(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 3/42 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
G01N3/42 A
(21)【出願番号】P 2017243378
(22)【出願日】2017-12-20
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100080252
【氏名又は名称】鈴木 征四郎
(72)【発明者】
【氏名】古賀 哲哉
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特許第3332362(JP,B2)
【文献】実開昭61-003435(JP,U)
【文献】特開2004-108959(JP,A)
【文献】特開平09-015066(JP,A)
【文献】米国特許第6460399(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0258502(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00- 3/62
G01B 5/00- 5/30
G01B 21/00-21/32
G01L 1/00- 1/26
G01L 5/00- 5/28
G01L 25/00
G01M 13/00-13/045
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧子を材料表面に押し当て、材料特性を評価する測定装置であって、
変形量が大きいほどばね定数が大きくなり、変形により前記圧子を前記材料表面に押し当てる荷重を発生する非線形ばねと、
前記非線形ばねを変形させるアクチュエータと、
前記非線形ばねを前記変形させたときの前記非線形ばねの変形量を計測するスケールと、
前記変形量と前記荷重とを相互に換算するための非線形ばね特性データを保持し、前記変形量と前記非線形ばね特性データとに基づいて、前記荷重が目標荷重に到達するように前記アクチュエータを駆動する制御部と、を有する
測定装置。
【請求項2】
前記非線形ばねは、複数のばねを直列に連結したものであり、
前記ばねは、所定の荷重を超えると変形を阻止するリミッターを有し、
前記非線形ばね全体の荷重が大きくなるほど、変形に寄与するばねの数が減る
請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記非線形ばねは、複数のばねを並列に連結されるよう配置したものであり、
前記ばねは、変形量がしきい値を超えると別のばねに連結する連結部を有し、
前記非線形ばね全体の変形量が大きくなるほど、荷重に寄与するばねの数が増える
請求項1記載の測定装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記目標荷重と、前記非線形ばね特性データとに基づいて目標変形量を算出し、
前記目標変形量と、前記スケールが計測した前記非線形ばねの現在変形量との差分に相当する距離を移動するよう前記アクチュエータを駆動する
請求項1記載の測定装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記スケールが計測した前記非線形ばねの現在変形量と、前記非線形ばね特性データとに基づいて現在荷重を算出し、
前記目標荷重と、前記現在荷重との差分に相当する荷重を追加出力するよう前記アクチュエータを駆動する
請求項1記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定装置に関し、特にばねの変形により材料表面に圧子を押し当てて材料特性を評価する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、材料に所定の力で圧子を押し当てることで材料の特性を測定する測定装置が知られている。例えば、材料表面に圧子を押し当てて圧痕を形成することで材料の硬さを測定する硬さ試験機が知られている。また、材料表面に圧子を押し当てて材料を破断させることで材料の強度を測定する強度試験機が知られている。
【0003】
従来の測定装置の一例として特許文献1がある。特許文献1には、上述のような硬さ測定装置であって、オーバーシュートを防止するための荷重負荷制御機構を備えたものが記載されている。
【0004】
図1は、従来の測定装置の典型的な構造を示す模式図である。測定装置は、ワークを載置するステージと、ステージの上方に伸びるフレームと、フレームに支持されたアクチュエータと、一端がアクチュエータに接し他端に圧子を保持したばねと、ばねの変形を測るスケールとを有する。アクチュエータとばねとは、両者の伸縮軸が一致するように配置されている。アクチュエータが伸長するとばねが収縮し、圧子がワークに押し当てられる。スケールは、このときのばねの変形量を計測し、変形量にばね定数を乗ずることでワークにかかる荷重を算出する。
【0005】
ばねは、以下の2つの効果により、ワークにかかる荷重を制御している。
(1)変形を力に変換する。
ばねの形状の変化量(変形量)と荷重とは概ね比例関係にある。そのためばねの変形量が所定値になるようアクチュエータを制御すれば、ワークに所定の荷重を与えることができる。したがってばねが柔らかい(荷重あたりの変形量が多い)ほど、荷重制御の精度は高くなる。
(2)ワークの変形等により力が急変するのを防ぐ。
ワーク表面にかかる荷重によりワークが変形して、圧子に接触しているワーク表面が圧子から逃げる方向に移動した場合でも、ばねが変形して圧子が表面に追従する。すなわちワーク表面を押し続ける。このとき荷重はばねの変形量に応じて増減するが、激減することはない。一方、ばねが無くアクチュエータが直接荷重を与える構造であるとすると、ワークが変形したり、移動したりした場合に追従できず、荷重が激減する場合がある。特にワークのひびの拡大などの予測し難い変形にアクチュエータが追従することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
測定装置のばねが奏する上述の効果(1)及び(2)は、ばねが柔らかい(ばね定数が低い)ほど高い。一方、ばねが柔らかくなるほど、所望の荷重を得るために必要な変形量とアクチュエータのストロークとが大きくなるという問題がある。ばねの変形量やアクチュエータのストロークが大きくなれば、ばねやアクチュエータが嵩張り、測定装置も嵩張る。また、測定装置のデザインの制約が大きくなる。また、ワークが破断してばねが当初の形状(自由長)に戻るときに、圧子がステージに届き傷つける可能性が大きくなる。また、ばねの変形可能量(ストローク)が大きくなればばねに貯まるエネルギーが大きくなるから、ワークが破断したときにワークやステージを破壊したり、破片が人や物を傷つけるおそれが高まる。そのため、従来はこれらの効果と問題点とを比較衡量しつつ、適切なばねの硬さ(ばね定数)を選択する必要があった。
【0008】
また、測定対象の材料や測定の目的によっても、適切なばねの硬さ(ばね定数)は異なる。例えば材料が柔らかい場合は、小さな荷重を与えるためばねは柔らかめが良い。一方、材料が硬い場合は、大きな荷重を与える必要があるためばねは硬めが良い。他方、圧子がワークに接触した瞬間の弱い力を検知するためには、ばねは柔らかめが良い。
【0009】
このような事情から、従来は、制御できる力の範囲、測定したいワークの硬さ、及び測定の目的や必要な精度等に応じて、複数の測定装置が提供されていた。このような複数の測定装置を用途に応じて使い分けることは、非常に煩雑で高コストであった。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、ばねの変形により材料表面に圧子を押し当てて材料特性を評価する測定装置であって、広範囲の力を高精度に制御でき、かつコンパクトな測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る測定装置は、圧子を材料表面に押し当て、材料特性を評価する測定装置であって、変形量が大きいほどばね定数が大きくなり、変形により前記圧子を前記材料表面に押し当てる荷重を発生する非線形ばねと、前記非線形ばねを変形させるアクチュエータと、前記非線形ばねを前記変形させたときの前記非線形ばねの変形量を計測するスケールと、前記変形量と前記荷重とを相互に換算するための非線形ばね特性データを保持し、前記変形量と前記非線形ばね特性データとに基づいて、前記荷重が目標荷重に到達するように前記アクチュエータを駆動する制御部と、を有する。
本発明に係る測定装置において、前記非線形ばねは、複数のばねを直列に連結したものであり、前記ばねは、所定の荷重を超えると変形を阻止するリミッターを有し、前記非線形ばね全体の荷重が大きくなるほど、変形に寄与するばねの数が減る。
本発明に係る測定装置において、前記非線形ばねは、複数のばねを並列に連結されるように配置したものであり、前記ばねは、変形量がしきい値を超えると別の線形ばねに連結する連結部を有し、前記非線形ばね全体の変形量が大きくなるほど、荷重に寄与するばねの数が増える。
本発明に係る測定装置において、前記制御部は、前記目標荷重と、前記非線形ばね特性データとに基づいて目標変形量を算出し、前記目標変形量と、前記スケールが計測した前記非線形ばねの現在変形量との差分に相当する変形量を加減するよう前記アクチュエータを駆動する。
本発明に係る測定装置において、前記制御部は、前記スケールが計測した前記非線形ばねの現在変形量と、前記非線形ばね特性データとに基づいて現在荷重を算出し、前記目標荷重と、前記現在荷重との差分に相当する荷重を追加出力するよう前記アクチュエータを駆動する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、材料表面に圧子を押し当てて材料特性を評価する測定装置であって、ばねの変形により広範囲の力を高精度に制御でき、かつコンパクトな測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本発明の実施の形態にかかる測定装置100の一例を示す模式図である。
【
図4】リミッター107を備えた押しばねの構造を示す断面図である。
【
図5】非線形ばね104の一例を示す断面図である。
【
図6】非線形ばね104の一例を示す断面図である。
【
図7】非線形ばね104の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。まず、
図2の模式図を用いて、本発明の実施の形態にかかる測定装置100の構成について説明する。測定装置100は、ワークを載置するステージ101と、ステージ101から見てワークの背後方向に伸びるフレーム102と、フレーム102に支持されたアクチュエータ103と、一端がアクチュエータ103に接し他端に圧子105を保持したばね104と、ばね104の変形を測るスケール106、アクチュエータ103の駆動を制御する制御部110とを有する。
【0015】
アクチュエータ103とばね104とは、両者の伸縮軸が一致するように配置されている。アクチュエータ103の伸長に伴って、ばね104及び圧子105はワーク表面に向かって移動し、やがて圧子105がワーク表面に押し当てられると、ばね104は当初の形状(自由長)から変形する。スケール106は、このときのばね104の変形量を計測する。なお変形量の計測方法には、変形前後のばねの形状(例えば、ばねの長さ)を測って差分を求める間接的方法と、変形量(例えば、ばねの伸縮量)を測る(例えば、ばねの伸縮にスケールのスライダが連動する)直接的方法とがあるが、いずれの手法によっても構わない。なおワーク表面に押し当てられた圧子105は、荷重によりワークが変形又は移動した場合でも、ばね104の変形によって一定程度ワーク表面に追従する。
【0016】
制御部110は、ばね特性データを保持しているものとする。ばね特性データとは、ばね104の変形量と、ばね104が生じる力(すなわち圧子105がワークに与える荷重)と、の関係を示すデータである。制御部110は、スケール106が計測したばね104の変形量を監視する。例えば一定時間ごとに計測値を取得する。そして、ばね104の変形量の計測値とばね特性データとに基づき荷重を算出する。
【0017】
最も単純には、仮にばね104がばね定数に従い、荷重に応じて線形に変形する1個のばねであれば、ばね104のばね特性データはばね係数で表すことができる。この場合、制御部110は、ばね104の当初の形状(自由長)からスケール106による測定値を減じて得られるばねの現在変形量に、ばね定数を乗ずることでワークにかかる荷重を算出できる。(なお、これはばね特性データの意義を説明するための例示である。後述のように、本実施の形態ではばね104として非線形ばねを採用する。この場合のばね特性データは非線形なものとなる。)
【0018】
制御部110には、ワークに与えるべき荷重である目標荷重が与えられる。例えば図示しない入力手段を用いて、ユーザが目標荷重を入力する。又は外部装置から出力される目標荷重が、通信インタフェース等を介して制御部110に入力されても良い。
【0019】
制御部110は、典型的には一定周期で上述の荷重の算出処理を行いながら、目標荷重が得られるようアクチュエータ103を制御する。アクチュエータ103が長さ指定タイプ(例えば、ボールねじ+ステッピングモータ、ボールねじ+スケール+サーボモータで構成されるような、アクチュエータの移動距離を指定して駆動するタイプ)の場合、制御部110は以下のような制御を行う。
(1)目標荷重を目標変形量に換算する。
制御部110は、目標荷重を得るために必要なばね104の変形量(目標変形量)を、ばね特性データに基づき算出する。
(2)目標変形量-現在変形量だけアクチュエータ103を動かす。
制御部110は、目標変形量と、スケール106によるばね104の変形量の測定値(現在変形量)との差分を算出する。差分の正負はアクチュエータを動かす方向(例えば伸びと縮み)に対応する。これにより、ワークの変形等を考慮しなければ、ばね104は変形して目標変形量に至ると期待される。
もしワークが変形するなどしてばね104が目標変形量に到達しない場合は、制御部110は(2)の処理を繰り返し実行する。ワークの変形量が予測できる場合は、(2)における差分に予測されるワーク変形量を加味して、アクチュエータ103を動かしても良い。なお、目標荷重をオーバーすることが許されない場合は、ワーク変形量の加味は行わないか、所定の係数を乗ずるなどしてワーク変形量を控えめに見積ることとしても良い。
【0020】
一方、アクチュエータ103が力指定タイプ(例えば、電流に比例した力を発するボイスコイルで構成されるような、アクチュエータの出力する荷重を指定して駆動するタイプ)の場合、制御部110は以下のような制御を行う。
(1)現在変形量を現在荷重に換算する。
制御部110は、スケール106によるばね104の変形量の測定値(現在変形量)に対応する荷重(現在荷重)を、ばね特性データに基づき算出する。
(2)目標荷重-現在荷重だけ荷重を増すようアクチュエータ103を駆動する。
制御部110は、目標荷重と現在荷重との差分を算出する。差分の正負はアクチュエータを動かす方向(例えば伸びと縮み)に対応する。
もしアクチュエータ103の誤差などにより、(2)の処理後も現在荷重が目標荷重に達しない場合は、制御部110は(1)及び(2)の処理を繰り返す。
【0021】
ばね104について説明する。ばね104に保持された圧子105をワーク表面にまっすぐに押し込むため、ばね104には期待される変形(例えば伸縮軸方向の伸縮変形)以外の変形に関して高い剛性が要求される。この要求を達成可能なばねとして
図3のようなばねがある。
【0022】
図3は、押しばねを横方向から見た断面図である。この押しばねは、2枚の長方形の板ばねをスペーサを挟んで重ねたものである。この押しばねは、矢印で示される伸縮軸方向の力に対してはばね定数に従って変形するが、その他の方向の力が入力されても極めて変形しづらい(すなわち剛性が高い)。この押しばねは、それ単体では線形ばねである。すなわち伸縮軸方向の荷重が入力されると、ばね定数に従って線形に変形する。
【0023】
本実施の形態では、特性の異なる複数の線形ばねを組合せて非線形ばねを構成し、この非線形ばねをばね104として採用する点に特徴を有する。そして制御部110は、非線形ばね104特有のばね特性データを予め保持しているものとし、当該ばね特性データを使用して上述のようなアクチュエータ103の制御を行う。以下、実施例として、
図3に示すような押しばねを使用した非線形ばね104の構成例と、その非線形ばね104に対応するばね特性データの例とを開示する。
【0024】
<実施例1>
実施例1では、ばね定数の異なる複数の線形ばねを直列に配置することにより非線形ばね104を構成する。
図4及び
図5を用いて、実施例1にかかる非線形ばね104の構造を説明する。ここで直列とは、合成ばねの変形が個々のばねの変形の総和で、合成ばねの荷重が個々のばねに共通であることをいう。
【0025】
図4左図は、非線形ばね104の構成要素である線形ばね1041の構造を説明する断面図である。
図4右図は、この線形ばね1041の特性(荷重に対する変形量の推移)を示すグラフである。この線形ばね1041には、一定以上の変形(圧縮)を阻止すべく働くリミッター107が、2枚の板ばねの間に配置されている。線形ばね1041に働く圧縮力(矢印で示す)が増加すると、2枚の板ばね間の距離は徐々に接近してゆくが、一定の距離に達するとリミッター107が干渉し、それ以上の変形が生じなくなる。
【0026】
図5左図は、非線形ばね104の構造を説明する断面図である。この非線形ばね104は、
図4で説明した構造を有する複数の線形ばね1041を直列に重ねてなる。複数の線形ばね1041は、それぞれ硬さ(ばね定数)が異なっている。
【0027】
一例として、ばね定数の異なる3つの線形ばね1041、すなわち軟ばね10411、中ばね10412、硬ばね10413の3種類の押しばねを重ねてなる非線形ばね104を考える。ばね定数は、軟ばね10411<中ばね10412<硬ばね10413であるものとする。このときの非線形ばね104の特性(荷重に対する変形量の推移)を
図5右図に示す。非線形ばね104に矢印で示す圧縮力が与えられると、荷重が0からaまでの区間では、軟ばね10411、中ばね10412、硬ばね10413が共に変形(圧縮)する。荷重aで軟ばね10411がリミッター107に達する。このときの非線形ばね104全体の変形量をAとする。荷重aからbまでの区間では、中ばね10412、硬ばね10413だけが変形する。荷重bで中ばね10412がリミッター107に達する。このときの非線形ばね104全体の変形量をBとする。荷重bからcまでの区間では、硬ばね10413だけが変形する。荷重cで硬ばね10413がリミッター107に達する。このときの非線形ばね104全体の変形量をCとする。荷重c以降の区間では、全ての線形ばね1041がリミッター107に達しているため、これ以上の変形はしない。すなわちこの例では、非線形ばね104全体の荷重が大きくなるほど、変形に寄与する線形ばね1041の数が減少していく。また各線形ばね1041(10411、10412、10413)の変形の総和が非線形ばね104全体の変形となる。
【0028】
制御部110は、
図5右図に太線で示された、非線形ばね104の特性(荷重に対する変形量の推移)を、ばね特性データとして保持する。例えば非線形ばね104の特性を示す直線の数式を、荷重の区間(荷重0からa、aからb、bからc、c以上)及び/又は変形量の区間(変形量0からA、AからB、BからC、C以上)別に保持しても良い。あるいは、荷重と変形量との対応関係を定義したデータを、テーブルその他の形式で保持しても良い。変形量がわかれば当初の形状(自由長)に基づいて変形後の形状が分かるから、制御部110は、このような数式やテーブルを参照して、非線形ばね104の荷重に対応する形状、又は形状に対応する荷重を算出することができる。
【0029】
なお、軟ばね10411、中ばね10412、硬ばね10413の配置順序は、非線形ばね104の特性に影響しない。但し剛性確保の観点からは、アクチュエータ103に近い方により硬い線形ばね1041を、遠い方により柔らかい線形ばね1041を配置することが好ましい。つまりアクチュエータ103に近い方から順に硬ばね10413、中ばね10412、軟ばね10411を配置し、軟ばね10411に圧子105を保持させることが好ましい。
【0030】
<実施例2>
実施例2では、ばね定数の異なる複数の線形ばね1042を並列に連結されるように配置することにより非線形ばね104を構成する。
図6及び
図7を用いて、実施例2にかかる非線形ばね104の構造を説明する。ここで並列とは、合成ばねの力が個々のばねの力の総和で、合成ばねの変形が個々のばねに共通であることをいう。
【0031】
図6は、非線形ばね104の構成要素である線形ばね1042の構造を説明する断面図である。この線形ばね1042には、他の線形ばね1042と接触して荷重を伝達する連結部108が配置されている(
図6左図及び右図)。また線形ばね1042にも、一定以上の変形(短縮)を阻止すべく働くリミッター107が配置されていても良い(
図6右図)。
【0032】
図7は、実施例2の非線形ばね104の構造の一例を示す断面図である。この非線形ばね104は、
図6で説明した構造を有する複数の線形ばね1042を並列かつ入れ子に組合せてなる。この場合も複数の線形ばね1042は、それぞれ硬さ(ばね定数)が異なっている。
図6の例では、外側から軟ばね10421、中ばね10422、硬ばね10423の3種類の線形ばね1042が入れ子になっている。線形ばね1042はそれぞれ初期状態では変形前の形状(自由長)であるものとする。各押しばねの変形前の形状(自由長)は軟ばね10421>中ばね10422>硬ばね10423の順に長い。したがって各線形ばね1042(10421、10422、10423)の間には一定の遊びがある。
【0033】
非線形ばね104に矢印で示す荷重が与えられると、まず軟ばね10421だけが変形(短縮)して荷重を受け止める。さらに荷重が増して変形が進むと、軟ばね10421と中ばね10422がそれぞれの連結部108を介して接触し、軟ばね10421及び中ばね10422が共に変形(短縮)して荷重を受け止める。さらに荷重が増して変形が進むと、中ばね10422と硬ばね10423がそれぞれの連結部108を介して接触し、軟ばね10421、中ばね10422及び硬ばね10423が共に変形(短縮)して荷重を受け止める。このように、実施例2の非線形ばね104は、荷重が増して変形が進むにつれて変形(短縮)して荷重を受け止める線形ばね1042が多くなり、ばね定数が大きくなる特性を示す。また各線形ばね1042(10421、10422、10423)が受け止める荷重の総和が非線形ばね104全体が受け止める荷重となる。
【0034】
制御部110は、実施例1と同様に、非線形ばね104の特性を数式、テーブルその他任意の形式で予め保持しておくことができる。これにより制御部110は、数式やテーブル等を参照して、非線形ばね104の荷重に対応する変形量、又は変形量に対応する荷重を算出することが可能となる。
【0035】
本実施の形態の測定装置100は、変形が小さいうちは柔らかく(ばね定数が小さく)、変形が大きくなるにつれ硬く(ばね定数が大きく)なる特性を有する非線形ばね104を備える。非線形ばね104は1本で幅広いばね定数をカバーするので、特にワークへの圧子の接触時などにおける荷重制御の精度や、ワーク表面への追従性を維持しつつ、様々な硬さの材料の測定も行うことが可能となる。また、測定装置100を小型化でき、デザイン上の制約を抑制できる。換言すれば、従来技術の線形ばねを非線形ばね104に変え、測定装置100を非線形特性に対応させることにより、測定装置100を大きくせずに、制御できる力の範囲を拡げ、測定できるワークの種類を拡げることができる。小さい力から大きい力まで、力の相対精度を概ね一様に確保できるので、幅広い硬さ等の材料特性を高精度に測定できる。
【0036】
また、本実施の形態では、容易に製造できる線形ばねを単純に連結することにより、非線形ばね104を容易かつ低コストで製造できる。また、期待しない変形に関する剛性が高い線形ばねを連結するので、非線形ばね104においても同様の剛性が確保できる。また、非線形ばね104の基になる線形ばねの特性と、非線形ばね104の特性との関係が比較的単純なので、所望の特性を有する非線形ばね104を容易に設計できる。さらに、非線形ばね104の基になる線形ばねは、いわゆる枯れた技術で設計及び製造できるので高い精度が期待でき、それを単純に連結した非線形ばね104においても高い精度が期待できる。そして実施例2の非線形ばね104は、線形ばねを入れ子に組み合わせることにより、非常にコンパクトである。
【0037】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば上述の実施の形態では、ばね104から圧子105を介してワークに荷重が伝わる構成を示したが、本発明はこれに限定されるものでなく、ばね104が発生する力は、梃子などの任意の機構を介して間接的にワークに伝達されても良い。
【0038】
また、上述の実施の形態では、複数の線形ばねを直列配置又は並列配置することにより非線形ばね104を構成する例を示した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の線形ばねの直列配置と並列配置とを組み合わせて、ばね104を構成しても良い。
【0039】
また、上述の実施の形態では、非線形ばね104を構成する複数の線形ばねとして、伸縮ばねを採用した例を主に示した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、他の任意の種類のばね(例えば板ばね等)を、非線形ばね104を構成する線形ばねとして採用して良い。
【0040】
また、ばね104において直列、並列連結されるばねは、線形ばねでなくてもよい。概ね線形のばねでもよい。意図的に非線形特性を持たせたばね(例えば不当ピッチコイルやテーパーコイル等)を採用して、ばね定数の可動範囲をさらに広げてもよい。また、単一の非線形ばねにより、ばね104を構成することもできる。
【符号の説明】
【0041】
100 測定装置
101 ステージ
102 フレーム
103 アクチュエータ
104 ばね(非線形ばね)
1041 線形ばね(押しばね)
10411,10412,10413 線形ばね(押しばね)
1042 線形ばね(押しばね)
10421,10422,10423 線形ばね(押しばね)
105 圧子
106 スケール
107 リミッター
108 連結部
110 制御部