(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】流体流から酸性ガスを除去するための吸収剤の製造用の予備混合物
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20220118BHJP
【FI】
B01D53/14 210
(21)【出願番号】P 2018554683
(86)(22)【出願日】2017-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2017058285
(87)【国際公開番号】W WO2017182289
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2020-04-06
(32)【優先日】2016-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】イングラム,トマス
(72)【発明者】
【氏名】フォルベルク,ゲラルト
(72)【発明者】
【氏名】ジーダー ゲオルク
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03320164(US,A)
【文献】特表2009-537318(JP,A)
【文献】特表2015-527189(JP,A)
【文献】特表2012-506306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14-53/18、
53/34-53/73、
53/74-53/85、
53/92、53/96
C10L 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流から酸性ガスを除去するための吸収剤の製造用の予備混合物であって、
a)
ビス(2-ヒドロキシエチル)メチルアミン(メチルジエタノールアミン、MDEA)、トリブタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール(ジエチルエタノールアミン、DEEA)、2-ジメチルアミノエタノール(ジメチルエタノールアミン、DMEA)、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール(N,N-ジメチルプロパノールアミン)、3-ジエチルアミノ-1-プロパノール、2-ジイソプロピルアミノエタノール(DIEA)及びN,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)メチルアミン(メチルジイソプロパノールアミン、MDIPA)から選ばれる少なくとも
1種の第三級アミン及び/又は立体障害のある第二級アミン;
b)a)中のプロトン化可能な窒素原子に基づいた中和当量として計算して、少なくとも30%の量のジカルボン酸であって、20℃の温度での水への溶解度が水100g当たりジカルボン酸15g以下である前記ジカルボン酸;並びに
c)20~80質量%の水
を含む予備混合物。
【請求項2】
前記b)の量が、a)中のプロトン化可能な窒素原子に基づいた中和当量として計算して30%~400%である、請求項1に記載の予備混合物。
【請求項3】
前記第三級アミンがアルカノールアミンである、請求項1又は2に記載の予備混合物。
【請求項4】
アミンa)が、立体障害のある第二級アミンである、請求項1又は2に記載の予備混合物。
【請求項5】
前記立体障害のある第二級アミンがアルカノールアミノエーテルである、請求項1から
4のいずれか一項に記載の予備混合物。
【請求項6】
前記ジカルボン酸b)がコハク酸及びアジピン酸から選択される、請求項1から
5のいずれか一項に記載の予備混合物。
【請求項7】
所定の予備混合物をアミン及び任意に水と混合することを含む流体流から酸性ガスを除去するための吸収剤を製造する方法であって、
前記所定の予備混合物は、
a)少なくとも第三級アミン及び/又は立体障害のある第二級アミン;
b)a)中のプロトン化可能な窒素原子に基づいた中和当量として計算して、少なくとも30%の量のジカルボン酸であって、20℃の温度での水への溶解度が水100g当たりジカルボン酸15g以下である前記ジカルボン酸;並びに
c)20~80質量%の水
を含むものであり、
前記予備混合物中の前記ジカルボン酸の量が前記アミンのプロトン化可能な窒素原子に基づいた中和当量として計算して前記吸収剤中よりも多い吸収剤の製造方法。
【請求項8】
前記ジカルボン酸が、がコハク酸及びアジピン酸から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記予備混合物が、請求項1~5の何れか1項に記載の予備混合物である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記吸収剤が前記ジカルボン酸を、前記アミンのプロトン化可能な窒素原子に基づいた中和当量として計算して、0.5%~15%の量で含む請求項
7~9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記吸収剤が、立体障害のない第一級アミン及び立体障害のない第二級アミンを含まない請求項
7~10の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体流から酸性ガスを除去するための吸収剤の製造用の予備混合物、及び前記予備混合物から吸収剤を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な理由で、天然ガス、精製ガス又は合成ガスなどの流体流から酸性ガス、例えばCO2、H2S、SO2、CS2、HCN、COS又はメルカプタンを除去することは、重要である。例えば、多くの硫黄化合物は、低濃度であっても悪臭を有し毒性がある。高濃度のCO2は、パイプライン又は販売ガスとして使用されるとき、ガスの発熱量を減少させるので、二酸化炭素は、とりわけ天然ガスから除去する必要がある。流体流中に頻繁に同伴される水分と一緒になったCO2は、さらにパイプ及びバルブの腐食を引き起こす可能性がある。
【0003】
酸性ガスの除去は、無機塩基又は有機塩基の、例えばアミンの水溶液を用いたスクラブ(scrubs)を使用して達成される。酸性ガスが吸収剤中に溶解すると、塩基と反応してイオンが形成される。吸収剤は、より低い圧力への減圧及び/又はストリッピングによって再生することができ、イオン種が逆反応を受けて酸性ガスを形成する、及び/又は蒸気でストリッピングされ取り除かれる。吸収剤は、再生処理後に再利用することができる。
【0004】
酸性ガス洗浄に使用される吸収剤は、しばしば酸を含む。例えば、US2010/0288125A1には、少なくとも1種のアミン及び少なくとも1種のホスホン酸を0.0005~1.0のモル比で含む吸収剤が記載されている。US4892674には、アミン並びに高度に立体障害のあるアミノ塩及び/又は立体障害のあるアミノ酸を含む吸収溶液を用いた流体流からの硫化水素の除去が記載されている。
【0005】
酸と、吸収剤中に存在する塩基、例えばアミンとの間のプロトン化平衡が確立する。平衡の位置は温度依存性であり、より高い温度では、平衡は、プロトン化のエンタルピーがより低い遊離オキソニウムイオン及び/又はアミン塩へ移行する。吸収剤への使用に適したアミンは、pKaの明確な温度依存性を有利に示す。これは、比較的低い温度では、吸収工程で主流であるように、より高いpHが効率的な酸性ガス吸収を促進する一方、比較的高い温度では、脱着工程で主流であるように、より低いpHが吸収された酸性ガスの放出を支持するという結果を有する。
【0006】
ある特定の酸を添加することの欠点は、吸収剤中に存在するアミンの分解を、酸が促進する可能性があることである。
【0007】
コハク酸又はアジピン酸などのジカルボン酸が、水性アミン吸収剤の再生を同様に促進できることが、今や見出された。例えば鉱酸又はギ酸などの低級有機酸を含む吸収剤と比較して、ジカルボン酸を含む吸収剤は、低減されたメチルジエタノールアミン(MDEA)などのアミンの分解を示す。
【0008】
ガス洗浄用の吸収剤の製造は、一般に、低濃度の濃縮水や純粋なアミン又はアミン混合物を、ガス洗浄施設内で水と直接混合することによって実施する。これにより、アミン成分の輸送量及び輸送質量が可能な限り低く保たれる。酸の計量添加は一般に、吸収剤の使用直前又は進行している操作中に実施する。
【0009】
酸は、水溶液として適切に添加される。ジカルボン酸を使用することの欠点は、これらが固体であり、しばしば水への難溶性を示すことである。固体の計量添加は一般に高価で複雑であり、大部分のガス洗浄施設では提供されないので、このようなジカルボン酸の高希釈水溶液を用いることが必要である。これにより、酸成分の輸送量及び輸送質量が高くなる。ジカルボン酸の高希釈水溶液を使用することによって、所望の酸濃度をもたらすために大量の溶液を用いることが必要となる可能性がある。これは、吸収剤の望ましくない希釈をもたらす可能性がある。実質的に水を含まないアミン成分中にジカルボン酸が溶解することは、水と比較して一般により難溶性であるので可能ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、流体流から酸性ガスを除去するための吸収剤の製造用の、輸送可能で容易に取り扱うことができる、水に難溶性であるジカルボン酸の溶液を提供することを目的とする。
【0013】
EP0134948A2には、アルカリ性水溶液を得るために水と混合する組成物が記載されている。組成物は、アルカリ性材料と、アルカリ性材料の0%~22%をプロトン化するのに十分な量の6未満のpKaを有する酸とを含む。アルカリ性水溶液は、酸を含まない溶液と比較して、流体流からの硫化水素の吸収において改善された特性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、流体流から酸性ガスを除去するための吸収剤の製造用の予備混合物であって、
a)少なくとも第三級アミン及び/又は立体障害のある第二級アミン;
b)a)中のプロトン化可能な窒素原子に基づいた中和当量として計算して、少なくとも30%の量のジカルボン酸であって、20℃の温度での水への溶解度が水100g当たりジカルボン酸15g以下である前記ジカルボン酸;並びに
c)20~80質量%の水
を含む予備混合物によって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
水への難溶性を示すジカルボン酸b)は、予備混合物の組成物中に完全に溶解することが見出された。よって吸収剤の製造は、予備混合物を水及び/又はアミンと使用場所で単純に混合することによって実施し得る。
【0016】
さらに、ジカルボン酸b)は、水性吸収剤中でメチルジエタノールアミン(MDEA)などの分解傾向のあるアミンに、より高い安定性をもたらすことが見出された。これにより、ガス洗浄施設のさらなる効率的な操作が可能となる。吸収剤をより長く使用し得るからである。
【0017】
アミンa)は、第三級アミン及び/又は立体障害のある第二級アミンを含む。
【0018】
「第三級アミン」という用語は、少なくとも1個の第三級アミノ基を有する化合物を意味すると理解されるべきである。第三級アミンは、好ましくは第三級アミノ基のみを含む。すなわち、第三級アミンは少なくとも1個の第三級アミノ基に加えて第一級又は第二級アミノ基を含まない。第三級アミンは、好ましくはモノアミンである。第三級アミンは、好ましくは酸性基、例えば特にホスホン酸基、スルホン酸基及び/又はカルボン酸基などを有さない。
【0019】
適切な第三級アミンa)は、特に、
1.第三級アルカノールアミン、例えば、
ビス(2-ヒドロキシエチル)メチルアミン(メチルジエタノールアミン、MDEA)、トリス(2-ヒドロキシエチル)アミン(トリエタノールアミン、TEA)、トリブタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール(ジエチルエタノールアミン、DEEA)、2-ジメチルアミノエタノール(ジメチルエタノールアミン、DMEA)、3-ジメチルアミノ-1-プロパノール(N,N-ジメチルプロパノールアミン)、3-ジエチルアミノ-1-プロパノール、2-ジイソプロピルアミノエタノール(DIEA)、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)メチルアミン(メチルジイソプロパノールアミン、MDIPA);
2.第三級アミノエーテル、例えば、
3-メトキシプロピルジメチルアミン;
3.第三級ポリアミン、例えば、ビス-第三級ジアミン、例えば、
N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチル-N’,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-プロパンジアミン(TMPDA)、N,N,N’,N’-テトラエチル-1,3-プロパンジアミン(TEPDA)、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン、N,N-ジメチル-N’,N’-ジエチルエチレンジアミン(DMDEEDA)、1-ジメチルアミノ-2-ジメチルアミノエトキシエタン(ビス[2-(ジメチルアミノ)エチル]エーテル)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(TEDA)、テトラメチル-1,6-ヘキサンジアミン;
及びそれらの混合物
を含む。
【0020】
第三級アルカノールアミンが特に好ましい。最も好ましいのは、メチルジエタノールアミン(MDEA)である。
【0021】
「立体障害のある第二級アミン」という用語は、少なくとも1個の立体障害のある第二級アミノ基を有する化合物を意味すると理解されるべきである。立体障害のある第二級アミノ基という用語は、アミノ基の窒素原子に直接隣接する少なくとも1個の第二級又は第三級炭素原子の存在を示すと理解されるべきである。
【0022】
第二級炭素原子は、立体障害の位置への結合とは別に、2つの炭素-炭素結合を有する炭素原子を意味すると理解されるべきである。第三級炭素原子は、立体障害の位置への結合とは別に、3つの炭素-炭素結合を有する炭素原子を意味すると理解されるべきである。
【0023】
適切な立体障害のある第二級アミンa)は、特に:
1.立体障害のある第二級アルカノールアミン、例えば
2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エタノール(TBAEE)、2-(2-tert-ブチルアミノ)プロポキシエタノール、2-(2-tert-アミルアミノエトキシ)エタノール、2-(2-(1-メチル-1-エチルプロピルアミノ)エトキシ)エタノール、2-(tert-ブチルアミノ)エタノール、2-tert-ブチルアミノ-1-プロパノール、3-tert-ブチルアミノ-1-プロパノール、3-tert-ブチルアミノ-1-ブタノール、3-アザ-2,2-ジメチルヘキサン-1,6-ジオール;2-(2-イソプロピルアミノエトキシ)エタノール、2-(2-イソプロピルアミノ)プロポキシエタノール、2-(イソプロピルアミノ)エタノール、2-イソプロピルアミノ-1-プロパノール、3-イソプロピルアミノ-1-プロパノール、及び3-イソプロピルアミノ-1-ブタノール;
2.立体障害のあるアミノエーテル、例えば
1,2-ビス(tert-ブチルアミノエトキシ)エタン、ビス(tert-ブチルアミノエチル)エーテル、2-(2-(2-(tert-ブチルアミノ)エトキシ)エトキシ)エトキシメチルエーテル(MEEETB);
及びそれらの混合物
を含む。
【0024】
立体障害のある第二級アルカノールアミンが好ましく、特にtert-ブチル基を含む立体障害のある第二級アルカノールアミンが好ましい。最も好ましいのは2-(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エタノール(TBAEE)である。
【0025】
一実施形態では、予備混合物は、立体障害のない第一級アミン又は立体障害のない第二級アミンを含まない。立体障害のない第一級アミンという用語は、水素原子又は第一級若しくは第二級炭素原子のみが結合している第一級アミノ基を有する化合物を意味すると理解されるべきである。立体障害のない第二級アミンという用語は、水素原子又は第一級炭素原子のみが結合している第二級アミノ基を有する化合物を意味すると理解されるべきである。
【0026】
予備混合物は、a)中のプロトン化可能な窒素原子に基づいた中和当量として計算して、少なくとも30%の量のジカルボン酸c)を含む。予備混合物中のジカルボン酸b)の量は、a)中のプロトン化可能な窒素原子に基づいた中和当量として計算して、好ましくは30%~400%、特に好ましくは50%~400%、非常に特に好ましくは50%~300%であり、最も好ましくは100%~300%である。
【0027】
ジカルボン酸という用語は、分子中に2個のカルボキシ基を有する化合物を意味すると理解されるべきである。
【0028】
「中和当量」という用語は、水溶液中の中和反応においてプロトンを供与することができる酸性分子の理論上の分率である。例えば、ギ酸の分子は1中和当量に相当し、コハク酸の分子は2中和当量に、H3PO4の分子は3中和当量に相当する。
【0029】
「プロトン化可能な窒素原子」という用語は、水溶液中でプロトン化することができるa)によるアミン中に存在する窒素原子の総計に関する。これらは一般にアミノ基の窒素原子である。
【0030】
ジカルボン酸は、20℃での水への溶解度が水100g当たりジカルボン酸15g以下である。以下の表に、様々なジカルボン酸の水への溶解度を報告する。
【0031】
【0032】
適切なジカルボン酸c)は、特にシュウ酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸を含む。アジピン酸及びコハク酸が特に好ましい。コハク酸が最も好ましい。
【0033】
本発明による予備混合物は、20~80質量%の水、好ましくは30~70質量%の水、特に好ましくは40~70質量%の水、最も好ましくは50~70質量%の水を含む。
【0034】
本発明はさらに、流体流から酸性ガスを除去するための吸収剤を製造する方法であって、第三級アミン及び/又は立体障害のある第二級アミン、ジカルボン酸及び水を含む予備混合物と、アミン及び任意に水と、を混合する、製造方法に関する。上記のジカルボン酸は、20℃の温度で、水100g当たりジカルボン酸15g以下の溶解度を有し、且つ予備混合物中のジカルボン酸の量は、前記アミンのプロトン化可能な窒素原子に対する中和当量として計算して、吸収剤中よりも多い。
【0035】
予備混合物は、好ましくは、上記のような予備混合物である。上述の予備混合物の全ての言及した好ましい実施形態は、本発明による方法において用いられる予備混合物についても好ましい。
【0036】
ジカルボン酸の量は、アミンのプロトン化可能な窒素原子に基づいた中和当量として計算して、吸収剤中よりも予備混合物中の方が多い。好ましい実施形態では、吸収剤はジカルボン酸を、アミンのプロトン化可能な窒素原子に基づいた中和当量として計算して、0.5%~15%、特に好ましくは1%~10%、最も好ましくは2%~8%の量で含む。
【0037】
予備混合物と混合するアミンが、第三級アミン及び/又は立体障害のある第二級アミンである場合が好ましい。上述の第三級アミン/立体障害のある第二級アミンの全ての言及した好ましい実施形態は、予備混合物と混合するアミンにも適用される。予備混合物と混合するアミンが、予備混合物中に存在するアミンである場合が特に好ましい。
【0038】
吸収剤中のアミン濃度は、典型的には20~60質量%の範囲、好ましくは30~60質量%の範囲、特に好ましくは30~50質量%の範囲である。
【0039】
二酸化炭素よりも硫化水素に対して選択的な吸収剤が望ましい場合、吸収剤は好ましくは、立体障害のない第一級アミン又は立体障害のない第二級アミンを含まない。この種類の化合物は、CO2吸収の強力な活性化剤として作用する。これにより、吸収剤のH2S選択性が失われる可能性がある。
【0040】
吸収剤は、有機溶剤を含んでよい。有機溶媒は、特に好ましくは、スルホン、グリコール及びポリアルキレングリコールから選択される。有機溶媒は、非常に特に好ましくはスルホンから選択される。好ましい有機溶媒はスルホランである。
【0041】
吸収剤はまた、腐食防止剤、酵素などの添加剤も含んでよい。そのような添加剤の量は、一般に吸収剤の約0.01~3質量%の範囲である。
【0042】
吸収剤は、流体流を吸収剤と接触させる、前記流体流から酸性ガスを除去するための方法に用いることができる。
【0043】
流体は、ガス、例えば天然ガス、合成ガス、コークス炉ガス、分解ガス、石炭ガス化ガス、サイクルガス、埋立ガス及び燃焼ガス、並びに、実質的に吸収剤と混和しない液体、例えばLPG(液化石油ガス)又はNGL(天然ガス液)などを含む。本方法は、炭化水素流体流を処理するのに特に適している。存在する炭化水素は、例えば脂肪族炭化水素、例えばC1~C4炭化水素、例えばメタン、不飽和炭化水素、例えばエチレン若しくはプロピレン、又はベンゼン、トルエン若しくはキシレンのような芳香族炭化水素のような芳香族炭化水素である。
【0044】
本方法は、CO2及びH2Sの除去に適している。二酸化炭素及び硫化水素だけでなく、COS及びメルカプタンなど、他の酸性ガスも流体流中に存在することが可能である。さらに、SO3、SO2、CS2及びHCNの除去も可能である。
【0045】
本方法では、流体流を吸収工程において吸収器中で吸収剤と接触させ、洗浄して二酸化炭素及び硫化水素を少なくとも部分的に取り除く。これにより、CO2及びH2Sのない流体流、並びに、CO2及びH2Sを含む吸収剤がもたらされる。
【0046】
使用する吸収剤は、慣例のガス洗浄法で使用される洗浄装置である。この方法は、1つ以上の、特に2つの連続的な吸収工程を含み得る。
【0047】
本方法は好ましくは、CO2及びH2Sを含む吸収剤を再生する再生工程を含む。再生工程において、CO2及びH2S及び任意にさらなる酸性ガス成分が、CO2及びH2Sを含む吸収剤から放出され、再生された吸収剤が得られる。好ましくは、再生された吸収剤は、次いで吸収工程に再利用される。一般的には、再生工程は、加熱、減圧、及び不活性流によるストリッピングのうち少なくとも1つの作用を含む。
【0048】
再生工程における酸性ガス成分の放出は、例えば垂直又は水平に設置されたフラッシュ容器などの減圧カラム、又は内部を含む向流カラムで実施し得る。
【実施例】
【0049】
本発明を、以下の実施例を参照することでさらに特定して説明する。
【0050】
以下の略称を使用した。
【0051】
AA アジピン酸
SA コハク酸
MDEA メチルジエタノールアミン
TBAEE 2(2-tert-ブチルアミノエトキシ)エタノール
【0052】
参照例1
本参照例は、コハク酸/アジピン酸の様々なアミンへの溶解度を23.5℃で分析した。
【0053】
100gのMDEAを2gのコハク酸と混合し、マグネチックスターラーで攪拌した。不溶性の沈降物が形成された。MDEA中のコハク酸の溶解度は2g/100g未満である。
【0054】
100gのTBAEEを1.7gのコハク酸と混合し、マグネチックスターラーで攪拌した。不溶性の沈降物が形成された。TBAEE中のコハク酸の溶解度は、1.7g/100g未満である。
【0055】
100gのMDEAを2gのアジピン酸と混合し、マグネチックスターラーで攪拌した。不溶性の沈降物が形成された。MDEA中のアジピン酸の溶解度は2g/100g未満である。
【0056】
実施例1
本実施例は、コハク酸/アジピン酸のアミン水溶液への溶解度を23.5℃で分析した。
【0057】
これは、不溶性沈殿物が形成されるまで、以下の表に示すアミン水溶液(出発溶液)にカルボン酸を撹拌しながら添加することによって達成した。溶解限度におけるアミン水溶液の組成は、以下の表に報告する。
【0058】
【0059】
参照例2
本参照例は、様々なカルボン酸の存在下におけるMDEAの安定性を分析した。
【0060】
30質量%のMDEA、15質量%のTBAEE及び様々なカルボン酸を含むアミン水溶液を、以下の表に従い混合によって製造した。このようにして得られた溶液に、20m3(STP)/tのCO2及び20m3(STP)/tのH2Sを取り込ませた。これは、まず水性吸収剤を40℃及び1バールでガラスシリンダーに充填し、溶液にH2S/CO2を約3時間通過させることによって達成した。CO2/H2Sの負荷量は、滴定、及びその後続けて未取り込みの吸収剤の希釈によって確立する20m3(STP)/tのCO2及び20m3(STP)/tのH2Sの負荷によって特定した。このように酸性ガス取り込み溶液を、窒素を充填したオートクレーブに移した。密閉したオートクレーブを油浴中で160℃に加熱し、この温度で5日間保持した。
【0061】
オートクレーブを冷却した後、試料を取り出し、酸性ガス(CO2及びH2S)を窒素でストリッピングした。これは、冷却器を備えたガラスフラスコに試料を移し、完全に還流する試料に100℃で4時間かけてN2を通過させることによって達成した。次いで、酸性ガスを実質的に含まない溶液を、ガスクロマトグラフィーによりそのアミン含有量について分析した。TABEE含量はすべての試料で実質的に変化しなかったが、MDEAについて用いる酸に依存して顕著な差異が観察された。結果を以下の表に示す。
【0062】