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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-14
(45)【発行日】2022-01-25
(54)【発明の名称】研磨装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 21/00 20060101AFI20220118BHJP
   B24B 21/06 20060101ALI20220118BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20220118BHJP
   B24B 49/16 20060101ALI20220118BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
B24B21/00 A
B24B21/06
B24B49/10
B24B49/16
H01L21/304 622R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020084244
(22)【出願日】2020-05-13
(62)【分割の表示】P 2016249782の分割
【原出願日】2016-12-22
(65)【公開番号】P2020142368
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2020-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2016029817
(32)【優先日】2016-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】上村 健司
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢一
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-061580(JP,A)
【文献】特開平11-291156(JP,A)
【文献】特開2011-224680(JP,A)
【文献】特開平03-142159(JP,A)
【文献】特開2014-150131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 21/00 - 21/18
49/00 - 49/18
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持部と、
研磨具を前記基板の面に押し付けるための押圧部材と、
前記押圧部材に押圧力を付与するアクチュエータと、
前記押圧部材を前記基板の面に沿って移動させるモータ駆動型移動装置と、
前記アクチュエータによって前記基板の面に向かって移動された前記押圧部材の移動距離を測定する距離測定器と、
前記距離測定器によって測定された前記押圧部材の移動距離に基づいて、前記研磨具が前記基板の面に接触したか否かを判断する監視装置とを備え、
前記監視装置は、前記移動距離がしきい値未満である場合に、予め設定された目標移動距離と、前記距離測定器によって測定された前記押圧部材の移動距離と、前記押圧力の設定値とから補正押圧力を算出し、前記アクチュエータに前記補正押圧力を発生させることで、前記押圧部材を移動させて前記研磨具を前記基板の面に接触させるように構成されていることを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
前記監視装置は、補正押圧力=(目標移動距離/測定された移動距離)×押圧力の設定値で表される計算式をその内部に予め格納していることを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記監視装置は、前記移動距離がしきい値よりも大きい場合は、前記モータ駆動型移動装置に指令を出して前記押圧部材を前記基板の面に沿って移動させることを特徴とする請求項1または2に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記押圧部材と前記アクチュエータとの間に配置された荷重測定器をさらに備え、
前記監視装置は、前記荷重測定器によって測定された荷重が設定値未満である場合に、警報を発することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記距離測定器は、非接触型距離センサであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項6】
前記距離測定器は、デジタルゲージ、磁気センサ、および渦電流センサのうちのいずれか1つであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハなどの基板を研磨する装置に関し、特に研磨テープなどの研磨具を基板の表面に押し当てながら、該研磨具を移動させることにより基板を研磨する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メモリー回路、ロジック回路、イメージセンサ(例えばCMOSセンサー)などのデバイスは、より高集積化されつつある。これらのデバイスを形成する工程においては、微粒子や塵埃などの異物がデバイスに付着することがある。デバイスに付着した異物は、配線間の短絡や回路の不具合を引き起こしてしまう。したがって、デバイスの信頼性を向上させるために、デバイスが形成されたウェハを洗浄して、ウェハ上の異物を除去することが必要とされる。ウェハの裏面にも、上述したような微粒子や粉塵などの異物が付着することがある。このような異物がウェハの裏面に付着すると、ウェハが露光装置のステージ基準面から離間したり、ウェハ表面がステージ基準面に対して傾き、結果として、パターニングのずれや焦点距離のずれが生じることとなる。
【0003】
そこで、近年、ウェハの裏面に付着した異物を高い除去率で除去することができる研磨装置が提案されている(特許文献1参照)。この新しい研磨装置によれば、研磨具をエアシリンダでウェハの裏面に押し当てながら、研磨具を裏面に沿って移動させることにより、ウェハの裏面をわずかに削り取ることができる。結果として、裏面から異物を高い除去率で除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-150178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記研磨装置は、ある設定圧力の圧縮空気をエアシリンダに供給することで、研磨具をウェハに押し付けるように構成されている。しかし、エアシリンダにはピストンの摺動抵抗が存在するため、設定圧力の圧縮空気をエアシリンダに供給しても、実際には研磨具がウェハに接触していないことがある。このような場合は、ウェハが正しく研磨されず、ウェハに異物が残ってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、ウェハなどの基板に研磨具が接触したか否かを検出することができ、更には、研磨具の位置検出も可能にする研磨装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、基板を保持する基板保持部と、研磨具を前記基板の面に押し付けるための押圧部材と、前記押圧部材に押圧力を付与するアクチュエータと、前記押圧部材を前記基板の面に沿って移動させるモータ駆動型移動装置と、前記アクチュエータによって前記基板の面に向かって移動された前記押圧部材の移動距離を測定する距離測定器と、前記距離測定器によって測定された前記押圧部材の移動距離に基づいて、前記研磨具が前記基板の面に接触したか否かを判断する監視装置とを備え、前記監視装置は、前記移動距離がしきい値未満である場合に、予め設定された目標移動距離と、前記距離測定器によって測定された前記押圧部材の移動距離と、前記押圧力の設定値とから補正押圧力を算出し、前記アクチュエータに前記補正押圧力を発生させることで、前記押圧部材を移動させて前記研磨具を前記基板の面に接触させるように構成されていることを特徴とする研磨装置である。
【0008】
本発明の好ましい態様は、前記監視装置は、補正押圧力=(目標移動距離/測定された移動距離)×押圧力の設定値で表される計算式をその内部に予め格納していることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記監視装置は、前記移動距離がしきい値よりも大きい場合は、前記モータ駆動型移動装置に指令を出して前記押圧部材を前記基板の面に沿って移動させることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記押圧部材と前記アクチュエータとの間に配置された荷重測定器をさらに備え、前記監視装置は、前記荷重測定器によって測定された荷重が設定値未満である場合に、警報を発することを特徴とする。
【0009】
本発明の好ましい態様は、前記距離測定器は、非接触型距離センサであることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記距離測定器は、デジタルゲージ、磁気センサ、および渦電流センサのうちのいずれか1つであることを特徴とする。
【0010】
本発明の一参考例は、基板を保持する基板保持部と、研磨具を前記基板の面に押し付けるための押圧部材と、前記押圧部材に押圧力を付与するアクチュエータと、前記押圧部材を前記基板の面に沿って移動させるモータ駆動型移動装置と、前記モータ駆動型移動装置に供給されるモータ電流がしきい値未満である場合に、警報を発する監視装置とを備えたことを特徴とする研磨装置である。
【0011】
上記参考例の好ましい態様は、前記監視装置は、所定時間内に測定された前記モータ電流の平均を算出し、該モータ電流の平均がしきい値未満である場合に、警報を発することを特徴とする。
上記参考例の好ましい態様は、前記所定時間は、前記モータ駆動型移動装置が前記押圧部材を前記基板の面に沿って移動させているときの時間の少なくとも一部を含んだ時間であることを特徴とする。
上記参考例の好ましい態様は、前記押圧部材と前記アクチュエータとの間に配置された荷重測定器をさらに備え、前記監視装置は、前記荷重測定器によって測定された荷重が設定値未満である場合に、警報を発することを特徴とする。
【0012】
本発明の一参考例は、基板を基板保持部で保持し、研磨具を押圧部材で前記基板の面に押し付け、モータ駆動型移動装置により前記押圧部材を前記基板の面に沿って移動させ、前記モータ駆動型移動装置に供給されるモータ電流がしきい値未満である場合に、警報を発することを特徴とする研磨方法である。
【0013】
上記参考例の好ましい態様は、前記警報を発する工程は、所定時間内に測定された前記モータ電流の平均を算出し、該モータ電流の平均がしきい値未満である場合に、警報を発する工程であることを特徴とする。
上記参考例の好ましい態様は、前記所定時間は、前記モータ駆動型移動装置が前記押圧部材を前記基板の面に沿って移動させているときの時間の少なくとも一部を含んだ時間であることを特徴とする。
上記参考例の好ましい態様は、前記押圧部材に加わる荷重を測定し、前記荷重が設定値未満である場合に、警報を発する工程をさらに含むことを特徴とする。
上記参考例の好ましい態様は、前記基板の面は、前記基板の裏面であることを特徴とする。
【0014】
本発明の一参考例は、基板を基板保持部で保持し、研磨具を支持した押圧部材をアクチュエータによって前記基板の面に向かって移動させ、前記アクチュエータによって移動された前記押圧部材の移動距離を測定し、前記移動距離がしきい値未満である場合に、警報を発することを特徴とする研磨方法である。
【0015】
上記参考例の好ましい態様は、前記移動距離がしきい値未満である場合は、前記警報を発するとともに、前記アクチュエータによって前記押圧部材を待避位置に移動させ、その後前記押圧部材を前記基板の面に向かって再度移動させることを特徴とする。
上記参考例の好ましい態様は、前記移動距離がしきい値よりも大きい場合は、モータ駆動型移動装置により前記押圧部材を前記基板の面に沿って移動させることを特徴とする。
上記参考例の好ましい態様は、前記アクチュエータから前記押圧部材に伝達される荷重を測定し、前記荷重が設定値未満である場合に、警報を発する工程をさらに含むことを特徴とする。
上記参考例の好ましい態様は、前記基板の面は、前記基板の裏面であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
基板の面に向かって移動された押圧部材の移動距離が短いと、研磨具は基板に接触することができない。したがって、監視装置は、押圧部材の移動距離(変位)としきい値との比較結果に基づいて、研磨具が基板に正しく接触したか否かを判断することができる。
【0017】
ウェハなどの基板の面(例えば、表面、裏面、ベベル部)に研磨具が正しく接触していると、研磨具を基板の表面に沿って移動させるときに摩擦力が研磨具と基板との間に生じる。モータ駆動型移動装置は、押圧部材を予め設定された速度で移動させるため、摩擦力に従ってモータ電流の大きさが変わり得る。したがって、監視装置は、モータ電流としきい値との比較結果に基づいて、研磨具が基板に正しく接触したか否かを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1(a)および図1(b)は、基板の一例であるウェハの断面図である。
図2】ウェハの裏面を研磨するための研磨装置を示す模式図である。
図3図2に示すエアシリンダに加圧気体を供給するための気体供給システムを示す模式図である。
図4】研磨ヘッドおよび研磨テープを予め設定された速度でウェハの裏面に沿ってウェハの半径方向外側に移動させる様子を示す図である。
図5】押圧部材の一実施形態を示す上面図である。
図6】押圧部材の側面図である。
図7】モータ電流の変化を示すグラフである。
図8】研磨装置の他の実施形態を示す図である。
図9】研磨装置のさらに他の実施形態を示す図である。
図10図9に示す研磨ヘッドの一実施形態を示す拡大図である。
図11】研磨ヘッドの他の実施形態を示す拡大図である。
図12】研磨ヘッドのさらに他の実施形態を示す拡大図である。
図13】研磨装置のさらに他の実施形態を示す図である。
図14図14(a)および図14(b)は、ウェハの表面で反射した光線を示す模式図である。
図15】研磨テープおよび押圧部材をウェハのベベル部に沿って移動させる研磨装置の一実施形態を示す模式図である。
図16図15に示す研磨装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1(a)および図1(b)は、基板の一例であるウェハの断面図である。より詳しくは、図1(a)はいわゆるストレート型のウェハの断面図であり、図1(b)はいわゆるラウンド型のウェハの断面図である。本明細書では、ウェハ(基板)の裏面とは、デバイスが形成されている面とは反対側の平坦な面をいう。ウェハの最外周面はベベル部と呼ばれる。ウェハの裏面はベベル部の半径方向内側にある平坦な面である。ウェハ裏面はベベル部に隣接する。
【0020】
以下に説明する実施形態は、基板の一例であるウェハの裏面を研磨することができる研磨装置および研磨方法であるが、本発明は、ウェハの表面やベベル部を研磨する研磨装置および研磨方法にも同様に適用することができる。
【0021】
図2は、ウェハの裏面を研磨するための研磨装置を示す模式図である。この研磨装置は、ウェハ(基板)Wを保持して回転させる基板保持部32と、基板保持部32に保持されているウェハWの裏面に研磨具を押し当てる研磨ヘッド34とを備えている。基板保持部32は、ウェハWを真空吸着により保持する基板ステージ37と、基板ステージ37を回転させるステージモータ39とを備えている。
【0022】
ウェハWはその裏面が下向きの状態で基板ステージ37上に載置される。基板ステージ37の上面には溝37aが形成されており、この溝37aは真空ライン40に連通している。真空ライン40は図示しない真空源(例えば真空ポンプ)に接続されている。真空ライン40を通じて基板ステージ37の溝37aに真空が形成されると、ウェハWは真空吸引により基板ステージ37上に保持される。この状態でステージモータ39は基板ステージ37を回転させ、ウェハWをその軸線を中心に回転させる。基板ステージ37の直径はウェハWの直径よりも小さく、ウェハWの裏面の中心側領域は基板ステージ37によって保持される。ウェハWの裏面の外周側領域は、基板ステージ37から外側にはみ出している。
【0023】
研磨ヘッド34は、基板ステージ37に隣接して配置されている。より具体的には、研磨ヘッド34は、露出している外周側領域に対向して配置されている。研磨ヘッド34は、研磨具としての研磨テープ42を支持する複数のローラー43と、研磨テープ42をウェハWの裏面に押し付ける押圧部材(例えば、押圧パッド)44と、押圧部材44に押圧力を付与するアクチュエータとしてのエアシリンダ45とを備えている。エアシリンダ45は押圧部材44に押圧力を与え、これにより押圧部材44は研磨テープ42をウェハWの裏面に押し付ける。なお、研磨具として、研磨テープに代えて砥石を用いてもよい。
【0024】
図3は、図2に示すエアシリンダ45に加圧気体(例えば加圧空気)を供給するための気体供給システム10を示す模式図である。気体供給システム10は、エアシリンダ45の第1チャンバ48に連通する荷重圧ライン11と、エアシリンダ45の第2チャンバ49に連通する背圧ライン12と、荷重圧ライン11に取り付けられた第1圧力レギュレータ14と、背圧ライン12に取り付けられた第2圧力レギュレータ15とを備えている。第1チャンバ48と第2チャンバ49は、エアシリンダ45内に配置されたピストン46によって仕切られている。ピストン46はピストンロッド47に固定されており、押圧部材44はピストンロッド47に取り付けられている。ピストン46、ピストンロッド47、および押圧部材44は、一体に移動可能となっている。
【0025】
荷重圧ライン11および背圧ライン12は、図示しない加圧気体供給源(例えば、加圧空気供給源)に接続されている。荷重圧ライン11および背圧ライン12には、それぞれ第1圧力センサ18および第2圧力センサ19が取り付けられており、第1圧力レギュレータ14および第2圧力レギュレータ15の上流側の気体の圧力は第1圧力センサ18および第2圧力センサ19によって測定される。加圧気体は、荷重圧ライン11および第1圧力レギュレータ14を通じてエアシリンダ45の第1チャンバ48に供給される。同様に、加圧気体は、背圧ライン12および第2圧力レギュレータ15を通じてエアシリンダ45の第2チャンバ49に供給される。
【0026】
エアシリンダ45の第1チャンバ48に加圧気体が供給されると、第1チャンバ48内の加圧気体はピストン46を押し、これによってピストンロッド47および押圧部材44をウェハWに向かって移動させる。エアシリンダ45の第2チャンバ49に加圧気体が供給されると、第2チャンバ49内の加圧気体はピストン46を反対方向に押し、これによってピストンロッド47および押圧部材44をウェハWから離間させる方向に移動させる。
【0027】
第1圧力レギュレータ14および第2圧力レギュレータ15は監視装置65に接続されており、第1圧力レギュレータ14および第2圧力レギュレータ15の動作は監視装置65によって制御される。押圧部材44が研磨テープ42をウェハWの裏面に押し付ける力は、第1圧力レギュレータ14によって調整される。すなわち、エアシリンダ45の第1チャンバ48に供給される加圧気体の圧力を増加させると、押圧部材44の押圧力が上昇する。監視装置65は、第1圧力レギュレータ14および第2圧力レギュレータ15にそれぞれ目標圧力指令値を送信し、第1圧力レギュレータ14および第2圧力レギュレータ15は、第1チャンバ48および第2チャンバ49内の圧力がそれぞれの目標圧力指令値に維持されるように動作する。
【0028】
図2に戻り、研磨テープ42の一端は巻き出しリール51に接続され、他端は巻き取りリール52に接続されている。研磨テープ42は、巻き出しリール51から研磨ヘッド34を経由して巻き取りリール52に所定の速度で送られる。使用される研磨テープ42の例としては、表面に砥粒が固定されたテープ、または硬質の不織布からなるテープなどが挙げられる。研磨ヘッド34は、研磨ヘッド移動装置55に連結されている。この研磨ヘッド移動装置55は、研磨ヘッド34および研磨テープ42をウェハWの半径方向外側に移動させるように構成されている。
【0029】
研磨ヘッド移動装置55は、ボールねじ60とサーボモータ61との組み合わせから構成されたモータ駆動型移動装置である。この研磨ヘッド移動装置55は、研磨テープ42および研磨ヘッド34を予め設定された速度でウェハWの裏面に沿って移動させるように構成されている。サーボモータ61は電力線63に接続され、電力線63を通じてサーボモータ61に電流が供給される。以下、サーボモータ61に供給される電流をモータ電流という。電力線63には、モータ電流を測定する電流計64が接続されている。電流計64は、監視装置65に接続されており、サーボモータ61に供給されるモータ電流は、監視装置65によって監視されている。
【0030】
基板ステージ37に保持されたウェハWの上方および下方には、ウェハWに研磨液を供給する液体供給ノズル57,58が配置されている。研磨液としては、純水が好ましく使用される。これは、エッチング作用のある化学成分を含む薬液を使用すると、裏面に形成されている凹部が広がってしまうことがあるからである。
【0031】
ウェハWの裏面は次のようにして研磨される。基板ステージ37に保持されたウェハWをその軸線を中心としてステージモータ39により回転させ、回転するウェハWの表面および裏面に液体供給ノズル57,58から研磨液を供給する。この状態で、研磨ヘッド34は研磨テープ42をウェハWの裏面に押し付ける。研磨テープ42は、ウェハWの裏面に摺接し、これにより裏面を研磨する。
【0032】
研磨ヘッド移動装置55は、研磨ヘッド34が研磨テープ42をウェハWの裏面に押し付けながら、図4の矢印に示すように、研磨ヘッド34および研磨テープ42を予め設定された速度でウェハWの裏面に沿ってウェハWの半径方向外側に移動させる。このようにして、ウェハWの裏面の外周側領域が研磨テープ42によって研磨される。研磨中、研磨液はウェハWの内側から外側に流れ、研磨屑は研磨液によってウェハWから除去される。
【0033】
図5は押圧部材44の一実施形態を示す上面図であり、図6は押圧部材44の側面図である。押圧部材44は、ウェハWの曲率と同じ曲率を有する円弧形状を有した突起部から構成されている。このような形状を持つ押圧部材44は、研磨テープ42とウェハWとの接触時間および接触圧力を被研磨領域全体に亘って均一とすることができる。
【0034】
研磨テープ42がウェハWに正しく接触していると、研磨テープ42をウェハWの表面に沿って移動させるときに摩擦力が研磨テープ42とウェハWとの間に生じる。モータ駆動型の研磨ヘッド移動装置55は、研磨テープ42を支持する研磨ヘッド34を予め設定された速度で移動させるため、摩擦力に従ってモータ電流の大きさが変わり得る。言い換えれば、研磨テープ42がウェハWに正しく接触しているときは、摩擦力が大きいためにモータ電流は大きくなる。逆に、研磨テープ42がウェハWに接触していないときは、摩擦力が発生しないためにモータ電流は小さくなる。そこで、監視装置65は、モータ電流をしきい値と比較し、その比較結果に基づいて、研磨テープ42がウェハWに正しく接触したか否かを判断するように構成されている。
【0035】
図7は、モータ電流の変化を示すグラフである。図7において、縦軸はモータ電流および研磨ヘッド34の位置を表し、横軸は時間を表している。図7に示す例では、時間T1における研磨ヘッド34の位置は、研磨開始位置であり、時間T2における研磨ヘッド34の位置は、研磨終了位置である。これらの研磨開始位置および研磨終了位置は、予め設定されている。研磨テープ42は、時間T1でウェハWに接触し、時間T2でウェハWから離れる。研磨テープ42がウェハWの裏面に接触した状態で、研磨ヘッド移動装置55は研磨テープ42および研磨ヘッド34を予め設定された速度でウェハWの裏面に沿って移動させる。その間、研磨テープ42とウェハWとの間に生じる摩擦力に起因してモータ電流は増加する。
【0036】
監視装置65は、電流計64から送られてくる測定値に基づいてモータ電流を監視し、モータ電流の測定値をしきい値と比較する。しきい値は、監視装置65に予め記憶されている。研磨ヘッド移動装置55が研磨テープ42および研磨ヘッド34を移動させているときのモータ電流がしきい値よりも低いということは、研磨テープ42がウェハWから離れている、あるいはウェハWに正しく接触していないことを意味する。そこで、監視装置65は、モータ電流がしきい値未満である場合は、警報を発するように構成されている。警報は、外部の警報装置を作動させる電気信号(例えば、ON,OFF接点信号)でもよいし、外部の機器に情報を伝える電気信号(例えば、電圧等アナログ出力)でもよいし、または色や音などの認識可能な信号でもよい。
【0037】
図7に示すように、研磨テープ42および押圧部材44がウェハWの裏面に沿って移動しているときのモータ電流はある程度変動する。モータ電流が変動する要素には、研磨テープ42に対する押圧力、ウェハWの裏面の状態、研磨テープ42の研磨面の状態、研磨テープ42の送り速度などが挙げられる。ウェハWの研磨中にモータ電流が大きく変動すると、監視装置65は、研磨テープ42がウェハWの裏面に接触しているか否かを正しく判断することができない。
【0038】
そこで、研磨テープ42がウェハWの裏面に接触しているか否かをより正確に判断するために、一実施形態では、監視装置65は、所定時間内に測定されたモータ電流の平均を算出し、該モータ電流の平均がしきい値未満である場合に、警報を発するように構成されている。上記所定時間は、例えば、研磨ヘッド移動装置55が、押圧部材44を研磨テープ42とともにウェハWの裏面に沿って研磨開始位置から研磨終了位置まで移動させている時間の少なくとも一部を含んだ時間である。所定時間は、研磨ヘッド移動装置55が、押圧部材44を研磨テープ42とともにウェハWの裏面に沿って研磨開始位置から研磨終了位置まで移動させている時間の全体または一部であってもよい。このように、監視装置65は、押圧部材44がウェハWの裏面に沿って移動しているときのモータ電流の大きさに基づいて、研磨テープ42がウェハWの裏面に正しく接触しているか否かを判断する。
【0039】
図8は、研磨装置の他の実施形態を示す図である。特に説明しない構成および動作は、図2乃至図6に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、研磨ヘッド34は、研磨テープ42とエアシリンダ(アクチュエータ)45との間に配置された荷重測定器としてのロードセル70を備えている。より具体的には、ロードセル70は、研磨テープ42を支持している押圧部材44とエアシリンダ45との間に配置されている。エアシリンダ45によって発生する荷重は、ロードセル70を通じて押圧部材44に伝えられる。ロードセル70は、監視装置65に接続されており、荷重の測定値は監視装置65に送られるようになっている。
【0040】
研磨テープ42がウェハWの裏面に接触しているとき、荷重はエアシリンダ45から押圧部材44に伝達されるが、研磨テープ42がウェハWの裏面に接触していないときは、荷重はエアシリンダ45から押圧部材44にほとんど伝達されない。言い換えれば、研磨テープ42がウェハWの裏面に接触しているとき、ロードセル70によって測定される荷重は大きく、研磨テープ42がウェハWの裏面に接触していないときは、ロードセル70によって測定される荷重は小さい。
【0041】
そこで、監視装置65は、ロードセル70によって測定された、押圧部材44に加わる荷重を設定値と比較し、その荷重が設定値未満である場合には、警報を発するように構成されている。設定値は、監視装置65に予め記憶されている。警報は、外部の警報装置を作動させる電気信号(例えば、ON,OFF接点信号)でもよいし、外部の機器に情報を伝える電気信号(例えば、電圧等アナログ出力)でもよいし、または色や音などの認識可能な信号でもよい。本実施形態によれば、上述したモータ電流としきい値との比較結果に基づいた警報に加え、荷重と設定値との比較結果に基づいた警報が発せられる。
【0042】
図9は、研磨装置のさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない構成および動作は、図2乃至図6に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、研磨装置は、エアシリンダ45によってウェハWの裏面に向かって移動された押圧部材44の移動距離を測定する距離測定器73を備えている。この距離測定器73は研磨ヘッド34に固定され、さらに監視装置65に接続されている。移動距離の測定値は距離測定器73から監視装置65に送られるようになっている。
【0043】
監視装置65は、モータ電流に代えて、エアシリンダ45によって移動された押圧部材44の移動距離を監視し、距離測定器73によって測定された移動距離がしきい値未満である場合には、警報を発するように構成されている。一実施形態では、監視装置65は、モータ電流および押圧部材44の移動距離の両方を、対応するしきい値と比較し、モータ電流および押圧部材44の移動距離のいずれか一方または両方が、対応するしきい値未満である場合には、警報を発するように構成されてもよい。
【0044】
監視装置65は、距離測定器73によって測定された距離、すなわち研磨テープ42を支持する押圧部材44の移動距離に基づいて、研磨テープ42がウェハWの裏面に接触したか否かを判断するように構成されている。より具体的には、監視装置65は、距離測定器73によって測定された移動距離がしきい値未満である場合には、警報を発するように構成されている。しきい値は、監視装置65に予め記憶されている。警報は、外部の警報装置を作動させる電気信号(例えば、ON,OFF接点信号)でもよいし、外部の機器に情報を伝える電気信号(例えば、電圧等アナログ出力)でもよいし、または色や音などの認識可能な信号でもよい。監視装置65は、距離測定器73によって測定された移動距離がしきい値未満である場合は、警報を発するとともに、エアシリンダ45に指令を出して押圧部材44を待避位置に一旦移動させ、その後、押圧部材44をウェハWの裏面に向かって再度移動させてもよい。
【0045】
しきい値は、研磨テープ42が実際にウェハの裏面に接触したときの押圧部材44の移動距離から、オフセット値を引き算することによって予め得られた値である。このオフセット値は、ウェハが回転しているときのウェハの面振れ、研磨テープ42とウェハとの摩擦に起因する振動などの、研磨テープ42の振動要因に基づいて決定される。オフセット値は、しきい値が距離測定器73の有効計測範囲内に収まる限りにおいて、任意に設定される。オフセット値は、監視装置65内に設定される値であるので、押圧部材44を新たなものに交換した後に、距離測定器73の位置を変えることなく、しきい値の調整を容易に行うことができる。
【0046】
監視装置65は、距離測定器73によって測定された移動距離がしきい値未満である場合は、前記警報を発するとともに、研磨装置はウェハWの研磨を実行しないことが好ましい。距離測定器73によって測定された移動距離がしきい値よりも大きい場合は、監視装置65は、研磨ヘッド移動装置55に指令を出して押圧部材44を研磨テープ42とともにウェハWの裏面に沿って移動させて、ウェハWの研磨を実行することが好ましい。さらに、距離測定器73によって測定された移動距離が、予め設定された上限値よりも大きい場合は、ウェハWが想定以上に反り返っている、またはウェハWが基板ステージ37から外れたと予想される。したがって、測定された移動距離が上記上限値よりも大きい場合は、監視装置65は、警報を発するとともに、研磨装置はウェハWの研磨を実行しないことが好ましい。
【0047】
研磨テープ42がウェハWの裏面に接触しているか否かをより正確に判断するために、一実施形態では、監視装置65は、所定時間内に距離測定器73によって測定された押圧部材44の移動距離の平均を算出し、該移動距離の平均がしきい値未満である場合に、警報を発するように構成されてもよい。監視装置65は、距離測定器73によって測定された移動距離の平均がしきい値未満である場合は、警報を発するとともに、エアシリンダ45に指令を出して押圧部材44を待避位置に一旦移動させ、その後、押圧部材44をウェハWの裏面に向かって再度移動させてもよい。監視装置65は、移動距離の平均がしきい値未満である場合は、前記警報を発するとともに、研磨装置はウェハWの研磨を実行しないことが好ましい。移動距離の平均がしきい値よりも大きい場合は、監視装置65は、研磨ヘッド移動装置55に指令を出して押圧部材44を研磨テープ42とともにウェハWの裏面に沿って移動させて、ウェハWの研磨を実行することが好ましい。さらに、距離測定器73によって測定された移動距離の平均が、予め設定された上限値よりも大きい場合は、監視装置65は、警報を発するとともに、研磨装置はウェハWの研磨を実行しないことが好ましい。
【0048】
図10は、図9に示す研磨ヘッド34の一実施形態を示す拡大図である。本実施形態では、距離測定器73は、非接触型距離センサから構成されている。より具体的には、距離測定器73は、センサターゲット75と近接センサ76との組み合わせから構成されている。近接センサ76とセンサターゲット75は、互いに離間して配置されている。一例として、近接センサ76は渦電流センサまたは磁気センサであり、センサターゲット75は磁石(永久磁石)または金属である。
【0049】
研磨ヘッド34は、押圧部材44に連結ベース79を介して連結された直動ガイド81を備えている。この直動ガイド81は、ウェハWの裏面に垂直な直動レール82と、直動レール82上をその長手方向に移動自在な直動ブロック83とを有している。センサターゲット75は、直動ブロック83に固定されており、直動ブロック83と一体に直動レール82の長手方向に移動可能となっている。直動ブロック83は、連結ベース79を介して押圧部材44に連結されている。したがって、エアシリンダ45によって駆動される押圧部材44の移動は、直線移動に制限される。
【0050】
近接センサ76は、センサターゲット75の近くに配置されている。近接センサ76と研磨ヘッド34との相対位置は固定である。センサターゲット75と近接センサ76との間の距離は、押圧部材44の変位、すなわち押圧部材44上の研磨テープ42の移動距離(変位)に従って変わる。したがって、近接センサ76とセンサターゲット75との組み合わせからなる距離測定器73は、エアシリンダ45によってウェハWに向かって移動された押圧部材44の移動距離を測定することができる。近接センサ76は監視装置65に接続されている。近接センサ76は、ウェハWに向かって移動された押圧部材44の移動距離を測定し、その移動距離の測定値を監視装置65に送るように構成されている。
【0051】
近接センサ76によって測定された押圧部材44の移動距離が上記しきい値未満である場合、監視装置65は、第1圧力レギュレータ14に指令を発してエアシリンダ45の第1チャンバ48(図3参照)内の圧力を増加させて、エアシリンダ45から与えられる押圧部材44の押圧力を増加させてもよい。より具体的には、監視装置65は、予め設定された目標移動距離と、近接センサ76によって測定された押圧部材44の移動距離と、押圧力の設定値とから補正押圧力を算出し、エアシリンダ45に補正押圧力を発生させる。
【0052】
監視装置65は、その内部に以下の計算式を予め格納している。
補正押圧力=(目標移動距離/測定された移動距離)×押圧力の設定値
ここで、目標移動距離は、押圧部材44が研磨テープ42をウェハWの裏面に正しく押し付けることができる押圧部材44の理論的な移動距離であり、測定された移動距離は、近接センサ76によって測定された押圧部材44の実際の移動距離であり、押圧力の設定値は、エアシリンダ45から押圧部材44に加えられる押圧力の現在の設定値である。
【0053】
監視装置65は、予め設定された目標移動距離と、近接センサ76によって測定された押圧部材44の移動距離と、押圧力の設定値を上記計算式に入力して補正押圧力を算出し、エアシリンダ45に補正押圧力を発生させる。より具体的には、監視装置65は、エアシリンダ45に補正押圧力を発生させるための目標圧力指令値を決定し、この目標圧力指令値を第1圧力レギュレータ14に送信する。監視装置65は、目標圧力指令値と押圧力との関係を示す関係式またはデータベースを予め格納しており、当該関係式またはデータベースを用いて補正押圧力に対応する目標圧力指令値を決定できるように構成される。このような押付力を補正する操作により、押圧部材44は研磨テープ42をウェハWの裏面に正しく押し付けることができる。
【0054】
図11は、研磨ヘッド34の他の実施形態を示す拡大図である。特に説明しない本実施形態の構成は、図10に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、研磨ヘッド34は、研磨テープ42とエアシリンダ(アクチュエータ)45との間に配置された荷重測定器としてのロードセル70を備えている。より具体的には、ロードセル70は、研磨テープ42を支持している押圧部材44とエアシリンダ45との間に配置されている。エアシリンダ45によって発生する荷重は、ロードセル70を通じて押圧部材44に伝えられる。ロードセル70は、監視装置65に接続されており、荷重の測定値は監視装置65に送られるようになっている。ロードセル70を設けた理由は、上述した実施形態と同じである。
【0055】
監視装置65は、ロードセル70によって測定された荷重を設定値と比較し、その荷重が設定値未満である場合には、警報を発するように構成されている。設定値は、監視装置65に予め記憶されている。警報は、外部の警報装置を作動させる電気信号(例えば、ON,OFF接点信号)でもよいし、外部の機器に情報を伝える電気信号(例えば、電圧等アナログ出力)でもよいし、または色や音などの認識可能な信号でもよい。本実施形態によれば、上述した押圧部材44の移動距離としきい値との比較結果に基づいた警報に加え、荷重と設定値との比較結果に基づいた警報が発せられる。
【0056】
図12は、研磨ヘッド34のさらに他の実施形態を示す拡大図である。特に説明しない本実施形態の構成は、図10に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、距離測定器73は、接触式距離測定器であるデジタルゲージ85から構成されている。デジタルゲージ85は、連結ベース79を介して押圧部材44に連結されている。したがって、デジタルゲージ85は、押圧部材44の変位、すなわちエアシリンダ45によってウェハWに向かって移動された押圧部材44の移動距離を測定することができる。デジタルゲージ85は監視装置65に接続されている。デジタルゲージ85は、ウェハWに向かって移動された押圧部材44の移動距離を測定し、その移動距離の測定値を監視装置65に送るように構成されている。
【0057】
本実施形態においても、図11に示すように、研磨ヘッド34は、押圧部材44とエアシリンダ(アクチュエータ)45との間に配置された荷重測定器としてのロードセル70を備えてもよい。先に述べた実施形態と同じように、デジタルゲージ85によって測定された押圧部材44の移動距離が上記しきい値未満である場合、監視装置65は、予め設定された目標移動距離と、近接センサ76によって測定された押圧部材44の移動距離と、押圧力の設定値とから補正押圧力を算出し、エアシリンダ45に補正押圧力を発生させてもよい。
【0058】
図13は、研磨装置のさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない構成および動作は、図2乃至図6に示す実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、研磨装置は、ウェハWの研磨された面の状態を検出する表面状態検出器90を備えている。この表面状態検出器90は、ウェハWの研磨された面に光を導き、研磨された面からの反射光を受け、反射光を分析し、反射光の分析結果に基づいてウェハWの研磨が未だ終了していないことを示す研磨未完了信号を発するように構成される。表面状態検出器90は、監視装置65に接続されており、研磨未完了信号は監視装置65に送られる。
【0059】
図14(a)および図14(b)は、ウェハWの表面で反射した光線を示す模式図である。図14(a)に示すように、ウェハWが研磨された結果としてウェハWの表面が鏡面となった場合、ウェハWの表面で反射した光線は干渉しない。これに対し、図14(b)に示すように、ウェハWの表面に凹凸がある場合は、ウェハWの表面で反射した光線が互いに干渉し、干渉パターンを形成する。そこで、本実施形態では、表面状態検出器90は、反射光が干渉パターンを示しているときに研磨未完了信号を発する。ウェハWの研磨が進行して反射光が干渉パターンを示さないとき、例えば、ウェハWの裏面が鏡面に研磨されたとき、表面状態検出器90は研磨未完了信号の発信を停止する。表面状態検出器90は、連続的または断続的にウェハWの研磨された面の状態を検出し、反射光が干渉パターンを示している限り、研磨未完了信号を連続的または断続的に発し続ける。
【0060】
監視装置65は、研磨未完了信号を受信し続ける限り、基板保持部32、研磨ヘッド43、および研磨ヘッド移動装置(モータ駆動型移動装置)55に指令を発してウェハWの研磨を再度実行させる。すなわち、研磨ヘッド34が研磨テープ42をウェハWの裏面に押し付けながら、研磨ヘッド移動装置55は研磨ヘッド34および研磨テープ42を予め設定された速度でウェハWの裏面に沿ってウェハWの半径方向外側に移動させる。この研磨動作は、監視装置65が研磨未完了信号を受信し続ける限り繰り返される。エアシリンダ45が発生する押圧力、ウェハWの回転速度、研磨ヘッド34および研磨テープ42のウェハWの半径方向外側への移動速度などの研磨条件は、研磨動作を繰り返す前に変更されてもよいし、または研磨動作が繰り返される間は同じであってもよい。監視装置65は、ある設定時間の間に研磨未完了信号を受信しなかった場合は、ウェハWの研磨を完了させる。
【0061】
図13に示す実施形態は、図8乃至図12に示す上記実施形態と組み合わせてもよい。
【0062】
上述した各実施形態は、基板の一例であるウェハの裏面を研磨することができる研磨装置および研磨方法であるが、本発明は、ウェハの表面やベベル部を研磨する研磨装置および研磨方法にも同様に適用することができる。例えば、図15および図16に示すような、研磨テープ42および押圧部材44をウェハWのベベル部に沿って移動させる研磨装置にも本発明を適用することが可能である。
【0063】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0064】
10 気体供給システム
11 荷重圧ライン
12 背圧ライン
14 第1圧力レギュレータ
15 第2圧力レギュレータ
18 第1圧力センサ
19 第2圧力センサ
32 基板保持部
34 研磨ヘッド
37 基板ステージ
39 ステージモータ
40 真空ライン
42 研磨テープ(研磨具)
43 ローラー
44 押圧部材
45 エアシリンダ(アクチュエータ)
46 ピストン
47 ピストンロッド
48 第1チャンバ
49 第2チャンバ
51 巻き出しリール
52 巻き取りリール
55 研磨ヘッド移動装置(モータ駆動型移動装置)
57,58 液体供給ノズル
60 ボールねじ
61 サーボモータ
63 電力線
64 電流計
65 監視装置
70 ロードセル(荷重測定器)
73 距離測定器
75 センサターゲット
76 近接センサ
79 連結ベース
81 直動ガイド
82 直動レール
83 直動ブロック
85 デジタルゲージ
90 表面状態検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16