(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】クロモジ抽出物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/54 20060101AFI20220203BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20220203BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220203BHJP
A23F 3/34 20060101ALI20220203BHJP
A23L 2/52 20060101ALN20220203BHJP
A61P 21/00 20060101ALN20220203BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20220203BHJP
A61K 135/00 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
A61K36/54
A23L33/105
A61P43/00 105
A23F3/34
A23L2/00 F
A61P21/00
A61K127:00
A61K135:00
(21)【出願番号】P 2016216590
(22)【出願日】2016-11-04
【審査請求日】2019-08-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・平成28年10月15日、第23回日本未病システム学会学術総会抄録集、第93頁において開示
(73)【特許権者】
【識別番号】513067727
【氏名又は名称】高知県公立大学法人
(73)【特許権者】
【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591039425
【氏名又は名称】高知県
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 守
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 高志
(72)【発明者】
【氏名】金 哲史
(72)【発明者】
【氏名】柏木 丈拡
(72)【発明者】
【氏名】篠原 速都
(72)【発明者】
【氏名】川北 浩久
(72)【発明者】
【氏名】岡本 佳乃
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 由佳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大進
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-074052(JP,A)
【文献】特開2015-203006(JP,A)
【文献】特開2013-173719(JP,A)
【文献】国際公開第2010/134373(WO,A1)
【文献】特開2015-131774(JP,A)
【文献】特開2002-199864(JP,A)
【文献】特開2013-001701(JP,A)
【文献】高知新聞,2015年12月19日,15ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/54
A23L 33/00
A61P
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロモジ属植物の抽出物を含有し、
前記クロモジ属植物が、ケクロモジの茎及び葉部に由来する、
高脂肪食を摂取している者のための、GLUT4遺伝子発現及び/又はUCP-3遺伝子発現促進用組成物。
【請求項2】
前記抽出物が、水抽出物、有機溶媒抽出物又は含水有機溶媒抽出物である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
飲食料品、医薬部外品、又は医薬品である、請求項1
又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記飲食料品が、茶飲料である、請求項
3に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗肥満活性、筋持久力改善活性、及び肝機能改善活性等の優れた生活習慣病予防及び/又は改善効果を有し、飲食料品、医薬品、又は医薬部外品として有用な天然由来物に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満は万病の元と謂われるように防止することが重要である。近年、脂肪の体への影響に関する研究が進み、特に内臓脂肪の蓄積が肥満だけでなく、生活習慣病や高脂血症、耐糖能異常、高血圧など高い相関関係があることが示唆され、内蔵脂肪を蓄積させないことが、多くの疾患を予防できると考えられている。これらの考え方に基づいた病態がメタボリックシンドロームである。厚生労働省は、中年男性では二人に一人がメタボリックシンドロームであり、約2,000万人がメタボリックシンドローム及びその予備群に該当すると見込んでいる(非特許文献1)。
【0003】
また、日本では現在急速に高齢化が進んでおり、ロコモティブシンドロームが大きな社会問題となっている。ロコモティブシンドロームの一つの要因として、加齢に伴う筋量および筋力の減少が挙げられる(非特許文献2)。筋量および筋力の減少を防ぐには、一般的に高強度の筋力トレーニングが最も効果的とされているが、高齢者には心的ストレスや循環器への負荷を伴うことが懸念される。したがって、高齢者における筋力トレーニングは、心的ストレスや循環器への負荷が小さい低強度による筋力トレーニングが提唱されている。しかし、低強度による筋力トレーニングは、筋量および筋力を容易に増加させることが難しい。そこで、持久力を高めて筋力トレーニングを長く行うことが重要となる。
【0004】
また、肝臓は、代謝の中心的な役割を担う生命維持に不可欠の臓器である。肝臓の機能は、通常、循環機能、排出機能、代謝機能、保護・解毒機能及び血液学的機能に大別され、そのいずれかが障害されると、疲労感、倦怠感、食欲不振、黄胆及び微熱を始めとする肝機能障害特有の諸症状が顕現することとなる。肝機能障害の状態が続くと、肝炎、肝硬変、さらには、肝臓癌などの生活習慣病(成人病)の原因ともなりかねない(非特許文献3)。従って、平素より肝機能を正常に保っておくことは、多忙な現代人が毎日を壮快に過ごすためにも、生活習慣病を予防するためにも、極めて大切なことである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】平成18年国民健康・栄養調査報告、厚生労働省(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou08/01.html)
【文献】日本臨床整形外科学会ホームページ(http://www.jcoa.gr.jp/locomo/)
【文献】わが国におけるアルコール性肝障害の実態 全国集計の成績から(日本消化器病学会雑誌Vol. 76 (1979) No. 11 P 2178-2185)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在日本では高額化する医療費を抑えるべく予防医療に注目が集まっており、疾病の発病リスクを軽減することのできる効果的かつ安全な飲食料品、医薬品又は医薬部外品の開発が強く望まれている。
【0007】
また、持久力を上げるための栄養補助食品が市場に存在しているが、一般に上市されているカルニチンなどの持久力改善成分については、その効果が疑問視される部分もあり、ロコモティブシンドロームなどの病態の改善のために、持久力を向上させるための栄養補助食品の開発が強く望まれている。
【0008】
また、アルコール摂取や高カロリー食の増加に伴い、アルコール性肝炎、脂肪肝、肝硬変等の肝疾患は増加の一途を辿っている。このような重大な問題を、肝機能の予防/改善という目的で、医薬品の投与という方法で解決することはもちろん重要なことである。しかし、アルコール性肝炎や脂肪肝などの一部の肝疾患はゆっくりと病状が進行し、長期間経過後に本格的に発症するため、このような場合には、特に日常のケアが重要である。長期間投与という面から、飲食品の摂取という方法で対処することも必要である。このような現状から、肝機能障害の予防、改善効果の高い飲食物の開発が望まれている。
【0009】
そこで本発明の目的は、天然物に由来し、安全性が高く、飲食料品への適用が可能である、優れた肥満改善剤、筋持久力増強剤、及び/又は肝機能改善剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、クスノキ科クロモジ属植物又はその抽出物若しくは精製物が、肥満改善効果、筋持久力改善効果、及び肝機能改善効果等の優れた生活習慣病予防及び/又は改善効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
項1.
クロモジ属植物又はその抽出物を含有する生活習慣病予防及び/又は改善用組成物。
項2.
前記生活習慣病が、肥満、筋持久力低下又は肝機能低下である、項1に記載の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物。
項3.
前記クロモジ属植物が、クロモジ属植物の全草又は葉部、茎部、根部、種子、及び花部からなる群より選択される1又は2以上に由来する、項1又は2に記載の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物。
項4.
クロモジ属植物の品種が、ケクロモジ、ヒメクロモジ、及びオオバクロモジからなる群より選択される1又は2以上である、項1~3のいずれか1項に記載の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物。
項5.
前記抽出物が、水抽出物、有機溶媒抽出物又は含水有機溶媒抽出物である、項1~4のいずれか1項に記載の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物。
項6.
経口、静脈内注射、吸入又は経皮により投与される、項1~5のいずれか1項に記載の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物。
項7.
飲食料品、医薬部外品、又は医薬品である、項1~6のいずれか1項に記載の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物。
項8.
前記飲食料品が、茶飲料である、項1~7のいずれか1項に記載の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物は、天然由来のクロモジ属植物から得られる有効成分を含有しており、安全性の問題がなく、肥満改善効果、筋持久力改善効果、及び肝機能改善効果等の優れた生活習慣病予防及び/又は改善効果を有している。このような安全な生活習慣病予防及び/又は改善用組成物は、安全性が高く、副作用の少ない飲食料品、医薬品又は医薬部外品に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】マウス血清中のトリグリセリド値を示すグラフである。
【
図2】マウス血清中のコレステロール値を示すグラフである。
【
図3】リパーゼ阻害活性評価試験の結果を示すグラフである。
【
図4】マウスの体重の経時変化を示すグラフである。
【
図10】マウスの全身の内臓脂肪の重量を示すグラフである。
【
図11】マウスの筋細胞におけるGLUT4遺伝子の発現量を示すグラフである。
【
図12】マウスの筋細胞におけるUCP-3遺伝子の発現量を示すグラフである。
【
図13】マウス血清中のグルコース値を示すグラフである。
【
図14】マウス血清中のGOT値を示すグラフである。
【
図15】マウス血清中のGPT値を示すグラフである。
【
図16】アルコール負荷試験におけるマウスの肝臓右葉切片の組織像である。
【
図17】マウス血清中のGOT値を示すグラフである。
【
図18】マウス血清中のGPT値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物は、クスノキ科(Lauraceae)クロモジ属植物又はその抽出物若しくは精製物を含有する。ここで、抽出物には、単一成分または単一成分に近い画分にまで精製された精製物も含まれる。
【0015】
クロモジ属植物は、日本や東南アジア等に広く分布し、100種ほどの種類が知られている。日本においては、本州、四国、九州に多く見られる。葉や根に芳香があり、クロモジ属植物であるクロモジは、島根県の隠岐諸島等で古くから煎じて飲用されている。
【0016】
クロモジ属植物は実生(種子から生長する)でも、萌芽更新(切り株から生長する)でも、さらに、古い木の根株からも生育する再生力の強い植物である。伐採後2~3年で再採取可能であるため、非常に利用しやすい植物と言える。
【0017】
クロモジ属植物の品種は、本発明の効果を奏する限り、クロモジ属に含まれる植物であれば限定はされないが、テンダイウヤク(L. strychnifolia)、アオモジ(L. citriodora)、タイワンコウバシ(L. communis)、オキナワコウバシ(L. communis var.okinawensis)、カナクギノキ(L. erythrocarpa)、ヤマコウバシ(L. glauca)、ホンバヤマコウバシ(L. communis)、ホソバヤマコウバシ(L. angustifolia)、ヒメクロモジ(L. umbellate var. lancea Mojyama)、ダンコウバイ(L. obtusiloba)、ウラゲダンコウバイ(L. obtusiloba f.villosa)アブラチャン(L. praecox)、ホソバアブラチャン(L. praecox BLUME forma angustifolia(SUGIMOTO)、ケアブラチャン(L. praecox var.pubescens)、ケクロモジ(L. sericea)、ウスゲクロモジ(L. sericea var.glabrata)、シロモジ(L. triloba)、マルバシロモジ(Parabenzoin trilobum f.integrum)、ケシロモジ(Parabenzoin trilobum f.pilosum)、クロモジ(L. umbellata)、オオバクロモジ(L. umbellate var. membrancea (Maxim) Mojama)、キミノオオバクロモジ(L. umbellata var.aurantiaca)、ナンバンクロモジ(L. akoensis)、L. fragrans、L. fruticosa、L. kariensis、L. megaphylla、L. metcalfiana、L. moupinesis var. szechuanica、L. nacusua、L. prattii、L. pulcherrima var. attenuata、L. pulcherrima var. hemsleyana、L. reflexa、L. setchuensis、L. thomsonii、L. tonkiensis、L. tonkiensis var. subsessilis等が挙げられる。
【0018】
クロモジ属植物は、本発明の効果を顕著に奏する観点から、ケクロモジ、ヒメクロモジ、及びオオバクロモジからなる群より選択される1又は2以上を用いることが好ましく、ケクロモジがより好ましい。クロモジ属植物のうち、ケクロモジは、四国、九州、中国地方等に分布する落葉低木である。新しい枝は緑色を呈しており、1cm程度の枝になると皮目を有するようになる。ケクロモジは、高知県などの四国で豊富に自生しており、葉や枝などを採取可能である。
【0019】
本発明において、クロモジ属植物をそのまま用いる場合は、その調製方法が特に制限されるものではない。クロモジ属植物は、クロモジ属植物の全草又は一部、特に葉部、茎部、根部、種子、花部を別々に1種類ずつ又はそれらの2以上の組合せを乾燥物、あるいはその乾燥物を適宜裁断し、破砕又は粉砕した粉末に調製することができる。クロモジ属植物の乾燥物又はその粉砕物は、例えば、熱湯で煮出して用いることができる。クロモジ属植物の破砕物又は粉砕物は、必要により焙煎して用いることもできる。
【0020】
クロモジ属植物の複数の部位を組み合わせてそのまま用いる場合、その組合せは特に制限されない。より高い本発明の効果を得ることの観点から、クロモジ属植物の部位は、茎部と葉部との組合せが好ましい。また、茎部と葉部との重量比率は、特に制限されないが、より高い本発明の効果を得ることの観点から、乾燥重量を基準として1~10:1とすることができ、1~5:1が好ましく、1~3:1がより好ましく、2~3:1がさらに好ましい。
【0021】
クロモジ属植物の焙煎は、回転式焙煎機等を用いた公知の方法により行われ、特に限定はされない。焙煎温度は、例えば、150~400℃とすることができ、180~350℃が好ましく、200~330℃がより好ましい。焙煎時間は、焙煎温度等の条件により適宜決定されるが、例えば、5~120分とすることができ、10~90分が好ましく、15~60分がより好ましい。
【0022】
本発明において、クロモジ属植物の抽出物を用いる場合は、その抽出方法は特に制限されるものではない。クロモジ属植物の抽出物は、クロモジ属植物の全草又は一部、特に葉部、茎部、根部、種子、花部を別々に1種類ずつ又はそれらの2以上の組合せの乾燥物、あるいはその乾燥物を適宜裁断し、破砕又は粉砕した粉末から、溶媒により抽出される。クロモジ属植物は、自生しているものから容易に入手可能であり、市販品を用いることもできる。
【0023】
クロモジ属植物の全草又は一部を乾燥させる場合は、限定はされないが、天日干し、風乾又は乾燥機を使用して行うことができる。天日干しを行う場合は、乾燥にかかる時間は天候等により左右されるが、例えば6時間以上、好ましくは1日以上、より好ましくは2日以上とすることができる。乾燥機を使用する場合は、一般的に100℃以下、好ましくは40℃以下の乾燥条件下で、例えば、回転乾燥機、熱風乾燥機、伝熱乾燥機、真空乾燥機、真空凍結乾燥機、冷風乾燥機、振動乾燥機、ろ過乾燥機、真空撹拌乾燥機等を用いることが可能である。
【0024】
クロモジ属植物の抽出物を生活習慣病予防及び/又は改善用組成物として用いる場合は、クロモジ属植物の抽出物をそのまま用いてもよく、適宜に希釈又は濃縮して用いてもよい。クロモジ属植物の抽出物を得る場合には、新鮮な植物体を用いることが可能であり、冷蔵、凍結、又は乾燥保存されたクロモジ属植物を用いることや、クロモジ属植物の抽出物の濃縮物を水等の適宜な溶媒に溶解又は希釈して用いることもできる。クロモジ属植物の抽出物の濃縮物は、限定はされないが、液状、ペースト状、泥状のものを用いることができる。
【0025】
クロモジ属植物の抽出に用いる溶媒としては、水、有機溶媒又は含水有機溶媒が挙げられる。適宜の抽出溶媒を用いることにより、クロモジ属植物の水抽出物、有機溶媒抽出物又は含水有機溶媒抽出物を得ることができる。これらの抽出溶媒は、例えば、水、アルコール、又はこれらの混合物が挙げられ、水、メタノール、エタノール、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン又はこれらの混合物が好ましい。より高い本発明の効果を得ることの観点から、これらの抽出溶媒は、水、メタノール、エタノール又は含水エタノールがさらに好ましい。メタノールを用いる場合の濃度は、限定はされないが、より高い抽出効率を得ることの観点から、例えば、40%~99%、好ましくは50%~99%、より好ましくは60%~99%、70%~95%、80%~95%の濃度で用いることができる。含水エタノールを用いる場合のエタノール濃度は、限定はされないが、より高い抽出効率を得ることの観点から、例えば、40%~99%、好ましくは50%~99%、より好ましくは60%~99%、70%~95%、80%~95%の濃度で用いることができる。
【0026】
抽出に用いるクロモジ属植物の部位は、限定はされないが、例えば、葉部、茎部、根部、種子、花部等が挙げられ、より高い本発明の効果を得ることの観点から葉部、茎部又はこれらの組合せが好ましい。本明細書において、クロモジ属植物の茎部には、樹皮及び/又は心材を含んでいてもよい。
【0027】
抽出方法は特に限定はされないが、例えば、クロモジ属植物の全草または一部を裁断し、ミキサー等の公知の方法により破砕し、抽出溶媒を加えて撹拌し、室温ないし加熱を一定の抽出時間で処置後、抽出上清からクロモジ属植物のエキスを分離抽出する方法が挙げられる。また、抽出方法は、クロモジ属植物を抽出溶媒に浸漬した後、室温ないし加熱する条件において、静置する方法でもよい。
【0028】
破砕条件としては、限定はされないが、クロモジ属植物の全草または一部の裁断物が1kg~10kg等の大スケールである場合は、大型バーチカルカッターミキサー等を用いることができ、数10g~数100gの小スケールの場合は、家庭用ミキサー等を用いることができる。例えば、大スケールでの破砕条件を適用する場合は、原料の硬さ、含水率等によって適宜変更されるが、例えば、破砕時間は数十秒~数分間、ミキサーの回転数は10~3000rpmで行うことが可能である。
【0029】
また、抽出条件は通常の条件を適用することができ、限定はされないが、クロモジ属植物の乾燥物を、例えば3~100℃で溶媒に浸漬、加熱還流又はマイクロウェーブ加熱をする方法を採用することができる。抽出温度は、適切な抽出量が得られる限り限定はされないが、例えば、70%エタノール等の含水アルコールを用いた場合は20~100℃とすることができ、22~80℃が好ましく、25~60℃がより好ましい。また、抽出温度は、例えば、水を用いた場合は20~100℃とすることができ、50~100℃が好ましく、70~100℃がより好ましい。抽出時間は、適切な抽出量が得られる限り限定はされないが、例えば、5分以上14日以内、好ましくは10分以上7日以内、より好ましくは15分以上5日以内とすることができる。前記抽出は通常常圧下で行われるが、加圧下で行うことも可能である。溶媒の添加量は、クロモジ属植物の乾燥重量1kgに対して1L~100L程度使用することができる。
【0030】
抽出溶媒を加える前に、クロモジ属植物に、酸、アルカリ、または酵素を加えることで、抽出効率を高めることも可能である。
【0031】
抽出溶媒を加えて撹拌する操作は、公知の方法を用いることができるが、例えば、クロモジ属植物の裁断物又は粉砕物と抽出溶媒とを含む抽出用容器を回転させる方法、前記抽出用容器を磁気式又は機械式の撹拌装置に設置して混合する方法、前記抽出用容器を振とうさせる方法等が挙げられる。
【0032】
撹拌操作は、超音波処理により振動を起こし、抽出効率を高めることも可能である。超音波処理を行う場合は、限定はされないが、例えばクロモジ属植物の全草または一部の裁断物が1kg~10kg等の大スケールである場合は、市販の超音波発生器にクロモジ属植物の裁断物又は粉砕物と抽出溶媒とを含む抽出用容器を設置し、26kHz超音波で60分間処理することにより、超音波処理物を得ることができ、数10g~数100gの小スケールの場合は、40kHzの超音波で60分間処理することにより、超音波処理物を得ることができる。超音波処理の温度条件は、適切な抽出量が得られる限り限定はされないが、2℃~100℃、好ましくは10℃~70℃とすることができる。大スケール用の超音波発生器としては、例えば神明台工業(株)製UT-12を使用することができ、小スケール用の超音波発生器としては、例えばAS ONE(株)製US-3Rを使用することができる。
【0033】
抽出効率を高めるためには、同種又は複数種の抽出溶媒を用いた多段階抽出を行うことも可能である。多段階抽出を行う場合は、第1段階の抽出において得られた残渣に、さらに同種又は複数種の抽出溶媒を加え、室温ないし加熱を行った後、抽出上清からクロモジ属植物のエキスを分離抽出することができる。
【0034】
マイクロウェーブ加熱は、本発明の有効成分の活性が失われない範囲で、マイクロウェーブ照射装置の出力、マイクロウェーブの波長、照射時間等の条件を適宜設定することが可能である。例えば、クロモジ属植物の乾燥物100gに対して、2450MHz、500Wのマイクロウェーブを当てる場合は、10秒~10分、好ましくは30秒~5分で処理することが可能である。
【0035】
抽出上清をそのままクロモジ属植物の抽出物として用いることができる。さらには、抽出上清からクロモジ属植物の抽出物を分離抽出することもできる。この分離抽出段階においては、公知の方法を採用することができ、例えば、ろ過、遠心分離、吸引、圧搾等を行うことが可能である。
【0036】
ろ過により分離抽出する場合は、限定はされないが、例えば、膜ろ過を行うことができる。膜ろ過を行う場合は、例えば、温度条件を2℃~70℃、好ましくは10℃~40℃とすることができ、膜孔径を0.1μm~10μm、好ましくは0.1μm~5μmとすることが可能である。
【0037】
遠心分離により分離抽出する場合は、公知の機器を用いることができ、遠心分離器としては、例えば、分離板型、円筒型、デカンター型等を挙げることができる。遠心分離を行う場合は、例えば、温度条件を2℃~70℃、好ましくは10℃~40℃とすることができ、回転数を1000rpm~10000rpm、好ましくは1500rpm~8000rpm、さらに好ましくは2000rpm~6000rpmとすることができ、遠心時間を10秒~30分、好ましくは20秒~20分、さらに好ましくは30秒~15分とすることができる。
【0038】
圧搾による分離抽出は、圧搾機を用いることも可能であり、圧搾機としては公知の機器を用いることができ、例えば、空気圧式圧搾機、スクリュー式圧搾機等を挙げることができる。
【0039】
クロモジ属植物の抽出物は、希釈や濃縮の前後等に、さらに精製処理に付することより、精製物とすることができる。精製処理には、上記の溶媒による抽出以外に、当業者に公知な方法であるクロマトグラフ法、イオン交換クロマトグラフ法等を単独で、または組み合わせて用いることができる。
【0040】
クロマトグラフ法を用いる場合であっては、例えば、順相若しくは逆相の担体又はイオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー又は遠心液体クロマトグラフィー等のいずれか、又はそれらを組み合わせて用いる方法が挙げられる。クロマトグラフ法を用いる場合の担体、溶出溶媒等の精製条件は、各種のクロマトグラフ法に対応して適宜選択することができる。
【0041】
クロモジ属植物の裁断物又は粉砕物と抽出溶媒とを混合する比率としては、より高い抽出効率を得ることの観点から、水抽出物を得る場合は、例えば、水1Lに対して、クロモジ属植物乾燥体の裁断物又は粉砕物を5g~300g、好ましくは10g~200g、より好ましくは20g~100gとすることができる。また、含水有機溶媒抽出物を得る場合は例えば、溶媒1Lに対して、クロモジ属植物の裁断物又は粉砕物を10g~1kg、好ましくは20g~500g、より好ましくは30g~200gとすることができる。
【0042】
本発明において、クロモジ属植物、クロモジ属植物抽出物の含有量は、より高い本発明の効果を得る観点から、生活習慣病予防及び/又は改善用組成物の総量を基準として、固形分換算で0.000001~100重量%、好ましくは0.00001~90重量%、さらに好ましくは0.0001~80重量%、さらに好ましくは0.001~70重量%、さらに好ましくは0.01~60重量%、さらに好ましくは0.1~50重量%、さらに好ましくは0.2~40重量%、さらに好ましくは0.3~30重量%、さらに好ましくは0.4~25重量%、さらに好ましくは0.5~20重量%、さらに好ましくは0.6~15重量%、さらに好ましくは0.7~10重量%、さらに好ましくは0.8~5重量%、さらに好ましくは0.8~4重量%、さらに好ましくは0.8~3重量%、さらに好ましくは0.8~2重量%とすることができる。
【0043】
本発明において、クロモジ属植物の精製物の含有量は、より高い本発明の効果を得る観点から、生活習慣病予防及び/又は改善用組成物の総量を基準として、固形分換算で0.000000001~1重量%、好ましくは0.00000001~0.9重量%、さらに好ましくは0.0000001~0.8重量%とすることができる。
【0044】
[用途]
本発明者らは、クロモジ属植物又はその抽出物若しくは精製物が、優れた生活習慣病に対する効果、限定はされないが、例えば肥満改善効果、筋持久力改善効果、及び肝機能改善効果を有することを新たに見出した。クロモジ属植物は、天然に由来するものであり、古来より食用されていることから、安全で有効な肥満改善用途、筋持久力増強用途、又は肝機能改善用途に好適である。本発明は、医薬的な用途にも用いられることが可能であるが、非医薬的な用途としても用いられ得る。
【0045】
本明細書において、肥満改善とは、血中の脂質を低下させる作用、リパーゼ阻害作用、又はエネルギーの燃焼促進作用を有することをいう。限定はされないが、血中の脂質は、トリグリセリド(中性脂肪)、総コレステロール、悪玉コレステロールと称されるLDL-コレステロール、遊離脂肪酸等により測定できる。血中の脂質は、血清中で測定されることが好ましい。本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物は、血中のトリグリセリドやコレステロールを低下させることができるため、限定はされないが、脂質異常症(高脂血症)、メタボリックシンドローム、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症の予防及び/又は治療の用途にも好適である。また、本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物は、これらの疾患の患者や、これらの疾患の予防を意識する健常者に向けられる飲食料品にも好適である。
【0046】
膵臓から分泌されるリパーゼ(膵リパーゼ)は消化管における脂質の消化酵素である。食事により摂取された脂質のうち、トリグリセライドは膵リパーゼによって脂肪酸とモノグリセライドに分解されて小腸から吸収される。膵リパーゼの活性を阻害する組成物は、消化管からの脂質吸収を阻害するのみではなく、体内の脂質蓄積を抑制して高脂血症及び/又は肥満の予防又は改善に有効であると考えられる(http://wwwsoc.nii.ac.jp/jasso/topics/pdf/topics7_33.pdf 「肥満研究」V0l.7 No.3 p112-114 2001参照)
【0047】
食事により吸収された脂肪や炭水化物の余剰分は、遊離脂肪酸を経て中性脂肪へと合成され、脂肪細胞にて蓄積される。このため、中性脂肪の蓄積を減らして肥満を解消するためには、遊離脂肪酸を効率的に分解、減少させることが望ましい。遊離脂肪酸を分解、減少させる方法としては、運動等による酸素呼吸の活性化に伴う化学エネルギーへの変換(ATPの合成)のほかに、脱共役タンパク質(Uncoupling Protein,UCP)による熱エネルギーへの変換が挙げられる。本明細書において、脱共役とは、ミトコンドリアにおける酸化的リン酸化反応において、電子伝達で得られたエネルギーがATP合成反応に共役することを阻害することをいう。脱共役タンパク質は、酸化的リン酸化によるミトコンドリアでのプロトン勾配を緩和することで、本来ATP合成反応に共役されるエネルギーを熱エネルギーとして放出させる機能を有する。脱共役タンパク質としては、UCP1~5が知られている。このうちUCP3をマウスにて過剰発現させると、高脂肪食により誘導される体重増加やインスリン抵抗性が抑制されることが知られている(参照(Choi,CS. et al,2007年,J.Clin.Invest.,Vol.117,p.1995-2003))。また、UCP3は活性酸素の減少・消去にも関与することが示唆されている(参照(Toime,LJ. and Brand,MD.,2010年,Free Rad.Biol.Med.,Vol.49,p.606-11))。このため、UCP3の機能を活性化することができれば、遊離脂肪酸の分解の促進及び熱エネルギーへの変換により、肥満や冷え性等の予防、改善につながるほか、2型糖尿病、酸化ストレスが関与する各種疾患の改善につながると期待される。
【0048】
本明細書において、筋持久力改善とは、筋肉を一定時間働かせる能力を改善することをいう。また、筋持久力の低下とは、筋肉を一定時間働かせる能力が低下していることをいう。限定はされないが、筋持久力は、筋持久力の増加に関わるGLUT4(Glucose transporter 4)の発現量を指標として測定することができる。本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物は、骨格筋の増加を促すこと、及びGLUT4の発現量を増加させることができるため、限定はされないが、ロコモティブシンドローム、加齢や病気による筋肉量の減少、座りがち等の生活習慣による筋肉量の減少、過度のダイエットによる筋肉量の減少、サルコペニアの予防及び/又は治療の用途にも好適である。また、本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物は、これらの疾患の患者や、これらの疾患の予防を意識する健常者に向けられる飲食料品にも好適である。また、本発明の別の実施形態としては、クロモジ属植物又はその抽出物若しくは精製物を有効成分とするGLUT4の発現促進用途、筋肉の糖取り込み促進用途、又はin vitroでの筋肉の糖取り込み促進用途を提供することが可能である。
【0049】
本明細書において、肝機能改善とは、肝臓が有する循環機能、排出機能、代謝機能、保護・解毒機能又は血液学的機能を改善することをいう。また、肝機能の低下とは、肝臓が有する循環機能、排出機能、代謝機能、保護・解毒機能又は血液学的機能が低下していることをいう。限定はされないが、肝機能は、血中のGOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)値やGPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)値、γ-GTP(γグルタミルトランスペプチダーゼ)等の酵素、もしくは肝臓の細胞切片の顕微鏡観察により測定できる。本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物は、GOT値やGPT値を低下させることができるため、限定はされないが、これらの数値の上昇を来す肝疾患、例えば、脂肪肝、アルコール性肝炎、A型、B型、C型等のウイルス性肝炎、肝硬変、肝癌等の予防及び/又は治療剤にも好適である。また、本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物は、これらの疾患の患者や、これらの疾患の予防を意識する健常者に向けられる飲食料品にも好適である。
【0050】
脂肪肝は、医学的に脂肪が肝臓全体の重さの5%以上を超える病的状態を意味するが、これを含む肝疾患は、先進国40-50代成人人口の死亡原因で、ガンの次に深刻な疾患とのことである。現在、脂肪肝を薬物学的に治療するのに有用な薬剤は、ほとんどない状態なので、運動や食餌療法が推奨されているが、実際に、かような方法による脂肪肝の治療は、それほど効果的ではなく、有効な治療剤開発への要求が切実になっている状況である。病理学的には肝細胞を顕微鏡で観察した時に、100細胞中30%以上に脂肪空胞が認められる状態をいう。脂肪肝になっている組織を顕微鏡で見ると、肝細胞内での空胞の増加が観察されるが、本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物は、マウスを用いたアルコール飲水試験において肝細胞内の空胞形成を抑制させることができる。限定はされないが、本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物は、脂肪肝の予防及び/又は改善、又は脂肪肝の予防を意識する健常者に向けられる飲食料品に好適である。
【0051】
本発明の別の実施形態として、本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物は、血中のグルコースを低下させ、血中のグルコースを筋肉細胞に送り込むことができるため、クロモジ属植物の抽出物又は精製物を有効成分とする血糖値抑制用途を提供することが可能である。限定はされないが、本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物は、糖尿病予防及び/又は改善、又は糖尿病の予防を意識する健常者に向けられる飲食料品に好適である。
【0052】
[飲食料品]
本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物は、飲食料品の一つの成分として配合することが可能である。これらの飲食料品は、限定はされないが、肥満改善、筋持久力増強及び/又は肝機能改善等のために用いられる飲食料品として用いることも可能であり、例えば、病院等の医療機関で患者のために提供され得る。またはこれらの飲食料品は、限定はされないが、機能性飲料又は機能性食品として提供することも可能であり、これらの機能性飲食料品は、医療機関の他、ドラッグストア、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、百貨店等で提供され得る。機能性飲食料品とは、国や公共団体が許可・指定している医薬品的な効能を有する飲食品又は企業が国等に所定の効果を届け出た内容に基づき機能性を表示した飲食料品をいう。機能性食品には、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、老人用食品、健康補助食品(バランス栄養食、サプリメント)等が挙げられる。医薬品的な効能又は機能性を表示したパッケージや容器、添付文書、取扱い説明書等を含む飲食品も含まれる。国等への申請書に医薬品的な効能又は機能性を表示した飲食品も含まれる。
【0053】
肥満改善を目的とした表示の場合、限定はされないが、例えば、血中の脂質が気になる方、肥満気味の方、体重(BMI)が気になる方、内臓脂肪が気になる方、皮下脂肪が気になる方、体脂肪が気になる方、肥満に関して生活習慣病(成人病)が気になる方、お腹周り(ウエストサイズ)が気になる方、ウエスト周囲径を減らしたい方、中性脂肪が高めの方、中性脂肪の上昇を抑えたい方、総コレステロールやLDL(悪玉)コレステロールが高めの方、HDL(善玉)コレステロールを増やしたい方に向けた表示等が挙げられる。
【0054】
筋持久力増強を目的とした表示の場合、限定はされないが、例えば、筋力のスタミナを維持したい方、加齢による筋力の低下をサポートしたい方、歩行能力を改善したい方、日常生活や運動後の疲労感を軽減したい方、(筋肉量の減少に関連する)易疲労感や倦怠感を感じる方、(筋肉量の減少に関連する)冷え性が気になる方、(筋肉量の減少に関連する)猫背等の姿勢の悪さが気になる方、歩いたり走ることで膝が痛くなる方、有酸素運動能力を高めたい方、普段の仕事の能力を改善したい方に向けた表示等が挙げられる。
【0055】
肝機能改善を目的とした表示の場合、限定はされないが、例えば、健康な肝臓の機能を維持したい方、二日酔いや飲み疲れが気になる方、GOT値やGPT値が気になる方、疲労感を感じる方、倦怠感を感じる方、食欲不振の方、肝機能に関して生活習慣病(成人病)が気になる方に向けた表示等が挙げられる。
【0056】
血糖値改善を目的とした表示の場合、限定はされないが、例えば、血糖値が高めの方、血糖値が気になる方、食後の血糖値が気になる方、食後の血糖値の上昇をゆるやかに(おだやかに)したい方に向けた表示等が挙げられる。
【0057】
食品としては、あらゆる食品が挙げられ、例えば、穀類、いも類、魚介類、肉類、卵類、油脂類、乳類、野菜類、豆類、果実類、砂糖類、海藻類、菓子類、調味料類、調理加工食品類等が挙げられる。
【0058】
調味加工食品としては、限定はされないが、例えば、ちくわ、かまぼこ等の水産加工品;ハムやソーセージ等の畜産加工品;クッキー、ビスケット、スナック、チョコレート、ケーキ等の菓子;そば、うどん、生麺、中華麺、パスタ等の麺類;食パン、菓子パン等のパン;納豆、味噌等の発酵加工食品;豆腐、おから等の大豆食品;浅漬け、糠漬け等の漬け物、水産品、加工肉、野菜、果物等の缶詰;バター、マーガリン、ヨーグルト、チーズ、牛乳等の乳製品;アイスクリーム、シャーベット等の冷菓食品等が挙げられる。
【0059】
飲料としては、あらゆる飲料が挙げられ、限定はされないが、例えば、クロモジ属植物そのものをお茶とする飲料、お茶の葉の代用としての焙煎乾燥物、果汁飲料、果汁100%飲料、低果汁飲料、果肉飲料、野菜ジュース、フレーバー入り飲料、希釈用果実飲料等の果実飲料;炭酸飲料;コーヒー、コーヒー飲料、コーヒー入り清涼飲料、ココア飲料、紅茶、緑茶、抹茶、烏龍茶、麦茶、ほうじ茶等の嗜好飲料;食酢飲料;スポーツドリンク等の清涼飲料水;牛乳;乳飲料;乳性飲料;乳酸飲料;乳酸菌飲料;豆乳、調製豆乳等の大豆飲料;ビール、日本酒、焼酎、リキュール、ワイン等のアルコール飲料;タウリン、ローヤルゼリー、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、鉄分等を含む栄養飲料等が挙げられる。
【0060】
本発明を飲食料品に適用する時期に制限はないが、例えば、飲食料品の製造工程において、加工工程、調理工程、加熱工程、保存工程等の前後において適用され得る。例えば、加工工程や調理工程においては、原料に本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物を含ませることができる。適用方法は、飲食料品の種類、原料の形態等に応じて適宜変更することができ、混入、添加、塗布、噴霧、浸漬等の様々な方法を採用し得る。
【0061】
本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物を飲料品に適用する場合、一つの実施形態において、茶飲料とすることが好ましい。限定はされないが、乾燥したクロモジ属植物の葉部及び/又は茎部は、公知の方法により裁断された後、破砕又は粉砕され粉状物とされる。クロモジ属植物の粉状物の状態で、茶飲料として販売することが可能である。また、必要により、クロモジ属植物の粉状物は焙煎される。クロモジ属植物の粉状物は焙煎された状態で茶飲料として販売することも可能である。クロモジ属植物の粉状物や焙煎物は、例えば、ティーバッグに適量を封入した形態で販売することも可能である。焙煎されたクロモジ属植物は、熱湯で煮出すことで飲用される。
【0062】
本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物を茶飲料に適用する場合、別の実施形態において、クロモジ属植物の茎部と葉部とを乾燥重量を基準として1~3:1の重量比率で用いて、乾燥粉砕させ、焙煎することにより、茶飲料として用いることが可能となる。
【0063】
また、前記飲料や他の茶飲料と、クロモジ属植物又はその抽出物とを混合物として、又は水などで薄めてジュースやドリンク剤等として用いることができる。更に、前記混合物の濃縮品、噴霧乾燥等によって粉末状にした粉末茶、凍結乾燥したインスタント茶等として利用することができる。その場合、たとえば粉末茶やインスタント茶にお湯を注いで飲むことができる。また、例えば緑茶や紅茶などの茶調製物とクロモジ属植物又はその抽出物との混合物を飲料用茶葉としてそのまま用いることもできる。その場合、一般的な日本茶や紅茶の飲用物と同様にして、茶調製物とクロモジ属植物又はその抽出物との混合茶葉に湯を注いで飲むことができる。
【0064】
本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物を飲食料品に適用する場合は、本発明の効果を損なわない範囲で通常の食品及び飲料に使用されている助剤を適宜配合することが可能である。そのような助剤としては、例えば、ブドウ糖、ショ糖、果糖、オリゴ糖、水飴、マルトース、マルチトース、キシリトール、ソルビトール、アスパルテーム、スクラロース、ステビオサイド、ルブソサイド、コーンシロップ、乳糖、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、L-アスコルビン酸、dL-α-トコフェノール、エリソルビン酸ナトリウム、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸、ソルビタン脂肪酸エステル、エステルアラビアガム、カゼイン、ペクチン、ゼラチン、寒天、カラギーナン、ビタミンB類、ビタミンC類、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、カルシウム塩類、アミノ酸類、色素、香料、保存剤等が挙げられる。
【0065】
本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物を飲食料品に適用する場合のクロモジ属植物又はその抽出物の含有量は、限定はされないが、固形分換算で、ヒト及び動物であれば、一般に1日あたり0.00001~5000mg/kg体重であり、好ましくは0.01~200mg/kg体重であり、より好ましくは0.1~100mg/kg体重である。
【0066】
本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物を飲料品に適用する場合のpHは、飲料品の種類によって適宜調整されるが、例えば、茶飲料の場合は、pH3.5~7.5とすることができ、3.8~7.2が好ましく、4.0~7.0がより好ましく、4.5~~6.5がさらに好ましい。飲料品のpHは、例えば、炭酸水素ナトリウム、クエン酸等を適宜配合することにより調整することができる。
【0067】
[医薬品、医薬部外品]
本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物は、医薬品や医薬部外品とされる場合は、適宜の形態に製剤化し、任意の投与形態でヒト又は動物に投与することができる。投与形態としては、限定はされないが、例えば、経口、経皮、経腸、経粘膜、注射などが挙げられる。本発明の効果を顕著に奏する観点から、投与形態は経口投与が好ましい。
【0068】
本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物が経口投与される場合は、本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物は、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、シロップ剤、散剤、フィルム状、ドロップ状、ゼリー状、半固体のプリン状等の剤型に、公知の方法で製剤化される。フィルム状、ドロップ状、ゼリー状、半固体のプリン状の剤型等により、経口投与の場合は、本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物は、水無しにより摂取されることが可能である。または、クロモジ属植物又はその抽出物若しくは精製物の乾燥粉末を生薬又は漢方薬製剤として経口投与することも可能である。
【0069】
非経口投与する場合は、例えば、静脈内注射、筋肉注射剤、経皮吸収剤、吸入薬、坐剤、点眼剤、点鼻剤等の剤型に公知の方法で製剤化することが可能である。
【0070】
投与形態の一態様として、クロモジ属植物又はその抽出物若しくは精製物の安定性及び生体利用性を高め、あるいは患者の服薬コンプライアンスを向上するため、又はこれらを組み合わせた目的のために、公知の薬物送達システムを利用して、吸収部位まで本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物を送達することが可能である。
【0071】
薬物送達システムとしては、限定されないが、例えばセルロース、デキストラン、澱粉、ポリビニルアルコール、アセチル化若しくはメタクリル化されたポリマー、ポリ乳酸及びポリグリコール酸及びそのブロック共重合体、ポリエチレングリコール等のポリマーを利用する方法、アルブミン等の輸送タンパク質を利用する方法、その他ミセル、リポソーム、ミクロスフェア、ナノ粒子、複合エマルジョン、デンドリマー等を利用する方法が挙げられる。これらの薬物送達システムは、吸収部位等の目的の部位へ本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物を運搬する目的だけでなく、適時に本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物を放出する放出制御の目的にも用いられ得る。
【0072】
本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、固形の製剤においては、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等を、液状の製剤においては、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等を適宜配合することが可能である。
【0073】
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、D-マンニトール、ぶどう糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸などが挙げられる。
【0074】
滑沢剤の好適な例としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、精製タルク、コロイドシリカ、ホウ砂、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0075】
結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、結合セルロース、白糖、D-マンニトール、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0076】
崩壊剤としては、例えば、デンプン、乾燥デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等が挙げられる。
【0077】
溶剤としては、例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油等が挙げられる。
【0078】
溶解補助剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0079】
懸濁化剤としては、例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等の界面活性剤や、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等の親水性高分子等が挙げられる。
【0080】
等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール等が挙げられる。
【0081】
緩衝剤としては、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩などの緩衝液等が挙げられる。
【0082】
無痛化剤としては、例えば、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0083】
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。
【0084】
本発明の生活習慣病予防及び/又は改善用組成物を経口により投与する場合のクロモジ属植物又はその抽出物の有効投与量は、限定はされないが、固形分換算で、ヒト及び動物であれば、一般に1日あたり0.00001~5000mg/kg体重であり、好ましくは0.01~200mg/kg体重であり、より好ましくは0.1~100mg/kg体重である。投与回数は、通常は1日1~4回程度であるが、投与経路等によって、適宜調整することができる。
【実施例】
【0085】
次に、試験例、実施例等により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0086】
(実施例1)乾燥粉砕物からの含水有機溶媒による抽出方法1
ケクロモジ(L. sericea)の葉及び茎の乾燥粉砕物各20gを、それぞれ70%エタノール水溶液300mlに分散、撹拌させ、室温にて24時間抽出した。抽出上清を濾別したのち、残渣を再び70%エタノール水溶液に分散させ、加熱還流後、抽出上清を濾別した。更に残渣を70%エタノール水溶液に分散させ、超音波処理1時間後、抽出上清を濾別し、合一した上清を順次減圧濃縮、窒素ガス雰囲気下で減圧乾燥、凍結乾燥を行い、ケクロモジの葉による抽出物1(6g)及びケクロモジの茎による抽出物2(6g)を得た。
【0087】
(実施例2)乾燥粉砕物からの水による抽出方法
ケクロモジ(L. sericea)の葉の乾燥粉砕物100gに水1.5Lを加え、ミキサーで粉砕後、撹拌及び超音波付与を行い、抽出上清を濾別及び脱水することにより、水と併せて抽出液(2L)を得た。更に、順次減圧濃縮、窒素ガス雰囲気下で減圧乾燥、凍結乾燥を行い、抽出物3(20g)を得た。
【0088】
(実施例3)搾汁による抽出方法
ケクロモジ(L. sericea)の生葉及び生茎の混合物(1kg)に水1Lを加え、ミキサーで粉砕後、撹拌及び超音波付与を行い、抽出上清を濾別、洗浄、及び脱水する事により、水と併せて抽出液(2L)を得た。更に、順次減圧濃縮、窒素ガス雰囲気下で減圧乾燥、凍結乾燥を行い、抽出物4(20g)を得た。
【0089】
(実施例4)圧搾による抽出方法
ケクロモジ(L. sericea)の生葉及び生茎の混合物(1kg)に水1Lを加え、ミキサーで粉砕後、撹拌及び超音波付与を行い、抽出上清を濾別及び脱水後、圧搾する事により、抽出液(1.5L)を得た。更に、順次減圧濃縮、窒素ガス雰囲気下で減圧乾燥、凍結乾燥を行い、抽出物5(25g)を得た。
【0090】
(実施例5)乾燥粉末の製造方法
ケクロモジ(L. sericea)の生葉、生茎(1kg)を、40℃冷風乾燥機で一晩乾燥後、粉砕機で微粉砕し、ケクロモジ乾燥粉末(100g)を得た。
【0091】
(実施例6)オオバクロモジを用いた抽出方法
オオバクロモジ(L. umbellate var. membrancea (Maxim) Mojama)の茎の乾燥粉砕物1gに水10mLを加え、10分間抽出を行い、その後抽出上清を濾別及び脱水することにより、抽出液を得た。残渣に、再度水10mLを加え、10分間抽出を行い、その後上清を濾別及び脱水した。先に得られた抽出液と混合し、水により20mLに定容することで抽出物6を得た(50mg当量/ml)。
【0092】
(実施例7)マイクロウェーブによる抽出方法
ケクロモジ(L. sericea)の葉及び茎の乾燥粉砕物1gに水20mLを加え、ポリプロピレン製容器に密閉し、電子レンジ(2450MHz、500W)で1分加熱を行った、抽出上清を濾別及び脱水することにより、水と併せて抽出物7(20mL)を得た。同様の方法で加熱時間を5分としたものを抽出物8とした。
【0093】
(実施例8)乾燥粉砕物からの熱水による抽出方法1
ケクロモジ(L. sericea)の葉及び茎の乾燥粉砕物100gに熱水1.5Lを加え、抽出上清を濾別することにより、水と併せて抽出液(2L)を得た。更に、順次減圧濃縮、窒素ガス雰囲気下で減圧乾燥、凍結乾燥を行い、抽出物9(15g)を得た。
【0094】
(実施例9)生葉及び生茎からの熱水による抽出方法
ケクロモジ(L. sericea)の生葉及び生茎の混合物(1kg)に熱水1Lを加え、抽出上清を濾別することにより、水と併せて抽出液(1.5L)を得た。更に、順次減圧濃縮、窒素ガス雰囲気下で減圧乾燥、凍結乾燥を行い、抽出物10(10g)を得た。
【0095】
(実施例10)乾燥粉砕物からの含水有機溶媒による抽出方法2
ケクロモジ(L. sericea)の茎(樹皮、心材含む)の乾燥粉砕物20g及び葉の乾燥粉砕物20gを、それぞれ80%メタノール300mlに分散、撹拌させ、室温にて24時間抽出した。抽出上清を濾別したのち、残渣を再び80%メタノールに分散させ、加熱還流後、抽出上清を濾別した。更に残渣を70%エタノール水溶液に分散させ、超音波処理1時間後、抽出上清を濾別し、合一した上清を順次減圧濃縮、窒素ガス雰囲気下で減圧乾燥、凍結乾燥を行い、ケクロモジの茎による抽出物11(1.5g)及びケクロモジの葉による抽出物12(5g)を得た。これらの抽出物11及び12を、乾燥重量を基準として7:3に重量比率で混合して、抽出物13とした。
【0096】
(実施例11)乾燥粉砕物からの熱水による抽出方法2
ケクロモジ(L. sericea)の茎(樹皮、心材含む)及び葉の乾燥粉砕物各100gに熱水1.5Lを加え、抽出上清を濾別することにより、水と併せて抽出液(2L)を得た。更に、順次減圧濃縮、窒素ガス雰囲気下で減圧乾燥、凍結乾燥を行い、ケクロモジの茎による抽出物14(6g)及びケクロモジの葉による抽出物15(6g)を得た。これらの抽出物14及び15を混合して、抽出物16とした。
【0097】
(動物と食餌)
7週齢の自然体重増加マウス(C57BL/6J雄マウス、平均体重23.1g)は、チャールスリバー社から購入した。動物を、室温24±3℃、12/12h(A.M.7:00-P.M.7:00)の明暗サイクルの条件で飼育した。マウスは水と食餌を自由に摂取できるようにした。次いで、マウスを体重に応じて、10匹ずつからなる3グループ(低脂肪食群、高脂肪食群、又は高脂肪クロモジ食群)に割り当て、36日間、以下の食餌を自由に供給した(試験期間)。
【0098】
なお、各グループにおける食餌の詳細は、表1の通りである。なお、表1中の数値の単位は、重量%である。表1中のクロモジ抽出物は、実施例10で得られたクロモジ属植物の抽出物13を、固形分換算にて1%含有するように調製したものを使用した。
【0099】
【0100】
(試験例1)肥満改善効果の評価試験
上記(動物と食餌)の試験期間終了後、血清中のトリグリセリド及びコレステロールについて評価を行った。試験期間終了後、エーテル麻酔下にて採血を行って屠殺し、各種臓器の重量を測定した。また、血清を調製し、分析時まで-30℃にて保存した
(試験例1-1)血清トリグリセリドの測定
血清中のトリグリセリドは、トリグリセライドE-テストワコーキット(和光純薬社製)を用いて、製造業者の説明書に従って定量した。血中トリグリセリドの結果を
図1に示す。グラフの縦軸は、血清あたりの濃度をmg/dLで示したものである。
【0101】
図1に示す通り、血清中のトリグリセリドを測定した結果、高脂肪食群と比較して高脂肪クロモジ食群では、血清中のトリグリセリドが顕著に減少することが認められた。驚くべきことに、高脂肪クロモジ食群の血清中のトリグリセリドは、低脂肪食群よりも更に減少することが見出された。
【0102】
(試験例1-2)血清コレステロールの測定
血清中のコレステロールは、コレステロールE-テストワコーキット(和光純薬社製)を用いて、製造業者の説明書に従って定量した。血中コレステロールの結果を
図2に示す。
図2において、グラフの縦軸は、血清あたりの濃度をmg/dLで示したものである。
【0103】
図2に示す通り、血清中のコレステロールを測定した結果、高脂肪食群と比較して高脂肪クロモジ食群では、血清中のコレステロールが顕著に減少することが認められた。驚くべきことに、高脂肪クロモジ食群の血清中のコレステロールは、低脂肪食群と同程度まで減少することが見出された。
【0104】
(試験例1-3)リパーゼ阻害活性評価試験
実施例8-2で得られたクロモジ属植物の抽出物A、B、C、及び実施例10で得られたクロモジ属植物の抽出物11、12、13を10mg/mL濃度になるようジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、リパーゼ阻害活性評価試験に供した。評価試験にはブタ膵リパーゼ(Sigma-Aldrich社製)及びリパーゼキットS(大日本製薬社製)を使用した。測定方法は、キットの方法を一部改変し、96穴マイクロプレートを使用して行った。すなわち、抽出物を含む試料サンプル溶液15μL、酵素溶液(ブタ膵リパーゼ0.05mg/mL、125mmol/Lトリス塩酸(pH 7.5))4μL、発色液(0.1mg/mL 5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)を含む緩衝液)50μLを入れて混和した後、30℃で5分間予熱し、基質液(6.69mg/mL 三酪酸ジメルカプロール+5.73mg/mL ドデシル硫酸ナトリウム)5μLを加え混和後、遮光下にて30℃で30分間加熱し、反応停止液を加えた後、マイクロプレートリーダーにて412nmの吸光度を測定した。なお、各試料の対照には、試料溶液としてDMSOを添加し、同様に操作して行った。リパーゼ阻害活性評価試験の結果を
図3に示す。
【0105】
図3において、縦軸は平均阻害率(%)を示す。各抽出物について3サンプルずつ試験を行い、阻害率(%)は、以下の式1により算出した。
[式1]
阻害率(%)=100-(試験区-ブランク)/コントロール×100
【0106】
図3に示す通り、ケクロモジ抽出物のリパーゼ阻害活性を測定した結果、クロモジ属植物の抽出物を含まない陰性対照に比べて、クロモジ属植物の抽出物の検体群では高いリパーゼ阻害活性を示し、陽性対照として緑茶抽出物(サンフェノン 90S、太陽化学株式会社)を2.5mg/mL濃度になるようジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した検体(
図3中のカメリアエキス)と比較して同程度の阻害活性を示すことが明らかとなった。
【0107】
(試験例2)筋持久力効果の評価試験
(試験例2-1)体重の測定
上記(動物と食餌)の試験期間中、1週間ごとの体重を測定した。体重の測定結果を
図4に示す。
図4において、グラフの縦軸は各群の体重の平均をgで示したものである。
【0108】
図4に示す通り、低脂肪食群、高脂肪食群、高脂肪クロモジ食群ともに体重が経時的に増加した。マウスの体重増加量についてはクロモジ属植物の抽出物の添加による影響は少なく、高脂肪クロモジ食群は高脂肪食群に比べやや増加傾向であった。
【0109】
(試験例2-2)内臓脂肪量の測定
内臓脂肪量は、重量法により測定した。肝臓、副睾丸、腎臓、腸間膜、脳の各臓器について、それらの内部及び/又は周囲に生成した脂肪量と、全身の内臓脂肪量の総量を測定した。肝臓の脂肪量を、肝臓重量を測定することにより測定した結果を
図5に示す。副睾丸の脂肪量を、副睾丸重量を測定することにより測定した結果を
図6に示す。腎臓周囲の脂肪量を、腎臓重量を測定することにより測定した結果を
図7に示す。腸間膜の脂肪量を、腸間膜重量を測定することにより測定した結果を
図8に示す。脳の脂肪量を、脳重量を測定することにより測定した結果を
図9に示す。全身の内臓脂肪量の総計についての結果を
図10に示す。
図5~
図10について、グラフの縦軸は脂肪重量の平均をgで示したものである。
【0110】
図5~10に示す通り、各臓器及び全身の内臓脂肪量を比較したところ、高脂肪クロモジ食群と高脂肪食群との間で有意差は認められず、体重増加の原因が脂肪量の増加でなく、骨格筋の増加によるものであることが示唆された。
【0111】
(試験例2-3)GLUT4遺伝子及びUCP-3遺伝子の発現量の測定
そこで、実施例10で得られたクロモジ属植物の抽出物11又は12をマウスの筋細胞であるC2C12細胞へ投与し、筋肉の持久力に関わるGLUT4(glucose transporter 4)遺伝子、及びエネルギー産生に関わるUCP-3遺伝子(uncoupling protein-3)の発現量をqPCR法により定量した。
【0112】
具体的には、細胞は、マウス由来骨格筋細胞(C2C12)を使用した。細胞をダルベッコ改変イーグル培地DMEM(4.5g/Lグルコース濃度)を使用して37℃、5%CO2濃度で培養し、90%コンフルエントの状態になったところで、96穴培養プレートに細胞数として1x105/mLとなるように培養した。2日毎に培地を交換し、コンフルエントになるまで培養を行った(約5日)。その後、DMEM(1.0g/Lグルコース濃度)で3日間培養して分化を確認してから、クロモジ抽出物を添加した培地に交換して2日間、培養を行った。クロモジ抽出添加培地は、クロモジ抽出物(抽出物11又は12)を、それぞれジメチルスルホキシドで10μg/mLとなるように溶解し、これを培地中に0.5%添加して調製した。
【0113】
その後、細胞溶解液(CellAmp
TM Direct RNA Prep Kit for RT-PCR:タカラバイオ株式会社製)を使用して細胞を懸濁し、RNAを抽出した。これよりcDNAを調整し(PrimeScript
TM RT reagent Kit:タカラバイオ株式会社製)、さらにTaqManプローブ法(Probe qPCR Mix:タカラバイオ株式会社製)によりGlucose transporter-4(Glut-4)及びUncoupling protein-3(UCP-3)の発現量を定量し、ハウスキーピング遺伝子としてβ-アクチンを用いて、β-アクチン遺伝子の発現量(図において「C」で示す)に対する各遺伝子の発現量の比で示した。GLUT4遺伝子の発現量の結果又はUCP-3遺伝子の発現量の結果を、それぞれ
図11又は
図12に示す。
【0114】
図11及び
図12に示す結果から、高脂肪食群と比較して高脂肪クロモジ食群では、有意に両遺伝子の発現量を増加させることが明らかとなった。GLUT4により生産されるタンパクはグルコースの細胞内輸送に関わるチャネルであり、インスリン刺激や筋収縮によって細胞表面に移動し、血液中のグルコースを筋肉細胞に送り込む。したがって、GLUT4が増加した場合、筋肉細胞内へ取り込まれるグルコース量が増し、ミトコンドリアでのATPが増加することで筋持久力の増加につながる。また、UCP-3はミトコンドリアにおける酸化的リン酸化反応において、電子伝達で得られたエネルギーがATP合成反応に共役することを阻害する効果を持つため、酸化的リン酸化によるミトコンドリアでのプロトン勾配を緩和することで、本来ATP合成反応に共役されるエネルギーを熱エネルギーとして放出させる機能を有する。このことにより、過剰なエネルギーの取り込みによる肥満化を防ぐ作用があると考えられる。つまり、クロモジ抽出物はこれらの遺伝子発現を活性化させることで、抗肥満や持久力改善、ひいては筋肉量の増加効果を発揮していることが明らかとなった。
【0115】
(試験例2-4)血清中のグルコースの測定
上記(動物と食餌)の試験期間終了後、血清中のグルコースについて評価を行った。血清中のグルコースは、グルコースCII-テストワコーキット(和光純薬社製)を用いて、製造業者の説明書に従って定量した。血清中グルコースの結果を
図13に示す。
図13において、グラフの縦軸は、血清あたりの濃度をmg/dLで示したものである。
【0116】
図13に示す通り、血清中のグルコースを測定した結果、高脂肪食群と比較して高脂肪クロモジ食群では、血清中のグルコースが顕著に減少することが認められた。筋肉細胞内へ取り込まれるグルコース量が増加したことによるものと考えられる。
【0117】
(試験例3)肝機能改善効果の評価試験
(試験例3-1)血清中のGOT値、GPT値の測定
上記(動物と食餌)の試験期間終了後、マウスの肝臓重量及び血清中のGOT値、GPT値について評価を行った。上述のように、肝臓重量の測定結果は
図5に示されている。血清中のGOT値、GPT値は、トランスアミナーゼCIIテストワコー(和光純薬株式会社社製)を用いて、製造業者の説明書に従って定量した。血清中のGOT値、GPT値の結果をそれぞれ
図14又は
図15に示す。
図14又は
図15において、グラフの縦軸は、ユニット(U)を示す。
【0118】
図14又は
図15に示す通り、肝機能の指標であるGOT値、GPT値を測定した結果、高脂肪食群と比較して高脂肪クロモジ食群では、GOT値、GPT値共に有意に減少することが認められた。
【0119】
(試験例3-2)アルコール負荷試験における脂肪肝の評価
肝機能の改善効果について詳細に調べるため、10%のアルコールを飲水させる摂餌試験を行った。対照食群と表記されるグループでは、表1に記載の高脂肪食と水が与えられた。アルコール摂取群と表記されるグループでは、表1に記載の高脂肪食と10%のアルコールが与えられた。アルコール摂取クロモジ食群と表記されるグループでは、表1に記載の高脂肪クロモジ食と10%のアルコールが与えられた。その他の条件は、上記(動物と食餌)と同様である。試験期間終了後のマウスの肝臓右葉の切片の観察(HE染色)を行った。その結果を
図16に示す。
【0120】
図16に示すように、アルコール摂取群に比べて、アルコール摂取クロモジ食群では、肝細胞内の空胞形成が少なく、アルコールを摂取していない対照食群と同程度であることが明らかとなった。これは、アルコールによる脂肪肝化を抑制していることを示している。
【0121】
試験例3-1と同様の方法により、対照食群、アルコール摂取群、及びアルコール摂取クロモジ食群について、肝機能の指標であるGOT値、GPT値を測定した。血清中のGOT値、GPT値の結果をそれぞれ
図17又は
図18に示す。
図17又は
図18において、グラフの縦軸は、ユニット(U)を示す。
【0122】
図17又は
図18に示す通り、肝機能の指標であるGOT値、GPT値を測定した結果、アルコール摂取群と比較してアルコール摂取クロモジ食群では、GOT値、GPT値共に有意に減少することが認められた。
【0123】
(処方例)
以下の各処方例中の数値の単位は、全体量を100とした、「重量%」で示す。
【0124】
(処方例1)生活習慣病予防及び/又は改善のための組成物(錠剤)
上記の実施例で得られた抽出物を用いて、常法により下記組成の生活習慣病予防及び/又は改善のための錠剤を製造することができる。
【表2】
【0125】
(処方例2)生活習慣病予防及び/又は改善のための組成物(顆粒剤)
上記の実施例で得られた抽出物を用いて、下記組成を混合及び撹拌して均一に調製し、流動層造粒装置により顆粒を得ることができる。顆粒剤は、飲料と共に服用することが可能である。
【表3】
【0126】
(処方例3)生活習慣病予防及び/又は改善のための組成物(カプセル剤)
上記の実施例で得られた抽出物を用いて、下記組成を混合及び撹拌して均一に調製し、カプセル剤に用いるカプセル用粉末を得ることができる。
【表4】
【0127】
(処方例4)生活習慣病予防及び/又は改善のための飲料
上記の実施例で得られた抽出物を用いて、常法により下記組成の生活習慣病予防及び/又は改善のための飲料を製造することができる。
【表5】
【0128】
(処方例5)生活習慣病予防及び/又は改善のためのチューイングガム
上記の実施例で得られた抽出物を用いて、常法により下記組成の生活習慣病予防及び/又は改善のためのチューイングガムを製造することができる。
【表6】