(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】画像形成物質除去剤、積層体および画像形成物質の除去方法
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
G03G21/00 578
(21)【出願番号】P 2017219200
(22)【出願日】2017-11-14
【審査請求日】2020-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】川浪 敬太
(72)【発明者】
【氏名】木村 秀孝
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-098648(JP,A)
【文献】特開平09-048865(JP,A)
【文献】特開平03-240535(JP,A)
【文献】特表2016-516118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシアルキル系(メタ)アクリレート、芳香族系(メタ)アクリレート
(ただし、ベンジル(メタ)アクリレートは除く)、およびアルキルグリコール系(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1つ以上の(メタ)アクリレートと、光重合開始剤とを含有し、25℃での粘度が200mPa・s以下である活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなることを特徴とする画像形成物質除去剤。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成物質除去剤を、被記録材
上に備えた画像形成物質の上に積層させた積層体。
【請求項3】
前記被記録材が樹脂フィルムである請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記樹脂フィルムは、ポリエステルおよびポリエステルに非相溶なポリマーを含有する請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載の積層体に活性エネルギー線を照射した後に、前記被記録材から前記画像形成物質除去剤および画像形成物質を除去する画像形成物質の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成物質除去剤に関するものであり、詳しくは、電子写真方式や熱転写方式、インクジェット方式などの方式によって樹脂フィルム等の被記録材の表面に形成された、熱可塑性樹脂を含有するトナーおよび/又は画像形成物質による文字や画像を、被記録材表面から極めて容易に、確実且つ綺麗に除去することができ、コスト的にも優れた方法で剥離除去を行うことができる画像形成物質除去剤と、この画像形成物質除去剤を用いた積層体および画像形成物質の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、複写機や印字プリンター類の高性能化に伴い、これらの機器が書類の印刷や複写の他に、写真や映像の印刷、帳票や伝票類の発行などの様々な用途や形態の紙材の発行に用いられ、企業や家庭における複写用紙やプリンター用紙の消費量が増加している。
【0003】
複写用紙やプリンター用紙を含む紙の大量消費に対して、紙の原料である木材チップの輸入量の増加は森林伐採を抑制する観点から望ましくないため、使用済みの紙を回収し、製紙工場で再生パルプに離解してリサイクルした再生紙が利用されてきている。
【0004】
再生紙は、その主な原料が回収した使用済みの用紙であるが、回収された使用済みの紙から再生紙を造るには、ある程度の量の新たな木材資源も必要であり、仮に再生紙の利用率が上がったとしても木材資源が消費されることに変わりはなく、再生紙の利用は森林環境を保護するための抜本的な解決策にはならない。
また、再生紙は、上質紙と比べて未だ品質が劣っており、上質紙の複写用紙を用いてカラー印刷を行なった場合でも、トナーが紙に染込んで色彩が薄くなる傾向にあるが、再生紙からなる複写用紙を用いた場合には、紙の白色度が下がって色目はグレーがかるため、印刷したときの発色度合がさらに落ちて、画像品質が劣化する傾向にある。
さらに、再生紙は、製造コストがかかって上質紙よりも割高になりやすいことなどの問題があるため、上質紙に代わる用紙としての利用は定着していないのが実状である。
【0005】
このような再生紙に代えて、複写機などの電子写真方式によって紙の表面に形成された画像を剥離除去することで、一旦使用した紙を再利用することができる技術が提案されており、例えば熱可塑性樹脂を含有するトナーの画像形成物質で紙に形成された画像の表面に接着力を有する剥離部材を重ね合せ、その状態で適宜に加熱及び加圧することで画像形成物質を剥離部材に転写して除去する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
しかし、このような剥離部材を用いる方法は、剥離部材が重ね合わされた画像形成物質を凝集破壊が生じる温度まで加熱する必要があるとともに加熱温度の調整が難しいことと相俟って、この方法を実施するための画像除去装置は加熱手段や加熱温度を調整する機構などが組み込まれた複雑で大型の構成のものとなり、ランニングコストも高くならざるを得ず、画像形成物質を除去して紙を再生するコストを低廉に抑えることができないという問題がある。
【0007】
また、樹脂フィルムに形成された熱溶融性の画像を、熱溶融性剥離体を介在させて画像表面を加熱することで、シート表面から剥離除去する方法が知られている(例えば特許文献2参照)。しかし、かかる方法は、熱溶融性剥離体と画像形成物質がともに熱溶融性樹脂を含んでいるため、シート表面を加熱加圧することで熱溶融性樹脂が相溶し界面を形成しない状態となり、シート表面から剥離部材に転写された画像形成物質を綺麗に除去することが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-279619号公報
【文献】特開平1-297294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実状に鑑みなされたものであって、その解決課題は、電子写真方式や熱転写方式、インクジェット方式などの方式によって被記録材の表面に形成された、熱可塑性樹脂を含有するトナーおよび/又は画像形成物質による文字や画像を、被記録材表面から極めて容易に、確実且つ綺麗に除去することができ、コスト的にも優れた方法で剥離除去を行うことができる画像形成物質除去剤と、この画像形成物質除去剤を用いた積層体および画像形成物質の除去方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成からなる画像形成物質除去剤によれば、上記課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は以下の[1]~[5]を要旨とする。
【0012】
[1] ヒドロキシアルキル系(メタ)アクリレート、芳香族系(メタ)アクリレート、およびアルキルグリコール系(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1つ以上の(メタ)アクリレートと、光重合開始剤とを含有し、25℃での粘度が200mPa・s以下である活性エネルギー線硬化性樹脂組成物からなることを特徴とする画像形成物質除去剤。
【0013】
[2] [1]に記載の画像形成物質除去剤を、被記録材もしくは画像形成物質の上に積層させた積層体。
【0014】
[3] 前記被記録材が樹脂フィルムである[2]に記載の積層体。
【0015】
[4] 前記樹脂フィルムは、ポリエステルおよびポリエステルに非相溶なポリマーを含有する[3]に記載の積層体。
【0016】
[5] [2]~[4]のいずれかに記載の積層体に活性エネルギー線を照射した後に、前記被記録材から前記画像形成物質除去剤および画像形成物質を除去する画像形成物質の除去方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の画像形成物質除去剤によれば、電子写真方式や熱転写方式、インクジェット方式などの方式によって樹脂フィルム等の被記録材の表面に形成された、熱可塑性樹脂を含有するトナーおよび/又は画像形成物質による文字や画像上に、この画像形成物質除去剤からなる樹脂層を形成し、紫外線、電子線および可視光線等の照射によって迅速に硬化させ、硬化の際に被記録材表面に形成された文字や画像を樹脂層側に転写して保持し、これを被記録材表面から分離することによって、文字や画像を被記録材表面から極めて容易に、確実且つ綺麗に、コスト的にも優れた方法で除去することができる。このため、画像形成物質を除去した樹脂フィルム等の被記録材を繰り返し複写用紙やプリンター用紙の被記録材として用いることができるようになり、その工業的価値は高いものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
複写用紙やプリンター用紙の汎用材料として樹脂フィルムの使用が広がれば、樹脂フィルムは木材資源を使わずに製造可能なため、森林環境の保護に極めて有効である。また、カラー印刷を行なった場合でもトナーの染込みなどは生じず、画像を高品質で印刷すること、画像品質を落とすことなく、トナーの使用量を減らすことが可能である。
【0020】
また、紙を材料とする複写用紙やプリンター用紙は、複写機やプリンターの中で破れたり詰まったりしないように、また、吸湿してしわやカールが発生したりトナー定着時の加熱・加圧によって破れたりしないように、さらには両面について特に全面印刷した際に裏写りがしないように、ある一定の厚みを有している。しかし、紙を材料とする用紙に代えて樹脂フィルムを用いれば、樹脂フィルムは、紙よりも厚みを薄くして裏写りすることなく複写機やプリンターでの印字・印刷が可能となり、また、厚みを薄く出来ることは、紙を材料とする用紙よりも輸送や配送効率が効率的となり、流通過程で発生するCO2低減にも貢献でき、印字・印刷物をファイルにしたときの減容、保管スペースの削減も可能となり、大量の印字・印刷物を持ち運びする際の作業負担が軽減され、さらには耐水性に優れ、長期保管が可能となるなど、実用上多くのメリットがある。
【0021】
しかしながら、複写機やプリンターで印刷または印字する被記録材として、紙や再生紙に代えて樹脂フィルムを用いれば上記のような多くの利点がある反面、これを樹脂フィルムへの一回のみの印刷または印字で廃棄したのでは石油資源の浪費となる。
【0022】
このようなことから、本発明者らは、樹脂フィルム表面に印刷または印字された画像を除去するなどして、同じシートを繰り返し複写用やプリンター用の被記録材として用いることができるように検討を実施した。
さらに文書の機密情報保持の観点から、例えば、公的機関や企業のオフィスにおいて使用された複写用紙やプリンター用紙について、機密情報保持の面から、外部委託されている機密文書の処理について、輸送中における情報漏洩リスク、輸送過程で発生するCO2低減貢献のため、社内で画像形成物質を簡便に除去して機密文書の処理を可能にすることもできるよう検討を実施した。
【0023】
これらの性能を満たすべく、樹脂フィルムの被記録材の表面に形成された、熱可塑性樹脂を含有するトナーおよび/又は画像形成物質による文字や画像を被記録材表面から剥離除去を行う方法に関して検討した結果、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を画像形成物質除去剤として用いて剥離除去する方法が、加熱による被記録材の劣化を引き起こすこともなく、極めて容易に、かつコスト的にも優れた方法で剥離除去することができ、画像形成物質除去後の被記録材を繰り返し複写用紙やプリンター用紙の被記録材として使用できることが判明した。
さらに、本発明者らは検討の結果、この活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を画像形成物質除去剤として用いて剥離除去を行う際に、好適に用いることができる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の物性を突き止めた。
【0024】
本発明の画像形成物質除去剤を構成する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(以下、「本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物」と称す場合がある。)は、ヒドロキシアルキル系(メタ)アクリレート、芳香族系(メタ)アクリレート、およびアルキルグリコール系(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1つ以上の(メタ)アクリレートと、光重合開始剤とを含有し、25℃での粘度が200mPa・s以下であることを特徴とする。
なお、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」の一方又は双方をさす。
【0025】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物における活性エネルギー線硬化性樹脂は、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂、可視光線硬化性樹脂等が具体的に挙げられる。中でも、取り扱いの容易性や、硬化性を考慮すると紫外線硬化性樹脂であることが好ましい。活性エネルギー線硬化性樹脂の一例としては、例えば、ハードコートが挙げられる。
【0026】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれる(メタ)アクリレートは、ヒドロキシアルキル系(メタ)アクリレート、芳香族系(メタ)アクリレート、およびアルキルグリコール系(メタ)アクリレート(以下、これらを「本発明の(メタ)アクリレート」と称す場合がある。)である。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
(メタ)アクリレートとして、ヒドロキシアルキル系、芳香族系、アルキルグリコール系のものを含むことにより、トナーなどの画像形成物質との密着性が良好となり、剥離しやすくなるだけでなく、被記録材の損傷が抑制され、画像形成物質除去後の被記録材の再利用が可能となる。一方、(メタ)アクリレートに上記成分が含まれていないと、トナーなどの画像形成物質との密着性が低下し、トナー等の画像形成物質を確実に除去できないおそれがある。
【0028】
ヒドロキシアルキル系(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また芳香族系(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、アルキルグリコール系(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
なお、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、上記の本発明の(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートを含有していてもよい。ただし、この場合、本発明の(メタ)アクリレートを用いることによる効果をより有効に得る上で、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれる全(メタ)アクリレート中の本発明の(メタ)アクリレートの割合は1質量%以上、特に1~100質量%であることが好ましい。
また、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、本発明の(メタ)アクリレートを3質量%以上、特に5質量%以上含むことが好ましい。
【0030】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤を含むことで、硬化反応における反応開始助剤としての機能を果たすことができる。
【0031】
光重合開始剤は、ラジカル発生機構によって大きく2つに分類され、光重合性開始剤自身の単結合を開裂分解してラジカルを発生させることができる開裂型光重合開始剤と、光励起した開始剤と系中の水素供与体とが励起錯体を形成し、水素供与体の水素を転移させることができる水素引抜型光重合開始剤と、に大別される。
【0032】
前記開裂型光重合開始剤としては、例えば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-[4-{4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)ベンジル}フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オン、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)、フェニルグリオキシリック酸メチル、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキシド、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキシドや、それらの誘導体などを挙げることができる。
【0033】
前記水素引抜型光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、4-メチル-ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3‘-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾイルぎ酸メチル、ビス(2-フェニル-2-オキソ酢酸)オキシビスエチレン、4-(1,3-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、3-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノンやその誘導体などを挙げることができる。
【0034】
但し、本発明で用いる光重合開始剤は前記に挙げた物質に限定されるものではない。上記に挙げた開裂型光重合開始剤及び水素引抜型光重合開始剤のうちのいずれか1種を使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の光重合開始剤の含有量は特に制限されるものではないが、0.1~10質量%、特に0.3~5質量%、とりわけ0.5~3質量%の割合で含有するのが好ましい。
光重合開始剤の含有量を上記範囲とすることで、活性エネルギー線に対する適度な反応感度を得ることができる。
【0036】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれるその他の成分は特に限定されるものではない。本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれるその他の成分としては、例えば、無機又は有機の微粒子、光重合開始剤以外の重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤及びレベリング剤等が挙げられる。
【0037】
また、ウェットコーティング法において製膜後乾燥させる場合には、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に任意の量の溶剤を添加してもよい。
しかしながら、オフィス内などの適用範囲を広くするためには、環境面から、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に溶剤を極力使用しないことが好ましい。本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が溶剤を含有する場合、その含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下であり、最も好ましくは溶剤を含有しない(意図的に含有しない)ことである。
【0038】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は薄膜で塗布するため、25℃での粘度が200mPa・s以下であり、好ましくは100mPa・s以下、より好ましくは50mPa・s以下である。25℃での粘度はより小さいものが好まれ、200mPa・s/25℃以下とすることで、画像形成物質除去剤である活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗布工程において、厚みを均一かつ薄く塗布することができる。
【0039】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、薄膜で塗布するため、必要に応じて本発明の(メタ)アクリレート以外の活性エネルギー線硬化性の(メタ)アクリレートを加えて粘度を調整することも可能である。該活性エネルギー線硬化性の(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、単官能(メタ)アクリレート、二官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0040】
本発明において、画像形成物質除去剤である本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の塗布方法としては、特に限られるものではなく、例えば、「コーティング方式」(原崎勇次著、槙書店、1979年発行)に示されるような、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーターまたはロールコート法、ダイコート法等の一般的なウェットコート法、押出法等が挙げられ、さらに、これら以外の塗布装置を使用することもできる。
【0041】
本発明において、画像形成物質除去剤としての活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は被記録材の表面に形成された熱可塑性樹脂を含有するトナーおよび/又は画像形成物質を確実に転写させ、且つランニングコストを抑えるため、できるだけ薄膜に塗布することが好ましい。本発明の画像形成物質除去剤による塗布層の膜厚は、硬化後の樹脂層の厚さとして20μm以下とすることが好ましく、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。膜厚を20μm以下とすることで、コスト面だけでなく、硬化時にラジカル反応による熱が発生し、被記録材の収縮によるシワ発生等のダメージを最小限に抑えながら画像形成物質除去剤および画像形成物質を除去することができる。
一方、硬化後の樹脂層の膜厚の下限は特に限定はされないが、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。
【0042】
画像形成物質除去剤である本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は必要に応じて可視光線、紫外線、X線及び電子線等の活性エネルギー線を照射し、硬化反応を行うことで樹脂層を形成することができる。硬化反応を行うことによって、被記録材から画像形成物質除去剤と共に画像形成物質を容易に除去することができる。
【0043】
前記活性エネルギー線の中でも、安価な装置を使用できることから紫外線を使用することが好ましい。紫外線を使用する際の光源としては、超高圧、高圧、中圧又は低圧水銀灯、メタルハライド灯、キセノンランプ、無電極放電ランプ及びカーボンアーク灯等が挙げられる。紫外線は数秒乃至数分間照射すればよい。
【0044】
本発明において、活性エネルギー線として例えば紫外線を照射する際、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が空気中の酸素の影響により硬化阻害を引き起こすおそれがある。このため、可能な限り活性エネルギー線硬化性樹脂組成物塗布面への酸素(空気)の混入を防いで酸素に触れないようにすることが好ましい。また、硬化後の画像形成物質除去剤を被記録材に形成された画像形成物質とともに、被記録材から剥離する必要があることから、被記録材の画像形成物質除去剤が塗布された面に画像形成物質除去剤が密着する支持体の表面を密着して接触するように設けることが好ましい。
【0045】
上記の通り、本発明では、被記録材もしくは画像形成物質上に、本発明の画像形成物質除去剤よりなる塗布層を積層形成した積層体とする。
【0046】
前記被記録材としては特に限定されるものではないが、画像形成物質および画像形成物質樹脂を容易に剥離除去することができる点で樹脂フィルムが好ましい。
【0047】
被記録材としての樹脂フィルムで用いる樹脂の種類は特に限定されないが、少なくとも主成分樹脂としてのポリエステルと、ポリエステルに非相溶なポリマーとを含むポリエステル樹脂層を備えているのが好ましい。
ここで、「主成分樹脂」とは、ポリエステル樹脂層を構成する樹脂成分のうち最も含有割合の多い樹脂の意味である。当該主成分樹脂は、ポリエステル樹脂層を構成する樹脂成分のうち30質量%以上、中でも50質量%以上、その中でも80質量%以上(100質量%を含む)を占める場合を想定することができる。
【0048】
樹脂フィルムを構成するポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものを指す。その芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0049】
代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート等が例示される。かかるポリエステルは、共重合されないホモポリマーであってもよく、またジカルボン酸成分の20モル%以下が主成分以外のジカルボン酸成分であり、および/またはジオール成分の20モル%以下が主成分以外のジオール成分であるような共重合ポリエステルであってもよい。またそれらの混合物であってもよい。
【0050】
ポリエステルは、従来公知の方法で、例えばジカルボン酸とジオールの反応で直接ポリエステルを得る方法や、ジカルボン酸の低級アルキルエステルとジオールとを従来公知のエステル交換触媒で反応させた後、重合触媒の存在下で重合反応を行う方法で得ることが出来る。重合触媒としては、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物等公知の触媒を使用することができる。
【0051】
ポリエステルに非相溶なポリマーを樹脂フィルム中に含有させることで、少なくとも一軸方向に延伸した樹脂フィルムに無数の極微細な空洞を含有させることができる。当該極微細な空洞によって、樹脂フィルムは光を散乱させ、白色不透明をもたらすだけでなく、樹脂フィルムの見掛け密度を低減させることができる。加えて、樹脂フィルム表面に印刷もしくは印字されたトナー等の熱可塑性樹脂を含有する画像形成物質を容易に剥離除去できるようになる。
【0052】
樹脂フィルムの表層にポリエステルに非相溶なポリマーを含有することによって、複写用紙やプリンター用紙の被記録材として用いた時、積層白色樹脂フィルム表面に印刷もしくは印字されたトナー等の熱可塑性樹脂を含有する画像形成物質を容易に剥離除去できる。また、十分な隠蔽性および軽量化を確保するために、必要に応じて中間層にポリエステルに非相溶なポリマーを含有させてもよい。
【0053】
なお、樹脂フィルムが積層構成である場合、ポリエステルに非相溶なポリマーは樹脂フィルムの全層に含有されてもよいし、特定の層に選択的に含有されてもよい。具体的には、ポリエステルに非相溶なポリマーは、樹脂フィルムの少なくとも一方の表層に含まれる場合や、中間層に含まれる場合がある。
【0054】
ポリエステルに非相溶なポリマーとしては、従来公知のポリマーを使用することができ、例えば、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリカーボネートなどが挙げられ、その中でもポリオレフィンやポリスチレンが好ましく、特にポリオレフィンが好ましい。さらに、ポリオレフィンの中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ-4-メチルペンテン-1、非晶性ポリオレフィンなどが挙げられ、それらの中でも空洞の形成、製膜の容易性を考慮するとポリプロピレンが好ましい。
【0055】
ポリエステルに非相溶なポリマーとしてポリプロピレンを使用する場合、用いるポリプロピレン中のプロピレン単位の含有量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。プロピレン単位以外を共重合させたコポリマーの含有量を少なくし、上記範囲で使用することにより、微細空洞の生成を十分なものとすることができる。
【0056】
上記ポリエステル樹脂層において、ポリエステルに対して、該ポリエステルに非相溶なポリマーの含有割合は、ポリエステル100質量部に対して、該ポリエステルに非相溶なポリマーを1~70質量部含有するのが好ましく、中でも2~50質量部、特に3~40質量部の割合で含有するのがさらに好ましく、5~35質量部の割合で含有するのが最も好ましい。
【0057】
ポリエステルに非相溶なポリマーとしてポリプロピレンを使用する場合、温度230℃、荷重2.16kg(21.2N)の条件下でのポリプロピレンのメルトフローインデックスは、下限として通常0.5ml/10分以上、好ましくは1ml/10分以上、より好ましくは3ml/10分以上、さらに好ましくは5ml/10分以上である。上記下限以上の場合、十分な空洞の大きさを生成させることができ、延伸時の破断を回避しやすいものとすることができる。一方、上限としては、通常50ml/10分以下、好ましくは40ml/10分以下、より好ましくは30ml/10分以下、さらに好ましくは25ml/10分以下である。上記上限以下の場合、横延伸時のクリップ外れの回避も可能となり、生産性を保持することが可能となる。
【0058】
樹脂フィルムにおけるポリエステルに非相溶なポリマーの含有量の下限は、通常1質量%以上、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、特に好ましくは8質量%以上である。上記下限以上で使用することにより、フィルムの微細空洞の生成量が十分なものとなり、フィルムの隠蔽性が向上し、かつ、見掛け密度の低減効果すなわち軽量化が十分なものとなる。また、フィルムの滑り性や鉛筆などの筆記性も向上し、印刷搬送性にも有利となる。さらに、フィルム表面においては、印刷もしくは印字されたトナーなどの画像形成物質による文字や画像を剥離除去しやすくなり、フィルムを複写用紙やプリンター用紙の被記録材として繰り返し用いることが可能となる。
一方、樹脂フィルムにおけるポリエステルに非相溶なポリマーの含有量の上限は、通常70質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下、特に好ましくは30質量%以下、最も好ましくは25質量%以下である。当該上限以下で使用することにより、生成する空洞の量が多すぎず、延伸時の破断を抑えやすい傾向がある。
なお、樹脂フィルムが積層構成である場合、上記の含有量は樹脂フィルム全層での平均含有率を意味してもよいし、特定の層中の含有量を意味してもよい。具体的には、樹脂フィルムの少なくとも一方の表層における含有量を意味する場合や、中間層における含有量を意味する場合がある。
【0059】
また、樹脂フィルムが3層以上の構成である場合、中間層は、フィルム製造時に発生する耳部、マスターロール耳部およびマスターロール下巻き部などの再生品を本発明の主旨を損なわない範囲で配合してもよい。これらの再生品が含まれることによって、コストダウンおよび環境負荷低減対応の効果が奏される。中間層における再生品の含有量は、色調規制の他に、極限粘度低下による製膜安定性の面から、中間層に対して95質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下、最も好ましくは40質量%以下である。
【0060】
また、被記録材には、必要に応じて、従来公知の無機もしくは有機粒子、酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料、顔料等を添加することができる。また用途によっては、紫外線吸収剤、特にベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤等を含有させてもよい。
【0061】
被記録材としての樹脂フィルムの厚さは特に制限はないが、通常10~1000μm程度であることが、被記録材としての機械的強度と薄膜性の両立の面で好ましい。
【0062】
本発明の画像形成物質の除去方法では、前述の樹脂フィルム等よりなる被記録材上に画像形成物質により文字や画像等が形成された印刷物に対して、少なくとも該画像形成物質による文字や画像等を覆うように本発明の画像形成物質除去剤である本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布した後、紫外線等の活性エネルギー線を照射し、その後、画像形成物質除去剤の硬化層と共に画像形成物質を除去する。
【0063】
前述の特許文献1では、熱可塑性樹脂をクリーニング材として用い、加熱によって画像形成物質を除去していたが、加熱の場合、被記録材にダメージを与えることになり、再生使用が困難になる可能性があった。
本発明によれば、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いることによって、紫外線等の活性エネルギー線照射によって硬化させた後に、画像形成物質を除去することができ、被記録材にダメージを与えることなく、画像形成物質を確実に除去することができ、被記録材の再生が可能となる。
【実施例】
【0064】
本発明に係る実施例を以下に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
[測定・評価方法]
以下の実施例及び比較例で用いた測定方法および評価方法は次のとおりである。
【0066】
(1)ポリエステルの極限粘度の測定方法
ポリエステルに非相溶なポリマーおよび粒子を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0067】
(2)活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の粘度の測定方法
E型粘度計(東機産業株式会社製)を用いて、回転速度1.0rpm、25℃の条件で粘度を測定した。
【0068】
(3)活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の膜厚の測定方法
トナー画像が印字されていない後述の被記録材(樹脂フィルム)上に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布し、その上から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物との密着性に優れる塗布層をフィルム両面に有し、THICKNESS GAGE(株式会社ミツトヨ製)を用いてフィルムの厚みを測定した積層ポリエステルフィルム(三菱ケミカル社製、ダイアホイル T910E50 WM19-、厚み:50μm)を重ね、ローラーにより活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を均一に伸ばし、積層ポリエステルフィルムの活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を重ね合わせていない面側から、紫外線を照射して、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させた。
次いで、硬化させた樹脂層が密着した積層ポリエステルフィルムを被記録材から剥がし、その膜厚をTHICKNESS GAGE(株式会社ミツトヨ製)を用いて測定し、測定済の積層ポリエステルの厚みを差し引いた分を活性エネルギー線硬化性樹脂の膜厚として算出した。
【0069】
(4)画像除去性の評価方法
後述の被記録材(樹脂フィルム)にカラー電子写真画像形成装置(リコー社製、リコーimagio MC C5001it)を用いて、二次色及び単色のべた画像、文字画像を有するフルカラーパターンを印字した。
トナー画像が印刷された被記録材上に、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布し、
その上から活性エネルギー線硬化性樹脂組成物との密着性に優れる塗布層をフィルム両面に有する積層ポリエステルフィルム(三菱ケミカル社製、ダイアホイル T910E50 WM19-、厚み:50μm)を重ね、ローラーにより活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を均一に伸ばし、積層ポリエステルフィルムの活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を重ね合わせていない面側から、紫外線を照射して、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させた。次いで、硬化させた樹脂層が密着した積層ポリエステルフィルムを被記録材から剥がし、トナー画像が被記録材上から剥離された状況を確認した。
剥離面を観察し、トナー画像を完全に除去できていれば「◎」、トナー画像の残りがわずかに見られるが、1~2mmサイズの点状で部分的に残るレベルであれば「○」、トナー画像の残りがわずかに見られるが、トナー画像の残りが全体的に見られるレベルであれば「△」、トナー画像を明らかに除去できずに残っているレベルであれば「×」とした。
【0070】
[被記録材(樹脂フィルム)の製造方法]
実施例および比較例で使用した被記録材(樹脂フィルム)は、以下のようにして製造したものである。
【0071】
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール60質量部、エチルアシッドフォスフェートを生成ポリエステルに対して30ppm、触媒として酢酸マグネシウム・四水和物を生成ポリエステルに対して100ppmを用い、窒素雰囲気下、260℃でエステル化反応をさせた。引き続いて、テトラブチルチタネートを生成ポリエステルに対して50ppm添加し、2時間30分かけて280℃まで昇温すると共に、絶対圧力0.3kPaまで減圧し、さらに80分、溶融重縮合させ、極限粘度が0.63dl/gのポリエステル(A)を得た。
【0072】
<ポリエステル(B)の製造方法>
溶融重合前に平均粒径が3.5μmのシリカ粒子を3.5質量部添加する以外はポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(B)を得た。
【0073】
<ポリエステル(C)の製造方法>
溶融重合前に平均粒径が0.31μmの酸化チタン粒子を50質量部添加する以外はポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(C)を得た。
【0074】
<被記録材(樹脂フィルム)の製造方法>
ポリエステル(A)、(B)、(C)、メルトフローインデックス(230℃、2.16kg荷重)7.5ml/10分のポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製:FL0007)をそれぞれ60質量%、10質量%、15質量%、15質量%の割合で混合した混合原料を表層の原料とした。また、ポリエステル(A)、メルトフローインデックス(230℃、2.16kg荷重)7.5ml/10分のポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ株式会社製:FL0007)をそれぞれ80質量%、20質量%の割合で混合した混合原料を中間層の原料とした。2台の押出機にそれぞれの原料を供給し、各々280℃で溶融した後、2種3層(厚み比が表層/中間層/表層=1:8:1)の積層構成で共押出した後に、30℃に設定した冷却ロール上に冷却固化させて未延伸シートを得た。
次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度95℃で機械方向(縦方向)に3.0倍延伸した後、テンターに導き、幅方向(横方向)に120℃で4.0倍延伸し、200℃で熱処理を行った後、幅方向(横方向)に2%弛緩し、厚み75μmの被記録材(樹脂フィルム)を得た。
【0075】
[画像形成物質除去剤用化合物]
画像形成物質除去剤である活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を構成する化合物は、以下のとおりである。
<(メタ)アクリレート>
(I):トリメチロールプロパントリアクリレート
(II):ポリエチレングリコール#200ジアクリレート
(III):ポリエチレングリコール#400ジアクリレート
(IV):ジプロピレングリコールジアクリレート
(V):エチレングリコールジメタクリレート
(VI):2-ヒドロキシエチルアクリレート
(VII):フェノキシエチルアクリレート
(VIII):2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート
(IX):1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート
(X):エトキシ化ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(XI):1,6-ヘキサンジオールジアクリレート
(XII):メタクリル酸テトラヒドロフルフリル
<光重合開始剤>
ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキシド
【0076】
[実施例1~11、比較例1~3]
下記表1に示す配合の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物よりなる画像形成物質除去剤1~14を調製した。調製された画像形成物質除去剤1~14(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物)について、前述の方法で粘度、膜厚を測定すると共に、画像除去性の評価を行い、結果を表2に示した。
【0077】
【0078】
【0079】
表2より明らかなように、実施例1~11の画像形成物質除去剤は、いずれもトナー画像の剥離性は良好であった。また、画像形成物質除去剤の樹脂層の膜厚も20μm以下で良好であった。
これに対して、比較例1は、トナー画像の剥離性は比較的良好であったが、画像形成物質除去剤の粘度が高いために、樹脂層の膜厚は28μmと厚すぎ、被記録材にダメージを与える結果となった。
また、本発明の(メタ)アクリレートに該当しない(メタ)アクリレートを用いた比較例2,3では、トナー画像の剥離性は不十分であった。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の画像形成物質除去剤を用いると、複写用紙などの紙に代わる情報印字媒体である被記録材として用いる樹脂フィルムの表面に形成された画像形成物質による画像を容易に、確実且つ綺麗に、コスト的にも優れた方法で剥離除去することができる。