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特許7008732感光性樹脂組成物、樹脂、硬化膜、積層体、硬化膜の製造方法、半導体デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、樹脂、硬化膜、積層体、硬化膜の製造方法、半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/027 20060101AFI20220118BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20220118BHJP
   C08G 73/22 20060101ALI20220118BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
G03F7/027 514
C08G73/10
C08G73/22
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019567095
(86)(22)【出願日】2019-01-23
(86)【国際出願番号】 JP2019001958
(87)【国際公開番号】W WO2019146611
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2018012585
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】川端 健志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健太
(72)【発明者】
【氏名】岩井 悠
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-098715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/027
C08G 73/10
C08G 73/22
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体から選択されるポリマー前駆体と、光活性化合物とを含む感光性樹脂組成物であって、
前記ポリマー前駆体が、テトラカルボン酸、テトラカルボン酸誘導体、ジカルボン酸、および、ジカルボン酸誘導体の少なくとも1種に由来する構成単位ならびにジアミンの少なくとも1種に由来する構成単位から構成される前記ポリマー前駆体の側鎖に連結基を介して結合するスルホン酸基ならびに前記ポリマー前駆体の末端に結合するスルホン酸基からなる群のうち少なくとも1種を有し、
前記スルホン酸基は、下記式(Ls)で表される構造を介して樹脂と結合する、感光性樹脂組成物。
-Li-Lt-(SO H) ns 式(Ls)
は主鎖をなす構造側の結合位置であり、Liはアミド基、エステル基、又は、ウレタン基であり、Ltは炭素原子および水素原子で構成された連結基であり、Ltには更にヘテロ原子を含む連結基Lhが介在してもよく、Lhとしては、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、チオカルボニル基、スルホニル基、-NR -、またはこれらの組み合わせからなる連結基であり、R は水素原子又は有機基である。
【請求項2】
前記式(Ls)における前記Liがアミド基又はエステル基である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記式(Ls)における前記Ltの炭素数が1~22である、請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記式(Ls)における前記Ltには前記Lhが介在していない、請求項1~3のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリマー前駆体が、下記式(1)で表される構成単位または式(2)で表される構成単位を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物;
【化1】
式(1)中、AおよびAは、それぞれ独立に酸素原子またはNHを表し、R111は、2価の有機基を表し、R115は、4価の有機基を表し、R113およびR114は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す;
【化2】
式(2)中、R121は、2価の有機基を表し、R122は、4価の有機基を表し、R123およびR124は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す。
【請求項6】
前記ポリマー前駆体が、式(1)で表される構成単位を含む、請求項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリマー前駆体が式(1-1)、式(1-2)、式(1-3)、式(2-1)、式(2-2)および式(2-3)のいずれかで表される構造を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物;
【化3】
式中、AおよびAは、それぞれ独立に酸素原子またはNHを表し、R111は、2価の有機基を表し、R115は、4価の有機基を表し、R113およびR114は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表し、X、XおよびXはそれぞれ独立に連結基を表し、*はポリイミド前駆体の主鎖との結合位置を示し、nsは1~4の整数を示し、;
【化4】
式中、R121は、2価の有機基を表し、R122は、4価の有機基を表し、R123およびR124は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表し、X、XおよびXはそれぞれ独立に連結基を表し、*はポリベンゾオキサゾール前駆体の主鎖との結合位置を示し、nsは1~4の整数を表す。
【請求項8】
前記ポリマー前駆体に含まれる、スルホン酸基の合計数が、全構成単位の合計数の0.05%以上15.0%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、ラジカル重合性化合物を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項10】
さらに、硬化促進剤を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項11】
前記光活性化合物が、光ラジカル重合開始剤を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項12】
現像に用いられる、請求項1~11のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項13】
有機溶剤を含む現像液を用いて現像する用途に用いられる、請求項1~12のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項14】
再配線層用層間絶縁膜の形成に用いられる、請求項1~13のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜。
【請求項16】
請求項15に記載の硬化膜を2層以上有する、積層体。
【請求項17】
前記硬化膜の間に、金属層を有する、請求項16に記載の積層体。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を用いることを含む、硬化膜の製造方法。
【請求項19】
前記感光性樹脂組成物を基板に適用して層状にする、感光性樹脂組成物層形成工程と、
前記感光性樹脂組成物層を露光する露光工程と、
前記露光された感光性樹脂組成物層に対して、現像処理を行う現像処理工程とを有する、請求項18に記載の硬化膜の製造方法。
【請求項20】
請求項15に記載の硬化膜または請求項16もしくは17に記載の積層体を有する半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、樹脂、硬化膜、積層体、硬化膜の製造方法、半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド前駆体、ポリベンゾオキサゾール前駆体などを環化して硬化させたポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂は、耐熱性や絶縁性等に優れるため、様々な用途に適用されている(例えば、非特許文献1、2参照)。その用途は、特に限定されないが、実装用の半導体デバイスの分野では、絶縁膜およびその保護膜や封止材の材料としての利用が挙げられる。また、フレキシブル基板のベースフィルムやカバーレイなどとしても用いられている。
上記のポリイミド樹脂およびポリベンゾオキサゾール樹脂は、一般に、溶剤への溶解性が低い。そのため、環化反応前のポリマー前駆体(ポリイミド前駆体やポリベンゾオキサゾール前駆体)の状態で溶剤に溶解し、基板などに塗布し適用する方法がよく用いられる。例が挙げられる。その後、加熱してポリマー前駆体を環化して、硬化した樹脂層(硬化膜)を形成することができる。
【0003】
上記のようなポリマー前駆体については、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1では、ジカルボン酸またはジカルボン酸誘導体を、ハロゲン化剤を用いてハロゲン化した後、ジアミンと反応させるに当たり、ハロゲン化剤、反応系に含まれる水、原料の量を調整することが開示されている。これにより、ポリマー前駆体の環化速度を速めることができるとされる。同文献にはさらに、ポリマー前駆体に特定の酸基を付与することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2017/104672号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【文献】サイエンス&テクノロジー株式会社「ポリイミドの高機能化と応用技術」2008年4月
【文献】柿本雅明/監修、CMCテクニカルライブラリー「ポリイミド材料の基礎と開発」2011年11月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリマー前駆体は上記のように環化により硬化させることができるが、その特性がゆえに、保存時に環化が進み樹脂の安定性を欠くことがある。
そこで本発明は、保存安定性に優れる感光性樹脂組成物、樹脂、硬化膜、積層体、硬化膜の製造方法、および半導体デバイスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題のもと、本発明者が鋭意検討を行った結果、感光性樹脂組成物を構成するポリマー前駆体に特定の形態でスルホン酸基を導入することにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、下記手段<1>により、好ましくは<2>~<18>により上記課題は解決された。
【0008】
<1> ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体から選択されるポリマー前駆体と、光活性化合物とを含む感光性樹脂組成物であって、上記ポリマー前駆体が、テトラカルボン酸、テトラカルボン酸誘導体、ジカルボン酸、および、ジカルボン酸誘導体の少なくとも1種に由来する構成単位ならびにジアミンの少なくとも1種に由来する構成単位から構成される上記ポリマー前駆体の側鎖に連結基を介して結合するスルホン酸基ならびに上記ポリマー前駆体の末端に結合するスルホン酸基からなる群のうち少なくとも1種を有する、感光性樹脂組成物。
<2> 上記ポリマー前駆体が、下記式(1)で表される構成単位または式(2)で表される構成単位を含む、<1>に記載の感光性樹脂組成物;
【化1】
式(1)中、AおよびAは、それぞれ独立に酸素原子またはNHを表し、R111は、2価の有機基を表し、R115は、4価の有機基を表し、R113およびR114は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す;
【化2】
式(2)中、R121は、2価の有機基を表し、R122は、4価の有機基を表し、R123およびR124は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す。
<3> 上記ポリマー前駆体が、式(1)で表される構成単位を含む、<2>に記載の感光性樹脂組成物。
<4> 上記ポリマー前駆体が式(1-1)、式(1-2)、式(1-3)、式(2-1)、式(2-2)および式(2-3)のいずれかで表される部位を有する、<1>~<3>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物;
【化3】
式中、AおよびAは、それぞれ独立に酸素原子またはNHを表し、R111は、2価の有機基を表し、R115は、4価の有機基を表し、R113およびR114は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表し、X、XおよびXはそれぞれ独立に連結基を表し、*はポリイミド前駆体の主鎖との結合位置を示し、nsは1~4の整数を示し、;
【化4】
式中、R121は、2価の有機基を表し、R122は、4価の有機基を表し、R123およびR124は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表し、X、XおよびXはそれぞれ独立に連結基を表し、*はポリベンゾオキサゾール前駆体の主鎖との結合位置を示し、nsは1~4の整数を表す。
<5> 上記ポリマー前駆体に含まれる、スルホン酸基の合計数が、全構成単位の合計数の0.05%以上15.0%以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
<6> さらに、ラジカル重合性化合物を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
<7> さらに、硬化促進剤を含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
<8> 上記光活性化合物が、光ラジカル重合開始剤を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
<9> 現像に用いられる、<1>~<8>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
<10> 有機溶剤を含む現像液を用いて現像する用途に用いられる、<1>~<9>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
<11> 再配線層用層間絶縁膜の形成に用いられる、<1>~<10>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物。
<12> ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体から選択されるポリマー前駆体からなる樹脂であって、
上記ポリマー前駆体が式(1-1)、式(1-2)、式(1-3)、式(2-1)式(2-2)または式(2-3)のいずれかで表される部位を有する、樹脂;
【化5】
式中、AおよびAは、それぞれ独立に酸素原子またはNHを表し、R111は、2価の有機基を表し、R115は、4価の有機基を表し、R113およびR114は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表し、X、XおよびXはそれぞれ独立に連結基を表し、*はポリイミド前駆体の主鎖との結合位置を示し、nsは1~4の整数を示す;
【化6】
式中、R121は、2価の有機基を表し、R122は、4価の有機基を表し、R123およびR124は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表し、X、XおよびXはそれぞれ独立に連結基を表し、*はポリベンゾオキサゾール前駆体の主鎖との結合位置を示し、nsは1~4の整数を表す。
<13> <1>~<11>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜。
<14> <13>に記載の硬化膜を2層以上有する、積層体。
<15> 上記硬化膜の間に、金属層を有する、<14>に記載の積層体。
<16> <1>~<11>のいずれか1つに記載の感光性樹脂組成物を用いることを含む、硬化膜の製造方法。
<17> 上記感光性樹脂組成物を基板に適用して層状にする、感光性樹脂組成物層形成工程と、
上記感光性樹脂組成物層を露光する露光工程と、
上記露光された感光性樹脂組成物層に対して、現像処理を行う現像処理工程とを有する、<16>に記載の硬化膜の製造方法。
<18> <13>に記載の硬化膜または<14>もしくは<15>に記載の積層体を有する半導体デバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、保存安定性に優れる感光性樹脂組成物、ならびに、樹脂、硬化膜、積層体、硬化膜の製造方法、および半導体デバイスを提供することができる。さらに本発明により、新規な樹脂を提供し材料の豊富化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本発明における構成要素の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
本明細書における基(原子団)の表記に於いて、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、光を用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含める。また、露光に用いられる光としては、一般的に、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等の活性光線または放射線が挙げられる。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および「メタクリレート」の双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および「メタクリル」の双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」および「メタクリロイル」の双方、または、いずれかを表す。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、固形分とは、組成物の総質量に対する、溶剤を除く他の成分の質量百分率である。また、固形分濃度は、特に述べない限り25℃における濃度をいう。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、特に述べない限り、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC測定)に従い、ポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC-8220(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてガードカラムHZ-L、TSKgel Super HZM-M、TSKgel Super HZ4000、TSKgel Super HZ3000およびTSKgel Super HZ2000(東ソー(株)製)を用いることによって求めることができる。溶離液は特に述べない限り、THF(テトラヒドロフラン)を用いて測定したものとする。また、検出は特に述べない限り、UV線(紫外線)の波長254nm検出器を使用したものとする。
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物(以下、単に、「本発明の組成物」または「本発明の樹脂組成物」ということがある)は、ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体から選択されるポリマー前駆体と、光活性化合物とを含み、ポリマー前駆体が、テトラカルボン酸、テトラカルボン酸誘導体、ジカルボン酸、および、ジカルボン酸誘導体の少なくとも1種に由来する構成単位ならびにジアミンの少なくとも1種に由来する構成単位から構成されるポリマー前駆体の側鎖(主鎖構造の側鎖)に連結基を介して結合するスルホン酸基ならびにポリマー前駆体の末端(主鎖構造の末端)に結合するスルホン酸基からなる群のうち少なくとも1種を有することを特徴とする。以下、本組成物の好ましい実施形態を構成する成分組成を中心に、本発明について詳細に説明する。
【0012】
<ポリマー前駆体>
本発明の感光性樹脂組成物は、ポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体から選択されるポリマー前駆体を含む。ポリマー前駆体としては、テトラカルボン酸、テトラカルボン酸誘導体、ジカルボン酸、および、ジカルボン酸誘導体の少なくとも1種に由来する構成単位ならびにジアミンの少なくとも1種に由来する構成単位から構成される。ここで、テトラカルボン酸等に由来する構成単位およびジアミンに由来する構成単位から構成されるとは、これらの構成単位がポリマー前駆体の構成単位の大半を占めることを意味するものであり、ポリマー前駆体の全構成単位がこれらの構成単位から構成されることを必須とするものではない。例えば、全構成単位の70モル%以上、さらには80モル%以上、特には90モル%以上が上記構成単位であれば、上記要件を満たす。
テトラカルボン酸、テトラカルボン酸誘導体由来の構造としては、後述する式(1)のR115および隣接する4つのカルボニル基からなる構造が、ジカルボン酸、ジカルボン酸誘導体由来の構成単位としては、後述する式(2)のR121および隣接する2つのカルボニル基からなる構成単位が挙げられる。ジアミンの構造としては、後述する式(1)のR111および隣接する2つのNHからなる構成単位および後述する式(2)のR122および隣接する2つのNH基からなる構成単位が挙げられる。すなわち、本発明の感光性樹脂組成物においては、一実施形態において、上記R115、R122、R111、R121の少なくとも一部に連結基を介してスルホン酸基が導入されていることが好ましい。このときの連結基としては、後述する式(Ls)の*-Li-Lt-*の例が挙げられる。ここで、*が主鎖構造側、*がスルホン酸基側である。ポリマー前駆体のなかではポリイミド前駆体が好ましい。
【0013】
本発明では、上記ポリマー前駆体がその末端および側鎖の少なくともいずれかに特定の形態でスルホン酸基を有している。ここで、スルホン酸基は、(i)ポリマー前駆体の側鎖に連結基を介して結合するスルホン酸基か、あるいは(ii)ポリマー前駆体の末端に結合するスルホン酸基である。このように規定されたのには以下の技術的意義があると推測される。すなわち、(i)スルホン酸基が側鎖に連結基を介して結合した点については、連結基を介さずにスルホン酸基が導入されたものに比較し、スルホン酸基の運動性が良く保存安定性に対する効果が大きいという作用が期待できる。(ii)ポリマー前駆体の末端に結合するスルホン酸基については、同様にスルホン酸基の運動性が良く保存安定性に対する効果が大きいという作用が期待できる。なお、本発明において「スルホン酸基」は狭義のスルホン酸基、すなわち炭素骨格に-SOH基が結合した構造であり、スルファミン酸構造やスルホン酸モノエステル構造とは異なる。樹脂が強酸基としてのスルホン酸基を有することで、高い酸基としての作用が発揮されることを期待できる。なお、上記ポリマー前駆体には、炭素骨格以外に結合した-SOH基があってもよいが、炭素骨格以外に結合した-SOH基が無い方が好ましい。
なお、以下では上記の条件を満たす部位を「スルホン酸基を含む部位」と称することがある。
【0014】
上記スルホン酸基を含む部位の好ましい実施形態としては下記の式(Ls)の構造が挙げられる。
-Li-Lt-(SOH)ns 式(Ls)
は主鎖をなす構造(例えば芳香環)側の結合位置である。LiおよびLtは、それぞれ独立に連結基または単結合であり、少なくとも一方は連結基である。さらに、主鎖をなす構造と式(Ls)の部位との間には、詳細を後述する連結基Lないし連結基Lhが介在していてもよいが、介在していない方が好ましい。式(Ls)は1つの構成単位の側鎖に、および/または、1つの末端に1つのみ結合していてもよいし、2つ以上結合していてもよい。2つ以上結合している場合、それぞれの式(Ls)は同一であってもよいし、異なっていてもよい。本発明では、式(Ls)は1つの構成単位の側鎖に、および/または、1つの末端に1つのみ結合していることが好ましい。
特に、式(Ls)が側鎖に結合している場合は、テトラカルボン酸、テトラカルボン酸誘導体、ジカルボン酸、ジカルボン酸誘導体の少なくとも1種に由来する構成単位に、式(Ls)が結合していることが好ましい。
主鎖の一例として、後述する式(1)における-C(=O)-R115-C(=O)-NH-R111-NH-、または、後述する式(2)における-NH-R122-NH-C(=O)-R121-C(=O)-が挙げられる。より具体的には、R115、R111、R122、R121のいずれかに式(Ls)が結合している態様が例示される。
Liはヘテロ原子またはヘテロ原子を有する連結基であり、ヘテロ原子を有する連結基であることが好ましい。ヘテロ原子を有する連結基としては、例えばアミド基(CONH)、エステル基(COO)、ウレア基(NHCONH)、ウレタン基(NHCOO)、イミド基(CONHCO)等が挙げられる。これらの水素原子は置換基(例えば、後述する置換基T)で置換されていてもよいが、置換されていないことが好ましい。なお、連結基の表記の順序によりLiが限定されるものではなく、例えば、特定の連結方向に対してCONHはNHCOでもよく、COOはOCOでも、NHCOOはOCONHでも良い。
Ltとしては炭素原子および水素原子で構成された連結基が挙げられる。Ltは、好ましくは、詳細を後述する連結基Lのうち、炭素原子および水素原子で構成された連結基である。Ltは、炭素数1~22のものが好ましく、1~18のものがより好ましく、1~10のものがさらに好ましい。さらに、Ltは、炭化水素基が好ましく、アルキレン基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アルケニレン基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、アリーレン基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、アリールアルキレン基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい)がより好ましく、アリーレン基がさらに好ましい。
連結基Ltはさらにヘテロ原子を有する連結基Lhが介在していてもよいし、介在していなくてもよい。また、連結基Ltは本発明の効果を奏する範囲でヒドロキシル基、カルボン酸、アミノ基、ハロゲン原子などの置換基を有することを妨げるものではない。Lhの詳細は後述する。
nsは1~4の整数であり、1また2が好ましく、1がより好ましい。
式(Ls)の式量は、14~300であることが好ましく、50~200であることがより好ましい。
【0015】
<<ポリイミド前駆体>>
ポリイミド前駆体としては下記式(1)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【化7】
およびAは、それぞれ独立に酸素原子またはNHを表し、R111は、2価の有機基を表し、R115は、4価の有機基を表し、R113およびR114は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す。
【0016】
およびAは、それぞれ独立に、酸素原子またはNHであり、酸素原子が好ましい。
111は、2価の有機基を表す。2価の有機基としては、直鎖または分岐の脂肪族基、環状の脂肪族基、および芳香族基、複素芳香族基、またはこれらの組み合わせからなる基が例示され、炭素数2~20の直鎖の脂肪族基、炭素数3~20の分岐の脂肪族基、炭素数3~20の環状の脂肪族基、炭素数6~20の芳香族基、または、これらの組み合わせからなる基が好ましく、炭素数6~20の芳香族基がより好ましい。
【0017】
<<<R111>>>
111は、ジアミンから誘導されることが好ましい。ポリイミド前駆体の製造に用いられるジアミンとしては、直鎖または分岐の脂肪族、環状の脂肪族または芳香族ジアミンなどが挙げられる。ジアミンは、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
具体的には、ジアミンは、炭素数2~20の直鎖脂肪族基、炭素数3~20の分岐または環状の脂肪族基、炭素数6~20の芳香族基、または、これらの組み合わせからなる基を含むものであることが好ましく、炭素数6~20の芳香族基を含むジアミンであることがより好ましい。芳香族基の例としては、下記が挙げられる。
【0018】
【化8】
【0019】
式中、Aは、単結合、または、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-NHCO-ならびに、これらの組み合わせから選択される基であることが好ましく、単結合、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~3のアルキレン基、-O-、-C(=O)-、-S-および-SO-から選択される基であることがより好ましく、-CH-、-O-、-S-、-SO-、-C(CF-、および、-C(CH-からなる群から選択される2価の基であることがさらに好ましい。
【0020】
ジアミンとしては、具体的には、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタンおよび1,6-ジアミノヘキサン;1,2-または1,3-ジアミノシクロペンタン、1,2-、1,3-または1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,2-、1,3-または1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス-(3-アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルシクロヘキシルメタンおよびイソホロンジアミン;メタおよびパラフェニレンジアミン、ジアミノトルエン、4,4’-および3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-および3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-および3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-および3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-および3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-ヒドロキシ-4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-アミノ-3-ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’-ジアミノパラテルフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(2-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)-10-ヒドロアントラセン、3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニル、3,3’,4,4’-テトラアミノジフェニルエーテル、1,4-ジアミノアントラキノン、1,5-ジアミノアントラキノン、3,3-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-ジメチル-3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2-(3’,5’-ジアミノベンゾイルオキシ)エチルメタクリレート、2,4-および2,5-ジアミノクメン、2,5-ジメチル-パラフェニレンジアミン、アセトグアナミン、2,3,5,6-テトラメチル-パラフェニレンジアミン、2,4,6-トリメチル-メタフェニレンジアミン、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、2,7-ジアミノフルオレン、2,5-ジアミノピリジン、1,2-ビス(4-アミノフェニル)エタン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノ安息香酸のエステル、1,5-ジアミノナフタレン、ジアミノベンゾトリフルオライド、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)オクタフルオロブタン、1,5-ビス(4-アミノフェニル)デカフルオロペンタン、1,7-ビス(4-アミノフェニル)テトラデカフルオロヘプタン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(2-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、パラビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノ-3-トリフルオロメチルフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’-ビス(3-アミノ-5-トリフルオロメチルフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノ-3-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2’,5,5’,6,6’-ヘキサフルオロトリジンおよび4,4’-ジアミノクアテルフェニルから選ばれる少なくとも1種のジアミンが挙げられる。
【0021】
また、下記に示すジアミン(DA-1)~(DA-18)も好ましい。
【0022】
【化9】
【0023】
【化10】
【0024】
また、少なくとも2つ以上のアルキレングリコール単位を主鎖にもつジアミンも好ましい例として挙げられる。好ましくは、エチレングリコール鎖、プロピレングリコール鎖のいずれか一方または両方を一分子中にあわせて2つ以上含むジアミン、より好ましくは芳香環を含まないジアミンである。具体例としては、ジェファーミン(登録商標)KH-511、ジェファーミン(登録商標)ED-600、ジェファーミン(登録商標)ED-900、ジェファーミン(登録商標)ED-2003、ジェファーミン(登録商標)EDR-148、ジェファーミン(登録商標)EDR-176、D-200、D-400、D-2000、D-4000(以上商品名、HUNTSMAN社製)、1-(2-(2-(2-アミノプロポキシ)エトキシ)プロポキシ)プロパン-2-アミン、1-(1-(1-(2-アミノプロポキシ)プロパン-2-イル)オキシ)プロパン-2-アミンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
ジェファーミン(登録商標)KH-511、ジェファーミン(登録商標)ED-600、ジェファーミン(登録商標)ED-900、ジェファーミン(登録商標)ED-2003、ジェファーミン(登録商標)EDR-148、ジェファーミン(登録商標)EDR-176の構造を以下に示す。
【0025】
【化11】
【0026】
上記において、x、y、zは平均値である。
【0027】
111は、得られる硬化膜の柔軟性の観点から、-Ar-L-Ar-で表されることが好ましい。但し、Arは、それぞれ独立に、芳香族炭化水素基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10が特に好ましい)であり、フェニレン基が好ましい。Lは、単結合、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~10の脂肪族炭化水素基、-O-、-C(=O)-、-S-、-S(=O)-、-NHCO-ならびに、これらの組み合わせから選択される基を表す。好ましい範囲は、上述のAと同義である。
【0028】
111は、i線透過率の観点から下記式(51)または式(61)で表される2価の有機基であることが好ましい。特に、i線透過率、入手のし易さの観点から式(61)で表される2価の有機基であることがより好ましい。
【化12】
50~R57は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子または1価の有機基であり、R50~R57の少なくとも1つはフッ素原子、メチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、または、トリフルオロメチル基である。
50~R57の1価の有機基として、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~6)の無置換のアルキル基、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~6)のフッ化アルキル基等が挙げられる。
【化13】
58およびR59は、それぞれ独立にフッ素原子、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、または、トリフルオロメチル基である。
式(51)または(61)の構造を与えるジアミン化合物としては、ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(フルオロ)-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノオクタフルオロビフェニル等が挙げられる。これらの1種を用いるか、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
<<<R115>>>
式(1)におけるR115は、4価の有機基を表す。4価の有機基としては、芳香環を含む基が好ましく、下記式(5)または式(6)で表される基がより好ましい。
【化14】
112は、Aと同義であり、好ましい範囲も同じである。
【0030】
式(1)におけるR115が表す4価の有機基は、具体的には、テトラカルボン酸二無水物から酸二無水物基を除去した後に残存するテトラカルボン酸残基などが挙げられる。テトラカルボン酸二無水物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。テトラカルボン酸二無水物は、下記式(7)で表される化合物が好ましい。
【化15】
115は、4価の有機基を表す。R115は式(1)のR115と同義である。
【0031】
テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、ピロメリット酸、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ジフェニルヘキサフルオロプロパン-3,3,4,4-テトラカルボン酸二無水物、1,4,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,8,9,10-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ならびに、これらの炭素数1~6のアルキル誘導体および炭素数1~6のアルコキシ誘導体から選ばれる少なくとも1種が例示される。
【0032】
また、下記に示すテトラカルボン酸二無水物(DAA-1)~(DAA-5)も好ましい例として挙げられる。
【化16】
【0033】
<<<R113およびR114>>>
式(1)におけるR113およびR114は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す。R113およびR114の少なくとも一方がラジカル重合性基を含むことが好ましく、両方がラジカル重合性基を含むことがより好ましい。ラジカル重合性基としては、ラジカルの作用により、架橋反応することが可能な基であって、好ましい例として、エチレン性不飽和結合を有する基が挙げられる。
エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、下記式(III)で表される基などが挙げられる。
【0034】
【化17】
【0035】
200は、水素原子またはメチル基を表し、メチル基がより好ましい。
201は、炭素数2~12のアルキレン基、-CHCH(OH)CH-または炭素数4~30の(ポリ)オキシアルキレン基(アルキレン基としては炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が特に好ましい;繰り返し数は1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が特に好ましい)を表す。なお、(ポリ)オキシアルキレン基とは、オキシアルキレン基またはポリオキシアルキレン基を意味する。
好適なR201の例は、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、1,2-ブタンジイル基、1,3-ブタンジイル基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、ドデカメチレン基、-CHCH(OH)CH-が挙げられ、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、-CHCH(OH)CH-がより好ましい。
特に好ましくは、R200がメチル基で、R201がエチレン基である。
【0036】
ポリイミド前駆体の好ましい実施形態として、R113またはR114の1価の有機基として、後述するスルホン酸基以外に、1、2または3つの、好ましくは1つの酸基を有する、脂肪族基、芳香族基およびアリールアルキル基などが挙げられる。具体的には、酸基を有する炭素数6~20の芳香族基、酸基を有する炭素数7~25のアリールアルキル基が挙げられる。より具体的には、酸基を有するフェニル基および酸基を有するベンジル基が挙げられる。酸基は、ヒドロキシル基が好ましい。すなわち、R113またはR114はヒドロキシル基を有する基であることが好ましい。
113またはR114が表す1価の有機基としては、現像液の溶解度を向上させる置換基が好ましく用いられる。
113またはR114が、水素原子、2-ヒドロキシベンジル、3-ヒドロキシベンジルおよび4-ヒドロキシベンジルであることが、水性現像液に対する溶解性の点からは、より好ましい。
【0037】
有機溶剤への溶解度の観点からは、R113またはR114は、1価の有機基であることが好ましい。1価の有機基としては、直鎖または分岐のアルキル基、環状アルキル基、芳香族基を含むことが好ましく、芳香族基で置換されたアルキル基がより好ましい。
アルキル基の炭素数は1~30が好ましい(環状の場合は3以上)。アルキル基は直鎖、分岐、環状のいずれであってもよい。直鎖または分岐のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、1-エチルペンチル基、および2-エチルヘキシル基が挙げられる。環状のアルキル基は、単環の環状のアルキル基であってもよく、多環の環状のアルキル基であってもよい。単環の環状のアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびシクロオクチル基が挙げられる。多環の環状のアルキル基としては、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボルニル基、カンフェニル基、デカヒドロナフチル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、カンホロイル基、ジシクロヘキシル基およびピネニル基が挙げられる。中でも、高感度化との両立の観点から、シクロヘキシル基が最も好ましい。また、芳香族基で置換されたアルキル基としては、後述する芳香族基で置換された直鎖アルキル基が好ましい。
芳香族基としては、具体的には、置換または無置換のベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インダセン環、ペリレン環、ペンタセン環、アセナフテン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環またはフェナジン環である。ベンゼン環が最も好ましい。
【0038】
また、ポリイミド前駆体は、構成単位中にフッ素原子を有することも好ましい。ポリイミド前駆体中のフッ素原子含有量は10質量%以上が好ましく、20質量%以下がより好ましい。上限は特にないが50質量%以下が実際的である。
【0039】
また、基板との密着性を向上させる目的で、シロキサン構造を有する脂肪族基を式(1)で表される構成単位に共重合してもよい。具体的には、ジアミン成分として、ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(パラアミノフェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどが挙げられる。
【0040】
式(1)で表される構成単位は、式(1-A)で表される構成単位であることが好ましい。
【化18】
11およびA12は、酸素原子またはNHを表し、R111およびR112は、それぞれ独立に、2価の有機基を表し、R113およびR114は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表し、R113およびR114の少なくとも一方は、ラジカル重合性基を含む基であり、ラジカル重合性基であることが好ましい。
【0041】
11、A12、R111、R113およびR114は、それぞれ、独立に、式(1)におけるA、A、R111、R113およびR114と同義であり、好ましい範囲も同様である。
112は、式(5)におけるR112と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0042】
ポリイミド前駆体において、式(1)で表される構成単位は1種であってもよいが、2種以上であってもよい。また、式(1)で表される構成単位の構造異性体を含んでいてもよい。また、ポリイミド前駆体は、上記の式(1)の構成単位のほかに、他の種類の構成単位も含んでもよい。
【0043】
ポリイミド前駆体は、式(1-1a)、式(1-2a)、式(1-3a)のいずれかで表される部位(構成単位または末端構造)を有することが好ましい。
【化19】
式中、A、A、R111、R113、R114、R115は、式(1)における定義と同様であり、好ましいものも同じである。*はポリイミド前駆体の主鎖との結合位置を示す。Lsは上記式(Ls)である。このとき、式(Ls)のLiは式(1-1a)においては、*-NHCOであることが好ましい。式(1-2a)、式(1-3a)においては、*-COOまたは*-CONHであることが好ましい。
【0044】
ポリイミド前駆体は、式(1-1)、式(1-2)、式(1-3)のいずれかで表される部位を有することがより好ましい。
【化20】
式中、A、A、R111、R113、R114、R115は、式(1)における定義と同様であり、好ましい範囲も同じである。X、XおよびXはそれぞれ独立に連結基を表し、*はポリイミド前駆体の主鎖との結合位置を示し、nsは式Lsと同義である。
、XおよびXはそれぞれ独立に炭素原子を有する連結基を表し、X、XおよびXは炭素原子でスルホン酸基と結合していることが好ましい。
、XおよびXは上記連結基Ltを有する基であることが好ましく、または、連結基Ltと酸素原子、カルボニル基、および-NR-の少なくとも1つを組み合わせた基が好ましい。このとき、連結基Lt側でスルホン酸基が結合している。Rの詳細は後述するが、ここでは、Rは水素原子が好ましい。
式(1-3)におけるXは、連結基Ltであることが好ましい。一方、式(1-1)におけるXは連結基Ltに加え主鎖のNHと連結するカルボニル基を有していることが好ましい。式(1-2)におけるXも同様で連結基Ltに加え主鎖のカルボニル基と連結する酸素原子または-NR-を有していることが好ましい。
本発明の一実施形態として、式(1-1)、式(1-2)、式(1-3)が結合している主鎖の構成単位のA、A、R111、R113、R114、R115と、式(1-1)、式(1-2)、式(1-3)におけるA、A、R111、R113、R114、R115とが同じ基または同じ原子である形態が例示される。
【0045】
、X、X、Ltは本発明の効果を奏する範囲で置換基Tを有していてもよい。置換基Tは複数あるとき互いに結合して、あるいは連結基Lを介してまたは介さずに式中の環と結合して環を形成していてもよい。しかしながら、置換基を有していない方が好ましい。
【0046】
ポリイミド前駆体の主鎖を構成する芳香環(R115、R111の好ましい構造)にスルホン酸基を含む部位を導入する試薬として、*-Lt-(SOH)nsの構造をもつ化合物を用いることが好ましい。導入試薬を例示すると、スルホ安息香酸、アミノベンゼンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、ヒドロキシプロパンスルホン酸、プロパンスルトン、ブタンスルトンが挙げられる。スルホン酸基を含む部位を導入する方法は特に限定されないが、上記の試薬を必要により触媒とともにポリイミド前駆体と、またはその合成過程で反応させることにより得ることができる。これは、後記ポリベンゾオキサゾール前駆体についても同様である。
【0047】
本発明においては、ポリイミド前駆体の構成単位において、主鎖の芳香環に直接スルホン酸基が導入されているものが含まれていても、含まれていなくてもよい。本発明の効果を奏する範囲で、そのような直接連結したスルホン酸基があってもよく、例えば、10%以下、さらには1%以下の構成単位でそのような直接連結したスルホン酸基があるポリイミド前駆体となっていたとしても、条件やアプリケーションによっては十分に本発明の効果を奏するものと解される。
【0048】
置換基Tとしては、環状または直鎖もしくは分岐のアルキル基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6が特に好ましい)、環状または直鎖もしくは分岐のアルケニル基(炭素数2~24が好ましく、2~12がより好ましく、2~6が特に好ましい)、アルコキシル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい)、ヒドロキシル基、アミノ基(炭素数0~24が好ましく、0~12がより好ましく、0~6が特に好ましい)、チオール基、カルボキシル基、アシル基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3が特に好ましい)、アシルオキシ基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3が特に好ましい)、アリーロイル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11が特に好ましい)、アリーロイルオキシ基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11が特に好ましい)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、オキソ基(=O)、イミノ基(=NR)、アルキリデン基(=C(R)などが挙げられる。置換基Tのアルキレン鎖にはヘテロ原子が介在していてもよい。置換基Tのアルキル基、アルケニル基、アリール基、アリールアルキル基には、さらにその他の置換基が置換していてもよい。
は水素原子または有機基であり、有機基としてはアルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい)が好ましい。この有機基はさらに置換基Tを有していてもよい。
【0049】
連結基Lは、環状または直鎖もしくは分岐のアルキレン基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、環状または直鎖もしくは分岐のアルケニレン基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましい)、アリーレン基(炭素数6~22が好ましく、6~18より好ましく、6~10がさらに好ましい)、アリールアルキレン基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい)、ヘテロアリーレン基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましい;ヘテロ原子としては例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子が挙げられる)、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、-NR-、またはその組合せにかかる基である。連結基Lを構成する原子の数は水素原子を除いて、1~24であることが好ましく、1~12がより好ましく、1~6が特に好ましい。連結基の連結原子数は10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましい。下限としては、1以上である。上記連結原子数とは所定の構造部間を結ぶ経路に位置し連結に関与する最少の原子数をいう。たとえば、-CH-C(=O)-O-の場合、連結基を構成する原子の数は水素原子を除いて4となるが、連結原子数は3となる。
【0050】
ヘテロ原子を含む連結基Lhとしては、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、チオカルボニル基、スルホニル基、-NR-、またはこれらの組み合わせからなる連結基が挙げられる。ヘテロ原子を含む連結基Lhを構成する原子の数は1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が特に好ましい。ヘテロ原子を含む連結基Lhの特定の基の中に介在する原子の数は、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3が特に好ましい。Rは上記と同義である。
【0051】
ポリイミド前駆体に含まれるスルホン酸基の合計数が、全構成単位の合計数の、0.05%以上であることが好ましく、0.1%以上であることがより好ましく、0.2%以上であることがさらに好ましく、0.3%以上であることがより一層好ましく、0.35%以上であることがさらに一層好ましく、0.4%以上であることが特に一層好ましく、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であってもよい。上限は、100%以下であってもよいが、20.0%以下であることが好ましく、15.0%以下であることがより好ましく、10.0%以下であることがさらに好ましく、8.0%以下であることがより一層好ましく、6.0%以下であることがさらに一層好ましく、5.0%以下であることが特に一層好ましい。このスルホン酸基の割合を上記範囲とすることにより、保存安定性と銅腐食性との両立がより効果的に発揮される。
【0052】
ポリイミド前駆体は、上記スルホン酸基(好ましくは式(Ls)の基)を有する構成単位が、ポリイミド前駆体を構成する構成単位中のすべてを占めていてもよいが、一部において異なる構成単位を有してもよい。上記スルホン酸基を含む部位(好ましくは式(Ls)の基)を有する構成単位が全構成単位の0.05%以上であることが好ましく、0.1%以上であることがより好ましく、0.2%以上であることがさらに好ましく、0.3%以上であることがより一層好ましく、0.35%以上であることがさらに一層好ましく、0.4%以上であることが特に一層好ましく、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上であってもよい。上限は、100%以下であってもよいが、20.0%以下であることが好ましく、15.0%以下であることがより好ましく、10.0%以下であることがさらに好ましく、8.0%以下であることがより一層好ましく、6.0%以下であることがさらに一層好ましく、5.0%以下であることが特に一層好ましい。
【0053】
以下に、ポリイミド前駆体におけるスルホン酸基を有する構造の例を示す。本発明がこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
<<<ポリイミド前駆体の末端(主鎖末端)にスルホン酸基が結合している態様>>>
【化21】
【化22】
【0054】
<<<ポリイミド前駆体の側鎖(主鎖構造の側鎖)にスルホン酸基が結合している態様>>>
【化23】
【0055】
本発明におけるポリイミド前駆体の一実施形態として、全構成単位の50モル%以上、さらには70モル%以上、特には90モル%以上が式(1)で表される構成単位またはスルホン酸基を側鎖に有する構成単位であるポリイミド前駆体が例示される。上限としては100モル%以下が実際的である。
【0056】
ポリイミド前駆体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2,000~500,000であり、より好ましくは5,000~100,000であり、さらに好ましくは10,000~50,000である。また、数平均分子量(Mn)は、好ましくは800~250,000であり、より好ましくは、2,000~50,000であり、さらに好ましくは、4,000~25,000である。
ポリイミド前駆体の分子量の分散度(Mw/Mn)は、1.5~3.5が好ましく、2~3がより好ましい。
【0057】
ポリイミド前駆体は、ジカルボン酸またはジカルボン酸誘導体とジアミンを反応させて得られうる。好ましくは、ジカルボン酸またはジカルボン酸誘導体を、ハロゲン化剤を用いてハロゲン化させた後、ジアミンと反応させて得られうる。
ポリイミド前駆体の製造方法では、反応に際し、有機溶剤を用いることが好ましい。有機溶剤は1種でもよいし、2種以上でもよい。
有機溶剤としては、原料に応じて適宜定めることができるが、ピリジン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、N-メチルピロリドンおよびN-エチルピロリドンが例示される。
【0058】
ポリイミド前駆体の製造に際し、固体を析出する工程を含んでいることが好ましい。具体的には、反応液中のポリイミド前駆体を、水中に沈殿させ、テトラヒドロフラン等のポリイミド前駆体が可溶な溶剤に溶解させることによって、固体析出することができる。
【0059】
<<ポリベンゾオキサゾール前駆体>>
ポリベンゾオキサゾール前駆体は、下記式(2)で表される構成単位を含むことが好ましい。
【化24】
121は、2価の有機基を表し、R122は、4価の有機基を表し、R123およびR124は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表す。
【0060】
121は、2価の有機基を表す。2価の有機基としては、脂肪族基(炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6が特に好ましい)および芳香族基(炭素数6~22が好ましく、6~14がより好ましく、6~12が特に好ましい)の少なくとも一方を含む基が好ましい。R121を構成する芳香族基としては、上記式(1)のR111の例が挙げられる。上記脂肪族基としては、直鎖の脂肪族基が好ましい。R121は、4,4’-オキシジベンゾイルクロリドに由来することが好ましい。
122は、4価の有機基を表す。4価の有機基としては、上記式(1)におけるR115と同義であり、好ましい範囲も同様である。R122は、2,2'-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンに由来することが好ましい。
123およびR124は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表し、上記式(1)におけるR113およびR114と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0061】
ポリベンゾオキサゾール前駆体は下記式(2-1a)、(2-2a)、(2-3a)で表される部位を有することが好ましい。
【化25】
式中、R121、R122、R123、R124は、式(2)における定義と同様であり、好ましいものも同じである。*はポリベンゾオキサゾール前駆体の主鎖との結合位置を示す。Lsは上記式(Ls)の基である。ここで、式(2-1a)のときは、式(Ls)のLiは*1―NHCOであることが好ましい。式(2-2a)のときは、*1―COOやCONHであることが好ましい。式(2-3a)のときLiは、*1―OCOであることが好ましい。式(Ls)において、その他のLtやnsに関する規定は式(1)のときと同義である。なお、ここでは、*1はR121またはR122側の結合位置である。
【0062】
ポリベンゾオキサゾール前駆体は下記式(2-1)、(2-2)、(2-3)で表される部位を有することがさらに好ましい。
【化26】
式中、R121、R122、R123およびR124は式(2)と同義である。X、XおよびXはそれぞれ独立に連結基を表し、*はポリベンゾオキサゾール前駆体の主鎖との結合位置を示し、nsは1~4の整数を表す。
、XおよびXはそれぞれ独立に炭素原子を有する連結基を表し、X、XおよびXは炭素原子でスルホン酸基と結合していることが好ましい。
、XおよびXは、連結基Lt、または、これと酸素原子、カルボニル基、および-NR-の少なくとも1つを組み合わせた基が好ましい。nsは1または2が好ましく、1がより好ましい。
、X、X、Ltは本発明の効果を奏する範囲で置換基Tを有していてもよい。
【0063】
ポリベンゾオキサゾール前駆体中でのスルホン酸基を含む部位の数の比率は上記ポリイミド前駆体で規定したのと同様である。スルホン酸基を含む部位をポリベンゾオキサゾール前駆体に導入する試薬やその導入方法も上記ポリイミド前駆体で述べたものと同様である。
【0064】
以下に、ポリベンゾオキサゾール前駆体におけるスルホン酸基を有する構造の例を示す。本発明がこれらに限定されるものではないことは言うまでもない。
<<<ポリベンゾオキサゾール前駆体の末端にスルホン酸基が結合している態様>>>
【化27】
<<<ポリベンゾオキサゾール前駆体の側鎖にスルホン酸基が結合している態様>>>
【化28】
【0065】
ポリベンゾオキサゾール前駆体は上記の式(2)の構成単位のほかに、他の種類の構成単位も含んでよい。
閉環に伴う硬化膜の反りの発生を抑制できる点で、前駆体は、下記式(SL)で表されるジアミン残基を他の種類の構成単位として含むことが好ましい。
【0066】
【化29】
Zは、a構造とb構造を有し、R1sは水素原子または炭素数1~10の炭化水素基(好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~3)であり、R2sは炭素数1~10の炭化水素基(好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~3)であり、R3s、R4s、R5s、R6sのうち少なくとも1つは芳香族基(好ましくは炭素数6~22、より好ましくは炭素数6~18、特に好ましくは炭素数6~10)で、残りは水素原子または炭素数1~30(好ましくは炭素数1~18、より好ましくは炭素数1~12、特に好ましくは炭素数1~6)の有機基で、それぞれ同一でも異なっていてもよい。a構造およびb構造の重合は、ブロック重合でもランダム重合でもよい。Z部分において、好ましくは、a構造は5~95モル%、b構造は95~5モル%であり、a+bは100モル%である。
【0067】
式(SL)において、好ましいZとしては、b構造中のR5sおよびR6sがフェニル基であるものが挙げられる。また、式(SL)で示される構造の分子量は、400~4,000であることが好ましく、500~3,000がより好ましい。分子量は、一般的に用いられるゲル浸透クロマトグラフィによって求めることができる。上記分子量を上記範囲とすることで、ポリベンゾオキサゾール前駆体の脱水閉環後の弾性率を下げ、反りを抑制できる効果と溶解性を向上させる効果を両立することができる。
【0068】
前駆体が、他の種類の構成単位として式(SL)で表されるジアミン残基を含む場合、アルカリ可溶性を向上させる点で、さらに、テトラカルボン酸二無水物から酸二無水物基の除去後に残存するテトラカルボン酸残基を構成単位として含むことが好ましい。このようなテトラカルボン酸残基の例としては、式(1)中のR115の例が挙げられる。
【0069】
ポリベンゾオキサゾール前駆体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2,000~500,000であり、より好ましくは5,000~100,000であり、さらに好ましくは10,000~50,000である。また、数平均分子量(Mn)は、好ましくは800~250,000であり、より好ましくは、2,000~50,000であり、さらに好ましくは、4,000~25,000である。
ポリベンゾオキサゾール前駆体の分子量の分散度(Mw/Mn)は、1.5~3.5が好ましく、2~3がより好ましい。
【0070】
感光性樹脂組成物における、ポリマー前駆体の含有量は、組成物の全固形分に対し20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが一層好ましく、60質量%以上であることがより一層好ましく、70質量%以上であることがさらに一層好ましい。上限は、感光性樹脂組成物における、ポリマー前駆体の含有量は、組成物の全固形分に対し、99.5質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることがより好ましく、98質量%以下であることがさらに好ましく、95質量%以下であることが一層好ましく、95質量%以下であることがより一層好ましい。
感光性樹脂組成物は、ポリマー前駆体を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0071】
<溶剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を含有することが好ましい。溶剤は、公知の溶剤を任意に使用できる。溶剤は有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、エステル類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、スルホキシド類、アミド類などの化合物が挙げられる。
エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、アルキルオキシ酢酸アルキル(例えば、アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3-アルキルオキシプロピオン酸メチル、3-アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等))、2-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、2-アルキルオキシプロピオン酸メチル、2-アルキルオキシプロピオン酸エチル、2-アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル))、2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸メチルおよび2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸エチル(例えば、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル等が好適なものとして挙げられる。
エーテル類として、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等が好適なものとして挙げられる。
ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等が好適なものとして挙げられる。
芳香族炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン、アニソール、リモネン等が好適なものとして挙げられる。
スルホキシド類として、例えば、ジメチルスルホキシドが好適なものとして挙げられる。
アミド類として、N-メチル-2-ピロリドン、N -エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等が好適なものとして挙げられる。
【0072】
溶剤は、塗布面性状の改良などの観点から、2種以上を混合する形態も好ましい。
本発明では、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、N-メチル-2-ピロリドン、プロピレングリコールメチルエーテル、およびプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選択される1種の溶剤、または、2種以上で構成される混合溶剤が好ましい。ジメチルスルホキシドとγ-ブチロラクトンとの併用が特に好ましい。
【0073】
溶剤の含有量は、塗布性の観点から、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分濃度が5~80質量%になる量とすることが好ましく、5~75質量%となる量にすることがより好ましく、10~70質量%となる量にすることがさらに好ましく、40~70質量%となるようにすることが一層好ましい。溶剤含有量は、塗膜の所望の厚さと塗布方法によって調節すればよい。
溶剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。溶剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0074】
<光活性化合物>
本発明において、感光性樹脂組成物は光活性化合物を含む。光活性化合物の例としては光重合開始剤、光酸発生剤および光硬化促進剤が挙げられる。
【0075】
<<光重合開始剤>>
本発明の感光性樹脂組成物には、光重合開始剤を含有させてもよい。光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。
本発明で用いることができる光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光ラジカル重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視領域の光線に対して感光性を有する光ラジカル重合開始剤が好ましい。また、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよい。
光ラジカル重合開始剤は、約300~800nm(好ましくは330~500nm)の範囲内で少なくとも約50のモル吸光係数を有する化合物を、少なくとも1種含有していることが好ましい。化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いて測定することができる。例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶剤を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0076】
感光性樹脂組成物が光ラジカル重合開始剤を含むことにより、本発明の感光性樹脂組成物を半導体ウェハなどの基板に適用して感光性樹脂組成物層を形成した後、光を照射することで、発生するラジカルに起因する硬化が起こり、光照射部における溶解性を低下させることができる。このため、例えば、電極部のみをマスクするパターンを持つフォトマスクを介して感光性樹脂組成物層を露光することで、電極のパターンにしたがって、溶解性の異なる領域を簡便に作製できるという利点がある。
【0077】
光ラジカル重合開始剤としては、公知の化合物を任意に使用できる。例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有する化合物、オキサジアゾール骨格を有する化合物、トリハロメチル基を有する化合物など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノン、アゾ系化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、有機ホウ素化合物、鉄アレーン錯体などが挙げられる。これらの詳細については、特開2016-027357号公報の段落0165~0182の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0078】
ケトン化合物としては、例えば、特開2015-087611号公報の段落0087に記載の化合物が例示され、この内容は本明細書に組み込まれる。市販品では、カヤキュアーDETX(日本化薬(株)製)も好適に用いられる。
【0079】
光ラジカル重合開始剤としては、ヒドロキシアセトフェノン化合物、アミノアセトフェノン化合物、および、アシルホスフィン化合物も好適に用いることができる。より具体的には、例えば、特開平10-291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤、特許第4225898号に記載のアシルホスフィンオキシド系開始剤も用いることができる。
ヒドロキシアセトフェノン系開始剤としては、IRGACURE 184(IRGACUREは登録商標)、DAROCUR 1173、IRGACURE 500、IRGACURE-2959、IRGACURE 127(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。
アミノアセトフェノン系開始剤としては、市販品であるIRGACURE 907、IRGACURE 369、および、IRGACURE 379(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。
アミノアセトフェノン系開始剤として、365nmまたは405nm等の波長光源に吸収極大波長がマッチングされた特開2009-191179号公報に記載の化合物も用いることができる。
アシルホスフィン系開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイドなどが挙げられる。また、市販品であるIRGACURE-819やIRGACURE-TPO(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。
メタロセン化合物としては、IRGACURE-784(BASF社製)などが例示される。
【0080】
光ラジカル重合開始剤として、より好ましくはオキシム化合物が挙げられる。オキシム化合物を用いることにより、露光ラチチュードをより効果的に向上させることが可能になる。オキシム化合物は、露光ラチチュード(露光マージン)が広く、かつ、光硬化促進剤としても働くため、特に好ましい。
オキシム化合物の具体例としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-80068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物を用いることができる。
好ましいオキシム化合物としては、例えば、下記の構造の化合物や、3-ベンゾオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、および2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。本発明の感光性樹脂組成物においては、特に光ラジカル重合開始剤としてオキシム化合物(オキシム系の光重合開始剤)を用いることが好ましい。オキシム系の光重合開始剤は、分子内に >C=N-O-C(=O)- の連結基を有する。
【化30】
市販品ではIRGACURE OXE 01、IRGACURE OXE 02、IRGACURE OXE 03、IRGACURE OXE 04(以上、BASF社製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-14052号公報に記載の光ラジカル重合開始剤2)も好適に用いられる。また、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカアークルズNCI-831およびアデカアークルズNCI-930(ADEKA製)も用いることができる。また、DFI-091(ダイトーケミックス株式会社製)を用いることができる。
さらに、また、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることも可能である。そのようなオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載されている化合物、特表2014-500852号公報の段落0345に記載されている化合物24、36~40、特開2013-164471号公報の段落0101に記載されている化合物(C-3)などが挙げられる。
最も好ましいオキシム化合物としては、特開2007-269779号公報に示される特定置換基を有するオキシム化合物や、特開2009-191061号公報に示されるチオアリール基を有するオキシム化合物などが挙げられる。
【0081】
光ラジカル重合開始剤は、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム塩化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物およびその誘導体、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体およびその塩、ハロメチルオキサジアゾール化合物、3-アリール置換クマリン化合物からなる群より選択される化合物が好ましい。
さらに好ましい光ラジカル重合開始剤は、トリハロメチルトリアジン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、ホスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、オニウム塩化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物であり、トリハロメチルトリアジン化合物、α-アミノケトン化合物、オキシム化合物、トリアリールイミダゾールダイマー、ベンゾフェノン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が一層好ましく、メタロセン化合物またはオキシム化合物を用いるのがより一層好ましく、オキシム化合物がさらに一層好ましい。
また、光ラジカル重合開始剤は、ベンゾフェノン、N,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)等のN,N’-テトラアルキル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1,2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパノン-1等の芳香族ケトン、アルキルアントラキノン等の芳香環と縮環したキノン類、ベンゾインアルキルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンゾイン、アルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体などを用いることもできる。また、下記式(I)で表される化合物を用いることもできる。
【化31】
式(I)中、RI00は、炭素数1~20のアルキル基、1個以上の酸素原子によって中断された炭素数2~20のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシル基、フェニル基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシル基、ハロゲン原子、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、炭素数2~12のアルケニル基、1個以上の酸素原子によって中断された炭素数2~18のアルキル基および炭素数1~4のアルキル基の少なくとも1つで置換されたフェニル基、またはビフェニルであり、RI01は、式(II)で表される基であるか、RI00と同じ基であり、RI02~RI04は各々独立に炭素数1~12のアルキル、炭素数1~12のアルコキシまたはハロゲンである。
【化32】
式中、RI05~RI07は、上記式(I)のRI02~RI04と同じである。
【0082】
また、光ラジカル重合開始剤は、国際公開WO2015/125469号の段落0048~0055に記載の化合物を用いることもできる。
【0083】
光重合開始剤を含む場合、その含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対し0.1~30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~20質量%であり、さらに好ましくは0.5~15質量%であり、一層好ましくは1.0~10質量%である。光重合開始剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。光重合開始剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0084】
<<光酸発生剤>>
本発明においては、光活性化合物として、光酸発生剤を用いることができる。具体例としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線または放射線の照射により酸を発生する公知の化合物およびそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。例えば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o-ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。光酸発生剤を含む場合、その含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対し0.1~30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5~15質量%であり、さらに好ましくは0.5~10質量%であり、一層好ましくは0.5~5質量%である。光酸発生剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。光酸発生剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0085】
<<光硬化促進剤>>
本発明で用いる感光性樹脂組成物は、光硬化促進剤を含んでいてもよい。本発明における光硬化促進剤とは、露光により塩基を発生するものであり、常温常圧の通常の条件下では活性を示さないが、外部刺激として電磁波の照射と加熱が行なわれると、塩基(塩基性物質)を発生するものであれば特に限定されるものではない。露光により発生した塩基はポリマー前駆体を加熱により硬化させる際の触媒として働くため、好適に用いることができる。
本発明においては、光硬化促進剤として公知のものを用いることができる。例えば遷移金属化合物錯体や、アンモニウム塩などの構造を有するものや、アミジン部分がカルボン酸と塩を形成することで潜在化されたもののように、塩基成分が塩を形成することにより中和されたイオン性の化合物や、カルバメート誘導体、オキシムエステル誘導体、アシル化合物などのウレタン結合やオキシム結合などにより塩基成分が潜在化された非イオン性の化合物を挙げることができる。
【0086】
本発明に係る光硬化促進剤としては、例えば、特開2009-80452号公報および国際公開第2009/123122号パンフレットで開示されたような桂皮酸アミド構造を有する光硬化促進剤、特開2006-189591号公報および特開2008-247747号公報で開示されたようなカルバメート構造を有する光硬化促進剤、特開2007-249013号公報および特開2008-003581号公報で開示されたようなオキシム構造、カルバモイルオキシム構造を有する光硬化促進剤等が挙げられるが、これらに限定されず、その他にも公知の光硬化促進剤の構造を用いることができる。
【0087】
その他、光硬化促進剤としては、特開2012-93746号公報の段落0185~0188、0199~0200および0202に記載の化合物、特開2013-194205号公報の段落0022~0069に記載の化合物、特開2013-204019号公報の段落0026~0074に記載の化合物、ならびに国際公開WO2010/064631号公報の段落0052に記載の化合物が例として挙げられる。
【0088】
光硬化促進剤の市販品としては、WPBG-266、WPBG-300、WPGB-345、WPGB-140、WPBG-165、WPBG-027、PBG-018、WPGB-015、WPBG-041、WPGB-172、WPGB-174、WPBG-166、WPGB-158、WPGB-025、WPGB-168、WPGB-167およびWPBG-082(和光純薬工業(株)製)を用いることもできる。
【0089】
光硬化促進剤を用いる場合、組成物における光硬化促進剤の含有量は、組成物の全固形分に対し、0.1~50質量%であることが好ましい。下限は、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。上限は、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
光硬化促進剤は、1種または2種以上を用いることができる。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。
【0090】
<熱ラジカル重合開始剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で熱ラジカル重合開始剤を含んでいてもよい。
熱ラジカル重合開始剤は、熱のエネルギーによってラジカルを発生し、重合性を有する化合物の重合反応を開始または促進させる化合物である。熱ラジカル重合開始剤を添加することによって、ポリマー前駆体の環化と共に、ポリマー前駆体の重合反応を進行させることもできるので、より高度な耐熱化が達成できることとなる。
熱ラジカル重合開始剤として、具体的には、特開2008-63554号公報の段落0074~0118に記載されている化合物が挙げられる。
【0091】
熱ラジカル重合開始剤を含む場合、その含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対し0.1~30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1~20質量%であり、さらに好ましくは5~15質量%である。熱ラジカル重合開始剤は1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。熱ラジカル重合開始剤を2種以上含有する場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0092】
<重合性化合物>
<<ラジカル重合性化合物>>
本発明の感光性樹脂組成物はラジカル重合性化合物を含むことが好ましい。
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基を有する化合物を用いることができる。ラジカル重合性基としては、ビニルフェニル基、ビニル基、(メタ)アクリロイル基およびアリル基などのエチレン性不飽和結合を有する基が挙げられる。ラジカル重合性基は、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0093】
ラジカル重合性化合物が有するラジカル重合性基の数は、1個でもよく、2個以上でもよいが、ラジカル重合性化合物はラジカル重合性基を2個以上有することが好ましく、3個以上有することがより好ましい。上限は、15個以下が好ましく、10個以下がより好ましく、8個以下がさらに好ましい。
【0094】
ラジカル重合性化合物の分子量は、2000以下が好ましく、1500以下がより好ましく、900以下がさらに好ましい。ラジカル重合性化合物の分子量の下限は、100以上が好ましい。
【0095】
本発明の感光性樹脂組成物は、現像性の観点から、重合性基を2個以上含む2官能以上のラジカル重合性化合物を少なくとも1種含むことが好ましく、3官能以上のラジカル重合性化合物を少なくとも1種含むことがより好ましい。また、2官能のラジカル重合性化合物と3官能以上のラジカル重合性化合物との混合物であってもよい。なお、ラジカル重合性化合物の官能基数は、1分子中におけるラジカル重合性基の数を意味する。
【0096】
ラジカル重合性化合物の具体例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)やそのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル、および不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類である。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と、単官能若しくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物や、単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、さらに、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等のビニルベンゼン誘導体、ビニルエーテル、アリルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。具体例としては、特開2016-027357号公報の段落0113~0122の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0097】
また、ラジカル重合性化合物は、常圧下で100℃以上の沸点を持つ化合物も好ましい。その例としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後、(メタ)アクリレート化した化合物、特公昭48-41708号公報、特公昭50-6034号公報、特開昭51-37193号各公報に記載されているようなウレタン(メタ)アクリレート類、特開昭48-64183号、特公昭49-43191号、特公昭52-30490号各公報に記載されているポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートおよびこれらの混合物を挙げることができる。また、特開2008-292970号公報の段落0254~0257に記載の化合物も好適である。また、多官能カルボン酸にグリシジル(メタ)アクリレート等の環状エーテル基とエチレン性不飽和結合を有する化合物を反応させて得られる多官能(メタ)アクリレートなども挙げることができる。
また、上述以外の好ましいラジカル重合性化合物として、特開2010-160418号公報、特開2010-129825号公報、特許第4364216号公報等に記載される、フルオレン環を有し、エチレン性不飽和結合を有する基を2個以上有する化合物や、カルド樹脂も使用することが可能である。
さらに、その他の例としては、特公昭46-43946号公報、特公平1-40337号公報、特公平1-40336号公報に記載の特定の不飽和化合物や、特開平2-25493号公報に記載のビニルホスホン酸系化合物等もあげることができる。また、特開昭61-22048号公報に記載のペルフルオロアルキル基を含む化合物を用いることもできる。さらに日本接着協会誌 vol.20、No.7、300~308ページ(1984年)に光重合性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0098】
上記のほか、特開2015-034964号公報の段落0048~0051に記載の化合物も好ましく用いることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0099】
また、特開平10-62986号公報において式(1)および式(2)としてその具体例と共に記載の、多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後に(メタ)アクリレート化した化合物も、ラジカル重合性化合物として用いることができる。
【0100】
さらに、特開2015-187211号公報の段落0104~0131に記載の化合物も他のラジカル重合性化合物として用いることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0101】
ラジカル重合性化合物としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては KAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては KAYARAD D-320;日本化薬(株)製、A-TMMT:新中村化学工業社製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、A-DPH;新中村化学工業社製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール残基またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。
【0102】
ラジカル重合性化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ鎖を4個有する4官能アクリレートであるSR-494、エチレンオキシ鎖を4個有する2官能メタクリレートであるサートマー社製のSR-209、231、239、日本化薬(株)製のペンチレンオキシ鎖を6個有する6官能アクリレートであるDPCA-60、イソブチレンオキシ鎖を3個有する3官能アクリレートであるTPA-330、ウレタンオリゴマーUAS-10、UAB-140(日本製紙社製)、NKエステルM-40G、NKエステル4G、NKエステルM-9300、NKエステルA-9300、UA-7200(新中村化学工業社製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600(共栄社化学社製)、ブレンマーPME400(日油(株)製)などが挙げられる。
【0103】
ラジカル重合性化合物としては、特公昭48-41708号公報、特開昭51-37193号公報、特公平2-32293号公報、特公平2-16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-49860号公報、特公昭56-17654号公報、特公昭62-39417号公報、特公昭62-39418号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。さらに、ラジカル重合性化合物として、特開昭63-277653号公報、特開昭63-260909号公報、特開平1-105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する化合物を用いることもできる。
【0104】
ラジカル重合性化合物は、カルボキシル基、リン酸基等の酸基を有するラジカル重合性化合物であってもよい。酸基を有するラジカル重合性化合物は、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルが好ましく、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシル基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせたラジカル重合性化合物がより好ましい。特に好ましくは、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシル基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせたラジカル重合性化合物において、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールである化合物である。市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製の多塩基酸変性アクリルオリゴマーとして、M-510、M-520などが挙げられる。
酸基を有するラジカル重合性化合物の好ましい酸価は、0.1~40mgKOH/gであり、特に好ましくは5~30mgKOH/gである。ラジカル重合性化合物の酸価が上記範囲であれば、製造や取扱性に優れ、さらには、現像性に優れる。また、重合性が良好である。
【0105】
本発明の感光性樹脂組成物は、硬化膜の弾性率制御に伴う反り抑制の観点から、ラジカル重合性化合物として、単官能ラジカル重合性化合物を好ましく用いることができる。単官能ラジカル重合性化合物としては、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等のN-ビニル化合物類、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート等のアリル化合物類等が好ましく用いられる。単官能ラジカル重合性化合物としては、露光前の揮発を抑制するため、常圧下で100℃以上の沸点を持つ化合物も好ましい。
【0106】
<<上述したラジカル重合性化合物以外の重合性化合物>>
本発明の感光性樹脂組成物は、上述したラジカル重合性化合物以外の重合性化合物をさらに含むことができる。上述したラジカル重合性化合物以外の重合性化合物としては、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基またはアシルオキシメチル基を有する化合物;エポキシ化合物;オキセタン化合物;ベンゾオキサジン化合物が挙げられる。
【0107】
(ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基またはアシルオキシメチル基を有する化合物)
ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基またはアシルオキシメチル基を有する化合物としては、下記式(AM1)、(AM4)または(AM5)で示される化合物が好ましい。
【0108】
【化33】
(式中、tは、1~20の整数を示し、R104は炭素数1~200のt価の有機基を示し、R105は、-OR106または、-OCO-R107で示される基を示し、R106は、水素原子または炭素数1~10の有機基を示し、R107は、炭素数1~10の有機基を示す。)
【0109】
【化34】
(式中、R404は炭素数1~200の2価の有機基を示し、R405は、-OR406または、-OCO-R407で示される基を示し、R406は、水素原子または炭素数1~10の有機基を示し、R407は、炭素数1~10の有機基を示す。)
【0110】
【化35】
(式中uは3~8の整数を示し、R504は炭素数1~200のu価の有機基を示し、R505は、-OR506または、-OCO-R507で示される基を示し、R506は、水素原子または炭素数1~10の有機基を示し、R507は、炭素数1~10の有機基を示す。)
【0111】
式(AM4)で示される化合物の具体例としては、46DMOC、46DMOEP(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)、DML-MBPC、DML-MBOC、DML-OCHP、DML-PCHP、DML-PC、DML-PTBP、DML-34X、DML-EP、DML-POP、dimethylolBisOC-P、DML-PFP、DML-PSBP、DML-MTrisPC(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、NIKALAC MX-290(商品名、(株)三和ケミカル製)、2,6-dimethoxymethyl-4-t-butylphenol、2,6-dimethoxymethyl-p-cresol、2,6-diacetoxymethyl-p-cresolなどが挙げられる。
【0112】
また、式(AM5)で示される化合物の具体例としては、TriML-P、TriML-35XL、TML-HQ、TML-BP、TML-pp-BPF、TML-BPA、TMOM-BP、HML-TPPHBA、HML-TPHAP、HMOM-TPPHBA、HMOM-TPHAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、TM-BIP-A(商品名、旭有機材工業(株)製)、NIKALAC MX-280、NIKALAC MX-270、NIKALAC MW-100LM(以上、商品名、(株)三和ケミカル製)が挙げられる。
【0113】
(エポキシ化合物(エポキシ基を有する化合物))
エポキシ化合物としては、一分子中にエポキシ基を2以上有する化合物であることが好ましい。エポキシ基は、200℃以下で架橋反応し、かつ、架橋に由来する脱水反応が起こらないため膜収縮が起きにくい。このため、エポキシ化合物を含有することは、組成物の低温硬化および反りの抑制に効果的である。
【0114】
エポキシ化合物は、ポリエチレンオキサイド基を含有することが好ましい。これにより、より弾性率が低下し、また反りを抑制することができる。ポリエチレンオキサイド基は、エチレンオキサイドの構成単位数が2以上のものを意味し、構成単位数が2~15であることが好ましい。
【0115】
エポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂;ビスフェノールF型エポキシ樹脂;プロピレングリコールジグリシジルエーテル等のアルキレングリコール型エポキシ樹脂;ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコール型エポキシ樹脂;ポリメチル(グリシジロキシプロピル)シロキサン等のエポキシ基含有シリコーンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。具体的には、エピクロン(登録商標)850-S、エピクロン(登録商標)HP-4032、エピクロン(登録商標)HP-7200、エピクロン(登録商標)HP-820、エピクロン(登録商標)HP-4700、エピクロン(登録商標)EXA-4710、エピクロン(登録商標)HP-4770、エピクロン(登録商標)EXA-859CRP、エピクロン(登録商標)EXA-1514、エピクロン(登録商標)EXA-4880、エピクロン(登録商標)EXA-4850-150、エピクロンEXA-4850-1000、エピクロン(登録商標)EXA-4816、エピクロン(登録商標)EXA-4822(以上商品名、大日本インキ化学工業(株)製)、リカレジン(登録商標)BEO-60E(商品名、新日本理化(株))、EP-4003S、EP-4000S(以上商品名、(株)ADEKA製)などが挙げられる。この中でも、ポリエチレンオキサイド基を含有するエポキシ樹脂が、反りの抑制および耐熱性に優れる点で好ましい。例えば、エピクロン(登録商標)EXA-4880、エピクロン(登録商標)EXA-4822、リカレジン(登録商標)BEO-60Eは、ポリエチレンオキサイド基を含有するので好ましい。
【0116】
(オキセタン化合物(オキセタニル基を有する化合物))
オキセタン化合物としては、一分子中にオキセタン環を2つ以上有する化合物、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルメチル)オキセタン、1,4-ベンゼンジカルボン酸-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]エステル等を挙げることができる。具体的な例としては、東亞合成株式会社製のアロンオキセタンシリーズ(例えば、OXT-121、OXT-221、OXT-191、OXT-223)が好適に使用することができ、これらは単独で、あるいは2種以上混合してもよい。
【0117】
(ベンゾオキサジン化合物(ベンゾオキサゾリル基を有する化合物))
ベンゾオキサジン化合物は、開環付加反応に由来する架橋反応のため、硬化時に脱ガスが発生せず、さらに熱収縮を小さくして反りの発生が抑えられることから好ましい。
【0118】
ベンゾオキサジン化合物の好ましい例としては、B-a型ベンゾオキサジン、B-m型ベンゾオキサジン(以上、商品名、四国化成工業社製)、ポリヒドロキシスチレン樹脂のベンゾオキサジン付加物、フェノールノボラック型ジヒドロベンゾオキサジン化合物が挙げられる。これらは単独で用いるか、あるいは2種以上混合してもよい。
【0119】
重合性化合物を含有する場合、その含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0質量%超60質量%以下であることが好ましい。下限は5質量%以上がより好ましい。上限は、50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
重合性化合物は1種を単独で用いてもよいが、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を併用する場合にはその合計量が上記の範囲となることが好ましい。
【0120】
<マイグレーション抑制剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、さらにマイグレーション抑制剤を含むことが好ましい。マイグレーション抑制剤を含むことにより、金属層(金属配線)由来の金属イオンが感光性樹脂組成物層内へ移動することを効果的に抑制可能となる。
マイグレーション抑制剤としては、特に制限はないが、複素環(ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、テトラゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、2H-ピラン環および6H-ピラン環、トリアジン環)を有する化合物、チオ尿素類およびメルカプト基を有する化合物、ヒンダードフェノール系化合物、サリチル酸誘導体系化合物、ヒドラジド誘導体系化合物が挙げられる。特に、1,2,4-トリアゾール、ベンゾトリアゾール等のトリアゾール系化合物、1H-テトラゾール、5-フェニルテトラゾール等のテトラゾール系化合物が好ましく使用できる。
【0121】
また、ハロゲンイオンなどの陰イオンを捕捉するイオントラップ剤を使用することもできる。
【0122】
その他のマイグレーション抑制剤としては、特開2013-15701号公報の段落0094に記載の防錆剤、特開2009-283711号公報の段落0073~0076に記載の化合物、特開2011-59656号公報の段落0052に記載の化合物、特開2012-194520号公報の段落0114、0116および0118に記載の化合物などを使用することができる。
【0123】
マイグレーション抑制剤の具体例としては、下記化合物を挙げることができる。
【化36】
【0124】
感光性樹脂組成物がマイグレーション抑制剤を有する場合、マイグレーション抑制剤の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.01~5.0質量%であることが好ましく、0.05~2.0質量%であることがより好ましく、0.1~1.0質量%であることがさらに好ましい。
マイグレーション抑制剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。マイグレーション抑制剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0125】
<重合禁止剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、重合禁止剤を含むことが好ましい。
重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、4-メトキシフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、p-tert-ブチルカテコール、1,4-ベンゾキノン、ジフェニル-p-ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、フェノチアジン、N-ニトロソジフェニルアミン、N-フェニルナフチルアミン、エチレンジアミン四酢酸、1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、2-ニトロソ-5-(N-エチル-N-スルホプロピルアミノ)フェノール、N-ニトロソ-N-(1-ナフチル)ヒドロキシアミンアンモニウム塩、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-tert-ブチル)フェニルメタンなどが好適に用いられる。また、特開2015-127817号公報の段落0060に記載の重合禁止剤、および、国際公開WO2015/125469号の段落0031~0046に記載の化合物を用いることもできる。
また、下記化合物を用いることができる(Meはメチル基である)。
【化37】
本発明の感光性樹脂組成物が重合禁止剤を有する場合、重合禁止剤の含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.01~5質量%であることが好ましく、0.02~3質量%であることがより好ましく、0.05~2.5質量%であることがさらに好ましい。
重合禁止剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。重合禁止剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0126】
<金属接着性改良剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、電極や配線などに用いられる金属材料との接着性を向上させるための金属接着性改良剤を含んでいることが好ましい。金属接着性改良剤としては、シランカップリング剤などが挙げられる。
【0127】
シランカップリング剤の例としては、特開2014-191002号公報の段落0062~0073に記載の化合物、国際公開WO2011/080992A1号の段落0063~0071に記載の化合物、特開2014-191252号公報の段落0060~0061に記載の化合物、特開2014-41264号公報の段落0045~0052に記載の化合物、国際公開WO2014/097594号の段落0055に記載の化合物が挙げられる。また、特開2011-128358号公報の段落0050~0058に記載のように異なる2種以上のシランカップリング剤を用いることも好ましい。また、シランカップリング剤は、下記化合物を用いることも好ましい。以下の式中、Etはエチル基を表す。
【化38】
【0128】
また、金属接着性改良剤は、特開2014-186186号公報の段落0046~0049に記載の化合物、特開2013-072935号公報の段落0032~0043に記載のスルフィド系化合物を用いることもできる。
【0129】
金属接着性改良剤の含有量はポリマー前駆体100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部であり、より好ましくは0.5~15質量部の範囲であり、さらに好ましくは0.5~5質量部の範囲である。上記下限値以上とすることで硬化工程後の硬化膜と金属層との接着性が良好となり、上記上限値以下とすることで硬化工程後の硬化膜の耐熱性、機械特性が良好となる。金属接着性改良剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。2種以上用いる場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0130】
<硬化促進剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化促進剤は、熱硬化促進剤でも光硬化促進剤でもよい。本発明における硬化促進剤とは、熱や露光等により塩基を発生するもの(塩基発生剤)であるものが好ましい。
<<熱硬化促進剤>>
熱硬化促進剤は第四級アンモニウムカチオンとカルボン酸アニオンとの塩が好ましい。この第四級アンモニウムカチオンは、下記式(Y1-1)~式(Y1-4)のいずれかで表されることが好ましい。
【化39】
【0131】
Y1は、n価(nは、1~12の整数)の有機基を表し、n価の炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基としては、アルカンを含むn価の基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アルケンを含むn価の基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、芳香族炭化水素を含むn価の基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、またはそれらの組み合わせが挙げられる。RY1は中でも芳香族炭化水素基であることが好ましい。RY1は本発明の効果を損ねない範囲で、前述の置換基Tを有していてもよい。
Y2~RY5は、それぞれ独立に、水素原子または炭化水素基(炭素数1~36が好ましく、1~24がより好ましく、1~12がさらに好ましい)を表し、アルキル基(炭素数1~36が好ましく、1~24がより好ましく、1~23がさらに好ましい)、アルケニル基(炭素数2~36が好ましく、2~24がより好ましく、2~23がさらに好ましい)、アルキニル基(炭素数1~36が好ましく、1~24がより好ましく、1~23がさらに好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)が好ましい。このアルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、環状でも鎖状でもよく、鎖状の場合は、直鎖状でも分岐状でもよい。
Y6はアルキル基(炭素数1~36が好ましく、2~24がより好ましく、4~18がさらに好ましい)、アルケニル基(炭素数2~36が好ましく、2~24がより好ましく、4~18がさらに好ましい)、アルキニル基(炭素数2~36が好ましく、2~24がより好ましく、4~18がさらに好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)である。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基は環状でも鎖状でもよく、鎖状の場合は、直鎖状でも分岐状でもよい。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基には、基の途中に、あるいは母核との連結に、ヘテロ原子を含む連結基Lhが介在していてもよい。
は、1~12の整数を表し、1~6の整数がより好ましく、1~3の整数がさらに好ましい。
は1~12の整数を表し、1~6の整数が好ましく、1~3の整数がさらに好ましい。
Y2~RY6はそれぞれその2つ以上が互いに結合して環を形成してもよい。
【0132】
Y7~RY16はRと同義の基である。式(Y1-2)において、RY7およびRY8はカルボキシアルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい;カルボキシル基の数は1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)が好ましい。RY9は芳香族基が好ましく、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)が好ましい。あるいは、芳香族基が置換したアルコキシカルボニル基が好ましい(アルコキシル基は炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい、芳香族基は炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~14がさらに好ましい)。式(Y1-3)において、RY11およびRY13は水素原子であることが好ましい。RY14およびRY15は2つが組み合わさって、=C(NR の形の置換基になっていてもよい( = は二重結合で窒素原子に結合することを意味する)。式(Y1-4)において、RY13は水素原子であることが好ましく、RY10、RY11、RY12、RY16はアルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)であることが好ましい。このとき、RY11とRY16、RY10とRY12が結合して環を形成しビシクロ化合物となっていることが好ましい。具体的には、ジアザビシクロノネン、ジアザビシクロウンデセンが挙げられる。
【0133】
本実施形態において、上記式(Y1-1)、式(Y1-3)および式(Y1-4)の第四級アンモニウムカチオンと対になるカルボン酸アニオンは、下記式(X1)で表されることが好ましい。
【化40】
式(X1)において、EWGは、電子求引性基を表す。
【0134】
本実施形態において電子求引性基とは、ハメットの置換基定数σmが正の値を示すものを意味する。ここでσmは、都野雄甫総説、有機合成化学協会誌第23巻第8号(1965)p.631-642に詳しく説明されている。なお、本実施形態における電子求引性基は、上記文献に記載された置換基に限定されるものではない。
σmが正の値を示す置換基の例としては、CF基(σm=0.43)、CFCO基(σm=0.63)、HC≡C基(σm=0.21)、CH=CH基(σm=0.06)、Ac基(σm=0.38)、MeOCO基(σm=0.37)、MeCOCH=CH基(σm=0.21)、PhCO基(σm=0.34)、HNCOCH基(σm=0.06)などが挙げられる。なお、Meはメチル基を表し、Acはアセチル基を表し、Phはフェニル基を表す(以下、同じ)。
【0135】
EWGは、下記式(EWG-1)~(EWG-6)で表される基であることが好ましい。
【化41】
式(EWG-1)~(EWG-6)中、Rx1~Rx3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、ヒドロキシル基、またはカルボキシル基を表す。Arは芳香族基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)を表す。Rx1~Rx3がアルキル基、アルケニル基、アリール基のとき、環を形成してもよく、環を形成する際にはその途中に上記連結基L、あるいは、上記ヘテロ原子を有する連結基Lhを介在していてもよい。これらのアルキル基、アルケニル基、アリール基、ならびに、Arは、本発明の効果を損ねない範囲で、置換基Tを有していてもよい。なかでも、Arは特にカルボキシル基(好ましくは1~3個)を有することが好ましい。*は結合位置を表す。
Npは1~6の整数を表し、1~3の整数が好ましく、1または2がより好ましい。
【0136】
本発明における熱硬化促進剤の分子量は、好ましくは、100以上2000未満であり、より好ましくは200~1000である。
本発明における熱硬化促進剤の具体例としては、実施例で用いるD-1~D-3の他、WO2015/199219号公報に記載の40℃以上に加熱すると塩基を発生する酸性化合物およびpKa1が0~4のアニオンとアンモニウムカチオンを有するアンモニウム塩が例示され、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0137】
熱硬化促進剤を用いる場合、組成物における熱硬化促進剤の含有量は、組成物の全固形分に対し、0.01~50質量%であることが好ましい。下限は、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。上限は、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
熱硬化促進剤は、1種または2種以上を用いることができる。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲であることが好ましい。また、本発明の組成物は、熱硬化促進剤を実質的に含まない構成とすることもできる。実質的に含まないとは、組成物の全固形分に対し、0.01質量%未満であることをいい、0.005質量%未満であることがより好ましい。
【0138】
<その他の添加剤>
本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、各種の添加物、例えば、熱酸発生剤、増感色素、連鎖移動剤、界面活性剤、高級脂肪酸誘導体、無機粒子、硬化剤、硬化触媒、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を配合することができる。これらの添加剤を配合する場合、その合計配合量は組成物の固形分の3質量%以下とすることが好ましい。
【0139】
<<熱酸発生剤>>
本発明の感光性樹脂組成物は、熱酸発生剤を含んでいてもよい。熱酸発生剤は、加熱により酸を発生し、ポリマー前駆体の環化を促進し硬化膜の機械特性をより向上させる。熱酸発生剤は、特開2013-167742号公報の段落0059に記載の化合物などが挙げられる。
【0140】
熱酸発生剤の含有量は、ポリマー前駆体100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。熱酸発生剤を0.01質量部以上含有することで、架橋反応およびポリマー前駆体の環化が促進されるため、硬化膜の機械特性および耐薬品性をより向上させることができる。また、熱酸発生剤の含有量は、硬化膜の電気絶縁性の観点から、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。
熱酸発生剤は、1種のみ用いても、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0141】
<<増感色素>>
本発明の感光性樹脂組成物は、増感色素を含んでいてもよい。増感色素は、特定の活性放射線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感色素は、熱硬化促進剤、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤などと接触して、電子移動、エネルギー移動、発熱などの作用が生じる。これにより、熱硬化促進剤、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤は化学変化を起こして分解し、ラジカル、酸あるいは塩基を生成する。増感色素の詳細については、特開2016-027357号公報の段落0161~0163の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0142】
本発明の感光性樹脂組成物が増感色素を含む場合、増感色素の含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対し、0.01~20質量%であることが好ましく、0.1~15質量%であることがより好ましく、0.5~10質量%であることがさらに好ましい。増感色素は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0143】
<<連鎖移動剤>>
本発明の感光性樹脂組成物は、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤は、例えば高分子辞典第三版(高分子学会編、2005年)683-684頁に定義されている。連鎖移動剤としては、例えば、分子内にSH、PH、SiH、およびGeHを有する化合物群が用いられる。これらは、低活性のラジカルに水素を供与して、ラジカルを生成するか、もしくは、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。特に、チオール化合物(例えば、2-メルカプトベンズイミダゾール類、2-メルカプトベンズチアゾール類、2-メルカプトベンズオキサゾール類、3-メルカプトトリアゾール類、5-メルカプトテトラゾール類等)を好ましく用いることができる。
【0144】
本発明の感光性樹脂組成物が連鎖移動剤を有する場合、連鎖移動剤の含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分100質量部に対し、0.01~20質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましく、1~5質量部がさらに好ましい。連鎖移動剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。連鎖移動剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0145】
<<界面活性剤>>
本発明の感光性樹脂組成物には、塗布性をより向上させる観点から、各種類の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種類の界面活性剤を使用できる。また、下記界面活性剤も好ましい。
【化42】
【0146】
本発明の感光性樹脂組成物が界面活性剤を有する場合、界面活性剤の含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.001~2.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.005~1.0質量%である。界面活性剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。界面活性剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0147】
<<高級脂肪酸誘導体>>
本発明の感光性樹脂組成物は、酸素に起因する重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体を添加して、塗布後の乾燥の過程で組成物の表面に偏在させてもよい。
本発明の感光性樹脂組成物が高級脂肪酸誘導体を有する場合、高級脂肪酸誘導体の含有量は、本発明の感光性樹脂組成物の全固形分に対して、0.1~10質量%であることが好ましい。高級脂肪酸誘導体は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。高級脂肪酸誘導体が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0148】
<その他の含有物質についての制限>
本発明の感光性樹脂組成物の水分含有量は、塗布面性状の観点から、5質量%未満が好ましく、1質量%未満がより好ましく、0.6質量%未満がさらに好ましい。
【0149】
本発明の感光性樹脂組成物の金属含有量は、絶縁性の観点から、5質量ppm(parts per million)未満が好ましく、1質量ppm未満がより好ましく、0.5質量ppm未満がさらに好ましい。金属としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、クロム、ニッケルなどが挙げられる。金属を複数含む場合は、これらの金属の合計が上記範囲であることが好ましい。
また、本発明の感光性樹脂組成物に意図せずに含まれる金属不純物を低減する方法としては、本発明の感光性樹脂組成物を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、本発明の感光性樹脂組成物を構成する原料に対してフィルターろ過を行う、装置内をポリテトラフロロエチレン等でライニングしてコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法を挙げることができる。
【0150】
本発明の感光性樹脂組成物は、半導体材料としての用途を考慮すると、ハロゲン原子の含有量が、配線腐食性の観点から、500質量ppm未満が好ましく、300質量ppm未満がより好ましく、200質量ppm未満がさらに好ましい。中でも、ハロゲンイオンの状態で存在するものは、5質量ppm未満が好ましく、1質量ppm未満がより好ましく、0.5質量ppm未満がさらに好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子および臭素原子が挙げられる。塩素原子および臭素原子、あるいは塩素イオンおよび臭素イオンの合計がそれぞれ上記範囲であることが好ましい。
【0151】
本発明の感光性樹脂組成物の収納容器としては従来公知の収納容器を用いることができる。また、収納容器としては、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成された多層ボトルや、6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0152】
<組成物の調製>
本発明の感光性樹脂組成物は、上記各成分を混合して調製することができる。混合方法は特に限定はなく、従来公知の方法で行うことができる。
また、組成物中のゴミや微粒子等の異物を除去する目的で、フィルターを用いたろ過を行うことが好ましい。フィルター孔径は、1μm以下が好ましく、0.5μm以下がより好ましく、0.1μm以下がさらに好ましい。フィルターの材質は、ポリテトラフロロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルターろ過工程では、複数種のフィルターを直列または並列に接続して用いてもよい。複数種のフィルターを使用する場合は、孔径または材質が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回ろ過してもよい。複数回ろ過する場合は、循環ろ過であってもよい。また、加圧してろ過を行ってもよい。加圧してろ過を行う場合、加圧する圧力は0.05MPa以上0.3MPa以下が好ましい。
フィルターを用いたろ過の他、吸着材を用いた不純物の除去処理を行ってもよい。フィルターろ過と吸着材を用いた不純物除去処理とを組み合わせてもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができる。例えば、シリカゲル、ゼオライトなどの無機系吸着材、活性炭などの有機系吸着材が挙げられる。
本発明の感光性樹脂組成物はポリマー前駆体がスルホン酸基を有することから比較的高温における保管に耐える。-60℃~40℃での保管により適しており、さらに好ましい保管温度-20℃~10℃である。
【0153】
<硬化膜、積層体、半導体デバイス、およびそれらの製造方法>
次に、硬化膜、積層体、半導体デバイス、およびそれらの製造方法について説明する。
本発明の硬化膜は、本発明の感光性樹脂組成物を硬化してなる。本発明の硬化膜の膜厚は、例えば、0.5μm以上とすることができ、1μm以上とすることができる。また、上限値としては、100μm以下とすることができ、30μm以下とすることもできる。
【0154】
本発明の硬化膜を2層以上、さらには、3~7層積層して積層体としてもよい。本発明の硬化膜を2層以上有する積層体は、硬化膜の間に金属層を有する態様が好ましい。このような金属層は、再配線層などの金属配線として好ましく用いられる。
【0155】
本発明の硬化膜の適用可能な分野としては、半導体デバイスの絶縁膜、再配線層用層間絶縁膜、ストレスバッファ膜などが挙げられる。そのほか、封止フィルム、基板材料(フレキシブルプリント基板のベースフィルムやカバーレイ、層間絶縁膜)、あるいは上記のような実装用途の絶縁膜をエッチングでパターン形成することなどが挙げられる。これらの用途については、例えば、サイエンス&テクノロジー株式会社「ポリイミドの高機能化と応用技術」2008年4月、柿本雅明/監修、CMCテクニカルライブラリー「ポリイミド材料の基礎と開発」2011年11月発行、日本ポリイミド・芳香族系高分子研究会/編「最新ポリイミド 基礎と応用」エヌ・ティー・エス,2010年8月等を参照することができる。
【0156】
また、本発明における硬化膜は、オフセット版面またはスクリーン版面などの版面の製造、成形部品のエッチングへの使用、エレクトロニクス、特に、マイクロエレクトロニクスにおける保護ラッカーおよび誘電層の製造などにも用いることもできる。
【0157】
本発明の硬化膜の製造方法は、本発明の感光性樹脂組成物を用いることを含む。具体的には、本発明の感光性樹脂組成物を基板に適用して層状にする層形成工程と、層状にした感光性樹脂組成物を50~500℃で加熱する加熱工程とを含む。好ましくは、硬化膜の製造方法は、さらに、上記の層形成工程の後、上記層を露光する露光工程と、上記露光された感光性樹脂組成物層(樹脂層)に対して、現像処理を行う現像処理工程とを有する製造方法が挙げられる。この現像の後、加熱(好ましくは50~500℃で加熱)することで露光された樹脂層をさらに硬化させることができる。なお、上記のとおり、感光性樹脂組成物を用いる場合には、あらかじめ露光により組成物を硬化しておき、その後に必要により所望の加工(例えば下記の積層)を施して、さらに加熱により硬化させることができる。
【0158】
本発明の積層体の製造方法は、本発明の硬化膜の製造方法を含む。本発明の積層体の製造方法は、上記の硬化膜の製造方法に従って、硬化膜を形成後、さらに、再度、感光性樹脂組成物の層形成工程および加熱工程、あるいは、感光性を付した場合には、層形成工程、露光工程、および現像処理工程(必要によりさらに加熱工程)を、上記順に行うことが好ましい。特に、上記各工程を順に2~5回(すなわち、合計で3~6回)行うことが好ましい。このように硬化膜を積層することにより、積層体とすることができる。本発明では特に硬化膜を設けた部分の上または硬化膜の間、あるいはその両者に金属層を設けることが好ましい。
以下これらの詳細を説明する。
【0159】
<<層形成工程>>
本発明の好ましい実施形態に係る製造方法は、感光性樹脂組成物を基板に適用して層状にする、層形成工程を含む。
基板の種類は、用途に応じて適宜定めることができるが、シリコン、窒化シリコン、ポリシリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンなどの半導体作製基板、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、紙、SOG(Spin On Glass)、TFT(薄膜トランジスタ)アレイ基板、プラズマディスプレイパネル(PDP)の電極板など特に制約されない。本発明では、特に、半導体作製基板が好ましく、シリコン基板がより好ましい。
また、樹脂層の表面や金属層の表面に感光性樹脂組成物層を形成する場合は、樹脂層や金属層が基板となる。
感光性樹脂組成物を基板に適用する手段としては、塗布が好ましい。
具体的には、適用する手段としては、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スプレーコート法、スピンコート法、スリットコート法、およびインクジェット法などが例示される。感光性樹脂組成物層の厚さの均一性の観点から、より好ましくはスピンコート法、スリットコート法、スプレーコート法、インクジェット法である。方法に応じて適切な固形分濃度や塗布条件を調整することで、所望の厚さの樹脂層を得ることができる。また、基板の形状によっても塗布方法を適宜選択でき、ウェハ等の円形基板であればスピンコート法やスプレーコート法、インクジェット法等が好ましく、矩形基板であればスリットコート法やスプレーコート法、インクジェット法等が好ましい。スピンコート法の場合は、例えば、500~2000rpmの回転数で、10秒~1分程度適用することができる。
【0160】

<<乾燥工程>>
本発明の製造方法は、感光性樹脂組成物層を形成後、層形成工程の後に、溶剤を除去するために乾燥する工程を含んでいてもよい。好ましい乾燥温度は50~150℃で、70℃~130℃がより好ましく、90℃~110℃がさらに好ましい。乾燥時間としては、30秒~20分が例示され、1分~10分が好ましく、3分~7分がより好ましい。
【0161】
<<露光工程>>
本発明の製造方法は、上記感光性樹脂組成物層を露光する露光工程を含んでもよい。露光量は、感光性樹脂組成物を硬化できる限り特に定めるものではないが、例えば、波長365nmでの露光エネルギー換算で100~10000mJ/cm照射することが好ましく、200~8000mJ/cm照射することがより好ましい。
露光波長は、190~1000nmの範囲で適宜定めることができ、240~550nmが好ましい。
露光波長は、光源との関係でいうと、(1)半導体レーザー(波長 830nm、532nm、488nm、405nm etc.)、(2)メタルハライドランプ、(3)高圧水銀灯、g線(波長 436nm)、h線(波長 405nm)、i線(波長 365nm)、ブロード(g,h,i線の3波長)、(4)エキシマレーザー、KrFエキシマレーザー(波長 248nm)、ArFエキシマレーザー(波長 193nm)、F2エキシマレーザー(波長 157nm)、(5)極端紫外線;EUV(波長 13.6nm)、(6)電子線等が挙げられる。本発明の感光性樹脂組成物については、特に高圧水銀灯による露光が好ましく、なかでも、i線による露光が好ましい。これにより、特に高い露光感度が得られうる。
【0162】
<<現像処理工程>>
本発明の製造方法は、露光された感光性樹脂組成物層に対して、現像処理を行う現像処理工程を含んでもよい。現像を行うことにより、露光されていない部分(非露光部)が除去される。現像方法は、所望のパターンを形成できれば特に制限は無く、例えば、パドル、スプレー、浸漬、超音波等の現像方法が採用可能である。
現像は現像液を用いて行う。現像液は、露光されていない部分(非露光部)が除去されるのであれば、特に制限なく使用できる。現像液は、有機溶剤を含むことが好ましい。本発明では、現像液は、ClogP値が-1~5の有機溶剤を含むことが好ましく、ClogP値が0~3の有機溶剤を含むことがより好ましい。ClogP値は、ChemBioDrawにて構造式を入力して計算値として求めることができる。
有機溶剤は、エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、アルキルオキシ酢酸アルキル(例:アルキルオキシ酢酸メチル、アルキルオキシ酢酸エチル、アルキルオキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:3-アルキルオキシプロピオン酸メチル、3-アルキルオキシプロピオン酸エチル等(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等))、2-アルキルオキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:2-アルキルオキシプロピオン酸メチル、2-アルキルオキシプロピオン酸エチル、2-アルキルオキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル))、2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸メチルおよび2-アルキルオキシ-2-メチルプロピオン酸エチル(例えば、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル等、ならびに、エーテル類として、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等、ならびに、ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、N-メチル-2-ピロリドン等、ならびに、芳香族炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン、アニソール、リモネン等、スルホキシド類としてジメチルスルホキシドが好適に挙げられる。
本発明では、特にシクロペンタノン、γ-ブチロラクトンが好ましく、シクロペンタノンがより好ましい。
現像液は、50質量%以上が有機溶剤であることが好ましく、70質量%以上が有機溶剤であることがより好ましく、90質量%以上が有機溶剤であることがさらに好ましい。また、現像液は、100質量%が有機溶剤であってもよい。
【0163】
現像時間としては、10秒~5分が好ましい。現像時の現像液の温度は、特に定めるものではないが、通常、20~40℃で行うことができる。
現像液を用いた処理の後、さらに、リンスを行ってもよい。リンスは、現像液とは異なる溶剤で行うことが好ましい。例えば、感光性樹脂組成物に含まれる溶剤を用いてリンスすることができる。リンス時間は、5秒~1分が好ましい。
【0164】
<<加熱工程>>
本発明の製造方法は、層形成工程、乾燥工程、または現像工程の後に加熱する工程を含むことが好ましい。加熱工程では、ポリマー前駆体の環化反応が進行する。また、本発明の組成物はポリマー前駆体以外のラジカル重合性化合物を含ませてもよいが、未反応のポリマー前駆体以外のラジカル重合性化合物の硬化などもこの工程で進行させることができる。加熱工程における層の加熱温度(最高加熱温度)としては、50~500℃が好ましく、50~450℃がより好ましく、140~400℃がさらに好ましく、160~350℃が一層好ましい。
加熱は、加熱開始時の温度から最高加熱温度まで1~12℃/分の昇温速度で行うことが好ましく、2~10℃/分がより好ましく、3~10℃/分がさらに好ましい。昇温速度を1℃/分以上とすることにより、生産性を確保しつつ、アミンの過剰な揮発を防止することができ、昇温速度を12℃/分以下とすることにより、硬化膜の残存応力を緩和することができる。
加熱開始時の温度は、20℃~150℃が好ましく、20℃~130℃がより好ましく、25℃~120℃がさらに好ましい。加熱開始時の温度は、最高加熱温度まで加熱する工程を開始する際の温度のことをいう。例えば、感光性樹脂組成物を基板の上に適用した後、乾燥させる場合、この乾燥後の層の温度であり、例えば、感光性樹脂組成物に含まれる溶剤の沸点よりも、30~200℃低い温度から徐々に昇温させることが好ましい。
加熱時間(最高加熱温度での加熱時間)は、10~360分であることが好ましく、20~300分であることがより好ましく、30~240分であることがさらに好ましい。
特に多層の積層体を形成する場合、硬化膜の層間の密着性の観点から、加熱温度は180℃~320℃で加熱することが好ましく、180℃~260℃で加熱することがより好ましい。その理由は定かではないが、この温度とすることで、層間のポリマー前駆体のエチニル基同士が架橋反応を進行しているためと考えられる。
【0165】
加熱は段階的に行ってもよい。例として、25℃から180℃まで3℃/分で昇温し、180℃にて60分保持し、180℃から200℃まで2℃/分で昇温し、200℃にて120分保持する、といった前処理工程を行ってもよい。前処理工程としての加熱温度は100~200℃が好ましく、110~190℃であることがより好ましく、120~185℃であることがさらに好ましい。この前処理工程においては、米国特許9159547号公報に記載のように紫外線を照射しながら処理することも好ましい。このような前処理工程により膜の特性を向上させることが可能である。前処理工程は10秒間~2時間程度の短い時間で行うとよく、15秒~30分間がより好ましい。前処理は2段階以上のステップとしてもよく、例えば100~150℃の範囲で前処理工程1を行い、その後に150~200℃の範囲で前処理工程2を行ってもよい。
さらに、加熱後冷却してもよく、この場合の冷却速度としては、1~5℃/分であることが好ましい。
【0166】
加熱工程は、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを流す等により、低酸素濃度の雰囲気で行うことがポリマー前駆体の分解を防ぐ点で好ましい。酸素濃度は、50ppm(体積比)以下が好ましく、20ppm(体積比)以下がより好ましい。
【0167】
<<金属層形成工程>>
本発明の製造方法は、現像処理後の感光性樹脂組成物層の表面に金属層を形成する金属層形成工程を含んでいることが好ましい。
金属層としては、特に限定なく、既存の金属種を使用することができ、銅、アルミニウム、ニッケル、バナジウム、チタン、クロム、コバルト、金およびタングステンが例示され、銅およびアルミニウムがより好ましく、銅がさらに好ましい。
金属層の形成方法は、特に限定なく、既存の方法を適用することができる。例えば、特開2007-157879号公報、特表2001-521288号公報、特開2004-214501号公報、特開2004-101850号公報に記載された方法を使用することができる。例えば、フォトリソグラフィ、リフトオフ、電解メッキ、無電解メッキ、エッチング、印刷、およびこれらを組み合わせた方法などが考えられる。より具体的には、スパッタリング、フォトリソグラフィおよびエッチングを組み合わせたパターニング方法、フォトリソグラフィと電解メッキを組み合わせたパターニング方法が挙げられる。
金属層の厚さとしては、最も厚肉部で、0.1~50μmが好ましく、1~10μmがより好ましい。
【0168】
<<積層工程>>
本発明の製造方法は、さらに、積層工程を含むことが好ましい。
積層工程とは、硬化膜(樹脂層)または金属層の表面に、再度、上記層形成工程および加熱工程、あるいは、感光性樹脂組成物には、上記層形成工程、上記露光工程、および上記現像処理工程を、上記順に行うことを含む一連の工程である。積層工程には、さらに、上記乾燥工程や加熱工程等を含んでいてもよいことは言うまでもない。
積層工程後、さらに積層工程を行う場合には、上記加熱工程後、上記露光工程後、または、上記金属層形成工程後に、さらに、表面活性化処理工程を行ってもよい。表面活性化処理としては、プラズマ処理が例示される。
上記積層工程は、2~5回行うことが好ましく、3~5回行うことがより好ましい。
例えば、樹脂層/金属層/樹脂層/金属層/樹脂層/金属層のような、樹脂層が3層以上7層以下の構成が好ましく、3層以上5層以下がさらに好ましい。
すなわち、本発明では特に、金属層を設けた後、さらに、上記金属層を覆うように、上記感光性樹脂組成物の層形成工程および加熱工程、あるいは、感光性樹脂組成物には、上記層形成工程、上記露光工程、および、上記現像処理工程(必要によりさらに加熱工程)を、上記順に行うことが好ましい。感光性樹脂組成物層(樹脂)を積層する積層工程と、金属層形成工程を交互に行うことにより、感光性樹脂組成物層(樹脂層)と金属層を交互に積層することができる。
【0169】
本発明は、本発明の硬化膜または積層体を有する半導体デバイスも開示する。本発明の感光性樹脂組成物を再配線層用層間絶縁膜の形成に用いた半導体デバイスの具体例としては、特開2016-027357号公報の段落0213~0218の記載および図1の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0170】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。「部」、「%」は特に述べない限り、質量基準である。
【0171】
<ポリマー前駆体組成物(感光性樹脂組成物)の合成>
(合成例1)
[ポリマー前駆体A-1の合成]
21.2gの4,4’-オキシジフタル酸二無水物と、18.2gの2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、11.0gのピリジンと、50mLのテトラヒドロフランを混合し、60℃の温度で4時間撹拌した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、40mLのγ-ブチロラクトンに28.1gのジシクロヘキシルカルボジイミドを溶解させた溶液を-10℃で60分かけて反応混合物に滴下して、混合物を30分撹拌した。続いて、100mLのγ-ブチロラクトンに6.9gの1,4-フェニレンジアミンを溶解させた溶液を-10℃で30分かけて反応混合物に滴下して、混合物を1時間撹拌した後、6.0gの4-アミノベンゼンスルホン酸と10mLのエチルアルコールと100mLのγ-ブチロラクトンを加えた。反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得た。得られた反応液に6Lの水を投入してポリイミド前駆体を沈殿させて、水-ポリイミド前駆体混合物を500rpmの速度で激しく60分間撹拌した。ポリイミド前駆体の固体をろ過し、減圧下45℃で2日間乾燥した。得られたポリイミド前駆体は、重量平均分子量19500、数平均分子量8100であり、スルホン酸基の数は全構成単位の合計数の7.54%であった。
【0172】
(合成例2)
[ポリマー前駆体A-2の合成]
14.9gのピロメリット酸二無水物と、18.2gの2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、23.9gのピリジンと、100mLのジグリムを混合し、60℃の温度で4時間撹拌した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10℃に保ちながら17.0gのSOClを60分かけて加えた。50mLのN-メチルピロリドンで希釈した後、100mLのN-メチルピロリドンに20.3gの4,4'-ジアミノ-2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルと0.2gの2-スルホ安息香酸無水物を溶解させた溶液を-5℃で30分かけて反応混合物に滴下して、混合物を1時間撹拌した後、エチルアルコール20mLを加えた。得られた反応液に6Lの水を投入してポリイミド前駆体を沈殿させ、固体をろ過してテトラヒドロフラン400mLに溶解させた。得られた溶液に6Lの水を投入してポリイミド前駆体を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体混合物を500rpmの速度で激しく60分間撹拌した。ポリイミド前駆体の固体を再びろ過して減圧下で、45℃で2日間乾燥した。得られたポリイミド前駆体は、重量平均分子量22400、数平均分子量8600であり、スルホン酸基の数は全構成単位の合計数の0.15%であった。
【0173】
(合成例3)
[ポリマー前駆体A-3の合成]
21.2gの4,4’-オキシジフタル酸二無水物と、18.2gの2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、23.9gのピリジンと、100mLのジグリムを混合し、60℃の温度で4時間撹拌した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10℃に保ちながら17.0gのSOClを60分かけて加えた。50mLのN-メチルピロリドンで希釈した後、100mLのN-メチルピロリドンに12.7gの4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを溶解させた溶液を-5℃で30分かけて反応混合物に滴下して、混合物を1時間撹拌した後、0.6gの2-アミノベンゼンスルホン酸とエチルアルコール20mLを加えた。得られた反応液に6Lの水を投入してポリイミド前駆体を沈殿させ、固体をろ過してテトラヒドロフラン400mLに溶解させた。得られた溶液に6Lの水を投入してポリイミド前駆体を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体混合物を500rpmの速度で激しく60分間撹拌した。ポリイミド前駆体の固体を再びろ過して減圧下で、45℃で2日間乾燥した。得られたポリイミド前駆体は、重量平均分子量26400、数平均分子量9600であり、スルホン酸基の数は全構成単位の合計数の1.05%であった。
【0174】
(合成例4)
[ポリマー前駆体A-4の合成]
21.2gの4,4’-オキシジフタル酸二無水物と、18.2gの2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、11.0gのピリジンと、50mLのテトラヒドロフランを混合し、60℃の温度で4時間撹拌した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、40mLのγ-ブチロラクトンに17.2gのジイソプロピルカルボジイミドを溶解させた溶液を-10℃で60分かけて反応混合物に滴下して、混合物を30分撹拌した。続いて、100mLのγ-ブチロラクトンに12.7gの4,4’-ジアミノジフェニルエーテルと1.2gの2-スルホ安息香酸無水物を溶解させた溶液を-10℃で30分かけて反応混合物に滴下して、混合物を1時間撹拌した後、10mLのエチルアルコールと100mLのγ-ブチロラクトンを加えた。反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得た。得られた反応液に6Lの水を投入してポリイミド前駆体を沈殿させて、水-ポリイミド前駆体混合物を500rpmの速度で激しく60分間撹拌した。ポリイミド前駆体の固体をろ過し、減圧下45℃で2日間乾燥した。得られたポリイミド前駆体は、重量平均分子量20900、数平均分子量8200であり、スルホン酸基の数は全構成単位の合計数の0.44%であった。
【0175】
(合成例5)
[ポリマー前駆体A-5の合成]
21.2gの4,4’-オキシジフタル酸二無水物と、18.2gの2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、23.9gのピリジンと、100mLのジグリムを混合し、60℃の温度で4時間撹拌した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10℃に保ちながら17.0gのSOClを60分かけて加えた。50mLのN-メチルピロリドンで希釈した後、100mLのN-メチルピロリドンに20.29gの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを溶解させた溶液を-5℃で30分かけて反応混合物に滴下して、混合物を1時間撹拌した後、1.0gの2-アミノエタンスルホン酸とエチルアルコール20mLを加えた。得られた反応液に6Lの水を投入してポリイミド前駆体を沈殿させ、固体をろ過してテトラヒドロフラン400mLに溶解させた。得られた溶液に6Lの水を投入してポリイミド前駆体を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体混合物を500rpmの速度で激しく60分間撹拌した。ポリイミド前駆体の固体を再びろ過して減圧下で、45℃で2日間乾燥した。得られたポリイミド前駆体は、重量平均分子量27100、数平均分子量10100であり、スルホン酸基の数は全構成単位の合計数の3.21%であった。
【0176】
(合成例6)
[ポリマー前駆体A-6の合成]
21.2gの4,4’-オキシジフタル酸二無水物と、18.2gの2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、23.9gのピリジンと、100mLのジグリムを混合し、60℃の温度で4時間撹拌した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10℃に保ちながら17.0gのSOClを60分かけて加えた。50mLのN-メチルピロリドンで希釈した後、100mLのN-メチルピロリドンに20.29gの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを溶解させた溶液を-5℃で30分かけて反応混合物に滴下して、混合物を1時間撹拌した後、0.1gの2-アミノエタンスルホン酸とエチルアルコール20mLを加えた。得られた反応液に6Lの水を投入してポリイミド前駆体を沈殿させ、固体をろ過してテトラヒドロフラン400mLに溶解させた。得られた溶液に6Lの水を投入してポリイミド前駆体を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体混合物を500rpmの速度で激しく60分間撹拌した。ポリイミド前駆体の固体を再びろ過して減圧下で、45℃で2日間乾燥した。得られたポリイミド前駆体は、重量平均分子量27500、数平均分子量9900であり、スルホン酸基の数は全構成単位の合計数の0.07%であった。
【0177】
(合成例7)
[ポリマー前駆体A-7の合成]
28.0gの2,2'-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを200mLのN-メチルピロリドンに撹拌溶解した。続いて、温度を0~5℃に保ちながら、25.0gの4,4’-オキシジベンゾイルクロリドを30分間で滴下した後、3.0gの3-ヒドロキシプロパンスルホン酸(約80質量%水溶液)を加えて60分間撹拌を続けた。得られた反応液に6Lの水を投入してポリベンゾオキサゾール前駆体を沈殿させ、固体をろ過して減圧下で、45℃で2日間乾燥した。得られたポリベンゾオキサゾール前駆体は、重量平均分子量21800、数平均分子量8300であり、スルホン酸基の数は全構成単位の合計数の4.20%であった。
【0178】
(合成例8)
[ポリマー前駆体A-8の合成]
28.0gの2,2'-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを200mLのN-メチルピロリドンに撹拌溶解した。続いて、温度を0~5℃に保ちながら、25.0gの4,4’-オキシジベンゾイルクロリドを30分間で滴下した後、10.0gの2-スルホ安息香酸無水物を加えて60分間撹拌を続けた。得られた反応液に6Lの水を投入してポリベンゾオキサゾール前駆体を沈殿させ、固体をろ過して減圧下で、45℃で2日間乾燥した。得られたポリベンゾオキザゾール前駆体は、重量平均分子量18800、数平均分子量7300であり、スルホン酸基の数は全構成単位の合計数の12.48%であった。
【0179】
(合成例9)
[ポリマー前駆体A-9の合成]
21.2gの4,4’-オキシジフタル酸二無水物と、18.2gの2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、10.0gの4-アミノベンゼンスルホン酸と、23.9gのピリジンと、100mLのジグリムを混合し、60℃の温度で4時間撹拌した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10℃に保ちながら17.0gのSOClを60分かけて加えた。50mLのN-メチルピロリドンで希釈した後、100mLのN-メチルピロリドンに20.29gの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを溶解させた溶液を-5℃で30分かけて反応混合物に滴下して、混合物を1時間撹拌した後、エチルアルコール20mLを加えた。得られた反応液に6Lの水を投入してポリイミド前駆体を沈殿させ、固体をろ過してテトラヒドロフラン400mLに溶解させた。得られた溶液に6Lの水を投入してポリイミド前駆体を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体混合物を500rpmの速度で激しく60分間撹拌した。ポリイミド前駆体の固体を再びろ過して減圧下で、45℃で2日間乾燥した。このポリイミド前駆体は、重量平均分子量24300、数平均分子量9200であり、スルホン酸基の数は全構成単位の合計数の17.20%であった。
【0180】
(合成例10)
[ポリマー前駆体A-10の合成]
21.2gの4,4’-オキシジフタル酸二無水物と、18.2gの2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、5.0gの4-アミノベンゼンスルホン酸と、23.9gのピリジンと、100mLのジグリムを混合し、60℃の温度で4時間撹拌した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10℃に保ちながら17.0gのSOClを60分かけて加えた。50mLのN-メチルピロリドンで希釈した後、100mLのN-メチルピロリドンに20.29gの2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを溶解させた溶液を-5℃で30分かけて反応混合物に滴下して、混合物を1時間撹拌した後、エチルアルコール20mLを加えた。得られた反応液に6Lの水を投入してポリイミド前駆体を沈殿させ、固体をろ過してテトラヒドロフラン400mLに溶解させた。得られた溶液に6Lの水を投入してポリイミド前駆体を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体混合物を500rpmの速度で激しく60分間撹拌した。ポリイミド前駆体の固体を再びろ過して減圧下で、45℃で2日間乾燥した。このポリイミド前駆体は、重量平均分子量22700、数平均分子量9400であり、スルホン酸基の数は全構成単位の合計数の3.21%であった。
【0181】
(合成例11)
[ポリマー前駆体A-11の合成]
21.2gの4,4’-オキシジフタル酸二無水物と、18.2gの2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、3.0gの4-アミノベンゼンスルホン酸と、11.0gのピリジンと、50mLのテトラヒドロフランを混合し、60℃の温度で4時間撹拌した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、40mLのγ-ブチロラクトンに17.2gのジイソプロピルカルボジイミドを溶解させた溶液を-10℃で60分かけて反応混合物に滴下して、混合物を30分撹拌した。続いて、100mLのγ-ブチロラクトンに12.7gの4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを溶解させた溶液を-10℃で30分かけて反応混合物に滴下して、混合物を1時間撹拌した後、10mLのエチルアルコールと100mLのγ-ブチロラクトンを加えた。反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得た。得られた反応液に6Lの水を投入してポリイミド前駆体を沈殿させて、水-ポリイミド前駆体混合物を500rpmの速度で激しく60分間撹拌した。ポリイミド前駆体の固体をろ過し、減圧下45℃で2日間乾燥した。このポリイミド前駆体は、重量平均分子量25100、数平均分子量9800であり、スルホン酸基の数は全構成単位の合計数の4.32%であった。
【0182】
(合成例12)
[ポリマー前駆体A-12の合成]
21.2gの4,4’-オキシジフタル酸二無水物と、18.2gの2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、2.0gの3-ヒドロキシプロパンスルホン酸(約80質量%水溶液)と、11.0gのピリジンと、50mLのテトラヒドロフランを混合し、60℃の温度で4時間撹拌した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、40mLのγ-ブチロラクトンに28.1gのジシクロヘキシルカルボジイミドを溶解させた溶液を-10℃で60分かけて反応混合物に滴下して、混合物を30分撹拌した。続いて、100mLのγ-ブチロラクトンに12.7gの4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを溶解させた溶液を-10℃で30分かけて反応混合物に滴下して、混合物を1時間撹拌した後、10mLのエチルアルコールと100mLのγ-ブチロラクトンを加えた。反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得た。得られた反応液に6Lの水を投入してポリイミド前駆体を沈殿させて、水-ポリイミド前駆体混合物を500rpmの速度で激しく60分間撹拌した。ポリイミド前駆体の固体をろ過し、減圧下45℃で2日間乾燥した。このポリイミド前駆体は、重量平均分子量18100、数平均分子量7100であり、スルホン酸基の数は全構成単位の合計数の2.20%であった。
【0183】
(合成例13)
[ポリマー前駆体A-13の合成]
21.2gの4,4’-オキシジフタル酸二無水物と、18.2gの2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、0.2gの2-アミノエタンスルホン酸と、11.0gのピリジンと、50mLのテトラヒドロフランを混合し、60℃の温度で4時間撹拌した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、40mLのγ-ブチロラクトンに28.1gのジシクロヘキシルカルボジイミドを溶解させた溶液を-10℃で60分かけて反応混合物に滴下して、混合物を30分撹拌した。続いて、100mLのγ-ブチロラクトンに12.7gの4,4’-ジアミノジフェニルエーテルを溶解させた溶液を-10℃で30分かけて反応混合物に滴下して、混合物を1時間撹拌した後、10mLのエチルアルコールと100mLのγ-ブチロラクトンを加えた。反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得た。得られた反応液に6Lの水を投入してポリイミド前駆体を沈殿させて、水-ポリイミド前駆体混合物を500rpmの速度で激しく60分間撹拌した。ポリイミド前駆体の固体をろ過し、減圧下45℃で2日間乾燥した。このポリイミド前駆体は、重量平均分子量22400、数平均分子量8900であり、スルホン酸基の数は全構成単位の合計数の0.04%であった。
【0184】
(合成例14)
[ポリマー前駆体A-14の合成]
28.0gの2,2'-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを200mLのN-メチルピロリドンに撹拌溶解した。続いて、温度を0~5℃に保ちながら、25.0gの4,4’-オキシジベンゾイルクロリドを30分間で滴下した後、5.0gの2-スルホ酢酸と8.0gのジシクロヘキシルカルボジイミドを加えて60分間撹拌を続けた。反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得た。得られた反応液に6Lの水を投入してポリベンゾオキサゾール前駆体を沈殿させ、固体をろ過して減圧下で、45℃で2日間乾燥した。このポリベンゾオキサゾール前駆体は、重量平均分子量22800、数平均分子量8900であり、スルホン酸基の数は全構成単位の合計数の6.21%であった。
【0185】
(合成例15)
[ポリマー前駆体A-15の合成]
21.2gの4,4’-オキシジフタル酸二無水物と、18.2gの2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、11.0gのピリジンと、50mLのテトラヒドロフランを混合し、60℃の温度で4時間撹拌した。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、40mLのγ-ブチロラクトンに28.1gのジシクロヘキシルカルボジイミドを溶解させた溶液を-10℃で60分かけて反応混合物に滴下して、混合物を30分撹拌した。続いて、100mLのγ-ブチロラクトンに6.9gの1,4-フェニレンジアミンを溶解させた溶液を-10℃で30分かけて反応混合物に滴下して、混合物を1時間撹拌した後、10mLのエチルアルコールと100mLのγ-ブチロラクトンを加えた。反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得た。得られた反応液に6Lの水を投入してポリイミド前駆体を沈殿させて、水-ポリイミド前駆体混合物を500rpmの速度で激しく60分間撹拌した。ポリイミド前駆体の固体をろ過し、減圧下45℃で2日間乾燥した。このポリイミド前駆体は、重量平均分子量22800、数平均分子量9100であり、スルホン酸基は存在しなかった。
【0186】
(合成例16)
[ポリマー前駆体A-16の合成]
28.0gの2,2'-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンを200mLのN-メチルピロリドンに撹拌溶解した。続いて、温度を0~5℃に保ちながら、25.0gの4,4’-オキシジベンゾイルクロリドを30分間で滴下した後、60分間撹拌を続けた。反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得た。得られた反応液に6Lの水を投入してポリベンゾオキサゾール前駆体を沈殿させ、固体をろ過して減圧下で、45℃で2日間乾燥した。このポリベンゾオキサゾール前駆体は、重量平均分子量21400、数平均分子量8500であり、スルホン酸基は存在しなかった。
【0187】
(合成例17)
[ポリマー前駆体A-17の合成]
14.9g(68.3mmol)のピロメリット酸二無水物と、18.0gの2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、23.9gのピリジンと、0.10gの水と、250mLのジグリムと混合し、60℃の温度で4時間撹拌して、ピロメリット酸無水物と2-ヒドロキシエチルメタクリレートのジエステルを製造した。その得られた反応液の水分量を測定した結果、6.9mmol含まれていた。次いで、反応混合物を-10℃に冷却し、温度を-10±5℃に保ちながら16.9g(142.1mmol)のSOClを60分かけて加えた。50mLのN-メチルピロリドンで希釈した後、100mLのN-メチルピロリドンに20.1gの4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニルを溶解させた溶液を-10±5℃で60分かけて反応混合物に滴下して、混合物を2時間撹拌した。次いで、6リットルの水の中でポリイミド前駆体を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリイミド前駆体の固体を濾過してテトラヒドロフラン380gに溶解させた。得られた溶液を6リットルの水の中でポリイミド前駆体を沈殿させ、水-ポリイミド前駆体混合物を5000rpmの速度で15分間撹拌した。ポリイミド前駆体の固体を再び濾過して減圧下で、45℃で3日間乾燥した。このポリイミド前駆体は、重量平均分子量26,800、数平均分子量8400、炭素骨格以外に結合した-SOH基の数は全構成単位の合計数の4.52%であった。
【0188】
<重量平均分子量および数平均分子量の測定>
ポリマー前駆体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算値であり、以下の方法により測定した。
測定装置としてHLC-8220(東ソー(株)製)を使用、カラムとしてガードカラムHZ-L、TSKgel Super HZM-M、TSKgel Super HZ4000、TSKgel Super HZ3000、TSKgel Super HZ2000(東ソー(株)製)を用いた。また溶離液はTHF(テトラヒドロフラン)を用い、40℃で0.35mL/分の流速にて測定を行った。検出は紫外線(UV)254nm検出器を使用した。また測定サンプルは複素環含有ポリマー前駆体をTHFで0.1質量%に希釈調整したサンプルを使用した。
【0189】
<実施例および比較例の感光性樹脂組成物の調製>
下記表1に記載の各成分を混合し、均一な溶液として、細孔の幅が0.8μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルターを通して圧力0.3MPaにて、加圧ろ過を行なうことで各感光性樹脂組成物を得た。
【0190】
<保存安定性>
上記感光性樹脂組成物10gを容器(容器の材質:遮光ガラス、容量:100mL)に密閉し、25℃、相対湿度65%の環境下に1週間静置した。経時前後それぞれの組成物を、RE-85L(東機産業(株)製)を用いて25℃での粘度測定を行い、粘度の変化率を算出した(ηr=|η2-η1|/η1、ηr:粘度の変化率、η1:経時前の粘度、η2:経時後の粘度)。変化率が少ないほど、感光性樹脂組成物の安定性が高く、好ましい結果となる。装置の設定や測定条件など、その他の事項はJIS Z 8803:2011に準拠することとした。
A:0%以上、5%未満
B:5%以上、8%未満
C:8%以上、10%未満
D:10%以上、15%未満
E:15%以上
【0191】
<銅腐食性>
上記感光性樹脂組成物を、厚み250μmの銅基板上にスピニングして適用した。感光性樹脂組成物を適用した銅基板をホットプレート上にて、100℃で5分間乾燥し、銅基板上に厚さ10μmの膜を形成した。次いで、窒素雰囲気下で、10℃/分の昇温速度で昇温し、230℃に達した後、3時間保持した。冷却後、銅基板上の膜をカッターで削り取った。銅基板を目視で観察して、錆色に着色した面積比率を算出し、銅腐食性を評価した。面積比率が少ないほど、銅腐食性が少ないことを意味する。
A:5%以下。
B:5%よりも多く、10%以下。
C:10%よりも多く、20%以下。
D:20%よりも多い。
【0192】
【表1】
【0193】
上記表1に示した結果のとおり、スルホン酸基を含む部位を導入した樹脂はいずれも、保存安定性および銅腐食性において高い性能を示した(実施例1~23)。これに対して、スルホン酸基を含む部位を有しない樹脂を用いた比較例は、保存安定性が特に劣っていた(比較例1、2)。また、-SOH基を有していても、炭素骨格以外に結合した-SOH基しかない場合、保存安定性に劣っていた。実施例においては、なかでも、スルホン酸基を含む部位の導入比率が中程度の実施例6~10(A-3~A-5)、実施例12(A-7)、実施例16~21(A-10~A-12)において、比較的高い性能を示していた。
上記の結果より、本発明によれば、保存安定性を達成できる。さらには、保存安定性と銅腐食性というトレードオフの効果の両立を達成できることがわかる。また、本発明により、従来のものとは異なる、新規なポリイミド前駆体およびポリベンゾオキサゾール前駆体を提供できることがわかる。
【0194】
(A)ポリマー前駆体
A-1~A-16:合成例1~16で製造したポリマー前駆体
【0195】
(B)ラジカル重合性化合物
B-1:NKエステル M-40G(新中村化学工業社製)
B-2:SR-209(サートマー社製)
B-3:NKエステル A-9300(新中村化学工業社製)
B-4:A-TMMT(新中村化学工業社製)
B-5:A-DPH(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、新中村化学工業社製)
【0196】
(C)光ラジカル重合開始剤
C-1:IRGACURE OXE 01(BASF社製)
C-2:IRGACURE OXE 02(BASF社製)
C-3:IRGACURE OXE 04(BASF社製)
C-4:IRGACURE-784(BASF社製)
C-5:NCI-831((株)ADEKA社製)
【0197】
(D)硬化促進剤(塩基発生剤)
D-1:下記化合物
D-2:下記化合物
D-3:下記化合物
【化43】
【0198】
(E)重合禁止剤
E-1:1,4-ベンゾキノン
E-2:4-メトキシフェノール
【0199】
(F)添加剤(マイグレーション抑制剤)
F-1:1,2,4-トリアゾール
F-2:1H-テトラゾール
【0200】
(G)シランカップリング剤(金属接着性改良剤)
G-1:下記化合物
G-2:下記化合物
G-3:下記化合物
【化44】
【0201】
(H)溶剤
H-1:γ-ブチロラクトン
H-2:ジメチルスルホキシド
H-3:N-メチル-2-ピロリドン
H-4:乳酸エチル
表1における溶剤について、例えば、種類の欄が「H-1/H-2」、質量%の欄が「48+12」となっている場合、H-1を48質量%、H-2を12質量%含んでいることを意味する。
【0202】
<実施例100>
実施例1の感光性樹脂組成物を、細孔の幅が0.8μmのフィルターを通して加圧ろ過した後、シリコンウェハ上にスピンコート法により感光性樹脂組成物を塗布した。感光性樹脂組成物層が塗布されたシリコンウェハをホットプレート上で、100℃で5分間乾燥し、シリコンウェハ上に15μmの厚さの均一な感光性樹脂組成物層を形成した。シリコンウェハ上の感光性樹脂組成物層を、ステッパー(Nikon NSR 2005 i9C)を用いて、500mJ/cmの露光エネルギーで露光し、露光した感光性樹脂組成物層(樹脂層)を、シクロペンタノンで60秒間現像して、直径10μmのホールを形成した。次いで、窒素雰囲気下で、10℃/分の昇温速度で昇温し、250℃に達した後、この温度で3時間維持した。室温まで冷却後、上記ホール部分を覆うように、感光性樹脂組成物層の表面の一部に、蒸着法により厚さ2μmの銅薄層(金属層)を形成した。さらに、金属層および感光性樹脂組成物層の表面に、再度、同じ種類の感光性樹脂組成物を用いて、上記と同様に感光性樹脂組成物のろ過から、パターン化した膜の3時間加熱までの手順を再度実施して、樹脂層/金属層/樹脂層からなる積層体を作製した。
この樹脂層(再配線層用層間絶縁膜)は、絶縁性に優れていた。
また、この再配線層用層間絶縁膜を使用して半導体デバイスを製造したところ、問題なく動作することを確認した。