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  • 特許-接合材およびそれを用いた接合方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】接合材およびそれを用いた接合方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 7/04 20060101AFI20220117BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20220117BHJP
   B22F 1/102 20220101ALI20220117BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
B22F7/04 D
B22F1/00 K
B22F1/102
H01L21/52 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2017183123
(22)【出願日】2017-09-25
(65)【公開番号】P2018059192
(43)【公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2016194332
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 圭一
(72)【発明者】
【氏名】金杉 実奈美
(72)【発明者】
【氏名】藤本 英幸
(72)【発明者】
【氏名】栗田 哲
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/108408(WO,A1)
【文献】特開2011-175871(JP,A)
【文献】特開2016-000861(JP,A)
【文献】特開2008-161907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-1/18,7/00-7/08,
H01L 21/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀粒子と極性溶剤と分散剤を含む銀ペーストからなる接合材において、銀粒子が、ヘキサン酸で被覆された平均一次粒子径1~40nmの第1の銀粒子と、ソルビン酸で被覆された平均一次粒子径41~110nmの第2の銀粒子と、オレイン酸で被覆された平均一次粒子径120nm~10μmの第3の銀粒子とからなり、銀粒子の合計100質量%に対して、第1の銀粒子を1.4~49質量%、第2の銀粒子を36質量%以下、第3の銀粒子を50~95質量%の割合で含み、第2の銀粒子の質量に対する第1の銀粒子の質量の比が14/36以上であることを特徴とする、接合材。
【請求項2】
記銀粒子の合計100質量%に対する前記第1の銀粒子の質量の割合が1.4~25質量%であることを特徴とする、請求項に記載の接合材。
【請求項3】
前記銀粒子の合計100質量%に対する前記第2の銀粒子の質量の割合が2~17質量%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の接合材。
【請求項4】
前記極性溶媒が1-デカノール、1-ドデカノール、2-エチル1,3-ヘキサンジオールおよび2-メチル-ブタン-1,3,4-トリオールの少なくとも一種以上であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の接合材。
【請求項5】
前記分散剤がカルボン酸系分散剤およびリン酸エステル系分散剤の少なくとも一種以上であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の接合材。
【請求項6】
前記接合材中の前記金属粒子の合計の含有量が87~97質量%であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の接合材。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれかに記載の接合材を被接合物間に介在させて加熱することにより、接合材中の銀を焼結させて銀接合層を形成し、この銀接合層により被接合物同士を接合することを特徴とする、接合方法。
【請求項8】
銀粒子と極性と分散剤を含む銀ペーストからなる接合材の製造方法において、ヘキサン酸で被覆された平均一次粒子径1~40nmの第1の銀粒子と、ソルビン酸で被覆された平均一次粒子径41~110nmの第2の銀粒子と、オレイン酸で被覆された平均一次粒子径120nm~10μmの第3の銀粒子とからなる銀粒子を用意し、この銀粒子の合計100質量%に対して、第1の銀粒子を1.4~49質量%、第2の銀粒子を36質量%以下、第3の銀粒子を50~95質量%の割合にし且つ第2の銀粒子の質量に対する第1の銀粒子の質量の比を14/36以上にして、この銀粒子と極性溶剤と分散剤とを混練することを特徴とする、接合材の製造方法。
【請求項9】
記銀粒子の合計100質量%に対する前記第1の銀粒子の質量の割合を1.4~25質量%にすることを特徴とする、請求項に記載の接合材の製造方法。
【請求項10】
前記銀粒子の合計100質量%に対する前記第2の銀粒子の質量の割合を2~17質量%にすることを特徴とする、請求項またはに記載の接合材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合材およびそれを用いた接合方法に関し、特に、銀微粒子などの金属粒子を含む金属ペーストからなる接合材およびその接合材を用いて銅基板などの金属基板上にSiチップなどの電子部品を接合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、銀微粒子などの金属粒子を含む金属ペーストを接合材として使用し、被接合物間に接合材を介在させて加熱することにより、接合材中の銀などの金属を焼結させて、被接合物同士を接合することが提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0003】
このような接合材を使用して銅基板などの金属基板上にSiチップなどの電子部品を固定する場合、銀微粒子などの金属粒子が溶媒に分散した金属ペーストを基板上に塗布した後、加熱して溶媒を除去することにより、基板上に予備乾燥膜を形成し、この予備乾燥膜上に電子部品を配置した後、電子部品に圧力を加えながら加熱することにより、金属接合層を介して電子部品を基板に接合することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-80147号公報(段落番号0014-0020)
【文献】特開2011-21255号公報(段落番号0032-0042)
【文献】特許第5976684号公報(段落番号0014-0022)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1および2の接合材は、銅基板同士や銅基板と銅チップを接合する際に使用する場合には、良好に接合することができるが、Siチップを銅基板などの金属基板に接合する際に使用すると、金属接合層内や、金属接合層とSiチップや銅基板との界面にボイドが発生して良好に接合することができない場合がある。また、特許文献1および2の接合材は、粘度が高過ぎて、インクジェット印刷などによって基板に印刷する場合のように、所定の印刷方式で良好に印刷することができない場合がある。また、特許文献3の接合材は、Siチップを銅基板などの金属基板に接合する際に、金属基板上に塗布した後に予備焼成を行ってある程度の溶剤を揮発させて予備乾燥膜を形成し、この予備焼成膜上にSiチップを配置して本焼成を行わなければ、金属接合層内などにボイドが発生して良好に接合することができない場合がある。
【0006】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、銅基板などの金属基板に印刷し易く且つSiチップを金属基板に接合する際に予備焼成を行わなくても金属接合層内や金属接合層とSiチップや銅基板との界面にボイドが生じるのを防止して良好に接合することができる、接合材およびそれを用いた接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、金属粒子と溶剤と分散剤を含む金属ペーストからなる接合材において、金属粒子として、平均一次粒子径1~40nmの第1の金属粒子と、平均一次粒子径41~110nmの第2の金属粒子と、平均一次粒子径120nm~10μmの第3の金属粒子とを使用し、金属粒子の合計100質量%に対して、第1の金属粒子を1.4~49質量%、第2の金属粒子を36質量%以下、第3の金属粒子を50~95質量%の割合にし、第2の金属粒子の質量に対する第1の金属粒子の質量の比を14/36以上にすることにより、銅基板などの金属基板に印刷し易く且つSiチップを金属基板に良好に接合することができる、接合材およびそれを用いた接合方法を提供することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明による接合材は、金属粒子と溶剤と分散剤を含む金属ペーストからなる接合材において、金属粒子が、平均一次粒子径1~40nmの第1の金属粒子と、平均一次粒子径41~110nmの第2の金属粒子と、平均一次粒子径120nm~10μmの第3の金属粒子とからなり、金属粒子の合計100質量%に対して、第1の金属粒子を1.4~49質量%、第2の金属粒子を36質量%以下、第3の金属粒子を50~95質量%の割合で含み、第2の金属粒子の質量に対する第1の金属粒子の質量の比が14/36以上であることを特徴とする。
【0009】
この接合材において、第1の金属粒子が炭素数8以下の有機化合物で被覆されているのが好ましく、第2の金属粒子が炭素数8以下の有機化合物で被覆されているのが好ましい。また、第2の金属粒子が炭素数8以下の有機化合物で被覆され、第3の金属粒子が炭素数9以上の有機化合物で被覆され、金属粒子の合計100質量%に対する第1の金属粒子の質量の割合が1.4~25質量%であるのが好ましい。これらの場合、炭素数8以下の有機化合物が、炭素数1~6の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸であるのが好ましく、ヘキサン酸またはソルビン酸であるのが好ましい。また、金属粒子の合計100質量%に対する第2の金属粒子の質量の割合が2~17質量%であるのが好ましい。また、溶剤が極性溶媒であるのが好ましく、極性溶媒が1-デカノール、1-ドデカノール、2-エチル1,3-ヘキサンジオールおよび2-メチル-ブタン-1,3,4-トリオールの少なくとも一種以上であるのが好ましい。また、分散剤がカルボン酸系分散剤およびリン酸エステル系分散剤の少なくとも一種以上であるのが好ましい。また、接合材中の金属粒子の合計の含有量が87~97質量%であるのが好ましい。さらに、金属粒子が、金粒子、銀粒子、銅粒子またはニッケル粒子であるのが好ましく、銀粒子または銅粒子であるのがさらに好ましく、銀粒子であるのが最も好ましい。
【0010】
また、本発明による接合方法は、上記の接合材を被接合物間に介在させて加熱することにより、接合材中の金属を焼結させて金属接合層を形成し、この金属接合層により被接合物同士を接合することを特徴とする。
【0011】
また、本発明による接合材の製造方法は、金属粒子と溶剤と分散剤を含む金属ペーストからなる接合材の製造方法において、平均一次粒子径1~40nmの第1の金属粒子と、平均一次粒子径41~110nmの第2の金属粒子と、平均一次粒子径120nm~10μmの第3の金属粒子とからなる金属粒子を用意し、この金属粒子の合計100質量%に対して、第1の金属粒子を1.4~49質量%、第2の金属粒子を36質量%以下、第3の金属粒子を50~95質量%の割合にし且つ第2の金属粒子の質量に対する第1の金属粒子の質量の比を14/36以上にして、この金属粒子と溶剤と分散剤とを混練することを特徴とする。
【0012】
この接合材の製造方法において、第2の金属粒子が炭素数8以下の有機化合物で被覆され、第3の金属粒子が炭素数9以上の有機化合物で被覆され、金属粒子の合計100質量%に対する第1の金属粒子の質量の割合を1.4~25質量%にするのが好ましい。また、金属粒子の合計100質量%に対する第2の金属粒子の質量の割合を2~17質量%にするのが好ましい。さらに、溶剤が極性溶媒であるのが好ましい。
【0013】
なお、本明細書中において、「金属粒子の平均一次粒子径」とは、金属粒子の透過型電子顕微鏡写真(TEM像)または走査型電子顕微鏡写真(SEM像)から求められる一次粒子径の平均値をいう。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、銅基板などの金属基板に印刷し易く且つSiチップを金属基板に接合する際に予備焼成を行わなくても金属接合層内や金属接合層とSiチップや銅基板との界面にボイドが生じるのを防止して良好に接合することができる、接合材およびそれを用いた接合方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による接合材の実施の形態における第1の金属粒子(小粒子A)と第2の金属粒子(中粒子B)と第3の金属粒子(大粒子C)の質量割合(質量%)の範囲を三角座標で表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による接合材の実施の形態では、金属粒子と溶剤と分散剤を含む金属ペーストからなる接合材において、金属粒子が、平均一次粒子径1~40nmの第1の金属粒子と、平均一次粒子径41~110nmの第2の金属粒子と、平均一次粒子径120nm~10μmの第3の金属粒子とからなり、金属粒子の合計100質量%に対して、第1の金属粒子を1.4~49質量%、第2の金属粒子を36質量%以下、第3の金属粒子を50~95質量%の割合にし、第2の金属粒子の質量に対する第1の金属粒子の質量の比(第1の金属粒子の質量/第2の金属粒子の質量)を14/36以上にする。
【0017】
すなわち、本発明による接合材の実施の形態では、図1に示すように、第1の金属粒子(小粒子A)と第2の金属粒子(中粒子B)と第3の金属粒子(大粒子C)の質量割合(質量%)は、それぞれ100質量%、0質量%、0質量%の点A(100、0、0)と、0質量%、100質量%、0質量%の点B(0、100、0)と、0質量%、0質量%、100質量%の点C(0、0、100)を頂点とする三角形ABCの座標(三角座標)上の点a(49、1、50)、点b(14、36、50)、点c(1.4、3.6、95)、点d(5、0、95)および点e(49、0、51)をこの順で直線により結んで得られた五角形の領域内(五角形の線上を含む)にある。なお、図1の三角座標において、直線bCは(点Cを除いて)第2の金属粒子(中粒子B)の質量に対する第1の金属粒子の質量の比(第1の金属粒子の質量/第2の金属粒子の質量)が14/36の場合を示している。
【0018】
また、第1の金属粒子(小粒子A)と第2の金属粒子(中粒子B)と第3の金属粒子(大粒子C)の質量割合(質量%)は、金属粒子の合計100質量%に対して、第1の金属粒子を2~40質量%、第2の金属粒子を32質量%以下、第3の金属粒子を50~95質量%の割合にするのが好ましく、第1の金属粒子を2.5~30質量%、第2の金属粒子を29質量%以下、第3の金属粒子を50~95質量%の割合にするのがさらに好ましい。特に、接合材をSiチップと金属基板との接合に使用する場合には、接合材の粘度を低くして金属基板に印刷し易くするために、金属粒子の合計100質量%に対する第1の金属粒子の質量の割合を1.4~25質量%にするのが好ましい。また、接合材をSiチップと金属基板との接合に使用する場合には、Siチップを良好に接合するために、金属粒子の合計100質量%に対する第2の金属粒子の質量の割合を17質量%以下にするのが好ましく、接合材の粘度を低くして金属基板に印刷し易くするために、金属粒子の合計100質量%に対する第2の金属粒子の質量の割合を2~17質量%にするのがさらに好ましい。
【0019】
第1の金属粒子(小粒子)の平均一次粒子径は、1~40nmであり、接合材をSiチップと金属基板との接合に使用する場合にボイドが生じるのを防止して良好に接合するために、5~30nmであるのが好ましく、10~20nmであるのがさらに好ましい。第2の金属粒子(中粒子)の平均一次粒子径は、41~110nmであり、接合材をSiチップと金属基板との接合に使用する場合に金属基板に印刷し易く且つSiチップを良好に接合するために、50~105nmであるのが好ましく、55~100nmであるのがさらに好ましい。これらの第1の金属粒子(小粒子)および第2の金属粒子(中粒子)は、粒子径が小さくて凝集し易いため、それぞれ炭素数8以下の有機化合物(好ましくは互いに異なる有機化合物)で被覆されているのが好ましい。このような有機化合物は、炭素数1~6の飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸であるのが好ましく、ヘキサン酸またはソルビン酸であるのがさらに好ましい。また、第3の金属粒子(大粒子)の平均一次粒子径は、120nm~10μmであり、接合材をSiチップと金属基板との接合に使用する場合に金属基板に印刷し易くするために、0.2~5μmであるのが好ましく、0.3~3μmであるのがさらに好ましい。この第3の金属粒子(大粒子)を(脂肪酸やアミンなどの)有機化合物で被覆してもよい。特に、接合材をSiチップと金属基板との接合に使用する場合には、接合材の粘度を低くして金属基板に印刷し易くするために、金属粒子の合計100質量%に対する第1の金属粒子の質量の割合を1.4~25質量%にし、第2の金属粒子を炭素数8以下の有機化合物で被覆するとともに、第3の金属粒子を炭素数9以上の有機化合物で被覆するのが好ましい。このように第3の金属粒子を被覆する有機化合物の炭素数を第2の金属粒子を被覆する有機化合物の炭素数より多く(有機化合物の分子中の主鎖を長く)することにより、第2の金属粒子を添加しないで第1の金属粒子と第3の金属粒子を添加した場合と比べて、接合材の粘度を下げることができる。このような炭素数9以上の有機化合物として、ラウリル酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラウリルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミンなどの炭素数9~20の(カルボン酸などの)脂肪酸やアミンなどを使用することができるが、接合材の粘度を下げるために、炭素数12~20のアミンまたはカルボン酸を使用するのが好ましく、炭素数14~18のアミンまたはカルボン酸を使用するのがさらに好ましい。また、金属粒子は、(接合材をSiチップと金属基板との接合に使用する場合にSiチップを良好に接合するために)金粒子、銀粒子、銅粒子またはニッケル粒子であるのが好ましく、(接合材の導電性を良好にするために)銀粒子または銅粒子であるのがさらに好ましく、(接合材の耐酸化性を向上させるために)銀粒子であるのが最も好ましい。接合材中の金属粒子の合計の含有量は、(接合材をSiチップと金属基板との接合に使用する場合にSiチップを良好に接合するために)87~97質量%であるのが好ましく、90~95質量%であるのがさらに好ましい。
【0020】
なお、金属粒子の平均一次粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子株式会社製のJEM-1011)または金属粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテクノロジーズ株式会社製のS-4700)により所定の倍率で観察した像(SEM像またはTEM像)上の100個以上の任意の金属粒子の一次粒子径(面積が同一の円に相当する円の直径)から算出することができる。この金属粒子の平均一次粒子径(個数平均)の算出は、例えば、画像解析ソフト(旭化成エンジニアリング株式会社製のA像くん(登録商標))により行うことができる。
【0021】
金属ペースト中の溶剤の含有量は、(金属粒子が焼結して金属接合層を形成することができ且つ金属基板に印刷し易い粘度を有する金属ペーストを得るために)1~10質量%であるのが好ましく、2~8質量%であるのがさらに好ましい。この溶剤として、様々な極性溶媒(分散媒)を使用することができる。例えば、極性溶媒として、水、アルコール、ポリオール、グリコールエーテル、1-メチルピロリジノン、ピリジン、ターピネオール、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、テキサノール、フェノキシプロパノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、γ―ブチロラクトン、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、1-オクタノールなどを使用することができる。このような極性溶媒として、1-デカノール、1-ドデカノール、1-テトラデカノール、3-メチル-1,3-ブタンジオール3-ヒドロキシ-3-メチルブチルアセテート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ヘキシルジグリコール、2-エチルヘキシルグリコール、ジブチルジグリコール、グリセリン、ジヒドロキシターピネオール、ジヒドロターピニルアセテート、2-メチル-ブタン-2,3,4-トリオール(イソプレントリオールA(IPTL-A、日本テルペン化学株式会社製)、2-メチル-ブタン-1,3,4-トリオール(イソプレントリオールB(IPTL-B、日本テルペン化学株式会社製)、テルソルブIPG-2Ac(日本テルペン化学株式会社製)、テルソルブMTPH(日本テルペン化学株式会社製)、テルソルブDTO-210(日本テルペン化学株式会社製)、テルソルブTHA-90(日本テルペン化学株式会社製)テルソルブTHA-70(日本テルペン化学株式会社製)、テルソルブTOE-100(日本テルペン化学株式会社製)、ジヒドロターピニルオキシエタノール(日本テルペン化学株式会社製)、ターピニルメチルエーテル(日本テルペン化学株式会社製)、ジヒドロターピニルメチルエーテル(日本テルペン化学株式会社製)などを使用するのが好ましく、1-デカノール、1-ドデカノール、2-エチル1,3-ヘキサンジオールおよび2-メチル-ブタン-1,3,4-トリオール(イソプレントリオールB(IPTL-B))の少なくとも一種以上を使用するのがさらに好ましい。
【0022】
金属ペースト中の分散剤の含有量は、0.01~2質量%であるのが好ましく、0.03~0.7質量%であるのがさらに好ましい。この分散剤として、様々な市販の分散剤を使用することができる。例えば、三洋化成株式会社製のビューライトLCA-H、LCA-25NH、共栄社化学株式会社製のフローレンDOPA-15B、日本ルーブリゾール株式会社製のソルプラスAX5、ソルスパース9000、ソルシックス250、エフカアディディブズ社製のEFKA4008、味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーPA111、コグニクスジャパン株式会社製のTEXAPHOR-UV21、ビックケミー・ジャパン株式会社製のDisperBYK2020、BYK220S、楠本化成株式会社製のディスパロン1751N、ヒップラードED-152、株式会社ネオス製のFTX-207S、フタージェント212P、東亞合成株式会社製のAS-1100、花王株式会社製のカオーセラ2000、KDH-154、MX-2045L、ホモゲノールL-18、レオドールSP-010V、第一工業製薬株式会社製のエパンU103、シアノールDC902B、ノイゲンEA-167、プライサーフA219B、DIC株式会社製のメガファックF-477、日信化学工業株式会社製のシルフェイスSAG503A、ダイノール604、サンノプコ株式会社製のSNスパーズ2180、SNレベラーS-906、AGCセイミケミカル社製のS-386、日本ルーブリゾール株式会社製のソルプラスD540、ソルスパース44000、ソルスパース43000、ソルスパース20000、ソルスパース27000、CRODA社製のCirrasol G-265、Hypermer KD1、Hypermer KD2、Hypermer KD3、Hypermer KD4、Hypermer KD9、Hypermer KD11、Hypermer KD12、Hypermer KD16、Hypermer KD57、Armer163、CRODA社製のSynperoic T701、Zephrym PD2246SF、Zephrym 3300B、三洋化成株式会社製のサンスパールPS-2、キャリボンL400、ビックケミー・ジャパン株式会社製のDisperBYK2055、DisperBYK2155、DisperBYK2055、DisperBYK193、BYKP105、BYKPR606、DisperBYK2013、DisperBYK108、DisperBYK109、DisperBYK145、DisperBYK2008、DisperBYK2096、DisperBYK2152、BYK-LPC22145、BYK-LPC22124、BYK-LPC22126、BYK-LPC22125などを使用することができるが、ブトキシエトキシ酢酸などのカルボン酸系分散剤およびリン酸エステル系分散剤の少なくとも一種以上であるのが好ましい。
【0023】
金属ペーストの粘度は、25℃において2s-1で測定した粘度が、好ましくは5~2500Pa・s、さらに好ましくは5~1000Pa・s、最も好ましくは10~500Paであり、20s-1で測定した粘度が、好ましくは1~150Pa・s、さらに好ましくは1~100Pa・s、最も好ましくは2~35Pa・sである。
【0024】
本発明による接合材の製造方法の実施の形態では、金属粒子と溶剤と分散剤を含む金属ペーストからなる接合材の製造方法において、平均一次粒子径1~40nmの第1の金属粒子と、平均一次粒子径41~110nmの第2の金属粒子と、平均一次粒子径120nm~10μmの第3の金属粒子とからなる金属粒子を用意し、この金属粒子の合計100質量%に対して、第1の金属粒子を1.4~49質量%、第2の金属粒子を36質量%以下、第3の金属粒子を50~95質量%の割合にし且つ第2の金属粒子の質量に対する第1の金属粒子の質量の比を14/36以上にして、この金属粒子と溶剤と分散剤とを混練する。
【0025】
本発明による接合方法の実施の形態では、上記の接合材を被接合物間、例えば、(金属基板との接合面が銀めっきまたは金めっきされた)Siチップと(このSiチップとの接合面が銀めっきまたは金めっきされた銅基板または無垢の銅基板などの)金属基板との間に介在させて加熱することにより、接合材中の銀などの金属を焼結させて金属接合層を形成し、この金属接合層により被接合物同士(例えば、Siチップと金属基板)を接合する。
【0026】
具体的には、上記の接合材を2つの被接合物の少なくとも一方に(印刷などにより)塗布し、接合材が被接合物間に介在するように配置させ、210~400℃、好ましくは210~300℃で加熱することにより、金属ペースト中の金属を焼結させて金属接合層を形成し、この金属接合層によって被接合物同士を接合することができる。また、接合材を2つの被接合物の一方に塗布し、60~200℃、好ましくは80~170℃で加熱することにより接合材を乾燥させて予備乾燥膜を形成し、この予備乾燥膜上に他方の被接合物を載せた後、210~400℃、好ましくは210~300℃で加熱することにより、金属ペースト中の金属を焼結させて金属接合層を形成し、この金属接合層によって被接合物同士を接合してもよい。なお、加熱の際に、被接合物間に圧力を加える必要はないが、圧力を加えてもよい。また、窒素雰囲気などの不活性雰囲気中で加熱しても、被接合物同士を接合することができるが、大気中で加熱しても、被接合物同士を接合することができる。
【0027】
上述した接合材の実施の形態をSiチップと銅基板などの金属基板との接合に使用すれば、金属基板に印刷し易く且つ予備焼成を行わなくても金属接合層内や金属接合層とSiチップや銅基板との界面にボイドが生じるのを防止して良好に接合することができる。特に、Siチップと金属基板との接合面の面積が大きくても(接合面の面積が好ましくは25mm以下、さらに好ましくは1~25mm、最も好ましくは4~25mmの場合に)良好に接合することができる。
【実施例
【0028】
以下、本発明による接合材およびそれを用いた接合方法の実施例について詳細に説明する。
【0029】
[実施例1]
5Lの反応槽に水3400gを入れ、この反応槽の下部に設けたノズルから3000mL/分の流量で窒素を反応槽内の水中に600秒間流して溶存酸素を除去した後、反応槽の上部から3000mL/分の流量で窒素を反応槽中に供給して反応槽内を窒素雰囲気にするとともに、反応槽内に設けた撹拌羽根付き撹拌棒により撹拌しながら、反応槽内の水の温度が60℃になるように調整した。この反応槽内の水に28質量%のアンモニアを含むアンモニア水7gを添加した後、1分間撹拌して均一な溶液にした。この反応槽内の溶液に有機化合物として飽和脂肪酸であるヘキサン酸(和光純薬工業株式会社製)45.5g(銀に対するモル比は1.98)を添加して4分間撹拌して溶解した後、還元剤として50質量%のヒドラジン水和物(大塚化学株式会社製)23.9g(銀に対して4.82当量)を添加して、還元剤溶液とした。
【0030】
また、硝酸銀の結晶(和光純薬工業株式会社製)33.8gを水180gに溶解した硝酸銀水溶液を銀塩水溶液として用意し、この銀塩水溶液の温度が60℃になるように調整し、この銀塩水溶液に硝酸銅三水和物(和光純薬工業株式会社製)0.00008g(銀に対して銅換算で1ppm)を添加した。なお、硝酸銅三水和物の添加は、ある程度高濃度の硝酸銅三水和物の水溶液を希釈した水溶液を狙いの銅の添加量になるように添加することによって行った。
【0031】
次に、上記の銀塩水溶液を上記の還元剤溶液に一挙に添加して混合して、攪拌しながら還元反応を開始させた。この還元反応の開始から約10秒で反応液であるスラリーの色の変化が終了し、攪拌しながら10分間熟成させた後、攪拌を終了し、吸引濾過による固液分離を行い、得られた固形物を純水で洗浄し、40℃で12時間真空乾燥して、(ヘキサン酸で被覆された)銀微粒子(銀ナノ粒子)の乾燥粉末を得た。なお、この銀微粒子中の銀の割合は、加熱によりヘキサン酸を除去した後の重量から、97質量%であることが算出された。また、この銀微粒子の平均一次粒子径を透過型電子顕微鏡(TEM)により求めたところ、17nmであった。
【0032】
また、300mLビーカーに純水180.0gを入れ、硝酸銀(東洋化学株式会社製)33.6gを添加して溶解させることにより、原料液として硝酸銀水溶液を調製した。
【0033】
また、5Lビーカーに3322.0gの純水を入れ、この純水内に窒素を30分間通気させて溶存酸素を除去しながら、40℃まで昇温させた。この純水に(銀微粒子被覆用の)有機化合物としてソルビン酸(和光純薬工業株式会社製)44.8gを添加した後、安定化剤として28%のアンモニア水(和光純薬工業株式会社製)7.1gを添加した。
【0034】
このアンモニア水を添加した後の水溶液を撹拌しながら、アンモニア水の添加時点(反応開始時)から5分経過後に、還元剤として純度80%の含水ヒドラジン(大塚化学株式会社製)14.91gを添加して、還元液として還元剤含有水溶液を調製した。反応開始時から9分経過後に、液温を40℃に調整した原料液(硝酸銀水溶液)を還元液(還元剤含有水溶液)へ一挙に添加して反応させ、さらに80分間撹拌し、その後、昇温速度1℃/分で液温を40℃から60℃まで昇温させて撹拌を終了した。
【0035】
このようにしてソルビン酸で被覆された銀微粒子(銀ナノ粒子)の凝集体を形成させた後、この銀微粒子の凝集体を含む液をNo.5Cのろ紙で濾過し、この濾過による回収物を純水で洗浄して、銀微粒子の凝集体を得た。この銀微粒子の凝集体を、真空乾燥機中において80℃で12時間乾燥させ、銀微粒子の凝集体の乾燥粉末を得た。このようにして得られた銀微粒子の凝集体の乾燥粉末を解砕して、2次凝集体の大きさを調整した。なお、この銀微粒子の平均一次粒子径を走査型電子顕微鏡(SEM)により求めたところ、85nmであった。
【0036】
次に、上記の平均一次粒子径17nmの(ヘキサン酸で被覆された)銀微粒子の乾燥粉末(第1の銀粒子(小粒子))14.5gと、上記の平均一次粒子径85nmの(ソルビン酸で被覆された)銀微粒子の乾燥粉末(第2の銀粒子(中粒子))7.5gと、第3の銀粒子(大粒子)として(SEM像により求められる平均一次粒子径が0.3μmの)ミクロンサイズの(オレイン酸で被覆された)銀粒子(DOWAエレクトロニクス社製のAG2-1C)70gと、第1の分散剤(カルボン酸系分散剤)としてのブトキシエトキシ酢酸(BEA)(東京化成工業株式会社製)0.5gと、第2の分散剤としてのリン酸エステル系分散剤(Lubrizol社製のSOLPLUS D540)0.05gと、第1の溶剤としての1-デカノール(和光純薬工業株式会社製)2.45gと、第2の溶剤としてのオクタンジオール(協和発酵ケミカル株式会社製の2-エチル-1,3-ヘキサンジオール)1.5gと、第3の溶剤としての2-メチル-ブタン-1,3,4-トリオール(イソプレントリオールB(IPTL-B))(日本テルペン化学株式会社製)3.5gとを混練し、得られた混練物を三本ロールに通して、銀ペーストからなる接合材を得た。なお、この接合材(銀ペースト)中の第1の銀粒子と第2の銀粒子と第3の銀粒子の合計の含有量は92質量%であり、第1の銀粒子と第2の銀粒子と第3の銀粒子の質量比(第1の銀粒子:第2の銀粒子:第3の銀粒子)は、16:8:76である。
【0037】
この接合材(銀ペースト)の粘度をレオメーター(粘弾性測定装置)(Thermo社製のHAAKE RheoStress 600、コーン径35mm、コーン角度2°のコーンを使用)により求めたところ、25℃において2s-1で309(Pa・s)、20s-1で26(Pa・s)、25℃で測定した20s-1の粘度に対する2s-1の粘度の比(2s-1の粘度/20s-1の粘度)(チクソ比)Tiは11.7であり、接合材(銀ペースト)の印刷性(印刷適性)は良好であった。
【0038】
また、無垢の銅基板と、この銅基板の一方の面(接合面となる面)に銀めっきを施した基板を用意するとともに、(面積が約18mmの)裏面(接合面となる面)に銀めっきを施した2つのSiチップを用意し、それぞれの基板上に厚さ50μmのメタルマスクを配置し、メタルスキージによって上記の接合材(銀ペースト)をSiチップの裏面の面積と同じ大きさで厚さ50μmになるようにそれぞれの基板上に塗布し、接合材上にSiチップを配置した後、イナートオーブンにより窒素雰囲気中において25℃から昇温速度0.05℃/sで250℃まで昇温させ、250℃で60分間保持する焼成を行って、銀ペースト中の銀を焼結させて銀接合層を形成し、この銀接合層によってSiチップをそれぞれの基板に接合した。
【0039】
このようにして得られた2つの接合体について、超音波顕微鏡(C-SAM)(SONOSCAN社製のD9500)により得られた画像(C-SAM像)から、銀接合層(の内部と銀接合層と基板およびSiチップとのそれぞれの界面)のボイドの有無を観察したところ、いずれの接合体でも、ボイドは観察されず、良好に接合されていた。なお、C-SAM像の全面が黒い場合は、ボイドがなく、良好に接合されていると判断し、C-SAM像の中央部分が白い場合は、中央部分にボイドがあり、中央部の接合状態が良好でないと判断し、C-SAM像の全面が白い場合は、全面にボイドがあり、接合状態が良好でない(または剥離した状態である)と判断した。
【0040】
[実施例2]
接合材中(銀ペースト)の第1~第3の銀粒子の量をそれぞれ14.5g、0gおよび77.5g(第1の銀粒子と第2の銀粒子と第3の銀粒子の質量比(第1の銀粒子:第2の銀粒子:第3の銀粒子)を16:0:84)とした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、その粘度を求めたところ、25℃において2s-1で712(Pa・s)、20s-1で49(Pa・s)、チクソ比Tiは14.6であり、接合材(銀ペースト)の印刷性(印刷適性)は良好であった。また、得られた接合材を使用して、実施例1と同様の方法により、2つの接合体を作製し、銀接合層のボイドの有無を観察したところ、いずれの接合体でも、ボイドは観察されず、良好に接合されていた。
【0041】
[実施例3]
接合材中(銀ペースト)の第1~第3の銀粒子の量をそれぞれ19.78g、0gおよび72.22g(第1の銀粒子と第2の銀粒子と第3の銀粒子の質量比(第1の銀粒子:第2の銀粒子:第3の銀粒子)を22:0:78)とした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、その粘度を求めたところ、25℃において2s-1で1034(Pa・s)、20s-1で47(Pa・s)、チクソ比Tiは22.0であり、接合材(銀ペースト)の印刷性(印刷適性)は良好であった。また、得られた接合材を使用して、実施例1と同様の方法により、2つの接合体を作製し、銀接合層のボイドの有無を観察したところ、いずれの接合体でも、ボイドは観察されず、良好に接合されていた。
【0042】
[実施例4]
接合材中(銀ペースト)の第1~第3の銀粒子の量をそれぞれ14.5g、12.5gおよび65.0g(第1の銀粒子と第2の銀粒子と第3の銀粒子の質量比(第1の銀粒子:第2の銀粒子:第3の銀粒子)を16:14:70)とした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、その粘度を求めたところ、25℃において2s-1で357(Pa・s)、20s-1で22(Pa・s)、チクソ比Tiは16.0であり、接合材(銀ペースト)の印刷性(印刷適性)は良好であった。また、得られた接合材を使用して、実施例1と同様の方法により、2つの接合体を作製し、銀接合層のボイドの有無を観察したところ、いずれの接合体でも、ボイドは観察されず、良好に接合されていた。
【0043】
[実施例5]
接合材中(銀ペースト)の第1~第3の銀粒子の量をそれぞれ14.75g、14.75gおよび62.5g(第1の銀粒子と第2の銀粒子と第3の銀粒子の質量比(第1の銀粒子:第2の銀粒子:第3の銀粒子)を16:16:68)とした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、その粘度を求めたところ、25℃において2s-1で287(Pa・s)、20s-1で25(Pa・s)、チクソ比Tiは11.6であり、接合材(銀ペースト)の印刷性(印刷適性)は良好であった。また、得られた接合材を使用して、実施例1と同様の方法により、2つの接合体を作製し、銀接合層のボイドの有無を観察したところ、いずれの接合体でも、ボイドは観察されず、良好に接合されていた。
【0044】
[実施例6]
接合材中(銀ペースト)の第1~第3の銀粒子の量をそれぞれ12.5g、7.5gおよび72.0g(第1の銀粒子と第2の銀粒子と第3の銀粒子の質量比(第1の銀粒子:第2の銀粒子:第3の銀粒子)を14:8:78)とした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、その粘度を求めたところ、25℃において2s-1で211(Pa・s)、20s-1で17(Pa・s)、チクソ比Tiは12.4であり、接合材(銀ペースト)の印刷性(印刷適性)は良好であった。また、得られた接合材を使用して、実施例1と同様の方法により、2つの接合体を作製し、銀接合層のボイドの有無を観察したところ、いずれの接合体でも、ボイドは観察されず、良好に接合されていた。
【0045】
[実施例7]
接合材中(銀ペースト)の第1~第3の銀粒子の量をそれぞれ7.25g、7.25gおよび77.5g(第1の銀粒子と第2の銀粒子と第3の銀粒子の質量比(第1の銀粒子:第2の銀粒子:第3の銀粒子)を8:8:84)とした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、その粘度を求めたところ、25℃において2s-1で118(Pa・s)、20s-1で15(Pa・s)、チクソ比Tiは8.1であり、接合材(銀ペースト)の印刷性(印刷適性)は良好であった。また、得られた接合材を使用して、実施例1と同様の方法により、2つの接合体を作製し、銀接合層のボイドの有無を観察したところ、いずれの接合体でも、ボイドは観察されず、良好に接合されていた。
【0046】
[実施例8]
接合材中(銀ペースト)の第1~第3の銀粒子の量をそれぞれ14.5g、26.8gおよび50.7g(第1の銀粒子と第2の銀粒子と第3の銀粒子の質量比(第1の銀粒子:第2の銀粒子:第3の銀粒子)を16:29:55)とした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、その粘度を求めたところ、25℃において2s-1で28(Pa・s)、20s-1で9(Pa・s)、チクソ比Tiは3.0であり、接合材(銀ペースト)の印刷性(印刷適性)は良好であった。また、得られた接合材を使用して、実施例1と同様の方法により、2つの接合体を作製し、銀接合層のボイドの有無を観察したところ、銀めっきを施した銅基板との接合体では、ボイドは観察されず、良好に接合されていたが、銀めっきを施さない銅基板との接合体では、ボイドが観察され、良好に接合されていなかった。
【0047】
[実施例9]
接合材中(銀ペースト)の第1~第3の銀粒子の量をそれぞれ14.5g、17.5gおよび60.0g(第1の銀粒子と第2の銀粒子と第3の銀粒子の質量比(第1の銀粒子:第2の銀粒子:第3の銀粒子)を16:19:65)とした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、その粘度を求めたところ、25℃において2s-1で96(Pa・s)、20s-1で20(Pa・s)、チクソ比Tiは4.8であり、接合材(銀ペースト)の印刷性(印刷適性)は良好であった。また、得られた接合材を使用して、実施例1と同様の方法により、2つの接合体を作製し、銀接合層のボイドの有無を観察したところ、銀めっきを施した銅基板との接合体では、ボイドは観察されず、良好に接合されていたが、銀めっきを施さない銅基板との接合体では、ボイドが観察され、良好に接合されていなかった。
【0048】
[実施例10]
接合材中(銀ペースト)の第1~第3の銀粒子の量をそれぞれ7.5g、9.75gおよび74.75g(第1の銀粒子と第2の銀粒子と第3の銀粒子の質量比(第1の銀粒子:第2の銀粒子:第3の銀粒子)を8:11:81)とした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、その粘度を求めたところ、25℃において2s-1で86(Pa・s)、20s-1で13(Pa・s)、チクソ比Tiは6.6であり、接合材(銀ペースト)の印刷性(印刷適性)は良好であった。また、得られた接合材を使用して、実施例1と同様の方法により、2つの接合体を作製し、銀接合層のボイドの有無を観察したところ、いずれの接合体でも、ボイドは観察されず、良好に接合されていた。
【0049】
[実施例11]
接合材中(銀ペースト)の第1~第3の銀粒子の量をそれぞれ4.5g、7.5gおよび80.0g(第1の銀粒子と第2の銀粒子と第3の銀粒子の質量比(第1の銀粒子:第2の銀粒子:第3の銀粒子)を5:8:87)とした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、その粘度を求めたところ、25℃において2s-1で62(Pa・s)、20s-1で13(Pa・s)、チクソ比Tiは4.7であり、接合材(銀ペースト)の印刷性(印刷適性)は良好であった。また、得られた接合材を使用して、実施例1と同様の方法により、2つの接合体を作製し、銀接合層のボイドの有無を観察したところ、いずれの接合体でも、ボイドは観察されず、良好に接合されていた。
【0050】
[実施例12]
接合材中(銀ペースト)の第1~第3の銀粒子の量をそれぞれ27.6g、0gおよび64.4g(第1の銀粒子と第2の銀粒子と第3の銀粒子の質量比(第1の銀粒子:第2の銀粒子:第3の銀粒子)を30:0:70)とした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、その粘度を求めたところ、25℃において2s-1で2135(Pa・s)、20s-1で127(Pa・s)、チクソ比Tiは16.9であり、接合材(銀ペースト)の印刷性(印刷適性)は良好であった。また、得られた接合材を使用して、実施例1と同様の方法により、2つの接合体を作製し、銀接合層のボイドの有無を観察したところ、いずれの接合体でも、ボイドは観察されず、良好に接合されていた。
【0051】
[実施例13]
接合材中(銀ペースト)の第1~第3の銀粒子の量をそれぞれ27.6g、18.4gおよび46.0g(第1の銀粒子と第2の銀粒子と第3の銀粒子の質量比(第1の銀粒子:第2の銀粒子:第3の銀粒子)を30:20:50)とした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、その粘度を求めたところ、25℃において2s-1で2186(Pa・s)、20s-1で96(Pa・s)、チクソ比Tiは22.8であり、接合材(銀ペースト)の印刷性(印刷適性)は良好であった。また、得られた接合材を使用して、実施例1と同様の方法により、2つの接合体を作製し、銀接合層のボイドの有無を観察したところ、銀めっきを施した銅基板との接合体では、ボイドは観察されず、良好に接合されていたが、銀めっきを施さない銅基板との接合体では、ボイドが観察され、良好に接合されていなかった。
【0052】
[実施例14]
接合材中(銀ペースト)の第1~第3の銀粒子の量をそれぞれ2.3g、2.3gおよび87.4g(第1の銀粒子と第2の銀粒子と第3の銀粒子の質量比(第1の銀粒子:第2の銀粒子:第3の銀粒子)を2.5:2.5:95)とした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、その粘度を求めたところ、25℃において2s-1で37(Pa・s)、20s-1で11(Pa・s)、チクソ比Tiは3.4であり、接合材(銀ペースト)の印刷性(印刷適性)は良好であった。また、得られた接合材を使用して、実施例1と同様の方法により、2つの接合体を作製し、銀接合層のボイドの有無を観察したところ、いずれの接合体でも、ボイドは観察されず、良好に接合されていた。
【0053】
[実施例15]
第3の銀粒子(大粒子)として、(SEM像により求められる平均一次粒子径が0.3μmの)ミクロンサイズの(オレイン酸で被覆された)銀粒子(DOWAエレクトロニクス社製のAG2-1C)に代えて、(SEM像により求められる平均一次粒子径が0.3μmの)ミクロンサイズの(ソルビン酸で被覆された)銀粒子(DOWAエレクトロニクス社製のスーパーファイン銀粉-2)を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、その粘度を求めたところ、25℃において2s-1で826(Pa・s)、20s-1で69(Pa・s)、チクソ比Tiは12.0であり、接合材(銀ペースト)の印刷性(印刷適性)は良好であった。
【0054】
[比較例1]
接合材中(銀ペースト)の第1~第3の銀粒子の量をそれぞれ4.5g、17.5gおよび70.0g(第1の銀粒子と第2の銀粒子と第3の銀粒子の質量比(第1の銀粒子:第2の銀粒子:第3の銀粒子)を5:19:76)とした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、その粘度を求めたところ、25℃において2s-1で20(Pa・s)、20s-1で8(Pa・s)、チクソ比Tiは2.4であり、接合材(銀ペースト)の印刷性(印刷適性)は良好であった。また、得られた接合材を使用して、実施例1と同様の方法により、2つの接合体を作製し、銀接合層のボイドの有無を観察したところ、いずれの接合体でも、ボイドが観察され、良好に接合されていなかった。
【0055】
[比較例2]
接合材中(銀ペースト)の第1~第3の銀粒子の量をそれぞれ9.2g、27.6gおよび55.2g(第1の銀粒子と第2の銀粒子と第3の銀粒子の質量比(第1の銀粒子:第2の銀粒子:第3の銀粒子)を10:30:60)とした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、その粘度を求めたところ、25℃において2s-1で13(Pa・s)、20s-1で7(Pa・s)、チクソ比Tiは1.7であり、接合材(銀ペースト)の印刷性(印刷適性)は良好であった。また、得られた接合材を使用して、実施例1と同様の方法により、2つの接合体を作製し、銀接合層のボイドの有無を観察したところ、いずれの接合体でも、ボイドが観察され、良好に接合されていなかった。
【0056】
[比較例3]
接合材中(銀ペースト)の第1~第3の銀粒子の量をそれぞれ27.6g、27.6gおよび36.8g(第1の銀粒子と第2の銀粒子と第3の銀粒子の質量比(第1の銀粒子:第2の銀粒子:第3の銀粒子)を30:30:40)とした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、その粘度を求めようと試みたが、粘度の測定上限を超えて測定することができず、接合材(銀ペースト)の印刷性(印刷適性)は良好でなかった。また、得られた接合材を使用して、実施例1と同様の方法により、2つの接合体を作製し、銀接合層のボイドの有無を観察したところ、銀めっきを施した銅基板との接合体では、ボイドは観察されず、良好に接合されていたが、銀めっきを施さない銅基板との接合体では、ボイドが観察され、良好に接合されていなかった。
【0057】
[比較例4]
接合材中(銀ペースト)の第1~第3の銀粒子の量をそれぞれ46.0g、9.2gおよび36.8g(第1の銀粒子と第2の銀粒子と第3の銀粒子の質量比(第1の銀粒子:第2の銀粒子:第3の銀粒子)を50:10:40)とした以外は、実施例1と同様の方法により、接合材を作製し、その粘度を求めようと試みたが、粘度の測定上限を超えて測定することができず、接合材(銀ペースト)の印刷性(印刷適性)は良好でなかった。また、得られた接合材を使用して、実施例1と同様の方法により、2つの接合体を作製し、銀接合層のボイドの有無を観察したところ、銀めっきを施した銅基板との接合体では、ボイドは観察されず、良好に接合されていたが、銀めっきを施さない銅基板との接合体では、ボイドが観察され、良好に接合されていなかった。
【0058】
これらの実施例および比較例の接合材の製造条件および特性を表1~表2に示す。なお、表1において、いずれの接合体でもボイドが観察されなかった場合を○、いずれの接合体でもボイドが観察された場合を×、銀めっきを施した銅基板との接合体ではボイドが観察されなかったが銀めっきを施さない銅基板との接合体ではボイドが観察された場合を△で示している。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
これらの結果からわかるように、実施例1~15の接合材ではいずれも、銀粒子の合計100質量%に対して、第1の銀粒子(小粒子)が1.4~49質量%、第2の銀粒子(中粒子)が36質量%以下、第3の銀粒子(大粒子)が50~95質量%であり且つ第2の銀粒子(中粒子)の質量に対する第1の銀粒子(小粒子)の質量の比が14/36以上の範囲内であるが、比較例1~4の接合材ではいずれも、このような範囲内ではない。すなわち、実施例1~15の接合材ではいずれも、第1の銀粒子(小粒子)と第2の銀粒子(中粒子)と第3の銀粒子(大粒子)の質量割合(質量%)が、図1に示す三角座標上の点a(49、1、50)、点b(14、36、50)、点c(1.4、3.6、95)、点d(5、0、95)および点e(49、0、51)をこの順で直線により結んで得られた五角形の領域内(五角形の線上を含む)にあるが、比較例1~4の接合材ではいずれも、小粒子と中粒子と大粒子の質量割合(質量%)が五角形の範囲外にある。
【0062】
なお、表1および表2に示すように、接合材の銀粒子中の第2の銀粒子(中粒子)の質量割合が19質量%以上である実施例8、9および13の場合、銀めっきを施した銅基板との接合体ではボイドが観察されなかったが、銀めっきを施さない銅基板との接合体ではボイドが観察されていることから、接合材の銀粒子中の第2の銀粒子(中粒子)の質量割合は19質量%より少ない方がよいことがわかる。また、実施例2と実施例1、4、5、8および9との比較から、接合材中に第2の銀粒子(中粒子)を添加すると、第3の銀粒子(大粒子)の質量割合が少なくなり、接合材の粘度が低下することがわかる。このような接合材の粘度の低下により、接合材の印刷性が良好になり、接合材の取扱いも良好になる。そのため、接合材中に第2の銀粒子(中粒子)を添加するのが好ましい。また、実施例12と実施例13との比較から、接合材の銀粒子中の第1の銀粒子(小粒子)の質量割合が30質量%と大きくなると、接合材中に第2の銀粒子(中粒子)を添加しても、接合材の粘度が低下しないことがわかる。なお、実施例1と実施例15との比較から、実施例15のように第2の銀粒子(中粒子)と第3の銀粒子(大粒子)を同じ炭素数の有機化合物(炭素数6のソルビン酸)で被覆すると、接合材の粘度が高くなることがわかる。そのため、第3の銀粒子(大粒子)を被覆する有機化合物の炭素数を、第2の銀粒子(中粒子)を被覆する有機化合物の炭素数より多く(有機化合物の分子中の主鎖を長く)するのが好ましい。
図1