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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】熱膨張性発泡材
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/06 20060101AFI20220117BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20220117BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20220117BHJP
   C08K 5/24 20060101ALI20220117BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
C08J9/06 CES
C08L23/06
C08L23/08
C08K5/24
C08K3/26
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018508750
(86)(22)【出願日】2016-06-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2016064366
(87)【国際公開番号】W WO2017036624
(87)【国際公開日】2017-03-09
【審査請求日】2019-06-21
(31)【優先権主張番号】14/746,289
(32)【優先日】2015-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】レスリー ミッシェル ウォルシュリーガー
(72)【発明者】
【氏名】ジェナ マビリア
(72)【発明者】
【氏名】ザシャ パスラ
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-306569(JP,A)
【文献】特開2002-275299(JP,A)
【文献】特表2008-542508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
B29C 44/00-44/60
B29C 67/20
C09K 3/10-3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張性シール材のための組成物であって、
低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLPDE)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、エチレン-メタクリレート(EMA)及びエチレン-アクリル酸ブチル(EnBA)からなる群から選択される少なくとも1種の高分子材料と、
4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)又は炭酸水素ナトリウムである化学的発泡剤と
を含み、
架橋剤を実質的に含まず
前記高分子材料のゼロ剪断粘度は、100Pa-s~50000Pa-sの範囲であり、かつ
前記高分子材料が、-0.2~0.2のlog(tanδ)及び3~4のlog(η )を有している、
膨張性シール材のための組成物。
【請求項2】
前記高分子材料は、75重量パーセント~90重量パーセントの範囲の量のLDPEである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記高分子材料は、EMAを75重量パーセント~90重量パーセントの範囲の量で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記高分子材料は、EVAを75重量パーセント~92重量パーセントの範囲の量で含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記化学的発泡剤は、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
製造作業中に所定の高温に曝される空洞を閉塞し、そしてそのための遮音材を提供するための膨張性シール材及び遮断材構成部品であって、
低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLPDE)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、エチレン-メタクリレート(EMA)、エチレン-アクリル酸ブチル(EnBA)及びこれらの混合物からなる群から選択される高分子材料と、
4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)及び炭酸水素ナトリウムからなる群から選択される化学的発泡剤と、
随意の担体要素と
を含み、
架橋剤を実質的に含まず
前記高分子材料のゼロ剪断粘度は、100Pa-s~50000Pa-sの範囲であり、かつ
前記高分子材料が、-0.2~0.2のlog(tanδ)及び3~4のlog(η )を有している、
膨張性シール材及び遮断材構成部品。
【請求項7】
前記高分子材料は、75重量パーセント~90重量パーセントの範囲の量のLDPEである、請求項6に記載の構成部品。
【請求項8】
前記高分子材料は、75重量パーセント~90重量パーセントの範囲の量のEMAである、請求項6に記載の構成部品。
【請求項9】
前記高分子材料は、75重量パーセント~92重量パーセントの範囲の量のEVAである、請求項6に記載の構成部品。
【請求項10】
製造作業中に所定の高温に曝される空洞を閉塞し、そしてそのための遮音材を提供するための膨張性シール材及び遮断材構成部品であって、
30~45重量パーセントのEVA及び30~45重量パーセントのEnBAである、高分子材料と、
4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)及び炭酸水素ナトリウムからなる群から選択される化学的発泡剤と、
随意の担体要素と
を含み、
架橋剤を実質的に含まず、かつ
前記高分子材料が、-0.2~0.2のlog(tanδ)及び3~4のlog(η )を有している、
膨張性シール材及び遮断材構成部品。
【請求項11】
陸上車両、船艇若しくは航空機の空洞若しくは中空構造及び/又は建物の空洞を、雑音、振動、湿気及び/若しくは熱の伝搬が低減され、かつ/又は前記空洞を囲む物体が機械的に強化されるように閉塞、遮断又は補強するための、請求項6~10のいずれか一項に記載のシール材又は遮断材構成部品の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱膨張性発泡材に関する。
【背景技術】
【0002】
本項は、必ずしも先行技術であるとは限らない、本開示に関する背景情報を提供する。
【0003】
熱膨張性シール材及び遮断材(baffle)組成物は、シール材が自動車又は他の車両の中空ピラー構造等の空洞内に挿入され、その後、熱により誘導されてそれが膨張すると、その空洞内で非常に効果の高いシール材及び遮音材(acoustic baffle)としての役割を果たすように所望の形状に形成され得る。
【0004】
特に、熱膨張性シール材及び遮断材組成物は、所望の形状に形成された後、車両のピラー又は他の車体空洞内の所定の位置に配置されるように適合されており、それにより、車体が下塗り(例えば、電着塗装)及び/若しくは塗料の焼付け作業又は車体の周囲環境の温度を上昇させる他の処理に付されると、付形されたシール材及び遮断材製品は、膨張した構成部品が、減衰を行わなければ空洞内を通過するであろう雑音(例えば、路面騒音)を減衰する役割を果たす程度まで膨張する。この膨張物は空洞を閉塞する機能も果たし、それにより、水分、埃、空気、他の望ましくない流体及び音の侵入を阻止する。
【0005】
上に述べた熱膨張性シール材及び遮断材組成物は、エラストマー又は熱可塑性物質系材料及び化学的発泡剤を含むことができる。通常、このような組成物は、加熱によりエラストマー又は熱可塑性物質系材料を硬化させる架橋剤も含む。しかしながら、組成物を加熱する際に材料を確実に適切に膨張させるには、硬化及び発泡剤の活性化が同時に起こることで組成物の膨張が最適化されるように、エラストマー又は熱可塑性物質系材料の硬化及び化学的発泡剤の活性化に関与する化学反応の時間を適切に調整することが必要である。さらに、発泡前の組成物が閉塞すべき空洞内に挿入される前に意図せず高温又は湿気に曝された場合、材料の硬化が早期に開始される可能性があり、その結果、材料の最終的な膨張量が少なくなる可能性があり、又は望ましくない亀裂、皮張り若しくは不均質な発泡品質を生じる可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本項は、本開示の一般的な概要を提供し、本開示の全範囲又はその特徴の全ての包括的な開示ではない。
本発明の態様として、以下の態様を挙げることができる:
《態様1》
膨張性シール材のための組成物であって、
低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLPDE)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、エチレン-メタクリレート(EMA)及びエチレン-アクリル酸ブチル(EnBA)からなる群から選択される少なくとも1種の高分子材料と、
化学的発泡剤と
を含み、架橋剤を実質的に含まない、膨張性シール材のための組成物。
《態様2》
前記高分子材料は、75重量パーセント~90重量パーセントの範囲の量のLDPEである、態様1に記載の組成物。
《態様3》
前記化学的発泡剤は、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)又は炭酸水素ナトリウムである、態様2に記載の組成物。
《態様4》
前記高分子材料は、EMAを75重量パーセント~90重量パーセントの範囲の量で含む、態様1に記載の組成物。
《態様5》
前記化学的発泡剤は、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)である、態様4に記載の組成物。
《態様6》
前記高分子材料は、EVAを75重量パーセント~92重量パーセントの範囲の量で含む、態様1に記載の組成物。
《態様7》
前記化学的発泡剤は、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)である、態様6に記載の組成物。
《態様8》
前記高分子材料のゼロ剪断粘度は、100Pa-s~50000Pa-sの範囲である、態様1に記載の組成物。
《態様9》
製造作業中に所定の高温に曝される空洞を閉塞し、そしてそのための遮音材を提供するための膨張性シール材及び遮断材構成部品であって、
低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLPDE)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、エチレン-メタクリレート(EMA)、エチレン-アクリル酸ブチル(EnBA)及びこれらの混合物からなる群から選択される高分子材料と、
4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)及び炭酸水素ナトリウムからなる群から選択される化学的発泡剤と、
随意の担体要素と
を含み、架橋剤を実質的に含まない、膨張性シール材及び遮断材構成部品。
《態様10》
前記高分子材料は、75重量パーセント~90重量パーセントの範囲の量のLDPEである、態様9に記載の構成部品。
《態様11》
前記高分子材料は、75重量パーセント~90重量パーセントの範囲の量のEMAである、態様9に記載の構成部品。
《態様12》
前記高分子材料は、75重量パーセント~92重量パーセントの範囲の量のEVAである、態様9に記載の構成部品。
《態様13》
前記高分子材料は、30~45重量パーセントのEVA及び30~45重量パーセントのEnBAである、態様9に記載の構成部品。
《態様14》
前記高分子材料のゼロ剪断粘度は、100Pa-s~50000Pa-sの範囲である、態様9に記載の構成部品。
《態様15》
陸上車両、船艇若しくは航空機の空洞若しくは中空構造及び/又は建物の空洞を、雑音、振動、湿気及び/若しくは熱の伝搬が低減され、かつ/又は前記空洞を囲む物体が機械的に強化されるように閉塞、遮断又は補強するための、態様9に記載のシール材又は遮断材構成部品の使用。
【0007】
本開示は、好ましくは、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLPDE)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、エチレン-メタクリレート(EMA)及びエチレン-アクリル酸ブチル(EnBA)からなる群から選択される少なくとも1種の高分子材料と、化学的発泡剤とを含み、架橋剤を実質的に含まない、膨張性シール材のための組成物を提供する。
【0008】
本開示はまた、製造作業中に予め定められた高温に曝される空洞を閉塞し、かつそのための遮音材を提供するための膨張性シール材及び遮断材構成部品も提供する。この構成部品は、好ましくは、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLPDE)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、エチレン-メタクリレート(EMA)、エチレン-アクリル酸ブチル(EnBA)及びこれらの混合物からなる群から選択される高分子材料と、化学的発泡剤、好ましくは4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)及び炭酸水素ナトリウムからなる群から選択される化学的発泡剤とを含み、この構成部品は、架橋剤を実質的に含まない。
【0009】
さらなる適用可能な分野は、本明細書に示す記載内容から明らかになるであろう。この概要における記載及び具体例は、例示のみを目的とするものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0010】
本明細書に記載する図面は、選択された実施形態及び全てではない可能な実装形態を説明することのみを目的とするものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の原理に従う様々な高分子材料のゼロ剪断粘度及び分子量の関係を例示するグラフである。
図2】(1a)膨張後の本発明の組成物の写真、(1b)表面拡大図を含む写真、(2a)膨張後の本発明外の参照用組成物の写真、(2b)表面拡大図を含む写真を含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、添付の図面を参照しながら例示的な実施形態をより詳細に説明する。
【0013】
本開示は、車両用熱膨張性シール材又は遮音材のための組成物を対象とする。本開示によれば、この組成物は、過酸化物等の架橋剤を実質的に含まない。「実質的に含まない」という表現は、組成物中からある量の架橋剤が検出された場合、この量が、架橋剤の効果を得ることができないほど僅かであることを意味することを意図している。換言すれば、組成物中から検出される架橋剤の量は、組成物中に存在するエラストマー性又は熱可塑性高分子の硬化を開始させることができないか、又は開始させたとしてもその架橋量は実質的に無視できるほど僅かである。好ましくはかつ有利には、本開示の組成物は架橋剤を一切含まない(すなわち、この組成物の架橋剤含有率は0%である)。それにも関わらず、本発明者らは、本開示の組成物の製造に使用される設備が、架橋剤を含み得る他の無関係の組成物を製造するために使用される場合、本開示の組成物の製造中に意図しない無視できる量の架橋剤が混入し得ることを認識している。
【0014】
本開示による組成物は、それぞれ高分子材料及び化学的発泡剤を含むことができる。この組成物は、酸化防止剤、乳化剤、粘着付与剤及びフィラー材料も含むことができる。核形成剤、界面活性剤、潤滑剤、エラストマー等の他の添加剤も含有させることができる。上に述べたように、本開示の組成物は架橋剤を実質的に含まない。この組成物は架橋剤を含まないが、この組成物を加熱すると膨張してシール材又は遮断材となる。具体的には、この組成物を加熱することにより、車両の空洞を閉塞し、水分、埃、空気、及び他の望ましくない流体が空洞に侵入することを阻止するように構成されたセル状構造を有する発泡材が形成される。さらに、この発泡材は、車両の空洞内における音の減衰の防止を促進する。
【0015】
これに関して、本開示の組成物の構成成分は、予備混合を行った後、車両の所望の空洞(例えば、車両の中空のAピラー、Bピラー、Cピラー、エンジンレール(engine rail)、ロッカーパネル等の内部)内に射出することにより、これらの空洞に適合する寸法及び形状を有する部材に成形することができる。次いで、この車両は、塗料を140℃(284F°)~210℃(410F°)の範囲の温度で硬化させるための塗装-焼付けサイクルに付すことにより塗装及び加熱される。車両が塗装-焼付けサイクルにおいて加熱されると、この部材は発泡して膨張し、空洞に充填されて空洞を閉塞する。好ましくは、この組成物は、加熱により約400パーセント~約1300パーセント膨張する。すなわち、本開示の組成物は架橋剤を実質的に含まないが、本開示の組成物は、架橋剤の費用を追加することなく、また、架橋剤を含有させることによる欠点(例えば、割れ、皮張り、不均質な発泡品質、加熱前の組成物の早期硬化)を伴うことなく、架橋剤を含む組成物と同程度の量で膨張する。
【0016】
本開示の組成物は高分子材料を含む。好ましくは、高分子材料は、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、エチレン-メタクリレート(EMA)、エチレン-アクリル酸n-ブチル(EnBA)、エチレン-メタクリル酸グリシジル(EnGMA)及びこれらの混合物等の熱可塑性物質である。LDPEとしては、高メルトフローLDPE及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の組合せを挙げることができる。本開示の組成物に添加することができる他の高分子材料としては、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)及びスチレン-ブタジエンゴム(SBR)等のエラストマーが挙げられる。選択された高分子材料又はエラストマー系材料は、塗装-焼付けサイクルにおいて組成物が加熱される際に分解する発泡剤が漏れ出すのを防ぐのに十分な溶融強度を有していなければならない。高分子材料の溶融強度とは、溶融状態にある高分子材料の引張りに対する抵抗である。材料の引張りに対する抵抗に影響を与える特性は、分子量及び分子の分岐である。各特性が増大するに従い、低剪断速度における溶融強度が向上する。
【0017】
分子量に関して、例えば、分子量(Mw)が約100,000g/mol~1,000,000g/molの範囲であるLDPE等の高分子材料が好ましい。EVA、EMA、EnBA等の材料の場合、分子量が約100,000g/mol~約360,000g/molの範囲であることが好ましい。特に好ましい分子量範囲は、LDPEの場合には150,000~400,000g/mol、EMAの場合には200,000~350,000g/mol、LLDPEの場合には100,000~200,000g/mol、EVAの場合には150,000~350,000g/mol、EnBAの場合には200,000~350,000g/mol、EnGMAの場合には150,000~250,000g/molである。これらの分子量は、全て1,2,4-トリクロロベンゼン中、140℃において、流速を1mL/minとして、標準物質であるポリスチレンに対して測定されたMwの値を指す。
【0018】
分子の分岐に関して、高分子材料の長鎖分岐(LCB)の量は、本開示による組成物を加熱する際に分解する発泡剤が漏れ出すのを防ぐ高分子材料の溶融レオロジーに大きく影響する。高分子材料の長鎖分岐量を決定するために用いられる方法は、実験上の理由から「低剪断粘度」と称される場合もある、材料のゼロ剪断粘度(η)を決定することを含む。本明細書では、ゼロ剪断粘度及び低剪断粘度を同義とする。一般に、ゼロ剪断粘度が増大するに従い高分子の溶融強度は増大する。例えば、本出願の図1を参照すると、様々なLDPE材料及びEVA材料のゼロ剪断粘度が直鎖状ポリエチレン(PE)と比較して例示されている。直鎖状PEを表す曲線よりも下側のデータ点は、LCBを多量に有しており、本開示に従い使用することができる良好なLDPE及びEVA高分子材料を表す。特に、高分子材料のゼロ剪断粘度が100Pa-s~10000000Pa-sの範囲であることが好ましい。好ましくは、本発明に好適な高分子のゼロ剪断粘度は、100Pas~50,000Pas、より好ましくは500Pas~25,000Pas、最も好ましくは1,000Pas~20,000Pasである。
【0019】
本発明の高分子の適合性を規定するさらに重要な粘度パラメータは、ASTM D4440-15標準試験法により測定することができる。特に、損失弾性率を貯蔵弾性率で除した値を意味するパラメータδ(デルタ)及び複素粘度を意味するパラメータη(イータ)は、本発明に好適なポリマーに重要である。好ましくは、本発明に使用される高分子は、δの正接の対数、すなわちlog(tan δ)の値が-0.2~0.2、より好ましくは-0.1~0.1である。さらに好ましくは、同じ高分子材料のηの対数、すなわちlog(η)の値は3~4であり、より好ましくは3.25~3.75である。この枠内のパラメータを有する高分子材料が本発明に最も好ましい。
【0020】
例示的な市販のLDPEとしては、Dow Chemicalからの621i、772、993i及び1017並びにExxon MobilからのLD100BWが挙げられる。例示的な市販のLLDPEとしては、Exxon MobilからのLL1102が挙げられる。例示的な市販のEMAとしては、ArkemaからのLotryl 24MA005及び18MA02Nが挙げられる。例示的な市販のEVAとしては、Du PontからのElvax 240、265、460及び470が挙げられる。例示的な市販のEnBAsとしては、ArkemaからのLotry l30BA02N及びLotryl 35BA40が挙げられる。例示的な市販のEnGMAとしては、ArkemaからのLotader ADX 1200Sが挙げられる。例示的な市販のEPDMとしてはDow Chemicalから入手可能なNordel 4725が挙げられる。
【0021】
選択された高分子材料がLDPEのみである場合、本開示の組成物は、LDPEを75重量パーセント~90重量パーセントの範囲の量で含むことができる。一方、選択された高分子材料がLDPE及びLLDPEの混合物である場合、本開示の組成物は、LDPEを15重量パーセント~90重量パーセントの範囲の量で含むことができ、LLDPEを25重量パーセント~80重量パーセントの範囲の量で含むことができる。選択された高分子材料がEVAである場合、本開示の組成物は、EVAを80重量パーセント~95重量パーセントの範囲の量で含むことができる。選択された高分子材料がEMAである場合、本開示の組成物は、EMAを80重量パーセント~90重量パーセントの範囲の量で含むことができる。選択された高分子材料がEnBAである場合、本開示の組成物は、EnBAを70重量パーセント~90重量パーセントの範囲の量で含むことができる。本開示の範囲を逸脱することなくLDPE、LLDPE、EVA、EMA及びEnBAの様々なブレンド物を使用し得ることも理解されたい。
【0022】
本開示の組成物は少なくとも1種の化学的発泡剤を含む。化学的発泡剤は、例えば高温条件下で分解し、発泡過程を経て熱可塑性物質のマトリックス中にセル状構造を形成することができる気体の分解物を生成することができる物質である。具体的には、発泡剤を加熱すると、発泡剤は化学反応及び/又は分解し、その結果として1種又は複数種の気体を放出する。高分子材料は上に述べた溶融強度を有しているため、気体が放出されても、溶融材料は、破断したり気体を漏出したりすることなく伸長することができる。その結果として発泡材が形成される。本開示の組成物に使用することができる化学的発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム等の炭酸水素塩、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、p-トルエンスルフニルヒドラジド(toluenesulfunyl hydrazide)(TSH)、ベンゼンスルフニルヒドラジド(benzenesulfunyl hydrazide)(BSH)、ジニトロペンタメチレンテトラミン(DMPT)、p-トルエンスルホニルセミカルバジド(PTSS)、カルバミン酸塩及びアゾジカルボンアミドが挙げられる。
【0023】
特に好ましい発泡剤は、OBSH及び炭酸水素塩、特に炭酸水素ナトリウムである。炭酸水素塩と同様に好適なものは、式XHCO(式中、Xは一般的な陽イオンを表し、特にアルカリ金属イオン、好ましくはNa又はKであり、Naが特に好ましい)である。他の好適な陽イオンは、NH 、1/2Zn2+、1/2Mg2+、1/2Ca2+及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0024】
好ましい実施形態において、炭酸水素塩はポリ炭酸(polycarbonic acid)と併用される。好適なポリ炭酸としては、有機二塩基酸、三塩基酸、四塩基酸が挙げられ、これらは、好ましくは室温(23℃)で固体である。ヒドロキシ官能性又は不飽和のポリ炭酸、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸又はフマル酸が好ましい。特にクエン酸が好ましい。上に述べた酸の塩、特に陽イオンNa、K、NH 、1/2Zn2+、1/2Mg2+、1/2Ca2+及びこれらの混合物との塩が好適である。Na又はKの塩が最も好ましい。最も好ましい炭酸水素塩発泡剤及びポリ炭酸の組合せは、炭酸水素ナトリウムとクエン酸及び/又はクエン酸塩、特にクエン酸Na又はKとの組合せである。ポリ炭酸、特にクエン酸を炭酸水素塩に、例えば、30重量パーセント~90重量パーセントまでの量で含有させることができる。
【0025】
本開示の組成物は、発泡剤を5重量パーセント~20重量パーセントの範囲の量で含む。化学的発泡剤は、尿素やイミダゾール等の活性化剤又は酸化亜鉛等の金属酸化物等と一緒に又はこれらを使用せずに使用することができる。
【0026】
発泡剤は、好ましくは粉末形態で使用される。これは、発泡剤として使用される物質が好ましくは周囲条件下(常圧、23℃)で固体であり、好ましくは微細分散した粉末形態であることを意味する。
【0027】
好ましい発泡剤であるOBSHを用いる場合、これは、OBSHが好ましくは粉末形態であり、平均粒度であるD50が1~15μm(μm)、好ましくは4~13μm、非常に好ましくは6~10μmであり、粒度分布が0.1~3.0μm、好ましくは0.5~2μm、より好ましくは1~1.5μmのD10及び3~40μm、好ましくは5~30μm、より好ましくは15~25μmのD90で特徴付けられる、粒子を含むことを意味する。
【0028】
他の好ましい発泡剤である炭酸水素ナトリウムを用いる場合、好ましい形態は同じく粉末形態であり、好ましい平均粒度D50は1~30μm、好ましくは5~25μm、より好ましくは10~20μmであり、粒度分布は、好ましくは、D10が0.1~4μm、好ましくは1~3.5μm、より好ましくは2~3μmであり、D90が5~100μm、好ましくは15~80μm、より好ましくは25~75μmであることを特徴とする。
【0029】
「平均粒度」は、レーザー回折による粒度分析により測定された体積平均を指す。D50は体積分布による平均粒度であり、体積を基準として半分の粒子がこの値よりも小さくなる値である。
【0030】
「粒度分布」という語は、D10及びD90で特徴付けられる分布の幅を指し、D10は、体積基準の分布において10%がこの値よりも小さくなる粒度を表し、D90は、体積基準の分布において90%がこの値よりも小さくなる粒度を表す。D10及びD90の差が小さいことは、粒度分布が狭いことを意味する。
【0031】
本開示の組成物は、耐UV性、難燃性、耐酸化性を付与するための、及び加工助剤としての様々な添加剤を含むことができる。耐酸化性に関して、現実的には全ての高分子材料に酸化分解反応が起こり、これは、製造段階、加工段階及び最終使用段階の1つ又は全てにおいて起こり得ることを理解されたい。酸化防止剤は、この分解を、発泡前後の物理的及び機械的性質の低下を許容範囲内に維持できる程度に阻止するのに非常に有効である。本開示の組成物に使用することができる例示的な市販の酸化防止剤は、立体障害フェノール系酸化防止剤である、BASFからのIrganox 1010である。本開示の組成物は、酸化防止剤を0.1重量パーセント~0.5重量パーセントの範囲の量で含むことができる。
【0032】
本開示の組成物は、乳化剤として(例えば、加工助剤として)ポリエチレンワックスを含むことができる。ポリエチレンワックス乳化剤として、市販品であるMarcus Wax等を使用することができる。本開示の組成物は、ポリエチレンワックスを2重量パーセント~10重量パーセントの範囲の量で含むことができる。
【0033】
本開示の組成物は、場合により粘着付与樹脂を含むことができる。粘着付与樹脂を使用することにより、予備成形された部材の粘着性が増大し、それにより、塗装-焼付けサイクルにおいて予備成形部材を加熱する前後にこの部材を空洞内の所望の位置に保持することが容易になる。この点に関して、車体の製造に使用される金属(例えば、鋼、アルミニウム等)基板は、塗装-焼付けサイクルに付される前に油が付着している可能性がある。したがって、粘着付与樹脂は、発泡を行う前に予備成形部材及び金属基板が剥がれることを防ぐのを促進する。しかしながら、粘着付与樹脂は、予備成形部材の保管及び輸送中に部材が互いに張り付く傾向を高める可能性があるため、粘着付与樹脂は任意選択的なものである。本開示の組成物中に含有させることができる例示的な樹脂としては、炭化水素樹脂、C5樹脂、C9樹脂、フェノール系樹脂、飽和樹脂、不飽和樹脂及び部分飽和樹脂が挙げられる。本開示の組成物は、粘着付与樹脂を0重量パーセント~5重量パーセントの範囲の量で含むことができる。
【0034】
本開示による組成物はフィラー材料を含むことができる。例示的なフィラー材料としては、炭酸カルシウム及び酸化カルシウムが挙げられる。これらは、通常、非反応性であり、また、高分子材料の必要量を低減するため、組成物の製造に伴う費用を削減する。市販の炭酸カルシウムとしては、Quincy 325が挙げられる。市販の酸化カルシウムとしては、Polycal OS325が挙げられる。フィラーは、ステアリン酸等の材料から形成された被覆を含むことができる。市販の被覆されたフィラーとしては、Winnofil SPT等のステアリン酸被覆を有する炭酸カルシウムフィラーが挙げられる。本開示の組成物は、フィラー材料を0重量パーセント~15重量パーセントの範囲の量で含むことができる。他の例示的なフィラーとしては、タルク、シリカ、クレー、ナノクレー、酸化チタン、ウォラストナイト及びアラミド繊維が挙げられる。
【0035】
本発明の組成物の好ましい一実施形態は、15~85重量パーセントのLDPE及び7.5~75重量パーセントのLLDPEを含み、LDPE及びLLDPEの総量は、好ましくは、膨張前の組成物全体を基準として75~90重量パーセントである。さらに、この実施形態は、発泡剤、好ましくは5~10重量パーセントのOBSHを含む。この実施形態は、150℃及び210℃の全温度範囲にわたって極めて高い膨張量を示す。
【0036】
他の好ましい実施形態は、70~92重量パーセントのEVA又は異なるEVAの混合物を含む。さらにこの実施形態は、発泡剤、好ましくは5~12重量パーセントのOBSHを含む。この実施形態は、150℃及び210℃の全温度範囲にわたって極めて高い膨張量を示す。
【0037】
他の好ましい実施形態は、70~90重量パーセントのEMA又は異なるEMAの混合物を含む。さらにこの実施形態は、発泡剤、好ましくは5~12重量パーセントのOBSHを含む。この実施形態は、150℃及び210℃の全温度範囲にわたって極めて高い膨張量を示す。
【0038】
他の好ましい実施形態は、30~45重量パーセントのEVAと、30~45重量パーセントのEnBAとを含む。さらに、この実施形態は、10~20重量パーセントの発泡剤、好ましくは炭酸水素ナトリウムを含み、場合により、発泡剤の重量を基準として30~90重量パーセントのクエン酸を含む。この実施形態は、180℃及び210℃の高温範囲で極めて高い膨張量を示す。
【0039】
他の好ましい実施形態は、15~25重量パーセントのEVA、30~50重量パーセントのEnBA、5~15重量パーセントのEMA及び5~15重量パーセントのEnGMAを含む。さらに、この実施形態は、10~20重量パーセントの発泡剤、好ましくは炭酸水素ナトリウムを含み、場合により、発泡剤の重量を基準として30~90重量パーセントのクエン酸を含む。この実施形態は、特に180℃及び210℃の高温範囲で極めて高い膨張量を示すと共に、油が付着した金属等の基板上で非常に優れた接着を示す。
【0040】
本発明の他の態様は、この種の熱膨張性組成物の、遮断材及び/又は補強材要素又は構成部品を製造するための使用である。この種の要素は、中空構造、例えば、自動車の中空の構造部材の空洞を閉塞、遮断及び/又は補強するために使用される。車両の中空部材としては、車体構成部品(例えば、パネル)、フレーム構成部品(例えば、ハイドロフォーム成形されたチューブ)、ピラー構造(例えば、A、B、C又はDピラー)、バンパー、ルーフ等を挙げることができる。
【0041】
したがって、本発明のこの態様は、製造作業中に予め定められた高温に曝される空洞を閉塞し、かつそのための遮音材を提供するための膨張性シール材及び遮断材構成部品であり、この構成部品は、
低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLPDE)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、エチレン-メタクリレート(EMA)、エチレン-アクリル酸ブチル(EnBA)及びこれらの混合物からなる群から選択される高分子材料と、
4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)及び炭酸水素ナトリウムからなる群から選択される化学的発泡剤と、
任意選択的に担体要素と
を含み、この構成部品は、架橋剤を実質的に含まない。
【0042】
本発明による熱膨張性組成物の活性化に関して、この組成物を自動車製造に使用する場合、熱的な活性化を、他の熱処理を含むプロセスステップと組み合わせると有利である。この種のプロセスステップの例は、シャーシ又は車体の電着塗装(カチオン型電着塗装(cathodic dip painting/coating))である。
【0043】
好ましい一実施形態において、この種の中空構造を遮断及び/又は補強するための要素は、熱膨張性組成物から本質的になる。この場合、この要素を、遮断及び/又は補強すべき中空構造の壁面への適合及び取付けが容易になるような形状に設計すると有利である。この場合の製造は、好ましくは、射出成形、パンチング若しくはスタンピング又は異形金型(shape template)を介する押出しにより行われる。
【0044】
他の好ましい実施形態において、この種の中空構造を遮断及び/又は補強するための要素は、熱膨張性組成物以外に、本発明の熱膨張性組成物をその上に堆積又は付着させる担体要素を含む。このような設計を用いることによって費用効率がより高くなる可能性があり、また、担体要素上に、例えば、ピン、ボルト又はフックを組み込むことにより、遮断及び/又は補強すべき構造の壁面上に遮断及び/又は補強要素を固定することが容易になる。さらに、適切に設計された担体要素を用いることにより、本発明による遮断及び/又は補強要素の機械的性能及び機械的安定性を向上させることができる。
【0045】
前記担体要素は、本発明の実施形態に使用可能な形状に加工することができる任意の材料から構成することができる。好ましい材料は、プラスチック、エラストマー、熱可塑性物質、熱硬化性ポリマー、これらのブレンド物又は他の組合せ等の高分子材料である。好ましい熱可塑性物質としては、これらに限定されるものではないが、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン等のポリマーが挙げられる。ポリ(フェニルエーテル)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、好ましくは、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド11、ポリアミド12又はこれらの混合物等の高温安定性を有するポリマーが特に好ましい。他の好適な材料としては、金属、特にアルミニウム若しくは鋼、又は木材若しくは他の(圧縮された)繊維質材料等の自然に成長する有機材料が挙げられる。ガラス質材料又はセラミックス材料を使用することもできる。この種の材料の任意の組合せを使用することも可能である。この種の材料は、フィラー(例えば、繊維、鉱物、クレー、ケイ酸塩、炭酸塩、これらの組合せ等)の充填が可能であることも、発泡させることが可能であることも想定されている。
【0046】
担体要素は、任意の形状又は幾何学的配置をさらに有することもできる。これは、直接連結していない幾つかの部材から構成することもできる。例えば、これは、塊状体、中空体又は発泡体であってもよく、又は格子状構造を呈してもよい。担体要素の表面は、通常、遮断及び/又は補強要素の意図された用途に応じて、平滑であっても、凹凸があっても、又は構造化されていてもよい。
【0047】
本発明による遮断及び/又は補強要素の製造プロセスは、担体要素の材料に大きく依存する。担体要素の材料を(射出)成形又は押出することができる場合、担体要素及び熱膨張性組成物の2段階射出成形プロセス又は共押出プロセスを行うことにより、遮断及び/又は補強要素全体を製造することができる。
【0048】
本発明の他の態様は、陸上車両、船艇若しくは航空機、好ましくは自走車両の空洞若しくは中空構造及び/又は建物の空洞を、雑音、振動、湿気及び/若しくは熱の伝搬が低減され、かつ/又は前記空洞を囲む物体が機械的に強化されるように閉塞、遮断又は補強するための、上に述べた遮断及び/又は補強要素の使用である。
【0049】
本発明のさらなる態様は、空洞又は中空構造を閉塞、遮断及び/又は補強するための方法において、上記に従う熱膨張性組成物を含む要素が前記空洞又は中空構造内に導入され、かつ次いで、前記空洞又は中空構造が膨張した組成物によって少なくとも部分的に充填されるように熱的に膨張されることを特徴とする、方法である。この熱膨張プロセスに好ましい温度は140℃~210℃である。組成物の好ましい焼付け時間は5分間~30分間である。
【実施例
【0050】
ここで、本開示の組成物を様々な実施例組成物(実施例1~32)及び比較組成物(例A~L)に関連して説明する。実施例組成物は実質的に架橋剤を含まず、一方、比較組成物は過酸化物架橋剤(Akrochemから入手可能なDC40C)を含む。実施例組成物及び比較組成物のそれぞれの材料の量を、膨張前の組成物全体を基準とする重量パーセントで列挙する。実験1~20及び実験A~Gに関しては、後述する表1及び2を参照されたい。
【0051】
実施例組成物及び比較組成物の調製は、それぞれ材料を秤量し、この材料を容器に装入し、次いでこの容器を予め定められた時間(例えば、1~24時間)にわたって連続回転させることにより、材料を十分に混ぜ合わせることによって行った。次いで、材料の混合物をホッパに供給してブスニーダー等の二軸押出機で押出すか、又はバンバリーブレードを含む小型バッチミキサーで混ぜ合わせた後、1mm~5mmの厚みに圧縮するかのいずれかを行った。次いで、押出された混合物を造粒し、射出成形することにより成形部材を形成した。次いで、成形又は圧縮された部材を150℃~210℃の範囲の温度で焼付けることにより、部材を発泡させた。次いで、各部材の発泡後の体積膨張を焼付け前と比較して求めた。実施例組成物、比較組成物及びこれらの様々な温度における体積膨張の結果を表1及び表2に示す。
【0052】
これらの結果は、表3及び表4に示す結果によってさらに支持された。これらの実験は、本発明実施例(21~31)及び本発明外の参照例(H~K)の両方を含む。これらの表では、組成(膨張前の組成物全体を基準とする重量パーセント)及び体積膨張のデータ(膨張前の元の組成物の体積を基準とする)も示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
【表4】
【0057】
表1~4から分かるように、本開示の組成物は架橋剤を含まないにも関わらず、それぞれ十分に膨張した。予想外にも、これらの試料は、それぞれ架橋剤を利用している比較組成物と同程度の膨張量を示した。しかしながら、本出願の組成物は架橋剤を含まないため、製造費用が削減されると共に、架橋剤の使用に伴う不利益が生じない。さらに、架橋剤を使用していないため、人体及び環境に有害な可能性のある化学物質の使用が低減される。
【0058】
膨張後の本発明の組成物の発泡体表面の品質を先行技術による類似の架橋された組成物と比較して示すため、2種類のモデル配合物を調製した。これらのモデル配合物の組成の詳細を表5に示す。
【0059】
【表5】
【0060】
表5に示す2種類のモデル組成物を180℃で20分間膨張させた。結果として得られた発泡体の写真を比較して図2に示す。上側の2枚の写真は、膨張後の本発明の組成物32を示す。写真1aは、膨張した発泡体の約半分の外観を示し、写真1bは、表面の拡大図である。下側の2枚の写真は、膨張後の本発明外の組成物Lを示す。写真2aは膨張後の発泡体の約半分の外観を示し、写真1bは、表面の拡大図である。本発明による発泡体の表面は、本発明外の架橋した参照例と比較してはるかに平滑であり、巨大孔等の望ましくない表面欠陥が少ないことが明らかである。
【0061】
上述の実施形態の説明は例示及び説明を目的として提供したものである。これは、本開示の網羅又は限定を意図するものではない。一般に、特定の実施形態の個々の要素又は特徴は、特定の実施形態に限定されず、適切な場合には交換可能であり、たとえ具体的に示されておらず又は記載されていなくても、選択された実施形態に使用することができる。これらはまた、多くの方法で変形され得る。この種の変形形態は本開示を逸脱するものと見なされず、この種の修正形態は全て本開示の範囲に包含されることが意図されている。
図1
図2