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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】アルミン酸塩蛍光体及び発光装置
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/64 20060101AFI20220203BHJP
   C09K 11/59 20060101ALI20220203BHJP
   C09K 11/61 20060101ALI20220203BHJP
   C09K 11/62 20060101ALI20220203BHJP
   C09K 11/80 20060101ALI20220203BHJP
   C09K 11/79 20060101ALI20220203BHJP
   C09K 11/67 20060101ALI20220203BHJP
   C09K 11/66 20060101ALI20220203BHJP
   C09K 11/78 20060101ALI20220203BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20220203BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C09K11/64
C09K11/59
C09K11/61
C09K11/62
C09K11/80
C09K11/79
C09K11/67
C09K11/66
C09K11/78
H01L33/50
G02B5/20
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019100357
(22)【出願日】2019-05-29
(62)【分割の表示】P 2017244375の分割
【原出願日】2017-12-20
(65)【公開番号】P2019163483
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2017050486
(32)【優先日】2017-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西俣 和哉
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 智一
(72)【発明者】
【氏名】細川 昌治
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/107535(WO,A1)
【文献】特開2008-208325(JP,A)
【文献】特開2005-68403(JP,A)
【文献】特開2005-132870(JP,A)
【文献】国際公開第2011/115032(WO,A1)
【文献】特開2007-197478(JP,A)
【文献】特開2000-345148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
H01L 33/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される組成を有するアルミン酸塩蛍光体であり、FSSS法により測定された平均粒径D2が13μm以上、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定された体積平均粒径Dm2が20μm以上、前記平均粒径D2に対する前記体積平均粒径Dm2の比として定義される分散度(Dm2/D2)が1.0以上1.6未満であることを特徴とするアルミン酸塩蛍光体。
EuMgMnAlp+t+q+r+1.5s (I)
(式(I)中、Xは、Ba、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、p、q、r、s、及びtは、0.5≦p≦1.0、0≦q≦1.0、0<r≦0.7、8.5≦s≦13.0、0≦t≦0.5、0.5≦p+t≦1.2、0.1≦r+t≦0.7、0.2≦q+r≦1.0を満たす数である。)
【請求項2】
前記分散度(Dm2/D2)が1.0以上1.5以下である、請求項1に記載のアルミン酸塩蛍光体。
【請求項3】
レーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒度分布において小径側から積算した10%体積粒径D10に対する90%体積粒径D90の粒径比(D90/D10)が3.0以下である、請求項1又は2に記載のアルミン酸塩蛍光体。
【請求項4】
下記式(I)で表される組成を有するアルミン酸塩蛍光体であり、平均円相当径Dcが13μm以上であることを特徴とするアルミン酸塩蛍光体。
EuMgMnAlp+t+q+r+1.5s (I)
(式(I)中、Xは、Ba、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、p、q、r、s、及びtは、0.5≦p≦1.0、0≦q≦1.0、0<r≦0.7、8.5≦s≦13.0、0≦t≦0.5、0.5≦p+t≦1.2、0.1≦r+t≦0.7、0.2≦q+r≦1.0を満たす数である。)
【請求項5】
前記式(I)において、XはBaを含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のアルミン酸塩蛍光体。
【請求項6】
前記式(I)において、q、r、及びsは、0<q≦0.7、0.2≦r≦0.7、9.0≦s≦13.0を満たす数である、請求項1から5のいずれか1項に記載のアルミン酸塩蛍光体。
【請求項7】
前記式(I)において、rは、0.4≦r≦0.6を満たす数である、請求項1から6のいずれか1項に記載のアルミン酸塩蛍光体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のアルミン酸塩蛍光体と、380nm以上485nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する励起光源を備える発光装置。
【請求項9】
前記励起光源が420nm以上470nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する請求項8に記載の発光装置。
【請求項10】
前記アルミン酸塩蛍光体と、前記励起光源からの光を吸収し、前記アルミン酸塩蛍光体とは異なる波長を有する光に波長変換する下記に記載された組成を有する蛍光体から選択される少なくとも一種の蛍光体を含む請求項8又は9に記載の発光装置。
(Ca,Sr,Ba)SiO:Eu
(Ca,Sr,Ba)MgSi16(F,Cl,Br):Eu
Si6-zAl8-z:Eu(0<z≦4.2)
(Sr,Ba,Ca)Ga:Eu
(Lu,Y,Gd,Lu)(Ga,Al)12:Ce
(La,Y,Gd)Si11:Ce
CaScSi12:Ce
CaSc:Ce
(Si,Ge,Ti)F:Mn
(Ca,Sr,Ba)Si:Eu
CaAlSiN:Eu
(Ca,Sr)AlSiN:Eu
(Sr,Ca)LiAl:Eu
(Ca,Sr)MgLiSi:Eu
3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミン酸塩蛍光体及び発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(Light emitting diode:LED)と蛍光体とを組み合わせて白色、電球色、橙色等に発光する発光装置が種々開発されている。これらの発光装置では、光の混色の原理によって所望の発光色が得られる。発光装置としては、励起光源として青色を発光する発光素子と、光源からの光によって励起されて、緑色を発光する蛍光体及び赤色を発光する蛍光体とを組み合わせて白色光を放出するものも知られている。
これらの発光装置は、一般照明、車載照明、ディスプレイ、液晶用バックライト等の幅広い分野での使用が求められている。
【0003】
発光装置に使用される緑色を発光する蛍光体として、例えば、特許文献1には、組成が(Ba、Sr)MgAl1017:Mn2+で表されるマンガン賦活アルミン酸塩蛍光体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-155907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示のマンガン賦活アルミン酸塩蛍光体は、10nmから190nm程度の波長を有する真空紫外線、具体的には146nmの真空紫外線によって励起されて高い発光強度を有するものであり、380nm以上485nm以下の範囲(以下、「近紫外から青色領域」とも呼ぶこともある。)に発光ピーク波長を有する発光素子と組み合わせた際に、その発光強度が十分ではない。
そこで、本発明の一実施態様は、近紫外から青色領域の光励起によって高い発光強度を有するアルミン酸塩蛍光体及び発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段は、以下の態様を包含する。
【0007】
本発明の第一の態様は、Ba、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素を含む化合物と、Mnを含む化合物及びEuを含む化合物の少なくとも一方の化合物と、Alを含む化合物と、必要に応じてMgを含む化合物とを混合した第一の混合物に、第一の熱処理を行い、FSSS法(フィッシャーサブシーブサイザー:Fisher Sub-Sieve Sizer、以下「FSSS法」ともいう。)により測定した平均粒径D1が6μm以上である第一焼成物を得る工程と、
Ba、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素を含む化合物と、Mnを含む化合物及びEuを含む化合物の少なくとも一方の化合物と、Alを含む化合物と、全体量に対する含有量が10質量%以上90質量%以下の前記第一焼成物と、必要に応じてMgを含む化合物とを混合した第二の混合物に、第二の熱処理を行い、第二焼成物を得る工程を含む、アルミン酸塩蛍光体の製造方法である。
【0008】
本発明の第二の態様は、FSSS法により測定された平均粒径D2が13μm以上、及び/又は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定された体積平均粒径Dm2が20μm以上であり、下記式(I)で表される組成を有することを特徴とするアルミン酸塩蛍光体である。
EuMgMnAlp+t+q+r+1.5s (I)
(式(I)中、Xは、Ba、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、p、q、r、s、及びtは、0.5≦p≦1.0、0≦q≦1.0、0≦r≦0.7、8.5≦s≦13.0、0≦t≦0.5、0.5≦p+t≦1.2、0.1≦r+t≦0.7、0.2≦q+r≦1.0を満たす数である。)
【0009】
本発明の第三の態様は、平均円相当径Dcが13μm以上であり、下記式(I)で表される組成を有することを特徴とするアルミン酸塩蛍光体である。
EuMgMnAlp+t+q+r+1.5s (I)
(式(I)中、Xは、Ba、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、p、q、r、s、及びtは、0.5≦p≦1.0、0≦q≦1.0、0≦r≦0.7、8.5≦s≦13.0、0≦t≦0.5、0.5≦p+t≦1.2、0.1≦r+t≦0.7、0.2≦q+r≦1.0を満たす数である。)
【0010】
本発明の第四の態様は、前記アルミン酸塩蛍光体と、380nm以上485nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する励起光源とを備える発光装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、近紫外から青色領域の光励起によって高い発光強度を有するアルミン酸塩蛍光体、及び発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、発光装置の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、実施例2に係るアルミン酸塩蛍光体及び比較例1に係るアルミン酸塩蛍光体の波長に対する相対発光強度(%)の発光スペクトルである。
図3図3は、実施例2に係るアルミン酸塩蛍光体のSEM写真である。
図4図4は、比較例1に係るアルミン酸塩蛍光体のSEM写真である。
図5図5は、実施例2に係るアルミン酸塩蛍光体のSEM写真において、20個以上のアルミン酸塩蛍光体粒子を2値化処理した状態を示すイメージ図である。
図6図6は、比較例1に係るアルミン酸塩蛍光体のSEM写真において、20個以上のアルミン酸塩蛍光体粒子を2値化処理した状態を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係るアルミン酸塩蛍光体の製造方法、アルミン酸塩蛍光体及び発光装置について説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は、以下のアルミン酸塩蛍光体の製造方法、アルミン酸塩蛍光体、及びそれを用いた発光装置に限定されない。なお、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。
【0014】
アルミン酸塩蛍光体の製造方法
本発明の第一の実施形態に係るアルミン酸塩蛍光体の製造方法は、Ba、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素を含む化合物と、Mnを含む化合物及びEuを含む化合物の少なくとも一方の化合物と、Alを含む化合物と、必要に応じてMgを含む化合物とを混合した第一の混合物に、第一の熱処理を行い、FSSS法により測定した平均粒径(Fisher sub-sieve sizer’s number)D1が6μm以上である第一焼成物を得る工程と、
Ba、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素を含む化合物と、Mnを含む化合物及びEuを含む化合物の少なくとも一方の化合物と、Alを含む化合物と、全体量に対する含有量が10質量%以上90質量%以下の前記第一焼成物と、必要に応じてMgを含む化合物とを混合した第二の混合物に、第二の熱処理を行い、第二焼成物を得る工程を含む。
本実施形態によれば、結晶成長が促進され、平均粒径が大きな第二焼成物を得ることができる。第二焼成物は、平均粒径が大きく、発光強度の高いアルミン酸塩蛍光体として用いることができる。
【0015】
第一の熱処理
第一の混合物は、Ba、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素を含む化合物と、Mnを含む化合物及びEuを含む化合物の少なくとも一方の化合物と、Alを含む化合物と、必要に応じてMgを含む化合物とを含む。第一の混合物は、好ましくは第一の混合物にフラックスを含み、フラックスとともに、第一の熱処理を行ない、FSSS法により測定した平均粒径D1が6μm以上である、第一焼成物を得る。第一の混合物は、Mnを含む化合物を含有することが好ましい。FSSS法は、空気透過法の一種であり、空気の流通抵抗を利用して比表面積を測定し、粒径を求める方法である。
【0016】
第一の混合物は、各元素を含む化合物を所望の配合比となるように秤量した後、例えば、ボールミル、振動ミル、ハンマーミル、乳鉢と乳棒等を用いて粉砕混合してもよい。また、第一の混合物の混合は、例えばリボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、V型ブレンダー等の混合機を用いて混合してもよく、乾式粉砕機と混合機の両方を用いて粉砕混合してもよい。また、混合は、乾式混合でもよく、溶媒等を加えて湿式混合してもよい。混合は、乾式混合することが好ましい。湿式よりも乾式の方が工程時間を短縮でき、生産性の向上に繋がるからである。
【0017】
第一の混合物は、黒鉛等の炭素材質、窒化ホウ素(BN)、酸化アルミニウム(アルミナ)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)の材質のルツボ、ボート等に入れて熱処理することができる。
【0018】
第一の熱処理温度は、好ましくは1000℃以上1800℃以下、より好ましくは1100℃以上1750℃以下、さらに好ましくは1200℃以上1700℃以下、さらにより好ましくは1300℃以上1650℃以下、特に好ましくは1400℃以上1600℃以下である。熱処理は、例えば、電気炉、ガス炉等を使用することができる。
【0019】
第一の熱処理の雰囲気は、アルゴン、窒素を含む不活性雰囲気、水素を含む還元性雰囲気、又は大気などの酸素を含む酸化雰囲気にて行うことができる。第一の熱処理の雰囲気は、還元性雰囲気であることが好ましく、より具体的には、水素と窒素を含む還元性雰囲気であることがより好ましい。水素及び窒素を含む還元性雰囲気のように還元力の高い雰囲気中では、第一の混合物の反応性がよくなり、大気圧下で熱処理することができる。還元性雰囲気中、水素ガスは、好ましくは0.5体積%以上、より好ましくは1体積%以上、さらに好ましくは3体積%以上である。
【0020】
第一の熱処理時間は、昇温速度、熱処理雰囲気等によって異なり、1000℃以上1800℃以下の範囲の前記第一の熱処理温度に達してから、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上、さらに好ましくは3時間以上であり、好ましくは20時間以下、より好ましくは18時間以下、さらに好ましくは15時間以下である。
【0021】
第一焼成物に対して、第一の熱処理後であって第二の熱処理前に、後述する分散処理工程による分散処理を行ってもよい。第一焼成物に対して行う分散処理工程は、例えば第一の焼成物に対して湿式分散、湿式ふるい、脱水、乾燥、乾式ふるい等の分級処理を行い、FSSS法により測定した平均粒径D1が6μm以上である、第一焼成物を得てもよい。湿式分散に用いる溶媒としては、例えば脱イオン水を用いることができる。湿式分散を行なう時間は、用いる固体分散媒や溶媒によって異なるが、好ましくは30分以上、より好ましくは60分以上、さらに好ましくは90分以上、よりさらに好ましくは120分以上であり、好ましくは420分以下である。第一焼成物は、好ましくは30分以上420分以下の範囲で湿式分散を行なうことにより、得られるアルミ酸塩蛍光体を発光装置に用いる場合に、発光装置の蛍光部材を構成する樹脂中への分散性をよくすることができる。
【0022】
第一焼成物は、FSSS法により測定した平均粒径D1が6μm以上であり、好ましくは6.5μm以上、より好ましくは7μm以上、さらに好ましくは7.5μm以上である。第一焼成物は、FSSS法により測定した平均粒径D1が大きい方が好ましいが、第一焼成物の平均粒径D1は、通常13μm未満である。第一焼成物は、FSSS法により測定した平均粒径D1が6μm以上であれば、第二の熱処理において、第一焼成物が種結晶となって結晶成長が促進され、FSSS法により測定した平均粒径が13μm以上の第二焼成物を得ることができる。
【0023】
第二の熱処理
第二の混合物には、Ba、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素を含む化合物と、Mnを含む化合物及びEuを含む化合物の少なくとも一方の化合物と、Alを含む化合物と、第二の混合物の全体量に対する含有量が10質量%以上90質量%以下の前記第一焼成物と、必要に応じてMgを含む化合物とを含む。第二の混合物は、第二の熱処理を行ない、第二焼成物を得る。第二の混合物は、Mnを含む化合物を含むことが好ましい。
【0024】
第二の混合物中に含まれる第一焼成物の含有量は、第二の混合物の全体量に対して、好ましくは15質量%以上85質量%以下、より好ましくは20質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは25質量%以上80質量%以下であり、よりさらに好ましくは30質量%以上80質量%以下である。
第二の混合物中に、平均粒径D1が6μm以上の第一焼成物が、第二の混合物の全体量に対して10質量%以上90質量%以下の範囲で含有されていると、第二の熱処理において、第一焼成物が種結晶となって結晶成長が促進され、FSSS法により測定した平均粒径が13μm以上の大きな第二焼成物を得ることができ、この第二焼成物をアルミン酸塩蛍光体として用いることができる。第一焼成物の含有量が、第二の混合物の全体量に対して10質量%未満であると、種結晶となる第一焼成物の含有量が少なすぎて、第二の熱処理において結晶成長が促進されず、粒径の大きな第二焼成物を得ることが困難となる。第一焼成物の含有量が、第二の混合物の全体量に対して90質量%を超えると、相対的に第二の混合物中に含まれる原料となる化合物の量が少なくなり、結晶成長が促進されず、粒径の大きな第二焼成物を得ることができない。
【0025】
第二の混合物を混合する際には、第一の混合物を得る場合に例示した混合方法、混合機等を用いることができる。また、第二の混合物を、第一の混合物と同様の材質のルツボ、ボート等に入れて熱処理することができる。
【0026】
第二の混合物は、好ましくはフラックスを含み、第二の混合物に含まれるフラックスとともに、第二の熱処理を行なうことによって、第二焼成物を得ることができる。
【0027】
第二の熱処理温度は、上述した第一の熱処理温度と同じ範囲の温度を適用することができる。第二の熱処理温度は、上述した第一の熱処理温度と同じ温度であってもよく、異なる温度であってもよい。熱処理には、例えば、電気炉、ガス炉等を使用することができる。
【0028】
第二の熱処理の雰囲気は、上述した第一の熱処理雰囲気と同様の雰囲気を適用することができる。第二の熱処理雰囲気は、上述した第一の熱処理雰囲気と同じ雰囲気であってもよく、異なる雰囲気であってもよい。
【0029】
第二の熱処理時間は、上述した第一の熱処理時間と同じ範囲の時間を適用することができる。第二の熱処理時間は、上述した第一の熱処理時間と同じ時間であってもよく、異なる時間であってもよい。
【0030】
後処理
第一の熱処理又は第二の熱処理によって得られた第一焼成物又は第二焼成物に対しては、後処理を行い、アルミン酸塩蛍光体を得ることが好ましい。後処理としては、例えば、湿式分散、湿式ふるい、脱水、乾燥、及び乾式ふるいのうち、少なくとも一種の処理を行うことが好ましい。
後処理として、焼成物を湿式分散、湿式ふるいを行う場合には、具体的には、得られた焼成物を、溶媒中に分散させ、分散させた第二焼成物をふるい上に配置し、ふるいを介して種々の振動を加えながら溶媒を流して、焼成物をメッシュ通過させて湿式ふるいを行う。湿式ふるいを通過させた後、沈降分級を行ない、微小粒子を除去する処理を行ってもよい。沈降分級によって焼成物から除去する微小粒子は、目的とする粒径等によって異なる。第二の熱処理後に得られた焼成物から後処理によって微粒子を除く場合には、第二の熱処理後に得られた焼成物の全体量のうち、15質量%以上20質量%以下程度であることが望ましい。沈降分級は、複数回繰り返して行なってもよい。沈降分級後、脱水、乾燥し、乾式ふるいを経て、蛍光体を得てもよい。熱処理後の焼成物を溶媒中に分散させることによって、フラックスの焼成残留分などの不純物や、原料の未反応成分を除くことができる。湿式分散には、アルミナボールやジルコニアボールなどの固体分散媒を用いてもよい。湿式分散に用いる溶媒としては、例えば脱イオン水を用いることができる。湿式分散を行なう時間は、用いる固体分散媒や溶媒によって異なるが、好ましくは10分以上、より好ましくは20分以上、さらに好ましくは30分以上であり、好ましくは240分以下である。第二焼成物は、好ましくは10分以上240分以下の範囲で湿式分散を行なうことにより、得られるアルミ酸塩蛍光体の分散性をよくすることができる。
後処理として、焼成物を乾燥し、乾式ふるいを行なう場合には、具体的には、焼成物を80℃から150℃程度の温度で乾燥させる。乾燥させた焼成物を、乾式ふるいを通して、ふるいを通過しない大粒径の粒子を除くことができる。乾燥時間は、好ましくは1時間以上20時間以下、より好ましくは2時間以上18時間以下である。
後処理において、湿式ふるい又は乾式ふるいを行なう場合に用いるふるいの目開きは、特に限定されず、第一焼成物又は第二焼成物の粒径に対応させた目開きのふるいを用いることができる。
【0031】
第一焼成物及び/又は第二焼成物
第一焼成物及び/又は第二焼成物は、下記式(I)で表される組成を有することが好ましい。
EuMgMnAlp+t+q+r+1.5s (I)
(式(I)中、Xは、Ba、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、p、q、r、s、及びtは、0.5≦p≦1.0、0≦q≦1.0、0≦r≦0.7、8.5≦s≦13.0、0≦t≦0.5、0.5≦p+t≦1.2、0.1≦r+t≦0.7、0.2≦q+r≦1.0を満たす数である。)
第一焼成物を得る工程及び/又は第二焼成物を得る工程によって得られた第一焼成物及び/又は第二焼成物は、アルミン酸塩蛍光体として用いることができる。
【0032】
フラックス
前記第一の混合物及び前記第二の混合物の少なくとも一方がフラックスを含み、前記フラックスが、K、Na、Ba、Sr、Ca、Mg、Al及びMnからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素を含む化合物であることが好ましい。前記フラックスは、前記第一の混合物及び/又は前記第二の混合物に含まれる前記Ba、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素を含む化合物、前記Mnを含む化合物、前記Mgを含む化合物、並びに前記Alを含む化合物とは異なる化合物であることが好ましい。
前記第一の混合物及び前記第二の混合物は、共にフラックスを含むことがより好ましい。前記第一の混合物及び前記第二の混合物の両方にフラックスを含む場合には、前記第一の混合物に含まれるフラックスと、前記第二の混合物に含まれるフラックスとは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0033】
第一の混合物がフラックスを含む場合、フラックスは、第一の熱処理において、第一の混合物中の原料同士の反応を促進し、固相反応をより均一に進行させることによって、結晶の成長を促進する。フラックスの存在によって、第一の混合物中の原結晶の成長が促進されることで、比較的大きな粒径を有する第一焼成物を得ることができる。第一の熱処理の温度は、フラックスとして用いる化合物が液相を生成する温度とほぼ同じ温度であるか、この温度よりも高い温度である。フラックスが液相を生成することによって、第一の混合物中の原料同士の反応が促進され、固相反応がより均一に進行され、結晶成長が促進されると考えられる。
【0034】
第二の混合物がフラックスを含む場合、フラックスは、第二の熱処理において、第二の混合物中の種結晶となる第一焼成物と、その他の原料同士の反応を促進し、固相反応をより均一に進行させることによって、種結晶から結晶成長をより促進すると考えられる。
【0035】
フラックスは、K、Na、Ba、Sr、Ca、Mg、Al及びMnからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素を含むハロゲン化物であることが好ましく、例えば、K、Na、Ba、Sr、Ca、Mg、Al及びMnからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素を含むフッ化物、塩化物等が挙げられる。フラックスは、より好ましくは前記金属元素を含むフッ化物である。フラックスとしては、具体的には、KF、NaF、BaF、SrF、CaF、MgF、AlF、MnFが挙げられる。
フラックスに含まれる金属元素は、得られる第一焼成物又は第二焼成物の組成に含まれてもよい。
【0036】
フラックスは、フラックスを含まない第一の混合物及び/又はフラックスを含まない第二の混合物に含まれるAlのモル数を10として、フラックスに含まれる金属元素のモル数が0.03以上0.60以下、より好ましくは0.04以上0.55以下、さらに好ましくは0.05以上0.50以下、よりさらに好ましくは0.06以上0.40以下の範囲となるように、第一の混合物又は第二の混合物に含まれることが好ましい。前記範囲であることにより、第一の熱処理又は第二の熱処理において、第一の混合物中の原料同士の反応又は第二の混合物中の第一焼成物と原料の反応を促進し、固相反応をより均一に進行させることができ、粒径の大きな第一焼成物又は第二焼成物を得ることができる。
フラックスに含まれる金属元素が、得られる第一焼成物又は第二焼成物の組成の一部を構成する場合には、フラックスを含まない第一の混合物又はフラックスを含まない第二の混合物に含まれるAlのモル数を10として、フラックスに含まれる金属元素のモル数が前記範囲となるように第一の混合物又は第二の混合物にフラックスが添加される。
【0037】
フラックスは、第一のフラックスと第二のフラックスの二種のフラックスを含むことが好ましい。フラックスとして二種のフラックスを含む場合には、第一のフラックスが、Ba、Sr、Ca、Mg、Al及びMnからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素を含む化合物であり、第二のフラックスが、K及びNaから選択される少なくとも一種の金属元素を含む化合物であることが好ましい。第一のフラックスと第二のフラックスの二種のフラックスを含む場合には、第一の混合物及び第二の混合物の少なくとも一方が二種のフラックスを含んでいてもよく、第一の混合物及び第二の混合物の両方が二種のフラックスを含んでいてもよい。
第一のフラックスとして、第一焼成物又は第二焼成物の母体結晶を構成する金属元素を含む化合物を用いることによって、結晶構造へ不純物が混入することを抑制し、第一焼成物又は第二焼成物を構成する成分の組成比(モル比)を所望のモル比に調整することが可能となる。
また、第二のフラックスとして、K及びNaから選択される少なくとも一種の金属元素を含む化合物を用いることによって、六方晶系の結晶構造においてc軸方向及び/又は面内方向に結晶を成長させやすくすることができ、高い発光強度を有するアルミン酸塩蛍光体を得ることができる。
さらに第一のフラックス及び該第一のフラックスと融点が異なる第二のフラックスの二種のフラックスを含むことによって、より高い熱処理温度での結晶成長を促進し、粒径を大きくすることができる。
【0038】
第一のフラックスと第二のフラックスの二種のフラックスを含む場合には、フラックスを含まない第一の混合物及び/又はフラックスを含まない第二の混合物に含まれるAlのモル数を10として、第一のフラックスに含まれる金属元素のモル数が0.006以上0.55以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01以上0.50以下、さらに好ましくは0.02以上0.45以下、よりさらに好ましくは0.03以上0.40以下である。
前記範囲であると、第一の熱処理又は第二の熱処理において、第一の混合物中の原料同士の反応又は第二の混合物中の第一焼成物と原料の反応を促進し、固相反応をより均一に進行させるとともに、母体結晶の結晶構造を安定化させて、粒径の大きな第一焼成物又は第二焼成物を得ることができる。
第一のフラックスに含まれる金属元素が、得られる第一焼成物又は第二焼成物の組成の一部を構成する場合には、フラックスを含まない第一の混合物又はフラックスを含まない第二の混合物に含まれるAlのモル数を10として、フラックスに含まれる金属元素のモル数が0.006以上0.55以下の範囲となるように第一の混合物又は第二の混合物にフラックスが添加される。
【0039】
第一のフラックスに含まれる金属元素がMg又はAlであり、第二のフラックスに含まれる金属元素がK又はNaのとき、モル比率(第一のフラックスに含まれる金属元素のモル数:第二のフラックスに含まれる金属元素のモル数)が20:1から1:5の範囲であることが好ましく、より好ましくは15:1から1:3の範囲であり、さらに好ましくは10:1から1:2の範囲である。第一のフラックスに含まれる金属元素と第二のフラックスに含まれる金属元素のモル比率が20:1から1:5の範囲であれば、第一の混合物中の原料同士の反応又は第二の混合物中の第一焼成物と原料の反応を促進し、固相反応をより均一に進行させるとともに、母体結晶の結晶構造を安定化させて、粒径の大きな第一焼成物又は第二焼成物を得ることができる。第二のフラックスの含有量が多すぎると、結晶構造中に取り込まれるNa又はKのアルカリ金属が多くなり、逆に発光強度が低くなる場合がある。
【0040】
第一の混合物又は第二の混合物に含まれる化合物
第一の混合物又は第二の混合物は、Ba、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも一種の金属元素(アルカリ土類金属元素)を含む化合物、Mnを含む化合物及びEuを含む化合物の少なくとも一方の化合物、Alを含む化合物を含む。第一の混合物又は第二の混合物は、さらに必要に応じてMgを含む化合物を含んでいてもよい。また、第一の混合物及び第二の混合物は、Mnを含む化合物を含むことが好ましい。
【0041】
アルカリ土類金属元素を含む化合物
Ba、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも一種のアルカリ土類金属元素を含む化合物としては、Ba、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも一種のアルカリ土類金属元素を含む酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩、ハロゲン化物、窒化物等が挙げられる。これらの化合物は、水和物の形態であってもよい。具体的には、BaO、Ba(OH)・8HO、BaCO、Ba(NO、BaSO、Ba(HCOO)、Ba(OCOCH、BaCl・6HO、Ba、SrO、Sr(OH)・8HO、SrCO、Sr(NO・4HO、SrSO、Sr(HCOO)・2HO、Sr(OCOCH・0.5HO、SrCl・6HO、Sr、CaO、Ca(OH)、CaCO、Ca(NO、CaSO、CaCl、Ca等が挙げられる。これらの化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、取り扱いやすい点から炭酸塩、酸化物が好ましい。空気中での安定性がよく、加熱により容易に分解し、目的とする組成以外の元素が残留しにくく、残留不純物元素による発光強度の低下を抑制しやすいため、Ba、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも一種のアルカリ土類金属元素を含む炭酸塩がより好ましい。
【0042】
Mnを含む化合物
Mnを含む化合物としては、Mnを含有する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩、ハロゲン化物、窒化物等が挙げられる。これらのマンガンを含む化合物は、水和物の形態であってもよい。具体的には、MnO、Mn、Mn、MnO、Mn(OH)、MnCO、Mn(NO、Mn(OCOCH・2HO、Mn(OCOCH・2HO、MnCl・4HO等が挙げられる。Mnを含む化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、取り扱いやすい点から炭酸塩、酸化物が好ましい。空気中での安定性がよく、加熱により容易に分解し、目的とする組成以外の元素が残留しにくく、残留不純物元素による発光強度の低下を抑制しやすいため、Mnを含有する炭酸塩(MnCO)がより好ましい。
【0043】
Euを含む化合物
Euを含む化合物としては、Euを含有する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハロゲン化物、窒化物等が挙げられる。これらのEuを含む化合物は、水和物の形態であってもよい。具体的には、EuO、Eu、Eu(OH)、Eu(CO、Eu(NO、Eu(SO、EuCl、EuF等が挙げられる。Euを含む化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、取り扱いやすい点から炭酸塩、酸化物が好ましい。空気中での安定性がよく、加熱により容易に分解し、目的とする組成以外の元素が残留しにくく、残留不純物元素による発光強度の低下を抑制しやすいため、Euを含有する酸化物(Eu)がより好ましい。
【0044】
Alを含む化合物
Alを含む化合物としては、Alを含有する酸化物、水酸化物、窒化物、酸窒化物、フッ化物、塩化物等が挙げられる。これらの化合物は、水和物であってもよい。Alを含む化合物としては、アルミニウム金属単体又はアルミニウム合金を用いてもよく、化合物の少なくも一部に代えて金属単体又は合金を用いてもよい。
Alを含む化合物として、具体的には、Al、Al(OH)、AlN、AlF、AlCl等が挙げられる。Alを含む化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。Alを含む化合物は、酸化物(Al)であることが好ましい。酸化物は、他の材料と比較して、アルミン酸塩蛍光体の目的とする組成以外の他の元素を含んでおらず、目的とする組成の蛍光体を得易いためである。また、目的とする組成以外の元素を含む化合物を用いた場合には、得られた蛍光体中に残留不純物元素が存在する場合があり、この残留不純物元素が発光に関してキラー要素となり、発光強度が著しく低下する虞がある。
【0045】
Mgを含む化合物
Mgを含む化合物としては、Mgを含有する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩、ハロゲン化物、窒化物等が挙げられる。これらのマグネシウムを含む化合物は、水和物の形態であってもよい。具体的には、MgO、Mg(OH)、3MgCO・Mg(OH)・3HO、MgCO・Mg(OH)、Mg(NO・6HO、MgSO、Mg(HCOO)・2HO、Mg(OCOCH・4HO、MgCl、Mg等が挙げられる。Mgを含む化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、取り扱いやすい点から炭酸塩、酸化物が好ましい。空気中での安定性がよく、加熱により容易に分解し、目的とする組成以外の元素が残留しにくく、残留不純物元素による発光強度の低下を抑制しやすいため、Mgを含有する酸化物(MgO)がより好ましい。
【0046】
アルミン酸塩蛍光体
本発明の第二の実施形態に係るアルミン酸塩蛍光体は、FSSS法により測定された平均粒径(Fisher sub-sieve sizer’s number)D2が13μm以上、及び/又は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定された体積平均粒径Dm2が20μm以上であり、下記式(I)で表される組成を有する。体積平均粒径Dm2は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定された粒度分布における50%体積粒径である。
EuMgMnAlp+t+q+r+1.5s (I)
(式(I)中、Xは、Ba、Sr及びCaからなる群から選択される少なくとも一種の元素であり、p、q、r、s、及びtは、0.5≦p≦1.0、0≦q≦1.0、0≦r≦0.7、8.5≦s≦13.0、0≦t≦0.5、0.5≦p+t≦1.2、0.1≦r+t≦0.7、0.2≦q+r≦1.0を満たす数である。)
【0047】
式(I)で表される組成を有するアルミン酸塩蛍光体(以下、「アルミン酸塩蛍光体(I)」ともいう。)は、FSSS法により測定された平均粒径D2が13μm以上であるか、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定された体積平均粒径Dm2が20μm以上であり、粒径が大きく、高い発光強度を有する。アルミン酸塩蛍光体(I)は、前述のアルミン酸塩蛍光体の製造方法により製造されたものであることが好ましい。
【0048】
アルミン酸塩蛍光体(I)は、FSSS法により測定された平均粒径D2が、好ましくは14μm以上であり、より好ましくは15μm以上である。平均粒径D2は、例えば、50μm以下である。アルミン酸塩蛍光体(I)の平均粒径D2は大きい方が高い発光強度を有する。
【0049】
アルミン酸塩蛍光体(I)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定された体積平均粒径Dm2が、好ましくは20.5μm以上であり、より好ましくは21μm以上であり、よりさらに好ましくは22μm以上である。体積平均粒径Dm2は、100μm以下であり、例えば80μm未満である。アルミン酸塩蛍光体(I)の体積平均粒径Dm2は大きい方が高い発光強度を有する。レーザー回折散乱式粒度分布測定法は、粒子に照射したレーザー光の散乱光を利用して、一次粒子及び二次粒子を区別することなく粒度を測定する方法である。
【0050】
アルミン酸塩蛍光体(I)は、前記平均粒径D2に対する前記体積平均粒径Dm2の比で定義される分散度Dm2/D2が1.0以上1.6未満であることが好ましい。分散度Dm2/D2は、一次粒子に対する、一次粒子及び二次粒子を区別することなく測定した粒度を表わし、分散度Dm2/D2の値が大きいほど、アルミン酸塩蛍光体(I)には二次粒子が含まれる量が多くなる。分散度Dm2/D2が1の値に近いほど、二次粒子を含む量が少なくなる。
分散度Dm2/D2は、アルミン酸塩蛍光体(I)を発光装置に用いた場合に、後述する蛍光部材における分散性又は後述する蛍光部材を構成する樹脂を含む蛍光部材用組成物における分散性を表わす一つの指標とすることができる。分散度Dm2/D2の値が高いほど、アルミン酸塩蛍光体(I)の粉体の見かけ密度が高くなる傾向があり、アルミン酸塩蛍光体(I)を発光装置に用いた場合に、後述する蛍光部材における充填密度が高くなる傾向がある。アルミン酸塩蛍光体(I)の分散度Dm2/D2が2.0未満であると、分散度Dm2/D2の値が小さくなるほど発光強度がやや低下する傾向がある。アルミン酸塩蛍光体(I)の分散度Dm2/D2が1.0以上1.6未満であると、この範囲の分散度Dm2/D2を有するアルミン酸塩蛍光体(I)を用いた発光装置は、逆に光束が高くなる。これは、分散度Dm2/D2が前記範囲内であるアルミン酸塩蛍光体(I)が、発光装置の蛍光部材中での分散性が良好となるため、発光装置からの光を取り出す効率が改善したものと推測される。アルミン酸塩蛍光体(I)の分散度Dm2/D2は、より好ましくは1.0以上1.5以下である。
【0051】
分散度Dm2/D2が1.0以上1.6未満の範囲であるアルミン酸塩蛍光体(I)は、例えば、第一焼成物に対して行う分散処理工程及び/又は第二焼成物に対して行う後処理工程において、湿式分散させる時間を調整することによって、分散度Dm2/D2が1.0以上1.6未満であるアルミン酸塩蛍光体(I)を得ることができる。好適な分散度Dm2/D2を有するアルミン酸塩蛍光体(I)を得るために湿式分散させる時間は、湿式分散に用いる溶媒や固体分散媒によっても異なる。例えば、溶媒として脱イオン水を用い、固体分散媒としてアルミナボールを用いた場合には、分散度Dm2/D2が1.0以上1.6未満の範囲のアルミン酸塩蛍光体(I)を得るために湿式分散させる時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは60分以上、さらに好ましくは90分以上、よりさらに好ましくは120分以上である。また、湿式分散させる時間は、製造の効率を考慮して、好ましくは420分以下である。
【0052】
アルミン酸塩蛍光体(I)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒度分布において小径側から積算した10%体積粒径D10に対する90%体積粒径D90の粒径比D90/D10が3.0以下であることが好ましい。10%体積粒径D10に対する90%体積粒径D90の粒径比D90/D10も、体積基準の粒度分布における分散の程度を表す指標の一つとなる。アルミン酸塩蛍光体(I)の粒径比D90/D10が3.0以下であると、個々のアルミン酸塩蛍光体(I)粒子の大きさにばらつきが少なく、大きさが比較的揃っていることを表わす。粒径比D90/D10が3.0以下であると、個々のアルミン酸塩蛍光体(I)粒子の大きさにばらつきが少なく、比較的揃った大きさであるため、アルミン酸塩蛍光体(I)が蛍光部材中において分散性が良好となり、発光装置から取り出される光束を高くすることができる。
【0053】
本発明の第三の実施形態に係るアルミン酸塩蛍光体は、平均円相当径Dcが13μm以上であり、前記式(I)で表される組成を有する。
アルミン酸塩蛍光体(I)は、平均円相当径Dcが13μm以上であることによって、粒径が大きく、高い発光強度を有する。アルミン酸塩蛍光体(I)は、前述のアルミン酸塩蛍光体の製造方法により製造されたものであることが好ましい。アルミン酸塩蛍光体(I)の平均円相当径Dcは、好ましくは13.5μm以上、より好ましくは14μm以上である。アルミン酸塩蛍光体(I)の平均円相当径Dcは、30μm以下であってもよい。
【0054】
本明細書において、円相当径とは、以下のように測定した値をいう。走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて得られたアルミン酸塩蛍光体のSEM画像を画像解析ソフト(例えば、WinROOF2013、三谷商事株式会社製)を用いて画像解析を行い、粒径が1μm以下の蛍光体粒子を除き、SEM画像上で個々の蛍光体粒子の外形が確認できる20個以上のアルミン酸塩蛍光体粒子について2値化処理を行う。SEM画像上で確認できる範囲の粒径は、粒子の最長径を意味する。2値化処理した20個以上のサンプルについて、2値化処理した粒子形状を円と仮定し、その円の面積と等しい正円の直径を円相当径とした。測定した20個以上のサンプルの円相当径の粒径分布の平均値Avと標準偏差σを求め、(平均値Av-標準偏差σ)以上(平均値Av+標準偏差σ)以下の数値を満たしていない数値の円相当径を除外し、残ったサンプルの円相当径の算術平均値を平均円相当径Dcとした。
【0055】
式(I)において、XはBaを含むことが好ましい。アルミン酸塩蛍光体(I)の組成において、式(I)におけるXがBaを含むことにより、発光強度を高くすることができる。
【0056】
式(I)における変数pは、Ba、Sr及びCaからなる群より選択される少なくとも一種の元素の合計モル比である。変数pが、式(I)において、0.5≦p≦1.0を満たさない場合は、アルミン酸塩蛍光体(I)の結晶構造が不安定となる場合があり、発光強度が低下する虞がある。変数pは、好ましくは0.60以上、より好ましくは0.80以上である。また変数pは、0.99以下であってもよい。
【0057】
式(I)における変数qはMgのモル比であり、変数qが1.0を超える場合は、Mgのモル比が高くなり、相対的に賦活元素となるMn又はEuの量が少なくなり、相対発光強度が低下する傾向がある。アルミン酸塩蛍光体(I)にMgが含まれていなくてもよい。式(I)における変数qは、好ましくは0<q≦0.7、より好ましくは0<q≦0.6を満たす数である。式(I)における変数qの下限は、より好ましくは0.05であり、さらに好ましくは0.1である。アルミン酸塩蛍光体(I)の組成において、式(I)における変数qが、0≦q≦1.0を満たす数であると、近紫外から青色領域の光励起による発光スペクトルが510nm以上525nm以下の範囲に発光ピーク波長を有し、反射率が比較的低く、発光強度が高くなる傾向がある。
【0058】
式(I)における変数rは、Mnのモル比である。Mnは、アルミン酸塩蛍光体(I)の賦活元素である。なお、アルミン酸塩蛍光体(I)は、賦活元素として、Mn及びEuの少なくとも一方を含むことが好ましく、Mnを含むことがより好ましい。アルミン酸塩蛍光体(I)は、Mnに加えてEu、Ce等の希土類元素を更に含んでいてもよい。特に、アルミン酸塩蛍光体(I)は、賦活元素としてMnとEuとを含むことにより、Euが光を吸収して電子が励起され、その励起エネルギーがEuからMnへ伝達され、さらにMnの発光に寄与することが期待される。そのため、近紫外から青色領域の光励起により、アルミン酸塩蛍光体(I)の発光強度を高くすることができる。式(I)における、変数rは、Mnのモル比であり、変数rが0.7を超える場合にはMnの賦活量が多くなりすぎ、アルミン酸塩蛍光体(I)は、濃度消光が起こり、発光強度が低くなる傾向がある。式(I)において、変数rは、好ましくは0.2≦r≦0.7、より好ましくは0.4≦r≦0.6を満たす数である。式(I)において、変数rは、より好ましくは0.45以上の数であり、より好ましくは0.55以下の数である。
【0059】
式(I)における変数tは、Euのモル比である。Euは、アルミン酸塩蛍光体(I)の賦活元素である。変数tが0.5を超えると、アルミン酸塩蛍光体(I)は、発光強度が低下する傾向がある。式(I)において変数tは、好ましくは0.1≦t≦0.5、より好ましくは0.2≦t≦0.4を満たす数である。
【0060】
式(I)における変数pと変数tの合計値(以下、「変数p+t」ともいう。)は、アルカリ土類金属元素とEuの合計のモル比であり、変数p+tが0.5未満又は1.2を超えると、アルミン酸塩蛍光体(I)は、結晶構造が不安定となる傾向があり、発光強度が低下する虞がある。変数p+tは、好ましくは0.55以上、より好ましくは0.60以上の数である。また、変数p+tは、好ましくは1.10以下、より好ましくは1.05以下の数である。
【0061】
式(I)における変数rと変数tの合計(以下、「変数r+t」ともいう。)は、賦活元素であるMnとEuの合計のモル比であり、変数r+tが0.7を超えると、アルミン酸塩蛍光体(I)は、例えば近紫外から青色領域の光で励起された場合に反射率が高くなり、発光強度が低くなる傾向がある。式(I)において、変数r+tが0.1未満の場合には、賦活量が少なく、アルミン酸塩蛍光体(I)は、近紫外から青色領域の光で励起された場合に、光の吸収が少なく、発光強度を高くすることが困難になる場合がある。
【0062】
式(I)における変数qと変数rの合計(以下、「変数q+r」ともいう。)は、0.2≦q+r≦1.0を満たす数である。変数q+rが0.2未満または1を超えると、充分な相対発光強度が得られない場合がある。変数q+rは、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上の数であり、また好ましくは0.99以下、より好ましくは0.98以下の数である。
【0063】
式(I)における変数sは、Alのモル比であり、変数sが8.5未満又は13を超える場合には、結晶構造が不安定となり、アルミン酸塩蛍光体(I)は、近紫外から青色領域の光で励起された場合に、発光強度が低下する傾向がある。式(I)において、変数sは、好ましくは9.0≦s≦13.0を満たす数である。式(I)において、変数sは、より好ましくは12.0以下、さらに好ましくは11.0以下である。
【0064】
平均粒径D2が13μm以上であるか、体積平均粒径Dm2が20μm以上である、アルミン酸塩蛍光体(I)が、本開示に係る第一の実施形態に係る製造方法によって製造されたものであることが好ましい。アルミン酸塩蛍光体(I)が、第一の実施形態に係る製造方法において、第二のフラックスとして、K及びNaから選択される少なくとも一種の金属元素を含む化合物を用いた場合には、アルミン酸塩蛍光体(I)から微量のK及びNaから選択される少なくとも一種の金属元素が検出される場合がある。このような場合であっても、アルミン酸塩蛍光体(I)の組成は、式(I)を満たすものである。
【0065】
アルミン酸塩蛍光体(I)は、マンガン(Mn)で賦活され、近紫外から青色領域の光励起により緑色を発光する。アルミン酸塩蛍光体(I)は、具体的には380nm以上485nm以下の波長範囲の光を吸収した発光スペクトルにおける発光ピーク波長が、好ましくは485nm以上570nm以下、より好ましくは505nm以上550nm以下、さらに好ましくは515nm以上523nm以下の範囲にある。
【0066】
発光装置
本発明の一実施形態に係るアルミン酸塩蛍光体(I)を用いた発光装置の一例を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第三の実施態様に係る発光装置100を示す概略断面図である。
【0067】
発光装置100は、成形体40と、発光素子10と、蛍光部材50とを備える。成形体40は、第1のリード20及び第2のリード30と、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を含む樹脂部42とが一体的に成形されてなるものである。成形体40は底面と側面を持つ凹部を形成しており、凹部の底面に発光素子10が載置されている。発光素子10は一対の正負の電極を有しており、その一対の正負の電極はそれぞれ第1のリード20及び第2のリード30とそれぞれワイヤ60を介して電気的に接続されている。発光素子10は蛍光部材50により被覆されている。蛍光部材50は、例えば、発光素子10からの光を波長変換する蛍光体70と樹脂を含む。更に蛍光体70は、第一の蛍光体71と第二の蛍光体72とを含む。発光素子10の正負一対の電極に接続された第1のリード20及び第2のリード30は、発光装置100を構成するパッケージの外方に向けて、第1のリード20及び第2のリード30の一部が露出されている。これらの第1のリード20及び第2のリード30を介して、外部から電力の供給を受けて発光装置100を発光させることができる。
【0068】
発光素子10は、励起光源として用いられており、380nm以上485nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものであることが好ましい。発光素子10の発光ピーク波長の範囲は、より好ましくは390nm以上480nm以下であり、さらに好ましくは420nm以上470nm以下である。前記アルミン酸塩蛍光体は、380nm以上485nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する励起光源からの光により効率よく励起され、高い発光強度を有するアルミン酸塩蛍光体により、発光素子10からの光と蛍光体70からの蛍光との混色光を発する発光装置100を構成することが可能となる。
【0069】
発光素子10の発光スペクトルの半値幅は、例えば、30nm以下とすることができる。発光素子10は、例えば、窒化物系半導体(InAlGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)を用いた半導体発光素子を用いることが好ましい。光源として半導体発光素子を用いることによって、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。
【0070】
発光装置100は、少なくとも本開示の第二の実施形態に係るアルミン酸塩蛍光体(I)と、380nm以上485nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する励起光源とを備える。
【0071】
第一の蛍光体71は、主として本開示の第二の実施形態に係るアルミン酸塩蛍光体(I)を含み、例えば、発光素子10を覆う蛍光部材50に含有される。第一の蛍光体71を含有する蛍光部材50により発光素子10が覆われた発光装置100では、発光素子10から出射された光の一部がアルミン酸塩蛍光体に吸収されて、緑色光として放射される。380nm以上485nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する光を発する発光素子10を用いることで、発光効率が高い発光装置を提供することができる。
【0072】
第一の蛍光体71の含有量は、例えば樹脂100質量部に対して10質量部以上200質量部以下とすることができ、2質量部以上40質量部以下であることが好ましい。
【0073】
蛍光部材50は第一の蛍光体71とは発光ピーク波長が異なる第二の蛍光体72を含むことが好ましい。例えば、発光装置100は、380nm以上485nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する光を放出する発光素子10と、この光によって励起される第一の蛍光体71及び第二の蛍光体72を適宜備えることにより、広い色再現範囲や高い演色性を得ることができる。
【0074】
第二の蛍光体72としては、発光素子10からの光を吸収し、第一の蛍光体71とは異なる波長の光に波長変換するものであればよい。例えば、(Ca,Sr,Ba)SiO:Eu、(Ca,Sr,Ba)MgSi16(F,Cl,Br):Eu、Si6-zAl8-z:Eu(0<z≦4.2)、(Sr、Ba,Ca)Ga:Eu、(Lu,Y,Gd,Lu)(Ga,Al)12:Ce、(La,Y,Gd)Si11:Ce、CaScSi12:Ce、CaSc:Ce、K(Si,Ge,Ti)F:Mn、(Ca,Sr,Ba)Si:Eu、CaAlSiN:Eu、(Ca,Sr)AlSiN:Eu、(Sr,Ca)LiAl:Eu、(Ca,Sr)MgLiSi:Eu、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn等が挙げられる。
【0075】
蛍光部材50が第二の蛍光体72を更に含む場合、その第二の蛍光体72は、赤色に発光する赤色蛍光体であることが好ましく、380nm以上485nm以下の波長範囲の光を吸収し、610nm以上780nm以下の波長範囲の光を発することが好ましい。発光装置が赤色蛍光体を含むことで、照明装置、液晶表示装置等に、より好適に適用することができる。
赤色蛍光体としては、組成式がKSiF:Mn、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mnで示されるMn賦活蛍光体、CaSiAlN:Eu、(Ca,Sr)AlSiN:Eu、SrLiAl:Euで示されるEu賦活窒化物蛍光体、等を挙げることができる。これらのうち、赤色蛍光体は、色純度を高くし、色再現範囲を広げられる観点から、発光スペクトルの半値幅が20nm以下であるMn賦活フッ化物蛍光体であることが好ましい。
【0076】
第一の蛍光71体及び第二の蛍光体72(以下、併せて単に「蛍光体70」ともいう)は、封止材料とともに発光素子を被覆する蛍光部材50を構成する。蛍光部材50を構成する封止材料としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。
【実施例
【0077】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0078】
製造例1
仕込みモル比がBa1.0Mg0.45Mn0.5Al1016.95で表わされる組成となるように第一の混合物を製造した。原料として、BaCO、Al、MgO、MnCOを用いて、表1に示すモル比となるように、各原料を混合し、第一の混合物を得た。第一の混合物に、さらに第一のフラックスとしてMgFを加え、第二のフラックスとしてNaFを加えた。第一のフラックスであるMgF及び第二のフラックスであるNaFは、フラックスを含まない第一の混合物に含まれるAlのモル数10に対して、第一のフラックスに含まれるMgのモル数と第二のフラックスに含まれるNaのモル数が、表1に示すモル数となるように、第一の混合物に加えた。第一のフラックス及び第二のフラックスを含む第一の混合物をアルミナ坩堝に充填し、蓋をして、Hが3体積%、Nが97体積%の還元性雰囲気中で、1500℃、5時間で、第一の熱処理を行い、第一焼成物1を得た。
【0079】
製造例2~21
表1に示すモル比となるように各原料を混合して各第一の混合物を得た。Euを含む化合物として、Euを用いた。また、第一のフラックスとしてMgF又はAlFから選ばれる少なくとも一種を用い、第二のフラックスとしてNaF及びKFから選ばれる少なくとも一種を用いた。各第一の混合物を用いたこと以外は、製造例1と同様にして、第一焼成物2~21を得た。
【0080】
平均粒径(D1)の測定
第一焼成物1~21について、Fisher Sub-Sieve Sizer Model 95(Fisher Scientific社製)を用いて、気温25℃、湿度70%RHの環境下において、1cm分の試料を計り取り、専用の管状容器にパッキングした後、一定圧力の乾燥空気を流し、差圧から比表面積を読み取り、FSSS法による平均粒径D1を算出した。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
表1に示すように、製造例1~19の第一焼成物1~19は、FSSS法により測定した平均粒径D1が6μm以上であった。一方、製造例20、21の第一焼成物20、21は、平均粒径D1が6μm未満であった。
【0083】
実施例1から7
仕込みモル比が、表2に示されたBa1.0Mg0.45Mn0.5Al1016.95で表わされる組成となるように、第一焼成物1、BaCO、MgO、MnCO、及びAlを用いて、各量の第一焼成物1及び各原料を混合し、各第二の混合物を得た。表2に示す各実施例における第一焼成物の含有量は、第二の混合物100質量%に対する質量%で表した。さらに第一のフラックスとしてMgFと第二のフラックスとしてNaFを用い、フラックスを含まない第二の混合物に含まれるAlのモル数10に対して、第一のフラックスに含まれるMgのモル数と第二のフラックスに含まれるNaのモル数が、表2に示すモル数となるように、第二の混合物に加えた。第一のフラックス及び第二のフラックスを含む第二の混合物をアルミナ坩堝に充填し、蓋をして、Hが3体積%、Nが97体積%の還元性雰囲気中で、1500℃、5時間で、第二の熱処理を行ない、焼成物を得た。この焼成物をポリエチレン製の容器内の脱イオン水中に、固体分散媒としてアルミナボールを用いて、30分間分散させ、その後、目開き48μmのメッシュを用いて湿式ふるいにより粗大粒子を除去し、沈降分級により得られた焼成物のうち小粒子側の粒子を15質量%から20質量%除去し、脱水及び乾燥する後処理を行い、実施例1から7に係るアルミン酸塩蛍光体である各第二焼成物を得た。
【0084】
比較例1
比較例1は、第二の混合物を準備することなく、また、第二の熱処理を行なうことなく、第一焼成物1をアルミン酸塩蛍光体とした。
【0085】
比較例2
比較例2は、第二の混合物を準備することなく、第一焼成物1に第二の熱処理を行なったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2に係るアルミン酸塩蛍光体である第二焼成物を得た。表2に示す比較例2の第二焼成物の仕込みモル比は、表1における製造例1の第一焼成物1の仕込みモル比と同じである。
【0086】
比較例3
比較例3は、第二の混合物を準備することなく、また、第二の熱処理を行なうことなく、第一焼成物2をアルミン酸塩蛍光体とした。
【0087】
実施例8
実施例8は、第一焼成物2を用い、さらにBaCO、MgO、MnCO、Alを用いて、表2に示されたBa1.0Mg0.45Mn0.5Al1016.95で表わされる仕込みモル比となるように、第一焼成物2及び各原料を混合し、第二の混合物を得た。表2に示す各実施例における第一焼成物の含有量は、第二の混合物100質量%に対する質量%で表した。この第二の混合物を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例8に係るアルミン酸塩蛍光体である第二焼成物を得た。
【0088】
比較例4
比較例4は、第一焼成物20を用い、さらにBaCO、MgO、MnCO、Alを用いて、表2に示されたBa1.0Mg0.45Mn0.5Al1016.95で表わされる仕込みモル比となるように、第一焼成物20と各原料を混合し、第二の混合物を得た。これらの各第二の混合物を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、比較例4に係るアルミン酸塩蛍光体である第二焼成物を得た。
【0089】
比較例5
比較例5は、第一焼成物21を用い、さらにBaCO、MgO、MnCO、Alを用いて、表2に示されたBa1.0Mg0.45Mn0.5Al1016.95で表わされる仕込みモル比となるように、第一焼成物21と各原料を混合し、第二の混合物を得た。表2に示す各実施例における第一焼成物の含有量は、第二の混合物100質量%に対する質量%で表した。これらの各第二の混合物を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、比較例5に係るアルミン酸塩蛍光体である第二焼成物を得た。
【0090】
比較例6
比較例6は、第二の混合物を準備することなく、また、第二の熱処理を行なうことなく、第一焼成物3をアルミン酸塩蛍光体とした。
【0091】
実施例9
実施例9は、第一焼成物3を用い、さらにBaCO、MgO、MnCO、Alを用いて、表2に示されたBa1.0Mg0.45Mn0.5Al1016.95で表わされる仕込みモル比となるように、第一焼成物3及び各原料を混合し、第二の混合物を得た。表2に示す各実施例における第一焼成物の含有量は、第二の混合物100質量%に対する質量%で表した。この第二の混合物を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例9に係るアルミン酸塩蛍光体である第二焼成物を得た。
【0092】
比較例7
比較例7は、第二の混合物を準備することなく、また、第二の熱処理を行なうことなく、第一焼成物4をアルミン酸塩蛍光体とした。
【0093】
実施例10、11、12
実施例10、11、及び12は、第一焼成物4を用い、さらにBaCO、MnCO、Alを用いて、表2に示されたBa1.0Mn0.5Al1016.5で表わされる仕込みモル比となるように、第一焼成物4及び各原料を混合し、各第二の混合物を得た。表2に示す各実施例における第一焼成物の含有量は、第二の混合物100質量%に対する質量%で表した。この第二の混合物に、さらに第一のフラックスとしてAlFと、第二のフラックスとしてNaFとを用い、第一のフラックスであるAlF及び第二のフラックスであるNaFを含まない第二の混合物に含まれるAlのモル数10に対して、第一のフラックスに含まれるAlのモル数と第二のフラックスに含まれるNaのモル数が、表2に示すモル数となるように加えたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例10、11及び12に係るアルミン酸塩蛍光体である第二焼成物を得た。
【0094】
比較例8
比較例8は、第二の混合物を準備することなく、第一焼成物4に第二の熱処理を行なったこと以外は、比較例2と同様にして、比較例8に係るアルミン酸塩蛍光体である第二焼成物を得た。表2に示す比較例8の第二焼成物の仕込みモル比は、製造例4の第一焼成物の仕込みモル比と同じである。
【0095】
比較例9
比較例9は、第二の混合物を準備することなく、また、第二の熱処理を行なうことなく、第一焼成物5をアルミン酸塩蛍光体とした。
【0096】
実施例13
実施例13は、第一焼成物5を用いて、さらにBaCO、Eu、MgO、MnCO、Alを用いて、表2に示されたBa0.9Eu0.1Mg0.5Mn0.5Al1017で表わされる仕込みモル比となるように、第一焼成物5及び各原料を混合し、第二の混合物を得た。表2に示す各実施例における第一焼成物の含有量は、第二の混合物100質量%に対する質量%で表した。この第二の混合物を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例13に係るアルミン酸塩蛍光体である第二焼成物を得た。
【0097】
実施例2A
実施例2Aは、実施例2と同様にして、実施例2Aに係るアルミン酸塩蛍光体である第二焼成物を得た。
【0098】
実施例14
実施例14は、製造例1によって得られた第一焼成物1をポリエチレン製の容器内の脱イオン水中に分散させ、固体分散媒としてアルミナボールを用いて240分間分散させた後、湿式篩、分級、脱水、乾燥、乾式篩の順に分散処理を行った。分散処理後の第一焼成物1を用い、実施例2と同様にして焼成物を得て、実施例2と同様に後処理して、実施例14に係るアルミン酸塩蛍光体である第二焼成物を得た。実施例14において、第一焼成物1の仕込みモル比、フラックスのモル比、第二焼成物の仕込みモル比は、実施例2と同じである。
【0099】
粒径及び分散度の測定
実施例1から13、2A、14及び比較例1から9に係るアルミン酸塩蛍光体について、各製造例の第一焼成物と同様にして、FSSS法により平均粒径D2を測定し、レーザー回折散乱式粒度分布測定方により、体積平均粒径Dm2(50%体積粒径)を測定した。これらの値から各実施例及び比較例の分散度Dm2/D2を算出した。結果を表2又は表4に示す。また、実施例2A、実施例14に係るアルミン酸塩蛍光体について、さらにレーザー回折散乱式粒度分布測定法による粒度分布において小径側から積算した10%体積粒径D10と90%体積粒径D90とを測定し、粒径比D90/D10を算出した。結果を表4に示す。
【0100】
発光スペクトルの測定
実施例1から13、2A、14及び比較例1から9に係るアルミン酸塩蛍光体について、発光特性を測定した。量子効率測定装置(大塚電子株式会社製、QE-2000)を用いて、励起波長450nmの光を各蛍光体に照射し、室温(25℃±5℃)における発光スペクトルを測定した。図2に、実施例2及び比較例1に係るアルミン酸塩蛍光体について、波長に対する相対発光強度(%)の発光スペクトルを示した。
【0101】
発光ピーク波長(nm)
実施例1から13及び比較例1から9に係るアルミン酸塩蛍光体について、発光スペクトルが最大となる波長を発光ピーク波長(nm)として測定した。結果を表2に示す。
【0102】
相対発光強度(%)
実施例1から8、2A、14及び比較例1から5に係るアルミン酸塩蛍光体ついて、測定した発光スペクトルから、比較例1の発光ピーク波長における発光強度を100%として相対発光強度を算出した。結果を表2又は表4に示す。
実施例9及び比較例6にかかるアルミン酸塩蛍光体ついて、測定した発光スペクトルから、比較例6の発光ピーク波長における発光強度を100%として相対発光強度を算出した。結果を表2に示す。
実施例10から12及び比較例7、8に係るアルミン酸塩蛍光体ついて、測定した発光スペクトルから、比較例7の発光ピーク波長における発光強度を100%として相対発光強度を算出した。結果を表2に示す。
実施例13及び比較例9にかかるアルミン酸塩蛍光体ついて、測定した発光スペクトルから、比較例9の発光ピーク波長における発光強度を100%として相対発光強度を算出した。結果を表2に示す。
【0103】
SEM写真
走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)を用いて、実施例2に係るアルミン酸塩蛍光体と比較例1に係るアルミン酸塩蛍光体のSEM写真を得た。図3は、実施例2に係るアルミン酸塩蛍光体のSEM写真であり、図4は、比較例1に係るアルミン酸塩蛍光体のSEM写真である。
【0104】
平均円相当径Dc
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、撮影倍率1000倍で実施例2に係るアルミン酸塩蛍光体及び比較例1に係るアルミン酸塩蛍光体のSEM画像を得て、該SEM画像を画像解析ソフト(WinROOF2013、三谷商事株式会社製)を用いて画像解析を行ない、粒径が1μm以下の蛍光体粒子を除き、SEM画像上で個々の蛍光体粒子の外形が確認できる20個以上の蛍光体粒子について2値化処理を行った。SEM画像上において、蛍光体粒子の粒径は、粒子の最長径とした。2値化処理した20個以上のサンプルについて、2値化処理した粒子形状を円と仮定し、その円の面積と等しい正円の直径を円相当径とした。測定した20個以上のサンプルの円相当径の粒径分布の平均値Avと標準偏差σを求め、(平均値Av-標準偏差σ)以上(平均値Av+標準偏差σ)以下の数値を満たしていない数値の円相当径を除外し、残ったサンプル(実施例2は15サンプル、比較例1は16サンプル)の円相当径の算術平均値を平均円相当径Dcとした。結果を表3に示す。実施例2に係るアルミン酸塩蛍光体の円相当径の平均値Avは13.8μmであり、標準偏差σは3.95であった。また、比較例1に係るアルミン酸塩蛍光体の円相当径の平均値Avは12.2μmであり、標準偏差は4.00であった。
【0105】
発光装置
実施例2A及び実施例14に係る各アルミン酸塩蛍光体を第一の蛍光体とし、第二の蛍光体とシリコーン樹脂とを混合分散し、脱泡して蛍光部材用組成物を得た。蛍光部材用組成物は、製造する発光装置が発する混色光がCIE1931に規定されるxy色度座標において、xが0.26、yが0.22(x=0.26、y=0.22)付近となるように配合比を調整した。発光ピーク波長が450nmである青色発光LED(発光素子)上に、蛍光部材用組成物を充填、硬化させて、図1に示されるような発光装置100をそれぞれ製造した。
【0106】
相対光束
積分級を使用した全光束測定装置を用いて、実施例2A及び実施例14に係る各アルミン酸塩蛍光体を用いた各発光装置の光束を測定した。実施例2Aに係るアルミン酸塩蛍光体を用いた発光装置の光束を100%として、実施例14に係るアルミン酸塩蛍光体を用いた発光装置の光束を相対光束として算出した。結果を表4に示す。
【0107】
【表2】
【0108】
表2に示すように、実施例1から13に係るアルミン酸塩蛍光体は、平均粒径D1が6μm以上の第一焼成物を用いた第二の混合物に、第二の熱処理を行なうことにより、第一焼成物が種結晶となって成長が促進され、FSSS法による平均粒径D2が13μm以上であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積平均粒径Dm2が20μm以上の平均粒径の大きなアルミン酸塩蛍光体が得られた。実施例1から13に係るアルミン酸塩蛍光体は、比較例1、6、7、9よりも、相対発光強度が高くなった。
実施例2から6に示すように、平均粒径D1が6μm以上の第一焼成物を30質量%以上80質量%以下含む第二混合物を用いた場合、相対発光強度が110%を超えて大きくなった。
【0109】
一方、比較例2、8に係るアルミン酸塩蛍光体は、第二の混合物を準備することなく、また、フラックスを用いることなく第二の熱処理を行なったため、結晶成長が十分ではなく、FSSS法による平均粒径D2が13μm未満であり、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による体積平均粒径Dm2が20μm未満であった。比較例2に係るアルミン酸塩蛍光体は、実施例1から7に係るアルミン酸塩蛍光体よりも相対発光強度が低くなった。比較例8に係るアルミン酸塩蛍光体も、実施例10、11、12に係るアルミン酸塩蛍光体よりも相対発光強度が低くなった。
【0110】
実施例8に係るアルミン酸塩蛍光体は、比較例1に用いた第一焼成物1よりも粒径の小さい第一焼成物2を用いたが、第一のフラックス及び第二のフラックスを含む第二の混合物の熱処理によって結晶が成長し、第二焼成物の平均粒径D2及び体積平均粒径Dm2ともに比較例1よりも大きくなり、相対発光強度も高くなった。一方、比較例3に係るアルミン酸塩蛍光体は、相対発光強度が実施例8又は比較例1よりも低くなった。これは、第一焼成物の平均粒径D1が、比較例1に係るアルミン酸塩蛍光体として用いた第一焼成物の平均粒径D1よりも小さいためであると考えられる。
比較例4、5に係るアルミン酸塩蛍光体は、実施例8に係るアルミン酸塩蛍光体よりも相対発光強度が低く、比較例1に係るアルミン酸塩蛍光体よりも相対発光強度が低くなった。これは、FSSS法による平均粒径D1が6μm未満の第一焼成物を含む第二の混合物を用いて第二の熱処理を行なっても、結晶成長が十分ではなかったためと考えられる。
【0111】
【表3】
【0112】
表3に示すように、実施例2に係るアルミン酸塩蛍光体は、平均円相当径Dcが14.3μmと大きい。一方、比較例1に係るアルミン酸塩蛍光体は、平均円相当径Dcが13μm未満である。実施例2に係るアルミン酸塩蛍光体は、比較例1に係るアルミン酸塩蛍光体と比べて相対発光強度が高くなった。
【0113】
【表4】
【0114】
表4に示すように、実施例14に係るアルミ酸塩蛍光体は、分散度Dm2/D2が1.3である。一方、実施例2Aに係るアルミン酸塩蛍光体は、分散度Dm2/D2が1.6より大きい。実施例14に係るアルミン酸塩蛍光体は、実施例2Aに係るアルミン酸塩蛍光体と比べて相対発光強度は低かったが、逆に相対光束は高くなった。この結果から、実施例14に係るアルミン酸塩蛍光体は、分散度Dm2/D2が1.3であり、発光装置100の蛍光部材中で分散性が良好となり、蛍光部材への充填率が高くなり、蛍光体の堆積層の厚さを薄くできるので、発光装置から取り出される光束が大きくなったと推測される。
また、表4に示すように、実施例14に係るアルミン酸塩蛍光体は、粒径比D90/D10が2.5であり、体積基準の粒度分布における分散の程度が良好であり、個々の蛍光体粒子の大きさにばらつきが少なく、比較的揃った大きさである。そのため、発光装置100の蛍光部材中における分散性がより向上し、発光装置から取り出される光束が大きくなったと推測される。
【0115】
図2に示すように、実施例2に係るアルミン酸塩蛍光体の発光スペクトルは、比較例1に係るアルミン酸塩蛍光体の発光スペクトルと比べて、発光ピーク波長は変化しておらず、相対発光強度が高くなっていることが確認できた。
【0116】
図3のSEM写真に示すように、実施例2に係るアルミン酸塩蛍光体は、六方晶系の結晶構造を示す、少なくとも一面が六角形の板状の結晶体であった。図4のSEM写真に示すように、比較例1に係るアルミン酸塩蛍光体も、六方晶系の結晶構造を示す、少なくとも一面が六角形の板状の結晶体であった。図3に示す実施例2に係るアルミン酸塩蛍光体の平均粒径は、図4に示す比較例1に係るアルミン酸塩蛍光体の平均粒径より大きいが、粒子形状に大きな違いはないことが確認できた。
【0117】
図5は、実施例2に係るアルミン酸塩蛍光体のSEM写真における任意に20個以上の蛍光体粒子を2値化処理したイメージ図であり、図6は、比較例1に係るアルミン酸塩蛍光体のSEM写真における任意の20個以上の蛍光体粒子を2値化処理したイメージ図である。図5の実施例2のアルミン酸塩蛍光体のSEM写真において、20個以上の蛍光体粒子を2値化処理したイメージ図と、図6の比較例1のアルミン酸塩蛍光体のSEM写真において、20個以上の蛍光体粒子を2値化処理したイメージ図では、図5の実施例2のアルミン酸塩蛍光体の方が、粒径が大きい蛍光体粒子が多いように見える。実施例2のアルミン酸塩蛍光体は、平均円相当径Dcが14.3μmと大きくなり、比較例1のアルミン酸塩蛍光体は、平均円相当径Dcが13μm未満であった。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の一実施形態の製造方法によって得られたアルミン酸塩蛍光体は、発光強度が高く、このアルミン酸塩蛍光体を用いた発光装置は、一般照明、車載照明、ディスプレイ、液晶用バックライト、信号機、照明式スイッチ等の幅広い分野での使用することができる。
【符号の説明】
【0119】
10:発光素子、40:成形体、50:蛍光部材、71:第一の蛍光体、72:第二の蛍光体、100:発光装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6