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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】測定ステーションおよび測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/00 20060101AFI20220119BHJP
   B25J 13/00 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
G01B21/00 L
B25J13/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017233241
(22)【出願日】2017-12-05
(65)【公開番号】P2019100904
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】萱場 義隆
(72)【発明者】
【氏名】吹野 豪
(72)【発明者】
【氏名】村松 弘隆
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-101032(JP,A)
【文献】特開2000-121344(JP,A)
【文献】特開昭57-194306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00-21/32
5/00-5/30
B25J 1/00-21/02
G01N 21/00-21/01
21/17-21/61
21/84-21/958
27/72-27/9093
29/00-29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを支持するロボットアームと、
出ヘッドを支持する支持機構と、
前記検出ヘッドと前記ワークとを相互に固定する固定部と、を有し、
前記固定部は、前記検出ヘッドを支持する前記支持機構に設置され、
前記ロボットアームは、前記ワークを把持するフィンガを有し、
前記フィンガが前記ワークを把持した状態で、前記フィンガが前記固定部に当接可能であることを特徴とする測定ステーション。
【請求項2】
請求項1に記載された測定ステーションにおいて、
前記支持機構は、測定対象物を載置するテーブルと、前記検出ヘッドを装着されかつ前記検出ヘッドを前記テーブルに対して移動可能な移動機構と、を有する測定機であり、
前記ロボットアームは、前記ワークを支持しかつ前記ワークを前記テーブルの表面まで移動可能であり、
前記固定部は、前記テーブルの表面に設置されて前記フィンガに当接可能であることを特徴とする測定ステーション。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の測定ステーションを用い、
前記測定ステーションにおけるロボットアームのフィンガがワークを把持し、
前記フィンガが前記ワークを把持した状態で、前記フィンガを前記測定ステーションにおける固定部に当接し、
前記フィンガが前記固定部に当接した状態で、前記測定ステーションにおける検出ヘッドにより前記ワークを測定することを特徴とする測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定ステーションおよび測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の寸法形状等を測定するために、測定対象物であるワークに接触する測定器が用いられている。例えば、三次元測定機では、テーブルに載置したワークに対し、コラムおよびクロスバーを含む門型の移動機構などで検出ヘッド(プローブ)を移動させ、この検出ヘッドの接触子をワークに接触させ(接触式プローブの場合)、あるいは近接させ(非接触レーザープローブなどの場合)ている。
近年、検出ヘッドまたはワークをロボットアームで移動させる測定ステーションが用いられている。
例えば、多関節型のロボットアーム等に検出ヘッドを装着し、検出ヘッドを移動させてワークに接触または近接させている(特許文献1参照)。
特許文献1の測定ステーションでは、ロボットアームに位置基準部材を設け、ワークを支持するテーブルに接触検知手段を設け、測定前にこれらを接触または近接させることで座標の校正を行い、検出ヘッドによる検出位置の高精度化を図っている。
【0003】
一方、ロボットアームはワークの搬送に多用されており、生産ラインの途中でワークの測定を行う際には、ロボットアームで支持したワークを所定の測定装置に導入して測定を行うことがなされている(特許文献2参照)。
また、ロボットアームによるワークの搬送位置精度を向上するために、ロボットアームで搬送中のワークの姿勢を画像で検出し、搬送位置の補正を行うこともなされている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-208791号公報
【文献】特開平11-330204号公報
【文献】特開2004-249391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した特許文献2のように、ロボットアームで支持したワークを測定装置で測定する際には、ロボットアームでワークを測定装置に導入し、ワークを測定位置に載置したのち、ワークを残してロボットアームを退避させ、ワークだけの状態で測定を行っている。そして、測定の後、再びロボットアームを測定位置へ導入し、測定が済んだワークを掴んで取り出し、次工程へと移送している。
しかし、このような動作を行う場合、ワークを掴んだり離したりする動作時間が必要となり、タクトタイムの短縮ができず、処理効率が向上できないという問題があった。
これに対し、特許文献3のように、ワークを掴んだり離したりする動作を省略し、ロボットアームでワークを掴んだ状態のまま測定することが考えられる。
しかし、測定装置に対し、ロボットアームで支持されたワークの相対位置が安定せず、高精度な測定を行うことが難しいという問題があった。
【0006】
一方、前述した特許文献1のように、ロボットアームに支持した検出ヘッドでワークの位置検出を行う場合、ロボットアームの駆動モータの振動や、周囲からの擾乱としての振動が検出ヘッドに伝達され、ワークに対する相対位置についての微小なノイズとして検出され、位置精度に影響することが解った。
【0007】
そして、ワークをロボットアームに支持して測定装置に導入する場合でも、同様な振動によるノイズが検出されることが解っている。
これに対し、ロボットアームの剛性を高める等により位置精度の向上を図ることが試みられているが、剛性を高めても振動の伝播を避けることが難しく、その改善が求められていた。
【0008】
本発明の主な目的は、ロボットアームで検出ヘッドまたはワークを移動可能であり、処理効率を向上できるとともに、高精度を確保できる測定ステーションおよび測定方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、ロボットアームで検出ヘッドまたはワークを支持しつつ、ロボットアームから検出ヘッドまたはワークに伝播する振動の影響を抑制できる測定ステーションおよび測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の測定ステーションは、ワークまたは検出ヘッドのいずれか一方を支持するロボットアームと、前記ワークまたは前記検出ヘッドのいずれか他方を支持する支持機構と、前記検出ヘッドと前記ワークとを相互に固定する固定部と、を有することを特徴とする。
本発明では、固定部により検出ヘッドとワークとが相互に固定されることで、検出ヘッドに対し、ロボットアームで支持されたワークの相対位置が安定し、高精度な測定を行うことができる。また、ロボットアームからワークまたは検出ヘッドに伝播する振動があってもその影響を抑制でき、検出ヘッドによるワークの測定精度を向上することができる。
【0010】
本発明において、ロボットアームとしては、既存の多関節ロボット(垂直多関節ロボット)やスカラロボット(水平多関節ロボット)、直交ロボットやパラレルロボットなど、ワークまたは検出ヘッドを装着して任意位置へ移動可能なものであれば、適宜利用することができる。
支持機構としては、ロボットアームで移動されるワークまたは検出ヘッドの一方に対し、これを測定する検出ヘッドまたは測定されるワークの他方を支持できればよい。支持機構としては、単なる支持構造体のほか、既存の三次元測定機などを利用してもよい。
【0011】
固定部としては、検出ヘッドとワークとを相互に固定できればよく、例えば、支持機構に設置されてロボットアーム側(ロボットアームないしこれに支持されたワークまたは検出ヘッド)に当接可能な部分、あるいは、ロボットアームに設置されて支持機構側(支持機構ないしこれに支持されたワークまたは検出ヘッド)に当接可能な部分、とすることができる。
いずれの構成においても、相互に固定する対象であるワークと検出ヘッドとがなるべく短い経路で連結される構成とすることが望ましい。
すなわち、固定部を支持機構に設置する場合、固定部は、ワーク(または検出ヘッド)に直接当接するか、ロボットアームのワーク(または検出ヘッド)になるべく近い部分に当接することが好ましい。あるいは、固定部をロボットアームに設置する場合、固定部は、ワーク(または検出ヘッド)に直接当接するか、支持機構のワーク(または検出ヘッド)になるべく近い部分に当接することが好ましい。
検出ヘッドの機能上自明であるが、検出ヘッドと固定部とを当接させる際には、ケースやロボットアームへの接続部分に当接するものとし、スタイラスなど測定部分への当接は除く。
【0012】
本発明の測定ステーションにおいて、前記固定部は、前記検出ヘッドを支持する前記支持機構に設置され、前記ロボットアームは、前記ワークを把持するフィンガを有し、前記フィンガが前記ワークを把持した状態で、前記フィンガが前記固定部に当接可能であることが好ましい。
本発明では、フィンガがワークを把持しつつ固定部に当接するため、相互の固定による高精度化ができるとともに、ワークに最寄りの部分で振動を効率よく抑制できる。さらに、ワークを固定部に直接当接することを避けられるので、ワークの表面を保護することができる。
【0013】
本発明の測定ステーションにおいて、前記支持機構は、測定対象物を載置するテーブルと、前記検出ヘッドを装着されかつ前記検出ヘッドを前記テーブルに対して移動可能な移動機構と、を有する測定機であり、前記ロボットアームは、前記ワークを支持しかつ前記ワークを前記テーブルの表面まで移動可能であり、前記固定部は、前記テーブルの表面に設置されて前記ワークまたは前記ロボットアームに当接可能であることが好ましい。
【0014】
本発明では、既存のロボットアームおよび測定機を用いることができ、テーブル上に固定部を設置することで本発明を容易に実施することができる。
測定機としては、例えば既存の三次元測定機や、形状測定機あるいは輪郭測定機などが利用できる。これらの測定機は、ワークを載置するテーブルに対して検出ヘッドを任意位置へ移動可能であり、テーブルの表面の任意位置に固定部を設置することで、その位置をワークの固定位置つまり測定位置とすることができる。
【0015】
本発明の測定ステーションにおいて、前記支持機構は、前記ワークを載置して搬送するコンベアであり、前記ロボットアームは、前記検出ヘッドが装着されかつ前記検出ヘッドを前記コンベアまで移動可能であり、前記固定部は、前記ロボットアームに設置されて前記コンベアの表面または前記ワークに当接可能であることが好ましい。
【0016】
本発明では、既存のロボットアームおよび搬送用コンベアを用いることができ、テーブル上に固定部を設置することで本発明を容易に実施することができる。
搬送用のコンベアとしては、ワークを所定間隔で載置可能なベルト式コンベア、ワークを個々に把持するハンドラ式コンベアなど、既存のものを適宜利用できる。
【0017】
本発明の測定方法は、ワークまたは検出ヘッドのいずれか一方を支持するロボットアームと、前記ワークまたは前記検出ヘッドのいずれか他方を支持する支持機構と、を用い、前記支持機構または前記検出ヘッドと前記ワークまたは前記ロボットアームとを当接させ、前記検出ヘッドと前記ワークとが相互に固定された状態で、前記検出ヘッドにより前記ワークを測定することを特徴とする。
本発明では、固定部により検出ヘッドとワークとが相互に固定されることで、ロボットアームで支持されたワークの相対位置が安定し、高精度な測定を行うことができる。そして、ロボットアームからワークに伝播する振動があってもその影響を抑制でき、検出ヘッドによるワークの測定精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ロボットアームで検出ヘッドまたはワークを移動可能であり、処理効率を向上できるとともに、高精度を確保できる測定ステーションおよび測定方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、ロボットアームで検出ヘッドまたはワークを支持しつつ、ロボットアームから検出ヘッドまたはワークに伝播する振動の影響を抑制できる測定ステーションおよび測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態の全体構成を示す模式図。
図2】前記第1実施形態の測定状態を示す側面図。
図3】前記第1実施形態の測定状態を示す平面図。
図4】前記第1実施形態の固定部の変形を示す斜視図。
図5】本発明の第2実施形態の全体構成を示す模式図。
図6】前記第2実施形態の測定状態を示す側面図。
図7】前記第2実施形態の測定状態を示す平面図。
図8】本発明の第3実施形態の全体構成を示す模式図。
図9】前記第3実施形態の測定状態を示す側面図。
図10】前記第3実施形態の測定状態を示す平面図。
図11】本発明の第4実施形態の全体構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の具体的な実施形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1において、測定ステーション1は、測定対象物であるワーク2に検出ヘッド3を接触させ、接触部位の座標位置を高精度に測定するものである。
検出ヘッド3は、タッチプローブ(接触式プローブ)であり、接触子31がワーク2の表面に接触することで、接触位置の三次元位置を検出可能である。検出ヘッド3としては、レーザ光をワーク2の表面に照射して投光位置までの距離を検出するレーザープローブなど、非接触式プローブを用いてもよい。
検出ヘッド3は、支持機構としての三次元測定機4に装着されている。
【0021】
三次元測定機4は、通常は測定対象物が載置されるテーブル41を有する。テーブル41の上面には、一対のコラム42および水平なビーム43が門型に構成されている。ビーム43に対してX軸方向にスライド可能なスライダ44が支持され、スライダ44から下向きにスピンドル45が延びており、その先端に検出ヘッド3が装着されている。
【0022】
スピンドル45はスライダ44に対してZ軸方向に昇降可能であり、スライダ44はビーム43に沿ってX軸方向へ移動可能である。コラム42ないしスピンドル45に至る門型構造は、テーブル41の側面に設置された移動機構46により、図面に交差するX軸方向へ移動可能である。
従って、スピンドル45に装着された検出ヘッド3は、前述したコラム42を含む門型構造のXYZ3軸移動により、テーブル41に対して三次元移動され、テーブル41上に配置されたワーク2の表面の任意位置に接触することができる。
【0023】
ワーク2は、ロボットアーム5によってテーブル41上に支持される。
ロボットアーム5は、多関節式の産業用ロボットであり、先端にワーク2をクランプ可能な一対のフィンガ51を有する。
ロボットアーム5の近傍にはストッカ59が設置され、その上には測定に供されるワーク2が載置されている。
ロボットアーム5は、ストッカ59上のワーク2をフィンガ51でクランプし、クランプしたワーク2を三次元測定機4のテーブル41上へと搬送し、テーブル41上の所定位置に保持することができる。
テーブル41には、固定部としての当接ブロック6が固定されている。
【0024】
図2および図3には、ロボットアーム5の一対のフィンガ51およびテーブル41に固定されて当接ブロック6が示されている。
一対のフィンガ51は、本体52の両側に支持され、本体52内に設置されたエアシリンダあるいは電動モータ等の駆動手段で駆動され、互いに近接離隔することでワーク2をクランプ可能である。
【0025】
当接ブロック6は、テーブル41に固定される基部61と、基部61から立ち上がった壁部62とを有し、側面から見た場合基部61と壁部62とがL字状をなしている。壁部62にはロボットアーム5で保持されたワーク2が当接可能であり、当接された状態ではワーク2の振動が当接ブロック6により抑制される。
なお、基部61をテーブル41に固定する際には、テーブル41に準備されたボルト孔などを用いてもよく、粘着テープあるいは接着剤などを用いてもよい。
【0026】
本実施形態におけるワーク2の測定手順は以下の通りである。
測定準備として、三次元測定機4には、測定に使用する検出ヘッド3を装着するとともに、固定部である当接ブロック6を固定しておく。また、ストッカ59には、測定対象物であるワーク2を載置しておく。
測定の際には、ロボットアーム5をストッカ59に向け(図1の一点鎖線の状態)、フィンガ51でワーク2をクランプする。次に、ロボットアーム5を反転させて三次元測定機4に向け、ワーク2をテーブル41上に導入する。
【0027】
テーブル41上では、ワーク2を当接ブロック6に対向する位置へ移動させ、さらにワーク2を微速で前進させ、ワーク2の前面を当接ブロック6の表面に当接させる(図2および図3参照)。
続いて、ワーク2と当接ブロック6とを所定の力で当接させた状態で、三次元測定機4を作動させ、検出ヘッド3を移動させて接触子31をワーク2に接触させ、その座標位置を検出する。
【0028】
ワーク2に対する座標検出は、必要な全ての部位に対して繰り返す。所望の検出が終了したら、検出ヘッド3をワーク2の周辺から退避させ、ロボットアーム5を再び作動させてワーク2を搬出する。搬出先は元のストッカ59でもよいし、他のストッカ等を設定してもよい。
以上で1つのワーク2に対する一連の測定が行われる。
次に、ロボットアーム5で別のワーク2をクランプし、同様な動作により検出ヘッド3による測定を行う。以下、同様な動作を繰り返し、全てのワーク2に対する一連の測定ができたら、測定動作を完了する。
【0029】
上述した第1実施形態では、下記の効果が得られる。
本実施形態では、ロボットアーム5によりワーク2を三次元測定機4に導入し、ロボットアーム5でワーク2をクランプした状態のまま、三次元測定機4による測定を行う。このため、ロボットアーム5で三次元測定機4に搬入したワーク2をテーブル41の所定位置に載置し、ロボットアーム5を退避させたのち検出ヘッド3での測定を行い、再びロボットアーム5を導入し、ワーク2をクランプして搬出するといった煩雑な手順を解消することができ、処理効率を向上することができる。
本実施形態では、ロボットアーム5によりワーク2をクランプしたまま検出ヘッド3での測定を行う。この際、固定部である当接ブロック6により、検出ヘッド3とワーク2とが相互に固定されることで、検出ヘッド3とワーク2との相対位置の変動を防止でき、高精度な測定を行うことができる。
さらに、ロボットアーム5からワーク2に伝播する振動があってもその影響を抑制でき、検出ヘッド3によるワーク2の測定精度を向上することができる。
【0030】
固定部である当接ブロック6は、ワーク2に直接当接するようにしたため、三次元測定機4に対するワーク2の位置決めを確実に行えるとともに、ワーク2の振動抑制を確実にすることができる。
当接ブロック6は、基部61および壁部62からなる簡素な構造であり、製造が容易である。そして、基部61によりテーブル41上に安定した状態で固定できるとともに、起立した壁部62によりワーク2との当接が容易に行える。
【0031】
固定部である当接ブロック6を、三次元測定機4のテーブル41上に固定するとしたため、当接ブロック6の固定位置を選択することで、ワーク2の検出ヘッド3による座標検出動作の実施位置をテーブル41の任意の位置(例えばテーブル41上のロボットアーム5に最寄りの区域)に自由に設置することができる。
支持構造として三次元測定機4を用いたため、本来の機能として検出ヘッド3を装着することができ、検出ヘッド3を支持しかつ任意の位置へ移動させることができる。
【0032】
前述した第1実施形態では、固定部として、基部61および壁部62からなる当接ブロック6を用い、平坦な壁部62にワーク2の平坦な表面が当接するものとした。
ここで、ワーク2の表面が球面や曲面あるいは凹凸を有する形状である場合、平坦な壁部62に対して一点で接触し、安定した当接状態が得られず、ワーク2の振動の抑制が十分にできない可能性がある。
このようなワーク2に対しては、別の形状の当接ブロックを用いることができる。
【0033】
図4において、当接ブロック6Aは、前述した当接ブロック6(図2および図3参照)と同様な基部61および壁部62を有する。壁部62の表面には、3本の当接ピン63が設置されている。従って、表面が球面や曲面あるいは凹凸を有する形状であるワーク2は、3本の当接ピン63の各先端にそれぞれ当接することができ、いわゆる三点支持と同様に安定した当接状態を得ることができる。
【0034】
〔第2実施形態〕
図5図6および図7には本発明の第2実施形態が示されている。
本実施形態は、前述した第1実施形態(図1図2および図3参照)と基本構成が同様である。このため、共通の部分については説明を省略し、以下相違する部分について説明する。
【0035】
図5において、測定ステーション1Bは、支持機構である三次元測定機4に検出ヘッド3が装着されるとともに、固定部である当接ブロック6がテーブル41上に固定されている。
ロボットアーム5は、先端のフィンガ51でストッカ59に準備されたワーク2をクランプし、三次元測定機4のテーブル41上へとワーク2を導入し、当接ブロック6とワーク2とを当接状態で保持することができる。
この状態で、三次元測定機4を起動し、検出ヘッド3を移動させてワーク2に接触させることで、ワーク2の任意の表面の座標位置を検出することができる。
【0036】
前述した第1実施形態では、当接ブロック6の壁部62に、フィンガ51でクランプしたワーク2を直接当接させていた(図2および図3参照)。
図6および図7に示すように、本実施形態では、フィンガ51が第1実施形態よりも長く形成され、クランプしたワーク2よりも突出した状態とされている。また、本体52の下面側には当接ロッド53が設置されている。当接ロッド53の先端と、一対のフィンガ51の先端とは、互いに同じ仮想平面に配置されている。
従って、測定動作において、ロボットアーム5でワーク2を当接ブロック6に近接させた際には、一対のフィンガ51の先端および当接ロッド53の先端の3点で壁部62の表面に当接し、これらのフィンガ51および当接ロッド53を介してワーク2が当接ブロック6に固定される。
【0037】
このような本実施形態では、前述した第1実施形態と同様な測定手順により、ワーク2を三次元測定機4に導入し、固定部である当接ブロック6に固定した状態で、フィンガ51でワーク2をクランプしたまま、検出ヘッド3をワーク2の表面に接触させることで、その座標位置を検出することができる。
従って、本実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様な効果が得られる。そして、フィンガ51がワーク2を把持しつつ当接ブロック6に当接するため、ワーク2に最寄りの部分で相対位置を固定できるとともに、振動を効率よく抑制できる。さらに、ワーク2と当接ブロック6との直接接触を避けることができ、ワーク2の表面を保護することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、ワーク2の下面側に当接ロッド53がくるため、ストッカ59には当接ロッド53を収容できる溝部58などを形成することが望ましい。あるいは、ストッカ59の上面に支持台などを介してワーク2を載置し、支持台の間に当接ロッド53が導入できるようにしてもよい。
【0039】
〔第3実施形態〕
図8図9および図10には本発明の第3実施形態が示されている。
本実施形態は、前述した第1実施形態(図1図2および図3参照)と基本構成が同様である。このため、共通の部分については説明を省略し、以下相違する部分について説明する。
【0040】
図8において、測定ステーション1Cは、支持機構である三次元測定機4に検出ヘッド3が装着されている。
ロボットアーム5は、先端のフィンガ51でストッカ59に準備されたワーク2をクランプし、三次元測定機4のテーブル41上へとワーク2を導入することができる。
この状態で、三次元測定機4を起動し、検出ヘッド3を移動させてワーク2に接触させることで、ワーク2の任意の表面の座標位置を検出することができる。
【0041】
前述した第1実施形態では、固定部としての当接ブロック6をテーブル41上に固定し、当接ブロック6の壁部62にフィンガ51でクランプしたワーク2を当接させることにより、ワーク2と当接ブロック6とを相互に固定していた(図2および図3参照)。
図9および図10に示すように、本実施形態では、固定部としての当接ブロック6Cが、本体52の下面に形成されている。
従って、ロボットアーム5でワーク2をクランプした状態で、ワーク2をテーブル41上に移動させ、さらに降下させてテーブル41に当接ブロック6Cを当接させることで、当接ブロック6C、本体52およびフィンガ51を介してワーク2とテーブル41とが相互に固定される。
【0042】
このような本実施形態では、前述した第1実施形態と同様な測定手順により、ワーク2を三次元測定機4に導入し、固定部である当接ブロック6Cとテーブル41とを当接させる。そして、ワーク2とテーブル41とを固定した状態で、フィンガ51でワーク2をクランプしたまま、検出ヘッド3をワーク2の表面に接触させることで、その座標位置を検出することができる。
従って、本実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様な効果が得られる。
【0043】
さらに、本実施形態では、検出ヘッド3によるワーク2の測定をテーブル41上の任意の位置で随時行うことができる。すなわち、第1実施形態では、予めテーブル41上の適宜な位置に当接ブロック6を固定しておく必要があり、測定位置を変更する際には当接ブロック6を移動させる必要がある。これに対し、本実施形態では、当接ブロック6がロボットアーム5に設置されるため、当接ブロック6をテーブル41上の任意の位置に当接させることができ、測定位置を変更する際に特段の操作をする必要がなく、作業性を向上することができる。
【0044】
〔第4実施形態〕
図11には本発明の第4実施形態が示されている。
前述した第1実施形態から第3実施形態では、それぞれ支持機構としての三次元測定機4に検出ヘッド3を装着するとともに、ロボットアーム5でワーク2をクランプしていた。そして、固定部としてテーブル41に当接ブロック6,6A,6Bを固定し、またはロボットアーム5に当接ブロック6Cを形成し、これによりテーブル41とワーク2とを相互に固定した状態で三次元測定機4および検出ヘッド3による測定を行っていた。
【0045】
これに対し、本実施形態の測定ステーション1Dでは、支持機構として搬送用のコンベア7を用い、その載物面71にワーク2を支持している。コンベア7に沿ってロボットアーム5が設置され、ロボットアーム5に検出ヘッド3Dが支持されている。
検出ヘッド3Dは、揺動アーム32Dの先端の接触子31Dをワーク2の表面に接触させ、その状態で内部の駆動機構により揺動アーム32Dをその長手方向に移動させることで、ワーク2の表面の輪郭形状ないしは表面粗さを測定することができる。
【0046】
ロボットアーム5は、検出ヘッド3Dを支持するとともに、支持部分から下方に延びる当接ロッド6Dを備えている。
当接ロッド6Dは、載物面71のワーク2近傍位置に当接することで、載物面71に載置されたワーク2と、ロボットアーム5に支持された検出ヘッド3Dとを相互に固定することができる。
【0047】
このような本実施形態では、コンベア7の上流側で載物面71にワーク2を載置し、下流側へと搬送する。搬送されるワーク2がロボットアーム5の近傍に達した際に、ロボットアーム5が検出ヘッド3Dをワーク2の上方へ配置し、下降して当接ロッド6Dを載物面71に当接させる。この状態でワーク2と検出ヘッド3Dとが相互に固定された状態となるので、検出ヘッド3Dを動作させてワーク2の表面を測定する。
これにより、本実施形態では、本実施形態では、ワーク2をコンベア7で搬送するため、ロボットアーム5でワーク2をクランプしたり離したりする動作が必要なく、そのための動作時間が必要なく、作業効率を向上することができる。
さらに、ワーク2と検出ヘッド3Dとが相互に固定された状態でワーク2の表面を測定することができ、検出ヘッド3Dとワーク2との相対位置が固定されて高精度な測定を行うことができるとともに、ロボットアーム5から検出ヘッド3Dに伝播する振動の影響を抑制できる。
【0048】
〔他の実施形態〕
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前述した第1~第3の各実施形態では、ロボットアーム5として既存の多関節ロボット(垂直多関節ロボット)を用いた。しかし、他の形式のロボットアームを用いてもよく、例えばスカラロボット(水平多関節ロボット)、直交ロボットやパラレルロボットなど、ワーク2または検出ヘッド3を装着して任意位置へ移動可能なものであれば、適宜利用することができる。
【0049】
前述した第1~第3の各実施形態では支持機構として三次元測定機4を用い、第4実施形態では支持機構としてコンベア7を用いたが、これらは他の形式の測定機や搬送装置などであってもよい。支持機構としては、ロボットアーム5で移動されるワーク2または検出ヘッド3の一方に対し、これを測定する検出ヘッド3または測定されるワーク2の他方を支持できればよく、測定機に限らず単なる支持構造体であってもよい。
前述した各実施形態では、検出ヘッド3,3Dとしてタッチプローブ(接触式プローブ)を用い、接触子31,31Dがワーク2の表面に接触することで、接触位置の三次元位置を検出するものとした。しかし、本発明の検出ヘッドとしては、レーザ光をワークの表面に照射して投光位置までの距離を検出するレーザープローブなど、非接触式プローブを用いてもよい。
【0050】
前述した第1~第2の実施形態では、固定部としてテーブル41に固定される当接ブロック6,6A,6Bを用いた。また、第3~第4の実施形態では、固定部としてロボットアーム5に形成された当接ブロック6Cまたは当接ロッド6Dを用いた。固定部としては、これらの各構成に限らず、検出ヘッド3,3Dとワーク2とを相互に固定できればよく、例えば、支持機構に設置されてロボットアーム側(ロボットアーム5ないしこれに支持されたワーク2または検出ヘッド3,3D)に当接可能な部分、あるいは、ロボットアーム5に設置されて支持機構側(三次元測定機4やコンベア7などの支持機構ないしこれに支持されたワーク2または検出ヘッド3)に当接可能な部分、とすることができる。
いずれの構成においても、相互に固定する対象であるワーク2と検出ヘッド3とがなるべく短い経路で連結される構成とすることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は測定ステーションおよび測定方法として利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1,1B,1C,1D…測定ステーション、2…ワーク、3,3D…検出ヘッド、31…接触子、31D…接触子、32D…揺動アーム、4…支持機構である三次元測定機、41…テーブル、42…コラム、43…ビーム、44…スライダ、45…Zスピンドル、46…移動機構、5…ロボットアーム、51…フィンガ、52…本体、53…当接ロッド、58…溝部、59…ストッカ、6,6A,6C…固定部である当接ブロック、61…基部、62…壁部、63…当接ピン、6D…固定部である当接ロッド、7…支持機構であるコンベア、71…載物面。
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