IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東ソー株式会社の特許一覧 ▶ 亜細亜工業株式会社の特許一覧

特許7009255リチウムイオン二次電池負極用バインダー及び負極材
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池負極用バインダー及び負極材
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20220118BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220118BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20220118BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20220118BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220118BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20220118BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20220118BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M4/38 Z
H01M4/587
H01M4/36 E
H01M4/36 C
H01M4/36 A
H01M4/134
H01M4/133
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018031097
(22)【出願日】2018-02-23
(65)【公開番号】P2019145468
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000116301
【氏名又は名称】亜細亜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 大一郎
(72)【発明者】
【氏名】津吉 徹
(72)【発明者】
【氏名】向後 雅則
(72)【発明者】
【氏名】上野 聡志
(72)【発明者】
【氏名】森山 明祐
【審査官】原 和秀
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-526264(JP,A)
【文献】特開2011-049046(JP,A)
【文献】国際公開第2016/181890(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/121322(WO,A1)
【文献】特開2007-297437(JP,A)
【文献】特開2016-066529(JP,A)
【文献】特開2017-134937(JP,A)
【文献】国際公開第2016/125819(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13- 4/62
H01M 10/05-10/0587
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1)で表される構成単位、下式(2)で表される構成単位、及び下式(3)で表される構成単位を繰り返し単位として有し、かつ、重量平均分子量が100,000~3,000,000である共重合体を含むリチウムイオン二次電池負極用バインダー。
【化1】
【化2】
【化3】
(式中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、R1はNa、K又はLiを表し,R2は水素原子又はフェニル基を表し、R3は炭素数1~10のアルキレン基又はアザアルキレン基を表し、R4は炭素数1~10のアルキル基又はアルコキシ基を表し、R5は炭素数1~10のアルキル基を表す。nは0以上の整数を表し、m、lは、1以上の整数を表し、n:m+l=0:100~90:10であり、m:l=999:1~100:900である。)
【請求項2】
上記式において、Rが水素原子である請求項1に記載のリチウムイオン二次電池負極用バインダー。
【請求項3】
上記式において、R2が、水素原子を表し、R3が炭素数1~10のアルキレン基を表し、R4が炭素数1~10のアルコキシ基を表し、かつ、R5が炭素数1~10のアルキル基を表す請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池負極用バインダー。
【請求項4】
上記式において、R2が水素原子であり、R3がプロピレン基であり、R4がエトキシ基であり、かつR5がエチル基である請求項1~3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池負極用バインダー。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池負極用バインダー及び負極活物質を含むリチウムイオン二次電池用負極材。
【請求項6】
負極活物質が、炭素材料又はケイ素材料を含む請求項5に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
【請求項7】
負極活物質が、Si又はSi合金と、炭素質物又は炭素質物と黒鉛成分と、を含む請求項5又は6に記載のチウムイオン二次電池用負極材。
【請求項8】
前記Si又はSi合金の粒径(D50)が0.01~5μmであり、前記炭素質物がSi又はSi合金の少なくとも表面を覆っている請求項7に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
【請求項9】
前記Si又はSi合金が、炭素質物と共に0.2μm以下の厚みの黒鉛薄層の間に挟まった構造を有し、その構造が積層及び/又は網目状に広がっており、前記黒鉛薄層が活物質粒子の表面付近で湾曲して活物質粒子を覆っており、最外層の表面を炭素質物が覆っている請求項7又は8に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
【請求項10】
負極活物質が、粒径(D50)が1~40μm、比表面積が0.5~45m/g、平均細孔径が10~40nm、及び開気孔体積が0.06cm/g以下である請求項5~9のいずれか1項に記載するリチウムイオン二次電池用負極材。
【請求項11】
請求項5~10のいずれか1項に記載するリチウムイオン二次電池用負極材を使用するリチウムイオン二次電池用負極材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池負極用バインダー及びそれを含んでなるリチウムイオン二次電池用負極材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子材料の小型軽量化、さらにHEV又はEV開発の進展に伴い、大容量、高速充放電特性、良好なサイクル特性、かつ安全性に優れた電池開発の要望は益々増大している。なかでも、リチウムイオン二次電池が最も有望な電池として注目され、更なる高性能化が要求されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池の高性能化のために、電極、電解液及びその他の電池部材の改良が検討されている。このうち、電極は、通常、バインダーを溶媒に溶解させたバインダー溶液、又はバインダーを分散媒に分散させた分散液に対して、活物質及び必要に応じて導電性カーボン等の導電材を混合したスラリーを集電体に塗布し、溶媒や分散媒を乾燥などの方法で除去して、活物質及び集電体の各間を結着させて製造される。
【0004】
電池容量、サイクル特性などの特性は、活物質の種類や量、電解液の種類や量に加えて、バインダーも重要な決定要因となる。近年、このバインダーにおいて種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを共重合させたアルキル変性カルボキシル基含有共重合体からなる電極用バインダーが開示されている。特許文献2には、シリコンを含む活物質を用いた場合、充放電の繰り返しによる活物質の体積変化によって充放電容量を低下させないために、架橋剤により架橋された重合体からなる電極用バインダーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-62868号公報
【文献】WO2015/163302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リチウムイオン二次電池においては、その長寿命化の観点から、サイクル特性を改善することが要求される。そこで、引用文献1,2においても、サイクル特性を改善するための技術が提案されている。しかし、リチウムイオン二次電池のサイクル特性について昨今の要求レベルは高く、更なる改善が求められている。
本発明は上記に鑑みて、サイクル特性を改善しうるリチウムイオン二次電池負極用バインダー及びそれを含んでなるリチウムイオン二次電池用負極材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を行った結果、(メタ)アクリル酸を構成単位として含む重合体からなる特定のバインダーをリチウムイオン二次電池負極用バインダーとして用いることにより、優れたサイクル特性を示すリチウムイオン二次電池が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は以下の態様を有するものである。
(1)式(1)、(2)、(3)で表される構成単位を繰り返し単位として有し、かつ、重量平均分子量100,000~3,000,000である共重合体を含むリチウムイオン二次電池負極用バインダー。
【化1】

【化2】
【化3】
但し、上記式(1)において、Rは、水素原子又はメチル基を表し、上記式(2)において、R1はNa、K又はLiを表す。式(3)において、R2は水素原子又はフェニル基を表し、R3は炭素数1~10のアルキレン基又はアザアルキレン基を表し、R4は炭素数1~10のアルキル基又はアルコキシ基を表し、R5は炭素数1~10のアルキル基を表す。式(1)~式(3)において、nは0以上の整数、m及びlは1以上の整数を表し、n:m+l=0:100~90:10であり、m:l=999:1~100:900である。
【0009】
(2)Rが水素原子である上記(1)に記載のリチウムイオン二次電池負極用バインダー。
(3)R2が水素原子、R3が炭素数1~10のアルキレン基、R4が炭素数1~10のアルコキシ基、R5が炭素数1~10のアルキル基である上記(1)又は(2)に記載のリチウムイオン二次電池負極用バインダー。
(4)R2が水素原子、R3がプロピレン基、R4がエトキシ基、R5がエチル基である上記(1)~(3)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池負極用バインダー。
(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池負極用バインダー及び負極活物質を含むリチウムイオン二次電池用負極材。
(6)負極活物質が、炭素材料又はケイ素材料である上記(5)に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
(7)負極活物質が、Si又はSi合金と、炭素質物又は炭素質物と黒鉛成分と、を含む上記(5)又は(6)に記載のチウムイオン二次電池用負極材。
【0010】
(8)前記Si又はSi合金の粒径(D50)が0.01~5μmであり、前記炭素質物がSi又はSi合金の少なくとも表面を覆っている上記(7)に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
(9)前記Si又はSi合金が、炭素質物と共に0.2μm以下の厚みの黒鉛薄層の間に挟まった構造を有し、その構造が積層及び/又は網目状に広がっており、前記黒鉛薄層が活物質粒子の表面付近で湾曲して活物質粒子を覆っており、最外層の表面を炭素質物が覆っている上記(7)又は(8)に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
(10)負極活物質が、粒径(D50)が1~40μm、比表面積が0.5~45m/g、平均細孔径が10~40nm、及び開気孔体積が0.06cm/g以下である上記(5)~(9)のいずれか1項に記載するリチウムイオン二次電池用負極材。
(11)上記(5)~(10)のいずれか1項に記載するリチウムイオン二次電池用負極材を使用するリチウムイオン二次電池用負極材。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れたサイクル特性を示し高寿命を有するリチウムイオン二次電池用負極材、更にはリチウムイオン二次電池の作製が可能なリチウムイオン二次電池負極用バインダーが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について、その実施形態、及び例示物を示して説明する。
本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸を総称し、また、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを総称する。
【0013】
本発明のリチウムイオン二次電池負極用バインダーは、下式(1)で表される構成単位、式(2)で表される構成単位、及び式(3)で表される構成単位を繰り返し単位として有する共重合体からなる。
【0014】
【化4】
【0015】
【化5】
【0016】
【化6】
【0017】
上記式(1)において、Rは、水素原子又はメチル基を表し、好ましくは水素原子である。また、nは、0以上の整数であり、好ましくは5,000~20,000であり、より好ましくは8,000~17,000である。
上記式(2)において、R1は、Na、K又はLiであり、好ましくはNa又はLiであり、特に好ましくはNaである。mは1以上の整数であり、好ましくは5,000~15,000であり、より好ましくは7,000~13,000である。
【0018】
上記式(3)において、R2は、水素原子又はフェニル基を表し、好ましくは水素原子である。また、R3は炭素数1~10のアルキレン基又はアザアルキレン基を表す。
上記炭素数1~10、好ましくは1~4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノナキレン基、デカレン基等が挙げられる。上記炭素数1~10、好ましくは1~4のアザアルキレン基としては、例えばアザメチレン基、アザエチレン基、アザプロピレン基、アザブチレン基、アザペンチレン基、アザヘキシレン基、アザヘプチレン基、アザオクチレン基、アザノナキレン基、アザデカレン基等が挙げられる。なかでも、R3は、炭素数1~10のアルキレン基が好ましく、さらに好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基であり、特に好ましくはプロピレン基である。
【0019】
式(3)におけるR4は炭素数1~10、好ましくは1~4のアルキル基又はアルコキシ基を表す。かかる炭素数1~10のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノナチル基、デカチル基等が挙げられる。上記炭素数1~10、好ましくは1~4のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロトキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキトキシ基、ヘプトキシ基、オクトキシ基、ノナトキシ基、デカトキシ基等が挙げられる。なかでも、炭素数1~10のアルコキシ基が好ましく、さらに好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、プロトキシ基又はブトキシ基であり、特に好ましくはエトキシ基である。
【0020】
式(3)におけるR5は炭素数1~10、好ましくは1~4のアルキル基を表す。かかる炭素数1~10のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノナチル基、デカチル基等が挙げられる。なかでも、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基が好ましく、特に好ましくはエチル基である。式(3)におけるlは1以上の整数を表し、好ましくは1,000~6,000であり、より好ましくは2,000~5,000である。
また、上記n、m、lの割合は、n:(m+l)=0:100~90:10であり、5:95~60:40がより好ましい。この範囲にすることにより、負極活物質への被覆性が高まり、電池特性をより向上させる利点がある。
また、m、lの割合は、m:l=999:1~100:900であり、998:2~600:400がより好ましい。この範囲にすることにより、負極活物質への被覆性を維持した上で充放電による体積変化を抑制し、電池特性をさらに向上させる利点がある。
【0021】
本発明における式(1)、(2)及び(3)で表される構成単位を繰り返し単位として有する共重合体は、式(1)、(2)及び(3)中のRが水素原子であり、かつ式(2)中のR1がLi又はNaであり、かつ式(3)中のR2が水素原子であり、R3が炭素数1~10のアルキル基であり、R4が炭素数1~10のアルコキシ基であり、R5が炭素数1~10のアルキル基である共重合体が好ましい。特に好ましくは、式(1)、(2)及び(3)中のRが水素原子であり、式(2)中のR1がNaであり、かつ式(3)中のR2が水素原子であり、R3がプロピレン基であり、R4がエトキシ基であり、R5がエチル基である共重合体である。
【0022】
本発明における共重合体の重量平均分子量(以下、Mwという。)は、100,000~3,000,000であり、特に好ましくは200,000~2,000,000である。Mwを前記範囲の下限値以上とすることにより、負極活物質層と集電体層との結着性を向上させることができる。また、上限値以下とすることにより、負極用スラリー組成物及び負極活物質層における負極活物質の分散性を良好にできる。ここで、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって、標準ポリスチレン換算の値として求めうる。
【0023】
本発明における共重合体は、他の単量体の繰り返し単位を含んでいてもよい。他の単量体としては、アクリル酸以外のエチレン性不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ヒドロキシ基含有ビニル、アミド基含有ビニル、アミノ基含有ビニル、芳香族ビニル、ポリオキシアルキレン基含有ビニル、アルコキシル基含有ビニル、シアノ基含有ビニル、シアン化ビニル、ビニルエーテル、ビニルエステル、共役ジエン等が挙げられる。これら単量体は単独でも2種類以上を併用してもよい。
他の単量体の割合は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。前記範囲の上限値以下とすることにより、負極活物質層と集電体との結着力を向上させることができる。
【0024】
また、本発明における共重合体は、更に架橋性単量体を含んでいてもよい。ここで、架橋性単量体とは、加熱又はエネルギー線の照射により、重合中又は重合後に架橋構造を形成しうる単量体であり、エチレン性不飽和結合を1個以上有し、架橋性基を有する単量体、エチレン性不飽和結合を2個以上有する単量体などが挙げられる。
【0025】
エチレン性不飽和結合を1個以上有し、架橋性基を有する単量体としては、例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有多官能単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有多官能単量体;3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのアルコキシシリル基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独でも2種類以上を併用してもよい。
【0026】
エチレン性不飽和結合を2個以上有する単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体;ジビニルベンゼンなどのジビニル化合物などが挙げられる。これらは単独でも、2種類以上を併用してもよい。
架橋性単量体の割合は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。これにより、負極活物質層と集電体との結着力を向上させることができる。
【0027】
本発明の共重合体の製造方法としては、(メタ)アクリル酸を、例えば、ラジカル重合開始剤下、溶媒中に溶解又は分散させ、50~100℃で重合することにより式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体が得られ、得られた式(1)で表される繰り返し単位を有する重合体を、後記するように、式(2)の繰り返し単位を有する重合体及び式(3)の繰り返し単位を有する重合体に変性される。その結果、式(1)、式(2)及び式(3)の繰り返し単位を有する重合体を得ることができる。
【0028】
上記ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム等の過硫酸塩系、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系、過酸化ベンゾイル等の過酸化物系等を挙げることができる。(メタ)アクリル酸を溶媒中に溶解又は分散させる溶媒としては、水又は水と水溶性有機溶媒との混合溶媒が挙げられ、好ましくは水である。水としては、特に制限はなく、水道水、イオン交換水、蒸留水、純水(イオン交換後、蒸留)のいずれでもよいが、無機イオンが取り除かれているという観点で、イオン交換水か、純水がより好ましい。水溶性有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール(イソプロパノール)、1-ブタノール、2-ブタノール、t-ブタノール等の低級アルコール類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;アセトン等のケトン類;1、4-ジオキサン等のエーテル類等が挙げられる。これらは単独でも2種類以上を併用してもよい。なかでも、特に好ましくはイオン交換水又は純水である。
【0029】
式(1)の繰り返し単位を有する重合体は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸物と反応させてカルボン酸基をNa塩,K塩、Li塩に変えることにより、式(2)の繰り返し単位を有する重合体に変性することができる。具体的には、アルカリ金属水酸物水溶液を、式(1)の繰り返し単位を含む重合体に添加、撹拌することにより行うことが好ましい。反応温度は30℃以上に維持し、30分以上撹拌して行うことが好ましい。
【0030】
また、式(1)の繰り返し単位を有する重合体は、アミノ基含有アルコキシシラン誘導
体を反応させてカルボン酸基をカルボン酸誘導体に変えることにより、式(3)の繰り返し単位を有する重合体に変性することができる。具体的には、アミノ基含有アルコキシシラン誘導体の水溶液を、式(1)の繰り返し単位を含む重合体に添加、撹拌することにより行うことが好ましい。反応温度は30℃以上に維持し、30分以上撹拌して行うことが好ましい。
上記アミノ基含有アルコキシシラン誘導体としては、シランカップリング剤であることが好ましい。本発明におけるシランカップリング剤としては、具体的には、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらは単独でも2種以上組み合わせて用いてもよい。なお、シランカップリング剤は、市販品を用いてもよく、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシランであるKBE-903(信越化学工業社製)等が挙げられる。
【0031】
上記した式(1)の繰り返し単位を有する重合体の式(2)、式(3)を有する重合体への変性は、同時的に行ってもよいし、逐次的に行ってもよく、また、式(2)の繰り返し単位を有する重合体への変性を行い、次いで式(3)の繰り返し単位を有する重合体への変性を行ってもよく、逆に、式(3)の繰り返し単位を有する重合体への変性を行い、次いで式(2)の繰り返し単位を有する重合体への変性を行ってもよい。
このようにして得られる式(1)、式(2)及び式(3)の繰り返し単位を有する重合体における式(1)、式(2)及び式(3)の構成単位の割合は、上記したn、m、lの割合についての好ましい範囲、より好ましい範囲を有するようにせしめされる。
【0032】
リチウムイオン二次電池用負極材は、本発明のバインダー、負極活物質及び必要により導電助剤を混合し、好ましくは溶剤を用いて負極作製用スラリーとし、通常、これを集電体に塗布することにより得られる。
負極作製用スラリーにおける本発明のバインダーの割合は、溶媒を含まない負極作製用スラリーの100質量%に対して、好ましくは1~12質量%であり、より、好ましくは2~8質量%である。バインダーが多すぎると負極活物質の割合が相対的に減少するため、電池の充放電時に高容量が得られにくく、逆に少なすぎると結着力が充分でないため、サイクル特性が低下してしまう。
【0033】
負極活物質としては、例えば、グラファイト、天然黒鉛、人造黒鉛などの炭素材料、ケイ素、酸化ケイ素、ケイ素含有合金などのケイ素系材料、スズ系材料、ポリアセン系導電性ポリマー、チタン酸リチウムなどの複合金属酸化物などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。なかでも、炭素材料又はケイ素系材料が好ましく、特に好ましくはケイ素材料である。負極活物質の割合は、溶媒を含まない負極作製用スラリーの100質量%に対して好ましくは60~99質量%であり、より、好ましくは85~98質量%である。
【0034】
負極活物質としてのケイ素材料は、Si又はSi合金と、炭素質物又は炭素質物と黒鉛成分と、を含む負極活物質において、該活物質は、平均粒径(D50)が1~40μmであり、比表面積が0.5~45m/gであり、平均細孔径が10~40nmであり、開気孔体積が0.06cm/g以下であることが好ましい。
ここで、ケイ素材料とは、純度が98重量%程度の汎用グレードの金属シリコン、純度が2~4Nのケミカルグレードの金属シリコン、塩素化して蒸留精製した4Nより高純度のポリシリコン、単結晶成長法による析出工程を経た超高純度の単結晶シリコン、若しくはそれらに周期表13族もしくは15族元素をドーピングし、p型又はn型としたもの、半導体製造プロセスで発生したウエハの研磨や切断の屑、プロセスで不良となった廃棄ウエハなど、汎用グレードの金属シリコン以上の純度のものであれば特に限定されない。
【0035】
上記Si合金とは、Siが主成分の合金である。Si合金において、Si以外に含まれる元素としては、周期表2~15族の元素の一つ以上が好ましく、合金に含まれる相の融点が900℃以上となる元素の選択及び/又は添加量が好ましい。
負極活物質において、Si又はSi合金(Si化合物)の粒径(D50)は0.01~5μmが好ましく、さらに好ましくは0.01~1μmであり、特に好ましくは0.05~0.6μmである。0.01μmより小さいと、表面酸化による容量や初期効率の低下が激しく、5μmより大きいと、リチウム挿入による膨張で割れが激しく生じ、サイクル劣化が激しくなりやすい。なお、粒径(D50)はレーザー粒度分布計で測定した体積平均の粒子径である。
負極活物質におけるSi化合物の含有量は、10~80質量部が好ましく、15~50質量部が特に好ましい。該Si化合物の含有量が10質量部未満の場合、従来の黒鉛に比べて十分に大きい容量が得られず、80質量部より大きい場合、サイクル劣化が激しくなりやすい。
【0036】
負極活物質における上記炭素質物とは、非晶質もしくは微結晶の炭素物質であり、2000℃を超える熱処理で黒鉛化する易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)、黒鉛化しにくい難黒鉛化炭素(ハードカーボン)が挙げられる。
ハードカーボンは、樹脂又は樹脂組成物などの前駆体(原材料)を炭化処理して得ることが好ましい。ハードカーボンの前駆体としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂などのフェノール樹脂;ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;アニリン樹脂;シアネート樹脂;フラン樹脂;ケトン樹脂;不飽和ポリエステル樹脂;ウレタン樹脂などが挙げられる。また、これらが種々の成分で変性された変性物を用いることもできる。
【0037】
また、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられる。これらのうち1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのなかでも特に好ましいハードカーボンの前駆体は、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂などのフェノール樹脂等が挙げられる。
ハードカーボンの前駆体の形状は、粉状、板状、粒状、繊維状、塊状、球状などの形状のものが使用可能である。これらの前駆体は、各種成分を混合する際に溶剤に溶解することが好ましい。ハードカーボンの前駆体の重量平均分子量としては、1000以上が好ましく、1,000,000以下がより好ましい。
【0038】
ソフトカーボンは、樹脂又は樹脂組成物などの前駆体を炭化処理して得ることが好ましい。上記樹脂又は樹脂組成物としては、石炭系ピッチ(例えば、コールタールピッチ)、石油系ピッチ、メソフェーズピッチ、コークス、低分子重質油、又はそれらの誘導体などが挙げられる。石炭系ピッチ(例えば、コールタールピッチ)、石油系ピッチ、メソフェーズピッチ、コークス、低分子重質油、又はそれらの誘導体などが好ましい。なかでも、石炭系ピッチなどの前駆体から得られるソフトカーボンが好ましい。
【0039】
ソフトカーボンの前駆体の形状は、粉状、板状、粒状、繊維状、塊状、球状などが使用可能である。これらの前駆体は、各種成分を混合する際に使用する溶剤に溶解することが好ましい。ソフトカーボンの前駆体の重量平均分子量としては、1000以上が好ましく、1,000,000以下がより好ましい。
負極活物質において、炭素質物が含まれる場合、炭素質物の含有量は90~10質量部が好ましく、60~10質量部が特に好ましい。該含有量が10質量部未満の場合、炭素質物がSi化合物を覆うことができず、導電パスが不十分となって容量劣化が激しく起こりやすく、90質量部より大きい場合、容量が十分に得られない。
【0040】
負極活物質における黒鉛成分としては、天然黒鉛材、人造黒鉛等が挙げられ、その中でも通常グラファイトと呼ばれる天然黒鉛を薄片化した薄片化黒鉛が好ましい。ここで、薄片化黒鉛とは、グラフェンシートの積層数が400層以下の黒鉛であるグラフェンシートは主にファンデルワールス力によって互いに結合している。
薄片化黒鉛におけるグラフェンシートの積層数は、リチウムイオンと化合可能な負極活物質と薄片化黒鉛とがより均一に分散し、負極活物質を用いた電池材料の膨張がより抑制される、及び/又は、リチウム二次電池のサイクル特性がより優れる点で、300層以下が好ましく、200層以下がより好ましく、150層以下がさらに好ましい。取り扱い性の点からは、5層以上が好ましい。
なお、薄片化黒鉛におけるグラフェンシートの積層数は透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて測定することができる。
【0041】
薄片化黒鉛の平均厚みは、本発明の効果がより優れる点で、40nm以下が好ましく、22nm以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、製造手順が煩雑になることから、通常、4nm以上である場合が多い。なお、上記平均厚みの測定方法としては、電子顕微鏡観察(TEM)によって薄片化黒鉛を観察し、薄片化黒鉛中の積層したグラフェンシートの層の厚みを10個以上測定して、その値を算術平均することによって得られる。
【0042】
薄片化黒鉛は、黒鉛化合物をその層面間において剥離し薄片化して得られる。薄片化黒鉛としては、例えば、いわゆる膨張黒鉛が挙げられる。
膨張黒鉛中には、黒鉛が含まれており、例えば、鱗片状黒鉛を濃硫酸や硝酸や過酸化水素水等で処理し、グラフェンシートの隙間にこれら薬液をインターカレートさせ、さらに加熱してインターカレートされた薬液が気化する際にグラフェンシートの隙間を広げることによって得られる。なお、後述するように、膨張黒鉛を出発原料として所定の負極活物質を製造することができる。つまり、負極活物質中の黒鉛成分として、膨張黒鉛を使用することもできる。
【0043】
また、黒鉛成分として、球形化処理が施された膨張黒鉛も挙げられる。球形化処理の手順は後段で詳述する。なお、後述するように、膨張黒鉛に球形化処理を実施する際には、他の成分(例えば、ハードカーボン及びソフトカーボンの前駆体、リチウムイオンと化合可能な電池活物質など)と共に、球形化処理が実施されてもよい。
なお、黒鉛成分の比表面積は、本発明の効果がより優れる点で、10m/g以上が好ましく、20m/g以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、製造の手順が煩雑となり、合成が困難な点で、比表面積は200m/g以下が好ましい。
なお、黒鉛成分の比表面積は、窒素吸着によるBET法(JIS Z 8830、一点法)を用いて測定したものである。
【0044】
黒鉛成分は、純度99.9重量%以上、若しくは不純物量1000ppm以下であり、Sの含有量が1.0重量%以下及び/又はBET比表面積が200m/g以下であることが好ましい。純度が99.9重量%よりも少なく、若しくは不純物量が1000ppmよりも多いと、不純物由来のSEI形成による不可逆容量が多くなるため、初回の充電容量に対する放電容量である初回充放電効率が低くなる傾向がある。また、Sの含有量が
1.0重量%よりも高くなると同様に不可逆容量が高くなるため、初回充放電効率が低くなる。さらに好ましくは、Sの含有量は0.1重量%以下が好ましい。黒鉛成分のBET比表面積が200m/gよりも高いと、電解液との反応する面積が多くなるため、初回充放電効率が低くなる。
【0045】
黒鉛成分中の不純物量の測定は、ICP発光分光分析法により、以下の26元素(Al、Ca、Cr、Fe、K、Mg、Mn、Na、Ni、V、Zn、Zr、Ag、As、Ba、Be、Cd、Co、Cu、Mo、Pb、Sb、Se、Th、Tl、U)の不純物半定量値により測定する。また、Sの含有量は、酸素フラスコ燃焼法で燃焼吸収処理した後、フィルター濾過してイオンクロマトグラフィー(IC)により測定される。
【0046】
負極活物質において、炭素質物と黒鉛成分が含まれる場合、各々の含有量は、それぞれ、5~60質量部、20~80質量部が好ましく、10~55質量部、30~70質量部が特に好ましい。炭素質物の含有量が5質量部未満の場合、炭素質物がSi化合物及び黒鉛を覆うことができず、Si化合物と黒鉛との接着が不十分となり、負極活物質粒子の形成が困難となりやすい。また、60質量部より大きい場合、導電性が炭素質物より高い黒鉛の効果が十分に引き出されない。一方、黒鉛成分の含有量が20質量部未満の場合、炭素質物より高い導電性を有する黒鉛の効果が十分でなく、80質量部より多い場合、従来の黒鉛に比べて十分に大きい容量が得られない。
【0047】
負極活物質の粒径D50(50%体積粒径)は、本発明の効果がより優れる点で、1~40μmが好ましく、5~35μmがより好ましく、5~30μmがさらに好ましい。また、粒径D90(90%体積粒径)は、本発明の効果がより優れる点で、10~75μmが好ましく、10~60μmがより好ましく、20~45μmがさらに好ましい。さらに、粒径D10(10%体積粒径)は、本発明の効果がより優れる点で、1~20μmが好ましく、2~10μmがより好ましい。
【0048】
D10、D50及びD90は、レーザー回折散乱法により測定した累積粒度分布の微粒側から、それぞれ、累積10%、累積50%、累積90%の粒径にそれぞれ該当する。
なお、測定に際しては、負極活物質を液体に加えて超音波を照射しながら激しく混合し、作製した分散液を装置にサンプルとして導入し、測定を行う。液体としては作業上、水やアルコール、低揮発性の有機溶媒を用いることが好ましい。この時、得られる粒度分布図は正規分布を示すことが好ましい。
【0049】
負極活物質は、比表面積は0.5~45m/gが好ましく、さらに好ましくは0.5~30m/g、特に好ましくは0.5~10m/gである。この範囲を満たすことにより電解液との接触及び充放電により負極活物質表面に形成される固体電解質層(SEI)を抑制し、初回クーロン効率と容量維持率を改善できる。
また、平均細孔径は10~40nmが好ましく、さらに好ましくは10~30nm、特に好ましくは10~20nmである。また開気孔体積は0.06cm/g以下が好ましく、さらに好ましくは0.04cm/g以下、特に好ましくは0.02cm/g以下である。平均細孔径及び開気孔体積をこの範囲を満たすことにより負極活物質内部への電解液侵入を抑制し、容量維持率、過膨張率を改善できる。
【0050】
負極活物質の比表面積(BET比表面積)、平均細孔径、開気孔体積の測定方法は、試料を300℃で30分真空乾燥後、窒素吸着多点法で測定する。
負極活物質においては、負極活物質が炭素質物と共に0.2μm以下の厚みの黒鉛薄層の間に挟まった構造であり、その構造が積層及び/又は網目状に広がっており、黒鉛薄層が負極活物質粒子の表面付近で湾曲して負極活物質粒子を覆っていることが好ましい。
黒鉛薄層の厚みが0.2μmを超えると電子伝達効果が薄まる。黒鉛薄層が断面で見て線状の場合、その長さは負極活物質粒子のサイズの半分以上あることが電子伝達に好ましく、負極活物質粒子のサイズと同等程度であることがさらに好ましい。黒鉛薄層が網目状の場合、黒鉛薄層の網が負極活物質粒子のサイズの半分以上に渡って繋がっていることが電子伝達に好ましく、負極活物質粒子のサイズと同等程度であることがさらに好ましい。
負極活物質においては、黒鉛薄層が負極活物質粒子の表面付近で湾曲して負極活物質粒子を覆うことが好ましい。そのような形状にすることで、黒鉛薄層端面から電解液が侵入して、負極活物質や黒鉛薄層端面と電解液が直接接して、充放電時に反応物が形成され、効率が下がるというリスクが低減する。
【0051】
負極活物質の製造方法は、例えば、Si又はSi合金、炭素前駆体、必要に応じて黒鉛成分を混合する工程と、混合物を造粒・圧密化する工程と、造粒・圧密化物を粉砕及び球形化処理して略球状の複合粒子を形成する工程と、複合粒子を不活性雰囲気中で焼成する工程と、炭素前駆体と該複合粒子もしくは焼成粉とを混合する工程、及びその混合物を不活性雰囲気中で加熱することで炭素膜を焼成粉もしくは炭素被覆した複合粒子を得る工程を含むものである。
【0052】
原料であるSi化合物は、粒径(D50)が0.01~5μmの粉末を使用することが好ましい。所定の粒子径のSi化合物を得るためには、上述のSi化合物の原料(インゴット、ウエハ、粉末などの状態)を粉砕機で粉砕し、場合によっては分級機を用いる。インゴット、ウエハなどの塊の場合、最初はジョークラッシャー等の粗粉砕機を用いて粉末化することができる。その後、例えば、ボール、ビーズなどの粉砕媒体を運動させ、その運動エネルギーによる衝撃力や摩擦力、圧縮力を利用して被砕物を粉砕するボールミル、媒体撹拌ミルや、ローラによる圧縮力を利用して粉砕を行うローラミルや、被砕物を高速で内張材に衝突もしくは粒子相互に衝突させ、その衝撃による衝撃力によって粉砕を行うジェットミルや、ハンマー、ブレード、ピンなどを固設したローターの回転による衝撃力を利用して被砕物を粉砕するハンマーミル、ピンミル、ディスクミルや、剪断力を利用するコロイドミルや高圧湿式対向衝突式分散機「アルティマイザー」などを用いて微粉砕することができる。
【0053】
粉砕は、湿式、乾式共に用いることができる。さらに微粉砕するには、例えば、湿式のビーズミルを用い、ビーズの径を段階的に小さくすること等により非常に細かい粒子を得ることができる。また、粉砕後に粒度分布を整えるため、乾式分級や湿式分級もしくはふるい分け分級を用いることができる。乾式分級は、主として気流を用い、分散、分離(細粒子と粗粒子の分離)、捕集(固体と気体の分離)、排出のプロセスが逐次もしくは同時に行われ、粒子相互間の干渉、粒子の形状、気流の乱れ、速度分布、静電気の影響などで分級効率を低下させないように、分級をする前に前処理(水分、分散性、湿度などの調整)を行うか、使用される気流の水分や酸素濃度を調整して行う。乾式で分級機が一体となっているタイプでは、一度に粉砕、分級が行われ、所望の粒度分布とすることが可能となる。
所定の粒子径のSi化合物を得る別の方法としては、プラズマやレーザー等でSi化合物を加熱して蒸発させ、不活性雰囲気中で凝固させて得る方法、ガス原料を用いてCVDやプラズマCVD等で得る方法があり、これらの方法は0.1μm以下の超微粒子を得るのに適している。
【0054】
原料の炭素前駆体としては、炭素を主体とする炭素系化合物で、不活性雰囲気中での熱処理により炭素質物になるものであれば特に限定はなく、前記易黒鉛化炭素(ソフトカーボン)、黒鉛化しにくい難黒鉛化炭素(ハードカーボン)等が挙げられる。
原料である黒鉛成分は、天然黒鉛、石油や石炭のピッチを黒鉛化した人造黒鉛等が使用でき、鱗片状、小判状もしくは球状、円柱状もしくはファイバー状等が用いられる。また、それらの黒鉛成分を酸処理、酸化処理した後、熱処理することにより膨張させて黒鉛層間の一部が剥離してアコーディオン状となった膨張黒鉛もしくは膨張黒鉛の粉砕物、又は超音波等により層間剥離させたグラフェン等も用いることができる。
【0055】
膨張黒鉛もしくは膨張黒鉛の粉砕物はその他の黒鉛に比べて可とう性に優れており、後述する複合粒子を形成する工程において、粉砕された粒子が再結着して略球状の複合粒子を容易に形成することができる。この点で、膨張黒鉛もしくは膨張黒鉛の粉砕物を用いることが好ましい。原料の黒鉛成分は予め混合工程で使用可能な大きさに整えて使用し、混合前の粒子サイズとしては天然黒鉛や人造黒鉛では通常1~100μm、膨張黒鉛もしくは膨張黒鉛の粉砕物、グラフェンでは通常5μm~5mm程度である。
【0056】
これらのSi化合物、炭素前駆体、さらに必要に応じて黒鉛成分との混合は、炭素前駆体が加熱により軟化、液状化するものである場合は、加熱下でSi化合物、炭素前駆体、さらに必要に応じて黒鉛成分を混練することによって行うことができる。また、炭素前駆体が溶媒に溶解するものである場合には、溶媒にSi化合物、炭素前駆体、さらに必要に応じて黒鉛成分を投入し、炭素前駆体が溶解した溶液中でSi化合物、炭素前駆体、さらに必要に応じて黒鉛成分を分散、混合し、次いで溶媒を除去することで行うことができる。
溶媒は、炭素前駆体を溶解できるものであれば特に制限なく使用できる。例えば、炭素前駆体としてピッチ、タール類を用いる場合には、キノリン、ピリジン、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、クレオソート油等が使用でき、ポリ塩化ビニルを用いる場合には、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ニトロベンゼン等が使用でき、フェノール樹脂、フラン樹脂を用いる場合には、エタノール、メタノール等が使用できる。
【0057】
混合方法としては、炭素前駆体を加熱軟化させる場合は、混練機(ニーダー)を用いることができる。溶媒を用いる場合は、上述の混練機の他、ナウターミキサー、レーディゲミキサー、ヘンシェルミキサ、ハイスピードミキサー、ホモミキサー等を用いることができる。また、これらの装置でジャケット加熱したり、その後、振動乾燥機、パドルドライヤーなどで溶媒を除去する。
これらの装置により、炭素前駆体を固化、又は、溶媒除去の過程における撹拌をある程度の時間続けることで、Si化合物、炭素前駆体、さらに必要に応じて黒鉛成分との混合物は造粒・圧密化される。また、炭素前駆体を固化、又は溶媒除去後の混合物をローラーコンパクタ等の圧縮機によって圧縮し、解砕機で粗粉砕することにより、造粒・圧密化することができる。これらの造粒・圧密化物の大きさは、その後の粉砕工程での取り扱いの容易さから直径が0.1~5mmが好ましい。
【0058】
造粒・圧密化の方法は、圧縮力を利用して被砕物を粉砕するボールミル、媒体撹拌ミルや、ローラによる圧縮力を利用して粉砕を行うローラミルや、被砕物を高速で内張材に衝突もしくは粒子相互に衝突させ、その衝撃による衝撃力によって粉砕を行うジェットミルや、ハンマー、ブレード、ピンなどを固設したローターの回転による衝撃力を利用して被砕物を粉砕するハンマーミル、ピンミル、ディスクミル等の乾式の粉砕方法が好ましい。また、粉砕後に粒度分布を整えるため、風力分級、ふるい分け等の乾式分級が用いられる。粉砕機と分級機が一体となっているタイプでは、一度に粉砕、分級が行われ、所望の粒度分布とすることが可能となる。
【0059】
造粒・圧密化した混合物を粉砕及び球形化処理を施す方法としては、上述の粉砕方法により粉砕して粒度を整えた後、専用の球形化装置を通す方法と、上述のジェットミルやローターの回転による衝撃力を利用して被砕物を粉砕する方法を繰り返す、もしくは処理時間を延長することで球形化する方法がある。専用の球形化装置としては、ホソカワミクロン社のファカルティ(商品名)、ノビルタ(商品名)、メカノフュージョン(商品名)、日本コークス工業社のCOMPOSI、奈良機械製作所社のハイブリダイゼーションシステム、アーステクニカ社のクリプトロンオーブ、クリプトロンエディ等が挙げられる。
【0060】
上記粉砕及び球形化処理を行うことにより、略球状の複合粒子を得ることができる。
得られた複合粒子は、アルゴンガスや窒素ガス気流中、もしくは真空などで焼成する。焼成温度は300~1200℃が好ましく、特に好ましくは600~1200℃である。焼成温度が300℃未満であると、炭素前駆体の未熱分解成分の残存により、複合粒子内部の黒鉛層とSi、及び、複合粒子間の電気抵抗が増大するため、放電容量が低下する傾向にある。一方、焼成温度が1200℃を超える場合、Si化合物と炭素前駆体由来の非晶質炭素や黒鉛成分との反応が起こる可能性が強くなり、放電容量の低下が発生する傾向にある。
【0061】
また、負極活物質は、前工程で得られた炭素被覆した複合粒子、球形化した複合粒子もしくは焼成粉と炭素前駆体とを不活性雰囲気中で焼成し炭素膜を複合粒子もしくは焼成粉の内外に被覆する工程を行い、製造することが好ましい。
用いる炭素前駆体としては、石炭系ピッチ(例えば、コールタールピッチ)、石油系ピッチ、メソフェーズピッチ、コークス、低分子重質油等が挙げられる。
炭素被覆した複合粒子、球形化した複合粒子もしくは焼成粉と炭素前駆体とを不活性雰囲気中で焼成し炭素膜を複合粒子もしくは焼成粉の内外に被覆する際には、炭素前駆体を坩堝等に入れ、複合粒子と直接接触しないようにした状態で不活性雰囲気にて加熱、もしくは、不活性雰囲気中にメタン、エタン、エチレン、アセチレ、プロピレン等の炭化水素ガスを添加し、加熱する事により、炭素膜を焼成粉もしくは炭素被覆した複合粒子もしくは炭素被覆した焼成粉の内外に気相で被覆することが好ましい。
【0062】
さらに、負極活物質は、気相で炭素膜を被覆する工程の後、球形処理した粉体、焼成粉もしくは炭素被覆した粉体を風力分級する工程を行い、製造することが好ましい。
風力分級の方法としては、ホソカワミクロン製ATP-50のような風力分級装置に粉体を投入し、ローター回転数、や差圧等の運転条件を調整することで、分級される粉体の粒径を制御することが可能である。
導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、気相成長カーボン繊維、カーボンナノチューブ等の導電性カーボンなどが挙げられる。また、黒鉛などの炭素粉末、各種金属のファイバーや箔などを用いてもよい。これらの導電助剤は、単独でも、2種類以上を併用してもよい。導電助剤の割合は、溶媒を含まない負極作製用スラリーの100質量%に対して好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
溶剤としては、例えば、水、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。なお、スラリーを調製する際には、上記のように必要に応じて、公知の攪拌機、混合機、混練機、ニーダーなどを用いて攪拌混合してもよい。
【0063】
集電体としては、ニッケル、銅、スレンレス(SUS)などの導電性の材料を用いた箔が好ましく、電池のサイクルがより優れる点で、三次元構造を有する集電体がより好ましい。三次元構造を有する集電体の材料としては、例えば、炭素繊維、スポンジ状カーボン(スポンジ状樹脂にカーボンを塗工したもの)、金属などが挙げられる。
三次元構造を有する集電体(多孔質集電体)としては、金属や炭素の導電体の多孔質体として、平織り金網、エキスパンドメタル、ラス網、金属発泡体、金属織布、金属不織布、炭素繊維織布、又は炭素繊維不織布などが挙げられる。
【0064】
(正極)
上記リチウム二次電池用負極材を有するリチウム二次電池に使用される正極としては、公知の正極材料を使用した正極を使用することができる。
正極の製造方法としては公知の方法が挙げられ、正極材料と結合剤及び導電剤よりなる正極合剤を集電体の表面に塗布する方法などが挙げられる。正極材料(正極活物質)としては、酸化クロム、酸化チタン、酸化コバルト、五酸化バナジウムなどの金属酸化物や、LiCoO、LiNiO、LiNi1-yCo、LiNi1-x-yCoAl、LiMnO、LiMn、LiFeOなどのリチウム金属酸化物、硫化チタン、硫化モリブデンなどの遷移金属のカルコゲン化合物、又は、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロールなどの導電性を有する共役系高分子物質などが挙げられる。
【0065】
(電解液)
上記リチウム二次電池用負極材を有するリチウム二次電池に使用される電解液としては、公知の電解液を使用することができる。
例えば、電解液中に含まれる電解質塩として、LiPF、LiBF、LiAsF、LiClO、LiB(C)、LiCl、LiBr、LiCFSO、LiCHSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiN(CFCHOSO、LiN(CFCFOSO、LiN(HCFCFCHOSO、LiN{(CFCHOSO、LiB{C(CF、LiN(SOCF、LiC(SOCF、LiAlCl、LiSiFなどのリチウム塩を用いることができる。特にLiPF及びLiBFが酸化安定性の点から好ましい。
電解質溶液中の電解質塩濃度は0.1~5モル/リットルが好ましく、0.5~3モル/リットルがより好ましい。
【0066】
電解液で使用される溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどのカーボネート、1,1-又は1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジオキソフラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、アニソール、ジエチルエーテルなどのエーテル、スルホラン、メチルスルホランなどのチオエーテル、アセトニトリル、クロロニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル、ホウ酸トリメチル、ケイ酸テトラメチル、ニトロメタン、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、酢酸エチル、トリメチルオルトホルメート、ニトロベンゼン、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、テトラヒドロチオフェン、ジメチルスル
ホキシド、3-メチル-2-オキサゾリン、エチレングリコール、ジメチルサルファイトなどの非プロトン性有機溶媒を用いることができる。
【0067】
なお、電解液の代わりに、高分子固体電解質、高分子ゲル電解質などの高分子電解質を使用してもよい。高分子固体電解質又は高分子ゲル電解質のマトリクスを構成する高分子化合物としては、ポリエチレンオキサイドやその架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレートなどのメタクリレート系高分子化合物、ポリアクリレートなどのアクリレート系高分子化合物、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)やビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系高分子化合物が好ましい。これらを混合して使用することもできる。酸化還元安定性などの観点から、PVDFやビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素系高分子化合物が特に好ましい。
【0068】
(セパレータ)
上記リチウム二次電池用負極材を有するリチウム二次電池に使用されるセパレータとしては、公知の材料を使用できる。例えば、織布、不織布、合成樹脂製微多孔膜などが例示される。合成樹脂製微多孔膜が好適であるが、なかでもポリオレフィン系微多孔膜が、膜厚、膜強度、膜抵抗などの点から好適である。具体的には、ポリエチレン及びポリプロピレン製微多孔膜、又はこれらを複合した微多孔膜などである。
リチウムイオン二次電池は、上述した負極、正極、セパレータ、電解液、その他電池構成要素(例えば、集電体、ガスケット、封口板、ケースなど)を用いて、常法にしたがって円筒型、角型あるいはボタン型などの形態を有することができる。
【0069】
本発明のバインダーを用いたリチウムイオン二次電池は、各種携帯電子機器に用いられ、特にノート型パソコン、ノート型ワープロ、パームトップ(ポケット)パソコン、携帯電話、携帯ファックス、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオカメラ、携帯テレビ、ポータブルCD、ポータブルMD、電動髭剃り機、電子手帳、トランシーバー、電動工具、ラジオ、テープレコーダー、デジタルカメラ、携帯コピー機、携帯ゲーム機などに用いることができる。また、さらに、電気自動車、ハイブリッド自動車、自動販売機、電動カート、ロードレベリング用蓄電システム、家庭用蓄電器、分散型電力貯蔵機システム(据置型電化製品に内蔵)、非常時電力供給システムなどの二次電池として用いることもできる。
【実施例
【0070】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明の解釈はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入管、及び滴下装置を備えた反応器に、水を200.0質量部仕込み、撹拌しながら75℃まで昇温した。そこに、アクリル酸100.0質量部、過硫酸カリウム1.2質量部、水250.0質量部からなる混合物を、3時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で6時間反応させた。反応終了後冷却し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製,KBE-903)0.5質量部、水酸化ナトリウム6.0質量部、水251.0質量部を仕込み、中和することにより、固形分13%、中和率11.0%(式(2)と式(3)の割合)[残り式(1)の割合]、Mwが740,000の重合体を得た。
【0071】
<実施例2>
実施例1と全く同様にして、水を仕込んだ反応器にアクリル酸、過硫酸カリウム、水からなる混合物を滴下し、反応させた。反応終了後冷却し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製,KBE-903)0.5質量部、水酸化ナトリウム33.3質量部、水344.4質量部を仕込み、中和することにより、固形分13%、中和率60.2%(式(2)と式(3)の割合)[残り式(1)の割合]、Mwが740,000の重合体を得た。
【0072】
<実施例3>
実施例1と全く同様にして、水を仕込んだ反応器にアクリル酸、過硫酸カリウム、水からなる混合物を滴下し、反応させた。反応終了後冷却し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製,KBE-903)0.5質量部、水酸化ナトリウム52.8質量部、水411.0質量部を仕込み、中和することにより、固形分13%、中和率95.2%(式(2)と式(3)の割合)[残り式(1)の割合]、Mwが740,000の重合体を得た。
【0073】
<実施例4>
実施例1と全く同様にして、水を仕込んだ反応器にアクリル酸、過硫酸カリウム、水からなる混合物を滴下して反応させた。反応終了後冷却し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製,KBE-903)200.0質量部、水酸化ナトリウム6.0質量部、水1587.0質量部を仕込み、中和することにより、固形分13%、中和率75.9%(式(2)と式(3)の割合)[残り式(1)の割合]、Mwが740,000の重合体を得た。
【0074】
<実施例5>
実施例1と全く同様にして、水を仕込んだ反応器にアクリル酸、過硫酸カリウム、水からなる混合物を滴下して反応させた。反応終了後冷却し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製,KBE-903)200.0質量部、水酸化ナトリウム18.0質量部、水1628.0質量部を仕込み、中和することにより、固形分13%、中和率97.5%(式(2)と式(3)の割合)[残り式(1)の割合]、Mwが740,000の重合体を得た。
【0075】
<実施例6>
実施例1と全く同様にして、水を仕込んだ反応器にアクリル酸、過硫酸カリウム、水からなる混合物を滴下して反応させた。反応終了後冷却し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製,KBE-903)0.5質量部、水酸化リチウム19.9質量部、水255.0質量部を仕込み、中和することにより、固形分13%、中和率60.2%(式(2)と式(3)の割合)[残り式(1)の割合]、Mwが740,000の重合体を得た。
【0076】
<実施例7>
過硫酸カリウムを1.2質量部の代わりに、3.2質量部を使用した他は実施例1と全く同様にして、水を仕込んだ反応器にアクリル酸、過硫酸カリウム、水からなる混合物を滴下して反応させた。反応終了後冷却し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製,KBE-903)0.5質量部、水酸化ナトリウム33.3質量部、水358.0質量部を仕込み、中和することにより、固形分13%、中和率60.2%(式(2)と式(3)の割合)[残り式(1)の割合]、Mwが120,000の重合体を得た。
【0077】
<実施例8>
過硫酸カリウムを1.2質量部の代わりに0.1質量部を使用した他は実施例1と全く同様にして、水を仕込んだ反応器に、アクリル酸、過硫酸カリウム、水からなる混合物を滴下して反応させた。反応終了後冷却し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製,KBE-903)0.5質量部、水酸化ナトリウム33.3質量部、水337.0質量部を仕込み、中和することにより、固形分13%、中和率60.2%(式(2)と式(3)の割合)[残り式(1)の割合]、Mwが2,500,000の重合体を得た。
【0078】
<実施例9>
攪拌装置、温度計、冷却管、窒素ガス導入管、及び滴下装置を備えた反応器に、水を200.0質量部仕込み、撹拌しながら75℃まで昇温した。そこに、アクリル酸95.0質量部、メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル5.0質量部、過硫酸カリウム1.2質量部、水250.0質量部からなる混合物を、3時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で6時間反応させた。反応終了後冷却し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製,KBE-903)0.5質量部、水酸化ナトリウム31.6質量部、水339.0質量部を仕込み、中和することにより、固形分13%、中和率60.2%(式(2)と式(3)の割合58.8%)[式(1)の割合38.8%]、Mwが720,000の重合体を得た。
【0079】
<実施例10>
メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル5.0質量部の代わりに、アクリル酸2-ヒドロキシエチル5.0質量部を使用した他、実施例9と全く同様にして、水を仕込んだ反応器にアクリル酸、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、過硫酸カリウム、水からなる混合物を滴下し、反応させた。反応終了後冷却し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製,KBE-903)0.5質量部、水酸化ナトリウム31.6質量部、水339.0質量部を仕込み、中和することにより、固形分13%、中和率60.2%(式(2)と式(3)の割合58.3%)[式(1)の割合38.5%]、Mwが730,000の重合体を得た。
【0080】
<実施例11>
メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル5.0質量部の代わりに、ジメチルアクリルアミド5.0質量部を使用した他は実施例9と全く同様にして、水を仕込んだ反応器にアクリル酸、ジメチルアクリルアミド、過硫酸カリウム、水からなる混合物を滴下し、反応させた。反応終了後冷却し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製,KBE-903)0.5質量部、水酸化ナトリウム31.6質量部、水339.0質量部を仕込み、中和することにより、固形分13%、中和率60.2%(式(2)と式(3)の割合58.0%)[式(1)の割合38.3%]、Mwが760,000の重合体を得た。
【0081】
<実施例12>
メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル5.0質量部の代わりに、2-メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸5.0質量部を使用した他は実施例9と全く同様にして、水を仕込んだ反応器に、アクリル酸、2-メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、過硫酸カリウム、水からなる混合物を滴下し、反応させた。反応終了後冷却し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製,KBE-903)0.5質量部、水酸化ナトリウム31.6質量部、水339.0質量部を仕込み、中和することにより、固形分13%、中和率60.2%(式(2)と式(3)の割合59.4%)[式(1)の割合39.3%]、Mwが750,000の重合体を得た。
【0082】
<実施例13>
メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル5.0質量部の代わりに、ポリオキシエチレンモノアクリレート(日油社製、ブレンマーAE-400)5.0質量部を使用した他は実施例9と全く同様にして、水を仕込んだ反応器に、アクリル酸、ポリオキシエチレンモノアクリレート、過硫酸カリウム、水からなる混合物を滴下し、反応させた。反応終了後冷却し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製,KBE-903)0.5質量部、水酸化ナトリウム31.6質量部、水339.0質量部を仕込み、中和することにより、固形分13%、中和率60.2%(式(2)と式(3)の割合59.8%)[式(1)の割合39.5%]、Mwが760,000の重合体を得た。
【0083】
<実施例14>
メタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチル5.0質量部の代わりに、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM-503)5.0質量部を使用した他は実施例9と全く同様にして、水を仕込んだ反応器に、アクリル酸、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、過硫酸カリウム、水からなる混合物を滴下し、反応させた。反応終了後冷却し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製,KBE-903)0.5質量部、水酸化ナトリウム31.6質量部、水339.0質量部を仕込み、中和することにより、固形分13%、中和率60.2%(式(2)と式(3)の割合59.3%)[式(1)の割合39.2%]、Mwが720,000の重合体を得た。
【0084】
<比較例1>
実施例1と全く同様にして、水を仕込んだ反応器に、アクリル酸、過硫酸カリウム、水からなる混合物を滴下し、反応させた。反応終了後冷却し、水酸化ナトリウム33.3質量部、水341.0質量部を仕込み、中和することにより、固形分13%、中和率60.0%、Mwが740,000の重合体を得た。
【0085】
<比較例2>
実施例1と全く同様にして、水を仕込んだ反応器に、アクリル酸、過硫酸カリウム、水からなる混合物を滴下し、反応させた。反応終了後冷却し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製,KBE-903)200.0質量部、水1565.0質量部を仕込み、中和することにより、固形分13%、中和率65.1%、Mwが740,000の重合体を得た。
【0086】
<比較例3>
実施例1と全く同様にして、水を仕込んだ反応器に、アクリル酸、過硫酸カリウム、水からなる混合物を滴下し、反応させた。反応終了後冷却し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製,KBE-903)0.5質量部、水酸化ナトリウム3.0質量部、水241.0質量部を仕込み、中和することにより、固形分13%、中和率5.6%、Mwが740,000の重合体を得た。
【0087】
<比較例4>
過硫酸カリウムを1.2質量部の代わりに4.2質量部を使用した他は実施例1と全く同様にして、水を仕込んだ反応器に、アクリル酸、過硫酸カリウム、水からなる混合物を滴下して反応させた。反応終了後冷却し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製,KBE-903)0.5質量部、水酸化ナトリウム33.3質量部、水365.0質量部を仕込み、中和することにより、固形分13%、中和率60.2%、Mwが80,000の重合体を得た。
【0088】
<比較例5>
過硫酸カリウムを1.2質量部の代わりに0.05質量部を使用した他は実施例1と全く同様にして、水を仕込んだ反応器に、アクリル酸、過硫酸カリウム、水からなる混合物を滴下して反応させた。反応終了後冷却し、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製,KBE-903)0.5質量部、水酸化ナトリウム33.3質量部、水337.0質量部を仕込み、中和することにより、固形分13%、中和率60.2%、Mwが3,500,000の重合体を得た。
【0089】
実施例1~14及び比較例1~5において使用した原料、その使用量、得られた重合体の中和率、及びMwなどを表1示す。
【0090】
【表1】
【0091】
参考例1
(負極活物質の合成)
(膨張黒鉛の調製)
平均粒子径1mmの鱗片状天然黒鉛を硫酸9質量部、硝酸1質量部の混酸に室温で1時間浸漬後、No3ガラスフィルターで混酸を除去して酸処理黒鉛を得た(粒子径0.3mm((200)面方向の幅)、厚み10μm)。さらに酸処理黒鉛を水洗後、乾燥した。乾燥した酸処理黒鉛5gを蒸留水100g中で攪拌し、1時間後にpHを測定したところ、pHは6.7であった。乾燥した酸処理黒鉛を振動粉末供給器に入れ、12L/分の流量の窒素ガスに乗せて電気ヒーターで850℃に加熱した長さ1m、内径20mmのムライト管に通し、端面から大気に放出し、亜硫酸等のガスを上部に排気、下部に膨張黒鉛をステンレス容器で捕集した。膨張黒鉛の(200)面方向の幅は0.3mmで元の黒鉛の値を保っていたが、厚みは2.4mmと240倍に膨張し、外観はコイル状であり、SEM観察で黒鉛層が剥離し、アコーディオン状であることが確認された。膨張黒鉛の嵩密度は0.002g/cm、比表面積は45m/gであった
【0092】
(混合工程)
粒径(D50)が7μmのケミカルグレードの金属Si(純度3N)をエタノールに21重量%混合し、直径0.3mmのジルコニアビーズを用いた微粉砕湿式ビーズミルを6時間行い、粒径(D50)0.3μm、乾燥時のBET比表面積が100m/gの超微粒子Siスラリーを得た。
【0093】
上記超微粒子Siスラリーを1049g、上記膨張黒鉛を300g、レゾール型のフェノール樹脂(Mw:370)を125g、エタノール5Lを撹拌容器に入れ、インラインミキサーで22分混合撹拌した。その後、混合液をロータリーエバポレーターに移し、回転しながら温浴で40℃に加熱し、アスピレータで真空に引き、溶媒を除去した。その後、ドラフト中でバットに広げて排気しながら2時間乾燥し、目開き2mmのメッシュを通し、さらに1日間乾燥して、588gの混合乾燥物(軽装かさ密度266g/L)を得た。
【0094】
(プレス工程)
この混合乾燥物を3本ロールミルに2回通し、目開き1mmの篩を通し、軽装かさ密度457g/Lに造粒・圧密化した。
(球形化工程)
次に、この造粒・圧密化物をニューパワーミルに入れて水冷しながら、21000rpmで300秒粉砕し、同時に球形化し、軽装かさ密度509g/Lの略球状複合粉末を得た。
【0095】
(焼成工程)
得られた粉末を石英ボートに入れて、管状炉で窒素ガスを流しながら、最高温度900℃で1時間焼成する事でフェノール樹脂の炭化を同時に行った。これにより、黒鉛成分の含有量が60質量部、Si含有量が30質量部、炭素質物含有量が10質量部(フェノール樹脂由来のハードカーボン含有量)からなる略球状焼成粉を得た。
その後、目開き45μmのメッシュを通し、軽装かさ密度635g/L、粒径(D50)が22.0μmであり、BET比表面積が63.3m/gであるの略球状焼成粉を得た。
【0096】
(コールタールピッチによる炭素被覆)
得らえた略球状焼成粉150gとコールタールピッチ118gをボールミルにより混合した後、キノリン150gを加え、10分間撹拌した後、以下の方法を用い焼成を行い、被覆を行った。
(焼成)
窒素を流しながら(4L/min)、昇温度速度を5℃/minとし、混合物を600℃で2時間加熱することで、コールタールピッチをソフトカーボンへ変性させた。これにより、黒鉛成分の含有量60質量部、Si含有量30質量部、炭素質物40質量部(フェノール樹脂由来のハードカーボンの含有量10質量部、コールタールピッチ由来のソフトカーボンの含有量30質量部)からなる複合活物質を得た。
【0097】
(解砕・篩)
得られた複合活物質をスタンプミルにて解砕した後にボールミルによって粉砕し、目開き45μmのメッシュを通し、軽装かさ密度405g/L、粒径(D50)が15.9μmの粉砕粉を得た。
【0098】
(気相コートによる炭素被覆)
コールタールピッチによる炭素被覆された粉砕粉3gとアルミナ坩堝に入れたコールタールピッチ8.5gを黒鉛ボートに入れ、窒素を流しながら(4.3L/min)、昇温度速度を5℃/minとし、混合物を900℃で1時間加熱することで、炭素被覆を行った。炭素被覆による重量増は1.5重量%であり、これにより、黒鉛成分の含有量60質量部、Si含有量30質量部、炭素質物42質量部(フェノール樹脂由来のハードカーボンの含有量10質量部、コールタールピッチ由来のソフトカーボンの含有量32質量部)からなるリチウム二次電池用複合活物質を得た。
その物性は以下の通りである。粒度分布D50:32μm、D90:52μm、BET比表面積:3.3m/g、平均細孔径:18.6nm、開気孔体積:0.017cm/g、形状:略球状。
【0099】
SEM(走査型電子顕微鏡)による、複合活物質の二次電子像を図1に、また複合活物質の粒子断面の二次電子像を図2に示す。
これにより複合活物質においては、黒鉛成分及び電池活物質がソフトカーボンで覆われた構造であることが分かる。
また、上記(コールタールピッチによる被覆)を実施する前の略球形の混合物のBET比表面積が63.3m/gであり、得られた略球形のリチウム二次電池用複合活物質のBET比表面積が3.3m/gであり、BET比表面積が大きく低下している点からも、黒鉛成分及びSiが炭素質物であるソフトカーボンで覆われた構造をとっていることが分かる。
【0100】
(塗工用スラリーの調製)
実施例1~14及び比較例1~5で得られた重合体を用いて、それぞれ塗工用スラリー(リチウム二次電池用負極材)を調製した。塗工用スラリーは、重合体7質量部、参考例1で得られた負極活物質92.5質量部、アセチレンブラック0.5質量部、及び水100質量部を秤り取り、自転・公転式ミキサーを用いて10分間混合することで調製した。
【0101】
(電池特性の評価)
得られたスラリー(リチウム二次電池用負極材)を、アプリケータを用いて固形分塗布量が3mg/cmになるように厚みが15μmの銅箔に塗布し、110℃で定置運転乾燥機にて0.5時間乾燥した。乾燥後、14mmφの円形に打ち抜き、さらに真空下、110℃で3時間熱処理して、負極合剤層を形成したリチウムイオン2次電池用負極を得た。
【0102】
(評価用ハーフセルの作製)
評価用セルは、グローブボックス中でスクリューセルに上記負極、24mmφのポリプロピレン製セパレータ、21mmφのガラスフィルター、18mmφで厚み0.2mmの金属リチウム及びその基材のステンレス箔を、各々、電解液にディップしたのち、この順に積層し、最後に蓋をねじ込み作製した。電解液はエチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1対1の混合溶媒とし、LiPF6を1.2mol/Lの濃度になるように溶解させ、これにフルオロエチレンカーボネートを2体積%添加したものを使用した。評価用セルは、さらにシリカゲルを入れた密閉ガラス容器に入れて、シリコンゴムの蓋を通した電極を充放電装置に接続した。
【0103】
(ハーフセル評価条件)
ハーフ評価用セルは25℃の恒温室にて、サイクル試験した。充電は、2mAの定電流で0.01Vまで充電後、0.01Vの定電圧で電流値が0.2mAになるまで行った。また放電は、2mAの定電流で1.5Vの電圧値まで行った。
【0104】
(サイクル特性)
サイクル特性は、前記充放電条件にて50回及充放電試験した後の放電容量を初回の放電容量と比較し、その容量維持率を求め、以下の3段階で評価した。結果を表2に示す。
○:容量維持率80%以上
△:容量維持率60%以上80%未満
×:容量維持率60%未満
【0105】
【表2】
【0106】
表2に示されるように、実施例1~14で得られたバインダーは優れたサイクル特性を有することが分かる。
これに対し、比較例1~5で得られたバインダーは本発明の規定を満たしていないため、満足するようなサイクル特性を得られていないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明のリチウムイオン二次電池負極用バインダーは、優れたサイクル特性を示し高寿命を有するリチウムイオン二次電池用負極材、及びそれを使用するリチウムイオン二次電池の作製に使用される。