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特許7007036マイクロデバイスを利用した固相抽出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】マイクロデバイスを利用した固相抽出方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 15/00 20060101AFI20220203BHJP
   B01D 11/02 20060101ALI20220203BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B01D15/00 A
B01D11/02 A
B01J19/00 321
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020526962
(86)(22)【出願日】2019-08-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-12
(86)【国際出願番号】 KR2019009901
(87)【国際公開番号】W WO2020040458
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2020-05-20
(31)【優先権主張番号】10-2018-0097181
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0095313
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ジュンウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム、デ フン
(72)【発明者】
【氏名】ジェガル、ソンヨン
(72)【発明者】
【氏名】イム、イエ ホーン
(72)【発明者】
【氏名】ヨウン、ユ ヨン
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/098532(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 15/00-15/42
B01J 11/00-11/04
G01N 30/00-30/02
B81B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダムを含むダム形成部を備えたマイクロデバイスを用いる固相抽出方法であって、
(i)前記マイクロデバイスに溶媒と充填物とを注入し、溶媒は流れるようにし、充填物は通過することができないように設計されたダムを含むダム形成部に移動させて、前記ダム形成部内で前記充填物に分離対象物質を吸着させる段階と、
(ii)前記充填物から前記吸着された分離対象物質の抽出を行う段階と、を含み、
前記段階(i)及び段階(ii)のうち何れか1つの段階で、前記マイクロデバイスを中心軸基準に回転させ、
前記マイクロデバイスの回転は、下記の数式1で定義される角速度で行われる固相抽出方法:
[数式1]
【数1】
前記式において、
ωは、前記マイクロデバイスの回転角速度であり、
gは、重力加速度であり、
rは、前記マイクロデバイスの半径であり、
φは、前記マイクロデバイスの重力方向から前記マイクロデバイスの回転軸が傾いた角度であって、0<φ<90の範囲である。
【請求項2】
前記マイクロデバイスは、
溶媒と充填物とが注入される注入口と前記溶媒が排出される出口と、
前記注入口と前記出口との間に位置するダム形成部であって、前記充填物は通過できず、前記溶媒のみ出口に流れるようにしたダムを含む前記ダム形成部と、を含み、
前記ダム形成部と前記ダムのそれぞれは、前記注入口が延びる方向の中心軸に垂直である断面が前記中心軸を基準とする円状を有し、前記ダム形成部内で前記充填物が前記中心軸を基準にディスク状に充填される、請求項1に記載の固相抽出方法。
【請求項3】
前記マイクロデバイスの回転角速度は、下記の数式1-1に定義される、請求項1に記載の固相抽出方法:
[数式1-1]
【数2】
前記式において、
ωは、前記マイクロデバイスの回転角速度であり、
gは、重力加速度であり、
ダムは、前記マイクロデバイスに含まれたダムの半径であり、
φは、前記マイクロデバイスの重力方向から前記マイクロデバイスの回転軸が傾いた角度であって、0<φ<90の範囲である。
【請求項4】
前記マイクロデバイスの注入口、出口、ダム形成部及びダムは、それぞれ前記注入口が延びる方向の中心軸に垂直である断面が前記中心軸を基準とする円状であり、
前記注入口の直径及び前記出口の直径のそれぞれは、前記ダム形成部の直径よりも小さい、請求項2に記載の固相抽出方法。
【請求項5】
前記ダムの前記注入口に向ける面であるダムの後端部は、前記注入口に向けて突出した円錐状である、請求項2または4に記載の固相抽出方法。
【請求項6】
前記ダム形成部の両端部である前記注入口に連結された第1端部及び前記出口に連結された第2端部のうち、前記ダムは、前記第1端部よりも前記第2端部にさらに近くに位置し、前記ダムは、前記第2端部から所定距離離隔して位置する、請求項2、4および5のいずれか一項に記載の固相抽出方法。
【請求項7】
前記第2端部の形状及び前記ダムの前記第2端部に向ける面の形状は、それぞれ前記出口に突出した形状である、請求項6に記載の固相抽出方法。
【請求項8】
前記第2端部の形状及び前記ダムの前記第2端部に向ける面の形状は、円錐状である、請求項7に記載の固相抽出方法。
【請求項9】
前記充填物は、ビーズ状である、請求項1から8のいずれか一項に記載の固相抽出方法。
【請求項10】
前記マイクロデバイスは、モータによって回転し、
前記モータは、回転力を提供する駆動部、前記駆動部に連結された回転シャフト、及び前記回転シャフトに連結されたヘッドを含み、
前記マイクロデバイスの外部面と前記モータのヘッドとが接触することにより、前記マイクロデバイスが回転する、請求項1から9のいずれか一項に記載の固相抽出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年8月21日付の大韓民国特許出願10-2018-0097181号及び2019年8月6日付の大韓民国特許出願10-2019-0095313号に基づいた優先権の利益を主張し、当該大韓民国特許出願の文献に開示されたあらゆる内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、マイクロデバイスで固相抽出を行う方法に係り、より具体的には、充填物と溶媒とを投入して、固相抽出法を行うようになったマイクロデバイスで固相抽出を行う方法に関する。
【背景技術】
【0003】
固相抽出法(solid phase extraction)とは、特定性質を有した充填物、例えば、ビーズ(beads)などを用いて目的物質(target material)を吸着させ、溶媒を用いて精製及び濃縮して前処理する方法である。この際、充填物をパッキング(packing)するデバイスが必要であり、回収率を高め、前処理時間を短縮するために、サイズが小さいマイクロデバイスとして具現されている。また、マイクロデバイスは、微量の物質の検出に使われており、マイクロデバイスを使用する場合、溶媒使用量を短縮することができるので、環境にやさしい長所を有している。
【0004】
従来の固相抽出用マイクロデバイス1の形態は、図7A及び図7Bに示したようである。マイクロデバイス1の内部にダム(dam)2が形成されており、ビーズ3は通過できず、流体のみ流れる方式である。この際、ダムの後端部210bにビーズの充填(packing)によって流路が減る影響で差圧が発生し、空隙の程度(porosity)が小さいほど差圧が大きく発生する。図7A及び図7Bの従来のマイクロデバイスの場合、左、右、中央側にダムが形成されている。したがって、相対的にビーズの充填距離が短い左、右方向により多量の流体が流れて、流体の流れに不均一な分布が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の固相抽出用マイクロデバイスの流体の流れの不均一な分布を解決するために、均一な流量の流体が流れるようにして、均一な抽出を具現することができる新たな形態の固相抽出用マイクロデバイスで固相抽出を行う方法が要求され、特に、このような新たな形態の固相抽出用マイクロデバイスに充填物が均等に充填されて固相抽出を行う方法が要求される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は、ダムを含むダム形成部を備えたマイクロデバイス(Micro device)を用いる固相抽出方法であって、(i)前記マイクロデバイスに溶媒と充填物とを注入し、溶媒は流れるようにし、充填物は通過することができないように設計されたダムを含むダム形成部に移動させて、前記ダム形成部内で前記充填物に分離対象物質を吸着させる段階;及び(ii)前記充填物から前記吸着された分離対象物質の抽出を行う段階;を含み、前記段階(i)及び段階(ii)のうち何れか1つの段階で、前記マイクロデバイスを中心軸基準に回転させ、前記マイクロデバイスの回転は、下記の数式1で定義される角速度で行われる固相抽出方法を提供する:
[数式1]
【数1】
【0007】
前記式において、ωは、前記マイクロデバイスの回転角速度であり、gは、重力加速度であり、rは、前記マイクロデバイスの半径であり、φは、前記マイクロデバイスのオリエンテーション(orientation)であって、0<φ<90の範囲である。
【0008】
前記マイクロデバイスは、溶媒と充填物とが注入される注入口と前記溶媒が排出される出口;及び前記注入口と前記出口との間に位置するダム形成部であって、前記充填物は通過できず、前記溶媒のみ出口に流れるようにしたダムを含む前記ダム形成部;を含み、前記ダム形成部と前記ダムのそれぞれは、前記注入口が延びる方向の中心軸に垂直である断面が前記中心軸を基準とする円状を有し、前記ダム形成部内で前記充填物が前記中心軸を基準にディスク状に充填される。
【0009】
また、本発明による固相抽出方法において、前記固相抽出用マイクロデバイスの回転角速度は、下記の数式1-1に定義される:
[数式1-1]
【数2】
【0010】
前記式において、ωは、前記マイクロデバイスの回転角速度であり、gは、重力加速度であり、rダムは、前記マイクロデバイスに含まれたダムの半径であり、φは、前記マイクロデバイスのオリエンテーションであって、0<φ<90の範囲である。
【0011】
本発明による固相抽出方法において、前記注入口、前記出口、前記ダム形成部及び前記ダムは、それぞれ前記注入口が延びる方向の中心軸に垂直である断面が前記中心軸を基準とする円状であり、前記注入口の直径及び前記出口の直径のそれぞれは、前記ダム形成部の直径よりも小さい。
【0012】
また、本発明による固相抽出方法において、前記ダムの前記注入口に向ける面であるダムの後端部は、前記注入口に向けて突出した円錐状である。
【0013】
また、本発明による固相抽出方法において、前記ダム形成部の両端部である前記注入口に連結された第1端部及び前記出口に連結された第2端部のうち、前記ダムは、前記第1端部よりも前記第2端部にさらに近くに位置し、前記ダムは、前記第2端部から所定距離離隔して位置しうる。
【0014】
また、本発明による固相抽出方法において、前記第2端部の形状及び前記ダムの前記第2端部に向ける面の形状は、それぞれ前記出口に突出した形状である。
【0015】
また、本発明による固相抽出方法において、前記第2端部の形状及び前記ダムの前記第2端部に向ける面の形状は、円錐状である。
【0016】
また、本発明による固相抽出方法において、前記充填物は、ビーズ状である。
【0017】
また、本発明による固相抽出方法において、前記固相抽出用マイクロデバイスは、モータによって回転し、前記モータは、回転力を提供する駆動部、前記駆動部に連結された回転シャフト、及び前記回転シャフトに連結されたヘッドを含み、前記固相抽出用マイクロデバイスの外部面と前記モータのヘッドとが接触することにより、前記固相抽出用マイクロデバイスが回転しうる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の固相抽出用マイクロデバイスで固相抽出を行う方法によれば、固相抽出用マイクロデバイスの中心軸を基準に充填物及び溶媒の流れが偏重されず、均一な流量の流体が流れるようにして、均一な固相抽出を具現可能にする長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】本発明の固相抽出方法に使われる固相抽出用マイクロデバイスの一実施例の正面図を示す図である。
図1B】本発明の固相抽出方法に使われる固相抽出用マイクロデバイスの一実施例の正面図を示す図である。
図1C】本発明の固相抽出方法に使われる固相抽出用マイクロデバイスの一実施例の正面図を示す図である。
図2図1Aの固相抽出用マイクロデバイスの上面図を示す図である。
図3】本発明の固相抽出方法に使われる固相抽出用マイクロデバイスの他の実施例の正面図を示す図である。
図4A】本発明の固相抽出方法に使われる固相抽出用マイクロデバイスのさらに他の実施例の正面図及びその要部を示す図である。
図4B】本発明の固相抽出方法に使われる固相抽出用マイクロデバイスのさらに他の実施例の正面図及びその要部を示す図である。
図5】本発明の固相抽出方法において、充填物及び溶媒の流れが偏重されず、均一な流量の流体が流れるようにする条件を示す図である。
図6】本発明の固相抽出方法において、固相抽出用マイクロデバイスを回転させるためにモータを備える場合を示す図である。
図7A】従来技術による固相抽出用マイクロデバイスの斜視図を、溶媒とビーズとのフローチャートの実験例を示す図である。
図7B】従来技術による固相抽出用マイクロデバイスの斜視図を、溶媒とビーズとのフローチャートの実験例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に使われる固相抽出用マイクロデバイス及び前記固相抽出用マイクロデバイスで固相抽出を行う方法を詳しく説明する。添付図面は、本発明の例示的な形態を図示したものであって、これは、本発明をより詳しく説明するために提供されるものであり、これにより、本発明の技術的な範囲が限定されるものではない。
【0021】
また、図面符号に関係なく同一または対応する構成要素は、同じ参照番号を付与し、これについての重複説明は省略し、説明の便宜上、示された各構成部材の大きさ及び形状は、誇張または縮小されうる。
【0022】
図1Aから図1Cは、本発明の固相抽出方法に使われるマイクロデバイス10の正面図を図示する。固相抽出用マイクロデバイス10は、注入口100、ダム形成部200、及び出口300を含む。注入口100を通じて充填物400(例えば、ビーズ)と溶媒とが注入され、該注入された充填物400と溶媒は、注入口100と連結されたダム形成部200内に移動する。ダム形成部200内のダム210の後側に充填物400が充填され、溶媒は、ダム210の側面を経てダム形成部200に連結された出口300を通じて抜け出る。
【0023】
本発明に使われる固相抽出用マイクロデバイス10のダム形成部200は、注入口100が延びる方向である中心軸に垂直である断面が前記中心軸を基準とする円状を有する。すなわち、円筒状(または、所定の長さを有する円板)の形状を有する。ダム形成部200内には、出口300側にダム210を含む。円筒状のダム形成部200の両端部のうち、ダム形成部200が注入口100と連結された側の端部を第1端部220とし、ダム形成部200が出口300に連結された側の端部を第2端部230とすれば、ダム210は、ダム形成部200の第2端部230に近くに位置し、溶媒が出口300に出るように、ダム210は、第2端部230から所定距離離隔して位置する。一方、本発明は、前述したものに限定されず、例えば、ダム210を充填物400よりもサイズが小さい穴を有する打孔板や充填物400が通過することができない程度の網構造などで製作することもでき、このような場合には、溶媒は、ダム210の側面だけではなく、ダム210を通過して出口300に流れ出すこともできる。
【0024】
また、ダム形成部200内でダム210を経た溶媒が出口300側に移動する時、第2端部230による抵抗を最小化するために、第2端部230は、出口300側に突出した形状であり、例えば、図1Aに示したように、前記注入口100に向けて突出した円錐状である。
【0025】
ダム210も、前述したように、注入口100が延びる方向である中心軸に垂直である断面が前記中心軸を基準とする円状を有する。図1Aに示したように、円錐状の第2端部230と同様にダム210の前端部210a(ダム210がダム形成部200の第2端部230に向ける面、すなわち、ダム210の出口300に向ける面)も円錐状である。
【0026】
また、本発明によれば、図1Aに示したように、ダム210の後端部210b(ダム210がダム形成部200の第1端部220に向ける面、すなわち、ダム210の注入口100に向ける面)も円錐状を有する。すなわち、ダム210の後端部210bの傾斜角(θ)が0°よりも大きい。例えば、θは、0°~60°である。
【0027】
まず、ダム210の後端部210bが平らな面である場合(すなわち、図1Aにおいて、θ=0°である場合)には、充填物400が流体に混合されず、注入口100に単独で注入される時、ダム210の後端部210b中でも注入口100に近い側から充填物400が積もりながら、充填物400で注入口100が詰まる現象が発生する可能性がある(図5参照)。
【0028】
本発明によれば、このような現象を防止するために、ダム210の後端部210bも、円錐状を有するようにして、充填物400が注入口100付近に積もらず、ダム210の後端部210bの傾斜面に沿って放射方向に移動するようにして(図1B参照)、充填物400が積層されるようにした。
【0029】
この際、θの値は、粉体(すなわち、充填物400)の安息角(すなわち、ダム210の後端部210bが平らな面である場合に、積層された充填物400が平らな面であるダム210の後端部210bと成す角度)よりも大きい。θ値が粉体の安息角よりも大きければ、充填物400がダム210の傾いた後端部210bに沿ってより円滑に移動することができる。粉体の安息角は、本発明が具現される多様な環境に合う多様な値を有する。
【0030】
図2は、図1Aの矢印(*)の方向に見た場合、ダム210の後端部210bにディスク状に充填された充填物400の形状を図示する。充填物400が充填された形状を参照番号200aで表示した。
【0031】
再び図1Aを参照すれば、ダム形成部200の直径とダム210の直径とが同じである場合、ダム形成部200のダム210が位置した部分を取り囲む側面はより突出してダム210の側面とダム形成部200の内部面との間に溶媒が移動可能にした突出部240をさらに含みうる。このような場合、ダム形成部200の第2端部230の直径は、ダム形成部200の第1端部220の直径よりもさらに大きい。図1Aに示された溶媒の流れを表示した線のように、溶媒は、充填物400の間を通り、ダム形成部200の突出部240を通り、ダム形成部200の第2端部230とダム210との間の空間を通って、出口300に移動することができる。
【0032】
ダム210の側面とダム形成部200の内部面との間の溶媒が流入される空間の入口である溶媒流入部250の幅は、充填物400の直径よりも小さい。
【0033】
注入口100及び出口300は、前述したように、ダム形成部200に連結されており、ダム形成部200と一体に形成されている。注入口100及び出口300は、それぞれ、例えば、長い円筒状の形状である。また、注入口100及び出口300は、それぞれダム形成部200の長手方向の中心軸を基準に同一線上に位置しうる。注入口100及び出口300のそれぞれの直径は、ダム形成部200の直径よりも小さい。
【0034】
固相抽出用マイクロデバイス10のサイズは、例えば、図1Cに示したように、固相抽出用マイクロデバイス10の直径(すなわち、ダム形成部200の突出部240を含んだ直径)は、25~32mmであり、固相抽出用マイクロデバイス10の総長さ(すなわち、注入口100、ダム形成部200、出口300を含んだ全長)は、約10.3~10.45mmであり、一実施形態として、約10mmである。充填物400の直径は、35~60μmである。注入口100の直径は、0.5~10mmであり、長さは、約5mmである。出口300の直径は、0.5~10mmであり、長さは、約5mmである。ダム形成部200の第1端部220からダム210の後端部210bまでの長さ(すなわち、充填物400が充填される区域の長さ)は、約0.5~2mmである。ダム210の前端部210aから第2端部230までの長さは、0.1~2mmである。突出部240の溶媒流入部250の幅は、充填物400が漏れないように、30~35μmである。図1Cに記載された寸法は、一実施例であり、本発明は、これに限定されず、本発明が具現される多様な環境に合わせて、多様な変形、変更が可能である。
【0035】
本発明によれば、ダム形成部200の長手方向の中心軸から充填物400の同じ充填距離は、類似した差圧を発生させるために、固相抽出用マイクロデバイス10内で溶媒の均一な流量分布を有するようにする。したがって、充填物400が充填される距離を同一にするように、図1Aに示したように、ダム形成部200とダム210とを中心軸から放射対称になる形態で設計し、それにより、充填物400が充填される領域200aは、図2に示したように、ディスク(disk)状になり、注入口100及び出口300は、前記の中心軸に位置させた。すなわち、ダム形成部200とダム210のそれぞれは、注入口100が延びる方向の中心軸に垂直である断面が前記中心軸を基準とする円状を有し、ダム形成部200内で充填物400が前記中心軸を基準にディスク状に充填されるようにした。このように、断面が円状に製作された時、充填物400が固相抽出用マイクロデバイス10の中心軸から同じ分布で流体流れ方向に形成され、それにより、固相抽出用マイクロデバイス10の不要な体積(volume)を無くし、固相抽出の効率を極大化させる。
【0036】
一方、図3は、図1Aの固相抽出用マイクロデバイスのうち、ダム形成部200を一部変形した場合であって、本発明の固相抽出方法に使われる固相抽出用マイクロデバイス10'の他の実施例の正面図を図示する。図3の固相抽出用マイクロデバイス10'でも、図1Aのように、ダム210の後端部210b(ダム形成部200'の第1端部220'に向ける面)が円錐状である。図3に示したように、ダム形成部200'の直径よりもダム210の直径が小さな場合には、ダム210の側面に溶媒が移動することができるので、ダム形成部200'は、突出部を有さない。このような場合にも、ダム210の側面とダム形成部200'の内部面との間の溶媒が流入される空間の入口である溶媒流入部250'の幅は、充填物400の直径よりも小さい。
【0037】
図4Aは、図1Aの固相抽出用マイクロデバイスのうち、ダム210を一部変形した場合であって、本発明の固相抽出方法に使われる固相抽出用マイクロデバイス10''のさらに他の実施例の正面図を図示する。図4Bは、図4Aの固相抽出用マイクロデバイス10''のうち、ダム210''部分のみを図示したのである。図4Aの固相抽出用マイクロデバイス10''でも、図1Aのように、ダム210''の後端部210''b(ダム形成部200の第1端部220に向ける面)に円錐状を含む。一方、図4A及び図4Bを参照すれば、ダム210''を前端部210''aを含む第1部分215''aと後端部210''bを含む第2部分215''bとに区分する。この際、第2部分215''bの中心軸(すなわち、注入口100の延長方向である中心軸)に垂直な円状断面での最大直径(D2)、すなわち、第2部分215''bの円錐状の底面の直径は、第1部分215''aの中心軸に垂直な円状断面での最大直径(D1)、例えば、第1部分215''aの円錐状の底面の直径よりも小さい。したがって、充填物400が円錐状の後端部210''bの傾斜面に沿って放射方向に移動してダム210''の縁部側に積もる場合、ダム210''の縁部側に充填物400が積層することができるより十分な空間を確保しながらも、θ値をさらに大きくするという利点がある。
【0038】
次に、図5を参照して、本発明による固相抽出方法及び固相抽出条件を説明する。まず、本発明による固相抽出方法は、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''の注入口100に溶媒と充填物400とを注入し、溶媒は流れるようにし、充填物は通過することができないように設計されたダムを含むダム形成部に移動させて、前記ダム形成分内で前記充填物400に分離対象物質を吸着させる段階(ステップS100);及び前記充填物400から前記吸着された分離対象物質の抽出を行う段階(ステップS200);を含む。また、本発明による固相抽出方法は、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''が中心軸を基準に回転する段階(ステップS300)をさらに含む。固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''が中心軸を基準に回転する段階(ステップS300)は、前記充填物400に分離対象物質を吸着させる段階(ステップS100)及び前記充填物400から前記吸着された分離対象物質の抽出を行う段階(ステップS200)のうち少なくとも何れか1つの段階中になされることもある。
【0039】
固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''の注入口100に溶媒と充填物400とを注入して、前記充填物400に分離対象物質を吸着させる段階(ステップS100)では、注入される溶媒がダム形成部200、200'を通過し、ダム210、210''によって充填される充填物400に目的物質(すなわち、分離対象物質)が吸着される。吸着された物質の抽出を行う段階(ステップS300)では、充填物400に吸着された物質を溶解することができる溶媒を注入する過程を行う。
【0040】
図5では、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''が重力方向に対して傾いた状態で位置する場合を図示し、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''中でも、例示的に図4Aの固相抽出用マイクロデバイス10''が重力方向に対して傾いた状態で位置する場合を図示する。
【0041】
より具体的には、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''の注入口が延びる方向の中心軸(以下、「固相抽出用マイクロデバイスの中心軸」と称する)が水平面(すなわち、重力方向に垂直である面)の軸からφほど傾いた状態で設けられる。
【0042】
固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''は、注入口100と出口300との連結軸のずれのような製作公差と設置誤りまたは多様な方向での溶媒投入のような設計自由度の確保のために、図5のように、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''が多様な角度(φ)で傾いて設けられる。この際、固相抽出用マイクロデバイスの中心軸が水平面(すなわち、重力方向に垂直である面)の軸からφほど傾いた角度を固相抽出用マイクロデバイスのオリエンテーションとし、φは、0<φ<90の範囲である。
【0043】
一方、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''(より正確には、固相抽出用マイクロデバイスの中心軸)が水平面(すなわち、重力方向に垂直である面)の軸から傾いた場合に、注入口100に注入される溶媒や充填物400が重力によってダム形成部200に偏重されて位置しうる。それにより、溶媒から固相抽出が不均一になされる恐れがある。
【0044】
しかし、本発明によれば、溶媒と充填物400との流れが偏重されず、均一な流量の流体が流れるようにして、均一な固相抽出を具現できるように、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''が中心軸を基準に回転する段階(ステップS300)を行う。この際、マイクロデバイス10、10'、10''の中心軸は、回転軸になる。
【0045】
また、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''が中心軸を基準に回転する段階(ステップS300)で、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''が回転する角速度(ω)は、下記の数式1に従う。
[数式1]
【数3】
【0046】
ここで、gは、重力加速度、rは、前記マイクロデバイスの半径、φは、前記マイクロデバイスのオリエンテーション(重力方向から前記マイクロデバイスの回転軸が傾いた角度)である。前記マイクロデバイスの半径(r)は、ダム形成部200、200'の半径に該当する。
【0047】
図5において、遠心力(F)は、重力によって粒子が受ける力(F)に比べて大きくならなければならず、下記の数式2を参照する。
[数式2]
>F
【0048】
また、遠心力(F)は、下記の数式3から数式5を参照する。
[数式3]
【数4】
【0049】
ここで、mは、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''内の中心軸から距離(r充填物)にある充填物400の個別粒子質量である。
【0050】
一方、中心軸から固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''内に充填された充填物400までの距離(r充填物)は、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''の半径(r)値に近接する。それを数式4で表記すれば、次の通りである。
[数式4]
【数5】
【0051】
したがって、遠心力(F)は、下記の数式5で表現される。
[数式5]
【数6】
【0052】
一方、重力によって粒子が受ける力(F)は、下記の数式6を参照する。
[数式6]
=m・g・cos(90°-φ)
【0053】
数式5と数式6とをそれぞれ数式2に代入すれば、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''が回転する段階(ステップS200)での均等充填流量分配のための固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''の回転角速度(ω)の条件を数式1で導出することができる。
[数式1]
【数7】
【0054】
ここで、gは、重力加速度、rは、前記マイクロデバイスの半径、φは、前記マイクロデバイスのオリエンテーションである。
【0055】
追加的に、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''が回転する角速度(ω)は、例えば、
【数8】
の1.5倍以上、または、例えば、
【数9】
の1,0000倍以下、または、例えば、
【数10】
の1.5~10,000倍の値でもあり、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''が回転する角速度(ω)は、溶媒やビーズ注入がデバイス10、10'、10''内になされて、固相抽出が行われる範囲内で大きければ大きいほど良い。
【0056】
代案として、中心軸から固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''内に充填された充填物400までの距離(r充填物)は、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''の半径(r)値に近接するが、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''のダム210、210''の半径(rダム)に近接する。それを数式4-1で表記すれば、次の通りである。
[数式4-1]
【数11】
【0057】
したがって、遠心力(F)は、下記の数式5-1で表現されることもある。
[数式5-1]
【数12】
【0058】
数式5-1と数式6とをそれぞれ数式2に代入すれば、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''が回転する段階(ステップS200)での均等充填流量分配のための固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''の回転角速度(ω)の条件を数式1-1で導出することができる。
[数式1-1]
【数13】
【0059】
ここで、gは、重力加速度、rダムは、前記ダム210、210''デバイスの半径、φは、前記マイクロデバイスのオリエンテーションである。図4A及び図4Bを参照すれば、前述したように、ダム210''は、前端部210''aを含む第1部分215''aと後端部210''bを含む第2部分215''bとに分けられることもある。場合によっては、rダムは、前端部210''aを含む第1部分215''aの半径でもあり、後端部210''bを含む第2部分215''bの半径でもある。
【0060】
追加的に、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''が回転する角速度(ω)は、例えば、
【数14】
の1.5倍以上、または、例えば、
【数15】
の1,0000倍以下、または、例えば、
【数16】
の1.5~10,000倍の値であり、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''が回転する角速度(ω)は、溶媒やビーズ注入がデバイス10、10'、10''内になされて、固相抽出が行われる範囲内で大きければ大きいほど良い。
【0061】
追加的に、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''が回転する段階(ステップS300)は、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''を数式1の角速度(ω)の条件で回転させる段階を含みうる。また、代案としては、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''が回転する段階(ステップS300)は、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''を数式1-1の角速度(ω)の条件で回転させる段階を含む。
【0062】
図5では、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''のうち、例示的に図4Aの固相抽出用マイクロデバイス10''が傾いた状態で位置する場合を図示するが、本発明の固相抽出遂行方法は、前述した図4Aの固相抽出用マイクロデバイス10''の場合に限定されず、固相抽出用マイクロデバイス10、10'にも同じ方法が適用される。また、本発明の固相抽出遂行方法は、図1から図4Bに示したように、ダムの後端部210b、210''bが円錐状である場合に限定されず、ダムの後端部210b、210''bが扁平な平面状を有する場合にも、同様に適用可能である。
【0063】
図6は、本発明の固相抽出方法において、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''を回転させるために、例示的に回転モータ500を備える場合を図示する。例示的に、回転モータ500は、回転力を提供する駆動部(図示せず)を含み、駆動部に連結された回転シャフト510と回転シャフト510に連結されたヘッド520とを含み、回転モータ500は、駆動部の回転でヘッド520が回転し、ヘッド520と固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''の外部面とが接触することにより、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''を回転させることができる。回転モータ500は、超小型回転モータである。本発明は、図6の示された場合に限定されず、回転モータ500が注入口100や出口300付近に備えられて、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''を回転させることもでき、固相抽出用マイクロデバイス10、10'、10''を回転させる限り、回転モータ500以外の多様な手段や方法を適用する式で変形、変更が可能である。
【0064】
前述した本発明の技術的構成は、当業者が、本発明のその技術的思想や必須的な特徴を変更せずとも、他の具体的な形態で実施可能であることを理解できるであろう。したがって、前述した実施例は、あらゆる面で例示的なものであり、限定的ではないということを理解しなければならない。また、本発明の範囲は、前記の詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって表われる。また、特許請求の範囲の意味及び範囲、そして、その等価概念から導出されるあらゆる変更または変形された形態が、本発明の範囲に含まれると解釈されねばならない。
【符号の説明】
【0065】
S100:固相抽出用マイクロデバイスの注入口に溶媒と充填物とを注入して、前記充填物400に分離対象物質を吸着させる段階
S200:前記充填物から前記吸着された分離対象物質の抽出を行う段階
S300:固相抽出用マイクロデバイスが回転する段階
10:固相抽出用マイクロデバイス
100:注入口
200:ダム形成部
210:ダム
220:第1端部
230:第2端部
240:突出部
250:溶媒流入部
300:出口
400:充填物
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4a
図4b
図5
図6
図7a
図7b