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特許7007308感光性転写材料、樹脂パターンの製造方法、回路配線の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-11
(45)【発行日】2022-01-24
(54)【発明の名称】感光性転写材料、樹脂パターンの製造方法、回路配線の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20220117BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20220117BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20220117BHJP
   B32B 33/00 20060101ALI20220117BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20220117BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20220117BHJP
【FI】
G03F7/11 502
G03F7/004 512
G03F7/039 601
B32B33/00
G06F3/041 660
G06F3/041 495
G06F3/044 124
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019016912
(22)【出願日】2019-02-01
(65)【公開番号】P2020126090
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2020-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 進二
(72)【発明者】
【氏名】松田 知樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 悟
(72)【発明者】
【氏名】漢那 慎一
(72)【発明者】
【氏名】石坂 壮二
(72)【発明者】
【氏名】両角 一真
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-120435(JP,A)
【文献】特開2014-085643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
G03F 7/004
G03F 7/039
B32B 33/00
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮支持体、中間層、及び、感光性樹脂層をこの順に有し、
前記中間層が、水溶性樹脂、アニオン性基を表面に有する粒子、並びに、塩基性基及びカチオン性基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の極性基と炭素数6以上のアルキル基とを有する極性化合物を含有し、
前記水溶性樹脂が、セルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、アクリルアミド樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、ゼラチン、ビニルエーテル樹脂、ポリアミド樹脂及びこれらの共重合体よりなる群から少なくとも1種の樹脂であり、
前記感光性樹脂層が、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を含有する重合体を含有し、
前記酸分解性基が、アセタールの形で保護された構造を有する基であり、
前記感光性樹脂層と前記中間層とが接している
感光性転写材料。
【請求項2】
前記重合体の酸価が、10mgKOH/g以下である請求項1に記載の感光性転写材料。
【請求項3】
前記重合体の酸価が、3mgKOH/g以下である、請求項1又は請求項2に記載の感光性転写材料。
【請求項4】
前記極性基が、第一級~第三級アミノ基、又は、第一級~第四級アンモニウム塩基である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項5】
前記極性化合物における前記炭素数6以上のアルキル基が、炭素数10~16のアルキル基である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項6】
前記粒子が、アニオン性基を表面に有するシリカ粒子である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項7】
前記粒子の算術平均粒径が、30nm以下である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項8】
前記仮支持体と前記中間層との間に、粒子の含有量が5質量%以下である水溶性樹脂層を更に有する請求項1~請求項のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項9】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の感光性転写材料における前記感光性樹脂層を基板に接触させて貼り合わせる工程と、
前記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
露光された前記感光性樹脂層を現像してパターンを形成する工程と、をこの順に含む
樹脂パターンの製造方法。
【請求項10】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の感光性転写材料の前記感光性樹脂層を、導電層を有する基板に接触させて貼り合わせる工程と、
前記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
露光された前記感光性樹脂層を現像してパターンを形成する工程と、
前記パターンが配置されていない領域における導電層をエッチング処理する工程と、をこの順に含む
回路配線の製造方法。
【請求項11】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の感光性転写材料の前記感光性樹脂層を、導電層を有する基板に接触させて貼り合わせる工程と、
前記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
露光された前記感光性樹脂層を現像してパターンを形成する工程と、
前記パターンが配置されていない領域における導電層をエッチング処理する工程と、をこの順に含む
タッチパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性転写材料、樹脂パターンの製造方法、回路配線の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量型入力装置などのタッチパネルを備えた表示装置(有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置及び液晶表示装置など)では、視認部のセンサーに相当する電極パターン、周辺配線部分及び取り出し配線部分の配線などの導電層パターンがタッチパネル内部に設けられている。
一般的にパターン化した層の形成には、必要とするパターン形状を得るための工程数が少ないといったことから、感光性転写材料を用いて任意の基板上に設けた感光性樹脂組成物の層に対して、所望のパターンを有するマスクを介して露光した後に現像する方法が広く使用されている。
【0003】
また、従来の回路基板の製造に使用する金属膜付きフィルムとしては、特許文献1に記載されたものが知られている。
特許文献1には、支持体、上記支持体上に形成されたナノ無機充填材含有水溶性高分子離型層、及び上記離型層上に形成された金属膜層を有することを特徴とする金属膜付きフィルムが記載されている。
【0004】
更に、従来の感光性転写材料としては、特許文献2に記載されたものが知られている。
特許文献2には、仮支持体と、中間層と、感光性樹脂組成物層とをこの順で有し、上記感光性樹脂組成物層が、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体と、光酸発生剤とを含有し、上記中間層が、水溶性又はアルカリ可溶性であり、かつフェノール性水酸基又は主鎖に直結していないアルコール性水酸基を有する構成単位を含む樹脂Cを含有する感光性転写材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-25532号公報
【文献】国際公開第2018/179640号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、感光性樹脂層と中間層との密着性に優れる感光性転写材料を提供することである。
また、本発明の他の一実施形態が解決しようとする課題は、上記感光性転写材料を用いた樹脂パターンの製造方法、回路配線の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 仮支持体、中間層、及び、感光性樹脂層をこの順に有し、上記中間層が、水溶性樹脂、粒子、並びに、酸性基、塩基性基、アニオン性基及びカチオン性基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の極性基と炭素数6以上のアルキル基とを有する極性化合物を含有し、上記感光性樹脂層が、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を含有する重合体を含有し、上記感光性樹脂層と上記中間層とが接している感光性転写材料。
<2> 上記重合体の酸価が、10mgKOH/g以下である<1>に記載の感光性転写材料。
<3> 上記重合体の酸価が、3mgKOH/g以下である、<1>又は<2>に記載の感光性転写材料。
<4> 上記極性基が、第一級~第三級アミノ基、又は、第一級~第四級アンモニウム基である<1>~<3>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<5> 上記極性化合物における上記炭素数6以上のアルキル基が、炭素数10~16のアルキル基である<1>~<4>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<6> 上記粒子が、シリカ粒子である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<7> 上記シリカ粒子が、アニオン性基を表面に有するシリカ粒子である、<6>に記載の感光性転写材料。
<8> 上記粒子の算術平均粒径が、30nm以下である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<9> 上記仮支持体と上記中間層との間に、粒子の含有量が5質量%以下である水溶性樹脂層を更に有する<1>~<8>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<10> <1>~<9>のいずれか1つに記載の感光性転写材料における上記感光性樹脂層を基板に接触させて貼り合わせる工程と、上記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、露光された上記感光性樹脂層を現像してパターンを形成する工程と、をこの順に含む樹脂パターンの製造方法。
<11> <1>~<9>のいずれか1つに記載の感光性転写材料の上記感光性樹脂層を、導電層を有する基板に接触させて貼り合わせる工程と、上記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、露光された上記感光性樹脂層を現像してパターンを形成する工程と、上記パターンが配置されていない領域における導電層をエッチング処理する工程と、をこの順に含む回路配線の製造方法。
<12> <1>~<9>のいずれか1つに記載の感光性転写材料の上記感光性樹脂層を、導電層を有する基板に接触させて貼り合わせる工程と、上記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、露光された上記感光性樹脂層を現像してパターンを形成する工程と、記パターンが配置されていない領域における導電層をエッチング処理する工程と、をこの順に含むタッチパネルの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、感光性樹脂層と中間層との密着性に優れる感光性転写材料を提供することができる。
また、本発明の他の一実施形態によれば、上記感光性転写材料を用いた樹脂パターンの製造方法、回路配線の製造方法、及び、タッチパネルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示に係る感光性転写材料の層構成の一例を示す概略図である。
図2】パターンAを示す概略図である。
図3】パターンBを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の内容について説明する。なお、添付の図面を参照しながら説明するが、符号は省略する場合がある。
また、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの双方、又は、いずれかを表し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの双方、又は、いずれかを表す。
更に、本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も含む。また、露光に用いられる光としては、一般的に、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線(活性エネルギー線)が挙げられる。
また、本明細書における化学構造式は、水素原子を省略した簡略構造式で記載する場合もある。
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
【0011】
(感光性転写材料)
本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体、中間層、及び、感光性樹脂層をこの順に有し、上記中間層が、水溶性樹脂、粒子、並びに、酸性基、塩基性基、アニオン性基及びカチオン性基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の極性基と炭素数6以上のアルキル基とを有する極性化合物を含有し、上記感光性樹脂層が、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を含有する重合体を含有し、上記感光性樹脂層と上記中間層とが接している。
また、本開示に係る感光性転写材料は、上記のように、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を含有する重合体を含有するポジ型感光性樹脂層を有するポジ型感光性転写材料である。また、上記感光性樹脂層は、化学増幅ポジ型感光性樹脂層であることが好ましい。
【0012】
従来の感光性転写材料では、感光性樹脂層と中間層とを接して設けた場合、上記感光性樹脂層と中間層との密着性が十分でないことを、本発明者らは見出した。
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、上記構成の感光性転写材料とすることにより、感光性樹脂層と中間層との密着性に優れる感光性転写材料が得られることを見出した。
詳細な上記効果の発現機構は不明であるが、上記中間層が、水溶性樹脂、粒子、並びに、酸性基、塩基性基、アニオン性基及びカチオン性基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の極性基と炭素数6以上のアルキル基とを有する極性化合物を含有することにより、上記中間層中において、上記極性基が粒子表面に吸着し、上記炭素数6以上のアルキル基が上記感光性樹脂層へ貫入する又は上記感光性樹脂層と疎水性相互作用(疎水効果)することにより、感光性樹脂層と中間層とが強固に密着するため、感光性樹脂層と中間層との密着性に優れると推定される。
【0013】
以下、本開示に係る感光性転写材料について、詳細に説明する。
【0014】
<中間層>
本開示に係る感光性転写材料は、上記感光性樹脂層と接する中間層を有し、上記中間層が、水溶性樹脂、粒子、並びに、酸性基、塩基性基、アニオン性基及びカチオン性基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の極性基と炭素数6以上のアルキル基とを有する極性化合物を含有する。
【0015】
〔極性化合物〕
上記中間層は、酸性基、塩基性基、アニオン性基及びカチオン性基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の極性基と炭素数6以上のアルキル基とを有する極性化合物を含有する。
また、上記極性化合物は、極性化合物を含有する中間層形成用組成物を用いて中間層を形成し中間層に含有される場合以外にも、中間層形成時又は中間層形成後、特に中間層形成時に後述する水溶性樹脂層から移動して中間層に含有される場合も挙げられる。
【0016】
上記極性化合物における炭素数6以上のアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環構造を有していてもよいが、感光性樹脂層と中間層との密着性における液安定性の観点から、直鎖アルキル基、又は、分岐アルキル基であることが好ましく、直鎖アルキル基であることがより好ましい。
上記極性化合物における炭素数6以上のアルキル基は、感光性樹脂層と中間層との密着性の観点から、炭素数6~30のアルキル基であることが好ましく、炭素数8~22のアルキル基であることがより好ましく、炭素数10~16のアルキル基であることが特に好ましい。
【0017】
上記極性基としては、感光性樹脂層と中間層との密着性の観点から、第一級~第三級アミノ基、第一級~第四級アンモニウム塩基、ピリジル基、ピリジニウム基、カルボン酸基(カルボキシ基)、スルホン酸基(スルホ基)、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、ホスホン酸塩基、リン酸塩基、及び、ベタイン構造よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構造であることが好ましく、第一級~第三級アミノ基、第一級~第四級アンモニウム塩基、ピリジル基、ピリジニウム基、カルボン酸基、スルホン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸塩基、及び、ベタイン構造よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構造であることがより好ましく、第一級~第三級アミノ基、第一級~第四級アンモニウム塩基、及び、ベタイン構造よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構造であることが更に好ましく、第一級~第三級アミノ基、又は、第一級~第四級アンモニウム塩基であることが特に好ましく、第四級アンモニウム塩基であることが最も好ましい。
また、感光性樹脂層と中間層との密着性の観点から、上記第一級~第三級アミノ基の中でも、第三級アミノ基が好ましい。
更に、感光性樹脂層と中間層との密着性の観点から、上記第一級~第四級アンモニウム塩基の中でも、第四級アンモニウム塩基が好ましい。
ベタイン構造としては、カルボキシレート構造及びアンモニウム構造を有するベタイン構造、又は、スルホネート構造及びアンモニウム構造を有するベタイン構造が好ましく挙げられ、スルホネート構造及びアンモニウム構造を有するベタイン構造がより好ましく挙げられる。
【0018】
なお、上記極性化合物は、上記中間層において、他の化合物と塩を形成していてもよい。具体的は、例えば、アニオン性基であるシラノール基を表面に有するシリカ粒子と、アミン化合物とを用いた場合、アミン化合物におけるアミノ基がシラノール基と一部反応して塩を形成していてもよい。
上記に示す場合、上記中間層に含まれるアミン化合物は、アミノ基を有する化合物と、アンモニウム塩基を有する化合物との2種が生成していると推定される。このように、上記極性化合物として塩基性基を有する化合物を使用した場合であっても、塩基性基を有する化合物、及び、カチオン性基を有する化合物の2種が生成する場合もある。
そのため、本開示においては、上記極性基を、酸性基、塩基性基、アニオン性基及びカチオン性基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の極性基と規定した。
【0019】
上記極性化合物は、上記極性基を1つのみ有していても、2つ以上有していてもよいが、感光性樹脂層と中間層との密着性、及び、中間層形成用組成物における液安定性の観点から、上記極性基を1つのみ有する化合物であることが好ましい。なお、上記ベタイン構造は、カチオン部位及びアニオン部位を合わせて1つと数えるものとする。
【0020】
上記第一級~第四級アンモニウム塩基、又は、上記ピリジニウム基における対アニオンとしては、特に制限はないが、一価のアニオンを含むことが好ましく、ハロゲン化物イオン、又は、水酸化物イオンを含むことがより好ましく、塩化物イオン、又は、水酸化物イオンを含むことが特に好ましい。
上記カルボン酸塩基、上記スルホン酸塩基、上記ホスホン酸塩基、又は、上記リン酸塩基における対カチオンとしては、特に制限はないが、一価のカチオンを含むことが好ましく、アルカリ金属イオン、又は、第一級~第四級アンモニウムイオンを含むことがより好ましい。
【0021】
上記極性化合物は、脂肪族化合物であっても、芳香族化合物であってもよいが、感光性樹脂層と中間層との密着性、及び、中間層形成用組成物における液安定性の観点から、脂肪族化合物であることが好ましい。
【0022】
上記極性化合物の分子量は、特に制限はないが、感光性樹脂層と中間層との密着性、及び、中間層形成用組成物における液安定性の観点から、100~800であることが好ましく、120~600であることがより好ましく、150~400であることが特に好ましい。
【0023】
上記極性化合物の具体例としては、例えば、第一級~第三級アミノ化合物、第一級~第四級アンモニウム塩化合物、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、カルボン酸塩化合物、スルホン酸塩化合物等が挙げられる。
【0024】
また、上記極性化合物の具体例としては、以下に示すものが好ましく挙げられるが、これらに限定されないことは言うまでもない。
【0025】
【化1】
【0026】
【化2】
【0027】
【化3】
【0028】
中間層は、上記極性化合物を、1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
中間層における上記極性化合物の含有量は、感光性樹脂層と中間層との密着性、及び、中間層形成用組成物における液安定性の観点から、中間層の全質量に対し、0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.05質量%~2質量%であることがより好ましく、0.1質量%~1.0質量%であることが更に好ましく、0.2質量%~0.8質量%であることが特に好ましい。
【0029】
〔粒子〕
上記中間層は、粒子を含有する。
上記粒子としては、中間層と感光層との密着性の観点から、金属酸化物粒子、又は、有機粒子であることが好ましく、Si、Ti及びZrよりなる群から選択される元素の酸化物粒子、又は、有機粒子であることがより好ましい。
なお、本開示における金属酸化物粒子の金属には、B、Si、Ge、As、Sb、Te等の半金属も含まれるものとする。
金属酸化物粒子としては、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ce、Gd、Tb、Dy、Yb、Lu、Ti、Zr、Hf、Nb、Mo、W、Zn、B、Al、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Te等の原子を含む酸化物粒子が好ましく、シリカ、酸化チタン、チタン複合酸化物、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、インジウム/スズ酸化物、又は、アンチモン/スズ酸化物がより好ましく、シリカ、酸化チタン、チタン複合酸化物、又は、酸化ジルコニウムが更に好ましく、シリカ、酸化チタン、又は、酸化ジルコニウムが特に好ましく、シリカが最も好ましい。
有機粒子としては、有機樹脂粒子が好ましく挙げられる。
有機樹脂粒子としては例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のアクリル酸系モノマーの単独重合体及び共重合体、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートのようなセルロース系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル系共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールのようなビニル系ポリマー及びビニル化合物の共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミドのような縮合系ポリマー、ブタジエン-スチレン共重合体のようなゴム系熱可塑性ポリマー、エポキシ化合物のような光重合性若しくは熱重合性化合物を重合、架橋させたポリマー、メラミン化合物等を挙げることができる。
これらの中でも、有機粒子としては、アクリル樹脂粒子が好ましく挙げられ、ポリメチルメタクリレート粒子がより好ましく挙げられる。
中でも、粒子としては、中間層と感光層との密着性の観点から、シリカ粒子であることが特に好ましい。
また、これら粒子は、分散安定性付与のために表面を有機材料や無機材料で処理することもできる。上記粒子は、表面が親水性の粒子であることが好ましい。例えば、表面が疎水性の粒子の表面を親水化処理する等が挙げられる。
【0030】
また、上記粒子は、感光性樹脂層と中間層との密着性、及び、中間層形成用組成物における液安定性の観点から、アニオン性基又はカチオン性基を表面に有する粒子であることが好ましく、アニオン性基を表面に有する粒子であることがより好ましく、アニオン性基を表面に有するシリカ粒子であることが特に好ましい。
更に、中間層が、アニオン性基を表面に有する粒子である場合、感光性樹脂層と中間層との密着性の観点から、上記極性化合物は、塩基性基又はカチオン性基を有する極性化合物であることが好ましい。また、カチオン性基を表面に有する粒子である場合、感光性樹脂層と中間層との密着性の観点から、上記極性化合物は、酸性基又はアニオン性基を有する極性化合物であることが好ましい。
上記粒子が表面に有するアニオン性基としては、シラノール基、又は、カルボキシ基が好ましく挙げられ、シラノール基がより好ましく挙げられる。
上記粒子が表面に有するカチオン性基としては、アミノ基が好ましく挙げられる。
【0031】
上記粒子の算術平均粒子径は、中間層と感光層との密着性の観点から、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、6nm~30nmであることが更に好ましく、1nm~25nmであることが特に好ましい。
本開示における粒子の算術平均粒子径の測定方法は、電子顕微鏡により任意の粒子200個の粒子径を測定し、その算術平均をいう。また、粒子の形状が球形でない場合には、最大径を径とする。
【0032】
中間層は、上記粒子を、1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
中間層における上記粒子の含有量は、中間層と感光層との密着性の観点から、中間層の全質量に対し、1質量%~90質量%であることが好ましく、3質量%~70質量%であることがより好ましく、5質量%~50質量%であることが特に好ましい。
【0033】
〔水溶性樹脂〕
中間層は、水溶性樹脂を含有する。
本開示において、「水溶性」とは、22℃においてpH7.0の水100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。
また、上記水溶性樹脂は、22℃におけるpH7.0の水100gへの溶解度が、1g以上であることが好ましく、5g以上であることがより好ましい。
水溶性樹脂としては、例えばセルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、アクリルアミド樹脂、(メタ)アクリレート樹脂、ポリエチレンオキサイド樹脂、ゼラチン、ビニルエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、及びこれらの共重合体などの樹脂が挙げられる。中でも、セルロース樹脂であることが好ましく、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースよりなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂であることがより好ましい。
【0034】
中間層は、水溶性樹脂を、1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
水溶性樹脂の含有量は、感光性樹脂層と中間層との密着性の観点から、中間層の全質量に対して、10質量%~99質量%であることが好ましく、30質量%~97質量%であることがより好ましく、50質量%~95質量%であることが特に好ましい。
【0035】
〔pH感受性色素〕
上記中間層は、露光パターンの確認容易性の観点から、発色時における波長範囲400nm~780nmの極大吸収波長が450nm以上であり、pHにより極大吸収波長が変化するpH感受性色素を含むことが好ましい。
「極大吸収波長が変化する」とは、発色状態にある色素が消色する態様、消色状態にある色素が発色する態様、及び、発色状態にある色素が他の色相の発色状態に変化する態様のいずれの態様を指すものであってもよい。
pH感受性色素は、視認性の観点から、光酸発生剤から発生する酸により消色する潜在性色素であることがより好ましい。
【0036】
pH感受性色素であることの確認は、以下の方法により行うことができる。
色素0.1gを、エタノール及び水の混合溶液(エタノール/水=1/2[質量比])100mLに溶かし、0.1mol/L(1N)の塩酸水溶液を加えてpH=1に調整する。0.01mol/L(0.01N)の水酸化ナトリウム水溶液で滴定し、発色変化と発色変化が現れた際のpHとを確認する。なお、pHは、pHメーター(型番:HM-31、東亜ディーケーケー(株)製)を用いて25℃で測定される値である。
【0037】
本開示における極大吸収波長の測定方法は、大気の雰囲気下で、25℃にて分光光度計:UV3100((株)島津製作所製)を用いて、400nm~780nmの範囲で透過スペクトルを測定し、光の強度が極小となる波長(極大吸収波長)を測定するものとする。
【0038】
露光により消色する色素としては、例えば、ロイコ化合物、ジフェニルメタン系色素、オキザジン系色素、キサンテン系色素、イミノナフトキノン系色素、アゾメチン系色素、アントラキノン系色素等が挙げられる。
中でも、色素としては、視認性の観点から、ロイコ化合物が好ましい。
ロイコ化合物としては、トリアリールメタン系(例えばトリフェニルメタン系)、スピロピラン系、フルオラン系、ジフェニルメタン系、ローダミンラクタム系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系等のロイコ化合物が挙げられる。中でも、トリアリールメタン骨格を有するロイコ化合物(トリアリールメタン系色素)が好ましく、トリフェニルメタン系色素がより好ましい。
また、ロイコ化合物としては、視認性の観点から、ラクトン環、スルチン環、又はスルトン環を有し、ラクトン環、スルチン環、又は、スルトン環が開環又は閉環するものが好ましく、スルトン環を有し、スルトン環が閉環して消色するロイコ化合物であることがより好ましい。
【0039】
色素は、色素の析出による欠陥を防止する目的で、水溶性の化合物であることが好ましい。
また、色素は、22℃におけるpH7.0の水100gへの溶解度が、1g以上であることが好ましく、5g以上であることがより好ましい。
【0040】
中間層は、色素を、1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
上記中間層における色素の含有量は、視認性の観点から、中間層の全質量に対し、0.01質量%~10質量%であることが好ましく、0.5質量%~5質量%であることがより好ましく、1.0質量%~3.0質量%であることが更に好ましい。
【0041】
〔界面活性剤〕
中間層には、厚さ均一性の観点から界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、フッ素原子を有する界面活性剤、ケイ素原子を有する界面活性剤、フッ素原子もケイ素原子も有さない界面活性剤のいずれも使用することができる。中でも、界面活性剤としては、感光性樹脂層及び中間層におけるスジの発生抑制、及び、密着性の観点から、フッ素原子を有する界面活性剤であることが好ましく、パーフルオロアルキル基とポリアルキレンオキシ基とを有する界面活性剤であることがより好ましい。
また、界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性(非イオン性)、又は、両性のいずれでも使用することができるが、好ましい界面活性剤はノニオン性界面活性剤である。
界面活性剤は、界面活性剤の析出抑制の観点から、25℃の水100gに対する溶解度が1g以上であるものが好ましい。
【0042】
中間層は、界面活性剤を、1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
上記中間層における界面活性剤の含有量は、感光性樹脂層及び中間層におけるスジの発生抑制、及び、密着性の観点から、中間層の全質量に対し、0.05質量%~2.0質量%であることが好ましく、0.1質量%~1.0質量%であることがより好ましく、0.2質量%~0.5質量%であることが特に好ましい。
【0043】
〔pH調整剤〕
中間層にはpH調整剤を含むことができる。pH調整剤を含むことで、中間層中の色素の発色状態又は消色状態をより安定的に維持することができ、感光性樹脂層と中間層との密着性がより向上する。
本開示におけるpH調整剤は特に制限はない。例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、有機アミン、有機アンモニウム塩等が挙げられる。水溶性の観点から水酸化ナトリウムが好ましい。感光性樹脂層と中間層との密着性の観点からは、有機アンモニウム塩が好ましい。
また、pH調整剤として酸性のpH調整剤を使用してもよい。例えば、塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸、トシル酸等の有機酸が挙げられる。基板安定性の観点からは、有機酸が好ましい。
【0044】
<<中間層の平均厚さ>>
中間層の平均厚さは、感光性樹脂層と中間層との密着性、及び、パターン形成性の観点から、0.3μm~10μmが好ましく、0.3μm~5μmがより好ましく、0.3μm~3μmが特に好ましい。
また、中間層の平均厚さは、感光性樹脂層の平均厚さよりも薄いことが好ましい。
【0045】
<<中間層の形成方法>>
本開示における中間層は、中間層の形成に用いる成分と、水溶性溶剤とを含有する中間層形成用組成物を調製し、塗布及び乾燥して形成することができる。各成分を、それぞれ予め溶剤に溶解させた溶液とした後、得られた溶液をあらかじめ定めた割合で混合して組成物を調製することもできる。以上の如くして調製した組成物は、孔径3.0μmのフィルター等を用いてろ過を行ってもよい。
中間層形成用組成物を仮支持体に塗布し、乾燥させることで、仮支持体上に中間層を形成することができる。塗布方法は特に限定されず、スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布、インクジェット塗布などの公知の方法で塗布することができる。
【0046】
〔中間層形成用組成物〕
中間層形成用組成物は、中間層の形成に用いる成分と、水溶性溶剤とを含むことが好ましい。各成分に水溶性溶剤を含有させて粘度を調節し、塗布及び乾燥することで、中間層を好適に形成することができる。
【0047】
-水溶性溶剤-
水溶性溶剤としては、公知の水溶性溶剤を用いることができ、例えば、水、炭素数1~6のアルコール等が挙げられ、水を含むことが好ましい。炭素数1~6のアルコールとしては、具体的には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、及び、n-ヘキサノールが挙げられる。中でも、メタノール、エタノール、n-プロパノール、及び、イソプロパノールよりなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0048】
<水溶性樹脂層>
本開示における感光性転写材料は、感光性樹脂層と中間層との密着性、及び、仮支持体と中間層との密着性の観点から、上記仮支持体と上記中間層との間に、粒子の含有量が5質量%以下である水溶性樹脂層を更に有することが好ましい。
水溶性樹脂層は、水溶性樹脂を含み、かつ粒子の含有量が5質量%以下である層であればよく、粒子の含有量が0質量%である、すなわち、粒子を含んでいなくともよい。
また、水溶性樹脂層は、保存安定性、及び、感光性樹脂層と中間層との密着性の観点から、上記中間層よりも粒子の含有量が少ないことが好ましい。
また、水溶性樹脂層は、上記極性化合物を含むことが好ましく、水溶性樹脂層の上層に中間層を重層塗布及び乾燥させる際、あるいはその後の工程で、水溶性樹脂層中の極性化合物を中間層へ拡散させ、極性化合物と粒子とを含有する中間層を形成することが、液の保存安定性、及び、感光性樹脂層と中間層との密着性の両立の観点から好ましい。
【0049】
水溶性樹脂層は、水溶性樹脂を含有する。
水溶性樹脂層に用いられる水溶性樹脂は、上述した中間層に用いられる水溶性樹脂と同様のものを用いることができ、好ましい態様も同様である。
水溶性樹脂層は、水溶性樹脂を、1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
水溶性樹脂の含有量は、感光性樹脂層と中間層との密着性の観点から、水溶性樹脂層の全質量に対し、50質量%~100質量%であることが好ましく、65質量%~99質量%であることがより好ましく、80質量%~98質量%であることが特に好ましい。
【0050】
水溶性樹脂層は、含有量が5質量%以下であれば、粒子を含有していてもよい。
水溶性樹脂層に用いられる粒子は、上述した中間層に用いられる粒子と同様のものを用いることができ、好ましい態様も同様である。
水溶性樹脂層は、粒子を、1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
粒子の含有量は、感光性樹脂層と中間層との密着性の観点から、水溶性樹脂層の全質量に対し、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0051】
水溶性樹脂層は、極性化合物を含んでいてもよい。
水溶性樹脂層に用いられる極性化合物は、上述した中間層に用いられる極性化合物と同様のものを用いることができ、好ましい態様も同様である。
水溶性樹脂層は、極性化合物を、1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
極性化合物の含有量は、感光性樹脂層と中間層との密着性、及び、中間層形成用組成物における液安定性の観点から、水溶性樹脂層の全質量に対し、0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.05質量%~2質量%であることがより好ましく、0.1質量%~1.0質量%であることが更に好ましく、0.2質量%~0.8質量%であることが特に好ましい。
【0052】
水溶性樹脂層は、上述した以外のその他の化合物を含んでいてもよい。
水溶性樹脂層に用いられるその他の化合物は、特に制限はなく、上述した中間層に用いられるその他の化合物と同様のものを用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0053】
上記水溶性樹脂層の平均厚さは、中間層と感光性樹脂層との密着性、及び、パターン形成性の観点から、0.3μm~10μmが好ましく、0.3μm~5μmがより好ましく、0.3μm~2.5μmが特に好ましい。
また、上記水溶性樹脂層の平均厚さは、中間層と感光性樹脂層との密着性、及び、パターン形成性の観点から、上記中間層の平均厚さよりも厚いことが好ましい。
【0054】
<<水溶性樹脂層の形成方法>>
水溶性樹脂層の形成方法は、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。
また、水溶性樹脂層を形成する場合、上記水溶性樹脂層及び上記中間層を形成する方法としては、逐次塗布法、又は、重層塗布法を好適に用いることができる。
逐次塗布法により形成した場合であっても、上記水溶性樹脂層及び上記中間層のバインダー成分は水溶性樹脂であるため、水溶性樹脂層形成用組成物を仮支持体上に塗布乾燥して水溶性樹脂層を形成し、形成された水溶性樹脂層の上に中間層形成用組成物を塗布した際に、上記水溶性樹脂層の一部が溶解して中間層形成用組成物と混合し、例えば、中間層形成用組成物における粒子の一部が水溶性樹脂層へ移動し、また、上記水溶性樹脂層に含まれる上記極性化合物の一部が中間層形成用組成物、すなわち、中間層へと移動する。
粒子を含まない水溶性樹脂層形成用組成物を用いた場合であっても、上記水溶性樹脂層は、粒子が含む層となる場合があり、また、上記極性化合物を含まない粒子含有層形成用組成物を用いた場合であっても、上記粒子含有層は、上記極性化合物を含む層となる。
重層塗布法により上記水溶性樹脂層及び上記中間層を形成する場合、上記混合がより顕著であると考えられる。
上記水溶性樹脂層の形成に用いられる水溶性樹脂層形成用組成物は、粒子を含んでいても、含んでいなくともよいが、水溶性樹脂層形成用組成物の液安定性の観点から、粒子を含まないことが好ましい。
また、上記水溶性樹脂層の形成に用いられる水溶性樹脂層形成用組成物は、水溶性樹脂層形成用組成物の液安定性の観点から、極性化合物を含むことが好ましい。
極性化合物を含む水溶性樹脂層形成用組成物を用いる場合、上記中間層の形成に用いられる中間層形成用組成物は、上記極性化合物を含んでいても、含んでいなくともよいが、中間層形成用組成物の液安定性の観点から、上記極性化合物を含まないことが好ましい。
【0055】
また、水溶性樹脂層形成用組成物は、粒子の含有量が少ない以外は、上述した中間層形成用組成物と同様に調製することができる。各成分に水溶性溶剤を含有させて粘度を調節し、塗布及び乾燥することで、水溶性樹脂層を好適に形成することができる。
【0056】
<感光性樹脂層>
本開示に係る感光性転写材料は、感光性樹脂層を有する。
本開示における感光性樹脂層は、ポジ型感光性樹脂層である。また、本開示において用いられる感光性樹脂層は、感度及び解像度の観点から、酸分解性樹脂、すなわち、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体と、光酸発生剤とを含む化学増幅ポジ型感光性樹脂層であることが好ましい。
後述するオニウム塩、オキシムスルホネート化合物等の光酸発生剤は、活性放射線(活性光線)に感応して生成される酸が、上記重合体中の保護された酸基の脱保護に対して触媒として作用するので、1個の光量子の作用で生成した酸が、多数の脱保護反応に寄与し、量子収率は1を超え、例えば、10の数乗のような大きい値となり、いわゆる化学増幅の結果として、高感度が得られる。
一方、活性光線に感応する光酸発生剤としてキノンジアジド化合物を用いた場合、逐次型光化学反応によりカルボキシ基を生成するが、その量子収率は必ず1以下であり、化学増幅型には該当しない。
【0057】
〔酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位Aを有する重合体X〕
感光性樹脂層は、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位A(単に「構成単位A」ともいう。)を有する重合体X(単に「重合体X」ともいう。)を含むことが好ましい。
また、感光性樹脂層は、構成単位Aを有する重合体Xに加え、他の重合体を含んでいてもよい。本開示においては、構成単位Aを有する重合体X及び他の重合体をあわせて、「重合体成分」ともいう。
重合体Xは、露光により生じる触媒量の酸等の酸性物質の作用により、重合体X中の酸分解性基で保護された酸基が脱保護反応を受け酸基となる。この酸基により、感光性樹脂層の現像液への溶解が可能となる。
【0058】
重合体Xは、付加重合型の樹脂であることが好ましく、(メタ)アクリル酸又はそのエステルに由来する構成単位を有する重合体であることがより好ましい。なお、(メタ)アクリル酸又はそのエステルに由来する構成単位以外の構成単位、例えば、スチレン化合物に由来する構成単位、ビニル化合物に由来する構成単位等を有していてもよい。
以下に構成単位Aの好ましい態様について説明する。
【0059】
-構成単位A-
上記重合体成分は、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位Aを有する重合体Xを含むことが好ましい。感光性樹脂層が構成単位Aを有する重合体Xを含むことにより、極めて高感度な化学増幅ポジ型の感光性樹脂層とすることができる。
本開示における酸基及び酸分解性基は、公知のものを使用でき、特に限定されない。具体的な酸基としては、カルボキシ基、及び、フェノール性水酸基が好ましく挙げられる。また、酸分解性基としては、酸により比較的分解し易い基(例えば、1-アルコキシアルキル基、テトラヒドロピラニル基、又は、テトラヒドロフラニル基等のアセタール型保護基)又は酸により比較的分解し難い基(例えば、tert-ブチル基等の第三級アルキル基、tert-ブチルオキシカルボニル基等の第三級アルキルオキシカルボニル基(炭酸エステル型保護基))が挙げられる。
これらの中でも、酸分解性基としては、アセタールの形で保護された構造を有する基であることが好ましい。
また、酸分解性基としては、導電パターンの形成に適用した場合における導電配線の線幅のバラツキが抑制される観点から、分子量が300以下の酸分解性基であることが好ましい。
感光性樹脂層に含まれる重合体Xは、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0060】
酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位Aは、感度及び解像度の観点から、下記式A1、式A2、又は式A3により表される構成単位であることが好ましい。
【0061】
【化4】
【0062】
式A1中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R11及びR12の少なくとも一方がアルキル基又はアリール基であり、R13はアルキル基又はアリール基を表し、R11又はR12と、R13とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R14は水素原子又はメチル基を表し、Xは単結合又は二価の連結基を表し、R15は置換基を表し、nは0~4の整数を表す。
式A2中、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R21及びR22の少なくとも一方がアルキル基又はアリール基であり、R23はアルキル基又はアリール基を表し、R21又はR22と、R23とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R24はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシアルキル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基又はシクロアルキル基を表し、mは0~3の整数を表す。
式A3中、R31及びR32はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R31及びR32の少なくとも一方がアルキル基又はアリール基であり、R33はアルキル基又はアリール基を表し、R31又はR32と、R33とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R34は水素原子又はメチル基を表し、Xは単結合又は二価の連結基を表す。
【0063】
式A3中、R31又はR32がアルキル基の場合、炭素数は1~10のアルキル基が好ましい。R31又はR32がアリール基の場合、フェニル基が好ましい。R31及びR32は、それぞれ、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
式A3中、R33は、アルキル基又はアリール基を表し、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。
また、R31~R33におけるアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。
式A3中、R31又はR32と、R33とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R31又はR32と、R33とが連結して環状エーテルを形成することが好ましい。環状エーテルの環員数は特に制限はないが、5又は6であることが好ましく、5であることがより好ましい。
式A3中、Xは単結合又はアリーレン基を表し、単結合が好ましい。アリーレン基は、置換基を有していてもよい。
上記式A3で表される構成単位Aは、アセタール型酸分解性基で保護されたカルボキシ基を有する構成単位である。重合体Xが式A3で表される構成単位Aを含むことで、パターン形成時の感度に優れ、また、解像度がより優れる。
【0064】
式A3中、R34は水素原子又はメチル基を表し、重合体Xのガラス転移温度(Tg)をより低くし得るという観点から、水素原子であることが好ましい。
より具体的には、重合体Xに含まれる構成単位Aの全量に対し、式A3におけるR34が水素原子である構成単位は20質量%以上であることが好ましい。
なお、構成単位A中の、式A3におけるR34が水素原子である構成単位の含有量(含有割合:質量比)は、13C-核磁気共鳴スペクトル(NMR)測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
【0065】
また、式A1~式A3の好ましい態様としては、国際公開第2018/179640号の段落0044~段落0058を参照することができる。
【0066】
式A1~式A3において、酸分解性基は、感度の観点から、環状構造を有する基であることが好ましく、テトラヒドロフラン環又はテトラヒドロピラン環構造を有する基であるがより好ましく、テトラヒドロフラン環構造を有する基であることが更に好ましく、テトラヒドロフラニル基であることが特に好ましい。
【0067】
重合体Xに含まれる構成単位Aは、1種であっても、2種以上であってもよい。
重合体Xにおける構成単位Aの含有量は、重合体成分の全質量に対して、10質量%~70質量%であることが好ましく、15質量%~50質量%であることがより好ましく、20質量%~40質量%であることが更に好ましい。上記範囲であると、解像度がより向上する。
重合体Xが2種以上の構成単位Aを含む場合、上記構成単位Aの含有量は、2種以上の構成単位Aの総含有量を表すものとする。
重合体成分における構成単位Aの含有量(含有割合:質量比)は、13C-NMR測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
【0068】
-酸基を有する構成単位B-
重合体Xは、酸基を有する構成単位B(単に「構成単位B」ともいう。)を含んでいてもよい。
構成単位Bは、酸分解性基で保護されていない酸基、すなわち、保護基を有さない酸基を有する構成単位である。重合体Xが構成単位Bを含むことで、パターン形成時の感度が良好となり、パターン露光後の現像工程においてアルカリ性の現像液に溶けやすくなり、現像時間の短縮化を図ることができる。
本明細書における酸基とは、pKaが12以下のプロトン解離性基を意味する。
酸基のpKaは、感度向上の観点から、10以下が好ましく、6以下がより好ましい。また、酸基のpKaは、-5以上であることが好ましい。
上記酸基としては、カルボキシ基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、スルホ基、フェノール性水酸基、及び、スルホニルイミド基等が例示される。中でも、カルボキシ基又はフェノール性水酸基が好ましく、カルボキシ基がより好ましい。
【0069】
重合体Xに含まれる構成単位Bは、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
重合体Xにおける構成単位Bの含有量は、重合体成分の全質量に対して、0.01質量%~20質量%含むことが好ましく、0.01質量%~10質量%含むことがより好ましく、0.1質量%~5質量%含むことが更に好ましい。上記範囲であると、解像性がより良好となる。
重合体Xが2種以上の構成単位Bを含む場合、上記構成単位Bの含有量は、2種以上の構成単位Bの総含有量を表すものとする。
重合体Xにおける構成単位Bの含有量(含有割合:質量比)は、13C-NMR測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
【0070】
-その他の構成単位C-
重合体Xは、既述の構成単位A及び構成単位B以外の、その他の構成単位C(単に「構成単位C」ともいう。)を、本開示に係る感光性転写材料の効果を損なわない範囲で含むことが好ましい。
構成単位Cを形成するモノマーとしては、特に制限はなく、例えば、スチレン類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、不飽和ジカルボン酸ジエステル、ビシクロ不飽和化合物、マレイミド化合物、不飽和芳香族化合物、共役ジエン系化合物、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物、脂肪族環式骨格を有する基、その他の不飽和化合物を挙げることができる。
構成単位Cを用いて、種類及び含有量の少なくともいずれかを調整することで、重合体Xの諸特性を調整することができる。特に、構成単位Cを含むことで、重合体XのTg、酸価及び親疎水性を容易に調整することができる。
重合体Xは、構成単位Cを1種のみ含んでもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0071】
構成単位Cは、具体的には、スチレン、α-メチルスチレン、アセトキシスチレン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、クロロスチレン、ビニル安息香酸メチル、ビニル安息香酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、アクリロニトリル、又は、エチレングリコールモノアセトアセテートモノ(メタ)アクリレートなどを重合して形成される構成単位を挙げることができる。その他、特開2004-264623号公報の段落0021~段落0024に記載の化合物を挙げることができる。
【0072】
構成単位Cは、解像性の観点から、塩基性基を有する構成単位を含むことが好ましい。
上記塩基性基としては、具体的には、脂肪族アミノ基、芳香族アミノ基、又は、含窒素複素芳香環基などの窒素原子を有する基が挙げられ、脂肪族アミノ基が好ましい。
脂肪族アミノ基としては、第一級アミノ基、第二級アミノ基、又は、第三級アミノ基のいずれであってもよいが、解像性の観点から、第二級アミノ基、又は、第三級アミノ基が好ましい。
【0073】
塩基性基を有する構成単位を形成するモノマーとしては、具体的には、メタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル、メタクリル酸2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル、アクリル酸2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル、メタクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、アクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸N-(3-ジメチルアミノ)プロピル、アクリル酸N-(3-ジメチルアミノ)プロピル、メタクリル酸N-(3-ジエチルアミノ)プロピル、アクリル酸N-(3-ジエチルアミノ)プロピル、メタクリル酸2-(ジイソプロピルアミノ)エチル、メタクリル酸2-モルホリノエチル、アクリル酸2-モルホリノエチル、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド、4-アミノスチレン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、1-ビニルイミダゾール、2-メチル-1-ビニルイミダゾール、1-アリルイミダゾール、1-ビニル-1,2,4-トリアゾール等が挙げられる。中でもメタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルが好ましい。
【0074】
また、構成単位Cとしては、芳香環を有する構成単位、又は、脂肪族環式骨格を有する構成単位が、得られる転写材料の電気特性を向上させる観点で好ましい。これら構成単位を形成するモノマーとして、具体的には、スチレン、α-メチルスチレン、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、及び、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられ、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0075】
また、構成単位Cを形成するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、密着性の観点で好ましい。中でも、炭素数4~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが密着性の観点でより好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、及び、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが挙げられる。
【0076】
構成単位Cの含有量は、重合体成分の全質量に対し、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。下限値としては、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。上記範囲であると、解像度及び密着性がより向上する。
重合体成分が2種以上の構成単位Cを含む場合、上記構成単位Cの含有量は、2種以上の構成単位Cの総含有量を表すものとする。
【0077】
以下、本開示における重合体Xの好ましい例を挙げるが、本開示は以下の例示に限定されない。なお、下記例示化合物における構成単位の比率、重量平均分子量は、好ましい物性を得るために適宜選択される。
【0078】
【化5】
【0079】
-重合体Xのガラス転移温度:Tg-
本開示における重合体Xのガラス転移温度(Tg)は、転写性の観点から、90℃以下であることが好ましく、20℃以上60℃以下であることがより好ましく、30℃以上50℃以下であることが更に好ましい。
【0080】
本開示における重合体のTgを、既述の好ましい範囲に調整する方法としては、例えば、目的とする重合体の各構成単位の単独重合体のTgと各構成単位の質量比より、FOX式を指針にして、目的とする重合体のTgを制御することが可能である。
FOX式について、以下に説明する。
重合体に含まれる第1の構成単位の単独重合体のTgをTg1、第1の構成単位の共重合体における質量分率をW1とし、第2の構成単位の単独重合体のTgをTg2とし、第2の構成単位の共重合体における質量分率をW2としたときに、第1の構成単位と第2の構成単位とを含む共重合体のTg0(K)は、以下の式にしたがって推定することが可能である。
FOX式:1/Tg0=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)
既述のFOX式を用いて、共重合体に含まれる各構成単位の種類と質量分率を調整して、所望のTgを有する共重合体を得ることができる。
また、重合体の重量平均分子量を調整することにより、重合体のTgを調整することも可能である。
【0081】
-重合体Xの酸価-
重合体Xの酸価は、解像性の観点から、0mgKOH/g以上50mgKOH/g以下であることが好ましく、0mgKOH/g以上20mgKOH/g以下であることがより好ましく、0mgKOH/g以上10mgKOH/g以下であることが更に好ましい。
また、重合体Xの酸価は、保存安定性、及び、感光性樹脂層と中間層との密着性の観点から、10mgKOH/g以下であることが好ましく、3mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0082】
本開示における重合体の酸価は、重合体1gあたりの酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムの質量を表したものである。具体的には、測定サンプルをテトラヒドロフラン/水=9/1(体積比)混合溶媒に溶解し、電位差滴定装置(商品名:AT-510、京都電子工業(株)製)を用いて、得られた溶液を25℃において、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定する。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点として、次式により酸価を算出する。
A=56.11×Vs×0.1×f/w
A:酸価(mgKOH/g)
Vs:滴定に要した0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の使用量(mL)
f:0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の力価
w:測定サンプルの質量(g)(固形分換算)
【0083】
-重合体Xの分子量:Mw-
重合体Xの分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、60,000以下であることが好ましい。重合体Xの重量平均分子量が60,000以下であることで、転写材料を転写する際において低温(例えば130℃以下)での転写を実現することができる。
また、重合体Xの重量平均分子量は、2,000~60,000であることが好ましく、3,000~50,000であることがより好ましい。
重合体Xの数平均分子量と重量平均分子量との比(分散度)は、1.0~5.0が好ましく、1.05~3.5がより好ましい。
【0084】
なお、本開示における重合体の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定することができ、測定装置としては、様々な市販の装置を用いることができ、装置の内容、及び、測定技術は公知のものを用いることができる。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による重量平均分子量の測定は、測定装置として、HLC(登録商標)-8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標)Super HZM-M(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)、Super HZ4000(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)、Super HZ3000(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)、Super HZ2000(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)をそれぞれ1本、直列に連結したものを用い、溶離液として、THF(テトラヒドロフラン)を用いることができる。
また、測定条件としては、試料濃度を0.2質量%、流速を0.35ml/min、サンプル注入量を10μL、及び測定温度を40℃とし、示差屈折率(RI)検出器を用いて行うことができる。
検量線は、東ソー(株)製の「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F-40」、「F-20」、「F-4」、「F-1」、「A-5000」、「A-2500」及び「A-1000」の7サンプルのいずれかを用いて作製できる。
【0085】
-重合体Xの製造方法-
重合体Xの製造方法(合成法)は特に限定されないが、一例を挙げると、構成単位Aを形成するためのモノマー、更に必要に応じて、構成単位Bを形成するためのモノマー及び構成単位Cを形成するためのモノマーを含む有機溶剤中、重合開始剤を用いて重合することにより合成することができる。また、いわゆる高分子反応で合成することもできる。
【0086】
-重合体成分又は重合体Xの含有量-
本開示における感光性樹脂層は、密着性の観点から、感光性樹脂層の全質量に対し、上記重合体成分を50質量%~99.9質量%の割合で含むことが好ましく、70質量%~98質量%の割合で含むことがより好ましい。
また、感光性樹脂層は、密着性の観点から、感光性樹脂層の全質量に対し、重合体Xを50質量%~99.9質量%の割合で含むことが好ましく、70質量%~98質量%の割合で含むことがより好ましい。
【0087】
〔他の重合体〕
感光性樹脂層は、重合体成分として、重合体Xに加え、本開示に係る感光性転写材料の効果を損なわない範囲において、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を含まない重合体(「他の重合体」ともいう。)を更に含んでいてもよい。
本開示における重合体成分は、特に述べない限り、重合体Xに加え、必要に応じて添加される他の重合体を含めたものを意味するものとする。なお、後述する架橋剤、分散剤及び界面活性剤に該当する化合物は、高分子化合物であっても、重合体成分に含まないものとする。
感光性樹脂層が他の重合体を含む場合、他の重合体の含有量は、全重合体成分中、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。
【0088】
感光性樹脂層は、重合体Xに加え、他の重合体を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。
他の重合体として、例えばポリヒドロキシスチレンを用いることができ、市販されている、SMA 1000P、SMA 2000P、SMA 3000P、SMA 1440F、SMA 17352P、SMA 2625P、及び、SMA 3840F(以上、サートマー社製)、ARUFON UC-3000、ARUFON UC-3510、ARUFON UC-3900、ARUFON UC-3910、ARUFON UC-3920、及び、ARUFON UC-3080(以上、東亞合成(株)製)、並びに、Joncryl 690、Joncryl 678、Joncryl 67、及び、Joncryl 586(以上、BASF社製)等を用いることもできる。
【0089】
〔光酸発生剤〕
感光性樹脂層は、光酸発生剤を含むことが好ましい。
本開示で使用される光酸発生剤としては、紫外線、遠紫外線、X線、電子線等の活性光線を照射することにより酸を発生することができる化合物である。
本開示で使用される光酸発生剤としては、波長300nm以上、好ましくは波長300nm~450nmの活性光線に感応し、酸を発生する化合物が好ましいが、その化学構造は制限されない。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない光酸発生剤についても、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線に感応し、酸を発生する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。
本開示で使用される光酸発生剤としては、pKaが4以下の酸を発生する光酸発生剤が好ましく、pKaが3以下の酸を発生する光酸発生剤がより好ましく、pKaが2以下の酸を発生する光酸発生剤が特に好ましい。pKaの下限値は特に定めないが、例えば、-10.0以上であることが好ましい。
【0090】
光酸発生剤としては、イオン性光酸発生剤及び非イオン性光酸発生剤を挙げることができる。
イオン性光酸発生剤の例として、ジアリールヨードニウム塩類及びトリアリールスルホニウム塩類等のオニウム塩化合物、第四級アンモニウム塩類等を挙げることができる。これらのうち、オニウム塩化合物が好ましく、トリアリールスルホニウム塩類及びジアリールヨードニウム塩類が特に好ましい。
イオン性光酸発生剤としては、特開2014-85643号公報の段落0114~段落0133に記載のイオン性光酸発生剤も好ましく用いることができる。
非イオン性光酸発生剤の例としては、トリクロロメチル-s-トリアジン類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及び、オキシムスルホネート化合物などを挙げることができる。これらの中でも、感度、解像度、及び、密着性の観点から、光酸発生剤がオキシムスルホネート化合物であることが好ましい。トリクロロメチル-s-トリアジン類、ジアゾメタン化合物及びイミドスルホネート化合物の具体例としては、特開2011-221494号公報の段落0083~段落0088に記載の化合物が例示できる。
【0091】
オキシムスルホネート化合物としては、国際公開第2018/179640号の段落0084~段落0088に記載されたものを好適に用いることができる。
【0092】
光酸発生剤としては、感度及び解像度の観点から、オニウム塩化合物、及び、オキシムスルホネート化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、オキシムスルホネート化合物を含むことがより好ましい。
また、好ましい光酸発生剤として、例えば、以下の構造の光酸発生剤が挙げられる。
【0093】
【化6】
【0094】
感光性樹脂層は、光酸発生剤を、1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
感光性樹脂層における光酸発生剤の含有量は、感度及び解像度の観点から、感光性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.5質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0095】
〔その他の添加剤〕
本開示における感光性樹脂層は、重合体X、光酸発生剤及び溶剤に加え、必要に応じて、その他の添加剤を含むことができる。
その他の添加剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、可塑剤、増感剤、ヘテロ環状化合物、アルコキシシラン化合物、塩基性化合物、防錆剤、界面活性剤等が挙げられる。
可塑剤、増感剤、ヘテロ環状化合物及びアルコキシシラン化合物としては、国際公開第2018/179640号の段落0097~段落0119に記載されたものが挙げられる。
更に、本開示に係る感光性転写材料における感光性樹脂層は、溶剤を含んでいてもよい。溶剤を含む感光性樹脂組成物により感光性樹脂層を形成した場合、溶剤が残留することもある。
感光性樹脂層における溶剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対し、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。
【0096】
-塩基性化合物-
感光性樹脂層は、塩基性化合物を更に含むことが好ましい。
塩基性化合物としては、化学増幅レジストで用いられる塩基性化合物の中から任意に選択して使用することができる。例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、第四級アンモニウムヒドロキシド、及び、カルボン酸の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。これらの具体例としては、特開2011-221494号公報の段落0204~段落0207に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
また、塩基性化合物としては、N-シクロヘキシル-N’-[2-(4-モルホリニル)エチル]チオ尿素(CMTU)を好適に用いることができる。また、CMTUの市販品としては、東洋化成工業(株)製のものが挙げられる。
【0097】
塩基性化合物としては、導電パターンの形成に適用した場合における導電配線の直線性の観点からは、ベンゾトリアゾール化合物が好ましい。
ベンゾトリアゾール化合物としては、ベンゾトリアゾール骨格を有する化合物であれば制限されず、公知のベンゾトリアゾール化合物を用いることができる。
ベンゾトリアゾール化合物としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、5-カルボキシベンゾトリアゾール、1-(ヒドロキシメチル)-1H-ベンゾトリアゾール、1-アセチル-1H-ベンゾトリアゾール、1-アミノベンゾトリアゾール、9-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イルメチル)-9H-カルバゾール、1-クロロ-1H-ベンゾトリアゾール、1-(2-ピリジニル)ベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、1-メチルベンゾトリアゾール、1-エチルベンゾトリアゾール、1-(1’-ヒドロキシエチル)ベンゾトリアゾール、1-(2’-ヒドロキシエチル)ベンゾトリアゾール、1-プロピルベンゾトリアゾール、1-(1’-ヒドロキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1-(2’-ヒドロキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1-(3’-ヒドロキシプロピル)ベンゾトリアゾール、4-ヒドロキシ-1H-ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、メチルベンゾトリアゾール-5-カルボキシレート、エチルベンゾトリアゾール-5-カルボキシレート、t-ブチル-ベンゾトリアゾール-5-カルボキシレート、シクロペンチルエチル-ベンゾトリアゾール-5-カルボキシレート、1H-ベンゾトリアゾール-1-アセトニトリル、1H-ベンゾトリアゾール-1-カルボキシアルデヒド、2-メチル-2H-ベンゾトリアゾール、2-エチル-2H-ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0098】
感光性樹脂層は、塩基性化合物を、1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
塩基性化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.001質量%~5質量%であることが好ましく、0.005質量%~3質量%であることがより好ましい。
【0099】
-界面活性剤-
感光性樹脂層は、厚さ均一性の観点から界面活性剤を含有することが好ましい。
界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性(非イオン性)、及び、両性界面活性剤が挙げられる。好ましい界面活性剤はノニオン性界面活性剤である。
ノニオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル類、シリコーン系、フッ素系界面活性剤を挙げることができる。
【0100】
界面活性剤としては、例えば、国際公開第2018/179640号の段落0120~段落0125に記載の界面活性剤を用いることができる。
また、界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF-552又はF-554(以上、DIC(株)製)を用いることができる。
その他、特許第4502784号公報の段落0017、特開2009-237362号公報の段落0060~段落0071に記載の界面活性剤も用いることができる。
【0101】
感光性樹脂層は、界面活性剤を、1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
界面活性剤の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.001質量%~10質量%であることが好ましく、0.01質量%~3質量%であることがより好ましい。
【0102】
また、本開示における感光性樹脂層には、その他の添加剤として、金属酸化物粒子、酸化防止剤、分散剤、酸増殖剤、現像促進剤、導電性繊維、着色剤、熱ラジカル重合開始剤、熱酸発生剤、紫外線吸収剤、増粘剤、架橋剤、及び、有機又は無機の沈殿防止剤などの公知の添加剤を更に加えることができる。
これらの成分の好ましい態様については特開2014-85643号公報の段落0165~段落0184にそれぞれ記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0103】
<<感光性樹脂層の平均厚さ>>
感光性樹脂層の平均厚さは、0.5μm~20μmが好ましい。感光性樹脂層の厚みが20μm以下であるとパターンの解像度がより優れ、0.5μm以上であるとパターン直線性の観点から好ましい。
また、感光性樹脂層の平均厚さとしては、0.8μm~15μmがより好ましく、1.0μm~10μmが特に好ましい。
本開示における各層の平均厚さの測定方法は、転写材料の面方向に対し垂直な方向の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、測定するものとする。また、平均厚さは、厚さを10点以上測定し、その平均値とする。
【0104】
<<感光性樹脂層の形成方法>>
本開示における感光性樹脂層は、感光性樹脂層の形成に用いる成分と、溶剤とを含有する感光性樹脂組成物を調製し、塗布及び乾燥して形成することができる。各成分を、それぞれ予め溶剤に溶解させた溶液とした後、得られた溶液を所定の割合で混合して組成物を調製することもできる。以上の如くして調製した組成物は、例えば、孔径0.2μm~30μmのフィルター等を用いてろ過を行ってもよい。
感光性樹脂組成物を仮支持体又はカバーフィルム上に塗布し、乾燥させることで、本開示における感光性樹脂層を形成することができる。
塗布方法は特に限定されず、スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布、インクジェット塗布などの公知の方法で塗布することができる。
また、仮支持体又はカバーフィルム上に後述の中間層又はその他の層を形成した上に、感光性樹脂層を形成することもできる。
【0105】
〔感光性樹脂組成物〕
感光性樹脂組成物は、感光性樹脂層の形成に用いる成分と、溶剤とを含むことが好ましい。各成分に溶剤を含有させて粘度を調節し、塗布及び乾燥することで、感光性樹脂層を好適に形成することができる。
【0106】
-溶剤-
溶剤としては、公知の溶媒を使用でき、例えば、国際公開第2018/179640号の段落0092~段落0094に記載された溶剤を用いることができる。
【0107】
また、特開2018-177889公報の段落0014に記載された20℃における蒸気圧が1kPa以上16kPa以下の溶剤を好ましく用いることができる。
本開示に用いることができる溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種を併用してもよい。
【0108】
感光性樹脂組成物を塗布する際における溶剤の含有量は、感光性樹脂組成物中の全固形分100質量部に対し、50質量部~1,900質量部であることが好ましく、100質量部~900質量部であることがより好ましい。
【0109】
<仮支持体>
本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体を有する。
仮支持体は、感光性樹脂層を支持し、剥離可能な支持体である。
本開示に用いられる仮支持体は、感光性樹脂層をパターン露光する場合において、仮支持体を介して感光性樹脂層を露光し得る観点から光透過性を有することが好ましい。
光透過性を有するとは、パターン露光に使用する光の主波長の透過率が50%以上であることを意味し、パターン露光に使用する光の主波長の透過率は、露光感度向上の観点から、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。透過率の測定方法としては、大塚電子(株)製MCPD Seriesを用いて測定する方法が挙げられる。
仮支持体としては、ガラス基板、樹脂フィルム、紙等が挙げられ、強度及び可撓性等の観点から、樹脂フィルムが特に好ましい。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。中でも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0110】
仮支持体の平均厚さは、特に限定されず、5μm~200μmの範囲が好ましく、取扱い易さ、汎用性などの点で、10μm~150μmの範囲がより好ましい。
仮支持体の厚さは、支持体としての強度、回路配線形成用基板との貼り合わせに求められる可撓性、最初の露光工程で要求される光透過性などの観点から、材質に応じて選択すればよい。
【0111】
仮支持体の好ましい態様については、例えば、特開2014-85643号公報の段落0017~段落0018に記載があり、この公報の内容は本開示に組み込まれる。
【0112】
<カバーフィルム>
本開示に係る感光性転写材料は、感光性転写材料における仮支持体が設けられた側の面とは反対側の面に、カバーフィルムを有することが好ましい。
カバーフィルムとしては、樹脂フィルム、紙等が挙げられ、強度及び可撓性等の観点から、樹脂フィルムが特に好ましい。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。中でも、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0113】
カバーフィルムの平均厚さは特に限定されず、例えば、1μm~2mmのものが好ましく挙げられる。
【0114】
<その他の層>
本開示に係る感光性転写材料は、上述した以外の層(以下、「その他の層」ともいう。)を有していてもよい。その他の層としては、コントラストエンハンスメント層、熱可塑性樹脂層等を挙げることができる。
コントラストエンハンスメント層の好ましい態様については国際公開第2018/179640号の段落0134、熱可塑性樹脂層の好ましい態様については特開2014-85643号公報の段落0189~段落0193、及び、更に他の層の好ましい態様については特開2014-85643号公報の段落0194~段落0196にそれぞれ記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0115】
ここで図1を参照して、本開示に係る感光性転写材料の層構成の一例を概略的に示す。
図1に示す感光性転写材料100は、仮支持体12と、感光性樹脂層14-1及び中間層14-2を積層してなる転写層14と、カバーフィルム16とがこの順に積層されている。以下、本開示において「転写層」と記載した場合は、積層された感光性樹脂層及び中間層の両方を表すものとする。
【0116】
(感光性転写材料の製造方法)
本開示に係る感光性転写材料の製造方法は、特に制限はなく、公知の製造方法、例えば、公知の各層の形成方法等を用いることができる。
中でも、本開示に係る感光性転写材料の製造方法としては、中間層形成用組成物を仮支持体上に塗布及び乾燥し中間層を形成する工程、並びに、感光性樹脂組成物を中間層上に塗布及び乾燥し感光性樹脂層を形成する工程を含む方法が好ましく挙げられる。
また、本開示に係る感光性転写材料の製造方法は、上記感光性樹脂層を形成する工程の後に、上記感光性樹脂層上にカバーフィルムを設ける工程を更に含むことが好ましい。
【0117】
(樹脂パターンの製造方法、及び、回路配線の製造方法)
本開示に係る樹脂パターンの製造方法は、本開示に係る感光性転写材料を用いた樹脂パターンの製造方法であれば、特に制限はないが、本開示に係る感光性転写材料における上記仮支持体に対して感光性樹脂層を有する側の最外層を基板に接触させて貼り合わせる工程(以下、「貼り合わせ工程」ということがある。)と、上記感光性樹脂層をパターン露光する工程(以下、「露光工程」ということがある。)と、露光された上記感光性樹脂層を現像してパターンを形成する工程(以下、「現像工程」ということがある。)と、をこの順に含むことが好ましい。
また、本開示に係る樹脂パターンの製造方法における上記基板は、導電層を有する基板であることが好ましく、表面に導電層を有する基板であることがより好ましい。
本開示に係る回路配線の製造方法は、本開示に係る感光性転写材料を用いる方法であればよいが、本開示に係る感光性転写材料の、上記仮支持体に対して感光性樹脂層を有する側の最外層を、導電層を有する基板に貼り合わせる工程(以下、「貼り合わせ工程」ということがある。)と、貼り合わせた上記感光性転写材料における上記感光性樹脂層をパターン露光する工程と、パターン露光された上記感光性樹脂層を少なくとも現像して樹脂パターンを形成する工程と、上記樹脂パターンが配置されていない領域における上記基板をエッチング処理する工程(以下、「エッチング工程」ということがある。)と、をこの順に含むことが好ましい。
本開示に係る回路配線の製造方法における上記基板は、表面に上記導電層を有する基板であることが好ましい。
【0118】
また、本開示に係る回路配線の製造方法は、上記貼り合わせ工程、上記露光工程、上記現像工程、及び、上記エッチング工程の4工程を1セットとして、複数回繰り返す態様も好ましく挙げられる。
更に、後述するように基板を再利用(リワーク)できるため、本開示に係る回路配線の製造方法は、上記貼り合わせ工程、上記露光工程、上記現像工程、及び、上記エッチング工程の4工程を行った後、上記樹脂パターンに対して上記露光工程を行い、上記現像工程、及び、上記エッチング工程を更に行う態様も好ましく挙げられる。
【0119】
以下、リワークについて説明する。
上記感光性樹脂層は、活性光線を照射していない部分を像として残すポジ型である。ポジ型感光性樹脂層では、活性光線を照射することにより、例えば活性光線を照射されて酸を発生する感光剤などを用いて露光部の溶解性を高めるため、パターン露光時点では露光部及び未露光部がいずれも硬化せず、得られたパターン形状が不良であった場合には全面露光などによって基板を再利用(リワーク)できる。
上記回路配線の製造方法の実施形態としては、国際公開第2006/190405号を参考にすることができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0120】
<貼り合わせ工程>
本開示に係る樹脂パターンの製造方法、又は、本開示に係る回路配線の製造方法は、本開示に係る感光性転写材料における上記仮支持体に対して感光性樹脂層を有する側の最外層を、基板、好ましくは導電層を有する基板に接触させて貼り合わせる工程(貼り合わせ工程)を含むことが好ましい。
上記貼り合わせ工程においては、上記導電層と、本開示に係る感光性転写材料における上記仮支持体に対して感光性樹脂層を有する側の最外層と、が接触するように圧着させることが好ましい。上記態様であると、露光及び現像後のパターン形成された感光性樹脂層を、導電層をエッチングする際のエッチングレジストとして好適に用いることができる。
上記基板と上記感光性転写材料とを圧着する方法としては、特に制限はなく、公知の転写方法、及び、ラミネート方法を用いることができる。
感光性転写材料の基板への貼り合わせは、感光性転写材料の、感光性樹脂層を有する側の最外層を基板上に重ね、ロール等による加圧及び加熱することに行われることが好ましい。貼り合わせには、ラミネーター、真空ラミネーター、及び、より生産性を高めることができるオートカットラミネーター等の公知のラミネーターを使用することができる。本開示に係る回路配線の製造方法は、ロールツーロール方式により行われることが好ましい。そのため、基板を構成する基材は、樹脂フィルムであることが好ましい。
以下、ロールツーロール方式について説明する。
ロールツーロール方式とは、基板として、巻き取り及び巻き出しが可能な基板を用い、回路配線の製造方法に含まれるいずれかの工程の前に、基板又は基板を含む構造体を巻き出す工程(「巻き出し工程」ともいう。)と、いずれかの工程の後に、基材又は基板を含む構造体を巻き取る工程(「巻き取り工程」ともいう。)と、を含み、少なくともいずれかの工程(好ましくは、全ての工程、又は加熱工程以外の全ての工程)を、基材又は基板を含む構造体を搬送しながら行う方式をいう。
巻き出し工程における巻き出し方法、及び巻き取り工程における巻取り方法としては、特に制限されず、ロールツーロール方式を適用する製造方法において、公知の方法を用いればよい。
【0121】
本開示に用いられる基板は、導電層を有する基板であることが好ましく、基材の表面に導電層を有する基板であることがより好ましい。
基板は、ガラス、シリコン、フィルムなどの基材上に、導電層を有し、必要により任意の層が形成されてもよい。
基材は透明であることが好ましい。
基材の屈折率は、1.50~1.52であることが好ましい。
基材は、ガラス基材等の透光性基材で構成されていてもよく、コーニング社のゴリラガラスに代表される強化ガラスなどを用いることができる。また、上述の透明基材としては、特開2010-86684号公報、特開2010-152809号公報及び特開2010-257492号公報に用いられている材料を好ましく用いることができる。
基材として樹脂フィルム基材を用いる場合は、光学的に歪みが小さい基材、及び、透明度が高い基材を用いることがより好ましい。具体的な素材としては、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマーを挙げることができる。
【0122】
基材上に導電層を有する基板においては、ロールツーロール方式で製造する観点から、フィルム基材であることが好ましい。本開示に係る回路配線の製造方法は、タッチパネル用の回路配線である場合、基材がシート状樹脂組成物であることが特に好ましい。
【0123】
基材上に形成されている導電層としては、一般的な回路配線又はタッチパネル配線に用いられる任意の導電層を挙げることができる。
導電層としては、導電性及び細線形成性の観点から、金属層、導電性金属酸化物層、グラフェン層、カーボンナノチューブ層、及び、導電ポリマー層よりなる群から選ばれた少なくとも1種の層であることが好ましく挙げられ、金属層であることがより好ましく挙げられ、銅層、又は、銀層であることが特に好ましく挙げられる。
また、基材上に導電層を1層有していても、2層以上有していてもよい。2層以上の場合は、異なる材質の導電層を有することが好ましい。
導電層の材料としては、金属及び導電性金属酸化物などを挙げることができる。
金属としては、Al、Zn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mo、Ag、Au等を挙げることができる。
導電性金属酸化物としては、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、SiO等を挙げることができる。なお、本開示における「導電性」とは、体積抵抗率が1×10Ωcm未満であることをいい、体積抵抗率が1×10Ωcm未満であることが好ましい。
【0124】
本開示に係る回路配線の製造方法において、基材上に複数の導電層を有する基板を用いる場合、複数の導電層のうち少なくとも一つの導電層は導電性金属酸化物を含むことが好ましい。
導電層としては、静電容量型タッチパネルに用いられる視認部のセンサーに相当する電極パターン又は周辺取り出し部の配線であることが好ましい。
【0125】
<露光工程>
本開示に係る樹脂パターンの製造方法、又は、本開示に係る回路配線の製造方法は、上記貼り合わせる工程後、上記感光性樹脂層をパターン露光する工程(露光工程)を含むことが好ましい。
【0126】
本開示においてパターンの詳細な配置及び具体的サイズは特に制限されない。本開示に係る回路配線の製造方法により製造される回路配線を有する入力装置を備えた表示装置(例えばタッチパネル)の表示品質を高め、また、取り出し配線の占める面積をできるだけ小さくしたいことから、パターンの少なくとも一部(特にタッチパネルの電極パターン及び取り出し配線の部分)は100μm以下の細線であることが好ましく、70μm以下の細線であることが更に好ましい。
【0127】
露光に使用する光源としては、感光性樹脂層を露光可能な波長域の光(例えば、365nm、405nm等)を照射するものであれば、適宜選定して用いることができる。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、LED(Light Emitting Diode)等が挙げられる。
【0128】
露光量としては、5mJ/cm~200mJ/cmであることが好ましく、10mJ/cm~100mJ/cmであることがより好ましい。
【0129】
露光工程においては、感光性樹脂層から仮支持体を剥離した後にパターン露光してもよく、仮支持体を剥離する前に、仮支持体を介してパターン露光し、その後、仮支持体を剥離してもよい。感光性樹脂層とマスクとの接触によるマスク汚染の防止、及びマスクに付着した異物による露光への影響を避けるためには、仮支持体を剥離せずにパターン露光することが好ましい。なお、パターン露光は、マスクを介した露光でもよいし、レーザー等を用いたダイレクト露光でもよい。
【0130】
<現像工程>
本開示に係る樹脂パターンの製造方法、又は、本開示に係る回路配線の製造方法は、上記露光する工程後、露光された上記感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程(現像工程)を含むことが好ましい。
また、上記感光性転写材料が中間層を有する場合、現像工程においては、露光された部分の中間層も、露光された感光性樹脂層とともに除去される。更に、現像工程においては、未露光部の中間層も現像液に溶解あるいは分散する形で除去されてもよい。
【0131】
上記現像工程における露光された上記感光性樹脂層の現像は、現像液を用いて行うことができる。
現像液としては、感光性樹脂層の非画像部を除去することができれば特に制限はなく、例えば、特開平5-72724号公報に記載の現像液など、公知の現像液を使用することができる。なお、現像液は感光性樹脂層の露光部(ポジ型)が溶解型の現像挙動をする現像液が好ましい。例えば、pKa=7~13の化合物を0.05mol/L(リットル)~5mol/Lの濃度で含むアルカリ水溶液系の現像液が好ましい。現像液は、更に、水溶性の有機溶剤、界面活性剤等を含有してもよい。本開示において好適に用いられる現像液としては、例えば、国際公開第2015/093271号の段落0194に記載の現像液が挙げられる。
【0132】
現像方式としては、特に制限はなくパドル現像、シャワー現像、シャワー及びスピン現像、ディップ現像等のいずれでもよい。ここで、シャワー現像について説明すると、露光後の感光性樹脂層に現像液をシャワーにより吹き付けることにより、露光部分を除去することができる。また、現像の後に、洗浄剤などをシャワーにより吹き付け、ブラシなどで擦りながら、現像残渣を除去することが好ましい。現像液の液温度は20℃~40℃が好ましい。
【0133】
更に、現像して得られた感光性樹脂層を含むパターンを加熱処理するポストベーク工程を有していてもよい。
ポストベークの加熱は8.1kPa~121.6kPaの環境下で行うことが好ましく、50.66kPa以上の環境下で行うことがより好ましい。一方、111.46kPa以下の環境下で行うことがより好ましく、101.3kPa以下の環境下で行うことが特に好ましい。
ポストベークの温度は、80℃~250℃であることが好ましく、110℃~170℃であることがより好ましく、130℃~150℃であることが特に好ましい。
ポストベークの時間は、1分~30分であることが好ましく、2分~10分であることがより好ましく、2分~4分であることが特に好ましい。
ポストベークは、空気環境下で行っても、窒素置換環境下で行ってもよい。
【0134】
また、後述のエッチング工程の前に、ポスト露光工程等、その他の工程を有していてもよい。
【0135】
<エッチング工程>
本開示に係る回路配線の製造方法は、上記樹脂パターンが配置されていない領域における基板をエッチング処理する工程(エッチング工程)を含むことが好ましい。
【0136】
上記エッチング工程では、上記現像工程により上記感光性樹脂層から形成されたパターンを、エッチングレジストとして使用し、上記導電層のエッチング処理を行う。
エッチング処理の方法としては、特開2010-152155号公報の段落0048~段落0054等に記載の方法、公知のプラズマエッチング等のドライエッチングによる方法など、公知の方法を適用することができる。
【0137】
例えば、エッチング処理の方法としては、一般的に行われている、エッチング液に浸漬するウェットエッチング法が挙げられる。ウェットエッチングに用いられるエッチング液は、エッチングの対象に合わせて酸性タイプ又はアルカリ性タイプのエッチング液を適宜選択すればよい。
酸性タイプのエッチング液としては、塩酸、硫酸、フッ酸、リン酸等の酸性成分単独の水溶液、酸性成分と塩化第二鉄、フッ化アンモニウム、過マンガン酸カリウム等の塩の混合水溶液等が例示される。酸性成分は、複数の酸性成分を組み合わせた成分を使用してもよい。
アルカリ性タイプのエッチング液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、有機アミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドのような有機アミンの塩等のアルカリ成分単独の水溶液、アルカリ成分と過マンガン酸カリウム等の塩の混合水溶液等が例示される。アルカリ成分は、複数のアルカリ成分を組み合わせた成分を使用してもよい。
【0138】
エッチング液の温度は特に制限されないが、45℃以下であることが好ましい。本開示においてエッチングマスク(エッチングパターン)として使用される樹脂パターンは、45℃以下の温度域における酸性及びアルカリ性のエッチング液に対して特に優れた耐性を発揮することが好ましい。したがって、エッチング工程中に感光性樹脂層が剥離することが防止され、感光性樹脂層の存在しない部分が選択的にエッチングされることになる。
エッチング工程後、工程ラインの汚染を防ぐために、必要に応じて、エッチング処理された基板を洗浄する洗浄工程、及び、洗浄された基板を乾燥する乾燥工程を行ってもよい。
【0139】
<除去工程>
本開示に係る回路配線の製造方法は、樹脂パターンを除去する工程(除去工程)を行うことが好ましい。
除去工程は、特に制限はなく、必要に応じて行うことができるが、エッチング工程の後に行うことが好ましい。
残存する感光性樹脂層を除去する方法としては特に制限はないが、薬品処理により除去する方法を挙げることができ、除去液を用いることが特に好ましく挙げることができる。
感光性樹脂層の除去方法としては、好ましくは30℃~80℃、より好ましくは50℃~80℃にて撹拌中の除去液に感光性樹脂層などを有する基板を1分~30分間浸漬する方法が挙げられる。
【0140】
除去液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ成分、又は、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物、第3級アミン化合物、第4級アンモニウム塩化合物等の有機アルカリ成分を水、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン又はこれらの混合溶液に溶解させた除去液が挙げられる。
また、除去液を使用し、スプレー法、シャワー法、パドル法等により除去してもよい。
【0141】
<<感光性樹脂層の全面露光>>
上記除去工程の前に、上記感光性樹脂層を全面露光する工程(「全面露光工程」ともいう。)を含むことが好ましい。更に必要に応じて、全面露光した感光性樹脂層を加熱する工程(「加熱工程」ともいう。)を含んでもよい。全面露光工程及び加熱工程は、エッチング工程後かつ除去工程前に行われることが好ましい。
エッチング工程の後に、エッチングマスクとして使用した感光性樹脂層を全面露光することにより、除去液への溶解性及び除去液の浸透性が向上し、除去液を長時間使用した場合においても除去性に優れる。また、更に、加熱工程を含む場合、加熱工程により、より光酸発生剤の反応速度、及び、発生した酸とポジ型感光性樹脂との反応速度を向上することができ、結果、除去性能が向上する。
【0142】
全面露光工程における露光に使用する光源としては、特に制限はなく、公知の露光光源を用いることができる。除去性の観点から、上記露光工程と同じ波長の光を含む光源を用いることが好ましい。
【0143】
全面露光工程における露光量としては、除去性の観点から、5mJ/cm~1,000mJ/cmであることが好ましく、10mJ/cm~800mJ/cmであることがより好ましく、100mJ/cm~500mJ/cmであることが特に好ましい。
【0144】
全面露光工程における露光量としては、除去性の観点から、上記露光工程における露光量以上であることが好ましく、上記露光工程における露光量よりも多いことがより好ましい。
【0145】
<その他の工程>
本開示に係る回路配線の製造方法は、上述した以外の任意の工程(その他の工程)を含んでもよい。例えば、以下のような工程が挙げられるが、これらの工程に制限されない。
また、本開示における露光工程、現像工程、及びその他の工程の例としては、特開2006-23696号公報の段落0035~段落0051に記載の方法を本開示においても好適に用いることができる。
【0146】
<<カバーフィルム剥離工程>>
本開示に係る樹脂パターンの製造方法、又は、本開示に係る回路配線の製造方法は、本開示に係る感光性転写材料がカバーフィルムを有する場合、上記感光性転写材料のカバーフィルムを剥離する工程(「カバーフィルム剥離工程」ということがある。)を含むことが好ましい。カバーフィルムを剥離する方法は、制限されず、公知の方法を適用することができる。
【0147】
<<可視光線反射率を低下させる工程>>
本開示に係る回路配線の製造方法は、基材上の複数の導電層の一部又は全ての可視光線反射率を低下させる処理をする工程を含むことが可能である。
可視光線反射率を低下させる処理としては、酸化処理などを挙げることができる。例えば、銅を酸化処理して酸化銅とすることで、黒化することにより、可視光線反射率を低下させることができる。
可視光線反射率を低下させる処理の好ましい態様については、特開2014-150118号公報の段落0017~段落0025、並びに、特開2013-206315号公報の段落0041、段落0042、段落0048及び段落0058に記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0148】
<<絶縁膜を形成する工程、絶縁膜上に新たな導電層を形成する工程>>
本開示に係る回路配線の製造方法は、形成した回路配線上に絶縁膜を形成する工程と、絶縁膜上に新たな導電層を形成する工程と、を含むことも好ましい。
このような構成により、上述の第二の電極パターンを、第一の電極パターンと絶縁しつつ、形成することができる。
絶縁膜を形成する工程については、特に制限はなく、公知の永久膜を形成する方法を挙げることができる。また、絶縁性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの絶縁膜を形成してもよい。
絶縁膜上に新たな導電層を形成する工程については、特に制限はない。導電性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの新たな導電層を形成してもよい。
【0149】
本開示に係る回路配線の製造方法は、基材の両方の表面にそれぞれ複数の導電層を有する基板を用い、基材の両方の表面に形成された導電層に対して逐次又は同時に回路形成することも好ましい。このような構成により、基材の一方の表面に第一の導電パターン、もう一方の表面に第二の導電パターンを形成したタッチパネル用回路配線を形成することができる。また、このような構成のタッチパネル用回路配線を、ロールツーロールで基材の両面から形成することも好ましい。
【0150】
本開示に係る回路配線の製造方法により製造される回路配線は、種々の装置に適用することができる。本開示に係る回路配線の製造方法により製造される回路配線を備えた装置としては、例えば、入力装置等が挙げられ、タッチパネルであることが好ましく、静電容量型タッチパネルであることがより好ましい。また、上記入力装置は、有機EL表示装置、液晶表示装置等の表示装置に適用することができる。
【0151】
(タッチパネルの製造方法)
本開示に係るタッチパネルの製造方法は、本開示に係る感光性転写材料を用いる方法であればよいが、本開示に係る感光性転写材料における上記仮支持体に対して感光性樹脂層を有する側の最外層を導電層を有する基板に接触させて貼り合わせる工程(貼り合わせ工程)と、上記感光性樹脂層をパターン露光する工程(露光工程)と、露光された上記感光性樹脂層を現像して樹脂パターンを形成する工程(現像工程)と、上記樹脂パターンが配置されていない領域における上記基板をエッチング処理する工程(エッチング工程)と、をこの順に含むことが好ましい。
【0152】
本開示に係るタッチパネルの製造方法における、各工程の具体的な態様、及び、各工程を行う順序等の実施態様については、上述の「回路配線の製造方法」の項において説明した通りであり、好ましい態様も同様である。
本開示に係るタッチパネルの製造方法は、上述した以外は、公知のタッチパネルの製造方法を参照することができる。
また、本開示に係るタッチパネルの製造方法は、上述した以外の任意の工程(その他の工程)を含んでもよい。
【0153】
本開示に係るタッチパネルの製造方法において用いられるマスクのパターンの一例を、図2及び図3に示す。
図2に示されるパターンA、及び、図3に示されるパターンBにおいて、SL及びGは非画像部(遮光部)であり、DLはアライメント合わせの枠を仮想的に示したものである。本開示に係るタッチパネルの製造方法において、例えば、図2に示されるパターンAを有するマスクを介して感光性樹脂層を露光することで、SL及びGに対応するパターンAを有する回路配線が形成されたタッチパネルを製造できる。具体的には、国際公開第2016/0190405号の図1に記載の方法で作製できる。製造されたタッチパネルの一例においては、Gは透明電極(タッチパネル用電極)が形成される部分であり、SLは周辺取出し部の配線が形成される部分である。
【0154】
本開示に係るタッチパネルは、本開示に係る回路配線の製造方法により製造された回路配線を少なくとも有するタッチパネルである。また、本開示に係るタッチパネルは、透明基板と、電極と、絶縁層又は保護層とを少なくとも有することが好ましい。
本開示に係るタッチパネルにおける検出方法としては、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、電磁誘導方式、及び、光学方式など公知の方式いずれでもよい。中でも、静電容量方式が好ましい。
タッチパネル型としては、いわゆる、インセル型(例えば、特表2012-517051号公報の図5図6図7図8に記載のもの)、いわゆる、オンセル型(例えば、特開2013-168125号公報の図19に記載のもの、特開2012-89102号公報の図1図5に記載のもの)、OGS(One Glass Solution)型、TOL(Touch-on-Lens)型(例えば、特開2013-54727号公報の図2に記載のもの)、その他の構成(例えば、特開2013-164871号公報の図6に記載のもの)、各種アウトセル型(いわゆる、GG、G1・G2、GFF、GF2、GF1、G1Fなど)等を挙げることができる。
本開示に係るタッチパネルとしては、例えば、特開2017-120345号公報の段落0229に記載のものが挙げられる。
【実施例
【0155】
以下に実施例を挙げて本発明の実施形態を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の実施形態の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の実施形態の範囲は以下に示す具体例に限定されない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0156】
<重合体の合成>
以下の合成例において、以下の略語はそれぞれ以下の化合物を表す。
ATHF:2-テトラヒドロフラニルアクリレート(合成品)
AA:アクリル酸(富士フイルム和光純薬(株)製)
EA:アクリル酸エチル(富士フイルム和光純薬(株)製)
MMA:メタクリル酸メチル(富士フイルム和光純薬(株)製)
CHA:アクリル酸シクロヘキシル(富士フイルム和光純薬(株)製)
PMPMA:メタクリル酸1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル(富士フイルム和光純薬(株)製)
V-601:ジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(富士フイルム和光純薬(株)製)
【0157】
<<ATHFの合成>>
国際公開第2018/115192号の段落0172に従って合成した。
【0158】
<<重合体A-1の合成例>>
3つ口フラスコに酢酸イソプロピル(75.0部)を入れ、窒素雰囲気下において90℃に昇温した。ATHF(30.0部)、MMA(40.0部)、EA(30.0部)、V-601(4.0部)、酢酸イソプロピル(75.0部)を加えた溶液を、90℃±2℃に維持した3つ口フラスコ溶液中に2時間かけて滴下した。滴下終了後,90℃±2℃にて2時間撹拌することで、重合体A-1(固形分濃度40.0%)を得た。
【0159】
<<重合体A-2~A-6の合成例>>
モノマーの種類等を下記表1に示す通りに変更し、その他の条件については、重合体A-1と同様の方法で合成した。重合体A-2~A-6の固形分濃度はそれぞれ、40質量%とした。
なお、表1のモノマーの量の単位は、質量%であり、得られた重合体における各構成単位の量比も同様であった。
【0160】
【表1】
【0161】
なお、重合体A-1~A-6の重量平均分子量はそれぞれ、20,000であった。
【0162】
<光酸発生剤>
B-1:下記に示す構造の化合物(特開2013-47765号公報の段落0227に記載の化合物、段落0227に記載の方法に従って合成した。)
【0163】
【化7】
【0164】
<塩基性化合物>
C-1:1,2,3-ベンゾトリアゾール(東京化成工業(株)製)
C-2:N-シクロヘキシル-N’-[2-(4-モルホリニル)エチル]チオ尿素(CMTU、東洋化成工業(株)製)
【0165】
<界面活性剤>
E-1:メガファックF-552(フッ素系界面活性剤、DIC(株)製)
【0166】
<感光性樹脂組成物1~6の調製>
下記表2に示す固形分比となるように、重合体、光酸発生剤、塩基性化合物、及び、界面活性剤を、酢酸イソプロピルに固形分濃度15質量%になるように溶解混合し、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製フィルターで濾過して、感光性樹脂組成物1~6をそれぞれ得た。
【0167】
【表2】
【0168】
なお、表2における各成分の量の単位は、質量部である。
【0169】
<中間層形成用組成物1の作製>
以下の処方で中間層形成用組成物1を作製した。
【0170】
<<ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)10%溶液の作製>>
・蒸留水:45.0部
・メタノール:45.0部
・ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:Nisso HPC-SSL、日本曹達(株)製):10.0部
上記成分を室温(25℃)で溶解したのち、3μmフィルター(プロファイルII 日本ポール(株)製)にて濾過し、HPC10%溶液を得た。
【0171】
<<中間層形成用組成物1の作製>>
以下に示す処方で溶解混合し、中間層形成用組成物1を得た。
・蒸留水:7.1部
・メタノール:53.1部
・HPC10%溶液:29.7部
・スノーテックスO(シリカ粒子、日産化学工業(株)製、平均粒子径12nm):10.0部
・メガファックF-444(フッ素系界面活性剤、DIC(株)製):0.01部
・n-オクチルトリメチルアンモニウム・クロリド(東京化成工業(株)製):0.02部
【0172】
<中間層形成用組成物2~9及び11~30の作製>
粒子等の表3に記載の各成分を下記表3に示すとおりに変更し、その他の条件については、中間層形成用組成物1と同様な方法により、中間層形成用組成物2~9及び11~30をそれぞれ作製した。
【0173】
【表3】
【0174】
上述した以外の表3に記載の略称の詳細を以下に示す。
HPC:ヒドロキシプロピルセルロース(商品名:HPC-SSL、日本曹達(株)製)
HMPC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(商品名:TC-5、信越化学工業(株)製)
スノーテックスO:シリカ粒子、日産化学工業(株)製、算術平均粒径12nm、表面状態アニオン性(シラノール)
スノーテックスXS:シリカ粒子、日産化学工業(株)製、算術平均粒径5nm、表面状態アニオン性(シラノール)
スノーテックスOS:シリカ粒子、日産化学工業(株)製、算術平均粒径9nm、表面状態アニオン性(シラノール)
スノーテックスO-40:シリカ粒子、日産化学工業(株)製、算術平均粒径22nm、表面状態アニオン性(シラノール)
スノーテックスOL:シリカ粒子、日産化学工業(株)製、算術平均粒子径45nm、表面状態アニオン性(シラノール)
スノーテックスOYL:シリカ粒子、日産化学工業(株)製、算術平均粒子径60nm、表面状態アニオン性(シラノール)
OTAC:n-オクチルトリメチルアンモニウムクロリド
DDTAC:n-ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド
HDTAC:n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド
HDPyC:n-ヘキサデシルピリジニウムクロリド
BMSAC:ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド水和物(東京化成工業(株)製)
HDDSAH:ヘキサデシルジメチル(3-スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド分子内塩(東京化成工業(株)製)
BZC:ベンゼトニウムクロリド(東京化成工業(株)製、下記構造の化合物)
HDTAH:n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシ
BTAH:ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド
BPB:ブロモフェノールブルー(着色剤(色素)、富士フイルム和光純薬(株)製、極大吸収波長:606nm)
【0175】
【化8】
【0176】
(実施例1)
<感光性転写材料の作製>
下記表4に示す構成となるように中間層形成用組成物を仮支持体となる厚さ30μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの上に、スリット状ノズルを用いて塗布幅が1.0m、膜厚1.8μmとなるように塗布し、100℃の乾燥ゾーンを40秒間かけて通過させて中間層を形成した。その後、中間層の上に、感光性樹脂組成物をスリット状ノズルを用いて塗布幅が1.0m、膜厚3μmとなるように塗布し、100℃の乾燥ゾーンを40秒間かけて通過させて、感光性樹脂層を形成した。感光性樹脂層の上にカバーフィルム(保護フィルム)としてポリエチレンフィルム(トレデガー社製、OSM-N)を圧着して感光性転写材料1を作製し、感光性転写材料1を巻き取ってロール形態にした。
【0177】
(実施例2~9及び11~27)
下記表4に示す組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、感光性転写材料2~9及び11~27をそれぞれ作製した。
【0178】
(比較例1~4)
下記表4に示す組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして、感光性転写材料C1~C4をそれぞれ作製した。
【0179】
(実施例28~32)
下記表5に示す組成物を使用し、水溶性樹脂層を形成した後に、水溶性樹脂層と同様にして中間層を形成した以外は、実施例1と同様にして感光性転写材料28~32を作製した。なお、水溶性樹脂層の形成には、上記で作製した中間層形成用組成物のうち、表5に記載のものを水溶性樹脂層形成用組成物として使用した。
なお、実施例28~32にて作製した感光性転写材料の断面SEMを観測したところ、仮支持体/粒子の含有量が5質量%以下である水溶性樹脂層(水溶性樹脂層)/粒子と上記極性化合物と水溶性樹脂とを含む層(中間層)/感光性樹脂層の4層となっていることが認められた。また、得られた実施例28~32の感光性転写材料の断面を、SIMS法を用いて観察したところ、いずれも、中間層中に上記極性化合物が含有されていることが認められた。
【0180】
得られた感光性転写材料1~32、及び、C1~C4を使用し、以下の評価を行った。
【0181】
<性能評価>
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、銅を真空蒸着法で200nm厚にて成膜した銅層付きPET基板を使用した。
【0182】
-中間層と感光性樹脂層との密着性の評価-
実施例1の感光性転写材料からカバーフィルムを剥離し、上記銅層付きPET基板における銅層上に得られた感光性転写材料を100℃、4m/minの速度、線圧0.6MPaの条件でラミネートした後、仮支持体を剥離し、銅層上にポジ型感光層が積層した積層体を作製した。
積層体に、カッターナイフを用いて、基材に達する程度に1mm間隔で6本、これに直交するように1mm間隔で更に6本の切り込みを入れ、25マスの切り込みのあるクロスカット付着テスト試験片を作成した。これに透明粘着テープを貼り、90度の方向に透明粘着テープを剥離し、付着面積を観察することで中間層と感光性樹脂層との密着性を下記評価基準に従って評価した。2以上が実用範囲である。
〔評価基準〕
3:剥離面積が30%未満
2:剥離面積が30%以上~90%未満
1:剥離面積が90%以上
【0183】
-保存安定性の評価-
作製した感光性転写材料を巻き出した後、ロール温度120℃、線圧1.0MPa、線速度0.5m/minのラミネート条件で、上記銅層付きPET基板にラミネートした。仮支持体を剥離せずに線幅10μmのラインアンドスペースパターンマスク(Duty比
1:1)を介して超高圧水銀灯で露光後、23℃55%RHの環境下で3時間引き置いた後に仮支持体を剥離して現像した。現像は25℃の1.0%炭酸ナトリウム水溶液を用い、シャワー現像で30秒行った。
上記方法にて10μmのラインアンドスペースパターンを形成したとき、スペース部の残渣を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、レジスト線幅がちょうど10μmとなる露光量を求めた。
作製した感光性転写材料を40℃55%RHの環境下で7日間放置したのち、上記と同じの条件で、銅層付きPET基板にラミネートした。仮支持体を剥離せずに線幅10μmのラインアンドスペースパターンマスク(Duty比 1:1)を介して、上記の方法で求めたレジスト線幅がちょうど10μmとなる露光後で露光し、23℃55%RHの環境下で3時間引き置いた後に仮支持体を剥離して現像した。現像は25℃の1.0%炭酸ナトリウム水溶液を用い、シャワー現像で30秒行った。
得られたラインアンドスペースパターンの線幅を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、5つのラインについて計50点において線幅を測定し、10μmからの線幅の変動を求め、得られた値の平均値を算出し、その平均値を以下の基準により評価した。10μmからの線幅の変動の平均値が小さい値であるほど、保存安定性に優れ、また、10μmからの線幅の変動の平均値が1.5μm未満であることが好ましい。
〔評価基準〕
3:1.0μm未満
2:1.0μm以上1.5μm未満
1:1.5μm以上
【0184】
-液安定性の評価-
中間層形成用組成物を30℃で7日間保管した後、孔径3μm、1インチのカートリッジ式ポリプロピレン製フィルター(プロファイルII、日本ポール(株)製)を用いて、流速150mL/min.で100L濾過した際の濾圧の変化を記録し、下記評価基準に従って液安定性を評価した。
また、実施例28~32については、使用した2種の中間層形成用組成物の両方について評価し、悪いほうの評価を表5に記載した。
〔評価基準〕
3:初期の濾圧が0.1MPa以下であり、かつ100Lろ過した際の濾圧変化が0.01MPa未満である。
2:初期の濾圧が0.1MPa以下であり、かつ10Lろ過した際の濾圧変化が0.01MPa以上0.05MPa未満である。
1:初期の濾圧が0.1MPaを超える値であるか、又は、10Lろ過した際の濾圧変化が0.05MPa以上である。
【0185】
評価結果を、表4又は表5に示す。
【0186】
【表4】

【0187】
【表5】
【0188】
表4から、実施例の感光性転写材料は、比較例の感光性転写材料に比べ、中間層と感光性樹脂層との密着性に優れることがわかる。
また、表5から、水溶性樹脂層を更に作製することで、中間層と感光性樹脂層との密着性、保存安定性、及び、液安定性がともに優れていることが分かる。
また、保存安定性、又は、液安定性の評価が1であっても、感光性転写材料又は中間層形成用組成物を作製時から長期にわたり保管せずに使用することにより、実用上問題なく用いることができる。
【0189】
(実施例101)
100μm厚PET基材上に、第2層の導電層としてITOをスパッタリングで150nm厚にて成膜し、その上に第1層の導電層として銅を真空蒸着法で200nm厚にて成膜して、回路形成用基板とした。
銅層上に実施例1で得られた感光性転写材料を、保護フィルムを剥離して、基板に貼り合わせて(ラミネートロール温度100℃、線圧0.8MPa、線速度3.0m/min.)、積層体とした。得られた積層体を、仮支持体を剥離せずに一方向に導電層パッドが連結された構成を持つ図2に示すパターンAを設けたフォトマスクを用いてコンタクトパターン露光した。露光にはi線(365nm)を露光主波長とする高圧水銀灯を用いた。
その後仮支持体を剥離し、現像、水洗を行ってパターンAを得た。次いで銅エッチング液(関東化学(株)製Cu-02)を用いて銅層をエッチングした後、ITOエッチング液(関東化学(株)製ITO-02)を用いてITO層をエッチングすることで、銅とITOが共にパターンAで描画された基板を得た。
次いで、残存しているレジスト上に保護層として実施例1と同様の仮支持体をラミネートした。この状態で、アライメントを合わせ、パターンBの開口部を設けたフォトマスクを用いてパターン露光し、仮支持体を剥離した後、現像、水洗を行った。その後、Cu-02を用いて銅配線をエッチングし、残った感光性樹脂層を剥離液(関東化学(株)製KP-301)を用いて剥離し、回路配線基板を得た。
得られた回路配線基板を、顕微鏡で観察したところ、剥がれや欠けなどは無く、きれいなパターンであった。
【0190】
(実施例102)
実施例101と同様にして、パターンAで描画された基板を得た後に、残存しているレジスト上に、実施例1で得られた感光性転写材料を、保護フィルムを剥離して、実施例101と同様の条件で再度貼り合わせた。アライメントを合わせた状態で、仮支持体を剥離せずにパターンBの開口部を設けたフォトマスクを用いてパターン露光し、その後仮支持体を剥離し、現像、水洗を行ってパターンBを得た。次いで、実施例101と同様の条件で銅配線をエッチング、残った感光性樹脂層を剥離し、導電パターンを有する回路配線基板を得た。
得られた回路配線基板を、顕微鏡で観察したところ、剥がれ、欠けなどは無く、きれいなパターンであった。
【符号の説明】
【0191】
12:仮支持体、14:転写層、14-1:感光性樹脂層、14-2:中間層、16:カバーフィルム、100:感光性転写材料、SL:実線部、G:グレー部、DL:点線部
図1
図2
図3