(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】給水装置
(51)【国際特許分類】
F04D 15/00 20060101AFI20220117BHJP
F04B 49/06 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
F04D15/00 Z
F04D15/00 D
F04B49/06 311
(21)【出願番号】P 2016194819
(22)【出願日】2016-09-30
【審査請求日】2019-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】原田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】小松 崇秀
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 友治
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-351268(JP,A)
【文献】特開平11-132562(JP,A)
【文献】特開平07-028568(JP,A)
【文献】特開2007-040552(JP,A)
【文献】特開2013-053536(JP,A)
【文献】特開2013-217274(JP,A)
【文献】特開2015-102496(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102278300(CN,A)
【文献】特開2004-076969(JP,A)
【文献】特開平04-068226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 15/00
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に水を供給するための給水装置において、
複数のポンプを備え、
前記複数のポンプ毎に、
自動モードと、外部入力に基づいてポンプを運転する試験モードと、点検作業モードと、を設定可能であり、
前記点検作業モードに設定されていないポンプについては前記ポンプに異常が生じているときに当該ポンプの異常を報知し、前記点検作業モードに設定されているポンプについては前記ポンプに異常が生じていても当該ポンプの異常を報知せず、
前記複数のポンプ毎に、前記自動モードと前記点検作業モードとを重複して設定可能であると共に、前記試験モードと前記点検作業モードとを重複して設定可能であり、
前記点検作業モードに設定されて所定期間が経過しているポンプは、前記点検作業モードが解除されることを特徴とする、
給水装置。
【請求項2】
前記複数のポンプを制御する制御部であって、前記点検作業モードに設定されているポンプは運転不可とする、制御部を更に有する、
請求項1に記載の給水装置。
【請求項3】
前記複数のポンプ毎に前記点検作業モードに設定されていることを表示可能である表示部を備えたことを特徴とする、
請求項1または2に記載の給水装置。
【請求項4】
前記給水装置の制御のための設定入力を受け入れると共に前記給水装置の運転に関する情報を表示できるように構成されている操作表示部を更に備え、
前記操作表示部への所定の設定入力により前記複数のポンプ毎に前記点検作業モードを設定可能である、
請求項1から3の何れか1つに記載の給水装置。
【請求項5】
前記給水装置の制御に関する情報を外部表示器に送信するように構成された通信部を更に備え、
前記通信部は、前記点検作業モードに設定されていないポンプについては前記ポンプに異常が生じているときに当該ポンプの異常を前記外部表示器に送信し、前記点検作業モードに設定されているポンプについては前記ポンプに異常が生じていても当該ポンプの異常を前記外部表示器に送信しないことを特徴とする、
請求項1から4の何れか1つに記載の給水装置。
【請求項6】
前記通信部は、前記外部表示器から電波を受信して該電波を電力に変換する制御部側アンテナ部を備える請求項5に記載の給水装置。
【請求項7】
前記通信部は、前記情報を近距離無線通信(NFC)によって前記外部表示器に送信する、請求項5または6に記載の給水装置。
【請求項8】
前記外部表示器からの信号の入力に基づいて、前記複数のポンプ毎に、前記点検作業モードを設定可能である、請求項5から7の何れか1つに記載の給水装置。
【請求項9】
建物に水を供給するための給水装置において、
複数のポンプを備え、
前記複数のポンプ毎に、外部入力に基づいてポンプを運転する試験モードと、点検作業モードと、を設定可能であり、
前記点検作業モードに設定されていないポンプについては前記ポンプに異常が生じているときに当該ポンプの異常を報知し、前記点検作業モードに設定されているポンプについては前記ポンプに異常が生じていても当該ポンプの異常を報知せず、
前記複数のポンプ毎に、前記試験モードと前記点検作業モードとの一方を選択的に設定可能であ
り、
前記点検作業モードに設定されて所定期間が経過しているポンプは、前記点検作業モードが解除されることを特徴とする、
給水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給水装置では、定期的にメンテナンスが行われて消耗部品が交換される。消耗部品の一例としては、ポンプの軸封部、軸受、インバータ、及び、センサ類などがある。給水装置が複数台のポンプを備える場合には、一部のポンプを停止させてメンテナンスするとともに、他のポンプを自動運転することにより、メンテナンス中も継続して給水を行うことができる。このときには、メンテナンス中のポンプの運転モードが「停止モード」、他のポンプの運転モードが「自動モード」に設定されて、停止モード中のポンプのメンテナンス作業が行われる。
【0003】
一例として、ポンプNo.1のメンテナンス作業を行う場合、メンテナンス作業員は、ポンプを強制的に停止させるためポンプNo.1の運転モードを「停止モード」にする。そして、メンテナンス作業員は、ポンプNo.1の消耗部品を交換すると、交換が正常に行われたか否かを確認する。具体的には、ポンプNo.1に対応するインバータを交換するときには、メンテナンス作業員は、まず、該当するインバータの電源をオフにする。これにより、給水装置の制御部は、インバータとの通信が確立できないためポンプNo.1のインバータの通信異常を検出し、外部接点の出力(故障一括、ポンプ個別故障)、警報表示(故障一括、ポンプ個別故障)並びにブザーなどによる異常発生の報知を行う。メンテナンス作業員は、インバータを交換すると、インバータの電源をオンにする。インバータの交換作業が正常になされていると、インバータとの通信が確立されて給水装置の制御部が異常の報知を終了する。このように、メンテナンス作業員は、制御部による異常の報知の有無によって、交換作業が正常に終了したことを確認できる。こうしたメンテナンス作業員による交換作業、および、交換作業が正常に終了したか否かの確認は、作業中にポンプが始動しないように、ポンプの運転モードが「停止モード」に設定されて行われる。同様に、ポンプ毎に取り付けられているセンサを交換する場合にも、給水装置の制御部は、センサが取り外されたときにセンサの断線を感知して該当するポンプの異常を検知し、異常発生の報知を行う。そして、センサの交換が正常になされると制御部による異常の報知が終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3305760号明細書
【文献】特許第3382307号明細書
【文献】特許第5948029号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、メンテナンス作業中の消耗部品などの交換作業に伴う異常の発生でも給水装置は、外部への異常の報知を行う。しかし、例えば夜間に作業を行うなど、作業環境によっては、メンテナンス作業中の警報等によって異常が報知されることを避けたい場合がある。特に、ネットワーク等を通じて遠隔地にて給水装置の監視が行われている場合、異常が遠隔地に発報されると、監視員が給水装置に故障が生じていると誤認するおそれがある。
【0006】
ポンプの運転モードが「停止モード」のときには、該当するポンプの異常を検出しないことも考えられる。しかし、この場合には、消耗部品などの交換作業が正常になされたか
否かを「停止モード」で確認することができなくなる。すなわち、メンテナンス作業員は、ポンプの運転モードを「自動モード」に設定すれば交換作業が正常になされたか否かを確認できるものの、「自動モード」に切り替えると、ポンプが自動運転により始動してしまう虞もあり、メンテナンスが完全に終了する前にメンテナンス途中のポンプを作動させてしまうおそれがある。
【0007】
また、従来の給水装置では、
図7に運転パネルの一例を示すように、ポンプ毎の運転モードを「自動モード」「停止モード」「手動モード」に変更することができ、ポンプ表示ランプ503にてポンプ毎の運転モード(自動モード、試験モード(手動モード)、停止モード)を表示するものがあった。この給水装置では、ポンプ毎の運転モードとは関係なく、点検作業ボタン1001にて装置全体に対する「点検作業中モード」を設定することができ、点検作業ランプ1002にて「点検作業中モード」か否かを視認することができる。更に、給水装置は、
図8に示すように、給水装置10に異常が生じているか否かを故障一括信号1010の設定信号を出力することにより外部へ放置するとともに、「点検作業中モード」か否かを点検作業中信号1011の接点信号を出力することにより外部へ報知する。ここで、給水装置より出力されるこれら接点信号は、給水装置の状態(ポンプ運転状態や故障等)を、給水装置が目視できない場所にて監視するための信号として用いられる。これら接点信号を用いて故障を監視する際にも、本来ならば、監視員はメンテナンス作業に起因する故障の発生は無視してよい。しかしメンテナンス作業に起因する故障か否かを判断するためには、監視員は監視信号として故障一括信号1010に加えて点検作業中信号1011を確認する必要がある。そのため、点検作業中信号1011の信号線の配線並びに配線工数が増えると共に、点検作業中信号1011が出力されている状況においては、点検中でないポンプの故障信号なのか、点検中のポンプにおける故障信号なのかの判断ができなかった。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、メンテナンス作業に起因して発生してしまう警報を給水装置に故障が生じていると誤認されるのを抑制できる給水装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(手段1)
本発明の給水装置は、建物に水を供給するための給水装置であり、複数のポンプを備える。この給水装置は、複数のポンプ毎に、点検作業モードを設定可能である。そして、給水装置は、点検作業モードに設定されていないポンプについてはポンプに異常が生じているときに当該ポンプの異常を報知し、点検作業モードに設定されているポンプについてはポンプに異常が生じていても当該ポンプの異常を報知しない。
【0010】
かかる構成により、本発明の給水装置は、点検作業モードに設定されているポンプの異常が報知されない。このため、複数のポンプのうちメンテナンスするポンプを点検作業モードに設定することにより、メンテナンス作業に起因して発生してしまう警報等を給水装置に故障が生じていると誤認されるのを抑制できる。
【0011】
(手段2)
手段1に記載の給水装置であって、複数のポンプを制御する制御部を更に有してもよい。そして、制御部は、点検作業モードに設定されているポンプは運転不可としてもよい。
こうすれば、点検作業モードに設定されているポンプが意図せずに始動されることを防止できる。
【0012】
(手段3)
手段1または2に記載の給水装置であって、点検作業モードに設定されて所定期間が経
過しているポンプは、点検作業モードが解除されてもよい。
こうすれば、メンテナンス作業が終了しているにもかかわらず、ポンプが継続して点検作業モードに設定されることを防止できる。
【0013】
(手段4)
手段1から3の何れか1つに記載の給水装置であって、複数のポンプ毎に点検作業モードに設定されていることを表示可能である表示部を備えてもよい。
こうすれば、複数のポンプ毎に点検作業モードに設定されているか否かを表示部の表示によって確認できる。
【0014】
(手段5)
手段1から4の何れか1つに記載の給水装置であって、給水装置の制御のための設定入力を受け入れると共に給水装置の運転に関する情報を表示できるように構成されている操作表示部を更に備えてもよい。そして、操作表示部への所定の設定入力により複数のポンプ毎に点検作業モードを設定可能としてもよい。
こうすれば、操作表示部への所定の設定入力により、ポンプの運転モードを設定することができる。
【0015】
(手段6)
手段1から5の何れか1つに記載の給水装置であって、給水装置の制御に関する情報を外部表示器に送信するように構成された通信部を更に備えてもよい。そして、通信部は、点検作業モードに設定されていないポンプについてはポンプに異常が生じているときに当該ポンプの異常を外部表示器に送信し、点検作業モードに設定されているポンプについてはポンプに異常が生じていても当該ポンプの異常を外部表示器に送信しないものとしてもよい。
こうすれば、外部表示器を見たユーザーが、ポンプのメンテナンス中に給水装置に故障が生じていると誤認するのを抑制できる
【0016】
(手段7)
手段6通信部は、前記外部表示器から電波を受信して該電波を電力に変換する制御部側アンテナ部を備えてもよい。
【0017】
(手段8)
手段6または7に記載の給水装置であって、通信部は、情報を近距離無線通信(NFC)によって外部表示器に送信してもよい。
【0018】
(手段9)
手段6から8の何れか1つに記載の給水装置であって、外部表示器からの信号の入力に基づいて、複数のポンプ毎に、点検作業モードを設定可能であってもよい。
こうすれば、外部表示器を用いて、複数のポンプ毎に点検作業モードを設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る給水装置を示す模式図である。
【
図2】操作表示部(運転パネル)の具体的な一例を示す図である。
【
図3】制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】異常判定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】第1変形例の制御部および外部表示器を示す図である。
【
図6】第2変形例の制御部および外部表示器を示す図である。
【
図7】従来の給水装置の運転パネルの一例を示す図である。
【
図8】従来の給水装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、図面では、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る給水装置を示す模式図である。この給水装置は主に戸建て、マンション、オフィスビル、商業施設、又は、学校等の建物(給水対象)に水道水を給水するための装置である。
図1に示すように、給水装置100の吸込口は、導入管5を介して水道管(水道本管)4または図示しない受水槽に接続されている。給水装置100の吐出口には給水管7が接続されており、この給水管7は、各建物の給水栓(例えば蛇口)10に連通している。給水装置100は、水道管(または受水槽)からの水を増圧し、建物の各給水栓10に水を供給する。
【0022】
給水装置100は、ポンプ2と、このポンプ2を駆動する駆動源としてのモータ3と、モータ3を可変速駆動する駆動装置としてのインバータ20と、を備えている。さらに、給水装置100は、ポンプ2の吐出側(下流側)に、逆止弁22と、フロースイッチ24と、圧力センサ26と、圧力タンク28と、を備える。
【0023】
図1に示す例では、ポンプ2、モータ3、逆止弁22、および、フロースイッチ24が2組設けられ、これらは並列に設けられている。なお、3組以上のポンプ2、モータ3、逆止弁22、およびフロースイッチ24が設けられてもよい。複数台のポンプ2を設けることにより、一部のポンプ2が運転不可となった場合には、運転可能な他のポンプ2にて給水を継続し極力断水を避けるようになっている。
【0024】
逆流防止装置25は、給水装置100の吸込口に接続された導入管5に設けられており、給水装置100から水道管4への水の逆流を防止する。逆流防止装置25の上流側には、圧力センサ21が設けられている。圧力センサ21は、ポンプ2の吸込側圧力を測定するための圧力測定器である。
【0025】
逆止弁22は、ポンプ2の吐出口に接続された吐出管に設けられており、ポンプ2が停止したときの水の逆流を防止する。逆止弁22の下流側(二次側)には、フロースイッチ24が設けられている。フロースイッチ24は、吐出管を流れる水の流量が所定の値にまで低下したこと、すなわち過少水量を検出する流量検出器である。吐出管におけるフロースイッチ24のさらに下流側には、圧力センサ26、及び、圧力タンク28が設けられている。圧力センサ26は、ポンプ2の吐出側圧力(以降、吐出側圧力とは、圧力センサ26にて測定した圧力値を示す。)を測定するための圧力測定器である。圧力タンク28は、ポンプ2が停止している間の吐出側圧力を保持するための圧力保持器である。
【0026】
給水装置100は、給水動作を制御する制御部40を備えている。
図1に示すように、制御部40は、記憶部47と、演算部48と、I/O部50と、設定部46と、表示部49と、を備えている。設定部46及び表示部49は、給水装置100の運転パネル(操作表示部)51に備えられている。
【0027】
設定部46は、外部操作により、給水を行うのに用いられる各種設定値を設定するのに使用される。設定部46において設定された各種設定値は、記憶部47に記憶される。一例として、ユーザーは、設定部46を介して、停止圧力、始動圧力、PA,PB、及び、その他制御に用いられる情報を入力できるようになっている。本実施形態では、設定部46には、各種設定値を設定する設定モードとするための設定ボタン55が備えられている。設定ボタン55が所定時間(例えば1秒)長押しされると操作表示部(運転パネル)51は設定モードとなり、ユーザーは、各種設定値を設定することができる。
【0028】
表示部49は、ユーザーインターフェースとして機能し、記憶部47に格納されている設定値等の各種データや、現在のポンプ2の運転状況(運転状態)、例えばポンプ2の運転または停止、運転周波数、電流、吸込側圧力、吐出側圧力、および、給水圧力等を表示する。また、表示部49は、給水装置100に異常が生じているときには、警報ランプの点灯とブザー音とによってユーザーに異常を報知する。
【0029】
図2は、操作表示部(運転パネル)の具体的な一例を示す図である。図示するように、操作表示部51は、給水装置100の運転に関する情報(例えば、ポンプ2の吐出側圧力、周波数(回転数)、ポンプに作用する電源電圧)を表示する7セグメントLED500を有する。本実施形態では、7セグメントLED500は、5つの7セグメントLEDが左右に並べられて構成されている。そして、左から1つ目の7セグメントLEDは、ポンプ識別記号表示領域として、現在選択されているポンプ2の識別記号(例えばポンプNo.)を表示する。また、その他の4つの7セグメントLEDは、ポンプ情報表示領域として、現在選択されているポンプ2の情報、または、給水装置100の他の情報を表示できるように構成されている。なお、本実施形態では、ポンプ識別記号表示領域の表示は、他の表示との区別が判別しやすいように、点滅を伴って表示される。
【0030】
操作表示部51は、7セグメントLED500に加えて、電源ランプ501、警報ランプ502、及び、ポンプ2毎の運転モードと故障を示すポンプ表示ランプ503を有する。本実施形態では、ポンプ表示ランプ503は、ポンプ2毎の現在のポンプ2の運転モード(自動モード、試験モード(手動モード)、停止モード、点検作業モード)を表示する。また、ポンプ表示ランプ503は、ポンプ2毎に異常を検出したときに故障ランプを点灯する。ここで、ポンプ2毎のポンプ2の異常は、並列に接続されたポンプ2毎の運転に関して判断される。本実施形態では、ポンプ2自体、温度センサ2a、モータ3、インバータ20、および、フロースイッチ24に異常が生じているときに、制御部40は該当するポンプ2の運転に関して異常が生じていると判断する。例えば、制御部40は、インバータ20との通信を確立できないとき、または、インバータ20から異常信号が入力されるときに、ポンプ2の異常が生じていると判断する。また、制御部40は、ポンプ2の温度を検出する温度センサ2aからの入力信号が規定範囲外の下限値(例えば1V未満)または上限値(例えば5V以上)を示す場合、又はフロースイッチ24からの入力信号とポンプ2の運転状態とが合わないと判断した場合に、センサ自体の故障またはセンサとI/O部50との配線の断線・ショートによる異常が生じていると判定し、ポンプ2に異常が生じていると判断する。なお、本実施形態の操作表示部51では、警報ランプ502は、ポンプ2毎にポンプ2の運転に関して異常が生じているときにポンプ表示ランプ503の故障ランプの点灯と共に点灯がなされる。また、警報ランプ502は、圧力センサ21,26に異常が生じているなど、給水装置100に関連する全ての異常において点灯がなされる。
【0031】
また、操作表示部51は、ポンプ2を選択するための選択ボタン511、表示の切替および各種設定値のインクリメントまたはデクリメントを行うための上下ボタン512、ポンプ2の運転モードを手動モード(試験モード)と自動モードとで切り替えるための試験/自動ボタン513、操作表示部51を設定モードとするための設定ボタン55、モニタキーとして表示を切り替えるための機能/モニタボタン514、警報解除並びに警報発生時のブザー発生を停止するためのブザー停止/警報解除ボタン515を有する。さらに、操作表示部51は、ポンプ2を点検作業モードとするための点検作業ボタン518、ポンプ2を自動モードまたは手動モードにてポンプ2の運転を有効とするための運転ボタン516、及び、ポンプ2を停止モードとするための停止ボタン517を有する。そして、操作表示部51は、すべてのポンプ2の運転可能/運転不可能を切り替えるための運転スイッチ519を有する。なお、操作表示部51は、
図2に示す例に限定されず、7セグメン
トLED500に代えて、タッチ入力方式または押圧ボタン方式用いた液晶画面を用いるなど、種々の公知の運転パネルを用いることができる。
【0032】
本実施形態では、ポンプ2の運転モードを変更するためのボタンとして、運転ボタン516、停止ボタン517、試験/自動ボタン513、及び、点検作業ボタン518を有している。しかし、こうした例に限定されず、これらの少なくとも一部がボタンを有さずに、設定値を入力することにより運転モードが切り替えられてもよい。その場合、ポンプ2の運転モードも各種設定値の設定と同様に、設定ボタン55が所定時間(例えば1秒)長押しされたときに、切り替えが可能であってもよい。また、ポンプ2の運転モードは、所定の保護モードが解除されているときに、切り替えが可能であってもよい。例えば、操作表示部51は、予め定められた2つ以上のボタンが同時に押されたときに保護モードを解除してもよいし、予め定められた複数のボタンが所定の順番で押されたときに保護モードを解除してもよい。さらに、こうした保護モードの解除は、給水装置100の運転を設定するための操作としてはエラー入力となる操作をすることにより行われてもよい。こうすれば、意図せずに表示モードが切り替えられてしまうことを抑制できる。また、保護モードが解除されるときに、給水装置100の制御に関する設定が変更されて給水装置100が誤操作することを防止できる。さらに、操作表示部51の表示モードは、設定部46の操作に代えて、または加えて、給水装置100に所定の認証がなされたときに第2表示モードに切り替えられるものとしてもよい。所定の認証は、種々の方法を利用することができ、例えば磁気カードまたはIC(Integrated Circuit)チップ等のデータを読み込むリーダが給水装置100に備えられ、ユーザーが給水装置100のリーダにデータを読み込ませることにより行われてもよい。
【0033】
記憶部47としては、RAM、ROM等のメモリが使用される。記憶部47には、各種データ、例えば演算部48における演算結果のデータ(運転時間、積算値等)、圧力値(吸込側圧力、吐出側圧力)、設定部46を通じて入力されたデータ、及びI/O部50を通じて入力される、またはI/O部50を通じて出力されるデータ等が格納される。
【0034】
I/O部50としては、ポート等が使用される。I/O部50は、圧力センサ21,26の信号、及び、フロースイッチ24の信号を取得する回路を有し、取得した信号情報を演算部48に送る。また、本実施形態では、モータ3の回転数を検出する図示しない回転数センサがモータ3に備えられている。I/O部50は、回転数センサにより検出されたモータ3の回転数をインバータ20を介して取得し、取得した信号情報を演算部48に送る。ただし、モータ3の回転数は、モータ3に設けられた回転数センサによって検出されるものに限定されず、インバータ20の出力周波数から推定してもよい。I/O部50は、通信における信号の入出力も行う。本実施形態では、ポンプ2とモータ3とは同期しており、ポンプ2の回転数とモータ3の回転数とは同一である。ポンプ2とモータ3とに変速器が介在する場合には、変速器の変速比(可変である場合には現在の変速比)とモータ3の回転数とに基づいて、ポンプ2の回転数を取得してもよい。また、ポンプ2の回転数は、モータ3の回転数に基づいて取得されるものに限定されず、ポンプ2の回転数を直接に検出する回転数センサから取得してもよい。
【0035】
更に、I/O部50には、接点信号出力部150が設けられてもよい。接点信号出力部150は、給水装置100の状態をリレー等の接点信号にて出力する。給水装置100より出力される接点信号は、給水装置100の状態(ポンプ2の運転状態や故障一括信号等)を、外部装置にて監視するための接点信号として用いられる。一例として、給水装置100において何らかの故障が発生した場合に、警報ランプ502にて表示すると共に故障一括信号を接点信号出力部150にて接点出力することにより故障を報知することができる。なお、接点出力部により報知する信号は、操作表示部51により変更できてもよい。
【0036】
演算部48としては、CPUが使用される。演算部48は、記憶部47に格納されているプログラム及び各種データ、並びにI/O部50から入力される信号に基づいて、ポンプ2を運転するための各種データの設定、計時、及び、演算等を行う。演算部48からの出力は、I/O部50に入力される。
【0037】
また、I/O部50とインバータ20は、RS422,RS232C,RS485等の通信手段により互いに接続される。I/O部50からインバータ20へは、各種設定値や周波数指令値、発停信号(運転・停止信号)などの制御信号が送られ、インバータ20からI/O部50へは、実際の周波数値や電流値等の運転状況(運転状態)が逐次送られる。
【0038】
なお、I/O部50とインバータ20との間で送受信される制御信号としては、アナログ信号および/またはデジタル信号を用いることができる。例えば、回転周波数等にはアナログ信号を用い、運転停止指令等にはデジタル信号を用いることができる。
【0039】
続いて、自動モードにおける制御部40による給水装置100の制御について説明する。ポンプ2が停止している状態で吐出側圧力が所定の始動圧力にまで低下すると、制御部40はポンプ2を始動させる。具体的には、制御部40はモータ3の駆動を開始するようにインバータ20に指令を出す。ポンプ2の運転中は、設定された圧力(設定圧)により推定末端圧力一定制御または目標圧力一定制御などの制御が行われる。具体的には推定末端圧力一定制御の場合はポンプ2の回転数と目標圧力制御カーブとを用いて目標圧力(SV)を設定し、目標圧力一定制御の場合は設定圧を目標圧力(SV)とする。また、吐出側圧力を現在圧力(PV)とする。そして、SVとPVの偏差にてPID演算を行いポンプ2の指令回転数が設定される。また、制御部40は、本実施形態のようにポンプが複数台ある場合は、同時に起動可能なポンプ台数(ポンプ並列運転台数)にて水量に応じたポンプの台数制御も行う。
【0040】
ポンプ2の運転中に建物での水の使用が少なくなると、フロースイッチ24は、過少水量を検出し、その検出信号を制御部40に送る。制御部40はこの検出信号を受け、ポンプ2に指令を出して吐出側圧力が所定の運転停止圧力に達するまでポンプ2の回転数を増加させ、圧力タンク28に蓄圧した後ポンプ2を停止(小水量停止)させる。ポンプ2が小水量停止した後に、再び建物内で水が使用されると吐出側圧力が始動圧力以下まで低下しポンプ2が始動する。なお、本実施形態のようにポンプが複数台ある場合には、始動するポンプ2をローテーションさせ、ポンプ2内に水が滞留するのを防ぐことが好ましい。また、小水量を検知する方法としては、フロースイッチ24を用いずに、モータ3の電流値による低負荷や締切圧力等その他の手段を用いてもよい。
【0041】
続いて、ポンプ2の各運転モードにおける制御について説明する。
図3は、制御処理の一例を示すフローチャートである。この制御処理は、給水装置100の電源起動中に制御部40によって実行される。
【0042】
制御処理では、制御部40は、現在のポンプ2の運転モードが、自動モード、手動モード、停止モード、又は、点検作業モードのいずれであるか判定する(ステップS100)。この処理は、複数のポンプ2毎に行われる。制御部40は、例えば、記憶部47に記憶されている運転モードを参照してポンプ2毎の現在のポンプ2の運転モードを判定する。
【0043】
本実施形態では、停止モード中に試験/自動ボタン513が押されると、ポンプ表示ランプ503の自動ランプもしくは試験ランプが交互に点灯する。自動ランプが点灯の状態にて運転ボタンを押すことによりポンプ2の運転モードが自動モードに設定され、試験ランプが点灯中に運転ボタンを押すことによりポンプ2の運転モードが手動モードに設定さ
れる。このように、ポンプ2の運転モードを手動モード(試験モード)から自動モード、もしくは自動モードから手動モード(試験モード)に変更する際には、停止モードを経由し、且つ運転ボタン516を押下にて自動モード、手動モードを確定することによりポンプ2は運転待機状態となる。このような操作手順により、操作ミスによる予期せぬポンプの起動を防ぐことができ、ポンプ2を安全に起動することが出来る。また、ポンプ2の運転モードやポンプ2の運転状態に関わらず、停止ボタン517を押すことにより、ユーザーは、該当するポンプ2を強制的に停止し運転不可とすることができる。また、ポンプ毎の点検作業モードを選択する際もポンプ停止モードにのみ選択可能としてもよい。
【0044】
現在のポンプ2の運転モードが自動モードであるときには、制御部40は、目標圧力(SV)に基づいてポンプ2を運転して(ステップS110)、制御処理を終了する。つまり、ポンプ2の運転モードが自動モードであるときには、ポンプ2は、建物の水の使用に応じて運転される。通常、給水装置100内の全てのポンプ2は、この自動モードに設定される。ポンプ2の運転モードが自動モードにて、ポンプ運転されるときには、上記したように、同時に起動可能なポンプ台数(ポンプ並列運転台数)以下にて水量に応じたポンプの台数制御、及び、始動するポンプ2のローテーション制御も行われる。
【0045】
現在のポンプ2の運転モードが手動モード(試験モード)であるときには、制御部40は、操作表示部51の操作に応じてポンプ2を運転して(ステップS120)、制御処理を終了する。つまり、制御部40は、ポンプ2が手動モードのときには、外部入力に基づいてポンプ2を運転する。本実施形態では、制御部40は、上下ボタン512の「上ボタン」が押されると手動モードのポンプ2の回転数を増加させ、選択ボタン512の「下ボタン」が押されると手動モードのポンプ2の回転数を減少させる。
【0046】
現在のポンプ2の運転モードが停止モードまたは点検作業モードであるときには、制御部40は、停止モードまたは点検作業モードのポンプ2を停止させて(ステップS130)、運転不可とし、制御処理を終了する。ポンプ毎に停止モードまたは点検作業モードを選択することにより、制御部40は、他の自動モードのポンプ2を用いて建物への給水を行うこともできる。よって、本実施形態の給水装置100は、建物への給水を継続しながら、一部のポンプ2を停止モードまたは点検作業モードとすることにより運転不可とし、インバータ20の交換などのメンテナンスを行うことができる。
【0047】
次に、ポンプ2毎の異常の検出について説明する。
図4は、異常判定処理の一例を示すフローチャートである。この異常判定処理は、給水装置100の電源起動中に、上記した制御処理と並列して制御部40によって実行される。また、この処理は、ポンプ2毎に対して行われる。
【0048】
異常判定処理では、制御部40は、現在のポンプ2の運転モードが点検作業モードであるか否かを判定する(ステップS200)。ポンプ2の運転モードが点検作業モードでないとき、つまり、自動モード、手動モード、または、停止モードであるときには(S200:No)、制御部40は、運転モードを判定したポンプ2が正常に運転できるか否かを判定する(ステップS210)。例えば、制御部40は、ポンプ2に対応するインバータ20との通信が確立できないとき、または、インバータ20から異常信号が入力されているときに、ポンプ2に異常が生じていると判断する。また、制御部40は、ポンプ2の温度センサ2aからの入力信号が規定範囲外の下限値(例えば1V未満)または上限値(例えば5V以上)を示す場合、又はフロースイッチ24の信号が異常と判断した場合は、センサ自体の故障またはセンサとI/O部50との配線の断線・ショートによる異常が生じていると判定し、ポンプ2に異常が生じていると判断する。
【0049】
そして、ポンプ2が正常に運転できるときには(S210:Yes)、制御部40は、
そのままステップS200の処理に戻る。また、ポンプ2に異常が生じていると判断したときには(S210:No)、制御部40は、検出した異常を報知して(ステップS214)、ステップS200の処理に戻る。このときには、制御部40は、運転パネル51のポンプ表示ランプ503の故障ランプおよび警報ランプ502の点灯や、図示しないブザー音、更には、接点信号出力部150による外部接点出力によって、ユーザーに異常を報知する。また、このときには、異常が検出されたポンプ2の運転を停止させて、他のポンプ2によって建物への水の供給を継続してもよい。こうすれば、ポンプ2に異常が検出されたときにも、継続して建物へ水を供給することができる。
【0050】
一方、現在のポンプ2の運転モードが点検作業モードであるときには(S200:Yes)、制御部40は、ポンプ2が正常に運転できるか否かを判定することなく、そのままステップS200の処理に戻る。つまり、制御部40は、ポンプ2の運転モードが点検作業モードであるときには、インバータ20および温度センサ2aなどの異常を検出せず、異常が生じていたとしても異常の報知を行わない。これにより、メンテナンス作業員は、インバータ20または温度センサ2a等の交換作業等を行うときにポンプ2の運転モードを点検作業モードに設定すれば、メンテナンス作業に起因して発生する異常を運転パネル51のポンプ表示ランプ503の故障ランプおよび警報ランプ502の点灯や、図示しないブザー音、更には接点信号出力部150等による報知がなされることを防止できる。そして、メンテナンス作業員は、インバータ20または温度センサ2a等のメンテナンス作業を行った後に、停止ボタン517を押すことにより、ポンプ2の運転モードを停止モードに変更する。これにより、ポンプ2が停止した状態で、ポンプ2が正常に運転できるか否かの判定がなされるので、メンテナンス作業員はメンテナンス作業を正常に完了できたか否かを確認することができる。また、このときには、メンテナンス作業を行っている他のポンプ2を用いて継続して建物に水を供給することができ、各給水栓10の圧力不足および断水を防止できる。
【0051】
更に、接点信号出力部150より出力される接点信号を用いて給水装置100の状態(ポンプ2の運転状態や故障一括信号等)を、外部装置にて監視するための接点信号として用いるとする。一例として、マンションやビルのポンプ室に設定された給水装置100の状態を別室の管理人室の監視装置にて監視する場合をあげる。この場合の管理人は給水装置の専門知識を持たないユーザーであることが多い。そのような設置環境において、ポンプ2のメンテナンスを行う場合、メンテナンス作業員は、メンテナンス中のポンプは故障報知する旨を管理人へ説明し理解を促す必要であった。本実施形態の給水装置100では、ポンプ2毎に点検作業モードによりメンテナンスに起因するポンプ毎の故障を報知しないことにより、管理人が給水装置に異常が発生したと誤認することを防止できる。また、点検作業中の接点信号を別途配線する必要がなく省配線となる。
【0052】
なお、
図3のS130において、点検作業モードのポンプ2は強制的に停止としたが、ポンプを停止する必要がないメンテナンスもある。そのため、ポンプ毎の点検作業モードが選択された場合は、該当するポンプ2の異常を報知しないのみとしてもよい。具体的には、自動モード、手動モード、及び、停止モードのいずれにおいてもポンプ毎の点検作業モードを追加で選択できるようにしてもよい。この場合、ポンプ表示ランプ503では、点検作業モードランプの他に自動モード、手動モード、停止モードの何れかが表示されることにより、現在の運転モード並びに点検作業モードであるか否かが確認できる。
【0053】
また、上記した実施形態では、ポンプ2の運転モードとして、「自動モード」、「手動モード」、「停止モード」、及び「点検作業モード」を有するものとした。しかし、こうした例に限定されるものではなく、例えば上記のように、自動モード、手動モード、及び、停止モードのいずれにおいても点検作業モードを追加で設定できるなど、複数の運転モードが重複して設定されてもよい。このときには、重複した運転モードにおける制御の優
先順位が設定されていてもよい。また、運転モードとして、自動モード、手動モード、停止モードのうち、少なくとも1つを有しなくてもよいし、他の運転モードを有してもよい。
【0054】
上記した実施形態では、点検作業ボタン518が押されることによりポンプ2の運転モードが点検作業モードに設定され、停止ボタン517が押されることによりポンプ2の運転モードが点検作業モードが解除されるものとした。しかし、こうした例に限定されず、点検作業モードで点検作業モードが押されることにより、ポンプ2の点検作業モードが解除されてもよい。また、ポンプ2が点検作業モードに設定されて所定期間(例えば、1時間など)が経過したときには、制御部40は、運転パネル51の操作にかかわらず、ポンプ2の運転モードを他の運転モードに変更することにより点検作業モードを解除してもよい。このときには、制御部40は、ポンプ2の運転モードを、自動モードまたは停止モードに変更してもよいし、点検作業モードの直前に設定されていた運転モードに変更することで点検作業モードを解除してもよい。これにより、メンテナンス作業員が点検作業モードの解除操作を忘れて設置現場を離れた場合でも、ポンプ2の故障検知を行わない状態が継続されるのを防ぐことができる。
【0055】
(第1変形例)
図5は、第1変形例の制御部および外部表示器を示す図である。図示するように、第1変形例では、制御部40Aが表示部49を有するとともに、外部表示器70がさらに設けられている。この外部表示器70は、給水装置100の一部として構成されてもよいし、外部装置として構成されてもよい。外部表示器70では、上述した運転パネル(操作表示部)51と同等か、もしくはより詳細な情報を表示したり、複雑な操作を行ったりすることができる表示器としてもよい。
【0056】
また、第1変形例では、制御部40Aは、通信部60をさらに備え、有線通信または無線通信によって外部表示器70に接続されている。さらに、第1変形例では、運転パネル51に、リセットボタン52、および、クリアボタン53が備えられている。クリアボタン53の押下により、制御部40Aは、表示部49の表示のみをクリアする。また、リセットボタン52の押下により、制御部40Aは、ポンプ2毎の異常判定、及び、他のメンテナンス情報(例えば、運転時間、始動回数、消耗部品の使用期間、故障履歴)などのデータをリセットする。
【0057】
外部表示器70として、例えばスマートフォン、携帯電話、パソコン、タブレットの汎用端末機器、または遠隔監視器などの専用端末機器が採用される。第1変形例では、表示部49として、7セグメントLED及び表示灯などの簡易な表示器を採用することができる。また、外部表示器70として、タッチ入力方式または押圧ボタン方式用いた液晶画面での高機能表示器を採用することができる。この場合、表示部49には簡易な情報を表示でき、外部表示器70には大きな情報量の情報を表示できる。こうした構成により、外部表示器70に制御部40Aによるポンプ2の制御に関した情報(例えば、ポンプ2の回転数、吸込側圧力、吐出側圧力など)を表示することによって、給水装置に不慣れなユーザーも誤解することなく、給水装置100の状態を認識することができる。また、給水装置100は、機械室またはポンプ室などの電気的なノイズの多い環境に設置されることがある。こうした場合に備えて、表示部49として、液晶表示やタッチパネルよりも電気的ノイズに強い7セグメントLEDや表示灯、機械的な押圧ボタンなどにて構成された表示器が使用されてもよい。これにより、外部環境から発生される電気的なノイズによって外部表示器70の液晶表示やタッチパネル操作に異常が発生した場合でも、表示部49により給水装置100の運転に必要な最低限度の表示および操作を行うことができる。したがって、給水装置100を電気的ノイズの多い環境下にも設置することができる。
【0058】
外部表示器70として、スマートフォン、携帯電話、パソコン、又は、タブレットなどの汎用端末機器を採用した場合には、これらの機器に、外部表示器70として作用するための専用のアプリケーションソフトウエアをインストールさせてもよい。この場合には、専用のアプリケーションソフトウエアを複数用意して使い分けることにより、ユーザーのレベル又は目的に沿った表示操作を提供することが可能である。
【0059】
ここで、制御部40Aに運転パネル51(表示部49)は設けられていなく、代わりに外部表示器(高機能表示器)70のみが設けられてもよい。この場合、上述した運転パネルの機能は外部表示器70にて全て実施可能とする。これにより、給水装置100には表示器自体を設ける必要がなくなるので、給水装置100全体のコストを更に下げることが可能である。なお、給水装置100は、表示部49を備えている場合にも、操作表示部(運転パネル)51の機能が外部表示器70にてすべて実施可能に構成されてもよい。例えば、制御部40Aは、外部表示器70からの信号に基づいて、ポンプ2毎の運転モードを、自動モード、手動モード、停止モード、または、点検作業モード、で切り替えてもよい。また、運転パネル51の設定部46にリセットボタン52及びクリアボタン53が備えられず、代わりに、外部表示器70にリセットボタン(不図示)又はクリアボタン(不図示)が備えられてもよい。外部表示器70上のクリアボタンを押すと、外部表示器70上に表示されている表示が消去される。
【0060】
また、
図5において、通信部60は、公衆回線やネットワーク、専用回線等を介して、保守管理会社または管理人室に設けられた遠隔監視装置(例えば、パソコン、スマートフォン、又は、専用モニター)と通信してもよい。この場合、例えば給水装置100におけるポンプ2の制御に関する情報等が、通信部60から遠隔監視装置に送信される。遠隔監視装置は、給水装置100のポンプ運転情報(ポンプ2の回転数、吸込側圧力、吐出側圧力、給水圧力、ポンプ2の異常情報など)、メンテナンス情報(運転時間、始動回数、消耗部品の使用期間、故障履歴など)、機器情報(製品番号、部品交換履歴、部品リストなど)など、他の情報も表示してもよい。
【0061】
(第2変形例)
図6は、第2変形例の制御部および外部表示器を示す図である。第2変形例では、通信部60が、制御部側アンテナ部67、制御部側アンテナ部67に接続された集積回路68、及び、通信用メモリ69を備えている。集積回路68は、制御部側アンテナ部67および通信用メモリ69に電気的に接続されている。第2変形例では、記憶部47とは別に、不揮発性メモリで構成される通信用メモリ69が設けられている。なお、第2変形例の記憶部47は、データを一時的に記憶する揮発性メモリと、制御に必要なプログラム及び各種設定値を電源オフ時にも記憶する不揮発性記憶メモリとを有している。不揮発性メモリとしては、例えばROM、HDD、EEPROM、FeRAM、及び、フラッシュメモリ等を用いることができる。一例として、第2変形例では、記憶部47はフラッシュメモリを備え、通信用メモリ69はFeRAMにより構成されている。なお、
図6に示す制御部40Bは表示部49を備えていないが、表示部49を備えてもよい。また、第2変形例の外部表示器70は、給水装置100の一部として構成されてもよいし、外部装置として構成されてもよい。
【0062】
第2変形例の制御部40Bは、給水装置100の運転情報(ポンプ2の回転数、吸込側圧力、吐出側圧力、給水圧力、ポンプ2の異常情報など)を、記憶部47の不揮発性メモリに記憶するとともに、通信用メモリ69にも記憶する。また、制御部40Bは、給水装置100の運転情報を、記憶部47の不揮発性メモリに記憶する頻度よりも、大きい頻度で通信用メモリ69に記憶する。これは、一般に、記憶部47の不揮発性メモリを構成するフラッシュメモリは書換え可能回数が10~100万回程度と比較的少なく、通信用メモリ69を構成するFeRAMは書換え可能回数が1億回程度と比較的大きいことに基づ
く。
【0063】
第2変形例の外部表示器70は、電波を送受信する表示器側アンテナ部71と、表示部72と、バッテリー73と、データリーダー74と、を備えている。この外部表示器70では、表示器側アンテナ部71で受信したデータがデータリーダー74で読み取られる。そして、データリーダー74で読み取られたデータ(例えば、ポンプ2の回転数、吸込側圧力、吐出側圧力、給水圧力、制御モードなど)が表示部72で表示される。バッテリー73は、表示器側アンテナ部71、データリーダー74、および表示部72に電力を供給する。
【0064】
外部表示器70として、例えばスマートフォン、携帯電話、パソコン、タブレット等の汎用端末機器を用いてもよく、遠隔監視器などの専用の端末機器を用いてもよい。特に、スマートフォンなどの汎用端末機器を外部表示器として使用すれば、専用の表示器を制作するコストが削減できるので、給水装置のコストを下げることができる。また、複数のユーザーが個々の汎用端末機器に給水装置100の状態を表示させることができるので、ユーザーのレベル又は目的に沿った表示操作を提供することが可能である。たとえば、マンションまたはビルの管理人のような給水装置に関する専門知識のないユーザーに対して、ポンプ2の制御に関する情報などを分かり易く知らせることができる給水装置を安価に提供することができる。
【0065】
外部表示器70は、近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)の技術によって制御部40Bと接続される。より具体的には、外部表示器70を制御部40Bに近づけた状態で、表示器側アンテナ部71が電波を発生すると、その電波を制御部側アンテナ部67が受け取り、制御部側アンテナ部67は電波を電力に変換する。この電力は集積回路68および通信用メモリ69に供給されてこれら集積回路68および通信用メモリ69を駆動する。集積回路68は、通信用メモリ69に記憶されている上記データを読み取り、制御部側アンテナ部67からデータとともに電波を表示器側アンテナ部71に送信する。データリーダー74は、表示器側アンテナ部71が受信したデータを読み取り、そのデータを表示部72に表示させる。
【0066】
外部表示器70は、表示を消去するためのクリアボタン76と、データをリセットするためのリセットボタン(不図示)を備えていてもよい。ユーザーがクリアボタン76を押すと、表示部72に表示されているポンプ2の制御に関した情報表示(例えば、ポンプ2の回転数、吸込側圧力、吐出側圧力、及び、給水圧力)等が消去される。また、リセットボタンを押すと、リセット信号が制御部40Bに送信され、リセット信号を受信した制御部40Bは、メンテナンス情報などのデータをリセットする。本実施形態のクリアボタン76は、表示部72の画面上に現れる仮想的なボタンであるが、クリアボタン76は表示部72の外に設けられた機械的なボタンであってもよい。第2変形例の制御部40Bは、クリアボタンを備えていないが、制御部40Bにクリアボタン、リセットボタンを設けてもよい。
【0067】
なお、表示のクリアおよびデータのリセットの操作は、操作制限を設けてもよい。具体的には、ユーザーが主に使用する外部表示器70にクリアボタン76を設け、メンテナンス作業員が主に使用する制御部40Bにリセットボタンを設ける。このように制御部40Bにのみリセットボタンを設けることで、外部表示器70を操作するユーザーによるリセットボタンの誤操作を防ぐことができる。パスワード等の複雑な使用制限の解除方法ではなく、外部表示器70を設けることで、ユーザーの誤操作によるリセットを防止することができる。
【0068】
第2変形例では、通信部60の通信用メモリ69に記憶されているデータ(例えば、ポ
ンプ2の回転数、吸込側圧力、吐出側圧力、給水圧力など)は、無線通信により制御部40Bから外部表示器70に送られる。第2変形例によれば、給水装置100の電源が入っていない場合でも、制御部側アンテナ部67は外部表示器70から発せられる電波から電力を発生し、集積回路68および通信用メモリ69を駆動することができる。したがって、給水装置100のメンテンナンス中などにおいて制御部40Bに電力が供給されていないときでも、外部表示器70は、制御部40Bの記憶部47からデータを取得して表示することができる。
【0069】
NFCは、数cmの近距離にて相互通信する技術である。したがって、外部表示器70に各種情報を表示するときには、ユーザー及びメンテナンス作業員は、相互通信可能な距離まで外部表示器70を制御部40Bに近づけることになる。このことは、外部表示器70を操作するときは、ユーザーおよびメンテナンス作業員は給水装置100の近くにいることを意味する。このため、例えば消耗品の交換作業中の誤操作に起因した給水装置100の予期しない動作を防止することに繋がる。また、複数の給水装置100が設置された現場では、表示したい給水装置100の近距離で相互通信が可能となる為、意図しない別の給水装置の状態を表示してしまうという誤表示を防止することが出来る。
【0070】
なお、上記の例では、制御部40Bと外部表示器70との無線通信方式の例としてNFCを挙げたが、他にも、Bluetooth(登録商標)およびWi-Fiなど、任意の方式の無線通信を利用可能である。ただし、NFCは、制御部40Bと外部表示器70とを近づけるだけで通信を完了させることができる点で有利である。また、制御部40Bと外部表示器70とが有線通信してもよい。例えば、制御部40Bには、制御部側アンテナ部67の代わりに、例えばUSB(Universal Serial Bus)のような外部接続端子が設けられ、ここに外部表示器70が接続されることによって通信が可能になってもよい。
【0071】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態および変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【符号の説明】
【0072】
2…ポンプ
2a…温度センサ
3…モータ
4…水道管
5…導入管
7…給水管
10…給水栓
20…インバータ
21…圧力センサ
22…逆止弁
24…フロースイッチ
25…逆流防止装置
26…圧力センサ
28…圧力タンク
40、40A、40B…制御部
46…設定部
47…記憶部
48…演算部
49…表示部
50…I/O部
51…操作表示部
51…運転パネル
52…リセットボタン
53…クリアボタン
55…設定ボタン
60…通信部
67…制御部側アンテナ部
68…集積回路
69…通信用メモリ
70…外部表示器
71…表示器側アンテナ部
72…表示部
73…バッテリー
74…データリーダー
76…クリアボタン
100…給水装置
501…電源ランプ
502…警報ランプ
503…ポンプ表示ランプ
511…選択ボタン
512…上下ボタン
513…試験/自動ボタン
514…機能/モニタボタン
515…ブザー停止/警報解除ボタン
516…運転ボタン
517…停止ボタン
518…点検作業ボタン
519…運転スイッチ