを放出する危険があった。また、TLC法の他の様態では、試料の注入量、展開溶媒の混合比率、TLCの移動相、固定相、蒸気相間の相互作用などによって分析結果の正確度が変わったりした。しかし、TLC法は、有害な溶媒を使用せずとも、移動相、固定相の相互作用で分離分析が可能であるという長所もある。
【0007】
これにより、TLC法の長所は保持しながらも、従来問題になった短所は発生しないアルデヒド及び/またはケトン検出のための便利でありながらも、正確なTLC分析方法についての研究が続けられ、本発明の発明者らは、アルデヒド及び/またはケトン検出のための最適のTLC分析法を提供した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、アルデヒド及び/またはケトンの分析時に、従来通常使われたHPLCを利用した方法と同等な分析結果をより短時間に提供するだけではなく、強酸とジクロロメタンとを含めた有害な溶媒を使用しなくてもよいTLCを利用したアルデヒド及び/またはケトンの定性及び定量分析法を提供することである。
【0009】
本発明の追加の目的は、従来使われたHPLCを利用した方法に比べて、少量の試料を使用することができるTLCを利用したアルデヒド及び/またはケトンの定性及び定量分析法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、最適のTLCプレート(plate)、TLC展開溶媒比率、試料量などを用いて短縮された時間内にアルデヒド類またはケトン類化合物を同時に定性及び定量分析する方法を提供する。
【0011】
より具体的に、本発明は、(i)アルデヒド類及び/またはケトン類試料を2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(2,4-DNPH)含有カートリッジに注入して、2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体(2,4-dinitrophenylhydrazone derivatives)を取得する段階;(ii)前記段階(i)からの2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体を溶媒を使用して抽出する段階;及びiii)前記段階(ii)からの抽出物をTLCで分析する段階;を含むアルデヒド及び/またはケトンの定性及び定量分析方法を提供する。
【0012】
一実施形態において、前記段階(i)での2,4-DNPH含有カートリッジは、当業者に通常使われるものであって、2,4-DNPHコーティングされたシリカを含有するものである。
【0013】
一実施形態において、前記段階(ii)での抽出溶媒は、当業者に通常使われるものであって、例えば、アセトニトリル(acetonitrile、以下、「AN」と略称する)である。
【0014】
一実施形態において、前記段階(iii)での抽出物は、少量で、例えば、0.3~0.7μLの量でTLCに使用することができる。
【0015】
一実施形態において、前記段階(iii)でTLCの展開溶媒は、酢酸エチル(ethyl acetate、以下、「EA」と略称する)とヘキサン(hexane、以下、「Hex」と略称する)との混合溶媒であって、例えば、EA:Hex=1:8~1:12のものを使用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の分析方法によれば、アルデヒド及び/またはケトン検出において、有害な溶媒を使用せずとも、従来のHPLCを利用した分析結果と同等な分析結果をより短時間に取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】アルデヒド及び/またはケトン化合物の2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体試料のHPLCクロマトグラムを示した図面である。
図2】本発明の一実施形態で使われたTLCプレートを示した図面である。
図3】アルデヒド及び/またはケトン化合物試料の使用量(0.5μL、1μL及び2μL)によるTLCプレートでの分離結果を示した図面である。
図4】TLCの展開溶媒(eluent)の種類及びその混合比率によるアルデヒド及び/またはケトン化合物試料の分離結果を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をより具体的に説明する。
本発明は、多様な変換を加え、さまざまな実施形態を有することができるので、特定実施形態を図面に例示し、詳細な説明で詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の実施形態で限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる、あらゆる変換式、均等式または代替式を含むものと理解しなければならない。本発明を説明するに当って、関連した公知技術についての具体的な説明が、本発明の要旨を不明にする恐れがあると判断される場合、その詳細な説明を省略する。
【0019】
本発明では、代表的なカルボニル化合物の測定方法である2,4-DNPH誘導体化及びHPLCを利用した方法と比較して、HPLCの分離能は保持しながらも、安価であり、迅速な最適の分析法を確保しようとする。
【0020】
これにより、本発明では、TLCを利用したカルボニル化合物の定性及び定量分析法を提供し、このために、最適のTLCプレート、最適の展開溶媒の比率及び使われる試料の最適の量を選定し、分析時間を短縮させることを解決課題とする。
【0021】
本発明によるTLCを利用したカルボニル化合物の定性及び定量分析法は、2,4-DNPH誘導体化によって肉眼で結果が見られ、多数の試料を同じ条件で同時に分析することができるという長所がある。
【0022】
前記課題を解決するために、本発明は、(i)アルデヒド類及び/またはケトン類試料を2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(2,4-DNPH)含有カートリッジに注入して、2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体を取得する段階;(ii)前記段階(i)からの2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体を溶媒を使用して抽出する段階;及び(iii)前記段階(ii)からの抽出物をTLCで分析する段階;を含むアルデヒドまたはケトンの定性及び定量分析方法を提供する。
一実施形態において、前記アルデヒド類及び/またはケトン類試料は、空気または水から採取する。
【0023】
一実施形態において、前記アルデヒド及び/またはケトンは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド(acetaldehyde)、アクロレイン(acrolein)、アセトン(acetone)、プロピオンアルデヒド(propionaldehyde)、ブチルアルデヒド(butyraldehyde)、ベンズアルデヒド(benzaldehyde)、クロトンアルデヒド(crotonaldehyde)、イソバレルアルデヒド(iso-valeraldehyde)、n-バレルアルデヒド、o-トルアルデヒド(o-tolualdehyde)、m-トルアルデヒド、p-トルアルデヒド、ヘキサアルデヒド(hexaldehyde)、2,5-ジメチルベンズアルデヒド(2,5-dimethylbenzaldehyde)などを含む。
【0024】
一実施形態において、前記2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体は、ホルムアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン(formaldehyde-2,4-dinitrophenylhydrazon)、アセトアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン(acetaldehyde-2,4-dinitrophenylhydrazon)、アクロレイン-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン(acrolein-2,4-dinitrophenylhydrazon)、アセトン-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン(acetone-2,4-dinitrophenylhydrazon)、プロピオンアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン(propionaldehyde-2,4-dinitrophenylhydrazon)、ブチルアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン(butyraldehyde-2,4-dinitrophenylhydrazon)、ベンズアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン(benzaldehyde-2,4-dinitrophenylhydrazon)、クロトンアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン(crotonaldehyde-2,4-dinitrophenylhydrazon)、メタクロレイン-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン(methacrolein-2,4-dinitrophenylhydrazone)、2-ブタノン-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン(2-butanone-2,4-dinitrophenylhydrazon)、バレルアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン(valeraldehyde-2,4-dinitrophenylhydrazon)、m-トルアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン(m-tolualdehyde-2,4-dinitrophenylhydrazon)、ヘキサアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン(hexaldehyde-2,4-dinitrophenylhydrazon)などを含む。
【0025】
一実施形態において、前記2,4-DNPH含有カートリッジは、2,4-DNPHでコーティングされたシリカを含有するか、酸性化された2,4-DNPH溶液に浸漬されている。前記アルデヒド類及び/またはケトン類試料が空気である場合、試料を2,4-DNPH含有カートリッジに1~2L/minの流速で5分間注入することができる。前記アルデヒド類及び/またはケトン類試料が水である場合には、pH3に緩衝された2,4-DNPHを直接試料に添加することができる。
一実施形態において、前記段階(ii)で、抽出溶媒は、アセトニトリル(AN)である。
【0026】
一実施形態において、前記段階(iii)で、2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体抽出物は、少量で、例えば、0.3~0.7μLの量でTLCに使用することができる。2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体抽出物の量が、前記範囲を外れる場合、TLCプレート上での分離解像度が低くて、試料分離がよく確認されない。本明細書において、前記抽出物の量は、試料量または試料注入量のような意味として使われる。
【0027】
他の実施形態において、前記段階(iii)で、2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体抽出物は、0.4~0.6μL、例えば、0.5μLの量で使用することができる。
【0028】
一実施形態において、前記段階(iii)で、TLCの展開溶媒は、酢酸エチル(EA)とヘキサン(Hex)との混合溶媒としてEA:Hex=1:8~1:12のものを使用することができる。TLCの展開溶媒の比率が、前記範囲を外れる場合、TLCプレート上で試料分離がよく確認されない。
【0029】
他の実施形態において、前記段階(iii)で、TLCの展開溶媒は、EA:Hex=1:9~1:11、例えば、1:10に使用することができる。
【0030】
前述した使用条件は、例示されたアルデヒド及び/またはケトンのうち、特に、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、アセトン、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド及びベンズアルデヒドの7種を分離するのに同時に適用され、これらを含んで他のアルデヒド及び/またはケトンのうち、2~3種を分離する場合には、前記の条件が同時に適用されないこともある。
【0031】
一実施形態において、前記段階(iii)で、TLCプレートは、RP-18 F254s TLCプレート(シリカゲルコーティング、アルミニウム支持体)であって、C18コーティング厚さ0.2mm、プレートサイズ10cm×1cmの仕様を有し、水を40%まで使用することができる。本発明で使用することができるTLCプレートの一例を図2に図示した。
【0032】
以下、当業者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳しく説明する。しかし、本発明は、さまざまな異なる形態として具現可能であり、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0033】
1.HPLCによる分析(先行技術)
従来技術によって、アルデヒド類/ケトン類試料をHPLCを用いて次のように分析した。
【0034】
(1)2,4-DNPH誘導体化されたアルデヒド及びケトンをアセトニトリル(AN)に溶解させた市販中である標準物質(3μg/mL)を標準物質として使用した(Sigma,St.Louis,MO)。
【0035】
(2)カルボニル-含有空気サンプルを2,4-DNPH含有カートリッジに1.5L/minの流速で5分間通過させて、2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体を取得した。
【0036】
(3)前記(2)からの着色された2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体をアセトニトリル(AN)で1分間抽出させて、抽出液の体積が合計5mLになるようにした。
【0037】
(4)前記(3)からの抽出物をHPLC逆相カラム(reversed-phase column)に注入し、HPLCを用いてUV検出器の波長を360nmに固定させて分析した。使われたHPLC分析条件は、次の通りである。
【0038】
HPLCシステム(system):Waters Aliance 2695
PDA検出器(photodiode array detector):Waters 2996
ソフトウェア(Software):Waters Empower 3(Build 3471)
【0039】
カラム(column):Capcell Pak C18(4.6mm ID×250mm L、5μm)
検出波長:241nm
流速(flow rate):1.0mL/min
カラム温度:40℃
試料注入量:10μL
【0040】
抽出溶媒:移動相A-アセトニトリル(AN、HPLC用、J.T.Baker);移動相B-超純水(溶媒浄化システム(solvent clarification system)で濾過して使用)。移動相Aを50%で30分までイソクラティック溶離(isocratic elution)挙動を調査した。
【0041】
(5)前記(4)から取得されたHPLCクロマトグラムから7種の2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体を確認した(図1参照)。測定された2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体の濃度は、下記表1に記載したものと同じである。
【0042】
【表1】
【0043】
前記7種の2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体の分離には、30分が必要となった。
【0044】
実施例1
本実施例では、試料注入量を0.5μLにした時のTLC分析結果を記載する。
【0045】
(1)カルボニル-含有空気サンプルを2,4-DNPH含有カートリッジに1.5L/minの流速で5分間通過させて、2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体を取得した。
【0046】
(2)前記(1)からの着色された2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体をアセトニトリル(AN)で1分間抽出させて、抽出液の体積が合計5mLになるようにした。
【0047】
(3)前記(2)からの抽出物をRP-18 F254s TLCプレート(シリカゲルコーティング、アルミニウム支持体)(C18コーティング厚さ0.2mm、プレートサイズ10cm×1cm)に置き、AN:HO=6:4、7:3及び8:2の混合溶媒でそれぞれ展開させた。取得されたTLC分離結果を図3に図示した(図3の左側の「アルデヒド7種0.5μL」参照)。
【0048】
図3から確認できるように、7種のアルデヒド及びケトンの2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体が4個(図3の左側に「ピーク成分」と表示)に分離されて、左側に提示された順序で、すなわち、1→2、3→4、5→6、7の順序で検出された(1:ホルムアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン、2:アセトアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン、3:アクロレイン-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン、4:アセトン-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン、5:プロピオンアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン、6:ブチルアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン、7:ベンズアルデヒド-2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン)。
【0049】
前記7種のアルデヒド及びケトンの2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体の分離には、5分が必要となった。
【0050】
比較例1.1
【0051】
試料注入量を1μLに変更したことを除いては、実施例1と同様に行った。取得されたTLC分離結果を図3に図示した(図3中間の「アルデヒド7種1μL」参照)。
【0052】
図3から確認できるように、7種のアルデヒド及びケトンの2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体が、個別的に分離されていない。
【0053】
比較例1.2
試料注入量を2μLに変更したことを除いては、実施例1と同様に行った。取得されたTLC分離結果を図3に図示した(図3の右側の「アルデヒド7種2μL」参照)。
【0054】
図3から確認できるように、7種のアルデヒド及びケトンの2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体が、個別的に分離されていない。
【0055】
前記の実施例1と比較例1.1及び比較例1.2から、同じ展開溶媒下で試料注入量が0.5μLである場合が、1μL及び2μLである場合に比べて、TLC解像度が高いということが分かる。
【0056】
実施例2
本実施例では、試料注入量を0.5μLに固定した時、TLC展開溶媒として酢酸エチル(EA):ヘキサン(Hex)=1:10の混合溶媒を使用したTLC分析結果を記載する。
【0057】
前記実施例1の(3)で、AN:HO=6:4、7:3及び8:2の混合溶媒の代わりに、EA:Hex=1:10を使用したことを除いては、前記実施例1と同様に行った。取得されたTLC分離結果を図4に図示した(図4の右側の「1:10」参照)。
【0058】
図4から確認できるように、7種のアルデヒド及びケトンの2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体が、それぞれの成分に分離された(図4の右側に「ピーク成分1~7」と表示;7→6→5→4→3→2→1)。分離された前記誘導体の濃度は、下記表2のようである。
【0059】
【表2】
【0060】
前記7種のアルデヒド及びケトンの2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体の分離には、5分が必要となった。したがって、TLC法を用いて従来HPLC法による分析結果と同等な結果を取得するのにかかる時間が短縮された。
【0061】
比較例2.1
EA:Hexの混合比率を1:15に変更したことを除いては、実施例2と同様に行った。取得されたTLC分離結果を図4に図示した(図4中間の「1:15」参照)。
【0062】
図4から確認できるように、7種のアルデヒド及びケトンの2,4-DNPH誘導体が、3個(7→4、5、6→1、2、3)に分離され、個別的には分離されていない。
【0063】
比較例2.2
EA:Hexの混合比率を1:20に変更したことを除いては、実施例2と同様に行った。取得されたTLC分離結果を図4に図示した(図4の左側の「1:20」参照)。
【0064】
図4から確認できるように、7種のアルデヒド及びケトンの2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体が、3個(7→4、5、6→1、2、3)に分離され、個別的には分離されていない。
【0065】
前記の実施例2と比較例2.1及び比較例2.2から、試料の注入量が同じ条件下で展開溶媒としてEA:Hex=1:10である場合に、7種の試料がいずれも分離されることを確認した。
【0066】
前述したように、本発明によれば、TLCによるアルデヒド及び/またはケトンの検出時に、最適の展開溶媒の混合比率及び試料の注入量を提供することにより、それぞれの成分の分離が明確であり、HPLC法に比べて、分析時間が短縮されることを確認することができる。
【0067】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳しく記述したところ、当業者において、このような具体的な記述は、単に望ましい実施形態であり、これにより、本発明の範囲が制限されるものではないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、下記の特許請求の範囲とそれらの等価物とによって定義される。
図1
図2
図3
図4