(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-13
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】積層体および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220118BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20220118BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220118BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220118BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20220118BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220118BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220118BHJP
C08F 220/18 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/14
H01L27/32
H05B33/14 A
H05B33/02
G09F9/00 313
B32B7/023
C08F220/18
(21)【出願番号】P 2020539386
(86)(22)【出願日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 JP2019032784
(87)【国際公開番号】W WO2020045216
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2018159775
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019138194
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】柴田 直也
(72)【発明者】
【氏名】武田 淳
(72)【発明者】
【氏名】福島 悠太
(72)【発明者】
【氏名】村松 彩子
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0134477(US,A1)
【文献】特開2008-249884(JP,A)
【文献】特開2012-189665(JP,A)
【文献】特開2007-171707(JP,A)
【文献】特開2014-142630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学異方性層、光吸収異方性層、屈折率調整層および酸素遮断層をこの順に有する積層体であって、
前記光吸収異方性層が、二色性アゾ色素化合物および液晶性化合物を有する組成物から形成された層であり、
前記二色性アゾ色素化合物の含有量が、前記光吸収異方性層の全固形分質量に対して10~30質量%であり、
前記光吸収異方性層の配向度が0.92以上であり、
前記屈折率調整層が、架橋性基を有する化合物を有する組成物から形成され、波長550nmにおける面内平均屈折率が1.55以上1.70以下となる層であり、
前記光学異方性層の面内遅
相軸と前記光吸収異方性層の吸収軸とのなす角度が45°±10°である、積層体。
【請求項2】
前記酸素遮断層が、ポリビニルアルコール系樹脂またはポリエチレンビニルアルコール系樹脂を有する、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記液晶性化合物が、高分子液晶性化合物である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記光吸収異方性層が、下記式(1)および(2)で表される2種の二色性アゾ色素化合物を少なくとも有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
【化1】
前記式(1)中、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、または、置換基を有していてもよいナフチレン基を表す。
前記式(1)中、R1は、水素原子、炭素数1~20の置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルカーボネート基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アルキルウレイド基、アルキルリン酸アミド基、アルキルイミノ基、または、アルキルシリル基を表す。
ただし、R1の一態様が示す前記アルキル基を構成する-CH
2-は、-O-、-CO-、-C(O)-O-、-O-C(O)-、-Si(CH
3)
2-O-Si(CH
3)
2-、-N(R1’)-、-N(R1’)-CO-、-CO-N(R1’)-、-N(R1’)-C(O)-O-、-O-C(O)-N(R1’)-、-N(R1’)-C(O)-N(R1’)-、-CH=CH-、-C≡C-、-N=N-、-C(R1’)=CH-C(O)-、または、-O-C(O)-O-によって置換されていてもよい。
また、R1が水素原子以外の基である場合、各基が有する水素原子は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-N(R1’)
2、アミノ基、-C(R1’)=C(R1’)-NO
2、-C(R1’)=C(R1’)-CN、または、-C(R1’)=C(CN)
2によって置換されていてもよい。
また、R1’は、水素原子または炭素数1~6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。各基において、R1’が複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。
前記式(1)中、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミド基、アルキルスルホニル基、アリール基、アリールカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールオキシカルボニル基、または、アリールアミド基を表す。
ただし、R2およびR3の一態様が示す前記アルキル基を構成する-CH
2-は、-O-、-S-、-C(O)-、-C(O)-O-、-O-C(O)-、-C(O)-S-、-S-C(O)-、-Si(CH
3)
2-O-Si(CH
3)
2-、-NR2’-、-NR2’-CO-、-CO-NR2’-、-NR2’-C(O)-O-、-O-C(O)-NR2’-、-NR2’-C(O)-NR2’-、-CH=CH-、-C≡C-、-N=N-、-C(R2’)=CH-C(O)-、または、-O-C(O)-O-によって置換されていてもよい。
また、R2およびR3が水素原子以外の基である場合、各基が有する水素原子は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OH基、-N(R2’)
2、アミノ基、-C(R2’)=C(R2’)-NO
2、-C(R2’)=C(R2’)-CN、または、-C(R2’)=C(CN)
2によって置換されていてもよい。
また、R2’は、水素原子または炭素数1~6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。各基において、R2’が複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。
また、R2およびR3は、互いに結合して環を形成してもよく、R2またはR3は、Ar2と結合して環を形成してもよい。
【化2】
前記式(2)中、nは1または2を表す。
前記式(2)中、Ar3、Ar4およびAr5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基、または、置換基を有していてもよい複素環基を表す。
前記式(2)中、R4は、水素原子、炭素数1~20の置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルカーボネート基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アルキルウレイド基、アルキルリン酸アミド基、アルキルイミノ基、または、アルキルシリル基を表す。
前記式(2)中、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミド基、アルキルスルホニル基、アリール基、アリールカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールオキシカルボニル基、または、アリールアミド基を表す。
ただし、R5およびR6の一態様が示す前記アルキル基を構成する-CH
2-は、-O-、-S-、-C(O)-、-C(O)-O-、-O-C(O)-、-C(O)-S-、-S-C(O)-、-Si(CH
3)
2-O-Si(CH
3)
2-、-NR2’-、-NR2’-CO-、-CO-NR2’-、-NR2’-C(O)-O-、-O-C(O)-NR2’-、-NR2’-C(O)-NR2’-、-CH=CH-、-C≡C-、-N=N-、-C(R2’)=CH-C(O)-、または、-O-C(O)-O-によって置換されていてもよい。
また、R5およびR6が水素原子以外の基である場合、各基が有する水素原子は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OH基、-N(R2’)
2、アミノ基、-C(R2’)=C(R2’)-NO
2、-C(R2’)=C(R2’)-CN、または、-C(R2’)=C(CN)
2によって置換されていてもよい。
また、R2’は、水素原子または炭素数1~6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。各基において、R2’が複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。
また、R5およびR6は、互いに結合して環を形成してもよく、R5およびR6は、Ar5と結合して環を形成してもよい。
【請求項5】
前記酸素遮断層の波長550nmにおける面内平均屈折率が1.50以上1.65以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記酸素遮断層の波長550nmにおける面内平均屈折率が1.55以上1.65以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
前記酸素遮断層が、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する接着剤である、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項8】
前記屈折率調整層が、ボロン酸構造を有する化合物を有する、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項9】
前記光学異方性層と前記光吸収異方性層との間に、架橋性基を有する化合物から形成される光配向層を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項10】
更に、前記酸素遮断層の前記屈折率調整層と反対側に表面保護層を有し、
前記表面保護層が、支持体を有し、前記支持体がポリイミド樹脂を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項11】
更に、前記酸素遮断層の前記屈折率調整層と反対側に表面保護層を有し、
前記表面保護層が、ハードコート層を有し、前記ハードコート層がシルセスキオキサンを有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項12】
更に、前記酸素遮断層の前記屈折率調整層と反対側に表面保護層を有し、
前記表面保護層が、支持体とハードコート層を有し、
前記支持体の波長550nmにおける面内平均屈折率が1.45以上1.60以下であり、前記ハードコート層の波長550nmにおける面内平均屈折率が1.5以上1.6以下である、請求項1~11のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項13】
前記光学異方性層が、重合性液晶性化合物を有する組成物から形成されるλ/4板を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項14】
前記重合性液晶性化合物が、下記式(3)で表される化合物である、請求項13に記載の積層体。
L
1-SP
1-D
3-(A
1)
a1-D
5-(G
1)
g1-D
1-Ar-D
2-(G
2)
g2-D
6-(A
2)
a2-D
4-SP
2-L
2 ・・・(3)
ここで、前記式(3)中、
a1、a2、g1およびg2は、それぞれ独立に、0または1を表す。ただし、a1およびg1の少なくとも一方は1を表し、a2およびg2の少なくとも一方は1を表す。
D
1、D
2、D
3、D
4、D
5およびD
6は、それぞれ独立に、単結合、-CO-O-、-C(=S)O-、-CR
1R
2-、-CR
1R
2-CR
3R
4-、-O-CR
1R
2-、-CR
1R
2-O-CR
3R
4-、-CO-O-CR
1R
2-、-O-CO-CR
1R
2-、-CR
1R
2-O-CO-CR
3R
4-、-CR
1R
2-CO-O-CR
3R
4-、-NR
1-CR
2R
3-、または、-CO-NR
1-を表す。R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~4のアルキル基を表す。
G
1およびG
2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基を表し、前記脂環式炭化水素基を構成する-CH
2-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。
A
1およびA
2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6以上の芳香環、または、置換基を有していてもよい炭素数6以上のシクロアルカン環を表す。
SP
1およびSP
2は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH
2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。
L
1およびL
2は、それぞれ独立に1価の有機基を表し、L
1およびL
2の少なくとも一方は重合性基を表す。ただし、Arが、下記式(Ar-3)で表される芳香環である場合は、L
1およびL
2ならびに下記式(Ar-3)中のL
3およびL
4の少なくとも1つが重合性基を表す。
Arは、下記式(Ar-1)~(Ar-5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの芳香環を表す。
【化3】
ここで、前記式(Ar-1)~(Ar-5)中、
*は、D
1またはD
2との結合位置を表す。
Q
1は、NまたはCHを表す。
Q
2は、-S-、-O-、または、-N(R
5)-を表し、R
5は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。
Y
1は、置換基を有してもよい、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、または、炭素数3~12の芳香族複素環基を表す。
Z
1、Z
2およびZ
3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-OR
6、-NR
7R
8、または、-SR
9を表し、R
6~R
9は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、Z
1およびZ
2は、互いに結合して芳香環を形成してもよい。
A
3およびA
4は、それぞれ独立に、-O-、-N(R
10)-、-S-、および、-CO-からなる群から選択される基を表し、R
10は、水素原子または置換基を表す。
Xは
、第14~16族の非金属原子を表す。
ただし、前記非金属原子には、水素原子または置換基が結合していてもよい。
D
7およびD
8は、それぞれ独立に、単結合、-CO-O-、-C(=S)O-、-CR
1R
2-、-CR
1R
2-CR
3R
4-、-O-CR
1R
2-、-CR
1R
2-O-CR
3R
4-、-CO-O-CR
1R
2-、-O-CO-CR
1R
2-、-CR
1R
2-O-CO-CR
3R
4-、-CR
1R
2-CO-O-CR
3R
4-、-NR
1-CR
2R
3-、または、-CO-NR
1-を表す。R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~4のアルキル基を表す。
SP
3およびSP
4は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH
2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。
L
3およびL
4は、それぞれ独立に1価の有機基を表し、L
3およびL
4ならびに前記式(3)中のL
1およびL
2の少なくとも1つが重合性基を表す。
Axは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。
Ayは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、または、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選択される少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。
AxおよびAyにおける芳香環は、置換基を有していてもよく、AxとAyとが結合して環を形成していてもよい。
Q
3は、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。
【請求項15】
前記式(3)で表される化合物が、下記式(4)で表される化合物である、請求項14に記載の積層体。
【化4】
ここで、前記式(4)中、D
1、D
2、D
3およびD
4、SP
1およびSP
2、L
1およびL
2、ならびに、Arは、前記式(3)において説明したものと同様である。
【請求項16】
前記式(3)で表される化合物が、前記式(3)中のArが前記式(Ar-2)で表される芳香環を表す化合物である、請求項14に記載の積層体。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1項に記載の積層体を有する、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フレキシブル性を有する有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode:OLED)の開発が進んでおり、使用される各部材のフレキシブル化が進んでいる。
一方、OLED基板は反射率が高く、外光の反射防止のために使用されている円偏光板は、高い偏光度とフレキシブル性が求められている。
しかしながら、円偏光板に一般的に使用されているヨウ素偏光子は、ヨウ素をポリビニルアルコールのような高分子材料に溶解又は吸着させ、その膜を一方向にフィルム状に高倍率に延伸することで作製されるため、十分なフレキブル性がなかった。
【0003】
そのため、透明フィルムなどの基板上に二色性アゾ色素を塗布し、分子間相互作用などを利用して配向させた偏光素子が検討されている。
例えば、特許文献1には、高い二色性アゾ色素濃度かつ薄膜で高い偏光度を有する偏光素子が提案されている。
また、特許文献2には、特定の液晶性化合物を用いて二色性アゾ色素化合物の結晶性を高めることで、高い配向度を有する偏光素子が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5437744号公報
【文献】国際公開第2018/124198号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1および2などに記載された偏光素子について検討したところ、二色性アゾ色素化合物の含有量を増やすことにより、得られる偏光素子(光吸収異方性膜)を画像表示装置に用いた時に光耐久性が改善されることを明らかとしたが、野外での使用の多いことが想定されるスマートフォン等の用途においては、更に光耐久性を改善する余地があることも明らかとした。
また、本発明者らは、二色性アゾ色素化合物の含有量を増やすことにより、得られる光吸収異方性膜を画像表示装置に用いた時に、光吸収異方性膜よりも視認側での内部反射が高くなり、表示性能が劣化するという新たな問題を明らかとした。
【0006】
そこで、本発明は、画像表示装置に用いたときに表示性能および光耐久性に優れる積層体およびそれを用いた画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、光学異方性層、二色性アゾ色素化合物を所定の割合で含有する光吸収異方性層、所定の面内平均屈折率を有する屈折率調整層および酸素遮断層をこの順に有する積層体が、画像表示装置に用いたときに表示性能および光耐久性が良好となることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0008】
[1] 光学異方性層、光吸収異方性層、屈折率調整層および酸素遮断層をこの順に有する積層体であって、
光吸収異方性層が、二色性アゾ色素化合物および液晶性化合物を有する組成物から形成された層であり、
二色性アゾ色素化合物の含有量が、光吸収異方性層の全固形分質量に対して10~30質量%であり、
光吸収異方性層の配向度が0.92以上であり、
屈折率調整層が、架橋性基を有する化合物を有する組成物から形成され、波長550nmにおける面内平均屈折率が1.55以上1.70以下となる層であり、
光学異方性層の面内遅相軸と光吸収異方性層の吸収軸とのなす角度が45°±10°である、積層体。
【0009】
[2] 酸素遮断層が、ポリビニルアルコール系樹脂またはポリエチレンビニルアルコール系樹脂を有する、[1]に記載の積層体。
[3] 液晶性化合物が、高分子液晶性化合物である、[1]または[2]に記載の積層体。
【0010】
[4] 光吸収異方性層が、下記式(1)および(2)で表される2種の二色性アゾ色素化合物を少なくとも有する、[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
【化1】
上記式(1)中、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、または、置換基を有していてもよいナフチレン基を表す。
上記式(1)中、R1は、水素原子、炭素数1~20の置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルカーボネート基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アルキルウレイド基、アルキルリン酸アミド基、アルキルイミノ基、または、アルキルシリル基を表す。
ただし、R1の一態様が示すアルキル基を構成する-CH
2-は、-O-、-CO-、-C(O)-O-、-O-C(O)-、-Si(CH
3)
2-O-Si(CH
3)
2-、-N(R1’)-、-N(R1’)-CO-、-CO-N(R1’)-、-N(R1’)-C(O)-O-、-O-C(O)-N(R1’)-、-N(R1’)-C(O)-N(R1’)-、-CH=CH-、-C≡C-、-N=N-、-C(R1’)=CH-C(O)-、または、-O-C(O)-O-によって置換されていてもよい。
また、R1が水素原子以外の基である場合、各基が有する水素原子は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-N(R1’)
2、アミノ基、-C(R1’)=C(R1’)-NO
2、-C(R1’)=C(R1’)-CN、または、-C(R1’)=C(CN)
2によって置換されていてもよい。
また、R1’は、水素原子または炭素数1~6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。各基において、R1’が複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。
上記式(1)中、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミド基、アルキルスルホニル基、アリール基、アリールカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールオキシカルボニル基、または、アリールアミド基を表す。
ただし、R2およびR3の一態様が示すアルキル基を構成する-CH
2-は、-O-、-S-、-C(O)-、-C(O)-O-、-O-C(O)-、-C(O)-S-、-S-C(O)-、-Si(CH
3)
2-O-Si(CH
3)
2-、-NR2’-、-NR2’-CO-、-CO-NR2’-、-NR2’-C(O)-O-、-O-C(O)-NR2’-、-NR2’-C(O)-NR2’-、-CH=CH-、-C≡C-、-N=N-、-C(R2’)=CH-C(O)-、または、-O-C(O)-O-によって置換されていてもよい。
また、R2およびR3が水素原子以外の基である場合、各基が有する水素原子は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OH基、-N(R2’)
2、アミノ基、-C(R2’)=C(R2’)-NO
2、-C(R2’)=C(R2’)-CN、または、-C(R2’)=C(CN)
2によって置換されていてもよい。
また、R2’は、水素原子または炭素数1~6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。各基において、R2’が複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。
また、R2およびR3は、互いに結合して環を形成してもよく、R2またはR3は、Ar2と結合して環を形成してもよい。
【化2】
上記式(2)中、nは1または2を表す。
上記式(2)中、Ar3、Ar4およびAr5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基、または、置換基を有していてもよい複素環基を表す。
上記式(2)中、R4は、水素原子、炭素数1~20の置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルカーボネート基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アルキルウレイド基、アルキルリン酸アミド基、アルキルイミノ基、または、アルキルシリル基を表す。
上記式(2)中、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミド基、アルキルスルホニル基、アリール基、アリールカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールオキシカルボニル基、または、アリールアミド基を表す。
ただし、R5およびR6の一態様が示すアルキル基を構成する-CH
2-は、-O-、-S-、-C(O)-、-C(O)-O-、-O-C(O)-、-C(O)-S-、-S-C(O)-、-Si(CH
3)
2-O-Si(CH
3)
2-、-NR2’-、-NR2’-CO-、-CO-NR2’-、-NR2’-C(O)-O-、-O-C(O)-NR2’-、-NR2’-C(O)-NR2’-、-CH=CH-、-C≡C-、-N=N-、-C(R2’)=CH-C(O)-、または、-O-C(O)-O-によって置換されていてもよい。
また、R5およびR6が水素原子以外の基である場合、各基が有する水素原子は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OH基、-N(R2’)
2、アミノ基、-C(R2’)=C(R2’)-NO
2、-C(R2’)=C(R2’)-CN、または、-C(R2’)=C(CN)
2によって置換されていてもよい。
また、R2’は、水素原子または炭素数1~6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。各基において、R2’が複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。
また、R5およびR6は、互いに結合して環を形成してもよく、R5およびR6は、Ar5と結合して環を形成してもよい。
【0011】
[5] 酸素遮断層の波長550nmにおける面内平均屈折率が1.50以上1.65以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の積層体。
[6] 酸素遮断層の波長550nmにおける面内平均屈折率が1.55以上1.65以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の積層体。
[7] 酸素遮断層が、ポリビニルアルコール系樹脂を含有する接着剤である、[1]~[6]のいずれかに記載の積層体。
【0012】
[8] 屈折率調整層が、ボロン酸構造を有する化合物を有する、[1]~[7]のいずれかに記載の積層体。
[9] 光学異方性層と光吸収異方性層との間に、架橋性基を有する化合物から形成される光配向層を有する、[1]~[8]のいずれかに記載の積層体。
【0013】
[10] 更に、酸素遮断層の屈折率調整層と反対側に表面保護層を有し、
表面保護層が、支持体を有し、支持体がポリイミド樹脂を有する、[1]~[9]のいずれかに記載の積層体。
[11] 更に、酸素遮断層の屈折率調整層と反対側に表面保護層を有し、
表面保護層が、ハードコート層を有し、ハードコート層がシルセスキオキサンを有する、[1]~[10]のいずれかに記載の積層体。
[12] 更に、酸素遮断層の屈折率調整層と反対側に表面保護層を有し、
表面保護層が、支持体とハードコート層を有し、
支持体の波長550nmにおける面内平均屈折率が1.45以上1.60以下であり、ハードコート層の波長550nmにおける面内平均屈折率が1.5以上1.6以下である、[1]~[11]のいずれかに記載の積層体。
【0014】
[13] 光学異方性層が、重合性液晶性化合物を有する組成物から形成されるλ/4板を有する、[1]~[12]のいずれかに記載の積層体。
【0015】
[14] 重合性液晶性化合物が、下記式(3)で表される化合物である、[13]に記載の積層体。
L
1-SP
1-D
3-(A
1)
a1-D
5-(G
1)
g1-D
1-Ar-D
2-(G
2)
g2-D
6-(A
2)
a2-D
4-SP
2-L
2 ・・・(3)
ここで、上記式(3)中、
a1、a2、g1およびg2は、それぞれ独立に、0または1を表す。ただし、a1およびg1の少なくとも一方は1を表し、a2およびg2の少なくとも一方は1を表す。
D
1、D
2、D
3、D
4、D
5およびD
6は、それぞれ独立に、単結合、-CO-O-、-C(=S)O-、-CR
1R
2-、-CR
1R
2-CR
3R
4-、-O-CR
1R
2-、-CR
1R
2-O-CR
3R
4-、-CO-O-CR
1R
2-、-O-CO-CR
1R
2-、-CR
1R
2-O-CO-CR
3R
4-、-CR
1R
2-CO-O-CR
3R
4-、-NR
1-CR
2R
3-、または、-CO-NR
1-を表す。R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~4のアルキル基を表す。
G
1およびG
2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基を表し、脂環式炭化水素基を構成する-CH
2-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。
A
1およびA
2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6以上の芳香環、または、置換基を有していてもよい炭素数6以上のシクロアルカン環を表す。
SP
1およびSP
2は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH
2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。
L
1およびL
2は、それぞれ独立に1価の有機基を表し、L
1およびL
2の少なくとも一方は重合性基を表す。ただし、Arが、下記式(Ar-3)で表される芳香環である場合は、L
1およびL
2ならびに下記式(Ar-3)中のL
3およびL
4の少なくとも1つが重合性基を表す。
Arは、下記式(Ar-1)~(Ar-5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの芳香環を表す。
【化3】
ここで、上記式(Ar-1)~(Ar-5)中、
*は、D
1またはD
2との結合位置を表す。
Q
1は、NまたはCHを表す。
Q
2は、-S-、-O-、または、-N(R
5)-を表し、R
5は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。
Y
1は、置換基を有してもよい、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、または、炭素数3~12の芳香族複素環基を表す。
Z
1、Z
2およびZ
3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-OR
6、-NR
7R
8、または、-SR
9を表し、R
6~R
9は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、Z
1およびZ
2は、互いに結合して芳香環を形成してもよい。
A
3およびA
4は、それぞれ独立に、-O-、-N(R
10)-、-S-、および、-CO-からなる群から選択される基を表し、R
10は、水素原子または置換基を表す。
Xは
、第14~16族の非金属原子を表す。
ただし、非金属原子には、水素原子または置換基が結合していてもよい。
D
7およびD
8は、それぞれ独立に、単結合、-CO-O-、-C(=S)O-、-CR
1R
2-、-CR
1R
2-CR
3R
4-、-O-CR
1R
2-、-CR
1R
2-O-CR
3R
4-、-CO-O-CR
1R
2-、-O-CO-CR
1R
2-、-CR
1R
2-O-CO-CR
3R
4-、-CR
1R
2-CO-O-CR
3R
4-、-NR
1-CR
2R
3-、または、-CO-NR
1-を表す。R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~4のアルキル基を表す。
SP
3およびSP
4は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH
2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。
L
3およびL
4は、それぞれ独立に1価の有機基を表し、L
3およびL
4ならびに上記式(3)中のL
1およびL
2の少なくとも1つが重合性基を表す。
Axは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。
Ayは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、または、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選択される少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。
AxおよびAyにおける芳香環は、置換基を有していてもよく、AxとAyとが結合して環を形成していてもよい。
Q
3は、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。
【0016】
[15] 上記式(3)で表される化合物が、下記式(4)で表される化合物である、[14]に記載の積層体。
【化4】
ここで、上記式(4)中、D
1、D
2、D
3およびD
4、SP
1およびSP
2、L
1およびL
2、ならびに、Arは、上記式(3)において説明したものと同様である。
[16] 上記式(3)で表される化合物が、上記式(3)中のArが上記式(Ar-2)で表される芳香環を表す化合物である、[14]に記載の積層体。
[17] [1]~[16]のいずれかに記載の積層体を有する、画像表示装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、画像表示装置に用いたときに表示性能および光耐久性に優れる積層体およびそれを用いた画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の積層体の一例を示す模式的な断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の積層体の一例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、平行、直交、水平、および、垂直とは、それぞれ厳密な意味での平行、直交、水平、および、垂直を意味するのではなく、それぞれ、平行±10°の範囲、直交±10°の範囲、水平±10°、および、垂直±10°の範囲を意味する。
また、本明細書において、各成分は、各成分に該当する物質を1種単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、併用した物質の合計の含有量を指す。
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」または「メタクリレート」を表す表記であり、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」または「メタクリル」を表す表記であり、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」または「メタクリロイル」を表す表記である。
【0020】
[積層体]
本発明の積層体は、光学異方性層、光吸収異方性層、屈折率調整層および酸素遮断層をこの順に有する積層体である。
本発明の積層体においては、光吸収異方性層が、二色性アゾ色素化合物および液晶性化合物を有する組成物から形成された層であり、二色性アゾ色素化合物の含有量が、光吸収異方性層の全固形分質量に対して10~30質量%である。
また、本発明の積層体においては、屈折率調整層が、光吸収異方性層に隣接し、架橋性基を有する化合物を含有する組成物から形成され、波長550nmにおける面内平均屈折率が1.55以上1.70以下である。
また、本発明の積層体においては、光学異方性層の面内遅相軸と光吸収異方性層の吸収軸とのなす角度が45°±10°である。すなわち、光学異方性層の面内遅相軸と光吸収異方性層の吸収軸とのなす角が35°~55°となるように設けられている。なお、光学異方性層の面内遅相軸と光吸収異方性層の吸収軸とのなす角は、40°~50°であることが好ましく、42°~48°であることがより好ましく、44°~46°であることが更に好ましく、45°であることが特に好ましい。
ここで、光学異方性層の「面内遅相軸」は、光学異方性層の面内において屈折率が最大となる方向を意味し、光吸収異方性層の「吸収軸」は、吸光度の最も高い方向を意味する。
本発明の積層体の具体例の一つとしては、有機EL表示装置における有機EL基板の反射防止機能を付与するための積層体であり、この積層体を用いることで、非常に優れた表示性能と光耐久性を両立した有機EL表示装置を提供できる。
【0021】
本発明においては、上述した通り、非常に優れた表示性能と光耐久性を両立している。
この理由の詳細は未だ明らかになっていないが、本発明者らは以下の理由によるものと推測している。
まず、光吸収異方性層は本発明の範囲において高濃度で二色性アゾ色素化合物を含有させて、薄膜で高い配向度と光耐久性向上を実現できた。これは、二色性アゾ色素化合物の結晶性を向上させることで、二色性アゾ色素化合物の高い配向度と光耐久性向上が実現したと推定している。
この場合、二色性アゾ色素は可視光領域に高い吸光度を有するため、光吸収異方性層は可視光領域に高い屈折率異方性を有する層となっていると考えられる。
そのため、本発明の積層体が優れた反射防止機能を有する理由は、適した屈折率を有する屈折率調整層を表面側に隣接して配置することで、光吸収異方性層との界面反射を小さくし、その結果内部反射が抑制され反射防止機能が向上したと推察できる。加えて、より光耐久性を高めることができる酸素遮断層も付与したうえでの屈折率設計を行い、非常に優れた表示性能と光耐久性を両立できていると考えられる。
【0022】
図1および
図2に、本発明の積層体の一例を示す模式的な断面図を示す。
ここで、
図1に示す積層体100は、光学異方性層12、光吸収異方性層14、屈折率調整層16、酸素遮断層18、および、任意の表面保護層20をこの順に有する層構成の積層体である。
また、
図2に示す積層体200は、光学異方性層12、任意の配向層13、光吸収異方性層14、屈折率調整層16、酸素遮断層18、および、任意の表面保護層20をこの順に有する層構成の積層体である。
なお、上述した構成については、互いに隣接して設けられる光吸収異方性層および屈折率調整層の層間以外の層間には、他の層を有していてもよい。例えば、表面保護層20と酸素遮断層18の間に、接着剤層や粘着剤層や透明支持体を有していてもよい。
また、各層が複層構成となっていてもよい。例えば、表面層20が支持体とハードコート層の2層構成も好ましい。また、光学異方性層がλ/4板であるポジティブAプレートと、ポジティブCプレートの2層構成であることも好ましい。このとき、λ/4板であるポジティブAプレートと、ポジティブCプレートは接着剤あるいは粘着剤で貼りあわされていてもよいし、互いに隣接(積層塗布)されていてもよい。
【0023】
以下に、本発明の積層体が有する光学異方性層、光吸収異方性層、屈折率調整層および酸素遮断層、ならびに、任意の表面保護層および配向層などについて詳述する。
【0024】
〔光吸収異方性層〕
本発明の積層体が有する光吸収異方性層は、二色性アゾ色素化合物および液晶性化合物を含有する組成物(以下、「光吸収異方性層形成用組成物」ともいう。)を用いて形成される層である。
光吸収異方性層形成用組成物は、必要に応じて、溶媒、重合開始剤、界面改良剤、または、これら以外の他の成分を含有していてもよい。
【0025】
本発明においては、光吸収異方性層の配向度が0.92以上であり、0.94以上であることがより好ましく、0.96以上であることがさらに好ましい。
ここで、配向度が高くなると、光吸収異方性層の屈折率異方性が大きくなり、隣接層との界面反射が大きくなる傾向があるため、光吸収異方性層の配向度が0.92以上であると、本発明の効果が顕在化することになる。
また、光吸収異方性層の配向度は、光学顕微鏡(株式会社ニコン製、製品名「ECLIPSE E600 POL」)の光源側に直線偏光子を挿入した状態で、サンプル台に光吸収異方性層をセットし、マルチチャンネル分光器(Ocean Optics社製、製品名「QE65000」)を用いて光吸収異方性層の吸光度を測定し、以下の式により算出される値である。
配向度:S=[(Az0/Ay0)-1]/[(Az0/Ay0)+2]
Az0:光吸収異方性層の吸収軸方向の偏光に対する吸光度
Ay0:光吸収異方性層の透過軸方向の偏光に対する吸光度
【0026】
また、本発明においては、光吸収異方性層が、逆波長分散性を示してもよい。
ここで、光吸収異方性層が逆波長分散性を示すとは、特定波長(可視光範囲)における面内のレタデーション(Re)値を測定した際に、測定波長が大きくなるにつれてRe値が同等または高くなるものをいう。
【0027】
光吸収異方性層の厚さは、特に限定されないが、本発明の積層体のフレキシブル性の観点から、100~8000nmであることが好ましく、300~5000nmであることがより好ましい。
【0028】
<二色性アゾ色素化合物>
光吸収異方性層形成用組成物は、二色性アゾ色素化合物を含有する。
二色性アゾ色素化合物は、特に限定されず、従来公知の二色性アゾ色素を使用することができるが、後述の化合物が好ましく用いられる。
【0029】
本発明において、二色性アゾ色素化合物とは、方向によって吸光度が異なる色素を意味する。
二色性アゾ色素化合物は、液晶性を示してもよいし、液晶性を示さなくてもよい。
二色性アゾ色素化合物が液晶性を示す場合には、ネマチック性またはスメクチック性のいずれを示してもよい。液晶相を示す温度範囲は、室温(約20℃~28℃)~300℃が好ましく、取扱い性および製造適性の観点から、50℃~200℃であることがより好ましい。
【0030】
本発明においては、色味調整の観点から、光吸収異方性層が、波長560~700nmの範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の色素化合物(以下、「第1の二色性アゾ色素化合物」とも略す。)と、波長455nm以上560nm未満の範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の色素化合物(以下、「第2の二色性アゾ色素化合物」とも略す。)とを少なくとも有していることが好ましく、具体的には、後述する式(1)で表される二色性アゾ色素化合物と、後述する式(2)で表される二色性アゾ色素化合物とを少なくとも有していることがより好ましい。
【0031】
本発明においては、3種以上の二色性アゾ色素化合物を併用してもよく、例えば、光吸収異方性層を黒色に近づける観点から、第1の二色性アゾ色素化合物と、第2の二色性アゾ色素化合物と、波長380nm以上455nm未満の範囲に極大吸収波長を有する少なくとも1種の色素化合物(以下、「第3の二色性アゾ色素化合物」とも略す。)とを併用することが好ましい。
【0032】
本発明においては、耐押圧性がより良好となる理由から、二色性アゾ色素化合物が架橋性基を有していることが好ましい。
架橋性基としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、オキセタニル基、スチリル基などが挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0033】
(第1の二色性アゾ色素化合物)
第1の二色性アゾ色素化合物は、核である発色団と、発色団の末端に結合する側鎖と、を有する化合物であることが好ましい。
発色団の具体例としては、芳香族環基(例えば、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基)、アゾ基などが挙げられ、芳香族環基およびアゾ基の両方を有する構造が好ましく、芳香族複素環基(好ましくはチエノチアゾール基)と2つのアゾ基を有するビスアゾ構造がより好ましい。
側鎖としては、特に限定されず、後述の式(1)のL3、R2またはL4で表される基が挙げられる。
【0034】
第1の二色性アゾ色素化合物は、波長560nm以上700nm以下の範囲に最大吸収波長を有する二色性アゾ色素化合物であり、偏光子の色味調整の観点から、波長560~650nmの範囲に最大吸収波長を有する二色性アゾ色素化合物であることが好ましく、波長560~640nmの範囲に最大吸収波長を有する二色性アゾ色素化合物であるのがより好ましい。
本明細書における二色性アゾ色素化合物の最大吸収波長(nm)は、二色性アゾ色素化合物を良溶媒中に溶解させた溶液を用いて、分光光度計によって測定される波長380~800nmの範囲における紫外可視光スペクトルから求められる。
【0035】
本発明においては、形成される光吸収異方性層の配向度が更に向上する理由から、第1の二色性アゾ色素化合物が、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0036】
【0037】
式(1)中、Ar1およびAr2はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、または、置換基を有していてもよいナフチレン基を表し、フェニレン基が好ましい。
【0038】
式(1)中、R1は、水素原子、炭素数1~20の置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルカーボネート基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルファモイル基、アルキルカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アルキルウレイド基、アルキルリン酸アミド基、アルキルイミノ基、または、アルキルシリル基を表す。
上記アルキル基を構成する-CH2-は、-O-、-CO-、-C(O)-O-、-O-C(O)-、-Si(CH3)2-O-Si(CH3)2-、-N(R1’)-、-N(R1’)-CO-、-CO-N(R1’)-、-N(R1’)-C(O)-O-、-O-C(O)-N(R1’)-、-N(R1’)-C(O)-N(R1’)-、-CH=CH-、-C≡C-、-N=N-、-C(R1’)=CH-C(O)-、または、-O-C(O)-O-によって置換されていてもよい。
R1が水素原子以外の基である場合、各基が有する水素原子は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-N(R1’)2、アミノ基、-C(R1’)=C(R1’)-NO2、-C(R1’)=C(R1’)-CN、または、-C(R1’)=C(CN)2、によって置換されていてもよい。
R1’は、水素原子または炭素数1~6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。各基において、R1’が複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0039】
式(1)中、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐状のアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルアミド基、アルキルスルホニル基、アリール基、アリールカルボニル基、アリールスルホニル基、アリールオキシカルボニル基、または、アリールアミド基を表す。
上記アルキル基を構成する-CH2-は、-O-、-S-、-C(O)-、-C(O)-O-、-O-C(O)-、-C(O)-S-、-S-C(O)-、-Si(CH3)2-O-Si(CH3)2-、-NR2’-、-NR2’-CO-、-CO-NR2’-、-NR2’-C(O)-O-、-O-C(O)-NR2’-、-NR2’-C(O)-NR2’-、-CH=CH-、-C≡C-、-N=N-、-C(R2’)=CH-C(O)-、または、-O-C(O)-O-、によって置換されていてもよい。
R2およびR3が水素原子以外の基である場合、各基が有する水素原子は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、-OH基、-N(R2’)2、アミノ基、-C(R2’)=C(R2’)-NO2、-C(R2’)=C(R2’)-CN、または、-C(R2’)=C(CN)2によって置換されていてもよい。
R2’は、水素原子または炭素数1~6の直鎖もしくは分岐状のアルキル基を表す。各基において、R2’が複数存在する場合、互いに同一であっても異なっていてもよい。
R2およびR3は、互いに結合して環を形成してもよいし、R2またはR3は、Ar2と結合して環を形成してもよい。
【0040】
耐光性の観点からは、R1は電子吸引性基であることが好ましく、R2およびR3は電子供与性が低い基であることが好ましい。
このような基の具体例として、R1としては、アルキルスルホニル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルファモイル基、アルキルスルフィニル基、および、アルキルウレイド基などが挙げられ、R2およびR3としては、下記の構造の基などが挙げられる。なお下記の構造の基は、上記式(1)において、R2およびR3が結合する窒素原子を含む形で示す。
【0041】
【0042】
第1の二色性アゾ色素化合物の具体例を以下に示すが、これに限定されるものではない。
【0043】
【0044】
(第2の二色性アゾ色素化合物)
第2の二色性アゾ色素化合物は、第1の二色性アゾ色素化合物異なる化合物であり、具体的にはその化学構造が異なっている。
第2の二色性アゾ色素化合物は、二色性アゾ色素化合物の核である発色団と、発色団の末端に結合する側鎖と、を有する化合物であることが好ましい。
発色団の具体例としては、芳香族環基(例えば、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基)、アゾ基などが挙げられ、芳香族炭化水素基およびアゾ基の両方を有する構造が好ましく、芳香族炭化水素基と2または3つのアゾ基とを有するビスアゾまたはトリスアゾ構造がより好ましい。
側鎖としては、特に限定されず、後述の式(2)のR4、R5またはR6で表される基が挙げられる。
【0045】
第2の二色性アゾ色素化合物は、波長455nm以上560nm未満の範囲に最大吸収波長を有する二色性アゾ色素化合物であり、偏光子の色味調整の観点から、波長455~555nmの範囲に最大吸収波長を有する二色性アゾ色素化合物であることが好ましく、波長455~550nmの範囲に最大吸収波長を有する二色性アゾ色素化合物であることがより好ましい。
特に、最大吸収波長が560~700nmである第1の二色性アゾ色素化合物と、最大吸収波長が455nm以上560nm未満の第2の二色性アゾ色素化合物と、を用いれば、偏光子の色味調整がより容易になる。
【0046】
第2の二色性アゾ色素化合物は、偏光子の配向度がより向上する点から、式(2)で表される化合物であるのが好ましい。
【0047】
【0048】
式(2)中、nは1または2を表す。
式(2)中、Ar3、Ar4およびAr5はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基または置換基を有していてもよい複素環基を表す。
複素環基としては、芳香族または非芳香族のいずれであってもよい。
芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。
芳香族複素環基の具体例としては、例えば、ピリジレン基(ピリジン-ジイル基)、ピリダジン-ジイル基、イミダゾール-ジイル基、チエニレン(チオフェン-ジイル基)、キノリレン基(キノリン-ジイル基)、イソキノリレン基(イソキノリン-ジイル基)、オキサゾール-ジイル基、チアゾール-ジイル基、オキサジアゾール-ジイル基、ベンゾチアゾール-ジイル基、ベンゾチアジアゾール-ジイル基、フタルイミド-ジイル基、チエノチアゾール-ジイル基、チアゾロチアゾール-ジイル基、チエノチオフェン-ジイル基、および、チエノオキサゾール-ジイル基などが挙げられる。
【0049】
式(2)中、R4の定義は、式(1)中のR1と同様である。
式(2)中、R5およびR6の定義はそれぞれ、式(1)中のR2およびR3と同様である。
【0050】
耐光性の観点からは、R4は電子吸引性基であることが好ましく、R5およびR6は電子供与性が低い基であることが好ましい。
このような基のうち、R4が電子吸引性基である場合の具体例は、R1が電子吸引性基である場合の具体例と同様であり、R5およびR6が電子供与性の低い基である場合の具体例は、R2およびR3が電子供与性の低い基である場合の具体例と同様である。
【0051】
第2の二色性アゾ色素化合物の具体例を以下に示すが、これに限定されるものではない。
【0052】
【0053】
(logP値の差)
logP値は、化学構造の親水性および疎水性の性質を表現する指標である。第1の二色性アゾ色素化合物の側鎖のlogP値と、第2の二色性アゾ色素化合物の側鎖のlogP値と、の差の絶対値(以下、「logP差」ともいう。)は、2.30以下が好ましく、2.0以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.0以下が特に好ましい。logP差が2.30以下であれば、第1の二色性アゾ色素化合物と第2の二色性アゾ色素化合物との親和性が高まって、配列構造をより形成しやすくなるため、光吸収異方性層の配向度がより向上する。
なお、第1の二色性アゾ色素化合物または第2の二色性アゾ色素化合物の側鎖が複数ある場合、少なくとも1つのlogP差が上記値を満たすことが好ましい。
ここで、第1の二色性アゾ色素化合物および第2の二色性アゾ色素化合物の側鎖とは、上述した発色団の末端に結合する基を意味する。例えば、第1の二色性アゾ色素化合物が式(1)で表される化合物である場合、式(1)中のR1、R2およびR3が側鎖であり、第2の二色性アゾ色素化合物が式(2)で表される化合物である場合、式(2)中のR4、R5およびR6が側鎖である。特に、第1の二色性アゾ色素化合物が式(1)で表される化合物であり、第2の二色性アゾ色素化合物が式(2)で表される化合物である場合、R1とR4とのlogP値の差、R1とR5とのlogP値の差、R2とR4とのlogP値の差、および、R2とR5とのlogP値の差のうち、少なくとも1つのlogP差が上記値を満たすことが好ましい。
【0054】
ここで、logP値は、化学構造の親水性および疎水性の性質を表現する指標であり、親疎水パラメータと呼ばれることがある。logP値は、ChemBioDraw UltraまたはHSPiP(Ver.4.1.07)などのソフトウェアを用いて計算できる。また、OECD Guidelines for the Testing of Chemicals,Sections 1,Test No.117の方法などにより、実験的に求めることもできる。本発明では特に断りのない限り、HSPiP(Ver.4.1.07)に化合物の構造式を入力して算出される値をlogP値として採用する。
【0055】
(第3の二色性アゾ色素化合物)
第3の二色性アゾ色素化合物は、第1の二色性アゾ色素化合物および第2の二色性アゾ色素化合物以外の二色性アゾ色素化合物であり、具体的には、第1の二色性アゾ色素化合物および第2の二色性アゾ色素化合物とは化学構造が異なっている。光吸収異方性層形成用組成物が第3の二色性アゾ色素化合物を含有すれば、光吸収異方性層の色味の調整が容易になるという利点がある。
第3の二色性アゾ色素化合物の最大吸収波長は、380nm以上455nm未満であり、385~454nmが好ましい。
第3の二色性アゾ色素化合物の具体例としては、国際公開第2017/195833号に記載の式(1)で表される化合物が挙げられる化合物のうち、上記第1の二色性アゾ色素化合物および上記第2の二色性アゾ色素化合物以外の化合物が挙げられる。
【0056】
以下に、第3の二色性色素化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記具体例中、nは、1~10の整数を表す。
【0057】
【0058】
【0059】
(二色性アゾ色素化合物の含有量)
二色性アゾ色素化合物の含有量は、光吸収異方性層の全固形分質量に対して、10~30質量%であり、15~30質量%が好ましく、18~28質量%がより好ましく、20~26質量%が更に好ましい。二色性アゾ色素化合物の含有量が上記範囲内にあれば、光吸収異方性層を薄膜にした場合であっても、高配向度の光吸収異方性層を得ることができる。そのため、フレキシブル性に優れた光吸収異方性層が得られやすい。また、30質量%を超えると、屈折率調整層による内部反射の抑制が困難となる。
第1の二色性アゾ色素化合物の含有量は、光吸収異方性層形成用組成物中の二色性アゾ色素化合物全体の含有量100質量部に対して、40~90質量部が好ましく、45~75質量部がより好ましい。
第2の二色性アゾ色素化合物の含有量は、光吸収異方性層形成用組成物中の二色性アゾ色素化合物全体の含有量100質量に対して、6~50質量部が好ましく、8~35質量部がより好ましい。
第3の二色性アゾ色素化合物の含有量は、光吸収異方性層形成用組成物中の二色性アゾ色素化合物の含有量100質量に対して、3~35質量部が好ましく、5~30質量部がより好ましい。
第1の二色性アゾ色素化合物と、第2の二色性アゾ色素化合物と、および必要に応じて用いられる第3の二色性アゾ色素化合物と、の含有比は、光吸収異方性層の色味調整するために、任意に設定することができる。ただし、第1の二色性アゾ色素化合物に対する第2の二色性アゾ色素化合物の含有比(第2の二色性アゾ色素化合物/第1の二色性アゾ色素化合物)は、モル換算で、0.1~10が好ましく、0.2~5がより好ましく、0.3~0.8が特に好ましい。第1の二色性アゾ色素化合物に対する第2の二色性アゾ色素化合物の含有比が上記範囲内にあれば、配向度が高められる。
【0060】
<液晶性化合物>
光吸収異方性層形成用組成物は、液晶性化合物を含有する。液晶性化合物を含有することで、二色性アゾ色素化合物の析出を抑止しながら、二色性アゾ色素化合物を高い配向度で配向させることができる。
液晶性化合物は、二色性を示さない液晶性化合物である。
液晶性化合物としては、低分子液晶性化合物および高分子液晶性化合物のいずれも用いることができるが、高分子液晶性化合物が高配向度を得るうえでより好ましい。
ここで、「低分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有さない液晶性化合物のことをいう。また、「高分子液晶性化合物」とは、化学構造中に繰り返し単位を有する液晶性化合物のことをいう。
低分子液晶性化合物としては、例えば、特開2013-228706号公報に記載されている液晶性化合物が挙げられる。
高分子液晶性化合物としては、例えば、特開2011-237513号公報に記載されているサーモトロピック液晶性高分子が挙げられる。また、高分子液晶性化合物は、末端に架橋性基(例えば、アクリロイル基およびメタクリロイル基)を有していてもよい。
液晶性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
液晶性化合物の含有量は、光吸収異方性層形成用組成物中の二色性アゾ色素化合物の含有量100質量部に対して、100~600質量部が好ましく、200~450質量部がより好ましく、250~400質量部がさらに好ましい。液晶性化合物の含有量が上記範囲内にあることで、光吸収異方性層の配向度がより向上する。
【0061】
液晶性化合物は、二色性アゾ色素化合物の配向度がより優れる理由から、下記式(3-1)で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(3-1)」とも言う)を含む高分子液晶性化合物であることが好ましい。
【0062】
【0063】
上記式(3-1)中、P1は繰り返し単位の主鎖を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、SP1はスペーサー基を表し、M1はメソゲン基を表し、T1は末端基を表す。
【0064】
繰り返し単位(3-1)において、P1、L1およびSP1のlogP値と、M1のlogP値との差が4以上であることが好ましい。さらに好ましくは、4.5以上である。主鎖、L1およびスペーサー基のlogP値と、メソゲン基のlog値と、が所定値以上離れているので、主鎖からスペーサー基までの構造とメソゲン基との相溶性が低い状態にある。これにより、高分子液晶性化合物の結晶性が高くなり、高分子液晶性化合物の配向度が高い状態にあると推測される。このように、高分子液晶性化合物の配向度が高いと、高分子液晶性化合物と二色性アゾ色素化合物との相溶性が低下して、すなわち、二色性アゾ色素化合物の結晶性が向上し、二色性アゾ色素化合物の配向度が向上すると推測される。その結果、得られる光吸収異方性層の配向度が高くなると考えられる。
【0065】
P1が表す繰り返し単位の主鎖としては、具体的には、例えば、下記式(P1-A)~(P1-D)で表される基が挙げられ、なかでも、原料となる単量体の多様性および取り扱いが容易である観点から、下記式(P1-A)で表される基が好ましい。
【0066】
【0067】
式(P1-A)~(P1-D)において、「*」は、式(3-1)におけるL1との結合位置を表す。
上記式(P1-A)~(P1-D)において、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基または炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基を表す。上記アルキル基は、直鎖または分岐のアルキル基であってもよいし、環状構造を有するアルキル基(シクロアルキル基)であってもよい。また、上記アルキル基の炭素数は、1~5が好ましい。
上記式(P1-A)で表される基は、(メタ)アクリル酸エステルの重合によって得られるポリ(メタ)アクリル酸エステルの部分構造の一単位であることが好ましい。
上記式(P1-B)で表される基は、エポキシ基を有する化合物のエポキシ基を開環重合して形成されるエチレングリコール単位であることが好ましい。
上記式(P1-C)で表される基は、オキセタン基を有する化合物のオキセタン基を開環重合して形成されるプロピレングリコール単位であることが好ましい。
上記式(P1-D)で表される基は、アルコキシシリル基およびシラノール基の少なくとも一方の基を有する化合物の縮重合によって得られるポリシロキサンのシロキサン単位であることが好ましい。ここで、アルコキシシリル基およびシラノール基の少なくとも一方の基を有する化合物としては、式SiR14(OR15)2-で表される基を有する化合物が挙げられる。式中、R14は、(P1-D)におけるR14と同義であり、複数のR15はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表す。
【0068】
L1は、単結合または2価の連結基である。
L1が表す2価の連結基としては、-C(O)O-、-OC(O)-、-O-、-S-、-C(O)NR3-、-NR3C(O)-、-SO2-、および、-NR3R4-などが挙げられる。式中、R3およびR4はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表わす。
P1が式(P1-A)で表される基である場合には、光吸収異方性層の配向度がより優れる理由から、L1は-C(O)O-で表される基が好ましい。
P1が式(P1-B)~(P1-D)で表される基である場合には、光吸収異方性層の配向度がより優れる理由から、L1は単結合が好ましい。
【0069】
SP1が表すスペーサー基は、液晶性を発現しやすいことや、原材料の入手性などの理由から、オキシエチレン構造、オキシプロピレン構造、ポリシロキサン構造およびフッ化アルキレン構造からなる群より選択される少なくとも1種の構造を含むことが好ましい。
ここで、SP1が表すオキシエチレン構造は、*-(CH2-CH2O)n1-*で表される基が好ましい。式中、n1は1~20の整数を表し、*は、上記式(3-1)中のL1またはM1との結合位置を表す。n1は、光吸収異方性層の配向度がより優れる理由から、2~10の整数であることが好ましく、2~4の整数であることがより好ましく、3であることが最も好ましい。
また、SP1が表すオキシプロピレン構造は、光吸収異方性層の配向度がより優れる理由から、*-(CH(CH3)-CH2O)n2-*で表される基が好ましい。式中、n2は1~3の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
また、SP1が表すポリシロキサン構造は、光吸収異方性層の配向度がより優れる理由から、*-(Si(CH3)2-O)n3-*で表される基が好ましい。式中、n3は6~10の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
また、SP1が表すフッ化アルキレン構造は、光吸収異方性層の配向度がより優れる理由から、*-(CF2-CF2)n4-*で表される基が好ましい。式中、n4は6~10の整数を表し、*はL1またはM1との結合位置を表す。
【0070】
M1が表すメソゲン基とは、液晶形成に寄与する液晶分子の主要骨格を示す基である。液晶分子は、結晶状態と等方性液体状態の中間の状態(メソフェーズ)である液晶性を示す。メソゲン基については特に制限はなく、例えば、「Flussige Kristalle in Tabellen II」(VEB Deutsche Verlag fur Grundstoff Industrie,Leipzig、1984年刊)、特に第7頁~第16頁の記載、および、液晶便覧編集委員会編、液晶便覧(丸善、2000年刊)、特に第3章の記載、を参照することができる。
メソゲン基としては、例えば、芳香族炭化水素基、複素環基、および脂環式基からなる群より選択される少なくとも1種の環状構造を有する基が好ましい。
メソゲン基は、光吸収異方性層の配向度がより優れる理由から、芳香族炭化水素基を有するのが好ましく、2~4個の芳香族炭化水素基を有するのがより好ましく、3個の芳香族炭化水素基を有するのがさらに好ましい。
【0071】
メソゲン基としては、液晶性の発現、液晶相転移温度の調整、原料入手性および合成適性という観点、並びに、光吸収異方性層の配向度がより優れるから、下記式(M1-A)または下記式(M1-B)で表される基が好ましく、式(M1-B)で表される基がより好ましい。
【0072】
【0073】
式(M1-A)中、A1は、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基からなる群より選択される2価の基である。これらの基は、アルキル基、フッ化アルキル基、アルコキシ基又は置換基で置換されていてもよい。
A1で表される2価の基は、4~6員環であることが好ましい。また、A1で表される2価の基は、単環でも、縮環であってもよい。
*は、SP1またはT1との結合位置を表す。
【0074】
A1が表す2価の芳香族炭化水素基としては、フェニレン基、ナフチレン基、フルオレン-ジイル基、アントラセン-ジイル基およびテトラセン-ジイル基などが挙げられ、メソゲン骨格の設計の多様性や原材料の入手性などの観点から、フェニレン基またはナフチレン基が好ましく、フェニレン基がより好ましい。
【0075】
A1が表す2価の複素環基としては、芳香族または非芳香族のいずれであってもよいが、配向度がより向上するという観点から、2価の芳香族複素環基であることが好ましい。
2価の芳香族複素環基を構成する炭素以外の原子としては、窒素原子、硫黄原子および酸素原子が挙げられる。芳香族複素環基が炭素以外の環を構成する原子を複数有する場合、これらは同一であっても異なっていてもよい。
2価の芳香族複素環基の具体例としては、例えば、ピリジレン基(ピリジン-ジイル基)、ピリダジン-ジイル基、イミダゾール-ジイル基、チエニレン(チオフェン-ジイル基)、キノリレン基(キノリン-ジイル基)、イソキノリレン基(イソキノリン-ジイル基)、オキサゾール-ジイル基、チアゾール-ジイル基、オキサジアゾール-ジイル基、ベンゾチアゾール-ジイル基、ベンゾチアジアゾール-ジイル基、フタルイミド-ジイル基、チエノチアゾール-ジイル基、チアゾロチアゾール-ジイル基、チエノチオフェン-ジイル基、および、チエノオキサゾール-ジイル基などが挙げられる。
【0076】
A1が表す2価の脂環式基の具体例としては、シクロペンチレン基およびシクロへキシレン基などが挙げられる。
【0077】
式(M1-A)中、a1は1~10の整数を表す。a1が2以上である場合には、複数のA1は同一でも異なっていてもよい。
【0078】
式(M1-B)中、A2およびA3はそれぞれ独立に、芳香族炭化水素基、複素環基および脂環式基からなる群より選択される2価の基である。A2およびA3の具体例および好適態様は、式(M1-A)のA1と同様であるので、その説明を省略する。
式(M1-B)中、a2は1~10の整数を表し、a2が2以上である場合には、複数のA2は同一でも異なっていてもよく、複数のA3は同一でも異なっていてもよく、複数のLA1は同一でも異なっていてもよい。a2は、光吸収異方性層の配向度がより優れる理由から、2以上の整数であることが好ましく、2であることがより好ましい。
式(M1-B)中、a2が1である場合には、LA1は2価の連結基である。a2が2以上である場合には、複数のLA1はそれぞれ独立に、単結合または2価の連結基であり、複数のLA1のうち少なくとも1つが2価の連結基である。a2が2である場合、光吸収異方性層の配向度がより優れる理由から、2つのLA1のうち、一方が2価の連結基であり、他方が単結合であることが好ましい。
【0079】
式(M1-B)中、LA1が表す2価の連結基としては、-O-、-(CH2)g-、-(CF2)g-、-Si(CH3)2-、-(Si(CH3)2O)g-、-(OSi(CH3)2)g-(gは1~10の整数を表す。)、-N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)2-C(Z’)2-、-C(O)-、-OC(O)-、-C(O)O-、-O-C(O)O-、-N(Z)C(O)-、-C(O)N(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)O-、-O-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-、-N=C(Z)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)N(Z'')-、-N(Z'')-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=C(Z’)-C(O)-S-、-S-C(O)-C(Z)=C(Z’)-、-C(Z)=N-N=C(Z’)-(Z、Z’、Z''は独立に、水素、C1~C4アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、シアノ基、または、ハロゲン原子を表す。)、-C≡C-、-N=N-、-S-、-S(O)-、-S(O)(O)-、-(O)S(O)O-、-O(O)S(O)O-、-SC(O)-、および、-C(O)S-などが挙げられる。なかでも、光吸収異方性層の配向度がより優れる理由から、-C(O)O-が好ましい。LA1は、これらの基を2つ以上組み合わせた基であってもよい。
【0080】
M1の具体例としては、例えば以下の構造が挙げられる。なお、下記具体例において、「Ac」は、アセチル基を表す。
【0081】
【0082】
【0083】
T1が表す末端基としては、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数1~10のアルキルチオ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルオキシ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニル基(ROC(O)-:Rはアルキル基)、炭素数1~10のアシルオキシ基、炭素数1~10のアシルアミノ基、炭素数1~10のアルコキシカルボニルアミノ基、炭素数1~10のスルホニルアミノ基、炭素数1~10のスルファモイル基、炭素数1~10のカルバモイル基、炭素数1~10のスルフィニル基、および、炭素数1~10のウレイド基、(メタ)アクリロイルオキシ基含有基などが挙げられる。上記(メタ)アクリロイルオキシ基含有基としては、例えば、-L-A(Lは単結合又は連結基を表す。連結基の具体例は上述したL1及びSP1と同じである。Aは(メタ)アクリロイルオキシ基を表す)で表される基が挙げられる。
T1は、光吸収異方性層の配向度がより優れる理由から、炭素数1~10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~5のアルコキシがより好ましく、メトキシ基がさらに好ましい。これらの末端基は、これらの基、または、特開2010-244038号公報に記載の重合性基によって、さらに置換されていてもよい。
T1の主鎖の原子数は、光吸収異方性層の配向度がより優れる理由から、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10がさらに好ましく、1~7が特に好ましい。T1の主鎖の原子数が20以下であることで、光吸収異方性層の配向度がより向上する。ここで、T1おける「主鎖」とは、M1と結合する最も長い分子鎖を意味し、水素原子はT1の主鎖の原子数にカウントしない。例えば、T1がn-ブチル基である場合には主鎖の原子数は4であり、T1がsec-ブチル基である場合の主鎖の原子数は3である。
【0084】
繰り返し単位(3-1)の含有量は、光吸収異方性層の配向度がより優れる理由から、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位100質量%に対して、20~100質量%が好ましい。
本発明において、高分子液晶性化合物に含まれる各繰り返し単位の含有量は、各繰り返し単位を得るために使用される各単量体の仕込み量(質量)に基づいて算出される。
繰り返し単位(3-1)は、高分子液晶性化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。高分子液晶性化合物が繰り返し単位(3-1)を2種以上含むと、高分子液晶性化合物の溶媒に対する溶解性が向上すること、および、液晶相転移温度の調整が容易になることなどの利点がある。繰り返し単位(3-1)を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0085】
高分子液晶性化合物が繰り返し単位(3-1)を2種含む場合、光吸収異方性層の配向度がより優れる理由から、一方(繰り返し単位A)においてT1が表す末端基がアルコキシ基であり、他方(繰り返し単位B)においてT1が表す末端基がアルコキシ基以外の基であることが好ましい。
上記繰り返し単位BにおいてT1が表す末端基は、光吸収異方性層の配向度がより優れる理由から、アルコキシカルボニル基、シアノ基、又は、(メタ)アクリロイルオキシ基含有基であることが好ましく、アルコキシカルボニル基、又は、シアノ基であることがより好ましい。
高分子液晶性化合物中の上記繰り返し単位Aの含有量と高分子液晶性化合物中の上記繰り返し単位Bの含有量との割合(A/B)は、光吸収異方性層の配向度がより優れる理由から、50/50~95/5であることが好ましく、60/40~93/7であることがより好ましく、70/30~90/10であることがさらに好ましい。
【0086】
<繰り返し単位(3-2)>
本発明の高分子液晶性化合物は、さらに、下記式(3-2)で表される繰り返し単位(本明細書において、「繰り返し単位(3-2)」ともいう。)を含んでいてもよい。これにより、高分子液晶性化合物の溶媒に対する溶解性が向上すること、および、液晶相転移温度の調整が容易になることなどの利点がある。
繰り返し単位(3-2)は、少なくともメソゲン基を有しないという点で、上記繰り返し単位(3-1)と異なる。
高分子液晶性化合物が繰り返し単位(3-2)を含む場合には、高分子液晶性化合物は、繰り返し単位(3-1)と繰り返し単位(3-2)との共重合体であり(さらに、繰り返し単位A,Bを含む共重合体であってもよい)、ブロック重合体、交互重合体、ランダム重合体、および、グラフト重合体など、いずれの重合体であってもよい。
【0087】
【0088】
式(3-2)中、P3は繰り返し単位の主鎖を表し、L3は単結合または2価の連結基を表し、SP3はスペーサー基を表し、T3は末端基を表す。
式(3-2)におけるP3、L3、SP3およびT3の具体例はそれぞれ、上記式(3-1)におけるP1、L1、SP1およびT1と同様である。
ここで、式(3-2)におけるT3は、光吸収異方性層の強度が向上する観点から、重合性基を有することが好ましい。
【0089】
繰り返し単位(3-2)を含有する場合の含有量は、高分子液晶性化合物が有する全繰り返し単位100質量%に対して、0.5~40質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましい。
繰り返し単位(3-2)は、高分子液晶性化合物中において、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。繰り返し単位(3-2)を2種以上含む場合には、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0090】
(重量平均分子量)
高分子液晶性化合物の重量平均分子量(Mw)は、光吸収異方性層の配向度がより優れる理由から、1000~500000が好ましく、2000~300000がより好ましい。高分子液晶性化合物のMwが上記範囲内にあれば、高分子液晶性化合物の取り扱いが容易になる。
特に、塗布時のクラック抑制の観点から、高分子液晶性化合物の重量平均分子量(Mw)は、10000以上が好ましく、10000~300000がより好ましい。
また、配向度の温度ラチチュードの観点から、高分子液晶性化合物の重量平均分子量(Mw)は、10000未満が好ましく、2000以上10000未満が好ましい。
ここで、本発明における重量平均分子量および数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)法により測定された値である。
・溶媒(溶離液):N-メチルピロリドン
・装置名:TOSOH HLC-8220GPC
・カラム:TOSOH TSKgelSuperAWM-H(6mm×15cm)を3本接続して使用
・カラム温度:25℃
・試料濃度:0.1質量%
・流速:0.35mL/min
・校正曲線:TOSOH製TSK標準ポリスチレン Mw=2800000~1050(Mw/Mn=1.03~1.06)までの7サンプルによる校正曲線を使用
【0091】
<重合開始剤>
光吸収異方性層形成用組成物は、重合開始剤を含有することが好ましい。
重合開始剤としては特に制限はないが、感光性を有する化合物、すなわち光重合開始剤であることが好ましい。
光重合開始剤としては、各種の化合物を特に制限なく使用できる。光重合開始剤の例には、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号および同2951758号の各明細書)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報および米国特許第4239850号明細書)、オキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書)、および、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-40799号公報、特公平5-29234号公報、特開平10-95788号公報および特開平10-29997号公報)などが挙げられる。
このような光重合開始剤としては、市販品も用いることができ、BASF社製のイルガキュア(以下、「Irg」とも略す。)-184、イルガキュア-907、イルガキュア-369、イルガキュア-651、イルガキュア-819、イルガキュア-OXE-01およびイルガキュア-OXE-02等が挙げられる。
【0092】
光吸収異方性層形成用組成物が重合開始剤を含有する場合、重合開始剤の含有量は、光吸収異方性層形成用組成物中の上記二色性アゾ色素化合物と上記液晶性化合物との合計100質量部に対し、0.01~30質量部が好ましく、0.1~15質量部がより好ましい。重合開始剤の含有量が0.01質量部以上であることで、光吸収異方性層の耐久性が良好となり、30質量部以下であることで、光吸収異方性層の配向度がより良好となる。
重合開始剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。重合開始剤を2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0093】
<界面改良剤>
光吸収異方性層形成用組成物は、界面改良剤を含むことが好ましい。
界面改良剤を含むことにより、塗布表面の平滑性が向上し、配向度が更に向上したり、ハジキおよびムラを抑制して、面内の均一性が向上したりする効果が見込まれる。
界面改良剤としては、二色性アゾ色素化合物と液晶性化合物を塗布表面側で水平にさせるものが好ましく、特開2011-237513号公報の[0253]~[0293]段落に記載の化合物(水平配向剤)を用いることができる。
【0094】
光吸収異方性層形成用組成物が界面改良剤を含有する場合、光吸収異方性層形成用組成物中の上記二色性アゾ色素化合物と上記液晶性化合物との合計100質量部に対し、0.001~5質量部が好ましく、0.01~3質量部がより好ましい。
界面改良剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。界面改良剤を2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0095】
<溶媒>
光吸収異方性層形成用組成物は、作業性等の観点から、溶媒を含有するのが好ましい。
溶媒としては、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、および、シクロヘキサノン等)、エーテル類(例えば、ジオキサン、および、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、および、トリメチルベンゼン等)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、および、クロロトルエン等)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、および、酢酸ブチル等)、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、および、シクロヘキサノール等)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、および、1,2-ジメトキシエタン等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、および、ジメチルアセトアミド等)、および、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン等)等の有機溶媒、ならびに、水が挙げられる。これの溶媒は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの溶媒のうち、有機溶媒を用いることが好ましく、ハロゲン化炭素類またはケトン類を用いることがより好ましい。
【0096】
光吸収異方性層形成用組成物が溶媒を含む場合、溶媒の含有量は、光吸収異方性層形成用組成物の全質量に対して、80~99質量%であることが好ましく、83~97質量%であることがより好ましく、85~95質量%であることが特に好ましい。
溶媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。溶媒を2種以上含む場合、その合計量が上記範囲内であるのが好ましい。
【0097】
<形成方法>
上述した光吸収異方性層形成用組成物を用いた光吸収異方性層の形成方法は特に限定されず、上述した光吸収異方性層形成用組成物を層構成に応じて後述する配向層上に塗布して塗布膜を形成する工程(以下、「塗布膜形成工程」ともいう。)と、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させる工程(以下、「配向工程」ともいう。)と、をこの順に含む方法が挙げられる。
なお、液晶性成分とは、上述した液晶性化合物だけでなく、上述した二色性アゾ色素化合物が液晶性を有している場合は、液晶性を有する二色性アゾ色素化合物も含む成分である。
【0098】
(塗布膜形成工程)
塗布膜形成工程は、光吸収異方性層形成用組成物を配向層上に塗布して塗布膜を形成する工程である。
上述した溶媒を含有する光吸収異方性層形成用組成物を用いたり、光吸収異方性層形成用組成物を加熱などによって溶融液などの液状物としたものを用いたりすることにより、配向層または液晶層上に光吸収異方性層形成用組成物を塗布することが容易になる。
光吸収異方性層形成用組成物の塗布方法としては、具体的には、例えば、ロールコーティング法、グラビア印刷法、スピンコート法、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、スプレー法、および、インクジェット法などの公知の方法が挙げられる。
【0099】
(配向工程)
配向工程は、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させる工程である。これにより、光吸収異方性層が得られる。
配向工程は、乾燥処理を有していてもよい。乾燥処理によって、溶媒などの成分を塗布膜から除去することができる。乾燥処理は、塗布膜を室温下において所定時間放置する方法(例えば、自然乾燥)によって行われてもよいし、加熱および/または送風する方法によって行われてもよい。
ここで、光吸収異方性層形成用組成物に含まれる液晶性成分は、上述した塗布膜形成工程または乾燥処理によって、配向する場合がある。例えば、光吸収異方性層形成用組成物が溶媒を含む塗布液として調製されている態様では、塗布膜を乾燥して、塗布膜から溶媒を除去することで、光吸収異方性を持つ塗布膜(すなわち、光吸収異方性層)が得られる。
乾燥処理が塗布膜に含まれる液晶性成分の液晶相への転移温度以上の温度により行われる場合には、後述する加熱処理は実施しなくてもよい。
【0100】
塗布膜に含まれる液晶性成分の液晶相への転移温度は、製造適性等の面から10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。上記転移温度が10℃以上であると、液晶相を呈する温度範囲にまで温度を下げるための冷却処理等が必要とならず、好ましい。また、上記転移温度が250℃以下であると、一旦液晶相を呈する温度範囲よりもさらに高温の等方性液体状態にする場合にも高温を要さず、熱エネルギーの浪費、ならびに、基板の変形および変質等を低減できるため、好ましい。
【0101】
配向工程は、加熱処理を有することが好ましい。これにより、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させることができるため、加熱処理後の塗布膜を光吸収異方性層として好適に使用できる。
加熱処理は、製造適性等の面から10~250℃が好ましく、25~190℃がより好ましい。また、加熱時間は、1~300秒が好ましく、1~60秒がより好ましい。
【0102】
配向工程は、加熱処理後に実施される冷却処理を有していてもよい。冷却処理は、加熱後の塗布膜を室温(20~25℃)程度まで冷却する処理である。これにより、塗布膜に含まれる液晶性成分の配向を固定することができる。冷却手段としては、特に限定されず、公知の方法により実施できる。
以上の工程によって、光吸収異方性層を得ることができる。
なお、本態様では、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向する方法として、乾燥処理および加熱処理などを挙げているが、これに限定されず、公知の配向処理によって実施できる。
【0103】
(他の工程)
光吸収異方性層の製造方法は、上記配向工程後に、光吸収異方性層を硬化させる工程(以下、「硬化工程」ともいう。)を有していてもよい。
硬化工程は、例えば、光吸収異方性層が架橋性基(重合性基)を有している場合には、加熱および/または光照射(露光)によって実施される。このなかでも、硬化工程は光照射によって実施されることが好ましい。
硬化に用いる光源は、赤外線、可視光または紫外線など、種々の光源を用いることが可能であるが、紫外線であることが好ましい。また、硬化時に加熱しながら紫外線を照射してもよいし、特定の波長のみを透過するフィルタを介して紫外線を照射してもよい。
露光が加熱しながら行われる場合、露光時の加熱温度は、光吸収異方性層に含まれる液晶性成分の液晶相への転移温度にもよるが、25~140℃であることが好ましい。
また、露光は、窒素雰囲気下で行われてもよい。ラジカル重合によって光吸収異方性層の硬化が進行する場合において、酸素による重合の阻害が低減されるため、窒素雰囲気下で露光することが好ましい。
【0104】
〔屈折率調整層〕
本発明の積層体が有する屈折率調整層は、光吸収異方性層に接するように配置される層であり、架橋性基を有する化合物を含有する組成物から形成され、波長550nmにおける面内平均屈折率が1.55以上1.70以下である。
【0105】
(面内平均屈折率測定方法)
面内平均屈折率は、Woollam社製分光エリプソメトリM-2000Uを用いて測定される。面内における屈折率最大となる方向をx軸、それに対し直交する方向をy軸、面内に対し法線方向をz軸とし、それぞれの方向での屈折率をnx、ny、nzと定義する。本発明における面内平均屈折率(nave)は、下記式(1)で表される。
式(1) nave =(nx+ny)/2
【0106】
屈折率調整層の面内平均屈折率は、上記範囲であればよいが、1.58~1.70が好ましく、1.60~1.70がさらに好ましい。
【0107】
屈折率調整層の厚みは特に制限されないが、薄型化の点から、0.01~2.00μmが好ましく、0.01~0.80μmがより好ましく、0.01~0.15μmがさらに好ましい。
【0108】
屈折率調整層を構成する成分の種類は、架橋性基を有する化合物を含有していれば特に制限されない。架橋性基があることで層内の強度が確保できる。光や熱で硬化する化合物、例えば、(メタ)アクリロイル基やエポキシ基を有する重合性化合物が好ましい。また、高い面内平均屈折率が得られる点で重合性液晶化合物も好ましい。また、重合性液晶化合物は面内で屈折率の異方性を制御できる点で、面内で屈折率異方性を持つ光吸収異方性層との屈折率最適化のポテンシャルが高い。
【0109】
屈折率調整層は、酸素遮断層との密着性が向上する理由から、ボロン酸構造を有する化合物を有していることが好ましい。
ボロン酸構造を有する化合物としては、例えば、特開2006-309120公報の段落[0061]~[0065]に記載された化合物や、特開2018-5215公報に記載されたフッ素含有のボロン酸構造を有する化合物(共重合体)などが挙げられる。
【0110】
屈折率調整層は、架橋性基を有する化合物と共に、粒子を含んでいてもよい。粒子としては、有機粒子、無機粒子ならびに有機成分および無機成分を含む有機無機複合粒子が挙げられる。
有機粒子としては、スチレン樹脂粒子、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体粒子、アクリル樹脂粒子、メタクリル樹脂粒子、スチレン-アクリル共重合体粒子、スチレン-メタクリル共重合体粒子、メラミン樹脂粒子およびこれらを2種以上含む樹脂粒子が挙げられる。
無機粒子を構成する成分としては、金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、および、金属単体が挙げられる。上記金属酸化物、金属窒化物、金属酸窒化物、および、金属単体に含まれる金属原子としては、チタン原子、ケイ素原子、アルミニウム原子、コバルト原子、および、ジルコニウム原子が挙げられる。無機粒子の具体例としては、アルミナ粒子、アルミナ水和物粒子、シリカ粒子、ジルコニア粒子、および、粘土鉱物(例えば、スメクタイト)等の無機酸化物粒子が挙げられる。高屈折率が得られる点で、ジルコニア粒子は好ましい。
【0111】
粒子の平均粒子径は、1~300nmが好ましく、10~200nmがより好ましい。上記範囲であると、粒子の分散性に優れ、また、高温耐久性、湿熱耐久性および透明性により優れる硬化物(透明樹脂層)が得られる。
ここで、粒子の平均粒子径は、TEM(透過型電子顕微鏡)またはSEM(走査型電子顕微鏡)の観察にて得られた写真から求めることができる。具体的には、粒子の投影面積を求め、それに対応する円相当径(円の直径)を粒子の平均粒子径とする。なお、本発明における平均粒子径は、100個の粒子について求めた円相当径の算術平均値とする。
粒子は、球状、針状、繊維(ファイバー状)、柱状および板状等のいずれの形状であってもよい。
屈折率調整層中における粒子の含有量は特に制限されないが、屈折率調整層の面内平均屈折率が調整しやすい点で、屈折率調整層全質量に対して、1~50質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましい。
【0112】
屈折率調整層の形成方法は特に制限されないが、屈折率調整層形成用組成物を偏光子上に塗布して、必要に応じて、塗膜に硬化処理を施す方法が挙げられる。
屈折率調整層形成用組成物には、屈折率調整層を構成し得る成分が含まれており、例えば、樹脂、モノマー、および、粒子が挙げられる。樹脂および粒子の例示は、上述した通りである。
モノマーとしては、光硬化性化合物および熱硬化性化合物(例えば、熱硬化性樹脂)が挙げられる。モノマーとしては、重合性基を1分子中に1つ含む単官能重合性化合物、および、同一または異なる重合性基を1分子中に2つ以上含む多官能重合性化合物が好ましい。重合性化合物は、モノマーであっても、オリゴマーまたはプレポリマー等の多量体であってもよい。
重合性基としては、ラジカル重合性基およびカチオン重合性基が挙げられ、ラジカル重合性基が好ましい。ラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和結合基等が挙げられる。カチオン重合性基としては、エポキシ基およびオキセタン基等が挙げられる。
【0113】
屈折率調整層形成用組成物には、界面改良剤、重合開始剤、および、溶媒の少なくとも1種が含まれていてもよい。これらの成分としては、光吸収異方性層形成用組成物に含まれていてもよい成分として例示した化合物が挙げられる。
【0114】
屈折率調整層形成用組成物の塗布方法は特に制限されず、上述した光吸収異方性層形成用組成物の塗布方法が挙げられる。
【0115】
屈折率調整層形成用組成物を塗布した後、必要に応じて、塗膜に乾燥処理を施してもよい。
また、屈折率調整層形成用組成物がモノマー等の硬化性化合物を含む場合は、屈折率調整層形成用組成物を塗布した後、塗膜に硬化処理を施してもよい。
硬化処理としては、光硬化処理および熱硬化処理が挙げられ、用いられる材料に応じて最適な条件が選択される。
【0116】
架橋性基を有する化合物として重合性液晶化合物を用いる場合、化合物は特に限定されない。
一般的に、液晶性化合物はその形状から、棒状タイプと円盤状タイプに分類できる。さらにそれぞれ低分子と高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。
本発明においては、いずれの液晶性化合物を用いることもできるが、棒状液晶性化合物(以下、「CLC」とも略す。)またはディスコティック液晶性化合物(以下、「DLC」とも略す。)を用いるのが好ましく、棒状液晶性化合物を用いるのがより好ましい。なお、2種以上の棒状液晶性化合物、2種以上の円盤状液晶性化合物、または、棒状液晶性化合物と円盤状液晶性化合物との混合物を用いてもよい。
【0117】
本発明においては、上述の液晶性化合物の固定化のために、重合性基を有する液晶性化合物を用いることが必要であり、液晶性化合物が1分子中に重合性基を2以上有することがさらに好ましい。なお、液晶性化合物が2種類以上の混合物の場合には、少なくとも1種類の液晶性化合物が1分子中に2以上の重合性基を有していることが好ましい。なお、液晶性化合物が重合によって固定された後においては、もはや液晶性を示す必要はない。
【0118】
また、重合性基の種類は特に制限されず、付加重合反応が可能な官能基が好ましく、重合性エチレン性不飽和基または環重合性基が好ましい。より具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基などが好ましく挙げられ、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。なお、(メタ)アクリロイル基とは、メタアクリロイル基またはアクリロイル基を意味する表記である。
【0119】
棒状液晶性化合物としては、例えば、特表平11-513019号公報の請求項1や特開2005-289980号公報の段落[0026]~[0098]に記載のものを好ましく用いることができ、ディスコティック液晶性化合物としては、例えば、特開2007-108732号公報の段落[0020]~[0067]や特開2010-244038号公報の段落[0013]~[0108]に記載のものを好ましく用いることができるが、これらに限定されない。
【0120】
<その他の成分>
屈折率調整層形成用組成物に含まれるその他の成分としては、具体的には、例えば、上述した二色性アゾ色素化合物を含有する組成物(光吸収異方性層形成用組成物)において説明した重合開始剤、界面活性剤および溶媒などを挙げることができる。
【0121】
<形成方法>
上述した屈折率調整層形成用組成物を用いた屈折率調整層の形成方法は特に限定されず、上述した屈折率調整層形成用組成物を層構成に応じて後述する配向層または上述した光吸収異方性層上に塗布して塗布膜を形成する工程(以下、「塗布膜形成工程」ともいう。)と、塗布膜に含まれる液晶性成分を配向させる工程(以下、「配向工程」ともいう。)と、をこの順に含む方法が挙げられる。
ここで、塗布膜形成工程および配向工程としては、上述した光吸収異方性層の形成方法において説明したものと同様の工程が挙げられる。
【0122】
〔酸素遮断層〕
本発明の積層体は、光吸収異方性層の二色性アゾ色素化合物の耐光性を向上させる目的で、酸素遮断層を有する。
ここで、酸素遮断層とは、酸素遮断機能のある酸素遮断膜のことをいうが、本発明においては、酸素透過度が200cc/m2/day/atm以下の酸素遮断膜のことをいう。
また、酸素透過度とは、単位時間および単位面積あたりに膜を通過する酸素量を表す指標であり、本発明においては、25℃、50%相対湿度の環境下で、酸素濃度装置(例えば、ハックウルトラアナリティカル社製のMODEL3600など)で測定した値を採用する。
本発明においては、酸素透過度は、100cc/m2/day/atm以下が好ましく、30cc/m2/day/atm以下がより好ましく、10cc/m2/day/atm以下が更に好ましく、3cc/m2/day/atm以下が最も好ましい。
【0123】
酸素遮断層の具体例としては、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレンビニルアルコール系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、セルロースエーテル、ポリアミド、ポリイミド、スチレン/マレイン酸共重合体、ゼラチン、塩化ビニリデン、および、セルロースナノファイバーなどの有機化合物を含む層が挙げられる。
これらのうち、酸素遮断能が高い点で、ポリビニルアルコール系樹脂またはポリエチレンビニルアルコール系樹脂を含む層であることが好ましく、ポリビニルアルコール系樹脂を含む層であることが特に好ましい。
【0124】
重合性化合物で酸素遮断機能の高い化合物としては、水素結合性の高い重合性化合物や、分子量あたりの重合性基を多く持つ化合物が挙げられる。分子量あたりの重合性基を多く持つ化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートやジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0125】
水素結合性の高い重合性化合物としては、具体的には、例えば、下記式で表される化合物が挙げられ、中でも、下記CEL2021Pで表される3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートが好ましい。
【0126】
【0127】
また、金属化合物からなる薄層(金属化合物薄層)も挙げられる。金属化合物薄層の形成方法は、目的の薄層を形成できる方法であればいかなる方法でも用いることができる。例えば、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、および、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法などが適しており、具体的には特許第3400324号、特開2002-322561号、特開2002-361774号各公報記載の形成方法を採用することができる。
【0128】
金属化合物薄層に含まれる成分は、酸素遮断機能を発揮できるものであれば特に限定されないが、例えば、Si、Al、In、Sn、Zn、Ti、Cu、Ce、またはTa等から選ばれる1種以上の金属を含む酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物などを用いることができる。これらの中でも、Si、Al、In、Sn、ZnおよびTiから選ばれる金属の酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物が好ましく、特に、Si、Al、SnおよびTiから選ばれる金属酸化物、窒化物もしくは酸化窒化物が好ましい。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。特開2016-40120号公報や公報特開2016-155255号公報に記載されているような、アルミニウム化合物とリン化合物の反応生成物からなる層も好ましい。
【0129】
また酸素遮断層は、例えば米国特許第6413645号公報、特開2015-226995号公報、特開2013-202971号公報、特開2003-335880号公報、特公昭53-12953号公報、特開昭58-217344号公報、に記載されているように、上記の有機素材を含む層と金属化合物薄層の積層した形態であってもよいし、国際公開2011/11836号公報、特開2013-248832号公報、特許第3855004号公報、に記載されているように、有機化合物と無機化合物とをハイブリッドした層であってもよい。
【0130】
酸素遮断層の膜厚は、有機化合物を含む層の場合は、0.1~10μmが好ましく、0.5~5.5μmがより好ましい。金属化合物薄層の場合は、酸素遮断層の膜厚は、5nm~500nmが好ましく、10nm~200nmがより好ましい。
【0131】
本発明においては、内部反射を抑制する理由から、酸素遮断層の波長550nmにおける面内平均屈折率が、1.50以上1.65以下であることが好ましく、1.55以上1.65以下であることがより好ましい。
【0132】
本発明においては、酸素遮断層が、例えば、後述する表面保護層または接着剤層の機能を兼ねる層であってもよい。
特に、酸素遮断層が、上述した屈折率調整層と後述する表面保護層との接着剤層を兼ねていることが好ましい。この場合、酸素遮断層が、ポリビニルアルコール樹脂を含有する接着剤であることが好ましい態様である。
【0133】
〔表面保護層〕
本発明の積層体は、酸素遮断層の屈折率調整層と反対側、すなわち、表示装置の一部として用いた場合の最も視認側に、表面保護層を有していることが好ましい。
表面保護層は、表面を保護する機能があれば限定されず、1層であってもよく、複数層であってもよい。硬度が高いことも好ましいが、回復性の高いことも好ましい。空気界面で生じる表面反射を抑制した低反射層も好ましい。
好ましい態様としては、支持体および/または表面コート層を有する態様が挙げられる。以下、支持体および表面コート層について記載する。
【0134】
(支持体)
表面保護層は、支持体を有していることが好ましく、透明支持体を有していることがより好ましい。
ここで、本発明でいう「透明」とは、可視光の透過率が60%以上であることを示し、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
透明支持体としては、具体的には、例えば、ガラス基板およびプラスチック基板が挙げられ、なかでも、プラスチック基板が好ましい。
プラスチック基板を構成するプラスチックとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース(TAC)、ジアセチルセルロースおよびセルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド;ポリフェニレンオキシド;ポリイミド樹脂;などが挙げられる。
中でも、市場から容易に入手できたり、透明性に優れていたりする点から、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸エステルであることが好ましく、フレキシブル性に優れている点から、ポリイミド樹脂であることが好ましい。
ポリイミドは、屈折率が高く屈折率ギャップが大きくなる可能性があるが、シリカ粒子を混入させる等の方法で屈折率を調整することも好ましい。ポリイミドの詳細については、国際公開2018/062296号公報や国際公開2018/062190号公報に記載されている。
【0135】
本発明においては、表面保護層が有する支持体は、内部反射を抑制する理由から、波長550nmにおける面内平均屈折率が1.45以上1.60以下であり、ハードコート層の波長550nmにおける面内平均屈折率が1.5以上1.6以下であることが好ましい。
【0136】
透明支持体の厚さは、実用的な取扱いができる程度の質量である点、および、十分な透明性が確保できる点から、強度および加工性を維持できる程度に薄い方が好ましい。
ガラス基板の厚みは、100~3000μmが好ましく、100~1000μmが好ましい。
プラスチック基板の厚みは、5~300μmが好ましく、5~200μmが好ましい。
なお、本発明の積層体を円偏光板として使用する場合(特にモバイル機器用途の円偏光板として使用する場合)、透明支持体の厚みは5~100μm程度が好ましい。
【0137】
(表面コート層)
表面コート層としては、反射防止層、防眩層およびハードコート層からなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。なかでも、ハードコート層であることが好ましい。これらは公知の層材料が使用される。なお、これらの層は、複数層が積層してもよい。
【0138】
反射防止層は、上述の光学異方性層と光吸収異方性層から構成されるいわゆる円偏光板の反射防止板とは異なり、光の干渉を用いた構造により反射を低下させる構造体を指す。反射防止層は、最も単純な構成として、低屈折率層のみからなる構成であってもよい。更に反射率を低下させるには、屈折率の高い高屈折率層と、屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて反射防止層を構成することが好ましい。構成例としては、下側から順に、高屈折率層/低屈折率層の2層のものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(下層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性等から、ハードコート層上に、中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順に有することが好ましく、例えば、特開平8-122504号公報、特開平8-110401号公報、特開平10-300902号公報、特開2002-243906号公報、特開2000-111706号公報等に記載の構成が挙げられる。また、膜厚変動に対するロバスト性に優れる3層構成の反射防止フィルムは特開2008-262187号公報記載されている。上記3層構成の反射防止フィルムは、画像表示装置の表面に設置した場合、反射率の平均値を0.5%以下とすることができ、映り込みを著しく低減することができ、立体感に優れる画像を得ることができる。また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層、帯電防止性のハードコート層、防眩性のハードコート層としたもの(例、特開平10-206603号公報、特開2002-243906号公報、特開2007-264113号公報等)等が挙げられる。
一方、ハードコート層としては、特開2015-212353号公報や、特開2017-008148号公報等に記載された構造のシルセスキオキサン化合物を用いたハードコートを好適に用いることができる。
【0139】
〔光学異方性層〕
本発明の積層体は、光学異方性層を有する。
本発明は、反射防止機能を付与するための積層体が最も好ましい態様であるため、光学異方性層は、λ/4板であることが好ましい。
λ/4板は、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板であり、特定の波長λnmにおける面内レターデーションRe(λ)がRe(λ)=λ/4を満たす板(位相差フィルム)のことであり、ポジティブAプレートのReをλ/4に調整して作成することが好ましい。斜め方向から視認した時の色味変化や黒表示時の光漏れを改善するためには、さらにポジティブCプレートを組み合わせることが好ましい。このとき、反射防止板のトータルRthがゼロに近くなるように調整することが好ましい。
反射防止板は、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置の反射防止用途に好適に用いられ、表示光のコントラスト比を向上させることができる。
例えば、有機EL表示装置の光取り出し面側に反射防止板を設けることができる。この場合、外光は偏光子によって直線偏光となり、次に位相差板を通過することで、円偏光となる。これが有機ELパネルの金属電極等にて反射された際に円偏光状態が反転し、再び位相差板を通過した際に、入射時から90°傾いた直線偏光となり、偏光子に到達して吸収される。結果として、外光の影響を抑制することができる。
【0140】
本発明の積層体は、例えば、光吸収異方性層と光学異方性層であるλ/4のポジティブAプレートおよびポジティブCプレートを接着剤等により貼り合わせることで製造することができる。光学異方性層が、λ/4のポジティブAプレートおよびポジティブCプレートから構成されている場合、ポジティブCプレート側の面で光吸収異方性層と接着されていてもよく、その反対側の面で、光吸収異方性層と接着されていてもよい。
あるいは光吸収異方性層上にλ/4のポジティブAプレートおよびポジティブCプレートを直接形成することにより製造することができる。特許第6243869号公報の実施例19に記載されているように、光吸収異方性層とポジティブAプレートの間には、配向層を加えることも好ましい。また、特許第6123563号公報の実施例1にあるように光吸収異方性層とポジティブAプレートの間に保護層を加えることも可能である。あるいは、λ/4のポジティブAプレートおよびポジティブCプレートを形成したのちに、光吸収異方性層を形成する方法も可能である。
【0141】
反射防止板のポジティブAプレートの遅相軸方向と光吸収異方性層の吸収軸方向とのなす角は45°±10°の範囲であることが好ましい。ポジティブAプレートおよびポジティブCプレートの光学特性としては、特に色味変化を抑制する観点から、ReやRthの波長分散が逆分散性を示すことが好ましい。
【0142】
反射防止板の製造の際は、例えば、光吸収異方性層とポジティブAプレートおよびポジティブCプレートとが、それぞれ長尺の状態で連続的に積層される工程を含むことが好ましい。長尺の反射防止板は、用いられる画像表示装置の画面の大きさに合わせて裁断される。
【0143】
光学異方性層は、液晶化合物から形成すると薄層化できるため、フレキシブル化の点で好ましい。
また、光学異方性層は、重合性液晶性化合物を有する組成物から形成されるλ/4板であることが好ましく、後述する式(3)で表される化合物を含有する組成物から形成されるλ/4板であることがより好ましい。特に、湿熱耐久性の観点から、後述する式(4)で表される化合物を含有する組成物から形成されるλ/4板であることが好ましく、光耐久性がより良好となる理由から、後述する式(3)中のArが後述する式(Ar-2)で表される芳香環を表す化合物を含有する組成物から形成されるλ/4板であることが好ましい。
以下では、まず、光学異方性層の形成に用いられる組成物中の成分について詳述し、その後、光学異方性層の製造方法および特性について詳述する。
【0144】
(式(3)で表される化合物)
下記式(3)で表される化合物は、重合性を有する液晶性化合物である。
L1-SP1-D3-(A1)a1-D5-(G1)g1-D1-Ar-D
2
-(G2)g2-D
6
-(A2)a2-D4-SP2-L2 ・・・(3)
【0145】
上記式(3)中、a1、a2、g1およびg2は、それぞれ独立に、0または1を表す。ただし、a1およびg1の少なくとも一方は1を表し、a2およびg2の少なくとも一方は1を表す。
また、上記式(3)中、D1、D2、D3
、D4
、D
5
およびD
6
は、それぞれ独立に、単結合、-CO-O-、-C(=S)O-、-CR1R2-、-CR1R2-CR3R4-、-O-CR1R2-、-CR1R2-O-CR3R4-、-CO-O-CR1R2-、-O-CO-CR1R2-、-CR1R2-O-CO-CR3R4-、-CR1R2-CO-O-CR3R4-、-NR1-CR2R3-、または、-CO-NR1-を表す。R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~4のアルキル基を表す。
また、上記式(3)中、G1およびG2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基を表し、脂環式炭化水素基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-または-NH-で置換されていてもよい。
また、上記式(3)中、A1およびA2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6以上の芳香環、または、置換基を有していてもよい炭素数6以上のシクロアルカン環を表す。
また、上記式(3)中、SP1およびSP2は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。
また、上記式(3)中、L1およびL2は、それぞれ独立に1価の有機基を表し、L1およびL2の少なくとも一方は重合性基を表す。ただし、Arが、下記式(Ar-3)で表される芳香環である場合は、L1およびL2ならびに下記式(Ar-3)中のL3およびL4の少なくとも1つが重合性基を表す。
【0146】
上記式(3)中、a1、a2、g1およびg2は、いずれも1であることが好ましい。
【0147】
上記式(3)中、G1およびG2が示す炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基としては、5員環又は6員環であることが好ましい。また、脂環式炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよいが飽和脂環式炭化水素基が好ましい。G1およびG2で表される2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、特開2012-21068号公報の[0078]段落の記載を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0148】
また、上記式(3)中、G1およびG2について、炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、炭素数1~18の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基またはエチル基であるのが特に好ましい。
アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基、メトキシエトキシ基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基であることが更に好ましく、メトキシ基またはエトキシ基であるのが特に好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でも、フッ素原子、塩素原子であるのが好ましい。
【0149】
上記式(3)中、A1およびA2が示す炭素数6以上の芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスロリン環などの芳香族炭化水素環;フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環などの芳香族複素環;が挙げられる。なかでも、ベンゼン環(例えば、1,4-フェニル基など)が好ましい。
また、上記式(3)中、A1およびA2が示す炭素数6以上のシクロアルカン環としては、例えば、シクロヘキサン環、シクロペプタン環、シクロオクタン環、シクロドデカン環、シクロドコサン環などが挙げられる。なかでも、シクロヘキサン環(例えば、1,4-シクロヘキシレン基など)が好ましく、トランス-1,4-シクロヘキシレン基であることがより好ましい。
なお、A1およびA2について、炭素数6以上の芳香環または炭素数6以上のシクロアルカン環が有していてもよい置換基としては、上記式(3)中のG1およびG2が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0150】
上記式(3)中、SP1およびSP2が示す炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、メチルヘキシレン基、および、へプチレン基が好ましい。なお、SP1およびSP2は、上述した通り、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基であってもよく、Qで表される置換基としては、上記式(3)中のG1およびG2が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0151】
上記式(3)中、L1およびL2が示す1価の有機基としては、例えば、アルキル基、アリール基、および、ヘテロアリール基が挙げられる。
アルキル基は、直鎖状、分岐状または環状であってもよいが、直鎖状が好ましい。アルキル基の炭素数は、1~30が好ましく、1~20がより好ましく、1~10がさらに好ましい。
また、アリール基は、単環であっても多環であってもよいが、単環が好ましい。アリール基の炭素数は、6~25が好ましく、6~10がより好ましい。
また、ヘテロアリール基は、単環であっても多環であってもよい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロアリール基を構成するヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子、または、酸素原子が好ましい。ヘテロアリール基の炭素数は6~18が好ましく、6~12がより好ましい。
また、アルキル基、アリール基およびヘテロアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記式(3)中のG1およびG2が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0152】
上記式(3)中、L1およびL2の少なくとも一方が示す重合性基は特に制限されないが、ラジカル重合またはカチオン重合可能な重合性基が好ましい。
ラジカル重合性基としては、一般に知られているラジカル重合性基を用いることができ、アクリロイル基またはメタクリロイル基が好ましい。この場合、重合速度はアクリロイル基が一般的に速いことが知られており、生産性向上の点からアクリロイル基が好ましいが、メタクリロイル基も重合性基として同様に使用できる。
カチオン重合性基としては、一般に知られているカチオン重合性を用いることができ、具体的には、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、および、ビニルオキシ基が挙げられる。中でも、脂環式エーテル基、または、ビニルオキシ基が好ましく、エポキシ基、オキセタニル基、または、ビニルオキシ基がより好ましい。
特に好ましい重合性基の例としては下記が挙げられる。なお、下記式中、*は、重合性基の結合位置を表す。
【0153】
【0154】
上記式(3)中、積層体の熱耐久性がより優れる点から、上記式(3)中のL1およびL2が、いずれも重合性基であることが好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基であることがより好ましい。
【0155】
一方、上記式(3)中、Arは、下記式(Ar-1)~(Ar-5)で表される基からなる群から選択されるいずれかの芳香環を表す。なお、下記式(Ar-1)~(Ar-5)中、*は、上記式(3)中のD1またはD2との結合位置を表す。
【0156】
【0157】
ここで、上記式(Ar-1)中、Q1は、NまたはCHを表し、Q2は、-S-、-O-、または、-N(R5)-を表し、R5は、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、Y1は、置換基を有してもよい、炭素数6~12の芳香族炭化水素基、または、炭素数3~12の芳香族複素環基を表す。
R5が示す炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、および、n-ヘキシル基が挙げられる。
Y1が示す炭素数6~12の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、および、ナフチル基などのアリール基が挙げられる。
Y1が示す炭素数3~12の芳香族複素環基としては、例えば、チエニル基、チアゾリル基、フリル基、および、ピリジル基などのヘテロアリール基が挙げられる。
また、Y1が有していてもよい置換基としては、上記式(3)中のG1およびG2が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0158】
また、上記式(Ar-1)~(Ar-5)中、Z1、Z2およびZ3は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-OR6、-NR7R8、または、-SR9を表し、R6~R9は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、Z1およびZ2は、互いに結合して芳香環を形成してもよい。
炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~15のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert-ペンチル基(1,1-ジメチルプロピル基)、tert-ブチル基、または、1,1-ジメチル-3,3-ジメチル-ブチル基がさらに好ましく、メチル基、エチル基、または、tert-ブチル基が特に好ましい。
炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、メチルシクロヘキシル基、および、エチルシクロヘキシル基などの単環式飽和炭化水素基;シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基、シクロデセニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロオクタジエニル基、および、シクロデカジエンなどの単環式不飽和炭化水素基;ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デシル基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デシル基、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデシル基、および、アダマンチル基などの多環式飽和炭化水素基;などが挙げられる。
炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、2,6-ジエチルフェニル基、ナフチル基、および、ビフェニル基が挙げられ、炭素数6~12のアリール基(特にフェニル基)が好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、および、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、または、臭素原子が好ましい。
一方、R6~R9が示す炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、および、n-ヘキシル基が挙げられる。
【0159】
また、上記式(Ar-2)および(Ar-3)中、A3およびA4は、それぞれ独立に、-O-、-N(R10)-、-S-、および、-CO-からなる群から選択される基を表し、R10は、水素原子または置換基を表す。
R10が示す置換基としては、上記式(3)中のG1およびG2が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0160】
また、上記式(Ar-2)中、Xは、第14~16族の非金属原子を表す。ただし、非金属原子には、水素原子または置換基が結合していてもよい。
また、Xが示す第14~16族の非金属原子としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、置換基を有する窒素原子、および、置換基を有する炭素原子が挙げられ、置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキル置換アルコキシ基、環状アルキル基、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基など)、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、アルキルカルボニル基、スルホ基、および、水酸基が挙げられる。
【0161】
また、上記式(Ar-3)中、D7およびD8は、それぞれ独立に、単結合、-CO-O-、-C(=S)O-、-CR1R2-、-CR1R2-CR3R4-、-O-CR1R2-、-CR1R2-O-CR3R4-、-CO-O-CR1R2-、-O-CO-CR1R2-、-CR1R2-O-CO-CR3R4-、-CR1R2-CO-O-CR3R4-、-NR1-CR2R3-、または、-CO-NR1-を表す。R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または、炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0162】
また、上記式(Ar-3)中、SP3およびSP4は、それぞれ独立に、単結合、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基、または、炭素数1~12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基を構成する-CH2-の1個以上が-O-、-S-、-NH-、-N(Q)-、もしくは、-CO-に置換された2価の連結基を表し、Qは、置換基を表す。置換基としては、上記式(3)中のG1およびG2が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0163】
また、上記式(Ar-3)中、L3およびL4は、それぞれ独立に1価の有機基を表し、L3およびL4ならびに上記式(3)中のL1およびL2の少なくとも1つが重合性基を表す。
1価の有機基としては、上記式(3)中のL1およびL2において説明したものと同様のものが挙げられる。
また、重合性基としては、上記式(3)中のL1およびL2において説明したものと同様のものが挙げられる。
【0164】
また、上記式(Ar-4)~(Ar-5)中、Axは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。
また、上記式(Ar-4)~(Ar-5)中、Ayは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、または、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選択される少なくとも1つの芳香環を有する、炭素数2~30の有機基を表す。
ここで、AxおよびAyにおける芳香環は、置換基を有していてもよく、AxとAyとが結合して環を形成していてもよい。
また、Q3は、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基を表す。
AxおよびAyとしては、国際公開第2014/010325号の段落[0039]~[0095]に記載されたものが挙げられる。
また、Q3が示す炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、および、n-ヘキシル基が挙げられ、置換基としては、上記式(Ar-1)中のY1が有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
【0165】
上記式(3)で表される逆分散性液晶化合物としては、具体的には、例えば、特開2010-084032号公報に記載の一般式(1)で表される化合物(特に、段落番号[0067]~[0073]に記載の化合物)、特開2016-053709号公報に記載の一般式(II)で表される化合物(特に、段落番号[0036]~[0043]に記載の化合物)、および、特開2016-081035公報に記載の一般式(1)で表される化合物(特に、段落番号[0043]~[0055]に記載の化合物)等が挙げられる。
【0166】
また、上記式(3)で表される化合物としては、上記式(3)中のG
1およびG
2ならびにA
1およびA
2が、それぞれ独立に、炭素数6以上のシクロアルカン環を表す重合性液晶性化合物であることが好ましく、上記式(3)中のG
1およびG
2ならびにA
1およびA
2が、それぞれ独立に、炭素数6以上のシクロアルカン環を表し、かつ、上記式(3)中のD
3およびD
4が、いずれも単結合を表す重合性液晶性化合物、すなわち、下記式(4)で表される化合物であることがより好ましい。
【化26】
ここで、上記式(4)中、D
1、D
2、D
3およびD
4、SP
1およびSP
2、L
1およびL
2、ならびに、Arは、上記式(3)において説明したものと同様である。
【0167】
上記式(4)で表される化合物としては、例えば、下記式(1)~(12)で表される化合物が好適に挙げられ、具体的には、下記式(1)~(12)中のK(側鎖構造)として、下記表1および表2に示す側鎖構造を有する化合物がそれぞれ挙げられる。
なお、下記表1中の1-2および下記表2中の2-2で表される側鎖構造において、それぞれアクリロイルオキシ基およびメタクリロイル基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
組成物中における式(3)で表される重合性液晶性化合物の含有量は特に制限されないが、組成物中の全固形分に対して、50~100質量%が好ましく、70~99質量%がより好ましい。
固形分とは、組成物中の溶媒を除いた他の成分を意味し、その性状が液状であっても固形分として計算する。
【0172】
組成物には、式(3)で表される重合性液晶性化合物以外の他の成分が含まれていてもよい。
【0173】
(液晶化合物)
組成物は、式(3)で表される重合性液晶性化合物以外の他の液晶化合物を含んでいてもよい。他の液晶化合物としては、公知の液晶化合物(棒状液晶化合物および円盤状液晶化合物)が挙げられる。他の液晶化合物は、重合性基を有していてもよい。
【0174】
(重合性モノマー)
組成物は、式(3)で表される重合性液晶性化合物および重合性基を有する他の液晶化合物以外の他の重合性モノマーを含んでいてもよい。なかでも、光学異方性層の強度がより優れる点で、重合性基を2個以上有する重合性化合物(多官能重合性モノマー)が好ましい。
多官能重合性モノマーとしては、多官能性ラジカル重合性モノマーが好ましい。多官能性ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、特開2002-296423号公報中の段落[0018]~[0020]に記載の重合性モノマーが挙げられる。
また、組成物中に多官能重合性モノマーが含まれる場合、多官能重合性モノマーの含有量は、式(3)で表される重合性液晶性化合物の全質量に対して、1~50質量%が好ましく、2~30質量%がより好ましい。
【0175】
(重合開始剤)
組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。
重合開始剤としては、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、α-カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α-炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp-アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60-105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)、並びに、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63-40799号公報、特公平5-29234号公報、特開平10-95788号公報、特開平10-29997号公報記載)などが挙げられる。
【0176】
重合開始剤としてはオキシム型の重合開始剤が好ましい。
【0177】
(溶媒)
組成物は、光学異方性層を形成する作業性の点から、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒としては、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2-ブタノン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、および、シクロペンタノン)、エーテル類(例えば、ジオキサン、および、テトラヒドロフラン)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサン)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、および、トリメチルベンゼン)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、および、クロロトルエン)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、および、酢酸ブチル)、水、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、および、シクロヘキサノール)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、および、エチルセロソルブ)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)、および、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド)が挙げられる。
これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0178】
(レベリング剤)
組成物は、光学異方性層の表面を平滑に保つ点から、レベリング剤を含んでいてもよい。
レベリング剤としては、添加量に対するレベリング効果が高い理由から、フッ素系レベリング剤またはケイ素系レベリング剤が好ましく、泣き出し(ブルーム、ブリード)を起こしにくい点から、フッ素系レベリング剤がより好ましい。
レベリング剤としては、例えば、特開2007-069471号公報の段落[0079]~[0102]の記載に記載された化合物、特開2013-047204号公報に記載された一般式(4)で表される重合性液晶化合物(特に段落[0020]~[0032]に記載された化合物)、特開2012-211306号公報に記載された一般式(4)で表される重合性液晶化合物(特に段落[0022]~[0029]に記載された化合物)、特開2002-129162号公報に記載された一般式(4)で表される液晶配向促進剤(特に段落[0076]~[0078]および段落[0082]~[0084]に記載された化合物)、並びに、特開2005-099248号公報に記載された一般式(4)、(II)および(III)で表される化合物(特に段落[0092]~[0096]に記載された化合物)などが挙げられる。なお、後述する配向制御剤としての機能を兼ね備えてもよい。
【0179】
(配向制御剤)
組成物は、必要に応じて、配向制御剤を含んでいてもよい。
配向制御剤により、ホモジニアス配向の他、ホメオトロピック配向(垂直配向)、傾斜配向、ハイブリッド配向、および、コレステリック配向などの種々の配向状態を形成でき、また、特定の配向状態をより均一かつより精密に制御して実現できる。
【0180】
ホモジニアス配向を促進する配向制御剤としては、例えば、低分子の配向制御剤、および、高分子の配向制御剤を用いることができる。
低分子の配向制御剤としては、例えば、特開2002-20363号公報の段落[0009]~[0083]、特開2006-106662号公報の段落[0111]~[0120]、および、特開2012-211306公報の段落[0021]~[0029]の記載を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
また、高分子の配向制御剤としては、例えば、特開2004-198511号公報の段落[0021]~[0057]、および、特開2006-106662号公報の段落[0121]~[0167]を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0181】
また、ホメオトロピック配向を形成または促進する配向制御剤としては、例えば、ボロン酸化合物、オニウム塩化合物が挙げられ、具体的には、特開2008-225281号公報の段落[0023]~[0032]、特開2012-208397号公報の段落[0052]~[0058]、特開2008-026730号公報の段落[0024]~[0055]、および、特開2016-193869号公報の段落[0043]~[0055]などに記載された化合物を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0182】
配向制御剤の含有する場合の含有量は、組成物中の全固形分に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.05~5質量%がより好ましい。
【0183】
(その他の成分)
組成物は、上述した成分以外の成分を含んでいてもよく、例えば、界面活性剤、チルト角制御剤、配向助剤、可塑剤、および、架橋剤などが挙げられる。
【0184】
(光学異方性層の製造方法)
光学異方性層の製造方法は特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
例えば、所定の基板(例えば後述する支持体層)に、上記組成物を塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜に対して硬化処理(活性エネルギー線の照射(光照射処理)および/または加熱処理)を施すことにより、硬化させた塗膜(光学異方性層)を製造できる。なお、必要に応じて、後述する配向層を用いてもよい。
組成物の塗布は、公知の方法(例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、および、ダイコーティング法)により実施できる。
【0185】
上記光学異方性層の製造方法において、上記塗膜に対する硬化処理を行う前に、上記塗膜に含まれる液晶化合物の配向処理を行うことが好ましい。
配向処理は、室温(例えば、20~25℃)で乾燥させる、または、加熱することにより行うことができる。配向処理で形成される液晶相は、サーモトロピック性液晶化合物の場合、一般に温度または圧力の変化により転移させることができる。リオトロピック性をもつ液晶化合物の場合には、溶媒量などの組成比によっても転移させることができる。
配向処理が加熱処理である場合、加熱時間(加熱熟成時間)は、10秒間~5分間が好ましく、10秒間~3分間がより好ましく、10秒間~2分間がさらに好ましい。
【0186】
上述した、塗膜に対して硬化処理(活性エネルギー線の照射(光照射処理)および/または加熱処理)は、液晶化合物の配向を固定するための固定化処理ということもできる。
固定化処理は、活性エネルギー線(好ましくは紫外線)の照射により行われることが好ましく、液晶化合物の重合により液晶が固定化される。
【0187】
(光学異方性層の特性)
光学異方性層は、上述した組成物を用いて形成されるフィルムである。
光学異方性層の光学特性は特に制限されないが、λ/4板として機能することが好ましい。
λ/4板は、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または、円偏光を直線偏光に)変換する機能を有する板であり、特定の波長λnmにおける面内レターデーションRe(λ)がRe(λ)=λ/4を満たす板(光学異方性層)のことをいう。
この式は、可視光域のいずれかの波長(例えば、550nm)において達成されていればよいが、波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が、110nm≦Re(550)≦160nmの関係を満たすことが好ましく、110nm≦Re(550)≦150nmを満たすことがより好ましい。
【0188】
光学異方性層の波長450nmで測定した面内レターデーションであるRe(450)と、光学異方性層の波長550nmで測定した面内レターデーションであるRe(550)と、光学異方性層の波長650nmで測定した面内レターデーションのであるRe(650)とは、Re(450)≦Re(550)≦Re(650)の関係にあることが好ましい。すなわち、この関係は、逆波長分散性を表す関係といえる。
【0189】
光学異方性層は、Aプレートであっても、Cプレートであってもよく、ポジティブAプレートであることが好ましい。
ポジティブAプレートは、例えば、式(3)で表される重合性液晶性化合物を水平配向させることにより得ることができる。
【0190】
光学異方性層の厚さは特に制限されないが、薄型化の点から、0.5~10μmが好ましく、1.0~5μmがより好ましい。
【0191】
〔配向層〕
本発明の積層体は、上述した光学異方性層と、上述した光吸収異方性層との間に、配向層を有していてもよい。
配向層を形成する方法としては、例えば、有機化合物(好ましくはポリマー)の膜表面へのラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、および、ラングミュアブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω-トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチルなど)の累積などの手法が挙げられる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向層も知られている。
なかでも、本発明では、配向層のプレチルト角の制御し易さの点からはラビング処理により形成する配向層が好ましいが、本発明にとって重要である配向の均一性の点から、光照射により形成する光配向層がより好ましい。
【0192】
<ラビング処理配向層>
ラビング処理により形成される配向層に用いられるポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手することができる。本発明においては、ポリビニルアルコール又はポリイミド、及びその誘導体が好ましく用いられる。配向層については国際公開WO01/88574A1号公報の43頁24行~49頁8行の記載を参照することができる。配向層の厚さは、0.01~10μmであることが好ましく、0.01~2μmであることが更に好ましい。
【0193】
<光配向層>
本発明の積層体は、二色性アゾ色素化合物の配向度向上の観点で、光活性化合物を含む光配向層を活用することが好ましい。
光配向層は、光学異方性層と光吸収異方性層を貼り合わせる工程において、除去することも可能であるが、光学異方性層と光吸収異方性層の間に残して配置することも好ましい。この場合は、積層体の膜強度の観点から、架橋性基を有する化合物から形成されることが好ましい。架橋性基としては、ラジカル重合性基およびカチオン重合性基が好ましく、ラジカル重合性基がさらに好ましい。ラジカル重合性基としては、エチレン性不飽和結合基等が挙げられる。カチオン重合性基としては、エポキシ基およびオキセタン基等が挙げられる。
二色性アゾ色素化合物光配向層とは、光反応性基を有する化合物と、溶剤とを含む組成物(以下、場合により「光配向層形成用組成物」という)を基材に塗布し、偏光(好ましくは、偏光UV)を照射することによって配向規制力を付与した配向層のことをいう。光反応性基とは、光を照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光を照射することで生じる分子(光活性化合物と呼ぶ)の配向誘起又は異性化反応、二量化反応、光架橋反応、あるいは光分解反応のような、液晶配向能の起源となる光反応を生じるものである。光反応性基としては、不飽和結合、特に二重結合を有するものが好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)及び炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも一つを有する基がより好ましい。
【0194】
C=C結合を有する光反応性基としては、例えば、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ-ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基及びシンナモイル基が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、例えば、芳香族シッフ塩基及び芳香族ヒドラゾン等の構造を有する基が挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、例えば、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基及びマレイミド基が挙げられる。
N=N結合を有する光反応性基としては、例えば、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基及びホルマザン基などや、アゾキシベンゼンを基本構造とする基が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリ-ル基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基又はハロゲン化アルキル基等の置換基を有していてもよい。中でも、シンナモイル基やアゾベンゼン基は、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向層が得られやすいため好ましい。特許5300776号公報の[0211]~[0263]に具体的な化合物の記載があり、好ましく用いられる。
【0195】
上記材料から形成した光配向層に、直線偏光または非偏光照射を施し、光配向層を製造する。
本明細書において、「直線偏光照射」「非偏光照射」とは、光配向材料に光反応を生じせしめるための操作である。用いる光の波長は、用いる光配向材料により異なり、その光反応に必要な波長であれば特に限定されるものではない。光照射に用いる光のピーク波長は、200nm~700nmが好ましく、光のピーク波長が400nm以下の紫外光がより好ましい。
【0196】
光照射に用いる光源は、通常使われる光源、例えばタングステンランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、キセノンフラッシュランプ、水銀ランプ、水銀キセノンランプおよびカーボンアークランプ等のランプ、各種のレーザー[例、半導体レーザー、ヘリウムネオンレーザー、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムカドミウムレーザーおよびYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザー]、発光ダイオード、ならびに、陰極線管などを挙げることができる。
【0197】
直線偏光を得る手段としては、偏光板(例えば、ヨウ素偏光板、2色色素偏光板、および、ワイヤーグリッド偏光板)を用いる方法、プリズム系素子(例えば、グラントムソンプリズム)もしくはブリュースター角を利用した反射型偏光子を用いる方法、または、偏光を有するレーザー光源から出射される光を用いる方法が採用できる。また、フィルタまたは波長変換素子等を用いて必要とする波長の光のみを選択的に照射してもよい。
【0198】
照射する光は、直線偏光の場合には、配向層に対して上面、又は裏面から配向層表面に対して垂直、又は斜めから光を照射する方法が採用される。光の入射角度は、光配向材料によって異なるが、0~90°(垂直)が好ましく、40~90°が好ましい。
非偏光の場合には、配向層に対して、斜めから非偏光を照射する。その入射角度は、10~80°が好ましく、20~60°がより好ましく、30~50°が更に好ましい。
照射時間は、1分~60分が好ましく、1分~10分がより好ましい。
【0199】
パターン化が必要な場合には、フォトマスクを用いた光照射をパターン作製に必要な回数施す方法、または、レーザー光走査によるパターンの書き込みによる方法を採用できる。
【0200】
〔粘着層〕
本発明の積層体は、粘着層を有していてもよい。
【0201】
粘着層に含まれる粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤等が挙げられる。
これらのうち、透明性、耐候性、耐熱性などの観点から、アクリル系粘着剤(感圧粘着剤)であるのが好ましい。
【0202】
粘着層は、例えば、粘着剤の溶液を離型シート上に塗布し、乾燥した後に後、透明樹脂層の表面に転写する方法;粘着剤の溶液を透明樹脂層の表面に直接塗布し、乾燥させる方法;等により形成することができる。
粘着剤の溶液は、例えば、トルエンや酢酸エチル等の溶剤に、粘着剤を溶解または分散させた10~40質量%程度の溶液として調製される。
塗布法は、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法などを採用できる。
【0203】
また、離型シートの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂フィルム;ゴムシート;紙;布;不織布;ネット;発泡シート;金属箔;等の適宜な薄葉体等が挙げられる。
【0204】
本発明においては、任意の粘着層の厚みは特に限定されないが、3μm~50μmであることが好ましく、4μm~40μmであることがより好ましく、5μm~30μmであることが更に好ましい。
【0205】
〔接着剤層〕
本発明の積層体は、接着剤層を有していてもよい。
接着剤としては、貼り合わせた後の乾燥や反応により接着性を発現するものであれば特に限定されない。
ポリビニルアルコール系接着剤(PVA系接着剤)は、乾燥により接着性が発現し、材料どうしを接着することが可能となる。
反応により接着性を発現する硬化型接着剤の具体例としては、(メタ)アクリレート系接着剤のような活性エネルギー線硬化型接着剤やカチオン重合硬化型接着剤が挙げられる。(メタ)アクリレート系接着剤における硬化性成分としては、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する化合物、ビニル基を有する化合物が挙げられる。
また、カチオン重合硬化型接着剤としては、エポキシ基やオキセタニル基を有する化合物も使用することができる。エポキシ基を有する化合物は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するものであれば特に限定されず、一般に知られている各種の硬化性エポキシ化合物を用いることができる。好ましいエポキシ化合物として、分子内に少なくとも2個のエポキシ基と少なくとも1個の芳香環を有する化合物(芳香族系エポキシ化合物)や、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有し、そのうちの少なくとも1個は脂環式環を構成する隣り合う2個の炭素原子との間で形成されている化合物(脂環式エポキシ化合物)等が例として挙げられる。
【0206】
[画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、上述した本発明の積層体を有する。
本発明の画像表示装置に用いられる表示素子は特に限定されず、例えば、液晶セル、有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」と略す。)表示パネル、および、プラズマディスプレイパネル等が挙げられる。
これらのうち、液晶セルまたは有機EL表示パネルであるのが好ましく、液晶セルであるのがより好ましい。すなわち、本発明の画像表示装置としては、表示素子として液晶セルを用いた液晶表示装置、表示素子として有機EL表示パネルを用いた有機EL表示装置であるのが好ましく、有機EL表示装置であるのがより好ましい。
【0207】
〔有機EL表示装置〕
本発明の画像表示装置の一例である有機EL表示装置としては、例えば、視認側から、上述した本発明の積層体と、有機EL表示パネルと、をこの順で有する態様が好適に挙げられる。この場合には、積層体は、視認側から、表面保護層、必要に応じて配置される接着層もしくは粘着層、酸素遮断層、屈折率調整層、光吸収異方性層、必要に応じて配置される接着層もしくは粘着層、光学異方性層の順に配置されている。
また、有機EL表示パネルは、電極間(陰極および陽極間)に有機発光層(有機エレクトロルミネッセンス層)を挟持してなる有機EL素子を用いて構成された表示パネルである。有機EL表示パネルの構成は特に制限されず、公知の構成が採用される。
【実施例】
【0208】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0209】
[実施例1]
【0210】
<セルロースアシレートフィルム1の作製>
(コア層セルロースアシレートドープの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、撹拌して、各成分を溶解し、コア層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
─────────────────────────────────
コア層セルロースアシレートドープ
─────────────────────────────────
・アセチル置換度2.88のセルロースアセテート 100質量部
・特開2015-227955号公報の実施例に
記載されたポリエステル化合物B 12質量部
・下記化合物F 2質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 430質量部
・メタノール(第2溶剤) 64質量部
─────────────────────────────────
【0211】
【0212】
(外層セルロースアシレートドープの作製)
上記のコア層セルロースアシレートドープ90質量部に下記のマット剤溶液を10質量部加え、外層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
【0213】
─────────────────────────────────
マット剤溶液
─────────────────────────────────
・平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製) 2質量部
・メチレンクロライド(第1溶媒) 76質量部
・メタノール(第2溶剤) 11質量部
・上記のコア層セルロースアシレートドープ 1質量部
─────────────────────────────────
【0214】
(セルロースアシレートフィルム1の作製)
上記コア層セルロースアシレートドープと上記外層セルロースアシレートドープを平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した後、上記コア層セルロースアシレートドープとその両側に外層セルロースアシレートドープとを3層同時に流延口から20℃のドラム上に流延した(バンド流延機)。
次いで、溶剤含有率略20質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、横方向に延伸倍率1.1倍で延伸しつつ乾燥した。
その後、熱処理装置のロール間を搬送することにより、更に乾燥し、厚み40μmの光学フィルムを作製し、これをセルロースアシレートフィルム1とした。得られたセルロースアシレートフィルム1の面内レターデーションは0nmであった。
【0215】
<光配向層PA1の形成>
下記組成の配向層形成用塗布液PA1を、ワイヤーバーで連続的に上記セルロースアシレートフィルム1上に塗布した。塗膜が形成された支持体を140℃の温風で120秒間乾燥し、続いて、塗膜に対して偏光紫外線照射(10mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)することで、光配向層PA1を形成し、光配向層付きTACフィルムを得た。
光配向層PA1の膜厚は0.4μmであった。
【0216】
─────────────────────────────────
配向層形成用塗布液PA1
─────────────────────────────────
下記記重合体PA-1 100.00質量部
下記酸発生剤PAG-1 1.00質量部
サイクロマ― M100 (ダイセル社製) 3.00質量部
イソプロピルアルコール 16.50質量部
酢酸ブチル 1072.00質量部
メチルエチルケトン 268.00質量部
─────────────────────────────────
【0217】
【0218】
【0219】
<光吸収異方性層P1の形成>
得られた光配向層PA1上に、下記組成の光吸収異方性層形成用組成物P1をワイヤーバーで連続的に塗布し、塗布層P1を形成した。
次いで、塗布層P1を140℃で90秒間加熱し、塗布層P1を室温(23℃)になるまで冷却した。
次いで、80℃で60秒間加熱し、再び室温になるまで冷却した。
その後、高圧水銀灯を用いて照度28mW/cm2の照射条件で60秒間照射することにより、光配向層PA1上に光吸収異方性層P1を作製した。
光吸収異方性層P1の膜厚は0.3μmであった。
【0220】
――――――――――――――――――――――――――――――――
光吸収異方性層形成用組成物P1
――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記アゾ色素Y-1 0.25質量部
・下記アゾ色素M-1 0.27質量部
・下記アゾ色素C-1 0.65質量部
・下記高分子液晶性化合物P-1 3.71質量部
・重合開始剤
IRGACUREOXE-02(BASF社製) 0.151質量部
・下記界面改良剤F-1 0.026質量部
・シクロペンタノン 47.50質量部
・テトラヒドロフラン 47.50質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】
<屈折率調整層N1の形成>
得られた光吸収異方性層P1上に、下記組成の屈折率調整層形成用組成物N1をワイヤーバーで連続的に塗布し、屈折率調整層N1を形成した。
次いで、屈折率調整層N1を室温乾燥させ、次いで、高圧水銀灯を用いて照度28mW/cm2の照射条件で10秒間照射することにより、光吸収異方性層P1上に屈折率調整層N1を作製した。
屈折率調整層N1の膜厚は、80nmであった。
【0227】
――――――――――――――――――――――――――――――――
屈折率調整層形成用組成物N1
――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記棒状液晶性化合物の混合物L1 2.43質量部
・下記変性トリメチロールプロパントリアクリレート 0.98質量部
・下記光重合開始剤I-1 0.20質量部
・上記界面改良剤F-1 0.14質量部
・1、4‐フェニレンジボロン酸(東京化成工業) 0.10質量部
・メチルエチルケトン 371質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0228】
棒状液晶性正化合物の混合物L1(下記式中の数値は質量%を表し、Rは酸素原子で結合する基を表す。)
【化36】
【0229】
変性トリメチロールプロパントリアクリレート
【化37】
【0230】
【0231】
<酸素遮断層B1の形成>
屈折率調整層N1上に、下記組成の塗布液をワイヤーバーで連続的に塗布した。その後、100℃の温風で2分間乾燥することにより、屈折率調整層N1上に厚み2.0μmのポリビニルアルコール(PVA)からなる酸素遮断層B1が形成された積層フィルム1Bが作製された。
なお、変性ポリビニルアルコールは、固形分濃度が4wt%となるように酸素遮断層形成用組成物中に加えた。
また、酸素遮断層B1の酸素透過度は、1cc/m2/day/atmであった。
【0232】
――――――――――――――――――――――――――――――――
酸素遮断層形成用組成物B1
――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記の変性ポリビニルアルコール
・水 70質量部
・メタノール 30質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0233】
【0234】
<表面保護層H1の作製>
下記に示す通りに、各層形成用の塗布液を調製して、各層を形成して、表面保護層H1を作製した。
【0235】
(ハードコート層形成用組成物の調製)
トリメチロールプロパントリアクリレート(ビスコート#295(大阪有機化学(株)製))(750.0質量部)、質量平均分子量15000のポリ(グリシジルメタクリレート)(270.0質量部)、メチルエチルケトン(730.0質量部)、シクロヘキサノン(500.0質量部)、および、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)(50.0質量部)を混合した。得られた混合物を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、ハードコート層形成用組成物を調製した。
【0236】
(中屈折率層形成用組成物Aの調製)
ZrO2微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、溶媒組成:メチルイソブチルケトン/メチルエチルケトン=9/1、JSR(株)製])(5.1質量部)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物(DPHA)(1.5質量部)、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)(0.05質量部)、メチルエチルケトン(66.6質量部)、メチルイソブチルケトン(7.7質量部)、および、シクロヘキサノン(19.1質量部)を混合した。得られた混合物を十分に攪拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、中屈折率層形成用組成物Aを調製した。
【0237】
(中屈折率層形成用組成物Bの調製)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)(4.5質量部)、光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)(0.14質量部)、メチルエチルケトン(66.5質量部)、メチルイソブチルケトン(9.5質量部)、および、シクロヘキサノン(19.0質量部)を混合した。得られた混合物を十分に攪拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、中屈折率層形成用組成物Bを調製した。
【0238】
屈折率が1.62となるように、中屈折率層形成用組成物Aと中屈折率層形成用組成物Bとを適量混合し、中屈折率層形成用組成物を作製した。
【0239】
(高屈折率層形成用組成物の調製)
ZrO2微粒子含有ハードコート剤(デソライトZ7404[屈折率1.72、固形分濃度:60質量%、酸化ジルコニウム微粒子含量:70質量%(対固形分)、酸化ジルコニウム微粒子の平均粒子径:約20nm、溶媒組成:メチルイソブチルケトン/メチルエチルケトン=9/1、JSR(株)製])(15.7質量部)、メチルエチルケトン(61.9質量部)、メチルイソブチルケトン(3.4質量部)、および、シクロヘキサノン(1.1質量部)を混合した。得られた混合物を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、高屈折率層形成用組成物を調製した。
【0240】
(低屈折率層形成用組成物の調製)
(下記パーフルオロオレフィン共重合体(1)の合成)
【化40】
上記構造式中、50:50はモル比を表す。
【0241】
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに、酢酸エチル(40ml)、ヒドロキシエチルビニルエーテル(14.7g)および過酸化ジラウロイル(0.55g)を仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(25g)をオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は、0.53MPa(5.4kg/cm2)であった。この温度を保持し8時間反応を続け、圧力が0.31MPa(3.2kg/cm2)に達した時点で加熱をやめて放冷した。室温まで内温が下がった時点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶媒を除去して、沈殿したポリマーを取り出した。さらに、得られたポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去し、乾燥した後、ポリマー(28g)を得た。
次に、このポリマー(20g)をN,N-ジメチルアセトアミド(100ml)に溶解させて溶液を得た後、氷冷下にてアクリル酸クロライド(11.4g)を溶液に滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加えて水洗して、有機相を抽出後、濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体(1)(19g)を得た。得られたポリマーの屈折率は1.422であった。
【0242】
(ゾル液aの調製)
攪拌機および還流冷却器を備えた反応器に、メチルエチルケトン(120質量部)、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-5103、信越化学工業(株)製)(100質量部)、および、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート(商品名:ケロープEP-12、ホープ製薬(株)製)(3質量部)を加えて混合した。その後、さらにイオン交換水(31質量部)を加え、得られた溶液を61℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。
得られたゾル液a中の化合物の質量平均分子量は1620であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000~20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0243】
(中空シリカ粒子分散液の調製)
中空シリカ粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製CS60-IPA、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20%、シリカ粒子の屈折率1.31)(500質量部)、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(30.5質量部)、および、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセテート(1.51質量部)を混合した後に、さらに、イオン交換水(9質量部)を加えた。
次に、得られた溶液を60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン(1.8質量部)を添加し、分散液を得た。その後、シリカの含率がほぼ一定になるようにシクロヘキサノンを添加しながら、圧力30Torrで減圧蒸留による溶媒置換を行い、最後に濃度調整により固形分濃度18.2質量%の中空シリカ粒子分散液を得た。得られた分散液のIPA(isopropyl alcohol)残存量をガスクロマトグラフィーで分析したところ0.5%以下であった。
【0244】
得られた中空シリカ粒子分散液およびゾル液aを用いて、下記組成の組成物を混合し、得られた溶液を攪拌後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、低屈折率層形成用組成物を調製した。
【0245】
――――――――――――――――――――――――――――――――
(低屈折率層形成用組成物の組成)
――――――――――――――――――――――――――――――――
DPHA 14.5g
PO-1 24.5g
中空シリカ粒子分散液 302.2g
RMS-033 5.0g
イルガキュア907 1.0g
メチルエチルケトン 1750g
シクロヘキサノン 223.0g
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0246】
上記低屈折率層形成用組成物で、それぞれ使用した化合物を以下に示す。
・PO-1:上記パーフルオロオレフィン共重合体(1)
・DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製)
・RMS-033:反応性シリコーン(Gelest(株)製)
・イルガキュア907:光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
【0247】
(ハードコート層の作製)
支持体S1(厚み40μmのTAC基材;TG40 富士フイルム社)上に、グラビアコーターを用いてハードコート層形成用組成物を塗布した。塗膜を100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量150mJ/cm2の紫外線を照射して塗膜を硬化させ、厚み5μmのハードコート層を形成した。屈折率は、1.52であった。
【0248】
得られたハードコート層上に、それぞれ所望の屈折率となるように調整した、中屈折率層形成用組成物、高屈折率層形成用組成物、および、低屈折率層形成用組成物をグラビアコーターを用いて塗布して、反射防止フィルムを作製した。
なお、各層の屈折率の測定は、各層の形成用組成物を約4μmの厚みになるようにガラス板に塗布し、多波長アッベ屈折計DR-M2(アタゴ(株)製)にて測定した。
また、「DR-M2,M4用干渉フィルター546(e)nm 部品番号:RE-3523」のフィルターを使用して測定した屈折率を波長550nmにおける屈折率として採用した。
各層の膜厚は、中屈折率層、高屈折率層、および、低屈折率層をこの順に積層後に反射分光膜厚計“FE-3000”(大塚電子(株)製)を用いて算出した。算出の際の各層の屈折率は上記アッベ屈折率計で導出した値を使用した。
【0249】
中屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら180W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度300mW/cm2、照射量240mJ/cm2の照射量とした。
硬化後の中屈折率層の屈折率は1.62、層厚は60nmであった。
【0250】
高屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度300mW/cm2、照射量240mJ/cm2の照射量とした。硬化後の高屈折率層の屈折率は1.72、層厚は110nmであった。
【0251】
低屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量600mJ/cm2の照射量とした。硬化後の低屈折率層の屈折率は1.36、層厚は90nmであった。
これで、表面保護層H1が作製できた。
【0252】
<UV接着剤1の調製>
下記組成の、UV接着剤1を調製した。
─────────────────────────────────
UV接着剤1
─────────────────────────────────
・CEL2021P(ダイセル社製) 70質量部
・1、4-ブタンジオールジグリシジルエーテル 20質量部
・2-エチルヘキシルグリシジルエーテル 10質量部
・CPI-100P 2.25質量部
─────────────────────────────────
【0253】
【0254】
<光吸収異方性層付き表面保護層1の作製>
上記表面保護層H1の支持体S1側にコロナ処理を行った(以下もUV接着剤1での張り合わせは同様の処理を行った)後、上記UV接着剤1を用いて、上記積層フィルム1Bの酸素遮断層側を貼り合わせ、セルロースアシレートフィルム1のみを除去し、光吸収異方性層付き表面保護層H1を作製した。
なお、作製した光吸収異方性層付き表面保護層H1の層構成は、光配向層PA1/光吸収異方性層P1/屈折率調整層N1/酸素遮断層B1/表面保護層H1である。
【0255】
<光学異方性層の作製>
(ポジティブAプレートA1の作製)
後述する配向層形成用塗布液1を、#2.4のワイヤーバーで連続的に上記セルロースアシレートフィルム1上に塗布した。塗膜が形成された支持体を140℃の温風で120秒間乾燥し、続いて、塗膜に対して偏光紫外線照射(10mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)することで、配向層P-1を形成し、光配向層付きTACフィルムを得た。
【0256】
─────────────────────────────────
(配向層形成用塗布液1)
─────────────────────────────────
上記重合体PA-1 100.00質量部
上記酸発生剤PAG-1 1.00質量部
イソプロピルアルコール 16.50質量部
酢酸ブチル 1072.00質量部
メチルエチルケトン 268.00質量部
─────────────────────────────────
【0257】
次いで、下記組成の組成物A1を、バーコーターを用いて配向層P-1上に塗布した。配向層P-1上に形成された塗膜を温風にて120℃に加熱し、その後60℃に冷却した後に、窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて波長365nmにて100mJ/cm2の紫外線を塗膜に照射し、続いて120℃に加熱しながら500mJ/cm2の紫外線を塗膜に照射することで、液晶性化合物の配向を固定化し、ポジティブAプレートA1を有するTACフィルムA-1を作製した。
ポジティブAプレートA1の厚みは2.5μmであり、Re(550)は144nmであった。また、ポジティブAプレートA1は、Re(450)≦Re(550)≦Re(650)の関係を満たしていた。Re(450)/Re(550)は、0.82であった。
【0258】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(組成物A1)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記重合性液晶性化合物L-1 43.50質量部
・下記重合性液晶性化合物L-2 43.50質量部
・下記重合性液晶性化合物L-3 8.00質量部
・下記重合性液晶性化合物L-4 5.00質量部
・下記重合開始剤PI-1 0.55質量部
・下記レベリング剤T-1 0.20質量部
・シクロペンタノン 235.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0259】
【0260】
【0261】
【0262】
【0263】
【0264】
【0265】
(ポジティブCプレートC1の作製)
仮支持体として、上記セルロースアシレートフィルム1を用いた。
セルロースアシレートフィルム1を温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、バーコーターを用いて塗布量14ml/m2で塗布し、110℃に加熱し、(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間搬送した。
次いで、同じくバーコーターを用いて、フィルム上に純水を3ml/m2塗布した。
次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、フィルムを70℃の乾燥ゾーンに10秒間搬送して乾燥し、アルカリ鹸化処理したセルロースアシレートフィルム1を作製した。
【0266】
─────────────────────────────────
(アルカリ溶液)
─────────────────────────────────
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.8質量部
イソプロパノール 63.7質量部
含フッ素界面活性剤SF-1
(C14H29O(CH2CH2O)20H) 1.0質量部
プロピレングリコール 14.8質量部
─────────────────────────────────
【0267】
下記の組成の配向層形成用塗布液2を、#8のワイヤーバーを用いて上記アルカリ鹸化処理されたセルロースアシレートフィルム1上に連続的に塗布した。得られたフィルムを60℃の温風で60秒間、さらに100℃の温風で120秒間乾燥し、配向層を形成した。
─────────────────────────────────
(配向層形成用塗布液2)
─────────────────────────────────
ポリビニルアルコール(クラレ製、PVA103) 2.4質量部
イソプロピルアルコール 1.6質量部
メタノール 36質量部
水 60質量部
─────────────────────────────────
【0268】
下記組成のポジティブCプレート形成用塗布液(組成物)C1を配向層上に塗布し、得られた塗膜を60℃で60秒間熟成させた後に、空気下にて70mW/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、1000mJ/cm2の紫外線を照射して、その配向状態を固定化することにより、液晶性化合物を垂直配向させ、ポジティブCプレート1を作製した。
得られたポジティブCプレートのRth(550)は、-60nmであった。
【0269】
─────────────────────────────────
ポジティブCプレート形成用塗布液C1
─────────────────────────────────
下記液晶性化合物L-11 80質量部
下記液晶性化合物L-12 20質量部
下記垂直配液晶性化合物向剤(S01) 1質量部
エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート
(V#360、大阪有機化学(株)製) 8質量部
イルガキュアー907(BASF製) 3質量部
カヤキュアーDETX(日本化薬(株)製) 1質量部
下記化合物B03 0.4質量部
メチルエチルケトン 170質量部
シクロヘキサノン 30質量部
─────────────────────────────────
【0270】
【0271】
【0272】
【0273】
(光学異方性層の作製)
上記TACフィルムA-1の位相差層(ポジティブAプレートA1)表面に、上記UV接着剤1を用いて、上記で作製したポジティブCプレート1の位相差層表面側を貼り合わせ、TACフィルムA-1側の配向層とセルロースアシレートフィルム1を除去して、光学異方性層付きフィルム1を得た。
【0274】
<積層体1の作製>
上記光学異方性層付きフィルム1の光学異方性層(ポジティブAプレートA1)表面に、上記UV接着剤1を用いて、上記で作製した光吸収異方性層付き表面保護層1の光吸収異方性層側表面を貼り合わせ、配向層とセルロースアシレートフィルム1を除去して、実施例1の積層体1を完成した。
このとき、光吸収異方性層付き表面保護層H1に含まれる光吸収異方性層の吸収軸と、光学異方性層付きフィルム1に含まれるポジティブAプレートA1の遅相軸とのなす角度が45°となるように貼り合わせた。
【0275】
[実施例2]
実施例1の光吸収異方性層の形成において、光吸収異方性層形成用組成物P1を下記に示す光吸収異方性層形成用組成物P2に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例2の積層体を得た。
【0276】
――――――――――――――――――――――――――――――――
光吸収異方性層形成用組成物P2
――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記アゾ色素Y-1 0.25質量部
・上記アゾ色素M-1 0.27質量部
・下記アゾ色素C-2 0.65質量部
・下記高分子液晶性化合物P-2 3.71質量部
・重合開始剤
IRGACUREOXE-03(BASF社製) 0.151質量部
・上記界面改良剤F-1 0.026質量部
・シクロペンタノン 47.50質量部
・テトラヒドロフラン 47.50質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0277】
【0278】
【0279】
[実施例3]
実施例1の光吸収異方性層の形成において、光吸収異方性層形成用組成物P1を下記に示す光吸収異方性層形成用組成物P3に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例3の積層体を得た。
【0280】
――――――――――――――――――――――――――――――――
光吸収異方性層形成用組成物P3
――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記アゾ色素Y-2 0.25質量部
・下記アゾ色素M-2 0.27質量部
・下記アゾ色素C-3 0.65質量部
・上記高分子液晶性化合物P-2 3.71質量部
・重合開始剤
IRGACUREOXE-03(BASF社製) 0.151質量部
・下記界面改良剤F-1 0.026質量部
・シクロペンタノン 47.50質量部
・テトラヒドロフラン 47.50質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0281】
【0282】
【0283】
【0284】
[実施例4]
実施例1の光吸収異方性層の形成において、光吸収異方性層形成用組成物P1を下記に示す光吸収異方性層形成用組成物P4に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例4の積層体を得た。
【0285】
――――――――――――――――――――――――――――――――
光吸収異方性層形成用組成物P4
――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記アゾ色素Y-2 0.17質量部
・上記アゾ色素M-2 0.19質量部
・上記アゾ色素C-3 0.45質量部
・下記高分子液晶性化合物P-3 4.07質量部
・重合開始剤
IRGACUREOXE-03(BASF社製) 0.151質量部
・上記界面改良剤F-1 0.026質量部
・シクロペンタノン 47.50質量部
・テトラヒドロフラン 47.50質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0286】
【0287】
[実施例5]
実施例1の屈折率調整層の形成において、屈折率調整層形成用組成物N1を下記に示す屈折率調整層形成用組成物N2に変更し、膜厚調製をした以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例5の積層体を得た。屈折率調整層N2の膜厚は、0.1μmであった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
屈折率調整層形成用組成物N2
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・酸化ジルコニウム粒子 10.1質量部
・DPHA(日本化薬製) 60.9質量部
・重合開始剤IRGACURE907(BASF社製) 3.5質量部
・光増感剤カヤキュアーDETX(日本化薬製) 0.3質量部
・メチルエチルケトン 146.3質量部
・シクロヘキサノン 609.6質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0288】
[実施例6]
実施例1の屈折率調整層の形成において、屈折率調整層形成用組成物N1を下記に示す屈折率調整層形成用組成物N3に変更し、膜厚調製をした以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例6の積層体を得た。屈折率調整層N3の膜厚は、0.1μmであった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
屈折率調整層形成用組成物N3の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・CEL2021P(ダイセル社製) 32質量部
・重合開始剤 IRGACURE819(BASF社製) 1質量部
・アルミナエタノールゾルA2K5-10
(川研ファインケミカル社製、柱状のアルミナ水和物粒子が液中に
分散したコロイド液) 60質量部
・CPI-100P(50%炭酸プロピレン溶液) 2質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0289】
【0290】
【0291】
[実施例7]
実施例5の積層フィルム5B(セルロースアシレートフィルム1/光配向層PA1/光吸収異方性層P1/屈折率調整層N2/酸素遮断層B1)に対して、酸素遮断層B1の形成を行わずに、屈折率調整層側にコロナ処理を施したものを積層フィルム7Bとして作製した。
また、表面保護層1に対しても支持体側にコロナ処理をおこなった。
【0292】
(接着剤層を兼ねた酸素遮断層B2の形成)
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂(平均重合度:1200,ケン化度:98.5モル%,アセトアセチル化度:5モル%)100部に対し、メチロールメラミン20部を、30℃の温度条件下に、純水に溶解し、固形分濃度3.7%に調整した水溶液(以下、「酸素遮断層形成用組成物B2」と略す。)を調製した。
【0293】
(光吸収異方性層付き表面保護層7の作成)
上記酸素遮断層形成用組成物B2を用いて、積層フィルム7Bのコロナ処理面と、表面保護層1のコロナ処理面を接着し、セルロースアシレートフィルム1のみを除去し、光吸収異方性層付き表面保護層7を作成した。接着剤層を兼ねた酸素遮断層B2の厚みは2.3μmであった。
また、酸素遮断層B2の酸素透過度は、1cc/m2/day/atmであった。
【0294】
光吸収異方性層付き表面保護層1を光吸収異方性層付き表面保護層7に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例7の積層体を得た。
【0295】
[実施例8]
実施例7の屈折率調整層の形成において、屈折率調整層形成用組成物N2を下記に示す屈折率調整層形成用組成物N4に変更し、膜厚調整をした以外は、実施例7と同様の方法にて、実施例8の積層体を得た。屈折率調整層N4の膜厚は、0.1μmであった。
【0296】
――――――――――――――――――――――――――――――――
屈折率調整層形成用組成物N4
――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記棒状液晶性化合物の混合物L1 1.88質量部
・上記変性トリメチロールプロパントリアクリレート 2.16質量部
・上記光重合開始剤I-1 0.20質量部
・上記界面改良剤F-1 0.14質量部
・1、4‐フェニレンジボロン酸(東京化成工業) 0.10質量部
・メチルエチルケトン 434質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0297】
[実施例9]
実施例7の屈折率調整層の形成において、屈折率調整層形成用組成物N2を下記に示す屈折率調整層形成用組成物N5に変更し、膜厚調製をした。さらに、酸素遮断層形成用組成物B2を下記の酸素遮断層形成用組成物B3に変更した。それ以外は、実施例7と同様の方法にて、実施例9の積層体を得た。屈折率調整層N5の膜厚は、60nmであった。
また、酸素遮断層B3の酸素透過度は、1cc/m2/day/atmであった。
【0298】
――――――――――――――――――――――――――――――――
屈折率調整層形成用組成物N5
――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記棒状液晶性化合物の混合物L1 3.28質量部
・下記変性トリメチロールプロパントリアクリレート 0.13質量部
・下記光重合開始剤I-1 0.20質量部
・上記界面改良剤F-1 0.14質量部
・1、4‐フェニレンジボロン酸(東京化成工業) 0.10質量部
・メチルエチルケトン 371質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0299】
(酸素遮断層形成用組成物B3の調製)
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂(平均重合度:1200,ケン化度:98.5モル%,アセトアセチル化度:5モル%)100部に対し、メチロールメラミン20部、酸化ジルコニウム粒子9.4部を、30℃の温度条件下に、純水に溶解し、固形分濃度3.7%に調整した水溶液を調製した。
【0300】
[実施例10]
実施例7の屈折率調整層の形成において、屈折率調整層形成用組成物N2を上記屈折率調整層形成用組成物N1に変更した。さらに、表面保護層H1の支持体S1を、下記の支持体S2に変更し、表面保護層H2とした。それ以外は、実施例7と同様の方法にて、実施例10の積層体を得た。
【0301】
(支持体S2の作成)
特開2012-008248号段落0154に記載の方法により、ラクトン環構造を含有するアクリル樹脂を得た。
下記に記載の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、ドープ組成物を調製した。
─────────────────────────────────
アクリル樹脂ドープ組成物
─────────────────────────────────
・上記アクリル樹脂 100質量部
・架橋アクリル樹脂粒子
テクポリマーSSX-108(積水化成) 50質量部
・ジクロロメタン 534質量部
・メタノール 46質量部
─────────────────────────────────
【0302】
国際公開2015/064732A1の
図1に示されている構成のバンド流延装置を用い、上記のドープ組成物を2000mm幅でステンレス製のエンドレスバンド(流延支持体)に流延ダイから均一に流延した。ドープ組成物中の残留溶媒量が20質量%になった時点で流延支持体からフィルムを剥離した。
剥離されたフィルムを、乾燥ゾーン(雰囲気温度140℃)において30分間乾燥させて、アクリル樹脂フィルムを得た。アクリル樹脂フィルムの厚みは、製膜に用いるドープ組成物量により40μmとなるように調整した。
【0303】
[比較例1]
実施例1の屈折率調整層の形成において、屈折率調整層形成用組成物N1を下記に示す屈折率調整層形成用組成物N6に変更し、膜厚調製をした以外は、実施例1と同様の方法にて、比較例1の積層体を得た。屈折率調整層N6の膜厚は、0.1μmであった。
【0304】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
屈折率調整層形成用組成物N6の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・CEL2021P(ダイセル社製) 32質量部
・重合開始剤 IRGACURE819(BASF社製) 1質量部
・CPI-100P(50%炭酸プロピレン溶液) 2質量部
・メチルエチルケトン(MEK) 65質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0305】
[比較例2]
実施例1の屈折率調整層の形成において、屈折率調整層を形成しなかった以外は、実施例1と同様の方法にて、比較例2の積層体を得た。
【0306】
[比較例3]
実施例1の酸素遮断層の形成において、酸素遮断層を形成しなかった以外は、実施例1と同様の方法にて、比較例3の積層体を得た。
【0307】
[比較例4]
実施例1の屈折率調整層と酸素遮断層の形成において、屈折率調整層と酸素遮断層を両方ともに形成しなかった以外は、実施例1と同様の方法にて、比較例4の積層体を得た。
【0308】
[実施例11]
実施例1のポジティブAプレートA1の作製において、組成物A1を下記の組成液A2に変更したポジティブAプレートA2を作成した以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例11の積層体を得た。
【0309】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
(組成物A2)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記重合性液晶性化合物L-5 87.0質量部
・上記重合性液晶性化合物L-3 8.00質量部
・上記重合性液晶性化合物L-4 5.00質量部
・上記重合開始剤PI-1 0.55質量部
・上記レベリング剤T-1 0.20質量部
・シクロペンタノン 235.00質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0310】
【0311】
[実施例12]
実施例1の酸素遮断層の形成において、酸素遮断層形成用組成物B1を下記に示す酸素遮断層形成用組成物B4に変更し、膜厚調製をした以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例12の積層体を得た。酸素遮断層B4の膜厚は、2.0μmであった。
また、酸素遮断層B4の酸素透過度は、60cc/m2/day/atmであった。
【0312】
――――――――――――――――――――――――――――――――
酸素遮断層形成用組成物B4の組成
――――――――――――――――――――――――――――――――
・CEL2021P(ダイセル社製) 144質量部
・重合開始剤 IRGACURE819(BASF社製) 4質量部
・CPI-100P(50%炭酸プロピレン溶液) 6質量部
・下記界面改良剤F-2 0.3質量部
・メチルエチルケトン(MEK) 347質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0313】
【0314】
[実施例13]
<表面保護層H3の作成>
(ポリイミド粉末の製造)
攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素気流下、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)832gを加えた後、反応器の温度を25℃にした。ここに、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)64.046g(0.2mol)を加えて溶解した。得られた溶液を25℃に維持しながら、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)31.09g(0.07mol)とビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)8.83g(0.03mol)を投入し、一定時間撹拌して反応させた。その後、塩化テレフタロイル(TPC)20.302g(0.1mol)を添加して、固形分濃度13質量%のポリアミック酸溶液を得た。次いで、このポリアミック酸溶液にピリジン25.6g、無水酢酸33.1gを投入して30分撹拌し、さらに70℃で1時間撹拌した後、常温に冷却した。ここにメタノール20Lを加え、沈澱した固形分を濾過して粉砕した。その後、100℃下、真空で6時間乾燥させて、111gのポリイミド粉末を得た。
【0315】
(支持体S3の作製)
100gのポリイミド粉末を670gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶かして13質量%の溶液を得た。得られた溶液をステンレス板に流延し、130℃の熱風で30分乾燥させた。その後フィルムをステンレス板から剥離して、フレームにピンで固定し、フィルムが固定されたフレームを真空オーブンに入れ、100℃から300℃まで加熱温度を徐々に上げながら2時間加熱し、その後、徐々に冷却した。冷却後のフィルムをフレームから分離した後、最終熱処理工程として、さらに300℃で30分間熱処理して、ポリイミドフィルムからなる、厚み30μmの支持体S3を得た。
【0316】
<重合性を有するポリオルガノシルセスキオキサンの合成>
(化合物(A)の合成)
温度計、攪拌装置、還流冷却器、及び窒素導入管を取り付けた1000ミリリットルのフラスコ(反応容器)に、窒素気流下で2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン297ミリモル(73.2g)およびメチルトリメトキシシラン3ミリモル(409mg)、トリエチルアミン7.39g、及びMIBK(メチルイソブチルケトン)370gを混合し、純水73.9gを、滴下ロートを使用して30分かけて滴下した。この反応液を80℃に加熱し、重縮合反応を窒素気流下で10時間行った。
その後、反応溶液を冷却し、5質量%食塩水300gを添加し、有機層を抽出した。有機層を5質量%食塩水300g、純水300gで2回、順次洗浄した後、1mmHg、50℃の条件で濃縮し、固形分濃度59.8質量%のMIBK溶液として無色透明の液状の生成物{脂環式エポキシ基を有するポリオルガノシルセスキオキサンである化合物(A)(下記(1)中のRb:2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、Rc:メチル基、q=99、r=1である化合物)を固形分濃度として59.0質量%含有するメチルイソブチルケトン(MIBK)溶液を得た。
【0317】
【0318】
得られた化合物(A)の数平均分子量(Mn)は2310、分散度(Mw/Mn)は2.1であった。
なお、1mmHgは約133.322Paである。
【0319】
(重合体(1-1)の合成)
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた200ミリリットル三口フラスコに、t-アミルアルコール25.0gを仕込んで、120℃まで昇温した。次いで、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート{モノマー(K2)に相当}3.25g(7.8ミリモル)、下記構造を有する化合物(I-1){モノマー(K1)に相当}2.26g(4.7ミリモル)、シクロヘキサノン25.0g及び「V-601」(和光純薬(株)製)4.7gからなる混合溶液を120分で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、さらに3.5時間攪拌を続け、重合体(1-1)5.5g(固形分換算値)を得た。この重合体の重量平均分子量(Mw)は1,1001,600であった。
【0320】
【0321】
<ハードコート層形成用組成物の調製>
(ハードコート層形成用組成物HC-1)
上記化合物(A)を含有するMIBK溶液に、CPI-100P、重合体(1-1)及びMIBK(メチルイソブチルケトン)を添加し、各含有成分の濃度が下記の濃度となるように調整し、ミキシングタンクに投入、攪拌した。得られた組成物を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過し、ハードコート層形成用組成物HC-1とした。
【0322】
化合物(A) 98.6質量部
CPI-100P 1.3質量部
重合体(1-1) 0.1質量部
メチルイソブチルケトン 100.0質量部
【0323】
なお、ハードコート層形成用組成物中に用いた化合物は以下のとおりである。
CPI-100P:カチオン光重合開始剤、サンアプロ(株)製
【0324】
<混合層形成用組成物の調製>
(混合層形成用組成物M-1)
上記化合物(A)を含有するMIBK溶液をMEK(メチルエチルケトン)溶液に溶剤置換し、DPHA、CPI-100P、イルガキュア127、レベリング剤-1及びMEKを添加し、各含有成分の濃度が下記の濃度となるように調整し、ミキシングタンクに投入、攪拌した。得られた組成物を孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過し、混合層形成用組成物M-1とした。混合層形成用組成物M-1中、化合物(A)とDPHAの混合比は、化合物(A)/DPHA=50質量%/50質量%である。
【0325】
化合物(A) 42.85質量部
DPHA 42.85質量部
CPI-100P 1.3質量部
イルガキュア127 5.0質量部
レベリング剤-1 8.0質量部
メチルエチルケトン 500.0質量部
【0326】
なお、混合層形成用組成物中に用いた化合物は以下のとおりである。
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬(株)製
イルガキュア127:ラジカル光重合開始剤、BASF社製
レベリング剤-1:下記構造のポリマー(Mw=20000、下記繰り返し単位の組成比は質量比)
【0327】
【0328】
<耐擦傷層形成用組成物の調製>
(耐擦傷層形成用組成物SR-1)
下記に記載の組成で各成分をミキシングタンクに投入、攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して耐擦傷層形成用組成物SR-1とした。
【0329】
DPHA 96.2質量部
イルガキュア127 2.8質量部
RS-90 1.0質量部
メチルエチルケトン 300.0質量部
【0330】
なお、耐擦傷層形成用組成物中に用いた化合物は以下のとおりである。
RS-90:滑り剤、DIC(株)製
【0331】
(表面保護層H3の作製)
基材S-1上にハードコート層形成用組成物HC-1をダイコーターを用いて塗布した。120℃で1分間乾燥した後、25℃の条件にて空冷水銀ランプを用いて、照度18mW/cm2、照射量10mJ/cm2の紫外線を照射してハードコート層を半硬化させた。この層の屈折率は、1.53であった。
混合層形成用組成物M-1をにMEKを添加して固形分濃度を1/10に希釈した混合層形成用組成物を準備し半硬化させたハードコート層上にダイコーターを用いて塗布した。120℃で1分間乾燥した後、25℃、酸素濃度1%の条件にて空冷水銀ランプを用いて、照度18mW/cm2、照射量10mJ/cm2の紫外線を照射して混合層を半硬化させ、ハードコート層上に混合層を設けた。
半硬化させた混合層上に、耐擦傷層形成用組成物SR-1をダイコーターを用いて塗布した。120℃で1分間乾燥した後、25℃、酸素濃度100ppmの条件にて空冷水銀ランプを用いて、照度60mW/cm2、照射量800mJ/cm2の紫外線を照射した後、さらに80℃、酸素濃度100ppmの条件にて空冷水銀ランプを用いて、で照度60mW/cm2、照射量800mJ/cm2の紫外線を照射することでハードコート層、混合層、耐擦傷層を完全硬化させた。その後得られたフィルムを120℃1時間熱処理することで、厚さ11.0μmのハードコート層上に、厚さ0.1μmの混合層、厚さ1.0μmの耐擦傷層を有する表面保護層H3を得た。
【0332】
(酸素遮断層形成用組成物B5の調製)
アセトアセチル基を含有するポリビニルアルコール系樹脂(平均重合度:1200,ケン化度:98.5モル%,アセトアセチル化度:5モル%)100部に対し、メチロールメラミン20部、酸化ジルコニウム粒子16.7部を、30℃の温度条件下に、純水に溶解し、固形分濃度3.7%に調整した水溶液を調製した。
【0333】
(実施例13の積層体の作成)
実施例9の表面保護層H1を上記で作成した表面保護層H3に変更し、かつ酸素遮断層形成用組成物B3を上記の酸素遮断層形成用組成物B5に変更した。それ以外は、実施例9と同様の方法にて、実施例13の積層体を得た。
また、酸素遮断層B5の酸素透過度は、1cc/m2/day/atmであった。
【0334】
[実施例14]
(支持体S4の作製)
窒素置換した重合槽に、式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、式(3)で表される化合物、触媒及び溶媒(γブチロラクトン及びジメチルアセトアミド)を仕込んだ。仕込み量は、式(1)で表される化合物75.0g、式(2)で表される化合物36.5g、式(3)で表される化合物76.4g、触媒1.5g、γブチロラクトン438.4g、ジメチルアセトアミド313.1gとした。式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物とのモル比は3:7、式(2)で表される化合物及び式(3)で表される化合物の合計と式(1)で表される化合物とのモル比は、1.00:1.02であった。
【0335】
【0336】
重合槽内の混合物を攪拌して原料を溶媒に溶解させた後、混合物を100℃まで昇温し、その後、200℃まで昇温し、4時間保温して、ポリイミドを重合した。この加熱中に、液中の水を除去した。その後、精製及び乾燥により、ポリイミド(式(PI)の繰り返し構造単位を含むポリイミド系高分子)を得た。
【0337】
次に、濃度20質量%に調整したポリイミドのγブチロラクトン溶液、γブチロラクトンに固形分濃度30質量%のシリカ粒子を分散した分散液、アミノ基を有するアルコキシシランのジメチルアセトアミド溶液、及び、水を混合し、30分間攪拌した。これらの攪拌は、米国特許番号US8,207,256B2に記載の方法に準拠して行った。
【0338】
ここで、シリカ粒子とポリイミドの質量比を43:57、アミノ基を有するアルコキシシランの量をシリカ粒子及びポリイミドの合計100質量部に対して1.67質量部、水の量をシリカ粒子及びポリイミドの合計100質量部に対して10質量部とした。
【0339】
混合溶液を、ガラス基板に塗布し、50℃で30分、140℃で10分加熱して乾燥した。その後、フィルムをガラス基板から剥離し、金枠を取り付けて210℃で1時間加熱し、厚み40μmの支持体S-2を得た。この樹脂フィルムにおけるシリカ粒子の含有量は43質量%である。屈折率は、1.58であった。
【0340】
<表面保護層H4の作製>
表面保護層H3に対して、支持体S3を支持体S4に変更して、表面保護層H4を作製した。
【0341】
(実施例14の積層体の作製)
実施例13の表面保護層H3を上記で作成した表面保護層H4に変更した。それ以外は、実施例13と同様の方法にて、実施例14の積層体を得た。
【0342】
[実施例15]
(支持体S5の作製)
支持体S4の作成において、シリカ粒子とポリイミドの質量比を変更して、屈折率1.53の支持体S5を作成した。
【0343】
<表面保護層H5の作製>
表面保護層H3に対して、支持体S3を支持体S5に変更して、表面保護層H5を作成した。
【0344】
(実施例15の積層体の作成)
実施例6の表面保護層H1を上記で作成した表面保護層H5に変更した。それ以外は、実施例6と同様の方法にて、実施例15の積層体を得た。
【0345】
[実施例16]
実施例15の屈折率調整層の形成において、屈折率調整層形成用組成物N3を屈折率調整層形成用組成物N1に変更し、実施例15と同様の方法にて、実施例16の積層体を得た。
【0346】
[実施例17]
実施例9の光吸収異方性層付き表面保護層9の作成において、表面保護層H1の代わりに表面保護層H5を貼り合わせ、セルロースアシレートフィルム1と光配向層PA-1を除去し、光吸収異方性層付き表面保護層21を作成した。それ以外は、実施例9と同様の方法にて、実施例17の積層体を得た。
【0347】
[実施例18]
実施例14の形成において、屈折率調整層形成用組成物N5を屈折率調整層形成用組成物N1に変更し、表面保護層H4を表面保護層H5に変更した。それ以外は、実施例14と同様の方法にて、実施例18の積層体を得た。
【0348】
[実施例19]
実施例1の光吸収異方性層の形成において、光吸収異方性層形成用組成物P1を下記に示す光吸収異方性層形成用組成物P5に変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、実施例23の積層体を得た。
――――――――――――――――――――――――――――――――
光吸収異方性層形成用組成物P5
――――――――――――――――――――――――――――――――
・上記アゾ色素Y-1 0.13質量部
・上記アゾ色素M-1 0.14質量部
・上記アゾ色素C-2 0.34質量部
・上記高分子液晶性化合物P-2 4.27質量部
・重合開始剤
IRGACUREOXE-03(BASF社製) 0.151質量部
・上記界面改良剤F-1 0.026質量部
・シクロペンタノン 47.50質量部
・テトラヒドロフラン 47.50質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――
【0349】
[評価]
<有機EL表示装置1の作成>
有機ELパネル(有機EL表示素子)搭載のSAMSUNG社製GALAXY S4を分解し、有機EL表示装置から、円偏光板付きタッチパネルを剥離し、さらにタッチパネルから円偏光板を剥がし、有機EL表示素子、タッチパネルおよび円偏光板をそれぞれ単離した。次いで、単離したタッチパネルを有機EL表示素子と再度貼合し、さらに上記作製した積層体1を光学異方性層側がパネル側になるようにタッチパネル上に粘着剤SK2057(綜研化学製)介して貼合し、有機EL表示装置1を作製した。
【0350】
<反射率評価>
表面反射の影響を除外するため、作成した表面保護層1の支持体側に、吸収率が高く、全く反射しない黒い糊(カーボンブラック含有)を貼って測定した値を、表面反射率とした。
有機EL表示装置1の反射率(全反射)を測定し、上記表面反射率を引き算した値を評価した。
反射率は、分光測色計(コニカミノルタ製)を用いて、観察条件10°視野、観察光源D65における表示系のY値を反射率とした。得られた値を以下の基準に沿って評価した。
AA:反射率が、2.2%以下の場合
A:反射率が、2.2%より大きく、且つ、2.6%以下
B:反射率が、2.6%より大きく、且つ、3.5%以下
C:反射率が、3.5%より大きい
【0351】
<光耐久性評価>
スガ試験機(株)製スーパーキセノンウェザーメーターSX75を用いて、60°50%RH、150W/m2、100hのキセノン照射を積層体1に対して行った後、上記と同様にして反射率の評価を行った。
【0352】
実施例2~18および比較例1~4で作製した積層体についても、同様の評価を行い、表1に記載した。
【0353】
【0354】
上記表3に示す通り、屈折率調整層の波長550nmにおける面内平均屈折率が1.55未満であると、表示性能(耐光前の表示性能)および光耐久性(耐光後の表示性能)に劣ることが分かった(比較例1)。
また、屈折率調整層を有していない場合には、表示性能および光耐久性に劣ることが分かった(比較例2)。
また、酸素遮断層を有していない場合には、光耐久性に劣ることが分かった(比較例3)。
また、屈折率調整層および酸素遮断層を有していない場合には、表示性能および光耐久性に劣ることが分かった(比較例4)。
これに対し、光学異方性層、光吸収異方性層、屈折率調整層および酸素遮断層をこの順に有し、屈折率調整層の波長550nmにおける面内平均屈折率が1.55以上1.70以下であると、表示性能(耐光前の表示性能)および光耐久性(耐光後の表示性能)が優れる劣ることが分かった(実施例1~19)。
【符号の説明】
【0355】
100、200 積層体
12 光学異方性層
13 配向層
14 光吸収異方性層
16 屈折率調整層
18 酸素遮断層
20 表面保護層