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特許7008615保持装置及びそれが備える搭載台の固定方法
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  • 特許-保持装置及びそれが備える搭載台の固定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】保持装置及びそれが備える搭載台の固定方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
G01M17/007 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018232931
(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公開番号】P2020094908
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(72)【発明者】
【氏名】松原 由明
(72)【発明者】
【氏名】古川 和樹
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-149087(JP,A)
【文献】特開2005-003591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00-17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両又はその一部である供試体の試験に供される車両試験装置を前記供試体の運転席又は助手席上で保持する保持装置であって、
前記運転席又は助手席に設置され、前記車両試験装置が搭載される搭載台と、
前記供試体の後部座席に設けられたISOFIXアンカと接続され、前記搭載台を前記運転席又は助手席に固定する固定機構とを備えを備えた保持装置。
【請求項2】
前記固定機構は長さ調節可能な伸縮機構を備えており、
前記伸縮機構の一端が前記搭載台に接続されており、他端が前記ISOFIXアンカに接続可能に構成されている請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
前記搭載台が、前記運転席又は助手席の着座面に接触する底面と、前記運転席又は助手席の背もたれ面に接触する背面とを備え、
前記底面及び背面はいずれも平面状を成し、それぞれ前記着座面及び前記背もたれ面に面接触する請求項1又は2に記載の保持装置。
【請求項4】
前記搭載台が、前記底面と前記背面とを連結する連結部を更に備え、
前記連結部は、前記伸縮機構を介して前記ISOFIXアンカに固定された際、前記搭載台の底面が前記運転席又は助手席の着座面に押圧され、かつ前記搭載台の背面が前記運転席又は助手席の背もたれ面に押圧される、請求項2を引用する請求項3に記載の保持装置。
【請求項5】
前記搭載台を前記運転席又は助手席上にセットした状態で、前記伸縮機構の一端が接続される前記連結部が、前記運転席又は助手席の背もたれ部の両脇に設けられたサイドサポート部よりも前方に位置する請求項4に記載の保持装置。
【請求項6】
前記車両試験装置が、前記供試体を自動運転する自動運転装置、又は前記供試体から排出される排ガスを分析する排ガス分析装置である、請求項1~5のいずれかに記載の保持装置。
【請求項7】
車両又はその一部である供試体の試験に供される車両試験装置を前記供試体の座席上で保持する保持装置であって、
前記車両試験装置が搭載される搭載台と、
前記搭載台を前記座席に固定する固定機構と
を備え、
前記搭載台が、前記座席の着座面に接触する底面を有する搭載部と、前記座席の背もたれ面に接触する背面を形成する板状部材を有する背中部と、前記搭載部と前記背中部とを連結する連結部とを備え、
前記固定機構が、前記連結部を前記座席の後方斜め下向きに引っ張ることにより、前記搭載部の底面を前記着座面に押圧し、かつ前記板状部材の背面を前記背もたれ面に押圧して、前記搭載台を前記座席に固定する保持装置。
【請求項8】
車両又はその一部である供試体の試験に供される車両試験装置が搭載される搭載台を前記供試体の運転席又は助手席に固定する方法であって、
前記供試体の後部座席に設けられたISOFIXアンカを用いて前記搭載台を前記運転席又は助手席に固定する、搭載台の固定方法。
【請求項9】
車両又はその一部である供試体の試験に供される車両試験装置が搭載され、前記供試体の座席の着座面に接触する底面を有する搭載部と、前記座席の背もたれ面に接触する背面を形成する板状部材を有する背中部と、前記搭載部と前記背中部とを連結する連結部とを備える搭載台を前記座席に固定する方法であって、
前記連結部を前記座席の後方斜め下向きに引っ張ることで、前記搭載部の底面を前記着座面に押圧し、かつ前記板状部材の背面を前記背もたれ面に押圧して、前記搭載台を前記座席に固定する搭載台の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の試験に供される車両試験装置を前記車両の座席上で保持する保持装置、及びそれが備える搭載台の固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャシダイナモメータを用いて車両の性能テストを行う場合、自動運転用ロボット等の車両試験装置が運転席に搭載され、これにより車両の運転操作が行われることがある。この場合、クッション性を有する運転席上で車両試験装置の位置や姿勢を安定させるため、搭載台を運転席に設置して固定し、この搭載台上に車両試験装置を搭載して保持するようにしている。
【0003】
このような搭載台を運転席に固定する方法として、例えば特許文献1に開示されるように、長さ調節が可能なベルトの一端を搭載台に接続するとともに、他端を運転席下に設けられたバー等の車両部品に接続し、この状態でベルトを締めることにより搭載台を下方向に引っ張って運転席の着座面に密着させて固定する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-149087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の固定方法は、搭載台を運転席の着座面に対して密着させて上下方向に固定できるものの、座席の前後方向に対して確りと固定されないため、車両試験中に自動運転用ロボットのペダル踏み込み操作等により搭載台の位置が前後にズレたり傾いたりする恐れがある。また運転席下のバー等の車両部品は、大きな負荷が加わることが想定されておらず、ベルトを強く締めすぎると部品が破損してしまう恐れがあるため、ベルトを強い力で締め付けることができないという問題もある。
【0006】
運転席下の車両部品への接続に加えて、ベルトにより運転席の背もたれ部にも搭載台を接続することで、搭載台を運転席に確りと固定できるようになるが、ベルトを接続する箇所が増加するため搭載台の固定作業が煩雑になり、作業時間が増大してしまう。また、運転席下の構造や運転席の背もたれ部の形状は車種毎に異なるため、試験を行う車種が変わる毎に、搭載台を確りと固定できるようにベルトを接続できる箇所を探し出す必要があり、固定作業が煩雑になり作業時間が増大する一因となっている。
【0007】
そこで本発明は、車両又はその一部である供試体の試験に供される車両試験装置が搭載される搭載台を、簡単な作業で確りと座席に固定することを主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る保持装置は、車両又はその一部である供試体の試験に供される車両試験装置を前記供試体の座席上で保持するものであって、前記車両試験装置が搭載される搭載台と、前記供試体に設けられたISOFIXアンカと接続され、前記搭載台を前記座席に固定する固定機構とを備えることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、車両等の供試体に設けられたISOFIXアンカを用いて搭載台を座席に固定することができるので、車両試験装置が搭載される搭載台を、簡単な作業で確りと座席に固定することができる。
すなわち、自動車の座席にチャイルドシートを固定する方式の国際標準規格であるISOFIXやこれに相当する規格に対応するISOFIXアンカは、車種によらず車両内におけるその設置位置が定まっているため、試験を行う供試体が変わったとしても、試験を行うオペレータは固定機構の接続位置を容易に見つけ出すことができ、簡単な作業で搭載台を座席に固定することができる。
また、ISOFIXアンカは大きな負荷が加わることが想定されている部材であるので、搭載台とISOFIXアンカとを例えばベルト等で接続し、このベルトを大きな力で締め付けたとしても破損する恐れが少ない。そのため、例えばベルト等を介して搭載台とISOFIXアンカとを接続すると、ISOFIXアンカの破損を案じることなくベルトを強い力で締め付けることができるので、搭載台を座席に確りと固定することができる。
【0010】
保持装置は、前記固定機構が長さ調節可能な伸縮機構を備えており、前記伸縮機構の一端が前記搭載台に接続されており、他端が前記ISOFIXアンカに接続可能に構成されていることが好ましい。このようなものであれば、伸縮機構の他端をISOFIXアンカに接続して、伸縮機構の長さを調節(具体的には短く)してテンションをかけることにより、搭載台をより簡単に座席に固定できる。
【0011】
前記した保持装置は、前記搭載台が備える前記座席の着座面に接触する底面と、前記座席の背もたれ面に接触する背面とがいずれも平面状を成し、それぞれ前記座席の前記着座面及び前記背もたれ面に面接触することが好ましい。このようなものであれば、底面及び背面が、着座面及び背もたれ面にそれぞれ面接触するので、その接触面積が増大し、搭載台をより確りと運転席に固定できるようになる。
【0012】
前記保持装置は、前記搭載台が、前記底面と前記背面とを連結する連結部を更に備え、前記連結部は、前記伸縮機構を介して前記ISOFIXアンカに固定された際、前記搭載台の底面が前記座席の着座面に押圧され、かつ前記搭載台の背面が前記座席の背もたれ面に押圧されるものを挙げることができる。このようなものであれば、伸縮機構をISOFIXアンカに固定することにより、搭載台の底面と背面をそれぞれ、座席の着座面と背もたれ面に一挙に押圧することができるので、搭載台を座席により簡単にかつ確りと密着させて固定することができる。
【0013】
このような態様において、前記搭載台を前記座席上にセットした状態で、前記伸縮機構の一端が接続される前記連結部が、前記座席の背もたれ部の両脇に設けられたサイドサポート部よりも前方に位置するように構成されていることが好ましい。このようなものであれば、連結部が背もたれ部のサイドサポート部よりも前方に位置するので、伸縮機構が連結部を引っ張った際に、連結部を座席の後方斜め下方向に向かって確実に引っ張ることができる。そのため、搭載台が前方斜め上方向に引っ張られて座席から浮き上がってしまう事態を防止し、より確実に座席に密着させて固定できるようになる。
【0014】
前記車両試験装置の具体的な態様とて、前記供試体を自動運転する自動運転装置又は前記供試体から排出される排ガスを分析する排ガス分析装置を挙げることができる。
【0015】
前記車両試験装置を前記供試体の運転席又は助手席上で保持するものであって、前記固定機構が、前記供試体の後部座席に設けられた前記ISOFIXアンカに接続され、前記搭載台を前記運転席又は前記助手席に固定するように構成されていることが好ましい。このようなものであれば、本発明の効果をより顕著に出来る。
【0016】
また本発明に係る保持装置は、車両又はその一部である供試体の試験に供される車両試験装置を前記供試体の座席上で保持するものであって、前記車両試験装置が搭載される搭載台と、前記搭載台を前記座席に固定する固定機構とを備え、前記搭載台が、前記座席の着座面に接触する底面と、前記座席の背もたれ面に接触する背面と、前記底面と前記背面とを連結する連結部とを備え、前記固定機構が、前記連結部を前記座席の後方斜め下向きに引っ張ることにより、前記底面を前記着座面に押圧し、かつ前記背面を前記背もたれ面に押圧して、前記搭載台を前記座席に固定することを特徴とする。
【0017】
このようなものであれば、固定機構が、搭載台の連結部を座席の後方斜め下向きに引っ張ることにより、底面を着座面に、かつ背面を背もたれ面に一挙に密着させて搭載台を座席に固定できるので、車両試験装置が搭載される搭載台を、簡単な作業で確りと座席に固定することができる。
すなわち、搭載台を、座席の下方向と後ろ方向のそれぞれに対して別々に引っ張る必要が無く、後方斜め下向きの一方向にのみ引っ張るようにすればよいので、供試体に対する固定機構の接続箇所を少なくし、簡単な作業で搭載台を座席に固定することができる。
また、搭載台の底面と座席の着座面とが密着するだけでなく、搭載台の背面と座席の背もたれ面も密着するので、搭載台と座席の接触面積を増やし、搭載台を座席に確りと固定することができる。
【0018】
また本発明に係る搭載台の固定方法は、車両又はその一部である供試体の試験に供される車両試験装置が搭載される搭載台を前記供試体の座席に固定する方法であって、前記供試体に設けられたISOFIXアンカを用いて前記搭載台を前記座席に固定することを特徴とする。
また本発明に係る別の搭載台の固定方法は、車両又はその一部である供試体の試験に供される車両試験装置が搭載され、前記供試体の座席の着座面に接触する底面と、前記座席の背もたれ面に接触する背面と、前記底面と前記背面とを連結する連結部とを備える搭載台を前記座席に固定する方法であって、前記連結部を前記座席の後方斜め下向きに引っ張ることで、前記底面を前記着座面に押圧し、かつ前記背面を前記背もたれ面に押圧して、前記搭載台を前記座席に固定することを特徴とする。
【0019】
これらの搭載台の固定方法であれば、上記した保持装置と同様の作用効果を得ることができる。
【0020】
前記した搭載台の固定方法は、前記供試体の運転席又は助手席に配置された前記搭載台を、前記供試体の後部座席に設けられた前記ISOFIXアンカを用いて前記運転席又は前記助手席に固定することが好ましい。
【0021】
また前記した搭載台の固定方法は、前記座席の前記着座面と前記背もたれ面とが成す角度が、前記搭載台の底面と背面とが成す角度と同じか、それよりも小さくなっている状態で前記搭載台を前記座席に固定することが好ましい。このようなものであれば、搭載台を座席に固定する力を強くするにつれて、座席のクッション性によって、座席の背もたれ面と搭載台の背面との接触面積が増大し、搭載台をより確りと運転席に固定できるようになる。
【発明の効果】
【0022】
このように構成した本発明によれば、車両又はその一部である供試体の試験に供される車両試験装置が搭載される搭載台を簡単な作業で確りと座席に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態における車両試験システムの全体構成を模式的に示す平面図。
図2】同実施形態における保持装置の全体構成を模式的に示す斜視図。
図3】同実施形態における運転席を上から視た概略図であり、保持装置の連結部と運転席のサイドサポート部との位置関係を説明する図。
図4】同実施形態における搭載台が座席に固定されている状態を説明する図。
図5】他の実施形態における保持装置の全体構成を模式的に示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る保持装置100を具備する車両試験システムSについて、図面を参照して説明する。なお以下においては、供試体の具体的な態様を完成車両として説明する。
【0025】
本実施形態の車両試験システムSは、例えばシャシダイナモメータを用いる車両の性能試験に供されるものであり、具体的には車両内に設置されて車両を自動運転するものである。より具体的には、図1に示すように、前部座席(具体的には運転席)FS上において車両を自動運転する車両試験装置TDと、車両試験装置TDを運転席FS上で保持する保持装置100とを備えている。なお、本実施形態の車両試験システムSが設置される車両は、自動車の座席にチャイルドシートを固定する方式の国際標準規格であるISOFIXやこれに相当する規格に対応する所謂ISOFIXアンカAを後部座席BSに備えている。このISOFIXアンカAは、ISOFIX対応のチャイルドシートを固定するためのチャイルドシート固定部ともいえる。
【0026】
車両試験装置TDは、例えば自動運転用ロボット等を備える自動運転装置であり、各種アクチュエータを備えて、アクセルペダルやブレーキペダルの踏み込み操作、ハンドル操作及びギアチェンジ操作等を行えるように構成されている。
【0027】
保持装置100は、車両の運転席FSに固定されて車両試験装置TDを保持するものである。具体的には、図1に示すように、運転席FSに設置されるとともに、その上に車両試験装置TDが搭載される搭載台1と、搭載台1を運転席FSに密着させて固定する固定機構2とを備えている。
【0028】
図1及び図2に示すように、搭載台1は、運転席FSの着座部SDに載せられるとともに、その上に車両試験装置TDが搭載される搭載部11と、運転席FSの背もたれ部BRに接触する背中部12とを備えている。搭載部11と背中部12はいずれも概略板状のものであり、運転席FSの着座部SDと背中部12に接触するように、略L字形状を成すように互いに連結されている。
【0029】
搭載部11は、車両試験装置TDが搭載される搭載面111と、搭載面111の裏側に形成されて着座部SDの着座面SSに接触する底面112と、を有している。ここで底面112は平面状を成しており、着座面SSと面接触できるように構成されている。搭載面111も、底面112と同様に平面状を成すように形成されているが、これに限らず、車両試験装置TDの底面112の形状に合わせて、必要に応じて形状を変更してもよい。
【0030】
背中部12は、車両の前方側を向く前面121と、前面121の裏側に形成されて背もたれ部BRの背もたれ面BSに接触する背面122と、を有している。ここで背面122は平面状を成しており、背もたれ面BSと面接触できるように構成されている。前面121は、背面122と同様に平面状を成すように形成されているが、これに限らず、必要に応じて形状を変更してもよい。
【0031】
搭載台1は、底面112と背面122とを連結する左右一組(すなわち2つ)の連結部13を更に備えている。各連結部13は、横方向(底面112及び背面122に平行な方向)から視て搭載部11の搭載面111から背中部12の前面121にかけて設けられた部材であり、具体的にはその一端が搭載面111側に接合され、他端が前面121側に接合されている。これにより底面112と背面122とが連結部13を介して連結されている。連結部13には、固定機構2の一端が接続される接続部131が形成されている。接続部131は、例えば連結部13を横方向に貫通する貫通孔等であるがこれに限らない。
なお、連結部13は、搭載部11や背中部12と一体的に構成されていてもよく、これらと別体であってもよい。
【0032】
この連結部13(具体的には接続部131)は、横方向から視て、背中部12の搭載面111よりも前方(具体的には前面121よりも前方)であって、かつ搭載部11の底面112よりも上方(具体的には搭載面111よりも前方)に位置するように設けられている。より具体的には、連結部13は、図1及び図3に示すように、搭載台1を運転席FSに設置した状態で、運転席FSの背もたれ部BRの両脇に設けられたサイドサポート部SPの前方端よりも前方に位置するように設けられている。
【0033】
固定機構2は、搭載台1を運転席FSの後方側に引っ張ることで、搭載台1を運転席FSに押し付けて固定するものである。具体的には図1及び図2に示すように、長さ調節が可能な紐状の伸縮機構21を備える。本実施形態では、固定機構2は、左右一組(すなわち2つ)の伸縮機構21を備えている。以下では、一方の伸縮機構21についてのみ説明し、他方の伸縮機構21についての説明を省略する。
【0034】
伸縮機構21は、具体的には紐状体211と、紐状体211を引っ張って締める締結具212とを備える。紐状体211は、その一端が連結部13(具体的には接続部131)に接続されており、他端が運転席FSの後方に設けられた部材に接続できるように構成されたものであり、例えば荷締ベルト等である。締結具212は、紐状体211に取り付けられて、紐状体211の縮む方向への動きを可能にし、伸びる方向への動きを制限する、例えばラチェット式のものである。なお、紐状体211は荷締ベルトに限らず、ロードチェーン、ワイヤー、ロープ及び紐等であってもよい。
【0035】
しかして本実施形態の保持装置100は、固定機構2が、車両の後部座席BSに設けられたISOFIXアンカAに接続されて、搭載台1を運転席FSに固定するように構成されている。また固定機構2が、搭載台1の連結部13を運転席FSの後方斜め下方向に引っ張ることにより、底面112を着座面SSに、かつ背面122を背もたれ面BSに一挙に密着させて、搭載台1を運転席FSに固定するように構成されている。
【0036】
具体的には、固定機構2の紐状体211は、その一端が連結部13の接続部131に接続されるとともに、他端が車両の後部座席BSの着座面SSと背もたれ面BSの境目近傍に設けられたISOFIXアンカA(ロウアンカレッジ)に接続可能に構成されている。そして連結部13(具体的には接続部131)は、搭載台1を運転席FSに設置した状態で、横方向から視て、ISOFIXアンカAよりも上方に位置するように連結部13に設けられている。このため、紐状体211の一端を連結部13に接続し、かつ他端をISOFIXアンカAに接続した状態で、締結具212により紐状体211を締めてテンションをかけていくと、図4に示すように、搭載台1の連結部13が後方斜め下方向に力Fで引っ張られる。連結部13は、この引張力Fにより、前面121側及び搭載面111側から搭載部11及び背中部12を押圧するようになる。後方斜め下方向に向かう引張力Fは下方向の力Fと後ろ方向の力Fとに分解され、底面112が着座面SSに力Fで押付けられるとともに、背面122が背もたれ面BSに力Fで押付けられるようになる。なお、固定機構2が備える2つの伸縮機構21は、車両の1つの後部座席BSに設けられた左右1組のISOFIXアンカAのそれぞれに接続される。
【0037】
ここで、運転席FSの背もたれ部BRの角度を調整し、搭載台1を設置していない状態における運転席FSの着座面SSと背もたれ面BSとが成す角度が、搭載台1の底面112と背面122とが成す角度と同じか、又はこれよりも小さくなるようにしている。この状態で、固定機構2によって搭載台1を後方斜め後ろ方向に引っ張って固定してゆくと、その引張力Fを強くするにつれて、背面122と背もたれ面BSとの接触面積が増大し、搭載台1をより確りと運転席FSに固定できるようになる。
【0038】
このように構成した本実施形態の保持装置100によれば、車両に設けられたISOFIXアンカAを用いて搭載台1を運転席FSに固定し、しかも固定機構2が、搭載台1を運転席FSの後方斜め下向きに引っ張ることにより、底面112を着座面SSに押圧し、かつ背面122を背もたれ面BSに押圧することで一挙に密着させて搭載台1を運転席FSに固定できるので、車両試験装置TDが搭載される搭載台1を、極めて簡単な作業で、しかも強固な力で確りと運転席FSに固定することができる。
【0039】
すなわち、自動車の座席にチャイルドシートを固定する方式の国際標準規格であるISOFIXに対応するISOFIXアンカAは、車種によらず車両内におけるその設置位置が定まっているため、試験車両の車種が変わったとしても、車両試験を行うオペレータは搭載台1の固定位置を容易に見つけ出すことができる。さらに、搭載台1を運転席FSの下方向と後ろ方向のそれぞれに対して別々に引っ張る必要が無く、後方斜め下向きの一方向にのみ引っ張るようにすればよいので、固定機構2と搭載台1との接続箇所を少なくできる。このため、極めて簡単な作業で搭載台1を運転席FSに固定することができる。
【0040】
また、ISOFIXアンカAは大きな負荷が加わることが想定されている部材であり、荷締めベルト211を大きな力で締め付けたとしても破損する恐れが少ないので、ISOFIXアンカAの破損を案じることなく、ラチェット式の締結具212によりベルト211を強く締め付けることができる。さらに、底面112と着座面SSとが密着するだけでなく、背面122と背もたれ面BSも一挙に密着するので、搭載台1と運転席FSとの接触面積を増やすことができる。これにより、搭載台1を強固な力で確りと運転席FSに固定することができる。
【0041】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0042】
上記実施形態では、固定機構2は、ISOFIXアンカAに接続され、かつ搭載台1を運転席FSの後方斜め下向きに引っ張ることにより底面112を着座面SSに、かつ背面122を背もたれ面BSに一挙に密着させて搭載台1を運転席FSに固定するものであったが、これに限定されない。
【0043】
他の実施形態の固定機構2は、一端がISOFIXアンカAに接続されて搭載台1を運転席FSに固定するように構成されていれば、固定機構2により搭載台1を引っ張る方向は限定されない。固定機構2は、例えば搭載台1を運転席FSの後方のみに引っ張るように構成してもよい。このようなものであっても、ISOFIXアンカAを用いて搭載台1を固定することにより、搭載台1を短時間で確りと運転席FSに固定することができる。
【0044】
また他の実施形態の固定機構2は、搭載台1を運転席FSの後方斜め下向きに引っ張ることにより底面112を着座面SSに、かつ背面122を背もたれ面BSに一挙に密着させて搭載台1を運転席FSに固定するように固定されていれば、ISOFIXアンカAに接続されなくてもよい。例えば、固定機構2が備える紐状体211の他端を、後部座席BS用のシートベルトのバックル等の任意の部品に接続してよい。また、固定機構2が備える紐状体211は、搭載台1を搭載する座席の背面において連結されてもよい。すなわち、搭載台1が搭載される座席に対して、搭載台1を縛り付けるようにしてもよい。
【0045】
伸縮機構21の他端は、ISOFIXアンカAに直接接続されてもよく、フック等の接続部品を介して接続されていてもよい。また固定機構2は、ISOFIX規格に対応するISOFIXコネクタを紐状体211の他端に備え、当該ISOFIXコネクタによりISOFIXアンカAに接続されてもよい。
【0046】
前記実施形態における車両試験装置TDは自動運転装置であったが、これに限定されない。他の実施形態における車両試験装置TDは、例えば供試体から排出される排ガスを分析する車載型の排ガス分析装置等であってもよい。
【0047】
他の実施形態の搭載台1は、底面112と背面122とが成す角度を任意で変更できるように、搭載部11と背中部12とが互いに回動可能に連結されていてもよい。
【0048】
他の実施形態の搭載台1は、搭載部11の底面112の大きさ及び背中部12の背面122の大きさを変更できるように構成されていてもよい。
【0049】
前記実施形態では、固定機構2は2つの伸縮機構21を備え、それぞれの他端が1つの後部座席BSに設けられた左右2つのISOFIXアンカAにそれぞれ連結されていたがこれに限定されない。他の実施形態では、2つの伸縮機構21のそれぞれの他端が1つのISOFIXアンカに連結されるようにしてもよい。また他の実施形態では、固定機構2は伸縮機構21を1つのみ備えるものであってもよい。この場合、伸縮機構21の一端を1組の連結部221の一方に連結し、他端を1組の連結部221の他方に連結し、一端と他端の間の中間部を1つ又は2つのISOFIXアンカAに連結するようにしてもよい。
【0050】
また前記実施形態において保持装置100が備える搭載台1は運転席FS上に置かれて車両試験装置TDを保持するものであったが、これに限定されない。他の実施形態では、搭載台1は助手席等の他の運転席FS上に置かれてもよく、後部座席BS上に置かれてもよい。なお、車両試験装置TDが自動運転装置である場合、搭載台1は運転席FS上に配置される必要がある。車両試験装置TDが排ガス分析装置である場合には、助手席FSに配置されることが好ましい。
【0051】
前記実施形態において、搭載台1の背中部12は1枚の板状のものであったがこれに限定されない。他の実施形態の背中部12は、図5に示すように、枠123と、枠123に固定された複数の板状部材124から構成されていてもよい。
【0052】
前記実施形態では供試体の具体的態様として完成車両を挙げて説明したがこれに限らない。他の実施形態では、供試体は完成車両の一部であってもよい。
【0053】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
100・・・保持装置
1 ・・・搭載台
112・・・底面
122・・・背面
2 ・・・固定機構
TD ・・・車両試験装置
M ・・・車両
FS ・・・前部座席
SS ・・・着座面
BS ・・・背もたれ面
A ・・・ISOFIXアンカ
図1
図2
図3
図4
図5