(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】ガラス被覆蛍光骨材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 14/22 20060101AFI20220118BHJP
C01G 9/08 20060101ALI20220118BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20220118BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20220118BHJP
C09K 11/56 20060101ALI20220118BHJP
【FI】
C04B14/22
C01G9/08
C04B28/02
C09K11/08 G
C09K11/56
(21)【出願番号】P 2018021105
(22)【出願日】2018-02-08
【審査請求日】2020-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】今井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】海崎 純男
(72)【発明者】
【氏名】日置 亜也子
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05271754(US,A)
【文献】特許第3247299(JP,B2)
【文献】特開2000-027114(JP,A)
【文献】特開2012-131647(JP,A)
【文献】特開平11-293238(JP,A)
【文献】特開2000-203904(JP,A)
【文献】特開平10-273657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 11/00-19/00
B28B 1/00-1/54
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
C09K 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を受けて蛍光を発する蛍光コンクリート部材であって、
セメント硬化体と、
前記セメント硬化体の表面に埋め込まれ、ガラスと、前記ガラス内に分散した硫化物系蛍光材と、
前記ガラスをコーティングする透光性の樹脂膜と、を備え、SiO
2濃度が31.5wt%以上49wt%以下であるガラス被覆蛍光骨材
と、を備えることを特徴とする蛍光コンクリート部材。
【請求項2】
励起光を受けて蛍光を発するガラス被覆蛍光骨材
がセメント硬化体の表面に埋め込まれた蛍光コンクリート部材の製造方法であって、
硫化物系蛍光材と廃瓶ガラスの粉末とを、前記廃瓶ガラスの粉末が内割で45wt%以上70wt%以下の範囲で含まれるように混合する工程と、
前記混合された材料を不活性雰囲気または還元雰囲気下800℃以上950℃以下で焼成する工程と、
前記焼成された材料を冷却し、前記冷却により得られた固化体を破砕して、SiO
2を31.5wt%以上49wt%以下含有するガラスと前記硫化物系蛍光材とで実質的に形成される
混合体を生成する工程と、
前記混合体を透光性の樹脂膜でコーティングしてガラス被覆蛍光骨材を生成する工程と、
型枠に、水/セメント比0.35ないし0.40で混練したセメントペーストまたは砂を混ぜたセメントモルタルを充填する工程と、
セメントペーストまたはセメントモルタルが固まらないうちに、前記充填されたセメントペーストまたはセメントモルタルの表面に前記ガラス被覆蛍光骨材を埋め込む工程と、を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項3】
前記焼成する工程では、外燃式の炉を用いることを特徴とする請求項
2記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励起光を受けて蛍光を発するガラス被覆蛍光骨材およびその製造方法ならびに蛍光コンクリート部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蛍光体は、標識、自動車、鉄道、航空部品、建材、玩具、雑貨等、多種多様な用途に用いられている。そして、例えば、アルミン酸ストロンチウム系蛍光材のように水に曝されると加水分解し機能が劣化する蛍光材は、特許文献1に記載されるようにガラスとの複合体に用いることが提案されている。
【0003】
また、蛍光材として特許文献2、3に開示されているような硫化物系のものも知られている。水や酸素との接触により機能が劣化することは、アルミン酸ストロンチウム系蛍光材の場合と共通である。この耐候性を改善するため、他の材料との複合体として用いられることが知られている。例えば、特許文献4には、ガラスビーズの基材層の表面に硫化物系蛍光材を用いた蛍光体層を設けたものが開示されている。また、特許文献2には、ポリマーからなるプラスチックを用いたもの、特許文献5には、硫化物系蛍光材の粉末をガラス板に挟んだものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公平06-062940号公報
【文献】特許第5738299号
【文献】特許第2933791号
【文献】特開2005-307717号公報
【文献】特表2007-523221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の硫化物系蛍光材として、例えばZnSにCuをアクティベータとして添加したものが知られている。このような材料は、外気に曝され続けると酸化および加水分解し、蛍光特性の劣化が徐々に進行する。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、酸化および加水分解による蛍光特性の劣化を防止でき、屋外に設置される部材に用いることができるガラス被覆蛍光骨材およびその製造方法ならびに蛍光コンクリート部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記の目的を達成するため、本発明のガラス被覆蛍光骨材は、ガラスと、前記ガラス内に分散した硫化物系蛍光材と、を備え、SiO2濃度が31.5wt%以上49wt%以下であることを特徴としている。これにより、酸化および加水分解による蛍光特性の劣化を防止でき、屋外でコンクリートに埋め込んで用いることができる。
【0008】
(2)また、本発明のガラス被覆蛍光骨材は、前記ガラスをコーティングする透光性の樹脂膜を更に備えることを特徴としている。このようにガラスが樹脂で覆われているため、外気が蛍光材と接触し難くなり、蛍光特性の劣化を防止できる。
【0009】
(3)また、本発明の蛍光コンクリート部材は、励起光を受けて蛍光を発する蛍光コンクリート部材であって、セメント硬化体と、前記セメント硬化体の表面に埋め込まれた上記(1)または(2)のガラス被覆蛍光骨材と、を備えることを特徴としている。これにより、蛍光特性の劣化を防止した蛍光コンクリート部材を実現できる。
【0010】
(4)また、本発明のガラス被覆蛍光骨材の製造方法は、励起光を受けて蛍光を発するガラス被覆蛍光骨材の製造方法であって、硫化物系蛍光材と廃瓶ガラスの粉末とを、前記廃瓶ガラスの粉末が内割で45wt%以上70wt%以下の範囲で含まれるように混合する工程と、前記混合された材料を不活性雰囲気または還元雰囲気下800℃以上950℃以下で焼成する工程と、前記焼成された材料を冷却し、前記冷却により得られた固化体を破砕して、SiO2を31.5wt%以上49wt%以下含有するガラスと前記硫化物系蛍光材とで実質的に形成されるガラス被覆蛍光骨材を生成する工程と、を含むことを特徴としている。これにより、蛍光特性の劣化を防止しつつ、蛍光骨材のコンクリートからの脱落を防止してガラス被覆蛍光骨材を製造できる。
【0011】
(5)また、本発明のガラス被覆蛍光骨材の製造方法は、前記焼成する工程では、外燃式の炉を用いることを特徴としている。これにより、雰囲気を制御し、不活性雰囲気または還元雰囲気で焼成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、酸化および加水分解による蛍光特性の劣化を防止でき、屋外に設置される部材に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)、(b)それぞれ本発明のガラス被覆蛍光骨材および蛍光コンクリート部材を示す断面図である。
【
図2】(a)、(b)それぞれ樹脂膜を有するガラス被覆蛍光骨材を示す断面図および表面に樹脂膜を有する蛍光コンクリート部材である。
【
図3】(a)、(b)それぞれ特定の配合で形成されたガラス被覆蛍光骨材の発光スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
(ガラス被覆蛍光骨材の構成)
図1(a)は、ガラス被覆蛍光骨材100を示す断面図である。
図1(a)に示すように、ガラス被覆蛍光骨材100は、実質的にガラス110と硫化物系蛍光材120とで形成されている。「実質的に」とは、これら以外に不純物を含んでもよいことを意味する。ガラス110内に硫化物系蛍光材120が分散しているため、ガラス被覆蛍光骨材100には、硫化物系蛍光材120がガラス110で被覆されている。その結果、コンクリートに埋め込んで用いる等、屋外用の材料として用いても硫化物系蛍光材120が直接大気に露出せず、酸化および加水分解が防止されるため長期間にわたり蛍光特性の劣化を防止できる。
【0016】
ガラス被覆蛍光骨材100の平均粒径は、2mm以上10mm以下であることが好ましい。コンクリートに埋設されるため道路の中央や横断歩道線の表示のための塗料などに用いられる硫化物系蛍光材120のガラス固化材よりも粒径が大きいことが好適である。
【0017】
ガラス被覆蛍光骨材100は、SiO2を31.5wt%以上49wt%以下含有している。ガラス被覆蛍光骨材100にケイ酸分が多いと、コンクリート部材に埋設した際にセメント硬化体のアルカリとガラス被覆蛍光骨材100のケイ酸分が反応して、いわゆるアルカリ骨材反応が顕著になり、ガラス被覆蛍光骨材100がコンクリート部材から脱落するリスクが高まる。ガラス被覆蛍光骨材100は、SiO2含有率が49wt%以下なのでセメント硬化体とSiO2との間にアルカリ骨材反応が生じない。
【0018】
ガラス被覆蛍光骨材100のSiO2の含有率は技術的な効果の面ではいくらでも低減することができるが、その分、硫化物系蛍光材120の割合が増加する。SiO2含有率を31.5wt%以上とすることで、硫化物系蛍光材120の量を抑え材料のコストを低減できる。
【0019】
硫化物系蛍光材120には、Cuをアクティベータとする硫化亜鉛(ZnS)を用いることができる。硫化亜鉛(ZnS)が入手容易であり好ましいが、硫化カルシウム(CaS)、硫化マグネシウム(MgS)、硫化ストロンチウム(SrS)、硫化バリウム(BaS)を用いてもよい。硫化物系蛍光材120は、数~数十μmの粒径を有している。
【0020】
蛍光は励起光の照射を止めると直ちに消光するのに対して、蓄光は励起光が途絶えた後も発光が持続する現象である。このように厳密には蛍光と蓄光は異なる現象を指すが、「蛍光材」には、蛍光性を有するもののみならず蓄光性を有するものも含まれる。道路での表示に用いられる場合には、励起光が照射されてから長時間残光を生じることが好ましく、その点では蓄光性であることが適している。また、硫化物系蛍光材120は、道路での発光を検知しやすいように例えば波長430~580nmの黄色の光を発する種類であることが好ましい。
【0021】
(ガラス被覆蛍光骨材の製造方法)
上記のように構成されるガラス被覆蛍光骨材100の製造方法の一例を説明する。まず、硫化物系蛍光材120と透光性の廃瓶ガラスの粉末とを、廃瓶ガラスの粉末が内割で45wt%以上70wt%以下の範囲で含まれるように混合する。硫化物系蛍光材120には、市販の材料(例えばネモトルミマテリアル社製蓄光顔料GSS)を用いることができる。瓶ガラスには、ソーダガラスと呼ばれる材料が用いられ、SiO2とCaOとNa2Oの3成分で主成分の大半が占められている。
【0022】
次に、混合された材料を不活性雰囲気または還元雰囲気下、好ましくは不活性雰囲気下800℃以上950℃以下で焼成する。具体的には、例えば窒素雰囲気で焼成可能である。このように焼成は、ガラス粉末が溶けて硫化物系蛍光材120が十分に被覆される条件で行う。特に廃瓶ガラスを用いて硫化物系蛍光材120を被覆すれば、ガラス被覆蛍光骨材100を低コストで製造できる。なお、焼成する工程では、外燃式の炉(キルン)を用いることが好ましい。これにより、雰囲気の制御を行い、不活性雰囲気または還元雰囲気で焼成することができる。
【0023】
次に、焼成された材料を冷却し、冷却により得られた固化体を破砕する。その結果、SiO2を31.5wt%以上49wt%以下含有するガラス被覆蛍光骨材100が得られる。このように、市販の硫化亜鉛系の蓄光材を廃ガラスの粉末と混合し、不活性雰囲気または還元雰囲気中で850ないし950℃で焼成すると、蛍光性を保持し、無機ガラスで被覆された蛍光骨材が簡便に得られる。そして、蛍光特性の劣化を防止しつつ、蛍光骨材のコンクリートからの脱落を防止できる。
【0024】
(蛍光コンクリート部材の構成)
上記のガラス被覆蛍光骨材100は、コンクリート部材に埋設して用いることもできる。
図1(b)は、蛍光コンクリート部材200の構成を示す断面図である。
図1(b)に示すように、蛍光コンクリート部材200は、セメント硬化体210とガラス被覆蛍光骨材100とを備えており、セメント硬化体210の表面に埋め込まれたガラス被覆蛍光骨材100の部分が励起光を受けて蛍光を発する。このような蛍光コンクリート部材200は、道路上や道路の両脇の舗装に用い、誘導や注意喚起の表示に用いることができる。特に、道路両脇であれば表面が摩耗しにくいため好適である。セメント硬化体210には、ガラス被覆蛍光骨材100の他に川砂等の細骨材を混合してもよい。
【0025】
蛍光コンクリート部材200の厚さは、10mm以上50mm以下であることが好ましい。これにより、強度を維持しつつ適度にガラス被覆蛍光骨材100を埋め込むことができる。また、セメント硬化体210は、水/セメント比が0.35以上0.50以下で混合された結果形成されていることが好ましい。これにより、蛍光による光の取出し量を確保するとともに、部材としての強度を維持できる。
【0026】
セメント硬化体210は、石灰を主成分とする結合材であり、石灰石や粘土などを粉砕し、か焼、焼成して製造される。セメント硬化体210には、普通ポルトランドセメントを用いることが好ましいが、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、高炉セメント、シリカセメント等であってもよい。蛍光機能を有するコンクリート部材として用いることができるため、そのまま蛍光コンクリート部材200を道路の一部として設置でき、道路へ適用しやすい。
【0027】
(蛍光コンクリート部材の製造方法)
上記のように構成された蛍光コンクリート部材200の製造方法を説明する。矩形の型枠を準備し、型枠に、水/セメント比0.35ないしは0.40で混練したセメントペーストまたは砂を混ぜたセメントモルタルを充填する。そして、流し込んだ材料をプレス板により押さえながら振動を与える。
【0028】
その後セメントペーストまたはセメントモルタルが固まらないうちに、表面にガラス被覆蛍光骨材100を埋め込む。セメントペーストまたはセメントモルタル表面にばらまくことで、ガラス被覆蛍光骨材100は露出面を残してセメント硬化体210に埋め込まれる。
【0029】
そして、そのまま材料を養生室へ運び所定の期間、養生する。セメント材料が硬化した後型枠を取り除くことでガラス被覆蛍光骨材100がセメント硬化体210に埋設された蛍光コンクリート部材200を生成できる。なお、上記の例では、流し込んだ材料にガラス被覆蛍光骨材100を埋め込むが、ガラス被覆蛍光骨材100を型枠底面にばらまき、そのガラス被覆蛍光骨材の隙間を充填するようにセメントモルタルを流し込んでもよい。
【0030】
[第2の実施形態]
上記の実施形態では、ガラス被覆蛍光骨材100は、ガラス110と硫化物系蛍光材120との混合体そのものであるが、ガラス110と硫化物系蛍光材120との混合体が透光性の樹脂膜330でコーティングされていることがさらに好ましい。
図2(a)は、樹脂膜330を有するガラス被覆蛍光骨材300の構成を示す断面図である。ガラス被覆蛍光骨材300は、ガラス110と硫化物系蛍光材120との混合体が樹脂膜330で覆われているため、外気が硫化物系蛍光材120と接触し難くなり、硫化物系蛍光材120の蛍光特性の劣化を防止できる。また、
図2(b)は、表面に樹脂膜330を有する蛍光コンクリート部材400である。
図2(b)に示すように、ガラス被覆蛍光骨材100がセメント硬化体210中に分散、埋設された蛍光コンクリート部材本体を樹脂膜330で被覆して蛍光コンクリート部材400を形成することもできる。
【0031】
樹脂膜330は、透光性を有し、可視光を透過する。「透光性」とは、「透明」のように光が透過する場合だけでなく、透過する光が拡散され、磨りガラスや乳白色のようにその材質を通して向こう側の形状等を明確に認識できない場合も含む。
【0032】
樹脂膜330の材料は、励起光として350~450nmの波長の光が透過するものが好ましい。特に波長350nm以上370nm以下の励起光に対する透過性に優れていることが好ましい。これにより、樹脂膜330は励起光を透過させ蛍光を生じさせる。樹脂膜330は、例えばウレタンやアクリル、ポリエステルを主原料とした樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂などで形成できる。
【0033】
[実験および評価]
上記の製造方法に沿って、ガラス被覆蛍光骨材の蛍光材含有率が、50wt%および30wt%のものをそれぞれ作製し、蛍光スペクトルを測定した(JIS K 0120)。それぞれのSiO
2含有率は、34.7%および48.5%であった。
図3(a)は、蛍光材含有率50wt%のガラス被覆蛍光骨材の発光スペクトルを示すグラフである。
図3(b)は、蛍光材含有率30wt%のガラス被覆蛍光骨材の発光スペクトルを示すグラフである。
【0034】
(実施例1)
硫化亜鉛系の蛍光材にはネモトルミマテリアル社製の蓄光顔料GSSを使用した。無機ガラス組成物には、ボールミルで粒径50μm以下にまで粉砕した透明の瓶ガラスを使用した。上記の蛍光材50質量部と無機ガラス組成物50質量部とを混合し(配合(1))、次に、その混合原料を用いて、一軸加圧成形機により成形し、直径40mm、高さ10mmの円盤状のペレットを作製した。
【0035】
雰囲気式高速昇温電気炉((株)モトヤマ社製SBA-2025D)により、窒素雰囲気下、850℃に1時間保持することでガラス被覆蛍光骨材を得た。窒素ガスには、窒素濃度99.95パーセントの工業用グレードのものを用い、毎分1.8リットルで流通させた。冷却後、ガラス被覆蛍光骨材の発光スペクトルを測定したところ、励起波長350nmで発光波長518nmにピークを有する黄色の蛍光を発現した(
図3(a))。ガラス被覆蛍光骨材は蓄光特性を保持した。
【0036】
(実施例2)
焼成雰囲気を還元ガスとした以外は、実施例1と同様にして、850℃に1時間保持することでガラス被覆蛍光骨材を得た。還元ガスには、水素3体積パーセント、窒素97パーセントの混合ガスを用いた。冷却後、ガラス被覆蛍光骨材の発光スペクトルを測定したところ、励起波長350nmで発光波長464および511nmの黄色の蛍光を発現した(
図3(a))。得られたガラス被覆蛍光骨材は、実施例1と同様に蓄光特性を保持した。
【0037】
(比較例1)
実施例1と同様にしてペレットを作製し、炉底昇降式電気炉((株)モトヤマ社製NHV-1515D)により、大気雰囲気下、850℃に1時間保持することでガラス被覆蛍光骨材を得た。冷却後、このガラス被覆蛍光骨材の発光スペクトルを測定したところ、励起波長350nmで発光波長521nmの蛍光を発現した(
図3(a))。しかしながら、実施例1および実施例2と比較すると、黄色の蓄光発光は著しく低下した。
【0038】
(実施例3)
硫化亜鉛系の蓄光材30質量部と無機ガラス組成物70質量部とを混合し(配合(2))、実施例1と同様にして円盤状のペレットを作製し、窒素雰囲気下、850℃に1時間保持することでガラス被覆蛍光骨材を得た。ガラス被覆蛍光骨材の発光スペクトルを測定したところ、励起波長350nmで発光波長518nmにピークを有する黄色の蛍光を発現した(
図3(b))。得られたガラス被覆蛍光骨材は蓄光特性を保持した。
【0039】
(実施例4)
焼成雰囲気を還元ガスとした以外は、実施例3と同様にして、850℃に1時間保持することでガラス被覆蛍光骨材を得た。冷却後、得られたガラス被覆蛍光骨材の発光スペクトルを測定したところ、励起波長350nmで発光波長466および511nmの黄色の蛍光を発現した(
図3(b))。このガラス被覆蛍光骨材は、実施例3と同様に蓄光特性を保持した。
【0040】
[比較例2]
実施例3と同様にしてペレットを作製し、炉底昇降式電気炉((株)モトヤマ社製NHV-1515D)により、大気雰囲気下、850℃に1時間保持することでガラス被覆蛍光骨材を得た。冷却後、得られたガラス被覆蛍光骨材の発光スペクトルを測定したところ、励起波長350nmで発光波長517nmの蛍光を発現した(
図3(b))。しかしながら、硫化物系の蓄光材の割合を高めた場合も、実施例3および実施例4と比較すると、黄色の蓄光発光は大きく低下した。
【0041】
以上から、本発明のガラス被覆蛍光骨材の製造方法は、硫化物系の蓄光材を用いても、加水分解および酸化による劣化を抑制できるため、屋外での使用可能な蛍光材を製造できることができる。市販の硫化物系蓄光材ZnS(Cu)でも、同様のガラス被覆が可能かどうかを検討した。アルミン酸ストロンチウム系よりも安価な硫化亜鉛系の蓄光体の無機ガラスによる被覆を実現した。煩雑な工程を必要とすることなく、屋外での使用に耐えうる蓄光骨材が提供できる。
【符号の説明】
【0042】
100 ガラス被覆蛍光骨材
110 ガラス
120 硫化物系蛍光材
200、400 蛍光コンクリート部材
210 セメント硬化体
300 ガラス被覆蛍光骨材
330 樹脂膜