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特許7010062液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/16 20060101AFI20220119BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
B41J2/16 503
B41J2/14 301
B41J2/14 305
B41J2/16 305
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018036590
(22)【出願日】2018-03-01
(65)【公開番号】P2019150991
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】大西 晃二
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-165853(JP,A)
【文献】特開2016-016522(JP,A)
【文献】特開2016-175246(JP,A)
【文献】特開2017-128110(JP,A)
【文献】特開2017-217820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/16
B41J 2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子が形成されたアクチュエータ基板と、前記アクチュエータ基板と対向する面に前記圧電素子に対応した空隙が形成されたサブフレーム基板と、が接着剤により接合されてなる液体吐出ヘッドであって、
前記サブフレーム基板の接合面は、少なくとも前記空隙の周囲に第1の開口部を有し、前記空隙と複数の前記第1の開口部とに囲まれた領域に前記第1の開口部の面積よりも小さい第2の開口部が形成されており、
前記第1の開口部間の最近接距離をa1とし、前記第1の開口部及び前記空隙のうち4つに囲まれた領域における前記第2の開口部と前記第1の開口部もしくは前記空隙との間の最近接距離をb1としたとき、a1≧b1を満たし、
前記第1の開口部と前記空隙との間の最近接距離をa2としたとき、a1>a2を満たし、
前記第1の開口部及び前記空隙のうち3つに囲まれた領域における前記第2の開口部と前記第1の開口部もしくは前記空隙との間の最近接距離をb2としたとき、a1≧b2を満たすことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第2の開口部は、前記空隙と複数の前記第1の開口部とに囲まれた領域内に複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
圧電素子が形成されたアクチュエータ基板と、前記アクチュエータ基板と対向する面に前記圧電素子に対応した空隙が形成されたサブフレーム基板と、が接着剤により接合されてなる液体吐出ヘッドであって、
前記サブフレーム基板の接合面は、少なくとも前記空隙の周囲に複数の第1の開口部を有し、
前記複数第1の開口部に囲まれた領域に、前記第1の開口部の面積よりも小さい第2の開口部が形成されており、
前記第1の開口部間の最近接距離をa1とし、前記第2の開口部と前記第1の開口部との間の最近接距離をb1としたとき、a1≧b1を満たすことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記第1の開口部は角が取られた矩形状であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1~のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項6】
前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構の少なくともいずれか一つと前記液体吐出ヘッドとを一体化したことを特徴とする請求項に記載の液体吐出ユニット。
【請求項7】
請求項1~のいずれかに記載の液体吐出ヘッド、又は、請求項若しくはに記載の液体吐出ユニットを備えていることを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液室(個別液室、加圧液室などとも称する)に圧力変動を発生させ、液室に形成された微小ノズルから液体を噴射させるインクジェットヘッド及びインクジェットヘッドを搭載する記録装置が知られている。
【0003】
インクジェットヘッドの吐出方式は、ピエゾ素子に代表される圧電素子の変形によってインク滴を吐出させるピエゾ方式と、インク液室内に気泡を発生させて吐出させるバブル方式が知られている。ピエゾ方式は吐出滴量の可変性を有するとともにインク対応性に優れている。一方、バブル方式は半導体プロセスを応用したもので、素子の微細化によるヘッドの小型化、高密度化に特徴をもつ。
【0004】
また近年では、ピエゾ方式とバブル方式の利点を合わせもった薄膜ピエゾ方式が実用化されている。この薄膜ピエゾ方式は半導体及びMEMSプロセスを応用したもので、ピエゾ方式のインク対応性を維持しつつ、シリコン基板上に圧電素子とインク流路が一体に形成できるなど、バブル方式の微細化、高密度化の特徴を合わせもっている。
【0005】
薄膜ピエゾヘッドは、圧電素子、個別液室、及び引き出し配線が一体に形成された第1のシリコン基板(以下、アクチュエータ基板とする)と、前記アクチュエータ基板の支持と、外部からのインク供給路が形成された第2のシリコン基板(以下、サブフレーム基板とする)を貼り合わせることで形成される。
【0006】
両基板の貼り合わせには接着剤が用いられるが、この接着剤に含まれる微粒子(フィラー、硬化剤、気泡など)が基板の接合に悪影響を及ぼす場合がある。接着剤の特性として、接着剤自体の表面張力の作用によって、接着剤の塗布面積が大きい箇所では接着剤が集まりやすく、塗布面積が小さい箇所では逆に薄くなる傾向をもつ。そして、塗布面積が大きい箇所に接着剤が集まる際に接着剤中に含まれるフィラー又は気泡が凝集する現象が確認されている。
【0007】
このような箇所ではフィラー又は気泡の凝集によって接着剤が厚くなるため、接着剤が不均一な状態で接合されることになる。
このような不均一な接合状態が圧電素子の近傍で発生した場合には、下層の振動板に対して偏応力が加わり、それによる振動板の撓み不良など、圧電素子の動作不良の原因となっている。
【0008】
特許文献1では、基板の接合面に開口パターンを形成し、接着剤量が局所的に多いアンカー部を設けることにより、加圧による位置ずれを防止することが開示されている。また、特許文献1では基板の接合面に、接着剤逃げ用の多数の開口パターンがマトリクス状に配列されていることが開示されている。
しかし、圧電素子の周囲や開口パターンに囲まれた領域において、接着剤の塗布面積が相対的に大きくなる箇所が生じ、接着剤塗布面の不均一が生じる。このため、接着剤の厚みバラツキが生じ、上記不具合が生じるおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、アクチュエータ基板とサブフレーム基板の接合における接着剤の凝集が抑制され、良好な接合品質を有するとともに、安定した変位特性が得られる液体吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、圧電素子が形成されたアクチュエータ基板と、前記アクチュエータ基板と対向する面に前記圧電素子に対応した空隙が形成されたサブフレーム基板と、が接着剤により接合されてなる液体吐出ヘッドであって、前記サブフレーム基板の接合面は、少なくとも前記空隙の周囲に第1の開口部を有し、前記空隙と複数の前記第1の開口部とに囲まれた領域に前記第1の開口部の面積よりも小さい第2の開口部が形成されており、前記第1の開口部間の最近接距離をa1とし、前記第1の開口部及び前記空隙のうち4つに囲まれた領域における前記第2の開口部と前記第1の開口部もしくは前記空隙との間の最近接距離をb1としたとき、a1≧b1を満たし、前記第1の開口部と前記空隙との間の最近接距離をa2としたとき、a1>a2を満たし、前記第1の開口部及び前記空隙のうち3つに囲まれた領域における前記第2の開口部と前記第1の開口部もしくは前記空隙との間の最近接距離をb2としたとき、a1≧b2を満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アクチュエータ基板とサブフレーム基板の接合における接着剤の凝集が抑制され、良好な接合品質を有するとともに、安定した変位特性が得られる液体吐出ヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の液体吐出ヘッドの一例における要部分解模式図である。
図2】本発明の液体吐出ヘッドの一例におけるサブフレーム基板の斜視模式図である。
図3】本発明の液体吐出ヘッドの一例におけるサブフレーム基板の平面模式図である。
図4】本発明の液体吐出ヘッドの一例における断面模式図である。
図5】本発明の液体吐出ヘッドの他の例におけるサブフレーム基板の平面模式図である。
図6】本発明の液体吐出ヘッドの他の例におけるサブフレーム基板の平面模式図である。
図7】本発明の液体吐出ヘッドの他の例におけるサブフレーム基板の平面模式図である。
図8】本発明の液体吐出ヘッドの他の例におけるサブフレーム基板の平面模式図である。
図9】本発明に係る液体を吐出する装置の一例を示す模式図である。
図10】本発明に係る液体を吐出する装置の他の例を示す模式図である。
図11】本発明に係る液体吐出ユニットの一例を示す模式図である。
図12】本発明に係る液体吐出ユニットの他の例を示す模式図である。
図13】本発明の液体を吐出する装置の他の例における側面図である。
図14】本発明の液体を吐出する装置の他の例における平面図である。
図15】従来構成の液体吐出ヘッドにおけるサブフレーム基板の平面模式図である。
図16】従来構成の液体吐出ヘッドにおける断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット及び液体を吐出する装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0014】
(液体吐出ヘッド)
本発明は、圧電素子が形成されたアクチュエータ基板と、前記アクチュエータ基板と対向する面に前記圧電素子に対応した空隙が形成されたサブフレーム基板と、が接着剤により接合されてなる液体吐出ヘッドであって、前記サブフレーム基板の接合面は、少なくとも前記空隙の周囲に第1の開口部を有し、前記空隙と複数の前記第1の開口部とに囲まれた領域に前記第1の開口部の面積よりも小さい第2の開口部が形成されていることを特徴とする。本発明はインクジェット方式の画像形成に好適に用いられる。
【0015】
<第1の実施形態>
本発明に係る液体吐出ヘッドにおける一実施形態を図1図5を用いて説明する。
図1は、本実施形態の液体吐出ヘッドの要部分解斜視図を模式的に示した図である。本実施形態の液体吐出ヘッドでは、圧電素子175が形成されたアクチュエータ基板100と、アクチュエータ基板100と対向する面に圧電素子175に対応した空隙が形成されたサブフレーム基板200と、ノズル孔301が形成されたノズル基板300とが接着剤により接合されている。
【0016】
図2は、サブフレーム基板の接合面を模式的に示した図であり、図1のA視野に相当する。図2に示されるサブフレーム基板200の接合面には、圧電素子に対応した空隙201、第1の開口部202が図示されている。第1の開口部202は、少なくとも空隙201の周囲に形成されており、余剰接着剤の逃げ箇所としての機能を有する。また、サブフレーム基板200にはインク供給口208が形成されており、ノズル孔301から吐出される液体が供給される。
【0017】
図3は、サブフレーム基板の接合面を模式的に示した図であり、図2の一部を拡大したものである。実施形態のサブフレーム基板200は、少なくとも空隙201の周囲に第1の開口部202を有し、空隙201と複数の第1の開口部202とに囲まれた領域に第1の開口部202の面積よりも小さい第2の開口部203が形成されている。
【0018】
第1の開口部202の形状としては、適宜変更することが可能であるが、図示されるような角の取られた矩形状であることが好ましい。この場合、接合面積を確保しつつ、余剰接着剤を逃げやすくすることができる。
第1の開口部202の形状としては、上記に限られるものではなく、この他にも正方形や角の取られていない矩形状等であってもよい。
【0019】
また、第2の開口部203の形状としては、第1の開口部202よりも面積が小さければよく、適宜変更することが可能である。図示される円形状の他、矩形状等であってもよい。
【0020】
図4は、本実施形態の液体吐出ヘッドの断面図であり、圧電素子の長手方向の断面に相当する。図3のA-A断面に相当する。本実施形態のアクチュエータ基板100には、振動板171、圧電素子175、バリア層176、絶縁保護膜179、引き出し配線178、個別液室180が形成されている。また、圧電素子175は下部電極172、圧電体173、上部電極174で構成されている。また、個別液室180は振動板171の一部で構成されており、液室隔壁181により仕切られている。
【0021】
図示されるように、アクチュエータ基板100とサブフレーム基板200を接合する接着剤400の一部が第1の開口部202に流れ込む。第1の開口部202は、余剰接着剤の逃げ箇所、接着剤の逃げ穴として機能している。
なお、第1の開口部202の高さ(深さ)としては、適宜変更することが可能であり、図示されるものに制限されるものではない。
【0022】
ここで、本発明を説明するために、従来構成の例を挙げて従来の問題点を説明する。図15に、従来構成におけるサブフレーム基板240の接合面の模式図を示す。この図では、空隙201、第1の開口部202が示されている。
【0023】
従来構成では、空隙201の周囲における接着剤の塗布面積が大きくなる箇所、例えば符号210a、210b、210cで示される箇所に接着剤の逃げ穴としての第1の開口部202が設けられていない。このため、このような箇所で塗布面積が相対的に大きくなっている。
【0024】
接着剤は自身の表面張力によって、塗布面積が大きい箇所に接着剤が集まりやすく、それによってフィラー、気泡が凝集することが確認されている。この凝集した接着剤は接合時に接合隔壁の片当たり、あるいは接合状態の不均衡につながり接合不良の要因となる。
【0025】
更に、圧電素子の近傍の接合部で接着剤の凝集が生じると、局所的に接着剤が厚くなり、これによりアクチュエータ基板100の接合部に偏った荷重が加わり、接合箇所における振動板171に撓みが発生してしまう。このような振動板171の撓みは、圧電素子の特性劣化の要因となる。
【0026】
また、接着剤が第1の開口部202に接していない領域では、余剰接着剤を適切に逃がすことがしにくくなり、塗布面積が大きい箇所のように接着剤の凝集が生じやすくなる。
【0027】
図16に、従来構成における断面図を示す。図16は、図15におけるB-B断面に相当するものである。図示されるように、圧電素子の周囲における塗布面積が大きくなる箇所で、接着剤の凝集が発生し、凝集した接着剤がアクチュエータ基板100の接合部分を圧迫している。これにより、接合部分における振動板171に撓みが生じている等の上記不具合が生じてしまう。
【0028】
また、図15に示されるように、第1の開口部202の隣接間隔をa3とし、第1の開口部202又は空隙201の4つに囲まれた領域、すなわち十字路の交差箇所の幅をc1としたとき、a3≦c1となっている。このような十字路の交差箇所の面積が相対的に大きくなる箇所においても、接着剤の凝集が生じやすい。また、2つの第1の開口部202と1つの空隙201に囲まれた領域における交差箇所の幅をc2としたとき、a3≦c2となっており、このような箇所においても接着剤の凝集が生じやすい。
【0029】
これに対して、本発明では、アクチュエータ基板とサブフレーム基板の接合における接着剤の凝集を抑制し、接合品質を良好にするとともに、圧電素子の変位特性の安定化を図る。
【0030】
本実施形態では、接着剤の塗布面、すなわちサブフレーム基板の接着剤塗布面のパターン形状を工夫することで、接着剤の凝集を抑制する。図3に示されるように、空隙201と複数の第1の開口部202とに囲まれた領域に第1の開口部202の面積よりも小さい第2の開口部203を形成している。第2の開口部202を図のように設けることにより、接着剤の塗布面積を適正化し、接着剤の塗布面積の偏りを減らすことができ、局所的な接着剤の凝集を抑制することができる。特に圧電素子に隣接した箇所で、接着剤の凝集が抑制されることで、振動板の撓み不良等の不具合を軽減することができる。
なお、第2の開口部203の高さ(深さ)としては、適宜変更することが可能であり、特に制限されるものではない。
【0031】
また、本実施形態では、アクチュエータ基板101上の少なくとも一部に引き出し配線178及び絶縁保護膜179が形成され、圧電素子175間における接合部、及び、圧電素子175の周囲の領域における接合部は、引き出し配線178及び絶縁保護膜179を介して接合されている。すなわち、本実施形態では、圧電素子が形成される領域(隣接する圧電素子の間)も、圧電素子周囲の領域とも、引き出し配線及び絶縁保護膜と同じ膜構成で形成されている。
【0032】
また、サブフレーム基板200の接合面は、空隙201、第1の開口部202及び第2の開口部203の非形成部でアクチュエータ基板100と接合している。すなわち、サブフレーム基板200の接合隔壁は、空隙201、第1の開口部202及び第2の開口部203を形成する溝壁を用いている。
【0033】
<液体吐出ヘッドの製造方法>
本実施形態に係る液体吐出ヘッドは、公知の方法により製造することが可能である。本実施形態の液体吐出ヘッドの製造方法は、例えば、アクチュエータ基板上に圧電素子を形成する工程、サブフレーム基板に対し、圧電素子に対応する位置に空隙を形成し、第1の開口部及び第2の開口部を形成する工程、サブフレーム基板に接着剤を塗布し、サブフレーム基板とアクチュエータ基板を接合する工程を有する。以下、一例を説明する。
【0034】
まず、アクチュエータ基板100として、シリコン単結晶基板上に振動板171を成膜する。振動板としては、LP-CVD法(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)でシリコン酸化膜、ポリシリコン膜、あるいはアモルファスシリコン膜、シリコン窒化膜等を所望の振動板剛性になるように積層に成膜する。
【0035】
次いで、TiOとPtからなる下部電極172層をスパッタ法/RTA(Rapid Thermal Anneal)による酸化プロセスにより成膜する。
【0036】
次いで、下部電極172上に圧電体173として、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)をスピンコート法で複数回に分けて成膜する。なお、圧電体173の成膜方法は、スピンコート法に限らず、スパッタ法、イオンプレーティング法、エアーゾル法、ゾルゲル法、あるいはインクジェット法などで成膜してもよい。
【0037】
次いで、SROとPtからなる上部電極174をスパッタ法で成膜する。
次いで、バリア層176を成膜する。また、バリア層176に対して引き出し配線178のための接続孔を形成する。バリア層176としては、例えばプラズマCVD法によりSiOの膜を形成する。
【0038】
次いで、引き出し配線178として、TiN/Alをスパッタ法により成膜する。引き出し配線178としては、適宜変更することが可能であるが、例えば金属遷移酸化膜が挙げられる。
【0039】
次いで、絶縁保護膜179をプラズマCVD法等により製膜する。絶縁保護膜179としては、適宜変更することが可能であるが、例えばシリコン酸化膜が挙げられる。また、必要に応じて液体の流路の開口を行う。
【0040】
次いで、サブフレーム基板200に対して、圧電素子175に対応した位置に空隙201を形成し、更に第1の開口部202、第2の開口部203を形成する。このサブフレーム基板200に対して接着剤400を塗布する。
接着剤400としては、適宜変更することが可能であるが、シリカ及び硬化剤を含んだエポキシ系樹脂が好ましい。
【0041】
次いで、サブフレーム基板200とアクチュエータ基板100を接合し、アクチュエータ基板100に対して個別液室180を形成する。個別液室180は研磨やエッチング等により形成する。
次いで、ノズル孔301を設けたノズル基板300を接着剤により接合することで、本実施形態の液体吐出ヘッドが得られる。
【0042】
<第2の実施形態>
次に、本発明におけるその他の実施形態について説明する。上記実施形態と同様の事項については説明を省略する。
本実施形態の液体吐出ヘッドにおけるサブフレーム基板220の接合面の一部を図5に示す。図示される本実施形態のサブフレーム基板220において、第2の開口部203は、空隙201と複数の第1の開口部202とに囲まれた領域内に複数形成されている。
これにより、接着剤の塗布面積が大きい領域に対して面積を適宜調整することができ、接着剤の種類や塗布量などに応じた調整がしやすくなる。
【0043】
<第3の実施形態>
次に、本発明におけるその他の実施形態について説明する。上記実施形態と同様の事項については説明を省略する。
本実施形態の液体吐出ヘッドにおけるサブフレーム基板220の接合面の一部を図6に示す。上記実施形態では、空隙201の周囲に第2の開口部203を形成していたが、本発明はこれに限られるものではなく、必ずしも空隙201の周囲に第2の開口部203を形成する必要はない。
【0044】
本実施形態では、複数の第1の開口部202に囲まれた領域に第2の開口部203が形成されている。つまり、2×2のマトリクス状に配置された4つの第1の開口部202によって囲まれた領域では、周辺部の領域に対して相対的に接着剤の塗布面積が大きくなるので、上述したような接着剤の凝集が生じやすくなる。そこで、複数の第1の開口部202に囲まれた領域に第2の開口部203を形成することで、第1の実施形態と同様に、接着剤の凝集を抑制することができ、アクチュエータ基板とサブフレーム基板との接合状態を向上させることができる。
【0045】
なお、本実施形態においても、空隙201の周囲に第2の開口部203を形成することで、より広範囲にわたって接着剤の凝集を抑制することができる。この場合のサブフレーム基板220の接合面の一部を図7に示す。図示されるように、複数の第1の開口部202に囲まれた領域、及び空隙201の周囲に第2の開口部203が形成されている。
【0046】
<第4の実施形態>
次に、本発明におけるその他の実施形態について説明する。上記実施形態と同様の事項については説明を省略する。
本実施形態の液体吐出ヘッドにおけるサブフレーム基板220の接合面の一部を図8に示す。本実施形態では、第1の開口部202間の最近接距離をa1とし、第1の開口部202及び空隙201のうち4つに囲まれた領域における第2の開口部203と第1の開口部202もしくは空隙201との間の最近接距離をb1としたとき、a1≧b1を満たしている。
【0047】
また、第1の開口部202間の最近接距離をa1とし、第1の開口部202と空隙201との間の最近接距離をa2としたとき、a1>a2を満たすことが好ましい。
【0048】
また、第1の開口部202及び空隙201のうち3つに囲まれた領域における第2の開口部203と第1の開口部202もしくは空隙201との間の最近接距離をb2としたとき、a1≧b2を満たすことが好ましい。
【0049】
本実施形態では、サブフレーム基板の接合面に形成される空隙パターン及び逃げ穴パターンの間に形成される接合壁の寸法、塗布面積を更に適正化している。
本実施形態によれば、十字路の交差箇所の面積を相対的に小さく形成することができ、接着剤の凝集が抑えられ、接着剤が均一に塗布されることで、振動板の撓み不良が軽減される。空隙201の周囲の接合部における接着剤の凝集をより抑制することができ、接合状態を良好にすることができる。
【0050】
なお、図6における実施形態(第3の実施形態)においても、上記のa1≧b1を満たすことが好ましい。これにより、上記と同様の所期の効果が得られる。
【0051】
(液体吐出ユニット、液体を吐出する装置)
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について図9及び図10を参照して説明する。図9は同装置の要部平面説明図、図10は同装置の要部側面説明図である。
【0052】
この装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0053】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド404及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0054】
液体吐出ヘッド404の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド404に供給するための供給機構494により、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
【0055】
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成される。液体カートリッジ450はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって、液体カートリッジ450から液体が送液される。
【0056】
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0057】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0058】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0059】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0060】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド404のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0061】
主走査移動機構493、供給機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0062】
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0063】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド404を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0064】
このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0065】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について図11を参照して説明する。図11は同ユニットの要部平面説明図である。
【0066】
この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。
【0067】
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0068】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について図12を参照して説明する。図12は同ユニットの正面説明図である。
【0069】
この液体吐出ユニットは、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド404と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0070】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0071】
本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0072】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0073】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0074】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0075】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0076】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、壁紙や床材などの建材、衣料用のテキスタイルなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0077】
また、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、又は、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液なども含まれる。
【0078】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0079】
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0080】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0081】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0082】
例えば、液体吐出ユニットとして、図10で示した液体吐出ユニット440のように、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0083】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0084】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、図11で示したように、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0085】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0086】
また、液体吐出ユニットとして、図12で示したように、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。
【0087】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0088】
また、「液体吐出ヘッド」は、使用する圧力発生手段が限定されるものではない。例えば、上記実施形態で説明したような圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい。)以外にも、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものでもよい。
【0089】
また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0090】
<液体を吐出する装置の一実施形態>
液体を吐出する装置のその他の例について、画像形成装置の例を挙げて説明する。図13は画像形成装置の全体構成を説明する側面説明図、図14は同装置の要部平面説明図である。
【0091】
この画像形成装置は、左右の側板に横架したガイド部材であるガイドロッド101とガイドレール102とでキャリッジ103を主走査方向に摺動自在に保持し、主走査モータ104でタイミングベルト105を介して矢示方向(主走査方向)に移動走査する。
【0092】
このキャリッジ103には、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する4個の液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド107を複数のインク吐出口を主走査方向と交叉する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0093】
また、キャリッジ103には、記録ヘッド107に各色のインクを供給するための各色のサブタンク108を搭載している。このサブタンク108には図示しないインク供給チューブを介してメインタンク(インクカートリッジ)からインクが補充供給される。
【0094】
この実施形態では、サブタンク108と記録ヘッド107で本実施形態に係る液体を吐出する装置を構成しているが、記録ヘッド107を上記実施形態に係る液体吐出ヘッドで構成し、別途サブタンク108を設ける構成とすることもできるし、あるいは、サブタンクを用いないでインクカートリッジを搭載する構成とすることもできる。
【0095】
給紙カセット110などの用紙積載部(圧板)111上に積載した用紙112を給紙するための給紙部として、用紙積載部111から用紙112を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙ローラ)113及び給紙ローラ113に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド114を備え、この分離パッド114は給紙ローラ113側に付勢されている。
【0096】
そして、この給紙部から給紙された用紙112を記録ヘッド107の下方側で搬送するための搬送部として、用紙112を静電吸着して搬送するための搬送ベルト121を備えている。また、給紙部からガイド115を介して送られる用紙112を搬送ベルト121との間で挟んで搬送するためのカウンタローラ122と、略鉛直上方に送られる用紙112を略90°方向転換させて搬送ベルト121上に倣わせるための搬送ガイド123を備えている。また、押さえ部材124で搬送ベルト121側に付勢された先端加圧コロ125を備えている。また、搬送ベルト121表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ126を備えている。
【0097】
ここで、搬送ベルト121は、無端状ベルトであり、搬送ローラ127とテンションローラ128との間に掛け渡されて、副走査モータ131からタイミングベルト132及びタイミングローラ133を介して搬送ローラ127が回転されることで、図14のベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。なお、搬送ベルト121の裏面側には記録ヘッド107による画像形成領域に対応してガイド部材129を配置している。
【0098】
また、図13に示すように、搬送ローラ127の軸には、スリット円板134を取り付け、このスリット円板134のスリットを検知するセンサ135を設けて、これらのスリット円板134及びセンサ135によってエンコーダ136を構成している。
【0099】
帯電ローラ126は、搬送ベルト121の表層に接触し、搬送ベルト121の回動に従動して回転するように配置され、加圧力として軸の両端に各2.5Nをかけている。
【0100】
また、キャリッジ103の前方側には、図13に示すように、スリットを形成したエンコーダスケール142を設け、キャリッジ103の前面側にはエンコーダスケール142のスリットを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ143を設け、これらによって、キャリッジ103の主走査方向位置(ホーム位置に対する位置)を検知するためのエンコーダ144を構成している。
【0101】
さらに、記録ヘッド107で記録された用紙112を排紙するための排紙部として、搬送ベルト121から用紙112を分離するための分離部と、排紙ローラ152及び排紙コロ153と、排紙される用紙112をストックする排紙トレイ154とを備えている。
【0102】
また、背部には両面給紙ユニット161が着脱自在に装着されている。この両面給紙ユニット161は搬送ベルト121の逆方向回転で戻される用紙112を取り込んで反転させて再度カウンタローラ22と搬送ベルト121との間に給紙する。
【0103】
このように構成した画像形成装置においては、給紙部から用紙112が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙112はガイド115で案内され、搬送ベルト121とカウンタローラ122との間に挟まれて搬送される。更に先端を搬送ガイド123で案内されて先端加圧コロ125で搬送ベルト121に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0104】
このとき、制御回路によって高圧電源から帯電ローラ126に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト121が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト121上に用紙112が給送されると、用紙112が搬送ベルト121に静電力で吸着され、搬送ベルト121の周回移動によって用紙112が副走査方向に搬送される。
【0105】
そこで、キャリッジ103を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド107を駆動することにより、停止している用紙112にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙112を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙112の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙112を排紙トレイ154に排紙する。
【0106】
また、両面印刷の場合には、表面(最初に印刷する面)の記録が終了したときに、搬送ベルト121を逆回転させることで、記録済みの用紙112を両面給紙ユニット161内に送り込み、用紙112を反転させて(裏面が印刷面となる状態にして)再度カウンタローラ122と搬送ベルト121との間に給紙し、タイミング制御を行って、前述したと同様に搬送ベル121上に搬送して裏面に記録を行った後、排紙トレイ54に排紙する。
【0107】
なお、本実施形態に係る画像形成装置は、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、これらの複合機などにも適用することができる。また、インク以外の液体、例えばDNA試料やレジスト、パターン材料などを吐出する液滴吐出ヘッドや液滴吐出装置、あるいはこれらを備える画像形成装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0108】
100 アクチュエータ基板
171 振動板
172 下部電極
173 圧電体
174 上部電極
175 圧電素子
176 バリア層
178 引き出し配線
179 絶縁保護膜
180 個別液室
181 液室隔壁
200、220、230、240 サブフレーム基板
201 空隙
202 第1の開口部
203 第2の開口部
206 接合隔壁
208 インク供給口
300 ノズル基板
301 ノズル孔
400 接着剤
401 ガイド部材
403 キャリッジ
404 液体吐出ヘッド
405 主走査モータ
406 駆動プーリ
407 従動プーリ
408 タイミングベルト
410 用紙
412 搬送ベルト
413 搬送ローラ
414 テンションローラ
416 副走査モータ
417 タイミングベルト
418 タイミングプーリ
420 維持回復機構
421 キャップ部材
422 ワイパ部材
440 液体吐出ユニット
441 ヘッドタンク
442 カバー
443 コネクタ
444 流路部品
450 液体カートリッジ
451 カートリッジホルダ
452 送液ユニット
456 チューブ
491A、491B 側板
491C 背板
493 主走査移動機構
494 供給機構
495 搬送機構
【先行技術文献】
【特許文献】
【0109】
【文献】特開2016-141131号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16