(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】潜像画像形成体
(51)【国際特許分類】
B41M 3/14 20060101AFI20220119BHJP
B42D 25/30 20140101ALI20220119BHJP
【FI】
B41M3/14
B42D25/30
(21)【出願番号】P 2018235974
(22)【出願日】2018-12-18
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】高原 正義
(72)【発明者】
【氏名】大島 浩行
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/054603(WO,A1)
【文献】特開2015-134473(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0225362(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 3/14
B42D 25/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一部に、潜像画像が形成されて成る潜像画像形成体であって、
前記潜像画像は、主画像部、影画像部及び背景部を有し、前記影画像部は前記主画像部の少なくとも一部に、投影的な形状を成して隣接するように配置されており、
前記主画像部、前記影画像部及び前記背景部は、凹又は凸形状を有する第1の要素が、第1の方向に第1のピッチで、それぞれ異なる位相で複数配置され、かつ、前記影画像部の位相は、前記主画像部の位相に対して同一方向にずれて成り、
前記主画像部、前記影画像部及び前記背景部には、前記基材と異なる色の第2の要素が、前記第1の方向と同じ又は異なる第2の方向に前記第1のピッチで複数配置されて成り、
前記潜像画像を真上から観察した場合、前記第2の要素のみが観察され、
前記潜像画像を所定の角度に傾けて観察した場合、
前記主画像部が視認できる画像である主画像、
前記影画像部が視認できる画像である影画像
、及び
前記背景部が視認できる画像である背景画像の視認濃度が異なり、所定の観察位置に対応して、前記影画像が投影的に見える位置に現れ立体的に観察されることを特徴とする潜像画像形成体。
【請求項2】
前記潜像画像は、更に連結部を有して成り、
前記第1の要素は、前記
主画像部の第1の要素、前記
影画像部の第1の要素及び前記
背景部の第1の要素から成り、
前記
主画像部の第1の要素と前記
影画像部の第1の要素の間に前記
連結部の第1の要素を有し、前記
影画像部の第1の要素と前記
背景部の第1の要素の間に前記
連結部の第1の要素を有し、
前記潜像画像を所定の角度に傾けて観察した場合、前記主画像、前記影画像及び前記背景画像とは濃度差が生じ、前記潜像画像が多階調に観察されることを特徴とする請求項1記載の潜像画像形成体。
【請求項3】
前記主画像部、前記影画像部及び前記背景部には、前記基材と異なる第1の色を有する第2の要素と、前記基材及び前記第1の色とは異なる第2の色を有する第2の要素が、前記第1のピッチで交互に複数配置され、
前記潜像画像を所定の角度に傾けて観察した場合、前記主画像、前記影画像及び前記背景画像が異なる色に観察されることを特徴とする請求項1記載の潜像画像形成体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、旅券、株券、商品券、収入印紙、各種チケット、その他の有価証券等に適用する潜像画像形成体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のスキャナ、プリンタ、複写機等のデジタル機器の進展により、貴重印刷物の精巧な複製物を容易に作製することが可能となってきている。このため、銀行券、旅券、株券、商品券、収入印紙、各種チケット、その他の有価証券等は、金銭的価値を有するため、高度な偽造防止技術や真偽判別技術を付与することが求められている。
【0003】
これらの偽造防止技術及び真偽判別技術の代表例としては、特殊インキによる印刷、ホログラム、スレッド、微小文字の印刷、すき入れ、潜像画像の埋込み技術等が挙げられる。特に、潜像画像の埋込み技術は、印刷面に対して真上から観察した場合に潜像画像は視認できないが、傾けて観察することで潜像画像が出現するため、専用の機器を必要とせず、人間の目視で容易に真偽判別できるため、多くの貴重印刷物に採用されている。この技術は、例えば、凹版印刷物の画線構成を利用して潜像画像を形成する技術や基材の凹凸とインキを組み合わせて潜像画像を形成する技術が挙げられる。
【0004】
凹版印刷物の画線構成を利用して潜像画像を形成する技術としては、印刷基材上に縦画線及び横画線の一方で潜像部を凹版印刷で形成し、他方で背景部を凹版印刷で形成し、印刷面に対して真上から観察した場合には潜像部と背景部を区分けして確認し難いが、傾けて観察した場合に凹版画線の特徴であるインキ盛りの影響によって、潜像部と背景部に濃度差が生じて潜像画像が顕在化する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
基材の凸部とインキを組み合わせて潜像画像を形成する技術としては、印刷素材と同色又は近似した色の各種万線模様又はレリーフ模様及びそれら双方の模様のいずれかの隆起した画線と、隆起した画線の色と異なった他の有色の一定な間隔を持つ各種万線画線又は網点画線、及びそれら双方の画線のいずれかを組み合わせることによって、ある特定の方向から観察する場合にのみ、潜像画像が認識できるようにした偽造防止用潜像印刷物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
次に、基材の凹凸とインキを組み合わせて潜像画像を形成する技術としては、部分的に角度を異にすることによって図柄を表した各種万線模様又はレリーフ模様のいずれか少なくとも一つの模様をエンボスによって形成された凹凸形状を有する素材に、一定な間隔を持つ各種万線画線又は網点画線のいずれか少なくとも一つを前述の凹凸形状の図柄以外の部分を構成する部分に対して平行又は傾斜を持たせて印刷した特殊潜像模様形成体であって、特殊潜像模様形成体は、印刷面に対して真上から観察した場合に潜像画像は視認できないが、傾けて観察することで潜像画像が視認でき、その視認の有無によって真偽判別を行うことができる技術が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
さらに、基材の凹凸とインキを組み合わせて潜像画像を形成する技術としては、潜像部、輪郭部、背景部を設けて、各部の凸部の位相を変えることで潜像画像の周辺に輪郭画像を加える技術が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
また、凹版印刷物の画線構成を利用して潜像画像に影画像を設ける技術としては、潜像画像、影画像及び背景画像の各領域に対して、凹版画線の方向を変えることで、所定の視点で観察した場合に、潜像画像が立体的に観察できる技術が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特公昭56-19273号公報
【文献】特許第2600094号公報
【文献】特許第2615401号公報
【文献】特許第5062645号公報
【文献】特許第5599124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1は、縦画線及び横画線の一方で潜像部を形成し、他方で背景部を形成しているため、印刷面に対して真上から観察した場合に潜像画像が視認されてしまう問題があった。
【0011】
また、特許文献1、2及び3の技術は、印刷物を傾けて観察した場合に、潜像部と背景部が異なる色で視認されるが、二階調である単純な濃度差のみによる真偽判別方法であるため、より高度な真偽判別方法が求められていた。
【0012】
さらに、特許文献1、2、3及び4の潜像画像又は輪郭画像は、単純な平面画像のみの真偽判別であるため、より潜像画像の視認性及び意匠性に優れた平面画像以上の高度な真偽判別方法が求められていた。
【0013】
さらに、特許文献4は、潜像画像を設ける配置エリアが小さい場合、潜像画像の周辺の輪郭画像は、十分な領域を確保できないため、輪郭画像は視認しにくいこと、また、輪郭画像を設ける分、主画像である潜像画像自体の面積が小さくなり、潜像画像の視認性が低下することから、設計する上でより自由度が高い構成が求められていた。
【0014】
また、特許文献5の構成は、単純な盛り上がった画線のみで形成するため、構造が単純であり偽造が容易なことから、偽造抵抗力の向上が求められていた。また、特許文献1と同様に盛り上がった黒色系の画線の方向を変えて構成するため、光源の方向によっては光を反射し、潜像画像が視認されてしまうという課題があった。この課題を解消するために、カモフラージュ画線を追加する方法があるが、画線構成が密になるため、潜像画像形成体が暗くなるため、より色彩の自由度が高い構成が求められていた。
【0015】
そこで、本発明は、前述した課題の解決を目的とするものであり、従来よりも潜像画像の視認性を向上することで真偽判別性が優れるとともに意匠性を備えた潜像画像形成体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の潜像画像形成体は、基材の少なくとも一部に、潜像画像が形成されて成る潜像画像形成体であって、潜像画像は、主画像部、影画像部及び背景部を有し、影画像部は主画像部の少なくとも一部に、投影的な形状を成して隣接するように配置されており、主画像部、影画像部及び背景部は、凹又は凸形状を有する第1の要素が、第1の方向に第1のピッチで、それぞれ異なる位相で複数配置され、かつ、影画像部の位相は、主画像部の位相に対して同一方向にずれて成り、主画像部、影画像部及び背景部には、基材と異なる色の第2の要素が、第1の方向と同じ又は異なる第2の方向に第1のピッチで複数配置されて成り、潜像画像を真上から観察した場合、第2の要素のみが観察され、潜像画像を所定の角度に傾けて観察した場合、主画像、影画像及び背景画像の視認濃度が異なり、所定の観察位置に対応して、影画像が投影的に見える位置に現れ立体的に観察されることを特徴とする。
【0017】
本発明の潜像画像形成体は、潜像画像が、更に連結部を有して成り、第1の要素は、主画像部の第1の要素、影画像部の第1の要素及び背景部の第1の要素から成り、主画像部の第1の要素と影画像部の第1の要素の間に連結部の第1の要素を有し、影画像部の第1の要素と背景部の第1の要素の間に連結部の第1の要素を有し、潜像画像を所定の角度に傾けて観察した場合、主画像、影画像及び背景画像とは濃度差が生じ、潜像画像が多階調に観察されることを特徴とする。
【0018】
本発明の潜像画像形成体は、主画像部、影画像部及び背景部に、基材と異なる第1の色を有する第2の要素と、基材及び第1の色とは異なる第2の色を有する第2の要素が、第1のピッチで交互に複数配置され、潜像画像を所定の角度に傾けて観察した場合、主画像、影画像及び背景画像が異なる色に観察されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の潜像画像形成体は、印刷面に対して真上から観察した場合に潜像画像は視認できないが、印刷面を傾けて観察した場合に影画像を備えた潜像画像が視認できる。つまり、従来の技術は、潜像画像が平面画像による真偽判別であったが、本発明の潜像画像は、主画像に加えた影画像が濃度差をもって視認できるため、主画像が第1の面、影画像が第2の面として奥行きを感じて立体感を有し、かつ、意匠性に優れた潜像画像として視認できるため、容易に真偽判別ができる。
【0020】
また、本発明の潜像画像形成体は、主画像、影画像及び背景部がそれぞれ異なった濃度で視認できるため、潜像画像も多階調となり、意匠性に優れるとともに潜像画像の視認性に優れ、容易に真偽判別することができる。
【0021】
さらに、本発明の潜像画像形成体は、主画像、影画像及び背景部のそれぞれの凸部の位相を異ならせて構成するため、凸構成が複雑となることで偽造防止性が向上する。
【0022】
また、本発明の潜像画像形成体は、真上から見ても潜像画像の隠蔽性が高く、かつ、凸部と万線のコントラストがあれば、万線の色彩を自由に選択できるため、設計上の自由度が高い。
【0023】
また、本発明の潜像画像形成体の影画像は、主画像の後方に重ねて設けることができるため、専用の領域を必要とせず、配置エリアが小さい場合でも設計が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図4】第1の要素の凸部と第2の要素の万線を組み合わせた視認濃度が高い平面図である。
【
図7】
図6を所定の視点(S1)から観察した図である。
【
図8】第1の要素の凸部と第2の要素の万線を組み合わせた視認濃度が中レベルの平面図である。
【
図12】第1の要素の凸部と第2の要素の万線を組み合わせた視認濃度が低い平面図である。
【
図16】凸部と万線の位相を変えた場合の視認濃度を示す図である。
【
図18】本発明の第1の潜像形成体を示す図である。
【
図22】本発明の潜像形態体の凸部の形態を示す図である。
【
図23】本発明の潜像形態体の影画像の形態を示す図である。
【
図24】本発明の潜像形態体の影画像の配置を示す図である。
【
図25】本発明の潜像形態体の主画像、影画像及び背景画像の視認濃度を示す図である。
【
図26】本発明の第2の潜像形成体を示す拡大図である。
【
図30】本発明の第3の潜像形成体を示す拡大図である。
【
図33】本発明の第4の潜像形成体を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施形態が含まれる。
【0026】
(本発明の第1の着想)
まず、本発明の「第1の着想」は、第1の要素である基材に形成した基材と同一色の万線状の凸部(T)と、第2の要素である基材と異なる色の万線(M)を組み合わせることで、所定の視点で観察した場合に視認濃度をコントロールできることであり、
図1~
図19で説明する。
【0027】
(視認濃度が高い形態)
まず、所定の視点で観察した場合に、第2の要素の万線の色が高い濃度で視認できる例を説明する。
図1は、基材(1)に形成する第1の要素の凸部(T)の平面図である。凸部(T)は、基材(1)の一方の面に設け、規則的に万線状に配置している。また、それぞれの凸部(T)は隣接しており、凸部(T)の幅(TW)と凸部(T)のピッチ(TP)は同一であり、配置する方向も同一である。なお、凸部(T)は、一方の斜面(Ta)と他方の斜面(Tb)を備えている。
【0028】
次に、
図2は、
図1に示す基材(1)の断面図(X-X´)である。このとき、それぞれの凸部(T)の高さ(TH)は同一である。また、
図3は、
図2に示す基材(1)の斜視図であり、凸部(T)が隣接して規則的に配列されていることが分かる。
【0029】
次に、
図4は、第1の要素と第2の要素を組み合わせた状態を示す平面図であり、
図1の基材(1)に形成した凸部(T)に、基材(1)と異なる色の万線(M)を規則的に印刷している。このとき、万線(M)の幅(MW)は、凸部(T)の幅(TW)の1/2であり、万線(M)のピッチ(MP)は、凸部(T)のピッチ(TP)と同一である。また、万線(M)は、凸部(T)の一方の斜面(Ta)に重なるように配置している。
【0030】
図5は、
図4に示す基材(1)の断面図(X-X´)であり、凸部(T)の一方の斜面(Ta)全体に万線(M)が重なっている。
図6は、
図5に示す基材(1)の斜視図であり、凸部(T)が隣接し規則的に配列され、凸部(T)の一方の斜面(Ta)に万線(M)が重なっていることが分かる。
【0031】
このとき、
図5及び
図6に示す凸部(T)の一方の斜面(Ta)の角度と同じ視点(S1)から観察した場合、
図7に示すように、万線(M)の色が高い濃度で視認できる。一方、凸部(T)の他方の斜面(Tb)の角度と同じ視点(S2)から観察した場合は、万線(M)の色は視認できず、基材の色のみが視認できる(図示せず)。なお、基材(1)を真上から観察した場合は、万線(M)が規則的に視認できる。
【0032】
(視認濃度が中レベルの形態)
次に、所定の視点で観察した場合に、第2の要素の万線(M)の色が中レベルの濃度で視認できる例を説明する。前述した視認濃度が高い構成と、基材(1)に形成する凸部(T)の構成は同一であるため、説明は省略する。
【0033】
図8は、第1の要素と第2の要素を組み合わせた状態を示す平面図であり、前述した
図4の視認濃度が高い形態の万線(M)の位置は同一とし、凸部(T)は、
図1の基材(1)に形成した凸部(T)と比較して、凸部(T)の幅(TW)の1/4位相θを変えて配置している。この結果、万線(M)は、凸部(T)の一方の斜面(Ta)に1/2、他方の斜面(Tb)に1/2分割して重なる。
【0034】
図9は、
図8に示す基材(1)の断面図であり、万線(M)は、凸部(T)の一方の斜面(Ta)に1/2、他方の斜面(Tb)に万線(M)の1/2が重なっている。
【0035】
図10は、
図9に示す基材(1)の斜視図であり、万線(M)は、凸部(T)が隣接し規則的に配列され、万線(M)は、凸部(T)の一方の斜面(Ta)に1/2、他方の斜面(Tb)に1/2が重なっていることが分かる。
【0036】
このとき、
図9及び
図10に示す凸部(T)の一方の斜面(Ta)の角度と同じ視点(S1)から観察した場合、
図11に示すように、万線(M)の色が中レベル(視認濃度が高い形態と比較すると1/2の視認濃度)で視認できる。なお、凸部(T)の他方の斜面(Tb)の角度と同じ視点(S2)から観察した場合も同様に視認できる(図示せず)。また、基材(1)を真上から観察した場合は、万線(M)が規則的に視認できる。
【0037】
(視認濃度が低い形態)
次に、所定の視点で観察した場合に、第2の要素の色が低い濃度で視認できる例である。前述した視認濃度が高い構成と、基材(1)に形成する凸部(T)の構成は同一であるため、説明は省略する。
【0038】
図12は、第1の要素と第2の要素との組み合わせ状態を示す平面図であり、前述した
図4の視認濃度が高い形態の万線(M)の位置は同一とし、凸部(T)は、
図1の基材(1)に形成した凸部(T)と比較して、凸部(T)の幅(TW)の1/2分位相を変えて配置している。このため、前述した視認濃度が高い形態と異なる凸部(T)の斜面(Tb)に重なるように配置している。
【0039】
図13は、
図12に示す基材(1)の断面図(X-X´)であり、凸部(T)の他方の斜面(Tb)に万線(M)が重なっている。
図14は、
図13に示す基材(1)の斜視図であり、凸部(T)が隣接し規則的に配列され、凸部(T)の一方の斜面(Tb)に万線(M)が重なっていることが分かる。
【0040】
このとき、
図13及び
図14に示す凸部(T)の一方の斜面(Ta)の角度と同じ視点(S1)から観察した場合、
図15に示すように、万線(M)の色は視認できず、基材の色のみが視認できる。一方、凸部(T)の他方の斜面(Tb)の角度と同じ視点(S2)から観察した場合は、万線(M)の色が高い濃度で視認できる(図示せず)。
【0041】
したがって、万線(M)の位置を固定し、基材(1)に形成した凸部(T)の配置を異ならせることで、所定の視点(S1)で観察した場合に、万線(M)の色の視認濃度が異なることが分かる。
【0042】
(視認濃度の設定)
そこで、
図16は、位置を固定した万線(M)と凸部(T)の位相を変化させた場合の視認濃度を示したものである。まず、水準1は、万線(M)と凸部(T)の一方の斜面(Ta)を一致させた構成であり、この時の位相θ=0とする。次に、万線(M)の位置を固定し、凸部(T)のみの位相(θ)を下方向(水準2~水準5)に段階的に変化させていくと、凸部(T)の一方の傾斜(Ta)の角度と同じ視点(S1)から観察した場合、万線(M)の視認濃度が徐々に薄くなっていくことが分かる。なお、凸部(T)の他方の斜面(Tb)の角度と同じ視点(S2)から観察した場合、逆の濃度が視認できる(図示せず)。また、基材(1)を真上から観察した場合は、万線(M)が規則的に視認できる。
【0043】
なお、位相(θ)は、凸部(T)の幅(TW)の割合で示しており、一方、視認濃度は、万線(M)の色の視認濃度が高い場合は100%、視認濃度が低い場合は0%で示している。したがって、万線(M)と凸部(T)の位相(θ)を変えることで、所定の視点(S1)で観察した場合に、視認濃度をコントロールできる。
【0044】
(本発明の第2の着想)
次に、本発明の「第2の着想」は、潜像画像(2’)に対して、主画像(2a’)及び影画像(2b’)を設けること、加えて、「第1の着想」を利用することで、立体的に奥行き感をもった潜像画像(2’)が視認できるため、以降の実施形態で具体的な説明を記載する。
【0045】
(第1の実施形態)
図17は、本発明における潜像画像形成体(以下「形成体」という。)の一例を示す平面図である。形成体(10)は、基材(1)上の一方の面の少なくとも一部に設けられ、形成体(10)以外の領域には、料額、文字、他の模様等の必要な情報を公知の印刷方式(例えば、オフセット印刷、凹版印刷等)により施してもよい。
【0046】
図18(a)は、形成体(10)の拡大図であり、第1の面である主画像部(2a)と、第2の面である主画像部(2a)に投影的な形状を成して隣接した影画像部(2b)と、背景部(3)とに領域が分かれている。なお、主画像部(2a)及び影画像部(2b)は、潜像部(2)であり、所定の視点から観察した場合に、潜像画像(2’)として視認できる。なお、後述する連結画像(4’)も潜像画像(2’)に含まれる。また、本形態では、主画像に「T」の文字を使用している。ここでいう投影的な形状とは、例えば、主画像である「T」に対し、所定の位置から照明を当てた場合にできる影の形状のことである。
【0047】
次に、
図18(b)に示すように、形成体(10)は、複数の第1の要素が配置されて成る凸部(T)と、複数の第2の要素が配置されて成る万線(M)で構成されており、凸部(T)は基材と同色であり、主画像部(2a)、影画像部(2b)及び背景部(3)共に設けている。また、各領域での凸部(T)の幅(TW)及びピッチ(TP)、高さ(TH)及び方向は同一であるが、凸部(T)の位相は各領域で異なっている。さらに、影画像部(2b)の位相は、主画像部(2a)の位相に対して同一方向にずれている。 なお、ここでの凸部(T)は、凸部(T)の頂点のみ図示しており、各領域とは、主画像部(2a)、影画像部(2b)、背景部(3)及び後述する連結部(4)をいう。また、本実施形態では、基材(1)に白色の紙を使用し、凸部(T)は、用紙を製造中にすき入れで設けている。
【0048】
一方、
図18(c)に示すように、万線(M)は、基材(1)の色とは異なる色で印刷しており、万線(M)の幅(MW)、ピッチ(MP)、方向は同一である。なお、凸部(T)と万線(M)の配置する方向も同一であり、ここでは第1の方向という。
【0049】
次に、
図19は、
図18(a)の点線内を拡大したもので、主画像部(2a)、影画像部(2b)及び背景部(3)の凸部(T)と万線(M)の位置関係を説明する。
【0050】
主画像部(2a)は、
図16の水準3の構成であり、凸部(T)の斜面(Ta)及び斜面(Tb)の上部半分のみに万線(M)が積層されている。次に、影画像部(2b)は、
図16の水準1の構成であり、凸部(T)の斜面(Ta)に万線(M)が積層されている。さらに、背景部(3)は、
図16の水準5の構成であり、凸部(T)の斜面(Tb)に万線(M)が積層されている。したがって、万線(M)に対して、各領域の凸部(T)の配置が位相θ分異なっている。具体的には、影画像部(2b)の凸部(T)に対して、主画像部(2a)の凸部(T)の位相θ=1/4TW分、背景部(3)の凸部(T)の位相θ=1/2TW分ずれている。なお、位相θは、プラス方向(上方向)でもマイナス方向(下方向)でも構わない。
【0051】
(本実施例の作用)
次に、
図20は、
図19の斜視図であり、万線(M)が主画像部(2a)、影画像部(2b)及び背景部(3)の凸部(T)で異なる位置に積層されていることが分かる。
【0052】
また、
図21は、
図20の視点(S1)から観察した場合の潜像画像(2’)であり、潜像画像(2’)のうち、主画像(2a’)は「T」の文字が視認濃度50%で視認でき、影画像(2b’)は「T」の文字の背面に視認濃度100%で視認でき、背景画像(3’)は視認濃度0%で視認できる。このため、互いの画像は濃度差を生じ、かつ、主画像(2a’)の後方に影画像(2b’)を設けることで、面として奥行き感をもって認識できるため、立体感のある潜像画像(2’)が投影的に視認できる。なお、形成体(10)を真上から見た場合では、
図18(c)のように、潜像画像(2’)は視認できず万線(M)のみが視認できる。一方、視点(S2)から観察した場合、主画像(2a’)の視認濃度は変わらないが、影画像(2b’)は視認濃度0%、背景画像(3’)は視認濃度100%で視認できるため、視点により視認濃度は異なる(図示せず)。
【0053】
なお、本発明では、形成体(10)を所定の視点(S1)から観察した場合に、主画像(2a’)は主画像部(2a)が視認できる画像、影画像(2b’)は影画像部(2b)が視認できる画像、背景画像(3’)は背景部(3)が視認できる画像であり、主画像(2a’)及び影画像(2b’)で潜像画像(3’)である。また、後述する連結画像(4´)は連結部が視認できる画像をいう。
【0054】
従来から、万線状の凸部又は凹部と印刷による万線を組み合わせた潜像体は多数出願されているが、先行技術は、所定の視点から観察した場合、潜像画像は平面画像である。一方、本発明では、前述した第1及び第2の着想を用いることで、所定の視点で観察した場合に、主画像が第1の面、影画像が第2の面として潜像画像が立体画像として視認できるため、より真偽判別性が向上するとともに、偽造抵抗力も高く、意匠性も優れた潜像画像形成体を提供できる。
【0055】
(第1の要素及び第2の要素の構成)
次に、
図4、
図19及び
図20を用いて本発明の第1の要素及び第2の要素の構成を説明する。第1の要素の凸部(T)の幅(TW)及び高さ(TH)は0.4mmである。ただし、幅(TW)及び高さ(TH)は0.1~2.0mmの範囲内で、好ましくは0.4~1.0mmである。
【0056】
一方、第2の要素の万線(M)の幅(MW)は0.2mm、ピッチ(MP)は0.4mmである。ただし、万線(M)の幅(MW)は0.05~1.0mmの範囲内で、好ましくは0.2~0.5mmであり、ピッチ(MP)は0.1~2.0mmの範囲内で、好ましくは0.4~1.0mmである。なお、万線(M)の幅(MW)は、凸部(T)の幅(TW)の1/2が好ましく、万線(M)のピッチ(MP)は、凸部(T)のピッチ(TP)と同一が好適であるが、これに制約されるものではない。
【0057】
また、本実施形態の各領域の各凸部(T)の位相(θ)は、影画像部(2b)の凸部(T)に対し、主画像部(2a)の凸部(T)は0.1mm、背景部(3)の凸部(T)は0.2mmずれている。なお、
図22(a)~(d)に凸部(T)の形態を示すが、三角状、台形状、半球状等の側面を有する形状であれば問題なく、また、凸部(T)の間に平坦領域を設けても構わない。なお、
図22(d)のように、凸部(T)の裏面は凹部であり、凹部も2つの斜面を持つため、本実施形態を設けることができ、基材(1)の両面に形成しても構わない。
【0058】
また、第1の要素の凸部(T)の形成方法は、公知の方法を選択して使用すればよい。例えば、すき入れによる方法、エンボスによる方法、印刷による方法、レーザ加工方法等が使用できる。一方、第2の要素の万線(M)の形成方法は、オフセット印刷、凹版印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷方法、レーザ加工等を用いることができる。
【0059】
(影画像の設定)
また、
図23(a)~(d)は、主画像部(2a)に対して、影画像部(2b)の形態を示している。
図23(a)は、主画像部(2a)の「T」に対して、所定に位置から照明(L1~L8)を当てて影画像部(2b)を形成する方向を示している。例えば、照明(L1)では
図23(b)の影画像部(2b)、照明(L2)では、
図23(c)の影画像部(2b)、・・・・、照明(L8)では
図23(i)の影画像部(2b)が形成できる。したがって、影画像部(2b)は、主画像部(2a)の背面の縦方向、横方向又は斜め方向のいずれか一方向に投影的に設けることが望ましい。なお、本実施形態は、照明(L2)から影画像部(2b)を設けている。
【0060】
また、
図24(a)~(e)は、主画像部(2a)に対して、影画像部(2b)の配置を示す図である。
図24(a)は、主画像部(2a)のみの図であり、
図24(b)~(e)は、影画像部(2b)を右下方向の一方向に徐々にずらして配置している。この時、
図24(e)のように、縦横方向共に、主画像部(2a)と影画像部(2b)が分離してしまうと(空間Sを設けると)、2つの主画像(2a)が分離し重なったイメージとなり、面としての立体感を損なう。一方、
図24(b)~(d)のように、主画像部(2a)に対して、影画像部(2b)を縦横共に重なる又は接する構成であれば、より面としての立体感を強く感じられるため、このような構成が望ましい。
【0061】
また、影画像部(2b)は、主画像部(2a)の背面に重ねて配置できるため、専用の領域を必要としない。このため、主画像部(2a)のサイズを設計する上でも、影画像部(2b)の領域の制約を受けて主画像部(2a)のサイズを小さくする必要がないため、潜像画像(2’)の視認性及び設計上の自由度も高い。
【0062】
(各画像における視認濃度の設定)
次に、所定の視点から観察した場合の形成体(10)の視認濃度の形態を説明する。本実施形態は、主画像(2a’)の視認濃度50%、影画像(2b’)の視認濃度100%、背景画像(3’)の視認濃度0%としたが、
図25(a)は、主画像(2a’)の視認濃度100%、影画像(2b’)の視認濃度50%、背景画像(3’)の視認濃度0%、
図25(b)は、主画像(2a’)の視認濃度0%、影画像(2b’)の視認濃度100%、背景画像(3’)の視認濃度50%、
図25(c)は、主画像(2a’)の視認濃度50%、影画像(2b’)の視認濃度0%、背景画像(3’)の視認濃度100%とした一例である。
【0063】
また、視認濃度の設定については、
図16の凸部(T)と万線(M)の位置関係により視認濃度をコントロールできるため、適宜選択して使用すればよいが、影画像(2b’)と背景画像(3’)のコントラストが大きい方が、より影画像(2b’)が面として視認しやすく立体感も感じやすい。なお、視認濃度は、0%、50%、100%を一例で示したが、
図16に示すように他の視認濃度も設定できる。
【0064】
(主画像の設定)
また、本実施形態では、潜像画像(2’)の主画像(2a’)に文字を使用しているが、文字以外に、数字、記号、マーク、図形等を用いても構わない。さらに、万線(M)の変わりに、凸部(T)を隠蔽できれば、破線、波線、文字、数字、記号、図形、マーク等を使用してもよい。
【0065】
(基材の選定)
次に、本発明における基材(1)は、上質紙、コート紙、アート紙等の紙葉類を用いることができる。ただし、本発明の形成体(10)は、前述した凸部(T)が必要であることから、基材(1)の厚みは20μm~1000μmがよく、好ましくは50μm~300μmがよい。さらに、フィルム、プラスチック、それらの複合素材等を用いることもできる。また、基材(1)及び凸部(T)の色は、白色や黄色等濃度が低い色にし、第2の要素である万線の色を褐色、紫色及び茶色等の濃度が高い色とすれば、コントラストの差によって潜像画像の視認性が高くなるため好適であるが、これに制約されるものではない。
【0066】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態の形成体(10)を説明する。第1の実施形態と同一な構成の説明は省略し、異なる構成のみ説明する。なお、本実施形態は、連結部(4)を加えて、影画像(2b’)の階調性を高くできることが特徴である。
【0067】
図26は、第2の実施形態の拡大図である。主画像部(2a)及び影画像部(2b)と、影画像部(2b)及び背景部(3)との間にそれぞれ連結部(4)を設けている。主画像部(2a)と影画像部(2b)の間に形成される連結部(4)は、主画像部(2a)を構成している第1の要素と、影画像部(2b)を構成している第1の要素を連結するための
連結部(4)の第1の要素が複数配置されて成る。
連結部(4)の第1の要素は、隣り合う各凸部(T)と接しているため傾斜を有して配置されている。同様に、影画像部(2b)と背景部(3)の間に形成される連結部(4)は、影画像部(2b)を構成している第1の要素と、背景部(3)を構成している第1の要素を連結するための
連結部(4)の第1の要素が複数配置されて成る。
連結部(4)の第1の要素は、隣り合う凸部(T)と接しているため傾斜を有して配置されている。したがって、形成体(10)の凸部(T)は、レリーフ状に繋がっている。
【0068】
次に、
図27及び
図28は、
図26の斜視図であり、
図27は凸部(T)のみの斜視図、
図28は凸部(T)の上に万線(M)を重ねた際の斜視図である。万線(M)は、各領域の凸部(T)で異なる位置に積層していることが分かる。なお、各領域の凸部(T)と万線(M)は平行であるが、一方、連結部(4)の凸部(T)は斜め方向のため、万線(M)とは交差している。
【0069】
また、
図29は、
図28の視点(S1)から観察した場合の潜像画像(2’)であり、潜像画像(2’)のうち、主画像(2a’)は視認濃度50%、影画像(2b’)は視認濃度100%、背景画像(3)は視認濃度0%で視認できる。加えて、主画像(2a’)と影画像(2b’)の間の連結画像(4’)の視認濃度は、主画像(2a’)よりも高く、影画像(2b’)よりも低く視認できる。一方、影画像(2b’)と背景画像(3)の間の連結画像(4)は、影画像(2b’)よりも高く、背景画像(3’)よりも低く視認できる。なお、連結画像(4’)は、連結部(4)の凸部と万線(M)が交差しているため、主画像(2a’)、影画像(2b’)及び背景画像(3’)とは、異なる視認濃度で視認できる。
【0070】
この結果、潜像画像(2’)の影画像(2b’)に連結画像(4’)を加えることで、第1の実施形態と比較して、視認濃度が多階調の潜像画像(2’)として視認でき、より高度な真偽判別が提供できる。また、凸部(T)も複雑となるため、偽造抵抗力も高い。
【0071】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態の形成体(10)を説明する。第1の実施形態と同一な構成の説明は省略し、異なる構成のみ説明する。なお、本実施形態は、凸部(T)と万線(M)の方向を異ならせることで、特に、主画像(2a’)及び背景画像(3’)に階調を付与できることが特徴である。
【0072】
図30は、第3の実施形態の拡大図であり、第1の実施形態と異なる構成は、万線(M)の方向のみである。このとき、凸部(T)の配置する方向を第1の方向、万線(M)の配置する、第1の方向とは異なる方向を第2の方向とすると、第1と第2の方向は異なっており、異なる角度(d)は自由に選択できる。
【0073】
次に、
図31は、
図30の斜視図であり、万線(M)は、各領域の凸部(T)で異なる位置に積層していることが分かる。なお、第1と第2の方向が異なるため、各領域の凸部(T)と万線(M)とは異なる位置に交差している。
【0074】
また、
図32は、
図31の視点(S1)から観察した場合の潜像画像(2’)であり、主画像(2a’)及び背景画像(3’)は階調のある画像、影画像(2b’)のうち、縦方向の領域は視認濃度100%、横方向の領域は階調のある画像として視認できる。なお、階調のある画像とは、グラデーションのように視認濃度が徐々に変化する画像をいう。影画像(2b’)の縦方向の領域は、横方向の領域が狭いため、厳密にいえば階調の変化はあるものの、目視では階調を識別できずベタ画像として視認される。
【0075】
また、第1と第2の方向の異なる角度(d)は、0.5~30度の範囲で、0.5~5度で好ましい。本実施形態は、角度(d)が小さい例であり、具体的には、2度で設定しており、この場合は、干渉縞のようなグラデーションが横方向に広く視認できる。一方、角度(d)を広げていくとともに、グラデーションの横方向の幅も狭くなり、かつ、グラデーションの数も増加するため、適宜、選択して使用すればよい(図示せず)。なお、このメカニズムは、透明の2枚の万線フィルムを重ねることで、容易にグラデーションを伴う干渉縞が発生することと同様である。
【0076】
このように、第1と第2の方向を異ならせることで、第1の実施形態と比較して、潜像画像(2’)、背景画像(3’)が階調のある画像として視認でき、更に高度な真偽判別が提供でき、意匠性も向上する。なお、第1と第2の実施形態を組み合わせて実施しても構わない。
【0077】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態の形成体(10)を説明する。第1の実施形態と同一な構成の説明は省略し、異なる構成のみ説明する。なお、本実施形態は、万線(M)の色を多色にすることで、特に、色彩豊かな潜像が視認できることが特徴である。
【0078】
図33は、第4の実施形態の拡大図であり、第1の実施形態と異なる構成は、万線(M)の色を多色にした点のみである。第4の実施形態では、2色で形成した場合で説明する。このとき、第1の色の万線(Ma)は、凸部(T)のピッチ(TP)と同じピッチで配置され、第2の色の万線(Mb)も凸部(T)のピッチ(TP)と同じピッチで配置され、第1の色の万線(Ma)と第2の色の万線(Mb)は交互に複数配置されて成る。
【0079】
次に、
図34は、
図33の斜視図であり、第1の色の万線(Ma)と第2の色の万線(Mb)は、各領域の凸部(T)で異なる位置に積層していることが分かる。
【0080】
また、
図35は、
図34の視点(S1)から観察した場合の潜像画像(2’)であり、潜像画像(2’)のうち、背景画像(3’)は第1の色(Ma)で視認でき、影画像(2b’)は第2の色(Mb)で視認でき、影画像(2b’)は第1の色(Ma)と第2の色(Mb)の混色で視認できる。一方、視点(S2)から観察した場合、視点(S1)から観察した場合と色が逆転する。つまり、背景画像(3’)は第2の色(Mb)で視認でき、影画像(2b’)は第1の色(Ma)で視認でき、影画像(2b’)は第1の色(Ma)と第2の色(Mb)の混色で視認できる(図示せず)。
【0081】
色については、2色の場合で説明したが、これに限定されず、複数色でもよい。
【0082】
なお、本発明の潜像画像形成体は、主に、銀行券、旅券、株券、商品券、収入印紙、各種チケット、その他の有価証券等のセキュリティ製品に利用できる。
【符号の説明】
【0083】
1 基材
2 潜像画像部
2’ 潜像画像
2a 主画像部
2a’ 主画像
2b 影画像部
2b’ 影画像
3 背景部
3’ 背景画像
4 連結部
4’ 連結画像
10 潜像画像形成体
T 凸部
Ta 凸部の斜面
Tb 凸部の斜面
TP 凸部のピッチ
TW 凸部の幅
TH 凸部の高さ
θ 凸部の位相(ずれ量)
M 万線
MP 万線のピッチ
MW 万線の幅
d 第1と第2の方向の角度
S1 所定の視点
S2 所定の視点
S 空間(スペース)