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特許7006876半導体装置、電池監視システム、および半導体装置の起動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】半導体装置、電池監視システム、および半導体装置の起動方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/382 20190101AFI20220117BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20220117BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220117BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
G01R31/382
H02J7/02 H
H01M10/48 P
H01M10/44 P
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017091292
(22)【出願日】2017-05-01
(65)【公開番号】P2018189466
(43)【公開日】2018-11-29
【審査請求日】2020-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】永末 誠
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-222913(JP,A)
【文献】特開2012-038040(JP,A)
【文献】特開2015-136289(JP,A)
【文献】特開2016-048469(JP,A)
【文献】特開2010-081756(JP,A)
【文献】国際公開第2015/107687(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0370312(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/396
G01R 22/00-22/10
G01R 19/00-19/32
H02J 7/02
H01M 10/48
H01M 10/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から制御信号を受信する第1の受信部および第2の受信部と、
前記制御信号に基づいて対象物の監視を制御する制御部と、
内部回路に電力を供給する電源部と、
前記制御信号を前記第1の受信部および前記第2の受信部のいずれに入力させるか切り替える切替部と、を含み、
前記制御部は、前記電源部が停止した状態で前記第1の受信部に前記制御信号が入力される状態にあった前記切替部を、前記電源部が起動した後に前記第2の受信部に前記制御信号が入力されるように前記切替部を切り替え、
前記第1の受信部は、前記電源部が停止した状態で前記制御信号に起動パルス信号が重畳された起動信号を受信すると、前記起動信号から抽出した前記起動パルス信号に基づいて前記電源部を起動させる起動トリガを生成し、
前記第2の受信部は、前記電源部が前記起動トリガにより起動した後前記電源部から電力の供給を受けて前記起動信号に続く前記制御信号を受信し前記制御部に送る
半導体装置。
【請求項2】
前記制御部および前記第2の受信部は予め定められた第1の上限速度以下で動作し、
前記第1の受信部は前記第1の上限速度よりも低い第2の上限速度以下で動作する
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記制御信号が少なくとも前記第1の上限速度以下で動作しかつ前記第2の上限速度以下では動作しない周波数のパルス信号であり、
前記起動パルス信号が前記第2の上限速度以下で動作する周波数のパルス信号である
請求項に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の受信部は、抵抗および容量による遅延回路を含み、
前記起動パルス信号が論理値1および0の交番パターンであり、
前記遅延回路は、前記抵抗を介する前記容量への充電および放電を前記起動パルス信号に応じて繰り返すことにより前記起動トリガを生成するための信号を発生させる
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記起動パルス信号のデューティ比が50%であり、
前記遅延回路は前記起動パルス信号の立ち上がりと立ち下りで時定数が異なるように構成されている
請求項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記対象物である電池と、
電池を監視の対象物とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の半導体装置と、
前記制御信号を送信する監視装置と、
前記制御信号を前記起動信号に変換する変換装置と、
を含む電池監視システム。
【請求項7】
前記半導体装置および前記電池が複数であり、
複数の前記半導体装置の各々は複数の前記電池の対応する電池を監視するとともに、相互に直列に接続されて半導体装置群を構成し、
複数の前記半導体装置の各々は前記制御信号を送信する送信部をさらに備え、
前記半導体装置群の各々の半導体装置の前記送信部が次段の前記第1の受信部および前記第2の受信部に接続され、最上流の前記半導体装置の第1の受信部および第2の受信部が前記変換装置に接続されて前記制御信号を受信し、最下流の前記半導体装置の前記送信部が前記変換装置に接続されて前記制御信号に対応する返信信号を送信することにより循環型通信路が構成されている
請求項に記載の電池監視システム。
【請求項8】
複数の前記半導体装置の各々が停止状態にある場合、前記半導体装置の各々は上流側から送られた前記起動信号を前記第1の受信部で受信して前記電源部を起動させるとともに前記制御部により前記起動信号を再生し前記送信部を介して下流側に送信する再生動作を実行し、前記再生動作が前記最上流の半導体装置から前記最下流の半導体装置まで順次行われることにより前記半導体装置群に含まれる各々の半導体装置の前記電源部が起動される
請求項に記載の電池監視システム。
【請求項9】
複数の前記半導体装置において停止状態にある半導体装置と起動状態にある半導体装置が混在している場合、停止状態にある半導体装置の各々は上流側から送られた前記起動信号を前記第1の受信部で受信して前記電源部を起動させるとともに前記制御部により前記起動信号を再生し前記送信部を介して下流側に送信する第1の再生動作を実行し、起動状態にある半導体装置の各々は上流側から送られた前記起動信号を前記第2の受信部で受信して前記電源部を起動させるとともに前記制御部により前記起動信号を再生し送信部を介して下流側に送信する第2の再生動作を実行し、前記第1の再生動作または前記第2の再生動作が前記最上流の半導体装置から前記最下流の半導体装置まで順次行われることにより前記半導体装置群に含まれる各々の半導体装置の前記電源部が起動される
請求項に記載の電池監視システム。
【請求項10】
前記循環型通信路の経路上に少なくとも1つの直流を遮断する直流遮断素子をさらに含む
請求項から請求項のいずれか1項に記載の電池監視システム。
【請求項11】
外部から制御信号を受信する第1の受信部および第2の受信部と、前記制御信号に基づいて対象物の監視を制御する制御部と、内部回路に電力を供給する電源部と、前記制御信号を前記第1の受信部および前記第2の受信部のいずれに入力させるか切り替える切替部と、を含む半導体装置の起動方法であって、
前記制御部が、前記電源部が停止した状態で前記第1の受信部に前記制御信号が入力される状態にあった前記切替部を、前記電源部が起動した後に前記第2の受信部に前記制御信号が入力されるように前記切替部を切り替え、
前記第1の受信部が、前記電源部が停止した状態で前記制御信号に起動パルス信号が重畳された起動信号を受信すると、前記起動信号から抽出した前記起動パルス信号に基づいて前記電源部を起動させる起動トリガを生成し、
前記第2の受信部が、前記電源部が前記起動トリガにより起動した後前記電源部から電力の供給を受けて前記起動信号に続く前記制御信号を受信し前記制御部に送る
半導体装置の起動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、電池監視システム、および半導体装置の起動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動機システム、蓄電システム等二次電池を用いたシステムの一般化と共に、このような二次電池を用いたシステムにおける過充電、過放電、温度異常等の様々な状態の監視、あるいは充電電流、放電電流の異常の有無等の監視が重要となってきている。従って、二次電池を用いたシステムを監視する機能は電池監視用のIC(Integrated Circuit)として集積化される傾向にある。
【0003】
一方、電池監視ICは、これらの監視結果を、二次電池を用いたシステムの動作モード等も含め、システム全体を統括制御する制御部、例えばマイクロコントローラユニット(Micro Controller Unit、以下、「マイコン」)に送信し、あるいは該送信の結果としての指示を受信し、電池監視ICの各回路ブロックを制御する場合がある。二次電池を用いたシステムにおける監視・制御対象の増加、輻輳化に伴って、この電池監視ICとマイコンとの間における通信の効率化の要請が顕在化してきている。
【0004】
電池監視ICとマイコンとの間で送受信される制御信号の一部に、電池監視ICの起動信号がある。上記のように電池監視ICとマイコンとの間における通信の効率化が求められているなか、起動信号の通信形態についても検討が進められている。
【0005】
従来、電池監視システムにおける起動信号の伝送について開示した文献として、例えば特許文献1が知られている。特許文献1に開示された電池監視・制御用集積回路は、複数の単電池セルを直列接続したセルグループと接続されて各単電池セルを監視および制御するものであって、外部から入力される交流起動信号に基づいて直流信号を生成する直流信号生成回路と接続するための交流起動信号入力端子と、直流信号を検出して該電池監視・制御用集積回路を起動させる起動検出部と、該電池監視・制御用集積回路の起動後に、交流起動信号を外部へ出力する起動出力部と、を備えている。
【0006】
また、電池監視システムの起動方法について開示した文献の一例として、特許文献2が知られている。特許文献2に開示された電池監視システムは、レギュレータ30の起動を制御する起動回路40、60を備え、起動回路40および起動回路60は、制御回路部14のMCU16から入力される起動信号INTに応じて、レギュレータ30を起動させるためのLレベルのパワーアップ信号を出力させるための起動回路40Aを備えている。また、起動回路40および起動回路60は、下位または上位(先に起動した方)の電池監視IC20のレギュレータ30で生成された電圧電位VDDに応じて、レギュレータ30を起動させるためのLレベルのパワーアップ信号を出力させるための起動回路40Bまたは起動回路40Cを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-136289号公報
【文献】特開2014-134454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、半導体装置においては、益々の集積化に伴い、当該半導体装置と外部とを接続するための端子の数を極力削減することが喫緊の課題となっている。電池監視ICについても例外ではなく、外部接続のための端子を減らすことができれば、小型化に資することができ、また新たな機能を司る端子を割り振ることもでき、至便である。しかしながら、信号自体を減らすことなく端子の数を削減することは一般に困難である。
【0009】
一方、複数の電池を一括監視するために電池監視ICを直列に接続して電池監視IC群を構成する場合もあるが、上記の端子数を検討する場合は、このような場合の起動信号の伝送経路についても配慮する必要がある。すなわち、全ての電池監視ICが停止した状態にある場合にどのように起動信号を順次伝送するか、あるいは直列に接続された電池監視ICが起動した後一部の電池監視ICが停止状態になった場合の起動をどのように行うか等について配慮しなければならない。
【0010】
この点、特許文献1も特許文献2も電池監視システムの起動信号の生成を問題としているが、上記のような観点から検討されたものではない。
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、専用の経路を不要とした簡易な構成で、多段接続した場合でも起動信号の伝達が確実に行える半導体装置、該半導体装置を用いた電池監視システム、および半導体装置の起動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る半導体装置は、外部から制御信号を受信する第1の受信部および第2の受信部と、前記制御信号に基づいて対象物の監視を制御する制御部と、内部回路に電力を供給する電源部と、前記制御信号を前記第1の受信部および前記第2の受信部のいずれに入力させるか切り替える切替部と、を含み、前記制御部は、前記電源部が停止した状態で前記第1の受信部に前記制御信号が入力される状態にあった前記切替部を、前記電源部が起動した後に前記第2の受信部に前記制御信号が入力されるように前記切替部を切り替え、前記第1の受信部は、前記電源部が停止した状態で前記制御信号に起動パルス信号が重畳された起動信号を受信すると、前記起動信号から抽出した前記起動パルス信号に基づいて前記電源部を起動させる起動トリガを生成し、前記第2の受信部は、前記電源部が前記起動トリガにより起動した後前記電源部から電力の供給を受けて前記起動信号に続く前記制御信号を受信し前記制御部に送るものである。
【0013】
本発明に係る電池監視システムは、前記対象物である電池と、電池を監視の対象物とする上記の半導体装置と、前記制御信号を送信する監視装置と、前記制御信号を前記起動信号に変換する変換装置と、を含むものである。
【0014】
一方、本発明に係る半導体装置の起動方法は、外部から制御信号を受信する第1の受信部および第2の受信部と、前記制御信号に基づいて対象物の監視を制御する制御部と、内部回路に電力を供給する電源部と、前記制御信号を前記第1の受信部および前記第2の受信部のいずれに入力させるか切り替える切替部と、を含む半導体装置の起動方法であって、前記制御部が、前記電源部が停止した状態で前記第1の受信部に前記制御信号が入力される状態にあった前記切替部を、前記電源部が起動した後に前記第2の受信部に前記制御信号が入力されるように前記切替部を切り替え、前記第1の受信部が、前記電源部が停止した状態で前記制御信号に起動パルス信号が重畳された起動信号を受信すると、前記起動信号から抽出した前記起動パルス信号に基づいて前記電源部を起動させる起動トリガを生成し、前記第2の受信部が、前記電源部が前記起動トリガにより起動した後前記電源部から電力の供給を受けて前記起動信号に続く前記制御信号を受信し前記制御部に送るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、専用の経路を不要とした簡易な構成で、多段接続した場合でも起動信号の伝達が確実に行える半導体装置、該半導体装置を用いた電池監視システム、および半導体装置の起動方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態に係る電池監視システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施の形態に係るスレーブ装置の構成の一例を示すブロック図である。
図3】実施の形態に係る起動受信部の構成の一例を示す回路図である。
図4】実施の形態に係る起動信号のフォーマットの一例を示すタイミングチャートである。
図5】比較例に係る電池監視システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1から図5を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0018】
図1に示すように本実施の形態に係る電池監視システム1は、スレーブ装置20-1、20-2、・・・、20-n(以下、総称する場合は「スレーブ装置20」)、組電池12、マイコン14、マスタ装置16、およびシリアル伝送路18を含んで構成されている。電池監視システム1は、マイコン14の監視部により縦列に接続された組電池の状態を監視するシステムである。スレーブ装置20が本発明に係る「半導体装置」を、マイコン14が本発明に係る「監視装置」を、マスタ装置16が本発明に係る「変換装置」を、各々構成している。
【0019】
組電池12は、複数(図1ではn個の例を示している)の、監視対象としての電池セルB1、B2、・・・、Bn(以下、総称する場合は「電池セルB」が直列に接続されたものである。
【0020】
複数(図1ではn個の例を示している)のスレーブ装置20-1、20-2、・・・、20-nは、電池セルBに対応させて設けられ、各々対応する電池セルBの監視を行う。
スレーブ装置20の各々は、本実施の形態に係る電池監視ICを構成している。図1に示すように、スレーブ装置20-1、20-2、・・・、20-nは直列に接続されている。つまり、スレーブ装置20-1、20-2、・・・、20-nは上流側から下流側に向けて、上流側の送信部出力が下流側の受信部入力に結合素子を介して接続されている。また、最下流の送信部出力はマスタ装置16の受信部入力に接続される。この循環型のデイジーチェーン接続により、監視部22からの循環型の高速通信を可能としている。この高速通信のループが、本発明に係る「循環型通信路」を構成している。
【0021】
マイコン14は、電池監視システム1の全体を統括制御する部位であり、監視部22を備えている。監視部22は通信インタフェース機能を有し、該通信インタフェースからマスタ装置16を介して通信におけるスレーブであるスレーブ装置20(電池監視IC)にアクセスする。
【0022】
マスタ装置16は、主としてマイコン14とスレーブ装置20との間の通信方式を変換する装置であり、通信方式変換部24、送信部26、および受信部28を備えている。本実施の形態では、マイコン14側のインタフェースが4線シリアルインタフェース、スレーブ装置20側のインタフェースが2線作動方式となっているので、マスタ装置16はこれらのインタフェース間の通信方式の変換を行っている。本実施の形態に係るマスタ装置16は専用の半導体装置で構成されているが、これに限られず、例えばマイコン14の内部回路として構成してもよい。
【0023】
シリアル伝送路18は、スレーブ装置20-1、20-2、・・・、20-nに対応させて設けられた複数の結合素子30-1、30-2、・・・30-n(以下、総称する場合は「結合素子30」)、循環型通信路の復路に配置された結合素子32を備えて構成されている。シリアル伝送路18は、一例として、結合素子30、32を搭載したプリント板によって構成されている。結合素子30、32は、主として伝送される信号の直流成分を遮断(カット)する素子であり、本実施の形態ではトランスによって構成されている。
換言すれば、マスタ装置16とスレーブ装置20との間には、直流電圧の絶縁のためトランス等の結合素子が挿入される。しかしながら、これに限られず、結合素子30、32を例えばフォトカプラ、キャパシタ等で構成してもよい。結合素子30、32が本発明に係る「直流遮断素子」を構成している。
【0024】
図1に示すように、マスタ装置16の送信部26から出力された信号は結合素子30-1を介しスレーブ装置20-1の受信部42(図2参照)に入力されている。本実施の形態ではスレーブ装置20-1、20-2、・・・・、20-nが直列に接続されている(いわゆるデイジーチェーンとなっている)。すなわち、スレーブ装置20-1の送信部44(図2参照)は結合素子30-2を介してスレーブ装置20-2の受信部42(図2参照)に接続され、スレーブ装置20-2の送信部44は結合素子30-3(図示省略)を介してスレーブ装置20-3(図示省略)の受信部42に接続されている。以下同様にして、スレーブ装置20-(n-1)(図示省略)の送信部44が結合素子30-nを介してスレーブ装置20-nの受信部42に接続されている。
【0025】
図2に示すように、本実施の形態に係るスレーブ装置20は、起動受信部40、受信部42、送信部44、電源回路46、およびメイン制御部48を含んで構成されている。スレーブ装置20の詳細については後述する。
【0026】
ここで、図5を参照して、比較例に係る電池監視システム100の起動方法について説明する。電池監視システム100は、スレーブ装置102-1、102-2、・・・、102-n(以下、総称する場合は「スレーブ装置102」)、組電池104、マイコン106、マスタ装置108、シリアル伝送路110を含んで構成されている。
【0027】
図1に示す電池監視システム1と同じ名称の構成は同様の機能を有するので詳細な説明を省略する。電池監視システム100と電池監視システム1との相違は、電池監視システム1では電源回路46に入力される起動トリガが、マスタ装置16から起動受信部40に送られた起動信号に基づいて生成されるのに対し、電池監視システム100では、起動信号が監視部から直接電源回路に送られている点である。電池監視システム100でもマスタ装置108とデイジーチェーン接続されたスレーブ装置102によって、循環型通信路が構成されている。
【0028】
電池監視システム100の起動方法は以下のようになっている。すなわち、マイコン106の監視部が生成した起動信号が結合素子を介して最上流のスレーブ装置102-1(電池監視IC)に入力される。スレーブ装置102-1ではその起動信号が起動トリガとなり電源回路が起動され、送信部、受信部のための電源電圧が生成される。電源回路で生成された電源電圧は自身の送信部、受信部で使用されるのと同時にスレーブ装置102-1の外部へも出力され次段のスレーブ装置102-2に入力される。スレーブ装置102-2は、スレーブ装置102-1で生成される電圧のレベルがある閾値を越えたことを検知して、自身の電源回路を起動させる。以上の動作がスレーブ装置102-nまで順次実行されていき、デイジーチェーン接続されたスレーブ装置102のすべてが起動される。
【0029】
しかしながら、電池監視システム100では、マイコン106の監視部からスレーブ装置102(電池監視IC)と通信するための通信線とは別の経路で起動信号を生成し、送受信しなければならないという問題点があった。本実施の形態に係る電池監視システム1は、この問題点の解決を目的としている。
【0030】
再び図1を参照し、本実施の形態に係るスレーブ装置20(電池監視システム1)の起動方法に対応するため、電池監視システム1では監視部22から出力される起動信号の伝送経路が削除され、代わりにスレーブ装置20の起動受信部40がこの起動信号を受信する。
【0031】
図2を参照し、本実施の形態に係るスレーブ装置20についてより詳細に説明する。上述したように、本実施の形態に係るスレーブ装置20は、起動受信部40、受信部42、送信部44、電源回路46、およびメイン制御部48を含んで構成されている。
【0032】
電源回路46は、スレーブ装置20内の各回路に電力を供給する。メイン制御部48は、監視部22から送られた各種制御信号(コマンド)を解読し、スレーブ装置20に関する必要な処理を実行する。
【0033】
受信部42は、監視部22から送信された各種制御信号を受信し、メイン制御部48へ送る通信インタフェースである。送信部44は、メイン制御部48が収集した電圧等の電池セルBに関する情報等を監視部22に送る通信インタフェースである。また、送信部44は、デイジーチェーン接続されたスレーブ装置20の次段のスレーブ装置20に制御信号を伝達する場合もある。
【0034】
起動受信部40は、監視部22から送られたスレーブ装置20(電池監視システム1)を起動させるための起動信号を受信する部位である。本実施の形態では、各種制御信号を伝送する経路と同じ経路を経由して、監視部22からスレーブ装置20に向けてスレーブ装置20の起動信号が送られる。そのため、受信部42の入力信号は分岐され、起動受信部40にも入力されるように構成されている。監視部22から送られた信号は、後述のスイッチ50(図3参照)によって起動受信部40、受信部42のいずれかに入力させるように構成されている。スイッチ50が本発明に係る「切替部」を構成している。
【0035】
図2に示すように、起動信号を受信した起動受信部40は起動トリガを電源回路46に発出する。起動トリガを受け取った電源回路46は自身を立ち上げ、メイン制御部48、受信部42、送信部44を含むスレーブ装置20内の他の構成に電源を供給する。その後スイッチ50が受信部42側に切り替わり、各種制御信号が受信部42に入力される。
【0036】
上記の受信部分の構成は下流側のスレーブ装置20でも同様である。すなわち、上流側のスレーブ装置20の送信部44は下流側の受信部42と起動受信部40のいずれかに入力可能なように構成され、上述した動作と同様の動作が下流側に向け連鎖して実行される。その結果、送信部44と受信部42とがデイジー接続された経路を経由し、上流側のスレーブ装置20から下流側のスレーブ装置20に向けて起動信号が伝達される。
【0037】
図3を参照して、上記のスレーブ装置20の起動動作についてより詳細に説明する。図3は、スレーブ装置20の構成の一例を表したものであり、特に起動受信部40の内部の構成を回路図によって具体的に示している。スレーブ装置20はスイッチ50を備えており、このスイッチ50によって、受信入力端子であるRXN1、RX1に入力された起動信号を含む各種制御信号(受信入力信号)を起動受信部40に送るか、受信部42に送るか切り替えている。すなわち、スイッチ50は、起動受信部40側に設けられたスイッチと受信部42側に設けられたスイッチを備えた2連スイッチであり、この2連のスイッチが排他的に切り替えられる。
【0038】
図3に示すように、起動受信部40は、差動受信回路60、ノイズフィルタ部80、AND回路74、およびラッチ部90を含んで構成されている。
【0039】
差動受信回路60は、差動信号である受信入力信号を受け、次段を駆動可能な内部信号レベルを有するシングル出力に変換する回路であり、例えば差動増幅器で構成されている。
【0040】
ノイズフィルタ部80は、インバータ62、RC遅延回路82、およびシュミットトリガ回路72を含んで構成されている。図3に示すように、インバータ62で反転された受信入力信号は、RC遅延回路82に入力される。RC遅延回路82は、ソースがVCCに接続されたP型FET(Field Effect Transistor、以下「トランジスタ」)64、トランジスタ64のドレインに接続された抵抗66、ドレインがVSSに接続されたN型FET(以下、「トランジスタ」)68、トランジスタ68のソースに接続された抵抗70、およびキャパシタ78によって構成されたRC型のフィルタである。キャパシタ78は、時定数の調整が可能なように、スレーブ装置20の外付け素子とされている。本実施の形態では、抵抗66はVDD側に接続され、受信入力信号の立ち上がり時間を規定している。また抵抗70はVSS側に接続され、受信入力信号の立ち下り時間を規定している。本実施の形態では、起動トリガを生成するための信号のレベルを漸増させるために、相対的に立ち上がり時間が速く、立ち下り時間が遅くなるように、抵抗66、70の抵抗値が選定されている。
【0041】
RC遅延回路82の出力はシュミットトリガ回路72に接続されている。シュミットトリガ回路72は、入力電位の変化に対して出力状態がヒステリシスをもって変化する回路であり、本実施の形態ではバッファ、およびノイズによるチャタリング防止の機能を有している。
【0042】
AND回路74は、シュミットトリガ回路72の出力と差動受信回路の論理積をとり、次段のラッチ部90の入力信号の終了のタイミングを規定し、信号幅を確定させる部位である。
【0043】
ラッチ部90はRSラッチ回路76を含んで構成され、AND回路74からの信号をラッチして電源回路46を起動するための起動トリガを生成する。RSラッチ回路76のリセット端子(図3では「R」と表記)に入力されているシャットダウン信号SDは、電源電圧異常等の必要な場合に起動トリガの生成をリセットさせる信号である。
【0044】
再び図1を参照して、電池監視システム1の全体の動作についてより詳細に説明する。
本実施の形態では、マイコン14の監視部22は一例として4線シリアル通信方式の4線シリアルインタフェースを備え、スレーブ装置20は一例として2線差動通信方式の2線差動インタフェースを備えている。マスタ装置16の通信方式変換部24は、4線シリアル通信方式から2線差動通信方式への変換、およびその逆の変換を行う。ただし、これらの通信方式はあくまで一例であり、他の通信方式を採用してもよく、例えば2線差動通信方式で直接監視部22とスレーブ装置20との通信を行ってもよい。
【0045】
いま、初期状態として、スレーブ装置20の全てがシャットダウンの状態にあるとする。本実施の形態に係るスレーブ装置20では、シャットダウンの状態においては、高速動作が可能な回路(高速動作回路、具体的には受信部42、メイン制御部48、送信部44等の回路)を構成する低耐圧素子用の低電圧電源がオフされている一方、高耐圧素子を使った低速な回路(低速動作回路、具体的には起動受信部40等の回路)の電源はオンとされている。
【0046】
まず、監視部22が4線シリアルインタフェースでマスタ装置16へ起動命令(ライトコマンド)を送信する。マスタ装置16の通信方式変換部24では4線シリアル通信方式から2線差動通信方式への通信方式変換を実行する。通信方式変換部24で方式変換された起動命令は送信部26から結合素子30-1を経由して、スレーブ装置20-1の起動受信部40に送られる。
【0047】
この際、上述のように、スレーブ装置20-1はシャットダウンの状態であり、高速動作回路が動作していないので、上記起動命令を含む起動用の信号は低速動作回路で受信させる。そのため、起動用の信号は通常の通信で使用する高速な2線差動信号では無く、より低い周波数(長いパルス幅)の信号(低周波信号)にする必要がある。マスタ装置16の通信方式変換部24は、4線シリアル信号による起動信号の一部をこの低周波信号である起動用の信号に変換する。以下、起動済みの通常状態において循環型通信路に伝送させる信号を「制御信号」といい、上記起動用の信号を「起動パルス信号」といい、制御信号に起動パルス信号を付加した(重畳した)信号を「起動信号」という。
【0048】
図4を参照して、起動信号の4線シリアル信号から2線差動信号への信号変換の一例について説明する。図4は、起動コマンドのフォーマットの一例を示すタイミングチャートであり、図4(a)は監視部22から出力される4線シリアル信号であるCSI、CLKI、SDIの波形を、図4(b)は送信部26から出力される2線差動信号であるTX、TXNの波形を、各々示している。図4に示すように、本実施の形態に係る起動コマンドは複数のコマンド列、すなわち、ファーストコマンド、セカンドコマンド、CRC演算データ、ライトデータ”0x55”の繰り返し(図4では、n回の繰り返しが例示されている)で定義されている。ただし、0x55は16進数の55で、2進に変換すると1、0の交番(繰り返し)パターンになる。
【0049】
図4では、予め定められた変換規則により、図4(a)に示す4線シリアル信号が図4(b)に示す2線差動信号に変換されている。以下、この変換を「4線/2線変換」という。4線/2線変換の変換規則については本発明に直接関係ないので詳細な説明を省く。
以下、ファーストコマンド、セカンドコマンド、およびCRC演算データの領域を「高速データ信号DH」、ライトデータ1”0x55”~ライトデータn”0x55”の領域を「低速データ信号DL」という。この低速データ信号DLが上記の起動パルス信号である。
【0050】
図4に示すように、高速データ信号DHでは4線/2線変換によって信号速度は変化していない(つまり、通常の4線/2線変換が行われている)が、低速データ信号DLでは4線/2線変換によって信号速度が低くなっている。本実施の形態では、低速データ信号DLは、SDI端子入力をCLKI端子入力でラッチした信号を生成して出力していく。
結果として、起動パルス信号はCLKI信号の1/2の周波数の信号となる。この起動パルス信号を含む起動信号が送信部26から出力され、結合素子30-1を介してスレーブ装置20-1の起動受信部40伝送される。なお、図4では、低速データ信号DLの通信速度を1/2に落とす例を示しているが、この通信速度低減率は1/2に限定されず、例えば起動受信部40等の回路速度に応じて適宜に設定してよい。本実施の形態では、この起動パルス信号(つまり、低速データ信号DL)である1、0の交番パターンが、起動用の信号として起動受信部40に入力される。
【0051】
ここで、結合素子30、32が本実施の形態のようにトランスで構成されている場合、起動信号はこのトランスを介して伝送されるため、起動信号を構成する信号パルスの周波数が低ければ低いほどトランスのインダクタンスを大きくしないと起動信号の伝送が困難になる。つまり、起動信号として周期の長いパルス(ライトデータ0xFF)とすると、極めて大きなインダクタンスのトランスが必要となる。そのため、本実施の形態では、比較的短い周期の複数のパルス列の起動信号を用いている。
【0052】
結合素子30-1を通過した後、起動信号はスレーブ装置20-1に入力される。この際、スレーブ装置20-1はシャットダウンの状態であり、スイッチ50は差動受信回路60側に接続されているので、起動信号は起動受信部40に入力され、上述した動作により電源回路46の起動トリガが生成される。電源回路46に起動トリガが入力されるとスレーブ装置20-1(電池監視IC)内の各電源がオンしメイン制御部48へ供給され、スレーブ装置20-1が起動する。その後図3に示すスイッチ50が受信部42側に切り替わる。
【0053】
次に、メイン制御部48は起動シーケンスの一環として、マスタ装置16から送られてきた起動信号と同じパルス列を生成し(再生し)送信部44へ送る。送信部44は、該起動信号をそのまま、結合素子30-2を介して次段のスレーブ装置20-2の起動受信部40へ送信する。スレーブ装置20-2でも上記のスレーブ装置20-1と同様の手順で電源回路46が立ち上げられ、起動信号がスレーブ装置20-3の起動受信部40に送られる。
【0054】
以上の動作が連鎖的に繰り返されて、最下流のスレーブ装置20-nまで同様の動作を順次実行していくことにより、デイジーチェーン接続されたすべてのスレーブ装置20を起動状態に移行させることができる。
【0055】
次に、図3を参照して、起動信号が起動受信部40に入力されてから、電源回路46が起動されるまでの動作について、より詳細に説明する。
【0056】
上述したように、スレーブ装置20の受信入力端子RXN1、RX1には、起動信号を起動受信部40に送るか、受信部42に送るかを排他的に切り替えるスイッチ50が設けられている。
【0057】
スレーブ装置20がシャットダウン時に監視部22から送信された起動信号は起動受信部40側、すなわち、差動受信回路60に入力される。メイン制御部48は電源回路46が起動した後に、受信入力端子RXN1、RX1が起動受信部40側から受信部42側に接続されるようにスイッチ50を制御する。この理由は、起動受信部40側に接続されたままだと起動受信部40の入力インピーダンスが過剰な負荷となり、受信部42側の高速通信の妨げになるからである。しかしながら、これに限られず、起動受信部40側、受信部42側の各々の通信にとって問題とならなければ、スイッチ50で排他的に切り替える必要はない。
【0058】
差動受信回路60は、受信入力端子RXN1、RX1の差動振幅が予め定められた規定振幅を越えた場合に有効入力とみなし、ハイレベル(以下、「H」)を出力する。その他の状態ではロウレベル(以下、「L」)を出力する。実際に入力される起動信号は図4(b)に示すように、有効入力に対応するHと無効入力に対応するLとがデューティ比50%で入力されるため、通常差動受信回路60の出力もH、Lの繰り返しのパルス出力となる。差動受信回路60内部の素子の遅延の影響で差動受信回路60の出力がパルスにならない場合も想定されるが、その場合は出力がH(有効入力)固定となるように差動受信回路60の素子の定数が調整されている。
【0059】
その後、差動受信回路60から出力されたデューティ比50%のパルスがノイズフィルタ部80に入力される。ノイズフィルタ部80のキャパシタ78は、キャパシタ78への入力がHの時に充電され、Lの時に放電される。充電方向の抵抗値、すなわちVCC側の抵抗66の抵抗値は、放電方向の抵抗値、すなわちVSS側の抵抗70の抵抗値よりも1/3~1/2程度まで小さくしている。そのため、デューティ比50%のパルスが入力され続けると充電と放電の時定数の差によりキャパシタ78は全体として充電方向へ進む。
【0060】
充電が進み後段のシュミットトリガ回路72のHの閾値を超えたタイミングでAND回路74の出力、すなわちラッチ部90入力信号はHを出力する。一方、途中でキャパシタ78への入力が停止しL固定になった場合は、キャパシタ78の放電が進み、AND回路74の出力はL出力を保持したままとなる。以上の動作により、ノイズフィルタ部80は短い時間の起動パルスを無効とするノイズフィルタとして機能する。
【0061】
AND回路74の出力がHになると、ラッチ部90のRSラッチ回路76のセット端子(図3では「S」と表記)にHが入力され、ラッチ部90の出力、すなわち電源回路46の起動トリガがHにセットされる。つまり、電源回路46の起動トリガが生成される。
【0062】
次に、デイジーチェーン接続された複数のスレーブ装置20の、スレーブ装置20-1以外の特定のスレーブ装置20がシャットダウンしている状態から再起動させる場合の動作について説明する。特定のスレーブ装置20がシャットダウンするという状態は、例えば該特定のスレーブ装置20に搭載された電源レギュレータの出力が短絡する等の何らかの異常が瞬間的に発生した結果、該特定のスレーブ装置20のみがシャットダウン状態となることにより発生する場合がある。
【0063】
上記のような状態の場合には、起動済みのスレーブ装置20-1に起動信号が入力されることになる。スレーブ装置20-1が起動済の場合、上述したように受信入力端子RXN1、RX1に設けられたスイッチ50が受信部42側に切り替わっており、受信部42に起動信号が入力される。
【0064】
受信部42は高速な差動信号を受けるための部位なので、起動受信部40とは逆に図4に示す起動コマンド列の高速データ信号DHの部分、つまりファーストコマンド、セカンドコマンド、CRC演算データまでを受信することが可能である。しかしながら、その後に続く低速データ信号DL、すなわち電源回路46の起動パルス信号は受信できない。
【0065】
そのため、起動信号を受信したスレーブ装置20-1は、受信部42は受信可能な高速データ信号DHの部分のみをシリアルロジック信号に変換し、メイン制御部48へ受け渡す。メイン制御部48では、その高速データ信号DHのコマンド列を解析し、起動命令であることを認識する。起動命令を認識したメイン制御部48は起動信号を生成し(再生し)、送信部44を介して次段のスレーブ装置20の起動受信部40および受信部42へ送る。
【0066】
次段のスレーブ装置20が起動済の場合は、上記スレーブ装置20-1と同様の動作で次段のスレーブ装置20へ起動信号を送信する。一方、次段のスレーブ装置20がシャットダウン状態にある場合はスイッチ50が起動受信部40側に接続されているため、当該スレーブ装置20が上述した通常のスレーブ装置20の起動手順における初段のスレーブ装置20-1と同様の動作を行い、起動受信部40が起動信号を受信する。起動信号を受信したシャットダウン状態にあるスレーブ装置20は、上述した通常のスレーブ装置20の起動手順に従って、自身の電源回路46を立ち上げ、起動信号を生成して(再生して)次段のスレーブ装置20へ送る。
【0067】
なお、上記実施の形態では最上流のスレーブ装置20-1が起動状態にあり、他スレーブ装置20に停止状態のものがある形態を例示して説明したが、スレーブ装置20-1が停止状態の場合は上述した通常の起動手順に即してスレーブ装置20-1が起動信号の再生を行い、起動済のスレーブ装置20は上記手順で起動信号の再生を行い、以降起動信号が順次伝送され全てのスレーブ装置20が起動される。
【0068】
以上詳述したように、本実施の形態に係る半導体装置、電池監視システム、および半導体装置の起動方法では、監視部と電池監視IC(スレーブ装置20)との間におけるコマンド等を送信、受信する通信線を用いて電池監視ICを起動するための起動信号を送信するようにした。そのため、従来該通信線とは別に設けられていた専用の起動信号送信手段を省くことが可能となり、起動信号の生成回路、送信のための信号線、端子、外付け回路等が不要となったので、電池監視システムを起動するための構成がより簡易で、より低コストなものとなった。
【0069】
また、起動信号を、高速動作回路である受信部42で受信可能な高速な起動コマンド(高速データ信号DH)と、低速動作回路である起動受信部40で受信可能な低速な(パルス幅の広い)起動パルス信号(低速データ信号DL)の2つを組み合わせて構成した。そのため、デイジーチェーン内の各電池監視ICが起動状態にあるか、シャットダウン状態にあるかに関わらず、起動信号を最上流の電池監視ICから最下流の電池監視ICまで循環させることが可能となった。
【0070】
なお、上記実施の形態では、起動受信部40における起動トリガの生成に際し、起動パルス信号のデューティを50%とし、該起動パルス信号を立ち上がりと立ち下りとで時定数の異なるRC遅延回路82を通過させる構成を採用した形態を例示して説明したが、これに限られない。例えば、起動パルス信号のデューティを50%より大きくし、起動パルス信号を立ち上がりと立ち下りとで時定数が同じであるRC遅延回路を通過させる構成を採用した形態としてもよい。また、上記実施の形態では、起動受信部40における起動トリガの生成に際し、キャパシタ78を充放電させて起動トリガを生成する構成を採用した形態を例示して説明したが、これに限られず、例えば起動信号のパルス数を計数して起動トリガを生成する構成を採用した形態としてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 電池監視システム
12 組電池
14 マイコン
16 マスタ装置
18 シリアル伝送路
20、20-1~20-n スレーブ装置
22 監視部
24 通信方式変換部
26 送信部
28 受信部
30、30-1~30-n、32 結合素子
40 起動受信部
42 受信部
44 送信部
46 電源回路
48 メイン制御部
50 スイッチ
60 差動受信回路
62 インバータ
64 トランジスタ
66 抵抗
68 トランジスタ
70 抵抗
72 シュミットトリガ回路
74 AND回路
76 RSラッチ回路
78 キャパシタ
80 ノイズフィルタ部
82 RC遅延回路
90 ラッチ部
100 電池監視システム
102、102-1~102-n スレーブ装置
104 組電池
106 マイコン
108 マスタ装置
110 シリアル伝送路
B、B1~Bn 電池セル
DH 高速データ信号
DL 低速データ信号

図1
図2
図3
図4
図5