(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】車載ツイストペアケーブルの端末処理方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
H01B 13/00 20060101AFI20220118BHJP
H01R 43/28 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
H01B13/00 521
H01B13/00 551Z
H01R43/28
(21)【出願番号】P 2018068459
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】河原木 槙二
(72)【発明者】
【氏名】平岩 徹也
(72)【発明者】
【氏名】笠原 甫
(72)【発明者】
【氏名】今村 文仁
【審査官】和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-190978(JP,A)
【文献】特開2017-016760(JP,A)
【文献】特開2004-071404(JP,A)
【文献】特開2017-147170(JP,A)
【文献】国際公開第2017/141669(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/00
H01R 43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シースが外装された車載ツイストペアケーブルの端末に対して前記シースを除去するシースストリップ工程を経たのち、コア電線の撚りをほどいて前記コア電線の端末の絶縁被覆を除去するコア線被覆ストリップ工程を経てから前記コア電線に端子を接続する端子接続工程に移行する車載ツイストペアケーブルの端末処理方法であって、
前記シースストリップ工程以降前記端子接続工程より前に、前記コア電線の周方向における向きを端子接続に適した向きに調整する向き調整工程を有する
車載ツイストペアケーブルの端末処理方法。
【請求項2】
前記コア電線の撚りほどき長さが10mm~20mmである
請求項1に記載の車載ツイストペアケーブルの端末処理方法。
【請求項3】
前記コア電線の撚りをほどくほぐし工程以降で前記端子接続工程より前に、撚りが解かれた前記コア電線の撚り癖をなおす癖なおし工程を有する
請求項1または請求項2に記載の車載ツイストペアケーブルの端末処理方法。
【請求項4】
前記コア電線の撚りをほどくほぐし工程と同期して、又は前記ほぐし工程に続いて、撚りが解かれた前記コア電線の撚り癖をなおす癖なおし工程を有する
請求項1または請求項2に記載の車載ツイストペアケーブルの端末処理方法。
【請求項5】
前記癖なおし工程が前記向き調整工程と同期して行われる
請求項3または請求項4に記載の車載ツイストペアケーブルの端末処理方法。
【請求項6】
前記シースストリップ工程以降で前記端子接続工程より前に、前記シースの端から突出する前記コア電線の長さを適正長さに調整する長さ調整工程を有する
請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の車載ツイストペアケーブルの端末処理方法。
【請求項7】
請求項2または請求項3に記載の車載ツイストペアケーブルの端末処理方法において、
前記シースストリップ工程以降で前記端子接続工程より前に、前記シースの端から突出する前記コア電線の長さを適正長さに調整する長さ調整工程を有し、
前記長さ調整工程が、前記癖なおし工程より後に設けられる
車載ツイストペアケーブルの端末処理方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の車載ツイストペアケーブルの端末処理方法で処理した前記コア電線の端末に前記端子を接続する
端子付き車載ツイストペアケーブルの製造方法。
【請求項9】
シースが外装された車載ツイストペアケーブルの端末に対して前記シースを除去するシースストリップ部と、前記シースの除去によって露出したコア電線の撚りをほどいて前記コア電線の端末の絶縁被覆を除去するコア線被覆ストリップ部が上流側から順に配設された車載ツイストペアケーブルの端末処理装置であって、
前記シースストリップ部から後段に、前記コア電線の周方向における向きを端子接続に適した向きに調整する向き調整部が設けられた
車載ツイストペアケーブルの端末処理装置。
【請求項10】
前記コア電線の撚りをほどくほぐし部から後段に、撚りが解かれた前記コア電線の撚り癖をなおす癖なおし部が設けられた
請求項9に記載の車載ツイストペアケーブルの端末処理装置。
【請求項11】
前記向き調整部が、撚りが解かれた前記コア電線の撚り癖をなおす機能を有する
請求項9または請求項10に記載の車載ツイストペアケーブルの端末処理装置。
【請求項12】
前記シースストリップ部から後段に、前記シースの端から突出する前記コア電線の長さを適正長さに調整する長さ調整部が設けられた
請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の車載ツイストペアケーブルの端末処理装置。
【請求項13】
請求項10または請求項11に記載の車載ツイストペアケーブルの端末処理装置において、
前記シースストリップ部から後段に、前記シースの端から突出する前記コア電線の長さを適正長さに調整する長さ調整部が設けられ、
前記長さ調整部が、前記癖なおし部より後段に設けられた
車載ツイストペアケーブルの端末処理装置。
【請求項14】
請求項9から請求項13のいずれか一項に記載の車載ツイストペアケーブルの端末処理装置における前記コア線被覆ストリップ部より後段に、前記コア電線の端末に端子を接続する端子接続部が設けられた
端子付き車載ツイストペアケーブルの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車載用のツイストペアケーブルの端末に端子を接続するための車載ツイストペアケーブルの端末処理に関する。
【背景技術】
【0002】
ツイストペアケーブルの端末に端子を接続するには、たとえば下記特許文献1に記載されているように、次の工程を経て行っていた。ツイストペアケーブルを切断する切断工程、ツイストペアケーブルのシースを除去するシースストリップ工程、露出したコア電線の撚りをほどくほぐし工程、コア電線の絶縁被覆を除去するコア線被覆ストリップ工程、コア電線の導体に端子を接続する端子接続工程、である。撚りをほどくのは、コア電線の端末が近すぎて端子の接続作業ができないからである。
【0003】
撚りほどきの長さは、車載ネットワークであるCAN(コントロールエリアネットワーク)では比較的長く、40mm~50mmほどに許容されていた。このため、端子の接続の圧着作業や、端子を接続したツイストペアケーブルをコネクタハウジングに挿入する作業は、コア電線に撚り癖がついていても支障なく行えた。
【0004】
しかし、OABR、すなわちBroadR-Reach車載イーサネット(登録商標)通信規格では、撚りほどき長さがCANの場合よりも短い。
【0005】
撚りほどき長さが短いと端末部分の自由が利かないため、絶縁被覆のストリップや端子の圧着に際して精度不良が生じやすい。撚りほどいた部分に撚り癖があれば、撚り癖も精度不良の原因になり得る。
【0006】
また、撚りほどき長さが短いため、コネクタハウジングへの挿入に際しては、一対のコア電線に接続した端子を同時に差し込む必要があるが、前述のように精度不良が生じやすいので、一対の端子の先端位置にずれがあれば、いずれかの端子が半挿入になるなど、コネクタハウジングへの挿入にも不良が生じるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこでこの発明は、撚りほどき長さが短くても精度よく端末処理が行えるようにすることを主な目的とする。
【0009】
ここで、端末処理とは、車載ツイストペアケーブルの端末に加工や処理を行うことであり、コア線被覆ストリップまでを行うものも、端子接続まで行うものも、接続した端子をコネクタハウジングに挿入するまでを行うものも含む意味である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのための手段は、シースストリップ工程より後で、且つコア線被覆ストリップ工程より前に、コア電線の撚りをほどくほぐし工程を有するとともに、シースストリップ工程以降端子接続工程より前に、コア電線の周方向における向きを端子接続に適した向きに調整する向き調整工程を有することである。
前記コア電線の撚りほどき長さは10mm~20mmであるとよい。撚りほどき長さとは、シースが除去されて剥き出しになったコア電線の根元位置から先の、直線状に伸びた部分の長さの意味である。
【0011】
すなわち、シースが外装された車載ツイストペアケーブルの端末に対して前記シースを除去するシースストリップ工程を経たのち、コア電線の撚りをほどいて前記コア電線の端末の絶縁被覆を除去するコア線被覆ストリップ工程を経てから前記コア電線に端子を接続する端子接続工程に移行する車載ツイストペアケーブルの端末処理方法であって、前記シースストリップ工程以降前記端子接続工程より前に、前記コア電線の周方向における向きを端子接続に適した向きに調整する向き調整工程を有する車載ツイストペアケーブルの端末処理方法である。
【0012】
この構成では、向き調整工程で、コア電線の周方向における向きを端子接続に適した向きにしてからコア線の絶縁被覆を除去したり端子接続をしたりするので、撚りほどき長さが短くても、絶縁被覆の除去や端子接続の作業が精度良く行える。接続した端子のコネクタハウジングヘの挿入は、姿勢変更などを伴わずに行える。
【0013】
この車載ツイストペアケーブルの端末処理方法の態様として、前記コア電線の撚りをほどくほぐし工程以降で前記端子接続工程より前に、撚りが解かれた前記コア電線の撚り癖をなおす癖なおし工程を有するものとしてもよい。
【0014】
この構成では、癖なおし工程で、コア電線の撚り癖をとって真っ直ぐにするので、コア線の絶縁被覆を除去したり端子接続をしたりする作業が所望通りの位置、所望通りの寸法に、より高い精度で行える。
【0015】
また、この車載ツイストペアケーブルの端末処理方法の態様として、前記コア電線の撚りをほどくほぐし工程と同期して、又は前記ほぐし工程に続いて、撚りが解かれた前記コア電線の撚り癖をなおす癖なおし工程を有するものとしてもよい。
【0016】
この構成では、癖なおし工程で、コア電線の撚り癖をとって真っ直ぐにするので、コア電線の絶縁被覆を除去したり端子接続をしたりする作業のほか、向き調整工程などのその他の作業も、所望通りの位置、所望通りの寸法に、より一層精度良く行える。
【0017】
癖なおし工程を有する場合には、車載ツイストペアケーブルの端末処理方法の態様として、前記癖なおし工程が前記向き調整工程と同期して行われるものであってもよい。
【0018】
この構成では、癖なおし工程を、癖なおし工程と同様に車載ツイストペアケーブルを保持する必要のある向き調整工程と同期して行うので、作業効率が良く、正確さも得られる。
【0019】
車載ツイストペアケーブルの端末処理方法の態様として、前記シースストリップ工程以降で前記端子接続工程より前に、前記シースの端から突出する前記コア電線の長さを適正長さに調整する長さ調整工程を有するものとしてもよい。
【0020】
この構成では、長さ調整工程で、コア電線の突出長さを適正長さにするので、端子接続が精度良く行え、ノイズ耐性も確保できる。
【0021】
長さ調整工程を有する場合には、車載ツイストペアケーブルの端末処理方法の態様として、前記長さ調整工程が、前記癖なおし工程より後に設けられるとよい。
【0022】
この構成では、癖なおしが行われてから長さ調整がなされるので、長さ調整自体が精度良く行える。
【0023】
別の手段は、前記の車載ツイストペアケーブルの端末処理方法で処理した前記コア電線の端末に前記端子を接続する端子付き車載ツイストペアケーブルの製造方法である。
【0024】
別の手段は、シースが外装された車載ツイストペアケーブルの端末に対して前記シースを除去するシースストリップ部と、前記シースの除去によって露出したコア電線の撚りをほどいて前記コア電線の端末の絶縁被覆を除去するコア線被覆ストリップ部が上流側から順に配設された車載ツイストペアケーブルの端末処理装置であって、前記シースストリップ部から後段に、前記コア電線の周方向における向きを端子接続に適した向きに調整する向き調整部が設けられた車載ツイストペアケーブルの端末処理装置である。「シースストリップ部から後段」の「から」とは、シースストリップ部を含む意味である。
【0025】
この構成では、向き調整部でコア電線の周方向における向きを端子接続に適した向きにしてからコア線の絶縁被覆を除去したり端子接続をしたりするので、撚りほどき長さが短くても、これらの作業が精度良く行える。接続した端子のコネクタハウジングヘの挿入は、姿勢変更などを伴わずに行える。
【0026】
この車載ツイストペアケーブルの端末処理装置の態様として、前記コア電線の撚りをほどくほぐし部から後段に、撚りが解かれた前記コア電線の撚り癖をなおす癖なおし部が設けられたものとしてもよい。「ほぐし部から後段」の「から」とは、ほぐし部を含む意味である。
【0027】
この構成では、癖なおし部でコア電線の撚り癖をとって真っ直ぐにするので、コア電線の絶縁被覆を除去したり端子接続をしたりする作業が所望通りの位置、所望通りの寸法に、より高い精度で行える。
【0028】
この車載ツイストペアケーブルの端末処理装置の態様として、前記向き調整部が、撚りが解かれた前記コア電線の撚り癖をなおす機能を有するものとしてもよい。
【0029】
この構成では、向き調整部がコア電線の癖なおしを行うので、装置の簡素化をはかれ、作業効率も向上できる。
【0030】
この車載ツイストペアケーブルの端末処理装置の態様として、前記シースストリップ部から後段に、前記シースの端から突出する前記コア電線の長さを適正長さに調整する長さ調整部が設けられたものとしてもよい。「シースストリップ部から後段」の「から」とは、シースストリップ部を含む意味である。
【0031】
この構成では、長さ調整部でコア電線の突出長さを適正長さにするので、端子接続が精度良く行え、ノイズ耐性も確保できる。
【0032】
長さ調整工程を有する場合には、車載ツイストペアケーブルの端末処理装置の態様として、前記長さ調整部が、前記癖なおし部より後段に設けられたものとしてもよい。
【0033】
この構成では、癖なおしが行われてから長さ調整がなされるので、長さ調整自体が精度良く行える。
【0034】
別の手段は、前記車載ツイストペアケーブルの端末処理装置における前記コア線被覆ストリップ部より後段に、前記コア電線の端末に端子を接続する端子接続部が設けられた端子付き車載ツイストペアケーブルの製造装置である。
【発明の効果】
【0035】
この発明によれば、撚りほどき長さが短くても精度よく端末処理が行える。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】端子付き車載ツイストペアケーブルとコネクタハウジングの斜視図。
【
図3】端子付き車載ツイストペアケーブルの製造方法のフローチャート。
【
図4】端子付き車載ツイストペアケーブルの製造装置概略構成図。
【
図6】車載ツイストペアケーブルを保持する保持具の斜視図。
【
図7】車載ツイストペアケーブルを保持する保持具の側面図。
【
図14】端子接続工程の一部を示す一部断面平面図。
【
図15】端子接続工程の一部を示す一部断面平面図。
【
図21】他の例に係る癖なおし工程のための癖なおし成形機の概略構成図。
【
図22】他の例に係る癖なおし工程のための癖なおし成形機の概略構成平面図。
【
図24】他の例に係る癖なおし工程のための癖なおし成形機の概略構成図。
【
図27】シースストリップ工程で向き調整を行う例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1に端子付き車載ツイストペアケーブル11(以下、「端子付きケーブル」という。)の端末部分と、端子12が挿入保持されるコネクタハウジング13の斜視図を示す。端子12には雄型と雌型の双方があるが、図示例では雌型の端子12を例示している。
【0038】
端子付きケーブル11は、車載ツイストペアケーブル14(以下、「ツイストペアケーブル」という。)に端子12を接続して構成される。
【0039】
ツイストペアケーブル14は、ノイズ耐性を持たせるために使用されるものであり、内蔵される対(ペア)をなすコア電線15が所定のピッチで撚り合わされている。コア電線15は、導体15aが絶縁被覆15bで覆われて構成されており、撚り合されたコア電線15の周りにはシース16が外装されている。シース16には、充填タイプのものと非充填タイプのものがあるが、いずれのタイプのシース構造であってもよい。また、コア電線15は図示例のような一対のものに限定されず、二対以上のコア電線15を有するものであってもよい。図示例では、車載用であるため軽量である必要性からシールドなしのツイストペアケーブル14を示したが、シールドの有無は問わない。
【0040】
端子付きケーブル11は、前述のようにノイズ耐性を持たせるために、撚り合わされたコア電線15の撚りほどき長さが、
図1に示したように短く設定される。撚りほどき長さは、CAN(コントロールエリアネットワーク)では40mm~50mmほどでもよかったが、OABR(BroadR-Reach車載イーサネット(登録商標)通信規格)では、10mm~20mm程度にする必要がある。ここで、撚りほどき長さは、
図2のツイストペアケーブル14に示したように、シース16の端から突出して真っ直ぐに伸びるコア電線15の長さLであり、10mm~20mmに設定される。
【0041】
端子付きケーブル11を製造する端子付き車載ツイストペアケーブルの製造方法は、
図3のフローチャートや
図4の端子付き車載ツイストペアケーブルの製造装置31(以下、「製造装置」という。)を示す概略構成図に示したように、次の工程を有する。すなわち、その工程は、シース16が外装されたツイストペアケーブル14の端末からシース16を除去するシースストリップ工程と、コア電線15の撚りをほどいてコア電線15の端末の絶縁被覆15bを除去するコア線被覆ストリップ工程と、コア電線15に端子12を接続する端子接続工程を有する。そして、シースストリップ工程以降で端子接続工程より前に、コア電線15の周方向における向きを端子接続に適した向きに調整する向き調整工程を有する。
【0042】
向き調整工程のほかに、撚りが解かれたコア電線15の撚り癖をなおす癖なおし工程と、シース16の端から突出するコア電線15の長さを適正長さに調整する長さ調整工程がある。癖なおし工程は、コア電線15の撚りをほどくほぐし工程以降で端子接続工程より前に設けられ、長さ調整工程は、シースストリップ工程以降で端子接続工程より前に設けられる。
【0043】
癖なおし工程は、コア電線15の撚りをほどくほぐし工程と同期して、又はほぐし工程に続いて設けられるのが好ましい。また、癖なおし工程は向き調整工程と同期して行われるのも好ましい。
【0044】
長さ調整工程は、癖なおし工程より後に設けられるとよい。
【0045】
図3のフローチャートは、様々な順序で加工できる端子付き車載ツイストペアケーブルの製造方法のうち、望ましい工程順の一例を示しており、
図4に示した製造装置31は、
図3に示した工程に対応した配置に構成されている。
【0046】
すなわち製造装置31は、シースストリップ工程と、ほぐし工程と、向き調整工程と癖なおし工程を同期して行う向き調整・癖なおし工程と、長さ調整工程、コア線被覆ストリップ工程と、端子接続工程を順に実現すべく、次の構成を有する。製造装置31は、ツイストペアケーブル14を送る搬送路32の上流側から順に、シース16が外装されたツイストペアケーブル14の端末に対してシース16を除去するシースストリップ部33と、シース16の除去によって露出したコア電線15の撚りをほどくほぐし部34と、コア電線15の周方向における向きを端子接続に適した向きに調整するとともに撚りが解かれたコア電線15の撚り癖をなおす向き調整・癖なおし部35と、シース16の端から突出するコア電線15の長さを適正長さに調整する長さ調整部36と、コア電線15の端末の絶縁被覆15bを除去するコア線被覆ストリップ部37と、コア電線15に端子12を接続する端子接続部38を備えている。
【0047】
製造装置31の各部について次に説明する。
【0048】
製造装置31の概略平面図である
図4に示したように、製造装置31は最上流位置に、搬送路32に供給するツイストペアケーブル14を計尺して切断する計尺部31aを有し、最下流位置には、製造された端子付きケーブル11を排出する排出部31bを有している。計尺部31aは、順次繰り出されて搬送路32に供給されるツイストペアケーブル14の長さを測って、ツイストペアケーブル14をあらかじめ設定された所定長さごとに切断する。排出部31bは、製造された端子付きケーブル11を排出するが、必要であれば次のコネクタハウジング13に対する端子12の挿入を行う端子挿入工程を行うものとしてもよい。
【0049】
搬送路32は、テーブル31c上に一直線上に設けられており、テーブル31c上に固定された固定側チャック41と、アクチュエータでスライド移動されるスライド板42上に固定される移動側チャック43を備えている。固定側チャック41と移動側チャック43は例えばエアチャックなど適宜の装置で構成され、開閉によりツイストペアケーブル14を挟んで保持するものである。固定側チャック41と移動側チャック43は、それぞれ複数個が定間隔で設けられている。
【0050】
複数の固定側チャック41は、上流側から順に、計尺部31a、シースストリップ部33、ほぐし部34、向き調整・癖なおし部35、長さ調整部36、コア線被覆ストリップ部37、端子接続部38に備えられる。端子接続部38には複数種類の端子12を接続可能にする目的や、対をなすコア電線15に対する端子接続の態様の違いに対応する目的などのために、端子接続装置の一例としての圧着装置44を複数備えるので、固定側チャック41も複数備える。
【0051】
複数の移動側チャック43は、固定側チャック41に対向してスライド板42上に配設されており、スライド板42は、搬送方向下流側に固定側チャック41又は移動側チャック43の配設間隔ぶんの距離を往復動するように駆動制御されている。スライド板42の駆動は、固定側チャック41と移動側チャック43の開閉と同期して制御される。この制御は次のようになされる。
【0052】
つまり、固定側チャック41で保持したツイストペアケーブル14を移動側チャック43で保持してから、固定側チャック41による保持を解除し、スライド板42を下流側に移動する。これによりツイストペアケーブル14を保持した移動側チャック43が下流側に1ステップ移動し、ツイストペアケーブル14を次段にある固定側チャック41上に移すことになる。ツイストペアケーブル14を保持した移動側チャック43と新たにツイストペアケーブル14を受け入れた固定側チャック41でツイストペアケーブル14を保持してから、移動側チャック43による保持を解除する。このあとスライド板42を搬送方向上流側に1ステップ移動させる。このような制御動作を繰り返すことで、計尺部31aで所定長さに切断されたツイストペアケーブル14を順次加工させながら搬送する。ツイストペアケーブル14は平面視U字形に湾曲された状態で搬送され、下流側に位置する一方の端末が加工されたのち、上流側に位置する他方の端末が加工される。
【0053】
計尺部31aの後段のシースストリップ部33は、最外層のシース16を所定長さ除去するものであり、公知のストリップ装置45を備えている。つまり、ツイストペアケーブル14の端末をストリップ装置45に挿し込むと、あらかじめ設定した長さのシース16が除去される。除去するシース16の長さは、所望する撚りほどき長さと同程度かそれよりも若干長めに設定される。コア電線15には撚りがかけられているので、除去するシース16の長さは所望する撚りほどき長さよりも若干短く設定することも可能である。この場合には、このシースストリップ工程で前述の長さ調整工程を兼ねることも可能である。
【0054】
シースストリップ部33の後段のほぐし部34では、シース16が除去されて剥き出しになったコア電線15同士の撚りをほどく。ほぐし部34は適宜構成されるが、例えば
図5に示したような櫛状のほぐし治具46を備えるとよい。
【0055】
ほぐし治具46は、板状の基部46aの上面にコア電線15の太さに見合った間隔を有し一列に並んだ複数本の突起46bを有している。コア電線15の太さに見合った間隔とは、コア電線15を突起46bの間に収められる間隔のうち、撚り合わされたコア電線15の全体を収められるほどに極端に広すぎない間隔である。
【0056】
突起46bは横断面円形であり、上端部側が下側部よりも細く形成され、ツイストペアケーブル14の太さよりも長く形成されている。突起46bの本数は、2本のコア電線15の撚りをほぐす作業性を考慮して、図示例では3本としているが、突起46bをコア電線15間に正確に挿入するならば、1本とすることもできる。突起46bは3本より多い本数であってもよい。
【0057】
ほぐし治具46は、上下動及び前後動する図示しない適宜の駆動装置に支持される。駆動装置は、ほぐし治具46をコア電線15に対して相対移動させて、コア電線15の撚りをほどく、つまりコア電線15同士の絡み合っている部分を外すように駆動する。
【0058】
駆動装置は、たとえば次のような動作を行うように制御される。ほぐし治具46を、
図5に仮想線で示したように、保持されたツイストペアケーブル14に対して上昇させて、突起46bをコア電線15間に挿入してからコア電線15の長手方向、好ましくは端末側(前方)に移動させる。その後、ほぐし治具46を降下させて、元の位置に戻す。
【0059】
ほぐし治具46の突起46bはツイストペアケーブル14の太さよりも長く形成されているので、前述のようなほぐし動作時のコア電線15の移動の自由度が高いため、ほぐし動作時にコア電線15との間に生じる抵抗を小さくできる。
【0060】
ほぐし動作を行うときは、たとえばシース16が非充填タイプのものである場合など、必要であれば、露出したコア電線15の根元に近いシース16の端部が保持されて、シース16内に位置するコア電線15の撚り合わせに影響を与えないようにするとよい。
【0061】
ほぐし治具46を移動させるほかに、ツイストペアケーブル14をほぐし治具46に対して移動させても、双方を移動させても、ほぐし動作は可能である。
【0062】
ほぐし部34の後段の向き調整・癖なおし部35は、端子接続部38に向けて搬送されるツイストペアケーブル14のコア電線15の周方向における向き、つまりコア電線15がシース16の端から出る部分の位置が、端子接続に適した向き、具体的にはコア電線15の断面の中心が水平方向左右に並ぶとともに、対をなすコア電線15のうちのいずれが左側であるか右側であるかを、そのまま端子接続できるように正しく調整する。また、コア電線15の撚り癖を除去してコア電線15を真っ直ぐにする。
【0063】
向き調整・癖なおし部35も適宜構成されるが、ここでは、
図6に示したような保持具47を用いてコア電線15を真っ直ぐに矯正する方法を採用する。保持具47は、次段以降の工程にも順次搬送され、端子接続部38での端子接続が終わるまで、ツイストペアケーブル14の周方向での向きを変えずに搬送される。
【0064】
保持具47は、互いに重なり合う平面視方形板状の下台48と上蓋49を有し、下台48にはツイストペアケーブル14のシース16の端部を嵌める断面略半円形の太溝48aと、太溝48aの先端から延びる短い細溝48bが上面に形成されている。細溝48bは、太溝48aより細く形成されており、細溝48bの太さはコア電線15が嵌る太さである。上蓋49は、下台48の太溝48aに対向する部位に、断面略半円形の溝部49aを有しており、溝部49aより前方であって下台48の細溝48bに対応する部位に、上下に貫通する貫通穴からなるのぞき窓49bを有している。
【0065】
下台48と上蓋49は、移動側チャック43の下流側への移動と同期して1ステップごとに順次下流側へ移動し、向き調整・癖なおし部35から排出部31bまでを循環するように図示しない駆動装置で支持されている。
【0066】
また、下台48と上蓋49は、
図7に示したようにそれぞれ上動可能に支持されている。下台48の上昇によりツイストペアケーブル14の搬送が可能になり、上蓋49の上昇によりツイストペアケーブル14の保持と解放が可能になる。
図7中、51はガイドロッド、52,53はアクチュエータのピストンロッドである。
【0067】
向き調整・癖なおし部35以降の各部には、保持具47と組みになってコア電線15を支持する
図6に示したような平面視方形板状の支持具55が備えられ、搬送されるコア電線15を待ち構える。ツイストペアケーブル14の搬送を可能にするためには、保持具47との間で相対移動ができればよく、前述のように保持具47を上動させるのではなく、支持具55を降下させる構成としてもよい。
【0068】
向き調整・癖なおし部35の支持具55は、
図8に示したような矯正具55aであり、保持具47の下台48と同じ厚さに形成されており、上面に、シースストリップ部33で端末から露出したコア電線15の長さに略対応する程度の長さの矯正溝56が形成されている。矯正溝56は、嵌め込まれたコア電線15の撚り癖を除去して真っ直ぐにするものであり、コア電線15に嵌合対応する程度の太さで、コア電線15の直径と同じ深さの溝で構成されるのが好ましい。撚り癖なおしを効率よく行うため、矯正具55aには加熱手段(図示せず)を備えることが可能である。
【0069】
加熱を行う場合には、絶縁被覆15bの変形や変色が起こらない範囲の温度と印加時間を設定する。絶縁被覆15bが、例えばポリオレフィン系の材料で構成されている場合には、温度は140℃以下であり、印加時間は絶縁被覆15bの厚さによって適宜設定される。
【0070】
向き調整・癖なおし部35には、搬送されてきたツイストペアケーブル14のシース16の端を保持してツイストペアケーブル14を軸周り(周方向)に正逆回転させる適宜のチャック(図示せず)を備えるとともに、板材やローラなどで構成される押さえ手段(図示せず)を備えている。チャックは向き調整を行うものであり、押さえ手段は、ツイストペアケーブル14の端末を保持具47の下台48と矯正具55aに嵌め込むものである。
【0071】
向き調整・癖なおし部35にはまた、
図9に示したように、上方に撮像カメラ57を備えている。撮像カメラ57は、コア電線15の向き調整を正しく行うためものであるとともに、向き調整が正しくなされた否か、つまり対をなすコア電線15が左右に正しく並んでいるかの確認をするためのものである。
【0072】
撮像カメラ57は前述のチャックと共に制御部(図示せず)に接続されている。撮像カメラ57で得られた画像に基づいて制御部はコア電線15の絶縁被覆15b色からコア電線15の位置関係を把握し、コア電線15が正しい位置になるように前述のチャックで回転を行う。回転は、一方向に回転させるものでもよいが、前述のように正逆回転可能に構成して、回転量が最小になる方向に回転させるのが好ましい。
【0073】
また、テーブル31c上の保持具47の近傍には、
図9、
図10に示したように表示器58を備えている。表示器58も前述の撮像カメラ57と共に制御部に接続されており、制御部は、保持具47における上蓋49ののぞき窓49bを通した撮像カメラ57の画像に基づいて、向き調整工程での間違いの有無を判定し、この結果を、
図10に示したように、表示器58のランプ58a,58bの点灯により表示させる。
【0074】
図10の左側の図に示したように、特定のコア電線15があるべき側にない場合には、間違いがあるとしてNG判定を行い、一方のランプ58aを点灯させる。この場合には向き調整をやり直す。一方、
図10の右側の図に示したように、間違いがない場合にはOK判定を行い、他方のランプ58bを点灯させ、次の工程に移行する。
【0075】
向き調整・癖なおし部35の後段の長さ調整部36は、露出したコア電線15の長さを適正長さに、切断することによって調整する。このため、
図11に示したように公知の切断装置59を備えるとともに、待機する支持具55として調整用支持具55bを有している。調整用支持具55bは、前述の向き調整・癖なおし部35の支持具55である矯正具55aよりも長さが短く形成されるが、矯正具55aの矯正溝56と同様に支持溝61を有している。支持溝61は、矯正溝56よりも若干太く、また浅く形成してもよい。
【0076】
切断装置59は、調整用支持具55bの先に設けられ、コア電線15に対して相対移動し、コア電線15の先端部に対して切除を行い、シース16の端から突出するコア電線15の長さを所定長さL1にする。
【0077】
なお、図示例では、2本のコア電線15の長さを揃えた状態を示したが、接続する端子12の形状によっては左右のコア電線15で必要とする長さが異なる場合もある。
【0078】
長さ調整部36の後段のコア線被覆ストリップ部37は、コア電線15の端末の絶縁被覆15bを所定長さ除去する。このため、
図12に示したように公知のストリップ装置62を備えるとともに、待機する支持具55としてストリップ用支持具55cを有している。ストリップ用支持具55cは、前述の調整用支持具55bよりも長さが短く形成されるが、調整用支持具55bの支持溝61と同様の支持溝63を有している。
【0079】
ストリップ装置62は、長さ調整部と同様にストリップ用支持具55cの先に設けられ、コア電線15に対して相対移動し、コア電線15の先端部の絶縁被覆15bをあらかじめ定めた所定長さL2切除して、導体15aを露出させる。
【0080】
コア線被覆ストリップ部37の後段の端子接続部38は、ツイストペアケーブル14のすべてのコア電線15に対して端子12を接続する。ここでは、端子12として、
図1に示したように圧着により接続する圧着端子を用いる例を説明する。
【0081】
端子12は、コア電線15の絶縁被覆15bの端と露出した導体15aに対応する部分が圧縮変形されてコア電線15に接続されるものであり、図示例では、オープンバレル型の圧着端子を示しているが、クローズドバレル型の圧着端子であってもよく、その他の形状の圧着端子であってもよい。端子12の圧着は、保持した端子に対してコア電線15の端末を差し込んで行われ、この圧着には公知の圧着装置44を用いて行われる。
【0082】
前述のようにツイストペアケーブル14の撚りほどき長さは短いので、端子12を接続するコア電線15の自由がありま利かない。このため、
図13に示したように端子12が連鎖型のものである場合であって、端子12がつながったままの状態では常法による圧着ができない場合がある。
【0083】
ここでは2つの接続方法を説明する。一つは、2本のコア電線15に対して端子12を同時に圧着する場合であり、他の一つは、端子12を別々に圧着する場合である。
【0084】
端子12を同時に圧着する場合には、
図13に示したような端子台64を用いる。端子台64は、端子12におけるコア電線15を接続する側とは反対側の部分(先端側部12a)を上下左右に保持するものであり、全体が略直方体状に形成され、先端側部12aを差し込み可能で回転不能とする略直方体状の保持穴64aを2個平行に有している。保持穴64aの間隔Wは、対をなすコア電線15の間隔に合わせている。この端子台64は、圧着装置44に備えられ、個別に分離された端子12の先端側部12aが差し込まれて、圧着の準備がなされる。
【0085】
端子接続部38における圧着装置44を望む位置には、
図14に示したように、待機する支持具55として圧着用支持具55dを有している。圧着用支持具55dは、前述のストリップ用支持具55cよりも長さが長く形成されるが、ストリップ用支持具55cの支持溝63と同様に支持溝65を有している。
【0086】
圧着装置44とコア電線15の相対移動でコア電線15の端末が端子12に挿入されてから圧着がなされると、
図15に示したように、対をなすコア電線15の端末に端子12が同時に接続されることになる。
【0087】
端子12を別々に圧着する場合には、
図16に示したように、待機する支持具55として個別圧着用支持具55eを備える。個別圧着用支持具55eは、対をなすコア電線15の端末側を開いて保持する所定角度に交差する方向に延びる2本の支持溝66を有している。
【0088】
保持具47と個別圧着用支持具55eはターンテーブル(図示せず)上に備えられるなどして、保持具47と個別圧着用支持具55eを有する部分と圧着装置44との間で相対回転可能であるとともに前後方向(接離方向に)に相対移動可能に支持される。
【0089】
圧着装置44に備える端子12には連鎖型のものがそのまま使用される。
【0090】
保持具47と個別圧着用支持具55eを有する部分は、圧着装置44に対して次のように動作するように駆動制御される。
【0091】
図16に示したように搬送方向に並んだ2本のコア電線15のうちの搬送方向下流側に位置するコア電線15が端子12に対して真っ直ぐの位置になるように回転させ、その後、
図17に示したようにコア電線15の端末を端子12に挿入させる。この状態で圧着装置44による端子12の圧着を行い、
図18に示したように、コア電線15を圧着装置44から離したのち、搬送方向上流側に位置するコア電線15が端子12に対して真っ直ぐの位置になるように回転させ、回転したコア電線15の端末を端子12に挿入して、圧着装置44による端子12の圧着を行う。コア電線15を圧着装置44から離してから
図19に示したように回転姿勢を元に戻す。ツイストペアケーブル14は前述のように平面視U字形に湾曲した状態で搬送されるので、前述のような回転を許容する余裕はある。
【0092】
端子12が接続されたコア電線15に対しては、個別圧着用支持具55eを前述の駆動装置の駆動により外して、
図20に示したように近傍に備えた回転ローラ67などからなる適宜の押圧手段68を作用させて、2本のコア電線15を真っ直ぐに伸ばす。回転ローラ67は、回転可能であるとともに、コア電線15に対して左右方向外側から接離方向に移動可能で、且つ伸ばしたコア電線15の長手方向に移動可能に支持されている。
【0093】
圧着装置44は前述のように複数備えたので、一つの圧着装置44で2本のコア電線15に対する圧着を行うほか、2本のコア電線15に対するそれぞれの圧着を、別の圧着装置44で行う構成であってもよい。つまり、上流側に位置する圧着装置44で下流側に位置するコア電線15に対して接続してから、下流側に位置する圧着装置44で上流側に位置するコア電線15に対して接続を行うこともできる。
【0094】
端子接続部38の後段の排出部31bには、保持具47の上蓋49が外されたツイストペアケーブル14を掴んで保持具47から取り出す、適宜のチャック(図示せず)が備えられている。
【0095】
以上のように構成された製造装置31では、向き調整・癖なおし部35において、コア電線15の周方向における向きを端子接続に適した向きにしてからコア電線15の絶縁被覆15bを除去して端子12の接続を行うので、撚りほどき長さが短くても、絶縁被覆15b除去や端子12接続の作業が寸法精度良く行える。しかも、端子接続より前の段階で、コア電線15の撚り癖を直してコア電線15を真っ直ぐにするので、コア電線15の長さ調整と、コア電線15の絶縁被覆15bの除去と、端子12の接続がより高い寸法精度で所望通りに行える。
【0096】
また、搬送されるツイストペアケーブル14の端末は、向き調整を行って保持する保持具47で保持してその姿勢のまま搬送され、加工がなされるので、精度の高い加工ができる。
【0097】
このようにして得られた端子付きケーブル11は、コア電線15の撚りほどき長さ、導体15aの露出長さ、コア電線15に対する端子12の接続位置、コア電線15のシース16の端から出る根元部分の周方向における位置、つまりコネクタハウジング13に挿入される端子12の向きなどの点で精度が高いので、接続した端子12をコネクタハウジング13に挿入するのに際して、姿勢変更などを伴わずに容易に行える。端子12を差し込んでもコア電線15がねじれることはない。そのうえ、複数の端子12を同時に差し込んでも、半挿入などの不都合が生じることを回避できる。
【0098】
長さ調整工程は、癖なおし工程より後になされるので、長さ調整も精度良く行え、高い精度をより一層高められる。
【0099】
また、寸法精度が高いので、所望のノイズ耐性を得られる。
【0100】
さらに、癖なおし工程と向き調整工程を同期して行うので、作業効率が良く、製造装置31の簡素化も図れる。
【0101】
癖なおしは機械的に行うので、人手で行うよりも短時間で均質に行える。
【0102】
以下、他の例について説明する。この説明において、前述の構成と同一の部位については同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0103】
癖なおし工程は、前述のように型に嵌め込んで矯正するほか、加圧して積極的に伸ばして行うこともできる。
【0104】
図21はその癖なおし成形機71の一例の概略構造示す平面図であり、正逆回転する一対の加圧ローラ72と、これら加圧ローラ72の間に備えられる介在部材73を備えている。加圧ローラ72は周面に断面半円弧状の成形溝72aを有している。介在部材73は、表面が円滑な材料で構成されており、加圧ローラ72の成形溝72aと対向する摺接面73aを両側に有している。摺接面73aは、加圧ローラ72の回転で相対移動するコア電線15に接し、しごくように成形を行う面であって、曲面で構成される。
【0105】
また加圧ローラ72には加熱手段(図示せず)が接続されており、コア電線15を所定温度で所定時間の加熱可能に構成されている。
【0106】
加圧ローラ72は、加圧ローラ72同士が接近する方向と離反する方向に移動可能に支持されてもよく、接近する方向に付勢して支持されてもよい。
【0107】
このような癖なおし成形機71は、シース16の端から露出するコア電線15の端末を加圧ローラ72と介在部材73の間に挟み込む。加圧ローラ72が離反方向に移動可能に構成された場合には、対をなす加圧ローラ72を開いてコア電線15をセットする。コア電線15を送り出す方向への加圧ローラ72の回転で、加圧ローラ72は相対移動してシース16の端に接近することになる。加圧ローラ72がシース16に接したときに加圧ローラ72の回転を停止し、続いて加圧ローラ72を逆回転する。これによってコア電線15は手前側に押し出されて、コア電線15が加圧ローラ72から外れる。加圧ローラ72を離反方向に移動可能に構成した場合には、一対の加圧ローラ72を開いてコア電線15を取り出してもよい。
【0108】
加圧ローラ72と介在部材73の間に、加圧と加熱の状態下で、挟まれて相対移動することによって、コア電線15の撚り癖は除去されてコア電線15は真っ直ぐに伸びる。
【0109】
加圧ローラ72を離反方向に移動可能に構成した場合には、コア電線15の根元部分、つまりシース16の端に最も近い位置でコア電線15をセットして、前述とは逆に、まず手前側に押し出されるように相対移動させて加圧した後、次にコア電線15を前方送り出す方向に相対移動させて成形する。
【0110】
図22は癖なおし成形機71の他の例の概略構造示す平面図であり、
図23はその側面図であり、正逆回転する一対の加圧ローラ72を備えている。加圧ローラ72は、2本のコア電線15を同時に成形できるように周面に2本の成形溝72aを有している。成形溝72aの形状は、断面半円弧状である。このような加圧ローラ72は、コア電線15が差し出される部分の上下に配設され、
図23に示したように、互いに接離する上下方向に移動可能であるとともに、コア電線15の長手方向にも移動可能に支持されている。
【0111】
この加圧ローラ72にも加熱手段(図示せず)が接続されており、コア電線15を加熱可能である。
【0112】
このような癖なおし成形機71では、互いに離間された加圧ローラ72間にコア電線15を差し入れて加圧ローラ72を接近させてコア電線15をセットし、加圧ローラ72を正逆回転させる。つまり、コア電線15の長さ方向におけるセットした位置から、シース16側または端末側に加圧ローラ72が移動するように回転させたのち、逆回転させる。加圧ローラ72による圧力と熱によってコア電線15の撚り癖はなおり、コア電線15が真っ直ぐに伸びる。
【0113】
コア電線15のセットは、シース16端に近いコア電線15の根元部分に対して行う方が、対をなすコア電線15で長さの違いが成形後に生じにくいので良い。
【0114】
図24は癖なおし成形機71の他の例の概略構造示す平面図であり、コア電線15の先端を掴むコア線チャック部74を備えている。癖なおし成形機71は、コア電線15を撚りによるねじれを解く方向に相対回転させる構成である。
【0115】
つまり、コア線チャック部74でコア電線15の先端を掴んだ状態を示す正面図である
図25に示したように、コア線チャック部74はエアチャックなどで構成され、ツイストペアケーブル14の軸心を中心に正逆回転可能に適宜の回転支持装置で支持されている。ツイストペアケーブル14は適宜支持されるが、必要であれば、
図24に仮想線で示したように、シース16の端を保持するエアチャックなどからなる保持手段75を別途に備えてもよい。保持手段75にも正逆回転させるアクチュエータを備えることもできる。
【0116】
また、コア線チャック部74の周囲の適宜位置には、図示は省略するが、ツイストペアケーブル14の端末を撮像する撮像カメラを備えている。撮像象カメラを備える位置は撮像カメラの種類や機能に応じて適宜設定されるが、搬送方向左右に並ぶコア電線15を撮像できる上方であるのが好ましい。上方であるほか、側面や、コア電線15の先端方向に設定することも可能である。複数の撮像カメラを備えてもよい。
【0117】
撮像カメラとコア線チャック部74、及びコア線チャック部74を回転させる駆動部等は、図示しない制御部によって制御される。
【0118】
制御部による制御は次のように行われる。差し出されたコア電線15の端末の画像に基づいて、制御部は、コア線チャック部74を、コア電線15を掴みやすい方向に姿勢を変えて掴ませる。つづいて制御部は、撚りを解く方向にコア線チャック部74を回転させて、撚りを解く。回転方向は、回転量を少なくできる方向に設定される。
【0119】
回転によりコア電線15が真っ直ぐになった時点でコア線チャック部74の回転を停止させる。このあと制御部はコア線チャック部74を開いて、コア電線15の先端の保持を解除させる。
【0120】
このような癖なおし成形機71では、コア電線15を捩じることで撚りを解くので、きれいに癖なおしができる。
【0121】
コア線チャック部74には、コア電線15の先端部を開閉可能に保持するが、
図26に示したように、柔軟に保持してコア電線15の絶縁被覆15bと接する面において相対回転を許容する材料からなるパッド74aを備えるとよい。このように構成すると、パッド74aとコア電線15との間で相対回転可能であるので、コア線チャック部74で相対回転しないほど強力に保持された場合と比較して、絶縁被覆15bの捩れを解消しながらにきれいに癖なおしができる。
【0122】
また、癖なおし成形機71は、前述のようにコア電線15を捩じって癖なおしをするので、撚りをほどくほどき工程を同時に実行することもできる。撮像カメラを利用して向き調整も同期して行えば、ほぐし部において癖なおしと向き調整を行うことができる。このように癖なおし工程は、前述のように向き調整工程と同期して行うほか、ほぐし工程と同時に行うようにすることも可能である。
【0123】
また、癖なおし工程は、向き調整工程と別に行ってもよく、さらには、
図3に示した前述の工程に加えて別途に行うこともできる。癖なおし工程を別途に付加して行えば、より良好な癖なおしが実現できる。例えば、
図3に示したフローチャートの向き調整工程と同期して行う癖なおし工程を手作業によって行って、この後に、前述の各例のような機械式の癖なおしを別途に付加して行うことができる。
【0124】
さらに、向き調整工程については、シースストリップ工程で行うこともできる。
【0125】
すなわち、ツイストペアケーブル14は、
図27に示したように対をなすコア電線15が一定のピッチで寄り合わされているので、対をなすコア電線15が平面視で見たときに、水平方向左右に正しく並ぶ位置からシース16を除去すると、露出するコア電線15のシース16端の根元部分は自ずと、水平方向左右に正しく並ぶことになる。
図27の(a)は平面図で、(b)は側面図を示すものとする。
【0126】
具体的には、
図27に示したように、ツイストペアケーブル14の端面に露出するコア電線15の断面が、水平方向左右に正しく並ぶようにしてから、所望の撚りほどき長さよりも長い撚りピッチ単位の長さの位置を計測してシースストリップを行う。ツイストペアケーブル14の端面の状態は撮像カメラ57で確認できる。ツイストペアケーブル14の内部を画像などで確認できる場合には、シースストリップを行ったときに端面に出るコア電線15の根元が水平方向左右に正しく並ぶことになる位置でシースストリップを行う。
【0127】
前述のように端子付きケーブル11は様々な順序で加工できる。
図3のフローチャートで示した以外の取り得る工程順の主な例を以下に示す。
【0128】
ひとつは、シースストリップ工程、ほぐし工程、癖なおし工程、向き調整工程、長さ調整工程、コア線被覆ストリップ工程、端子接続工程の順である。癖なおし後に向き調整を行うので、向き調整が正確にできる。
【0129】
長さ調整工程と向き調整工程を入れ替えて、シースストリップ工程、ほぐし工程、癖なおし工程、長さ調整工程、向き調整工程、コア線被覆ストリップ工程、端子接続工程の順にしてもよい。コア線被覆ストリップ工程の直前に向き調整を行うので、一度行った向き調整を維持しにくい構成の場合には、精度向上に貢献する。
【0130】
このほか、シースストリップ工程、ほぐし工程、長さ調整工程、癖なおし工程、向き調整工程、コア線被覆ストリップ工程、端子接続工程の順にしたり、癖なおしと向き調整を入れ替えて、シースストリップ工程、ほぐし工程、長さ調整工程、向き調整工程、癖なおし工程、コア線被覆ストリップ工程、端子接続工程の順にしたり、癖なおしをコア線被覆ストリップの直前に位置させて、シースストリップ工程と11、ほぐし工程と17、向き調整工程と14、長さ調整工程と16、癖なおし調整工程と15、コア線被覆ストリップ工程と12、端子接続工程と13の順にしたりすることもできる。
【0131】
前述の構成はこの発明を実施するための一形態であって、その他の構成を採用することもできる。
【0132】
たとえば、各工程、特にほぐし工程と、向き調整工程、癖なおし工程は、人手で行ってもよい。
【符号の説明】
【0133】
11…端子付き車載ツイストペアケーブル
12…端子
14…車載ツイストペアケーブル
15…コア電線
15b…絶縁被覆
16…シース
31…端子付き車載ツイストペアケーブルの製造装置
32…搬送路
33…シースストリップ部
34…ほぐし部
35…向き調整・癖なおし部
36…長さ調整部
37…コア線被覆ストリップ部
38…端子接続部