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特許7007947高温超電導ケーブル、中間接続部及び終端接続部
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】高温超電導ケーブル、中間接続部及び終端接続部
(51)【国際特許分類】
   H01B 12/02 20060101AFI20220118BHJP
   H02G 15/34 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
H01B12/02 ZAA
H02G15/34
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018034811
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019149343
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】劉 勁
【審査官】和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-055274(JP,A)
【文献】特開2007-149359(JP,A)
【文献】特開2002-056729(JP,A)
【文献】特開2013-073831(JP,A)
【文献】国際公開第2011/027462(WO,A1)
【文献】特開平09-180553(JP,A)
【文献】特開2006-156312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 12/02
H02G 15/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温超電導導体層と、前記高温超電導導体層の外周に設けられた電気絶縁層とを備えるケーブルコアと、前記ケーブルコアの外側を冷媒が流れる外部流路とを備える高温超電導ケーブルにおいて、
前記電気絶縁層は、有機物で形成されており、
前記外部流路に、前記冷媒に含まれる可燃性ガスの分子を前記冷媒中から捕集する捕集材が配置されていることを特徴とする高温超電導ケーブル。
【請求項2】
前記高温超電導導体層の内側を冷媒が流れる内部流路と、前記内部流路に配置された別の捕集材とを更に有し、
前記電気絶縁層で発生した可燃性ガスの分子が前記内部流路と前記外部流路の少なくとも一方を流れる冷媒に流出するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の高温超電導ケーブル。
【請求項3】
前記高温超電導導体層の内側にフォーマを備え、
前記フォーマの中空部が前記内部流路とされており、
前記フォーマの表面が、金、銀又は銅のいずれかの金属でコーティングされていることを特徴とする請求項に記載の高温超電導ケーブル。
【請求項4】
前記捕集材は、前記高温超電導導体層と実系統側とを接続するための終端接続部における前記内部流路の出口の部分に配置されていることを特徴とする請求項2又は請求項に記載の高温超電導ケーブル。
【請求項5】
前記捕集材は、前記高温超電導導体層と実系統側とを接続する終端接続部における、前記冷媒の外部への流出口の部分に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブル。
【請求項6】
前記終端接続部における、前記冷媒と接触する部分が、金、銀又は銅のいずれかの金属でコーティングされていることを特徴とする請求項又は請求項に記載の高温超電導ケーブル。
【請求項7】
前記捕集材は、ニッケル、パラジウム、白金又はそれらの合金で形成された繊維凝集体を備えていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブル。
【請求項8】
前記電気絶縁層の外側に断熱管を備え、
前記断熱管の内側に前記外部流路が設けられており、
前記断熱管の内壁が、金、銀又は銅のいずれかの金属でコーティングされていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブル。
【請求項9】
前記電気絶縁層に有機油が含浸されていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブル。
【請求項10】
前記高温超電導導体層を接続するための中間接続部においても、接続された前記高温超電導導体層の外周に前記電気絶縁層が設けられており、
前記捕集材は、前記中間接続部における前記冷媒の流れの下流側に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブル。
【請求項11】
前記中間接続部における、前記冷媒と接触する部分が、金、銀又は銅のいずれかの金属でコーティングされていることを特徴とする請求項10に記載の高温超電導ケーブル。
【請求項12】
前記中間接続部における前記電気絶縁層に有機油が含浸されていることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の高温超電導ケーブル。
【請求項13】
高温超電導導体層と、前記高温超電導導体層の外周に設けられた電気絶縁層と、前記高温超電導導体層の内側及び前記電気絶縁層の外側に冷媒が流れる流路を備える高温超電導ケーブルの前記高温超電導導体層を接続するための前記高温超電導ケーブルの中間接続部において、
接続された前記高温超電導導体層の外周に設けられた前記電気絶縁層が、有機物で形成されており、
前記冷媒の流れの下流側に、前記冷媒に含まれる可燃性ガスの分子を前記冷媒中から捕集する捕集材が配置されていることを特徴とする中間接続部。
【請求項14】
高温超電導導体層と、前記高温超電導導体層の外周に設けられた電気絶縁層と、前記高温超電導導体層の内側を冷媒が流れる内部流路と、前記電気絶縁層の外側を冷媒が流れる外部流路とを備える高温超電導ケーブルの前記高温超電導導体層と実系統側とを接続するための前記高温超電導ケーブルの終端接続部において、
前記電気絶縁層は、有機物で形成されており、
前記内部流路の出口の部分と前記冷媒の外部への流出口の部分のいずれか一方又は両方に、前記冷媒に含まれる可燃性ガスの分子を前記冷媒中から捕集する捕集材が配置されていることを特徴とする終端接続部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温超電導ケーブル、中間接続部及び終端接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量送電ケーブルは、一般に、ケーブルの内側の中心軸の近くに電流が流れる導体を有しており、その外側が電気絶縁層で被覆されている。そして、電気絶縁層が紙や高分子材料等で形成されることが多いため、電気絶縁層の外側には、それを保護するために金属製のシールド層が設けられることが多い。
そして、金属製のシールド層は、通常、接地されているため、内部の導体との間に高電圧(数十kV~数百kV)が印加される状態になる。そのため、電気絶縁層は分厚く形成される。
【0003】
そして、ケーブルの長期間の使用により電気絶縁層が劣化すると、印加される高電圧により電気絶縁層内で局所的かつ小規模な放電が発生し、放電が発生した電気絶縁層内の部分の周囲の電気絶縁層が破壊される。そして、このような小規模な放電が繰り返されるうちに爆発的な放電やケーブルの破壊現象(いわゆる地絡事故)が引き起こされる。
また、大容量ケーブルは、中間接続部(ジョイント部等ともいう。)で導体同士が接続されて延伸されるが、その中間接続部等でも上記と同様の地絡事故が発生することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-52542号公報
【文献】特開2001-52545号公報
【文献】国際公開第2013/179690号
【文献】特開2005-11669号公報
【文献】特開2007-149359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高温超電導導体層を備える高温超電導ケーブルも、上記の従来の大容量送電ケーブルと基本的に同じ構造を有しており、高温超電導導体層の外周に電気絶縁層が設けられて構成される(例えば特許文献1、2等参照)。
また、中間接続部では、導体同士が接続され、その周囲に電気絶縁層が設けられるようにしてケーブルが接続される(例えば特許文献3~5等参照)。
【0006】
そのため、高温超電導ケーブルにおいても、電気絶縁層の経年劣化等の原因により電気絶縁層で局所的かつ小規模な放電が発生する可能性があり、上記のような地絡事故や火災等が発生する可能性がある。
そして、このような地絡事故等が起きる前に、地絡の前兆すなわち電気絶縁層で局所的かつ小規模な放電が生じていることを検知することができれば、高温超電導ケーブルを新しいものに交換するなどして、地絡事故等の発生を防止することが可能となる。
【0007】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、電気絶縁層の経年劣化等により電気絶縁層で局所的かつ小規模な放電が発生していることを的確に検知することが可能な高温超電導ケーブル、中間接続部及び終端接続部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
高温超電導導体層と、前記高温超電導導体層の外周に設けられた電気絶縁層とを備えるケーブルコアと、前記ケーブルコアの外側を冷媒が流れる外部流路とを備える高温超電導ケーブルにおいて、
前記電気絶縁層は、有機物で形成されており、
前記外部流路に、前記冷媒に含まれる可燃性ガスの分子を前記冷媒中から捕集する捕集材が配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の高温超電導ケーブルにおいて、
前記高温超電導導体層の内側を冷媒が流れる内部流路と、前記内部流路に配置された別の捕集材とを更に有し、
前記電気絶縁層で発生した可燃性ガスの分子が前記内部流路と前記外部流路の少なくとも一方を流れる冷媒に流出するように構成されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の高温超電導ケーブルにおいて、
前記高温超電導導体層の内側にフォーマを備え、
前記フォーマの中空部が前記内部流路とされており、
前記フォーマの表面が、金、銀又は銅のいずれかの金属でコーティングされていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の高温超電導ケーブルにおいて、前記捕集材は、前記高温超電導導体層と実系統側とを接続するための終端接続部における前記内部流路の出口の部分に配置されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブルにおいて、前記捕集材は、前記高温超電導導体層と実系統側とを接続する終端接続部における、前記冷媒の外部への流出口の部分に配置されていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項4又は請求項5に記載の高温超電導ケーブルにおいて、前記終端接続部における、前記冷媒と接触する部分が、金、銀又は銅のいずれかの金属でコーティングされていることを特徴とする。
【0010】
請求項に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブルにおいて、前記捕集材は、ニッケル、パラジウム、白金又はそれらの合金で形成された繊維凝集体を備えていることを特徴とする。
【0012】
請求項に記載の発明は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブルにおいて、
前記電気絶縁層の外側に断熱管を備え、
前記断熱管の内側に前記外部流路が設けられており、
前記断熱管の内壁が、金、銀又は銅のいずれかの金属でコーティングされていることを特徴とする。
【0013】
請求項に記載の発明は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブルにおいて、前記電気絶縁層に有機油が含浸されていることを特徴とする。
【0014】
請求項10に記載の発明は、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の高温超電導ケーブルにおいて、
前記高温超電導導体層を接続するための中間接続部においても、接続された前記高温超電導導体層の外周に前記電気絶縁層が設けられており、
前記捕集材は、前記中間接続部における前記冷媒の流れの下流側に配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の高温超電導ケーブルにおいて、前記中間接続部における、前記冷媒と接触する部分が、金、銀又は銅のいずれかの金属でコーティングされていることを特徴とする。
【0016】
請求項12に記載の発明は、請求項10又は請求項11に記載の高温超電導ケーブルにおいて、前記中間接続部における前記電気絶縁層に有機油が含浸されていることを特徴とする。
【0020】
請求項13に記載の発明は、
高温超電導導体層と、前記高温超電導導体層の外周に設けられた電気絶縁層と、前記高温超電導導体層の内側及び前記電気絶縁層の外側に冷媒が流れる流路を備える高温超電導ケーブルの前記高温超電導導体層を接続するための前記高温超電導ケーブルの中間接続部において、
接続された前記高温超電導導体層の外周に設けられた前記電気絶縁層が、有機物で形成されており、
前記冷媒の流れの下流側に、前記冷媒に含まれる可燃性ガスの分子を前記冷媒中から捕集する捕集材が配置されていることを特徴とする。
【0021】
請求項14に記載の発明は、
高温超電導導体層と、前記高温超電導導体層の外周に設けられた電気絶縁層と、前記高温超電導導体層の内側を冷媒が流れる内部流路と、前記電気絶縁層の外側を冷媒が流れる外部流路とを備える高温超電導ケーブルの前記高温超電導導体層と実系統側とを接続するための前記高温超電導ケーブルの終端接続部において、
前記電気絶縁層は、有機物で形成されており、
前記内部流路の出口の部分と前記冷媒の外部への流出口の部分のいずれか一方又は両方に、前記冷媒に含まれる可燃性ガスの分子を前記冷媒中から捕集する捕集材が配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、冷媒に含まれる可燃性ガスの分子を冷媒中から捕集する捕集材を、有機物で形成された電気絶縁層の外側を冷媒が流れる外部流路等に配置した。そのため、捕集材で捕集された可燃性ガスの分子をガスクロマトグラフィー等で分析することで、捕集された可燃性ガスの分子の成分ごとの捕集量や可燃性ガスの分子の総量を検出することが可能となる。
そして、検出した可燃性ガスの分子の各成分の量や可燃性ガスの分子の総量が増加しているか否かを確認することで、電気絶縁層の経年劣化等により電気絶縁層で局所的かつ小規模な放電が発生していることを的確に検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態に係る高温超電導ケーブルのケーブル部の構成を表す斜視図である。
図2】本実施形態に係る高温超電導ケーブルの中間接続部の構成例及び捕集材の配置例を表す図である。
図3】本実施形態に係る高温超電導ケーブルの終端接続部の構成例及び捕集材の配置例を表す図である。
図4】(A)電気絶縁層内部に生じたボイド、及び(B)ボイドが成長してできた空洞を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明に係る高温超電導ケーブル、中間接続部及び終端接続部について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の各実施形態や図示例に限定するものではない。
また、例えば、高温超電導ケーブルで交流送電を行う場合、3本の高温超電導ケーブルコアを1つの断熱管に収容する場合があるが、そのそれぞれのケーブルコアについて以下で説明する構成を採用した高温超電導ケーブルを用いることができる。
【0025】
[高温超電導ケーブルのケーブル部の構成]
まず、高温超電導ケーブルのケーブル部の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る高温超電導ケーブルのケーブル部の構成を表す斜視図である。
高温超電導ケーブル1のケーブル部1aは、主にケーブルコア2と断熱管3とで構成されている。そして、ケーブルコア2は、フォーマ4と、高温超電導導体層5と、電気絶縁層6と、シールド層7と、保護層8とを備えて構成されている。
【0026】
フォーマ4は、金属製であり、ケーブルコア2の中心部分に設けられている。そして、本実施形態では、フォーマ4は、複数本の銅の丸線41が束ねられて円筒状に形成されている。フォーマ4は、ケーブルコア2の形状を維持する機能を有するとともに、高温超電導導体層5に過大な電流が流れた場合にはバイパス経路として機能するようになっている。
また、円筒状のフォーマ4の中空部4aは、冷媒(例えば液体窒素)が流れる内部流路Aとされている。
【0027】
冷媒は、フォーマ4を冷却するとともに、その中空部4aから銅の丸線41の隙間を通り、後述する各高温超電導線材51の間を浸透してそれらを冷却するようになっている。
また、各高温超電導線材51の間を浸透した冷媒は、後述する電気絶縁層6の内面に接している。
【0028】
フォーマ4の外周には、高温超電導導体層5が設けられている。本実施形態では、高温超電導導体層5は、複数条の高温超電導線材51を並べるようにして構成されており、各高温超電導線材51をフォーマ4に螺旋状に巻回させるようにして構成されている。なお、高温超電導導体層5は、1つの層で構成されていてもよく複数の層であってもよい。
高温超電導線材51は、テープ状の線材である。例えば、高温超電導線材51の超電導層を構成する超電導体としては、液体窒素温度(77K)以上の臨界温度を有するイットリウム系超電導体(REBCO線材。化学式はYBa2Cu37-y(yは酸素不定比量)で表される。)を用いることができる。
【0029】
高温超電導導体層5の外周には、電気絶縁層6が設けられている。
本実施形態では、電気絶縁層6は、絶縁紙にポリプロピレンフィルムをラミネートした半合成紙やクラフト紙等の絶縁性紙類等(有機物)で形成されており、それらが高温超電導導体層5の上に分厚く巻回されて構成されている。なお、電気絶縁層6は、例えば樹脂等で形成されていてもよい。
【0030】
電気絶縁層6の外周には、シールド層7が設けられており、シールド層7は接地されている。また、本実施形態では、シールド層7は、主にHTSシールド層71と銅シールド層72とで構成されている。
HTS(high-temperature superconductor)シールド層71は、高温超電導導体層5と同様に複数条の高温超電導線材を電気絶縁層6に螺旋状に巻回させるようにして構成されている。そして、高温超電導導体層5を電流が流れることによって形成される磁場の外部への漏れがこのHTSシールド層71によって完全に遮断されるようになっている。
【0031】
また、銅シールド層72は、例えば銅編組線からなるシールド層で構成されており、ケーブルコア2を外部からの衝撃から守るように機能する。
シールド層7の外周には、不織布等で形成された保護層8が設けられており、ケーブルコア2を保護するようになっている。
【0032】
一方、断熱管3は、電気絶縁層6等を含むケーブルコア2の外側に設けられており、ケーブルコア2を収容する断熱内管10と、断熱内管10の外周を覆うように配設された断熱外管11とを備えており、断熱内管10と断熱外管11の間が真空状態とされた二重管構造とされている。
そして、電気絶縁層6の外側で断熱管3の内側の部分(すなわちケーブルコア2の保護層8と断熱管3の断熱内管10との間)に冷媒が流れる外部流路Bが設けられている。
【0033】
外部流路Bを流れる冷媒は、保護層8やシールド層7を浸透して電気絶縁層6の外面に接している。
そして、外部流路Bを流れる冷媒は、前述した内部流路A(冷媒フォーマ4の中空部4a)を流れる冷媒と協働してケーブルコア2全体を冷却するようになっている。
【0034】
断熱管3の断熱内管10と断熱外管11は、例えばステンレス製のコルゲート管(波付き管)で構成される。そして、断熱内管10と断熱外管11の間には、例えばアルミを蒸着したポリエステルフィルムの積層体等で構成された多層断熱層12が介在されている。
そして、断熱外管11の外周が、ポリ塩化ビニルやポリエチレン等の外部被覆(防食層)13で被覆されている。
【0035】
なお、後述する高温超電導ケーブル1の中間接続部1b等においても同様であるが、本実施形態に係る高温超電導ケーブル1のケーブル部1aでは、上記のように、冷媒の内部流路Aと電気絶縁層6との間に設けられているフォーマ4は銅の丸線41が束ねられて形成されており、高温超電導導体層5は複数条の高温超電導線材51を並べるようにして構成されている。
そのため、後述するように電気絶縁層6(後述する高温超電導ケーブル1の中間接続部1bの電気絶縁層61を含む。以下同じ。)で発生した可燃性ガスの分子が、電気絶縁層6の内面に接している冷媒に溶け出すと、冷媒によって運ばれて、内部流路Aに流出する状態すなわち内部流路Aの冷媒に含まれる状態になる。
【0036】
また、本実施形態に係る高温超電導ケーブル1のケーブル部1aでは、上記のように、電気絶縁層6と冷媒の外部流路Bとの間に設けられているシールド層7のHTSシールド層71は複数条の高温超電導線材を電気絶縁層6に螺旋状に巻回させるようにして構成されており、銅シールド層72は銅編組線で構成されている。また、保護層8は不織布で形成されている。
そのため、後述するように電気絶縁層6で発生した可燃性ガスの分子が、電気絶縁層6の外面に接している冷媒に溶け出すと、冷媒によって運ばれて、外部流路Bに流出する状態すなわち外部流路Bの冷媒に含まれる状態になる。
【0037】
このように、本実施形態では、後述するように電気絶縁層6で可燃性ガスが発生すると、可燃性ガスの分子が、電気絶縁層6の内面側で冷媒に溶け出しても、電気絶縁層6の外面側で冷媒に溶け出しても、高温超電導導体層5やフォーマ4等の構造物に邪魔されることなく、あるいはシールド層7や保護層8等の構造物に邪魔されることなく、冷媒によって内部流路Aや外部流路Bに運ばれて、冷媒とともに内部流路Aや外部流路Bに流出するようになっている。
【0038】
[高温超電導ケーブルの中間接続部の構成]
次に、高温超電導ケーブル1の中間接続部1bの構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る高温超電導ケーブル1の中間接続部1bの構成例を表す図である。
【0039】
高温超電導ケーブル1の中間接続部1bは、例えば図2に示すように、断熱容器15を備えて構成されている。
断熱容器15は、円筒形状の内管16と外管17の二重壁面構造を有しており、内管16と外管17には、各円筒形状の一端部と他端部とをそれぞれ閉塞する側板18、19がそれぞれ溶接されている。そして、各側板18、19には、それぞれ中央部に円孔が形成されている。
【0040】
また、内管16の側板18の円孔の周囲の縁部にはケーブル部1aの断熱内管10が溶接される等して取り付けられており、外管17の側板19の円孔の周囲の縁部にはケーブル部1aの断熱外管11が溶接される等して取り付けられている。
そして、断熱容器15の内管16と外管17の間の空間と、ケーブル部1aの断熱内管10と断熱外管11の間の空間とが連通されており、ケーブル部1aの断熱内管10と断熱外管11の間の空間と同様に、断熱容器15の内管16と外管17の間の空間も真空引きされて真空状態になっている。
【0041】
このようにして、中間接続部1bの断熱容器15においても、断熱容器15の内管16の内側の断熱を図ることができるようになっている。
なお、ケーブル部1aと同様に、中間接続部1bの断熱容器15においても、内管16と外管17の間に多層断熱層を介在させる等の構造を設けてもよい。また、断熱容器15の外周を外部被覆(防食層)で被覆するように構成することも可能である。
【0042】
また、上記のように、断熱容器15では、内管16の側板18の円孔の周囲の縁部にケーブル部1aの断熱内管10が取り付けられているため、内管16の内部の領域がケーブル部1aの外部流路Bと連通している。そのため、断熱容器15の内管16の内部の領域にケーブル部1aの外部流路Bを流れてきた冷媒9が流れ込むため、断熱容器15の内管16の内部の領域も冷媒9で充填されており、冷媒9が流通している。
そのため、断熱容器15の内管16の内部の領域も、ケーブル部1aの外部流路Bと同様に、高温超電導ケーブル1の外部流路Bを構成している。
【0043】
なお、図2では、冷媒9は外部流路Bを図中左側から右側に流れるものとする。また、以下、外部流路B内での冷媒9の流れの上流側及び下流側にあわせて、断熱容器15等における位置を上流側(図中左側)、下流側(図中右側)という場合がある。
また、ケーブル部1aの内部流路A(図2では図示省略。図1参照)を流れてきた冷媒9が断熱容器15内で外部流路Bに流出したり、ケーブル部1aの内部流路Aや外部流路Bを流れてきた冷媒9が断熱容器15内で混合されるように構成されている場合もある。
【0044】
高温超電導ケーブル1の中間接続部1bでは、上流側及び下流側のケーブル部1aの高温超電導導体層5同士が接続されるようになっている。
具体的には、例えば、断熱容器15の内管16内で、上流側及び下流側の各ケーブル部1aのケーブルコア2の電気絶縁層6がそれぞれ段剥ぎされて高温超電導導体層5が露出しており、接続部52で、上流側の1本の高温超電導線材51と下流側の1本の高温超電導線材51とを接続するようにして超電導層同士が半田付け等により接続されている。そして、接続された高温超電導導体層5の外周に、半合成紙やクラフト紙等の絶縁性紙類を巻回するなどして電気絶縁層61が設けられている。
【0045】
なお、接続部52では、上流側及び下流側の各ケーブル部1aのフォーマ4同士も半田付け等で連結されている。
また、図2では図示を省略するが、電気絶縁層61の周囲には、上流側及び下流側の各ケーブル部1aのシールド層7(HTSシールド層71や銅シールド層72)等が延設され、それらも上流側と下流側とが互いに接続されるようになっている。
【0046】
一方、高温超電導ケーブル1の中間接続部1bの外部流路Bには、冷媒9に含まれる可燃性ガスの分子を冷媒9中から捕集する捕集材30aが配置されている。そして、本実施形態では、捕集材30aは、中間接続部1bの断熱容器15の内管16内における冷媒9の流れの下流側に配置されている。
そして、本実施形態では、中間接続部1bの捕集材30aは、ニッケル等の所定の金属等で形成された繊維凝集体で構成されている。捕集材30aの機能等については後で詳しく説明する。
【0047】
また、断熱容器15の下流側には、捕集材30aの取出口20が設けられており、取出口20から捕集材30aを取り出して交換することができるようになっている。
取出口20の筒状構造の内部には、冷媒9が充填されており、高温超電導ケーブル1での送電時には冷媒9が加圧されているが、捕集材30aを取り出す際(例えば高温超電導ケーブル1や接続部分の定期点検時等)には冷媒9は常圧とされるため、取出口20を開けても冷媒9が外部に流出することはない。
【0048】
[高温超電導ケーブルの終端接続部の構成]
次に、高温超電導ケーブル1の終端接続部1cの構成について説明する。
高温超電導ケーブル1の終端接続部1cは、ケーブルコア2の高温超電導導体層5と実系統側とを接続するための接続部である。図3は、本実施形態に係る高温超電導ケーブル1の終端接続部1cの構成例を表す図である。
【0049】
高温超電導ケーブル1の終端接続部1cは、例えば図3に示すように、低温容器21を備えて構成されている。
低温容器21は、内管22と外管23の二重壁面構造を有しており、ケーブルコア2の端部を収容する収容部21aと、収容部21aに垂設された略円筒形状の引き出し部21b、21cとを備えて構成されている。
【0050】
収容部21aの一端側の内管22と外管23には、それぞれ円孔が形成されている。そして、内管22の円孔の周囲の縁部にはケーブル部1aの断熱内管10が溶接される等して取り付けられており、外管23の円孔の周囲の縁部にはケーブル部1aの断熱外管11が溶接される等して取り付けられている。
そして、低温容器21の内管22と外管23の間の空間と、ケーブル部1aの断熱内管10と断熱外管11の間の空間とが連通されており、ケーブル部1aの断熱内管10と断熱外管11の間の空間と同様に、低温容器21の内管22と外管23の間の空間も真空引きされて真空状態になっている。
【0051】
このようにして、終端接続部1cの低温容器21においても、低温容器21の内管22の内側の断熱を図ることができるようになっている。
なお、ケーブル部1aと同様に、終端接続部1cの低温容器21においても、内管22と外管23の間に多層断熱層を介在させる等の構造を設けてもよい。また、低温容器21の外周を外部被覆(防食層)で被覆するように構成することも可能である。
【0052】
また、上記のように、低温容器21では、内管22の円孔の周囲の縁部にケーブル部1aの断熱内管10が溶接される等して取り付けられているため、内管22の内部の領域がケーブル部1aの外部流路Bと連通している。そのため、低温容器21の内管22の内部の領域にケーブル部1aの外部流路Bを流れてきた冷媒9が流れ込むため、低温容器21の収容部21a内の領域も冷媒9で充填されており、冷媒9が流通している。
そのため、低温容器21の収容部21a内の領域も、ケーブル部1aの外部流路Bと同様に、高温超電導ケーブル1の外部流路Bを構成している。
【0053】
なお、以下、外部流路B内での冷媒9の流れの上流側及び下流側にあわせて、低温容器21等における位置を上流側(図中左側)、下流側(図中右側や図中右上側)という場合がある。
【0054】
高温超電導ケーブル1の終端接続部1cでは、ケーブルコア2のシールド層7を接地したり、ケーブルコア2から電流を実系統側に引き出すようになっている。
具体的には、低温容器21の収容部21aに上流側から引き込まれたケーブルコア2は、外側の保護層8が剥ぎ取られ、露出したシールド層7(HTSシールド層71、銅シールド層72)が、引き出し部21bから垂下されたシールド用電流リード24と接続される。引き出し部21bは上端側と下端側がそれぞれシールされている。
そして、シールド用電流リード24がケーブルコア2のシールド層7と接続されてシールド層7が接地されるとともに、シールド層7内を流れる電流がシールド用電流リード24により外部に引き出されるようになっている。
【0055】
また、ケーブルコア2は、シールド用電流リード24との接続箇所(又はその下流側)でシールド層7が切断され、その下流側では電気絶縁層6が露出する。そして、引き出し部21cの下方で電気絶縁層6の一部が剥ぎ取られ、露出した高温超電導導体層5が、引き出し部21cから垂下された導体用電流リード25と接続される。
そして、導体用電流リード25により高温超電導導体層5の超電導層を流れてきた電流が実系統側に引き出されるようになっている。
【0056】
ケーブルコア2は、導体用電流リード25との接続箇所の下流側で電気絶縁層6や高温超電導導体層5、フォーマ4(図3では図示省略)等が切断されている。
そして、その切断部分が、ケーブルコア2の内部流路A(フォーマ4の中空部4a)の出口A1になっており、内部流路Aを流れてきた冷媒9は出口A1から流出すると、収容部21a内の冷媒9と合流するようになっている。
また、低温容器21の収容部21a内(すなわち外部流路B)を流れてきた冷媒9や内部流路Aの出口A1から流出した冷媒9は、低温容器21の引き出し部21cを上昇していき、引き出し部21cに設けられた流出口26を通って外部に流出するようになっている。
【0057】
一方、高温超電導ケーブル1の終端接続部1cでは、収容部21a内のケーブルコア2の内部流路Aの出口A1の部分に、冷媒9に含まれる可燃性ガスの分子を冷媒9中から捕集する捕集材30bが配置されている。また、高温超電導ケーブル1の内部流路Aや外部流路Bを流れてきた冷媒9の流出口26の部分にも捕集材30cが配置されている。
そして、本実施形態では、終端接続部1cの捕集材30b、30cは、茶こし状あるいはかご状の網にニッケル等の所定の金属等で形成された繊維凝集体が充填されて構成されている。そして、捕集材30bはケーブルコア2の内部流路Aの出口A1の部分で出口A1を覆うように配置されており、捕集材30cは引き出し部21cの冷媒9の流出口26の部分で流出口26に嵌め込まれるようにして配置されている。なお、捕集材30b、30cの機能等については後で詳しく説明する。
【0058】
また、低温容器21の引き出し部21cの上部には、捕集材30b、30cの取出口27が設けられており、取出口27から捕集材30b、30cを取り出して交換することができるようになっている。
なお、取出口27を引き出し部21c内部の液面より高い位置に設ければ、取出口27を開放した際に冷媒9が流出しないため好ましい。また、この場合も、高温超電導ケーブル1での送電時には冷媒9が加圧されているが、捕集材30b、30cを取り出す際(例えば高温超電導ケーブル1や接続部分の定期点検時等)には冷媒9は常圧とされるため、取出口27を開けても冷媒9が外部に流出することはない。
【0059】
[作用]
前述した大容量送電ケーブルと同様に、高温超電導ケーブル1においても、フォーマ4や高温超電導導体層5に高電圧が印加されており、シールド層7は接地されている。
そのため、それらの間に介在する電気絶縁層6(高温超電導ケーブル1の中間接続部1bの電気絶縁層61を含む。以下同じ。)には高電圧(数十kV~数百kV)が印加された状態になっている。
【0060】
また、高温超電導ケーブル1の長期間の使用による電気絶縁層6に経年劣化が生じるなどすると、図4(A)に示すように、電気絶縁層6内部にボイド(void)Vが生じる場合がある。
そして、ボイドVが生じているところに上記のように高電圧がかかると、ボイドVの内部で絶縁性能が低下して小規模な放電が発生する場合がある。そして、そのような放電が繰り返し発生すると、その際に生じるエネルギーがボイドVの周囲を侵食してボイドVが成長し、図4(B)に示すような電気絶縁層6に小さな空洞C(クラック等である場合を含む。)ができる。
そして、さらに放電を繰り返して空洞Cがさらに大きく成長する等して、最終的に電気絶縁層6が破壊されてフォーマ4や高温超電導導体層5とシールド層7との間で高電圧の放電が生じることで爆発的な放電やケーブルの破壊現象(いわゆる地絡事故)が引き起こされる。
【0061】
一方、前述したように電気絶縁層6は絶縁性紙類等の有機物(セルロース等)で形成されている。そのため、上記のように放電が生じるとボイドVやその周囲の有機物に作用して、水素(H)やメタン(CH)、エタン(C)、エチレン(C)、アセチレン(C)、一酸化炭素(CO)等の可燃性ガスが発生する。
これらの可燃性ガスは一般に高エネルギーの構造を有しており、自然に発生する確率は極めて低く、これは最終的な地絡事故に至る前に繰り返し発生する小さな放電によって、絶縁油が分解されて生成されたものであると考えられる。したがって、その存在は放電現象の発生を示唆する可能性がある。
【0062】
そして、同じことが本実施形態に係る高温超電導ケーブル1の電気絶縁層6でも生じ得る。小さな放電で、可燃性ガスがボイドVや空洞C内で発生する。そして、図4(B)に示したように空洞Cが電気絶縁層6内で成長して、空洞Cが内部流路Aや外部流路Bに達すると、空洞C内の可燃性ガスの分子が冷媒9に溶け出し、冷媒9によって運ばれて内部流路Aや外部流路Bを流れるようになる。
また、その後も、電気絶縁層6の空洞Cで小さな放電が生じるごとに、発生した可燃性ガスの分子が冷媒9に溶け出して内部流路Aや外部流路Bを流れる。
このようにして、小さな放電で発生した可燃性ガスの分子が、内部流路Aや外部流路Bの冷媒9に含まれるようになる。
【0063】
そして、外部流路Bの冷媒9に含まれる可燃性ガスの分子は、前述したように高温超電導ケーブル1の中間接続部1bの外部流路Bに配置されている捕集材30a(図2参照)や、高温超電導ケーブル1の終端接続部1cの冷媒9の流出口26の部分に配置されている捕集材30c(図3参照)で捕集される。
また、内部流路Aの冷媒9に含まれる可燃性ガスの分子は、高温超電導ケーブル1の終端接続部1cの内部流路Aの出口A1の部分に配置されている捕集材30b(図3参照)で捕集される。
なお、前述したように、高温超電導ケーブル1の中間接続部1bで、ケーブル部1aの内部流路Aを流れてきた冷媒9が断熱容器15内で外部流路Bに流出するように構成されているような場合には、中間接続部1bの外部流路Bに配置されている捕集材30aで内部流路Aの冷媒9に含まれる可燃性ガスの分子が捕集される場合があり得る。
【0064】
そして、捕集材30(なお捕集材30a、30b、30cをまとめて言う場合、捕集材30という。)を取り出し、捕集材30で捕集された可燃性ガスの分子をガスクロマトグラフィーにかけることで、捕集された可燃性ガスの分子の成分ごとの捕集量や可燃性ガスの分子の総量を検出することができる。
なお、捕集材30で捕集された可燃性ガスの分子をそれぞれ分離して高感度に検出することができるものであれば、必ずしもガスクロマトグラフィーに限定されない。
【0065】
そして、上記のように、高温超電導ケーブル1の電気絶縁層6で小さな放電が生じると、アセチレン等の、通常は検出されない成分が検出されたり、検出される可燃性ガスの分子の総量が増加したりする。
そのため、上記のようにして検出した可燃性ガスの分子の各成分の量や可燃性ガスの分子の総量が増加しているか否かを確認することで、電気絶縁層6の経年劣化等により電気絶縁層6で小さな放電が発生しているか否かを検知することが可能となる。
【0066】
そして、例えば、検出されたそれらの量が、設定された基準値を上回っていた場合、高温超電導ケーブル1を交換する等の対策を取ることが可能となる。
また、高温超電導ケーブル1の複数の中間接続部1bにそれぞれ外部流路Bに捕集材30aを配置し、各捕集材30aを別々にガスクロマトグラフィー等で分析することで、小さな放電が繰り返し生じている位置(ボイドVや空洞Cが生じている位置)を特定できる可能性がある。すなわち、可燃性ガスの分子は、放電が生じて可燃性ガスが発生している位置の、冷媒9の流れのすぐ下流側の中間接続部1bの捕集材30aで捕集される。放電が中間接続部1bの電気絶縁層61で生じている場合は、可燃性ガスの分子は当該中間接続部1bの捕集材30aに捕集される。
【0067】
そのため、上記のように高温超電導ケーブル1全体を交換するのではなく、検出した可燃性ガスの分子の各成分の量や可燃性ガスの分子の総量が基準値を上回った捕集材30aが配置されていた中間接続部1bとその上流側の中間接続部1bとの間のケーブル部1aのみを交換する等の対策を取ることが可能となる。
あるいは、その捕集材30aが配置されていた中間接続部1bの電気絶縁層61を巻き直す等の対策を取ることも可能となる。
【0068】
高温超電導ケーブル1の中間接続部1bの電気絶縁層61(図2参照)は基本的に現場で形成されるため、工場で機械巻きされるケーブル部1aの電気絶縁層6よりもボイドVが発生しやすい。
そのため、例えば、中間接続部1bの外部流路Bに配置されていた捕集材30aから検出された可燃性ガスの分子の各成分の量や可燃性ガスの分子の総量が基準値を上回った場合、まず、その中間接続部1bの電気絶縁層61を点検し、そこでボイドVや空洞Cが見つかった場合には、高温超電導ケーブル1の全体のケーブル部1aの一部を交換しなくても中間接続部1bの対処だけでよくなり、地絡事故の発生回避の対応を簡単にかつ低コストで行うことが可能となる。
【0069】
捕集材30は、上記のように冷媒9に含まれる可燃性ガスの分子を冷媒9中から捕集するためのものであるため、可燃性ガスの分子すなわち前述した水素やメタン、エタン、エチレン、アセチレン、一酸化炭素等の分子に対する吸着性が高い材料で形成されていることが望ましい。そのため、捕集材30は、例えば、ニッケル(Ni)やパラジウム(Pd)、白金(Pt)あるいはそれらの合金で形成されていることが望ましい。
そして、上記のように、捕集材30を繊維凝集体として(すなわちいわばスチールウール状に)構成すれば(網に充填させる場合も同様)、冷媒9はその流れを邪魔することなく通過させつつ、冷媒9に含まれる可燃性ガスの分子を的確に吸着させて捕集することが可能となる。
【0070】
また、捕集材30を繊維凝集体として形成すれば、単位体積あたりの表面積が大きくなり、可燃性ガスの分子を効率的に吸着して捕集することが可能となる。
捕集材30の金属表面に一旦吸着した分子は確率的に再脱離してしまうが、捕集材30は冷媒9により極低温に冷却されているため、捕集材30に吸着した分子が再脱離してしまう確率は非常に小さい。
【0071】
そのため、捕集材30が冷媒9の流れにさらされていても捕集材30に一旦吸着された分子は容易には再脱離しないため、小さな放電で可燃性ガスが微量発生しても、捕集材30でそれらを的確に捕集することが可能となる。
さらに、たとえ1回の小さな放電で発生する可燃性ガスの量が少なくても、大規模放電の前兆として小規模な放電が何度も繰り返されれば、捕集材30が可燃性ガスの分子を的確に吸着して蓄積するため、捕集材30で捕集された可燃性ガスの分子をガスクロマトグラフィー等で分析することで、捕集された可燃性ガスの分子の成分ごとの捕集量や可燃性ガスの分子の総量に基づいて電気絶縁層6、61で小さな放電が発生しているか否かを的確に検知することが可能となる。
【0072】
なお、金属製の繊維凝集体は、必ずしも電流に強くない。そのため、例えば、捕集材30に電流が流れないようにするために、例えば、捕集材30とシールド層7との間に絶縁構造を設けることが好ましい。
本実施形態では、高温超電導ケーブル1のケーブル部1aでは、シールド層7の外周に不織布等で形成された保護層8が設けられているため絶縁が図られている。また、高温超電導ケーブル1の中間接続部1bにおいて、接続された高温超電導導体層5の外周に巻回された電気絶縁層61の周囲で上流側及び下流側の各ケーブル部1aのシールド層7を接続する際に、それらを外側から保護層8で被覆するように構成すれば、捕集材30とシールド層7との絶縁を図ることができる。
【0073】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る高温超電導ケーブル1、中間接続部1b及び終端接続部1cによれば、有機物で形成された電気絶縁層6、61の外側を冷媒9が流れる外部流路B等に、冷媒9に含まれる可燃性ガスの分子を冷媒9中から捕集する捕集材30を配置するように構成した。
【0074】
そのため、捕集材30で捕集された可燃性ガスの分子をガスクロマトグラフィー等で分析することで、捕集された可燃性ガスの分子の成分ごとの捕集量や可燃性ガスの分子の総量を検出することが可能となり、検出した可燃性ガスの分子の各成分の量や可燃性ガスの分子の総量が増加しているか否かを確認することで、電気絶縁層6、61の経年劣化等により電気絶縁層6、61で小さな放電が発生していることを的確に検知することが可能となる。
そして、電気絶縁層6、61で小さな放電が発生していることが検知された場合には、高温超電導ケーブル1を交換したり電気絶縁層61を巻き直したりする等の対策を取ることが可能となる。
【0075】
[捕集材で可燃性ガスの分子をより的確に捕集するための構成等について]
冷媒9に含まれる可燃性ガスの分子が捕集材30以外の構造物に吸着すると、その分、捕集材30で捕集される可燃性ガスの分子の量が減ってしまう。
そのため、冷媒9に含まれる可燃性ガスの分子が、できるだけ捕集材30以外の構造物に吸着しないように構成すれば、捕集材30で捕集される可燃性ガスの分子の量を増やすことが可能となり、捕集材30で可燃性ガスの分子をより的確に捕集することが可能となる。
【0076】
そこで、例えば、高温超電導ケーブル1のケーブル部1aで冷媒9の内部流路Aを形成するフォーマ4(図1参照)の表面や、冷媒9の外部流路Bを形成する断熱管3(断熱内管10)の内壁を、金(Au)や銀(Ag)、銅(Cu)のいずれかの金属でコーティングするように構成することが可能である。コーティングは、例えば電解メッキ法等で実施することができる。
また、高温超電導ケーブル1の中間接続部1bで冷媒9と接触する部分、すなわち断熱容器15の内管16や側板18の内壁等や、高温超電導ケーブル1の終端接続部1cで冷媒9と接触する部分、すなわち低温容器21の内管22の内壁等を、金や銀、銅でコーティングするように構成することも可能である。
【0077】
上記の各部分を金や銀、銅の金属でコーティングすることで、冷媒9に含まれる可燃性ガスの分子が上記の各部分に吸着しないようにすることが可能となる。そのため、冷媒9に含まれる可燃性ガスの分子がそれらの各部分で吸着されずに捕集材30に到達するようになるため、捕集材30で捕集される可燃性ガスの分子の量を増やすことが可能となり、捕集材30で可燃性ガスの分子をより的確に捕集することが可能となる。
なお、本実施形態のようにフォーマ4が銅の丸線41で形成されている場合には、改めてフォーマ4を金や銀でコーティングする必要はないが、フォーマ4を構成するために、銅線以外に例えばステンレス線材等が用いられている場合には、そのステンレス材線等を銅メッキする等してコーティングすることが好ましい。
【0078】
一方、本実施形態では、電気絶縁層6、61が半合成紙やクラフト紙等を巻回させて形成されている場合について説明した。本発明はこれでも十分に効果があるが、電気絶縁層6、61に有機油を含浸させるように構成すれば、電気絶縁層6、61で小さな放電が発生した際に、電気絶縁層6、61をクラフト紙等のみで形成した場合に比べて放電でより確実に可燃性ガスを発生させることが可能となり、1回の放電による可燃性ガスの発生量をより多くすることが可能となる。
そのため、電気絶縁層6、61で小さな放電が発生した際に捕集材30でより的確に可燃性ガスの分子が捕集されるようになり、電気絶縁層6、61で小さな放電が発生しているか否かを検知する感度を的確に向上させることが可能となる。
【0079】
なお、前述したように、高温超電導ケーブル1のケーブル部1aの電気絶縁層6では地絡事故は発生せず(あるいは発生する確率が非常に低く)、ボイドVが生じやすい中間接続部1bの電気絶縁層61で地絡事故が発生する確率の方が高いような場合には、ケーブル部1aの電気絶縁層6には有機油を含浸させず、中間接続部1bの電気絶縁層61のみに有機油を含浸させるように構成することも可能である。
【0080】
また、電気絶縁層6、61に有機油を含浸させると、有機油が冷媒9に溶け出してしまう可能性が考えられるが、冷媒9が極低温であるため有機油は冷媒9には溶け出さない。あるいは、有機油が冷媒9に溶け出したとしてもその量は極微量である。
そして、仮に有機油が捕集材30で捕集されたとしても、ガスクロマトグラフィー等の分析方法では上記の可燃性ガスの分子とは分離されて検出されるため、可燃性ガスの分子の検出の妨げになることはない。
【0081】
なお、本発明が上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0082】
例えば、上記の実施形態では、捕集材30を高温超電導ケーブル1の中間接続部1bと終端接続部1cの両方に配置する場合について説明したが(中間接続部1bにおける捕集材30aと終端接続部1cにおける捕集材30b、30c)、それらを全て配置する必要はなく、捕集材30は適宜の位置に配置される。
また、図2図3では、捕集材30を高温超電導ケーブル1の中間接続部1bや終端接続部1cに配置する場合について説明したが、ケーブル部1a(例えばその外部流路B)に設けるように構成することも可能である。そして、その場合、ケーブル部1aの断熱管3(図1参照)等に捕集材30の取出口が設けられる。
【符号の説明】
【0083】
1 高温超電導ケーブル
1b 中間接続部
1c 終端接続部
2 ケーブルコア
3 断熱管
4 フォーマ
4a 中空部
5 高温超電導導体層
6、61 電気絶縁層
9 冷媒
16 内管(冷媒と接触する部分)
18 側板(冷媒と接触する部分)
22 内管(冷媒と接触する部分)
26 流出口
30、30a、30b、30c 捕集材
A 内部流路(内部流路、流路)
A1 出口
B 外部流路(外部流路、流路)
図1
図2
図3
図4