IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日産化学工業株式会社の特許一覧

特許7008946液晶配向剤、液晶配向膜、及び液晶表示素子
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜、及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20220203BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20220203BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20220203BHJP
   C08G 59/32 20060101ALI20220203BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
G02F1/13 101
C08G73/10
C08G59/32
G02F1/1333 500
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018508033
(86)(22)【出願日】2017-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2017012535
(87)【国際公開番号】W WO2017170483
(87)【国際公開日】2017-10-05
【審査請求日】2020-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2016066421
(32)【優先日】2016-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 敬夫
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】巴 幸司
(72)【発明者】
【氏名】宮本 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】小西 玲久
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀則
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 英之
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-234410(JP,A)
【文献】特開平05-001152(JP,A)
【文献】特開2007-139949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
G02F 1/13
C08G 73/10
C08G 59/32
G02F 1/1333
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)(式(1)中、Xはテトラカルボン酸誘導体に由来する4価の有機基であり、Yはジアミンに由来し、下記式(2)(式(2)中、Rは単結合又は2価の有機基であり、Rは-(CH-で表される構造であり(ただし、nは2~20の整数であり、任意の-CH-はそれぞれ隣り合わない条件でエーテル、エステル、アミド、ウレア、カルバメート結合に置き換えられてもよい。)、Rは単結合又は2価の有機基であり、ベンゼン環上の任意の水素原子は1価の有機基で置き換えられてもよい。)の構造を有する2価の有機基であり、Rは水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む重合体、
下記式(3)(式(3)中、pは1~6の整数である)で表される化合物、及び
有機溶媒
を含有する液晶配向剤であって、前記式(2)が、下記(2)-1~(2)-10からなる群から選ばれるいずれか1種の構造である、液晶配向剤
【化1】
【請求項2】
前記式(1)中のXが、以下の構造から選ばれる、請求項1に記載の液晶配向剤。
【化2】
【請求項3】
上記式(1)で表される構造単位を含有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化重合体において、上記式(1)で表される構造単位及びそれをイミド化した構造単位から選ばれる少なくとも1種の構造単位の比率が、重合体中の全構造単位1モルに対して、20モル%~100モル%である、請求項1又は請求項2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
上記式(3)の化合物が、以下の構造から選ばれる少なくとも1種である、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【化3】
【請求項5】
上記式(3)で表される化合物が、重合体全体の重量に対して、1~20重量部含有される、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜。
【請求項7】
請求項に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向膜を作製するための液晶配向剤、該液晶配向剤から得られる液晶配向膜、及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶配向膜は、液晶表示素子や重合性液晶を用いた位相差板等において、液晶分子の配向を一定方向に制御するための膜である。例えば、液晶表示素子は、液晶層をなす液晶分子が、一対の基板のそれぞれの表面に形成された液晶配向膜で挟まれた構造を有する。そして、液晶表示素子では、液晶分子が、液晶配向膜によってプレチルト角を伴って一定方向に配向し、基板と液晶配向膜との間に設けられた電極への電圧印加により応答をする。その結果、液晶表示素子は、液晶分子の応答による配向変化を利用して所望とする画像の表示を行う。液晶配向膜は、液晶表示素子等において、液晶分子等とともに主要な構成部材となる。
【0003】
液晶配向膜に求められる特性は種々存在する。ラビング処理に対する高い耐性はそのうち重要な特性の一つである。ラビング処理は、液晶表示素子の製造工程において、基板上に形成された高分子膜から液晶配向膜を形成する方法として知られ、現在も工業的に広く用いられている。ラビング処理では、基板上に形成されたポリイミド等の高分子膜に対し、その表面を布で擦る配向処理が行われる。
【0004】
こうしたラビング処理においては、液晶配向膜が削れることで発生する粉塵や液晶配向膜に付いた傷が、表示品位を低下させるという問題が知られている。そのため、液晶配向膜にはラビング処理に対する耐性(以下、ラビング耐性とも言う。)が求められている。
【0005】
高いラビング耐性を有する液晶配向膜を形成するための方法としては、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物とを反応させて得られる重合体及び/またはそのイミド化重合体と、分子内に2個以上のエポキシ基を含有する化合物を含有する液晶配向剤を用いることで、ラビング条件によらず一定のプレチルト角を示す液晶配向膜が得られることが開示されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-234410号公報
【文献】特開平10-338880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、スマートフォン等の液晶表示素子における軽量化、薄型化が急速に進んでいる。それに伴い、液晶パネル製造において、作製後の液晶パネルのガラス基板を研磨する、いわゆる「スリミング工程」が行われることが多い。この工程では、フッ酸などを用いた化学的な方法と、研磨剤を用い物理的に研磨する方法がある。
物理的に研磨する場合、研磨に用いる装置によっては、作製した液晶パネルが曲げられることもあり、結果、液晶配向膜に対し、あらゆる方向から応力がかかる。そのため、液晶配向膜の機械的強度が弱い場合、特にカラムスペーサーまわりで膜の破断が起こり、不良の原因となることがある。ラビングに対して充分な耐性を持つこれまでの液晶配向膜も、このスリミング工程に対する耐性が不充分であることが多い。
以上のことから、機械的強度を更に強化した液晶配向膜が求められている。
本発明の課題は、機械的強度の高い液晶配向膜及び、それを得るための液晶配向剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の目的を達成するため、鋭意研究を進めたところ、特定構造の添加剤と特定構造を有するジアミン化合物から得られるポリイミド前駆体、及び該ポリイミド前駆体のイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種類の重合体を含有する液晶配向剤により、上記の目的を達成し得ることを見出した。
かくして、本発明は、下記を要旨とするものである。
【0009】
1.下記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む重合体、下記式(3)で表される化合物、及び有機溶媒を含有する液晶配向剤。
【0010】
【化1】
【0011】
式(1)中、Xはテトラカルボン酸誘導体に由来する4価の有機基であり、
はジアミンに由来し、式(2)の構造を有する2価の有機基であり、
は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。
式(2)中、Rは単結合又は2価の有機基であり、Rは-(CH-で表される構造であり(ただし、nは2~20の整数であり、任意の-CH-はそれぞれ隣り合わない条件でエーテル、エステル、アミド、ウレア、カルバメート結合に置き換えられてもよい。)、Rは単結合又は2価の有機基であり、ベンゼン環上の任意の水素原子は1価の有機基で置き換えられてもよい。
式(3)中、pは1~6の整数である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液晶配向剤から得られる液晶配向膜は、膜の機械的強度と、膜の液晶配向性を両立させることができるため、ラビング工程は元より、スリミング工程に対しても、膜の削れや破断等が発生せず、結果として、良好な表示特性を持つ液晶表示素子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の液晶配向剤は、上記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む重合体(以下、特定重合体とも言う。)、上記式(3)で表される化合物(以下、特定化合物とも言う。)及び有機溶媒を含有する液晶配向剤である。以下、各構成要件につき詳述する。
【0014】
<特定重合体>
本発明の液晶配向剤に含有される特定重合体とは、下記式(1)の構造単位を含有する重合体である。
【0015】
【化2】
【0016】
式(1)中、Xはテトラカルボン酸誘導体に由来する4価の有機基である。具体的な構造としては、下記式(X1-1)~(X1-45)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種類である。
【0017】
【化3】
【0018】
式(X1-1)において、R、R、R、及びRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、アルキニル基、又はフェニル基であり、同一でも異なってもよい。液晶配向性の観点から、R、R、R、及びRは、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、又はエチル基が好ましく、水素原子、又はメチル基がより好ましく、さらに好ましくは、下記式(X1-10)~(X1-11)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種類である。
【0019】
【化4】
【0020】
【化5】
【0021】
【化6】
【0022】
【化7】
【0023】
【化8】
【0024】
これらの構造の中でも、液晶配向性、信頼性の観点から、(X1-10)、(X1-11)、(X1-29)が好ましく、(X1-10)、(X1-11)がより好ましい。
式(1)において、Rは、水素原子、又は炭素数1~5のアルキル基である。加熱によるイミド化のしやすさの観点から、水素原子、又はメチル基が特に好ましい。
上記式(1)で表される構造単位を含有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化重合体において、上記式(1)で表される構造単位及びそれをイミド化した構造単位から選ばれる少なくとも1種の構造単位の比率は、重合体中の全構造単位1モルに対して、20モル%~100モル%が好ましく、液晶配向性と信頼性の両立の観点から、30モル%~70モル%がより好ましく、50モル%~70モル%がさらに好ましい。
はジアミンに由来し、下記式(2)の構造を有する2価の有機基である。
【0025】
【化9】
【0026】
は単結合又は2価の有機基であり、単結合が好ましい。
は-(CH-で表される構造である。nは2~10の整数であり、3~7が好ましい。また、任意の-CH-はそれぞれ隣り合わない条件でエーテル、エステル、アミド、ウレア、カルバメート結合に置き換えられてもよい。
は単結合又は2価の有機基である。
ベンゼン環上の任意の水素原子は1価の有機基で置き換えられてもよく、フッ素原子又はメチル基が好ましい。
具体的には、以下のような構造が挙げられるがこれらに限定されない。
【0027】
【化10】
【0028】
【化11】
【0029】
【化12】
【0030】
【化13】
【0031】
【化14】
【0032】
本発明の液晶配向剤に含有される特定重合体は、上記式(1)で表される構造単位以外に下記式(4)で表される構造単位を含有してもよい。
【0033】
【化15】
【0034】
式(4)において、Rは上記式(1)のRと同様の定義である。Xはテトラカルボン酸誘導体に由来する4価の有機基であり、その構造は特に限定されない。具体的例を挙げるならば、上記式(X1-1)~(X-45)の構造が挙げられる。
上記式(4)において、Yはジアミンに由来する2価の有機基であり、その構造は特に限定されない。Yの具体例を挙げるならば、下記式(Y-1)~(Y-137)の構造が挙げられる。
【0035】
【化16】
【0036】
【化17】
【0037】
【化18】
【0038】
【化19】
【0039】
【化20】
【0040】
【化21】
【0041】
【化22】
【0042】
【化23】
【0043】
【化24】
【0044】
【化25】
【0045】
【化26】
【0046】
【化27】
【0047】
【化28】
【0048】
【化29】
【0049】
【化30】
【0050】
【化31】
【0051】
<特定化合物>
本発明の液晶配向剤に含有される特定化合物は、下記式(3)で表される。
【0052】
【化32】
【0053】
式(3)中、pは1~6、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは1である。
具体例としては、以下の構造が挙げられる。
【0054】
【化33】
【0055】
上記式(3)で表される化合物の好ましい含有量としては、1-20重量部が好ましく、1-10重量部がより好ましい。
また、本発明の効果を損ねない範囲において、上記式(3)の化合物は、2種類以上用いてもよい。
【0056】
<ポリアミック酸エステルの製造方法>
本発明に用いられるポリイミド前駆体であるポリアミック酸エステルは、以下に示す(1)、(2)又は(3)の方法で合成することができる。
【0057】
(1)ポリアミック酸から合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンから得られるポリアミック酸をエステル化することによって合成することができる。
具体的には、ポリアミック酸とエステル化剤を有機溶剤の存在下で-20℃~150℃、好ましくは0℃~50℃において、30分~24時間、好ましくは1~4時間反応させることによって合成することができる。
【0058】
エステル化剤としては、精製によって容易に除去できるものが好ましく、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジプロピルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジネオペンチルブチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジ-t-ブチルアセタール、1-メチル-3-p-トリルトリアゼン、1-エチル-3-p-トリルトリアゼン、1-プロピル-3-p-トリルトリアゼン、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジンー2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドなどが挙げられる。エステル化剤の添加量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して、2~6モル当量が好ましい。
上記の反応に用いる溶媒は、ポリマーの溶解性からN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、又はγ-ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時の濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。
【0059】
(2)テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとの反応により合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンから合成することができる。
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとを塩基と有機溶剤の存在下で-20℃~150℃、好ましくは0℃~50℃において、30分~24時間、好ましくは1~4時間反応させることによって合成することができる。
【0060】
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジンなどが使用できるが、反応が穏和に進行するためにピリジンが好ましい。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドに対して、2~4倍モルであることが好ましい。
上記の反応に用いる溶媒は、モノマーおよびポリマーの溶解性からN-メチル-2-ピロリドン、又はγ-ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時のポリマー濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。また、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドの加水分解を防ぐため、ポリアミック酸エステルの合成に用いる溶媒はできるだけ脱水されていることが好ましく、窒素雰囲気中で、外気の混入を防ぐのが好ましい。
【0061】
(3)テトラカルボン酸ジエステルとジアミンからポリアミック酸エステルを合成する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを重縮合することにより合成することができる。
具体的には、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを縮合剤、塩基、及び有機溶剤の存在下で0℃~150℃、好ましくは0℃~100℃において、30分~24時間、好ましくは3~15時間反応させることによって合成することができる。
【0062】
前記縮合剤には、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’-カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ-1,3,5-トリアジニルメチルモルホリニウム、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム テトラフルオロボラート、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、(2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-3-ベンゾオキサゾリル)ホスホン酸ジフェニルなどが使用できる。縮合剤の添加量は、テトラカルボン酸ジエステルに対して2~3倍モルが好ましい。
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミンなどの3級アミンが使用できる。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、ジアミン成分に対して2~4倍モルが好ましい。
【0063】
また、上記反応において、ルイス酸を添加剤として加えることで反応が効率的に進行する。ルイス酸としては、塩化リチウム、臭化リチウムなどのハロゲン化リチウムが好ましい。ルイス酸の添加量はジアミン成分に対して0~1.0倍モルが好ましい。
上記3つのポリアミック酸エステルの合成方法の中でも、高分子量のポリアミック酸エステルが得られるため、上記(1)又は上記(2)の合成法が特に好ましい。
上記のようにして得られるポリアミック酸エステルの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0064】
<ポリアミック酸の製造方法>
本発明に用いられるポリイミド前駆体であるポリアミック酸は、以下に示す方法により合成することができる。
具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを有機溶媒の存在下で-20℃~150℃、好ましくは0℃~50℃において、30分~24時間、好ましくは1~12時間反応させることによって合成できる。
【0065】
上記の反応に用いる有機溶媒は、モノマーおよびポリマーの溶解性からN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、又はγ-ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。ポリマーの濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。
上記のようにして得られたポリアミック酸は、反応溶液をよく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させて回収することができる。また、析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥することで精製されたポリアミック酸の粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0066】
<ポリイミドの製造方法>
本発明に用いられるポリイミドは、前記ポリアミック酸エステル又はポリアミック酸をイミド化することにより製造することができる。ポリアミック酸エステルからポリイミドを製造する場合、前記ポリアミック酸エステル溶液、又はポリアミック酸エステル樹脂粉末を有機溶媒に溶解させて得られるポリアミック酸溶液に塩基性触媒を添加する化学的イミド化が簡便である。化学的イミド化は、比較的低温でイミド化反応が進行し、イミド化の課程で重合体の分子量低下が起こりにくいので好ましい。
化学的イミド化は、イミド化させたいポリアミック酸エステルを、有機溶媒中において塩基性触媒存在下で撹拌することにより行うことができる。有機溶媒としては前述した重合反応時に用いる溶媒を使用することができる。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。中でもトリエチルアミンは反応を進行させるのに充分な塩基性を持つので好ましい。
【0067】
イミド化反応を行うときの温度は、-20℃~140℃、好ましくは0℃~100℃であり、反応時間は1~100時間で行うことができる。塩基性触媒の量はアミック酸エステル基の0.5~30モル倍、好ましくは2~20モル倍である。得られる重合体のイミド化率は、触媒量、温度、反応時間を調節することで制御することができる。イミド化反応後の溶液には、添加した触媒等が残存しているので、以下に述べる手段により、得られたイミド化重合体を回収し、有機溶媒で再溶解して、本発明の液晶配向剤とすることが好ましい。
【0068】
ポリアミック酸からポリイミドを製造する場合、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物との反応で得られた前記ポリアミック酸の溶液に触媒を添加する化学的イミド化が簡便である。化学的イミド化は、比較的低温でイミド化反応が進行し、イミド化の過程で重合体の分子量低下が起こりにくいので好ましい。
化学的イミド化は、イミド化させたい重合体を、有機溶媒中において塩基性触媒と酸無水物の存在下で攪拌することにより行うことができる。有機溶媒としては前述した重合反応時に用いる溶媒を使用することができる。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。また、酸無水物としては無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等を挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。
【0069】
イミド化反応を行うときの温度は、-20℃~140℃、好ましくは0℃~100℃であり、反応時間は1~100時間で行うことができる。塩基性触媒の量はアミック酸基の0.5~30モル倍、好ましくは2~20モル倍であり、酸無水物の量はアミック酸基の1~50モル倍、好ましくは3~30モル倍である。得られる重合体のイミド化率は、触媒量、温度、反応時間を調節することで制御することができる。
ポリアミック酸エステル又はポリアミック酸のイミド化反応後の溶液には、添加した触媒等が残存しているので、以下に述べる手段により、得られたイミド化重合体を回収し、有機溶媒で再溶解して、本発明の液晶配向剤とすることが好ましい。
上記のようにして得られるポリイミドの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、重合体を析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。
前記貧溶媒は、特に限定されないが、メタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン等が挙げられる。
【0070】
<液晶配向剤>
本発明に用いられる液晶配向剤は、特定構造の重合体が有機溶媒中に溶解された溶液の形態を有する。上記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化重合体から選ばれる少なくとも1種の重合体の分子量は、重量平均分子量で2,000~500,000が好ましく、より好ましくは5,000~300,000であり、さらに好ましくは、10,000~100,000である。また、数平均分子量は、好ましくは、1,000~250,000であり、より好ましくは、2,500~150,000であり、さらに好ましくは、5,000~50,000である。
【0071】
本発明に用いられる液晶配向剤には、本発明に記載の重合体以外の重合体が含有されていてもよい。その中でも、上記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド及び該ポリイミド前駆体のイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む特定重合体と、特定重合体以外の、ポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む重合体が含まれていると、本発明の効果をより発現できるため好ましい。さらに、上記式(1)で表される構造単位を有するポリイミド及びポリアミック酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む特定重合体と、特定重合体以外の、ポリアミック酸からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む重合体が含まれていると、より好ましい。
【0072】
本発明に用いられる液晶配向剤の重合体の濃度(特定重合体以外の重合体が含まれる場合は、それらの合計の濃度を意味する。)は、形成させようとする塗膜の厚みの設定によって適宜変更することができるが、均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点から1重量%以上であることが好ましく、溶液の保存安定性の点からは10重量%以下とすることが好ましい。
【0073】
<有機溶媒>
本発明に用いられる液晶配向剤に含有される有機溶媒は、特定構造の重合体が均一に溶解するもの(以下、良溶媒ともいう)であれば特に限定されない。その具体例を挙げるならば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。また、単独では重合体を均一に溶解できない溶媒であっても、重合体が析出しない範囲であれば、上記の有機溶媒に混合してもよい。液晶配向剤における良溶媒は、溶媒全体の20~99質量%であることが好ましく、20~90質量%がより好ましく、30~80質量%が特に好ましい。
【0074】
液晶配向剤は、本発明の効果を損なわない限り、液晶配向剤を塗布した際の液晶配向膜の塗膜性や表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒ともいう)を含有することができる。かかる溶媒は、一般的に上記有機溶媒よりも低表面張力の溶媒が用いられる。これら貧溶媒は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の1~80質量%が好ましい。なかでも、10~80質量%が好ましい。より好ましいのは20~70質量%である。
【0075】
下記に、貧溶媒の具体例を挙げるが、これらの例に限定されるものではない。例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、イソペンチルアルコール、tert-ペンチルアルコール、3-メチル-2-ブタノール、ネオペンチルアルコール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1-メチルシクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、3-メチルシクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、3-エトキシブチルアセタート、1-メチルペンチルアセタート、2-エチルブチルアセタート、2-エチルヘキシルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、2-(メトキシメトキシ)エタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、2-(ヘキシルオキシ)エタノール、フルフリルアルコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1-(ブトキシエトキシ)プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアセタート、ジエチレングリコールアセタート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n-プロピルエステル、乳酸n-ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル又は下記式[D-1]~式[D-3]で示される溶媒などを挙げることができる。
式[D-1]中、Dは炭素数1~3のアルキル基を示し、式[D-2]中、Dは炭素数1~3のアルキル基を示し、式[D-3]中、Dは炭素数1~4のアルキル基を示す。
【0076】
【化34】
【0077】
なかでも、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート又はジプロピレングリコールジメチルエーテルを用いることが好ましい。
本発明の液晶配向剤には、上記の他、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体若しくは導電物質、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる目的のシランカップリング剤、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的の架橋性化合物、さらには塗膜を焼成する際にポリイミド前駆体の加熱によるイミド化を効率よく進行させる目的のイミド化促進剤等を添加してもよい。
【0078】
<液晶配向膜の製造方法>
本発明の液晶配向膜は、液晶配向剤を基板に塗布し、焼成する工程、得られた膜に配向処理を施す工程を経て製造される。
(1)液晶配向剤を基板に塗布し、焼成する工程
上記のようにして得られた液晶配向剤を基板に塗布し、乾燥、焼成することによりポリイミド膜、又はポリイミド前駆体がイミド化した膜が得られる。
本発明に用いられる液晶配向剤を塗布する基板としては透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板、アクリル基板やポリカーボネート基板等のプラスチック基板等を用いることができ、液晶駆動のためのITO電極等が形成された基板を用いることがプロセスの簡素化の点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極はアルミ等の光を反射する材料も使用できる。本発明に用いられる液晶配向剤の塗布方法としては、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などが挙げられる。
【0079】
本発明に用いられる液晶配向剤を塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができる。通常は、含有される有機溶媒を十分に除去するために50℃~120℃で1分~10分乾燥させ、その後150℃~300℃で5分~120分焼成される。焼成後の塗膜の厚みは、特に限定されないが、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、5~300nm、好ましくは10~200nmである。
【0080】
(2)得られた膜に配向処理を施す工程
配向処理としては、公知の方法で行われるラビング処理の他、偏光紫外線を照射し、膜中の光反応性基の光反応によって膜に液晶配向性を付与する光配向処理が挙げられる。
光配向処理の場合、偏光された紫外線を照射する工程、紫外線を照射した膜を水や2-プロパノールを主成分とする洗浄液で洗浄する工程を含む液晶配向膜の製造方法によって、製造されることが好ましい。具体的には以下のような工程である。
【0081】
上記(1)の方法で得られた膜に、偏光された紫外線を照射する(以下、光配向処理とも言う)ことにより、異方性が付与される。
偏光された紫外線の消光比が高いほど、より高い異方性が付与できるため、好ましい。具体的には、直線に偏光された紫外線の消光比は、10:1以上が好ましく、20:1以上がより好ましい。
光配向処理の具体例としては、前記塗膜表面に、直線に偏光された紫外線を照射し、場合によってはさらに150~250℃の温度で加熱処理を行い、液晶配向能を付与する方法が挙げられる。紫外線の波長としては、100nm~400nmの波長を有する紫外線が好ましく、200nm~400nmの波長を有するものが特に好ましい。
前記放射線の照射量は、1~10,000mJ/cmの範囲にあることが好ましく、100~5,000mJ/cmの範囲にあることが特に好ましい。
【0082】
(3)紫外線を照射した膜を洗浄する工程
本発明の液晶配向剤から得られる液晶配向膜は、水や2-プロパノールを主成分とする洗浄液で洗浄することによって、液晶配向膜として良好な特性を発現することを特徴とする。2-プロパノールは、水よりも膜中の有機物を溶解しやすいため、本発明の液晶配向膜の洗浄液としては、2-プロパノールを含有する洗浄液がより好ましい。
液晶配向膜の洗浄方法としては、浸漬処理、噴霧(スプレー)処理などの、膜と液とが十分に接触するような処理が好ましい。なかでも、洗浄液に膜を、好ましくは10秒~1時間、より好ましくは1分~30分浸漬処理する方法が好ましい。接触処理は常温でも加温してもよいが、好ましくは10~80℃、より好ましくは20~50℃で実施される。また、必要に応じて超音波などの接触を高める手段を施すことができる。
上記接触処理の後に、使用した有機溶媒を除去する目的で、水、2-プロパノール、アセトンなどの低沸点溶媒によるすすぎ(リンス)や乾燥のいずれか、又は両方を行ってよい。乾燥温度としては、80~250℃が好ましく、80~150℃がより好ましい。
【0083】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、前記液晶配向膜の製造方法によって得られた液晶配向膜を具備することを特徴とする。
本発明の液晶表示素子は、上記した手法によって本発明に記載の液晶配向処理剤から前記液晶配向膜の製造方法によって液晶配向膜付きの基板を得た後、公知の方法で液晶セルを作製し、それを使用して液晶表示素子としたものである。
液晶セル作製方法の一例として、パッシブマトリクス構造の液晶表示素子を例にとり説明する。尚、画像表示を構成する各画素部分にTFT(Thin Film Transistor)などのスイッチング素子が設けられたアクティブマトリクス構造の液晶表示素子であってもよい。
【0084】
まず、透明なガラス製の基板を準備し、一方の基板の上にコモン電極を、他方の基板の上にセグメント電極を設ける。これらの電極は、例えばITO電極とすることができ、所望の画像表示ができるようパターニングされる。次いで、各基板の上に、コモン電極とセグメント電極を被覆するようにして絶縁膜を設ける。絶縁膜は、例えば、ゾル-ゲル法によって形成されたSiO-TiOからなる膜とすることができる。
次に、各基板の上に、本実施の形態の液晶配向膜を形成する。次に、一方の基板に他方の基板を互いの配向膜面が対向するようにして重ね合わせ、周辺をシール材で接着する。シール材には、基板間隙を制御するために、通常、スペーサーを混入しておく。また、シール材を設けない面内部分にも、基板間隙制御用のスペーサーを散布しておくことが好ましい。シール材の一部には、外部から液晶を充填可能な開口部を設けておく。
【0085】
次に、シール材に設けた開口部を通じて、2枚の基板とシール材で包囲された空間内に液晶材料を注入する。その後、この開口部を接着剤で封止する。注入には、真空注入法を用いてもよいし、大気中で毛細管現象を利用した方法を用いてもよい。次に、偏光板の設置を行う。具体的には、2枚の基板の液晶層とは反対側の面に一対の偏光板を貼り付ける。以上の工程を経ることにより、本発明の液晶表示素子が得られる。この液晶表示素子は、液晶配向膜として本発明の液晶配向膜を使用していることから、残像特性に優れたものとなり、大画面で高精細の液晶テレビなどに好適に利用可能である。
【実施例
【0086】
以下に、本発明について実施例等を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、化合物、溶媒の略号は、以下のとおりである。
【0087】
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
GBL:γ-ブチロラクトン
BCS:ブチルセロソルブ
PB:プロピレングリコールモノブチルエーテル
IPA:イソプロパノール
DBOP:ジフェニル(2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-3-ベンゾオキサゾリル)ホスホナート
DA-1:下記構造式(DA-1)
DA-2:下記構造式(DA-2)
DA-3:下記構造式(DA-3)
DA-4:下記構造式(DA-4)
DA-5:下記構造式(DA-5)
DA-6:下記構造式(DA-6)
DA-7:下記構造式(DA-7)
DA-8:下記構造式(DA-8)
DA-9:下記構造式(DA-9)
CA-1:下記構造式(CA-1)
CA-2:下記構造式(CA-2)
CA-3:下記構造式(CA-3)
CA-4:下記構造式(CA-4)
CA-5:下記構造式(CA-5)
CA-6:下記構造式(CA-6)
AD-1:下記構造式(AD-1)
AD-2:下記構造式(AD-2)
AD-3:下記構造式(AD-3)
AD-4:下記構造式(AD-4)
AD-5:下記構造式(AD-5)
AD-6:下記構造式(AD-6)
【0088】
【化35】
【0089】
【化36】
【0090】
【化37】
【0091】
[粘度]
合成例において、重合体溶液の粘度は、E型粘度計TVE-22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL、コーンロータTE-1(1°34’、R24)、温度25℃で測定した。
【0092】
[ポリイミドのイミド化率の測定]
合成例におけるポリイミドのイミド化率は次のようにして測定した。ポリイミド粉末30mgをNMR(核磁気共鳴)サンプル管(NMRサンプリングチューブスタンダード,φ5(草野科学社製))に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6,0.05質量%TMS(テトラメチルシラン)混合品)(0.53ml)を添加し、超音波をかけて完全に溶解させた。この溶液をNMR測定機(JNW-ECA500)(日本電子データム社製)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5ppm~10.0ppm付近に現れるアミド酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い以下の式によって求めた。
イミド化率(%)=(1-α・x/y)×100
上記式において、xはアミド酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミド酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミド酸のNH基プロトン1個に対する基準プロトンの個数割合である。
【0093】
(合成例1)
撹拌装置及び窒素導入管付きの200mLの四つ口フラスコに、DA-1を11.2g(46.0mmol)量り取り、NMPを129g加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-1を8.38g(43.0mmol)添加し、さらにNMPを47.4g加え、窒素雰囲気下23℃で5時間撹拌してポリアミック酸の溶液(PAA-1)を得た。このポリアミック酸の溶液の温度25℃における粘度は154mPa・sであった。
【0094】
(合成例2)
撹拌装置及び窒素導入管付きの200mLの四つ口フラスコに、CA-2を9.97g(38.3mmol)投入した後、NMPを197g加えて撹拌して溶解させた。次いで、トリエチルアミンを12.1g(120mmol)、DA-2を5.06g(22.0mmol)、DA-3を1.79g(6.00mmol)、DA-4を4.09g(12.0mmol)加えて、撹拌して溶解させた。
この溶液を水冷下で撹拌しながら、DBOPを30.1g(78.6mmol)添加し、更にNMPを27.1g加え、室温で12時間撹拌してポリアミック酸エステルの溶液を得た。このポリアミック酸エステルの溶液の温度25℃における粘度は39.3mPa・sであった。
【0095】
このポリアミック酸エステル溶液を1700gのIPA中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄した後、温度100℃で減圧乾燥し、ポリアミック酸エステルの粉末を得た。
撹拌子の入った200mL三角フラスコに、このポリアミック酸エステルの粉末を16.0g分取し、NMPを117g加えて、50℃にて30時間攪拌して溶解させ、ポリアミック酸エステルの溶液(PAE-1)を得た。
【0096】
(合成例3)
撹拌装置付きおよび窒素導入管付きの500mLの四つ口フラスコにDA-1を7.32g(30.0mmol)、DA-5を23.9g(120mmol)取り、NMP、GBLをそれぞれ158g加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を水冷下で撹拌しながらCA-1を12.8g(65.0mmol)、NMP、GBLをそれぞれ40.0g加えて、窒素雰囲気下、23℃で3時間撹拌した。さらに、CA-3を16.3g(75.0mmol)、NMP、GBLをそれぞれ23.0g加え、50℃で15時間反応させポリアミック酸の溶液(PAA-2)を得た。このポリアミック酸の溶液の温度25℃における粘度は370mPa・sであった。
【0097】
(合成例4)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの1Lセパラブルフラスコに、DA-1を42.7g(175mmol)、 DA-4を59.7g(175mmol)取り、NMPを586g加えて、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながらCA-4を74.5g(332mmol)添加し、さらにNMPを230g加え、室温で24時間撹拌してポリアミック酸の溶液(PAA-3)を得た。このポリアミック酸の溶液の温度25℃における粘度は832mPa・sであった。
撹拌子の入った1L三角フラスコに、このポリアミック酸の溶液(PAA-3)を200g分取し、NMPを100g、無水酢酸を21.8g、ピリジンを2.81g加え、室温で30分間撹拌した後、60℃で3時間反応させた。この反応溶液を700gのメタノール中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄した後、温度60℃で減圧乾燥し、ポリイミドの粉末を得た。このポリイミドの粉末のイミド化率は、68%であった。
撹拌子の入った200mL三角フラスコに、このポリイミドの粉末を32.7g分取し、NMPを240g加えて、70℃にて20時間攪拌して溶解させ、ポリイミドの溶液(SPI-1)を得た。
【0098】
(合成例5)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100mL四つ口フラスコに、DA-2を7.14g(31.0mmol)取り、NMP、GBLをそれぞれ32g加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながらCA-5を2.33g(9.30mmol)、NMP、GBLをそれぞれ6.00g加えて、窒素雰囲気下、40℃で12時間撹拌した。さらに、CA-6を6.13g(20.8mmol)、NMP、GBLをそれぞれ6.00g加え、23℃で5時間撹拌してポリアミック酸の溶液(PAA-4)を得た。このポリアミック酸の溶液の温度25℃における粘度は787mPa・sであった。
【0099】
(合成例6)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100mL四つ口フラスコに、DA-1を1.37g(5.60mmol)、DA-6を0.908g(8.40mmol)、DA-7を2.17g(8.40mmol)、DA-8を2.23g(5.60mmol)取り、NMPを76.8g加えて、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながらCA-4を5.99g(26.7mmol)添加し、さらにNMPを16.1g加え、室温で24時間撹拌してポリアミック酸の溶液(PAA-5)を得た。このポリアミック酸の溶液の温度25℃における粘度は397mPa・sであった。
【0100】
(合成例7)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの500mL四つ口フラスコに、DA-5を15.9g(80.0mmol)、DA-3を5.96g(20.0mmol)取り、NMPを230g加えて、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を水冷下で撹拌しながらCA-1を4.41g(22.5mmol)添加し、NMPを12.3g加えて40℃で12時間撹拌した。さらに、CA-5を18.8g(75.0mmol)、NMPを13.2加え、50℃で10時間撹拌してポリアミック酸の溶液(PAA-6)を得た。このポリアミック酸の溶液の温度25℃における粘度は1405mPa・sであった。
【0101】
(合成例8)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの500mL四つ口フラスコに、DA-3を26.8g(89.8mmol)、DA-9を9.01g(60.0mmol)取り、NMPを290g加えて、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を水冷下で撹拌しながらCA-1を27.9g(142mmol)添加し、NMPを71.4g加えて23℃で2時間撹拌してポリアミック酸の溶液(PAA-7)を得た。このポリアミック酸の溶液の温度25℃における粘度は750mPa・sであった。
【0102】
(合成例9)
撹拌装置及び窒素導入管付きの200mLの四つ口フラスコに、DA-5を9.96g(50.0mmol)量り取り、NMPを132g加え、窒素を送りながら撹拌して溶解させた。このジアミン溶液を水冷下で撹拌しながら、CA-1を8.82g(45.0mmol)添加し、さらにNMPを36.0g加え、窒素雰囲気下23℃で5時間撹拌してポリアミック酸の溶液(PAA-8)を得た。このポリアミック酸の溶液の温度25℃における粘度は164mPa・sであった。
【0103】
(実施例1)
撹拌子の入った50mL三角フラスコに、合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA-1)を15.2g分取し、NMPを9.44g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を1.48g、AD-1を10質量%含むNMP溶液を0.357g、およびBCSを6.62g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(A-1)を得た。
【0104】
(実施例2)
撹拌子の入った50mL三角フラスコに、合成例2で得られたポリアミック酸エステル溶液(PAE-1)を7.30g分取し、NMPを3.18g、GBLを1.75g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を0.750g、AD-1を10質量%含むNMP溶液を0.422g、およびBCSを3.35g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(A-2)を得た。
【0105】
(実施例3)
撹拌子の入った50mL三角フラスコに、合成例2で得られたポリアミック酸エステル溶液(PAE-1)を7.30g分取し、NMPを3.24g、GBLを1.75g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を0.750g、AD-2を10質量%含むNMP溶液を0.362g、およびBCSを3.35g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(A-3)を得た。
【0106】
(実施例4)
撹拌子の入った50mL三角フラスコに、合成例2で得られたポリアミック酸エステル溶液(PAE-1)を7.30g分取し、NMPを3.00g、GBLを1.75g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を0.750g、AD-2を10質量%含むNMP溶液を0.596g、およびBCSを3.35g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(A-4)を得た。
【0107】
(実施例5)
撹拌子を入れた50mL三角フラスコに、合成例2で得られたポリイミド溶液(PAE-1)2.19g、合成例3で得られたポリアミック酸溶液(PAA-2)を4.51g分取し、NMPを3.79g、GBLを2.05g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を0.750g、AD-1を10質量%含むNMP溶液を0.100g、およびBCSを3.35g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(A-5)を得た。
【0108】
(実施例6)
撹拌子を入れた50mL三角フラスコに、合成例2で得られたポリイミド溶液(PAE-1)2.19g、合成例3で得られたポリアミック酸溶液(PAA-2)を4.51g分取し、NMPを3.69g、GBLを2.05g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を0.750g、AD-1を10質量%含むNMP溶液を0.210g、およびBCSを3.35g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(A-6)を得た。
【0109】
(実施例7)
撹拌子を入れた50mL三角フラスコに、合成例2で得られたポリイミド溶液(PAE-1)2.19g、合成例3で得られたポリアミック酸溶液(PAA-2)を4.51g分取し、NMPを3.72g、GBLを2.05g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を0.750g、AD-2を10質量%含むNMP溶液を0.180g、およびBCSを3.35g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(A-7)を得た。
【0110】
(実施例8)
撹拌子を入れた50mL三角フラスコに、合成例2で得られたポリイミド溶液(PAE-1)2.19g、合成例3で得られたポリアミック酸溶液(PAA-2)を4.51g分取し、NMPを3.54g、GBLを2.05g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を0.750g、AD-2を10質量%含むNMP溶液を0.360g、およびBCSを3.35g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(A-8)を得た。
【0111】
(実施例9)
撹拌子を入れた50mL三角フラスコに、合成例4で得られたポリイミド溶液(SPI-1)2.63g、合成例5で得られたポリアミック酸溶液(PAA-4)を4.62g分取し、NMPを3.32g、GBLを3.45g、AD-1を10質量%含むNMP溶液を0.297g、PBを3.60g加え、さらにAD-4を0.139g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(A-9)を得た。
【0112】
(実施例10)
撹拌子を入れた50mL三角フラスコに、合成例6で得られたポリアミック酸溶液(PAA-5)2.79g、合成例7で得られたポリアミック酸溶液(PAA-6)を3.60g取った。NMPを5.85g、AD-1を10質量%含むNMP溶液を0.450g、BCSを5.40g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(A-10)を得た。
【0113】
(実施例11)
撹拌子を入れた50mL三角フラスコに、合成例6で得られたポリアミック酸溶液(PAA-5)9.97g、合成例8で得られたポリアミック酸溶液(PAA-7)を7.43g取った。NMPを7.29g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を2.20g、AD-3を10質量%含むNMP溶液を1.10g、BCSを12.0g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(A-11)を得た。
【0114】
(比較例1)
撹拌子の入った50mL三角フラスコに、合成例1で得られたポリアミック酸溶液(PAA-1)を15.2g分取し、NMPを9.80g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を1.48g、およびBCSを6.62g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(B-1)を得た。
【0115】
(比較例2)
撹拌子の入った50mL三角フラスコに、合成例9で得られたポリアミック酸溶液(PAA-8)を15.2g分取し、NMPを10.2g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を1.58g、AD-1を10質量%含むNMP溶液を0.316g、およびBCSを7.04g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(B-2)を得た。
【0116】
(比較例3)
撹拌子の入った50mL三角フラスコに、合成例2で得られたポリアミック酸エステル溶液(PAE-1)を7.72g分取し、NMPを3.18g、GBLを1.75g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を0.750g、およびBCSを3.35g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(B-3)を得た。
【0117】
(比較例4)
撹拌子を入れた50mL三角フラスコに、合成例2で得られたポリイミド溶液(PAE-1)2.19g、合成例3で得られたポリアミック酸溶液(PAA-2)を4.51g分取し、NMPを3.89g、GBLを2.05g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を0.750g、およびBCSを3.35g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(B-4)を得た。
【0118】
(比較例5)
撹拌子を入れた50mL三角フラスコに、合成例2で得られたポリイミド溶液(PAE-1)2.19g、合成例3で得られたポリアミック酸溶液(PAA-2)を4.51g分取し、NMPを3.64g、GBLを2.05g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を0.750g、AD-5を10質量%含むNMP溶液を0.260g、およびBCSを3.35g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(B-5)を得た。
【0119】
(比較例6)
撹拌子を入れた50mL三角フラスコに、合成例2で得られたポリイミド溶液(PAE-1)2.19g、合成例3で得られたポリアミック酸溶液(PAA-2)を4.51g分取し、NMPを3.60g、GBLを2.05g、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランを1質量%含むNMP溶液を0.750g、AD-6を10質量%含むNMP溶液を0.300g、およびBCSを3.35g加え、マグネチックスターラーで2時間撹拌して、液晶配向剤(B-6)を得た。
【0120】
(実施例12)
実施例1で得られた液晶配向剤(A-1)を、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過した後、全面にITO電極が付いたガラス基板のITO面にスピンコートし、80℃のホットプレート上で2分間乾燥させた。その後、230℃のIR式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させて液晶配向膜付き基板を得た。
【0121】
<鉛筆硬度の評価>
得られた液晶配向膜付き基板をこの基板を鉛筆硬度試験法(JIS K5400)で測定した結果、2Hであり良好であった。
以下に、液晶配向性を評価するための液晶セルの作製方法を示す。
FFS方式の液晶表示素子の構成を備えた液晶セルを作製する。初めに、電極付きの基板を準備した。基板は、30mm×35mmの大きさで、厚さが0.7mmのガラス基板である。基板上には第1層目として対向電極を構成する、IZO電極が全面に形成されている。第1層目の対向電極の上には、第2層目として、CVD法により成膜されたSiN(窒化珪素)膜が形成されている。第2層目のSiN膜の膜厚は500nmであり、層間絶縁膜として機能する。第2層目のSiN膜の上には、第3層目として、IZO膜をパターニングして形成された櫛歯状の画素電極が配置され、第1画素及び第2画素の2つの画素を形成している。各画素のサイズは、縦10mm、横約5mmである。このとき、第1層目の対向電極と第3層目の画素電極とは、第2層目のSiN膜の作用により、電気的に絶縁されている。
【0122】
第3層目の画素電極は、中央部分が屈曲した、くの字形状の電極要素を複数配列して構成された、櫛歯状の形状を有する。各電極要素の短手方向の幅は3μmであり、電極要素間の間隔は6μmである。各画素を形成する画素電極が、中央部分の屈曲した、くの字形状の電極要素を複数配列して構成されているため、各画素の形状は長方形状ではなく、電極要素と同様に中央部分で屈曲する、太字の、くの字に似た形状を備える。そして、各画素は、その中央の屈曲部分を境にして上下に分割され、屈曲部分の上側の第1領域と下側の第2領域を有する。
【0123】
各画素の第1領域と第2領域とを比較すると、それらを構成する画素電極の電極要素の形成方向が異なるものとなっている。すなわち、後述する液晶配向膜のラビング方向を基準とした場合、画素の第1領域では、画素電極の電極要素が+10°の角度(時計回り)をなすように形成され、画素の第2領域では、画素電極の電極要素が-10°の角度(時計回り)をなすように形成されている。すなわち、各画素の第1領域と第2領域とでは、画素電極と対向電極との間の電圧印加によって誘起される液晶の、基板面内での回転動作(インプレーン・スイッチング)の方向が、互いに逆方向となるように構成されている。
【0124】
次に、実施例1で得られた液晶配向剤(A-1)を、1.0μmのフィルターで濾過した後、準備された上記電極付き基板に、スピンコート塗布にて塗布した。80℃のホットプレート上で2分間乾燥させた後、230℃の熱風循環式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚60nmのポリイミド膜を得た。このポリイミド膜をレーヨン布でラビング(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:500rpm、移動速度:30mm/sec、押し込み長:0.3mm、ラビング方向:3層目IZO櫛歯電極に対して10°傾いた方向)した後、純水中にて1分間超音波照射をして洗浄を行い、エアブローにて水滴を除去した。その後、80℃で15分間乾燥して、液晶配向膜付き基板を得た。また、対向基板として、裏面にITO電極が形成されている、高さ4μmの柱状スペーサーを有するガラス基板にも、上記と同様にしてポリイミド膜を形成し、上記と同様の手順で、配向処理が施された液晶配向膜付き基板を得た。これら2枚の液晶配向膜付き基板を1組とし、基板上に液晶注入口を残した形でシール剤を印刷し、もう1枚の基板を、液晶配向膜面が向き合い、ラビング方向が逆平行になるようにして張り合わせた。その後、シール剤を硬化させて、セルギャップが4μmの空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC-7026-100(メルク社製)を注入し、注入口を封止して、FFS方式の液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを120℃で1時間加熱し、23℃で一晩放置してから液晶配向性の評価に使用した。
【0125】
<液晶配向性の評価>
この液晶セルを用い、60℃の恒温環境下、周波数30Hzで10VPPの交流電圧を168時間印加した。その後、液晶セルの画素電極と対向電極との間を短絡させた状態にし、そのまま室温に一日放置した。
放置の後、液晶セルを偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に設置し、電圧無印加の状態でバックライトを点灯させておき、透過光の輝度が最も小さくなるように液晶セルの配置角度を調整した。そして、第1画素の第2領域が最も暗くなる角度から第1領域が最も暗くなる角度まで液晶セルを回転させたときの回転角度を角度Δとして算出した。第2画素でも同様に、第2領域と第1領域とを比較し、同様の角度Δを算出した。そして、第1画素と第2画素の角度Δ値の平均値を液晶セルの角度Δとして算出した。この液晶セルの角度Δの値が0.6度を越える場合には、「不良」と定義し評価した。この液晶セルの角度Δの値が0.6度を越えない場合には、「良好」と定義し評価した。
また、上記のように処理を行った液晶セルにて液晶配向性の評価を行ったところ、Δは0.10°であり良好であった。
【0126】
(実施例13)
実施例2で得られた液晶配向剤(A-2)を用いた以外は、実施例12と同様の方法で鉛筆硬度を評価した結果、2Hであり良好であった。
また、実施例12と同様の方法で液晶配向性の評価を行ったところ、Δは0.15°であり良好であった。
【0127】
(実施例14)
実施例3で得られた液晶配向剤(A-3)を用いた以外は、実施例12と同様の方法で鉛筆硬度を評価した結果、2Hであり良好であった。
また、実施例12と同様の方法で液晶配向性の評価を行ったところ、Δは0.13°であり良好であった。
【0128】
(実施例15)
実施例4で得られた液晶配向剤(A-4)を用いた以外は、実施例12と同様の方法で鉛筆硬度を評価した結果、3Hであり良好であった。
また、実施例12と同様の方法で液晶配向性の評価を行ったところ、Δは0.17°であり良好であった。
【0129】
(実施例16)
実施例5で得られた液晶配向剤(A-5)を用いた以外は、実施例12と同様の方法で鉛筆硬度を評価した結果、2Hであり良好であった。
また、実施例12と同様の方法で液晶配向性の評価を行ったところ、Δは0.41°であり良好であった。
【0130】
(実施例17)
実施例6で得られた液晶配向剤(A-6)を用いた以外は、実施例12と同様の方法で鉛筆硬度を評価した結果、3Hであり良好であった。
また、実施例12と同様の方法で液晶配向性の評価を行ったところ、Δは0.45°であり良好であった。
【0131】
(実施例18)
実施例7で得られた液晶配向剤(A-7)を用いた以外は、実施例12と同様の方法で鉛筆硬度を評価した結果、2Hであり良好であった。
また、実施例12と同様の方法で液晶配向性の評価を行ったところ、Δは0.43°であり良好であった。
【0132】
(実施例19)
実施例8で得られた液晶配向剤(A-8)を用いた以外は、実施例12と同様の方法で鉛筆硬度を評価した結果、3Hであり良好であった。
また、実施例12と同様の方法で液晶配向性の評価を行ったところ、Δは0.49°であり良好であった。
【0133】
(実施例20)
実施例9で得られた液晶配向剤(A-9)を、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過した後、全面にITO電極が付いたガラス基板のITO面にスピンコートし、温度80℃のホットプレート上で2分間乾燥させた。その後、温度230℃の熱風循環式オーブンで20分間の焼成を経て、膜厚110nmのイミド化した膜を得た。焼成膜に対して、偏光板を介した254nmの紫外線を200mJ/cm照射を行った。その後IPA/水=1:1混合溶媒で5分間基板洗浄し、さらに230℃の熱風循環式オーブンで20分間焼成を行った。これにより、液晶配向膜付き基板を得た。
実施例12と同様に鉛筆硬度を評価した結果、2Hであり良好であった。
【0134】
実施例9で得られた液晶配向剤(A-9)を1.0μmのフィルターで濾過した後、実施例12に記載の電極付き基板上にスピンコートし、温度80℃のホットプレート上で2分間乾燥させた。その後、温度230℃の熱風循環式オーブンで20分間の焼成を経て、膜厚110nmのイミド化した膜を得た。焼成膜に対して、偏光板を介した254nmの紫外線を200mJ/cm照射を行った。その後IPA/水=1:1混合溶媒で5分間基板洗浄し、さらに230℃の熱風循環式オーブンで20分間焼成を行った。これにより、液晶配向膜付き基板を得た。
【0135】
あとは実施例12に記載と同様に、上記液晶配向膜付き基板を2枚用意しセルギャップが4μmの空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC-7026-100(メルク社製)を注入し、注入口を封止して、FFS方式の液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを120℃で1時間加熱し、23℃で一晩放置してから液晶配向性の評価に使用した。
実施例12と同様の方法で液晶配向性の評価を行ったところ、Δは0.10°であり良好であった。
【0136】
(実施例21)
実施例10で得られた液晶配向剤(A-10)を、細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過した後、全面にITO電極が付いたガラス基板のITO面にスピンコートし、温度80℃のホットプレート上で2分間乾燥させた。その後、温度230℃の熱風循環式オーブンで30分間の焼成を経て、膜厚100nmのイミド化した膜を得た。焼成膜に対して、偏光板を介した254nmの紫外線を150mJ/cm照射を行った。その後さらに230℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行った。これにより、液晶配向膜付き基板を得た。
実施例12と同様に鉛筆硬度を評価した結果、4Hであり良好であった。
【0137】
実施例10で得られた液晶配向剤(A-10)を1.0μmのフィルターで濾過した後、実施例11に記載の電極付き基板上にスピンコートし、温度80℃のホットプレート上で2分間乾燥させた。その後、温度230℃の熱風循環式オーブンで30分間の焼成を経て、膜厚100nmのイミド化した膜を得た。焼成膜に対して、偏光板を介した254nmの紫外線を150mJ/cm照射を行った。その後さらに230℃の熱風循環式オーブンで30分間焼成を行った。これにより、液晶配向膜付き基板を得た。
【0138】
あとは実施例12に記載と同様に、上記液晶配向膜付き基板を2枚用意しセルギャップが4μmの空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC-7026-100(メルク社製)を注入し、注入口を封止して、FFS方式の液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを120℃で1時間加熱し、23℃で一晩放置してから液晶配向性の評価に使用した。
実施例12と同様の方法で液晶配向性の評価を行ったところ、Δは0.21°であり良好であった。
【0139】
(実施例22)
実施例11で得られた液晶配向剤(A-11)を用いた以外は、実施例21と同様の方法で鉛筆硬度を評価した結果、4Hであり良好であった。
また、実施例21と同様の方法で液晶配向性の評価を行ったところ、Δは0.13°であり良好であった。
【0140】
(比較例7)
比較例1で得られた液晶配向剤(B-1)を用いた以外は、実施例12と同様の方法で鉛筆硬度を評価した結果、Hであり不良であった。
また、実施例12と同様の方法で液晶配向性の評価を行ったところ、Δは0.05°であり良好であった。
【0141】
(比較例8)
比較例2で得られた液晶配向剤(B-2)を用いた以外は、実施例12と同様の方法で鉛筆硬度を評価した結果、2Hであり良好であった。
また、実施例12と同様の方法で液晶配向性の評価を行ったところ、Δは1.5°であり不良であった。
【0142】
(比較例9)
比較例3で得られた液晶配向剤(B-3)を用いた以外は、実施例12と同様の方法で鉛筆硬度を評価した結果、Fであり不良であった。
また、実施例12と同様の方法で液晶配向性の評価を行ったところ、Δは0.11°であり良好であった。
【0143】
(比較例10)
比較例4で得られた液晶配向剤(B-4)を用いた以外は、実施例12と同様の方法で鉛筆硬度を評価した結果、HBであり不良であった。
また、実施例12と同様の方法で液晶配向性の評価を行ったところ、Δは0.45°であり良好であった。
【0144】
(比較例11)
比較例5で得られた液晶配向剤(B-5)を用いた以外は、実施例12と同様の方法で鉛筆硬度を評価した結果、2Hであり良好であった。
また、実施例12と同様の方法で液晶配向性の評価を行ったところ、Δは0.86°であり不良であった。
【0145】
(比較例12)
比較例4で得られた液晶配向剤(B-6)を用いた以外は、実施例12と同様の方法で鉛筆硬度を評価した結果、2Hであり良好であった。
また、実施例12と同様の方法で液晶配向性の評価を行ったところ、Δは0.65°であり不良であった。
表1に、実施例および比較例で得られた液晶配向剤を用いた際の、鉛筆硬度の評価、および液晶配向性の評価の結果を示す。
【0146】
【表1】