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特許7007902充電可能電池減液検出装置および充電可能電池減液検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】充電可能電池減液検出装置および充電可能電池減液検出方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20220118BHJP
   G01R 31/382 20190101ALI20220118BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220118BHJP
   G01R 31/3835 20190101ALI20220118BHJP
   G01R 31/385 20190101ALI20220118BHJP
   G01R 31/387 20190101ALI20220118BHJP
   G01R 31/388 20190101ALI20220118BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20220118BHJP
【FI】
H01M10/48 101
H01M10/48 P
H01M10/48 301
G01R31/382
H02J7/00 Q
H02J7/00 Y
G01R31/3835
G01R31/385
G01R31/387
G01R31/388
G01R31/389
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017250449
(22)【出願日】2017-12-27
(65)【公開番号】P2019117711
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-07-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100130247
【弁理士】
【氏名又は名称】江村 美彦
(74)【代理人】
【識別番号】100167863
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 恵
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 季実子
(72)【発明者】
【氏名】光山 泰司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 悦藏
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-273750(JP,A)
【文献】特開2005-172785(JP,A)
【文献】特開2017-181207(JP,A)
【文献】特開2004-042799(JP,A)
【文献】特開2009-241633(JP,A)
【文献】特開2006-344468(JP,A)
【文献】特開平08-162172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
G01R 31/36-31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電可能電池の電解液の減液を検出する充電可能電池減液検出装置において、
前記充電可能電池の開回路電圧を特定する特定手段と、
前記充電可能電池の充電率が所定の値である場合に、前記特定手段によって特定された前記開回路電圧が所定の閾値よりも大きいときは、前記充電可能電池の前記電解液に異常減液が生じていると判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果を提示する提示手段と、
前記充電可能電池の内部抵抗の値を計算する計算手段と、を有し、
前記判定手段は、前記計算手段によって計算されたある一定時間における前記内部抵抗の増加率が所定の閾値よりも大きい場合は、前記充電可能電池の極板が前記電解液から露出していると判定する、
ことを特徴とする充電可能電池減液検出装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記充電可能電池の前記充電率が満充電である場合に、前記特定手段によって特定された前記開回路電圧が所定の閾値よりも大きいときは、前記充電可能電池の前記電解液に前記異常減液が生じていると判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の充電可能電池減液検出装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記特定手段によって特定された前記開回路電圧と、前記充電可能電池の新品時、交換時、または、補液時における前記開回路電圧との差分値が所定の閾値よりも大きいときは、前記充電可能電池の前記電解液に前記異常減液が生じていると判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の充電可能電池減液検出装置。
【請求項4】
前記特定手段によって特定された前記開回路電圧を、前記電解液の温度または前記充電可能電池の周囲の温度に応じて補正する補正手段を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の充電可能電池減液検出装置。
【請求項5】
充電可能電池の電解液の減液を検出する充電可能電池減液検出方法において、
前記充電可能電池の開回路電圧を測定する測定ステップと、
前記充電可能電池の充電率が所定の値である場合に、前記測定ステップにおいて測定された前記開回路電圧が所定の閾値よりも大きいときは、前記充電可能電池の電解液に異常減液が生じていると判定する判定ステップと、
前記判定ステップの判定結果を提示する提示ステップと、
前記充電可能電池の内部抵抗の値を計算する計算ステップと、を有し、
前記判定ステップは、前記計算ステップにおいて計算されたある一定時間における前記内部抵抗の増加率が所定の閾値よりも大きい場合は、前記充電可能電池の極板が前記電解液から露出していると判定する、
ことを特徴とする充電可能電池減液検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電可能電池減液検出装置および充電可能電池減液検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
充電可能電池の異常を検出する技術としては、例えば、特許文献1に開示される技術がある。
【0003】
特許文献1には、鉛蓄電池の開路電圧から電解液比重を求め、電解液比重から残存容量を推定する残存容量測定法において、満充電された電池内の空間容積を求めておき、所定残存容量時における電池内の空間容積を求め、これら容積の差から求めた電解液の減量により、開路電圧から求めた電解液比重を補正して残存容量を求める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平09-211090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された技術では、電解液の比重から減液量を推定するためには、測定する鉛蓄電池の容積を事前に測定し、減液量と比重の関係を調査する必要がある。このため、異なる容積の鉛蓄電池に対応することが困難という問題点がある。
【0006】
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであり、様々な充電可能電池の減液を検出することが可能な充電可能電池減液検出装置および充電可能電池減液検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、充電可能電池の電解液の減液を検出する充電可能電池減液検出装置において、前記充電可能電池の開回路電圧を特定する特定手段と、前記充電可能電池の充電率が所定の値である場合に、前記特定手段によって特定された前記開回路電圧が所定の閾値よりも大きいときは、前記充電可能電池の前記電解液に異常減液が生じていると判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果を提示する提示手段と、を有することを特徴とする。
このような構成によれば、様々な充電可能電池の減液を検出することが可能となる。
【0008】
また、本発明は、前記判定手段は、前記充電可能電池の前記充電率が満充電である場合に、前記特定手段によって特定された前記開回路電圧が所定の閾値よりも大きいときは、前記充電可能電池の前記電解液に前記異常減液が生じていると判定する、ことを特徴とする。
このような構成によれば、満充電は比較的容易に検出できることから、満充電時を基準として、異常減液を確実に検出することができる。
【0009】
また、本発明は、前記判定手段は、前記特定手段によって特定された前記開回路電圧と、前記充電可能電池の新品時、交換時、または、補液時における前記開回路電圧との差分値が所定の閾値よりも大きいときは、前記充電可能電池の前記電解液に前記異常減液が生じていると判定する、ことを特徴とする。
このような構成によれば、特性が異なる充電可能電池であっても、個体差の影響を受けずに、異常減液を確実に検出することができる。
【0010】
また、本発明は、前記特定手段によって特定された前記開回路電圧を、前記電解液の温度または前記充電可能電池の周囲の温度に応じて補正する補正手段を有する、ことを特徴とする。
このような構成によれば、温度による影響を低減することで異常減液を確実に検出することができる。
【0011】
また、本発明は、前記充電可能電池の内部抵抗の値を計算する計算手段を有し、前記判定手段は、前記計算手段によって計算されたある一定時間における前記内部抵抗の増加率の値が所定の閾値よりも大きい場合は、前記充電可能電池の極板が前記電解液から露出していると判定する、ことを特徴とする。
このような構成によれば、電槽の破損等が原因の電解液漏れによる異常減液によって極板が電解液から露出していることを検出することができる。
【0012】
また、本発明は、充電可能電池の電解液の減液を検出する充電可能電池減液検出方法において、前記充電可能電池の開回路電圧を測定する測定ステップと、前記充電可能電池の充電率が所定の値である場合に、前記測定ステップにおいて測定された前記開回路電圧が所定の閾値よりも大きいときは、前記充電可能電池の電解液に異常減液が生じていると判定する判定ステップと、前記判定ステップの判定結果を提示する提示ステップと、を有することを特徴とする。
このような方法によれば、様々な充電可能電池の減液を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、様々な充電可能電池の減液を検出することが可能な充電可能電池減液検出装置および充電可能電池減液検出方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る充電可能電池減液検出装置の構成例を示す図である。
図2図1の制御部の詳細な構成例を示すブロック図である。
図3】電解液の液面高さとOCVの関係を示す図である。
図4】電解液の減液量(極板の露出率)と内部抵抗の増加率との関係を示す図である。
図5】内部抵抗の測定方法を示す図である。
図6図1に示す実施形態において実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図7図1に示す実施形態において実行される他の処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0016】
(A)本発明の実施形態の構成の説明
図1は、本発明の実施形態に係る充電可能電池減液検出装置を有する車両の電源系統を示す図である。この図において、充電可能電池減液検出装置1は、制御部10、電圧センサ11、電流センサ12、および、温度センサ13を主要な構成要素としており、充電可能電池14の内部における異常の発生を検出する。なお、温度センサ13は含まない構成としてもよい。
【0017】
ここで、制御部10は、電圧センサ11、電流センサ12、および、温度センサ13からの出力を参照し、充電可能電池14の状態を検出するとともに、オルタネータ15の発電電圧を制御することで充電可能電池14の充電状態を制御する。電圧センサ11は、充電可能電池14の端子電圧を検出し、制御部10に通知する。電流センサ12は、充電可能電池14に流れる電流を検出し、制御部10に通知する。温度センサ13は、充電可能電池14の電解液または充電可能電池14の周囲の温度を検出し、制御部10に通知する。なお、制御部10がオルタネータ15の発電電圧を制御することで充電可能電池14の充電状態を制御するのではなく、例えば、図示しないECU(Electric Control Unit)が充電状態を制御するようにしてもよい。
【0018】
充電可能電池14は、電解液を有する充電可能電池、例えば、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、または、ニッケル水素電池等によって構成され、オルタネータ15によって充電され、スタータモータ17を駆動してエンジンを始動するとともに、負荷18に電力を供給する。なお、充電可能電池14は、複数のセルを直列接続して構成されている。オルタネータ15は、エンジン16によって駆動され、交流電力を発生して整流回路によって直流電力に変換し、充電可能電池14を充電する。オルタネータ15は、制御部10によって制御され、発電電圧を調整することが可能とされている。
【0019】
エンジン16は、例えば、ガソリンエンジンおよびディーゼルエンジン等のレシプロエンジンまたはロータリーエンジン等によって構成され、スタータモータ17によって始動され、トランスミッションを介して駆動輪を駆動し、車両に推進力を与えるとともに、オルタネータ15を駆動して電力を発生させる。スタータモータ17は、例えば、直流電動機によって構成され、充電可能電池14から供給される電力によって回転力を発生し、エンジン16を始動する。負荷18は、例えば、電動ステアリングモータ、デフォッガ、シートヒータ、イグニッションコイル、カーオーディオ、および、カーナビゲーション等によって構成され、充電可能電池14から供給される電力によって動作する。
【0020】
図2は、図1に示す制御部10の詳細な構成例を示す図である。この図に示すように、制御部10は、CPU(Central Processing Unit)10a、ROM(Read Only Memory)10b、RAM(Random Access Memory)10c、通信部10d、I/F(Interface)10e、および、バス10fを有している。ここで、CPU10aは、ROM10bに格納されているプログラム10baに基づいて各部を制御する。ROM10bは、半導体メモリ等によって構成され、プログラム10ba等を格納している。RAM10cは、半導体メモリ等によって構成され、プログラム10baを実行する際に生成されるデータや、後述するテーブル等のデータ10caを格納する。通信部10dは、上位の装置であるECU(Electronic Control Unit)等との間で通信を行い、検出した情報または制御情報を上位装置に通知する。I/F10eは、電圧センサ11、電流センサ12、および、温度センサ13から供給される信号をデジタル信号に変換して取り込むとともに、オルタネータ15、および、スタータモータ17等に駆動電流を供給してこれらを制御する。バス10fは、CPU10a、ROM10b、RAM10c、通信部10d、および、I/F10eを相互に接続し、これらの間で情報の授受を可能とするための信号線群である。
【0021】
(B)本発明の実施形態の動作の説明
つぎに、本発明の実施形態の動作について説明する。なお、以下では、本発明の実施形態の動作原理について説明した後、詳細な動作について説明する。
【0022】
まず、本発明の実施形態の動作原理について説明する。本発明の実施形態では、充電可能電池14のOCV(Open Circuit Voltage)に基づいて、電解液の減液を検出する。図3は、充電可能電池14の電解液の液面高さと、充電率SOCが100%におけるOCV(V)との関係を示す図である。減液が進むことで、Upper Line(電解液の適正上限を示すライン)からLower Line(電解液の適正下限を示すライン)、極板上端付近と電解液面が変化している状態を示している。
【0023】
図3の例では、ハッチングを施した菱形が測定結果を示している。また、横方向の破線は、下から新品時OCV、および、異常減液時のOCVを示している。図3に示すように、減液が進行するに従ってOCVが増加する。
【0024】
図4は、極板の露出率(極板上面から液面までの高さ、すなわち極板の露出した高さを極板全体の高さで除した値×100)(%)に対する内部抵抗増加率(減液前の内部抵抗値からの変化量を減液前の内部抵抗値で除した値×100)(%)との関係性を示す図である。この図4に示すように、電解液の減液に伴う極板の露出面積の増加に応じて内部抵抗が増加する。なお、図4に実線で示す内部抵抗増加率(%)は極板が40%程度露出した異常減液状態での増加率であり、例えば、これを超えた場合には、減液によって極板が電解液から露出している可能性がある閾値とすることができる。さらに、ある一定時間内にこのような変化が生じることを確認することで、電解液の液漏れによって極板が露出したことを確認することができる。また、液漏れによる減液が原因となって発生する内部抵抗値の増大は、充放電反応が行われていないときにおいても生じることが特徴の一つである。したがって、車両停止状態においても、例えば、定期的な放電パルスの印加によって算出される内部抵抗値の変化によって精度よく異常減液状態を検出することができる。また、内部抵抗を用いた判定に用いる指標は、内部抵抗増加率でなくても、内部抵抗変化量(絶対値)など、ある一定時間内で内部抵抗値が変化している状態を検出することができる指標であれば他の指標を用いることができる。ある一定時間とは、30分または1時間等、液漏れによって極板が露出するまでの減液が要する適度な時間を設定することができる。
【0025】
そこで、本実施形態では、図3に破線で示す異常減液時のOCVを閾値Th1とし、図4に実線で示す異常減液時の内部抵抗増加率を閾値Th2とする。そして、充電率SOCが100%(満充電状態)になった場合に、開回路電圧OCVを測定し、OCV>Th1の場合には異常減液が発生していると判定する。また、内部抵抗Rを算出し、内部抵抗増加率>Th2の場合には極板が電解液から外部に露出している可能性があると判定する。このような手段によれば、OCVの変化を伴わない減液、つまりは、電解液の濃度変化のない液漏れ等による異常減液についても検知することが可能である。
【0026】
より詳細には、充電可能電池減液検出装置1の制御部10は、充電可能電池14が安定状態である場合(例えば、エンジン16を停止してから数時間が経過した場合)には、電圧センサ11によって開回路電圧OCVを測定する。
【0027】
つぎに、制御部10は、温度センサ13の出力を参照して充電可能電池14の周囲温度を測定し、得られた周囲温度から電解液の温度を推定する。そして、得られた電解液の温度に基づいて、開回路電圧OCVを基準温度(例えば、25℃)における開回路電圧OCVになるように温度補正する。例えば、電解液の温度と、開回路電圧OCVとの関係を示すテーブルを準備し、当該テーブルに基づいて基準温度における開回路電圧OCVに補正する。
【0028】
つぎに、制御部10は、開回路電圧OCVと充電率SOCとの関係に基づいて、充電率SOCを算出する。例えば、開回路電圧OCVと充電率SOCとの関係を示すテーブルを準備し、当該テーブルに基づいて開回路電圧OCVから充電率SOCを算出する。
【0029】
つづいて、制御部10は、充電率SOCを参照して、充電可能電池14が満充電状態か否かを判定し、満充電状態である場合には、開回路電圧OCVが所定の閾値Th1(例えば、図3に示す異常減液時のOCVの値)よりも大きいか否かを判定し、大きい場合には異常減液状態と判定し、上位装置に対して通知する。
【0030】
つぎに、制御部10は、充電可能電池14の内部抵抗Rを算出する。図5(A)は、充電可能電池14の電圧と電流の変化を示す図である。なお、図5(A)において、横軸は測定開始からの経過時間(s)を示し、縦軸は電圧(V)および電流(A)を示している。図5(B)は、図5(A)の一部を拡大して示す図である。本実施形態では、例えば、1ms毎に変化電圧ΔVと、変化電流ΔIとを測定して、例えば、10秒間に亘って累積加算してΔVaとΔIaを求め、これらの値からΔVa/ΔIaによって内部抵抗R(=ΔVa/ΔIa)の値を算出する。
【0031】
つぎに、制御部10は、一定時間内における内部抵抗増加率が所定の閾値Th2(例えば、図4に示す異常減液時の一定時間における内部抵抗増加率の値)よりも大きいか否かを判定し、大きい場合には極板が電解液から露出している可能性があると判定し、上位装置に対して通知する。
【0032】
以上の処理によれば、満充電時の開回路電圧OCVと閾値Th1とを比較することで、減液の可能性の有無を簡易に検出することができるとともに、内部抵抗増加率と閾値Th2とを比較することで、極板が電解液から露出している可能性の有無を検出することができる。また、以上の処理では、充電可能電池14の電解液の容積については知る必要はないことから、様々な種類の充電可能電池14の減液を検出することができる。
【0033】
つぎに、図6を参照して、本発明の実施形態の詳細な動作について説明する。図6に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0034】
ステップS10では、制御部10のCPU10aは、充電可能電池14が安定状態か否かを判定し、安定状態と判定した場合(ステップS10:Y)にはステップS11に進み、それ以外の場合(ステップS10:N)には処理を終了する。例えば、エンジン16が停止されてから数時間が経過し、分極および成層化が解消された場合には、Yと判定してステップS11に進む。
【0035】
ステップS11では、CPU10aは、電圧センサ11の出力を参照し、充電可能電池14の開回路電圧OCVを測定する。
【0036】
ステップS12では、CPU10aは、電解液の温度を推定する。より詳細には、CPU10aは、温度センサ13の出力を参照して充電可能電池14の周囲温度を測定し、周囲温度から電解液温度を推定する。推定の方法としては、例えば、充電可能電池14の熱等価回路(熱抵抗および熱容量等からなる回路)を求め、この熱等価回路に対して周囲温度を電圧として印加した場合に、電解液の温度を出力として求めることで、電解液の温度を推定することができる。
【0037】
ステップS13では、CPU10aは、ステップS12で求めた電解液温度に基づいて、ステップS11で測定した開回路電圧OCVを温度補正する。より詳細には、CPU10aは、ステップS12で推定した電解液温度が、基準温度である25℃である場合における開回路電圧OCVを求める。
【0038】
ステップS14では、CPU10aは、ステップS13で温度補正した開回路電圧OCVから充電率SOCを算出する。より詳細には、開回路電圧OCVとSOCの関係を示すテーブルをRAM10cにデータ10caとして予め格納しておき、このテーブルをCPU10aが参照することで、開回路電圧OCVから充電率SOCを求めることができる。
【0039】
ステップS15では、CPU10aは、ステップS14で求めた充電率SOCを参照し、満充電状態(SOC=100%)であるか否かを判定し、満充電状態であると判定した場合(ステップS15:Y)にはステップS16に進み、それ以外の場合(ステップS15:N)には処理を終了する。
【0040】
ステップS16では、CPU10aは、ステップS13で温度補正された開回路電圧OCVと所定の閾値Th1を比較し、OCV>Th1を満たす場合(ステップS16:Y)にはステップS17に進み、それ以外の場合(ステップS16:N)には処理を終了する。例えば、開回路電圧OCVが図3に示す異常減液時のOCVよりも大きい場合にはYと判定してステップS17に進む。
【0041】
ステップS17では、CPU10aは、異常減液が発生している可能性があることを、通信部10dを介して上位装置(例えば、図示しないECU)に通知する。
【0042】
ステップS18では、CPU10aは、充電可能電池14の内部抵抗Rを算出する。より詳細には、CPU10aは、所定のタイミング(例えば、エンジン16を始動したタイミング)において、図5を参照して説明したように、例えば、1ms毎に変化電圧ΔVと、変化電流ΔIとを測定して、例えば、10秒間に亘って累積加算してΔVaとΔIaを求め、これらの値からΔVa/ΔIaによって内部抵抗R(=ΔVa/ΔIa)の値を算出する。なお、1msおよび10秒は一例であって、これら以外の時間に設定してもよい。また、ステップS12で推定した電解液温度を参照して、内部抵抗Rの値を基準温度25℃における値に温度補正するようにしてもよい。
【0043】
ステップS19では、CPU10aは、ステップS18で算出した一定時間内での内部抵抗増加率の値が、所定の閾値Th2よりも大きいか否かを判定し、内部抵抗増加率>Th2を満たす場合(ステップS19:Y)にはステップS20に進み、それ以外の場合(ステップS19:N)には処理を終了する。例えば、内部抵抗増加率の値が、所定の閾値(例えば、図4に示す異常減液時の内部抵抗増加率)よりも大きい場合にはYと判定してステップS20に進む。
【0044】
ステップS20では、CPU10aは、充電可能電池14の極板が電解液から露出している可能性があることを上位装置に通知する。
【0045】
以上の処理によれば、前述した動作を実現することができる。
【0046】
(C)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、以上の実施形態では、異常減液の可能性の有無については、図6に示すステップS16において、開回路電圧OCVと、所定の閾値(図3に示す異常減液時のOCV)とを比較して判定するようにした。しかしながら、初期時(例えば、充電可能電池14が新品時)における開回路電圧は、充電可能電池14毎に異なる場合がある。そこで、図7に示すように、充電可能電池14の初期時開回路電圧をOCV0として記憶し、判断時における開回路電圧OCVおよび初期時開回路電圧OCV0との差分と、閾値Th3とを比較するようにしてもよい。
【0047】
より詳細には、図7に示す例では、図6に比較すると、ステップS16が除外され、ステップS30およびステップS31が追加されている。その他の部分は図6と同様であるので、以下では、異なる部分を中心に説明する。
【0048】
ステップS30では、CPU10aは、充電可能電池14の初期時に測定し、例えば、RAM10cに格納されている初期時開回路電圧OCV0を取得する。なお、初期時開回路電圧OCV0は、車両が工場で組み立てられ、充電可能電池14が搭載された際に測定し、RAM10cに記憶することができる。あるいは、工場出荷後に、充電可能電池14が交換された際に測定し、RAM10cに記憶することができる。
【0049】
ステップS31では、CPU10aは、ステップS11で測定され、ステップS13で温度補正がされた開回路電圧OCVと、初期時開回路電圧OCV0との差分値(OCV-OCV0)を計算し、差分値が所定の閾値(Th3)よりも大きいか否かを判定し、大きいと判定した場合(ステップS31:Y)にはステップS17に進み、それ以外の場合(ステップS31:N)には処理を終了する。
【0050】
図7に示す処理によれば、様々な種類の充電可能電池14の異常減液を検出すること
が可能になる。
【0051】
なお、図7では、初期時開回路電圧OCV0として、充電可能電池14が新品時の開回路電圧を用いるようにしたが、例えば、充電可能電池14に対して蒸留水等が補充された場合(補液された場合)には、その時点の開回路電圧を、例えば、補液時開回路電圧OCV1として測定して記憶し、ステップS31では差分値(OCV-OCV1)と閾値Th4に基づいて判断するようにしてもよい。すなわち、本実施形態において初期時とは、(1)新品時、(2)交換時、(3)補液時等を言うものとする。
【0052】
また、前述したステップS31の処理では、差分値(OCV-OCV0)と閾値Th3に基づいて異常減液の有無を判定するようにしたが、差分値を初期時開回路電圧OCV0で除して得られる値(OCV-OCV0)/OCV0と閾値Th5に基づいて判定するようにしてもよい。同様に、差分値を補液時開回路電圧OCV1で除して得られる値(OCV-OCV1)/OCV1と閾値Th6に基づいて判定するようにしてもよい。
【0053】
また、以上の実施形態では、開回路電圧は充電可能電池14が安定している場合に実測するようにしたが、推定値に基づいて求めるようにしてもよい。例えば、開回路電圧の時間的な変動を近似できる電圧特性式を用いることで、充電可能電池14の安定時の開回路電圧を推定することができる。電圧特性式として、高次(例えば、4次以上)の指数減衰関数を含む近似式を用いることで、開回路電圧の時間変動を高精度に推定することができる。
【0054】
また、以上の実施形態では、内部抵抗Rについては、極板が電解液から露出していることを検出するために参照するようにしたが、図6のステップS16および図7のステップS31の処理と併せて、内部抵抗Rの変化を参照して判断するようにしてもよい。例えば、開回路電圧OCVと内部抵抗Rとのそれぞれに対して重み係数W1,W2を乗算して加算し、得られた値(W1×OCV+W2×R)と閾値Th7とを比較して判断するようにしてもよい。もちろん、前述した式のOCVは、(OCV-OCV0)または(OCV-OCV1)としたり、あるいは、(OCV-OCV0)/OCV0または(OCV-OCV1)/OCV1としたりしてもよい。
【0055】
また、以上の実施形態では、測定した開回路電圧OCVを電解液の温度によって補正するようにしたが、これ以外にも、例えば、経年変化等も加味して補正するようにしてもよい。
【0056】
また、以上の実施形態では、充電可能電池14が満充電の場合の開回路電圧OCVを用いて異常減液を検出するようにしたが、例えば、所定の充電率(例えば、90%、80%等)の場合の開回路電圧OCVを用いて判定するようにしてもよい。また、満充電か否かについては、必ずしも測定する必要はなく、所定時間以上連続して充電が継続されている場合には満充電状態と推定するようにしてもよい。
【0057】
図6および図7のステップS18において、内部抵抗Rは、図5に示す処理によって求めるようにしたが、これ以外の方法によって内部抵抗Rの値を求めるようにしてもよい。例えば、負荷に電流が流れる場合の電圧と電流を求め、これらの電圧と電流から内部抵抗を求めるようにしてもよい。あるいは、充電可能電池14の等価回路を設定し、充電可能電池14の電圧と電流を測定し、これらの電圧と電流に基づいて等価回路を学習処理によって求めるようにしてもよい。
【0058】
また、図6および図7に示すフローチャートは一例であって、本発明がこれらのフローチャートの処理のみに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0059】
1 充電可能電池減液検出装置
10 制御部
10a CPU
10b ROM
10c RAM
10d 通信部
10e I/F
11 電圧センサ
12 電流センサ
13 温度センサ
14 充電可能電池
15 オルタネータ
16 エンジン
17 スタータモータ
18 負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7