(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-12
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】パッケージ
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
H01L27/146 D
(21)【出願番号】P 2021544605
(86)(22)【出願日】2019-10-11
(86)【国際出願番号】 JP2019040279
(87)【国際公開番号】W WO2021070373
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-07-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391039896
【氏名又は名称】NGKエレクトロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 淳
(72)【発明者】
【氏名】河野 浩
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/148217(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/002306(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/090684(WO,A1)
【文献】特開2003-309226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装されることになる実装面と、前記実装面上に位置するキャビティと、前記キャビティを封止するための蓋体が取り付けられることになる取付面と、を有するパッケージであって、
前記キャビティが設けられ、前記実装面を有する底部と、前記底部上において前記実装面の外側に前記キャビティを囲むように設けられ、前記取付面を有し、主成分としてのAl
2O
3と添加物としてのMnOおよびSiO
2とを含むセラミックスからなる枠部と、を含む基部と、
前記基部の前記キャビティから延びて前記基部を貫通する配線部と、
を備え、
前記セラミックスの、MnOの含有量に対するSiO
2の含有量の重量比を、前記枠部の内部においてR1、前記枠部の前記取付面上においてR2と定義して、
R1>R2が満たされて
おり、かつ、0.7≦R2<1.3が満たされているパッケージ。
【請求項2】
1.3≦R1≦2.2が満たされている、請求項
1に記載のパッケージ。
【請求項3】
電子部品が実装されることになる実装面と、前記実装面上に位置するキャビティと、前記キャビティを封止するための蓋体が取り付けられることになる取付面と、を有するパッケージであって、
前記キャビティが設けられ、前記実装面を有する底部と、前記底部上において前記実装面の外側に前記キャビティを囲むように設けられ、前記取付面を有し、主成分としてのAl
2O
3と添加物としてのMnOおよびSiO
2とを含むセラミックスからなる枠部と、を含む基部と、
前記基部の前記キャビティから延びて前記基部を貫通する配線部と、
を備え、
前記セラミックスの、MnOの含有量に対するSiO
2の含有量の重量比を、前記枠部の内部においてR1、前記枠部の前記取付面上においてR2と定義して、
R1>R2が満たされて
おり、かつ、1.3≦R1≦2.2が満たされているパッケージ。
【請求項4】
前記枠部の前記取付面は、前記セラミックスの焼成面である、請求項1
から3のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項5】
前記セラミックスは、モリブデン原子およびCr
2O
3の少なくとも一方を任意成分として含み、
Al
2O
3の含有量が、82.0質量%以上95.0質量%以下であり、
SiO
2の含有量が、3.0質量%以上8.0質量%以下であり、
MnOの含有量が、2.0質量%以上6.0質量%以下であり、
MoO
3換算でのモリブデン原子の含有量と、Cr
2O
3の含有量との合計が、4.0質量%以下であり、
残部の含有量が、0.1質量%未満である、
請求項1から4のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項6】
前記セラミックスは、モリブデン原子およびCr
2O
3の少なくとも一方を任意成分として含み、
Al
2O
3の含有量が、82.0質量%以上95.0質量%以下であり、
SiO
2の含有量が、3.0質量%以上8.0質量%以下であり、
MnOの含有量が、2.0質量%以上6.0質量%以下であり、
MoO
3換算でのモリブデン原子の含有量と、Cr
2O
3の含有量との合計が、4.0質量%以下であり、
残部の含有量が、0.05質量%未満である、
請求項1から4のいずれか1項に記載のパッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージに関し、特に、電子部品用のパッケージに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2006-66791号公報(特許文献1)は、デジタルカメラ、ビデオカメラ、その他の撮像装置に用いられる、電荷結合素子(CCD)または相補型・金属・酸化物・半導体(CMOS)などの固体撮像素子の気密封止構造を開示している。この構造は、固体撮像素子を収容する気密封止部が形成された容器と、該容器の気密封止部を囲む周囲縁部の上面に接着剤によって接着される透光性の蓋と、を有している。容器は、例えば、セラミックス板を積層あるいは接合することで形成される。
【0003】
容器の周囲縁部と蓋との間には、第1の接着領域と、該第1の接着領域よりも気密封止構造の外周側に位置する第2の接着領域とが構成されている。第2の接着領域における接着剤の厚みは、第1の接着領域における接着剤の厚みよりも厚い。上記公報の記載によれば、接着剤の厚みが比較的薄い第1の接着領域で湿気が気密封止構造の内部に侵入することを防いで、構造内部の気密封止を良好に保つことができると共に、接着剤の厚みが比較的厚い第2の接着領域で容器と蓋との接着強度を高めて、両者の接着部が熱衝撃によるせん断応力で容易に剥がれてしまうことを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、容器の周囲縁部と、接着剤を介してそれに取り付けられた蓋体との間の部分は、パッケージ性能を確保する上で重要な部分である。よって容器の周囲縁部、言い換えれば、蓋体が取り付けられることになる取付面、の質が低いと、パッケージ性能が確保できないことがある。本発明者らの検討によれば、取付面の質として具体的には、高い緻密性が重要である。それに鑑みれば、パッケージ材料としてのセラミックスの組成として、高い緻密性を有するものを選択することが考えられる。しかしながら本発明者らの検討によれば、この目的でセラミックススの組成を単純に調整すると、パッケージの色むらが大きくなることがある。商業的用途においては、大きな色むらを有するパッケージは許容されないことが多い。本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、蓋体が取り付けられることになる取付面の緻密性を高めることができ、かつ、大きな色むらを避けることができるパッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様におけるパッケージは、電子部品が実装されることになる実装面と、実装面上に位置するキャビティと、キャビティを封止するための蓋体が取り付けられることになる取付面と、を有している。パッケージは、基部と、配線部とを有している。基部はキャビティが設けられている。基部は、底部と、枠部とを含む。底部は、実装面を有している。枠部は、底部上において実装面の外側にキャビティを囲むように設けられており、取付面を有している。枠部は、主成分としてのAl2O3と添加物としてのMnOおよびSiO2とを含むセラミックスからなる。配線部は、基部のキャビティから延びて基部を貫通している。セラミックスの、MnOの含有量に対するSiO2の含有量の重量比を、枠部の内部においてR1、枠部の取付面上においてR2と定義して、R1>R2が満たされており、かつ、0.7≦R2<1.3が満たされている。
本発明の他の態様におけるパッケージは、電子部品が実装されることになる実装面と、実装面上に位置するキャビティと、キャビティを封止するための蓋体が取り付けられることになる取付面と、を有している。パッケージは、基部と、配線部とを有している。基部はキャビティが設けられている。基部は、底部と、枠部とを含む。底部は、実装面を有している。枠部は、底部上において実装面の外側にキャビティを囲むように設けられており、取付面を有している。枠部は、主成分としてのAl
2
O
3
と添加物としてのMnOおよびSiO
2
とを含むセラミックスからなる。配線部は、基部のキャビティから延びて基部を貫通している。セラミックスの、MnOの含有量に対するSiO
2
の含有量の重量比を、枠部の内部においてR1、枠部の取付面上においてR2と定義して、R1>R2が満たされており、かつ、1.3≦R1≦2.2が満たされている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施の形態におけるパッケージによれば、セラミックスのMnOの含有量に対するSiO2の含有量の重量比を枠部の内部においてR1と定義し枠部の取付面上においてR2と定義して、R1>R2が満たされている。これにより、枠部の取付面上における組成が緻密性の向上に適したものとなり、かつ、枠部の内部における組成が色むらの抑制に適したものとなる。色むらの程度は、セラミックスの表面の組成ではなく、体積的に大部分を占めるセラミックスの内部の組成への依存性が大きいので、セラミックスの内部の組成を最適化することによって色むらを低減することができる。以上から、蓋体が取り付けられることになる取付面の緻密性を高めることができ、かつ、大きな色むらを避けることができる。
【0008】
この発明の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態における電子装置の構成を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図1のパッケージの構成を概略的に示す断面図である。
【
図3】原料粉末調合時のMnOの含有量に対するSiO
2の含有量の重量比が1.00の場合のセラミックス板の実体顕微鏡写真である。
【
図4】原料粉末調合時のMnOの含有量に対するSiO
2の含有量の重量比が1.20の場合のセラミックス板の実体顕微鏡写真である。
【
図5】原料粉末調合時のMnOの含有量に対するSiO
2の含有量の重量比が1.40の場合のセラミックス板の実体顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
図1および
図2のそれぞれは、本実施の形態における電子装置900の構成と、電子装置900の製造のために用いられるパッケージ800の構成とを概略的に示す断面図である。
【0012】
パッケージ800(
図2)は、電子部品902(
図1)が実装されることになる実装面SMと、実装面SM上に位置するキャビティCVと、キャビティCVを封止するための蓋体907が取り付けられることになる取付面SFとを有している。パッケージ800は、基部810と、配線部820とを有している。
【0013】
基部810はセラミックスからなる。このセラミックスは、基部810が絶縁部材として機能することができるように、実質的に絶縁体からなる。この機能が確保できる限りにおいてセラミックスは、必ずしも全体が完全に絶縁体からなる必要はなく、例えば、体積的に大多数の割合を占める絶縁体粒の中に、微量の非絶縁体粒が分散されていてもよい。
【0014】
基部810はキャビティCVが設けられている。基部810は、底部811と、枠部812とを含む。
【0015】
底部811は実装面SMを有している。実装面SMは、10mm以上の長辺を有する長方形を包含する大きさを有する実装面SMを有していることが好ましい。例えば、実装面SMは、10mm以上の長辺を有する長方形である。実装面SMは、10mm以上の辺を有する正方形を包含する大きさを有する実装面SMを有していてもよい。なお長方形は、幾何学における定義上、正方形の一種である。
【0016】
枠部812は、底部811上において、実装面SMの外側に、キャビティCVを囲むように設けられている。枠部812は、取付面SFとしてセラミックスの焼成面を有していることが好ましい。ここで「焼成」(アズファイアード:as-fired)の文言は、焼結したままの、表面加工を行わない状態のことを意味する。よって「焼成面」は、「焼成」(アズファイアード:as-fired)の状態を有する面のことである。言い換えれば、「焼成面」は、焼結後のセラミックス製品の外面(external surface of a ceramic product after sintering)のことを意味する。よって、研磨された表面は焼成面ではない。なお、枠部812の取付面SFは、焼成面に限定されるわけではなく、例えば研磨面であってよい。
【0017】
上記セラミックスは、主成分としてのAl2O3と、添加物としてのMnOおよびSiO2とを含む。Al2O3の含有量は、82.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。SiO2の含有量は、3.0質量%以上8.0質量%以下であることが好ましい。MnOの含有量は、2.0質量%以上6.0質量%以下であることが好ましい。また上記セラミックスは、モリブデン(Mo)原子およびCr2O3の少なくとも一方を任意成分として含んでよい。MoO3換算でのMo原子の含有量とCr2O3の含有量との合計は、4.0質量%以下である。Mo原子の少なくとも一部は酸化Moとして含まれていてよい。またMo原子の少なくとも一部は、金属Moとして含まれていてよい。セラミックスの組成のうち上述した成分以外の残部の含有量は、0.1質量%未満であることが好ましく、0.05質量%未満であることがより好ましい。
【0018】
ここで、セラミックスの、MnOの含有量に対するSiO2の含有量の重量比を、枠部812の内部においてR1と定義し、枠部812の取付面SF上においてR2と定義する。本実施の形態においては、R1>R2が満たされている。好ましくは、1.3≦R1≦2.2が満たされている。また好ましくは、0.7≦R2<1.3が満たされている。
【0019】
なお、R1は、原料粉末の調合時の組成におおよそ対応すると考えられるが、セラミックスの表面部分を十分に除去した後に蛍光X線(XRF:X-ray Fluorescence)元素分析法または化学分析法によって測定されてもよい。表面部分が除去される深さは70~80μm程度で十分と考えられる。R2は、取付面SF上でのXRF元素分析法によって測定されてよい。
【0020】
配線部820は、キャビティCVから延びて基部810を貫通している。具体的には、配線部820は、キャビティCVの外側に設けられた外部電極端子821と、基部810を貫通する内部配線822と、キャビティCVに面する内部電極端子823とを有している。内部配線822は、内部電極層およびビア配線の少なくともいずれかによって構成され得る。配線部820の材料は、配線部820が配線部材として機能することができるように、実質的に導体からなる。この機能が確保できる限りにおいては、この材料は、必ずしも全体が完全に導体からなる必要はなく、例えば、体積的に主な割合を占める導体領域の中に非絶縁体領域が分散されていてもよい。
【0021】
電子部品902(
図1)は、内部電極端子823上に接合層901によって接合されている。これにより電子部品902は、接合層901および内部電極端子823を介して実装面SM上に実装されている。電子部品902は、10mm以上の長辺を有する長方形を包含する大きさを有していてよく、例えば、10mm以上の辺を有する正方形を包含する大きさを有している。電子部品902は固体撮像素子であってよい。固体撮像素子は、例えば、CMOSイメージセンサである。一眼レフ、一部の監視用カメラ、および産業用カメラ等に求められるような大きな撮像部を有する固体撮像素子としては、一般に、CMOSイメージセンサが特に優れている。固体撮像素子の平面形状は、10mm以上の長辺を有する長方形であってよく、10mm以上の辺を有する略正方形であってもよい。ただし、電子部品902のサイズおよび種類は、特に限定されるものではない。
【0022】
蓋体907は枠部812の取付面SF上に接着層906を介して取り付けられている。これによりパッケージ800のキャビティCVが封止されている。接着層906は、例えば樹脂接着剤からなる。接着層906は、取付面SFおよび蓋体907の各々に直接接していてよい。電子部品902が固体撮像素子である場合、蓋体907の少なくとも一部は、撮像される光に関して実質的に透明であり、典型的には蓋体907の全体が、撮像される光に関して実質的に透明である。
【0023】
なお本実施の形態においては配線部820が底部811を貫通しているが、変形例として、底部811と枠部812との間を貫通する配線部、または、枠部812を貫通する配線部が設けられてもよい。また、変形例として、電子部品902とボンディングワイヤによって接続されることになる配線部が設けられてもよい。また変形例として、配線部はリードフレームであってもよい。
【0024】
本実施の形態によれば、上記のようにR1>R2が満たされていることにより、枠部812の取付面SF上における組成が緻密性の向上に適したものとなり、かつ、枠部812の内部における組成が色むらの抑制に適したものとなる。高い緻密性によって、例えば、取付面SFの耐酸性の確保(例えば、めっき工程の酸洗浄等)が容易となる。また、色むらの程度は、セラミックスの表面の組成ではなく、体積的に大部分を占めるセラミックスの内部の組成への依存性が大きいので、セラミックスの内部の組成を最適化することによって色むらを低減することができる。以上から、蓋体が取り付けられることになる取付面SFの緻密性を高めることができ、かつ、大きな色むらを避けることができる。
【0025】
枠部812の取付面SFはセラミックスの焼成面であることが好ましい。この場合、パッケージ800の製造において、枠部812の取付面SFが研磨されない。取付面SFが研磨されると、枠部812の取付面SF上におけるセラミックス組成が、枠部812の内部における組成に近づきやすい。その結果、上述したR1>R2の関係が得にくかったり、あるいは、R1をR2に比して十分に大きくしにくかったりすることがある。これに対して取付面SFが焼成面である場合は、R1>R2の関係が得やすく、さらに、R1をR2に比して十分に大きくしやすい。また、取付面SFが焼成面である場合は、取付面SFの研磨が行われないので、枠部812の内部における気孔を欠陥(穴)として表面化させるおそれがない。したがって、加工時にこの欠陥に異物が入ることもない。よって、異物が脱離することに起因しての発塵を防ぐことができる。
【0026】
セラミックスの組成について、1.3≦R1≦2.2が満たされていることが好ましい。R1が1.3以上であることによって、パッケージ800の色むらを十分に小さくすることができる。R1が2.2以下であることによって、パッケージ800を製造する際の焼成工程に必要な温度が過度に高くなることが避けられる。R1が2.2を超える場合、焼成温度が上がり、粒成長により強度が低下してしまう。
【0027】
セラミックスの組成について、0.7≦R2<1.3が満たされていることが好ましい。R1とR2との差異を極端に大きくすることは難しいので、R2が0.7以上であることによって、R1が過小となりにくくなる。なおR1が過小であると、色むらの抑制が難しくなる。一方、R2が1.3未満であることによって、セラミックスの取付面SF上での緻密性を十分に高めることができる。このように、R2を上記の範囲に制御することで、色むらに影響するR1を制御しやすくなり、その結果、取付面の緻密性を高めつつ、かつ、大きな色むらを避けることができる。
【0028】
セラミックスは、好ましくは、次のような組成を有している。Al2O3、SiO2およびMnOを必須成分として含み、モリブデン原子およびCr2O3の少なくとも一方を任意成分として含む。Al2O3の含有量は、82.0質量%以上95.0質量%以下である。SiO2の含有量は、3.0質量%以上8.0質量%以下である。MnOの含有量は、2.0質量%以上6.0質量%以下である。MoO3換算でのモリブデン原子の含有量とCr2O3の含有量との合計は、4.0質量%以下である。残部の含有量は、0.1質量%未満であり、より好ましくは0.05質量%未満である。セラミックスがこのような組成を有することによって、セラミックスからなる基部810の寸法精度を得やすくなる。よって特に、研磨を省略して焼成面を用いる場合でも、取付面SFの平坦度を確保しやすく、また取付面SFの平行度を確保しやすい。
【0029】
具体的には、上記残部の含有量が0.1質量%未満に抑えられていることから、各成分が、偏析することなく分散された状態で均一に焼結されている。これにより、基部810の寸法ばらつきが抑制される。よって、研磨なしに取付面SFの平坦度を確保しやすくなる。また取付面SFの平行度を確保しやすくなる。
【0030】
また上記のように、各成分が、偏析することなく分散された状態で均一に焼結されることによって、基部810のガラス成分が溶融するタイミングが、焼成セッターに面する側と、その反対側とで、ほぼ同時となる。よって、このタイミングのずれに起因して基部810が厚み方向において反ることが抑制される。よって、研磨なしに取付面SFの平坦度および平行度を確保しやすくなる。
【0031】
残部の含有量は、0.05質量%未満がより好ましい。これによって寸法ばらつきをさらに抑制できる。残部の含有量は、0質量%であることが特に好ましい。これによって、寸法ばらつきをさらに抑制できる。
【0032】
基部810のセラミックスは結晶相とガラス相とを含む。セラミックスが着色剤としてMo原子を含有している場合は、結晶相は、主結晶相としてのAl2O3結晶相に加えて、副結晶相としてのMo結晶相も含む。結晶相は、Al2O3結晶相およびMo結晶相以外の結晶相(以下、「残部の結晶相」という。)を含んでいてもよい。ここで、基部810を粉砕することによって得た試料のX線回折パターンが測定される場合、残部の結晶相のメインピーク強度は、Al2O3結晶相のメインピーク強度に対して、0.5%以下であることが好ましい。これにより、残部の結晶相の存在によりガラス相に歪みが生じることを抑制できる。これにより、セラミックスの曲げ強度(いわゆる、抗折強度)を向上させることができる。
【0033】
下記の表1は、異なる組成を有するセラミックス板のサンプルA~Cについて、焼結体密度と、色むらとを調べた結果を示す。
【0034】
【0035】
上記表1における組成は、セラミックスを製造するための原料粉末の調合時のものであり、その焼結によって得られたセラミックス板の内部の組成にほぼ対応していると考えられる。よってここでの重量比SiO
2/MnOは、前述したR1に、ほぼ対応していると考えられる。サンプルA~Cのそれぞれは、SiO
2およびMnOの合計重量は共通して9質量%としつつ、上記重量比を1.00、1.20および1.40として作製された。その結果、重量比が小さいほど焼結体密度が大きいことがわかった。また、重量比が大きいほど色むらが抑制されることがわかった。
図3~
図5のそれぞれは、上記表1のサンプルA~Cの実体顕微鏡写真を示す。重量比1.00(
図3)は色むらが顕著であり、重量比1.20(
図4)では色むらが多少見られ、重量比1.40(
図5)では色むらがほとんど見られなかった。
【0036】
上記サンプルA~Cの実験結果等を踏まえて本発明者らは、MnOの含有量に対するSiO2の含有量の重量比を、取付面SFをなすセラミックス表面においては相対的に小さくし、セラミックス内部においては相対的に大きくする、という発想に至った。この発想の下、以下の表2および表3に示す重量比にてパッケージを試作したところ、いずれの実施例においても、取付面SFの緻密性を高めることができ、かつ、大きな色むらを避けることができた。
【0037】
【0038】
【0039】
上記表2および表3の各々において、左列の数値は、取付面SFから深さ75μmまで研磨した後にXRF元素分析法で測定した組成(セラミックスの内部組成)であり、最下段の値が上記R1に対応する。この値から、表2および表3のそれぞれの実施例において、R1は1.28および2.24であった。また右列の数値は、XRF元素分析法による、セラミックスの表面組成である。この結果から、前述したR2は0.70および1.26であった。
【0040】
色むらの程度は、セラミックスの表面組成ではなく、体積的に大部分を占めるセラミックスの内部組成への依存性が大きいので、セラミックスの内部の組成を最適化することによって、色むらを低減することができる。内部組成の比であるR1が1.28および2.24であった上記実施例において色むらが十分に抑制されたことから、有効数字2桁で1.3≦R1≦2.2が満たされていれば、色むらが十分に抑制されると考えられる。
【0041】
一方、表面組成の比であるR2が0.70および1.26であった上記実施例において緻密性が十分に高かったことから、有効数字2桁で0.7≦R2<1.3が満たされていれば、取付面SFの緻密性が十分に高められると考えられる。
【0042】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0043】
800 パッケージ
810 基部
811 底部
812 枠部
820 配線部
821 外部電極端子
822 内部配線
823 内部電極端子
900 電子装置
901 接合層
902 電子部品
906 接着層
907 蓋体
CV キャビティ
SF 取付面
SM 実装面