(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】ホログラム媒体
(51)【国際特許分類】
G03H 1/02 20060101AFI20220118BHJP
C08F 230/08 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
G03H1/02
C08F230/08
(21)【出願番号】P 2020521546
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 KR2019011714
(87)【国際公開番号】W WO2020055096
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】10-2018-0110419
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ホン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ソクフン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】セ・ヒョン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ヨンレ・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ジンソク・ビョン
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/195586(WO,A1)
【文献】特開平08-101499(JP,A)
【文献】特開2014-026116(JP,A)
【文献】特開2009-205137(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2014-0107138(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03H 1/02
C08F 230/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラン系官能基が主鎖または分枝鎖に位置する高分子樹脂を含
む基材を含み、
前記高分子樹脂は、シラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート系(共)重合体およびシラン架橋剤を含む高分子マトリックスと;光反応性単量体と;の間の硬化物を含み、
前記基材は、エーテル基、エステル基およびアミド基からなる群より選ばれた1種以上の官能基および2以上のジフルオロメチレン基を含むフッ素系化合物を含み、
前
記基材の少なくとも一面には微細パターンが形成され
た、ホログラム媒体。
【請求項2】
前記微細パターンは、前
記基材の断面を基準に高さの極大値と高さの極小値が交互に繰り返される2以上の微細突起を含む形状を有し、
前記一つの微細突起の高さの極大値とそれと隣り合う微細突起の高さの極小値との間の前
記基材の断面方向に対する距離の標準誤差が20nm以下である、請求項1に記載のホログラム媒体。
【請求項3】
前記一つの微細突起の高さの極大値とそれと隣り合う微細突起の高さの極小値との間の前
記基材の断面方向に対する距離は、0.2μm~2μmである、請求項2に記載のホログラム媒体。
【請求項4】
前記一つの微細突起の高さの極大値とそれと隣り合う微細突起の高さの極小値との間の差である振幅(Amplitude)が5~50nmである、請求項2または3に記載のホログラム媒体。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレート系(共)重合体中の前記シラン系官能基の当量が300g/個~2000g/個である、請求項
1から4のいずれか一項に記載のホログラム媒体。
【請求項6】
前記高分子マトリックスは、(メタ)アクリレート系(共)重合体100重量部に対して前記シラン架橋剤10重量部~90重量部を含む、請求項
1から5のいずれか一項に記載のホログラム媒体。
【請求項7】
前記シラン架橋剤は、重量平均分子量が100~2000である線状のポリエーテル主鎖および前記主鎖の末端または分枝鎖で結合したシラン系官能基を含む、請求項
1から
6のいずれか一項に記載のホログラム媒体。
【請求項8】
前記シラン系官能基とポリエーテル主鎖の結合は、ウレタン結合を媒介とする、請求項
7に記載のホログラム媒体。
【請求項9】
前記シラン架橋剤に含まれたシラン系官能基の当量が200g/個~1000g/個である、請求項
1から
8のいずれか一項に記載のホログラム媒体。
【請求項10】
前記光反応性単量体は、多官能(メタ)アクリレート単量体または単官能(メタ)アクリレート単量体を含む、請求項
1から
9のいずれか一項に記載のホログラム媒体。
【請求項11】
前記光反応性単量体の屈折率が1.5以上である、請求項
1から
10のいずれか一項に記載のホログラム媒体。
【請求項12】
前記フッ素系化合物は、屈折率が1.45未満である、請求項
1から11のいずれか一項に記載のホログラム媒体。
【請求項13】
前記高分子マトリックスの屈折率が、1.46~1.53である、請求項
1から
12のいずれか一項に記載のホログラム媒体。
【請求項14】
請求項1から
13のいずれか一項に記載のホログラム媒体を含む、光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム媒体および光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラム(hologram)記録メディアは、露光過程により前記メディア内ホログラフィック記録層内の屈折率を変化させることによって情報を記録し、このように記録されたメディア内の屈折率の変化を判読して情報を再生する。
【0003】
フォトポリマー(感光性樹脂、photopolymer)を用いる場合、低分子単量体の光重合によって光干渉パターンをホログラムとして容易に保存できるため、光学レンズ、鏡、偏向鏡、フィルタ、拡散スクリーン、回折部材、導光体、導波管、映写スクリーンおよび/またはマスクの機能を有するホログラフィック光学素子、光メモリシステムの媒質と光拡散板、光波長分割器、反射型、透過型カラーフィルタなど多様な分野に用いられる。
【0004】
通常、ホログラム製造用フォトポリマー組成物は、高分子バインダ、単量体および光開始剤を含み、このような組成物から製造された感光性フィルムに対してレーザ干渉光を照射して局部的な単量体の光重合を誘導する。
【0005】
このような光重合過程で単量体が相対的に多く存在する部分では屈折率が高くなり、高分子バインダが相対的に多く存在する部分では屈折率が相対的に低くなり、屈折率変調が生じ、このような屈折率変調により回折格子が生成される。屈折率変調値nは、フォトポリマー層の厚さと回折効率(DE)に影響を受け、角度選択性は厚さが薄いほど広くなる。
【0006】
最近では、高い回折効率と安定的にホログラムを維持できる材料の開発に対する要求と共に、薄い厚さを有しながらも屈折率変調値が大きいフォトポリマー層の製造のための多様な試みが行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、薄い厚さの範囲でもより高い屈折率変調値および高い回折効率を実現することができるホログラム媒体を提供する。
【0008】
また、本発明は、ホログラム媒体を含む光学素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書では、シラン系官能基が主鎖または分枝鎖に位置する高分子樹脂を含む高分子基材を含み、前記高分子基材の少なくとも一面には微細パターンが形成されるホログラム媒体が提供される。
【0010】
また、本明細書においては、前記ホログラム媒体を含む光学素子が提供される。
【0011】
以下、発明の具体的な実施形態によるホログラム媒体および光学素子についてより詳細に説明する。
【0012】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、メタクリレートまたはアクリレートを意味する。
【0013】
本明細書において、(共)重合体は、単独重合体または共重合体(ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体を含む)を意味する。
【0014】
また、本明細書において、ホログラム(hologram)は、露光過程により全体可視範囲および近紫外線範囲(300~800nm)における光学的情報が記録された記録メディアを意味し、例えばインライン(ガボール(Gabor))ホログラム、オフアクシス(off-axis)ホログラム、全開口(full-aperture)トランスファーホログラム、白色光透過ホログラム(「レインボーホログラム」)、デニシュク(Denisyuk)ホログラム、オフアクシス反射ホログラム、エッジリテラチャー(edge-literature)ホログラムまたはホログラフィーステレオグラム(stereogram)などの視覚的ホログラム(visual hologram)をすべて含む。
【0015】
本明細書において、アルキル基は直鎖または分枝鎖であり得、炭素数は特に限定されないが1~40であることが好ましい。一実施状態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~20である。他の一つの実施状態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。他の一つの実施状態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これに限定されない。
【0016】
本明細書において、アルキレン基は、アルカン(alkane)に由来した2価の官能基であり、例えば、直鎖状、分枝状または環状としてメチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基などが挙げられる。
【0017】
発明の一実施形態によれば、シラン系官能基が主鎖または分枝鎖に位置する高分子樹脂を含む高分子基材を含み、前記高分子基材の少なくとも一面には微細パターンが形成されるホログラム媒体が提供されることができる。
【0018】
前記シラン系官能基が主鎖または分枝鎖に位置する高分子樹脂を含むフォトポリマー組成物から形成される高分子基材では、可干渉性のレーザなどの光または電磁放射線を用いたホログラムの記録過程で光反応性単量体の拡散(diffusion)が均一に起き、これにより高分子基材の硬化収縮も均一に発生する。
【0019】
そのために、前記均一に発生した高分子基材の硬化収縮によって、前記高分子基材の少なくとも一面には微細パターンが均一でかつ規則的に形成されるが、このようなホログラム媒体は高い回折効率を実現することができる。
【0020】
また、前記実施形態のホログラム媒体は、シラン系官能基が主鎖または分枝鎖に位置する高分子樹脂を含む高分子基材を含み、従来に知られているホログラムに比べて大きく向上した屈折率変調値および優れた温度、湿度に対する耐久性を実現することができる。
【0021】
前記微細パターンは、前記高分子基材の断面を基準に高さの極大値と高さの極小値が交互に繰り返される2以上の微細突起を含む形状を有することができる。
【0022】
前記一つの微細突起の高さの極大値とそれと隣り合う微細突起の高さの極小値との間の前記高分子基材の断面方向に対する距離の標準誤差が20nm以下、または1~20nmであり得る。
【0023】
前記一つの微細突起の高さの極大値とそれと隣り合う微細突起の高さの極小値との間の前記高分子基材の断面方向に対する距離の標準誤差が20nm以下であることによって、前記ホログラム媒体はよりイメージの鮮明度を有するかより高い回折効率を有することができる。
【0024】
これとは異なり、前記一つの微細突起の高さの極大値とそれと隣り合う微細突起の高さの極小値との間の前記高分子基材の断面方向に対する距離の標準誤差が、前記範囲より高い場合には前記ホログラム媒体でイメージ歪曲現象が発生するか、回折される光の追加的な散乱または干渉が発生し得、回折効率も低下し得る。
【0025】
前記一つの微細突起の高さの極大値とそれと隣り合う微細突起の高さの極小値との間の前記高分子基材の断面方向に対する距離の標準誤差は、下記一般式1で定義され得る。
【0026】
【0027】
前記一般式1において、SEは標準誤差であり、σは標準偏差であり、nは個数である。
【0028】
また、前記一つの微細突起の高さの極大値とそれと隣り合う微細突起の高さの極小値との間の前記高分子基材の断面方向に対する距離の標準誤差は、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope)で測定された前記ホログラム媒体の表面形状のラインプロファイルで隣接する極小値と極大値どうしの標本平均分布の標準偏差で求めることができる。
【0029】
一方、前記一つの微細突起の高さの極大値とそれと隣り合う微細突起の高さの極小値との間の前記高分子基材の断面方向に対する距離は、0.2μm~2μm、または0.3μm~1μmであり得る。
【0030】
また、前記一つの微細突起の高さの極大値とそれと隣り合う微細突起の高さの極小値との間の差である振幅(Amplitude)は、5~50nmであり得る。
【0031】
前述したように、前記高分子基材は、シラン系官能基が主鎖または分枝鎖に位置する高分子樹脂を含み得る。前記高分子樹脂の例は大きく限定されるものではないが、具体的にはシラン系官能基が主鎖または分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート系(共)重合体が挙げられる。
【0032】
より具体的には、前記高分子基材は、シラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート系(共)重合体およびシラン架橋剤を含む高分子マトリックスと;光反応性単量体と;の間の架橋結合物を含み得る。
【0033】
シラン系官能基を含む変性(メタ)アクリレート系(共)重合体と末端のシラン系官能基を含むシラン架橋剤との間にはゾルゲル反応によりシロキサン結合を媒介とする架橋構造を容易に導入することができ、このようなシロキサン結合により温度と湿度に対して優れた耐久性を確保することができる。
【0034】
また、前述したように、ホログラムの記録過程で光反応性単量体の拡散(diffusion)と高分子基材の硬化収縮が均一に起きることができ、これにより、高分子基材の硬化収縮も均一に発生する。そのために、前記均一に発生した高分子基材の硬化収縮によって、前記高分子基材の少なくとも一面には微細パターンが均一でかつ規則的に形成され、これにより、前記実施形態のホログラム媒体は高い回折効率を実現することができる。
【0035】
前記高分子マトリックス上で上述したシラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート系(共)重合体とシラン架橋剤はそれぞれ別個の成分で存在することができ、また、これらが互いに反応して形成される複合体の形態で存在することもできる。
【0036】
前記(メタ)アクリレート系(共)重合体でシラン系官能基が分枝鎖に位置し得る。前記シラン系官能基は、シラン官能基またはアルコキシシラン官能基を含み得、好ましくはアルコキシシラン官能基としてトリメトキシシラン基を使用することができる。
【0037】
前記シラン系官能基は、前記シラン架橋剤に含まれたシラン系官能基とゾルゲル反応によりシロキサン結合を形成して前記(メタ)アクリレート系(共)重合体とシラン架橋剤を架橋させることができる。
【0038】
一方、前記シラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート系(共)重合体はシラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート繰り返し単位および(メタ)アクリレート繰り返し単位を含み得る。
【0039】
前記シラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート繰り返し単位の例としては、下記化学式1で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0040】
【0041】
前記化学式1において、R1~R3はそれぞれ独立して炭素数1~10のアルキル基であり、R4は水素または炭素数1~10のアルキル基であり、R5は炭素数1~10のアルキレン基である。
【0042】
好ましくは前記化学式1において、R1~R3はそれぞれ独立して炭素数1のメチル基であり、R4は炭素数1のメチル基であり、R5は炭素数3のプロピレン基である3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(3-Methacryloxypropyltrimethoxysilane)(KBM-503)由来の繰り返し単位またはR1~R3はそれぞれ独立して炭素数1のメチル基であり、R4は水素であり、R5は炭素数3のプロピレン基である3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(3-Acryloxypropyltrimethoxysilane)(KBM-5103)由来の繰り返し単位であり得る。
【0043】
また、前記(メタ)アクリレート繰り返し単位の例としては、下記化学式2で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0044】
【0045】
前記化学式2において、R6は炭素数1~20のアルキル基であり、R7は水素または炭素数1~10のアルキル基であり、好ましくは前記化学式2において、R6は炭素数4のブチル基であり、R7は水素であるブチルアクリレート由来の繰り返し単位であり得る。
【0046】
前記化学式2の繰り返し単位:前記化学式1の繰り返し単位間のモル比は0.5:1~14:1であり得る。前記化学式1の繰り返し単位モル比が過度に減少すると、マトリックスの架橋密度が過度に低くなり、支持体としての役割をすることができず記録後の記録特性の減少が発生し得、前記化学式1の繰り返し単位モル比が過度に増加すると、マトリックスの架橋密度が過度に高くなり、各成分の流動性が低下することによって屈折率変調値の減少が発生し得る。
【0047】
前記(メタ)アクリレート系(共)重合体の重量平均分子量(GPC測定)は、100,000~5,000,000、または300,000~900,000であり得る。重量平均分子量はGPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(単位:g/mol)を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られている分析装置と示差屈折検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを用いることができ、通常適用される温度条件、溶媒、流量(flow rate)を適用することができる。前記測定条件の具体的な例として、30℃の温度、クロロホルム溶媒(Chloroform)および1mL/minの流量(flow rate)が挙げられる。
【0048】
一方、前記シラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート系(共)重合体は、前記シラン系官能基の当量が300g/個~2000g/個、または500g/個~2000g/個、または550g/個~1800g/個、または580g/個~1600g/個、または586g/個~1562g/個であり得る。前記当量はシラン官能基の間の分子量の平均値を意味し、前記当量値が小さいほど官能基の密度が高く、前記当量値が大きいほど官能基密度が小さくなる。
【0049】
これにより、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体とシラン架橋剤との間の架橋密度が最適化され、既存のマトリックスに比べて温度と湿度に対して優れた耐久性を確保することができる。のみならず、上述した架橋密度の最適化により、高い屈折率を有する光反応性単量体と低い屈折率を有する成分との間の流動性(mobility)を高めることで屈折率変調を最大化させて記録特性が向上することができる。
【0050】
前記シラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート系(共)重合体に含まれた前記シラン系官能基の当量が300g/個未満で過度に減少すると、マトリックスの架橋密度が過度に高くなり、成分の流動性を阻害し、それによって記録特性の減少が発生し得る。
【0051】
また、前記シラン系官能基が分枝鎖に位置する(メタ)アクリレート系(共)重合体に含まれた前記シラン系官能基の当量が2000g/個超過で過度に増加すると、架橋密度が過度に低く、支持体としての役割をすることができず、記録後生成された回折格子の境界面が崩れて屈折率変調値が時間が経つにつれて減少し得る。
【0052】
一方、前記シラン架橋剤は、分子当たり平均1個以上のシラン系官能基を有する化合物またはその混合物であり得、前記1以上のシラン系官能基を含む化合物であり得る。前記シラン系官能基は、シラン官能基またはアルコキシシラン官能基を含み得、好ましくはアルコキシシラン官能基としてトリエトキシシラン基を使用することができる。前記シラン系官能基は、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体に含まれたシラン系官能基とゾルゲル反応によりシロキサン結合を形成して前記(メタ)アクリレート系(共)重合体とシラン架橋剤を架橋させることができる。
【0053】
この時、前記シラン架橋剤は、前記シラン系官能基の当量が200g/個~1000g/個であり得る。これにより、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体とシラン架橋剤との間の架橋密度が最適化され、既存のマトリックスに比べて温度と湿度に対して優れた耐久性を確保することができる。のみならず、上述した架橋密度の最適化により、高い屈折率を有する光反応性単量体と低い屈折率を有する成分との間の流動性(mobility)を高めることで屈折率変調を最大化させて記録特性が向上することができる。
【0054】
前記シラン架橋剤に含まれた前記シラン系官能基の当量が1000g/個以上で過度に増加すると、マトリックスの架橋密度の低下によって記録後の回折格子の境界面が崩れ、緩い架橋密度および低いガラス転移温度によって単量体および可塑剤成分が表面に溶出してヘイズを発生させ得る。前記シラン架橋剤に含まれた前記シラン系官能基の当量が200g/個未満で過度に減少すると、架橋密度が過度に高くなりモノマーと可塑剤成分の流動性を阻害し、それによって記録特性が顕著に低くなる問題が発生し得る。
【0055】
より具体的には、前記シラン架橋剤は、重量平均分子量が100~2000、または300~1000、または300~700である線状のポリエーテル主鎖および前記主鎖の末端または分枝鎖で結合したシラン系官能基を含み得る。
【0056】
前記重量平均分子量が100~2000である線状のポリエーテル主鎖は、下記化学式3で表される繰り返し単位を含み得る。
【0057】
[化学式3]
-(R8O)n-R8-
【0058】
前記化学式3において、R8は炭素数1~10のアルキレン基であり、nは1以上、または1~50、または5~20、または8~10の整数である。
【0059】
前記シラン架橋剤が柔軟なポリエーテルポリオールを主鎖として導入することによってマトリックスのガラス転移温度および架橋密度の調節により成分の流動性を向上させることができる。
【0060】
一方、前記シラン系官能基とポリエーテル主鎖の結合は、ウレタン結合を媒介とすることができる。具体的には、前記シラン系官能基とポリエーテル主鎖はウレタン結合により相互間結合を形成することができ、より具体的には前記シラン系官能基に含まれたケイ素原子がウレタン結合の窒素原子と直接または炭素数1~10のアルキレン基を媒介として結合し、前記ポリエーテル主鎖に含まれたR8官能基がウレタン結合の酸素原子と直接結合することができる。
【0061】
このように前記シラン系官能基とポリエーテル主鎖がウレタン結合を媒介として結合することは、前記シラン架橋剤がシラン系官能基を含むイソシアネート化合物と重量平均分子量が100~2000である線状のポリエーテルポリオール化合物間の反応により製造された反応生成物であるからである。
【0062】
より具体的には、前記イソシアネート化合物は、脂肪族、脂環式、芳香族または芳香脂肪族のモノ-イソシアネートジ-イソシアネート、トリ-イソシアネートまたはポリ-イソシアネート;またはウレタン、ウレア、カルボジイミド、アシルウレア、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、オキサジアジントリオン、ウレトジオンまたはイミノオキサジアジンジオン構造を有するジ-イソシアネートまたはトリイソシアネートのオリゴ-イソシアネートまたはポリ-イソシアネート;を含み得る。
【0063】
前記シラン系官能基を含むイソシアネート化合物の具体的な例としては、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0064】
また、前記ポリエーテルポリオールは、例えばスチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリンの多重添加生成物とこれらの混合添加生成物およびグラフト生成物、そして多価アルコールまたはこれらの混合物の縮合によって収得されるポリエーテルポリオールおよび多価アルコール、アミンおよびアミノアルコールのアルコキシ化によって収得されるものである。
【0065】
前記ポリエーテルポリオールの具体的な例としては1.5~6のOH官能度および200~18000g/モルの間の数平均分子量、好ましくは1.8~4.0のOH官能度および600~8000g/モルの数平均分子量、特に好ましくは1.9~3.1のOH官能度および650~4500g/モルの数平均分子量を有するランダムまたはブロック共重合体形態のポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド)およびこれらの組み合わせ、またはポリ(テトラヒドロフラン)およびこれらの混合物である。
【0066】
このように、前記シラン系官能基とポリエーテル主鎖がウレタン結合を媒介として結合する場合、より容易にシラン架橋剤を合成することができる。
【0067】
前記シラン架橋剤の重量平均分子量(GPC測定)は、1000~5,000,000であり得る。重量平均分子量はGPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(単位:g/mol)を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られている分析装置と示差屈折検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを用い得、通常適用される温度条件、溶媒、流量(flow rate)を適用することができる。前記測定条件の具体的な例として、30℃の温度、クロロホルム溶媒(Chloroform)および1mL/minの流量(flow rate)が挙げられる。
【0068】
一方、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体100重量部に対して、前記シラン架橋剤の含有量が10重量部~90重量部、または20重量部~70重量部、または22重量部~65重量部であり得る。
【0069】
前記反応生成物において、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体100重量部に対して前記シラン架橋剤の含有量が過度に減少すると、マトリックスの硬化速度が顕著に遅くなり、支持体としての機能を失って記録後の回折格子の境界面が簡単に崩れ、前記反応生成物において、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体100重量部に対して前記シラン架橋剤の含有量が過度に増加すると、マトリックスの硬化速度は速くなるが、反応性シラン基の含有量の過度な増加により他の成分との相容性問題が発生してヘイズが発生する。
【0070】
また、前記反応生成物のモジュラス(貯蔵弾性率)が0.01MPa~5MPaであり得る。前記モジュラス測定方法の具体的な例として、TA InstrumentsのDHR(discovery hybrid rheometer)装備を用いて常温(20℃~25℃)で1Hzの周波数(frequency)で貯蔵弾性率(storage modulus)(G’)値を測定することができる。
【0071】
また、前記反応生成物のガラス転移温度が-40℃~10℃であり得る。前記ガラス転移温度の測定方法の具体的な例として、DMA(dynamic mechanical analysis)測定装備を用いて歪み(strain)0.1%、周波数(frequency)1Hz、昇温速度5℃/minの設定条件で-80℃~30℃領域で光重合組成物がコートされたフィルムの位相角(phase angle)(損失弾性率(Loss modulus))変化を測定する方法が挙げられる。
【0072】
一方、前記光反応性単量体は、多官能(メタ)アクリレート単量体または単官能(メタ)アクリレート単量体を含み得る。
【0073】
前述したように、前記フォトポリマー組成物の光重合過程で単量体が重合されてポリマーが相対的に多く存在する部分では屈折率が高くなり、高分子バインダが相対的に多く存在する部分では屈折率が相対的に低くなり、屈折率変調が生じ、このような屈折率変調によって回折格子が生成される。
【0074】
具体的には、前記光反応性単量体の一例としては(メタ)アクリレート系α,β-不飽和カルボン酸誘導体、例えば(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリルまたは(メタ)アクリル酸などや、またはビニル基(vinyl)またはチオール基(thiol)を含む化合物が挙げられる。
【0075】
前記光反応性単量体の一例として屈折率が1.5以上、または1.53以上、または1.5~1.7である多官能(メタ)アクリレート単量体が挙げられ、このような屈折率が1.5以上、または1.53以上、または1.5~1.7である多官能(メタ)アクリレート単量体は、ハロゲン原子(臭素、ヨウ素など)、硫黄(S)、リン(P)、または芳香族環(aromatic ring)を含み得る。
【0076】
前記屈折率が1.5以上である多官能(メタ)アクリレート単量体のより具体的な例としては、ビスフェノールA変性ジアクリレート(bisphenol A modified diacrylate)系、フルオレンアクリレート(fluorene acrylate)系(HR6022等-Miwon社)、ビスフェノールフルオレンエポキシアクリレート(bisphenol fluorene epoxy acrylate)系(HR6100,HR6060,HR6042等-Miwon社)、ハロゲン化エポキシアクリレート(Halogenated epoxy acrylate)系(HR1139,HR3362等-Miwon社)などが挙げられる。
【0077】
前記光反応性単量体の他の一例として単官能(メタ)アクリレート単量体が挙げられる。前記単官能(メタ)アクリレート単量体は、分子内部にエーテル結合およびフルオレン官能基を含み得、このような単官能(メタ)アクリレート単量体の具体的な例としてはフェノキシベンジル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールエチレンオキシド(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-(フェニルチオ)エチル(メタ)アクリレート、またはビフェニルメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0078】
一方、前記光反応性単量体としては50g/mol~1000g/mol、または200g/mol~600g/molの重量平均分子量を有することができる。前記重量平均分子量はGPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0079】
前記フォトポリマー組成物は、前記高分子マトリックスまたはその前駆体1重量%~80重量%;前記光反応性単量体1重量%~80重量%;および光開始剤0.1重量%~20重量%;を含み得る。後述するように、前記フォトポリマー組成物が有機溶媒をさらに含む場合、上述した成分の含有量はこれら成分の総和(有機溶媒を除いた成分の総和)を基準とする。
【0080】
前記ホログラム媒体は、5μm~30μmの厚さでも0.020以上または0.021以上、0.022以上または0.023以上、または0.020~0.035、または0.027~0.030の屈折率変調値(n)を実現することができる。
【0081】
また、前記ホログラム媒体は、5μm~30μmの厚さで50%以上、または85%以上、または85~99%の回折効率を実現することができる。
【0082】
前記ホログラム媒体を形成するフォトポリマー組成物は、それに含まれるそれぞれの成分を均一に混合し、20℃以上の温度で乾燥および硬化をした以後に、所定の露光過程を経て全体可視範囲および近紫外線領域(300~800nm)での光学的適用のためのホログラムに製造されることができる。
【0083】
前記フォトポリマー組成物中の高分子マトリックスまたはその前駆体を形成する成分をまず均質に混合し、上述したシラン架橋剤を後に触媒と共に混合してホログラムの形成過程を準備する。
【0084】
前記フォトポリマー組成物は、これに含まれるそれぞれの成分の混合には通常知られている混合器、攪拌機またはミキサーなどを特別な制限なしで用いることができ、前記混合過程での温度は0℃~100℃、好ましくは10℃~80℃、特に好ましくは20℃~60℃であり得る。
【0085】
一方、前記フォトポリマー組成物中の高分子マトリックスまたはその前駆体を形成する成分をまず均質に混合した後、上述したシラン架橋剤を添加する時点で前記フォトポリマー組成物は20℃以上の温度で硬化する液体配合物になる。
【0086】
前記硬化の温度は、前記フォトポリマーの組成によって変わり、例えば30℃~180℃の温度で加熱することによって促進される。
【0087】
前記硬化時には前記フォトポリマーが所定の基板やモールドに注入されるかコートされた状態であり得る。
【0088】
一方、前記フォトポリマー組成物から製造されたホログラム媒体に視覚的ホログラムの記録方法は、通常知られている方法を大きい制限なしで用いることができ、後述するホログラフィック記録方法で説明する方法を一つの例として採用することができる。
【0089】
前記高分子基材は、フッ素系化合物をさらに含み得る。
【0090】
前記フッ素系化合物は、反応性が殆どない安定性を有し、低屈折特性を有するので、前記高分子マトリックスの屈折率をより低くすることができ、モノマーとの屈折率変調を最大化させることができる。
【0091】
前記フッ素系化合物は、エーテル基、エステル基およびアミド基からなる群より選ばれた1種以上の官能基および2以上のジフルオロメチレン基を含み得る。より具体的には、前記フッ素系化合物は、2個のジフルオロメチレン基間の直接結合またはエーテル結合を含む中心官能基の両末端にエーテル基を含む官能基が結合した下記化学式4の構造を有することができる。
【0092】
【0093】
前記化学式4において、R11およびR12はそれぞれ独立してジフルオロメチレン基であり、R13およびR16はそれぞれ独立してメチレン基であり、R14およびR15はそれぞれ独立してジフルオロメチレン基であり、R17およびR18はそれぞれ独立してポリアルキレンオキシド基であり、mは1以上、または1~10、または1~3の整数である。
【0094】
好ましくは前記化学式4において、R11およびR12はそれぞれ独立してジフルオロメチレン基であり、R13およびR16はそれぞれ独立してメチレン基であり、R14およびR15はそれぞれ独立してジフルオロメチレン基であり、R17およびR18はそれぞれ独立して2-メトキシエトキシメトキシ基であり、mは2の整数である。
【0095】
前記フッ素系化合物は、屈折率が1.45未満、または1.3以上1.45未満であり得る。前述したように光反応性単量体が1.5以上の屈折率を有するので、前記フッ素系化合物は、光反応性単量体より低い屈折率により、高分子マトリックスの屈折率をより低くすることができ、モノマーとの屈折率変調を最大化させることができる。
【0096】
具体的には、前記フッ素系化合物の含有量は、光反応性単量体100重量部に対して30重量部~150重量部、または50重量部~110重量部であり得、前記高分子マトリックスの屈折率が1.46~1.53であり得る。
【0097】
前記フッ素系化合物の含有量は、光反応性単量体100重量部に対して過度に減少すると、低屈折成分の不足により記録後の屈折率変調値が低くなり、前記フッ素系化合物の含有量が光反応性単量体100重量部に対して過度に増加すると、その他成分との相容性問題によりヘイズが発生したり、一部のフッ素系化合物がコーティング層の表面に溶出する問題が発生したりし得る。
【0098】
前記フッ素系化合物は、重量平均分子量(GPC測定)が300以上、または300~1000であり得る。重量平均分子量測定の具体的な方法は上述したとおりである。
【0099】
一方、前記高分子基材は、光感応染料をさらに含み得る。
【0100】
前記光感応染料は、前記光開始剤を増減させる増減色素の役割をするが、より具体的には、前記光感応染料は光重合体組成物に照射された光によって刺激されてモノマーおよび架橋モノマーの重合を開始する開始剤の役割も共にすることができる。前記高分子基材を形成するフォトポリマー組成物は、光感応染料0.01重量%~30重量%、または0.05重量%~20重量%含み得る。
【0101】
前記光感応染料の例は大きく限定されるものではなく、通常知られている多様な化合物を使用することができる。前記光感応染料の具体的な例としては、セラミドニンのスルホニウム誘導体(sulfonium derivative)、ニューメチレンブルー(new methylene blue)、チオエリスロシントリエチルアンモニウム(thioerythrosine triethylammonium)、6-アセチルアミノ-2-メチルセラミドニン(6-acetylamino-2-methylceramidonin)、エオシン(eosin)、エリスロシン(erythrosine)、ローズベンガル(rose bengal)、チオニン(thionine)、ベーシックイエロー(Basic yellow)、ピナシアノールクロリド(Pinacyanol chloride)、ローダミン6G(rhodamine 6G)、ガロシアニン(gallocyanine)、エチルバイオレット(ethyl violet)、ビクトリアブルーR(Victoria blue R)、セレスチンブルー(Celestine blue)、キナルジンレッド(QuinaldineRed)、クリスタルバイオレット(crystal violet)、ブリリアントグリーン(Brilliant Green)、アストラゾンオレンジG(Astrazon orange G)、ダローレッド(darrow red)、ピロニンY(pyronin Y)、ベーシックレッド29(basic red 29)、ピリリウムI(pyrylium iodide)、サフラニンO(Safranin O)、シアニン、メチレンブルー、アズールA(Azure A)、またはこれらの2以上の組み合わせが挙げられる。
【0102】
前記ホログラム媒体を形成するフォトポリマー組成物は、これに含まれるそれぞれの成分を均一に混合した後、20℃以上の温度で乾燥および硬化をした後にホログラム媒体として提供されることができる。これにより、前記フォトポリマー組成物はこれに含まれるそれぞれの成分の混合とより容易な塗布のために有機溶媒をさらに含み得る。
【0103】
前記有機溶媒の非制限的な例として、ケトン類、アルコール類、アセテート類およびエーテル類、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。このような有機溶媒の具体的な例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンまたはイソブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、またはt-ブタノールなどのアルコール類;エチルアセテート、i-プロピルアセテート、またはポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアセテート類;テトラヒドロフランまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0104】
前記有機溶媒は、前記フォトポリマー組成物に含まれる各成分を混合する時期に添加されるか各成分が有機溶媒に分散または混合された状態で添加されながら前記フォトポリマー組成物に含まれ得る。前記フォトポリマー組成物中の有機溶媒の含有量が過度に小さいと、前記フォトポリマー組成物の流れ性が低下して最終的に製造されるフィルムに縞模様が生じるなど不良が発生し得る。また、前記有機溶媒の過量添加時固形分の含有量が低くなり、コーティングおよび成膜が十分にならずフィルムの物性や表面特性が低下し得、乾燥および硬化過程で不良が発生し得る。これにより、前記フォトポリマー組成物は、含まれる成分の全体固形分の濃度が1重量%~70重量%、または2重量%~50重量%になるように有機溶媒を含み得る。
【0105】
一方、前記高分子基材を形成するフォトポリマー組成物は光開始剤を含み得る。前記光開始剤は、光または化学放射線によって活性化する化合物であり、前記光反応性単量体など光反応性官能基を含有した化合物の重合を開始する。
【0106】
前記光開始剤としては通常知られている光開始剤を大きい制限なしで使用し得るが、その具体的な例としては光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、または光アニオン重合開始剤が挙げられる。
【0107】
前記光ラジカル重合開始剤の具体的な例としては、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N-アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン、アルミネート錯体、有機過酸化物、N-アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体、アミン誘導体などが挙げられる。より具体的には、前記光ラジカル重合開始剤としては1,3-ジ(t-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン(1,3-di(t-butyldioxycarbonyl)benzophenone)、3,3’,4,4’’-テトラキス(t-ブチルジオキシカルボニル)ベンゾフェノン(3,3’,4,4’’-tetrakis(t-butyldioxycarbonyl)benzophenone)、3-フェニル-5-イソオキサゾロン(3-phenyl-5-isoxazolone)、2-メルカプトベンズイミダゾール(2-mercapto benzimidazole)、ビス(2,4,5-トリフェニル)イミダゾール(bis(2,4,5-triphenyl)imidazole)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(2,2-dimethoxy-1,2-diphenylethane-1-one)(製品名:Irgacure 651/製造メーカー:BASF)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(1-hydroxy-cyclohexyl-phenyl-ketone)(製品名:Irgacure 184/製造メーカー:BASF)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1(2-benzyl-2-dimethylamino-1-(4-morpholinophenyl)-butanone-1)(製品名:Irgacure 369/製造メーカー:BASF)、およびビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタン(bis(η5-2,4-cyclopentadiene-1-yl)-bis(2,6-difluoro-3-(1H-pyrrole-1-yl)-phenyl)titanium)(製品名:Irgacure 784製造メーカー:BASF)、Ebecryl P-115(製造メーカー:SK entis)などが挙げられる。
【0108】
前記光カチオン重合開始剤としては、ジアゾニウム塩(diazonium salt)、スルホニウム塩(sulfonium salt)、またはヨードニウム塩(iodonium salt)が挙げられ、例えばスルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル-4-ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸-p-ニトロベンジルエステル、シラノール-アルミニウム錯体、(η6-ベンゼン)(η5-シクロシクロペンタジエニル)鉄(II)などが挙げられる。また、ベンゾイントシレート、2,5-ジニトロベンジルトシレート、N-トシルフタル酸イミドなども挙げられる。前記光カチオン重合開始剤のより具体的な例としては、Cyracure UVI-6970、Cyracure UVI-6974およびCyracure UVI-6990(製造メーカー:Dow Chemical Co.in USA)やIrgacure 264およびIrgacure 250(製造メーカー:BASF)またはCIT-1682(製造メーカー:Nippon Soda)などの市販製品が挙げられる。
【0109】
前記光アニオン重合開始剤としては、ボレート塩(Borate salt)が挙げられ、例えばブチリルコリンブチルトリフェニルボレート(BUTYRYL CHOLINE BUTYLTRIPHENYLBORATE)などが挙げられる。前記光アニオン重合開始剤のより具体的な例としては、Borate V(製造メーカー:Spectra group)などの市販製品が挙げられる。
【0110】
また、前記フォトポリマー組成物は、一分子(類型I)または二分子(類型II)開始剤を使用することもできる。前記フリーラジカル光重合のための(類型I)システムは、例えば3次アミンと組合わせた芳香族ケトン化合物、例えばベンゾフェノン、アルキルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、アントロンおよびハロゲン化ベンゾフェノンまたは前記類型の混合物である。前記二分子(類型II)開始剤としてはベンゾインおよびその誘導体、ベンジルケタール、アシルホスフィンオキシド、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、フェニルグリオキシルエステル、カンファーキノン、α-アミノアルキルフェノン、α,α-ジアルコキシアセトフェノン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1,2-ジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)およびα-ヒドロキシアルキルフェノンなどが挙げられる。
【0111】
前記フォトポリマー組成物は、その他の添加剤、触媒などをさらに含み得る。例えば、前記フォトポリマー組成物は、前記高分子マトリックスや光反応性単量体の重合を促進するために通常知られている触媒を含み得る。
【0112】
前記触媒の例としては、スズオクタノエート、亜鉛オクタノエート、ジブチルスズジラウレート、ジメチルビス[(1-オキソネオデシル)オキシ]スタンナン、ジメチルスズジカルボキシレート、ジルコニウムビス(エチルヘキサノエート)、ジルコニウムアセチルアセトネート、p-トルエンスルホン酸(p-toluenesulfonic acid)または3次アミン、例えば1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデカン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-メチル-2H-ピリミド(1,2-a)ピリミジンなどが挙げられる。
【0113】
前記その他の添加剤の例としては消泡剤またはホスフェート系可塑剤が挙げられ、前記消泡剤としてはシリコン系反応性添加剤を用いることができ、その例としてTego Rad 2500が挙げられる。前記可塑剤の例としてはトリブチルホスフェートなどのホスフェート化合物が挙げられ、前記可塑剤は上述したフッ素系化合物と共に1:5~5:1の重量比率で添加され得る。前記可塑剤は屈折率が1.5未満であり、分子量が700以下であり得る。
【0114】
一方、前記ホログラム媒体は、可干渉性のレーザによって前記フォトポリマー組成物に含まれた光反応性単量体を選択的に重合させる段階を含むホログラム媒体の記録方法によって提供されることができる。
【0115】
前述したように、前記フォトポリマー組成物を混合および硬化する過程により視覚的ホログラムが記録されない状態の媒体を製造することができ、所定の露出過程により前記媒体上に視覚的ホログラムを記録することができる。
【0116】
前記フォトポリマー組成物を混合および硬化する過程により提供される媒体に、通常知られている条件下で公知の装置および方法を用いて視覚的ホログラムを記録することができる。
【0117】
一方、発明の他の実施形態によれば、ホログラム媒体を含む光学素子が提供されることができる。
【0118】
前記光学素子の具体的な例としては、光学レンズ、鏡、偏向鏡、フィルタ、拡散スクリーン、回折部材、導光体、導波管、映写スクリーンおよび/またはマスクの機能を有するホログラフィック光学素子、光メモリシステムの媒質と光拡散板、光波長分割器、反射型、透過型カラーフィルタなどが挙げられる。
【0119】
前記ホログラム媒体を含む光学素子の一例としてホログラムディスプレイ装置が挙げられる。
【0120】
前記ホログラムディスプレイ装置は光源部、入力部、光学系および表示部を含む。前記光源部は、入力部および表示部で物体の3次元映像情報を提供、記録および再生に使われるレーザビームを照射する部分である。また、前記入力部は、表示部に記録する物体の3次元映像情報をあらかじめ入力する部分であり、例えば、電気駆動液晶SLM(electrically addressed liquid crystal SLM)に空間別光の強さと位相のような物体の3次元情報を入力することができ、この時、入力ビームが用いられる。前記光学系は、ミラー、偏光器、ビームスプリッタ、ビームシャッタ、レンズなどで構成され得、前記光学系は、光源部から放出されるレーザビームを入力部に送る入力ビーム、表示部に送る記録ビーム、基準ビーム、消去ビーム、読み出しビームなどに分配することができる。
【0121】
前記表示部は、入力部から物体の3次元映像情報の伝達を受け、光学駆動SLM(optically addressed SLM)からなるホログラムプレートに記録し、物体の3次元映像を再生することができる。この時、入力ビームと基準ビームの干渉により物体の3次元映像情報を記録することができる。前記ホログラムプレートに記録された物体の3次元映像情報は、読み出しビームが生成する回折パターンによって3次元映像で再生することができ、消去ビームは形成された回折パターンを速やかに除去するために用いられる。一方、前記ホログラムプレートは3次元映像を入力する位置と再生する位置との間で移動することができる。
【発明の効果】
【0122】
本発明によれば、薄い厚さの範囲でもより高い屈折率変調値および高い回折効率を実現することができるホログラム媒体と前記ホログラム媒体を含む光学素子が提供されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【
図1】原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した実施例1のホログラム媒体の表面の形状のラインプロファイルである。
【
図2】原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した実施例2のホログラム媒体の表面の形状のラインプロファイルである。
【
図3】原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した実施例3のホログラム媒体の表面の形状のラインプロファイルである。
【
図4】原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した実施例4のホログラム媒体の表面の形状のラインプロファイルである。
【
図5】原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した比較例1のホログラム媒体の表面の形状のラインプロファイルである。
【
図6】原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した比較例2のホログラム媒体の表面の形状のラインプロファイルである。
【
図7】原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した比較例3のホログラム媒体の表面の形状のラインプロファイルである。
【
図8】原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した比較例4のホログラム媒体の表面の形状のラインプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0124】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の内容は下記の実施例によって限定されない。
【0125】
[製造例]
[製造例1:シラン系官能基が分枝鎖に位置した(メタ)アクリレート系(共)重合体の製造方法]
2Lジャケット反応器にブチルアクリレート154g、KBM-503(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)46gを入れ、エチルアセテート800gで希釈した。約60~70℃に反応温度を設定し、30分~1時間程度攪拌を行った。n-ドデシルメルカプタン0.02gを追加して入れ、30分程度さらに攪拌を行った。その後、重合開始剤であるAIBN 0.06gを入れ、反応温度で4時間以上重合を行って残留アクリレートの含有量が1%未満になるまで維持し、シラン系官能基が分枝鎖に位置した(メタ)アクリレート系(共)重合体(重量平均分子量約500,000~600,000,Si-(OR)3当量1019g/個)を製造した。
【0126】
[製造例2:シラン系官能基が分枝鎖に位置した(メタ)アクリレート系(共)重合体の製造方法]
2Lジャケット反応器にブチルアクリレート180g、KBM-503(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)120gを入れ、エチルアセテート700gで希釈した。60~70℃に反応温度を設定し、30分~1時間程度攪拌を行った。n-ドデシルメルカプタン0.03を追加して入れ、30分程度さらに攪拌を行った。その後、重合開始剤であるAIBN 0.09gを入れ、反応温度で4時間以上重合を行って残留アクリレートの含有量が1%未満になるまで維持し、シラン系官能基が分枝鎖に位置した(メタ)アクリレート系(共)重合体(重量平均分子量約500,000~600,000,Si-(OR)3当量586g/個)を製造した。
【0127】
[製造例3:シラン系官能基が分枝鎖に位置した(メタ)アクリレート系(共)重合体の製造方法]
2Lジャケット反応器にブチルアクリレート255g、KBM-503(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)45gを入れ、エチルアセテート700gで希釈した。60~70℃に反応温度を設定し、30分~1時間程度攪拌を行った。n-ドデシルメルカプタン0.03を追加して入れ、30分程度さらに攪拌を行った。その後、重合開始剤であるAIBN 0.09gを入れ、反応温度で4時間以上重合を行って残留アクリレートの含有量が1%未満になるまで維持し、シラン系官能基が分枝鎖に位置した(メタ)アクリレート系(共)重合体(重量平均分子量約500,000~600,000,Si-(OR)3当量1562g/個)を製造した。
【0128】
[製造例4:シラン架橋剤の製造方法]
1000mlフラスコにKBE-9007(3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン)19.79g、PEG-400 12.80gとDBTDL 0.57gを入れ、テトラヒドロフラン300gで希釈した。TLCで反応物がすべて消耗したことが確認されるまで常温で攪拌した後、減圧して反応溶媒をすべて除去した。
【0129】
ジクロロメタン:メチルアルコール=30:1の展開液条件下でカラムクロマトグラフィーにより純度95%以上の液状生成物28gを91%の収率で分離して上述したシラン架橋剤を得た。
【0130】
[製造例5:非反応性低屈折物質の製造方法]
1000mlフラスコに2,2’-((オキシビス(1,1,2,2-テトラフルオロエタン-2,1-ジイル))ビス(オキシ))ビス(2,2-ジフルオロエタン-1-オール)(2,2’-((oxybis(1,1,2,2-tetrafluoroethane-2,1-diyl))bis(oxy))bis(2,2-difluoroethan-1-ol))20.51gを入れた後、テトラヒドロフラン500gに溶かして0℃で攪拌しながら水素化ナトリウム(sodium hydride)(鉱油中60%分散体)4.40gを数回にわたって注意深く添加した。0℃で20分攪拌した後、2-メトキシエトキシメチルクロリド(2-methoxyethoxymethyl chloride)12.50mlをゆっくり滴下(dropping)した。1H NMRで反応物がすべて消耗したことが確認されると、減圧して反応溶媒をすべて除去した。ジクロロメタン300gで3回抽出して有機層を集めた後硫酸マグネシウム(magnesium sulfate)でフィルタした後減圧してジクロロメタンをすべて除去して純度95%以上の液状生成物29gを98%の収率で収得した。
【0131】
[実施例:フォトポリマー組成物およびホログラム媒体の製造]
1.フォトポリマー組成物の製造
下記表1または表2に記載したように、前記製造例1~3で得たシラン重合体、光反応性単量体(高屈折アクリレート、屈折率1.600,HR6022[味元])、製造例5の非反応性低屈折物質、トリブチルホスフェート(Tributyl phosphate[TBP],分子量266.31,屈折率1.424,シグマアルドリッチ社製品)、safranin O(染料、シグマアルドリッチ社製品)、Ebecryl P-115(SK entis)、Borate V(Spectra group)、Irgacure 250(BASF)、シリコン系反応性添加剤(Tego Rad 2500)およびメチルイソブチルケトン(MIBK)を光を遮断した状態で混合し、ペーストミキサーで約10分間攪拌して透明なコート液を収得した。
【0132】
前記コート液に前記製造例4の上述したシラン架橋剤または網状構造のシラン架橋剤(Sibond H-5)を添加して約10分間さらに攪拌した。その後、前記コート液に触媒であるDBTDL 0.02gを入れて約1分間攪拌した後、メイヤーバー(meyer bar)を用いて、80μm厚さのTAC基材に6μmの厚さでコートして40℃で1時間乾燥させた。
【0133】
そして、約25℃および50RH%の相対湿度の恒温恒湿条件の暗室でサンプルを24時間以上放置した。
【0134】
2.ホログラム媒体の製造
(1)前記製造されたフォトポリマーコーティング面をスライドガラスにラミネートし、記録時レーザがガラス面を先に通過するように固定した。
【0135】
(2)回折効率(η)の測定
二つの干渉光(参照光および物体光)の干渉によりホログラフィックを記録し、透過型記録は二つのビームをサンプルの同一面に入射した。二つのビームの入射角に応じて回折効率は変わり、二つのビームの入射角が同じである場合はnon-slantedとなる。non-slanted記録は二つのビームの入射角が法線基準に同じであるため、回折格子はフィルムに垂直に生成される。
【0136】
532nm波長のレーザを用いて透過型non-slanted方式で記録(2θ=45°)し、下記一般式1で回折効率(η)を計算した。
【0137】
【0138】
前記一般式1において、ηは回折効率であり、PDは記録後サンプルの回折したビームの出力量(mW/cm2)であり、PTは記録したサンプルの透過したビームの出力量(mW/cm2)である。
【0139】
(3)屈折率変調値(n)の測定
透過型ホログラムのLossless Dielectric gratingは、下記一般式2から屈折率変調値(△n)を計算することができる。
【0140】
【0141】
前記一般式2において、dはフォトポリマー層の厚さであり、△nは屈折率変調値であり、η(DE)は回折効率であり、λは記録波長である。
【0142】
(4)レーザ損失量(Iloss)の測定
下記一般式3からレーザ損失量(Iloss)を計算することができる。
【0143】
[一般式3]
Iloss=1-{(PD+PT)/IO}
【0144】
前記一般式3において、PDは記録後サンプルの回折したビームの出力量(mW/cm2)であり、PTは記録したサンプルの透過したビームの出力量(mW/cm2)であり、I0は記録光の強度である。
【0145】
(4)ホログラム媒体の表面観察
前記実施例で得られたホログラム媒体の一面に形成された線状パターンの形状および大きさをPark systems社の原子間力顕微鏡(XE7)を用いて測定した。そして、確認した表面形状からラインプロファイルにより隣接する極小値と極大値との間の距離を測定した。
【0146】
この時、測定結果において、極小値はy軸数値が減少してから増加する地点を意味し、極大値はy軸数値が増加してから減少する地点を意味し、隣接は極小値(または極大値)から高さ差が5nm以上である最も近い極大値(または極小値)を意味する。
【0147】
隣接する極小値と極大値の標準誤差は、原子間力顕微鏡で測定した表面形状のラインプロファイルで0~6μm領域までの高さ差が5nm以上の隣接する極小値と極大値との間の距離をすべて測定し、下記一般式1により標準誤差を求めた。
【0148】
【0149】
前記一般式1において、SEは標準誤差であり、σは標準偏差であり、nは個数である。
【0150】
図1~4は前記測定した実施例1~4のホログラム媒体を原子間力顕微鏡を用いて測定した表面のラインプロファイルである。
【0151】
【0152】
[比較例:ホログラム媒体の製造]
(1)ポリオールの合成
2Lのジャケット反応器にメチルアクリレート34.5g、ブチルアクリレート57.5g、4-ヒドロキシブチルアクリレート8gを入れ、エチルアセテート150gで希釈した。前記ジャケット反応器の温度を60~70℃に維持して約1時間ほど攪拌を行った。そして、前記反応器にn-ドデシルメルカプタン0.035を追加して入れ、30分程度追加攪拌を行った。その後、重合開始剤AIBN(2,2’-アゾ-ビスイソブチロニトリル、2,2’-azo-bisisobutyronitrile)0.04gを添加し、約70℃内外の温度で約4時間ほど重合しながら残留するアクリレート類単量体の含有量が1重量%になるまで維持してポリオールを合成した。この時、得られたポリオールはGPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量が約70万であり、KOH滴定法を用いて測定したOH当量が1802g/OHmolであった。
【0153】
(2)フォトポリマー組成物の製造
前記製造例1のポリオール、光反応性単量体(高屈折アクリレート、屈折率1.600,HR6022[味元])、safranin O(染料、シグマアルドリッチ社製品)、製造例5の非反応性低屈折物質、トリブチルホスフェート(Tributyl phosphate[TBP],分子量266.31,屈折率1.424,シグマアルドリッチ社製品)、Ebecryl P-115(SK entis)、Borate V(Spectra group)、Irgacure 250(BASF)およびメチルイソブチルケトン(MIBK)を光を遮断した状態で混合し、ペーストミキサーで約10分間攪拌して透明なコート液を収得した。
【0154】
前記コート液にMFA-75X(Asahi Kasei、6官能イソシアネート、キシレンに75重量%で希釈)を添加して5~10分間さらに攪拌し、触媒であるDBTDL(ジブチルスズジラウレート、dibutyltin dilaurate)を入れ、約1分間攪拌した後メイヤーバー(meyer bar)を用いて、80μm厚さのTAC基材に7μmでコートして40℃で1時間硬化した。
【0155】
(3)ホログラム媒体の製造
前記実施例と同様の方法でホログラム媒体を製造し、実施例と同様の方法および同様条件で回折効率(η)、屈折率変調値(n)およびレーザ損失量(Iloss)を測定した。
【0156】
(4)ホログラム媒体の表面観察
前記実施例と同様の方法で比較例で得られたホログラム媒体の一面に形成された線状パターンの形状および大きさとホログラム媒体の表面を測定および観察した。
【0157】
図5~8は前記測定した比較例1~4のホログラム媒体を原子間力顕微鏡を用いて測定した表面のラインプロファイルである。
【0158】
【0159】
図1~4で確認されるように、実施例のホログラム媒体では前記一つの微細突起の高さの極大値とそれと隣り合う微細突起の高さの極小値との間の前記高分子基材の断面方向に対する距離の標準誤差が20nm以下であるが、前記表1および表2に示すように、実施例のホログラム媒体は0.020以上の屈折率変調値(△n)および40%以上の回折効率を有することが確認された。
【0160】
これに対し、
図5~8で確認されるように、実施例のホログラム媒体では前記一つの微細突起の高さの極大値とそれと隣り合う微細突起の高さの極小値との間の前記高分子基材の断面方向に対する距離の標準誤差が20nmを超えるが、このようなホログラム媒体ではイメージ歪曲現象が発生したり回折される光の追加的な散乱または干渉が発生し得、回折効率も低下し得、具体的には前記表1および表2に示すように比較例の組成物によって提供されるフォトポリマーコーティングフィルムは実施例に比べて相対的に低い30%以下の回折効率および0.015以下の屈折率変調値(△n)を有することが確認された。