(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】クリーニングブレード、プロセスカートリッジ及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
G03G21/00 318
(21)【出願番号】P 2017126918
(22)【出願日】2017-06-29
【審査請求日】2020-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2016140219
(32)【優先日】2016-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016207764
(32)【優先日】2016-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】青山 由佳
(72)【発明者】
【氏名】重里 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】権藤 政信
(72)【発明者】
【氏名】左近 洋太
(72)【発明者】
【氏名】大森 匡洋
(72)【発明者】
【氏名】水谷 佑樹
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-016083(JP,A)
【文献】特開2016-173386(JP,A)
【文献】特開平07-199761(JP,A)
【文献】特開2014-066786(JP,A)
【文献】特開2001-154553(JP,A)
【文献】特開2016-038407(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0153987(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106432775(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 21/16
G03G 21/18
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被清掃部材の表面に当接して前記被清掃部材の表面に付着した付着物を除去する弾性部材を備え、
前記弾性部材は、基材と、硬化性組成物の硬化物からなる表面層とを有し、
前記表面層は、前記被清掃部材と当接する当接部よりも前記被清掃部材の進行方向下流側と対向する基材の面を基材下面としたとき、前記当接部を含む前記基材下面の少なくとも一部に形成されており、
前記当接部における前記表面層の平均膜厚が10μm以上100μm以下であり、前記基材における先端面を微小硬度計で測定したマルテンス硬度が、2.0N/mm
2以上3.5N/mm
2以下であり、前記基材の反発弾性率が13%以上36%以下であり、前記表面層を微小硬度計で測定したマルテンス硬度が、22N/mm
2以上30N/mm
2以下であることを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項2】
前記硬化性組成物の硬化物が、エポキシ樹脂の硬化物、及びポリエチレン骨格の樹脂の硬化物のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のクリーニングブレード。
【請求項3】
像担持体と、前記像担持体上に残留するトナーを除去するクリーニング手段とを少なくとも有するプロセスカートリッジであって、
前記クリーニング手段が請求項1又は2に記載のクリーニングブレードを有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項4】
像担持体と、前記像担持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された前記像担持体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、前記像担持体上に残留するトナーを除去するクリーニング手段と、を有する画像形成装置であって、
前記クリーニング手段が請求項1又は2に記載のクリーニングブレードを有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニングブレード、プロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置では、被清掃部材としての像担持体(以下、「感光体」、「電子写真感光体」、「静電潜像担持体」と称することもある)について、転写紙や中間転写体へトナー像を転写した後の表面に付着した不必要な転写残トナーなどの付着物はクリーニング手段によって除去していることが知られている。
【0003】
前記クリーニング手段のクリーニング部材として、一般的に構成を簡単にでき、クリーニング性能も優れていることから、短冊形状のクリーニングブレードを用いたものがよく知られている。これは前記クリーニングブレードの基端を支持部材で支持して当接部(先端稜線部)を像担持体の周面に押し当て、像担持体上に残留するトナーを堰き止めて掻き落とし除去する。
【0004】
また、近年の高画質化の要求に応えるべく、重合法等により形成された小粒径で球形に近いトナー(以下、「重合トナー」と称することがある)を用いた画像形成装置が知られている。前記重合トナーは、従来の粉砕トナーに比べて転写効率が高いなどの特徴があり、前記要求に応えることが可能である。しかし、前記重合トナーは、クリーニングブレードを用いて像担持体表面から除去しようとしても十分に除去することが困難であり、クリーニング不良が発生してしまうという問題がある。これは、小粒径でかつ球形度に優れた前記重合トナーが、前記クリーニングブレードと像担持体との間に形成される僅かな隙間をすり抜けるからである。
【0005】
前記すり抜けを抑えるには、像担持体とクリーニングブレードとの当接圧力を高めてクリーニング能力を高める必要があるが、当接圧力を高めると
図14Aに示すようにめくれが生じてしまう。また、めくれた状態で使用すると、
図14Bに示すように局所的な摩耗が生じてしまい、最終的には
図14Cに示すように先端稜線部が欠落してしまう。
【0006】
このような問題を解決するため、例えば特許文献1には、ポリウレタンエラストマーからなる弾性部材の当接部に、鉛筆硬度B~6Hの皮膜硬度を有する樹脂からなる表面層を設けたものが提案されている。
また、特許文献2には、シリコーンを含有した紫外線硬化性組成物をゴム製の弾性部材に含浸させて膨潤させた後、紫外線照射処理して前記紫外線硬化性組成物を硬化させたクリーニングブレードが提案されている。
また、特許文献3には、弾性部材の当接部を含む部分にイソシアネート化合物、フッ素化合物、シリコーン化合物から選ばれる少なくとも1種が含浸され、かつ前記当接部を含む弾性部材の表面に弾性部材よりも硬い表面層を設けたクリーニングブレードが提案されている。
また、特許文献4には、潤滑粒子及びバインダー樹脂を含有する表面層を有するクリーニングブレードが提案されている。
また、特許文献5には、クリーニングブレードを有するクリーニング手段を備えた画像形成装置において、クリーニングブレードは、短冊形状の弾性体ブレードと、前記弾性体ブレードの先端稜線部を覆い、前記弾性体ブレードよりも硬く、摩擦係数が0.1以上0.6以下の表面層とを有することが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の背景に鑑みなされたものであり、先端稜線部のめくれや異常摩耗等による異音の発生を抑制し、長期に渡る良好なクリーニング性の維持が可能なクリーニングブレードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のクリーニングブレードは、被清掃部材の表面に当接して前記被清掃部材の表面に付着した付着物を除去する弾性部材を備え、
前記弾性部材は、基材と、硬化性組成物の硬化物からなる表面層とを有し、
前記表面層は、前記被清掃部材と当接する当接部よりも前記被清掃部材の進行方向下流側と対向する基材の面を基材下面としたとき、前記当接部を含む前記基材下面の少なくとも一部に形成されており、
前記当接部における前記表面層の平均膜厚が10μm以上100μm以下であり、前記基材における先端面を微小硬度計で測定したマルテンス硬度が、2.0N/mm
2
以上3.5N/mm
2
以下であり、前記基材の反発弾性率が13%以上36%以下であり、前記表面層を微小硬度計で測定したマルテンス硬度が、22N/mm
2
以上30N/mm
2
以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、先端稜線部のめくれや異常摩耗等による異音の発生を抑制し、長期に渡る良好なクリーニング性の維持が可能なクリーニングブレードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るクリーニングブレードの一例が像担持体の表面に当接している状態の一例を示す拡大断面図である。
【
図2】本発明に係るクリーニングブレードの一例を示す斜視図である。
【
図3A】本発明に係るクリーニングブレードの製造方法の一例を説明する図である(その1)。
【
図3B】本発明に係るクリーニングブレードの製造方法の一例を説明する図である(その2)。
【
図3C】本発明に係るクリーニングブレードの製造方法の他の例を説明する図である(その1)。
【
図3D】本発明に係るクリーニングブレードの製造方法の他の例を説明する図である(その2)。
【
図5】本発明に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【
図6】本発明に係る画像形成装置の備える作像ユニットの一例を示す概略構成図である。
【
図7A】トナーの円形度の測定方法を説明するための説明図である(その1)。
【
図7B】トナーの円形度の測定方法を説明するための説明図である(その2)。
【
図8A】ブレードの先端面における基材のマルテンス硬度を測定する方法を説明するための概略図である(その1)。
【
図8B】ブレードの先端面における基材のマルテンス硬度を測定する方法を説明するための概略図である(その2)。
【
図8C】ブレードの先端面における基材のマルテンス硬度を測定する方法を説明するための概略図である(その3)。
【
図8D】ブレードの先端面における基材のマルテンス硬度を測定する方法を説明するための概略図である(その4)。
【
図9】表面層の平均膜厚の測定方法の一例を説明するための図である。
【
図10】曲率半径の測定における観察方法の一例を説明するための図である。
【
図11】曲率半径の測定における得られた結果の一例を説明するための図である。
【
図12】弾性部材の摩耗幅の測定箇所の一例を説明するための図である。
【
図13A】硬化性組成物フィルムを表面層に用いたクリーニングブレードの作製方法を説明するための概略図である(その1)。
【
図13B】硬化性組成物フィルムを表面層に用いたクリーニングブレードの作製方法を説明するための概略図である(その2)。
【
図13C】硬化性組成物フィルムを表面層に用いたクリーニングブレードの作製方法を説明するための概略図である(その3)。
【
図14A】従来のクリーニングブレードの先端稜線部が捲れた状態を示す図である。
【
図14B】クリーニングブレードの先端面の局所的な摩耗について説明する図である。
【
図14C】クリーニングブレードの先端稜線部が欠落した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るクリーニングブレード、プロセスカートリッジ及び画像形成装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0012】
(クリーニングブレード)
従来から、小粒径でかつ球形度に優れる重合トナーを用いる場合、クリーニングブレードと像担持体との間に形成される僅かな隙間をすり抜けが生じるという問題がある。前記すり抜けを抑えるには、像担持体とクリーニングブレードとの当接圧力を高めてクリーニング能力を高める必要がある。しかし、前記クリーニングブレードの当接圧を高めると、
図14Aに示すように、像担持体123とクリーニングブレード62との摩擦力が高まり、クリーニングブレード62が像担持体123の移動方向に引っ張られて、クリーニングブレード62の先端稜線部62cがめくれてしまう。このめくれたクリーニングブレード62が、そのめくれに抗して原形状態に復元する際に異音が発生することがある。
【0013】
更に、クリーニングブレード62の先端稜線部62cがめくれた状態でクリーニングをし続けると、
図14Bに示すように、クリーニングブレード62のブレード先端面62aの先端稜線部62cから数μm離れた箇所に局所的な摩耗が生じてしまう。このような状態で、更にクリーニングを続けると、この局所的な摩耗が大きくなる。最終的には、
図14Cに示すように、先端稜線部62cが欠落してしまう。このように先端稜線部62cが欠落してしまうと、トナーを正常にクリーニングできなくなり、クリーニング不良を生じてしまうという問題がある。なお、
図14A~
図14C中62bは、クリーニングブレードのブレード下面である。
【0014】
これに対し、本発明のクリーニングブレードは、被清掃部材の表面に当接して前記被清掃部材の表面に付着した付着物を除去する弾性部材を備え、前記弾性部材は、基材と、硬化性組成物の硬化物からなる表面層とを有し、前記表面層は、前記被清掃部材と当接する当接部よりも前記被清掃部材の進行方向下流側と対向する基材の面を基材下面としたとき、前記当接部を含む前記基材下面の少なくとも一部に形成されており、前記当接部における前記表面層の平均膜厚が10μm以上100μm以下であることを特徴とする。
【0015】
本発明に係るクリーニングブレードの一実施形態について
図1、
図2を用いて説明する。
図1はクリーニングブレード62が感光体3の表面に当接している状態の説明図であり、
図2はクリーニングブレード62の斜視図である。これらの図のクリーニングブレード62では支持部材621、弾性部材624、基材622、表面層623が図示されており、本実施形態の基材622は短冊形状としている。また、ブレード先端面62a、ブレード下面62b、先端稜線部62c(当接部、エッジ部などとも称する)が図示されている。
【0016】
本発明において、弾性部材を構成する基材の長手方向の面で、被清掃部材の進行方向(本実施形態では回転方向)下流側と対向する面を基材の下面といい、基材の先端稜線部を含む被清掃部材の回転方向上流側と対向する先端の面を基材の先端面という。
また、弾性部材の長手方向の面で、被清掃部材の回転方向下流側と対向する面をブレード下面といい、弾性部材の先端稜線部を含む被清掃部材の回転方向上流側と対向する先端の面をブレード先端面という。
図1において、被清掃部材の進行方向下流側Bと対向する面がブレード下面62bであり、被清掃部材進行方向上流側Aと対向する先端の面がブレード先端面62aである。
また、弾性部材の被清掃部材の表面に当接する当接部は、弾性部材の先端稜線部を含む。また、先端稜線部がめくれる場合や線圧が高い場合ではブレード先端面の一部も当接部になりうる。
【0017】
本発明においては、クリーニングブレードの表面層の当接部の平均膜厚を10μm以上100μm以下にすることで、先端稜線部のめくれを防止し、過剰なスティックスリップを抑制することができる。さらに、長期の使用により摩耗しても表面層が厚いことで弾性部材の基材が露出することを防止でき、トルク上昇や鳴きを抑制でき、これらの機能を維持することが可能である。これにより、めくれの低減や耐ブレード摩耗の両立、長期に渡る良好なクリーニング性を維持することができる。また、弾性部材の基材が像担持体と接触することを防止できることから、トルクの上昇や像担持体の回転に掛かる負荷の増大を抑えることができるため、例えばタンデム方式での色ずれを防止することができる。なお、本発明のクリーニングブレードはタンデム方式に限られるものではない。
【0018】
表面層の当接部の平均膜厚が100μmを超えると、基材の弾性部材の柔軟性を維持しにくくなり、像担持体の軸ぶれによる振動や像担持体表面の微小なうねりに対する追従性への対応が難しくなりクリーニング不良が発生しやすくなる。また、10μm未満の場合、異常摩耗等による異音が発生してしまう。
【0019】
当接部の表面層の平均膜厚のより好ましい範囲としては、12μm以上65μm以下である。12μm以上65μm以下とすることにより初期の当接部のめくれがより発生しにくくなることや、摩耗が進んでも表面層内で摩耗をとどめることができ、弾性部材の基材の露出を抑制できるので、長期の使用でもめくれや鳴き、クリーニング不良が発生しにくくなる。
【0020】
ここで、当接部の表面層の平均膜厚は、当接部における表面層の任意の箇所を10箇所測定した算術平均値により求めることができる。
当接部の表面層の厚みの測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、当接部の表面層を含む切断面をマイクロスコープを用いて測定する方法などが挙げられる。
具体的には、例えば、当接部の先端部(当接辺)から5μm位置の表面層の厚みを測定する。なお、加えて、通常は、長手方向(当接辺の方向)の両端2cmを除いた位置で測定する。
【0021】
<クリーニングブレードの製造方法>
従来、スプレーやディップコーティングで作製していた以前のブレードでは当接部に厚膜を乗せることは難しく、当接部近傍は10μmの膜があっても当接部は1~3μmに満たなかった。またこのような膜の付き方では当接部が丸くなってしまい、エッジ精度が悪くなっていた。このためにクリーニング性が悪くなっていた可能性がある。
【0022】
また、従来の技術、例えば特許第5515865号では、含浸と表面層のあるブレードについて、含浸した後で切断し、コート膜を作製する工程をおこなう含浸処理後に切断する製造方法が提案されている。この場合、コート膜を後から塗工しているので、エッジ部の膜厚が薄くなってしまい、経時でトルクが上昇する可能性がある。また、特許文献4では、潤滑剤粒子分散コート膜のブレードについて、膜形成後にエッジを切断している。しかし、潤滑剤粒子が分散されているため表面粗さが大きく膜形成後にエッジを切断していてもエッジ精度が悪くなり、クリーニング性が悪くなってしまう可能性がある。
また、特許文献5に開示の具体例では、一般的なスプレー塗工により表面層を形成しているため、先端部から離れた位置(50μm離れた位置)で10μm以上の膜厚(例えば、実施例1における層厚は20μm)であっても、先端部近傍では薄くなり、結果、10μm以上にはならない。その結果、エッジ部の膜が経時で摩耗してしまい、基材ゴムが露出してしまいトルク上昇などの不具合が起こりやすくなる可能性がある。
【0023】
これに対し、本実施形態のクリーニングブレード62は、例えばウレタンゴムからなる基材622に対して表面層623を形成する硬化性組成物を塗工した後、紫外線照射や加熱により樹脂を硬化させている。その後、当接部を切断することによりブレード形状に加工している。
【0024】
表面層623は、硬化性組成物を用いて、スプレー塗工、ディップ塗工、あるいはスクリーン印刷等によって、クリーニングブレード62の先端稜線部62cを被覆することにより形成される。
【0025】
ブレード下面の表面層は、バーコート、スプレーコート、ディップコート、ハケ塗り、スクリーン印刷などで形成することができる。表面層の膜厚は、塗工液の固形分濃度、塗工条件(バーコート:ギャップ、スプレーコート:吐出量・距離・移動速度、ディップコート:引き上げ速度など)、塗工回数などの条件を適宜変更することにより制御することが可能である。
【0026】
また、硬化性組成物の硬化物からなる表面層は、硬化性組成物のフィルムを基材に貼り付けることでも形成することができる。例えば、ウレタンゴムからなる基材622に対して表面層623を形成する硬化性組成物のフィルムを熱溶着で接着し、その後当接部を切断することによりブレード形状に加工する。
【0027】
【0028】
図3Aは基材622に硬化性組成物を塗工・硬化させた状態を示すものであり、破線部分に示されるように基材622の先端面を切断し、
図3Bに示される弾性部材624を作製する。切断する箇所は適宜変更することが可能であるが、例えば先端から1mmのところを切断する。
【0029】
また、
図3C、及び
図3Dではその他の例が示されている。
図3Cは
図3Aと同様に基材622に硬化性組成物を塗工・硬化させた状態を示すものである。ここでは、
図3Aのように基材622の先端面を切断するのではなく、基材622の中央付近で切断している。その結果、
図3Dに示される弾性部材524を得る。この場合、クリーニングブレードを2本同時に作製することも可能である。
なお、上記の他にも、型を用いて硬化性組成物を硬化させ直角な当接部を形成する方法などを用いてもよい。
【0030】
基材622及び表面層623を切断する方法は適宜変更することが可能であり、例えば、垂直スライサー等を用いることができる。
また、切断する方向は適宜変更することが可能であるが、表面層623側から基材622側に切断することが好ましい。この場合、エッジ精度を向上させることができる。
【0031】
本実施形態では、ブレード下面に厚膜を形成した後、エッジを切断することで当接部の厚膜とエッジ精度の両立が可能になった。また、厚膜を形成するために柔軟性のある膜が好ましく、硬化収縮が起こりにくい方がよく、エポキシ樹脂が好ましい。またアクリル樹脂でも柔軟性を付与し開始剤をフォトブリーチング効果のあるものを使用することにより厚膜化が可能になる。
【0032】
また、フィルムを用いてブレード下面に厚膜を形成するには、ポリエチレン骨格の材料からなるフィルムが好ましい。ポリエチレン骨格の樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどがあるが、耐摩耗性や低摩擦性の観点から高密度ポリエチレンや超高分子量ポリエチレンがより好ましい。
【0033】
<被清掃部材>
前記被清掃部材としては、その材質、形状、構造、大きさ等について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記被清掃部材の形状としては、例えば、ドラム状、ベルト状、平板状、シート状、などが挙げられる。前記被清掃部材の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、通常用いられる程度の大きさが好ましい。
【0034】
前記被清掃部材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属、プラスチック、セラミック、などが挙げられる。
また、前記被清掃部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記クリーニングブレードを画像形成装置に適用した場合には、例えば、像担持体、などが挙げられる。
【0035】
<付着物>
前記付着物としては、被清掃部材表面に付着しており、前記クリーニングブレードの除去対象となるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トナー、潤滑剤、無機微粒子、有機微粒子、ゴミ、埃又はこれらの混合物、などが挙げられる。これらの中でも、トナーが好ましく、ガラス転移温度が50℃以下の低温定着性のトナーが特に好ましい。
【0036】
<支持部材>
本実施形態のクリーニングブレードは、支持部材と、該支持部材に一端が連結され、他端に所定長さの自由端部を有する平板状の弾性部材とからなることが好ましい。前記クリーニングブレードは、前記弾性部材の自由端側の一端である先端稜線部を含む当接部が前記被清掃部材表面に長手方向に沿って当接するように配置される。
【0037】
前記支持部材としては、前記弾性部材を支持する部材であれば、その形状、大きさ、及び材質等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記支持部材の形状としては、例えば、平板状、短冊状、シート状、などが挙げられる。前記支持部材の大きさとしては、特に制限はなく、前記被清掃部材の大きさに応じて適宜選択することができる。
【0038】
前記支持部材の材質としては、例えば、金属、プラスチック、セラミック、などが挙げられる。これらの中でも、強度の点から金属板が好ましく、ステンレススチール等の鋼板、アルミニウム板、リン青銅板が特に好ましい。
【0039】
<弾性部材>
前記弾性部材は、基材と、表面層とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の部を有する。
【0040】
<<基材>>
弾性部材の基材としては、その形状、材質、大きさ、構造などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
形状としては、例えば、平板状、短冊状、シート状、などが挙げられる。
大きさとしては、特に制限はなく、前記被清掃部材の大きさに応じて適宜選択することができる。
基材の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高弾性が得られやすい点から、ポリウレタンゴム、ポリウレタンエラストマー、などが好適である。
また、基材の形状としては、例えば、前記基材の厚み方向において対向する一対の板面と、前記板面と直交し、前記板面の面内方向において対向する二対の端面からなる形状が挙げられる。
【0041】
前記基材の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1種の材質からなる単層構造、2種の異なる材質を一体成形した2層構造、数種の異なる材質を一体成形した多層構造などが挙げられる。
なお、2層以上を積層した前記基材を製造する際は、混合率の異なる原材料を各層が完全に硬化する前に、遠心成形金型に連続的に注入することにより、層間剥離が起こらないように一体的に成形することが可能である。
【0042】
前記基材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高弾性が得られやすい点から、ウレタンゴムが好ましい。
【0043】
弾性部材の基材の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを用いてポリウレタンプレポリマーを調製し、該ポリウレタンプレポリマーに硬化剤、及び必要に応じて硬化触媒を加えて、所定の型内にて架橋し、炉内にて後架橋させたものを遠心成型によりシート状に成型後、常温放置、熟成したものを所定の寸法にて、平板状に裁断することにより、製造される。
【0044】
前記ポリオール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高分子量ポリオール、低分子量ポリオール、などが挙げられる。
前記高分子量ポリオールとしては、例えば、アルキレングリコールと脂肪族二塩基酸との縮合体であるポリエステルポリオール;エチレンアジペートエステルポリオール、ブチレンアジペートエステルポリオール、ヘキシレンアジペートエステルポリオール、エチレンプロピレンアジペートエステルポリオール、エチレンブチレンアジペートエステルポリオール、エチレンネオペンチレンアジペートエステルポリオール等のアルキレングリコールとアジピン酸とのポリエステルポリオール等のポリエステル系ポリオール;カプロラクトンを開環重合して得られるポリカプロラクトンエステルポリオール等のポリカプロラクトン系ポリオール;ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール等のポリエーテル系ポリオール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記低分子量ポリオールとしては、例えば、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキノン-ビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン等の二価アルコール;1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、1,1,1-トリス(ヒドロキシエトキシメチル)プロパン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール等の三価又はそれ以上の多価アルコール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記ポリイソシアネート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフチレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネート(DDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
前記硬化触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、などが挙げられる。
【0048】
前記硬化触媒の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.01質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.3質量%以下がより好ましい。
【0049】
前記基材のJIS-A硬度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60度以上が好ましく、65度以上80度以下がより好ましい。前記JIS-A硬度が、60度以上であると、ブレード線圧が得られやすく、像担持体との当接部の面積が拡大しにくいため、クリーニング不良が発生しにくくなる。
ここで、前記基材のJIS-A硬度は、例えば、高分子計器社製、マイクロゴム硬度計MD-1などを用いて測定することができる。
【0050】
前記基材のJIS K6255規格に準拠した反発弾性率は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。ここで、前記基材の反発弾性係数は、例えば、JIS K6255規格に準拠し、23℃において、東洋精機製作所製No.221レジリエンステスタを用いて測定することができる。
【0051】
前記基材のマルテンス硬度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0052】
基材のマルテンス硬度は、2.0N/mm2以上が好ましく、2.0N/mm2以上5.0N/mm2以下がより好ましい。基材のマルテンス硬度を2.0N/mm2以上とすることにより、10μm以上の表面層のひび割れを抑制することができ、長期の使用でもクリーニング不良が発生しにくくなる。
【0053】
前記マルテンス硬度(HM)の測定方法は以下のとおりである。
測定には、例えば、フィシャー・インストルメンツ社製、微小硬度計 HM-2000を用いる。
基材の先端面に、ビッカース圧子を1.0mNの力で10秒間押し込み、5秒間保持し、1.0mNの力で10秒間抜いて、測定する。
【0054】
測定場所は、基材(ブレード)の先端面の先端稜線部から100μmの位置とする。
測定する方法としては、ブレードの先端を約2mmで切断し、先端面が上を向くようにスライドガラス等に接着剤や両面テープで固定し、先端面の先端稜線部から100μmの位置を測定する。
【0055】
ブレード下面に表面層がある状態で基材のマルテンス硬度を測定してもいい。
ブレード先端面に表面層がある場合では、先端面を剃刀などを用いて切断することにより基材の先端面を露出させることで測定ができる。
【0056】
前記基材の平均厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.0mm以上3.0mm以下が好ましい。
【0057】
<表面層>
本実施形態のクリーニングブレードは、前記像担持体に当接する先端稜線部62cが硬化性組成物により形成されている(弾性部材との混合層ではない)。表面層は、当接部とブレード下面に形成されていればよく、先端面にも表面層が形成されていてもよい。また、弾性部材内部に硬化性組成物が含まれていても構わない。なお、表面層の材料としては、エポキシ樹脂が好ましいが、以下の硬化性組成物とあわせて説明する。
【0058】
表面層は先端稜線部から1mm以上7mm以下の領域であることが好ましい。7mm以下にすることで弾性部材の柔軟性が良好になり、感光体への追従性が改善されるため、クリーニング特性の点で好ましい。
【0059】
表面層のマルテンス硬度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、表面層のマルテンス硬度が、基材のマルテンス硬度よりも硬いことがより好ましい。その際の表面層のマルテンス硬度は、3N/mm2以上30N/mm2以下であることが好ましい。
表面層は、弾性部材の基材よりも硬度が高い部材とすることで、剛直なため、変形し難く、クリーニングブレードの先端稜線部のめくれを抑制することができる。
【0060】
本実施形態においては、クリーニングブレードの当接部の表面層の平均膜厚を制御するために、各条件を鋭意検討した。その結果、当接部での表面層形成方法や材料の柔軟性や硬化収縮性を変更すること、紫外線硬化樹脂では開始剤を変更することで、当接部の表面層の膜厚と当接部のエッジ精度を制御することが可能になった。クリーニングブレードのエッジ精度は当接部の曲率半径で3.5μm以下であることが好ましい。
【0061】
前記弾性部材の当接部に、硬化性組成物の硬化物からなる表面層を形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、当接部に前記硬化性組成物をスプレー塗布して表面層を形成し、硬化させる方法、また、硬化性組成物の硬化物からなるフィルムを基材に接着させる方法、などが挙げられる。
【0062】
前記クリーニングブレードの当接部に形成した表面層の前記硬化性組成物を硬化させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紫外線の照射、加熱などによる処理などが挙げられる。
【0063】
前記紫外線を照射する装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、装置の内部に紫外線の光源が設けられ、コンベア等の搬送手段により被硬化物を搬送しながら紫外線を照射する装置などが挙げられる。
【0064】
前記紫外線の光源としては、重合開始剤に対応するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ランプ、紫外線発光半導体素子、などが挙げられる。
【0065】
前記ランプとしては、例えば、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、などが挙げられ、市販品を使用することができる。前記市販品としては、例えば、ヘレウス社製のHバルブ、Dバルブ、Vバルブ、などが挙げられる。
【0066】
前記紫外線発光半導体素子としては、紫外線発光ダイオードや紫外線発光半導体レーザ、などが挙げられる。
前記紫外線の種類としては、前記硬化性組成物に含有させる重合開始剤に対応するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、波長200nm以上400nm以下の紫外線、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどが挙げられる。
【0067】
前記紫外線の照射条件については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、積算光量が500mJ/cm2以上が好ましい。また、酸素阻害による硬化率の低下を抑制するためには不活性ガス(Ar、N2、CO2など)雰囲気下での照射がより好ましい。
【0068】
前記改質後のクリーニングブレードの弾性仕事率は、60%以上90%以下が好ましい。前記弾性仕事率はマルテンス硬度の測定時の積算応力から、以下のようにして求められる特性値である。前記マルテンス硬度は、ビッカース圧子を一定の力で、例えば、30秒間で押し込み、5秒間保持し、一定の力で30秒間抜く動作を行いながら微小硬度計を用いて計測する。
【0069】
ここで、ビッカース圧子を押し込むときの積算応力をW
plast、試験荷重除荷寺の積算応力をW
elastとすると、弾性仕事率は、W
elast/W
plast×100[%]の式で定義される特性値である(
図4参照)。前記弾性仕事率が高いほど、塑性変形が少ない、即ち、ゴム性が高いことを表す。前記弾性仕事率が低すぎると、ゴムというよりガラスに近い状態であり、当接部の動きが抑制されすぎて、逆に耐摩耗性を悪化させる。通常、(メタ)アクリル樹脂は、前記マルテンス硬度の範囲では、前記弾性仕事率がある程度高く、ゴムの状態が得られる。しかし、前記(メタ)アクリル樹脂の構造によっては弾性仕事率が高くなりすぎて、クリーニングブレードとしての姿勢を適度に保てないことがある。
【0070】
<硬化性組成物>
前記硬化性組成物とは、モノマーやオリゴマーが光や熱などのエネルギーを受けることにより重合硬化し硬化物(固形ポリマー)を形成する材料のことである。重合を開始させる活性種(ラジカル、イオン、酸、塩基など)を発生させる開始剤や刺激(電子線)の種類によってエネルギー源が異なり、例えば紫外線硬化性組成物、熱硬化性組成物、電子線硬化組成物等が挙げられる。
【0071】
紫外線硬化組成物や電子線硬化組成物では、光重合開始剤が用いられ、紫外線や電子線を照射することで、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合のいずれかに分類される硬化反応がおこり、ビニル重合、ビニル共重合、開環重合、付加重合などの重合反応により硬化物を生成する。
【0072】
熱硬化性組成物は、熱重合開始剤が用いられ加熱することにより硬化反応が開始され、イソシアナート、ラジカル重合、エポキシ開環重合、メラミン系縮合などの重合反応により硬化物を生成する。
【0073】
このような反応により生成する前記硬化物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂の硬化物、シリコーン樹脂、アミノ樹脂、またはポリエチレン骨格の樹脂の硬化物などが挙げられる。硬化収縮が少ない点でエポキシ樹脂の硬化物が好ましく、耐久性が高い点でポリエチレン骨格の樹脂の硬化物が好ましい。
【0074】
前記エポキシ樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましい。また、ビスフェノールA型骨格をもつエポキシ樹脂が含まれていることがより好ましく、ビスフェノールF型や臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ノボラック型、ビフェニル型などと組み合わせて使用することもできる。
【0075】
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂を含む材料を用いると、硬化収縮が少ないので、厚い表面層を容易に作製することが可能になり目的の膜厚を得ることができる。また、前記ビスフェノール型エポキシ樹脂を含む材料を用いると、表面層623は硬くなり、クリーニングブレード62の先端稜線部62cがめくれて
図14Bのような先端面摩耗を生じることがなく、長期に渡るクリーニング性を保持できる。
【0076】
また、前記アクリル樹脂における(メタ)アクリレート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、分子内にペンタエリスリトール構造を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0077】
前記分子内にペンタエリスリトール構造を有する(メタ)アクリレート化合物は、官能基当量分子量が110以下であり、官能基数が3~6のものが好ましく、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、などが挙げられる。これらの中でも、ペンタエリスリトール・トリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。
【0078】
官能基当量分子量が110以下であるか、またはペンタエリスリトール・トリアクリレート骨格を有する材料を用いると、表面層623は硬くなり、クリーニングブレード62の先端稜線部62cがめくれて
図14Bのような先端面摩耗を生じることがなく、長期に渡るクリーニング性を保持できる。
【0079】
前記分子内にペンタエリスリトール構造を有する(メタ)アクリレート化合物の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記硬化性組成物に対して、固形分量で、20質量%以上90質量%以下が好ましく、50質量%以上80質量%以下がより好ましい。
【0080】
前記硬化性組成物は、前記分子内にペンタエリスリトール構造を有する(メタ)アクリレート化合物以外にも、分子量が100以上1,500以下の(メタ)アクリレート化合物、フッ素系(メタ)アクリレート化合物、分子内に脂環構造を有する(メタ)アクリレート化合物を含有することができる。
前記分子量が100以上1,500以下の他の(メタ)アクリレート化合物、前記フッ素系(メタ)アクリレート化合物、及び前記分子内に脂環構造を有する(メタ)アクリレート化合物としては、適宜選択することができる。
【0081】
前記フッ素系(メタ)アクリレート化合物としては、パーフルオロポリエーテル骨格を有するものが好ましく、パーフルオロポリエーテル骨格を有し、官能基数が2以上であるものがより好ましい。
前記フッ素系(メタ)アクリレート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、2,2,2-トリフルオロエチルアクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルアクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルアクリレート、2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロブチルメタクリレート、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルアクリレート、2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロブチルメタクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルアクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルメタアクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルアクリレート、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルメタクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチルアクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルアクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチルメタクリレート、2-[(1’,1’,1’-トリフルオロ-2’-(トリフルオロメチル)-2’-ヒドロキシ)プロピル]-3-ノルボルニルメタクリレート、1,1,1-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)-2-ヒドロキシ-4-メチル-5-ペンチルメタクリラート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロデシルアクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10-ヘプタデカフルオロデシルメタクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,12-ヘニコサフルオロドデシルアクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,12-ヘニコサフルオロドデシルメタクリレート、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,12,12,12-ヘニコサ-11-(トリフルオロメチル)ドデシルメタクリレート、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
前記フッ素系(メタ)アクリレート化合物としては、市販品を使用することができ、前記市販品としては、例えば、オプツールDAC-HP(ダイキン工業社製)、メガファックRS-75(DIC社製)、ビスコートV-3F(大阪有機化学工業社)、などが挙げられる。
【0083】
前記フッ素系(メタ)アクリレート化合物の前記硬化性組成物における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、固形分量で、0.1質量%以上50質量%以下が好ましい。
【0084】
硬化性組成物におけるその他の成分としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、重合開始剤、重合禁止剤、希釈剤が挙げられるが、樹脂粒子や無機粒子を含まないことが好ましい。
【0085】
前記重合開始剤としては、光又は熱などにより重合を開始させるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。光重合開始剤としては、光のエネルギーによりラジカルやカチオンなどの活性種を生成して重合を開始させる光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、などが好ましく、光ラジカル重合開始剤がより好ましい。
【0086】
前記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アルキルアミン化合物、などが挙げられる。
【0087】
前記光ラジカル重合開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、2,4-ジエチルチオキサントン、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0088】
前記光ラジカル重合開始剤としては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、イルガキュア 651、イルガキュア 184、DAROCUR 1173、イルガキュア 2959、イルガキュア 127、イルガキュア 907、イルガキュア 369、イルガキュア 379、DAROCUR TPO、イルガキュア 819、イルガキュア 784、イルガキュア OXE 01、イルガキュア OXE 02、イルガキュア 754(以上、BASFジャパン社製);Speedcure TPO(Lambson社製);KAYACURE DETX-S(日本化薬社製);Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製);ユベクリルP36(UCB社製)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0089】
前記重合開始剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記硬化性組成物に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましい。
本発明のような厚膜を形成する場合は光重合開始剤として、内部硬化性の良好なフォトブリーチング効果を持つ光重合開始剤が好ましく、表面硬化性の良好な光重合開始剤と組み合わせて使用するのがより好ましい。光重合開始剤の量は硬化性組成物に対して1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0090】
前記重合禁止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、p-メトキシフェノール、クレゾール、t-ブチルカテコール、ジ-t-ブチルパラクレゾール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、α-ナフトール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)等のフェノール化合物;p-ベンゾキノン、アントラキノン、ナフトキノン、フェナンスラキノン、p-キシロキノン、p-トルキノン、2,6-ジクロロキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン、2,5-ジアセトキシ-p-ベンゾキノン、2,5-ジカプロキシ-p-ベンゾキノン、2,5-ジアシロキシ-p-ベンゾキノン、ヒドロキノン、2,5-ジ-ブチルヒドロキノン、モノ-t-ブチルヒドロキノン、モノメチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン等のキノン化合物;フェニル-β-ナフチルアミン、p-ベンジルアミノフェノール、ジ-β-ナフチルパラフェニレンジアミン、ジベンジルヒドロキシルアミン、フェニルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のアミン化合物;ジニトロベンゼン、トリニトロトルエン、ピクリン酸等のニトロ化合物;キノンジオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム化合物;フェノチアジン等の硫黄化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
前記希釈剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒;エタノール、プロパノール、1-ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール系溶媒、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0092】
前記ポリエチレン骨格の樹脂とは、一般的にエチレンを重合して得られる結晶性樹脂であるポリエチレンがあるが、密度、分子量、圧力・触媒などの合成条件により分類される。また、密度、分子量、分子量分布、分子構造(直鎖、分岐など)によって、特性などが異なる。
【0093】
前記ポリエチレン骨格の樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐久性や低摩擦係数の観点から、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンがより好ましい。
【0094】
本実施形態のクリーニングブレード62は、弾性部材の被清掃部材の表面に当接する先端稜線部62cの捲れを抑制でき、使用時における弾性部材の先端稜線部62cの摩耗が少なく、良好なクリーニング性を長期間に亘って維持することができる。このため、各種分野に幅広く用いることができるが、以下に説明するプロセスカートリッジ及び画像形成装置に特に好適に用いられる。
【0095】
(プロセスカートリッジ、画像形成装置及び画像形成方法)
本発明のプロセスカートリッジは、像担持体と、前記像担持体上に残留するトナーを除去するクリーニング手段とを少なくとも有し、前記クリーニング手段が本発明のクリーニングブレードを有する。クリーニング補助手段として該潜像担持体表面に潤滑剤を塗布する機構を備えていても良い。
【0096】
本発明の画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された前記像担持体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、前記像担持体上に残留するトナーを除去するクリーニング手段とを有し、前記クリーニング手段が本発明のクリーニングブレードを有する。像担持体にはクリーニング補助手段として潤滑剤が塗布される機構を備えていても良い。
【0097】
本発明の画像形成方法は、像担持体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された前記像担持体を露光して静電潜像を形成する露光工程と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像工程と、前記可視像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程と、前記像担持体上に残留するトナーを除去するクリーニング工程とを少なくとも含み、前記クリーニング工程が本発明のクリーニングブレードを用いて行われる。
【0098】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、単にプリンタ500という)の一実施形態(以下、実施形態という)について説明する。まず、本実施形態に係るプリンタ500の基本的な構成について説明する。
【0099】
図5は、プリンタ500を示す概略構成図である。プリンタ500は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(以下、Y、C、M、Kと記す)用の四つの作像ユニット1Y,C,M,Kを備えている。これらは、画像を形成する画像形成物質として、互いに異なる色のY,C,M,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっている。
【0100】
四つの作像ユニット1Y,1C,1M,1Kの上方には、中間転写体としての中間転写ベルト14を備える転写ユニット60が配置されている。詳細は後述する各作像ユニット1Y,1C,1M,1Kが備える感光体3Y,3C,3M,3Kの表面上に形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト14の表面上に重ね合わせて転写される構成である。
【0101】
また、四つの作像ユニット1Y,1C,1M,1Kの下方に光書込ユニット40が配設されている。潜像形成手段たる光書込ユニット40は、画像情報に基づいて発したレーザ光Lを、各作像ユニット1Y,1C,1M,1Kの感光体3Y,3C,3M,3Kに照射する。これにより、感光体3Y,3C,3M,3K上にY,C,M,K用の静電潜像が形成される。なお、光書込ユニット40は、光源から発したレーザ光Lを、モータによって回転駆動されるポリゴンミラー41によって偏向せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体3Y,3C,3M,3Kに照射するものである。このような構成のものに代えて、LEDアレイによる光走査を行うものを採用することもできる。
【0102】
光書込ユニット40の下方には、第一給紙カセット151、第二給紙カセット152が鉛直方向に重なるように配設されている。これら給紙カセット内には、それぞれ、記録媒体である転写紙Pが複数枚重ねられた紙束の状態で収容されており、一番上の転写紙Pには、第一給紙ローラ151a、第二給紙ローラ152aがそれぞれ当接している。第一給紙ローラ151aが駆動手段によって図中反時計回りに回転駆動せしめられると、第一給紙カセット151内の一番上の転写紙Pが、カセットの図中右側方において鉛直方向に延在するように配設された給紙路153に向けて排出される。また、第二給紙ローラ152aが駆動手段によって
図5中反時計回りに回転駆動せしめられると、第二給紙カセット152内の一番上の転写紙Pが、給紙路153に向けて排出される。
【0103】
給紙路153内には、複数の搬送ローラ対154が配設されている。給紙路153に送り込まれた転写紙Pは、これら搬送ローラ対154のローラ間に挟み込まれながら、給紙路153内を
図5中下側から上側に向けて搬送される。
【0104】
給紙路153の搬送方向下流側端部には、レジストローラ対55が配設されている。レジストローラ対55は、搬送ローラ対154から送られてくる転写紙Pをローラ間に挟み込むとすぐに、両ローラの回転を一旦停止させる。そして、転写紙Pを適切なタイミングで後述の二次転写ニップに向けて送り出す。
【0105】
図6は、四つの作像ユニット1のうちの一つの概略構成を示す構成図である。
図6に示すように、作像ユニット1は、像担持体としてのドラム状の感光体3を備えている。感光体3はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであっても良い。
感光体3の周囲には、帯電ローラ4、現像装置5、一次転写ローラ7、クリーニング装置6、潤滑剤塗布装置10及び除電ランプ等が配置されている。帯電ローラ4は、帯電手段としての帯電装置が備える帯電部材であり、現像装置5は、感光体3の表面上に形成された潜像をトナー像化する現像手段である。一次転写ローラ7は、感光体3の表面上のトナー像を中間転写ベルト14に転写する一次転写手段としての一次転写装置が備える一次転写部材である。クリーニング装置6は、トナー像を中間転写ベルト14に転写した後の感光体3上に残留するトナーをクリーニングするクリーニング手段である。潤滑剤塗布装置10は、クリーニング装置6がクリーニングした後の感光体3の表面上に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段である。除電ランプは、クリーニング後の感光体3の表面電位を除電する除電手段である。
図6において符号8は、クリーニングローラを表す。
【0106】
帯電ローラ4は、感光体3に所定の距離を持って非接触で配置され、感光体3を所定の極性、所定の電位に帯電するものである。帯電ローラ4によって一様帯電された感光体3の表面は、潜像形成手段である光書込ユニット40から画像情報に基づいてレーザ光Lが照射され静電潜像が形成される。
【0107】
現像装置5は、現像剤担持体としての現像ローラ51を有している。この現像ローラ51には、電源から現像バイアスが印加されるようになっている。現像装置5のケーシング内には、ケーシング内に収容された現像剤を互いに逆方向に搬送しながら攪拌する供給スクリュ52及び攪拌スクリュ53が設けられている。また、現像ローラ51に担持された現像剤を規制するためのドクタ54も設けられている。供給スクリュ52及び攪拌スクリュ53の二本スクリュによって撹拌・搬送された現像剤中のトナーは、所定の極性に帯電される。そして、現像剤は、現像ローラ51の表面上に汲み上げられ、汲み上げられた現像剤は、ドクタ54により規制され、感光体3と対向する現像領域でトナーが感光体3上の潜像に付着する。
【0108】
クリーニング装置6は、ファーブラシ101、クリーニングブレード62などを有している。クリーニングブレード62は、感光体3の表面移動方向に対してカウンタ方向で感光体3に当接している。なお、クリーニングブレード62は本発明のクリーニングブレードである。潤滑剤塗布装置10は、固形潤滑剤103や潤滑剤加圧スプリング103a等を備え、固形潤滑剤103を感光体3上に塗布する塗布ブラシとしてファーブラシ101を用いている。固形潤滑剤103は、ブラケット103bに保持され、潤滑剤加圧スプリング103aによりファーブラシ101側に加圧されている。そして、感光体3の回転方向に対して連れまわり方向に回転するファーブラシ101により固形潤滑剤103が削られて感光体3上に潤滑剤が塗布される。感光体への潤滑剤塗布により感光体3表面の摩擦係数が非画像形成時に0.2以下に維持されることが好ましい。
【0109】
本実施形態の帯電装置は、帯電ローラ4を感光体3に近接させた非接触の近接配置方式であるが、帯電装置としては、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)を始めとする公知の構成を用いることができる。これらの帯電方式のうち、特に接触帯電方式、あるいは非接触の近接配置方式がより望ましく、帯電効率が高くオゾン発生量が少ない、装置の小型化が可能である等のメリットを有する。
【0110】
光書込ユニット40のレーザ光Lの光源や除電ランプ等の光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。
また、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
これらの光源のうち、発光ダイオード、及び半導体レーザは照射エネルギーが高く、また600~800nmの長波長光を有するため、良好に使用される。
【0111】
転写手段たる転写ユニット60は、中間転写ベルト14の他、ベルトクリーニングユニット162、第一ブラケット63、第二ブラケット64などを備えている。また、四つの一次転写ローラ7Y,7C,7M,7K、二次転写バックアップローラ66、駆動ローラ67、補助ローラ68、テンションローラ69なども備えている。中間転写ベルト14は、これら8つのローラ部材に張架されながら、駆動ローラ67の回転駆動によって図中反時計回りに無端移動せしめられる。四つの一次転写ローラ7Y,C,M,Kは、このように無端移動せしめられる中間転写ベルト14を感光体3Y,3C,3M,3Kとの間に挟み込んでそれぞれ一次転写ニップを形成している。そして、中間転写ベルト14の裏面(ループ内周面)にトナーとは逆極性(例えばプラス)の転写バイアスを印加する。中間転写ベルト14は、その無端移動に伴ってY,C,M,K用の一次転写ニップを順次通過していく過程で、そのおもて面に感光体3Y,3C,3M,3K上のY,C,M,Kトナー像が重ね合わせて一次転写される。これにより、中間転写ベルト14上に四色重ね合わせトナー像(以下、四色トナー像という)が形成される。
【0112】
二次転写バックアップローラ66は、中間転写ベルト14のループ外側に配設された二次転写ローラ70との間に中間転写ベルト14を挟み込んで二次転写ニップを形成している。先に説明したレジストローラ対55は、ローラ間に挟み込んだ転写紙Pを、中間転写ベルト14上の四色トナー像に同期させ得るタイミングで、二次転写ニップに向けて送り出す。中間転写ベルト14上の四色トナー像は、二次転写バイアスが印加される二次転写ローラ70と二次転写バックアップローラ66との間に形成される二次転写電界や、ニップ圧の影響により、二次転写ニップ内で転写紙Pに一括二次転写される。そして、転写紙Pの白色と相まって、フルカラートナー像となる。
【0113】
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト14には、転写紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、ベルトクリーニングユニット162によってクリーニングされる。なお、ベルトクリーニングユニット162は、ベルトクリーニングブレード162aを中間転写ベルト14のおもて面に当接させており、これによって中間転写ベルト14上の転写残トナーを掻き取って除去するものである。
【0114】
転写ユニット60の第一ブラケット63は、ソレノイドの駆動のオンオフに伴って、補助ローラ68の回転軸線を中心にして所定の回転角度で揺動するようになっている。プリンタ500は、モノクロ画像を形成する場合には、前述のソレノイドの駆動によって第一ブラケット63を図中反時計回りに少しだけ回転させる。この回転により、補助ローラ68の回転軸線を中心にしてY,C,M用の一次転写ローラ7Y,7C,7Mを図中反時計回りに公転させることで、中間転写ベルト14をY,C,M用の感光体3Y,3C,3Mから離間させる。そして、四つの作像ユニット1Y,1C,1M,1Kのうち、K用の作像ユニット1Kだけを駆動して、モノクロ画像を形成する。これにより、モノクロ画像形成時にY,C,M用の作像ユニットを無駄に駆動させることによる作像ユニットを構成する各部材の消耗を回避することができる。
【0115】
二次転写ニップの図中上方には、定着ユニット80が配設されている。この定着ユニット80は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する加圧加熱ローラ81と、定着ベルトユニット82とを備えている。定着ベルトユニット82は、定着部材たる定着ベルト84、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する加熱ローラ83、テンションローラ85、駆動ローラ86、温度センサ等を有している。そして、無端状の定着ベルト84を加熱ローラ83、テンションローラ85及び駆動ローラ86によって張架しながら、図中反時計回り方向に無端移動せしめる。この無端移動の過程で、定着ベルト84は加熱ローラ83によって裏面側から加熱される。このようにして加熱される定着ベルト84の加熱ローラ83への掛け回し箇所には、図中時計回り方向に回転駆動される加圧加熱ローラ81がおもて面側から当接している。これにより、加圧加熱ローラ81と定着ベルト84とが当接する定着ニップが形成されている。
【0116】
定着ベルト84のループ外側には、温度センサが定着ベルト84のおもて面と所定の間隙を介して対向するように配設されており、定着ニップに進入する直前の定着ベルト84の表面温度を検知する。この検知結果は、定着電源回路に送られる。定着電源回路は、温度センサによる検知結果に基づいて、加熱ローラ83に内包される発熱源や、加圧加熱ローラ81に内包される発熱源に対する電源の供給をオンオフ制御する。
【0117】
上述した二次転写ニップを通過した転写紙Pは、中間転写ベルト14から分離した後、定着ユニット80内に送られる。そして、定着ユニット80内の定着ニップに挟まれながら図中下側から上側に向けて搬送される過程で、定着ベルト84によって加熱され、押圧されることによりフルカラートナー像が転写紙Pに定着される。
【0118】
このようにして定着処理が施された転写紙Pは、排紙ローラ対87のローラ間を経た後、機外へと排出される。プリンタ500本体の筺体の上面には、スタック部88が形成されており、排紙ローラ対87によって機外に排出された転写紙Pは、このスタック部88に順次スタックされる。
【0119】
転写ユニット60の上方には、Y,C,M,Kトナーを収容する四つのトナーカートリッジ100Y,100C,100M,100Kが配設されている。トナーカートリッジ100Y,100C,100M,100K内のY,C,M,Kトナーは、作像ユニット1Y,1C,1M,1Kの現像装置に適宜供給される。これらトナーカートリッジ100Y,100C,100M,100Kは、作像ユニット1Y,1C,1M,1Kとは独立してプリンタ本体に脱着可能である。
【0120】
次に、プリンタ500における画像形成動作を説明する。
操作部などからプリント実行の信号を受信したら、帯電ローラ4及び現像ローラ51にそれぞれ所定の電圧または電流が順次所定のタイミングで印加される。同様に、光書込ユニット40及び除電ランプなどの光源にもそれぞれ所定の電圧または電流が順次所定のタイミングで印加される。また、これと同期して、駆動手段としての感光体駆動モータにより感光体3が図中矢印方向に回転駆動される。
【0121】
感光体3が図中矢印方向に回転すると、まず感光体3表面が、帯電ローラ4によって所定の電位に一様帯電される。そして、光書込ユニット40から画像情報に対応したレーザ光Lが感光体3上に照射され、感光体3表面上のレーザ光Lが照射された部分が除電され静電潜像が形成される。
【0122】
静電潜像の形成された感光体3の表面は、現像装置5との対向部で現像ローラ51上に形成された現像剤の磁気ブラシによって摺擦される。このとき、現像ローラ51上の負帯電トナーは、現像ローラ51に印加された所定の現像バイアスによって、静電潜像側に移動し、トナー像化(現像)される。各作像ユニット1において、同様の作像プロセスが実行され、各作像ユニット1Y,1C,1M,1Kの各感光体3Y,3C,3M,3Kの表面上に各色のトナー像が形成される。
【0123】
このように、プリンタ500では、感光体3上に形成された静電潜像は、現像装置5によって、負極性に帯電されたトナーにより反転現像される。本実施形態では、N/P(ネガポジ:電位が低い所にトナーが付着する)の非接触帯電ローラ方式を用いた例について説明したが、これに限るものではない。
【0124】
各感光体3Y,3C,3M,3Kの表面上に形成された各色のトナー像は、中間転写ベルト14の表面上で重なるように、順次一次転写される。これにより、中間転写ベルト14上に四色トナー像が形成される。
【0125】
中間転写ベルト14上に形成された四色トナー像は、第一給紙カセット151または第二給紙カセット152から給紙され、レジストローラ対55のローラ間を経て、二次転写ニップに給紙される転写紙Pに転写される。このとき、転写紙Pはレジストローラ対55に挟まれた状態で一旦停止し、中間転写ベルト14上の画像先端と同期を取って二次転写ニップに供給される。トナー像が転写された転写紙Pは中間転写ベルト14から分離され、定着ユニット80へ搬送される。そして、トナー像が転写された転写紙Pが定着ユニット80を通過することにより、熱と圧力の作用でトナー像が転写紙P上に定着されて、トナー像が定着された転写紙Pはプリンタ500装置外に排出され、スタック部88にスタックされる。
【0126】
一方、二次転写ニップで転写紙Pにトナー像を転写した中間転写ベルト14の表面は、ベルトクリーニングユニット162によって表面上の転写残トナーが除去される。
また、一次転写ニップで中間転写ベルト14に各色のトナー像を転写した感光体3の表面は、クリーニング装置6によって転写後の残留トナーが除去され、潤滑剤塗布装置10によって潤滑剤が塗布された後、除電ランプで除電される。
【0127】
プリンタ500の作像ユニット1は、
図6に示すように感光体3と、プロセス手段として帯電ローラ4、現像装置5、クリーニング装置6、潤滑剤塗布装置10などが枠体2に収められている。そして、作像ユニット1は、プロセスカートリッジとしてプリンタ500本体から一体的に着脱可能となっている。プリンタ500では、作像ユニット1がプロセスカートリッジとしての感光体3とプロセス手段とを一体的に交換するようになっているが、感光体3、帯電ローラ4、現像装置5、クリーニング装置6、潤滑剤塗布装置10のような単位で新しいものと交換するような構成でもよい。
【0128】
次に、本発明を適用したプリンタ500に好適なトナーについて説明する。
プリンタ500に用いるトナーとしては、画質向上のために、高円形化、小粒径化がし易い懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法により製造された重合トナーを用いるのが好ましい。特に、円形度が0.97以上、体積平均粒径5.5μm以下の重合トナーを用いるのが好ましい。平均円形度が0.97以上、体積平均粒径5.5μm以下のものを用いることにより、より高解像度の画像を形成することができる。
【0129】
ここでいう「円形度」は、フロー式粒子像分析装置FPIA-2000(東亜医用電子社製)により計測した平均円形度である。具体的には、容器中の予め不純固形物を除去した水100~150ml中に、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1~0.5ml加え、更に測定試料(トナー)を0.1~0.5g程度加える。その後、このトナーが分散した懸濁液を、超音波分散器で約1~3分間分散処理し、分散液濃度が3000~1[万個/μl]となるようにしたものを上述の分析装置にセットして、トナーの形状及び分布を測定する。そして、この測定結果に基づき、
図7Aに示す実際のトナー投影形状の外周長をC1、その投影面積(粒子投影面積)をSとし、この投影面積Sと同じ面積を持つ
図7Bに示す真円の外周長(周囲長)をC2としたときのC2/C1を求め、その平均値を円形度とした。
【0130】
体積平均粒径については、コールターカウンター法によって求めることが可能である。具体的には、コールターマルチサイザー2e型(コールター社製)によって測定したトナーの個数分布や体積分布のデータを、インターフェイス(日科機社製)を介してパーソナルコンピューターに送って解析するのである。
解析方法の具体例を説明する。1級塩化ナトリウムを用いた1%NaCl水溶液を電解液として用意する。そして、この電解水溶液100~150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1~5ml加える。更に、これに被検試料としてのトナーを2~20mg加え、超音波分散器で約1~3分間、分散処理する。
そして、別のビーカーに電解水溶液100~200mlを入れ、その中に分散処理後の溶液を所定濃度になるように加えて、上記コールターマルチサイザー2e型にかける。
アパーチャーとしては、100μmのものを用い、50,000個のトナー粒子の粒径を測定する。
チャンネルとしては、2.00~2.52μm未満;2.52~3.17μm未満;3.17~4.00μm未満;4.00~5.04μm未満;5.04~6.35μm未満;6.35~8.00μm未満;8.00~10.08μm未満;10.08~12.70μm未満;12.70~16.00μm未満;16.00~20.20μm未満;20.20~25.40μm未満;25.40~32.00μm未満;32.00~40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径2.00μm以上32.0μm以下のトナー粒子を対象とする。
【0131】
そして、「体積平均粒径=ΣXfV/ΣfV」という関係式に基づいて、体積平均粒径を算出する。但し、「X」は各チャンネルにおける代表径、「V」は各チャンネルの代表径における相当体積、「f」は各チャンネルにおける粒子個数である。
【0132】
このような重合トナーにおいては、従来の粉砕トナーを感光体3表面から除去するときと同じようにしてクリーニングブレード62で除去しようとしても、その重合トナーを感光体3表面から十分に除去しきれず、クリーニング不良が発生する。また近年の結晶性樹脂を用いた低温定着トナーは、ブレードすり抜け時に大きく変形し、ブレードの稜線に固着したり、感光体表面に融着してしまう。そこで、クリーニングブレード62の感光体3への当接圧を高めて、クリーニング性をアップしようとすると、クリーニングブレード62が早期に摩耗してしまうという問題があった。
【0133】
また、クリーニングブレード62と感光体3との摩擦力が高まって、クリーニングブレード62の感光体3と当接している先端稜線部が感光体3の移動方向に引っ張られて、先端稜線部がめくれてしまう。クリーニングブレード62の先端稜線部がめくれると、異音や振動、先端稜線部の欠落などの様々な問題が生じてしまう。
本発明のクリーニングブレードは、上述のような重合トナーにおいてもクリーニング不良を発生することがなく、異音や振動、先端稜線部の欠落等も生じることがない。
【実施例】
【0134】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0135】
下記に示す実施例及び比較例は、弾性部材の基材、表面層の形成材料(硬化性組成物)、当接部の表面層の膜厚、表面層の形成領域をそれぞれ変化させて、評価を行ったものである。
【0136】
弾性部材の基材としては、表1のJIS-A硬度、23℃反発弾性率、マルテンス硬度(HM)となっている6つのウレタンゴム(基材1~6)を用意した。測定方法を以下に示す。
【0137】
<基材のJIS-A硬度>
弾性部材の基材の下面側のJIS-A硬度は、高分子計器株式会社製マイクロゴム硬度計MD-1を用い、JIS K6253に準じて測定した(23℃)。
【0138】
<基材の反発弾性率>
弾性部材の基材の反発弾性率は、23℃で、東洋精機製作所製No.221レジリエンステスタを用い、JIS K6255に準じて測定した。試料は厚み4mm以上となるように厚み2mmのシートを重ね合わせたものを用いた。
【0139】
<基材のマルテンス硬度>
弾性部材の基材のブレード先端面において、基材のマルテンス硬度(HM)は、フィシャー・インストルメンツ社製、微小硬度計 HM-2000を用い、ビッカース圧子を1.0mNの力で10秒間押し込み、5秒間保持し、1.0mNの力で10秒間抜いて、測定した。
【0140】
ブレードの先端面を測定する方法としては、
図8Aに示すようにブレードの先端を奥行き約2mm、幅100mmで切断し、先端面が上を向くようにスライドガラス等に接着剤や両面テープで固定し、先端面の先端稜線部から100μmの位置を測定した。
測定位置Mの詳細を、
図8B、
図8C、
図8Dに示す。
図8B、及び
図8Cは、基材に表面層がない場合の測定位置Mを示し、
図8Dは、基材上に表面層がある状態での測定位置Mを示す。
【0141】
【0142】
<表面層形成例>
(調製例)
-硬化性組成物の調製-
下記表2に示す組成から、硬化性組成物1~9を常法により調製した。硬化性組成物1~2は、熱硬化性組成物であり、硬化性組成物3~9は紫外線硬化性組成物である。
【0143】
【0144】
表2中、MTHPAは3-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、BDMAはN,N-ジメチルベンジルアミンを示す。
【0145】
前記硬化性組成物1~9で用いた硬化材料の詳細について、下記表3及び表4に示す。
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
-硬化性組成物の硬化物フィルム-
下表5に示す硬化性組成物の硬化物フィルムを用いた。
【0150】
【0151】
<トナーの作製例>
以下に示す重合法(特開2014-92633号公報)により作製したトナーを用いた。
【0152】
作製したトナーの物性は、以下の通りである。
・トナー母体粒子:平均円形度0.98、体積平均粒径4.9μm
・外添剤:小粒径シリカ 1.5質量部(クラリアント社製、H2000)
:小粒径酸化チタン 0.5質量部(テイカ社製、MT-150AI)
:大粒径シリカ 1.0質量部(電気化学工業社製、UFP-30H)
・トナーのガラス転移温度:50℃
【0153】
(実施例1)
<クリーニングブレード1の作製>
厚み1.8mmの短冊形状の基材1の先端面から4mm幅を残して基材1の下面にマスキングし、硬化性組成物1を基材1の下面に平均膜厚が25μmの表面層が形成されるように塗工した。
具体的には、スプレー塗工により基材の先端面から6mm/sのスプレーガン移動速度にて基材1の下面全面に重ね塗りを行った。その後、マスキングをはがし、110℃の恒温槽で3時間加熱を行った後、165℃の恒温槽で2時間加熱をして硬化させた。
次に、先端面から1mmのところで切断して当接部を形成した。
【0154】
次に、前記当接部に表面層が形成された各弾性部材をカラー複合機(imagio MP C4500、リコー社製)に搭載できるように板金ホルダー(支持部材)に接着剤で固定した。以上により、当接部に表面層が形成されたクリーニングブレード1を作製した。
【0155】
作製した前記弾性部材及びクリーニングブレードについて、以下のようにして、諸特性を測定した。結果を表6に示した。
【0156】
<表面層の平均厚み>
図9は、実施例におけるクリーニングブレードの当接部の厚みの測定箇所を示す断面図である。
図9に示すように、前記弾性部材を長手方向に対して直交する面で輪切りにし、この断面を上向きにして、デジタルマイクロスコープVHX-2000(キーエンス社製)で観察した。測定箇所は、前記断面のブレード当接部(先端稜線部)から5μm離れた位置である。
前記弾性部材を輪切りにする方法としては、弾性部材の長手方向の厚みが3mmとなるように、弾性部材の長手方向に対して垂直に剃刀を用いて切断した。その際、垂直スライサーを用いると断面をよりきれいに切ることができる。前記弾性部材を輪切りにする長手方向の位置は、両端の2cmの部分を除いた位置とした。
【0157】
<当接部の曲率半径>
実施例におけるクリーニングブレードの当接部(先端稜線部)の曲率半径は、
図10に示すようにクリーニングブレードを45度の方向から当接部をレーザマイクロスコープVK-9510(キーエンス社製)で観察した。
図11に測定の一例を示す。
図11に示される例は曲率半径2.5μmの例であり、曲率半径=エッジ幅/√2の計算式を用いて求めている。なお、測定箇所は両端の2cmの部分を除いた位置とした。
【0158】
<クリーニングブレードのマルテンス硬度>
実施例におけるクリーニングブレードの下面において、クリーニングブレードのマルテンス硬度(HM)は、フィシャー・インストルメンツ社製、微小硬度計 HM-2000を用い、ビッカース圧子を1.0mNの力で10秒間押し込み、5秒間保持し、1.0mNの力で10秒間抜いて、測定した。測定位置は、先端稜線部から20μmの位置とし、ビッカース圧子が表面層に接するようにして測定した。なお、測定箇所は両端の2cmの部分を除いた位置とした。
【0159】
<画像形成装置の組み立て>
作製したクリーニングブレード1をカラー複合機(imagio MP C4500、リコー社製)(プリンタ部は
図5に示す画像形成装置500と同様の構成)に取り付け、実施例1の画像形成装置を組み立てた。
なお、クリーニングブレードは、線圧:20g/cm、クリーニング角:79°となるように画像形成装置に取り付けた。また、上記装置は感光体表面への潤滑剤塗布装置を備えており、潤滑剤塗布により感光体表面の静止摩擦係数が非画像形成時に0.2以下に維持される。なお、感光体表面の静止摩擦係数の測定方法については、オイラーベルトの方法で、例えば、特開平9-166919号公報の段落番号0046に記載されている。
【0160】
<画像形成条件>
前記画像形成装置を用い、実験室環境:21℃で65%RH、通紙条件:画像面積率5%チャートを3プリント/ジョブで、50,000枚(A4サイズ横)を出力し、以下のようにして、5万枚通紙後に、諸特性を評価した。結果を表7に示した。
【0161】
<クリーニング性>
評価画像として、縦帯パターン(紙進行方向に対して)43mm幅、3本チャートをA4サイズ横で、20枚出力し、得られた画像を目視観察し、クリーニング不良による画像異常の有無により、クリーニング性を評価した。下記、「◎」「○」「△」を許容可とし、「×」を許容不可とした。
【0162】
[評価基準]
◎:クリーニング不良ですり抜けたトナーが印刷紙上にも感光体上に目視で確認できず、感光体上を長手方向に顕微鏡で観察してもトナーのスジ状のすり抜けが確認できない。
○:クリーニング不良ですり抜けたトナーが印刷紙上にも感光体上にも目視で確認できない。
△:クリーニング不良ですり抜けたトナーが印刷紙上には存在しないが感光体上には目視で確認できる。
×:クリーニング不良ですり抜けたトナーが印刷紙上にも感光体上にも目視で確認できる。
【0163】
<異音>
異音の評価として、クリーニング性評価の画像出力時に人の耳により異音発生有無の確認を行い、以下のように判断した。このとき、高周波や低周波など音に違いがある場合でも、ブレードから出ている音であれば区別なく異音として発生の有無を評価した。
【0164】
[評価基準]
○:異音が発生しない
×:異音が発生する
【0165】
<当接部の摩耗量>
前記50,000枚の出力を行った後、弾性部材の当接部の摩耗量を、
図12に示すように弾性部材の先端面側から見た摩耗幅を、レーザマイクロスコープVK-9510(キーエンス社製)により測定した。弾性部材の当接部の摩耗量は、表面層が形成されている場合は表面層の摩耗量を測定し、表面層が形成されていない場合は基材の摩耗量を測定することとなる。
【0166】
(比較例1)
基材1をクリーニングブレード27として用いた。
【0167】
(実施例2、9、13、15、19、20及び比較例2)
-クリーニングブレード2、9、13、15、19、20及び28の作製-
実施例1のクリーニングブレード1において、下記表6に示す基材、硬化性組成物(表面層形成硬化材料)、表面層の形成領域、及び、表面層の厚みを代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2、9、13、15、19、20、及び比較例2のクリーニングブレード2、9、13、15、19、20、及び28を作製した。
【0168】
(実施例3、10、14)
-クリーニングブレード3、10、14の作製-
実施例1のクリーニングブレード1において、下記表6に示す基材、硬化性組成物(表面層形成硬化材料)、表面層の形成領域、及び、表面層の厚みを代えて塗工を行った。硬化条件は実施例1とは異なり、80℃の恒温槽で3分間予備乾燥を行った後、80℃の恒温槽で60分間加熱をして硬化させた。
次に、先端面から1mmのところで切断して当接部を形成した。
【0169】
(実施例4~8、11、12、16~18及び比較例3、5)
-クリーニングブレード4~8、11、12、16~18及び29、31の作製-
実施例1のクリーニングブレード1において、下記表6に示す基材、硬化性組成物(表面層形成硬化材料)、表面層の形成領域、及び、表面層の厚みを代えて塗工を行った。硬化条件は実施例1とは異なり、UV照射積算量が6000mJ/cm2となるように高圧水銀ランプを用いて紫外線露光を行った。このとき紫外線露光(照射雰囲気)は窒素雰囲気下で行った。またこのとき、高圧水銀ランプが上方にあるのに対し、ブレードの先端稜線部を上向きにセットして紫外線を照射させることで、紫外線が先端稜線部に効率的に照射されるようにした。
次に、先端面から1mmのところで切断して当接部を形成した。
【0170】
<紫外線積算光量測定方法>
紫外線積算光量計UIT-250(ウシオ電機社製)を用いて254nmの波長における紫外線積算光量を測定した。このとき、積算光量計のセンサー部がクリーニングブレードの先端稜線部の高さと同じになるようにして測定をした。
【0171】
(比較例4)
-クリーニングブレード30の作製-
厚み1.8mmの短冊形状の基材2の先端面から3mmの領域を硬化性組成物3に浸漬し、当接部平均膜厚が1μmの表面層が形成されるように引き上げてコーティングを行った。その後、UV照射積算量が6000mJ/cm2となるように高圧水銀ランプを用いて紫外線露光を行った。このとき紫外線露光(照射雰囲気)は窒素雰囲気下で行った。またこのとき、高圧水銀ランプが上方にあるのに対し、ブレードの先端稜線部を上向きにセットして紫外線を照射させることで、紫外線が先端稜線部に効率的に照射されるようにした。
【0172】
(実施例21~26及び比較例6)
-クリーニングブレード21~26及び32の作製-
厚み1.8mmの23mm×326mm平板状の基材に、マスクをしてシートの表面一部に表5及び表6に示す硬化性組成物の硬化物フィルムを用いて表面層を設けた後、大きさが半分になるように中心を裁断し、11.5mm×326mmの短冊状のシートを作製した。
作製手順を、
図13A~
図13Cを用いて説明する。
まず、厚み1.8mmの23mm×326mm平板状の基材622を用意する(
図13A)。
続いて、基材622の中央に硬化性組成物の硬化物フィルムである表面層623を熱溶着させて配する(
図13B)。
続いて、大きさが半分になるように中心を裁断し、11.5mm×326mmの短冊状のシートを得る(
図13C)。
裁断後の表面層のエッジ部分がクリーニングブレードにおける先端稜線部に該当する。熱溶着するフィルムの幅で表面層の幅が決定する。
【0173】
(比較例7)
-クリーニングブレード33の作製-
厚み1.8mmの短冊形状の基材3の先端面から5mm幅を残して基材3の下面にマスキングし、硬化性組成物5を基材3の下面に、先端面から50μmの位置において膜厚が20μmの表面層が形成されるように塗工した。
具体的には、スプレー塗工により基材の先端面から6mm/sのスプレーガン移動速度にて基材3の下面全面に重ね塗りを行った。その後、マスキングをはがし、UV照射積算量が6000mJ/cm2となるように高圧水銀ランプを用いて紫外線露光を行った。このとき紫外線露光(照射雰囲気)は窒素雰囲気下で行った。またこのとき、高圧水銀ランプが上方にあるのに対し、ブレードの先端稜線部を上向きにセットして紫外線を照射させることで、紫外線が先端稜線部に効率的に照射されるようにした。
以上により、クリーニングブレード33を得た。
なお、実施例1のような、先端面から1mmのところでの切断は行わなかった。
【0174】
作製した各クリーニングブレード2~33を、実施例1のクリーニングブレード1と同様にカラー複合機(imagio MP C4500、リコー社製)に取り付け、実施例2~26及び比較例1~7の画像形成装置を組み立てた。また、実施例1と同様にして、クリーニング性、異音、及び摩耗幅を評価し、この結果を表7に示した。
【0175】
【0176】
【0177】
実施例1~26のクリーニングブレードでは、当接部の表面層の平均膜厚が10μm以上100μm以下であることから、弾性部材の当接部の動きの抑制と、摩耗しても基材ゴムが露出しないことから長期の使用でも良好なクリーニング性と異音の発生を抑えることができることがわかった。また、タンデム方式の画像形成装置においても色ずれが生じていなかった。
【0178】
一方、比較例1では、当接部に表面層が形成されていないことから、弾性部材の当接部の動きを抑制できず、えぐれ摩耗が発生してしまい、クリーニング不良と異音が発生した。
また、比較例2~7では、当接部の表面層の平均膜厚が10μm以上100μm以下になっていないことから経時の使用により、クリーニング不良や異音が発生した。比較例2は表面層の平均膜厚が厚すぎたために弾性部材の感光体への追従性を阻害してしまいクリーニング不良が発生した。比較例3、4は長期の使用で摩耗幅が表面層の平均膜厚よりも大きくなってしまったことで基材の弾性部材が露出したことによる。
比較例5は表面層の平均膜厚が厚く、経時の使用で膜がひび割れてしまい、クリーニング不良が発生した。
また、比較例4、及び比較例7では、ブレード当接部(先端稜線部)から5μm離れた位置での平均膜厚は、それぞれ0.3μm、4μmであるが、ブレード当接部(先端稜線部)から50μm離れた位置での平均膜厚は、それぞれ1μm、20μmであった。
【0179】
<追加評価>
実施例13~20のクリーニングブレード13~20について、表7の評価後に同条件にて追加で3万枚の通紙を行い、計8万枚通紙後の評価も行った。結果を表8に示す。
【0180】
【0181】
実施例13~20では、基材のマルテンス硬度が2.0N/mm2以上であったため、基材先端部の変形が少なく、先端部の長期の使用でも表面層のひび割れが発生せず、クリーニング性を維持できた。
【0182】
<1> 被清掃部材の表面に当接して前記被清掃部材の表面に付着した付着物を除去する弾性部材を備え、
前記弾性部材は、基材と、硬化性組成物の硬化物からなる表面層とを有し、
前記表面層は、前記被清掃部材と当接する当接部よりも前記被清掃部材の進行方向下流側と対向する基材の面を基材下面としたとき、前記当接部を含む前記基材下面の少なくとも一部に形成されており、
前記当接部における前記表面層の平均膜厚が10μm以上100μm以下であることを特徴とするクリーニングブレードである。
<2> 前記硬化性組成物の硬化物が、エポキシ樹脂の硬化物、及びポリエチレン骨格の樹脂の硬化物のいずれかであることを特徴とする前記<1>に記載のクリーニングブレードである。
<3> 前記当接部における前記表面層の曲率半径が3.5μm以下であることを特徴とする前記<1>又は<2>に記載のクリーニングブレードである。
<4> 前記基材下面に形成される前記表面層が前記当接部から1mm以上7mm以下の領域に形成されていることを特徴とする前記<1>乃至<3>のいずれかに記載のクリーニングブレードである。
<5> 前記基材における先端面を微小硬度計で測定したマルテンス硬度が、2.0N/mm2以上であることを特徴とする前記<1>乃至<4>のいずれかに記載のクリーニングブレードである。
<6> 前記表面層を微小硬度計で測定したマルテンス硬度が、3N/mm2以上30N/mm2以下であることを特徴とする前記<1>乃至<5>のいずれかに記載のクリーニングブレードである。
<7> 像担持体と、前記像担持体上に残留するトナーを除去するクリーニング手段とを少なくとも有するプロセスカートリッジであって、
前記クリーニング手段が前記<1>乃至<6>のいずれかに記載のクリーニングブレードを有することを特徴とするプロセスカートリッジである。
<8> 像担持体と、前記像担持体表面を帯電させる帯電手段と、帯電された前記像担持体を露光して静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着手段と、前記像担持体上に残留するトナーを除去するクリーニング手段と、を有する画像形成装置であって、
前記クリーニング手段が前記<1>乃至<6>のいずれかに記載のクリーニングブレードを有することを特徴とする画像形成装置である。
【符号の説明】
【0183】
1 作像ユニット
2 枠体
3 感光体
4 帯電ローラ
5 現像装置
6 クリーニング装置
7 一次転写ローラ
10 潤滑剤塗布装置
14 中間転写ベルト
40 光書込ユニット
41 ポリゴンミラー
51 現像ローラ
52 供給スクリュ
53 攪拌スクリュ
54 ドクタ
55 レジストローラ対
60 転写ユニット
62 クリーニングブレード
62a ブレード先端面
62b ブレード下面
62c 先端稜線部
621 支持部材
622 基材
623 表面層
624 弾性部材
63 第一ブラケット
64 第二ブラケット
66 二次転写バックアップローラ
67 駆動ローラ
68 補助ローラ
69 テンションローラ
70 二次転写ローラ
80 定着ユニット
81 加圧加熱ローラ
82 定着ベルトユニット
84 定着ベルト
83 加熱ローラ
85 テンションローラ
86 駆動ローラ
87 排紙ローラ対
88 スタック部
100 トナーカートリッジ
101 ファーブラシ
103 固形潤滑剤
103a 潤滑剤加圧スプリング
103b ブラケット
123 像担持体
151 第一給紙カセット
151a 第一給紙ローラ
152 第二給紙カセット
152a 第二給紙ローラ
153 給紙路
154 搬送ローラ対
162 ベルトクリーニングユニット
162a ベルトクリーニングブレード
ド500 画像形成装置(プリンタ)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0184】
【文献】特許第3602898号公報
【文献】特開2004-233818号公報
【文献】特許第5532378号公報
【文献】特許第2962843号公報
【文献】特開2009-300751号公報