(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】円偏光板
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220118BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20220118BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220118BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220118BHJP
H05B 33/26 20060101ALI20220118BHJP
H05B 33/28 20060101ALI20220118BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220118BHJP
C08F 220/30 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/02
H01L27/32
H05B33/14 A
H05B33/26 Z
H05B33/28
G09F9/30 365
G09F9/30 349E
C08F220/30
(21)【出願番号】P 2020500714
(86)(22)【出願日】2018-07-10
(86)【国際出願番号】 KR2018007800
(87)【国際公開番号】W WO2019013520
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-01-09
(31)【優先権主張番号】10-2017-0087123
(32)【優先日】2017-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ユーン、ヒュク
(72)【発明者】
【氏名】リー、ナム ジェオン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジョン スン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ムン スー
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ジェ ホ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジ スン
(72)【発明者】
【氏名】ムン、ビョン ジュン
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/114253(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/114255(WO,A1)
【文献】特開2009-122662(JP,A)
【文献】特開平08-321381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H05B 33/02
H01L 27/32
H01L 51/50
H05B 33/26
H05B 33/28
G09F 9/30
C08F 220/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、前記基材フィルム上に位相差層および前記位相差層上に偏光子を含み、
前記基材フィルムは、アクリル系樹脂とスチレン系樹脂を含み、
前記基材フィルムは、下記数式1の面上位相差値が5nm以下であり、下記数式2の厚さ方向位相差値が0nm超過であり、
前記位相差層は、385nmの波長の光に対する透過率が3%以下である紫外線吸収性を有し、
前記位相差層は、正分散重合性液晶化合物の重合単位および逆分散重合性液晶化合物の重合単位を含み、
前記位相差層における前記正分散重合性液晶化合物の比率は5重量%以下であり、
前記位相差層は、最大吸収波長が385nm~400nmの範囲内にある紫外線吸収剤および光安定剤を含まず、
前記位相差層は、
波長390nmの光に対して2%以上、および波長400nmの光に対して25%以上の透過率を有し、
前記位相差層は、下記数式Aによる位相差変化率の絶対値が17%以下であり、
前記逆分散重合性液晶化合物は、下記化学式1で表示され
る、円偏光板:
[数式1]
Rin=d×(nx-ny)
[数式2]
Rth=d×(nz-ny)
数式1および数式2でRinは、面上位相差であり、Rthは、厚さ方向位相差であり、nx、nyおよびnzは、それぞれ基材フィルムの遅相軸方向の屈折率、進相軸方向の屈折率および厚さ方向の屈折率であり、dは、基材フィルムの厚さであ
り、
[数式A]
位相差変化率=100×(Ra-Ri)/Ri
数式AでRiは、前記位相差層の550nm波長に対する初期面上位相差であり、Raは、耐久条件後の前記位相差層の550nm波長に対する面上位相差であり、前記耐久条件は、前記位相差層を85℃の温度で50時間以上放置する条件であり、
[化学式1]
【化3】
化学式1でR
1は、下記化学式3の置換基であり、R
2~R
6は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、下記化学式4の置換基または下記化学式5の置換基である。また、前記でR
2~R
6のうち少なくとも2つ以上または2つは、下記化学式4の置換基または下記化学式5の置換基である:
[化学式3]
【化5】
化学式3でL
3およびL
4は、それぞれアルキレン基であり、nは、1~4の範囲内の数であり、Pは、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基または水素原子である:
[化学式4]
【化6】
化学式4でA
3およびA
4は、酸素原子、アルキレン基または単結合であり、L
5およびL
6は、それぞれ独立して、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-またはアルキレン基であり、Cycは、アリレン基であり、Pは、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基である:
[化学式5]
【化7】
化学式5でA
5、A
6、A
7は、それぞれ独立して、酸素原子または単結合であり、L
7、L
8およびL
9は、それぞれ独立して、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-またはアルキレン基であり、Cy1は、シクロアルキレン基であり、Cy2は、アリレン基であり、Pは、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基である
。
【請求項2】
前記アクリル系樹脂は、分子鎖中にN-置換マレイミドを共重合してなる構造、ラクトン環構造およびグルタルイミド構造よりなる群から選ばれるいずれか1種以上の環構造を有する、請求項1に記載の円偏光板。
【請求項3】
前記スチレン系樹脂は、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体を含む、請求項1または2に記載の円偏光板。
【請求項4】
前記基材フィルムの厚さ方向位相差値は、50nm~120nmである、請求項1から3のいずれか一項に記載の円偏光板。
【請求項5】
前記基材フィルムの厚さは、0.1μm~300μm以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の円偏光板。
【請求項6】
前記位相差層と基材フィルムとの間に粘着剤層または接着剤層を含まない、請求項1から5のいずれか一項に記載の円偏光板。
【請求項7】
前記位相差層と基材フィルムとの間に液晶配向膜またはプライマー層をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の円偏光板。
【請求項8】
前記偏光子は、390nm波長での単体透過率が20%~60%の範囲内にある線形偏光子である、請求項1から
7のいずれか一項に記載の円偏光板。
【請求項9】
前記位相差層は、390nmの波長の光に対する透過率が15%以下である、請求項1から
8のいずれか一項に記載の円偏光板。
【請求項10】
前記位相差層は、400nmの波長の光に対する透過率が40%以下である、請求項1から
9のいずれか一項に記載の円偏光板。
【請求項11】
前記位相差層の450nm波長の光に対する面上位相差R(450)と550nm波長の光に対する面上位相差R(550)の比率R(450)/R(550)が0.6~0.99の範囲内である、請求項1から
10のいずれか一項に記載の円偏光板。
【請求項12】
前記位相差層の650nm波長の光に対する面上位相差R(650)と550nm波長の光に対する面上位相差R(550)の比率R(650)/R(550)が1.00~1.19の範囲内である、請求項1から
11のいずれか一項に記載の円偏光板。
【請求項13】
前記位相差層は、全体重合性液晶化合物の重合単位において逆分散重合性液晶化合物の重合単位を40重量%以上含む、請求項1から
12のいずれか一項に記載の円偏光板。
【請求項14】
前記位相差層は、全体重合性液晶化合物の重合単位において三官能以上の重合性液晶化合物の重合単位を30重量%以上含む、請求項1から
13のいずれか一項に記載の円偏光板。
【請求項15】
反射電極と、透明電極と、前記反射電極と前記透明電極との間に介在され、発光層を有する有機層および請求項1から
14のいずれか一項に記載の円偏光板を含み、前記円偏光板が前記透明電極の外側に存在し、偏光子に比べて位相差層が前記透明電極に近く配置されている有機発光表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年7月10日付けで出願された韓国特許出願第10-2017-0087123号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本出願は、円偏光板に関する。
【背景技術】
【0003】
偏光子および位相差層を基本的に含むいわゆる円偏光板は、有機発光装置において反射電極による外光反射の防止のために使用され得る。例えば、特許文献1(日本国特開平8-321381号)には、有機発光装置において透明電極側に円偏光板を配置する方法が開示されている。
【0004】
円偏光板のような光学フィルムに紫外線遮断機能を付与するための技術が知られており、代表的な方式は、特許文献2(韓国特許登録第1742845号)に開示されたように、偏光子を保護するために積層される保護フィルムに紫外線吸収剤または光安定剤を添加する方式である。
【0005】
しかしながら、保護フィルムに紫外線吸収剤または光安定剤を付加する従来の方式は、波長が約380nm未満の範囲の紫外線は遮断されるが、380nm~400nmの範囲の紫外線の遮断は効率的に行われず、現在まで知られている技術のうち前記範囲の紫外線の遮断の必要性を認識している技術も存在しない。
【0006】
しかしながら、円偏光板が特に有機発光装置に適用される場合に、前記従来の技術では遮断されない380~400nmの範囲の波長の光は、有機発光装置の耐久性に悪影響を及ぼす。また、円偏光板により遮断されないため、反射電極により反射した前記範囲の波長の光は、観察者の健康にも悪影響を与える恐れがある。
【0007】
単純に前記380nm~400nmの範囲の波長の光を遮断するためには、当該範囲で最大吸収波長を有する紫外線吸収剤や光安定剤を保護フィルムやその他円偏光板の構成に含ませる方法を考えることができる。しかしながら、前記紫外線吸収剤や光安定剤が遮断する波長範囲を精密に調整しない場合、短波長の可視光領域の光まで円偏光板により遮断され得、これは、色感の変化を起こす等、ディスプレイ品質に影響を与えることができる。また、液晶化合物により形成される層に紫外線吸収剤や光安定剤を含ませる場合、当該成分が全体的な円偏光板の耐久性に悪影響を与えることができる。
【0008】
一方、前記円偏光板の視野角での補償特性を向上させるために、厚さ方向位相差値を有する位相差フィルムを粘着剤または接着剤を介して前記円偏光板に積層することができるが、このような技術は、工程の単純化およびコスト競争力の確保の側面において好ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本出願は、円偏光板に関する。本出願では、ディスプレイ装置の色感や画質等の表示性能に影響を与えることなく、前記装置の耐久性などに影響を与えることができる紫外線領域の光を選択的かつ効果的に遮断しながらも、自体的に優れた耐久性を有する円偏光板を提供することを一つの目的とする。また、本出願は、工程の単純化およびコスト競争力を確保しつつ、視野角で反射防止特性に優れた円偏光板が提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
例示的な円偏光板は、基材フィルムと、前記基材フィルム上に位相差層および前記位相差層上に偏光子を含む。前記位相差層は、前記基材フィルムの一面に積層されていてもよい。前記偏光子は、前記位相差層の一面に積層されていてもよい。
図1は、順次積層されている偏光子101と、位相差層102および基材フィルム103を含む例示的な円偏光板を示す。
【0011】
一例において、前記基材フィルムは、面上位相差値が5nm以下であってもよい。前記面上位相差値は、0nm以上、3nm以下または1nm以下であってもよい。一例において、前記基材フィルムは、厚さ方向位相差値が0nm超過であってもよい。本出願では、前記位相差特性を有するフィルムを基材フィルムに適用することにより、工程の単純化および値競争力を確保しつつ、視野角での補償特性を向上させることができる。前記基材フィルムの厚さ方向位相差値は、具体的に、10nm以上、20nm以上、30nm以上、40nm以上または50nm以上であってもよく、300nm以下、200nm以下、150nm以下、120nm以下であってもよい。このような範囲内で視野角での補償特性をさらに向上させることができる。前記面上位相差値および厚さ方向位相差値は、それぞれ550nm波長に対する値であってもよい。
【0012】
本明細書で用語「面上位相差」は、下記数式1により定められる値であり、厚さ方向位相差は、下記数式2により定められる値である。
【0013】
[数式1]
Rin=d×(nx-ny)
【0014】
[数式2]
Rth=d×(nz-ny)
【0015】
数式1および2でRinは、面上位相差であり、Rthは、厚さ方向位相差であり、nyおよびnzは、それぞれx軸方向(遅相軸方向)の屈折率、y軸方向(進相軸方向)の屈折率およびz軸方向(厚さ方向)の屈折率であり、このような定義は、特に別途規定しない限り、本明細書で同一に適用され得る。前記でx軸方向は、例えば、
図2に示されたように、フィルムまたはシート形態の位相差層100の面上の遅相軸方向を意味し、y軸方向は、前記x軸に垂直な面上方向(進相軸方向)を意味し、z軸方向は、前記x軸とy軸により形成される平面の法線の方向、例えば厚さ方向を意味する。数式1および2でdは、位相差層の厚さである。特に別途規定しない限り、本明細書で用語「屈折率」は、約550nm波長の光に対する屈折率であり、RinおよびRth値は、550nm波長の光に対するRinおよびRth値である。
【0016】
前記基材フィルムは、高分子フィルムであってもよい。前記基材フィルムは、アクリル系樹脂とスチレン系樹脂を含むことができる。
【0017】
本明細書でアクリル系樹脂は、アクリル系単量体を主成分として含む、例えば、50重量%超過、70重量%超過または90重量%超過で含む樹脂を意味する。前記アクリル系単量体とは、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの誘導体を意味する。
【0018】
アクリル系樹脂の具体的な例としては、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステルから選択される1種以上の単量体を重合した重合体を例示することができ、これらの単独重合体または他の単量体との共重合体であってもよい。
【0019】
一例において、アクリル系樹脂として、メタクリル酸メチルまたはメタクリル酸メチルと他の単量体の共重合体を使用することができる。メタクリル酸メチルと共重合可能な単量体としては、他のメタクリル酸アルキルエステル類、アクリル酸アルキルエステル類;スチレンおよびo-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン等の核アルキル置換スチレン;α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン等のα-アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリルニトリル等のシアン化ビニル類;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類;無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和酸類などが挙げられる。これらは、一種または2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0020】
これらのメタクリル酸メチルと共重合可能な単量体のうち、特にアクリル酸アルキルエステル類は、耐熱分解性に優れ、これを共重合させて得られたメタクリル系樹脂の成形加工時の流動性が高いので好ましい。メタクリル酸メチルにアクリル酸アルキルエステル類を共重合させる場合のアクリル酸アルキルエステル類の共重合比率は、耐熱分解性の観点から0.1重量%以上であることが好ましく、耐熱性の観点から15重量%以下であることが好ましい。0.2重量%以上14重量%以下であることがより好ましく、1重量%以上12重量%以下であることが特に好ましい。
【0021】
アクリル酸アルキルエステル類のうちアクリル酸メチルおよびアクリル酸エチルは、0.1~1重量%等の少量でメタクリル酸メチルと共重合させても、前述の成形加工時の流動性改良効果が顕著に得られるので、好ましい。
【0022】
一例において、アクリル系樹脂として耐熱アクリル系樹脂を利用することができる。耐熱アクリル系樹脂の具体的な例としては、メタクリル酸エステルおよび/またはアクリル酸エステルとα-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン等のα-アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル類;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類;無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和酸類との共重合体などが挙げられる。
【0023】
好ましい耐熱アクリル系樹脂としては、メタクリル酸メチル-無水マレイン酸-スチレン共重合体が挙げられる。特に共重合体中のメタクリル酸メチル単位が40~90重量%、無水マレイン酸単位が3~20重量%、スチレン単位が7~40重量%であるもの、また、無水マレイン酸単位の共重合比率に対するスチレン単位の共重合比率(スチレン単位/無水マレイン酸単位)が1~3倍であるものが、耐熱性、光弾性係数の点から好ましい。また、好ましくは共重合体中のメタクリル酸メチル単位が40~90重量%、無水マレイン酸単位が5~19重量%、スチレン単位が10~40重量%であり、特に好ましくは共重合体中のメタクリル酸メチル単位が45~88重量%、無水マレイン酸単位が6~15重量%、スチレン単位が16~40重量%である。このような耐熱アクリル系樹脂の製造には、特開昭63-001964号などに記載されている方法などを利用することができる。
【0024】
一例において、前記アクリル系樹脂は、メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸メチル/無水マレイン酸/スチレン共重合体であってもよく、成形加工時の流動性と耐熱性の両方をバランスよく兼ね備えているという点から、特にメタクリル酸メチル/アクリル酸メチル共重合体が好ましい。
【0025】
本出願の一実施例によれば、前記アクリル系樹脂としては、分子鎖中にN-置換マレイミドを共重合してなる構造、ラクトン環構造およびグルタルイミド構造からなる群から選択される1種以上の環構造を有するアクリル系樹脂を使用することができる。このようなアクリル系樹脂は、耐熱性だけでなく、前記RinおよびRth値を有する基材フィルムの具現に適合している。
【0026】
本出願のアクリル系樹脂には、分子量、組成などが異なる2種以上のものを同時に利用することができる
【0027】
アクリル系樹脂の重量平均分子量は、5万~20万であってもよい。重量平均分子量は、成形品の強度の観点から、5万以上が好ましく、成形加工性、流動性の観点から、20万以下が好ましい。より好ましい範囲は、7万~15万である。
【0028】
アクリル系樹脂を製造する方法として、例えばキャスト重合、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、アニオン重合等の一般的に行われている重合方法を利用することができるが、光学用途としては、微小な異物の混入は、できるだけ避けることが好ましく、この観点では、懸濁剤や乳化剤を利用しない塊状重合や溶液重合が好ましい。
【0029】
溶液重合をする場合には、単量体の混合物をトルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒に溶解して調製した溶液を使用することができる。塊状重合により重合させる場合には、通常行われるように加熱により発生するガラスラジカルや電離性放射線照射により重合を開始させることができる。
【0030】
重合反応に用いられる開始剤としては、ラジカル重合に用いられる任意の開始剤を使用することができ、例えばアゾビスイソブチルニトリル等のアゾ化合物、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート等の有機過酸化物を利用することができる。
【0031】
特に90℃以上の高温下で重合をする場合には、溶液重合が一般的であるので、10時間半減期温度が80℃以上で、また、利用する有機溶媒に溶解可能な過酸化物、アゾビス開始剤などが好ましい。具体的には、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘシサン、シクロヘシサンペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、1,1-アゾビス(1-シクロヘシサンカルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリルなどが挙げられる。これらの開始剤は、0.005~5wt%の範囲で用いられることが好ましい。
【0032】
重合反応に必要に応じて用いられる分子量調節剤としては、ラジカル重合に利用する任意のものを使用することができ、例えばブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸2-エチルヘキシル等のメルカプタン化合物が特に好ましいものとして挙げられる。これらの分子量調節剤は、アクリル系樹脂の重合度が好ましい範囲内に制御される濃度範囲で添加される。
【0033】
本出願のスチレン系樹脂とは、スチレン系単量体を例えば50重量%超過、70重量%超過または90重量%超過で含む樹脂を意味する。ここで、スチレン系単量体とは、その構造中にスチレン骨格を有する単量体をいう。
【0034】
スチレン系単量体の具体的な例としては、スチレンの他に、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン等の核アルキル置換スチレン;α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン等のα-アルキル置換スチレン等のビニル芳香族化合物単量体が挙げられ、代表的なものは、スチレンである。
【0035】
スチレン系樹脂には、スチレン系単量体成分に他の単量体成分を共重合したものも含まれ得る。共重合可能な単量体としては、メチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、メチルフェニルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート等のアルキルメタクリレート;メチルアクリレート、アクリル酸エチル、ブチルアクリレート、2-アクリル酸エチルヘキシル、シクロヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレート等の不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸単量体;無水マレイン酸、イタコン酸、エチルマレイン酸、メチルイタコン酸、クロルマレイン酸等の無水物である不飽和ジカルボン酸無水物単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体;1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等の共役ジエン等が挙げられ、これらの2種以上を共重合することも可能である。
【0036】
一例において、前記スチレン系樹脂としては、耐熱性に優れているという側面から、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体またはスチレン-無水マレイン酸共重合体を使用することができる。
【0037】
スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体は、アクリル系樹脂との相溶性が高いので、透明性が高く、使用中に相分離を起こし、透明性が低下しないフィルムを得ることができるので好ましい。このような観点では、特にアクリル系樹脂としてメタクリル酸メチルを単量体成分として含む重合体を利用する場合に好ましい。
【0038】
スチレン-アクリロニトリル共重合体の場合、共重合体中のアクリロニトリルの共重合体の比率は、1~40重量%、1~30重量%または1~25重量%であってもよい。共重合体中のアクリロニトリルの共重合体の比率が前記範囲内である場合、優れた透明性の確保の側面から好ましい。
【0039】
スチレン-メタクリル酸共重合体の場合、共重合体中のメタクリル酸の共重合体の比率は、0.1~50重量%、0.1~40重量%または0.1~30重量%であってもよい。共重合体中のメタクリル酸の共重合体の比率が0.1重量%以上なら、耐熱性に優れ、50重量%以下なら、透明性に優れるという側面から好ましい。
【0040】
スチレン-無水マレイン酸共重合体の場合、共重合体中の無水マレイン酸の共重合体の比率は、0.1~50重量%、0.1~40重量%または0.1重量%~30重量%であってもよい。共重合体中の無水マレイン酸の含量が0.1重量%以上なら、耐熱性に優れ、50重量%以下の範囲なら、透明性に優れるという側面から好ましい。
【0041】
これらの中でも、耐熱性の観点から、スチレンメタクリル酸共重合体、スチレン無水マレイン酸共重合体が特に好ましい。スチレン系樹脂として組成、分子量などが異なる複数の種類のものを併用することができる。
【0042】
スチレン系樹脂は、公知のアニオン、塊状、懸濁、乳化または溶液重合方法により得ることができる。また、スチレン系樹脂においては、共役ジエンやスチレン系単量体のベンゼン環の不飽和二重結合が水素添加されていてもよい。水素添加率は、核磁気共鳴装置(NMR)により測定することができる。
【0043】
前記基材フィルムは、アクリル系樹脂およびスチレン系樹脂を含む樹脂組成物を利用して製造され得る。この際のアクリル系樹脂の比率は、光弾性係数、耐熱性、位相差値の制御の観点から、アクリル系樹脂とスチレン系樹脂の合計量100重量部に対してアクリル系樹脂を0.1~99.9重量部含有することが好ましく、具体的に10~90重量部、15~85重量部、20~80重量部、30~70重量部または40~60重量部であることが好ましい。
【0044】
前記基材フィルムの材料となる樹脂組成物には、その効果を損傷しない範囲でアクリル系樹脂およびスチレン系樹脂以外の他の樹脂成分を加えることができる。この際の他の樹脂成分としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエステル、脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂;およびフェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂などが挙げられる。これらの樹脂成分は、1種以上を利用することができる。また、その他樹脂成分の比率は、アクリル系樹脂およびスチレン系樹脂の合計量100重量部に対して20重量部以下であることが好ましい。
【0045】
また、前記基材フィルム材料となる樹脂組成物には、本出願の効果を損傷しない範囲内で各種目的に応じて任意の添加剤を配合することができる。添加剤の種類は、樹脂やゴム型重合体の配合に一般的に用いられるものなら特に制限はない。二酸化ケイ素等の無機充填剤;酸化鉄等の顔料;ステアリン酸、ベヘン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の潤滑剤;離型剤;パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、パラフィン、有機ポリシロキサン、ミネラルオイルなど軟化剤可塑剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系安定剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤;難燃剤;帯電防止剤;有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ 等の補強剤;着色剤;紫外線吸収剤、その他添加剤、あるいは、これらの混合物などが挙げられる。これらの添加剤は、アクリル系樹脂およびスチレン系樹脂の合計量100重量部に対して0.01重量部以上50重量部以下添加することが好ましい。
【0046】
前記基材フィルムの材料となる樹脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法を利用することができる。例えば単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ブラベンダー(Brabender)、各種ニーダー等の溶融混練機を利用して樹脂成分、必要に応じて耐加水分解抑制剤や前記その他の成分を添加して溶融混練して製造することができる。
【0047】
前記基材フィルム材料となる樹脂組成物は、その光弾性係数の絶対値が0Pa-1以上、5.0×10-12Pa-1以下であることが好ましい。光弾性係数とは、外力による複屈折の変化の発生しやすいことを示す係数であり、これに関しては、様々な文献に記載がある(例えば化学総説、No.39,1998(学会出版センター発行))。本出願では、次の式により定義する。C=Δn/σΔn=n1-n2(式中、C:光弾性係数、σ:伸長応力[Pa]、Δn:応力付加時の平面方向の複屈折、n1:伸長方向と平行な方向に偏光面を有する光に対する屈折率、n2:伸長方向と垂直な方向に偏光面を有する光に対する屈折率)
【0048】
光弾性係数の絶対値がゼロに近いほど外力による複屈折の変化が小さいことを示しており、各用途において設計された複屈折の変化が小さいことを意味し、光学特性が優秀になる。
【0049】
光弾性係数の絶対値は、0以上、4.5×10-12Pa-1以下であることがより好ましく、0以上、4.0×10-12Pa-1以下であることが特に好ましい。他の例において、光弾性係数は、光弾性係数は、0以上、2×10-12m2/N以下であってもよい。
【0050】
前記基材フィルム材料となる樹脂組成物においてこのような光弾性係数の制御は、配合される樹脂成分の配合比によって行うことができる。すなわち樹脂組成物のアクリル系樹脂およびスチレン系樹脂の配合比によって制御することができる。
【0051】
前記基材フィルムの成形方法は、特に制限されるものではなく、射出成形、シート成形、ブロー成形、射出ブロー成形、インフレーション成形、押出成形、発泡成形、キャスト成形など公知の方法でフィルムに成形することが可能であり、圧空成形、真空成形等の2次加工成形法も利用することができる。その中でも押出成形、キャスト成形が好ましく用いられる。この際、例えばTダイ、円形ダイなどが装着された押出機などを利用して未延伸フィルムを押出成形することができる。押出成形により成形品を得る場合には、事前に各種樹脂成分、添加剤などを溶融混練した材料を利用することもでき、押出成形時に溶融混練を経て成形することもできる。また、各種樹脂成分に共通した溶媒、例えばクロロホルム、二塩化メチレン等の溶媒を利用して各種樹脂成分を溶解した後、キャスト乾燥固体化することにより、未延伸フィルムをキャスト成形することもできる。
【0052】
前記基材フィルムは、押出フィルムを二軸延伸することにより製造することができる。前記二軸延伸は、機械的流れ方向(MD;Mechanical Direction、縦方向または長さ方向)と機械的流れ方向に直行する方向(TD;Transverse Direction、横方向または幅方向)にそれぞれ行われ得る。前記二軸延伸は、同時二軸延伸法または逐次二軸延伸法などにより行われ得る。前記延伸は、テンダー延伸法またはチューブラー延伸法などにより行われ得る。
【0053】
基材フィルムのリタデーション制御は、一般的にフィルムの延伸条件を制御することにより行われる。これは、リタデーションがフィルムの延伸によるフィルム自体の厚さに因るからである。二軸延伸の場合は、機械的流れ方向(MD方向)と機械的流れ方向に直行する方向(TD方向)の延伸倍率の比(MD方向/TD方向)を0.67以下あるいは1.5以上とすることが好ましく、0.55以下あるいは1.8以上がより好ましく、0.5以下あるいは2以上が最も好ましい。
【0054】
前記のような延伸倍率は、目的とするリタデーションを得るときの基準であり、目的とするリタデーションを得るために、多様な延伸条件を適用することができる。ただし、耐熱性、強度の観点から、延伸倍率は、機械的流れ方向および機械的流れ方向に直行する方向の少なくともいずれか一つの方向に0.1%以上1000%以下であることが好ましく、0.2%以上600%以下であることがより好ましく、0.3%以上300%以下であることが特に好ましい。この範囲に設計することにより、耐熱性、強度において好ましい基材フィルムを得ることができる。
【0055】
前記基材フィルムは、高温で優れた耐久性を示すことができる。一例において、前記基材フィルムは、85℃または95℃の高温で位相差の変化率が3%以下であってもよい。
【0056】
本出願において基材フィルムの厚さは、ハンドリング性の観点から、0.1μm以上であることが好ましく、当該技術分野において要求されているスリム化の観点から、300μm以下であることが好ましい。前記厚さは、位相差の十分な具現の側面から、1μm以上、10μm以上、20μm以上、30μm以上、40μm以上であってもよく、200μm以下または100μm以下であってもよい。
【0057】
本出願の円偏光板では、偏光子および/または位相差層は、紫外線領域の光、特に380nm~400nmの範囲内のいずれか一つの波長または一定範囲内の波長で制御された光学特性を有するように設計される。特に本出願では、紫外線吸収剤や光安定剤等の添加剤を適用しなくても、前記位相差層が特定波長の紫外線領域を選択的に遮断することができるように設計することにより、本出願の目的に合致する円偏光板を提供することができる。
【0058】
本出願の円偏光板は、前記のような設計によって装置の耐久性に影響を与える紫外線を選択的に効果的に遮断しながらも、自体的に安定した耐久性を確保することができ、ディスプレイ装置に適用されて、その表示品質も良好に維持することができる。
【0059】
本明細書で用語「偏光子」は、偏光機能を有するフィルム、シートまたは素子を意味する。偏光子は、様々な方向に振動する入射光から一方の方向に振動する光を抽出できる機能性素子である。
【0060】
本出願で偏光子としては、吸収型線偏光子を使用することができる。このような偏光子としては、ポリビニルアルコール(PVA)偏光子が知られている。基本的に、本出願では、偏光子としては、公知の偏光子を使用することができる。一例において、公知のポリビニルアルコール(PVA)偏光子として、下記特性を有する偏光子が適用され得る。
【0061】
本出願では、適用される偏光子としては、390nm波長の光に対する単体透過率(Ts,single transmittance)が20%以上であるか、または60%以下である偏光子が使用され得る。前記390nm波長の光に対する偏光子の単体透過率は、他の例において、59%以下、58%以下、57%以下、56%以下、55%以下、54%以下、53%以下、52%以下、51%以下、50%以下、49%以下、48%以下、47%以下、46%以下、45%以下、44%以下、43%以下、42%以下、41%以下または40%以下であるか、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上または25%以上であってもよい。
【0062】
前記偏光子の単体透過率は、例えば、スペクトロメーター(V7100,Jasco社制)を使用して測定することができる。例えば、偏光子試料(上部および下部保護フィルムを含まない)を機器に保持した状態でエア(air)をベースライン(base line)に設定し、偏光子試料の軸を基準偏光子の軸と垂直および水平に整列した状態でそれぞれの透過率を測定した後、単体透過率を計算することができる。
【0063】
390nm波長の光に対する単体透過率が前記範囲に制御された偏光子は、後述する位相差層と組合わせて円偏光板に適切な紫外線遮断特性を付与し、安定して耐久性が維持されるようにすることができる。
【0064】
通常、ポリビニルアルコール(PVA)系線形吸収型偏光子は、上記のような単体透過率を示し、本出願では、このようなPVA系線形吸収型偏光子が適用され得るが、前記のような単体透過率を示す限り、適用され得る偏光子の種類は、前記に制限されない。
【0065】
PVA偏光子は、一般的にPVAフィルムまたはシートおよび前記PVAフィルムまたはシートに吸着配向された二色性色素またはヨードのような吸収異方性物質を含む。
【0066】
PVAフィルムまたはシートは、例えば、ポリビニルアセテートをゲル化下で得ることができる。ポリビニルアセテートとしては、ビニルアセテートの単独重合体;およびビニルアセテートおよび他の単量体の共重合体などを例示することができる。前記でビニルアセテートと共重合される他の単量体としては、不飽和カルボン酸化合物、オレフィン化合物、ビニルエーテル化合物、不飽和スルホン酸化合物およびアンモニウム基を有するアクリルアミド化合物等の一種または二種以上を例示することができる。
【0067】
ポリビニルアセテートのゲル化度は、一般的に約85モル%~約100モル%または98モル%~100モル%程度である。線偏光子のポリビニルアルコールの重合度は、一般的に約1,000~約10,000または約1,500~約5,000であってもよい。
【0068】
PVA偏光子は、PVAフィルムまたはシートに、染色工程と延伸工程を経て製造される。必要な場合に前記偏光子の製造工程は、膨潤、架橋、洗浄および/または乾燥工程をさらに含むことができる。
【0069】
例えば、前記で染色工程は、吸収異方性物質であるヨードをPVAフィルムまたはシートに吸着させるための工程であって、ヨードおよびヨウ化カリウムを含む処理槽内に前記PVAフィルムまたはシートを沈漬させて行うことができるが、この過程で処理槽内のヨードおよびヨウ化カリウムの濃度を調節する方式で前記単体透過率の調節が可能である。
【0070】
染色工程でPVAフィルムまたはシートは、ヨード(I2)、KI等のヨウ化物および/またはホウ酸化合物(ホウ酸またはホウ酸塩)等を含む染色液または架橋液に沈漬され、この過程でヨード等の吸収異方性物質がPVAフィルムまたはシートに吸着する。したがって、前記過程で染色液内の前記化合物の濃度に応じて偏光子に吸着する吸収異方性物質の種類または量が決定され、それにより偏光子の特定波長の光に対する吸収率と透過率が決定され得る。
【0071】
例えば、前記染色液に存在できるヨード化合物の種は、ヨウ化物(M+I-)とヨード(I2)に由来するI-、I2、I3
-またはI5
-などがありえる。ところが、前記化合物のうちI-は、吸収波長範囲が約190nm~260nmであり、色感の影響は大きくなく、I2は、吸収波長範囲が約400nm~500nmであり、色感は、主にレッド(red)であり、I3
-は、吸収波長範囲が約250nm~400nmであり、色感は、主にイエロー(Yellow)であり、線形構造のI5
-は、吸収波長範囲が観測されず、色感の影響は、大きくなく、曲がった構造のI5
-は、吸収波長範囲が約500nm~900nmであり、色感は、主にブルー(blue)である。
【0072】
したがって、染色液内に形成された前記ヨード化合物の種の比率を制御することにより、390nm波長の光に対する単体透過率の制御が可能である。
【0073】
染色液は、一般的にヨードと溶解補助剤であるヨウ化物を通じてヨードイオンを形成した水溶液であるヨード溶液であり、前記水溶液に架橋工程のためにホウ酸化合物が追加されることもあるが、前記水溶液に添加されるヨードおよびヨウ化物の濃度に応じて当該染色液内で形成されるヨード化合物の種と比率が決定され得る。ヨウ化化合物としては、例えばヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化スズまたはヨウ化チタンなどが使用され得る。
【0074】
本出願の条件である390nm波長の光に対する透過率を満たす偏光子を製作するために、前記染色工程で適用される染色液内のヨウ化物の濃度が約1.5重量%以上であり、ヨード(I2)の濃度が0.05~20重量%程度となるように調節することができる。前記ヨウ化物の濃度は、他の例において、約20重量%以下、18重量%以下、16重量%以下、14重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、8重量%以下または約7重量%以下程度であってもよい。また、前記ヨードの濃度は、他の例において、19重量%以下、18重量%以下、17重量%以下、16重量%以下、15重量%以下、14重量%以下、13重量%以下、12重量%以下、11重量%以下、10重量%以下、9重量%以下、8重量%以下、7重量%以下、6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下または1重量%以下程度であってもよい。
【0075】
染色液内のヨウ化物および/またはヨードの濃度を前記範囲に調節すると、染色液内のヨード化合物の種およびその濃度が、390nm波長の光に対する単体透過率が前述した範囲に属することができるように形成され得る。
【0076】
本出願に適用される偏光子の製作のために染色工程で適用される染色液の濃度が上記のように調節され、その他の工程は、一般的に知られた方式によって行われ得る。また、染色工程も、染色液の濃度が上記のように制御されること以外には、公知の方式によって行われ得る。
【0077】
例えば、染色工程では、PVAフィルムまたはシートを上記のように調節された染色液内に沈漬させることができる。染色工程で染色液の温度は、通常、20℃~50℃、25℃~40℃程度であり、沈漬時間は、通常、10秒~300秒または20秒~240秒程度 であるが、これらに制限されるものではない。
【0078】
前記偏光子の製造過程では、架橋工程が行われることもできる。前記架橋工程は、例えば、ホウ素化合物のような架橋剤を使用して行うことができる。このような架橋工程の順序は、特に制限されず、例えば、染色および/または延伸工程と共に行ったり、別に進めることができる。例えば、前記言及した染色液内にさらに架橋剤を配合する場合、染色と同時に架橋工程が進行され得る。このような架橋工程は、複数回実施することもできる。前記ホウ素化合物としては、ホウ酸または硼砂などが使用され得る。ホウ素化合物は、水溶液または水と有機溶媒の混合溶液の形態で一般的に使用され得、通常、ホウ酸水溶液が使用される。ホウ酸水溶液においてのホウ酸の濃度は、架橋度とそれによる耐熱性などを考慮して適正範囲に選択され得る。ホウ酸水溶液などにもヨウ化カリウム等のヨウ化化合物を含有させることができる。
【0079】
架橋工程は、前記PVAフィルムまたはシートをホウ酸水溶液などに沈漬することにより行うことができるが、この過程で処理温度は、通常、25℃以上、30℃~85℃または30℃~60℃程度の範囲であり、処理時間は、通常、5秒~800秒間または8秒~500秒間程度であるが、これらに制限されるものではない。
【0080】
延伸工程は、一般的に1軸延伸で行う。このような延伸は、前記染色および/または架橋工程と共に行うこともできる。延伸方法は、特に制限されず、例えば、湿潤式延伸方式が適用され得る。このような湿潤式延伸方法では、例えば、染色後に延伸を行うことが一般的であるが、延伸は、架橋とともに行われ得、複数回または多段で行うこともできる。
【0081】
湿潤式延伸方法に適用される処理液にヨウ化カリウム等のヨウ化化合物を含有させることができる。延伸で処理温度は、通常、25℃以上、30℃~85℃または50℃~70℃の範囲内程度であり、処理時間は、通常、10秒~800秒または30秒~500秒間であるが、これらに制限されるものではない。
【0082】
延伸過程で総延伸倍率は、配向特性などを考慮して調節することができ、PVAフィルムまたはシートの本来長さを基準として総延伸倍率が3倍~10倍、4倍~8倍または5倍~7倍程度であってもよいが、これらに制限されるものではない。前記で総延伸倍率は、延伸工程以外の膨潤工程などにも延伸を伴う場合には、各工程においての延伸を含む累積延伸倍率を意味する。このような総延伸倍率は、配向性、加工性または延伸切断可能性などを考慮して調節され得る。
【0083】
前記染色、架橋および延伸にさらに前記工程を行う前に膨潤工程を行うこともできる。膨潤によりPVAフィルムまたはシート表面の汚染やブロッキング防止剤を洗浄することができ、また、これにより、染色偏差等の不均一を減らすことができる効果もある。
【0084】
膨潤工程では、通常、水、蒸留水または純水などが使用され得る。当該処理液の主成分は、水であり、必要に応じて、ヨウ化カリウム等のヨウ化化合物または界面活性剤等のような添加物や、アルコールなどが少量含まれていてもよい。この過程でも工程変数の調節を通じて前述した光遮断率の調節が可能になり得る。
【0085】
膨潤過程での処理温度は、通常、20℃~45℃または20℃~40℃程度であるが、これに制限されない。膨潤偏差は、染色偏差を誘発することができるので、このような膨潤偏差の発生ができるだけ抑制されるように工程変数が調節され得る。
【0086】
膨潤工程でも適切な延伸が行われ得る。延伸倍率は、PVAフィルムの本来長さを基準として6.5倍以下、1.2~6.5倍、2倍~4倍または2倍~3倍程度であってもよい。膨潤過程での延伸は、膨潤工程後に行われる延伸工程での延伸を小さく制御することができ、フィルムの延伸破断が発生しないように制御することができる。
【0087】
偏光子の製造過程では、金属イオン処理が行われ得る。このような処理は、例えば、金属塩を含有する水溶液にPVAフィルムを沈漬することにより実施する。これにより、 偏光子内に金属イオンを含有させることができるが、この過程で、金属イオンの種類または比率を調節することにより、PVA偏光子の色調の調節が可能である。適用され得る金属イオンとしては、コバルト、ニッケル、亜鉛、クロム、アルミニウム、銅、マンガンまたは鉄等の遷移金属の金属イオンを例示することができ、このうち、適切な種類の選択によって色調の調節が可能でありうる。
【0088】
染色、架橋および延伸後に洗浄工程が進行され得る。このような洗浄工程は、ヨウ化カリウム等のヨード化合物溶液により行うことができる。
【0089】
このような水による洗浄とヨード化合物溶液による洗浄は、組合わせられることもでき、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールまたはプロパノール等の液体アルコールを配合した溶液も使用されることもできる。
【0090】
このような工程を経た後に、乾燥工程を行って、偏光子を製造することができる。乾燥工程では、例えば、要求される水分率などを考慮して適切な温度で適切な時間の間行われ得、このような条件は、特に制限されない。
【0091】
前記のような方式で製造された偏光子は、PVAフィルムまたはシートおよび前記PVAフィルムまたはシート上に吸着配向されている吸収異方性物質を含むことができる。前記で吸収異方性物質は、ヨードであってもよく、このような偏光子は、本出願でヨード系PVA偏光子と呼称され得る。
【0092】
本出願に適用される偏光子に対して公知となっている偏光子のうちヨード系PVA偏光子を中心に上記の内容を記述したが、本出願で適用可能な偏光子の種類が前記に制限されるものではなく、公知となった多様な偏光子のうち390nm波長の光に対する単体透過率が前記言及した範囲に属するものであれば、いずれの種類の偏光子も本出願で適用され得る。
【0093】
円偏光板において前記偏光子の一側には、位相差層が存在する。本出願では、前記位相差層は、それ自体として所定の波長範囲の紫外線に対する遮断能または吸収能を有する。例えば、前記位相差層は、385nm、390nm、395nmおよび/または400nm波長の光に対する透過率が所定の範囲内にありえる。
【0094】
例えば、前記位相差層は、385nm波長の光に対する透過率が3%以下であってもよい。前記透過率は、他の例において、2.9%以下、2.8%以下、2.7%以下、2.6%以下、2.5%以下、2.4%以下、2.3%以下、2.2%以下、2.1%以下、2.0%以下、1.9%以下、1.8%以下、1.7%以下、1.6%以下、1.5%以下または1.4%以下であってもよい。前記透過率は、他の例において、0%以上、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上、0.8%以上、0.9%以上、1.0%以上、1.1%以上、1.2%以上、1.3%以上、1.4%以上、1.5%以上、1.6%以上または1.65%以上であってもよい。
【0095】
例えば、前記位相差層は、390nmの波長の光に対する透過率が15%以下であってもよい。前記透過率は、他の例において、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下または3.5%以下であってもよい。前記透過率は、他の例において、0%以上、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上、0.8%以上、0.9%以上、1%以上、1.5%以上、2%以上、2.5%以上、2.6%以上、2.7%以上、2.8%以上、2.9%以上、3.1%以上、3.2%以上、3.3%以上、3.4%以上、3.5%以上または3.6%以上であってもよい。
【0096】
例えば、前記位相差層は、395nmの波長の光に対する透過率が25%以下であってもよい。前記透過率は、他の例において、24%以下、23%以下、22%以下、21%以下、20%以下、19%以下、18%以下、17%以下、16%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下、9%以下、8%以下、7%以下、6%以下、5%以下、4%以下または3.5%以下であってもよい。前記透過率は、他の例において、0%以上、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上、0.8%以上、0.9%以上、1%以上、1.5%以上、2%以上、2.5%以上、3%以上、3.5%以上、4%以上、4.5%以上、5%以上、5.5%以上、6%以上、6.5%以上、7%以上、7.5%以上、8%以上、8.5%以上、9%以上または9.5%以上であってもよい。
【0097】
例えば、前記位相差層は、400nmの波長の光に対する透過率が40%以下であってもよい。前記透過率は、他の例において、39.5%以下、39%以下、38.5%以下、38%以下、37.5%以下、37%以下、36.5%以下、36%以下、35.5%以下、35%以下、34.5%以下、34%以下、33.5%以下、33%以下、32.5%以下、32%以下、31.5%以下、31%以下、30%以下、29.5%以下、29%以下、28.5%以下、28%以下、27.5%以下または27%以下程度であってもよい。前記透過率は、他の例において、0%以上、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上、0.8%以上、0.9%以上、1%以上、1.5%以上、2%以上、2.5%以上、3%以上、3.5%以上、4%以上、4.5%以上、5%以上、5.5%以上、6%以上、6.5%以上、7%以上、7.5%以上、8%以上、8.5%以上、9%以上、9.5%以上、10%以上、10.5%以上、11%以上、11.5%以上、12%以上、12.5%以上、13%以上、13.5%以上、14%以上、14.5%以上、15%以上、15.5%以上、16%以上、16.5%以上、17%以上、17.5%以上、18%以上、18.5%以上、19%以上、19.5%以上、20%以上、20.5%以上、21%以上、21.5%以上、22%以上、22.5%以上、23%以上、23.5%以上、24%以上、24.5%以上または25%以上程度であってもよい。
【0098】
前記位相差層の透過率は、例えば、スペクトロメーター(N&K analyzer,N&K Technologies,INC)を使用して測定することができる。例えば、前記位相差層の透過率は、当該位相差層試料をできるだけ380nm以上の波長で吸収ピークを示さない基材上に位置させた後に測定することができ、この際、前記基材と位相差層との間には、公知の液晶配向膜などが存在することもできる。前記で380nm以上の波長で吸収ピークを示さない基材の種類は、特に制限されず、例えば、NRT基材フィルムまたはTAC(Triacetyl cellulose)基材フィルム(385nmに対する透過率:90.8%、390nmに対する透過率:91.1%、395nmに対する透過率:91.2%または400nmに対する透過率:91.4%)等がある。例えば、前記基材上に位相差層を位置させた後、エア(air)をベースライン(baseline)に設定した後、位相差層試料の基準軸(slow axis)と垂直および水平に整列した状態でそれぞれの透過率を測定した後に透過率を計算した。
【0099】
透過率特性が上記のように設計された位相差層は、円偏光板が380~400nmの範囲の波長の光に対する遮断特性を示しながらも、安定した耐久性を保有するようにすることができる。
【0100】
特に前記効果は、前述した偏光子と組合わせてさらに改善され得る。すなわち、偏光子の単体透過率および/または位相差の透過率が前記言及された範囲を満たさない場合、円偏光板の紫外線遮断能、特に380~400nmの範囲の光に対する遮断率が低下したり、あるいは紫外線遮断能が偏光子および位相差層のうちいずれか一つに過多に付与されて、円偏光板の耐久性が劣ることがある。
【0101】
本出願では、また、前記のような位相差層の紫外線遮断能を位相差層に別途の紫外線吸収剤や光安定剤などを導入することなく具現することができる。したがって、一例において、前記位相差層は、紫外線吸収剤や光安定剤、例えば、最大吸収波長が385nm~400nmの範囲内にある紫外線吸収剤や光安定剤を含まないことがある。すなわち、後述するように、位相差層を、正分散重合性液晶化合物と逆分散重合性液晶化合物を適切に配合させて構成する場合には、前記個々の重合性液晶化合物の構造的特徴が互いに補完されて、紫外線吸収剤や光安定剤などを適用することなく、目的とする紫外線吸収性を確保することができる。このように紫外線吸収剤と光安定剤を適用しないことにより、前記添加剤による液晶の配向不良や位相差層の形成後のブリードアウト現象などを誘発しない耐久性に優れた位相差層を形成することができる。
【0102】
一例において、前記紫外線遮断能を有する位相差層は、後述するような方式で逆波長特性を設計することにより具現することができる。
【0103】
前記位相差層は、下記数式3~5のうちいずれか一つによる屈折率関係を有する層であってもよい。
【0104】
[数式3]
nx>ny=nz
【0105】
[数式4]
nx>ny>nz
【0106】
[数式5]
nx>nyおよびnz>ny
【0107】
数式3~5でnx、nyおよびnzは、それぞれx軸方向(遅相軸方向)の屈折率、y軸方向(進相軸方向)の屈折率およびz軸方向(厚さ方向)の屈折率である。
【0108】
前記円偏光板に含まれる位相差層は、例えば、1/4波長位相遅延特性を有し得る範囲の面上位相差を有し得る。本明細書で用語「n波長位相遅延特性」は、少なくとも一部の波長範囲内で、入射光をその入射光の波長のn倍ぐらい位相遅延させることができる特性を意味する。1/4波長位相遅延特性は、入射した線偏光を楕円偏光または円偏光に変換させ、反対に入射した楕円偏光または円偏光を線偏光に変換させる特性であってもよい。一例において、位相差層は、550nmの波長の光に対する面上位相差が90nm~300nmの範囲内であってもよい。前記面上位相差は、他の例において、100nm以上、105nm以上、110nm以上、115nm以上、120nm以上、125nm以上または130nm以上であってもよい。また、前記面上位相差は、290nm以下、280nm以下、270nm以下、260nm以下、250nm以下、240nm以下、230nm以下、220nm以下、210nm以下、200nm以下、190nm以下、180nm以下、170nm以下、160nm以下、150nm以下または145nm以下であってもよい。
【0109】
前記位相差層について前記数式2により求められる厚さ方向位相差の範囲は、特に制限されず、例えば、約-200nm~200nmの範囲内であってもよい。前記厚さ方向位相差は、他の例において、-190nm以上、-180nm以上、-170nm以上、-160nm以上、-150nm以上、-140nm以上、-130nm以上、-120nm以上、-110nm以上、-100nm以上、-90nm以上、-80nm以上、-70nm以上、-60nm以上、-50nm以上、-40nm以上、-30nm以上、-20nm以上または-10nm以上であってもよい。また、前記厚さ方向位相差は、他の例において、190nm以下、180nm以下、170nm以下、160nm以下、150nm以下、140nm以下、130nm以下、120nm以下、110nm以下、100nm以下、90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下または10nm以下であってもよい。
【0110】
一例において、前記位相差層は、下記数式6を満たす層であってもよい。
【0111】
[数式6]
R(450)/R(550)<R(650)/R(550)
【0112】
数式6でR(450)は、450nmの波長の光に対する位相差層の面上位相差であり、R(550)は、550nmの波長の光に対する位相差層の面上位相差であり、R(650)は、650nmの波長の光に対する位相差層の面上位相差である。
【0113】
前記各面上位相差は、前記数式1に従うものであり、ただし、450nm波長の光に対する面上位相差は、数式1でnxおよびnyとして450nm波長の光に対する屈折率が適用され、550nm波長の光に対する面上位相差は、数式1でnxおよびnyとして550nm波長の光に対する屈折率が適用され、650nm波長の光に対する面上位相差は、数式1でnxおよびnyとして650nm波長の光に対する屈折率が適用される。
【0114】
数式6を満たす位相差層は、いわゆる逆波長分散特性(reverse wavelength dispersion)を有する位相差層である。このような位相差層は、広い波長範囲で設計された位相遅延特性を示すことができる。
【0115】
数式6を満たす位相差層においてR(450)/R(550)および/またはR(650)/R(550)を調節することにより、さらに優れた効果の円偏光板を提供することができる。一例において、前記数式6でR(450)/R(550)は、0.6~0.99の範囲内であってもよい。R(450)/R(550)は、他の例において、0.61以上、0.62以上、0.63以上、0.64以上、0.65以上、0.66以上、0.67以上、0.69以上、0.70以上、0.71以上、0.72以上、0.73以上、0.74以上、0.75以上、0.76以上、0.77以上、0.78以上、0.79以上、0.80以上、0.81以上、0.82以上、0.83以上、0.84以上、0.85以上、0.86以上、0.87以上、0.88以上、0.89以上または0.90以上であってもよい。前記R(450)/R(550)は、他の例において、0.98以下、0.97以下、0.96以下、0.95以下、0.94以下、0.93以下、0.92以下、0.91以下、0.90以下、0.89以下、0.88以下、0.87以下、0.86以下または0.85以下であってもよい。数式6のR(650)/R(550)は、1.00~1.19の範囲内であってもよい。前記R(650)/R(550)は、1.18以下、1.17以下、1.16以下、1.15以下、1.14以下、1.13以下、1.12以下、1.11以下、1.1以下または1.08以下程度であってもよい。数式6のR(650)/R(550)は、他の例において、1.01以上、1.02以上、1.03以上、1.04以上、1.05以上、1.06以上、1.07以上、1.08以上または1.09以上であってもよい。
【0116】
位相差層のR(450)/R(550)および/またはR(650)/R(550)を前記範囲に調節する方式は、特に制限されないが、本出願では、紫外線吸収剤や光安定剤が含まれない場合にも、目的とする紫外線遮断能を確保するために、後述するように前記のような逆波長特性を異なる2種の重合性液晶化合物を使用して具現することができる。
【0117】
前記位相差層は、その遅相軸(slow axis)と前記偏光子の吸収軸が約30度~60度の範囲内の角度を成すことができるように、偏光子の一側に積層されていてもよい。前記角度は、他の例において、35度以上または40度以上であってもよく、また、55度以下または50度以下であってもよい。
【0118】
位相差層としては、前記透過率特性と面上位相差を有するものであれば、特別な制限なしに公知の素材が使用され得る。
【0119】
例えば、延伸により光学異方性を付与できる高分子フィルムを適切な方式で延伸した延伸高分子層または液晶層を使用することができる。液晶層としては、液晶高分子層または重合性液晶化合物の硬化層を使用することができる。
【0120】
前記で延伸高分子層としては、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリノルボルネン等の環状オレフィンポリマー(COP:Cycloolefin polymer)、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアクリレート、ポリビニルアルコールまたはTAC(Triacetyl cellulose)等のセルロースエステル系ポリマーや前記ポリマーを形成する単量体のうち2種以上の単量体の共重合体などを含む高分子層を使用することができる。
【0121】
位相差層としては、上記のように多様な公知の素材を使用することができるが、一般的に公知となっている位相差層は、前記言及した特性、特に385nm、390nm、395nmまたは400nm波長の光に対する透過率特性を満たさない場合が多い。
【0122】
したがって、例えば、前記延伸高分子層を位相差層に適用しようとする場合には、高分子層の製造時に前記言及された波長に対して適切な吸収特性を有する添加剤を添加する工程などが必要なことがある。
【0123】
前記言及された波長範囲で目的とする透過率特性を確保するためには、位相差層として液晶高分子層または重合性液晶組成物の硬化層を適用することが有利であり、特に後述する特定の逆波長特性を有する重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物の硬化層を適用することが有利である。
【0124】
したがって、前記位相差層は、少なくとも後述する正分散重合性液晶化合物の重合単位とやはり後述する逆分散重合性液晶化合物の重合単位を含むことができる。前記で重合単位は、後述するように、それぞれの重合性液晶化合物が重合または硬化して形成される単位を意味する。
【0125】
例えば、本出願では、2種以上の重合性液晶化合物を混合して前記数式6の特性が満たされるように位相差層を製作することができ、例えば、R(450)/R(550)が低い数値を示す重合性液晶化合物(例えば、後述する逆分散重合性液晶化合物)とR(450)/R(550)が高い数値を示す重合性液晶化合物(例えば、後述する正分散重合性液晶化合物)を組み合わせて前記数式6の特性を満足させることができる。
【0126】
本明細書で用語「重合性液晶化合物」は、液晶性を示すことができる部位、例えば、メソゲン(mesogen)骨格などを含み、また、重合性官能基を一つ以上含む化合物を意味する。このような重合性液晶化合物は、いわゆるRM(Reactive Mesogen)という名称で多様に公知されている。前記重合性液晶化合物は、前記硬化層内で重合された形態、すなわち前述した重合単位で含まれていてもよく、これは、前記液晶化合物が重合されて、硬化層内で液晶高分子の主鎖または側鎖のような骨格を形成している状態を意味する。
【0127】
前記重合性液晶化合物は、単官能性または多官能性重合性液晶化合物であってもよい。前記で単官能性重合性液晶化合物は、重合性官能基を1個有する化合物であり、多官能性重合性液晶化合物は、重合性官能基を2個以上含む化合物を意味する。一例において、多官能性重合性液晶化合物は、重合性官能基を2個~10個、2個~8個、2個~6個、2個~5個、2個~4個、2個~3個または2個または3個含むことができる。
【0128】
前記のような重合性液晶化合物を、例えば開始剤、安定剤および/または非重合性液晶化合物等の他の成分と配合して製造された重合性液晶組成物を配向膜上で配向させた状態で硬化させて複屈折が発現した前記硬化層を形成することは公知であり、本出願では、このような公知の過程で使用される重合性液晶化合物の特性を制御して、前述した透過率特性を確保することができる。
【0129】
一例において、前述した透過率特性を適切に確保するためには、前記逆分散重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物の硬化層が適用されることが有利である。前記で逆分散重合性液晶化合物は、前記重合性液晶化合物を単独で硬化させて形成した液晶層(硬化層)が逆波長分散特性を示す重合性液晶化合物を意味し、この際、逆波長分散特性は、前記数式6に記述された特性を意味する。
【0130】
本出願では、特に前記逆分散重合性液晶化合物のうち、数式6のR(450)/R(550)は、0.6~0.99の範囲内である液晶化合物を適用することができる。前記逆分散重合性液晶化合物のR(450)/R(550)は、他の例において、0.61以上、0.62以上、0.63以上、0.64以上、0.65以上、0.66以上、0.67以上、0.69以上、0.70以上、0.71以上、0.72以上、0.73以上、0.74以上、0.75以上、0.76以上、0.77以上、0.78以上、0.79以上、0.80以上、0.81以上、0.82以上、0.83以上、0.84以上、0.85以上、0.86以上、0.87以上、0.88以上、0.89以上または0.90以上であってもよい。前記R(450)/R(550)は、他の例において、0.98以下、0.97以下、0.96以下、0.95以下、0.94以下、0.93以下、0.92以下、0.91以下、0.90以下、0.89以下、0.88以下、0.87以下、0.86以下または0.85以下であってもよい。また、前記逆分散重合性液晶化合物は、数式6のR(650)/R(550)が、1.00~1.19の範囲内であってもよい。前記R(650)/R(550)は、1.18以下、1.17以下、1.16以下、1.15以下、1.14以下、1.13以下、1.12以下、1.11以下、1.1以下または0.08以下程度であってもよい。前記R(650)/R(550)は、他の例において、1.01以上、1.02以上、1.03以上、1.04以上、1.05以上、1.06以上、1.07以上、1.08以上または1.09以上程度であってもよい。本発明者らは、多様に公知された重合性液晶化合物のうち、特にR(450)/R(550)の値が前記言及した範囲にある重合性液晶化合物の場合、後述するように正分散重合性液晶化合物と配合される場合に、UV吸収波長領域がレッドシフト(red shift)して、前述した透過率特性が効果的に満たされることを確認した。前記R(450)/R(550)は、一例において、0.6以上、0.61以上、0.62以上、0.63以上、0.64以上、0.65以上、0.66以上、0.67以上、0.68以上、0.69以上、0.70以上、0.71以上、0.72以上、0.73以上、0.74以上、0.75以上、0.76以上、0.77以上または0.78以上であってもよい。
【0131】
このような現象は、前記範囲のR(450)/R(550)を有するようにデザインされた逆分散重合性液晶化合物の固有の分子構造に起因するものと判断される。
【0132】
すなわち、重合性液晶化合物の複屈折は、主に分子共役(Molecular Conjugation)構造、差動発振器強度(differential oscillator strength)、およびオーダーパラメーター(order parameter)等により決定されるものと知られており、重合性液晶化合物が高い複屈折を示すためには、主軸方向に大きい電子密度が必要であるので、多くの重合性液晶化合物は、長軸方向に高度に共役化(highly conjugation)した形状を有している。
【0133】
ところが、重合性液晶化合物が逆分散特性を示すようにするためには、長軸とそれに垂直する軸間の複屈折性を調整することが必要であり、これに伴い、逆分散特性を有するようにデザインされた重合性液晶化合物は、ほとんどTまたはH形態の分子形状を有し、主軸(長軸)は、大きい位相差と小さい分散値を有し、それに垂直する軸は、小さい位相差と大きい分散値を有する形態である。
【0134】
ところが、紫外線領域である180nm~400nmの範囲の光を吸収する電子転移(electronic transition,π→π*)は、共役化長さ(conjugation length)が長いほどさらに長波長に移動(shift)するので、逆分散特性を有するようにデザインされた重合性液晶化合物は、負の複屈折部が高度に共役化するので、紫外線吸収波長領域がより長波長に移動するレッドシフト(red shift)現象が起こることになる。
【0135】
本発明者らは、前記のような特性の逆分散重合性液晶化合物のうち、特にR(450)/R(550)の範囲が前記言及された範囲になるようにデザインされた重合性液晶化合物が本出願で要求する透過率特性を満たすことができる適合な範囲のレッドシフト(red shift)を示していることを確認した。
【0136】
本発明者らは、特に下記構造の逆分散重合性液晶化合物の場合、正分散重合性液晶化合物と混合されるとき、目的とする紫外線遮断能を示し、また、その位相差特性R(450)/R(550)およびR(650)/R(550)も、目的に応じて効果的に設計され得るという点を確認した。
【0137】
【0138】
化学式1で、R1は、下記化学式2または化学式3の置換基であり、R2~R6は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基、下記化学式4の置換基または下記化学式5の置換基である。また、前記でR2~R6のうち少なくとも2つ以上または2つは、下記化学式4の置換基または下記化学式5の置換基である。
【0139】
例えば、化学式1でR2およびR3のうちいずれか一つとR5およびR6のうちいずれか一つは、下記化学式4または5の置換基であってもよい。
【0140】
【0141】
化学式2でA1およびA2は、それぞれ独立して、酸素原子または単一結合であり、L1およびL2は、それぞれ独立して、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-またはアルキレン基であり、Cycは、アリレン基またはシクロアルキレン基であり、Pは、重合性官能基である。
【0142】
【0143】
化学式3でL3およびL4は、それぞれアルキレン基であり、nは、1~4の範囲内の数であり、Pは、重合性官能基または水素原子である。
【0144】
【0145】
化学式4でA3およびA4は、酸素原子、アルキレン基または単一結合であり、L5およびL6は、それぞれ独立して、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-またはアルキレン基であり、Cycは、アリレン基であり、Pは、重合性官能基である。
【0146】
【0147】
化学式5でA5、A6、A7は、それぞれ独立して、酸素原子または単一結合であり、L7、L8およびL9は、それぞれ独立して、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-またはアルキレン基であり、Cy1は、シクロアルキレン基であり、Cy2は、アリレン基であり、Pは、重合性官能基である。
【0148】
前記化学式1~5で用語「単一結合」は、当該部位に別途の原子がない場合であり、例えば、化学式2でA2が単一結合であれば、A2には、別途の原子が存在せず、CycがL2に直接連結された構造が具現され得る。
【0149】
前記化学式1~5で用語「アルキル基、アルコキシ基またはアルキレン基」は、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4の直鎖または分岐鎖状のアルキル基、アルコキシ基またはアルキレン基であってもよく、前記は、任意に一つ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0150】
また、前記化学式1~5でアリレン基は、炭素数6~12のアリレン基であるか、あるいはフェニレン基であってもよい。
【0151】
また、前記化学式1~5でシクロアルキレン基は、炭素数3~12または炭素数3~9のシクロアルキレン基であるか、シクロヘキシレン基であってもよい。
【0152】
化学式2の置換基では、A1は、単一結合であってもよく、L1は、-C(=O)-O-または-O-C(=O)-であってもよく、A2は、酸素原子であってもよく、L2は、炭素数3以上、4以上または5以上のアルキレン基であってもよい。前記L2のアルキレン基の炭素数は、12以下または8以下であってもよい。
【0153】
前記化学式3の一例においては、L3およびL4は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキレン基であってもよく、nは、1~3の範囲内の数または1~2の範囲内の数であるか、2であってもよく、Pは、重合性官能基であってもよい。また、前記の場合、化学式3で[O-L4]の単位が2つ以上である場合には、各単位内のL4のアルキレン基の炭素数は、同じでも異なっていてもよい。
【0154】
また、前記化学式3の他の例においては、L3およびL4は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキレン基であってもよく、nは、1~3の範囲内の数または1~2の範囲内の数であるか、2であってもよく、Pは、水素原子であってもよい。また、前記の場合、化学式3で[O-L4]の単位が2つ以上である場合には、各単位内のL4のアルキレン基の炭素数は、同じでも異なっていてもよい。
【0155】
化学式4でA3は、単一結合であるか、炭素数1~4のアルキレン基であってもよく、L5は、-C(=O)-O-または-O-C(=O)-であってもよく、A4は、酸素原子であってもよく、L6は、炭素数3以上、4以上または5以上のアルキレン基であってもよい。前記L6のアルキレン基の炭素数は、12以下または8以下であってもよい。
【0156】
化学式5でA5は、酸素原子であってもよく、L7は、炭素数1~4のアルキレン基であってもよく、A6は、単一結合であってもよく、L8は、-C(=O)-O-または-O-C(=O)-であってもよく、A7は、酸素原子であってもよく、L9は、炭素数3以上、4以上または5以上のアルキレン基であってもよい。前記L9のアルキレン基の炭素数は、12以下または8以下であってもよい。
【0157】
本発明者らは、前記のような重合性液晶化合物は、特有のT型構造とN-N結合を中心に具現される共役化構造により目的とする物性を効果的に満足させることができるという点を確認した。
【0158】
前記化学式で重合性官能基の種類は、特に制限されず、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基であってもよい。
【0159】
一例において、逆分散重合性液晶化合物として、前記化学式1でR1が、前記化学式3の置換基であり、R2~R6のうち少なくとも2つ以上または2つは、前記化学式5の置換基である化合物の使用が有利になり得る。
【0160】
必要に応じて、前記化学式1でR1が前記化学式3でPが重合性官能基である液晶化合物と前記化学式1でR1が前記化学式3でPが水素原子である液晶化合物を混合して使用することができ、この場合、混合比率は、目的とする逆波長特性(R(450)/R(550)および/またはR(650)/R(550))により定められるものであって、特に制限されるものではない。
【0161】
前記逆分散重合性液晶化合物の重合単位は、硬化層(液晶層)内に全体重合性液晶化合物の重合単位の重量を基準として40重量%以上の比率で含まれていてもよい。前記比率は、他の例において、約45重量%以上、50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、80重量%以上または95重量%以上であってもよい。前記位相差層(前記液晶層)は、重合性液晶化合物として、前記化学式1の液晶化合物の重合単位のみを含むことができるが、適切な物性の具現の観点から、後述する正分散重合性液晶化合物が共に含まれることが有利である。したがって、前記比率は、100重量%以下または100重量%未満であってもよい。
【0162】
前記重合性液晶組成物および/または硬化層(液晶層)は、前記逆分散重合性液晶化合物にさらに数式6でR(450)/R(550)が1.04~1.25,1.04~1.15または1.06~1.15の範囲内にある重合性液晶化合物(以下、正分散重合性液晶化合物)をさらに含むことができる。前記言及されたR(450)/R(550)を有する逆分散重合性液晶化合物の適用は、硬化層(液晶層)が目的とする透過率特性を示すようにする側面では有利であるが、R(450)/R(550)値が多少低い側面において、硬化層(液晶層)が全体的に逆分散特性を示すようにするにあたっては不利である。したがって、このような不利さの克服のために、重合性液晶組成物および/または硬化層内にR(450)/R(550)値が前記範囲内にある重合性液晶化合物を追加して全体的な光学特性を調節することができる。前記正分散液晶化合物は、数式6でR(650)/R(550)が約0.8~0.99,約0.85~0.99,約0.9~0.99または約0.91~0.99の範囲内であってもよい。
【0163】
前記のような正分散重合性液晶化合物は、多様に公知となっており、例えば、韓国特許登録第1729819号、韓国特許登録第1640670号、韓国特許登録第1557202号、韓国特許登録第1472187号、韓国特許登録第1460862号、韓国特許登録第1191124号、韓国特許登録第1191125号および/または韓国特許登録第1191129号などで公知されている重合性液晶化合物を使用することができる。
【0164】
前記のような正分散重合性液晶化合物としては、公知の多様な素材を使用することができるが、すでに記述した逆分散重合性液晶化合物との混和性や、その逆分散重合性液晶化合物の紫外線吸収性を補完して目的とする物性を確保するために、下記化学式6で表示されるものを使用することが有利になり得る。
【0165】
【0166】
化学式6でAは、単一結合、-C(=O)O-または-OC(=O)-であり、R1~R10は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基または下記化学式7の置換基であってもよい。また、他の例において、前記構造でR1~R5のうち隣り合う2つの置換基またはR6~R10のうち隣り合う2つの置換基は、互いに結合されて、-L-A-Pで置換されたベンゼン環を構成することができる。例えば、R1~R5のうち隣り合う2つの置換基が前記-L-A-Pで置換されたベンゼンを形成する場合、前記化学式6でAを基準として左側は、-L-A-Pで置換されたナフタレン構造が具現され得、R6~R10のうち隣り合う2つの置換基が前記-L-A-Pで置換されたベンゼンを形成する場合、前記化学式6でAを基準として右側は、-L-A-Pで置換されたナフタレン構造が具現され得る。前記でLは、-C(=O)O-、-OC(=O)-または-OC(=O)O-であってもよく、Aは、アルキレン基であってもよく、Pは、重合性官能基であってもよい。前記でAのアルキレンは、炭素数1以上、2以上、3以上または4以上のアルキレン基であってもよく、前記アルキレン基の炭素数は、20以下、16以下、12以下または8以下であってもよい。また、前記で重合性官能基Pは、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基であってもよい。前記でR1~R5のうち隣り合う2つの置換基またはR6~R10のうち隣り合う2つの置換基は、互いに結合されて、前記ベンゼン環を構成する場合、残りの置換基は、前述した水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基またはニトロ基であってもよい。
【0167】
【0168】
化学式7でBは、単一結合、-C(=O)O-または-OC(=O)-であり、R11~R15は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基または前記-L-A-Pであるか、R11~R15のうち隣り合う2つの置換基は、互いに結合されて、-L-A-Pで置換されたベンゼン環を構成することができる。この場合には、前記化学式7の構造は、-L-A-Pが置換されたナフタレン構造を有する。前記でR11~R15のうち隣り合う2つの置換基は、互いに結合されて、前記ベンゼン環を構成する場合に残りの置換基は、前述した水素、ハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基またはニトロ基であってもよい。
【0169】
前記化学式6および7で単一結合の意味は、前記化学式1~5の場合と同じであり、アルキル基およびアルコキシ基の意味も前記化学式1~5の場合と同じである。
【0170】
一例において、前記正分散重合性液晶化合物としては、前記化学式6でR2およびR3またはR3およびR4が前記-L-A-Pで置換されたベンゼンを形成することにより、前記化学式6のAの左側がナフタレン構造を成す化合物が使用され得る。
【0171】
前記正分散重合性液晶化合物としては、前記化学式6でR7~R9のうちいずれか一つ、例えば、R8が前記化学式7である化合物が使用されることもできる。この場合、前記化学式7では、R12およびR13またはR13およびR14が前記-L-A-Pで置換されたベンゼンを形成することにより、前記化学式7のBの右側がナフタレン構造を成す化合物が使用され得る。
【0172】
前記のような正分散重合性液晶化合物の硬化層(液晶層)内での比率は、硬化層(液晶層)の透過率特性が目的とする範囲に維持され、かつ硬化層(液晶層)全体のR(450)/R(550)値等の光学特性が目的とする範囲に維持され得る限り、特に制限されない。例えば、前記正分散重合性液晶化合物は、0~60重量%の比率または0重量%超過であり60重量%以下の比率で含まれていてもよい。前記比率は、他の例において、約55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、10重量%以下または5重量%以下程度であってもよい。このような範囲で硬化層(液晶層)が適合な逆分散特性と透過率特性を示すことができる。したがって、前記重合性液晶組成物内で前記正分散重合性液晶化合物の比率は、形成された硬化層内に前記正分散重合性液晶化合物が前記言及された範囲で存在できる範囲内であってもよい。
【0173】
前記硬化層(液晶層)は、三官能以上の重合性液晶化合物、例えば、重合性官能基を3個~10個、3個~8個、3個~6個、3個~5個、3個~4個または3個有する重合性液晶化合物の重合単位を含むことができる。前記のような三官能以上の重合性液晶化合物は、前記言及した逆分散または正分散重合性液晶化合物であってもよい。硬化層(液晶層)内で前記重合性液晶化合物の重合単位の比率は、特に制限されないが、例えば、30重量%以上または40重量%以上であってもよく、100重量%以下であるか、100重量%未満であってもよい。このような比率で三官能以上の重合性液晶化合物の重合単位を含む硬化層(液晶層)は、より優れた耐久性を示すことができる。
【0174】
以上記述した重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物の硬化層(液晶層)で前記重合性液晶化合物の転換率、すなわち最初モノマー状態で重合された状態に転換された重合性液晶化合物の比率は、例えば、50重量%~100重量%程度であってもよい。前記転換率は、他の例において、約60~100重量%または約70~100重量%程度であってもよい。このような転換率で硬化層(液晶層)は、より優れた耐久性を示すことができる。
【0175】
特に本出願の前記位相差層は、前述した通り、紫外線吸収剤または光安定剤を使用することなく、特定の構造の正分散および逆分散重合性液晶化合物の適用を通じて目的とする紫外線吸収能を具現するので、優れた耐久性を示すことができる。
【0176】
例えば、前記位相差層は、下記数式Aによる位相差変化率の絶対値が約17%以下、約16.5%以下、約16%以下または約15.5%以下であってもよい。前記位相差変化率は、他の例において、約0%以上、2%以上、4%以上、6%以上、8%以上、10%以上、12%以上または14%以上であってもよい。
【0177】
[数式A]
位相差変化率=100×(Ra-Ri)/Ri
【0178】
数式AでRiは、前記位相差層の550nm波長に対する初期面内位相差であり、Raは、耐久条件後の前記前記位相差層の550nm波長に対する面内位相差である。
【0179】
前記で耐久条件は、85℃で前記位相差層を維持することであり、具体的に前記位相差変化率は、後述する実施例開示方法で測定することができる。前記で耐久条件での維持時間は、50時間以上、100時間以上、150時間以上、200時間以上または250時間以上であってもよい。前記維持時間は、他の例において、約300時間以下程度であってもよい。
【0180】
本出願の円偏光板は、前記位相差層の下部に存在する基材フィルムをさらに含むことができる。
【0181】
本出願の一実施例によれば、前記位相差層は、前記基材フィルム上に液晶組成物をコートすることにより形成することができる。前記コート方法は、特に制限されず、例えば、ロールコート、印刷法、インクジェットコート、スリットノズル法、バーコート、コンマコート、スピンコートまたはグラビアコート等のような公知のコート方式を用いたコートにより行われ得る。前記位相差層は、前記基材フィルム上にコートされた液晶組成物を重合または硬化することにより形成され得る。液晶組成物の重合または硬化方法は、特に制限されず、公知の液晶化合物重合または硬化方法により行われ得る。例えば、液晶化合物の重合反応または硬化反応が開始されるように適正温度を維持する方式や適切な活性エネルギー線を照射する方式により行われ得る。適正温度での維持および活性エネルギー線の照射が同時に要求される場合、前記工程は、順次にまたは同時に進行され得る。前記で活性エネルギー線の照射は、例えば、高圧水銀ランプ、無電極ランプまたはキセノンランプ(xenon lamp)等を使用して行うことができ、照射される活性エネルギー線の波長、光度または光量等の条件は、液晶組成物の硬化または重合が適切に行われ得る範囲で選択され得る。
【0182】
上記のように位相差層を基材フィルム上にコートする方式により形成する場合、前記位相差層と基材フィルムを積層するための別途の粘着剤層または接着剤層を必要としない。したがって、前記位相差層と基材フィルムとの間に粘着剤層または接着剤層を含まなくてもよい。
【0183】
上記のように位相差層を基材フィルム上にコートする方式により形成する場合、前記基材フィルム上にプライマー層および/または液晶配向膜が形成され得る。したがって、前記位相差層と基材フィルムの間にプライマー層または液晶配向膜が存在し得る。一例において、基材フィルム、プライマー層、液晶配向膜および位相差層の順に積層され得る。前記プライマー層は、基材フィルム上に液晶配向膜または液晶組成物のコート時に基材フィルムの位相差値の変化を抑制するために耐溶剤性であることが好ましい。前記プライマー層は、接着力またはスリップ性の観点から使用され得る。前記プライマー層は、基材フィルムに別にコートしたり、フィルム素地にコートし延伸する方法で形成することができる。
【0184】
本出願の円偏光板は、前記偏光子、位相差層および基材フィルムを基本的に含む限り、その他多様な構造を有し得る。
【0185】
例えば、前記円偏光板は、前記偏光子の前記位相差層に向かう面の反対面に積層されている更なる層(以下、外郭層という)を含むことができる。
図3は、偏光子101の上部に前記外郭層301が形成されている場合の例示である。
【0186】
外郭層の種類としては、偏光子保護フィルム、ハードコート層、位相差フィルム、反射防止層または液晶コート層などを例示することができるが、これらに制限されるものではない。前記外郭層に使用される各構成の具体的な種類は、特に制限されず、例えば、当業界で偏光板等の光学フィルムを構成するために使用される多様な種類のフィルムなどが制限なしに使用され得る。
【0187】
例えば、前記外郭層は、550nm波長に対する面上位相差が10nm以下である光学フィルムであってもよい。前記光学フィルムは、前記偏光子の保護フィルムであってもよい。前記保護フィルムとしては、当業界で公知となった多様なフィルムが適用され得る。
【0188】
前記外郭層は、また、1/4波長位相遅延特性を有するリタデーション層であってもよい。このようなリタデーション層は、前述した外郭層のうち位相差フィルムや液晶コート層を使用して構成することができる。したがって、前記円偏光板は、前記偏光子の位相差層に向かう面の反対面に積層されており、550nm波長に対する面上位相差が90nm~300nmの範囲内である光学フィルム(リタデーション層)をさらに含むことができる。前記リタデーション層の面上位相差は、他の例において、100nm以上、105nm以上、110nm以上、115nm以上、120nm以上、125nm以上または130nm以上であってもよい。また、前記面上位相差は、290nm以下、280nm以下、270nm以下、260nm以下、250nm以下、240nm以下、230nm以下、220nm以下、210nm以下、200nm以下、190nm以下、180nm以下、170nm以下、160nm以下、150nm以下または145nm以下であってもよい。
【0189】
前記言及された外郭層は、単一層であるか、多層構造であってもよい。単一層構造の例示としては、前記偏光子保護フィルムの単層構造または前記1/4波長位相遅延特性を有するリタデーション層である位相差フィルムの単層構造などを例示することができ、多層構造としては、前記偏光子保護フィルムおよび/または位相差フィルム上にハードコート層、1/4波長位相遅延特性を有する液晶コート層および/または反射防止層が形成されている構造を例示することができ、前記ハードコート層、1/4波長位相遅延特性を有する液晶コート層および反射防止層などは、そのうちいずれか一つの層が存在したり、2層以上が多層で存在することもできる。
【0190】
前記円偏光板は、また、前記基材フィルムの前記偏光子に向かう面の反対面に積層されている更なる層(以下、下部層)を含むことができる。
【0191】
図4は、基材フィルム103の下部に前記下部層401が形成されている場合の例示である。
図4のような場合にも
図3のような外郭層301が追加され得る。例えば、
図4のように下部層401が存在する状態で、偏光子101の外側には、ハードコート層や低反射層等の外郭層が存在してもよく、偏光子101の一側または両側には、保護フィルムが存在してもよい。
【0192】
下部層の種類としては、リタデーション層や、前記円偏光板を他の要素に付着するための粘着剤層、接着剤層または前記粘着剤層または接着剤層を保護する保護フィルムまたは離型フィルムを例示することができる。
【0193】
下部層にリタデーション層が使用される場合、前記層としては、下記数式5または下記数式7の屈折率の関係を満たす層が適用され得る。このような層の追加によって円偏光板が傾斜方向に入射する光に対しても目的とする特性を示すようにすることができる。
【0194】
[数式5]
nx>nyおよびnz>ny
【0195】
[数式7]
nx=ny<nz
【0196】
前記数式5および7でnx、nyおよびnzは、前記数式1および2で定義した通りである。
【0197】
前記円偏光板は、前記下部層であるリタデーション層として、前記位相差層の下部に存在し、厚さ方向位相差が10~400nmの範囲内である光学フィルムをさらに含むことができる。前記光学フィルムは、前記数式5または7の屈折率の関係を満たすリタデーション層であってもよい。
【0198】
前記光学フィルムの厚さ方向位相差の上限は、他の例において、370nm以下、350nm以下、330nm以下、300nm以下、270nm、250nm、240nm、230nm、220nm、200nm、190nm、180nm、170nm、160nm、155nm、150nm、130nm、120nm、110nm、100nm、80nmまたは70nmであってもよい。また、前記光学フィルムの厚さ方向位相差の下限は、他の例において、5nm、10nm、20nm、40nm、50nm、90nm、100nm、110nm、120nmまたは150nmであってもよい。光学フィルムの厚さ方向位相差を上記のように調節して、反射特性および視感特性、特に傾斜角で反射特性と視感特性に優れた円偏光板を提供することができる。
【0199】
前記光学フィルムが前記数式5を満たす光学フィルムである場合、その面上位相差は、例えば、0nmを超過し、300nm以下、290nm以下、280nm以下、270nm以下、260nm以下、250nm以下、240nm以下、230nm以下、220nm以下、210nm以下、200nm以下、190nm以下、180nm以下、170nm以下、160nm以下、150nm以下、140nm以下、130nm以下、120nm以下、110nm以下、100nm以下、90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下、50nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下または10nm以下であってもよい。
【0200】
また、前記光学フィルムが前記数式5を満たす光学フィルムである場合、その遅相軸は、前記偏光子の吸収軸と垂直または水平になるように光学フィルムが配置され得る。本明細書で用語「垂直、直交、水平または平行」は、目的とする効果を損傷させない範囲での実質的な垂直、直交、水平または平行を意味する。したがって、前記各用語は、例えば、±15度すぐ、±10度すぐ、±5度以内または±3度以内の誤差を含むことができる。
【0201】
他の例において、前記光学フィルムが前記数式5を満たす光学フィルムである場合、その遅相軸は、前記偏光子の吸収軸が約30度~60度の範囲内の角度を成すことができるように配置されることもできる。前記角度は、他の例において、35度以上または40度以上であってもよく、また、55度以下または50度以下であってもよい。
【0202】
円偏光板において前記偏光子と位相差層との間には、別途の層が存在してもよく、あるいは存在しなくもよい。
【0203】
前記で偏光子と位相差層との間に別途の層が存在しない場合は、偏光子と位相差層が直接付着している場合であって、この場合には、前記偏光子と位相差層を接着するための層、例えば、粘着剤層、接着剤層および/またはプライマー層などを除いて、他の層が存在しなくてもよい。
【0204】
また、前記偏光子と位相差層との間に別途の層が存在したり、存在しない場合にも、少なくとも前記偏光子と位相差層との間に複屈折層は存在しなくてもよい。このような場合に前記複屈折層は、その面上位相差および厚さ方向位相差のうち少なくとも一つが10nm以上の層を意味する。
【0205】
図5は、前記偏光子101と位相差層102の間に別途の層(中間層)501が存在する場合の例示である。前記中間層としては、前述した偏光子保護フィルムやリタデーション層を例示することができる。
図5の構造でも図示されていないが、
図3の構造の外郭層301および/または
図4の構造の下部層401が存在することもできる。
【0206】
例えば、円偏光板は、前記偏光子と前記位相差層との間に存在し、550nm波長に対する面上位相差が5nm以下であり、550nm波長に対する厚さ方向位相差が-60nm~0nmの範囲内である光学フィルムをさらに含むことができ、このような光学フィルムは、例えば偏光子の保護フィルムであってもよい。
【0207】
他の例において、円偏光板は、前記偏光子と前記位相差層との間に存在し、550nm波長に対する面上位相差が10nm以下であり、550nm波長に対する厚さ方向位相差が40nm~400nmの範囲内である光学フィルムをさらに含むことができる。このような光学フィルムは、リタデーション層であってもよく、例えば、前記数式3~5,7および8のうちいずれか一つの屈折率関係を満たす層であるか、スプレー配向された液晶硬化層またはチルト配向された液晶硬化層であってもよい。
【0208】
一例において、前記円偏光板は、前記偏光子と位相差層との間に存在し、下記数式8を満たすか、または下記数式9のNzが-4.0以下であるリタデーション層を有する光学異方性層をさらに含むことができる。
【0209】
[数式8]
nx=ny<nz
【0210】
[数式9]
Nz=(nx-nz)/(nx-ny)
【0211】
数式8および9でnxは、リタデーション層の遅相軸方向の屈折率であり、nyは、リタデーション層の進相軸方向の屈折率であり、nzは、リタデーション層の厚さ方向の屈折率である。
【0212】
また、前記の場合、光学異方性層は、数式9のNz値が0.8~1.2の範囲内であり、面内遅相軸は、偏光子の吸収軸と平行または直交するリタデーション層をさらに含むこともできる。
【0213】
例えば、前記数式9のNzが-4.0以下であるか、または数式8を満たすリタデーション層は、前記数式9のNz値が0.8~1.2の範囲内であるリタデーション層に比べて偏光子に隣接し、前記数式9のNz値が0.8~1.2の範囲内であるリタデーション層の面内遅相軸は、前記偏光子の吸収軸と平行するように配置され得る。
【0214】
また、前記数式9のNz値が0.8~1.2の範囲内であるリタデーション層は、前記数式9のNzが-4.0以下であるか、または数式8を満たすリタデーション層に比べて偏光子に隣接し、前記数式9のNz値が0.8~1.2の範囲内であるリタデーション層の面内遅相軸は、前記偏光子の吸収軸と直交することもできる。
【0215】
また、数式9のNz値が0.8~1.2の範囲内であるリタデーション層は、前記数式9のNzが-4.0以下であるか、または数式8を満たすリタデーション層に比べて偏光子に隣接し、前記数式9のNz値が0.8~1.2の範囲内であるリタデーション層の面内遅相軸は、前記偏光子の吸収軸と平行することもできる。
【0216】
また、前記数式9のNzが-4.0以下であるか、または数式8を満たすリタデーション層は、前記数式9のNz値が0.8~1.2の範囲内であるリタデーション層に比べて偏光子に隣接し、前記数式9のNz値が0.8~1.2の範囲内であるリタデーション層の面内遅相軸は、前記偏光子の吸収軸と直交するように配置されることもできる。
【0217】
前記の場合、前記数式9のNzが-4.0以下であるか、または数式8を満たすリタデーション層の厚さ方向位相差は、30nm~200nmの範囲内であり、前記数式9のNz値は、-4.0以下であってもよい。
【0218】
また、前記で数式9のNz値が0.8~1.2の範囲内であるリタデーション層の550nm波長の光に対する面上位相差は、30nm~180nmの範囲内であってもよい。
【0219】
他の例において、円偏光板は、偏光子と位相差層との間に存在し、前記数式6を満たすリタデーション層をさらに含むことができる。
【0220】
前記の場合、リタデーション層の面上位相差は、70~200nmの範囲内であり、その面内遅相軸は、偏光子の吸収軸と平行したりあるいは直交することができる。また、前記リタデーション層の前記数式9によるNzは、-0.2~0.8の範囲内であってもよい。
【0221】
他の例において、円偏光板は、偏光子と位相差層との間に厚さ方向に沿って傾斜角が変化する複数の光軸を有するリタデーション層、例えば、スプレー配向された液晶硬化層をさらに含むことができる。
【0222】
前記リタデーション層のすべての光軸の平面への投影は、前記偏光子の吸収軸と平行または直交を成すことができる。
【0223】
前記リタデーション層が液晶硬化層である場合、前記硬化層は、屈折率異方性が0.03~0.2である液晶物質を含むことができる。
【0224】
また、前記液晶硬化層は、ロッド形状の液晶分子を含むか、ディスク形状の液晶分子を含むことができる。
【0225】
前記の場合、リタデーション層の光軸は、前記リタデーション層の一つの表面で傾斜角が70度~90度であり、それと対向する他の一つの表面で傾斜角が0度~20度になるように、前記リタデーション層の厚さ方向に沿って徐々に変化していてもよい。
【0226】
ロッド形状の液晶分子を含む場合、リタデーション層の光軸の傾斜角は、リタデーション層の両表面でそれぞれ70度~90度であり、厚さ方向の中間部で0度~70度になるように前記光軸が厚さ方向に沿って徐々に変化していてもよい。
【0227】
ロッド形状の液晶分子を含む場合にリタデーション層の光軸の傾斜角は、リタデーション層の両表面でそれぞれ0度~20度であり、厚さ方向の中間部で40度~90度になるように前記光軸が厚さ方向に沿って徐々に変化していてもよい。
【0228】
ディスク形状の液晶分子を含む場合にリタデーション層の光軸の傾斜角は、リタデーション層の両表面でそれぞれ70度~90度であり、厚さ方向の中間部で0度~30度になるように前記光軸が厚さ方向に沿って徐々に変化していてもよい。
【0229】
ディスク形状の液晶分子を含む場合、リタデーション層の光軸の傾斜角は、リタデーション層の両表面でそれぞれ0度~20度であり、厚さ方向の中間部で20度~50度になるように前記光軸が厚さ方向に沿って徐々に変化していてもよい。
【0230】
また、他の例において、円偏光板は、偏光子と位相差層との間に厚さ方向に沿って一定に傾斜した光軸を有するリタデーション層、例えば、チルト配向された液晶硬化層をさらに含むことができる。
【0231】
前記でリタデーション層の光軸の平面への投影は、前記偏光子の吸収軸と平行を成すことができる。
【0232】
液晶硬化層である前記リタデーション層は、屈折率異方性が0.03~0.2の範囲内である液晶分子を含むことができる。
【0233】
また、前記液晶分子は、ロッド形状の液晶分子、例えば、ネマチック液晶であってもよい。
【0234】
前記の場合、リタデーション層の光軸の傾斜角は、25度~65度の範囲内であり、厚さは、0.35μm~2.2μmの範囲内であってもよい。
【0235】
また、他の例において、前記リタデーション層の光軸の傾斜角は、35度~50度の範囲内であり、厚さは、0.4μm~2.2μmであってもよい。
【0236】
前記液晶分子は、他の例において、ディスク形状の液晶分子、例えば、ディスコティック液晶であってもよい。
【0237】
この場合、前記リタデーション層の光軸の傾斜角は、10度~35度の範囲内であり、厚さは、1μm~3μmの範囲内であってもよい。
【0238】
本出願は、また、ディスプレイ装置に関する。例示的なディスプレイ装置は、前記円偏光板を含むことができる。
【0239】
円偏光板を含むディスプレイ装置の具体的な種類は、特に制限されない。前記装置は、例えば、反射型または半透過反射型液晶表示装置(Liquid Crystal Display)のような液晶表示装置であるか、有機発光装置(Organic Light Emitting Device)等であってもよい。
【0240】
ディスプレイ装置において円偏光板の配置形態は、特に制限されず、例えば公知の形態が採用され得る。例えば、反射型液晶表示装置において円偏光板は、外部光の反射防止および視認性の確保のために液晶パネルの円偏光板のうちいずれか一つの円偏光板に使用され得る。
【0241】
また、有機発光装置に前記円偏光板が適用される場合、前記有機発光装置は、反射電極と、透明電極と、前記反射電極と透明電極との間に介在され、発光層を有する有機層および前記円偏光板を含み、前記円偏光板が前記反射または透明電極の外側に存在し、偏光子に比べて位相差フィルムが前記反射または透明電極に近く配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0242】
本出願では、有機発光表示装置等のディスプレイ装置に適用されて、有害紫外線を適切に遮断しながらも、画質に影響を与える可視光領域の光の遮断は最小化することができ、また、耐久性に優れた円偏光板を提供することができる。また、本出願では、工程の単純化およびコスト競争力を確保して、視野角で補償特性に優れた円偏光板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0243】
【
図6】実施例1に対する紫外線吸収特性測定結果である。
【
図7】実施例2に対する紫外線吸収特性測定結果である。
【
図8】比較例1に対する紫外線吸収特性測定結果である。
【
図9】比較例2に対する紫外線吸収特性測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0244】
以下実施例および比較例により本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲が下記透過率可変装置により制限されるものではない。
【0245】
製造例1.重合性液晶組成物Aの製造
正分散重合性液晶化合物としてBASF社のLC1057液晶と逆分散重合性液晶化合物として下記化学式Aの液晶化合物を使用して重合性液晶組成物を製造した。前記正分散重合性液晶化合物は、R(450)/R(550)が約1.09~1.11程度の水準であり、R(650)/R(550)が約0.93~0.95程度の水準であり、前記化学式Aの液晶化合物は、R(450)/R(550)が約0.84~0.86程度の水準であり、R(650)/R(550)が約1.01~1.03程度の水準である。前記R(450)、R(550)およびR(650)は、それぞれ前記正分散重合性液晶化合物または前記化学式Aの重合性液晶化合物を単独で使用して形成した位相差層に対して測定した450nm、550nmおよび650nm波長の光に対する面内位相差である。前記面内位相差は、公知の方式で測定できるが、例えば、複屈折計測機であるAxoscan(Axometrics社)を使用して偏光測定方式で測定することができる。前記重合性液晶化合物を単独で使用して位相差層を形成する方式は、重合性液晶化合物が単独で適用されることを除いて、下記実施例に記載された方式と同じである。前記正分散重合性液晶化合物および化学式Aの逆分散重合性液晶化合物を略94:6~95:5の重量比(逆分散重合性液晶:正分散重合性液晶)で混合し、前記重合性液晶化合物合計100重量部に対して約5重量部のラジカル光開始剤(BASF社、Irgacure907)を溶媒(シクロペンタノン)内で配合して、重合性液晶組成物Aを製造した。
【0246】
【0247】
前記で化学式Aの化合物は、下記の方式で合成した。窒素雰囲気下で、反応容器に下記化学式A1の化合物17.7gおよびテトラヒドロフラン100mlを入れた。氷冷しつつ、0.9mol/Lのボラン-テトラヒドロフラン錯体103mlを滴下し、1時間撹拌した。5%塩酸を滴下した後、酢酸エチルで抽出し、食塩水で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を蒸留除去することにより、下記化学式A2で表示される化合物14.9gを得た。窒素雰囲気下で、反応容器に化学式A2で表示される化合物14.9g、ピリジン7.2g、ジクロロメタン150mlを加えた。氷冷しつつ、メタンスルホニルクロリド8.8gを滴下し、室温で3時間撹拌した。水に注いで、5%塩酸および食塩水で順次洗浄した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル)および再結晶(アセトン/ヘキサン)により精製を行って、化学式A3で表示される化合物16.3gを得た(下記化学式A3でMsは、メタンスルホニル基である)。窒素雰囲気下で、反応容器に化学式A4で表示される化合物2.5g、化学式A3で表示される化合物10.6g、炭酸カリウム7.5g、N,N-ジメチルホルムアミド70mlを加え、90℃で3日間加熱撹拌した。水に注いで、トルエンで抽出し、食塩水で洗浄した。カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン)および再結晶(アセトン/メタノール)により精製を行って、化学式A5で表示される化合物7.7gを得た。反応容器に化学式A5で表示される化合物7.7g、ジクロロメタン150ml、トリフルオロ酢酸100mlを加えて撹拌した。溶媒を蒸留除去した後、得られた固体を水で洗浄し、乾燥させることにより、化学式A6で表示される化合物5.5gを得た。
【0248】
窒素雰囲気下で、反応容器に化学式A6で表示される化合物5.5g、化学式A7で表示される化合物6.9g、N,N-ジメチルアミノピリジン0.8g、ジクロロメタン200mlを加えた。氷冷しつつ、ジイソプロピルカルボジイミド4.1gを滴下し、室温で10時間撹拌した。析出物を濾過により除去した後、濾過液を1%塩酸、水および食塩水で順次洗浄した。再結晶(ジクロロメタン/メタノール)を行った後、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン)および再結晶(ジクロロメタン/メタノール)により精製を行って、化学式A8で表示される化合物8.4gを得た。
【0249】
30mlの三口フラスコに化学式A8で表示される化合物1.4g、2-ヒドラジノベンゾチアゾール0.35g、テトラヒドロフラン5mlを加え、25℃で9時間撹拌した。その後、水50mlを加え、酢酸エチル30mlで2回抽出した。得られた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥した。硫酸ナトリウムを濾過後、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2/1)で精製した。得られた粗生成物をアセトン/メタノールを使用して再沈殿を行った。この結晶を濾過、乾燥することにより、下記化学式A9で表示される化合物を0.98g得た。次に、化学式A9で表示される化合物の窒素原子に付着した水素原子を2-[2-(2-アクリロイルオキシエトキシ)エトキシ]エチル基で置換して、前記化学式Aの化合物を得た。得られた化学式Aの化合物のNMR確認結果は、下記に記載した。
【0250】
【0251】
【0252】
【0253】
【0254】
【0255】
【0256】
【0257】
【0258】
【0259】
<NMR結果>
1H NMR(CDCl3)δ1.19-1.29(m,4H),1.41-1.82(m,22H),1.91(m,2H),2.08(m,4H),2.24(m,4H),2.53(m,2H),3.62(m,3H),3.67(m,2H),3.84-3.90(m,5H),3.94(t,4H),4.15-4.19(m,6H),4.53(t,2H),5.76(dd,1H),5.82(dd,2H),6.08(dd,1H),6.12(dd,2H),6.37(dd,1H),6.40(dd,2H),6.84-6.90(m,6H),6.95-6.98(m,4H),7.14(t,1H),7.32(t,1H),7.53(d,1H),7.65(d,1H),7.69(d,1H),8.34(s,1H)ppm
【0260】
製造例2.重合性液晶組成物Bの製造
逆分散重合性液晶化合物として、下記化学式Bの液晶化合物を適用したことを除いて、製造例1と同一に重合性液晶組成物Bを製造した。前記化学式Bの液晶化合物は、R(450)/R(550)が約0.81~0.83水準程度であり、R(650)/R(550)が約1.01~1.03程度の水準である。前記R(450)、R(550)およびR(650)は、前記化学式Bの重合性液晶化合物を単独で使用して形成した位相差層に対して測定した450nm、550nmおよび650nm波長の光に対する面内位相差である。
【0261】
【0262】
前記で化学式Bの化合物は、製造例1と同一に下記化学式A9で表示される化合物を得た後、化学式A9で表示される化合物の窒素原子に付着した水素原子を2-[2-(メトキシエトキシ)]エチル基で置換して得た。得られた化学式Bの化合物のNMR確認結果は、下記に記載した。
【0263】
<NMR結果>
1H NMR(CDCl3)δ1.22-1.28(m,4H),1.44-1.47(m,8H),1.60-1.82(m,12H),1.90(m,2H),2.07(t,4H),2.24(d,4H),2.53(m,2H),3.30(s,3H),3.50(t,2H),3.66(t,2H),3.85-3.89(m,6H),3.93(t,4H),4.17(t,4H),4.53(t,2H),5.82(d,2H),6.13(q,2H),6.40(d,2H),6.83-6.90(m,6H),6.95-6.98(m,4H),7.14(t,1H),7.32(t,1H),7.52(t,1H),7.67(t,2H),8.33(s,1H)pp
【0264】
製造例3.重合性液晶組成物Cの製造
前記製造例1の化学式Aの逆分散重合性液晶化合物と製造例1で使用したものと同じ光開始剤および紫外線吸収剤として、最大吸収波長範囲が約380~390nm内である紫外線吸収剤(Orient Chemical Industries社、BONASORB UA-3912)を適用して、重合性液晶組成物を製造した。化学式Aの逆分散重合性液晶化合物、光開始剤および前記紫外線吸収剤を20:1:1の重量比(逆分散重合性液晶化合物:光開始剤:紫外線吸収剤)で溶媒(シクロペタノン)内で配合して、重合性液晶組成物Cを製造した。
【0265】
製造例4.重合性液晶組成物Dの製造
化学式Aの逆分散重合性液晶化合物、光開始剤および前記紫外線吸収剤の配合を20:1:0.6の重量比(逆分散重合性液晶化合物:光開始剤:紫外線吸収剤)としたことを除いて、製造例3の場合と同一に重合性液晶組成物Dを製造した。
【0266】
実施例1.
基材フィルムの製造
SAN(スチレン-アクリロニトリル共重合体)37重量部、アクリル系樹脂(ラクトン-MMA共重合体)30重量部に対して5%ポリビニルアルコール水溶液0.05重量部、水200重量部、開始剤であるt-ヘキシルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート0.08重量部、t-ドデシルメルカプタン0.2重量部、NaCl 0.1重量部を混合した混合物を用意した。用意した混合物を初期反応温度80℃で2時間の間1次懸濁重合した後、95℃まで昇温して1時間の間2次重合を進めた後、洗浄、乾燥を経てラクトン-MMA-SANビーズを製造した。得られたビーズを270℃の同方向二軸押出機を用いて2回再押出して、ペレット状態の樹脂を製造し、この際、真空度(Torr)は、20とした。製造されたペレットを乾燥させた後、T-ダイを含む押出機を利用して厚さ180μmの押出フィルムを製造した。製造されたフィルムをMD方向に2倍、TD方向に3倍2軸延伸を通じて厚さ50μmのフィルムを製造した。製造されたフィルムの550nm波長に対するRin値は、1.5nmであり、550nm波長に対するRth値は、58.4nmである。
【0267】
位相差層の製造
前記基材フィルム上に光配向膜を形成した。公知のシンナメート系の光配向膜形成用組成物を前記基材フィルム上に約100nm程度の厚さで塗布した後、線偏光された紫外線を約300mW/cm2で照射して形成した。次に、重合性液晶組成物Aを前記光配向膜上に約1μm程度の乾燥厚さになるように塗布し、下部配向膜に沿って配向させた後、紫外線を約300mW/cm2で約10秒間照射して位相差層を形成した。前記位相差層の550nm波長の光に対する面内位相差は、約146.0nm程度であった。前記形成された位相差層のR(450)/R(550)が約0.85~0.87水準程度であり、R(650)/R(550)が約1.01~1.05程度であった。
【0268】
円偏光板の製造
前記製造された位相差層を偏光子として、公知のヨード系ポリビニルアルコール(PVA)偏光子(LG化学社)の一面に付着して円偏光板を製造した。付着には、光学フィルムの積層に使用される一般的な紫外線硬化型接着剤を適用した。
【0269】
実施例2.
位相差層の製造
重合性液晶組成物Aの代わりに重合性液晶組成物Bを適用したことを除いて、実施例1と同一に位相差層を形成した。前記位相差層の550nm波長の光に対する面内位相差は、約144.5nm程度であった。前記形成された位相差層のR(450)/R(550)が約0.82~0.85水準程度であり、R(650)/R(550)が約1.01~1.05程度であった。
【0270】
円偏光板の製造
前記製造された位相差層を使用して実施例1と同一に円偏光板を製造した。
【0271】
比較例1.
位相差層の製造
重合性液晶組成物Aの代わりに重合性液晶組成物Cを適用したことを除いて、実施例1と同一に位相差層を形成した。前記製造された位相差層の550nm波長の光に対する面内位相差は、約131.7nm程度であった。前記形成された位相差層のR(450)/R(550)が約0.84~0.86水準程度であり、R(650)/R(550)が約1.01~1.03水準程度であった。
【0272】
円偏光板の製造
前記製造された位相差層を使用して実施例1と同一に円偏光板を製造した。
【0273】
比較例2.
位相差層の製造
重合性液晶組成物Aの代わりに重合性液晶組成物Dを適用したことを除いて、実施例1と同一に位相差層を形成した。前記位相差層の550nm波長の光に対する面内位相差は、約140.7nm程度であった。前記形成された位相差層のR(450)/R(550)が約0.81~0.83水準程度であり、R(650)/R(550)が約1.01~1.03水準程度であった。
【0274】
円偏光板の製造
前記製造された位相差層を使用して実施例1と同一に円偏光板を製造した。
【0275】
評価1.紫外線吸収特性の比較
実施例および比較例で製造された各位相差層に対して紫外線吸収特性を比較した。紫外線吸収特性は、300nm以上の波長領域で吸収ピークを示さないNRT基材上に各実施例および比較例に示された方法で配向膜と液晶層(位相差層)を順に形成した試験片に対してN&K UV Spectrometer(HP社)を使用して波長別に評価した。
図6および
図7は、それぞれ実施例1および2に対する測定結果であり、
図8および
図9は、それぞれ比較例1および2に対する測定結果である。具体的な波長別の透過率は、下記表1に整理した。
【0276】
【0277】
表1から、本出願によって紫外線吸収剤を適用することなく、優れた紫外線遮断特性を確保することができることを確認することができる。
【0278】
評価2.耐久性評価
実施例および比較例で製造された各位相差層に対して耐久性を評価した。耐久性は、実施例および比較例で製造された各位相差層を約85℃の条件(耐久条件)で250時間の間維持した後、前記条件で維持する前の面内位相差(550nm波長基準)と維持後の面内位相差(550nm波長基準)を比較して評価した。
図10および
図11は、それぞれ実施例1および2に対する測定結果であり、
図12および
図13は、それぞれ比較例1および2に対する測定結果である。
【0279】
【0280】
表2の結果によって、本出願による位相差層の場合には、紫外線吸収剤または光安定剤を使用することなく、優れた紫外線吸収能を有し、また、その結果、耐久性の側面でも優れた結果を示すという点を確認することができる。
【符号の説明】
【0281】
101 偏光子
102 位相差層
103 基材フィルム
100 位相差層、リタデーション層、位相差フィルム、光学フィルム、基材フィルム
301 外郭層
401 下部層
501 中間層