(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】真空断熱要素用の複合要素を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
F16L 59/065 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
F16L59/065
(21)【出願番号】P 2017516654
(86)(22)【出願日】2015-09-22
(86)【国際出願番号】 EP2015071670
(87)【国際公開番号】W WO2016046172
(87)【国際公開日】2016-03-31
【審査請求日】2018-09-19
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-30
(32)【優先日】2014-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ヴィーグマン,ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】フリッケ,マルク
(72)【発明者】
【氏名】クロッグマン,イェルグ
【合議体】
【審判長】林 茂樹
【審判官】山崎 勝司
【審判官】槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-353687(JP,A)
【文献】特開2001-248782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/00-59/22
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一又は複数パートのコアと外層とを備
えた複合要素を製造するための方法であって、
前記単一又は複数パートのコアと前記外層は互いに
力決定的に組合せされており、及び
少なくとも、
(i)
内部に存在する気体を排気可能な有機材料の単一又は複数パートのコアを準備する工程と、
(ii)前記コアを外層で少なくとも部分的に包み、前記コアに並置する前記外層の表面が熱可塑性材料から成る複合要素前駆体を得る工程と、
(iii)前記複合要素前駆体を、
前記内部に存在する気体を排気可能な有機材料及び前記コアに並置する前記外層の表面が少なくとも部分的に
、軟化する
ことになる期間にわたり処理する工程と、
を備え、
工程(iii)は、熱処理と、1.5バールから3バールの圧力で外層をコアに対して押圧することによって、10秒から10分までの範囲の期間行われ、
前記コアと前記外層との間に
は、前記外層以外の追加的な層又は接着剤は使用されず、及び
工程(ii)の後かつ工程(iii)の前に、工程(a)及び工程(b)、すなわち
(a)前記複合要素前駆体を排気する工程と、
(b)前記外層を閉じて排気済みの複合要素前駆体を得る工程と、を備え、
前記
内部に存在する気体を排気可能な有機材料は、有機エーロゲル、有機キセロゲル及び硬質有機発泡体から成る群から選択され、
前記コアに並置する前記外層の表面は熱可塑性材料から成り、前記コアに並置する前記外層の表面は、
内部に存在する気体を排気可能な有機材料と直接接触し、且つDIN EN ISO
527-1に応じて決定される100Nから300Nの範囲の力で前記
内部に存在する気体を排気可能な有機材料に付着し、閉じた前記外層内に0.01ミリバールから200ミリバールの範囲の圧力が存在する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記処理は、加熱、赤外線又は超音波を介する熱処理を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単一又は複数パートのコアは、板状の外形である、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記外層は多層構造である、請求項1から
3の何れか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記コアに並置する前記外層の表面は、ポリエチレン及びポリプロピレンから成る群から選択された熱可塑性材料から成る、請求項1から
4の何れか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記外層は
耐気体拡散性である、請求項1から
5の何れか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記外層は、DIN53380
に従い測定される気体透過度が1cm
3/(m
2d)未満である、請求項1から
6の何れか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記外層は、DIN53380
に従い測定される水蒸気透過度が1g/(m
2d)未満である、請求項1から
7の何れか1つに記載の方法。
【請求項9】
請求項1から
8の何れか1つに記載の方法により入手し又は入手可能である、ことを特徴とする複合要素。
【請求項10】
請求項1から
8の何れか1つに記載の方法により入手し又は入手可能な複合要素、又は請求項
9に記載の複合要素を真空断熱パネルとして使用する、ことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から
8の何れか1つに記載の方法により入手し又は入手可能な複合要素、又は請求項
9に記載の複合要素を断熱材として使用する、ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一又は複数パートのコアと外層とを備え、それらは互いに圧力ばめされた組合せである、複合要素を製造するための方法に関し、その方法は、少なくとも、排気可能な有機材料からなる単一又は複数パートのコアを準備する工程と、コアを外層で少なくとも部分的に包み、コアに並置する外層の表面が熱可塑性材料から成る複合要素前駆体を得る工程と、複合要素前駆体を、排気可能な有機材料及びコアに並置する外層の表面が少なくとも部分的に軟化する時間中処理する工程と、を備える。本発明は、さらに、本発明の方法により入手した又は入手可能な複合要素に関し、本発明の複合要素を真空断熱パネル又は断熱材として使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
コアと外層とを組合わせる複合要素は、断熱要素として使用する先行技術から原則として公知である。具体的には、排気済みの複合システムは、断熱材として利用され、同様に真空断熱パネルとして公知である。
【0003】
真空断熱パネルのような複合要素は、断熱にますます使用されている。それらの適用例は、冷蔵庫陳列棚、冷蔵車両用コンテナ、保冷箱、冷却セル又は地域暖房配管を含む。複合要素には、熱伝導性が比較的低いおかげで、従来の断熱材にまさる長所がある。クローズドセル硬質発泡ウレタンに関するそれらの省エネルギ潜在力は、一般的には3から7倍まで達する。そのような真空断熱パネルは、必ず断熱コア材から成り、それは、例えば以下のもの、即ち加圧された又は解放されたヒュームドシリカ、沈殿したシリカ、オープンセル硬質ポリウレタン(PU)発泡体、オープンセル押出しポリスチレン発泡体、シリカゲル、ガラス繊維、解放されたポリマ粒子のベッド、硬質又は半硬質のPUから加圧された粉砕再生材料、排気されかつ気密に密封された気密ホイルにパックされたパーライトがある。真空は、一般に100ミリバール未満である。この真空では、コア材料構造及び穴サイズに依存するパネル用に、10mW/m×Kを下回る熱伝導度を達成することができる。
【0004】
使用されるコア材料は、具体的には、ヒュームドシリカの圧縮パウダーシート及びガラス繊維シートである。有用なコア材料は、キセロゲル及び硬質発泡体をさらに含み、それらは、所定の安定性を有して、要求される特定の形状にならう。ポリウレタン発泡体又はポリイソシアヌレート発泡体は、排気されない状態でも良好な断熱効果をもたらすエーロゲルであるので、しばしば使用される。
【0005】
外層の安定性は、複合システムの機械的安定性と同様に問題である。外層がひとたび機械的に損傷すれば、真空は消失する。従って、複合要素は、特にコア材料がヒュームドシリカ及びガラス繊維で作られた場合、機械的安定性を失って断熱性能が下がる。
【0006】
この問題に取り組むために、複合要素は、例えば粘着性層を用いて構成される。これによりホイルと発泡体との間に結合が形成されるので、外層に小さな損傷があっても、複合要素全体にわたる真空の損失を招くことがない。
【0007】
WO2012/119892A1は、発泡性材料又は多孔性材料から、好ましくは発泡性材料からなるコアと、コアに接触する被覆層と、被覆層以外の熱可塑性ポリマホイルとを備える複合要素を開示する。冷却設備の製造において、そのような複合要素を使用することが同様に開示される。
【0008】
例えばDE10059453も、真空断熱パネル内でコア材料とホイルとを組合せる複合要素を記載する。DE10059453は、オープンセル硬質発泡体をホイルに結合するための接着剤の使用を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】WO2012/119892A1
【文献】DE10059453
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、接着剤又は追加の被覆層を使用すると、製造プロセスがより煩わしくなる。前もって生産された、後に排気工程/密封工程が続く、コア材料を単純に包んでしまうことは、製造工程として不可能である。組付けは層ごとに進む必要があるので、多額の費用がかかる。
【0011】
本発明は、安定した複合要素、及びこの複合要素を製造するための簡単な方法を供給することを目的とする。本発明の別の目的は、効率的に断熱する複合要素、及びこの複合要素を製造するための簡単な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明者らは、この目的は、単一又は複数パートのコアと、外層とを備え、それらは互いに圧力ばめで組合わされた、複合要素を製造するための方法によって達成されることを見出した。方法は、少なくとも、
(i)抜出し可能な有機材料から作った単一又は複数パートのコアを準備する工程と、
(ii)コアを外層で少なくとも部分的に包み、コアに並置する外層の表面が熱可塑性材料から成る複合要素前駆体を得る工程と、
(iii)複合要素前駆体を、排気可能な有機材料及びコアに並置する外層の表面が少なくとも部分的に軟化する時間中処理する工程と、を備える。
【0013】
意外なことに、本発明の方法は、複合要素の外層とコアとの間に圧力ばめ結合をもたらすことが分かった。従って、これにより複合要素を製造するための簡単なやり方が提供され、この複合要素は、コアに対する外層の結合のおかげで機械的安定性のレベルを高め、特に、複合要素が排気されかつ外層を閉じる場合、より安定した真空をもたらす。これらの複合要素は、どのような損傷があっても、外層はコアから剥離せず、確実にある程度の構造的完全性を保つ点で注目に値する。
【0014】
本発明の文脈では、複合要素前駆体は、コアと外層との間に耐久性の結合がないという条件で、少なくとも、単一又は複数パートのコアと外層とを備える組合せを意味すると理解されるべきである。
【0015】
本発明の方法は、初めに、排気可能な有機材料からなる単一又は複数パートのコア、及び、複合要素前駆体を得るためにコアを外層で少なくとも部分的に包む次の工程(ii)を提供する。本発明によれば、コアの1つの表面のみを覆うことが可能である。しかしながら、工程(ii)で入手した複合要素前駆体を取り囲む外層が閉じていないという条件で、コアが本質的に完全に包まれた状態であることも同様に可能である。本発明によれば、コアに並置する外層の表面は、熱可塑性材料から成る。この点で、本発明は、外層が完全に熱可塑性材料から成ることも許す。しかしながら、本発明の文脈では、外層が2つ以上の層から成り、コアに並置する外層の表面を形成する層のみが熱可塑性材料から成ることも同様に可能である。
【0016】
本発明によれば、コアに並置する外層の表面を形成する層の厚さは、少なくとも30μm未満でなく、少なくとも40μm未満でないことが好ましく、少なくとも50μm未満でないことがより好ましい。
【0017】
単一又は複数パートのコアは、外層がコアに接近して並置するために、本質的に1つ以上の平坦な表面を有することが好ましい。
【0018】
工程(ii)により得た複合要素前駆体は、次いで、コアに並置する外層の表面及び排気可能な有機材料が、少なくとも部分的に軟化するように工程(iii)により処理される。このプロセスにおいて、結合は、本発明によってコア材料とコアに並置する外層の表面との間で発達する。処理の後に得られる複合要素は、外層と単一又は複数パートのコアとの間の圧力ばめ結合を特徴とする。
【0019】
本発明は、排気可能な有機材料、及びコアに並置する外層の表面の少なくとも部分的な軟化につながるどのような処理でも、原則として許容する。有用な処理は、例えば、排気可能な有機材料及びコアに並置する外層の表面の何らかの加熱又は何らかの関連する軟化につながる処理を含む。
【0020】
本発明によれば、コアに並置する外層の表面は、熱可塑性材料から成る。本発明の更なる好ましい実施形態では、外層は、ホイルから、具体的には少なくとも1つの表面が熱可塑性材料で構成されるホイルから成る。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明によれば、熱可塑性材料から成る外層の表面はコアに並置する。従って、本発明の文脈では、コアと外層との間に、これ以外の層又は接着剤は使用しない。
【0022】
本発明の文脈では、当業者に公知の如何なる適切な熱源も、特に、外層及びコアの均一な加熱につながる熱源も、原則として使用可能である。熱を加えるには、加熱板、加熱ランプ(赤外線ラジエータ)又は超音波を用いることが好ましい。
【0023】
従って、本発明は、別の実施形態として、上述したような方法も提供し、この方法において、処理は、加熱、赤外線又は超音波による熱処理を備える。
【0024】
外層は、コアと外層との間の一定の結合を確実にするために、コアに接近して並置することが好ましい。本明細書の発明は、適切な手段により、例えば外層をぴんと張るとか又は外層を押圧することにより、外層がコアと接触するようになされることを許す。外層をぴんと張ったり又は押圧したりするための適切な装置は、それ自体について当業者に公知である。コアが本質的に平坦な表面を有するとき、押圧に関して、例えば板を用いて行うことができる。
【0025】
従って、本発明は、別の実施形態として、上述したような方法も提供し、この方法において、工程(iii)による処理は、熱処理と、外層をコアに向かって押圧する工程とを備える。
【0026】
何れかの押圧に含まれる圧力に関しては、本発明によって、使用する材料に合わせて調整することが要求される。適切な圧力は、例えば1バールから5バールの範囲内で、例えば1.25バールから4バールまで、好ましくは1.5バールから3バールまで、より好ましくは1.75バールから2バールまで及ぶ。
【0027】
本発明によれば、コアの2つ以上の側面/表面を外層に力決定的に連結(圧力ばめ連結)することも可能である。1つの可能な例では、例えば、コアは外層で完全に覆われ、本発明の方法は、コアと外層との間に力決定的結合(ドイツ語;kraftschluessige Verbindung:圧力ばめ結合)を提供する。
【0028】
本発明の方法は別の工程を含むことができる。コア材料は、向上した断熱性能を実現するために、例えば、コアとして使用される排気可能な有機材料に頼ることが有利である。
【0029】
本発明による方法のあり得る実施形態では、例えば、方法は、排気可能な有機材料を排気する工程を備える。この目的のために、初めに、単一又は複数パートのコアを外層で本質的に完全に囲い込むのが有利であり、次いでコアを排気することができる。これは、例えば2つ以上の側面が閉じ、開いた唯1つの側面を有する外層にとって利点であり、開いた側面は、次いで真空にするために利用できる。単一又は複数パートのコアが板状の外形を有するとき、例えば、外層は、開いた側面を通して導入された単一又は複数パートのコアで3つの側面が閉じられた二層さやの形態で構成することができる。本発明の方法は、従って、例えば工程(ii)の後かつ工程(iii)の前に、排気工程、及びそれに次いで外層を閉じる工程を備えることができる。
【0030】
従って、本発明は、別の実施形態として、上述したような方法も提供し、方法は、工程(ii)の後かつ工程(iii)の前に、工程(a)及び(b)、すなわち
(a)複合要素前駆体を排気する工程と、
(b)外層を閉じて排気済みの複合要素前駆体を得る工程と、を備える。
【0031】
このため、本発明は、1つの実施形態において、単一又は複数パートのコアと外層とを備え、それらは互いに圧力ばめ組合せされた、複合要素を製造するための方法を提供し、方法は、少なくとも、
(i)排気可能な有機材料からなる単一又は複数パートのコアを準備する工程と、
(ii)コアを外層で少なくとも部分的に包み、コアに並置する外層の表面が熱可塑性材料から成る複合要素前駆体を得る工程と、
(a)複合要素前駆体を排気する工程と、
(b)外層を閉じて排気済みの複合要素前駆体を得る工程と、
(iii)複合要素前駆体を、排気可能な有機材料及びコアに並置する外層の表面が少なくとも部分的に軟化する時間中処理する工程と、を備える。
【0032】
工程(iii)による処理の持続時間は、排気可能な有機材料及びコアに並置する外層の表面が少なくとも部分的に確実に軟化するのであれば、広い境界の間で変更することができる。適切な処理は、持続時間が、例えば2秒から30分までの範囲、好ましくは10秒以上から10分までの範囲、より好ましくは30秒から1分までの範囲である。
【0033】
従って、本発明は、別の実施形態として、上述したような方法も提供し、この方法において処理は、2秒から30分までの範囲の時間中実施する。
【0034】
原則として、本発明によって得られる複合要素は、どのような所望形状でも良い。この形状は、本質的に、コアの形状によって予め決定される。好ましい実施形態では、本発明は、板形状の複合要素を製造するための方法を提供する。従って、コアは、板状の外形であることが好ましい。
【0035】
従って、本発明は、別の実施形態として、上述したような方法も提供し、この方法において、単一又は複数パートのコアは、板状の外形である。
【0036】
コアとして使用する所定形状の物品は、一般に、例えば5mmから40mmまでの範囲内の厚さにすることができる。
【0037】
本発明のコアは、排気可能な有機材料から成る。特に適切なのは、一般に断熱材として使用される材料、すなわちそれ自体が、既に効率的な断熱性能を有する材料である。適切な材料は、例えば、硬質有機発泡体又は有機キセロゲル及び有機エーロゲルを含む。排気可能な硬質有機発泡体は、例えば、ポリウレタン又はポリイソシアヌレートに基づくものを含む。本発明では、オープンセル硬質有機発泡体、特にポリウレタン又はポリイソシアヌレートに基づくものが、硬質有機発泡体として優先的に使用される。
【0038】
例えば、本質的に中断しない表面、即ち膜を有する、例えば有機エーロゲル及び有機キセロゲルを使用することも可能である。このタイプの材料は、本発明の方法において、外層とコアとの間の効率的な結合を得るように効率的に処理することができる。
【0039】
従って、本発明は、別の実施形態として、上述したような方法も提供し、排気可能な有機材料は、有機エーロゲル、有機キセロゲル及び硬質有機発泡体から成る群から選ばれる。排気可能な有機材料は、有機エーロゲル、有機キセロゲル及びオープンセル硬質発泡ウレタンから成る群から選ぶことがより好ましい。
【0040】
本発明の別の実施形態では、排気可能な有機材料は、有機キセロゲルである。
【0041】
本発明の目的に適する有機エーロゲル、有機キセロゲル及び硬質有機発泡体は、特に断熱材として利用可能なものである。当業者は、適切な材料の原理に基づいた知識を有する。適切なエーロゲルは、例えば、WO2012/059388A1及びWO2014/048778A1に開示されたそれらを含む。特に適切な有機キセロゲルは、例えばWO2011/069959A2又はWO2012/059388A1に開示される。適切な硬質有機発泡体は、例えばEP2072548A2に開示される。
【0042】
本発明によれば、コアに並置する外層の表面は、熱可塑性材料から成る。本発明の別の好ましい実施形態では、外層はホイルである。
【0043】
具体的には、真空複合要素用の慣例の外層が使用可能である。外層は多層構造であることが好ましく、これによりコア材料に対する外層の確実な圧力ばめ結合が可能になり、永久的な真空が得られる。従って、本発明で好ましいのは耐拡散性外層である。
【0044】
外層の表面の少なくとも1つが熱可塑性材料から成り、この表面がコアに接触するようになされた本発明の文脈では、耐拡散性外層が使用可能である。
【0045】
別の実施形態では、外層は耐拡散性ではない。このタイプの外層は、高い熱絶縁効果を要求しない適用として、又は例えばエーロゲルをコア材料として使用したときのように、コアによって十分な断熱効果を有する複合要素として、特に適する。
【0046】
外層として有用なホイルは、例えば「バリアホイル」という用語によって公知である。本発明の目的にとって特に適切なホイルは、具体的には、空気不透過性又は耐気体拡散性である。別の実施形態では、外層は、1バール圧力及び室温に基づく体積データで、気体透過度が1cm3/(m2d)未満である、及び/又は、水蒸気透過度が1g/(m2d)未満である。他に定義しない限り、気体透過度は、DIN53380に従って決定する。
【0047】
本発明は、別の実施形態として、上述したような方法もさらに提供し、この方法において、外層は耐拡散性である。本発明の別の実施形態によれば、外層は、DIN53380による気体透過度が1cm3/(m2d)未満である。
【0048】
本発明の別の実施形態では、外層は、DIN53380による水蒸気透過度が1g/(m2d)未満である。
【0049】
最後に、本発明は、別の実施形態として、上述したような方法を提供し、この方法において、外層は、DIN53380による気体透過度が1cm3/(m2d)未満であり、DIN53380による水蒸気透過度が1g/(m2d)未満である。
【0050】
本発明は、別の実施形態として、上述したような方法もさらに提供し、この方法において、外層は多層構造を有する。
【0051】
本発明によれば、外層は2つ以上の積層又は他の積層から成ることも可能であり、少なくともその1つは耐拡散性であることが好ましい。外層は、例えば2層又は3層にすることができる。本発明によれば、外層は、例えば多層ホイルとすることができる。
【0052】
本発明では、金属ホイル又はほかの高分子ホイルが、例えば外層として有用である。金属ホイルは、本発明の文脈では、金属層と熱可塑性材料からなる少なくとも1つの層とを含む多層ホイルを意味するものとして理解される。ホイルの表面の少なくとも1つが熱可塑性材料から成り、この表面がコアに接触するようになされていれば、非常に多種多様の高分子ホイルが使用可能である。
【0053】
このため、本発明は、実施形態として、上述したような複合要素を製造するための方法を提供し、この方法において、外層は、高分子ホイル又は金属ホイルを備える。本発明は、別の実施形態として、上述したような複合要素を製造するための方法も提供し、この方法において、外層は、耐拡散性の高分子ホイル又は金属ホイルを備える。ポリエチレン及びポリエチレンテレフタレートが適切な材料の例である。
【0054】
本発明によれば、外層は、例えばポリエチレン又はポリプロピレンといった熱可塑性材料から成る少なくとも1つの表面を有する。本発明の文脈では、熱可塑性材料から成る表面はコアに並置する。
【0055】
従って、本発明は、別の実施形態として、上述したような方法も提供し、その方法において、コアに並置する外層の表面は、ポリエチレン及びポリプロピレンから成る群から選ばれた熱可塑性材料から成る。コアに並置する外層の表面は、ポリエチレンから成ることが好ましい。
【0056】
本発明の目的にとって好ましい外層は、例えば1つのポリエステル層及び1つのポリエチレン層といった例えば2つ以上の層から成り、その一方で、1つ以上の層が、例えば蒸着金属層を有してもよい。例えば、蒸着アルミ層が適切である。本発明によれば、外層の少なくとも1つの表面は、熱可塑性材料から成る。従って、表面層はポリエチレン層であることが好ましい。本明細書の外層は、3つ以上の層から成ることもでき、その場合、例えば1つのポリエステル層は蒸着金属を有し、1つのポリエステル層は蒸着がない、例えば2つ以上のポリエステル層も組合せも可能である。例えば、ポリテレフタラート層が適切である。
【0057】
本発明の目的にとって有用な外層は、例えば、Hanita Coatings RCA株式会社から記号表示V08621で入手可能なホイルのような、市販のバリアホイルを含む。このホイルは、例えば、アルミニウム金属化ポリテレフタレートフィルム及びLLDPEシール層の3層から成る。
【0058】
本発明によれば、外層はまた、例えばポリアミド層、エチレンビニルアルコールコポリマ層又はこれらの組合せを含む別の層を備えることができる。
【0059】
本発明によれば、外層は、個々のホイルの組合せとして構成することができる。外層として有用なホイル及びその製造方法は、それ自体が当業者に公知である。
【0060】
本発明により入手した複合要素は、外層とコア材料との間に圧力ばめ結合を有する。この文脈において、本発明は、外層がコアの一部のみを覆う可能性を許す。この場合、コアは排気されず、外層は、基本的に機械的安定性を改善するために役立つ。しかしながら、コアを外層により完全に囲んで複合要素を排気することが、同様に可能である。
【0061】
コアに対する外層の圧力ばめ結合の強さは、例えばDIN EN ISO 5271に応じて測定できる。本発明によれば、コアに並置する外層の表面は、排気可能な有機材料に直接接触し、且つDIN EN ISO 5271に応じて決定される100Nから300Nの範囲の力で、排気可能な有機材料に付着する。
【0062】
本発明はまた、別の態様において、複合要素をそのようなものとして提供し、さらに断熱材としてのそれらの使用も提供する。
【0063】
従って、本発明は、別の態様として、上述した方法により入手した又は入手可能な複合要素も提供する。
【0064】
より詳しくは、本発明はまた、別の態様として、排気可能な有機材料からなる単一又は複数パートのコアと、コアを取り囲む少なくとも1つの閉じた外層とを備える複合要素を提供し、コアに並置する外層の表面は、排気可能な有機材料に直接接触し、DIN EN ISO 5271と同様に決定される100Nから300Nの範囲の力で排気可能な有機材料に付着し、閉じた外層内には、0.01ミリバールから200ミリバールの範囲の圧力が存在する。
【0065】
本発明の文脈では、複合要素には、コアと外層との間にこれ以上の層がなく、特に被覆層又は接着促進層がない。
【0066】
本発明により得た複合要素は、機械的に安定しており、効率的な断熱をもたらす。コアに対する外層の圧力ばめ結合のおかげで、外層が損傷した場合でも、断熱が与えられ続ける。その結果、本発明の複合要素は、真空断熱パネル又は断熱材としての使用に特に適する。
【0067】
従って、本発明の別の態様はまた、上述した方法により入手した又は入手可能な複合要素の使用方法、又は真空断熱パネルとしての上述した複合要素を提供することができる。
【0068】
従って、本発明はまた、別の態様として、上述した方法により入手し又は入手可能な複合要素又は上述した複合要素の断熱材としての使用方法を提供する。
【0069】
本発明の別の実施形態は、請求項及び実施例から推論可能である。本発明による物品/方法/用途の前述した及び以下で解明する特徴は、列挙した特定の組合せだけでなく、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組合せでも使用できることを理解されたい。例えば、好ましい特徴と特に好ましい特徴との組合せ、又は、詳しく特徴付けない特徴と特に好ましい特徴との組合せなども、この組合せが明らかに説明されなくても、暗黙に理解される。
【0070】
本発明を限定しない本発明の例示的な実施形態を以下に記述する。より詳しくは、本発明はまた、以下に列挙した従属的な参照及びそれ故の組合せに起因する、それらの実施形態も包含する。
【0071】
1.単一又は複数パートのコアと外層とを備え、それらは互いに圧力ばめ組合せされた、複合要素を製造するための方法であって、少なくとも、
(i)排気可能な有機材料からなる単一又は複数パートのコアを準備する工程と、
(ii)コアを外層で少なくとも部分的に包み、コアに並置する外層の表面が熱可塑性材料から成る複合要素前駆体を得る工程と、
(iii)複合要素前駆体を、排気可能な有機材料及びコアに並置する外層の表面が少なくとも部分的に軟化する時間中処理する工程と、を備える。
【0072】
2.処理は、加熱、赤外線又は超音波を介する熱処理を備える、実施形態1による方法。
【0073】
3.工程(iii)による処理は、熱処理と、コアに対する外層の押圧とを備える、実施形態1及び2の何れかによる方法。
【0074】
4.方法は、工程(ii)の後かつ工程(iii)の前に、工程(a)及び工程(b)、すなわち
(a)複合要素前駆体を排気する工程と、
(b)外層を閉じて排気済みの複合要素前駆体を得る工程と、を備える、実施形態1から3の何れか1つによる方法。
【0075】
5.処理は、2秒から30分の範囲の時間中実施する、実施形態1から4の何れか1つによる方法。
【0076】
6.単一又は複数パートのコアは、板状の外形である、実施形態1から5の何れか1つによる方法。
【0077】
7.排気可能な有機材料は、有機エーロゲル、有機キセロゲル及び硬質有機発泡体から成る群から選択される、実施形態1から6の何れか1つによる方法。
【0078】
8.外層は多層構造である、実施形態1から7の何れか1つによる方法。
【0079】
9.コアに並置する外層の表面は、ポリエチレン及びポリプロピレンから成る群から選択された熱可塑性材料から成る、実施形態1から8の何れか1つによる方法。
【0080】
10.外層は耐拡散性である、実施形態1から9の何れか1つによる方法。
【0081】
11.外層は、DIN53380の気体透過度が1cm3/(m2d)未満である、請求項1から10の何れか1つによる方法。
【0082】
12.外層は、DIN53380の水蒸気透過度が1g/(m2d)未満である、請求項1から11の何れか1つによる方法。
【0083】
13.外層は、DIN53380の気体透過度が1cm3/(m2d)未満であり、DIN53380の水蒸気透過度が1g/(m2d)未満である、請求項1から10の何れか1つによる方法。
【0084】
14.実施形態1から13の何れか1つによる方法により入手し又は入手可能な複合要素。
【0085】
15.排気可能な有機材料からなる単一又は複数パートのコアと、コアを取り囲む少なくとも1つの閉じた外層とを備える複合要素であって、コアに並置する外層の表面は熱可塑性材料から成り、コアに並置する外層の表面は、排気可能な有機材料と直接接触し、且つDIN EN ISO 5271と同様に決定される100Nから300Nの範囲の力で排気可能な有機材料に付着し、閉じた外層内に0.01ミリバールから200ミリバールの範囲の圧力が存在する複合要素。
【0086】
16.実施形態1から13の何れか1つの実施形態により入手し又は入手可能な複合要素、又は実施形態14及び15の何れかによる複合要素を、真空断熱パネルとして使用する方法。
【0087】
17.実施形態1から13の何れか1つにより入手し又は入手可能な複合要素、又は実施形態14及び15の何れかによる複合要素を、断熱材として使用する方法。
【0088】
以下の実施例は、本発明を例示し、決して本発明の主題を限定すると解釈されない。
【0089】
実施例
1.製造物の実施例
以下のホイルを使用した。
【0090】
Hanita Coatings RCA株式会社製のV08621ホイル
金属化ポリエステルフィルムと1つのLLDPEシール層との3層
【0091】
1.1 実施例1:キセロゲルの製造
以下の化合物を使用した。
【0092】
成分:
-ASTM D-5155-96Aによる100g当たり31.5gのNCO含有量、2.8から2.9の範囲の官能性、及びDIN 53018による25°Cで550mPa.sの粘性を有するオリゴマーMDI(Lupranat(登録商標)M50)(以下「化合物M50」)
-3,3’,5,5’-テトラエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(以下「MDEA」)
【0093】
触媒:ジメチルピペラジン
56gの化合物M50を、20℃で攪拌しながら、ガラスのビーカー中で210gのアセトンに溶かした。8gの化合物MDEA、1gのジメチルピペラジン及び2gの水を、第2のガラスのビーカー内で210gのアセトンに溶かした。工程(a)による2つの溶液は、混合されて粘性が低いきれいな混合物を得る。その混合物は、硬化させるために室温で24時間放置した。その後、ガラスのビーカーからゲルを移動し、液体(アセトン)を、20°で7日間乾かすことにより除去した。
【0094】
入手したキセロゲルは、117kg/m3の密度と相まって、圧縮強度が0.202N/mm2であった。
【0095】
その熱伝導度は、ホイル(Hanita V08621)を密封するために加える圧力3.6×10-4ミリバールで5.5mW/m×Kであった。
【0096】
1.2 実施例2:オープンセル硬質発泡ウレタンの製造
以下の化合物を使用した。
-ポリオールA:スクロース、グリセリン及び酸化プロピレンから形成され、ヒドロキシル価490であるポリエーテルアルコール
-ポリオールB:プロピレングリコール及び酸化プロピレンから形成され、ヒドロキシル価105であるポリエーテルアルコール
-ポリオールC:プロピレングリコール及び酸化プロピレンから形成され、ヒドロキシル価250であるポリエーテルアルコール
-添加剤1:Evonik製のTegostab(登録商標) B 8870シリコーン安定剤
-添加剤2:Evonik製のOrtegol(登録商標)501 セル開放剤
-触媒1:Polycat(登録商標)58(Air Products)
-触媒2:エチレングリコール中の酢酸カリウム(BASF)
-イソシアン酸塩:ポリマMDI(Lupranat(登録商標)M70、BASF)
【0097】
列挙した原料を用いてポリオール成分を準備し、それをイソシアン酸塩と反応させた。使用する出発原料の量は表1から分かる。混合は混合ヘッド中で行った。反応混合物は、辺の長さが418mm×700mm×455mmである実験型へ搬出され、その内部に放置して硬化させた。
【0098】
【0099】
硬質発泡体ブロックから、寸法が19cm×19cm×2cmの試験片がのこで切り出され、気密なホイル(Hanita V08621)内にパックされ、ホイルは、0.1ミリバールよりも低い圧力への排気に続いて密封された。
【0100】
熱伝導度は、ホイル(Hanita V08621)を密封するために加えた3.5×10-4ミリバールの圧力で7.7mW/m×Kであった。
【0101】
1.3 実施例3:エーロゲルの製造
以下の化合物を使用した。
【0102】
成分:
-ASTM D 5155 96 Aによる100g当たり30.9gのNCO含有量、3の領域における官能性、及びDINによる25°Cで2100mPa.sの粘性を有するオリゴマーMDI(Lupranat(登録商標)M200)(以下「化合物M200」)
-3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(以下「MDMA」)
触媒:Dabco K15(ジエチレングリコール(85%)に溶かしたカリウムヘキサン酸エチル)
48gの化合物M200を、20℃で攪拌しながら、ガラスのビーカー内の210gのアセトンに溶かした。12gの化合物MDMA、2gのDabco K15及び4gの水を、第2のガラスのビーカー内で210gのアセトンに溶かした。工程(a)による2つの溶液は、混合されて粘性が低いきれいな混合物を得る。その混合物は、硬化させるために室温で24時間放置した。ガラスのビーカーからゲルモノリスを取り除いて250mlの加圧滅菌器へ移し、続いて加圧滅菌器を閉じた。モノリスは、CO2流れの中で24時間乾燥させた。(乾燥システム内の)圧力は115バールから120バールであり、温度は40°Cであった。最後に、システム内の圧力は、温度40°Cにて大気圧まで、約45分の過程中に制御されたやり方で下げた。加圧滅菌器を開き、乾いたモノリスを除去した。
【0103】
こうして得たエーロゲルの熱伝導度は、10°Cで17.5mW/m×Kであった。
【0104】
2.コア/ホイル付着の検査
ホイルの熱処理後に押圧を用いて、コアへのホイル(Hanita V08621)の密封/結合が達成された。押圧パラメータは、熱板温度が125°C、押圧時間が3分、そして成形圧力が2バールであった。
【0105】
密封したサンプルは、標準状態(23°C、相対湿度50%)で24時間保存した。
【0106】
コア上に密封されたホイルの引剥検査をDIN EN ISO 527-1に従って行ない、最大引剥力は
実施例1:130N
実施例2:249N
であった。
【0107】
実施例は、コア材料とシール層との間の付着が、複合材料を不安定にするために力を加えなければならないという効果を有することを示している。
【0108】
従って、本発明の複合材料は向上した安定性を示す。