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特許7010505化学増幅型フォトレジスト組成物、フォトレジストパターン、およびフォトレジストパターン製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】化学増幅型フォトレジスト組成物、フォトレジストパターン、およびフォトレジストパターン製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20220119BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20220119BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
G03F7/20 501
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019548335
(86)(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 KR2018010869
(87)【国際公開番号】W WO2019054805
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2019-09-11
(31)【優先権主張番号】10-2017-0118879
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0109090
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リム、ミン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジ ヘ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨンミ
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-006503(JP,A)
【文献】特開2006-234938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/039
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1アルカリ可溶性樹脂;および
光酸発生官能基(photo-acid generating group)がC1-20アルキレンスルフィドを含む官能基を媒介にして第2アルカリ可溶性樹脂と結合した高分子光酸発生剤(polymeric photo-acid generator);を含み、
前記第1アルカリ可溶性樹脂および第2アルカリ可溶性樹脂それぞれは、アクリル樹脂であり、
前記アルカリ可溶性樹脂は、光または酸によって保護基が離脱(Deprotection)されて、アルカリ可溶特性を有するようになる樹脂であり、
前記光酸発生官能基(photo-acid generating group)は、下記化学式11または化学式12の化合物に由来する、化学増幅型フォトレジスト組成物:
[化学式11]
【化11】
[化学式12]
【化12】
上記化学式11および12中、
~Rはそれぞれ互いに独立して、水素、ハロゲン、チオール、C1-20アルキル、C3-20シクロアルキル、C2-20アルケニル、C1-20アルコキシ、C1-10フルオロアルキル、C1-20アルキルチオール、またはC2-20アルケンチオールであり、
前記R~Rのうちの少なくとも一つは、チオール、C2-20アルケニル、またはC2-20アルケンチオールであり、
は、C1-10アルコキシ、C1-10フルオロアルキル、またはC1-10アルキルチオールであり、
は、前記化学式11および12中のN(窒素原子)と連結されたカルボニルを含む、置換の1-4アルキレンであり、
は、カルボニルである。
【請求項2】
前記高分子光酸発生剤に含まれる第2アルカリ可溶性樹脂は前記第1アルカリ可溶性樹脂と同一であるか、前記第1アルカリ可溶性樹脂に含まれる繰り返し単位を含む、
請求項1に記載の化学増幅型フォトレジスト組成物。
【請求項3】
前記第1アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して前記高分子光酸発生剤(polymeric photo-acid generator)0.01~50重量部を含む、
請求項1または2に記載の化学増幅型フォトレジスト組成物。
【請求項4】
前記第2アルカリ可溶性樹脂は、下記化学式1~10で表される単量体のうちのいずれか一つ以上に由来した構造を含む、
請求項1に記載の化学増幅型フォトレジスト組成物:
[化学式1]
【化1】
[化学式2]
【化2】
[化学式3]
【化3】
[化学式4]
【化4】
[化学式5]
【化5】
[化学式6]
【化6】
[化学式7]
【化7】
[化学式8]
【化8】
[化学式9]
【化9】
[化学式10]
【化10】
上記化学式1~10中、
は、水素;ハロゲン;C1-10アルキル;C3-10シクロアルキル;またはC2-10アルケニルであり、
n1、n2およびn3はそれぞれ独立して、1~18の整数である。
【請求項5】
前記第2アルカリ可溶性樹脂および前記化学式11または化学式12の化合物のうちのいずれか一つは二重結合を含む官能基を含み、他の一つはチオールを含む官能基を含む、請求項1に記載の化学増幅型フォトレジスト組成物。
【請求項6】
前記光酸発生官能基(photo-acid generating group)は、下記化学式13~化学式15の化合物のうちのいずれか一つに由来する、
請求項1に記載の化学増幅型フォトレジスト組成物:
[化学式13]
【化13】
[化学式14]
【化14】
[化学式15]
【化15】
上記化学式13~15中、
およびRはそれぞれ互いに独立して、水素、ハロゲン、チオール、C1-20アルキル、C3-20シクロアルキル、C2-20アルケニル、C1-20アルコキシ、C1-10フルオロアルキル、C1-20アルキルチオール、またはC2-20アルケンチオールであり、
前記RおよびRのうちの少なくとも一つは、チオール、C2-20アルケニル、またはC2-20アルケンチオールであり、
は、C1-10アルコキシ、C1-10フルオロアルキル、またはC1-10アルキルチオールである。
【請求項7】
前記第1アルカリ可溶性樹脂および高分子光酸発生剤(polymeric photo-acid generator)は、それぞれ1,000~500,000の重量平均分子量を有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の化学増幅型フォトレジスト組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の化学増幅型フォトレジスト組成物から製造されたフォトレジストパターン。
【請求項9】
支持体上に、請求項1から7のいずれか一項に記載の化学増幅型フォトレジスト組成物からなる厚膜フォトレジスト層を積層する積層工程;
前記厚膜フォトレジスト層に、電磁波または粒子線を含む放射線を照射する露光工程;および
露光後の前記厚膜フォトレジスト層を現像して厚膜レジストパターンを得る現像工程を含む、
フォトレジストパターン製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2017年9月15日付韓国特許出願第10-2017-0118879号および2018年9月12日付韓国特許出願第10-2018-0109090号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、化学増幅型フォトレジスト組成物、フォトレジストパターン、およびフォトレジストパターン製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
FAB工程の微細化技術適用拡大と共にパッケージング(Packaging)技術にも高性能、薄型短小パッケージ(Pakage)製造のための工程技術で変化が起こっている。特に、半導体入出力端子の増加によってフリップチップ(Flip Chip)の用途拡大およびFOWLP技術が導入され信号遅延の最少化を目的としてチップ間の直接連結の可能なTSV工程が拡大されるにつれて、Bump需要が増加してこれを形成するBump PRの技術開発が非常に重要である。
【0004】
Bump PRの場合、10~100μmの厚膜での感度と解像度が非常に優れていなければならず、メッキ工程を通じて金属Bumpを形成しなければならないので直進性、残渣、フーチング(footing)、ノッチング(notching)特性などパターン性能がよくなければならず、メッキ液に対する耐性が優れていなければならない。
【0005】
したがって厚膜での感度と解像度を増加させるために化学増幅型フォトレジストを使用するようになり、この組成物は酸によって解離されてアルカリ現像液に対する溶解性が増大する樹脂と感光性酸発生物(光酸発生剤)、酸拡散制御剤、腐食防止剤および特定溶解抑制剤を含むと知られている。
【0006】
一方、従来の技術によれば、ナフタルイミドタイプの光酸発生剤を使用し、この場合、溶解度が良くないため感度を高めるために含量を高めるようになるが、これは限界があり、現像後露光部にスカムとして残るという短所がある。したがって、前記のような短所を改善することができる光酸発生剤に対する研究が必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記のような課題を解決するためのものであって、アルカリ可溶性樹脂と光酸発生剤間の相溶性および光酸発生剤の溶解度を向上させることによって、少量の光酸発生剤を使用しても感度を効果的に高めて光酸発生剤の過多使用による現像時の露光部のスカム発生を防止し、低分子物質がメッキ液に漏れ出るリーチング現像に対する耐性もより向上した化学増幅型フォトレジスト組成物を提供するためのものである。
【0008】
また、本発明は、前記化学増幅型フォトレジスト組成物から製造されたフォトレジストパターンを提供するためのものである。
【0009】
また、本発明は、前記化学増幅型フォトレジスト組成物を用いたフォトレジストパターン製造方法を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記のような問題を解決するために、本明細書では、第1アルカリ可溶性樹脂;および光酸発生官能基(photo-acid generating group)がC1-20アルキレンスルフィドを含む官能基を媒介にして第2アルカリ可溶性樹脂と結合した高分子光酸発生剤(polymeric photo-acid generator);を含む、化学増幅型フォトレジスト組成物を提供する。
【0011】
また、本明細書では、前記化学増幅型フォトレジスト組成物から製造されたフォトレジストパターンを提供する。
【0012】
また、本明細書では、支持体上に、前記化学増幅型フォトレジスト組成物からなる厚膜フォトレジスト層を積層する積層工程;前記厚膜フォトレジスト層に、電磁波または粒子線を含む放射線を照射する露光工程;および露光後の前記厚膜フォトレジスト層を現像して厚膜レジストパターンを得る現像工程を含む、フォトレジストパターン製造方法を提供する。
【0013】
以下、発明の具体的な実施形態による光酸発生剤、前記光酸発生剤を含む厚膜用化学増幅型フォトレジスト組成物、およびこれから製造されたフォトレジストパターンについてより詳細に説明する。
【0014】
一方、本発明の請求項および明細書で言及されている用語である"C1-20アルキレンスルフィドを含む官能基"は末端にチオールがついた直鎖のC1-20アルキレン官能基を意味すると理解されなければならず、他の官能基またはグループと結合する地点は前記チオールがついた末端を除いた他のアルキルの末端である。
【0015】
また、用語"エチレンスルフィド官能基"は直鎖の炭素数2のアルキレンの一方に硫黄(S)元素がついた官能基を意味すると理解されなければならない。
【0016】
また、用語"アルケンチオール"は、アルケン(alkene)に由来した2価官能基にチオールが結合された構造の官能基を意味すると理解されなければならない。
【0017】
一方、本発明で請求項および明細書で言及されている用語である"アルカリ可溶性樹脂"は、光または酸によって保護基が離脱(Deprotection)されて、アルカリ可溶特性を有するようになる樹脂を意味すると理解されなければならない。
【0018】
また、本明細書で、
【化1】
は他の置換基に連結される結合を意味すると理解されなければならない。
【0019】
一方、本明細書で、"第1"および"第2"という用語は両者の区分のために任意に順序を付けたものと理解されなければならない。
【0020】
前述のように、発明の一実施形態によれば、第1アルカリ可溶性樹脂;および光酸発生官能基(photo-acid generating group)がC1-20アルキレンスルフィドを含む官能基を媒介にして第2アルカリ可溶性樹脂と結合した高分子光酸発生剤(polymeric photo-acid generator);を含む、化学増幅型フォトレジスト組成物が提供される。
【0021】
本発明者らの研究結果、前記実施形態の化学増幅型フォトレジスト組成物はアルカリ可溶性樹脂と光酸発生剤間の相溶性および光酸発生剤の溶解度を向上させることができ、また少量の光酸発生剤を使用しても感度を効果的に高めて光酸発生剤の過多使用による現像時の露光部のスカム発生を防止することができ、低分子物質がメッキ液に漏れ出るリーチング現像に対する耐性もより向上させることができるという点を実験を通じて確認して発明を完成した。
【0022】
より具体的に、前記実施形態の化学増幅型フォトレジスト組成物に含まれる高分子光酸発生剤は第2アルカリ可溶性樹脂がエチレンスルフィド官能基を媒介にして光酸発生官能基と結合された構造を有し、これにより相対的に少量の光酸発生剤を使用しても前記第1アルカリ可溶性樹脂と光酸発生官能基間の相溶性が高まり光酸発生官能基の溶解度も向上でき、感度を効果的に高めて光酸発生剤の過多使用による現像時露光部のスカム発生が防止できる。
【0023】
だけでなく、従来の化学増幅型フォトレジスト組成物は光酸発生剤を低分子量化合物などを使用し、これにより光酸発生剤などの低分子物質がメッキ液に漏れ出るリーチング現像が発生したが、これに反し、前記実施形態の化学増幅型フォトレジスト組成物は相対的にバルキーな構造を有する高分子光酸発生剤を含んで前記リーチング現像などを防止することができる。
【0024】
前記高分子光酸発生剤は末端に二重結合を含む官能基およびチオールを含む官能基の中から選択された一つ以上が置換された前記第2アルカリ可溶性樹脂と前記光酸発生官能基がチオール-エンクリック反応を通じて結合して、前記光酸発生官能基がエチレンスルフィド官能基を媒介にして前記第2アルカリ可溶性樹脂と結合された構造の光酸発生剤になる。
【0025】
具体的に、前記第2アルカリ可溶性樹脂の末端に二重結合を含む官能基が置換された場合、前記光酸発生官能基に由来する化合物はチオールを含む官能基を有することができ、前記第2アルカリ可溶性樹脂末端にチオールを含む官能基が置換された場合、前記光酸発生官能基が由来する化合物は二重結合を含む官能基を有することができる。
【0026】
より詳しく説明すれば、前記第2アルカリ可溶性樹脂を重合した後、ここに前記光酸発生官能基と光開始剤を投入すれば、二重結合とチオール官能基間にチオール-エンクリック反応が起こる。前記反応によって重合された第2アルカリ可溶性樹脂と光酸発生官能基はエチレンスルフィド官能基を媒介にして結合される光酸発生剤になり、このような形態にフォトレジスト組成物内に含まれるようになる。
【0027】
以下、前記実施形態の化学増幅型フォトレジスト組成物についてより詳細に説明する。
【0028】
アルカリ可溶性樹脂
詳しくは、前記第1アルカリ可溶性樹脂および第2アルカリ可溶性樹脂のそれぞれは保護基によって保護された酸基を有する高分子樹脂であって、前記酸基は例えばカルボキシ基、フェノール性水酸基などであってもよい。一方、前記樹脂はそれぞれ独立して当業界で通常知られた高分子樹脂を使用することができ、例えばアクリル樹脂、ノボラック樹脂およびポリヒドロキシスチレン樹脂であってもよいが、これらに限定されない。
【0029】
前記第1アルカリ可溶性樹脂および第2アルカリ可溶性樹脂は、それぞれ独立してアクリル樹脂、ノボラック樹脂およびポリヒドロキシスチレン樹脂からなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0030】
前記高分子光酸発生剤に含まれる第2アルカリ可溶性樹脂の具体的な特徴が限定されるのではないが、前記実施形態の化学増幅型フォトレジスト組成物内で成分の相溶性や最終製造されるフォトレジストパターンの物性および均質性などを考慮すれば、前記高分子光酸発生剤に含まれる第2アルカリ可溶性樹脂は前記第1アルカリ可溶性樹脂と同一であるか、前記第1アルカリ可溶性樹脂に含まれる繰り返し単位を含むことができる。
【0031】
前記実施形態の化学増幅型フォトレジスト組成物は、最終製造されるフォトレジストパターンの物性および具体的な用途などを考慮して前記第1アルカリ可溶性樹脂および高分子光酸発生剤を含むことができる。例えば、前記実施形態の化学増幅型フォトレジスト組成物は、前記第1アルカリ可溶性樹脂100重量部に対して前記高分子光酸発生剤0.01~50重量部を含むことができる。
【0032】
より詳しくは、前記第2アルカリ可溶性樹脂、好ましくは、前記第1アルカリ可溶性樹脂および第2アルカリ可溶性樹脂のそれぞれは、下記化学式1~10で表される単量体のうちのいずれか一つ以上に由来した構造を含むことができる。
[化学式1]
【化2】
[化学式2]
【化3】
[化学式3]
【化4】
[化学式4]
【化5】
[化学式5]
【化6】
[化学式6]
【化7】
[化学式7]
【化8】
[化学式8]
【化9】
[化学式9]
【化10】
[化学式10]
【化11】
上記化学式1~10中、Rは、水素;ハロゲン;C1-10アルキル;C3-10シクロアルキル;またはC2-10アルケニルであり、n1、n2およびn3はそれぞれ独立して、1~18の整数であってもよい。
【0033】
高分子光酸発生剤
前記高分子光酸発生剤に含まれる前記光酸発生官能基(photo-acid generating group)は、下記化学式11または化学式12の化合物に由来するものであってもよい。
[化学式11]
【化12】
[化学式12]
【化13】
上記化学式11および12中、
~Rはそれぞれ互いに独立して、水素、ハロゲン、チオール、C1-20アルキル、C3-20シクロアルキル、C2-20アルケニル、C1-20アルコキシ、C1-10フルオロアルキル、C1-20アルキルチオール、またはC2-20アルケンチオールであり、
前記R~Rのうちの少なくとも一つは、チオール、C2-20アルケニル、またはC2-20アルケンチオールであり、
は、C1-10アルコキシ、C1-10フルオロアルキル、またはC1-10アルキルチオールであり、
は、前記窒素原子と連結されたカルボニルを含む、置換もしくは非置換のC1-4アルキレンであり、
は、カルボニルまたはメチレンである。
【0034】
具体的に、前記化学式11および12中、R、RおよびRはそれぞれ水素であり、Rはチオール、C2-20アルケニル、またはC2-20アルケンチオールであってもよく、好ましくはR、RおよびRはそれぞれ水素であり、Rはチオールまたはエチレニルであってもよい。
【0035】
また、前記化学式11および12中、RはC1-10フルオロアルキルであってもよく、好ましくは、Rはトリフルオロメチルであってもよい。
【0036】
また、前記化学式11および12中、Lはカルボニルであり、Lはカルボニルであってもよい。
【0037】
一方、前記高分子光酸発生剤に含まれる光酸発生官能基(photo-acid generating group)は、下記化学式13~15で表される化合物のうちのいずれか一つに由来するものであってもよい。
[化学式13]
【化14】
[化学式14]
【化15】
[化学式15]
【化16】
上記化学式13~15中、
およびRはそれぞれ互いに独立して、水素、ハロゲン、チオール、C1-20アルキル、C3-20シクロアルキル、C2-20アルケニル、C1-20アルコキシ、C1-10フルオロアルキル、C1-20アルキルチオール、またはC2-20アルケンチオールであり、
前記RおよびRのうちの少なくとも一つは、チオール、C2-20アルケニル、またはC2-20アルケンチオールであり、
は、C1-10アルコキシ、C1-10フルオロアルキル、またはC1-10アルキルチオールであってもよい。
【0038】
具体的に、前記化学式13~15中、RはチオールまたはC2-20アルケニルであり、Rは水素である。好ましくは、Rはチオールまたはエチレニルであり、Rは水素である。
【0039】
また、前記化学式13~15中、RはC1-10フルオロアルキルであってもよく、Rはトリフルオロメチルであってもよい。
【0040】
一方、前述のように、前記高分子光酸発生剤は光酸発生官能基がC1-20アルキレンスルフィドを含む官能基を媒介にして第2アルカリ可溶性樹脂と結合した構造を有し、これにより前記第2アルカリ可溶性樹脂および前記光酸発生官能基が由来する化合物のうちのいずれか一つは二重結合を含む官能基を含み、他の一つはチオールを含む官能基を含み、前記C1-20アルキレンスルフィドを含む官能基が形成できる。
【0041】
より具体的に、前記第2アルカリ可溶性樹脂および前記化学式11または化学式12の化合物のうちのいずれか一つは二重結合を含む官能基を含み、他の一つはチオールを含む官能基を含むことができる。
【0042】
一方、前記第1アルカリ可溶性樹脂および高分子光酸発生剤(polymeric photo-acid generator)それぞれの分子量の範囲が大きく限定されるのではないが、例えば1,000~500,000の重量平均分子量を有することができる。
【0043】
本明細書で、重量平均分子量は、GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られた分析装置と示差屈折検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを使用することができ、通常適用される温度条件、溶媒、flow rateを適用できる。前記測定条件の具体的な例として、30℃の温度、クロロホルム溶媒(Chloroform)および1mL/minのflow rateが挙げられる。
【0044】
一方、前記実施形態による化学増幅型フォトレジスト組成物は、光開始剤をさらに含むことができる。
【0045】
前記光開始剤は当該技術分野で一般に使用されるものを使用することができ、特に制限されるわけではない。光開始剤は例えば、ベンゾフェノン、芳香族α-ヒドロキシケトン、ベンジルケタール、芳香族α-アミノケトン、フェニルグリシュウ酸エステル、モノ-アシルホスフィンオキシド、ビス-アシルホスフィンオキシド、トリス-アシルホスフィンオキシド、芳香族ケトン由来のオキシムエステルおよび/またはカルバゾール類型のオキシムエステルから選択される。
【0046】
前記光開始剤は光酸発生剤を準備する過程で使用されるものであってもよく、第2アルカリ可溶性樹脂を重合した後、ここに前記光酸発生官能基と共に投入される形態に使用されるものであってもよい。
【0047】
また、前記化学増幅型フォトレジスト組成物は、前記成分に追加して、酸拡散抑制剤、腐食防止剤、溶解抑制剤および溶媒などをさらに含んでもよい。
【0048】
前記酸拡散制御剤は、レジストパターン形状、露光後安定性などの向上のために含まれるものであってもよく、例えば、トリエチルアミン(triethylamine)、トリプロピルアミン(tripropyl amine)、トリベンジルアミン(tribenzyl amine)、トリヒドロキシエチルアミン(trihydroxyethyl amine)、およびエチレンジアミン(ethylene diamine)からなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0049】
前記腐食防止剤は、フォトレジスト剥離用組成物が前記金属パターンを腐食させる程度を最少化させることができるようにする役割を果たすものであって、当該技術分野で一般に使用されるものを使用することができ、特に制限されるのではない。一方、腐食防止剤は例えば、トリアゾール系化合物、没食子酸(gallic acid、GA)またはこれらの混合物であってもよい。前記腐食防止剤は、前記金属パターンを構成する金属と物理的、化学的に吸着されて前記金属パターンの腐食を防止することができる。例えば、前記トリアゾール系化合物は、ベンゾトリアゾール(benzotriazol、BTA)化合物、トリルトリアゾール(tolyltriazol、TTA)を含む。
【0050】
一方、前記溶解抑制剤は当業界で通常知られた溶解抑制剤を使用することができ、特に制限されるのではない。
【0051】
前記溶媒は各種成分を均一に溶解し、混合し、フォトレジスト組成物の粘度を制御するために含まれるものであってもよく、前記溶媒は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル、モノフェニルエーテルなどの多価アルコール類およびその誘導体;ジオキサンなどの環状エーテル類;ギ酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテートなどのエステル類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;であってもよい。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0052】
一方、前記化学増幅型フォトレジスト組成物において、第1アルカリ可溶性樹脂100重量部を基準にして、前記光酸発生剤は0.01~50重量部、好ましくは0.5~40重量部、さらに好ましくは1~30重量部で含まれ得る。
【0053】
前記化学増幅型フォトレジスト組成物内に前記成分が前記のような範囲で含まれる場合、少ない当量の光酸発生剤のみでも感度を効果的に高めることができ、光酸発生剤の過多使用による現像時露光部のスカム発生が防止できるので本発明の課題を解決するのに適切である。
【0054】
一方、発明の他の実施形態によれば、前記化学増幅型フォトレジスト組成物から製造されたフォトレジストパターンが提供される。
【0055】
前述のように、前記一実施形態の化学増幅型フォトレジスト組成物を使用すれば、アルカリ可溶性樹脂と光酸発生剤間の相溶性および光酸発生剤の溶解度を向上させることができ、また少量の光酸発生剤を使用しても感度を効果的に高めて光酸発生剤の過多使用による現像時露光部のスカム発生を防止することができ、低分子物質がメッキ液に漏れ出るリーチング現像に対する耐性もより向上させることができる。
【0056】
これにより、前記化学増幅型フォトレジスト組成物から提供されるフォトレジストパターンは、より向上した感度と共に均質で優れた品質を有することができる。
【0057】
一方、発明のまた他の実施形態によれば、前記一実施形態の化学増幅型フォトレジスト組成物を用いたフォトレジストパターン製造方法が提供される。
【0058】
より具体的に、前記フォトレジストパターン製造方法は、支持体上に、前記化学増幅型フォトレジスト組成物からなる厚膜フォトレジスト層を積層する積層工程;前記厚膜フォトレジスト層に、電磁波または粒子線を含む放射線を照射する露光工程;および露光後の前記厚膜フォトレジスト層を現像して厚膜レジストパターンを得る現像工程を含むことができる。
【0059】
前記フォトレジストパターン製造方法では、前記一実施形態の化学増幅型フォトレジスト組成物を用いる点を除いて、フォトレジストパターン製造過程で使用できると知られた方法と装置などを大きな制限なく使用することができる。
【発明の効果】
【0060】
本発明によれば、アルカリ可溶性樹脂と光酸発生剤間の相溶性および光酸発生剤の溶解度を向上させることによって、少量の光酸発生剤を使用しても感度を効果的に高めて光酸発生剤の過多使用による現像時露光部のスカム発生を防止し、低分子物質がメッキ液に漏れ出るリーチング現像に対する耐性もより向上した化学増幅型フォトレジスト組成物を提供することができる。
【0061】
また、本発明によれば、前述の化学増幅型フォトレジスト組成物から製造されたフォトレジストパターンと前記化学増幅型フォトレジスト組成物を用いたフォトレジストパターン製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下、本発明の理解のためにより詳しく説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【実施例
【0063】
[実施例および比較例:化学増幅型フォトレジスト組成物製造]
実施例1
tert-ブチルメタクリレート、メタクリル酸、2-(アリルオキシ)エチルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート(FA-513M)、1-ドデカンチオール、PGMEA(溶媒)を反応器にそれぞれ95.58g、14.47g、85.86g、74.09g、2.19g、320.09gを入れて均一な溶液をつくる。窒素雰囲気下に溶液内部温度を65℃にした後、PGMEA 14.58gにAIBN 1.62gを溶かしてこの溶液を入れる。18時間反応した後、重合反応が終了し、下記化学式16で表される第2アルカリ可溶性樹脂(Mw:25.2k)を得た。反応器に追加的に137.8gのAIBNと下記化学式17で表される光酸発生官能基6-メルカプト-1,3-ジオキソ-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-2(3H)-イルトリフルオロメタンスルホネート209.4gを入れる。重合温度と同様な65℃で3時間チオール-エンクリック反応させて、前記第2アルカリ可溶性樹脂と光酸発生官能基がエチレンスルフィド官能基を媒介にして相互結合された下記化学式18の構造の高分子光酸発生剤を製造した。反応が完了すれば、常温に温度を下げた後、IPAとPGMEAで希釈し水に入れて沈殿を取る。ろ過して得られた高分子を再びIPAとPGMEA混合溶媒に入れて沈殿を取り、ろ過して40℃オーブンで一日間乾燥させた。
【0064】
下記化学式22で表される第1アルカリ可溶性樹脂(Mw:25.1k)45gと下記化学式18の高分子光酸発生剤を4.5g混合し、その外に追加的な添加剤として、酸拡散抑制剤を0.5g、溶媒であるPGMEAを50g混合して常温で攪拌し均一な溶液に製造して化学増幅型フォトレジスト組成物を得た。
[化学式16]
【化17】
[化学式17]
【化18】
[化学式18]
【化19】
【0065】
実施例2
実施例1のように重合時に入れた1-ドデカンチオールの量を2.19gの代わりに29.7g入れて、分子量が3068であって化学式16で表される第2アルカリ可溶性樹脂を重合した。チオール-エンクリック反応させて前記低分子量第2アルカリ可溶性樹脂と光酸発生官能基がエチレンスルフィド官能基を媒介にして相互結合した前記化学式18の構造の高分子光酸発生剤を製造した。
【0066】
実施例1と同一な過程を通じて化学増幅型フォトレジスト組成物を製造し、前記分子量が3068である第2アルカリ可溶性樹脂と結合された高分子光酸発生剤を使用することのみ異にした。
【0067】
実施例3
tert-ブチルメタクリレート、メタクリル酸、メルカプトメチルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート(FA-513M)、1-ドデカンチオール、PGMEA(溶媒)を反応器にそれぞれ、95.61g、14.47g、66.66g、74.06g、2.54g、297gを入れて均一な溶液をつくる。窒素雰囲気下に溶液内部温度を65℃にした後、PGMEA 14.58gにAIBN 1.62gを溶かしてこの溶液を入れる。18時間反応した後に重合反応が終了して、下記化学式19で表される第2アルカリ可溶性樹脂(Mw:25.1k)を得た。反応器に追加的に137.79gのAIBNと下記化学式20で表される光酸発生官能基1,3-ジオキソ-6-ビニル-1H-ベンゾ[de]イソキノリン-2(3H)-イルトリフルオロメタンスルホネート205.98gを入れる。重合温度と同様な65℃で3時間チオール-エンクリック反応させて前記第2アルカリ可溶性樹脂と光酸発生官能基がエチレンスルフィド官能基を媒介にして相互結合された下記化学式21の構造の高分子光酸発生剤を製造した。反応が完了すれば、常温に温度を下げた後、IPAとPGMEAで希釈し、水に入れて沈殿を取る。ろ過して得られた高分子を再びIPAとPGMEA混合溶媒に入れて沈殿を取り、ろ過して40℃オーブンで一日間乾燥させた。
【0068】
下記化学式22で表される第1アルカリ可溶性樹脂(Mw:25.1k)45gと下記化学式21で表される高分子光酸発生剤を4.5g混合し、その外に追加的な添加剤として酸拡散抑制剤を0.5g、溶媒であるPGMEAを50g混合し、常温で攪拌して均一な溶液に製造して化学増幅型フォトレジスト組成物を得た。
[化学式19]
【化20】
[化学式20]
【化21】
[化学式21]
【化22】
【0069】
実施例4
実施例3のように重合時に入れた1-ドデカンチオールの量を2.54gの代わりに29.7g入れて、分子量が3021であって化学式19で表される第2アルカリ可溶性樹脂を重合した。チオール-エンクリック反応させて前記低分子量第2アルカリ可溶性樹脂と光酸発生官能基がエチレンスルフィド官能基を媒介にして相互結合した前記化学式21の構造の高分子光酸発生剤を製造した。
【0070】
実施例3と同一な過程を通じて化学増幅型フォトレジスト組成物を製造し、前記分子量が3068である第2アルカリ可溶性樹脂と結合された光酸発生剤を使用したことのみ異にした。
【0071】
比較例1
第1アルカリ可溶性樹脂として、下記化学式22で表されるアクリル樹脂(Mw:25.1k)46.7g、光酸発生剤として下記化学式23で表される(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-1,8-ナフタルイミド3gを混合した後、その外に追加的な添加剤として酸拡散抑制剤を0.3g、溶媒であるPGMEAを50g混合し常温で攪拌して均一な溶液に製造して化学増幅型フォトレジスト組成物を得た。
[化学式22]
【化23】
[化学式23]
【化24】
【0072】
実験例
1)溶解度評価
前記実施例1~4によって製造された化学増幅型フォトレジスト組成物および比較例1による化学増幅型フォトレジスト組成物それぞれ0.5gにプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(Propylene glycol methyl ether acetate)を0.1gずつ追加し溶解させて溶解度を測定し、その結果を表1に示した。
【0073】
【表1】
【0074】
上記表1の結果から確認できるように、第2アルカリ可溶性樹脂と光酸発生官能基がエチレンスルフィド官能基を媒介にして相互結合された高分子光酸発生剤を含む本発明の実施例1~4のフォトレジスト組成物の場合、比較例1に比べて向上した溶解度を有するのを確認することができた。
【0075】
2)メッキ時のリーチング現象評価
実施例1~4および比較例1で製造されたフォトレジスト組成物を基板上にスピンコーターを用いて塗布した後、プリベーク(prebake)およびポストベーク(postbake)などの工程を経て形成されたレジスト膜をCuメッキ液に常温で2時間浸漬した後、レジスト膜の厚さの変化を通じてリーチング現像があるか見てみた。厚さ差が5%以上ある場合にリーチング現像があることとし、実験結果を下記表2で示した。
【0076】
【表2】
【0077】
上記表2の結果から確認できるように、第2アルカリ可溶性樹脂と光酸発生官能基がエチレンスルフィド官能基を媒介にして相互結合された化合物を含む実施例1~4のフォトレジスト組成物の場合、メッキリーチング現像抑制特性面で比較例1に比べて向上した効果を有するのを確認することができた。