(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】抗腫瘍剤、抗腫瘍効果増強剤及び抗腫瘍用キット
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7068 20060101AFI20220118BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20220118BHJP
A61K 31/337 20060101ALI20220118BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20220118BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20220118BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220118BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
A61K31/7068
A61K9/16
A61K31/337
A61K47/42
A61P1/18
A61P35/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2018537328
(86)(22)【出願日】2017-08-30
(86)【国際出願番号】 JP2017031074
(87)【国際公開番号】W WO2018043530
(87)【国際公開日】2018-03-08
【審査請求日】2019-02-22
【審判番号】
【審判請求日】2020-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2016169167
(32)【優先日】2016-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】岩木 義英
(72)【発明者】
【氏名】北橋 宗
(72)【発明者】
【氏名】美馬 伸治
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】鳥居 福代
【審判官】穴吹 智子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/146833(WO,A1)
【文献】特表2008-530248(JP,A)
【文献】Proc.Amer.Assoc.Cancer Res.,2004,Vol.45,3087
【文献】Cancer Letters,1999,Vol.144,p.177-182
【文献】The New England Journal of Medicine, 2013, Vol.369, No.18,p.1691-1703
【文献】Japanese Journal of Cancer Research, 2001, Vol.92, No.5, p.562-567
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-31/80, A61K9/00-9/72, A61K47/00-47/69
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パクリタキセルまたはその塩及びアルブミンを含むナノ粒子と、
1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩とを含む、予防もしくは治療を必要とする哺乳動物のための抗腫瘍剤
であって、前記抗腫瘍剤が膵臓癌用である、抗腫瘍剤。
【請求項2】
前記1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩の使用量が、前記パクリタキセルまたはその塩及びアルブミンを含むナノ粒子の0.1~50倍モルである、請求項1に記載の抗腫瘍剤。
【請求項3】
前記パクリタキセルまたはその塩及びアルブミンを含むナノ粒子がナブパクリタキセルである、請求項1または2に記載の抗腫瘍剤。
【請求項4】
パクリタキセルまたはその塩及びアルブミンを含むナノ粒子を含む製剤と、
1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩を含む製剤とを含む、予防もしくは治療を必要とする哺乳動物のための抗腫瘍用キット
であって、前記抗腫瘍用キットが膵臓癌用である、抗腫瘍用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍剤、抗腫瘍効果増強剤及び抗腫瘍用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシン(以下、「化合物A」と称することがある。)は、優れた抗腫瘍活性を有し、抗腫瘍剤として有用であることが知られている(特許文献1)。また化合物Aは、マウスへの経口投与でも強い抗腫瘍活性を有することが知られている(非特許文献1、2)。また化合物Aの塩及びその製造方法についても知られている(特許文献2~4)。
【0003】
悪性腫瘍の化学療法において、パクリタキセル及びナブパクリタキセルなどのタキサン系抗腫瘍剤も有用な薬剤として使用されている。しかし、タキサン系抗腫瘍剤単剤での腫瘍に対する奏効率は10~25%と低く、また癌患者の生存期間は短いことが知られている(生存期間12~15ヶ月)(非特許文献3)。
【0004】
臨床の場では、各抗腫瘍剤の腫瘍に対する感受性の違いを補い、薬効を増強すること等を目的として、多剤併用療法が行われており、パクリタキセルと他の薬剤とを組み合わせた医薬も知られている(特許文献5)。例えば、ゲムシタビンとナブパクリタキセルとの併用での膵臓癌患者に対する奏効率は23%、生存期間中央値は8.5ヶ月であり(非特許文献4)、治療効果として十分に高いとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第1997/038001号パンフレット
【文献】国際公開第2013/146833号パンフレット
【文献】国際公開第2011/074484号パンフレット
【文献】国際公開第2014/027658号パンフレット
【文献】国際公開第2013/100014号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【文献】キャンサー・レターズ、1999年、第144巻、p177-182
【文献】オンコロジー・レポーツ、2002年、第9巻、p1319-1322
【文献】ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー、2005年、第23巻、p7794-7803
【文献】ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン、2013年、369巻、p1691-1703
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、抗腫瘍剤を単独で投与するのではなく、併用療法が広く行われている。しかしながら、いかなる抗腫瘍剤を組み合わせて使用した場合に、それらの抗腫瘍効果が増強されるのか、あるいは効果が相殺されるのかについてはまったく不明である。
本発明の課題は、ゲムシタビン、パクリタキセル及びそれらの併用療法と比較して、抗腫瘍効果に優れた抗腫瘍剤及び抗腫瘍用キット、並びに抗腫瘍効果増強剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者らは、種々の薬剤の併用を検討した結果、パクリタキセルと化合物Aとを併用することにより、顕著な抗腫瘍効果を奏することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記を提供する。
(1)パクリタキセルまたはその塩と、1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩もしくはプロドラッグとを含む抗腫瘍剤。
(2)上記1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩もしくはプロドラッグの使用量が、上記パクリタキセルまたはその塩の0.01~100倍モルである、(1)に記載の抗腫瘍剤。
(3)上記抗腫瘍剤が膵臓癌用である、(1)または(2)に記載の抗腫瘍剤。
(4)上記パクリタキセルがパクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子である、(1)~(3)のいずれか一に記載の抗腫瘍剤。
(5)上記パクリタキセルがナブパクリタキセルである、(1)~(4)のいずれか一に記載の抗腫瘍剤。
(6)パクリタキセルまたはその塩と併用される、1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩もしくはプロドラッグを含む抗腫瘍効果増強剤。
(7)パクリタキセルまたはその塩を含む製剤と、1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩もしくはプロドラッグを含む製剤とを含む抗腫瘍用キット。
(8)パクリタキセルまたはその塩と併用される、1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩もしくはプロドラッグを含む抗腫瘍剤。
(6-1)上記パクリタキセルがパクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子である、(6)に記載の抗腫瘍効果増強剤。
(6-2)上記パクリタキセルがナブパクリタキセルである、(6)または(6-1)に記載の抗腫瘍効果増強剤。
(7-1)上記パクリタキセルがパクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子である、(7)に記載の抗腫瘍用キット。
(7-2)上記パクリタキセルがナブパクリタキセルである、(7)または(7-1)に記載の抗腫瘍用キット。
(8-1)上記パクリタキセルがパクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子である、(8)に記載の抗腫瘍剤。
(8-2)上記パクリタキセルがナブパクリタキセルである、(8)または(8-1)に記載の抗腫瘍剤。
(9)パクリタキセルまたはその塩と、1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩もしくはプロドラッグとを、腫瘍の処置に用いるための、好ましくは膵臓癌の処置に用いるための方法であって、治療有効用量をそのような処置が必要な対象(ヒトを含む哺乳動物)に投与する工程を含む方法。
(10)1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩もしくはプロドラッグを併用治療に用いる場合の治療有効用量、及び、パクリタキセルまたはその塩を併用治療に用いる場合の治療有効用量とを組み合わせて、対象に投与することを特徴とする、腫瘍の治療方法。
(11)1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩もしくはプロドラッグを併用治療に用いる場合の治療有効用量、及び、パクリタキセルまたはその塩を併用治療に用いる場合の治療有効用量を、同時に、別々に、連続して、あるいは間隔をあけて、対象に投与することを特徴とする、腫瘍の治療方法。
(12)1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩もしくはプロドラッグの、パクリタキセルまたはその塩と組み合わせてなる抗腫瘍剤製造のための使用。
(13)1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩もしくはプロドラッグの、パクリタキセルまたはその塩と組み合わせてなる抗腫瘍剤のための使用。
(14)パクリタキセルまたはその塩と、一剤型の製剤形態、または別個の製剤形態として投与することにより腫瘍を治療するための、1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩もしくはプロドラッグ。
【発明の効果】
【0009】
化合物Aまたはその塩もしくはプロドラッグは、パクリタキセルと併用することにより、顕著な抗腫瘍効果を奏する。すなわち、本発明の抗腫瘍剤及び抗腫瘍用キットは、ゲムシタビン単剤、パクリタキセル単剤またはゲムシタビンとパクリタキセルとの併用と比較して、優れた腫瘍退縮及び腫瘍増殖抑制効果を有する。本発明の抗腫瘍効果増強剤は、パクリタキセルまたはその塩と組み合わせて併用投与することにより、抗腫瘍効果を増強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ヒト膵臓癌株Capan-1皮下移植担癌モデルマウスでの腫瘍体積の推移を示すグラフである。
【
図2】ヒト膵臓癌株Capan-1皮下移植担癌モデルマウスでの体重推移を示すグラフである。
【
図3】ヒト膵臓癌株Capan-1皮下移植担癌モデルマウスでの腫瘍増殖抑制における併用効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において「%」で表す数値は、特に記載した場合を除き、質量を基準とする。また「~」で表す範囲は、特に記載した場合を除き、両端の値を含む。
「対象」とは、その予防もしくは治療を必要とするヒト、マウス、サル、家畜等の哺乳動物であり、好ましくは、その予防もしくは治療を必要とするヒトである。
「予防」とは、発症の阻害、発症リスクの低減または発症の遅延などを意味する。
「治療」とは、対象となる疾患または状態の改善または進行の抑制(維持または遅延)などを意味する。
「処置」とは、各種疾患に対する予防または治療などを意味する。
「腫瘍」とは、良性腫瘍または悪性腫瘍を意味する。
「良性腫瘍」とは、腫瘍細胞およびその配列がその由来する正常細胞に近い形態をとり、浸潤性または転移性のない腫瘍を意味する。
「悪性腫瘍」とは、腫瘍細胞の形態やその配列がその由来する正常細胞と異なっており、浸潤性または転移性を示す腫瘍を意味する。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、パクリタキセルまたはその医薬として許容しうる塩(以下、「その塩」ということがある。)と、1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシン(化合物A)またはその塩もしくはプロドラッグとを含む抗腫瘍剤である。また本発明は、パクリタキセルまたはその塩と、化合物Aまたはその塩もしくはプロドラッグとを組合わせてなる抗腫瘍剤である。
【0012】
まず、化合物Aまたはその塩もしくはプロドラッグについて説明する。
塩としては、薬学的に許容される塩が挙げられ、具体的には、鉱酸塩、有機カルボン酸塩及びスルホン酸塩が挙げられる。好ましい塩としては、鉱酸塩及びスルホン酸塩が挙げられる。
【0013】
鉱酸塩としては、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩及び硫酸塩が挙げられ、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩または硫酸塩が好ましく、塩酸塩がより好ましい。有機カルボン酸塩としては、例えば、ギ酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、アスパラギン酸塩、トリクロロ酢酸塩及びトリフルオロ酢酸塩が挙げられる。スルホン酸塩としては、例えば、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、メシチレンスルホン酸塩及びナフタレンスルホン酸塩が挙げられ、メタンスルホン酸塩が好ましい。
【0014】
化合物Aの塩は、無水物、水和物または溶媒和物であってもよい。本明細書で単に「塩」というとき、その形態は、無水物、水和物または溶媒和物であり得る。本明細書で「無水物」というときは、特に記載した場合を除き、水和物でも溶媒和物でもない状態にある場合をいう。元来、水和物または溶媒和物を形成しない物質であっても、結晶水、水和水及び相互作用する溶媒を持たない化合物Aの塩は、本発明でいう「無水物」に含まれる。無水物は、「無水和物」ということもある。化合物Aの塩が水和物であるとき、水和水の数は特に限られず、一水和物、二水和物等であり得る。溶媒和物の例としては、メタノール和物、エタノール和物、プロパノール和物及び2-プロパノール和物が挙げられる。
【0015】
特に好ましい化合物Aの塩の具体的な例は、下記である。
1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンのメタンスルホン酸塩;
1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンの塩酸塩;
1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンの1/2硫酸塩;
1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンの硝酸塩;及び
1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンのヨウ化水素酸塩;ならびに上記の塩のいずれかの無水物。
【0016】
プロドラッグとは、投与後、プロドラッグとして機能する官能基が体内の酵素や胃液等による反応により切断され、目的の薬理活性を示す化合物に変換される化合物またはその塩をいう。
プロドラッグを形成する基としては、例えば、Stella VJら、Prodrugs: Challenges and Rewards. Parts 1 and 2、2007年、American Association of Pharmaceutical Scientistsに記載されている基が挙げられる。
【0017】
化合物Aのプロドラッグとは、生体内における生理条件下で酵素や胃液等による反応により化合物Aまたはそのリン酸化合物に変換する化合物またはその塩をいう。
化合物Aのプロドラッグとしては、国際公開第2016/068341号公報の説明を援用及び参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
より具体的には、例えば、国際公開第2016/068341号公報に記載の一般式[1]で表わされるチオヌクレオシド誘導体またはその塩が本願明細書に組み込まれ、その好適な範囲も国際公開第2016/068341号公報に記載のものと同一である。
【0018】
本発明において、化合物Aまたはその塩もしくはプロドラッグは、一種のみを用いてもよく、または二種以上を含有してもよい。
【0019】
次に、化合物Aまたはその塩もしくはプロドラッグの製造法について説明する。化合物Aは、例えば、特許文献1及びジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー、1999年、第64巻、p7912-7920に記載の方法で製造することができる。化合物Aの塩またはその水和物もしくは溶媒和物は、例えば、特許文献4に記載の方法で製造することができる。化合物Aのプロドラッグは、例えば、国際公開第2016/068341号公報に記載の方法で製造することができる。
本発明にかかる化合物Aまたはその塩もしくはプロドラッグは、抗腫瘍剤として、また医薬組成物の有効成分として用いることができる。
【0020】
本発明において、パクリタキセルまたはその塩は、一種のみを用いてもよく、または二種以上を含有してもよい。パクリタキセルまたはその塩としては、パクリタキセルまたはその塩以外に、それらを含む組成物でもよい。
塩としては、薬学的に許容される塩が挙げられ、具体的には、通常知られているアミノ基などの塩基性基、ヒドロキシル基及びカルボキシル基などの酸性基における塩を挙げることができる。
塩基性基における塩としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸及び硫酸などの鉱酸との塩;ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、アスパラギン酸、トリクロロ酢酸及びトリフルオロ酢酸などの有機カルボン酸との塩;ならびにメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メシチレンスルホン酸及びナフタレンスルホン酸などのスルホン酸との塩が挙げられる。
酸性基における塩としては、例えば、ナトリウム及びカリウムなどのアルカリ金属との塩;カルシウム及びマグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩;アンモニウム塩;ならびにトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N、N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N-ベンジル-β-フェネチルアミン、1-エフェナミン及びN、N'-ジベンジルエチレンジアミンなどの含窒素有機塩基との塩が挙げられる。
パクリタキセルまたはその塩を含む組成物としては、例えば、パクリタキセル及びアルブミン(好ましくはヒト血清アルブミン)を含むナノ粒子(パクリタキセルをアルブミンで封入したナノ粒子製剤のアルブミン結合パクリタキセル注射用懸濁液(ナブパクリタキセル、商品名「アブラキサン」))、ポリエチレングリコールとポリアスパラギン酸のブロック共重合体にパクリタキセルを内包させた高分子ミセル体(NK105)、脂肪酸のドコサヘキサエン酸(DHA)をパクリタキセルと結合させたプロドラッグ(Taxoprexin)、ポリグルタミン酸をパクリタキセルと結合させたプロドラッグ(商品名「Opaxio」)、ならびに腫瘍細胞を標的とするモノクローナル抗体をパクリタキセルと結合させたプロドラッグが挙げられる。
パクリタキセルとしては、パクリタキセル及びアルブミンを含むナノ粒子が好ましく、ナブパクリタキセルがより好ましい。
【0021】
化合物Aは、優れたDNA合成阻害作用を有する、抗腫瘍剤である。化合物Aをパクリタキセルと併用した場合に、顕著な毒性の増悪を示すことなく、パクリタキセルの抗腫瘍効果を増強する作用を有することが予想される。
【0022】
(抗腫瘍剤)
本発明によれば、
パクリタキセルまたはその塩と、1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩もしくはプロドラッグとを含む抗腫瘍剤;並びに
パクリタキセルまたはその塩と併用される、1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩もしくはプロドラッグを含む抗腫瘍剤:
が提供される。
本発明の抗腫瘍剤は、通常、製剤化に使用される賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、矯味矯臭剤、乳化剤、界面活性剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤及び吸収促進剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0023】
パクリタキセルまたはその塩と化合物Aまたはその塩もしくはプロドラッグとを含む本発明の抗腫瘍剤は、パクリタキセルまたはその塩と化合物Aまたはその塩もしくはプロドラッグとを含む1剤型の製剤であっても、パクリタキセルまたはその塩と化合物Aまたはその塩もしくはプロドラッグとを含む2剤型の製剤であってもよい。好ましくは、パクリタキセルまたはその塩と化合物Aまたはその塩もしくはプロドラッグとを別個の製剤とする2剤型の製剤である。
パクリタキセルまたはその塩と、化合物Aまたはその塩もしくはプロドラッグとが別個の製剤として用いる場合、各製剤は、同時に、別々に、連続して、あるいは間隔をあけて対象に投与することができる。また、パクリタキセルを含む組成物の投与手段と、化合物Aを含む組成物の投与手段は同一であってもよいし、相違していてもよい(例えば、経口投与と注射)。
【0024】
本発明の抗腫瘍剤の投与経路としては、静脈内、動脈内、直腸内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内または膀胱内注射する方法、経口投与、経皮投与及び/または坐剤などの方法が挙げられる。
投与経路としては、非経口投与が好ましい。例えば、点滴等の静脈内注射(静注)、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、眼内注射及び/または髄腔内注射を挙げることができる。投与方法としては、シリンジまたは点滴による投与が挙げられる。
【0025】
本発明の抗腫瘍剤に含まれるパクリタキセルまたはその塩と、化合物Aまたはその塩もしくはプロドラッグとの投与量または配合量は、抗腫瘍効果の増強効果を奏する範囲であれば特に制限されないが、パクリタキセル1モルに対して、化合物Aまたはその塩もしくはプロドラッグを0.01~100倍モル、好ましくは0.1~50倍モル、さらに好ましくは1~40倍モルとすればよい。
【0026】
パクリタキセルまたはその塩の投与量及び投与回数は、例えば、成人に対しては、経口または非経口(例えば、注射、点滴及び直腸部位への投与)投与により、1日あたり例えば、1~1000 mg/m2を1回から数回に分割して投与することができる。
化合物Aまたはその塩もしくはプロドラッグの投与量及び投与回数は、1日あたり1~2000 mg/m2を1回から数回に分割して投与することができる。しかし、これらの投与量及び投与回数に制限されるものではない。
【0027】
本発明の抗腫瘍剤の剤形の例としては、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、顆粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、液剤、坐剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、貼付剤、軟膏剤及び注射剤が挙げられるが、注射剤が好ましい。これらの投与剤形は、各々当業者に公知慣用の製剤方法により製造できる。
【0028】
本発明の抗腫瘍剤は、例えば、黒色腫、肝癌、神経膠腫、神経芽細胞腫、肉腫及び肺、結腸、乳房、膀胱、卵巣、精巣、前立腺、頚部、膵臓、胃、小腸、その他の器官の腫瘍を包含する多様なタイプの腫瘍の処置に有効に使用できる。本発明の抗腫瘍剤は、好ましくは抗悪性腫瘍剤であり、抗がん剤として使用することができ、特に膵臓癌の処置に有効である。
【0029】
(抗腫瘍用キット)
本発明の抗腫瘍用キットは、(a)パクリタキセルまたはその塩及び(b)化合物Aまたはその塩もしくはプロドラッグの組み合わせを含むキットである。
また、上記キットでは、(a)パクリタキセルまたはその塩及び(b)化合物Aまたはその塩もしくはプロドラッグは各々公知の各種の製剤形態とすることができ、その製剤形態に応じて、通常用いられる各種の容器に収容される。
さらに、上記キットでは、(a)パクリタキセルまたはその塩及び(b)化合物Aまたはその塩もしくはプロドラッグは各々別の容器に収容されてもよいし、混合されて同じ容器に収容されてもよい。(a)パクリタキセルまたはその塩及び(b)化合物Aまたはその塩もしくはプロドラッグが各々別の容器に収容されていることが好ましい。
【0030】
(抗腫瘍効果増強剤)
本発明の抗腫瘍効果増強剤は、パクリタキセルまたはその塩と併用される、1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩もしくはプロドラッグを含む抗腫瘍剤である。
本発明の抗腫瘍効果増強剤は、通常、製剤化に使用される賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、着色剤、矯味矯臭剤、乳化剤、界面活性剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤及び吸収促進剤などの添加剤を含んでいてもよい。
【0031】
本発明の抗腫瘍効果増強剤は、パクリタキセルまたはその塩と同時に、別々に、連続して、あるいは間隔をあけて対象に投与することができる。
【0032】
本発明の抗腫瘍効果増強剤の投与経路としては、非経口投与が好ましい。例えば、点滴等の静脈内注射(静注)、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、眼内注射及び髄腔内注射を挙げることができる。投与方法としては、シリンジまたは点滴による投与が挙げられる。
【0033】
本発明の抗腫瘍効果増強剤に含まれる化合物Aまたはその塩もしくはプロドラッグの投与量または配合量は、抗腫瘍効果の増強効果を奏する範囲であれば特に制限されないが、パクリタキセル1モルに対して、化合物Aまたはその塩もしくはプロドラッグを0.01~100倍モル、好ましくは0.1~50倍モル、さらに好ましくは1~40倍モルとすればよい。
【0034】
本発明の抗腫瘍効果増強剤に含まれる化合物Aまたはその塩もしくはプロドラッグの投与量及び投与回数は、1日あたり、1~2000 mg/m2を1回から数回に分割して投与することができる。しかし、これらの投与量及び投与回数に制限されるものではない。
【0035】
本発明の抗腫瘍効果増強剤は、例えば、黒色腫、肝癌、神経膠腫、神経芽細胞腫、肉腫及び肺、結腸、乳房、膀胱、卵巣、精巣、前立腺、頚部、膵臓、胃、小腸、その他の器官の腫瘍を包含する多様なタイプの腫瘍の処置に有効に使用できる。本発明の抗腫瘍効果増強剤は、好ましくは抗悪性腫瘍効果増強剤であり、特に膵臓癌の処置に有効である。
【0036】
本発明は、パクリタキセルまたはその塩と、1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩もしくはプロドラッグとを、腫瘍の処置に用いるための、好ましくは膵臓癌の処置に用いるための方法であって、治療有効用量をそのような処置が必要な対象(ヒトを含む哺乳動物)に投与する工程を含む方法を提供する。
【0037】
また、本発明は1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩もしくはプロドラッグを併用治療に用いる場合の治療有効用量、及び、パクリタキセルまたはその塩を併用治療に用いる場合の治療有効用量とを組み合わせて、対象に投与することを特徴とする、腫瘍の治療方法を提供する。
【0038】
さらに、本発明は1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩もしくはプロドラッグを併用治療に用いる場合の治療有効用量、及び、パクリタキセルまたはその塩を併用治療に用いる場合の治療有効用量を、同時に、別々に、連続して、あるいは間隔をあけて、対象に投与することを特徴とする、腫瘍の治療方法を提供する。
【0039】
1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩もしくはプロドラッグの、パクリタキセルまたはその塩と組み合わせてなる抗腫瘍剤製造のために使用できる。
【0040】
1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩もしくはプロドラッグの、パクリタキセルまたはその塩と組み合わせてなる抗腫瘍剤のための使用に使用できる。
【0041】
本発明により、パクリタキセルまたはその塩と、一剤型の製剤形態、または別個の製剤形態として投与することにより腫瘍を治療するための、1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩もしくはプロドラッグを得ることができる。
【0042】
また、本発明により、パクリタキセルまたはその塩と併用される、1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシンまたはその塩もしくはプロドラッグを含む、抗腫瘍剤を得ることができる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例及び試験例を示し、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に制限されるものではない。また、以下の試験例で示される、抗腫瘍効果が増強される各種抗腫瘍剤の用量設定については、論文報告等によって示された最大耐用量(Maximum tolerated dose; MTD)を用いた。
【0044】
(実施例1)
1-(2-デオキシ-2-フルオロ-4-チオ-β-D-アラビノフラノシル)シトシン(化合物A)のメタンスルホン酸塩は、国際公開第2013/146833号パンフレットに記載の方法により合成した。
【0045】
(試験例1)
Capan-1皮下移植担がんモデルマウスでの併用効果試験
被験物質として、ゲムシタビン(以下、Gemともいう)、アブラキサン(以下、Abxともいう)及び化合物Aのメタンスルホン酸塩を用いた。
ゲムシタビンは、ゲムシタビン塩酸塩(TEVA社製)を生理食塩水に溶解させたものを用いた。アブラキサンは、アブラキサン(Celgene社製)を生理食塩水に溶解させたものを用いた。
ヒト膵臓癌細胞株であるCapan-1細胞を生後5~6週齢の雌性BALB/cA Jcl-nuマウスの後部横腹に皮下注射した。腫瘍移植後に腫瘍の長径(mm)及び短径(mm)を測定し、腫瘍体積(tumor volume:TV)を算出した。各群の平均TVが均等になるように各群にマウスを割り付け、この群分け(n=8)を実施した日をday 1とした。
アブラキサン単独群の被験液は、投与用量として30 mg/kg/dayとなるよう調製した。また化合物A単独群の被験液は、480 mg/kg/dayとなるよう調製した。化合物Aはday 1から1週間に1度、計3回マウス尾静脈より投与し、アブラキサンも同様に、day 1から1週間に1度、計3回マウス尾静脈より投与した。併用投与群では、化合物Aを480 mg/kg/dayとアブラキサンを30 mg/kg/dayで投与した。
比較実験として、対照薬としてゲムシタビンを用いた。ゲムシタビン単独群の被験液は、240 mg/kg/dayとなるよう調製した。ゲムシタビンはday 1から1週間に1度、計3回マウス尾静脈より投与し、併用投与群では、ゲムシタビンを240 mg/kg/dayとアブラキサンを30 mg/kg/dayで投与した。
本試験では、化合物A及びゲムシタビンの用量設定は、各薬剤のMTDを用いた。アブラキサンは、各薬剤との併用において耐用可能な最大用量を用いた。抗腫瘍剤は最大薬効を示す用量と毒性発現用量が極めて近く、その薬剤が持つ最大抗腫瘍効果を動物モデルで評価するためにはMTD近傍において評価することが一般的であり、本試験例においては、MTDと最大効果発揮用量はほぼ同義である。
【0046】
抗腫瘍効果の指標として、各薬剤投与群でday 33におけるTVを測定し、下記式により、day 1に対する相対腫瘍体積(relative tumor volume:RTV)、及びT/C(%)を算出して抗腫瘍効果を評価した。併用効果の評価判定は、併用投与群の平均RTV値が個々の単独投与群の平均RTV値より統計学的に有意(Welch’s IUT,over all maximum p<0.05)に小さい場合に併用効果ありとして判定した。結果を表1及び
図1に示す。表中、*印はコントロール(Controlとも記す)群ならびにGemまたは化合物A単独群に対して統計学的有意差が認められたことを示す。
TV(mm
3)=(長径×短径
2)/2
RTV=(Day 33におけるTV)/(Day 1におけるTV)
T/C(%)=[(被験液投与群の平均RTV値)/(対照群の平均RTV値)]×100
【0047】
【0048】
化合物Aは、アブラキサンの抗腫瘍効果を顕著に増強した。ヌードマウスでの高用量(最大効果発揮用量)である480 mg/kg/dayで、併用することにより顕著な腫瘍の縮小を誘導した。その効果は、既存薬であるゲムシタビンよりも大きいと考えられた。より詳細な説明は後述する。
【0049】
また毒性の指標として経時的に体重(body weight:BW)を測定し、day 1に対するday 33までの平均体重変化率[body weight change:BWC(%)]を下記式により算出した(n:体重測定日であり,最終測定日は最終評価日であるday 33に該当する)。結果を
図2に示す。
BWC(%)=[(Day nにおけるBW)-(Day 1におけるBW)]/(Day 1におけるBW)×100
併用投与において体重減少の増悪は認められなかった。
【0050】
本発明の併用効果について、併用効果の定量的指標となる併用係数(Combination Index:CI)を用いて評価した結果を示す。CIは、キャンサー・リサーチ、2010年、70巻、440~446頁に従って、以下の式で算出できる。
すなわち、併用する薬剤を薬剤1及び薬剤2とすると、
CI=(併用時のT/C)÷100/{[(薬剤1のT/C)÷100]×[(薬剤2のT/C)÷100]}
CI=1:相加効果
CI>1:拮抗効果
CI<1:相乗効果
アブラキサンとゲムシタビンを併用したときのCIは0.80であり、アブラキサンと化合物Aを併用したときのCIは0.32であった。CI<1であるから、併用による相乗効果が認められ、化合物Aの相乗効果は、既存薬であるゲムシタビンよりもより顕著であると言える。
【0051】
また、本発明の併用効果について、腫瘍増殖抑制効果(growth of control:GC)を用いて評価した結果を示す。評価方法は、モレキュラー・キャンサー・セラピューティクス、2013年、12巻、2585~2696頁のFigure 5のBと同様の方法を用いた。
上記文献に記載の通り、GCは以下の式で算出できる。
[1]RTV>1以上の場合
GC(%)=[(該当薬剤のRTV-1)/(コントロールのRTV-1)]×100
[2]RTV≦1未満の場合
GC(%)=(該当薬剤のRTV-1)×100
アブラキサンと、化合物Aまたはゲムシタビン単剤での薬効から併用効果を以下の算出式で推定した。その結果を
図3及び表2に示す。
推定した併用のGC(%)=[アブラキサンのGC(%)×単剤GC(%)]÷100
【0052】
例えば、本試験例において、表1からアブラキサン単剤のGC(%)は、
RTV>1なので、
[(2.03-1)/(4.01-1)]×100=34.2(%)であり、
ゲムシタビンのGC(%)は、RTV>1なので、
[(2.74-1)/(4.01-1)]×100=57.8(%)である。
よって、推定した併用GC(%)は、(34.2×57.8)÷100=19.8(%)
一方、アブラキサンとゲムシタビンの併用の実際のGC(%)は、
RTV>1より、[(1.11-1)/(4.01-1)]×100=3.7(%)である。
これより、推定した併用GC(%)は19.8(%)に対して、実際の併用のGC(%)が3.7(%)であるため、想定される併用効果を超える顕著な併用効果があると考えられる。
化合物Aにおいても同様の計算を行うと、単剤は、RTV>1であるので、
[(1.29-1)/(4.01-1)]×100=9.6(%)
よって、推定した併用GC(%)は、(34.2×9.6÷100=3.3(%)
実際のGC(%)は、RTV≦1より、(0.21-1)×100=-79.0(%)である。
図3中の実線の矢印はゲムシタビンの併用効果、点線の矢印は化合物Aの併用効果を示す。
これより、化合物Aにおいても、推定した併用GC(%)は3.3(%)であるのに対し、実際の併用のGC(%)は-79.0(%)であり、想定される併用効果を超える顕著な併用効果があると考えられる。その度合いは、既存薬であるゲムシタビンよりもより顕著であると言える。
【0053】
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、顕著な抗腫瘍効果を示す抗腫瘍剤及び抗腫瘍用キット、並びに抗腫瘍効果増強剤として有用である。