(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】逆浸透膜、その製造方法および水処理モジュール
(51)【国際特許分類】
B01D 71/68 20060101AFI20220118BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20220118BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20220118BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20220118BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20220118BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
B01D71/68
B01D61/02
B01D69/10
B01D69/12
B01D69/00
C02F1/44 A
(21)【出願番号】P 2020542325
(86)(22)【出願日】2019-05-09
(86)【国際出願番号】 KR2019005540
(87)【国際公開番号】W WO2019216656
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2020-08-11
(31)【優先権主張番号】10-2018-0053731
(32)【優先日】2018-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リー、アヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ユン ソク
(72)【発明者】
【氏名】シン、チョン キュ
(72)【発明者】
【氏名】リー、フィル
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/126113(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/192883(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/050701(WO,A1)
【文献】特開平06-182166(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0027265(KR,A)
【文献】特開2000-107575(JP,A)
【文献】特開昭56-67504(JP,A)
【文献】特開2018-47455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
B01D 53/22
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体およびポリスルホン層を含む支持層と、活性層とを含み、
圧縮弾性率が20~40MPaであ
り、
前記支持体の厚さは、93~95μmであり、
前記圧縮弾性率は、万能物性分析器(Texture analyzer)を用いて、円形探針(probe)の直径(D)5mm、圧縮速度0.1mm/sec、25℃の条件で測定された変形度および応力を利用して、下記の計算式によって計算されるものであり、
前記支持体は、不織布を含むものであり、前記不織布は、ポリエチレンテレフタレートであり、
前記ポリスルホン層の厚さは、25~80μmであり、
前記支持体内にポリスルホンが1~5g/m
2
含浸される、逆浸透膜:
[計算式]
【数5】
前記計算式において、
F=前記万能物性分析器(Text analyzer)で加えられた力(Force、gf)、
A=
【数6】
L=前記万能物性分析器が力を加えた後の逆浸透膜の厚さ(Length、mm)、
Lo=前記万能物性分析器が力を加える前の逆浸透膜の厚さ(Initial length、mm)である。
【請求項2】
請求項1に記載の逆浸透膜を1つ以上含む水処理モジュール。
【請求項3】
支持体およびポリスルホン層を含む支持層を形成するステップと、
前記支持層上に活性層を形成するステップとを含む請求項1に記載の逆浸透膜の製造方法。
【請求項4】
前記ポリスルホン層を、ポリスルホンが含まれた高分子溶液で形成することを含み、前記ポリスルホンが含まれた高分子溶液に含まれるポリスルホンの含有量は、前記ポリスルホンが含まれた高分子溶液の総重量を基準として、15~20重量%である、請求項3に記載の逆浸透膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、逆浸透膜、その製造方法および水処理モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
半透過性膜で隔離された2つの溶液の間において溶媒が、溶質の濃度が低い溶液から高い溶液側に分離膜を通過して移動する現象を浸透現象といい、この時、溶媒の移動で溶質の濃度が高い溶液側に作用する圧力を浸透圧という。ところで、浸透圧より高い外部圧力をかけると、溶媒は溶質の濃度が低い溶液側に移動するが、この現象を逆浸透という。逆浸透の原理を利用して圧力勾配を駆動力として半透過性膜を通して各種塩や有機物質を分離することができる。このような逆浸透現象を利用した逆浸透膜は、分子水準の物質を分離し、塩水または海水から塩を除去して家庭用および建築用、産業用用水を供給するのに使用されている。
【0003】
このような逆浸透膜の代表例としては、ポリアミド系逆浸透膜が挙げられ、ポリアミド系逆浸透膜は、微細多孔層支持体上にポリアミド活性層を形成する方法で製造されており、より具体的には、不織布上にポリスルホン層を形成して微細多孔性支持体を形成し、この微細多孔性支持体をm-フェニレンジアミン(m-Phenylene Diamine、mPD)水溶液に浸漬させてmPD層を形成し、これを再びトリメソイルクロライド(TriMesoyl Chloride、TMC)有機溶媒に浸漬させてmPD層をTMCと接触させて界面重合させることにより、ポリアミド層を形成する方法で製造されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本出願は、2018年5月10日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2018-0053731号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本明細書に組み込まれる。
本明細書は、逆浸透膜、その製造方法および水処理モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書の一実施態様は、支持体およびポリスルホン層を含む支持層と、活性層とを含み、圧縮弾性率が20~40MPaである逆浸透膜を提供する。
本明細書の一実施態様は、前述した逆浸透膜を1つ以上含む水処理モジュールを提供する。
【0006】
本明細書の一実施態様は、支持体およびポリスルホン層を含む支持層を形成するステップと、前記支持層上に活性層を形成するステップとを含む前記逆浸透膜の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本明細書の一実施態様に係る逆浸透膜は、優れた機械的物性を示す。具体的には、高い圧縮弾性率を有することにより、逆浸透膜のアセンブリ(assembly)時、シワ寄りを減少させて不良発生率が減少できる。
【0008】
さらに、本明細書の一実施態様に係る逆浸透膜を含む水処理モジュールの運転時、安全性を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本明細書の一実施態様に係る逆浸透膜を示すものである。
【
図2】本明細書の一実施態様に係る水処理モジュールを示すものである。
【
図3】本明細書の一実施態様に係る逆浸透膜の圧縮弾性率を取得するグラフを示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、ある部材が他の部材「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合のみならず、2つの部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0011】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0012】
以下、本明細書についてさらに詳細に説明する。
本明細書の一実施態様は、支持体およびポリスルホン層を含む支持層と、活性層とを含み、圧縮弾性率が20~40MPaである逆浸透膜を提供する。
【0013】
前記圧縮弾性率が20~40MPaである逆浸透膜は、圧縮弾性率が高くて機械的強度が増加することにより、前記逆浸透膜のアセンブリ時、シワ寄りを減少させて、逆浸透膜のアセンブリ時の不良発生率を著しく低下させることができ、前記逆浸透膜を1つ以上含む水処理モジュールを安定して駆動することが可能である。
【0014】
また、既存の逆浸透膜のMD(mechanical direction)、CD(cross direction)方向の引張強度特性ではない、本明細書のZ軸方向の圧縮弾性率は、本明細書の一実施態様に係る逆浸透膜、供給スペーサ(Feed spacer)、およびトリコット(tricot)濾過水路で構成されたリーフ(leaf)のローリング時に重要な因子として作用できる。前記Z軸方向とは、
図1を参照すれば、前記逆浸透膜の厚さ方向tを意味する。
【0015】
水処理モジュールは、海淡水用、産業用、家庭用によって含まれるリーフ(leaf)の個数が異なり得るが、1~50個のリーフが含まれ、少なくて1~2個、多くて50個までのリーフが含まれる。2個以上の積層されたリーフは、ローリング時に駆動方向であるMD(mechanical direction)の力を受けるだけでなく、積層されたリーフ間の押圧によるZ軸方向の力も受けるため、Z軸方向の圧縮弾性率がローリング時の重要な因子であり得るのである。
【0016】
前記圧縮弾性率は、万能物性分析器(Texture analyzer)を用いて、円形探針(probe)の直径(D)5mm、圧縮速度0.1mm/sec、25℃の条件で測定された変形度および応力を利用して、下記の計算式によって計算される。
【0017】
【0018】
前記計算式において、
F=前記万能物性分析器(Text analyzer)で加えられた力(Force、gf)、
A=
【数2】
L=前記万能物性分析器が力を加えた後の逆浸透膜の厚さ(Length、mm)、
Lo=前記万能物性分析器が力を加える前の逆浸透膜の厚さ(Initial length、mm)である。
【0019】
前記計算式において、前記Fは、3,000~15,000gfであってもよく、200~25,000gfであってもよいし、50~30,000gfであってもよい。また、前記Aは、19.63mm2であってもよい。前記Loは、0.5~5mmであってもよく、好ましくは1.57mmであってもよい。そして、前記Lは、0~1mmであり、好ましくは0.25~0.65mmであってもよい。
【0020】
前記FおよびLが前記範囲に相当する場合の変形度および応力による値を導出して、前記計算式を用いた圧縮弾性率を得ることができる。
【0021】
具体的には、
図3を参照すれば、前記計算式によって得られた変形度(Strain)を横軸、応力(Stress)を縦軸としてグラフを示し、得られたグラフの傾きを計算して、圧縮弾性率(弾性モジュラス)を計算することができる。
【0022】
本明細書の一実施態様において、前記万能物性分析器(Texture analyzer)は、例えば、TA.XTplus Texture Analayzerであってもよいが、これに限定されるものではなく、当該技術分野で知られたものを用いることができる。前記万能物性分析器は、物性分析器または物性測定器を意味することができる。
【0023】
本明細書の一実施態様において、前記計算式によって計算された前記逆浸透膜の圧縮弾性率は、20~40MPaである。具体的には、前記圧縮弾性率は、21~35MPaであってもよいし、さらに具体的には21.1~27MPaであってもよい。前記逆浸透膜の圧縮弾性率が前記範囲を満足する場合、逆浸透膜の機械的強度を向上させることができ、逆浸透膜のアセンブリ(assembly)時に有利であり、不良発生率を減少させることができる。
【0024】
前記圧縮弾性率が20MPa未満の場合、逆浸透膜のアセンブリ時の不良発生率が高くなり、前記逆浸透膜の機械的強度が低くて、前記逆浸透膜を含む水処理モジュールの安定した駆動が不可能になりうる。
【0025】
前記圧縮弾性率が40MPa超過の場合、逆浸透膜の硬さ(hardness)によって渦巻型(spiral wound)形態のモジュールの製造時、ローリング工程に困難がある。
【0026】
本明細書において、支持体およびポリスルホン層を含む前記支持層の物性が前記逆浸透膜の圧縮弾性率に及ぼす影響が絶対的であり、本明細書の一実施態様において、目的の逆浸透膜の圧縮弾性率を得るために、前記逆浸透膜に含まれる前記支持体の厚さや材料、前記ポリスルホン層の有無、前記ポリスルホン層の厚さ、前記ポリスルホン層の製造時にポリスルホンが含まれた高分子溶液に含まれるポリスルホンの含有量、組成比などを調節することができる。
【0027】
具体的には、前記逆浸透膜の圧縮弾性率は、前記支持体の厚さ、前記ポリスルホン層の厚さ、および前記ポリスルホンが含まれた高分子溶液に含まれるポリスルホンの含有量によって調節可能である。
【0028】
本明細書の一実施態様において、前記支持体の厚さは、90~120μmであり、前記ポリスルホン層の厚さは、25~80μmである。
【0029】
前記支持体の厚さは、90~100μmであってもよいし、好ましくは93~95μmであってもよい。前記支持体の厚さが90μm未満の場合、支持体としての役割が不十分で、逆浸透膜の耐久性が低下することがあり、120μm超過の場合、流量が低下し、圧縮弾性率が低下することがある。
【0030】
また、前記ポリスルホン層の厚さは、具体的には30~75μmであってもよいし、好ましくは33~70μmであってもよい。前記ポリスルホン層の厚さが25μm未満の場合、支持層としての役割が不十分で、逆浸透膜の耐久性が低下することがあり、80μm超過の場合、流量が低下し、圧縮弾性率が低下することがある。
【0031】
前記支持体と前記ポリスルホン層それぞれが前記厚さの範囲を満足する場合、本発明で目的とする逆浸透膜の優れた圧縮弾性率を得ることができる。
【0032】
本明細書の一実施態様において、前記支持体の厚さおよびポリスルホン層の厚さは、逆浸透膜を10cm×10cmに切断してサンプルを製造した後、デジマチック厚さゲージを用いて厚さを測定することができる。前記厚さは、前記デジマチック厚さゲージを用いて5回測定した後、その平均値で求められる。
【0033】
前記デジマチック厚さゲージはMitutoyo社製であってもよいが、これに限定されるものではなく、当該技術分野で知られたものを用いることができる。
【0034】
本明細書の一実施態様において、前記ポリスルホン層は、ポリスルホンが含まれた高分子溶液で形成され、前記ポリスルホンが含まれた高分子溶液に含まれるポリスルホンの含有量は、前記ポリスルホンが含まれた高分子溶液の総重量を基準として、15~20重量%であってもよい。好ましくは16~18重量%であってもよい。
【0035】
前記ポリスルホンの含有量が15重量%以上の場合、逆浸透膜の強度が維持可能であり、20重量%以下の場合、ポリスルホンの濃度が高くなくて、逆浸透膜の製造が容易であり得る。
【0036】
そして、前記ポリスルホンの含有量を満足する場合、前記支持体上にポリスルホン層を形成する時、ポリスルホン1~5g/m2が支持体内に含浸される。前記含有量のポリスルホンが支持体内に含浸される場合、前記支持体の単位面積あたりの密度が増加して、弾性モジュラスが増加することにより、前記支持体およびポリスルホン層を含む支持層の弾性に優れることができる。
【0037】
前記支持体内に含浸されたポリスルホン量の測定は、前記逆浸透膜を真空デシケータで24時間乾燥させた後、前記支持体上のポリスルホン層の除去のために、テープを前記支持体の面積と同等面積で接着後に一度に剥がす方式を利用することができる。次いで、ジクロロメタン(Dichloromethane)を用いて含浸されているポリスルホンを溶出させ、初期逆浸透膜の重量とポリスルホンの溶出後の逆浸透膜の重量との差を測定して、含浸されたポリスルホン量を測定することができる。
【0038】
本明細書の一実施態様において、前記ポリスルホンが含まれた高分子溶液は、前記ポリスルホンの他に、残部の溶媒を含むことができる。前記溶媒は、ポリスルホンを溶解できるものであれば特に限定されず、当該技術分野で知られたものを使用することができる。例えば、ジメチルホルムアミド(DMF、Dimethylformamide)であってもよい。
【0039】
また、前記ポリスルホンを含む高分子溶液は、必要に応じて、添加剤をさらに含んでもよい。前記添加剤は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG、Polyethylene glycol)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0040】
本明細書の一実施態様において、前記ポリスルホンが含まれた高分子溶液は、前記溶媒に前記ポリスルホン固形(solid)、および必要な場合の前記添加剤を入れて、80~85℃で12時間以上撹拌して製造することができる。具体的には80℃で12時間撹拌して製造することができる。
本明細書の一実施態様において、前記支持層は、多孔性支持層で表現される。
【0041】
本明細書の一実施態様において、前記支持体は、不織布を含むことができる。すなわち、前記支持体は、不織布で形成される。
【0042】
前記支持体が不織布で形成される場合、不織布に含まれる平均空隙サイズ、坪量、密度、空気透過度などを調節して、不織布を含む支持層の強度または透過性を調節することができる。
【0043】
本明細書の一実施態様において、前記不織布の平均空隙サイズは、3~10μmであってもよいが、これに限定されるものではない。前記不織布の平均空隙サイズが前記範囲の場合、逆浸透膜の支持体としての強度が維持できる。
【0044】
他の実施態様において、前記不織布の坪量は、70~80g/m2であってもよいが、これに限定されるものではない。前記不織布の坪量が前記範囲の時、逆浸透膜の支持体としての強度が維持できる。
【0045】
さらに他の実施態様において、前記不織布の密度は、0.5~1g/m3であってもよいが、これに限定されるものではない。前記不織布の密度が前記範囲の時、逆浸透膜の支持体としての強度が維持できる。
【0046】
さらに他の実施態様において、前記不織布の空気透過度は、0.5~2.5cc/cm2・secであってもよいが、これに限定されるものではない。前記空気透過度の範囲が前記範囲の時、逆浸透膜の支持体としての強度が維持できる。
【0047】
本明細書の一実施態様において、前記不織布の厚さは、90~120μmであってもよい。好ましくは90~100μmであってもよいし、さらに好ましくは93~95μmであってもよい。不織布が前記範囲に相当する場合、前記不織布を含む逆浸透膜の圧縮弾性率を高めることができる。
【0048】
前記不織布の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリカーボネート、微孔質ポリプロピレン、ポリフェニレンエーテル、ポリフッ化ビニリデンなどが使用できるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、前記不織布は、ポリエチレンテレフタレートであってもよい。
【0049】
本明細書の一実施態様において、前記ポリスルホン層は、前記支持体上に高分子材料のコーティング層が形成されたものを意味し、前記高分子材料としては、ポリスルホンを意味し、前記ポリスルホンは、スルホン基(-SO2-)を有するポリマーであることが好ましい。具体的には、前記スルホン酸基を有するポリマーは、下記の繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0050】
【0051】
前記「繰り返し単位」とは、高分子の重合体を構成する単量体であって、前記単量体は、重合体内の主鎖に含まれて重合体を構成することができる。
【0052】
前記繰り返し単位において、
【化2】
で表された部分は、他の置換基または連結基と連結される部分を意味する。
【0053】
本明細書の一実施態様において、前記ポリスルホン層は、前記ポリスルホンが含まれた高分子溶液を用いてキャスティングの方法で形成される。前記キャスティングは、溶液鋳造(casting)方法を意味するもので、具体的には、高分子材料を溶媒に溶解させた後、接着性のない平滑な表面に展開させた後、溶媒を蒸発させる方法を意味することができる。例えば、ドロップキャスティング(drop casting)、スピンコーティング(spin coating)、ディップコーティング(dip coating)、スロットダイコーティング(slot die coating)などの方法が例に挙げられるが、好ましくは、スロットダイコーティングを利用することができ、これに限定されるものではない。また、溶媒を蒸発させる過程中に温度を加えてもよいが、同じくこれに限定されるものではない。
【0054】
本明細書の一実施態様において、前記逆浸透膜は、前記逆浸透膜のアセンブリ(assembly)時の不良率が0~5%であってもよい。具体的には、前記不良発生率は、1~3%であってもよい。前記不良発生率が5%を超える場合、逆浸透膜を含む水処理モジュールの安定した駆動が困難になりうる。
【0055】
前記逆浸透膜のアセンブリ(assembly)時の不良発生率とは、アセンブリ後の完成品である逆浸透膜エレメント(element)の物性を測定した時、製造した全体逆浸透膜エレメントの個数を基準として、目的の物性に及ばない逆浸透膜エレメントの個数の比率を意味する。
【0056】
前記目的の物性に及ばない逆浸透膜とは、逆浸透膜エレメントにローダミン染色テストを行った時、ローダミン染色薬が漏出(leak)した逆浸透膜を称し、これを不良品という。
【0057】
具体的には、前記ローダミン染色テストは、本明細書の一実施態様に係る逆浸透膜を複数個製造した後、複数の逆浸透膜をローダミン染色薬で染色する。その後、オートプシー(完成品である逆浸透膜エレメントを分解)過程を行った時、ローダミン染色薬の漏出(leak)が発生した部分を含む逆浸透膜、すなわち桃色で染色された逆浸透膜が不良品であり、その不良品の個数を数えた後、製造した総逆浸透膜の個数で割って、前記逆浸透膜のアセンブリ時の不良発生率を計算することができる。
【0058】
本明細書の一実施態様は、支持体およびポリスルホン層を含む支持層を形成するステップと、前記支持層上に活性層を形成するステップとを含む前記逆浸透膜の製造方法を提供する。
【0059】
本明細書の一実施態様において、前記支持体およびポリスルホン層を含む支持層を形成するステップの前記支持体および前記ポリスルホン層は、前述した説明による。
【0060】
前記支持体およびポリスルホン層を含む支持層を形成するステップは、前記支持体上にポリスルホン層を形成するステップを含むことができる。
【0061】
前記ポリスルホン層は、ポリスルホンが含まれた高分子溶液の総重量を基準として、ポリスルホンを10~25重量%含む前記ポリスルホンが含まれた高分子溶液で形成することができる。前記ポリスルホンが含まれた高分子溶液は、前述した説明による。
【0062】
本明細書の一実施態様において、前記活性層は、ポリアミド活性層を意味することができ、前記ポリアミド活性層は、前記支持層上にアミン化合物を含む水溶液層を形成するステップと、前記アミン化合物を含む水溶液層上にアシルハライド化合物を含む有機溶液を接触させて、ポリアミド活性層を形成するステップとにより形成される。
【0063】
前記ポリアミド活性層は、アミン化合物とアシルハライド化合物との接触時、アミン化合物とアシルハライド化合物とが反応しながら界面重合によってポリアミドを生成し、前記支持層に吸着されて形成される。
【0064】
前記接触は、浸漬、スプレー、またはコーティングなどの方法が利用可能である。前記界面重合の条件は、当該技術分野で知られているものが使用できる。
【0065】
前記支持層上にアミン化合物を含む水溶液層を形成する方法は特に限定せず、前記支持層上にアミン化合物を含む水溶液層を形成できる方法であれば制限なく使用可能である。具体的には、前記支持層上に前記アミン化合物を含む水溶液層を形成する方法は、噴霧、塗布、浸漬、滴下などが挙げられ、当該技術分野で知られているものが使用できる。
【0066】
この時、前記アミン化合物を含む水溶液層は、必要に応じて、過剰のアミン化合物を含む水溶液を除去するステップを追加的に経てもよい。前記支持層上に形成されたアミン化合物を含む水溶液層は、前記支持層上に存在するアミン化合物を含む水溶液が多すぎる場合には不均一に分布しうるが、アミン化合物を含む水溶液が不均一に分布する場合には、後の界面重合によって不均一なポリアミド活性層が形成されることがある。したがって、前記支持層上にアミン化合物を含む水溶液層を形成した後に、過剰のアミン化合物を含む水溶液を除去することが好ましい。前記過剰のアミン化合物を含む水溶液の除去は特に限定されないが、例えば、スポンジ、エアナイフ、窒素ガスブローイング、自然乾燥、または圧縮ロールなどを用いて行うことができる。
【0067】
前記アミン化合物を含む水溶液において、前記アミン化合物は、逆浸透膜の製造に使用されるアミン化合物であればその種類を限定しないが、具体例を挙げると、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,3,6-ベンゼントリアミン、4-クロロ-1,3-フェニレンジアミン、6-クロロ-1,3-フェニレンジアミン、3-クロロ-1,4-フェニレンジアミン、またはこれらの混合物であってもよい。好ましくは、m-フェニレンジアミンであってもよい。
【0068】
前記アミン化合物の含有量は、アミン化合物を含む水溶液の総重量を基準として、1~10重量%であってもよい。具体的には3~7重量%であってもよい。
【0069】
前記活性層は、アミン化合物を含む水溶液を前記逆浸透膜用支持体上にコーティングしてアミン化合物を含む水溶液層を形成した後、アシルハライド化合物を含む有機溶液を接触させて界面重合することにより製造できる。前記アシルハライド化合物を含む有機溶液を接触させる方法は特に限定せず、前記アミン化合物を含む水溶液層上に前記アシルハライド化合物を含む有機溶液を界面重合できる方法であれば制限なく使用可能である。例えば、塗布する方法を用いることができる。
本明細書の一実施態様において、前記活性層は、ポリアミド活性層であってもよい。
【0070】
前記アシルハライド化合物としては、ポリアミドの重合に使用できるものであれば限定しないが、具体例として、2~3個のカルボン酸ハライドを有する芳香族化合物であって、トリメソイルクロライド、イソフタロイルクロライドおよびテレフタロイルクロライドからなる化合物の群より選択される1種または2種以上の混合物が使用できる。好ましくは、トリメソイルクロライドが使用できる。
【0071】
前記アシルハライド化合物の含有量は、アシルハライド化合物を含む有機溶液の総重量を基準として、0.05~1重量%であってもよい。具体的には0.2~0.8重量%であってもよい。
【0072】
前記アミン化合物を含む水溶液は、溶媒として、水、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、1-メチル-2-ピロリジノン(NMP)、ヘキサメチルホスホルアミド(hexamethylphosphoramide、HMPA)などを使用することができるが、これらに限定されるものではない。前記溶媒として、水が好ましい。
【0073】
前記アシルハライド化合物を含む有機溶液は、溶媒として、脂肪族炭化水素溶媒、例えば、フレオン類と炭素数が5~12のヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、アルカンのような水と混ざらない疎水性液体、例えば、炭素数が5~12のアルカンとその混合物であるIsoPar(Exxon)、ISOL-C(SK Chem)、ISOL-G(Exxon)、アイソパーG(Isopar G)などが使用できるが、これによって限定されるものではない。前記溶媒として、アイソパーG(Isopar G)が好ましい。
【0074】
本明細書の一実施態様において、前記活性層の厚さは、150~250nmであってもよいし、好ましくは180~220nmであってもよい。
【0075】
本明細書の一実施態様は、前記逆浸透膜を1つ以上含む水処理モジュールを提供する。
【0076】
本明細書の一実施態様において、前記水処理モジュールは、逆浸透膜を1~50個含むことができ、好ましくは1~30個を含むことができる。しかし、これに限定されるものではなく、前記水処理モジュールが海水淡水用、産業用、または家庭用に使用されるかによって異なって適用可能である。
【0077】
前記水処理モジュールの具体的な種類は特に限定されず、その例には、板型(plate&frame)モジュール、管型(tubular)モジュール、中空糸型(Hollow&Fiber)モジュール、または渦巻型(spiral wound)モジュールなどが含まれるが、渦巻型モジュールであることが好ましい。
【0078】
また、前記水処理モジュールは、前述した逆浸透膜を含む限り、その他の構成および製造方法などは特に限定されず、この分野で公知の一般的な手段を制限なく採用可能である。
【0079】
本明細書の一実施態様に係る水処理モジュールは、海水淡水用、産業用、または家庭用に使用できる。
【0080】
図1は、本明細書の一実施態様に係る逆浸透膜を示すものである。具体的には、
図1は、支持体100、ポリスルホン層200、および活性層300が順次に備えられた逆浸透膜を示すものであって、活性層300に塩水400が流入して、精製水500が支持体100を通して排出され、濃縮水600は活性層300を通過せず外部に排出される。前記支持体100およびポリスルホン層200を含む支持層700の圧縮弾性率は、20~40MPaであって、機械的強度が高くて、逆浸透膜のアセンブリ時の不良発生率を低下させることができる。
【0081】
図2は、本明細書の一実施態様に係る水処理モジュールを示すものである。具体的には、水処理モジュールは、チューブ40、供給スペーサ(Feed spacer)20、逆浸透膜10、トリコット濾過水路30などを含んで構成される。水処理モジュールに原水を流し込めば、水処理モジュール内の供給スペーサ20を通して、原水が流入する。1つ以上の逆浸透膜10は、チューブ40から外側方向に延び、チューブ40の周りに巻取られる。供給スペーサ20は、外部から原水が流入する通路を形成し、1つの逆浸透膜10と他の1つの逆浸透膜10との間の間隔を維持させる役割を果たす。このために、供給スペーサ20は、1つ以上の逆浸透膜10と上側および下側で接触し、チューブ40の周りに巻取られる。トリコット濾過水路30は、一般的に織物形態の構造を有し、逆浸透膜10を通して精製された水が流れ出る空間を設ける流路の役割を果たす。チューブ40は、水処理モジュールの中心に位置し、濾過した水が流入して排出される通路の役割を果たす。この時、チューブ40の外側には、濾過した水が流入するように所定サイズの空隙が形成されることが好ましく、1つ以上形成されることが好ましい。前記逆浸透膜10の圧縮弾性率が20~40MPaであって、逆浸透膜10を含む水処理モジュールを安定して駆動することが可能である。
【実施例】
【0082】
以下、本明細書を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本明細書に係る実施例は種々の異なる形態に変形可能であり、本明細書の範囲が以下に詳述する実施例に限定されると解釈されない。本明細書の実施例は、当業界における平均的な知識を有する者に本明細書をより完全に説明するために提供されるものである。
【0083】
製造例
(支持層の製造)
実施例1.
支持体として不織布を用い、前記不織布はポリエチレンテレフタレートであり、厚さが94μmのポリエチレンテレフタレートを用いた。
【0084】
支持体上にポリスルホン層を製造するために、ポリスルホンが含まれた高分子溶液を製造した。前記ポリスルホンが含まれた高分子溶液は、前記ポリスルホンが含まれた高分子溶液の総重量を基準として、84重量%の溶媒ジメチルホルムアミドに16重量%のポリスルホン固形(solid)を入れて、80~85℃で12時間溶かした後に得られた均質(homogeneous)な液状であった。
【0085】
この後、前記支持体(ポリエチレンテレフタレート)上に33μmで前記ポリスルホンが含まれた高分子溶液をスロットダイコーティング方法でキャスティングして、ポリスルホン層を製造した。
これによって、支持体およびポリスルホン層を含む支持層を製造した。
【0086】
実施例2~4.
実施例1において、支持体の厚さ、ポリスルホン層の厚さ、およびポリスルホンの含有量を、下記表1に記載の条件によることを除けば、実施例1と同様の方法で実施例2~4の支持層を製造した。
【0087】
比較例1~4.
比較例1~4は、支持体の厚さがそれぞれ下記表1に記載の条件の通りであり、ポリスルホン層を支持体(不織布)上に形成させていない支持層を用いた。
【0088】
比較例5および6.
実施例1において、支持体の厚さ、ポリスルホン層の厚さ、およびポリスルホンの含有量を、下記表1に記載の条件によることを除けば、実施例1と同様の方法で比較例5および6の支持層を製造した。
【0089】
【0090】
(逆浸透膜の製造)
前記それぞれ製造した支持層上に、アミン化合物を含む水溶液の総重量を基準として、5重量%のメタフェニレンジアミン(m-PD)、溶媒として水95重量%を含ませてアミン化合物を含む水溶液を製造した後、前記水溶液で支持層上に塗布してアミン化合物を含む水溶液層を形成した。
【0091】
この後、アシルハライド化合物を含む有機溶液の総重量を基準として、アイソパーG(Isopar G)溶媒99.5重量%に0.5重量%のトリメソイルクロライド(TMC)を含ませて前記有機溶液を製造した後、前記有機溶液を前記アミン化合物を含む水溶液層上に塗布して界面重合した後、90℃で、5分間乾燥して200nmの厚さのポリアミド活性層を形成して逆浸透膜を製造した。
【0092】
(支持体およびポリスルホン層の厚さの測定)
前記それぞれ製造した支持体の厚さおよびポリスルホン層の厚さは、製造した逆浸透膜を10cm×10cmに切断してサンプルを製造した後、デジマチック厚さゲージを用いて厚さを測定した。前記厚さは前記デジマチック厚さゲージを用いて5回測定した後、その平均値で計算した後、前記表1に記載した。前記デジマチック厚さゲージはMitutoyo社製であった。
【0093】
実験例
(逆浸透膜の圧縮弾性率の測定)
万能物性分析器(Texture analyzer)であるTA.XTplus Texture Analayzerを用いて、円形探針(probe)の直径5mm、圧縮速度0.1mm/sec、25℃の条件で測定された応力および変形度を利用して、下記の計算式によって実施例および比較例の圧縮弾性率をそれぞれ計算して下記表2に記載した。
【0094】
【0095】
前記計算式において、
F=前記万能物性分析器(Text analyzer)で加えられた力(Force、gf)、
A=
【数4】
L=前記万能物性分析器が力を加えた後の逆浸透膜の厚さ(Length、mm)、
Lo=前記万能物性分析器が力を加える前の逆浸透膜の厚さ(Initial length、mm)である。
【0096】
図3のように、前記計算式によって得られた変形度(Strain)を横軸(x値)、応力(Stress)を縦軸(y値)としてグラフを示し、得られたグラフの傾きを計算して、圧縮弾性率(弾性モジュラス)を計算し、これを下記表2に記載した。
【0097】
(アセンブリ時の不良発生率の測定)
前記実施例および比較例による前記逆浸透膜を計20個製造した後、ローダミン染色薬で染色テストを行った。具体的には、製造された計20個の逆浸透膜をローダミン染色薬で染色した後、オートプシー(完成品である逆浸透膜エレメントを分解)過程を行った。この後、ローダミン染色薬の漏出(leak)が発生した部分、すなわち桃色で染色された逆浸透膜(不良品)の個数を数えて、製造された総逆浸透膜の個数で割ってアセンブリ時の不良発生率を計算し、これを下記表2に記載した。
【0098】
【0099】
前記表2によれば、実施例1~4は、圧縮弾性率が比較例1~6より高いことを確認することができた。また、アセンブリ時の不良発生率において、実施例1~4が比較例1~6より著しく低い不良発生率を有することを確認することができた。
【0100】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも発明の範疇に属する。
【符号の説明】
【0101】
10:逆浸透膜
20:供給スペーサ
30:トリコット濾過水路
40:チューブ
100:支持体
200:ポリスルホン層
300:活性層
400:塩水
500:精製水
600:濃縮水
700:支持層
t:逆浸透膜のZ軸方向(厚さ方向)