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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】ブラインドボルト
(51)【国際特許分類】
   F16B 13/04 20060101AFI20220119BHJP
   F16B 35/04 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
F16B13/04 F
F16B35/04 Z
F16B13/04 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017208007
(22)【出願日】2017-10-27
(65)【公開番号】P2019078390
(43)【公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390025243
【氏名又は名称】ポップリベット・ファスナー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100103849
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 誠
(72)【発明者】
【氏名】牧野 敬範
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆司
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-120096(JP,A)
【文献】特開2016-133148(JP,A)
【文献】実開昭59-127911(JP,U)
【文献】特表2014-530327(JP,A)
【文献】特開2009-103311(JP,A)
【文献】国際公開第2017/098016(WO,A1)
【文献】特開2016-142315(JP,A)
【文献】実開平05-052324(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 13/06
F16B 13/04
F16B 35/04
F16B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラインドボルトであって、
大径の頭部と、前記頭部に隣接する円柱部と、前記円柱部に隣接する雄ねじ部とを有するボルトと、
前記ボルトの前記円柱部の外径より大きい内径を有するワッシャと、
中心軸に垂直な第1端面と、前記第1端面と反対側の第2端面と、前記ボルトの前記円柱部が通るアウターナット孔とを有するアウターナットと、
前記アウターナットの前記アウターナット孔に挿入できるインナーナット端部分と、前記インナーナット端部分に隣接する円筒形のインナーナット円筒部と、インナーナット段部を境にして、前記インナーナット円筒部より大径のインナーナット頭部と、前記ボルトの前記円柱部を挿入できるインナーナット孔と、前記インナーナット孔に形成され、前記ボルトの前記雄ねじ部と螺合する雌ねじ部とを有するインナーナットと、
前記インナーナット端部分と、前記インナーナット円筒部を挿入できる拡径スリーブ孔が形成された断面が円形の拡径スリーブと、
を備え
前記拡径スリーブは、外形と内径が一定の第1端部と、前記第1端部に隣接し、前記第1端部より肉厚が薄い第1湾曲部と、前記第1湾曲部に隣接し、前記第1湾曲部より肉厚が厚い第2湾曲部と、前記第2湾曲部に隣接し、外形と内径が一定で、前記第2湾曲部より肉厚が厚い第2端部とを有し、
前記拡径スリーブの前記第1湾曲部は、前記第2端部に向かって、外形と内径が次第に大きくなる第1傾斜部と、前記第1傾斜部に隣接し、外形と内径が一定の第1円筒部と、前記第1円筒部に隣接し、外形と内径が次第に小さくなる第2傾斜部とを有し、
前記拡径スリーブの前記第2湾曲部は、前記第2端部に向かって、外形と内径が次第に大きくなる第3傾斜部と、前記第3傾斜部に隣接し、外形と内径が一定の第2円筒部と、前記第2円筒部に隣接し、外形と内径が次第に小さくなる第4傾斜部とを有し、
前記インナーナットの前記インナーナット端部分の先端部は、前記アウターナットの前記アウターナット孔内に配置され、
前記拡径スリーブは、前記アウターナットの前記第2端面と、前記インナーナットの前記インナーナット段部との間で、前記インナーナット端部分の一部の周りと前記インナーナット円筒部の周りに配置され、
前記ワッシャは、前記ボルトの前記頭部と、前記アウターナットの前記第1端面の間で、前記ボルトの前記円柱部の周りに配置され、
前記ボルトの前記円柱部は、前記アウターナットの前記アウターナット孔内と前記インナーナットの前記インナーナット孔内に配置され、
前記ボルトの前記雄ねじ部は、前記インナーナットの前記雌ねじ部と螺合して、組立てられ、
前記インナーナットは前記アウターナットに対して回り止めされており、
前記アウターナットの前記アウターナット孔は、円形孔と多角形孔とを有し、
前記インナーナットの前記インナーナット端部分は、軸方向に延びる複数の端部分平面部と、隣接する前記端部分平面部の間の複数の端部分円筒部とを有し、前記アウターナットの前記多角形孔に適合している、ことを特徴とするブラインドボルト。
【請求項2】
請求項に記載のブラインドボルトであって、
前記拡径スリーブの前記第1端部は、前記アウターナットに接合され、前記拡径スリーブの前記第2端部は、前記インナーナットに接合されているブラインドボルト。
【請求項3】
取付孔が形成された取付部材と被取付部材をブラインドボルトで締結した締結構造であって、
大径の頭部と、前記頭部に隣接する円柱部と、前記円柱部に隣接する雄ねじ部とを有するボルトと、
前記ボルトの前記頭部に隣接して前記円柱部の周りに配置されたワッシャと、
第1端面と、前記第1端面と反対側の第2端面と、前記ボルトの前記円柱部が通っているアウターナット孔とを有するアウターナットと、
前記アウターナットの前記アウターナット孔に挿入されたインナーナット端部分と、前記インナーナット端部分に隣接する円筒形のインナーナット円筒部と、インナーナット段部を境として、前記インナーナット円筒部より大径のインナーナット頭部と、インナーナット孔と、前記インナーナット孔に形成された雌ねじ部とを有するインナーナットと、
拡径スリーブ孔が形成され、断面が円形の拡径スリーブと、を備え、
前記拡径スリーブは、前記アウターナットの前記第2端面と、前記インナーナットの前記インナーナット段部との間で、前記インナーナットの前記インナーナット円筒部の周りに配置され、
前記ボルトの前記円柱部は、前記インナーナットの前記インナーナット孔に挿入され、前記ボルトの前記雄ねじ部は、前記インナーナット孔の前記雌ねじ部に螺合し、
前記取付部材と前記被取付部材の前記取付孔内の前記拡径スリーブは、拡径して前記取付孔の内面に当接し、
前記取付孔の外の前記拡径スリーブは、前記取付孔の内径より大きい外径の拡径部を形成し、
前記アウターナットの前記第2端面と、前記拡径スリーブの前記拡径部との間に、前記取付部材と前記被取付部材とが挟まれて締結されていることを特徴とする締結構造。
【請求項4】
請求項に記載の締結構造であって、
前記拡径スリーブの前記拡径部に隣接して、前記拡径部と異なる外径の第2拡径部が形成されている締結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラインドボルトに関する。特に、安定して高い接合強度で締結することが出来るブラインドボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
雄ねじを有するボルト部材と、ボルト部材に螺合する雌ねじを有するスリーブとを備えるブラインドボルトは、よく知られている。ブラインドボルトは、スリーブ内に挿通したボルトを一方の側から回転して、ボルト部材の雄ねじをスリーブの雌ねじにねじ込むことにより、他方の側に突出したスリーブの先端に圧縮力を与えて、スリーブを拡径して締結する。ブラインドボルトは、締結する部材の一方の側からの作業で締結することができる。
【0003】
しかし、従来のブラインドボルトは、ボルト又はマンドレルに十分な軸力を与えても、部材への圧着力(部材を挟み込む力)は、軸力より低くなり、部材を十分な圧着力で締結することができない。軸力を与える部品がボルトの場合、座屈させるスリーブが部材に与える圧着力は、ボルトの出力(軸力)の50%~60%に低下してしまう。摩擦接合することを考えると、圧着力の低下により接合強度が著しく低下する。
【0004】
特許文献1は、スリーブと、ボルトと、ナットと備えるワンサイドボルト(ブラインドボルト)を開示する。ワンサイドボルトのスリーブは、フランジと、筒状部とを有する。フランジには、テーパ状に広がる受孔と押圧面とが形成されている。受孔の開口部は、フランジがテーパ状のときは、ボルトの頭部が入らないが、フラット状に変形したときには、ボルトの頭部が入るように広がる。ボルトをねじ込むと、スリーブの筒状部にはバルジが形成され、その後、フランジがフラットになって、ボルトにかかる軸力が解放される。ボルトの頭部が受孔に入ると、ボルトを更に回転させることができ、ボルトに大きな軸力を導入することができる。
【0005】
特許文献1のワンサイドボルトは、大きなクランプ力で接合部材を強固に締付けることができる。また、フラットになったフランジにボルトの頭部が密着していることにより締結状態を確認することができる。少ない部品点数で、締結に必要な強い軸力を得ることができ、締結完了の確認も容易にできる、としている。
【0006】
しかし、特許文献1のワンサイドボルトは、スリーブのフランジと、バルジの間に結合部材を挟むので、いったん締結すると取り外すことはできない。スリーブのフランジと、バルジの間の軸力による摩擦力で部材を接合するものであり、十分な接合強度を得ることはできない。
また、スリーブのフランジに、ボルトの頭部を押し付けて、フランジをテーパ状からフラット状に変形させるので、フランジの寸法精度が悪いと、フランジが異常変形するおそれがある。
【0007】
特許文献2は、筒状本体(スリーブ)と、筒状本体の一端部に形成された顎部と、ボルトとを備える締結装置を開示する。筒状本体は、一端部の係合部と、中間部の低剛性部と、他端部の雌ネジとを有する。顎部は、筒状本体に対して回転不能に係合する。また、顎部の外周は、六角形の周り止め係止部である。
基板(被取付部材)とパネル(取付部材)を締結する場合は、筒状本体の一端部に顎部を係合させ、ボルトを挿入して螺合させ、筒状本体の低剛性部を外側に膨出させて、膨大部を形成し、膨大部と顎部とで基板とパネルを挟んで締結する。
基板とパネルを取り外す場合は、ボルトを逆回転させて緩め、筒状本体から顎部を引き抜くことにより、基板とパネルの締結を解除することができる。
【0008】
特許文献2は、専用工具を用いることなく、基板とパネルをボルトの螺合操作により簡単迅速に締結することができる。また、顎部が別体になっているので、必要に応じて基板とパネルの締結を解除することができる。ボルト、顎部は再使用することができ、省資源化を図ることができる。
【0009】
しかし、特許文献2の締結装置は、前述したように軸力のみにより部材を圧着するもので、基板を圧着する圧着力は軸力より低下して、十分な接合強度を得ることはできない。
【0010】
特許文献3は、マンドレルと、リベットからなるブラインドリベットを開示する。マンドレルは、一端部に径の大きな頭部を有する。リベットは、一端部が閉じられたリベット本体と、リベット本体の他端から径方向外側に拡がるフランジと、を有する。リベットは、マンドレルの頭部を閉じられた一端側に位置させて、マンドレルを抜き出し不能に収容する。リベット本体は、フランジの側から一端部に向かうに伴い外径が徐々に小さくなるテーパ部を有する。
【0011】
板材のリベット用孔にブラインドリベットを挿入して、マンドレルを引き抜くと、圧縮されたリベット本体の板材から突出する部分が径方向に拡がり、拡径部分を形成する。拡径部分と、フランジとの間に板材が挟まれる。テーパ部は、リベット用孔の内面側に押し付けられて内面と密着する。この広い密着面積により、高い水密性を得ることができる。
【0012】
特許文献3のブラインドリベットは、マンドレルを引き抜いて締結するのに、専用の締結工具が必要である。また、リベット本体のフランジと、拡径部分との間に結合部材を挟むので、いったん締結すると取り外すことはできない。また、特許文献3は、広い密着面積により高い水密性を得ることを目的とし、高い接合強度を得るものではない。
【0013】
そのため、締結装置を使用せずに市販の工具を用いて、強い接合強度で部材を締結することができるブラインボルトが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2011‐226625号公報
【文献】登録実用新案3030074号公報
【文献】特開2012‐145167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の目的は、高い接合強度で締結することができ、容易に取り外すことが出来るブラインドボルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的を達成するため、本発明のブラインドボルトは、ボルトと、ワッシャと、アウターナットと、拡径スリーブと、インナーナットとの5部品を備える。ブラインドボルトを締結するとき、まず、拡径スリーブが部材の取付孔内で拡径し、支圧接合で部材を支持する。次に、部材の取付孔から出ている拡径スリーブの部分が拡径し、アウターナットと、拡径スリーブの拡径部との間に部材を挟みこみ、摩擦接合により部材を支持する。
即ち、本発明の接合は、支圧接合と摩擦接合とが合わさった接合となる。そのため、摩擦接合だけの接合より接合強度を高くすることができる。
【0017】
本発明の第1の態様は、ブラインドボルトであって、
大径の頭部と、前記頭部に隣接する円柱部と、前記円柱部に隣接する雄ねじ部とを有するボルトと、
前記ボルトの前記円柱部の外径より大きい内径を有するワッシャと、
中心軸に垂直な第1端面と、前記第1端面と反対側の第2端面と、前記ボルトの前記円柱部が通るアウターナット孔とを有するアウターナットと、
前記アウターナットの前記アウターナット孔に挿入できるインナーナット端部分と、前記インナーナット端部分に隣接する円筒形のインナーナット円筒部と、インナーナット段部を境にして、前記インナーナット円筒部より大径のインナーナット頭部と、前記ボルトの前記円柱部を挿入できるインナーナット孔と、前記インナーナット孔に形成され、前記ボルトの前記雄ねじ部と螺合する雌ねじ部とを有するインナーナットと、
前記インナーナット端部分と、前記インナーナット円筒部を挿入できる拡径スリーブ孔が形成された断面が円形の拡径スリーブと、
を備えることを特徴とするブラインドボルトである。
【0018】
ブラインドボルトが、ボルトと、ワッシャと、アウターナットと、拡径スリーブと、インナーナットとの5部品を備えると、これらの部品を組み合わせて、容易にブラインドボルトを形成することが出来る。
【0019】
前記拡径スリーブは、外形と内径が一定の第1端部と、前記第1端部に隣接し、前記第1端部より肉厚が薄い第1湾曲部と、前記第1湾曲部に隣接し、前記第1湾曲部より肉厚が厚い第2湾曲部と、前記第2湾曲部に隣接し、外形と内径が一定で、前記第2湾曲部より肉厚が厚い第2端部とを有することが好ましい。
【0020】
拡径スリーブが、第1湾曲部と、第1湾曲部より肉厚が厚い第2湾曲部を有すると、拡径スリーブに軸方向に圧縮する力をかけるとき、最初に肉厚の薄い第1湾曲部が半径方向外側に膨らみ、次に肉厚の厚い第2湾曲部が拡径する。
【0021】
前記拡径スリーブの前記第1湾曲部は、前記第2端部に向かって、外形と内径が次第に大きくなる第1傾斜部と、前記第1傾斜部に隣接し、外形と内径が一定の第1円筒部と、前記第1円筒部に隣接し、外形と内径が次第に小さくなる第2傾斜部とを有し、
前記拡径スリーブの前記第2湾曲部は、前記第2端部に向かって、外形と内径が次第に大きくなる第3傾斜部と、前記第3傾斜部に隣接し、外形と内径が一定の第2円筒部と、前記第2円筒部に隣接し、外形と内径が次第に小さくなる第4傾斜部とを有することが好ましい。
【0022】
拡径スリーブの第1湾曲部が、第1傾斜部と、第1円筒部と、第2傾斜部とを有すると、第1湾曲部は、中央部が外側に膨らんだ形とすることが出来る。
拡径スリーブの第2湾曲部が、第3傾斜部と、第2円筒部と、第4傾斜部とを有すると、第2湾曲部は、中央部が外側に膨らんだ形とすることが出来る。
【0023】
前記インナーナットの前記インナーナット端部分は、前記アウターナットの前記アウターナット孔内に配置され、
前記拡径スリーブは、前記アウターナットの前記第2端面と、前記インナーナットの前記インナーナット段部との間で、前記インナーナット端部分の一部の周りと前記インナーナット円筒部の周りに配置され、
前記ワッシャは、前記ボルトの前記頭部と、前記アウターナットの前記第1端面の間で、前記ボルトの前記円柱部の周りに配置され、
前記ボルトの前記円柱部は、前記アウターナットの前記アウターナット孔内と前記インナーナットの前記インナーナット孔内に配置され、
前記ボルトの前記雄ねじ部は、前記インナーナットの前記雌ねじ部と螺合して、組立てられていることが好ましい。
【0024】
ボルトと、ワッシャと、アウターナットと、拡径スリーブと、インナーナットとの5部品がブラインドボルトとして組み立てられていると、被取付部材と取付部材の取付孔に、ブラインドボルトを挿入して、締結することが出来る。
拡径スリーブが、アウターナットの第2端面と、インナーナット段部との間に配置されていると、拡径スリーブを軸方向に圧縮する力をかけて、拡径させることができる。
【0025】
前記インナーナットは前記アウターナットに対して回り止めされていることが好ましい。
【0026】
インナーナットがアウターナットに対して回り止めされていると、アウターナットが回らないように固定して、ボルトをねじ込むだけで、ブラインドボルトを締結することが出来る。
【0027】
前記アウターナットの前記アウターナット孔は、円形孔と多角形孔とを有し、
前記インナーナットの前記インナーナット端部分は、軸方向に延びる複数の端部分平面部と、隣接する前記端部分平面部の間の複数の端部分円筒部とを有し、前記アウターナットの前記多角形孔に適合していることが好ましい。
【0028】
アウターナットのアウターナット孔が、多角形孔を有し、インナーナット端部分が、複数の端部分平面部と、複数の端部分円筒部とを有し、インナーナット端部分が、アウターナットの多角形孔に適合すると、インナーナットはアウターナットに対して回り止めされる。
【0029】
前記拡径スリーブの前記第1端部は、前記アウターナットに接合され、前記拡径スリーブの前記第2端部は、前記インナーナットに接合されていることが好ましい。
【0030】
アウターナットと、インナーナットとが、拡径スリーブに溶接等により接合されていると、容易に回り止めすることが出来る。
【0031】
本発明の第2の態様は、 取付孔が形成された取付部材と被取付部材をブラインドボルトで締結した締結構造であって、
大径の頭部と、前記頭部に隣接する円柱部と、前記円柱部に隣接する雄ねじ部とを有するボルトと、
前記ボルトの前記頭部に隣接して前記円柱部の周りに配置されたワッシャと、
第1端面と、前記第1端面と反対側の第2端面と、前記ボルトの前記円柱部が通っているアウターナット孔とを有するアウターナットと、
前記アウターナットの前記アウターナット孔に挿入されたインナーナット端部分と、前記インナーナット端部分に隣接する円筒形のインナーナット円筒部と、インナーナット段部を境として、前記インナーナット円筒部より大径のインナーナット頭部と、インナーナット孔と、前記インナーナット孔に形成された雌ねじ部とを有するインナーナットと、
拡径スリーブ孔が形成され、断面が円形の拡径スリーブと、を備え、
前記拡径スリーブは、前記アウターナットの前記第2端面と、前記インナーナットの前記インナーナット段部との間で、前記インナーナットの前記インナーナット円筒部の周りに配置され、
前記ボルトの前記円柱部は、前記インナーナットの前記インナーナット孔に挿入され、前記ボルトの前記雄ねじ部は、前記インナーナット孔の前記雌ねじ部に螺合し、
前記取付部材と前記被取付部材の前記取付孔内の前記拡径スリーブは、拡径して前記取付孔の内面に当接し、
前記取付孔の外の前記拡径スリーブは、前記取付孔の内径より大きい外径の拡径部を形成し、
前記アウターナットの第2端面と、前記拡径スリーブの前記拡径部との間に、前記取付部材と前記被取付部材とが挟まれて締結されていることを特徴とする締結構造である。
【0032】
取付部材と被取付部材の取付孔内の拡径スリーブは、拡径して取付孔の内面に当接していると、取付部材と被取付部材は、支圧接合される。
取付孔の外の拡径スリーブは、取付孔の内径より大きい外径の拡径部を形成し、アウターナットの第2端面と、拡径スリーブの拡径部との間に、取付部材と被取付部材とが挟まれて締結されると、取付部材と被取付部材は、摩擦接合により、強力に固定することが出来る。
【0033】
前記拡径スリーブの前記拡径部に隣接して、前記拡径部と異なる外径の第2拡径部が形成されていることが好ましい。
【0034】
拡径スリーブの拡径部に隣接して、第2拡径部が形成されていると、更に強力に取付部材と被取付部材を結合することが出来る。
【0035】
本発明の第3の態様は、取付部材と被取付部材を締結するためのブラインドボルトの構成部品であるインナーナットであって、
軸方向に延びる複数の端部分平面部と、隣接する前記端部分平面部の間の複数の端部分円筒部とを有するインナーナット端部分と、
前記インナーナット端部分に隣接する円筒形のインナーナット円筒部と、
前記インナーナット円筒部より大径のインナーナット頭部と、
中心軸方向に形成されたインナーナット孔と、
前記インナーナット孔の一部に形成された雌ねじ部と、を有するインナーナットである。
【0036】
インナーナットのインナーナット端部分が、複数の端部分平面部と、複数の端部分円筒部とを有すると、インナーナット端部分をアウターナット孔の多角形孔に係合させて、インナーナットとアウターナットを回り止めすることが出来る。
インナーナットが、インナーナット円筒部と、インナーナット円筒部より大径のインナーナット頭部とを有すると、拡径スリーブの第2端部を、インナーナット円筒部とインナーナット頭部との間のインナーナット段部により支持することが出来る。
インナーナットが、インナーナット孔と、インナーナット孔の一部に形成された雌ねじ部とを有すると、ボルトの雄ねじ部をねじ込んで、拡径スリーブを拡径させることが出来る。
【0037】
本発明の第4の態様は、取付部材と被取付部材を締結するためのブラインドボルトの構成部品である拡径スリーブであって、
外径と内径が一定の第1端部と、
前記第1端部に隣接し、前記第1端部より肉厚が薄い第1湾曲部と、
前記第1湾曲部に隣接し、前記第1湾曲部より肉厚が厚い第2湾曲部と、
前記第2湾曲部に隣接し、外径と内径が一定で、前記第2湾曲部より肉厚が厚い第2端部とを有する拡径スリーブである。
【0038】
拡径スリーブが、第1湾曲部と、第1湾曲部より肉厚が厚い第2湾曲部とを有すると、拡径スリーブに軸方向に圧縮する力をかけるとき、最初に肉厚の薄い第1湾曲部が半径方向外側に膨らみ、次に肉厚の厚い第2湾曲部が拡径する。
【0039】
前記拡径スリーブの前記第1湾曲部は、前記第2端部に向かって、外形と内径が次第に大きくなる第1傾斜部と、前記第1傾斜部に隣接し、外と内径が一定の第1円筒部と、前記第1円筒部に隣接し、外径と内径が次第に小さくなる第2傾斜部とを有し、
前記拡径スリーブの前記第2湾曲部は、前記第2端部に向かって、外径と内径が次第に大きくなる第3傾斜部と、前記第3傾斜部に隣接し、外径と内径が一定の第2円筒部と、前記第2円筒部に隣接し、外径と内径が次第に小さくなる第4傾斜部とを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、締結工具を用いず市販の工具を用いて、高い接合強度で容易に締結することができ、容易に取り外すことが出来るブラインドボルトを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の実施形態のブラインドボルトの部品の分解斜視図である。
図2図1のブラインドボルトのボルトの正面図である。
図3図2のボルトの左側面図である。
図4図1のブラインドボルトのワッシャの左側面図である。
図5図4のワッシャのA-A線に沿った断面図である。
図6図1のブラインドボルトのアウターナットの一部を断面とした正面図である。
図7図6のアウターナットの左側面図である。
図8図1のブラインドボルトの拡径スリーブの斜視図である。
図9図8の拡径スリーブの一部を断面とした正面図である。
図10図9の拡径スリーブのB部分の拡大図である。
図11図9の拡径スリーブのA部分の拡大図である。
図12図1のブラインドボルトのインナーナットの一部を断面とした正面図である。
図13図12のインナーナットの左側面図である。
図14図1の部品を組み立てたブラインドボルトの斜視図である。
図15図14のブラインドボルトの一部を断面とした正面図である。
図16図14のブラインドボルトの左側面図である。
図17図14のブラインドボルトを取付部材と被取付部材にセットした状態の一部を断面とした正面図である。
図18図14のブラインドボルトを取付部材と被取付部材に締結した段階の一部を断面とした正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態によるブラインドボルトについて説明する。図1は、実施形態のブラインドボルト1の分解斜視図である。本発明の実施形態のブラインドボルト1は、ボルト10と、ワッシャ20と、アウターナット30と、拡径スリーブ40と、インナーナット50と、を備える。
図2~13を参照して、本発明の実施形態のブラインドボルト1を構成する各部品について順に説明する。
【0043】
(ボルト)
図2はボルト10の正面図、図3は左側面図である。ボルト10は、一端部に断面が六角形の頭部11を有する。ボルト10は、頭部11に隣接して、円柱形の円柱部13を有する。円柱部13の先は先端部まで、円柱形の雄ねじ部15となっている。雄ねじ部15は外周面に雄ねじを有し、雄ねじ部15のねじ山の外径は、円柱部13の外径と同じである。
ボルト10は、鋼、ステンレス等の金属でできている。ボルト10は、市販のものを使用することが出来る。
【0044】
(ワッシャ)
図4、5を参照して、本発明の実施形態のブラインドボルト1に使用するワッシャ20について説明する。ワッシャ20は、短い円筒形であり、軸方向に垂直な第1ワッシャ端面21と、第2ワッシャ端面22とを有する。第1、第2ワッシャ端面21,22は平面である。軸方向に断面が円形の中心孔23が形成されている。
ボルト10の円柱部13の外径は、ワッシャ20の中心孔23の内径と等しいか、少し小さく、ボルト10の円柱部13は、ワッシャ20の中心孔23に挿入することが出来る。第1ワッシャ端面21から中心孔23に続く部分は面取りされて、テーパ面24となっている。
ワッシャ20は、なくてもよい。
【0045】
(アウターナット)
図6は、本発明の実施形態のブラインドボルト1に使用するアウターナット30の一部を断面にした正面図、図7は左側面図である。
アウターナット30の外面31の断面は、六角形であり、面と面の間の稜線部は面取りされている。アウターナット30の外面31は、4角形等他の角数とすることもできる。アウターナット30の外面31は、スパナ等で固定することができる形状であれば良い。
【0046】
アウターナット30の一方の端部は、第1端面35であり、第1端面35から軸方向にアウターナット孔が形成されている。アウターナット孔の第1端面35側は、断面が円形の円形孔32である。円形孔32の内径は、ボルト10の円柱形の円柱部13の外径より大きく、円形孔32にボルト10の円柱部13と雄ねじ部15を通すことが出来る。
【0047】
円形孔32に隣接して、他方の端面である第2端面36まで、断面が六角形の多角形孔33が形成されている。多角形孔33の対向する頂点間の距離は、円形孔22の内径より小さい。
円形孔32と多角形孔33の間は、軸方向に直角の段部34となっている。段部34は、外側が円形、内側が六角形である。
【0048】
アウターナット30の多角形孔33の側の端面は、第2端面36である。第2端面36は、外形が円形となっている。この第2端面36の形状は、圧造により出来る形状であり、円形となっていなくてもよい。
アウターナット30は、硬度の高い鋼、ステンレス等の金属でできている。一実施例では、鋼を焼入れ焼き戻しして、ロックウェル硬度は、35~45HRCである。
【0049】
後述するように、回り止めのため、アウターナット30とインナーナット50とを、拡径スリーブ40に溶接等により接合する場合は、多角形孔33の代わりに、インナーナット50のインナーナット端部分が入る円形孔とすることが出来る。
【0050】
(拡径スリーブ)
図8~11を参照して、本発明の実施形態のブラインドボルト1に使用する拡径スリーブ40について説明する。図8は、拡径スリーブ40の斜視図である。図9は拡径スリーブ40の一部を断面とした正面図である。図10図9のB部分の拡大図、図11はA部分の拡大図である。
【0051】
拡径スリーブ40は、全体として円筒形の部材である。拡径スリーブ40の断面は、外面、内面とも円形である。拡径スリーブ40の外径は、アウターナット30の多角形孔33の頂点間の距離より大きい。拡径スリーブ40を貫通する拡径スリーブ孔が形成され、その内径は、アウターナット30の多角形孔33の頂点間の距離とほぼ等しい。
拡径スリーブ40は、アウターナット30とインナーナット50により、軸方向に圧力をかけられ、座屈して拡径するので、硬度が低く変形しやすい鋼で出来ている。1実施例では、圧造後熱処理していない鋼で出来ていて、ビッカース硬度36~39Hvである。
【0052】
拡径スリーブ40は、第1湾曲部と、第2湾曲部とを有する。第1湾曲部は、被取付部材70と取付部材71の取付孔72,73の内部で拡径し、取付孔72,73の内面に当接し、被取付部材70と取付部材71とを支圧接合する。第2湾曲部は、取付孔72,73の外部で拡径し、被取付部材70の表面を押圧して、被取付部材70と取付部材71とを摩擦接合する。
第1湾曲部は、拡径スリーブ40の第1傾斜部42と、第1円筒部43と、第2傾斜部44とを有する。第2湾曲部は、第3傾斜部46と、第2円筒部47と、第4傾斜部48とを有する。第1湾曲部と第2湾曲部の境界は厳密なものではない。
【0053】
拡径スリーブ40の一方の端部は、第1端部41であり、その外径は拡径スリーブ40の最大外径DE、内径は拡径スリーブ40の最小内径deである。第1端部41に隣接して、外周に第1溝42mが形成されている。第1溝42mの部分から、内径、外径が次第に大きくなる第1傾斜部42、内径、外径が一定の第1円筒部43と続く。第1円筒部43の外径はDEであり、内径はdeより大きい。
【0054】
更に、拡径スリーブ40は、内径、外径が次第に小さくなる第2傾斜部44、第2溝44m、内径、外径が第1端部41と同じ中間部45と続く。
第1端部41から中間部45までの長さは、被取付部材70と取付部材71の厚さの和にほぼ等しい。
被取付部材70と取付部材71の取付孔72,73の内径は、拡径スリーブ40の最大外径DEより少し大きい。ブラインドボルト1を締結するとき、拡径スリーブ40の第1湾曲部(第1傾斜部42、第1円筒部43、第2傾斜部44)は、被取付部材70、取付部材71の取付孔72,73の中に入り、取付孔72,73の中で拡径し、取付孔72,73の内面に支圧力をかける。
第1傾斜部42、第1円筒部43、第2傾斜部44は、それぞれ直線状として説明したが、第1傾斜部42と、第2傾斜部44は、曲線状でもよい。
【0055】
中間部45に続いて、外周に第3溝46mが形成され、第3溝46mの部分から、内径、外径が次第に大きくなる第3傾斜部46、内径、外径が一定の第2円筒部47と続く。第2円筒部47の外径はDEであり、内径はdeより大きい。
更に、内径、外径が次第に小さくなる第4傾斜部48、第4溝48m、内径、外径が第1端部41と同じ第2端部49と続く。
【0056】
第2円筒部47の板厚は、第1円筒部43の板厚より厚くなっている。第2円筒部47は、第1円筒部43より拡径しにくく、被取付部材70の取付孔72の外で拡径する部分である。
第2円筒部47の横側には、第3傾斜部46と第4傾斜部48があり、第2円筒部47は内径、外径が大きくなっているので、拡径スリーブ40が軸方向に圧力をかけられると、第2円筒部47は、拡径しやすい。
第3傾斜部46、第2円筒部47、第4傾斜部48は、それぞれ直線状として説明したが、第3傾斜部46と、第4傾斜部48は、曲線状でもよい。
【0057】
第1湾曲部と第2湾曲部は共に中央部で外側に膨らむ。第1湾曲部は、第2湾曲部より板厚が薄いので、第1湾曲部の方が変形しやすい。そのため、ブラインドボルト1を締結するときに、拡径スリーブ40に軸方向に圧縮する力がかかると、まず第1湾曲部が取付孔72,73の中で拡径し、取付孔72,73の内面に密着する。次に、第2湾曲部が取付孔72,73の外で拡径して、被取付部材の表面を押え、被取付部材70と取付部材71は摩擦接合される。
【0058】
図10図9のB部分の拡大図である。B部分の第3溝46mは、被取付部材70の取付孔72から出た付近に位置し、ブラインドナットを締結するとき、拡径スリーブ40が第3傾斜部46から拡径し、被取付部材70の表面の位置で押さえられ、被取付部材70と取付部材71が摩擦接合されるようになっている。
【0059】
図11図9のA部分の拡大図である。A部分の第4溝48mは、B部分の第3溝46mと比較して、浅くなっている。被取付部材70の表面に近いB部分の第3溝46mがまず変形して、被取付部材70の表面に密着するようになっている。
【0060】
(インナーナット)
図12、13を参照して、本発明の実施形態のブラインドボルト1に使用するインナーナット50について説明する。図12は、インナーナット50の一部を断面とした正面図である。図13は、インナーナット50の左側面図である。
インナーナット50は、全体として円筒形の部材であり、内側はインナーナット孔52となっている。
【0061】
インナーナット50の左端部側は、インナーナット端部分である。インナーナット端部分の円周方向の6ヶ所は、面取りされて軸方向に長い端部分平面部54となっている。隣接する端部分平面部54の間は、インナーナット円筒部53が延びて、端部分円筒部53aとなっている。インナーナット端部分の端部分円筒部53aと端部分平面部54は、アウターナット30の多角形孔33に適合する。即ち、対向する平面部54間の距離は、アウターナット30の多角形孔33の対向する辺間の距離と等しいか、それより少し小さくなっている。インナーナット50のインナーナット端部分を、アウターナット30の多角形孔33に挿入すると、アウターナット30に対して、インナーナット50は回り止めされる。
【0062】
アウターナット30に対して、インナーナット50を回り止めする方法は、これに限定されない。アウターナット30を拡径スリーブ40の第1端部41に、インナーナット50を拡張スリーブ40の第2端部49に接合することもできる。接合する方法は、溶接、ロー付け等があり、限定されない。その場合は、インナーナット端部分に、端部分平面部54を形成する必要はない。インナーナット端部分は、インナーナット円筒部53を延長した形状でもよい。
【0063】
インナーナット50の軸方向中央部は、円筒形のインナーナット円筒部53である。インナーナット50の右端部に近い部分は、インナーナット円筒部53より大きい外径のインナーナット頭部55である。インナーナット円筒部53の外面とインナーナット頭部55の外面の間は、インナーナット段部56である。
【0064】
拡径スリーブ40の最大外径DEは、インナーナット頭部55の外径とほぼ等しい。拡径スリーブ40の最小内径deは、インナーナット円筒部53の外径と等しいかそれより少し大きく、拡径スリーブ40の内側に、インナーナット端部分の端部分平面部54と端部分円筒部53aが交互にある部分と、インナーナット円筒部53を挿入することができる。
拡径スリーブ40の内側に、インナーナット50を挿入していくと、インナーナット段部56が、拡径スリーブ40の第2端部49に当接して止まる。このとき、インナーナット50のインナーナット端部分(端部分平面部54と端部分円筒部53aが交互にある部分)の先端部は、拡径スリーブ40の第1端部41から出る。即ち、インナーナット50のインナーナット段部56から先端部までの長さは、拡径スリーブ40の中心軸方向長さより長い。
【0065】
インナーナット50には、インナーナット孔52が形成されている。インナーナット孔52の内径は、ボルト10の円柱部13の外径と等しいかそれより少し大きく、インナーナット孔52にボルト10の円柱部13を挿入することができる。
インナーナット頭部55の部分のインナーナット孔52には、雌ねじ部57が形成され、ボルト10の雄ねじ部15の雄ねじと螺合することが出来る。
【0066】
インナーナット50は、拡径スリーブ40に軸方向に圧力をかけ、座屈させて拡径させるので、硬度が高く変形しにくい鋼で出来ている。1実施例では、焼入れ焼き戻しし、ロックウェル硬さ36~39HRCの鋼で出来ている。
インナーナット50のインナーナット頭部55の外面の断面は円形としたが、六角形でもよい。
【0067】
(組み立てたブラインドボルト)
図14は、部品を組み立てたブラインドボルト1の斜視図である。図15は、ブラインドボルト1の一部を断面とした正面図である。図16は、ブラインドボルト1の左側面図である。
図14~16を参照して、ブラインドボルト1の構成部品であるボルト10と、ワッシャ20と、アウターナット30と、拡径スリーブ40と、インナーナット50との組立てについて説明する。
【0068】
ボルト10の雄ねじ部15の側から、ワッシャ20をセットする。このとき、ワッシャ20の第1ワッシャ端面21が、ボルト10の頭部11側に向くようにする。
インナーナット50の端部分平面部54がある側を先頭にして、拡径スリーブ40に挿入する。このとき、拡径スリーブ40の第2端部49がインナーナット50のインナーナット頭部55の側にくるようにする。
【0069】
拡径スリーブ40とインナーナット50を、インナーナット50の端部分平面部54を先頭にしてアウターナット30の第2端面36の側から挿入する。インナーナット50の端部分平面部54と端部分円筒部53aは、アウターナット30の多角形孔33に入り、回り止めされる。拡径スリーブ40は、アウターナット30の第2端面36と、インナーナット50のインナーナット段部56の間に挟まれる。
【0070】
ワッシャ20を取り付けたボルト10をインナーナット50のインナーナット孔52に挿入し、ボルト10の雄ねじ部15の雄ねじをインナーナット50の雌ねじ部57の雌ねじに螺合させる。ワッシャ20は、ボルト10の頭部11と、アウターナット30の第1端面35との間に挟まれる。これで、図14~16に示すブラインドボルト1を組み立てた状態となる。
【0071】
アウターナット30の多角形孔33に、インナーナット50の端部分平面部54が係合して、アウターナット30とインナーナット50とは、相互に回転しないように回り止めされている。
アウターナット30とインナーナット50とが相互に回転しないようにする方法は、これ以外の方法でもよい。アウターナット30と、インナーナット50とを、拡径スリーブ40に接合して相互に回転しないようにすることもできる。
【0072】
(締結動作)
図17図18を参照して、組立てたブラインドボルト1により、取付部材71を被取付部材70に取り付ける動作を説明する。図17は、ブラインドボルト1を被取付部材70と取付部材71にセットした段階の一部を断面とした正面図である。図18は、締結が完了した段階の一部を断面とした正面図である。
図17の右側がブラインド側であり、左側が作業側である。ブラインド側に被取付部材70、作業側に取付部材71を配置し、左側の作業側からブラインドボルト1を取り付ける作業をする。
【0073】
被取付部材70の取付孔72と取付部材71の取付孔73の位置が合うように、被取付部材70の取付孔72と取付部材71を重ね合わせる。
被取付部材70の取付孔72と取付部材71の取付孔73に、組立てたブラインドボルト1を取付部材71の側から挿入する。アウターナット30の第2端面36が、取付部材71の取付孔73の周りの表面に当接する。
【0074】
ここに、被取付部材70は、自動車のパネル等の下板であり、取付部材71は被取付部材70に取付ける部材である。
この状態で、被取付部材70と取付部材71の取付孔72,73の内面と、拡径スリーブ40の第1円筒部43の外面との間は、少し隙間が空いている。
拡径スリーブ40の中間部45が、軸方向に被取付部材70の表面付近にある。
【0075】
アウターナット30の外面31をスパナ等で固定して、ボルト10を回転させて、ボルト10の雄ねじ部15の雄ねじをインナーナット50のインナーナット孔52の雌ねじ部57の雌ねじに更に螺合させていく。インナーナット50の端部分平面部54と端部分円筒部53aは、アウターナット30の多角形孔33に係合している。インナーナット50は、アウターナット30内で回転できない。インナーナット50は回転せず、図17の左方へ移動していく。
【0076】
ワッシャ20と、アウターナット30と、ワッシャ20と、拡径スリーブ40には、ボルト10の頭部11とインナーナット50により、軸方向に圧縮する力がかかる。
拡径スリーブ40の第1円筒部43は、第2円筒部47より肉厚が薄く、より変形しやすい。拡径スリーブ40は、まず第1円筒部43が、被取付部材70と取付部材71の取付孔72,73内で拡径し、取付孔72,73の内面に密着する。拡径スリーブ40は、取付孔72,73の内面に支圧力をかける。
【0077】
拡径スリーブ40に、更に軸方向に圧縮する力がかかると、第1円筒部43はそれ以上拡径できない。被取付部材70の表面に隣接する第3溝46mのある第3傾斜部46が曲がりやすく、第2円筒部47が拡径し、被取付部材70の表面に隣接して、拡径部47aが形成される。
取付部材71と、被取付部材70とは、アウターナット30の第2端面36と、拡径スリーブ40の拡径部47aとの間に挟まれる。
拡径スリーブ40は、被取付部材70の表面を押圧し、被取付部材70と取付部材71は摩擦接合される。
【0078】
更に、ボルト10を回転させ、インナーナット頭部55をアウターナット30の方向に引き付けていくと、拡径部47aは十分拡径してそれ以上拡径できないので、肉厚の厚い第2端部49が拡径し、第2拡径部49aが形成される。第2拡径部49aにより、一層高い接合強度を得ることができる。
拡径スリーブ40は、被取付部材70と取付部材71の間に更に強い摩擦力をかける。
これで、図18に示すように、ブラインドボルト1の締結が完了する。
【0079】
(取り外し)
取付部材71と被取付部材70を取外すには、アウターナット30を回らないように回り止めして、ボルト10を反時計回りに回転させて、インナーナット50からボルト10を取外せば、アウターナット30からインナーナット50を引き抜くことができ、拡径した拡径スリーブ40を取外し、取付部材71を被取付部材70から取り外すことができる。拡径した拡径スリーブ40以外の部品は、再使用することができる。
【0080】
本発明の実施形態では、拡径スリーブ40は、第1湾曲部と、第1湾曲部より肉厚が厚い第2湾曲部とを有する。ブラインドボルト1を取付部材71と被取付部材70の取付孔72,73に挿入すると、第1湾曲部は取付孔72,73の中に入り、第2湾曲部は取付孔72,73の外に出る。
ブラインドボルト1を締結するため、拡径スリーブ40を軸方向に圧縮する力がかかると、まず、拡径スリーブ40の第1湾曲部が拡径し、第1円筒部43は取付孔72,73の内面に密着する。これにより、支圧接合を得ることができる。
次に、更に強い力で拡径スリーブ40を軸方向に圧縮する力がかかると、第1湾曲部より肉厚の厚い第2湾曲部が拡径し、被取付部材70の表面に隣接して拡径部47aが形成され、アウターナット30の第2端面36と拡径部47aとの間に、被取付部材70と取付部材71が挟まれる。これにより、摩擦接合を得ることができる。取付部材71と被取付部材70を強い接合強度で結合することが出来る。
【0081】
更に、拡径スリーブ40の肉厚の厚い第2端部49が拡径して、第2拡径部49aを形成し、更に高い接合強度を得ている。これにより、更に強い摩擦接合を得ることができる。
このように、本発明の実施形態の接合は、摩擦接合と支圧接合が合わさった接合であり、摩擦接合だけの場合より、高い接合強度を得ることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 ブラインドボルト
10 ボルト
11 頭部
13 円柱部
15 雄ねじ部
20 ワッシャ
21 第1ワッシャ端面
22 第2ワッシャ端面
23 中心孔
24 テーパ面
30 アウターナット
31 外面
32 円形孔
33 多角形孔
34 段部
35 第1端面
36 第2端面
40 拡径スリーブ
41 第1端部
42 第1傾斜部
42m 第1溝
43 第1円筒部
44 第2傾斜部
44m 第2溝
45 中間部
46 第3傾斜部
46m 第3溝
47 第2円筒部
47a 拡径部
48 第4傾斜部
48m 第4溝
49 第2端部
49a 第2拡径部
50 インナーナット
52 インナーナット孔
53 インナーナット円筒部
53a 端部分円筒部
54 端部分平面部
55 インナーナット頭部
56 インナーナット段部
57 雌ねじ部
70 被取付部材
71 取付部材
72 取付孔
73 取付孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18