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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】細菌及びそれを用いた水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20220203BHJP
   C02F 1/00 20060101ALI20220203BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20220203BHJP
   C02F 1/76 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
C12N1/20 D ZNA
C02F1/00 U
C02F1/50 510A
C02F1/50 520A
C02F1/50 531M
C02F1/76 A
C02F1/50 520K
C02F1/50 531P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017038224
(22)【出願日】2017-03-01
(65)【公開番号】P2018143107
(43)【公開日】2018-09-20
【審査請求日】2020-02-25
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-02355
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-02356
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】飯泉 太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 愛里
(72)【発明者】
【氏名】諸星 知広
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-540443(JP,A)
【文献】国際公開第2011/043232(WO,A1)
【文献】特開2016-041402(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102712512(CN,A)
【文献】Environmental Science and Technology Letters,2015年,Vol. 3,pp. 36-40
【文献】Scientific reports,2013年,Vol. 3: 2935,pp. 1-9
【文献】Microbes and environments,2012年,Vol. 27, No. 4,pp. 443-448
【文献】Ecotoxicology and environmental safety,2014年,Vol. 109,pp. 15-21
【文献】Journal of Environmental Biotechnology,2010年,Vol. 10, No. 1,pp. 15-18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スフィンゴピクシス属に属し、塩素耐性を有するとともに、N-アシル化ホモセリンラクトン(AHL)分解活性を有し、遊離残留塩素濃度が0.3mg/L・as Clである水溶液に30℃で15分間接触させた後の生存率が69%以上である、細菌であって、
スフィンゴピクシス属FD7株(受託番号:NITE P-02356)又はスフィンゴピクシス属EG6株(受託番号:NITE P-02355)である、細菌
【請求項2】
配列番号1又は配列番号2に記載の16SrDNA配列と97%以上の配列相同性を有する、請求項1に記載の細菌。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の細菌を水処理系内に含有する水処理システム。
【請求項4】
前記細菌を担体に固定した水処理用資材を備える、請求項に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記細菌を水処理系内に添加する細菌添加手段を備える、請求項に記載の水処理システム。
【請求項6】
水処理系内に殺菌剤である塩素系薬剤を添加する殺菌剤添加手段を備える、請求項3~5の何れか1項に記載の水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N-アシル化ホモセリンラクトン(AHL)分解活性を有する細菌及びそれを用いた水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオフィルムは、細菌が物質固相表面に付着及び増殖して、多糖類などの高分子有機物を生産することにより形成される。バイオフィルムは、膜状の構造体であり、生物膜やスライムとも呼ばれる。
【0003】
バイオフィルムは、冷却水系などの循環水系において、伝熱効率の低下や配管の目詰まりの要因となることが知られている。また、バイオフィルムは、製紙工程において生産性低下や品質の劣化などの障害(スライム障害)の要因となることが知られ、逆浸透膜(RO膜)を利用した水処理工程においてRO膜のフラックスの低下の要因となることが知られている。
【0004】
上記の循環水系、製紙工程、水処理工程など(以下、まとめて「水処理系」という)においてバイオフィルムに起因する上記の各問題を防止するために、様々な処置方法が考案されている。
【0005】
それら様々な処置方法うち、最も一般的なものは、殺菌剤や増殖抑制剤を用いて細菌の繁殖を防止する方法である。これら殺菌剤や増殖抑制剤を用いる方法では、従来、塩素、臭素ならびにその派生物、ClMIT(5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンと2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの混合物)やDBNPA(2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド)といった有機抗菌剤、オゾンや過酸化水素などの酸化性の殺菌剤が利用されている。
その他、界面活性剤を利用した分散処理や剥離処理も行われており、これらの方法では、アルキルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリエチレンイミンなどが利用されている。
【0006】
また近年、細胞間情報伝達物質がバイオフィルム形成のシグナルとして重要な役割を担っていることが明らかになり、細胞間情報伝達物質を分解してバイオフィルムの形成を抑制する技術開発も進んでいる。
【0007】
細胞間情報伝達物質を分解してバイオフィルムの形成を抑制する技術として、グラム陰性細菌の中で幅広く使われている細胞間情報伝達物質であるN-アシル化ホモセリンラクトン(AHL)に着目した技術が開示されている(特許文献1等)。
【0008】
実験室レベルでは、AHL分解活性を有する細菌(以下、「AHL分解菌」ともいう)を水処理系内に導入してAHL分解菌にAHLを分解させることによってバイオフィルムの形成を抑制する技術が実証されている(非特許文献1)。
【0009】
しかし、実際の水処理系は開放系であり、その系内には多様な自然界の細菌等の微生物が存在する。そして、従来のAHL分解菌では、これら多様な自然界の細菌等が存在する開放系の水処理系内に、安定的に定着させることができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特表2013-540443号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】Environmental Science & Technology, 47巻、836-842ページ、2013年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、本発明は、上記した従来技術の問題を解決し、多様な自然界の細菌等の微生物が存在する開放系の処理系内でも、安定的に定着させることができるAHL分解菌及び、そのAHL分解菌を用いた水処理システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記のような問題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、本発明者らが分離したスフィンゴピクシス属細菌の新規な菌株により、上記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の[1]~[7]を提供する。
[1]スフィンゴピクシス属に属し、塩素耐性を有するとともに、N-アシル化ホモセリンラクトン(AHL)分解活性を有する、細菌。
[2]16SrDNA配列が、配列番号1又は配列番号2に記載の16SrDNA配列と97%以上の配列相同性を有する、[1]の細菌。
[3]スフィンゴピクシス属FD7株(受託番号:NITE P-02356)又はスフィンゴピクシス属EG6株(受託番号:NITE P-02355)である、[1]又は[2]の細菌。
[4][1]~[3]の何れかの細菌を水処理系内に含有する水処理システム。
[5]前記細菌を担体に固定した水処理用資材を備える、[4]の水処理システム。
[6]前記細菌を水処理系内に添加する細菌添加手段を備える、[4]の水処理システム。
[7]水処理系内に殺菌剤である塩素系薬剤を添加する殺菌剤添加手段を備える、[1]~[3]の何れかの水処理方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、AHL分解活性を有するとともに、塩素耐性を有する細菌を提供することができる。
本発明の細菌をAHL分解菌として水処理系内に導入して、その水処理系内に殺菌剤として次亜塩素酸ナトリウム等の塩素系薬剤を低濃度で共存させることにより、本発明の細菌を、開放系の水処理系において多様な土着の細菌の存在下でも、それらの細菌との競争に打ち勝って定着させ、優占的に個体数を維持させることができる。このように開放系の水処理系において継続的に十分な個体数を維持することができるAHL分解菌を水処理系内に共存させて水処理を行うことにより、AHLを分解してバイオフィルムの形成を抑制する効果を継続的に安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】スフィンゴピクシス属FD7株の系統分析の結果を示す図である。
図2】スフィンゴピクシス属EG6株の系統分析の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のスフィンゴピクシス(Sphingopyxis)属細菌(以下、「本発明細菌」ということもある)は、AHL分解活性を有するとともに、塩素耐性を有する。
【0017】
AHL分解活性は、レポーター細菌と呼ばれるクロモバクテリウム・ビオラセウム(Chromobacterium violaceus)の遺伝子組み換え体(AHL合成遺伝子破壊株)を利用した公知の方法によって定量できる。
具体的には、レポーター細菌を混合したLB寒天培地にAHLを含むペーパーディスクを置くと、AHLに応答してレポーター細菌は紫色色素(ビオラセイン)を生産することから、紫色の強度を指標としてAHLの量を半定量することができる。
こうしたレポーター細菌株としては、短鎖AHL(C4~C8:アシル基の鎖長を示す)に応答するCV026株(Microbiology誌、143巻、3703-3711ページ、1997年)や長鎖AHL(C8~C18)に応答するVIR07株(FEMS Microbiol.Lett.誌、279巻、124-130ページ、2007年)が知られており、利用することができる。
AHL分解菌の培養液とAHL試料を混合して反応させたのち、その反応物を用いて上述のレポーターアッセイを行うことで、AHLの分解性を評価することができる。具体的には、未反応のAHLが示す紫色色素の強度に対して、培養液との処理により色調がどれだけ低下したかを比較評価することで、分解性を半定量することができる。
【0018】
本明細書において、塩素耐性を有するとは、次亜塩素酸ナトリウムに対する抵抗性を有することを意味する。
具体的には、遊離残留塩素濃度が0.3mg/L・as Clである水溶液に30℃で15分間接触させた後の生存率が50%を上回る細菌を「塩素耐性を有する」細菌と定義する。遊離残留塩素とは、水中で次亜塩素酸や次亜塩素酸イオンとして存在するものを意味する。
【0019】
本発明細菌は、上記性質の他に、配列番号1又は配列番号2に記載の16SrDNA配列と97%以上、好ましくは98.7%以上、更に好ましくは99%以上の配列相同性を有するものである。
【0020】
更に、本発明細菌は、以下の生化学性状を有する。
分離源:冷却塔より採取した冷却水
形態:好気性グラム陰性非芽胞形成性棹菌
コロニー:R2A寒天培地上で黄色のコロニーを形成
【0021】
上記の性質を有する本発明細菌は、例えば、以下の方法によって得ることができる。
【0022】
工場やビルの冷却塔より冷却水を採取し分離源試料とする。塩素系薬剤を連続注入している冷却水系が望ましい。分離源試料を希釈し、PY培地(1%ポリペプトン、1%酵母エキス、0.5%NaCl、pH7.0)を水で10倍希釈した寒天培地や、R2A寒天培地(Becton, Dickinson and Company)に塗抹後、5~10日間、30℃で培養する。その後、増殖したコロニーを目視あるいは実体顕微鏡にて観察し、形態の異なるコロニーを釣菌し、上記の寒天培地にて好気的に純化培養を繰り返すことにより、本発明細菌を分離できる。
【0023】
具体的に、上記の性質を有する細菌としては、本発明者らが上記の方法で分離したスフィンゴピクシス属FD7株及びスフィンゴピクシス属EG6株が挙げられる。これらは独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に2016年9月23日付で寄託した。受託番号は、以下の通り。
スフィンゴピクシス属FD7株:NITE P-02356
スフィンゴピクシス属EG6株:NITE P-02355
【0024】
分離株(スフィンゴピクシス属FD7株及びスフィンゴピクシス属EG6株)から染色体DNAを調整し、これをテンプレートとしてPCRによって16SrRNA遺伝子のほぼ全長を増幅し、その塩基配列を決定した。
配列表の配列番号1にスフィンゴピクシス属FD7株の1411塩基の塩基配列を示し、配列表の配列番号2にスフィンゴピクシス属EG6株の1411塩基の塩基配列を示す。
【0025】
更に、得られた配列情報をもとに相同性検索及び系統分析を行った。相同性検索及び系統分析は、インターネット上のデータベースであるDDBJ(http://www.ddbj.nig.ac.jp/index-j.html)や、株式会社テクノスルガ・ラボ社製の微生物同定システム、アポロン等の市販データベースを用いて行うことができる。なお、本明細書において、配列相同性は、「株式会社テクノスルガ・ラボ社製の微生物同定システム、アポロン」で計算された値に基づくものである。
【0026】
スフィンゴピクシス属FD7株について相同性検索及び系統分析を行った結果を表1及び図1に示す。図1の「D7」は、スフィンゴピクシス属FD7株を意味する。
【0027】
【表1】
【0028】
表1及び図1に示すように、FD7株はスフィンゴピクシス・ソリ(S.soli)と最も近縁であり、その相同性は98.8%である。この相同性から、FD7株はスフィンゴピクシス・ソリと同種あるいは新種の細菌のいずれかと判断される。
【0029】
スフィンゴピクシス属EG6株について相同性検索及び系統分析を行った結果を表2及び図2に示す。図2の「G6」は、スフィンゴピクシス属EG6株を意味する。
【0030】
【表2】
【0031】
表2及び図2に示すように、EG6株はスフィンゴピクシス・キレンシス(S.chilensis)及びスフィンゴピクシスバウザネンシス(S.bauzanensis)と最も近縁であり、その相同性は98.4%である。相同性が98.4%と低いことから、EG6株はスフィンゴピクシス属の新規な菌種と判断される。
【0032】
本発明細菌は、その培養液を水処理系の系内に含有させて使用するのに好適である。
本発明細菌を水処理系の系内に含有する水処理方法によれば、水処理系内で、被処理水中のAHLを分解して、水処理系におけるバイオフィルムの形成を抑制することができる。
【0033】
本発明細菌を水処理系内に含有させるための具体的形態は特に限定されない。例えば、水処理系内に本発明細菌を添加する細菌添加手段を備えた水処理システムを構築し、細菌添加手段を用いて、本発明細菌を水処理系内に間欠的あるいは連続的に投入することができる。本発明細菌は培地や保存液等の溶液に懸濁した状態、または、乾燥菌体として粉末状で供給することも可能である。水処理系周辺に培養設備を設け、オンサイトで培養した細菌を供給することも可能である。或いは、細菌を担体に固定した水処理用資材を備える水処理システムを構築し、この水処理用資材に水処理系内の被処理水を通液させることもできる。
【0034】
水処理システムには、水処理系内に殺菌剤を添加する殺菌剤添加手段を備えることが好ましい。殺菌剤には、次亜塩素酸ナトリウムやクロラミン系の無機塩素系殺菌剤を利用することができる。殺菌剤の添加は間欠でも好ましいが、連続添加が望ましい。殺菌剤の濃度は、本発明細菌が生育でき、かつ、他の細菌が生育できない濃度にコントロールすることが望ましい。
尚、無機塩素系殺菌剤以外にも無機臭素系殺菌剤や過酸化水素等の酸化剤、あるいはDBNPAやCl-MIT等の有機殺菌剤を併用することもできる。また、防食薬剤やスケール防止薬剤などの水処理薬剤と併用することも可能である。
水処理系が開放系の場合、系内に多様な自然界の細菌等の微生物が存在するが、これらの多様な土着の細菌は塩素耐性を有さない。このため、開放系の水処理系内に本発明細菌と多様な土着の細菌と亜塩素酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤を共存させると、本発明細菌が、多様な土着の細菌との競争に打ち勝って定着する。
このような水処理システムによれば、水処理系が開放系であって、系内に多様な自然界の細菌等の微生物が存在する場合でも、本発明細菌が系内において優占的に個体数を維持するため、AHLを分解してバイオフィルムの形成を抑制する効果を継続的に安定して得ることができる。
【0035】
なお、本発明細菌は、そのまま利用することもできるが、紫外線照射や変異剤処理、或いは遺伝子組換え操作によって得られた高AHL活性変異株や塩素強耐性変異株を利用することもできる。
【実施例
【0036】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
スフィンゴピクシス属細菌標準株として、以下のDSM株をドイツの菌株保存機関DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)より入手した。
S. witflariensis DSM14551
S. chilensis DSM14889
S. taejonensis DSM15583
S. bauzanensis DSM22271
【0037】
<実施例1:塩素耐性の評価>
入手したDSM菌株とスフィンゴピクシス属FD7株及びスフィンゴピクシス属EG6株をそれぞれ1/10濃度のPY寒天培地上で生育し、各細菌菌体を150mMのリン酸緩衝液(pH 7.0)に懸濁した。
終濃度0.3mg/L・as Cl(遊離塩素濃度)となるように次亜塩素酸ナトリウムを加え、30℃で15分間保温した。
希釈後1/10濃度のPY寒天培地に塗布し、30℃で、1週間培養した。培養後に、生成したコロニー数を測定してCFU(コロニーフォーミングユニット)を求め、CFUを生菌数とした。
対象実験(次亜塩素酸無添加)との比較から生存率を求めた。生存率は塩素無添加の対照系のCFUに対する割合として算出した。
【0038】
【表3】
【0039】
表3に示すように、FD7株とEG6株は、それぞれ69%、74%の生存率を示し強い抵抗性を持つことが確認された。また、スフィンゴピクシス属細菌標準株であるDSM菌株は、塩素に対する抵抗性は有さないことが確認された。
【0040】
<実施例2:AHL分解活性の評価>
入手したDSM菌株とスフィンゴピクシス属FD7株及びスフィンゴピクシス属EG6株をそれぞれ1/5濃度のTSB液体培地(Becton, Dickinson and Company)で30℃、16時間、前培養した。
前培養液は、20μMのC6-AHL水溶液(C6はアシル基の鎖長を示す)を含む新鮮な1/5濃度TBS液体培地に移し、30℃で3時間培養した。
培養物は、12000×g、5分間、遠心分離して上清を得た。遠心分離後の上清0.03mlをペーパーディスク(直径8mm:アドバンテック社)に塗布し、予めクロモバクテリウムビオラセウムCV026株を混合したLB寒天培地上にのせて、30℃で16時間培養した。
培養後に、ペーパーディスク周辺の紫色の色調強度を観察した。
【0041】
また、それぞれの株に対し、上記C6-AHL水溶液に代えてC10-AHLを用い、上記CV026株に代えてVIR07株を用いて、上記同様の培養及び観察を行った。
【0042】
【表4】
【0043】
表4に示すように、AHLを直接ペーパーディスクにのせたコントロール(対照系)では強い紫色を示すことが観察された。
FD7株培養液及びEG6株培養液と接触させた系では紫色の色素産生は全く観察されず、AHLが完全に分解されていることが確認された。
スフィンゴピクシス属細菌標準株であるDSM菌株培養液と接触させた系では菌株により紫色の色調強度が異なることが確認された。DSM菌株のうち、S. bauzanensis DSM22271は、AHL分解活性を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、例えば、冷却水系などの循環水系、或いは製紙工程、或いは逆浸透膜(RO膜)を利用した水処理工程において、バイオフィルムの形成を抑制するために利用することができる。
図1
図2
【配列表】
0007010552000001.app