(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220119BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/14 611
(21)【出願番号】P 2017074904
(22)【出願日】2017-04-05
【審査請求日】2020-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2016112308
(32)【優先日】2016-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016225515
(32)【優先日】2016-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】吉池 祐尚
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-080714(JP,A)
【文献】特開2002-273894(JP,A)
【文献】特開2012-187831(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0001128(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0116738(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するヘッド本体部と、
前記ヘッド本体部のフレーム部材に取り付けられたカバー部材と、を備え、
前記フレーム部材の前記カバー部材を取り付ける面側には、前記カバー部材の周面に沿って、前記カバー部材の周面に対向するリブが設けられ、
前記リブは、前記フレーム部材の外周部の全周に亘って形成され、
前記リブの周面を含む少なくとも前記フレーム部材の2面と前記カバー部材の周面を含む前記カバー部材の2面との間に、前記リブの全周に亘って封止剤が配され
、
前記リブと前記カバー部材を取り付ける面との間には段差部が設けられている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記リブの内周面と前記カバー部材の外周面との間が前記封止剤で封止されている
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記封止剤は、前記フレーム部材と前記カバー部材とを接合している接着剤である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記フレーム部材の外周部にはフランジ部が設けられ、
前記フランジ部に前記リブが設けられている
ことを特徴とする請求項1ないし
3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド
。
【請求項5】
前記カバー部材の周面と前記リブの周面との間と、前記フレーム部材の前記カバー部材を取り付ける面と前記カバー部材との間とに亘って、前記封止剤が配されている
ことを特徴とする請求項1ないし
4のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記フレーム部材の外側面には凹部が設けられている
ことを特徴とする請求項1ないし
5のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記凹部は、前記フレーム部材の外側面の全周に亘って帯状に設けられている
ことを特徴とする請求項
6に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記カバー部材は、前記ヘッド本体部の前記フレーム部材上に配置される電気回路基板を覆っている
ことを特徴とする請求項1ないし
7のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記電気回路基板にはケーブルが接続されるコネクタが設けられており、
前記コネクタは、前記フレーム部材の前記カバー部材を取り付ける面の法線方向において、前記ヘッド本体部側とは反対側に配置されている
ことを特徴とする請求項
8に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
液体を吐出するヘッド本体部と、
前記ヘッド本体部のフレーム部材に取り付けられたカバー部材と、を備え、
前記フレーム部材の前記カバー部材を取り付ける面側には、前記カバー部材の周面に沿って、前記カバー部材の周面に対向するリブが設けられ、
前記リブは、前記フレーム部材の外周部の全周に亘って形成され、
前記リブの周面を含む少なくとも前記フレーム部材の2面と前記カバー部材の周面を含む前記カバー部材の2面との間に、前記リブの全周に亘って封止剤が配され、
前記カバー部材は、前記ヘッド本体部の前記フレーム部材上に配置される電気回路基板を覆っている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを含むことを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項12】
前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構の少なくともいずれか一つと前記液体吐出ヘッドとを一体化した
ことを特徴とする請求項11に記載の液体吐出ユニット。
【請求項13】
前記液体吐出ヘッドは前記フレーム部材の外周部にフランジ部を有し、
前記フランジ部は、前記液体吐出ヘッドを搭載するヘッド搭載部材に設けられた開口部に前記ヘッド本体部を嵌め込んで搭載するときに前記開口部の全域を覆う
ことを特徴とする請求項11又は12に記載の液体吐出ユニット。
【請求項14】
請求項1ないし10のいずれかに記載の液体吐出ヘッド、又は、請求項11ないし13のいずれかに記載の液体吐出ユニットを備えていることを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッドとして、複数の部品(部材)を接合して構成する場合、接合部位から内部に液体が侵入することを防止する必要がある。
【0003】
従来、液滴を吐出するヘッドとヘッドに供給するインクを収容するヘッドタンクとが一体化され、ヘッドと接続する電子部品が実装された電気回路基板がヘッドとヘッドタンクとの間に介装され、ヘッドの液滴吐出側を下方にしたとき、ヘッドタンクの上部側からヘッドタンクの周囲及び電気回路基板の周囲を覆うヘッドカバーが設けられたものがある(特許文献1)。
【0004】
また、ヘッド本体が接合される際にヘッド本体の接合部材側の面に当接される部材が挿通される挿入孔、及び液体が貯留されている貯留手段と圧力発生室とを繋ぐ液体流路の一部を構成する連通路を有する接合部材に固定され、連通路と共に液体流路を構成する供給路を有する流路部材を具備し、接合部材には、連通路の供給路側の開口周縁部に、連通路と供給路とを液密に連通させるように供給路側に突出するシール用リブが設けられ、接合部材の流路部材側の面には、接合部材の周縁から当該面に進入する液体が挿入孔に達しないように挿入孔を取り囲むと共に流路部材側に突出する防液用リブが設けられているものがある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-189636号公報
【文献】特開2009-184213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、液体吐出ヘッドのヘッド本体部のフレーム部材に、液供給路部材や電気部品を保持して、フレーム部材に接合したカバー部材(カバー)で覆うように構成した場合、カバー部材とフレーム部材との接合部位から液体が内部に侵入することを防止しなければならないという課題がある。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、フレーム部材とカバー部材との間から液体が内部に侵入することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の請求項1に係る液体吐出ヘッドは、
液体を吐出するヘッド本体部と、
前記ヘッド本体部のフレーム部材に取り付けられたカバー部材と、を備え、
前記フレーム部材の前記カバー部材を取り付ける面側には、前記カバー部材の周面に沿って、前記カバー部材の周面に対向するリブが設けられ、
前記リブは、前記フレーム部材の外周部の全周に亘って形成され、
前記リブの周面を含む少なくとも前記フレーム部材の2面と前記カバー部材の周面を含む前記カバー部材の2面との間に、前記リブの全周に亘って封止剤が配され、
前記リブと前記カバー部材を取り付ける面との間には段差部が設けられている
構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、フレーム部材とカバー部材との間から液体が内部に侵入することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明jの第1実施形態に係る液体吐出ヘッドの斜視説明図である。
【
図5】同じく
図4のX1-X1線に沿う要部断面説明図である。
【
図6】同ヘッドをヘッド搭載部材に搭載した状態の側面説明図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドの要部断面説明図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドの側面説明図である。
【
図11】同じくノズル配列方向と直交する方向に沿う要部断面説明図である。
【
図13】同じくノズル配列方向に沿う要部断面説明図である。
【
図14】本発明の第4実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観斜視説明図である。
【
図15】同ヘッドのカバー部材を取り外した状態の概略斜視説明図である。
【
図16】同ヘッドのヘッド本体部の斜視説明図である。
【
図18】同ヘッドのカバー部材をヘッド本体側から見た斜視説明図である。
【
図19】本発明の第5実施形態に係る液体吐出ヘッドの平面説明図である。
【
図20】同じく
図19のX2-X2線に沿う要部断面説明図である。
【
図21】本発明の第6実施形態に係る液体吐出ヘッドの側面説明図である。
【
図23】本発明に係る液体を吐出する装置の一例の要部平面説明図である。
【
図25】本発明に係る液体吐出ユニットの他の例の要部平面説明図である。
【
図26】本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例の正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドについて
図1ないし
図5を参照して説明する。
図1は同ヘッドの斜視説明図、
図2は同じく側面説明図、
図3は同じくヘッド本体部の斜視説明図、
図4は同じく平面説明図、
図5は同じく
図4のX1-X1線に沿う要部断面説明図である。
図6は同ヘッドをヘッド搭載部材に搭載した状態の側面説明図である。
【0012】
この液体吐出ヘッド100は、ヘッド本体部101とカバー部材102とを備えている。カバー部材102は、ヘッド本体部101上に配置される液供給路部材や電気部品(電気回路基板)を覆っている。電気回路基板には、リジッド回路基板やフレキシブル回路基板が含まれる。
【0013】
ヘッド本体部101は、液体を吐出する液体吐出部111と、液体を吐出するノズル面111aと反対側に配置され、例えば液体吐出部111に液体を供給する共通液室などを形成する部材を兼ねるフレーム部材112とを備えている。
【0014】
ここで、フレーム部材112には、外周部にフランジ部(鍔部)112aが設けられている。
【0015】
フランジ部112aは、
図6に示すように、キャリッジやベース部材などのヘッド搭載部材400に設けられた開口部400aにヘッド本体部101を嵌め込んで搭載するときに、ヘッド搭載部材400に保持されるとともに、開口部400aを覆う部分である。
【0016】
本実施形態では、ヘッド本体部101の外周部全周に亘ってフランジ部112aを形成して開口部400aを覆うようにしている。フランジ部112aで開口部400aの全域を覆うことで、ヘッド本体部101と開口部400aとの隙間からミストがヘッド本体部101の側面に付着して、ヘッド本体部101の内部に侵入することを抑制できる。
【0017】
ここで、ヘッド本体部101のフレーム部材112のフランジ部(鍔部)112aのノズル面111aと反対側の面が、カバー部材102を取り付ける取り付け面112bとなる。
【0018】
このフレーム部材112の取り付け面112bには、カバー部材102の周面(本実施形態では外周面)に沿って全周に亘ってリブ121が設けられている。そして、
図5に示すように、フレーム部材112の取り付け面112bにカバー部材102の接合面102aを接着剤104で接合している。
【0019】
本実施形態では、この接着剤104を封止剤として兼用し、カバー部材102の外周面とリブ121の内周面との間を封止している。
【0020】
これにより、ヘッド本体部101のフレーム部材112とカバー部材102との隙間から内部に液体が侵入することを確実に防止できる。したがって、カバー部材102の内部に配置される電気電子回路基板などの電気電子部品の破損を防止することができる。
【0021】
さらに、本実施形態では、接着剤104を封止剤として兼用しているので、封止剤(ここでは接着剤)104は、カバー部材102の接合面102aとフレーム部材112の取り付け面112bとの隙間、及び、カバー部材102の外周面とリブ121の内周面との隙間に亘って配されるので、
図5に示されるように、封止剤104で封止される領域は屈曲した構造となる。
【0022】
これにより、カバー部材102の外周面とリブ121の内周面の隙間のみを封止するものと比べて、液体の内部侵入に対する経路が増加することで、より確実に液体侵入を防止できる。
【0023】
また、本実施形態のように、フレーム部材112のリブ121がカバー部材102の外周側に配置される構成とすることで、封止剤(ここでは接着剤104)がフレーム部材112の外周に流れ出し難くなる。
【0024】
また、本実施形態では、ヘッド本体部101の外周全周に亘ってフランジ部112aを形成し、さらにフランジ部112aの周縁の全周に亘ってリブ121が形成されていることで、フレーム部材112の外周面に付着した液体が、カバー部材102との接合部位まで到達し難くなる。
【0025】
なお、本実施形態では、カバー部材102の外周面とリブ121の内周面との間は、カバー部材102とフレーム部材112とを接合している接着剤104で封止しているが、接着剤以外の封止剤で封止する構成とすることもできる。封止剤は、ゴム材料等の弾性材料からなるシール部材でもよい。
【0026】
また、本実施形態では、カバー部材102をヘッド本体部101のフレーム部材112に接着剤104で接合して取り付けているが、カバー部材102のフレーム部材112への取り付け構造は接合に限られない。
【0027】
例えば、カバー部材102の外周にフランジ部を設けて、カバー部材102のフランジ部をフレーム部材112の取り付け面112bにねじ止めする構造、カバー部材102及びフレーム部材112の一方に凹部を、他方に凸部を設けて凹凸嵌合する構造などとすることもできる。
【0028】
これらのねじ止めや凹凸嵌合の構造にあっては、カバー部材102の外周面とリブ121の内周面との間はエポキシ樹脂などの封止剤で封止する。
【0029】
この場合であっても、カバー部材102の接合面(フランジ部又は凹部/凸部が設けられた面)とフレーム部材112の取り付け面112bとの隙間、及び、カバー部材102の外周面とリブ121の内周面の隙間に亘って、封止剤104を配することもできる。
【0030】
次に、本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドについて
図7を参照して説明する。
図7は同ヘッドの
図5と同様な要部断面説明図である。
【0031】
本実施形態では、フレーム部材112の取り付け面112bとリブ121との間に段差部122を設けている。カバー部材102にはこの段差部122に対応して接合面102aが段差形状に形成されている。
【0032】
これにより、フレーム部材112とカバー部材102との接合面積が多くなり、液体の内部侵入に対する経路が増加することで、より確実に液体侵入を防止できる。
【0033】
特に、溶剤系液体を使用する場合、接着剤を溶かしてしまうものも存在する。そこで、接合面積を長くすることで、表面側に付着した溶剤に対し、耐久性の向上を図ることができる。
【0034】
次に、本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドについて
図8及び
図9を参照して説明する。
図8は同ヘッドの側面説明図、
図9は同じくヘッド本体部の斜視説明図である。
【0035】
本実施形態では、フレーム部材112の外側面に複数の凹部123を設けている。
【0036】
これにより、ノズル面111a付近を洗浄液にデイッピングして洗浄する場合、洗浄液がフレーム部材112の外周面を伝ってカバー部材102との接合部位に至ることを抑制することができる。
【0037】
次に、ヘッド本体部の一例について
図10ないし
図13を参照して説明する。
図10は同ヘッド本体部の斜視説明図、
図11は同じくノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図、
図12は
図11の要部拡大断面説明図、
図13は同じくノズル配列方向に沿う要部断面説明図である。
【0038】
ヘッド本体部は、ノズル板1と、流路板2と、振動板3と、圧力発生素子である圧電素子11と、保持基板50とで構成される液体吐出部111と、フレーム部材112とを備えている。
【0039】
ここで、流路板2、振動板3及び圧電素子11を併せた部分を流路基板(流路部材)20と称する。ただし、流路基板20として独立の部材が形成された後にノズル板1や保持基板50と接合されることまで意味するものではない。
【0040】
ノズル板1には、液体を吐出する複数のノズル4が形成されている。ここでは、ノズル4を配列したノズル列を4列配置した構成としている。
【0041】
流路板2は、ノズル板1及び振動板3とともに、ノズル4が通じる個別液室6、個別液室6に通じる流体抵抗部7、流体抵抗部7が通じる液導入部8を形成している。
【0042】
この液導入部8は振動板3の開口部9と保持基板50の流路となる開口部51を介してフレーム部材112で形成される共通液室10に通じている。
【0043】
振動板3は、個別液室6の壁面の一部をなす変形可能な振動領域30を形成している。そして、この振動板3の振動領域30の個別液室6と反対側の面には、振動領域30と一体的に圧電素子11が設けられ、振動領域30と圧電素子11によって圧電アクチュエータ構成している。
【0044】
圧電素子11は、振動領域30側から下部電極13、圧電層(圧電体)12及び上部電極14を順次積層形成して構成している。この圧電素子11上には絶縁膜21が形成されている。
【0045】
複数の圧電素子11の共通電極となる下部電極13は、共通配線15を介して共通電極電源配線パターン502に接続されている。なお、下部電極13は、
図4に示すように、ノズル配列方向ですべての圧電素子11に跨って形成される1つの電極層である。
【0046】
また、圧電素子11の個別電極となる上部電極14は、個別配線16を介して駆動回路部である駆動IC(以下、「ドライバIC」という。)500に接続されている。
【0047】
ドライバIC500は、圧電素子列の列間の領域を覆うように流路基板20にフリップチップボンディングなどの工法により実装されている。
【0048】
流路基板20に搭載されたドライバIC500は、駆動波形(駆動信号)が供給される個別電極電源配線パターン501と接続されている。
【0049】
配線部材60は、先端部が保持基板50に接着剤接合などで固定され、ワイヤボンディングを介して流路基板20上の配線電極に接続されてドライバIC500と電気的に接続されており、配線部材60の他端側は装置本体側の制御部に接続される。フレーム部材112には配線部材60を通すスリット125が設けられている。
【0050】
配線部材60は、フレーム部材112上に配置されたPCBなどの電気回路基板を介して装置本体側の制御基板に接続される。この電気回路基板及び配線部材60は、フレーム部材112に接合されるカバー部材で覆われている。
【0051】
そして、流路基板20上には、前述したように共通液室10と個別液室6側を通じる流路となる開口部51、圧電素子11を収容する凹部52、ドライバIC500を収容する開口部53などが形成された保持基板50を設けている。
【0052】
この保持基板50は、接着剤によって流路基板20の振動板3側に接合されている。
【0053】
フレーム部材112は、各個別液室6に液体を供給する共通液室10を形成する。なお、共通液室10は4つのノズル列に対応してそれぞれ設けられる。また、外部からの液体供給口71を介して共通液室10に所要の色の液体が供給される。
【0054】
フレーム部材112には、ダンパ部材90が接合されている。ダンパ部材90は、共通液室10の一部の壁面を形成する変形可能なダンパ91と、ダンパ91を補強するダンパプレート92とを有している。
【0055】
フレーム部材112はノズル板1の外周部と接合され、圧電素子11を含む流路基板20及び保持基板50を収容して、このヘッドのフレームを構成している。
【0056】
そして、ノズル板1の周縁部及びフレーム部材112の外周面の一部を覆う保護部材45を設けている。
【0057】
この液体吐出ヘッドにおいては、ドライバIC500から圧電素子11の上部電極14と下部電極13の間に電圧を与えることで、圧電層12が電極積層方向、すなわち電界方向に伸張し、振動領域30と平行な方向に収縮する。
【0058】
このとき、下部電極13側は振動領域30で拘束されているため、振動領域30の下部電極13側に引っ張り応力が発生し、振動領域30が個別液室6側に撓み、内部の液体を加圧することで、ノズル4から液体が吐出される。
【0059】
次に、本発明の第4実施形態に係る液体吐出ヘッドについて
図14ないし
図18を参照して説明する。
図14は同ヘッドの外観斜視説明図、
図15は同ヘッドのカバー部材を取り外した状態の概略斜視説明図、
図16は同ヘッドのヘッド本体部の斜視説明図、
図17は同ヘッド本体部の平面説明図、
図18は同ヘッドのカバー部材をヘッド本体側から見た斜視説明図である。
【0060】
本実施形態の液体吐出ヘッド100は、ヘッド本体部101とカバー部材102とを備えている。
【0061】
カバー部材102の内部には、ヘッド本体部101上に配置される液体供給路部材201及びプリント基板(配線部材)202などが配置されている。例えば、プリント基板202は、装置本体の制御部が実装されたメイン基板とヘッド本体部101の圧電素子に接続する配線部材60(
図13参照)とを中継する電気回路基板であり、電源電圧や制御信号をヘッド本体部101の駆動回路に与える回路パターンが設けられている。なお、電気回路基板としてのプリント基板202は、リジッド回路基板及びフレキシブル回路基板のいずれであってもよい。
【0062】
液体供給部材201は、外部の液体貯留手段などに接続される入口ポート203を有し、ヘッド本体部112の液体供給口71に連結される内部流路(液体供給路)を有し、外部から供給される液体をヘッド本体部112に供給する。
【0063】
プリント基板202は、ヘッド本体部101側からの配線部材60(
図13参照)が引き回されて接続され、外部の上位装置(メイン基板)に接続された中継ケーブルのコネクタが連結されるコネクタ204を有している。カバー部材102には、コネクタ204に対応して開口部205が設けられている。
【0064】
コネクタ204は、フレーム部材112の取り付け面112bの法線方向において、ヘッド本体部101側とは反対側のプリント基板202の位置(プリント基板202の上端付近)に、設けられている。
【0065】
これにより、コネクタ204をヘッド本体部101から離れた位置に設けているので、ヘッド本体部101から吐出された液体のミストがコネクタ204に付着することを抑制することができる。
【0066】
このように、カバー部材102の内部に電気回路基板としてのプリント基板202が配置されていることで、ヘッド本体部112とカバー部材102との間から液体がカバー部材102内部に侵入することを防止しなければならない。
【0067】
そこで、前記実施形態と同様に、ヘッド本体部101のフレーム部材112のフランジ部(鍔部)112aのカバー部材102との接合面112b側には、カバー部材102の外周に沿って全周に亘ってリブ121を設けている。
【0068】
そして、ヘッド本体部101とカバー部材102とを接着剤で接合し、封止剤としての接着剤をリブ121の内周面とカバー部材102の外周面との間に充填している。
【0069】
ヘッド本体部101の内部構成は、
図10ないし
図13と同様であるので説明を省略する。
【0070】
そして、ヘッド本体部101のフレーム部材112には、短辺の中央部付近に切り欠き部221と貫通穴222が設けられている。液体吐出ヘッド100を位置決め配置するとき、例えば、切り欠き部221を位置決めピンと係合させ、あるいは、位置調整用カムと係合させる。そして、貫通穴222を通して締結部材でベース部材などのヘッド配置部材に固定する。
【0071】
カバー部材102の短手方向に沿った壁面の中央部は内側に窪む窪み部102dが設けられている。カバー部材102をフレーム部材112に固定した状態で、フレーム部材112の切り欠き部221と貫通穴222は、カバー部材102の窪み部102dに対応した箇所に位置する。したがって、カバー部材102をフレーム部材112に固定した状態で、ベース部材に対して液体吐出ヘッド100を位置決め固定する作業を行うことができる。
【0072】
次に、本発明の第5実施形態に係る液体吐出ヘッドについて
図19及び
図20を参照して説明する。
図19は同ヘッドの平面説明図、
図20は同じく
図19のX2-X2線に沿う要部断面説明図である。
【0073】
本実施形態では、ヘッド本体部101のフレーム部材112のフランジ部112aのノズル面111aと反対側の面である取り付け面112bには、カバー部材102の周面(ここでは内周面)に沿って全周に亘ってリブ121が設けられている。
【0074】
そして、
図20に示すように、リブ121の外周側に被さるカバー部材102の接合面102aをフレーム部材112の取り付け面112bに接着剤104で接合している。
【0075】
本実施形態でも、この接着剤104を封止剤として兼用し、カバー部材102の内周面とリブ121の外周面との間を封止している。
【0076】
本実施形態でも、リブ121がない場合と比べて、封止領域が増加するので、フレーム部材112とカバー部材102との間から内部に液体が侵入することを確実に防止できる。
【0077】
本実施形態において、接着剤104は、カバー部材102の接合面102aとフレーム部材112の取り付け面112bとの隙間、及び、カバー部材102の内周面とリブ121の外周面との隙間に亘って配されるので、
図20に示されるように、封止材(接着剤)104で封止される領域は屈曲した構造となる。
【0078】
これにより、カバー部材102の外周面とリブ121の内周面の隙間のみを封止するものと比べて、液体の内部侵入に対する経路が増加することで、より確実に液体侵入を防止できる。
【0079】
次に、本発明の第6実施形態に係る液体吐出ヘッドについて
図21及び
図22を参照して説明する。
図21は同ヘッドの側面説明図、
図22は同じくヘッド本体部の斜視説明図である。
【0080】
本実施形態では、前記第3実施形態において、フレーム部材112の外側面の全周に亘って凹部123を帯状に設けている。
【0081】
これにより、ノズル面111a付近を洗浄液にデイッピングして洗浄する場合、洗浄液がフレーム部材112の外周面を伝ってカバー部材102との接合部位に至ることをより確実に防止できる。
【0082】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について
図23及び
図24を参照して説明する。
図23は同装置の要部平面説明図、
図24は同装置の要部側面説明図である。
【0083】
この装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0084】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド404及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0085】
液体吐出ヘッド404の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド404に供給するための供給機構494により、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
【0086】
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成される。液体カートリッジ450はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって、液体カートリッジ450から液体が送液される。
【0087】
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0088】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0089】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0090】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0091】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド404のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0092】
主走査移動機構493、供給機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0093】
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0094】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド404を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成
する。
【0095】
このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0096】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について
図25を参照して説明する。
図25は同ユニットの要部平面説明図である。
【0097】
この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。
【0098】
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0099】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について
図26を参照して説明する。
図26は同ユニットの正面説明図である。
【0100】
この液体吐出ユニットは、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド404と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0101】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0102】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0103】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0104】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0105】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0106】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0107】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0108】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0109】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0110】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0111】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0112】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0113】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0114】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0115】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0116】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0117】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0118】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0119】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0120】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0121】
1 ノズル板
2 流路板
3 振動板
4 ノズル
6 個別液室
10 共通液室
11 圧電素子
50 保持基板
101 液体吐出ヘッド
102 カバー部材
104 接着剤
111 ヘッ本体部
112 フレーム部材
121 リブ
403 キャリッジ
404 液体吐出ヘッド
440 液体吐出ユニット