(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】床反力指標推定システム、床反力指標推定方法及び床反力指標推定プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
A61B5/11 210
A61B5/11 ZDM
(21)【出願番号】P 2021090235
(22)【出願日】2021-05-28
【審査請求日】2021-08-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】515045721
【氏名又は名称】株式会社ORPHE
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】中田 研
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 一生
(72)【発明者】
【氏名】菊川 裕也
(72)【発明者】
【氏名】小林 明日美
(72)【発明者】
【氏名】鵜野 裕基
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-298486(JP,A)
【文献】特開2016-150193(JP,A)
【文献】特開2009-261595(JP,A)
【文献】特開2011-83552(JP,A)
【文献】特開2004-114288(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0107780(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物と、前記履物と無線回線を介して接続された外部装置とを含む床反力指標推定システムであって、
前記履物は、
少なくとも、3軸加速度、3軸角速度のうちのいずれかを計測するウェアラブルセンサと、
身体的特徴量が記憶された第1記憶部と、
前記ウェアラブルセンサによる計測結果から説明変数として用いる値を算出し、前記ウェアラブルセンサによる計測結果から算出された説明変数として用いる値から重回帰分析により床反力及び床反力指標を算出する計算部と
を備え、
前記外部装置は、
前記床反力指標から、ユーザの歩行、走行動作を判定するための情報である判定基準情報が記憶された第2記憶部と、
前記履物から受信した前記ウェアラブルセンサによる計測結果及び前記算出された床反力指標と、前記判定基準情報とに基づいてユーザに歩行、走行動作の評価を行う制御部と、
前記走行動作の評価の結果を提示する提示部と
を備え、前記重回帰分析においては、前記計測結果から算出された結果を説明変数としたときの偏回帰係数が予め算出された重回帰式を用いて目的変数である床反力を算出
し、前記計測結果から算出された説明変数として用いる値は、少なくとも、3軸加速度の波形データの特徴量、3軸角速度の波形データの特徴量のうちのいずれかであることを特徴とする床反力指標推定システム。
【請求項2】
前記3軸加速度の波形データの特徴量は、前記3軸加速度の波形データの、少なくとも、最大値、最小値、平均値、極大値、極小値、極大/極小値の数のいずれかを含み、前記3軸角速度の波形データの特徴量は、前記3軸加速度の波形データの、少なくとも、最大値、最小値、平均値、極大値、極小値、極大/極小値の数のいずれかを含むことを特徴とする請求項
1に記載の床反力指標推定システム。
【請求項3】
前記計測結果から算出された説明変数として用いる値は、少なくとも、ステップ速度(ケイデンス、Cadence)、歩行又は走行の速度(スピード、Speed)、足が着地する際の角度(ストライクアングル、Strike angle)、足の側部の速度(Velocity)、歩行又は走行時の足の高さ(Foot height)、足の位置(Distance)のうちのいずれか一つをさらに含むことを特徴とする請求項
1又は
2に記載の床反力指標推定システム。
【請求項4】
前記計測結果から算出された説明変数として用いる値は、身体的特徴量を含むことを特徴とする請求項
1乃至
3のいずれかに記載の床反力指標推定システム。
【請求項5】
前記身体的特徴量は前記ユーザの、少なくとも、身長、体重、足の長さのうちのいずれか一つを含むことを特徴とする請求項
4に記載の床反力指標推定システム。
【請求項6】
前記計測結果から算出された説明変数として用いる値は、歩行・走行条件を含むことを特徴とする請求項
1乃至
5のいずれかに記載の床反力指標推定システム。
【請求項7】
前記歩行・走行条件は、少なくとも、地面の傾斜角度、地面の素材の硬さ、地面の素材の摩擦係数、履物の素材の硬さ、履物の素材の摩擦係数のうちのいずれか一つを含むことを特徴とする請求項
6に記載の床反力指標推定システム。
【請求項8】
前記外部装置は入力部をさらに備え、前記身体的特徴量は前記入力部から入力され、前記外部装置から前記履物に送信されたことを特徴とする請求項
4又は5に記載の床反力指標推定システム。
【請求項9】
前記外部装置は入力部をさらに備え、前記歩行・走行条件は前記入力部から入力され、前記外部装置から前記履物に送信されたことを特徴とする請求項
6又は
7に記載の床反力指標推定システム。
【請求項10】
前記第2記憶部は、床反力指標、計測結果、及び床反力指標と計測結果のそれぞれの経時変化を記憶することを特徴とする請求項1乃至
9のいずれかに記載の床反力指標推定システム。
【請求項11】
少なくとも、3軸加速度、3軸角速度のいずれかを検出するステップと、
前記検出された少なくとも、3軸加速度、3軸角速度のいずれかから、説明変数として用いる値を算出するステップと、
前記算出された説明変数として用いる値から重回帰分析により床反力及び床反力指標を算出するステップと、
前記算出された床反力指標と、前記床反力指標から、ユーザの歩行、走行動作を判定するための情報である判定基準情報とに基づいてユーザに歩行、走行動作の評価を行う計測結果から算出された結果から重回帰分析により床反力及び床反力指標を算出するステップと、
前記走行動作の評価の結果を提示するステップと
を備え、前記重回帰分析により床反力及び床反力指標を算出するステップにおいて、前記床反力及び床反力指標は、前記計測結果から算出された結果を説明変数としたときの偏回帰係数が予め算出された重回帰式を用いて算出され
、前記計測結果から算出された説明変数として用いる値は、少なくとも、3軸加速度の波形データの特徴量、3軸角速度の波形データの特徴量のうちのいずれかであることを特徴とする床反力指標推定方法。
【請求項12】
前記3軸加速度の波形データの特徴量は、前記3軸加速度の波形データの、少なくとも、最大値、最小値、平均値、極大値、極小値、極大/極小値の数のいずれかを含み、前記3軸角速度の波形データの特徴量は、前記3軸加速度の波形データの、少なくとも、最大値、最小値、平均値、極大値、極小値、極大/極小値の数のいずれかを含むことを特徴とする請求項
11に記載の床反力指標推定方法。
【請求項13】
前記説明変数として用いる値は、少なくとも、ステップ速度(ケイデンス、Cadence)、歩行又は走行の速度(スピード、Speed)、足が着地する際の角度(ストライクアングル、Strike angle)、足の側部の速度(Velocity)、歩行又は走行時の足の高さ(Foot height)、足の位置(Distance)のうちのいずれか一つを含むことを特徴とする請求項
11又は
12に記載の床反力指標推定方法。
【請求項14】
前記計測結果から算出された説明変数として用いる値は、身体的特徴量を含むことを特徴とする請求項
11乃至
13のいずれかに記載の床反力指標推定方法。
【請求項15】
前記身体的特徴量は前記ユーザの、少なくとも、身長、体重、足の長さのうちのいずれか一つを含むことを特徴とする請求項
14に記載の床反力指標推定方法。
【請求項16】
前記計測結果から算出された説明変数として用いる値は、歩行・走行条件を含むことを特徴とする請求項
11乃至
15のいずれかに記載の床反力指標推定方法。
【請求項17】
前記歩行・走行条件は、少なくとも、地面の傾斜角度、地面の素材の硬さ、地面の素材の摩擦係数、履物の素材の硬さ、履物の素材の摩擦係数のうちのいずれか一つを含むことを特徴とする請求項
16に記載の床反力指標推定方法。
【請求項18】
コンピュータに、
少なくとも、3軸加速度、3軸角速度のいずれかを検出する機能と、
前記検出された少なくとも、3軸加速度、3軸角速度のいずれかから、説明変数として用いる値を算出する機能と、
前記算出された説明変数として用いる値から重回帰分析により床反力及び床反力指標を算出する機能と、
前記算出された床反力指標と、前記床反力指標から、ユーザの歩行、走行動作を判定するための情報である判定基準情報とに基づいてユーザに歩行、走行動作の評価を行う計測結果から算出された結果から、前記計測結果から算出された結果を説明変数としたときの偏回帰係数が予め算出された重回帰式を用いて床反力及び床反力指標を算出する機能と、
前記走行動作の評価の結果を提示する機能と
を実現させ
、前記計測結果から算出された説明変数として用いる値は、少なくとも、3軸加速度の波形データの特徴量、3軸角速度の波形データの特徴量のうちのいずれかである床反力指標推定プログラム。
【請求項19】
前記3軸加速度の波形データの特徴量は、前記3軸加速度の波形データの、少なくとも、最大値、最小値、平均値、極大値、極小値、極大/極小値の数のいずれかを含み、前記3軸角速度の波形データの特徴量は、前記3軸加速度の波形データの、少なくとも、最大値、最小値、平均値、極大値、極小値、極大/極小値の数のいずれかを含むことを特徴とする請求項
18に記載の床反力指標推定プログラム。
【請求項20】
前記説明変数として用いる値は、少なくとも、ステップ速度(ケイデンス、Cadence)、歩行又は走行の速度(スピード、Speed)、足が着地する際の角度(ストライクアングル、Strike angle)、足の側部の速度(Velocity)、歩行又は走行時の足の高さ(Foot height)、足の位置(Distance)のうちのいずれか一つを含むことを特徴とする請求項
18又は
19に記載の床反力指標推定プログラム。
【請求項21】
前記計測結果から算出された説明変数として用いる値は、身体的特徴量を含むことを特徴とする請求項
18乃至
20のいずれかに記載の床反力指標推定プログラム。
【請求項22】
前記身体的特徴量は前記ユーザの、少なくとも、身長、体重、足の長さのうちのいずれか一つを含むことを特徴とする請求項
21に記載の床反力指標推定プログラム。
【請求項23】
前記計測結果から算出された説明変数として用いる値は、歩行・走行条件を含むことを特徴とする請求項
18乃至
22のいずれかに記載の床反力指標推定プログラム。
【請求項24】
前記歩行・走行条件は、少なくとも、地面の傾斜角度、地面の素材の硬さ、地面の素材の摩擦係数、履物の素材の硬さ、履物の素材の摩擦係数のうちのいずれか一つを含むことを特徴とする請求項
23に記載の床反力指標推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床反力指標推定システム、床反力指標推定方法及び床反力指標推定プログラムに関し、特に、ウェアラブルセンサを利用した床反力指標推定システム、床反力指標推定方法及び床反力指標推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
歩行や走行時に、足が床に着地したときに足が床から受ける力である床反力から算出される床反力指標は、歩行や走行時における障害のリスクやパフォーマンスを表す指標であるとされる(例えば、非特許文献1参照)。床反力指標としては、例えば、負荷速度(Loading rate)、蹴り出し力(Kicking force)、制動力積分値(Braking Impulse)、加速力積分値(Accerelation Impulse)が挙げられる。
【0003】
床反力指標は、歩行や走行時の、床反力の床面に対する鉛直成分及び水平成分の、1歩、即ち、歩行や走行時の、足が着地してから床を離れるまでの間の経時変化から算出される。負荷速度は、床反力鉛直成分における、最初の立ち上がりの角度から算出される値であり、足を床に着地させた際にどの程度急激に足に負担がかかるかの指標である。蹴り出し力は、床反力鉛直成分における、ピークの値であり、蹴り出しによって発生する力を示す。制動力積分値は、床反力の後方成分の積分値であり、歩行、走行時の足によるブレーキ成分である。加速力積分値は、床反力の前方成分の積分値であり、歩行、走行時の足による加速成分である。
【0004】
床反力は、板状やシート状の床反力計を床に設置し、床反力計の上を歩行や走行することによって計測される。床反力計を用いた床反力の計測は、床反力計自体が高価であり、計測環境が床反力計を設置した場所に限定されるため、近年では、安価かつ小型のウェアラブルセンサ(例えば、特許文献1及び2参照)を利用した床反力指標の算出方法が開発されつつある。
【0005】
特許文献2において、床反力は、履物の裏側の床に接触する部分に取り付けられた圧力センサに負荷された力に応じた出力値を基に算出されている。しかしながら、この方法によれば、センサを取り付ける位置が制限され、更に、足の裏に取り付けられたセンサによって自然な歩行や走行の動作が妨げられかねない。これに対して、特許文献1においては、ウェアラブルセンサとしてモーションセンサが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-143412号公報
【文献】特開2008-298486号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】A.A.Zadpoor,et al.,Clinical Biomechanics 26,pp.23-28(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
モーションセンサから得られる加速度及び角速度から床反力を算出する手法としては、深層学習を用いた手法が主流であるが、この手法は、入力変数が多く比較的計算コストが高いため、計算リソースが制限された、ウェアラブルセンサに内蔵された計算装置への搭載は容易ではない。
【0009】
上記問題点を鑑み、本発明は、ウェアラブルセンサから得られるデータをもとに、低計算コストで床反力指標を算出する床反力指標推定システム、床反力指標推定方法及び床反力指標推定プログラムを提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、履物と、履物と無線回線を介して接続された外部装置とを含む床反力指標推定システムであって、履物は、少なくとも、3軸加速度、
3軸角速度のうちのいずれかを計測するウェアラブルセンサと、予め身体的特徴量が記憶された第1記憶部と、ウェアラブルセンサによる計測結果から説明変数として用いる値を算出し、ウェアラブルセンサによる計測結果から算出された説明変数として用いる値から重回帰分析により床反力及び床反力指標を算出する計算部とを備え、外部装置は、床反力指標から、ユーザの歩行、走行動作を判定するための情報である判定基準情報が記憶された第2記憶部と、履物から受信したウェアラブルセンサによる計測結果及び算出された床反力指標と、判定基準情報とに基づいてユーザに歩行、走行動作の評価を行う制御部と、走行動作の評価の結果を提示する提示部とを備え、重回帰分析においては、計測結果から算出された結果を説明変数としたときの偏回帰係数が予め算出された重回帰式を用いて目的変数である床反力を算出することを要旨とする。
【0011】
本発明の第1の態様において、計測結果から算出された説明変数として用いる値は、少なくとも、3軸加速度の波形データの特徴量、3軸角速度の波形データの特徴量のうちのいずれかであってよい。
【0012】
本発明の第1の態様において、3軸加速度の波形データの特徴量は、3軸加速度の波形データの、少なくとも、最大値、最小値、平均値、極大値、極小値、極大/極小値の数のいずれかを含み、3軸角速度の波形データの特徴量は、3軸加速度の波形データの、少なくとも、最大値、最小値、平均値、極大値、極小値、極大/極小値の数のいずれかを含んでよい。
【0013】
本発明の第1の態様において、計測結果から算出された説明変数として用いる値は、少なくとも、ステップ速度(ケイデンス、Cadence)、歩行又は走行の速度(スピード、Speed)、足が着地する際の角度(ストライクアングル、Strike angle)、足の速度(Velocity)、歩行又は走行時の足の高さ(Foot height)、足の位置(Distance)のうちのいずれか一つを含んでもよい。
【0014】
本発明の第1の態様において、計測結果から算出された説明変数として用いる値は、身体的特徴量を含んでよい。
【0015】
本発明の第1の態様において、身体的特徴量はユーザの、少なくとも、身長、体重、足の長さのうちのいずれか一つを含んでもよい。
【0016】
本発明の第1の態様において、計測結果から算出された説明変数として用いる値は、歩行・走行条件を含んでよい。
【0017】
本発明の第1の態様において、歩行・走行条件は、少なくとも、地面の傾斜角度、地面の素材の硬さ、地面の素材の摩擦係数、履物の素材の硬さ、履物の素材の摩擦係数のうちのいずれか一つを含んでよい。
【0018】
本発明の第1の態様において、外部装置は入力部をさらに備え、身体的特徴量は入力部から入力され、外部装置から履物に送信されてもよい。
【0019】
本発明の第1の態様において、外部装置は入力部をさらに備え、歩行・走行条件は入力部から入力され、外部装置から履物に送信されてもよい。
【0020】
本発明の第1の態様において、第2記憶部は、床反力指標、計測結果、及び床反力指標と計測結果のそれぞれの経時変化を記憶してもよい。
【0021】
本発明の第2の態様は、床反力指標推定方法であって、少なくとも、3軸加速度、3軸角速度のいずれかを検出するステップと、検出された少なくとも、3軸加速度、3軸角速度のいずれかから、説明変数として用いる値を算出するステップと、算出された説明変数として用いる値から重回帰分析により床反力及び床反力指標を算出するステップと、算出された床反力指標と、床反力指標から、ユーザの歩行、走行動作を判定するための情報である判定基準情報とに基づいてユーザに歩行、走行動作の評価を行う計測結果から算出された結果から重回帰分析により床反力及び床反力指標を算出するステップと、走行動作の評価の結果を提示するステップとを備え、重回帰分析により床反力及び床反力指標を算出するステップにおいて、床反力及び床反力指標は、計測結果から算出された結果を説明変数としたときの偏回帰係数が予め算出された重回帰式を用いて算出されたことを要旨とする。
【0022】
本発明の第2の態様において、計測結果から算出された説明変数として用いる値は、少なくとも、3軸加速度の波形データの特徴量、3軸角速度の波形データの特徴量のうちのいずれかであってよい。
【0023】
本発明の第2の態様において、3軸加速度の波形データの特徴量は、前記3軸加速度の波形データの、少なくとも、最大値、最小値、平均値、極大値、極小値、極大/極小値の数のいずれかを含み、前記3軸角速度の波形データの特徴量は、前記3軸加速度の波形データの、少なくとも、最大値、最小値、平均値、極大値、極小値、極大/極小値の数のいずれかを含んでよい。
【0024】
本発明の第2の態様において、計測結果から算出された説明変数として用いる値は、少なくとも、ステップ速度(ケイデンス、Cadence)、歩行又は走行の速度(スピード、Speed)、足が着地する際の角度(ストライクアングル、Strike angle)、足の速度(Velocity)、歩行又は走行時の足の高さ(Foot height)、足の位置(Distance)のうちのいずれか一つを含んでもよい。
【0025】
本発明の第2の態様において、計測結果から算出された説明変数として用いる値は、身体的特徴量を含んでよい。
【0026】
本発明の第2の態様において、身体的特徴量はユーザの、少なくとも、身長、体重、足の長さのうちのいずれか一つを含んでもよい。
【0027】
本発明の第2の態様において、計測結果から算出された説明変数として用いる値は、歩行・走行条件を含んでよい。
【0028】
本発明の第2の態様において、歩行・走行条件は、少なくとも、地面の傾斜角度、地面の素材の硬さ、地面の素材の摩擦係数、履物の素材の硬さ、履物の素材の摩擦係数のうちのいずれか一つを含んでよい。
【0029】
本発明の第3の態様は、床反力指標推定プログラムであって、コンピュータに、少なくとも、3軸加速度、3軸角速度のいずれかを検出する機能と、検出された少なくとも、3軸加速度、3軸角速度のいずれかから、説明変数として用いる値を算出する機能と、算出された説明変数として用いる値から重回帰分析により床反力及び床反力指標を算出する機能と、算出された床反力指標と、床反力指標から、ユーザの歩行、走行動作を判定するための情報である判定基準情報とに基づいてユーザに歩行、走行動作の評価を行う計測結果から算出された結果から、計測結果から算出された結果、計測結果の波形データの特徴量及び身体的特徴量を説明変数としたときの偏回帰係数が予め算出された重回帰式を用いて床反力及び床反力指標を算出する機能と、走行動作の評価の結果を提示する機能とを実現させることを要旨とする。
【0030】
本発明の第3の態様において、計測結果から算出された説明変数として用いる値は、少なくとも、3軸加速度の波形データの特徴量、3軸角速度の波形データの特徴量のうちのいずれかであってよい。
【0031】
本発明の第3の態様において、3軸加速度の波形データの特徴量は、前記3軸加速度の波形データの、少なくとも、最大値、最小値、平均値、極大値、極小値、極大/極小値の数のいずれかを含み、前記3軸角速度の波形データの特徴量は、前記3軸加速度の波形データの、少なくとも、最大値、最小値、平均値、極大値、極小値、極大/極小値の数のいずれかを含んでよい。
【0032】
本発明の第3の態様において、計測結果から算出された説明変数として用いる値は、少なくとも、ステップ速度(ケイデンス、Cadence)、歩行又は走行の速度(スピード、Speed)、足が着地する際の角度(ストライクアングル、Strike angle)、足の速度(Velocity)、歩行又は走行時の足の高さ(Foot height)、足の位置(Distance)のうちのいずれか一つを含んでもよい。
【0033】
本発明の第3の態様において、計測結果から算出された説明変数として用いる値は、身体的特徴量を含んでよい。
【0034】
本発明の第3の態様において、身体的特徴量はユーザの、少なくとも、身長、体重、足の長さのうちのいずれか一つを含んでもよい。
【0035】
本発明の第3の態様において、計測結果から算出された説明変数として用いる値は、歩行・走行条件を含んでよい。
【0036】
本発明の第3の態様において、歩行・走行条件は、少なくとも、地面の傾斜角度、地面の素材の硬さ、地面の素材の摩擦係数、履物の素材の硬さ、履物の素材の摩擦係数のうちのいずれか一つを含んでよい。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、ウェアラブルセンサから得られるデータをもとに、低計算コストで床反力指標を算出する床反力指標推定システム、床反力指標推定方法及び床反力指標推定プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明に係る実施形態に係る床反力指標推定システムの概略を示す図である。
【
図2】実施形態に係るモジュールの構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る外部装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】負荷速度の実測値と、推定値とを示すグラフである。
【
図5】蹴り出し力の実測値と、推定値とを示すグラフである。
【
図6】制動力積分値の実測値と、推定値とを示すグラフである。
【
図7】加速力積分値の実測値と、推定値とを示すグラフである。
【
図8】実施形態に係る床反力指標推定システムの動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。実施形態に係る図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。又、図面相互間においても互いの関係が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0040】
又、実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、各構成要素の構成等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0041】
(実施形態)
本実施形態に係る床反力指標推定システムを
図1~
図3を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る床反力指標推定システム10は、履物100と、外部装置200とを含む。履物100には、モジュール110と、センサ部120とが取り付けられている。モジュール110と、センサ部120とは、バスを介して互いに接続されている。
【0042】
履物100は、ユーザが足に装着するものであり、例えば、ランニングシューズ、スニーカー、革靴、サンダル等である。
図1において、モジュール110は履物100の上部に、センサ部120は履物100の底部に設置されているが、センサ部120によって3軸加速度及び/又は3軸角速度の計測が可能であり、歩行及び走行の妨げとならなければ、モジュール110及びセンサ部120の履物100上の取り付け位置はこれらに限定されない。ここで、3軸加速度及び/又は3軸角速度とは、3軸方向、即ち、例えば水平面内において互いに直角な2つの軸と、その2つの軸に対して垂直な軸の方向の加速度及び3軸それぞれの周りの回転角速度である。
【0043】
センサ部120は、ユーザが履物100を履いて、歩行及び走行することによって履物100の動きを検出するセンサである。本実施形態においては、センサ部120は、3軸加速度及び/又は3軸角速度を検出するセンサである。センサ部120は、例えば、3軸加速度を検出する加速度センサ及び3軸角速度を検出する角速度センサを有してもよい。
【0044】
図2に示すように、モジュール110は、電源部111と、第1制御部112と、第1通信部113と、計算部114と、第1記憶部115とを含む。
【0045】
電源部111は、モジュール110と、センサ部120とに電力を供給する。
【0046】
第1制御部112は、モジュール110と、センサ部120とを制御するプロセッサである。第1制御部112は、第1記憶部115に記憶されている制御プログラムを実行することによってモジュール110と、センサ部120とを制御する。
【0047】
第1通信部113は、外部装置200と通信を行う通信インターフェースである。第1通信部113は、第1受信部116と、第1送信部117とを含む。第1通信部113は、外部装置200と無線通信により通信を行う。第1通信部113は、外部装置200と通信できれば、いかなる通信規格によって通信を行ってもよい。
【0048】
第1受信部116は、外部装置200から、センサ部120による計測の開始、終了、計算部114において重回帰分析による床反力指標の算出を行う際に用いられるユーザの身体的特徴量及び/又は歩行・走行条件に係る情報を受け付け、ユーザの身体的特徴量及び/又は歩行・走行条件を第1記憶部115に記憶させる。ユーザの身体的特徴量は、例えば、身長、体重、足の長さ、足の幅であるが、これら以外の身体的特徴量を含んでも構わない。本実施形態においては、ユーザの身体的特徴量は、少なくとも、身長、体重、足の長さのうちのいずれか一つを含む。歩行・走行条件は、例えば、地面の傾斜角度、地面の素材の硬さ及び摩擦係数、靴の素材の硬さ及び摩擦係数であるが、これら以外の歩行・走行条件を含んでも構わない。
【0049】
第1送信部117は、外部装置200へ、センサ部120による計測の状態、重回帰分析によって算出された床反力指標に係る情報、センサ部120による計測結果から算出された結果を送信する。センサ部120による計測結果から算出された結果とは、例えば、ユーザのステップ速度(ケイデンス、Cadence)、歩行又は走行の速度(スピード、Speed)、足が着地する際の角度(ストライクアングル、Strike angle)、足の速度(Velocity)、歩行又は走行時の足の高さ(Foot height)、足の位置(Distance)といった指標であるが、これら以外の指標を含んでも構わない。
【0050】
センサ部120による計測結果から算出された結果には、センサ部120が計測した3軸加速度を用いて得られる結果、3軸角速度を用いて得られる結果、3軸加速度と3軸角速度を用いて得られる結果が含まれる。本実施形態において、センサ部120による計測結果から算出された結果は、少なくとも、ユーザのステップ速度(ケイデンス、Cadence)、歩行又は走行の速度(スピード、Speed)、足が着地する際の角度(ストライクアングル、Strike angle)、足の速度(Velocity)、歩行又は走行時の足の高さ(Foot height)、足の位置(Distance)のうちのいずれか一つを含む。
【0051】
計算部114は、センサ部120によって計測された3軸加速度及び/又は3軸角速度から、説明変数として用いる値を算出する。説明変数として用いる値は、3軸加速度及び/又は3軸角速度の波形データの特徴量を含む。ここで、計算部114において算出される、3軸加速度及び/又は3軸角速度の波形データの特徴量は、例えば、3軸加速度及び/又は3軸角速度の最大値、最小値、平均値、極大値、極小値、極大/極小値の数であるが、これら以外の特徴量を含んでも構わない。
【0052】
説明変数として用いる値は、さらに、少なくとも、ケイデンス、スピード、ストライクアングル、Velocity、Foot height、Distanceのうちのいずれか一つを含んでもよい。説明変数として用いる値は、さらに、ユーザの身体的特徴量を含んでもよい。説明変数として用いる値は、さらに、歩行・走行条件を含んでもよい。
【0053】
説明変数として用いる値としてどの値を使用するかは、後述するように、計算部114において、第1記憶部115に記憶されている重回帰式、及び説明変数として用いる値を用いて、床反力、及び床反力指標を算出する際、算出を所望する床反力指標によって異なる。又、算出する床反力指標が異なると、その床反力指標の推定に用いる説明変数に加えて、重回帰式、及び重回帰式の偏回帰係数も異なる。即ち、算出を所望する床反力指標に応じて、説明変数として用いる値として使用される値、重回帰式、及び重回帰式の偏回帰係数が選択される。第1記憶部115に、算出する床反力指標と、それに対応する説明変数、重回帰式、重回帰式の偏回帰係数の、対応関係を示す、例えばテーブル等を記憶させておき、このテーブルに基づき、算出を所望する床反力指標に応じて、説明変数として用いる値として使用される値、重回帰式、及び重回帰式の偏回帰係数が選択されてもよい。
【0054】
計算部114において算出される、説明変数として用いる値は、本実施形態において、少なくとも、ケイデンス、スピード、ストライクアングル、Velocity、Foot height、Distanceのうちのいずれか一つを含む。本実施形態において、3軸加速度及び/又は3軸角速度の波形データの特徴量は、3軸加速度の、少なくとも、最大値および最小値のうちのいずれか一つを含む。3軸加速度及び3軸角速度の波形データの特徴量は、例えば、3軸角速度の最大値や最小値等をさらに含んでもよい。
【0055】
さらに、計算部114は、第1記憶部115に記憶されている重回帰式、及び説明変数として用いる値を用いて、床反力、及び床反力指標を算出する。この際、上述したように、算出する床反力指標と、それに対応する説明変数、重回帰式、重回帰式の偏回帰係数の対応関係を示すテーブル等を第1記憶部115に記憶させておき、このテーブルに基づき、算出を所望する床反力指標に応じて、第1記憶部115に記憶されている重回帰式、及び説明変数として用いる値を選択してもよい。計算部114において算出される床反力指標は、本実施形態において、負荷速度(Loading rate)、蹴り出し力(Kicking force)、制動力積分値(Braking Impulse)、加速力積分値(Accerelation Impulse)であるが、計算部114において算出される床反力指標は、床反力から算出可能な指標であれば、他の床反力指標を含んでもよい。
【0056】
外部装置200は、第1受信部116に、センサ部120による計測の開始、終了を指示する情報、及び計算部114において重回帰分析を行うための身体的特徴量と歩行・走行条件を送信し、第1送信部117から、センサ部120による計測の開始、終了、及び床反力指標を受信することが出来る端末であればどのような形態であってもよく、例えば、パーソナルコンピュータ、モバイル端末等であってよい。ユーザが履物100を履き、センサ部120による計測を行いながらリアルタイムで歩行、走行動作の評価を確認するためには、外部装置200は、モバイル端末等の携帯可能な端末が望ましい。
【0057】
外部装置200は、例えば、腕時計やイヤフォンのように、体の一部に取り付け可能な形状であってもよい。外部装置200が、例えば、腕時計のような形状であれば、歩行、走行の運動を妨げることなく、歩行、走行動作の評価を腕時計形状の外部装置200の表示部において、確認することが出来る。外部装置200が、例えば、イヤフォンであれば、歩行、走行動作の評価を音声で確認することが出来る。
【0058】
図3に示すように、外部装置200は、第2制御部210と、第2通信部220と、提示部230と、第2記憶部240と、入力部250とを含む。
【0059】
第2制御部210は、外部装置200の各要素を制御するプロセッサである。第2制御部210は、第2記憶部240に記憶されている制御プログラムを実行することによって外部装置200の各要素を制御する。第2制御部210は、受信した床反力指標と、第2記憶部240に記憶されている判定基準情報とに基づいて、履物100を履いて歩行又は走行しているユーザの歩行、走行動作の評価を行い、評価結果を提示部230に送信する。
【0060】
判定基準情報とは、床反力指標から、ユーザの歩行、走行動作を判定するための情報である。負荷速度(Loading rate)は、足を床に着地させた際にどの程度急激に足に負担がかかるかの指標であるが、例えば、判定基準情報として負荷速度の閾値を設定しておき、負荷速度が閾値より大きければ、足に負荷がかかりすぎているとユーザに警告を知らせてもよい。制動力積分値(Braking Impulse)は歩行、走行時の足によるブレーキ成分であるが、制動力積分値の閾値を設定しておき、制動力積分値が閾値より大きいと非効率的な走行を行っていると判断し、ユーザに知らせてもよい。同様に、加速力積分値(Accerelation Impulse)は歩行、走行時の足による加速成分であるが、加速力積分値の閾値を設定しておき、加速力積分値が閾値より大きければ大きな推進力を獲得できていると判断し、ユーザに知らせてもよい。
【0061】
第2通信部220は、履物100と通信を行う通信インターフェースである。第2通信部220は、第2受信部221と、第2送信部222とを含む。第2通信部220は、履物100と無線通信により通信を行う。第2通信部220は、履物100と通信できれば、いかなる通信規格によって通信を行ってもよい。
【0062】
提示部230は、受信した床反力指標を提示する。提示部230は、床反力指標に加えて、又は床反力指標の代わりに、第2制御部210から送信された評価結果に基づいて、履物100を使用しているユーザに対して警告や評価結果を提示してもよい。提示部230は、文字や絵図、音声等によりユーザに提示することが出来る。さらに、ユーザのステップ速度(ケイデンス、Cadence)、歩行又は走行の速度(スピード、Speed)等、ユーザの歩行、走行状態を知らせる情報を提示してもよい。どの情報を提示するかを、入力部250からのユーザによる入力によって指定してもよい。
【0063】
第2記憶部240は、制御プログラム、判定基準情報、ユーザの身体的特徴量、歩行・走行条件に加えて、重回帰分析によって算出された床反力指標、センサ部120による計測によって得られた結果、即ち、例えば、ユーザのステップ速度(ケイデンス、Cadence)、歩行又は走行の速度(スピード、Speed)、足が着地する際の角度(ストライクアングル、Strike angle)、足の速度(Velocity)、歩行又は走行時の足の高さ(Foot height)、足の位置(Distance)をセンサ部120による計測の日時とともに記憶してもよい。第2制御部210は、床反力指標、計測結果の経時変化から、ユーザのトレーニングや歩行、走行訓練の効果等を判断することが出来る。
【0064】
入力部250は、ユーザからの入力を受け付ける。ユーザは、計算部114において重回帰分析による床反力指標の算出を行う際に用いられるユーザの身体的特徴量、即ち、身長、体重、足の長さに係る情報と、歩行・走行条件を入力部250から入力する。入力部250から入力されたユーザの身体的特徴量と歩行・走行条件は第2記憶部240に記憶される。
【0065】
図1には、履物100に無線通信を介して1つの外部装置200が接続されている様子が示されているが、外部装置200は複数であっても構わない。例えば、履物100に無線通信を介して外部装置としてパーソナルコンピュータ及びモバイル端末を接続させ、ユーザの身体的特徴量をパーソナルコンピュータから入力するようにすれば、モバイル端末は入力部を備えている必要がなくなり、モバイル端末をさらに小型化することが可能となる。
【0066】
また、第2記憶部240に記憶させた床反力指標、計測結果の経時変化のデータは、第2記憶部240ではなく、例えば、履物100に無線通信を介して外部装置としてパーソナルコンピュータ及びモバイル端末を接続させ、パーソナルコンピュータが有する記憶装置に記憶させても構わない。
【0067】
次に、計算部114において床反力を算出するために用いた重回帰式を求める方法を説明する。
【0068】
重回帰式は、一般的に、目的変数を1又は複数の説明変数の関数で表した式であり、1又は複数の説明変数の線形関数や二次以上の多項式等で表される。本実施形態においては、重回帰式として、次の式を用いる。
【0069】
【0070】
ここで、Yiは目的変数であって本実施形態では床反力、β0及びβnは偏回帰係数、xinは説明変数、Eiは誤差項である(ただし、nは1~pの整数)。説明変数は、本実施形態では、3軸加速度及び3軸角速度の波形データの特徴量、センサ部120によって計測された3軸加速度及び3軸角速度から算出された結果、被験者の身体的特徴量、及び歩行・走行条件である。3軸加速度及び3軸角速度の波形データの特徴量として、本実施形態では、少なくとも、加速度波形データの最大値、加速度波形データの最小値のうちのいずれか一つを使用する。3軸加速度及び3軸角速度から算出された結果として、本実施形態では、少なくとも、ステップ速度(ケイデンス、Cadence)、歩行又は走行の速度(スピード、Speed)、足が着地する際の角度(ストライクアングル、Strike angle)、足の速度(Velocity)、歩行又は走行時の足の高さ(Foot height)、足の位置(Distance)のうちのいずれか一つを使用する。被験者の身体的特徴量として、本実施形態では、被検者の、少なくとも、身長、体重、足の長さのうちのいずれか一つを使用する。歩行・走行条件として、本実施形態では、少なくとも、地面の傾斜角度、地面の素材の硬さ及び摩擦係数、靴の素材の硬さ及び摩擦係数のうちのいずれか一つを使用する。
【0071】
上式の偏回帰係数を求めるために、床反力の測定と、センサ部120による3軸加速度及び3軸角速度の計測とを行った。具体的には、被検者によって、履物100を履いた状態で床反力計の上において歩行、及び走行を行い、床反力の測定と、センサ部120による3軸加速度及び3軸角速度の計測とを同時に行った。センサ部120による計測によって得られた3軸加速度及び3軸角速度から、説明変数として用いる値、即ち、少なくとも、ケイデンス、スピード、ストライクアングル、Velocity、Foot height、Distanceのうちのいずれか一つと、3軸加速度及び3軸角速度の波形データの特徴量、即ち、少なくとも、加速度波形データの最大値、加速度波形データの最小値のうちのいずれか一つを算出したのち、床反力計による計測によって得られた床反力の値と、算出した、少なくとも、ケイデンス、スピード、ストライクアングル、Velocity、Foot height、Distanceのうちのいずれか一つ、少なくとも、加速度波形データの最大値、加速度波形データの最小値のうちのいずれか一つと、被検者の、少なくとも、身長、体重、足の長さのうちのいずれか一つとから、最小二乗法により偏回帰係数を算出することによって重回帰式を求めた。
【0072】
図4~7に、床反力から算出した床反力指標である、負荷速度(Loading rate)、蹴り出し力(Kicking force)、制動力積分値(Braking Impulse)、加速力積分値(Accerelation Impulse)の、床反力の実測値と、重回帰式から求めた床反力の推定値からそれぞれ算出した値を示す。
図4に負荷速度を、
図5に蹴り出し力を、
図6に制動力積分値を、
図7に加速力積分値を示す。
図4~7に示す値は、20名の被験者を対象に測定を行った結果を示しており、それぞれのデータの点の濃淡は、同一の被験者のデータは同一の濃淡であることを示している。
【0073】
図4~7に示す値から算出した決定係数R
2及び重相関係数の平均値R
aveを以下の表に示す。
【0074】
【0075】
決定係数R2及び重相関係数の平均値Raveは、それぞれ、0から1までの間の値を取り、1に近い値であるほど実測値と推定値の値が互いに近いことを示している。上記の表に示す決定係数R2及び重相関係数の平均値Raveは、いずれも、約0.7以上の値を取っており、本実施形態において用いた重回帰式は妥当なものであると判断される。
【0076】
次に、ユーザが履物100を履いた状態でセンサ部120による計測を行い、ユーザの歩行や走行を評価する際の床反力指標推定システム10の動作の一例を
図8を参照して説明する。なお、重回帰式中の偏回帰係数は既に決定されており、ユーザは履物100を履いた状態であり、電源部111はオン状態であるものとする。ユーザは歩行、又は走行状態にあるか、若しくはセンサ部120による計測の開始後、ユーザは歩行、又は走行を開始する。
【0077】
ステップS801において、入力部250が、ユーザからの身体的特徴量及び歩行・走行条件の入力を受け付け、身体的特徴量及び歩行・走行条件が、第2通信部220から第1受信部116へ送信される。
【0078】
ステップS802において、第1受信部116が受信した身体的特徴量及び歩行・走行条件が第1記憶部115に記憶され、計算部114において重回帰分析による床反力指標の算出を行う際に用いられる重回帰式が決定される。
【0079】
ステップS803において、入力部250が、ユーザからセンサ部120による計測の開始の入力を受け付け、計測の開始の入力信号が、第2通信部220から第1受信部116へ送信される。
【0080】
ステップS804において、センサ部120による計測が開始される。
【0081】
ステップS805において、計算部114において、センサ部120によって計測された3軸加速度及び3軸角速度から説明変数として用いる値、即ち、少なくとも、ステップ速度(ケイデンス、Cadence)、歩行又は走行の速度(スピード、Speed)、足が着地する際の角度(ストライクアングル、Strike angle)、足の側部の速度(Velocity)、歩行又は走行時の足の高さ(Foot height)、足の位置(Distance)のうちいずれかの一つと、3軸加速度及び3軸角速度の波形データの特徴量、即ち、少なくとも、加速度波形データの最大値、加速度波形データの最小値のうちのいずれか一つが算出される。
【0082】
ステップS806において、計算部114において、ステップS805において算出された少なくとも、ケイデンス、スピード、ストライクアングル、Velocity、Foot height、Distanceのうちのいずれか一つと、センサ部120によって計測された3軸加速度の波形データの、少なくとも、最大値と最小値のうちのいずれか一つと、少なくとも、身長、体重、足の長さのうちのいずれか一つと、少なくとも、地面の傾斜角度、地面の素材の硬さ及び摩擦係数、靴の素材の硬さ及び摩擦係数のうちのいずれか一つから、床反力が算出される。
【0083】
ステップS807において、床反力指標(負荷速度、蹴り出し力、制動力積分値、加速力積分値)が算出される。
【0084】
ステップS808において、算出された床反力指標、及びセンサ部120による計測によって得られた結果が第1送信部117から第2通信部220へ送信され、第2記憶部240に記憶される。
【0085】
ステップS809において、第2制御部210が、床反力指標と、第2記憶部240に記憶されている判定基準情報とに基づいて、ユーザの歩行、走行動作の評価を行い、評価結果を提示部230に送信する。
【0086】
ステップS810において、入力部250が、ユーザからセンサ部120による計測の終了の入力を受け付け、センサ部120による計測が終了する。
【0087】
以上説明したように、本発明は、安価なモーションセンサから得られるデータを用いて、従来床反力計を用いて取得される床反力指標を推定することを可能にした。このため、従来の計測方法で困難であった計測環境を選ばない床反力指標の算出が可能となった。加えて、機械学習を用いた手法等の従来の推定方法と比較すると計算コストを抑えた手法であるため、計算リソースが限られたセンサ内蔵型のマイクロコンピュータへの搭載が実現しやすく、汎用性が高い。また計算コストが低いことにより、リアルタイムでの処理を容易にした。歩行、及び走行時における情報のリアルタイムなフィードバックは当事者の動作の変容に効果的であり、例えば、障害の改善・予防、パフォーマンスの向上を求めるランナーやリハビリテーションに関わる患者および指導者にとって有益な技術となり得る。
【0088】
以上、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0089】
10 床反力指標推定システム
100 履物
110 モジュール
111 電源部
112 第1制御部
113 第1通信部
114 計算部
115 記憶部
116 第1受信部
117 第1送信部
120 センサ部
200 外部装置
210 第2制御部
220 第2通信部
221 第2受信部
222 第2送信部
230 提示部
240 第2記憶部
250 入力部
【要約】
【課題】低計算コストで床反力指標を算出する床反力指標推定システム、床反力指標推定方法及び床反力指標推定プログラムを提供する。
【解決手段】床反力指標推定システムであって、履物は、3軸加速度及び/又は3軸角速度を計測するウェアラブルセンサと、計測結果から算出された説明変数として用いる値から重回帰分析により床反力指標を算出する計算部とを備え、外部装置は、履物から受信したウェラブルセンサによる計測結果及び算出された床反力指標と、判定基準情報とに基づいてユーザに歩行、走行動作の評価を行う制御部と、走行動作の評価の結果を提示する提示部とを備え、重回帰分析においては、計測結果から算出された結果を説明変数としたときの偏回帰係数が予め算出された重回帰式を用いて目的変数である床反力を算出する。
【選択図】
図8