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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】着色組成物、及びカラーフィルタ
(51)【国際特許分類】
   C09B 5/62 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
C09B5/62
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021559342
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 JP2021022016
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2020136651
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一司
(72)【発明者】
【氏名】浅見 亮介
【審査官】▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-81831(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065359(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/015962(WO,A1)
【文献】特開2002-22922(JP,A)
【文献】特開2003-238838(JP,A)
【文献】特開平5-295308(JP,A)
【文献】国際公開第2019/116882(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00-69/10
C09D 1/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるスルホン酸塩化合物と、C.I.ピグメントバイオレット29とを含む着色組成物。
A-SOM・nH2O 式(1)
[式(1)中のAは、ハロゲン、ホウ素、窒素、硫黄、リン、酸素を構造中に有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基であり、Mは、Hを除く1~3価のカチオンの1当量であり、nは0~5の整数である]
【請求項2】
下記式(1)で表されるスルホン酸塩化合物0.5部をpHが6~8である純水10部に混合したスルホン酸塩化合物水溶液のpHが2~12であり、且つJISK 0115:2004に従い測定した波長域380~780nmにおける最大吸光度が、C.I.ピグメントバイオレット29の最大吸光度の10%以下であるスルホン酸塩化合物である請求項1に記載の着色組成物。
A-SOM・nH2O 式(1)
[式(1)中のAは、ハロゲン、ホウ素、窒素、硫黄、リン、酸素を構造中に有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基であり、Mは、Hを除く1~3価のカチオンの1当量であり、nは0~5の整数である]
【請求項3】
前記スルホン酸塩化合物水溶液pHが6~11である請求項2に記載の着色組成物。
【請求項4】
前記式(1)で表されるスルホン酸塩化合物が、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アントラキノンスルホン酸塩、2-モルホリノアルキルスルホン酸塩、アリルスルホン酸塩、(±)-10-カンファースルホン酸塩、直鎖アルキルスルホン酸塩、分岐アルキルスルホン酸塩から選ばれる少なくとも1つのスルホン酸塩化合物である請求項1~3のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項5】
前記式(1)で表されるスルホン酸塩化合物が、下記式(1-1)~(1-10)
【化1】
式(1-1)
【化2】
式(1-2)
【化3】
式(1-3)
【化4】
式(1-4)
【化5】
式(1-5)
【化6】
式(1-6)
【化7】
式(1-7)
【化8】
式(1-8)
【化9】
式(1-9)
【化10】
式(1-10)
で表される化合物、2-ナフタレンスルホン酸ナトリウム、2-モルホリノエタンスルホン酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、メタンスルホン酸カリウム、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、(±)-10-カンファースルホン酸ナトリウム、及び1-デカンスルホン酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1つの化合物である請求項1~4のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の着色組成物を含有するカラーフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色組成物、及びカラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の分野において、カラーフィルタ基板とTFTアレイ基板を一体化させたカラーフィルタオンアレイ(COA)を導入した液晶パネルが注目を浴びている。COAを用いれば、上記二つの基板を用いた場合に行われる精密な位置合わせが不要となるとともに、カラーフィルタの赤、青、緑の各画素を限界にまで微細化することができるため、液晶パネルの高精細化が可能となる。
【0003】
このようなCOA用の樹脂ブラックマトリクスについては、高い遮光性が必要とされるため、厚膜化が要求されている。しかし、樹脂ブラックマトリクスの膜厚が増大するにつれて、露光された部分での膜厚方向に対する架橋密度の差が拡大するため、高感度化を達成し良好な形状のブラックパターンを得ることが困難になる。また、高遮光化の手段として、遮光材を大量に使用することも試みられているが、遮光材としてカーボン等の導電性材料を使用した場合、ブラックマトリクスの比誘電率が高くなり体積抵抗が低下することにより、表示装置の信頼性を低下させるという問題があった。
【0004】
このような欠点を解消するために、カーボンブラックに代えて、有彩色の有機顔料を黒色となる様に混合して得た黒色有機顔料組成物(有機ブラックマトリクス)を遮光材に用いる試みが最近活発に行われている。
【0005】
上記のようなカラーフィルタを製造するための着色組成物、分散液については、例えば下記特許文献1-4に記載がある。特に、ペリレンと色素のスルホン酸誘導体の組み合わせでは分散液粘度が高い。また、誘導体が有機色素誘導体の場合、可視領域における吸光度が高く、着色剤単体と比べ色相が変化してしまう。また紫外領域における吸光度が高く、紫外線硬化を阻害してしまうことが問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-213403号公報
【文献】特開2002-22922号公報
【文献】特開2009-69822号公報
【文献】国際公開第2015/015962号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1-4に記載のように、難分散性染顔料の分散性改善を目的として染顔料誘導体を添加することは業界内では公知汎用の手法であるが、着色力が高い染顔料誘導体を添加すると、スペクトルの純度低下が問題となる。カラーフィルタ用途、ディスプレイ遮光用途では、塗料やインクジェット用途と比較し、染顔料に高度な分散能が要求される。
【0008】
近年ディスプレイ用遮光部材(ブラックマトリクスまたはブラックカラムスペーサ、ブラックバンク)作製工程で使用されているグリコール系溶剤への高度な分散が困難であるC.I.ピグメントバイオレット29などのペリレン系化合物を含有しながら、グリコール系溶剤への高度な分散を実現し、ディスプレイ製造工程においてレジスト硬化不良やスペクトル純度低下を起こさずに使用できる着色組成物が求められている。従って、本発明の課題は、上記の課題を解決できる着色組成物及びカラーフィルタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、検討の結果、分散性改善に使用される銅フタロシアニンスルホン酸などの一般的な染顔料誘導体に比べ、可視領域の吸光度が大幅に低いスルホン酸塩を有する化合物を分散助剤として使用することで、C.I.ピグメントバイオレット29における分散性を改善できることを見出した。
【0010】
本発明者らは、上記分散性改善のメカニズムは以下のとおりであると推測している。
C.I.ピグメントバイオレット29以外のペリレンは、酸性度の高いNH部が置換されており酸性度が低いため、酸性誘導体の母骨格がペリレンに吸着し、酸性基が分散剤のアミンと吸着するという機構で分散、低粘度化が進行するため、通常使用の範囲(1~20%程度添加)では酸が過剰となることはない。一方で、C.I.ピグメントバイオレット29は、酸性度の高いイミド部位N-Hを有しており、分散剤アミンと直接作用するため、酸性のスルホン酸誘導体を添加すると、酸が過剰となる。分散系中の酸塩基のバランスの観点から、酸が過剰となると顔料の凝集が促進され、粘度が高くなる。一方で塩基性の分散剤が過剰となると、分散剤高分子同士の絡まりあいにより粘度が高くなる。よって、C.I.ピグメントバイオレット29分散系におけるスルホン酸塩は、系中の酸性度を上げずに過剰なアミンと作用することで、前記の分散剤分子の絡まりあいによる高粘度化を防ぐことができる。
【0011】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
項1. 下記式(1)で表されるスルホン酸塩化合物と、C.I.ピグメントバイオレット29とを含む着色組成物。
A-SOM・nH2O 式(1)
[式(1)中のAは、ハロゲン、ホウ素、窒素、硫黄、リン、酸素を構造中に有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基であり、Mは、Hを除く1~3価のカチオンの1当量であり、nは0~5の整数である]
項2. 下記式(1)で表されるスルホン酸塩化合物0.5部をpHが6~8である純水10部に混合したスルホン酸塩化合物水溶液のpHが2~12であり、且つJISK 0115:2004に従い測定した波長域380~780nmにおける最大吸光度が、C.I.ピグメントバイオレット29の最大吸光度の10%以下であるスルホン酸塩化合物である項1に記載の着色組成物。
A-SOM・nH2O 式(1)
[式(1)中のAは、ハロゲン、ホウ素、窒素、硫黄、リン、酸素を構造中に有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基であり、Mは、Hを除く1~3価のカチオンの1当量であり、nは0~5の整数である]
項3. 前記スルホン酸塩化合物水溶液pHが6~11である項2に記載の着色組成物。
項4. 前記式(1)で表されるスルホン酸塩化合物が、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アントラキノンスルホン酸塩、2-モルホリノアルキルスルホン酸塩、アリルスルホン酸塩、(±)-10-カンファースルホン酸塩、直鎖アルキルスルホン酸塩、分岐アルキルスルホン酸塩から選ばれる少なくとも1つのスルホン酸塩化合物である項1~3のいずれか1項に記載の着色組成物。
項5. 前記式(1)で表されるスルホン酸塩化合物が、下記式(1-1)~(1-10)
【化1】
式(1-1)
【化2】
式(1-2)
【化3】
式(1-3)
【化4】
式(1-4)
【化5】
式(1-5)
【化6】
式(1-6)
【化7】
式(1-7)
【化8】
式(1-8)
【化9】
式(1-9)
【化10】
式(1-10)
で表される化合物、2-ナフタレンスルホン酸ナトリウム、2-モルホリノエタンスルホン酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、メタンスルホン酸カリウム、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、(±)-10-カンファースルホン酸ナトリウム、及び1-デカンスルホン酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1つの化合物である項1~4のいずれか1項に記載の着色組成物。
項6. 項1~5のいずれか1項に記載の着色組成物を含有するカラーフィルタ。
【発明の効果】
【0012】
本発明の着色組成物は、C.I.ピグメントバイオレット29と非色素系スルホン酸塩を組み合わせることで、C.I.ピグメントバイオレット29と色素のスルホン酸誘導体を組み合わせたものよりとりわけ低粘度な分散液が得られる。また、C.I.ピグメントバイオレット29以外のペリレンとスルホン酸塩を組み合わせたものに比べて、スルホン酸塩添加時の粘度低減効果が大きい。本発明の着色組成物では、可視領域における吸光度が小さい非色素系スルホン酸塩誘導体を使用しているので、誘導体添加後でも着色剤単体の色相からの変化が小さい。また紫外領域における吸光度が小さいので、紫外線硬化を阻害することがない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[着色組成物]
本発明の着色組成物は、下記式(1)で表されるスルホン酸塩化合物と、C.I.ピグメントバイオレット29(以下、「PV29」と称する)とを含む。
A-SOM・nH2O 式(1)
[式(1)中のAは、ハロゲン、ホウ素、窒素、硫黄、リン、酸素を構造中に有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基であり、Mは、Hを除く1~3価のカチオンの1当量であり、nは0~5の整数である]
【0014】
式(1)中のAであるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子などが挙げられる。炭素数1~20の炭化水素基としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、アントラキノンなどの炭素数6~20の芳香族炭化水素基、炭素数1~12の直鎖若しくは分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。また、MであるHを除く1~3価のカチオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、チタン、クロム、アルミニウム、マンガン、鉄、銅、ニッケル、銀、金、鉛、スズなどが挙げられる。
【0015】
上記式(1)で表されるスルホン酸塩化合物は、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アントラキノンスルホン酸塩、2-モルホリノアルキルスルホン酸塩、アリルスルホン酸塩、(±)-10-カンファースルホン酸塩、直鎖アルキルスルホン酸塩、分岐アルキルスルホン酸塩から選ばれる少なくとも1つのスルホン酸塩化合物であることが好ましい。これらのスルホン酸塩化合物は、系中の酸性度を上げずに過剰なアミンと作用することで、前記の分散剤分子の絡まりあいによる高粘度化を防ぐことができ、とりわけ低粘度な分散液とすることができる。
【0016】
また、上記式(1)で表されるスルホン酸塩化合物は、下記式(1-1)~(1-10)
【化11】
式(1-1)
【化12】
式(1-2)
【化13】
式(1-3)
【化14】
式(1-4)
【化15】
式(1-5)
【化16】
式(1-6)
【化17】
式(1-7)
【化18】
式(1-8)
【化19】
式(1-9)
【化20】
式(1-10)
で表される化合物、2-ナフタレンスルホン酸ナトリウム、2-モルホリノエタンスルホン酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、メタンスルホン酸カリウム、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、(±)-10-カンファースルホン酸ナトリウム、及び1-デカンスルホン酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1つの化合物であることが好ましい。
【0017】
本発明の着色組成物において、上記式(1)で表されるスルホン酸塩化合物の割合は、PV29 100質量部に対して、例えば0.5~20質量部、好ましくは1~5質量部である。
【0018】
本発明の着色組成物は、PV29以外のペリレン系有機顔料を含んでいてもよい。このようなペリレン系有機顔料としては、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド189、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド228、C.I.ピグメントブラック31、C.I.ピグメントブラック32などが挙げられる。
【0019】
また、上記ペリレン系有機顔料以外に遮光性を持たせるために、その他の有機顔料を併用してもよい。このような有機顔料としては、青色有機顔料、黄色有機顔料、赤色有機顔料が挙げられ、これらの各色有機顔料としては、化学構造に基づけば、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、インダンスレン系、ペリレン系等の有機顔料が挙げられる。以下、本発明において使用できる顔料の具体例をピグメントナンバーで示す。
【0020】
青色有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、26、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、64、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79、80等を挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、25、26、60、80が挙げられ、さらに好ましくはC.I.ピグメントブルー15:6、25、26、60、80を挙げることができる。
【0021】
黄色有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、1:1、2、3、4、5、6、9、10、12、13、14、16、17、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、41、42、43、48、53、55、61、62、62:1、63、65、73、74、75、81、83、87、93、94、95、97、100、101、104、105、108、109、110、111、116、117、119、120、126、127、127:1、128、129、133、134、136、138、139、142、147、148、150、151、153、154、155、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、172、173、174、175、176、180、181、182、183、184、185、188、189、190、191、191:1、192、193、194、195、196、197、198、199、200、202、203、204、205、206、207、208、229等を挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントイエロー83、117、129、138、139、150、154、155、180、185、229が挙げられ、さらに好ましくはC.I.ピグメントイエロー83、138、139、150、180、185、229を挙げることができる。
【0022】
赤色有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、12、14、15、16、17、21、22、23、31、32、37、38、41、47、48、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、50:1、52:1、52:2、53、53:1、53:2、53:3、57、57:1、57:2、58:4、60、63、63:1、63:2、64、64:1、68、69、81、81:1、81:2、81:3、81:4、83、88、90:1、101、101:1、104、108、108:1、109、112、113、114、122、123、144、146、147、149、151、166、168、169、170、172、173、174、175、176、177、178、179、181、184、185、187、188、190、193、194、200、202、206、207、208、209、210、214、216、220、221、224、230、231、232、233、235、236、237、238、239、242、243、245、247、249、250、251、253、254、255、256、257、258、259、260、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276等を挙げることができる。この中でも、好ましくはC.I.ピグメントレッド48:1、122、168、177、202、206、207、209、224、242、254が挙げられ、さらに好ましくはC.I.ピグメントレッド177、209、224、254を挙げることができる。
【0023】
PV29などの本発明の着色組成物における顔料の一次粒子径は、例えば20~150nmであり、高い遮光性を付与するためは20~100nmが好ましい。顔料の一次粒子経が150nmを超えると分散安定性が悪くなり、その結果、光散乱を起こしやすくなることがある。
【0024】
本発明の着色組成物における顔料の一次粒子径とは、着色組成物をシクロヘキサノン等の溶剤に分散させ、コロイド膜上に該分散液を塗布し、走査型電子顕微鏡(TEM)の画像を撮影する。得られた撮影画像の1000個の粒子サイズを計測し、その平均値を顔料の一次粒子径とした。
【0025】
顔料の微細化は、大別すると乾式粉砕、湿式粉砕のような粉砕方法により行われるが、本発明で実施されているように、顔料に対して高い無機塩倍率により、長時間混練するソルベントソルトミリングが好適である。
【0026】
本発明においては、必要に応じて、緑色有機顔料、紫色有機顔料、橙色有機顔料、茶色有機顔料等を併用して色調調整しても良い。これら併用する他色有機顔料としても、平均一次粒子径が20~100nmのものを用いることが好ましい。
【0027】
併用するのに好適な青色、黄色、赤色以外の色の有機顔料としては、C.I.ピグメントグリーン7、36、58、62、63、C.I.ピグメントオレンジ13、36、38、60、62、64、71、72、C.I.ピグメントバイオレット19、23、37等を挙げることができる。
【0028】
用いる有機顔料及びその組み合わせは、目的とするブラックマトリクスに求められている黒色度が得られれば良い。青色、黄色、赤色の三原色を減法混色することで黒色とすることは、当業者の技術常識に属することであり、それらの混合割合は特に制限されるものではない。しかしながら、例えば、青色、黄色、赤色の各色有機顔料の合計を質量換算で100%とした際、質量基準で各色33%を中心として、各色ともプラスマイナス7%で増減して併用することで、黒色を調整することができる。
【0029】
これら有機顔料組成物を有機溶剤中に分散させる場合、分散性の向上、及び分散安定性の向上のために、樹脂系分散剤を使用してもよい。この樹脂系分散剤は、有機顔料とアンカー部位と結合して、相溶性部分が分散媒に伸長して分散体を構成する機能を有するものであり、後記する感光性組成物の調製に用いるアルカリ可溶性樹脂や、光重合性モノマーとは、別種のものである。
【0030】
樹脂系分散剤としては、高分子鎖を有するもの、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリオキシエチレングリコールジエステル、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。中でも、ポリエステル樹脂系分散剤及び/又はアクリル樹脂系分散剤が、分散性、耐熱性、耐光性の点で好ましい。
【0031】
各種樹脂系分散剤の具体例としては、商品名で、アジスパー(味の素ファインテクノ社製)、EFKA(BASF社製)、DISPERBYK(ビックケミー社製)、BYKLPN(ビックケミー社製)、ディスパロン(楠本化成社製)、SOLSPERSE(ルーブリゾール社製)、KP(信越化学工業社製)、ポリフロー(共栄社化学社製)等を挙げることができる。これらの分散剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用することができる。
【0032】
樹脂系分散剤は、各色の有機顔料の合計の質量換算100部当たり、通常30~60部、好ましくは38~50部である。
【0033】
本発明の着色組成物の調製には、通常有機溶剤が用いられる。
有機溶剤としては、例えば、ジイソプロピルエーテル、ミネラルスピリット、n-ペンタン、アミルエーテル、エチルカプリレート、n-ヘキサン、ジエチルエーテル、イソプレン、エチルイソブチルエーテル、ブチルステアレート、n-オクタン、バルソル#2、アプコ#18ソルベント、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルアセテート、アプコシンナー、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキセン、メチルノニルケトン、プロピルエーテル、ドデカン、ソーカルソルベントNo.1及びNo.2、アミルホルメート、ジヘキシルエーテル、ジイソプロピルケトン、ソルベッソ#150、(n,sec,t-)酢酸ブチル、ヘキセン、シェルTS28 ソルベント、ブチルクロライド、エチルアミルケトン、エチルベンゾエート、アミルクロライド、エチレングリコールジエチルエーテル、エチルオルソホルメート、メトキシメチルペンタノン、メチルブチルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルイソブチレート、ベンゾニトリル、エチルプロピオネート、メチルセロソルブアセテート、メチルイソアミルケトン、n-アミルメチルケトン(2-ヘプタノン)、メチルイソブチルケトン、プロピルアセテート、アミルアセテート、アミルホルメート、ビシクロヘキシル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジペンテン、メトキシメチルペンタノール、メチルアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、プロピルプロピオネート、プロピレングリコール-t-ブチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、カルビトール、シクロヘキサノン、酢酸エチル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピオン酸、3-エトキシプロピオン酸、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、エチレングリコールアセテート、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール-t-ブチルエーテル、3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、トリプロピレングリコールメチルエーテルが挙げられる。
【0034】
着色組成物を用いて、フォトリソグラフィー方式でブラックマトリクスを形成するための感光性組成物を調製する際には、低粘度で塗工性、作業性、吐出性に優れたものとするために、少なくとも、着色組成物に含有させる有機溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いることが好ましい。
【0035】
着色組成物を調製するために、有機溶剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用することができる。しかしながら、本発明の着色組成物において、有機溶剤は、各色の有機顔料の合計の質量換算100部当たり、通常300~800部、好ましくは400~600部用いることが好ましい。
【0036】
着色組成物の調製に当たっては、必要に応じて、例えば各種の顔料誘導体等を併用することができる。顔料誘導体の置換基としては、例えばスルホン酸基、スルホンアミド基及びその4級塩、フタルイミドメチル基、ジアルキルアミノアルキル基、水酸基、カルボキシル基、アミド基等が顔料骨格に直接又はアルキル基、アリール基、複素環基等を介して結合したものが挙げられる。
【0037】
着色組成物は、上記した各色の有機顔料組成物、樹脂系分散剤及び有機溶剤を撹拌混合することにより調製することができる。必要であれば、ビーズやロッド等の各種粉砕メディアの存在下、必要時間に亘って振とうを行い、当該メディアを濾過等により分散させることで、調製することもできる。
【0038】
本発明の着色組成物は、従来公知の方法でブラックマトリクス部の形成に使用することができる。
【0039】
カラーフィルタの代表的な製造方法は、フォトリソグラフィー法であり、ブラックマトリクスは、本発明の着色組成物から調製された後記する感光性組成物を、カラーフィルタ用の透明基板上に塗布し、加熱乾燥(プリベーク)した後、フォトマスクを介して紫外線を照射することでパターン露光を行って、ブラックマトリクス部に対応する箇所の光硬化性化合物を硬化させた後、未露光部分を現像液で現像し、非画素部を除去して画素部を透明基板に固着させる方法である。この方法で、感光性組成物の硬化着色皮膜からなるブラックマトリクス部が透明基板上に形成される。RGBの各画素部も、より比表面積の大きな各色の有機顔料から調製された感光性組成物から、上記の様にして同様に調製することができる。
【0040】
後記する感光性組成物をガラス等の透明基板上に塗布する方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、スリットコート法、インクジェット法が挙げられる。
【0041】
透明基板に塗布した感光性組成物の塗膜の乾燥条件は、各成分の種類、配合割合等によっても異なるが、通常、50~150℃で、1~15分間程度である。この加熱処理を一般に「プリベーク」という。また、感光性組成物の光硬化に用いる光としては、200~500nmの波長範囲の紫外線、あるいは可視光を使用するのが好ましい。この波長範囲の光を発する各種光源が使用出来る。
【0042】
現像方法としては、例えば、液盛り法、ディッピング法、スプレー法等が挙げられる。感光性組成物の露光、現像の後に、ブラックマトリックス或いは必要な色の画素部が形成された透明基板は水洗いし乾燥させる。こうして得られたカラーフィルタは、ホットプレート、オーブン等の加熱装置により、100~280℃で、所定時間加熱処理(ポストベーク)することによって、着色塗膜中の揮発性成分を除去すると同時に、感光性組成物の硬化着色皮膜中に残存する未反応の光硬化性化合物が熱硬化し、カラーフィルタが完成する。
【0043】
カラーフィルタのブラックマトリクス部を形成するための感光性組成物は、本発明の着色組成物と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性モノマーと、光重合開始剤とを必須成分とし、これらを混合することで調製することが出来る。
【0044】
ブラックマトリクス部を形成する着色樹脂皮膜に、カラーフィルタの実生産で行われるベーキング等に耐え得る強靱性等が要求される場合には、上記感光性組成物を調製するに当たって、光重合性モノマーだけでなく、このアルカリ可溶性樹脂を併用することが不可欠である。アルカリ可溶性樹脂を併用する場合には、有機溶剤としては、それを溶解するものを使用するのが好ましい。
【0045】
上記感光性組成物の製造方法としては、本発明の着色組成物を事前に調製してから、そこに、アルカリ可溶性樹脂と、光重合性モノマーと、光重合開始剤を加えて感光性組成物とする方法が一般的である。
【0046】
感光性組成物の調製に使用するアルカリ可溶性樹脂としては、カルボキシル基又は酸性を呈する水酸基を含む樹脂、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体等が挙げられる。尚、本発明において、(メタ)アクリルとの記載は、アクリルとメタクリルとを合わせた総称である。なかでも、硬化皮膜の耐熱性をより高めるためには、イミド構造、スチレン及び(メタ)アクリル酸の各重合単位を含有するアルカリ可溶性樹脂を用いることが好ましい。
【0047】
このアルカリ可溶性樹脂は、上記した、有機顔料とアンカー部位と結合して、相溶性部分が分散媒に伸長して分散体を構成する機能を有さないものであるが、一方で、アルカリに接触することで溶解する特徴を活かし、感光性組成物の未露光部分の除去の目的で専ら用いられる。
【0048】
光重合性モノマーとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス〔(メタ)アクリロキシエトキシ〕ビスフェノールA、3-メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート等のような2官能モノマー、トリメチルロールプロパトントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の比較的分子量の小さな多官能モノマー、ポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート等の様な比較的分子量の大きな多官能モノマーが挙げられる。上記同様に、(メタ)アクリレートとの記載は、アクリレートとメタクリレートとを合わせた総称である。
【0049】
なかでも、硬化皮膜の耐熱性をより高めるためには、四官能~六官能の(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0050】
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタノール、ベンゾイルパーオキサイド、2-クロロチオキサントン、1,3-ビス(4’-アジドベンザル)-2-プロパン、1,3-ビス(4-アジドベンザル)-2-プロパン-2’-スルホン酸、4,4’-ジアジドスチルベン-2,2’-ジスルホン酸、エタノン,1-〔9-エチル-6-[2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)メトキシベンゾイル]-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)が挙げられる。
【0051】
光透過率に影響を及ぼさないアルカリ可溶性樹脂と、光重合性モノマーを選択することにより、感光性組成物の硬化皮膜は、ブラックマトリクスに好適な、波長400~800nmの範囲における最高光透過率が1%以下であり、波長800~1100nmの近赤外線領域における光透過率80%とすることができる。
【0052】
ブラックマトリクスの光透過率とは、ガラス基板等の透明基板上に形成された膜厚3μmのブラックマトリクス(硬化膜)について、樹脂ブラックマトリクスが形成されていない該基板を対照として、分光光度計により測定された光透過率をいう。
【0053】
最高光透過率とは、特定の波長領域(範囲)における光透過率の中で最も大きな値を意味する。より詳しくは、特定の波長領域における光透過率曲線の最大値である。例えば、「波長400nm~800nmの範囲における最高光透過率が1%以下である」とは、波長400nm~800nmの範囲における光透過率曲線の最大値が1%以下であって、この範囲において光透過率が1%を超える領域がないことを意味する。
【0054】
一方、「波長800nm~1100nm」とは、いわゆる近赤外線領域を意味する。「波長800nm~1100nmの近赤外線領域における光透過率が80%以上のブラックマトリクスとは、すなわち、近赤外線長領域においては光の吸収が小さく、光透過率が高いブラックマトリクスである。近赤外線領域における光透過率が大きいほど、ブラックマトリクスは、発熱源であるTFT素子における発熱を発散しやすくなる。このため、TFT素子においてはオン電流やオフ電流の増加も少なく、熱暴走を起こし難くなる。
【0055】
また、体積抵抗率が1×1013Ω・cm以上かつ誘電率5以下となるようにすれば、漏れ電流によるTFT素子(薄膜トランジスタからなるスイッチング素子)の短絡を低減することができ、TFT素子のスイッチングが正確に伝達され、液晶の駆動の乱れも低減することができる。
【0056】
体積抵抗率とは、物質の絶縁性の尺度であり、単位体積あたりの電気抵抗である。体積抵抗率は、例えば、社団法人電気学会「電気学会大学講座 電気電子材料-基礎から試験法まで-」(株式会社オーム社、2006年、第223頁~第230頁)等に記載されている手法により測定することができる。
【0057】
誘電率とは、いわゆる比誘電率を意味し、物質の誘電率と真空の誘電率の比である。誘電率は、例えば、社団法人電気学会「電気学会大学講座 電気電子材料-基礎から試験法まで-」(株式会社オーム社、2006年、第233頁~第243頁)等に記載されている手法により測定することができる。
【0058】
この様な特性の本発明の感光性組成物は、本発明の着色組成物100部当たり、アルカリ可溶性樹脂と光重合性モノマーの合計が3~20部、光重合性モノマー1部当たり0.05~3部の光重合開始剤と、必要に応じて、さらに上記した着色組成物の調製に用いた有機溶剤を添加し、均一となる様に攪拌分散してブラックマトリクス部を形成するための感光性組成物を得ることが出来る。
【0059】
フォトリソグラフィー方式でブラックマトリクスを形成させるには、本発明の感光性組成物を低粘度で塗工性、作業性に優れたものとするために、少なくとも、質量換算で不揮発分は5~20%となるように調製することが好ましい。
【0060】
現像液としては、公知慣用のアルカリ水溶液を使用することが出来る。特に前記感光性組成物には、アルカリ可溶性樹脂が含まれていることから、アルカリ水溶液での洗浄がブラックマトリクス部の形成に効果的である。本発明の感光性組成物の優れた耐熱性は、この様なアルカリ洗浄後に焼成を行なうカラーフィルタの製造方法において発揮される。
【0061】
顔料分散法のうち、フォトリソグラフィー法によるブラックマトリクス部の製造方法について詳記したが、本発明の感光性組成物を使用して調製されたブラックマトリクス部は、その他の電着法、転写法、ミセル電解法、PVED(PhotovoltaicElectrodeposition)法等の方法で形成して、カラーフィルタを製造してもよい。
【0062】
カラーフィルタは、赤色有機顔料、緑色有機顔料、青色有機顔料ならびに本発明の着色組成物を使用して得た各色の感光性組成物を使用し、平行な一対の透明電極間に液晶材料を封入し、透明電極を不連続な微細区間に分割すると共に、この透明電極上のブラックマトリクスにより格子状に区分けされた微細区間のそれぞれに、赤(R)、緑(G)および青(B)のいずれか1色から選ばれたカラーフィルタ着色画素部を交互にパターン状に設ける方法、あるいは基板上にカラーフィルタ着色画素部を形成した後、透明電極を設ける様にすることで得ることが出来る。
【0063】
本発明の感光性組成物から得られるブラックマトリクス部は、上記した青色、黄色、赤色の各有機顔料が黒色となる様に含まれたものであり、一見すると、各色の感光性組成物を混合して黒色感光性組成物を調製した場合と、同様のブラックマトリクスが得られるかの様に思われるが、本発明では、感光性組成物とする以前の段階である着色組成物の調製時に、予め、各色の有機顔料が混合される結果、より均一な混合が達成され、より優れた特性のブラックマトリクスが得られる。
【0064】
本発明の着色組成物は、式(1)で表されるスルホン酸塩化合物0.5部をpHが6~8である純水10部に混合したスルホン酸塩化合物水溶液のpHが2~12であり、且つJISK 0115:2004に従い測定した波長域380~780nmにおける最大吸光度が、PV29の最大吸光度の10%以下であるスルホン酸塩化合物であることが好ましい。また、上記スルホン酸塩化合物水溶液のpHは、とりわけ低粘度な分散液が得られる点から6~11であることが好ましい。
【0065】
上記スルホン酸塩化合物水溶液のpHは、JIS Z 8802 :2011に従い、pHメーターを用いて測定することができる。また、上記の波長域380~780nmにおける最大吸光度は、JISK 0115:2004に従い、吸光スペクトルを分光光度計により測定し、C.I.ピグメントバイオレット29 0.5部および純水10部を混合した水溶液の吸光スペクトルのピークトップの吸光度を100としたときの相対値である。
【0066】
顔料の酸性度は、試料約0.1gを0.001N水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)/酢酸n-プロピル(NPAC)溶液(または0.001N p-トルエンスルホン酸(PTSA)/NPAC溶液15ml)と自転公転撹拌機で混合撹拌した後、遠心分離により顔料を沈澱させ、上澄み液10ml中の未吸着の酸塩基量を0.001N PTSA/NPAC(または TBAH/NPAC溶液)を用いた電位差滴定により測定することができる。また、顔料吸着量は、添加量から上記の未吸着量を引くことで算出することができる。なお。塩基吸着量を酸吸着量で除した値を着色剤酸塩基吸着量比とし、この値が大きいほど酸性度が高いと判定される。
【0067】
本発明の着色組成物を含む分散液は、PV29及び式(1)で表されるスルホン酸塩化合物を必須成分とし、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの有機溶剤、塩基性樹脂型分散剤などの分散剤を添加し、ジルコニアビーズを加え、ペイントコンディショナーを用いて分散することで得られる。分散液の粘度は、例えば1~100mPa・s、好ましくは3~20mPa・sである。分散液の粘度は、E型粘度計を用いて測定することができる。
【0068】
カラーフィルタの硬化塗膜は、上記分散液、アルカリ可溶性樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤、有機溶剤を混合して感光性樹脂組成物とし、ブラックマトリクス作製の定法に従い作製することができる。
【実施例
【0069】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。本実施例において「部」は「質量部」を表す。
【0070】
[実施例1]
<着色組成物の作製工程>
Paliogen Red Violet K 5411(BASF株式会社製C.I.ピグメントバイオレット29、着色剤)17部、BYK LPN-21116(ビックケミー株式会社製、塩基性アクリル樹脂型分散剤)44部、2-ナフタレンスルホン酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製、添加剤)2部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(クラレトレーディング株式会社製、有機溶剤)218部を混合し、0.2~0.3mmφのジルコニアビーズを加え、ペイントコンディショナー(東洋精機株式会社製)で2時間分散し、着色組成物(A-1)を得た。
【0071】
<感光性樹脂組成物の作製工程>
着色組成物(A-1)100部、アルカリ可溶性樹脂としてメタクリル酸/こはく酸モノ(2-メタクリロイロキシエチル)/N-フェニルマレイミド/スチレン/ベンジルメタクリレート共重合体(共重合質量比=25/10/30/20/15、Mw=12,000、Mn=6,500)5部、光重合性モノマーとしてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート10部、光重合開始剤としてエタノン,1-〔9-エチル-6-[2-メチル-4-(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラニル)メトキシベンゾイル]-9.H.-カルバゾール-3-イル〕-1-(O-アセチルオキシム)を1部、および有機溶剤としてジプロピレングリコールジメチルエーテル25部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート25部、3-メトキシブチルアセテート75部、シクロヘキサノン50部を混合して、感光性樹脂組成物(B-1)を調製した。
【0072】
<硬化パターンの作製工程>
10cm角のガラス基板(日本電気硝子製カラーフィルタ用ガラス板「OA-10」)を信越化学製シランカップリング剤「KBM-603」の1%希釈液に3分間浸漬し、10秒間水洗して、エアーガンで水切り後、110℃のオーブンで5分間乾燥した。このガラス基板上に、上記にて調製した感光性樹脂組成物(B-1)を、スピンコーターを用いて塗布した。1分間真空乾燥後、ホットプレート上で90℃にて90秒間加熱乾燥し、乾燥膜厚約3.5μmの塗布膜を得た。その後、塗布膜側から、15μm幅の細線パターンマスクを介して画像露光を行った。露光条件は、3kW高圧水銀灯を用い50mJ/cm2(i線基準)とした。次いで、0.05%の水酸化カリウムと0.08%のノニオン性界面活性剤(花王製「A-60」)を含有する水溶液よりなる現像液を用い、23℃において水圧0.15MPaのシャワー現像を施した後、純水にて現像を停止し、水洗スプレーにて洗浄し硬化パターン(C-1)を得た。なお、シャワー現像時間は、10~120秒間の間で調整し、未露光の塗布膜が溶解除去される時間の1.5倍とした。
【0073】
<添加剤のpH、吸光度>
添加剤0.5部および純水(2μS/cm以下およびpH:7.0±1.0を使用)10部を混合した。JIS Z 8802 :2011に従い、pHメーター(PH71、横河電機株式会社製)を用いてpHを測定した。JISK 0115:2004に従い、波長域380~780nmにおける水溶液の吸光スペクトルを分光光度計(U3900、株式会社日立ハイテクサイエンス製)により測定し、Paliogen Red Violet K 5411(BASF株式会社製C.I.ピグメントバイオレット29、着色剤)0.5部および純水(2μS/cm以下およびpH:7.0±1.0を使用)10部を混合した分散液の吸光スペクトルのピークトップの吸光度を100としたときの吸光度を下表1に記載した。
【0074】
[実施例2]
実施例1の添加剤をp-トルエンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製、添加剤)2部に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、着色組成物(A-2)を得た。着色組成物(A-1)を着色組成物(A-2)に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、硬化パターン(C-2)を得た。
【0075】
[実施例3]
実施例1の添加剤をアリルスルホン酸ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製、添加剤)2部に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、着色組成物(A-3)を得た。着色組成物(A-1)を着色組成物(A-3)に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、硬化パターン(C-3)を得た。
【0076】
[実施例4]
実施例1の添加剤をメタンスルホン酸カリウム(東京化成工業株式会社製、添加剤)2部に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、着色組成物(A-4)を得た。着色組成物(A-1)を着色組成物(A-4)に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、硬化パターン(C-4)を得た。
【0077】
[実施例5]
実施例1の添加剤を2-モルホリノエタンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製、添加剤)2部に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、着色組成物(A-5)を得た。着色組成物(A-1)を着色組成物(A-5)に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、硬化パターン(C-5)を得た。
【0078】
[実施例6]
実施例1の添加剤を3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製、添加剤)2部に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、着色組成物(A-6)を得た。着色組成物(A-1)を着色組成物(A-6)に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、硬化パターン(C-6)を得た。
【0079】
[実施例7]
実施例1の添加剤を(±)-10-カンファースルホン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製、添加剤)2部に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、着色組成物(A-7)を得た。着色組成物(A-1)を着色組成物(A-7)に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、硬化パターン(C-7)を得た。
【0080】
[実施例8]
実施例1の添加剤を1-デカンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製、添加剤)2部に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、着色組成物(A-8)を得た。着色組成物(A-1)を着色組成物(A-8)に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、硬化パターン(C-8)を得た。
【0081】
[実施例9]
実施例1の添加剤をアントラキノン-2-スルホン酸ナトリウム一水和物(東京化成工業株式会社製、添加剤)2部に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、着色組成物(A-9)を得た。着色組成物(A-1)を着色組成物(A-9)に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、硬化パターン(C-9)を得た。
【0082】
[実施例10]
実施例1の添加剤をアントラキノン-2,6-ジスルホン酸二ナトリウム(東京化成工業株式会社製、添加剤)2部に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、着色組成物(A-10)を得た。着色組成物(A-1)を着色組成物(A-10)に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、硬化パターン(C-10)を得た。
【0083】
[比較例1]
実施例1の添加剤を添加しない以外は上記実施例1と同様な操作を行い、着色組成物(A-11)を得た。着色組成物(A-1)を着色組成物(A-11)に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、硬化パターン(C-11)を得た。
【0084】
[比較例2]
実施例1の着色剤をPALIOGEN RED L3880 HD(BASF株式会社製C.I.ピグメントレッド178、着色剤)17部に変更し、添加剤を添加しない以外は上記実施例1と同様な操作を行い、着色組成物(A-12)を得た。着色組成物(A-1)を着色組成物(A-12)に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、硬化パターン(C-12)を得た。
【0085】
[比較例3]
実施例1の着色剤を229-6438(SUN CHEMICAL株式会社製C.I.ピグメントレッド179、着色剤)17部に変更し、添加剤を添加しない以外は上記実施例1と同様な操作を行い、着色組成物(A-13)を得た。着色組成物(A-1)を着色組成物(A-13)に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、硬化パターン(C-13)を得た。
【0086】
[比較例4]
実施例1の着色剤をPALIOGEN RED L3880 HD(BASF株式会社製C.I.ピグメントレッド178、着色剤)17部に変更する以外は上記実施例1と同様な操作を行い、着色組成物(A-14)を得た。着色組成物(A-1)を着色組成物(A-14)に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、硬化パターン(C-14)を得た。
【0087】
[比較例5]
実施例1の着色剤を229-6438(SUN CHEMICAL株式会社製C.I.ピグメントレッド179、着色剤)17部に変更する以外は上記実施例1と同様な操作を行い、着色組成物(A-15)を得た。着色組成物(A-1)を着色組成物(A-15)に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、硬化パターン(C-15)を得た。
【0088】
[比較例6]
実施例1の添加剤を2-ナフタレンスルホン酸(東京化成工業株式会社製、添加剤)2部に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、着色組成物(A-16)を得た。着色組成物(A-1)を着色組成物(A-16)に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、硬化パターン(C-16)を得た。
【0089】
[比較例7]
実施例1の添加剤をp-トルエンスルホン酸1水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製、添加剤)2部に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、着色組成物(A-17)を得た。着色組成物(A-1)を着色組成物(A-17)に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、硬化パターン(C-17)を得た。
【0090】
[比較例8]
実施例1の添加剤をSOLSPERSE12000(ルーブリゾール株式会社製、添加剤)2部に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、着色組成物(A-18)を得た。着色組成物(A-1)を着色組成物(A-18)に変更した以外は上記実施例1と同様な操作を行い、硬化パターン(C-18)を得た。
【0091】
<評価>
・顔料の酸性度(酸塩基吸着量比)
顔料約0.1gを0.001N水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)/酢酸n-プロピル(NPAC)溶液、または0.001N p-トルエンスルホン酸(PTSA)/NPAC溶液15mlと自転公転撹拌機(泡取り錬太郎、シンキー株式会社製)で3分間混合撹拌した後、遠心分離(11,000rpm,20分)により顔料を沈澱させ、上澄み液10ml中の未吸着の酸塩基量を0.001N PTSA/NPACまたはTBAH/NPAC溶液を用いた電位差滴定(COM-1700、平沼産業株式会社製)により測定した。顔料への酸塩基吸着量は添加量から上記の未吸着量を引くことで算出した。塩基吸着量を酸吸着量で除した値を着色剤酸塩基吸着量比とし、この値が大きいほど酸性度が高いと判定した。PV29は同じペリレンであるC.I.ピグメントレッド178(PR178)、C.I.ピグメントレッド179(PR179)に比べはるかに酸性度が高いことを確認した。
【0092】
・粘度
実施例1~10及び比較例1~8で得られた着色組成物(A-1)~(A-18)の粘度として、E型粘度計(TVE-25L、東機産業株式会社製)30rpmの値を測定した。着色剤としてPV29を使用した粘度系1では比較例1の値を100に換算して、下表に記載した。着色剤としてPR178を使用した粘度系2では比較例2の値を100に換算して、下表1に記載した。着色剤としてPR179を使用した粘度系3では比較例3の値を100に換算して、下記表1に記載した。
【0093】
・硬化度
実施例1~10、比較例1、比較例6~8で得られた硬化パターン(C-1)~(C-10)、(C-11)、(C-16)~(C-18)のパターン欠損の有無(欠損がないものは硬化度「○」、欠損があるものは硬化度「×」)を目視で確認した結果を硬化度として下記表1に記載した。
【0094】
・スペクトル純度
実施例1~10、比較例1、比較例6~8で得られた硬化パターン(C-1)~(C-10)、(C-11)、及び(C-16)~(C-18)の吸光スペクトルを分光光度計(U3900、株式会社日立ハイテクサイエンス製)により測定し、波長域380~780nmにおける吸光スペクトルのピークトップの吸光度の3%以上の強度を示すPV29以外の吸光ピークがないものは「〇」、あるものは「×」として下記表1に記載した。
【0095】
【表1】

※S12000;SOLSPERSE12000(銅フタロシアニンスルホン酸;ルーブリゾール社製)
【0096】
PV29と水溶液を作ったときのpHが2~12になるような非色素系スルホン酸塩を組み合わせた実施例1~10は、添加剤を添加しない比較例1やPV29と銅フタロシアニンスルホン酸などの色素のスルホン酸誘導体を組み合わせた比較例8より低粘度な分散液が得られる。また、実施例1と比較例1、比較例2と比較例4、比較例3と比較例5を比べると、PV29以外のペリレンとスルホン酸塩を組み合わせた比較例4、比較例5に比べて、実施例1はスルホン酸塩添加時の粘度低減効果が大きいことがわかる。また、非色素系スルホン酸塩誘導体を添加している実施例1~10は、銅フタロシアニンスルホン酸などの色素のスルホン酸誘導体を組み合わせた比較例8に比べ、誘導体添加後でも硬化度及びスペクトル純度を維持できていることがわかる。
【要約】
本発明が解決しようとする課題は、C.I.ピグメントバイオレット29などのペリレン系化合物を含有しながら、グリコール系溶剤への高度な分散を実現し、ディスプレイ製造工程においてレジスト硬化不良やスペクトル純度低下を起こさずに使用できる着色組成物を提供することにある。
本発明の着色組成物は、下記式(1)で表されるスルホン酸塩化合物と、C.I.ピグメントバイオレット29とを含む。
A-SOM・nH2O 式(1)
[式(1)中のAは、ハロゲン、ホウ素、窒素、硫黄、リン、酸素を構造中に有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基であり、Mは、Hを除く1~3価のカチオンの1当量であり、nは0~5の整数である]