(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】光吸収異方性膜、3次元光吸収異方性膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220119BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20220119BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/023
(21)【出願番号】P 2019228990
(22)【出願日】2019-12-19
(62)【分割の表示】P 2015124501の分割
【原出願日】2015-06-22
【審査請求日】2020-01-17
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】P 2014130094
(32)【優先日】2014-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】幡中 伸行
【合議体】
【審判長】榎本 吉孝
【審判官】井口 猶二
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-275976(JP,A)
【文献】特開2009-145776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二色性色素と液晶性化合物とを含有する
組成物の硬化膜である光吸収異方性膜であって、
前記液晶性化合物は、スメクチック液晶相を
呈する液晶性化合物であり、
前記二色性色素はアゾ色素であり、置換アミノ基または無置換アミノ基を有するアゾ色素を含み、
膜面内の任意の一方向をx軸、膜面内でx軸に直交する方向をy軸、x軸及びy軸に直交する膜厚方向をz軸としたときに、該膜の光吸光度が下記式(1)、(2)及び(3)を満たす光吸収異方性膜。
Az>(Ax+Ay)/2 (1)
Ax(z=60)/Ax>10 (2)
Ay(z=60)/Ay>10 (3)
(Ax、Ay、Az、Ax(z=60)及びAy(z=60)は、いずれも前記光吸収異方性膜中の前記二色性色素の吸収極大波長における吸光度であって、
Axは、x軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表し、
Ayは、y軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表し、
Azは、z軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表し、
Ax(z=60)は、y軸を回転軸として前記膜を60°回転させたときのx軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表し、
Ay(z=60)は、x軸を回転軸として前記膜を60°回転させたときのy軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表す。)
【請求項2】
光吸収異方性膜中の前記二色性色素の吸収極大波長が、波長500nm~600nmの範囲にある請求項
1に記載の光吸収異方性膜。
【請求項3】
極大吸収波長の異なる、少なくとも3種の二色性色素を含有する請求項1
または2に記載の光吸収異方性膜。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれかに記載の光吸収異方性膜と、基材とを有する光学フィルム。
【請求項5】
基材と光吸収異方性膜との間に配向膜を含まない請求項
4に記載の光学フィルム。
【請求項6】
請求項
5記載の光学フィルムを製造する方法であって、下記(1)~(4)の工程を、
この順におこなう方法。
(1)基材に液晶性化合物と二色性色素と溶剤とを含有する組成物を塗布して塗布膜を形成する工程。
(2)塗布膜から溶剤を除去して、乾燥膜を形成する工程。
(3)乾燥膜を冷却して液晶相を発現させる工程。
(4)活性エネルギー線を照射して液晶性化合物を硬化させる工程。
【請求項7】
基材として長尺フィルムを使用し、光学フィルムを連続的に製造する請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~
3のいずれかに記載の光吸収異方性膜と、水平偏光膜とを積層させた3次元光吸収異方性膜であって、該水平偏光膜の吸収軸をx’軸とし、該水平偏光膜の透過軸をy’軸とし、x’軸及びy’軸に直交する軸をz’軸としたときに、下記式(6)を満たす3次元光吸収異方性膜。
Ax’>Az’>Ay’ (6)
(Ax’、Ay’、Az’は、いずれも前記光吸収異方性膜中の前記二色性色素の吸収極大波長における前記3次元光吸収異方性膜の吸光度であって、
Ax’は、x’方向に振動する直線偏光の吸光度を表し、
Ay’は、y’方向に振動する直線偏光の吸光度を表し、
Az’は、z’方向に振動する直線偏光の吸光度を表す。)
【請求項9】
水平偏光膜が、ポリビニルアルコール及び二色性色素を含む請求項
8に記載の3次元光吸収異方性膜。
【請求項10】
水平偏光膜が、二色性色素及び液晶性化合物を含有する、または液晶性を有する二色性色素を含有する請求項
8に記載の3次元光吸収異方性膜。
【請求項11】
光吸収異性膜が、粘着剤または接着剤を介して、水平偏光膜上に積層されている請求項
8~
10のいずれかに記載の3次元光吸収異方性膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光吸収異方性膜、3次元光吸収異方性膜及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、K=(kx-kz)/(kx-ky)で定義されるK値が、0.25~0.75である偏光層を有することを特徴とする偏光板が記載されている。(偏光層の面内の互いに直交する軸がx軸及びy軸、並びにx-y軸面に直交する軸がz軸であり、kx、ky及びkzは、x軸、y軸及びz軸方向それぞれの吸収係数である。)すなわちkx>kz>kyかつK=0.25~0.75の関係を満足する偏光板であって、該偏光板において、二色性色素は膜面に対して傾斜した配向をしている。
具体的には、下記の液晶化合物1及び2と、二色性色素として三井東圧製の黒色二色性色素S-344とを含む偏光板を作成し、kx=0.111、ky=0.001、kz=0.059の値をもつ偏光層を含む偏光板を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の偏光膜は、垂直配向の配向秩序性が不十分であったため、正面方向からの光の透過ならびに、斜め方向からの光の吸収が十分でないことが課題であった。そこで、薄型で、かつ簡易な製造によって製造でき、携帯電話や銀行ATM等のディスプレイに、より効果的な覗き見防止機能を付与するための光吸収異方性膜が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明を含む。
[1] 二色性色素と液晶性化合物とを含有する光吸収異方性膜であって、膜面内の任意の一方向をx軸、膜面内でx軸に直交する方向をy軸、x軸及びy軸に直交する膜厚方向をz軸としたときに、該膜の光吸光度が下記式(1)、(2)及び(3)を満たす光吸収異方性膜。
Az>(Ax+Ay)/2 (1)
Ax(z=60)/Ax>5 (2)
Ay(z=60)/Ay>5 (3)
(Ax、Ay、Az、Ax(z=60)及びAy(z=60)は、いずれも前記光吸収異方性膜中の前記二色性色素の吸収極大波長における吸光度であって、
Axは、x軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表し、
Ayは、y軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表し、
Azは、z軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表し、
Ax(z=60)は、y軸を回転軸として前記膜を60°回転させたときのx軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表し、
Ay(z=60)は、x軸を回転軸として前記膜を60°回転させたときのy軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表す。)
[2] 液晶性化合物が、スメクチック液晶相を形成する[1]に記載の光吸収異方性膜。
[3] 液晶性化合物が、高次スメクチック液晶相を形成する[1]または[2]に記載の光吸収異方性膜。
[4] X線回折測定においてブラッグピークを示す[1]~[3]のいずれかに記載の光吸収異方性膜。
[5] 光吸収異方性膜中の前記二色性色素の吸収極大波長が、波長500nm~600nmの範囲にある[1]~[4]のいずれかに記載の光吸収異方性膜。
[6] 式(4)および(5)を満たす[1]~[5]のいずれかに記載の光吸収異方性膜。
Ax(z=60)/Ax>10 (4)
Ay(z=60)/Ay>10 (5)
[7] 極大吸収波長の異なる、少なくとも3種の二色性色素を含有する[1]~[6]のいずれかに記載の光吸収異方性膜。
[8] 光吸収異方性膜の膜厚が、5μm以下である[1]~[7]のいずれかに記載の光吸収異方性膜。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の光吸収異方性膜と、基材とを有する光学フィルム。
[10] 基材と光吸収異方性膜との間に配向膜を含まない[9]に記載の光学フィルム。
[11] 下記(1)~(4)の工程を、この順におこなう[9]または[10]に記載の光学フィルムの製造方法。
(1)基材に液晶性化合物と二色性色素と溶剤とを含有する組成物を塗布して塗布膜を形成する工程。
(2)塗布膜から溶剤を除去して、乾燥膜を形成する工程。
(3)乾燥膜を冷却して液晶相を発現させる工程。
(4)活性エネルギー線を照射して液晶性化合物を硬化させる工程。
[12] 基材として長尺フィルムを使用し、光学フィルムを連続的に製造する[11]に記載の製造方法。
[13] [1]~[8]のいずれかに記載の光吸収異方性膜と、水平偏光膜とを積層させた3次元光吸収異方性膜であって、該水平偏光膜の吸収軸をx’軸とし、該水平偏光膜の透過軸をy’軸とし、x’軸及びy’軸に直交する軸をz’軸としたときに、下記式(4)を満たす3次元光吸収異方性膜。
Ax’>Az’>Ay’ (6)
(Ax’、Ay’、Az’は、いずれも前記光吸収異方性膜中の前記二色性色素の吸収極大波長における吸光度であって、
Ax’は、x’方向に振動する直線偏光の吸光度を表し、
Ay’は、y’方向に振動する直線偏光の吸光度を表し、
Az’は、z’方向に振動する直線偏光の吸光度を表す。)
[14] 水平偏光膜が、ポリビニルアルコール及び二色性色素を含む[13]に記載の3次元光吸収異方性膜。
[15] 水平偏光膜が、二色性色素及び液晶性化合物を含有する、または液晶性を有する二色性色素を含有する[13]に記載の3次元光吸収異方性膜。
[16] 光吸収異方性膜が、粘着剤または接着剤を介して、水平偏光膜上に積層されている[13]~[15]のいずれかに記載の3次元光吸収異方性膜。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、薄型で、かつ簡易な製造によって製造でき、携帯電話や銀行ATM等のディスプレイに覗き見を十分に防止する機能を付与する光吸収異方性膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】3次元光吸収異方性膜の一例の斜視図である。
【
図4】3次元光吸収異方性膜を有する液晶表示装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<光吸収異方性膜>
光吸収異方性膜とは、二色性色素を含む膜である。本発明の光吸収異方性膜は二色性色素と液晶性化合物とを含む。
【0009】
本光吸収異方性膜は、膜面内の任意の方向をx軸、膜面内でx軸に直交する方向をy軸、x軸及びy軸に直交する膜厚方向をz軸としたときに(
図1を参照。)、下記式(1)、(2)及び(3)の全てを満たす光吸収異方性膜である。
Az>(Ax+Ay)/2 (1)
Ax(z=60)/Ax>5 (2)
Ay(z=60)/Ay>5 (3)
ここで、Ax、Ay、Az、Ax(z=60)及びAy(z=60)は、いずれも光吸収異方性膜中の二色性色素の光吸収異方性膜中での吸収極大波長における吸光度である。
Axは、x軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表す。Axは、z軸方向から膜面に向かって、x軸方向に振動する直線偏光を入射して測定することができる。Ayは、y軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表す。Ayは、z軸方向から膜面に向かって、y軸方向に振動する直線偏光を入射して測定することができる。Azは、z軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表す。Azは、例えば、x-y平面方向から膜側面に向かって、すなわち膜をx-y平面としたとき、その側面(厚み方向)に向かって垂直に、z軸方向に振動する直線偏光を入射して測定することができる。Ax(z=60)は、y軸を回転軸として前記膜を60°回転させたときのx軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表す。Ax(z=60)は、y軸を回転軸として前記膜を60°回転させた状態で、Axを測定した直線偏光と同一の直線偏光を入射して測定することができる。ここで、膜の回転は、Axを測定した状態の膜を、y軸を回転軸として直線偏光の入射方向に60°回転させて行う。Ay(z=60)は、x軸を回転軸として前記膜を60°回転させたときのy軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表す。Ay(z=60)は、x軸を回転軸として前記膜を60°回転させた状態で、Ayを測定した直線偏光と同一の直線偏光を入射して測定することができる。ここで、膜の回転は、Ayを測定した状態の膜を、x軸を回転軸として直線偏光の入射方向に60°回転させて行う。
【0010】
式(1)におけるz方向の吸光度は、膜側面からの光入射となるために測定が難しい。
そこで、測定光である直線偏光の振動面と膜のx-y平面とがなす角を90°としたとき、この振動面に対して、膜のx-y平面を直線偏光の入射方向に30°及び60°傾けて測定することによりAz方向の吸光度を見積もることができる。
具体的には、以下の方法等で見積もることができる。
y軸を回転軸として前記膜を30°及び60°回転させた状態で、Axを測定した直線偏光と同一の直線偏光を入射することによりAx(z=30)及びAx(z=60)を測定し、同様に、x軸を回転軸として前記膜を30°及び60°回転させた状態で、Ayを測定した直線偏光と同一の直線偏光を入射することによりAy(z=30)及びAy(z=60)を測定する。
このとき、Ax(z=30)<Ax(z=60)かつAy(z=30)=Ay(z=60)であれば、Ax(z=30)<Ax(z=60)<Ax(z=90)=Azであり、かつAy(z=30)<Ay(z=60)かつAx(z=30)=Ax(z=60)であれば、Ay(z=30)<Ay(z=60)<Ay(z=90)=Azであるから、必然的に式(1)を満たすと言うことができる。
【0011】
特に、x-y平面に吸収異方性がない場合、すなわちAx及びAyが等しい場合においては、Ax(z=30)=Ay(z=30)かつAx(z=60)=Ay(z=60)であるから、Ax(z=30)及びAy(z=30)をA(z=30)とすることができ、Ax(z=60)及びAy(z=60)をA(z=60)とすることができる。すなわち、A(z=30)<A(z=60)であれば、A(z=30)<A(z=60)<A(z=90)=Azの関係を満たす。さらに、A(z=30)>(Ax+Ay)/2であれば、必然的にAzは式(1)を満たすと言うことができる。
【0012】
本発明の光吸収異方性膜は、上記式(2)及び(3)を満たすものである。
Ax(z=60)/Ax及びAy(z=60)/Ayは、その数値が大きいほど優れた光吸収異方性を示すことを意味する。これらの数値は、例えば50以下であってもよく、また30以下であってもよい。
また、本発明の光吸収異方性膜は、好ましくは、式(4)および(5)を満たす。
Ax(z=60)/Ax>10 (4)
Ay(z=60)/Ay>10 (5)
【0013】
光吸収異方性膜が、式(1)、(2)及び(3)を満たすとき、二色性色素は、優れた吸収異方性、すなわち、優れた偏光性能を有すると言える。この優れた特性によって、正面方向からの光を効果的に透過し、かつ、斜め方向からの光を効果的に吸収することができる。
【0014】
本光吸収異方性膜の膜厚としては、0.1~10μmが好ましく、1~5μmがさらに好ましい。本光吸収異方性膜の膜厚が0.1μm未満であると、斜め方向からの光吸収が弱くなるために良好な覗き見防止特性が得られず、10μm以上であると二色性色素の配向が乱れてしまうため、正面方向の透過特性が低下する問題がある。
【0015】
<二色性色素>
二色性色素とは、分子の長軸方向における吸光度と、短軸方向における吸光度とが異なる性質を有する色素をいう。
【0016】
二色性色素としては、本光吸収異方性膜中において波長300~700nmの範囲に吸収極大波長(λMAX)を有するものが好ましく、波長500nm~600nmの範囲に極大吸収波長を有するものがより好ましい。人の視感度が高い波長500nm~600nmの範囲に極大吸収波長を有することによって、覗き見をより十分に防止することができる。すなわち、視感度が高い波長に極大吸収を有する二色性色素を用いれば、二色性色素の使用量を低減することや、光吸収異方性膜をより薄くすることが可能になる。
このような二色性色素としては、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素及びアントラキノン色素などが挙げられるが、中でもアゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素及びスチルベンアゾ色素などが挙げられ、好ましくはビスアゾ色素及びトリスアゾ色素である。二色性色素は単独でも、組み合わせても良いが、可視光全域にわたって偏光特性が求められる場合には3種類以上の二色性色素を組み合わせるのが好ましく、3種類以上のアゾ色素を組み合わせるのがより好ましい。
複数種の二色性色素を組み合わせる場合には、本光吸収異方性膜中において波長500nm~600nmの範囲に極大吸収波長を有するものを少なくとも1種含むのが好ましい。2種類の二色性色素を組み合わせるときは、さらに350nm~499nm、または601nm~750nmの範囲に極大吸収波長を有するものを含むのが好ましく、3種類の二色性色素を組み合わせるときは、350nm~499nm、500nm~600nm、601nm~750nmの範囲に極大吸収波長を有する二色性色素をそれぞれ含むのが好ましい。このように組み合わせることによって、覗き見をより十分に防止することができる。
【0017】
アゾ色素としては、例えば、式(2)で表される化合物(以下、場合により「化合物(2)」という。)が挙げられる。
A1(-N=N-A2)p-N=N-A3 (2)
[式(2)中、
A1及びA3は、互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいナフチル基または置換基を有していてもよい1価の複素環基を表す。A2は、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基、置換基を有していてもよいナフタレン-1,4-ジイル基または置換基を有していてもよい2価の複素環基を表す。pは1~4の整数を表す。pが2以上の整数である場合、複数のA2は互いに同一でも異なっていてもよい。]
【0018】
1価の複素環基としては、キノリン、チアゾール、ベンゾチアゾール、チエノチアゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、オキサゾール及びベンゾオキサゾールなどの複素環化合物から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。2価の複素環基としては、前記複素環化合物から2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
【0019】
A1及びA3におけるフェニル基、ナフチル基及び1価の複素環基、並びにA2における1,4-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基及び2価の複素環基が任意に有する置換基としては、メチル基、エチル基及びブチル基などの炭素数1~4のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基及びブトキシ基などの炭素数1~4のアルコキシ基;トリフルオロメチル基などの炭素数1~4のフッ化アルキル基;シアノ基;ニトロ基;塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;アミノ基、ジエチルアミノ基及びピロリジノ基などの置換または無置換アミノ基(置換アミノ基とは、炭素数1~6のアルキル基を1つまたは2つ有するアミノ基、あるいは2つの置換アルキル基が互いに結合して炭素数2~8のアルカンジイル基を形成しているアミノ基を意味する。無置換アミノ基は、-NH2である。
)が挙げられる。なお、炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基及びヘキシル基などが挙げられる。炭素数2~8のアルカンジイル基としては、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基などが挙げられる。
【0020】
化合物(2)のなかでも、以下の式(2-1)~式(2-6)でそれぞれ表される化合物が好ましい。
【0021】
【0022】
[式(2-1)~(2-6)中、
B
1~B
20は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、置換または無置換のアミノ基(置換アミノ基及び無置換アミノ基の定義は前記のとおり)、塩素原子またはトリフルオロメチル基を表す。
n1~n4は、それぞれ独立に0~3の整数を表す。
n1が2以上である場合、複数のB
2はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、
n2が2以上である場合、複数のB
6はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、
n3が2以上である場合、複数のB
9はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、
n4が2以上である場合、複数のB
14はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。]
【0023】
前記アントラキノン色素としては、式(2-7)で表される化合物が好ましい。
[式(2-7)中、
R
1~R
8は、互いに独立に、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
xまたはハロゲン原子を表す。
R
xは、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表す。]
【0024】
前記オキサジン色素としては、式(2-8)で表される化合物が好ましい。
[式(2-8)中、
R
9~R
15は、互いに独立に、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
xまたはハロゲン原子を表す。
R
xは、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表す。]
【0025】
前記アクリジン色素としては、式(2-9)で表される化合物が好ましい。
[式(2-9)中、
R
16~R
23は、互いに独立に、水素原子、-R
x、-NH
2、-NHR
x、-NR
x
2、-SR
xまたはハロゲン原子を表す。
R
xは、炭素数1~4のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表す。]
【0026】
式(2-7)、式(2-8)及び式(2-9)における、Rxで表される炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基などが挙げられ、炭素数6~12のアリール基としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基及びナフチル基などが挙げられる。
【0027】
前記シアニン色素としては、式(2-10)で表される化合物及び式(2-11)で表される化合物が好ましい。
[式(2-10)中、
D
1及びD
2は、互いに独立に、式(2-10a)~式(2-10d)のいずれかで表される基を表す。
n5は1~3の整数を表す。]
【0028】
[式(2-11)中、
D
3及びD
4は、互いに独立に、式(2-11a)~式(2-11h)のいずれかで表される基を表す。
n6は1~3の整数を表す。]
【0029】
光吸収異方性膜における二色性色素の含有量は、二色性色素の配向を良好にする観点から、光吸収異方性組成物の固形分100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、0.1質量部以上20質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上10質量部以下がさらに好ましく、0.1質量部以上5質量部以下が特に好ましい。二色性色素の含有量がこの範囲内であれば、液晶性化合物の液晶配向を乱し難いため好ましい。
【0030】
<基材>
本光吸収異方性膜は、二色性色素を含む組成物(以下、本光吸収異方性組成物ということがある。)を基材上に塗布する等の方法により形成することができる。
基材は、ガラス基材でも樹脂基材でもよいが、好ましくは、樹脂基材である。
樹脂基材を転写して剥離しない場合には、透明樹脂基材が好ましい。透明樹脂基材とは、光、特に可視光を透過し得る透光性を有する基材を意味し、透光性とは、波長380nm~780nmにわたる光線に対しての視感度補正透過率が80%以上となる特性をいう。
【0031】
基材を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマーなどのポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド;及びポリフェニレンオキシド等が挙げられる。好ましくは、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、またはポリメタクリル酸エステルである。
【0032】
セルロースエステルは、セルロースに含まれる水酸基の少なくとも一部が、エステル化されたものであり、市場から入手することができる。また、セルロースエステルを含む基材も市場から入手することができる。市販のセルロースエステルを含む基材としては、フジタック(登録商標)フィルム(富士フイルム(株))、KC8UX2M(コニカミノルタオプト(株))、KC8UY(コニカミノルタ(株))及び、KC4UY(コニカミノルタオプト(株))等が挙げられる。
【0033】
環状オレフィン系樹脂とは、ノルボルネンまたは多環ノルボルネン系モノマー等の環状オレフィンの重合体、若しくはそれらの共重合体を含むものである。当該環状オレフィン系樹脂は、開環構造を含んでもよく、また、開環構造を含む環状オレフィン系樹脂を水素添加したものでもよい。また、当該環状オレフィン系樹脂は、透明性を著しく損なわず、著しく吸湿性を増大させない範囲で、鎖状オレフィン及びビニル化芳香族化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。また、当該環状オレフィン系樹脂は、その分子内に極性基が導入されていてもよい。
鎖状オレフィンとしては、エチレン及びプロピレン等が挙げられ、ビニル化芳香族化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン及びアルキル置換スチレン等が挙げられる。
【0034】
環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィンまたはビニル化芳香族化合物との共重合体である場合、環状オレフィンに由来する構造単位の含有量は、共重合体の全構造単位に対して、通常50モル%以下であり、好ましくは15~50モル%である。
環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィンと、ビニル化芳香族化合物との三元共重合体である場合、鎖状オレフィンに由来する構造単位の含有量は、共重合体の全構造単位に対して、通常5~80モル%であり、ビニル化芳香族化合物に由来する構造単位の含有割合は、共重合体の全構造単位に対して、通常5~80モル%である。このような三元共重合体は、高価な環状オレフィンの使用量を比較的少なくすることができるという利点がある。
【0035】
環状オレフィン系樹脂は、市場から入手できる。市販の環状オレフィン系樹脂としては、Topas(登録商標)(Ticona社(独))、アートン(登録商標)(JSR(株))、ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)(日本ゼオン(株))、ゼオネックス(ZEONEX)(登録商標)(日本ゼオン(株))及び、アペル(登録商標)(三井化学(株))等が挙げられる。このような環状オレフィン系樹脂を、例えば、溶剤キャスト法、溶融押出法などの公知の手段により製膜して、基材とすることができる。 市販の環状オレフィン系樹脂を含む基材としては、エスシーナ(登録商標)(積水化学工業(株))、SCA40(登録商標)(積水化学工業(株))、ゼオノアフィルム(登録商標)(オプテス(株))及び、アートンフィルム(登録商標)(JSR(株))等が挙げられる。
【0036】
基材には、表面処理を施してもよい。表面処理の方法としては、例えば、真空から大気圧の雰囲気下で、コロナまたはプラズマで基材の表面を処理する方法、基材表面をレーザー処理する方法、基材表面をオゾン処理する方法、基材表面をケン化処理する方法、基材表面を火炎処理する方法、基材表面にカップリング剤を塗布する方法、基材表面をプライマー処理する方法、及び、反応性モノマーや反応性を有するポリマーを基材表面に付着させた後に放射線、プラズマまたは紫外線を照射して反応させるグラフト重合法などが挙げられる。中でも、真空から大気圧の雰囲気下で、基材表面をコロナまたはプラズマ処理する方法が好ましい。
【0037】
コロナまたはプラズマで基材の表面処理を行う方法としては、大気圧近傍の圧力下で、対向した電極間に基材を設置し、コロナまたはプラズマを発生させて、基材の表面処理を行う方法、対向した電極間にガスを流し、電極間でガスをプラズマ化し、プラズマ化したガスを基材に吹付ける方法、および、低圧条件下で、グロー放電プラズマを発生させて、基材の表面処理を行う方法が挙げられる。
【0038】
中でも、大気圧近傍の圧力下で、対向した電極間に基材を設置し、コロナまたはプラズマを発生させて、基材の表面処理を行う方法、または、対向した電極間にガスを流し、電極間でガスをプラズマ化し、プラズマ化したガスを基材に吹付ける方法が好ましい。かかるコロナまたはプラズマによる表面処理は、通常、市販の表面処理装置により行われる。
【0039】
基材は、光吸収異方性組成物を塗布する面とは反対の面に保護フィルムを有していてもよい。保護フィルムとしては、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート及びポリオレフィンなどのフィルム、並びに、当該フィルムにさらに粘着剤層を有するフィルム等が挙げられる。中でも、乾燥時における熱変形が小さいため、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。保護フィルムを、光吸収異方性組成物を塗布する面とは反対の面に有することで、基材搬送時のフィルムのゆれや塗布面のわずかな振動を抑えることができ、塗膜の均一性を向上させることができる。
【0040】
基材の厚さは、実用的な取扱いができる程度の重量である点では、薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。基材の厚さは、通常5~300μmであり、好ましくは20~200μmである。
【0041】
基材の長手方向の長さは、通常10~3000mであり、好ましくは100~2000mである。基材の短手方向の長さは、通常0.1~5mであり、好ましくは0.2~2mである。
【0042】
<液晶性化合物>
本発明の光吸収異方性膜は、二色性色素と液晶性化合物を含有する液晶硬化膜である。
本光吸収異方性膜が含有する液晶性化合物としては、重合性液晶化合物が好ましい。
重合性液晶化合物とは、重合性基を有し、かつ、液晶性を有する化合物である。
重合性基とは、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。ここで、光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
液晶性化合物は、サーモトロピック性液晶でもリオトロピック性液晶でもよく、また、サーモトロピック性液晶における相秩序構造としてはネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。好ましくはスメクチック液晶相を形成する化合物であり、より好ましくはスメクチックB相などの高次スメクチック液晶相を形成する化合物である。液晶性化合物が形成する液晶相が高次スメクチック相であると、配向秩序度のより高い光吸収異方性膜を製造することができ、配向秩序度をより高くすることで上記Ax(z=60)/Ax、およびAy(z=60)/Ayの値が高くなる傾向がある。
【0043】
重合性液晶化合物としては、より高い偏光性能が得られるという点でスメクチック液晶化合物が好ましく、高次スメクチック液晶化合物がより好ましい。中でも、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相またはスメクチックL相を形成する高次スメクチック液晶化合物がより好ましく、スメクチックB相、スメクチックF相またはスメクチックI相を形成する高次スメクチック液晶化合物がより好ましい。重合性液晶化合物が形成する液晶相がこれらの高次スメクチック相であると、配向秩序度のより高い液晶硬化膜を製造することができ、高い偏光性能が得られる。また、このように配向秩序度の高い液晶硬化膜はX線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られるものである。当該ブラッグピークは分子配向の周期構造に由来するピークであり、その周期間隔が3.0~6.0Åである膜を得ることができる。このようなスメクチック液晶化合物としては、具体的には、下記式(1)で表される化合物(以下、化合物(1)ということがある。)等が挙げられる。当該重合性液晶化合物は、単独で用いてもよいし、組み合わせてもよい。
【0044】
U1-V1-W1-X1-Y1-X2-Y2-X3-W2-V2-U2 (1)
[式(1)中、
X1、X2及びX3は、互いに独立に、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基または置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基を表す。ただし、X1、X2及びX3のうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基である。シクロへキサン-1,4-ジイル基を構成する-CH2-は、-O-、-S-またはNR-に置き換わっていてもよい。Rは、炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基を表す。
Y1及びY2は、互いに独立に、-CH2CH2-、-CH2O-、-COO-、-OCOO-、単結合、-N=N-、-CRa=CRb-、-C≡C-またはCRa=N-を表す。Ra及びRbは、互いに独立に、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。
U1は、水素原子または重合性基を表す。
U2は、重合性基を表す。
W1及びW2は、互いに独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-またはOCOO-を表す。
V1及びV2は、互いに独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基を表し、該アルカンジイル基を構成する-CH2-は、-O-、-S-またはNH-に置き換わっていてもよい。]
【0045】
化合物(1)において、X1、X2及びX3のうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基であることが好ましい。
置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基は、無置換であることが好ましい。置換基を有していてもよいシクロへキサン-1,4-ジイル基は、置換基を有していてもよいトランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基であることが好ましく、置換基を有していてもよいトランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基は無置換であることが好ましい。
【0046】
置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基または置換基を有していてもよいシクロへキサン-1,4-ジイル基が任意に有する置換基としては、メチル基、エチル基及びブチル基などの炭素数1~4のアルキル基、シアノ基および塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子などが挙げられる。
【0047】
Y1は、-CH2CH2-、-COO-または単結合であると好ましく、Y2は、-CH2CH2-またはCH2O-であると好ましい。
【0048】
U2は、重合性基である。U1は、水素原子または重合性基であり、好ましくは重合性基である。U1及びU2は、ともに重合性基であると好ましく、ともに光重合性基であると好ましい。光重合性基を有する重合性液晶化合物は、より低温条件下で重合できる点で有利である。
【0049】
U1及びU2で表される重合性基は互いに異なっていてもよいが、同一であると好ましい。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0050】
V1及びV2で表されるアルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基及びイコサン-1,20-ジイル基などが挙げられる。V1及びV2は、好ましくは炭素数2~12のアルカンジイル基であり、より好ましくは炭素数6~12のアルカンジイル基である。
置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基が任意に有する置換基としては、シアノ基及び塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子などが挙げられるが、該アルカンジイル基は、無置換であることが好ましく、無置換且つ直鎖状のアルカンジイル基であることがより好ましい。
【0051】
好ましくは、W1及びW2は、互いに独立に単結合またはO-である。
【0052】
化合物(1)の具体例としては、式(1-1)~式(1-23)で表される化合物などが挙げられる。化合物(1)が、シクロヘキサン-1,4-ジイル基を有する場合、そのシクロヘキサン-1,4-ジイル基は、トランス型であることが好ましい。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
例示した化合物(1)の中でも、式(1-2)、式(1-3)、式(1-4)、式(1-6)、式(1-7)、式(1-8)、式(1-13)、式(1-14)及び式(1-15)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0058】
例示した化合物(1)は、単独または組み合わせて、液晶硬化膜に用いることができる。
また、2種以上の重合性液晶化合物を組み合わせる場合には、少なくとも1種が化合物(1)であると好ましく、2種以上が化合物(1)であるとより好ましい。組み合わせることにより、液晶-結晶相転移温度以下の温度でも一時的に液晶性を保持することができる場合がある。2種類の重合性液晶化合物を組み合わせる場合の混合比としては、通常、1:99~50:50であり、好ましくは5:95~50:50であり、より好ましくは10:90~50:50である。2種類の重合性液晶化合物を組み合わせる場合で、かつ1種のみが化合物(1)である場合は、化合物(1)が、先の混合比における高い割合となうように配合されるのが好ましい。
【0059】
重合性液晶化合物は、例えば、Lub et al. Recl.Trav.Chim.Pays-Bas,115, 321-328(1996)及び特許第4719156号等に記載の公知方法で製造される。
【0060】
光吸収異方性膜における液晶化合物の含有割合は、液晶化合物の配向性を高くするという観点から、光吸収異方性膜100質量部に対して、通常70~99.5質量部であり、好ましくは80~99質量部であり、より好ましくは80~94質量部であり、さらに好ましくは80~90質量部である。光吸収異方性膜における液晶化合物の含有割合は、光吸収異方性膜を形成する光吸収異方性組成物の固形分100質量部に対する液晶化合物の割合として算出することができる。
【0061】
<重合開始剤>
本光吸収異方性組成物は、重合開始剤を含有していてもよい。
重合開始剤は、重合性液晶化合物などの重合反応を開始し得る化合物である。重合開始剤としては、光の作用により活性ラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。
【0062】
重合開始剤としては、例えばベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩などが挙げられる。
【0063】
ベンゾイン化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。
【0064】
ベンゾフェノン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン及び2,4,6-トリメチルベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0065】
アルキルフェノン化合物としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1,2-ジフェニル-2,2-ジメトキシエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマーなどが挙げられる。
【0066】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0067】
トリアジン化合物としては、例えば、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(フラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン及び2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0068】
重合開始剤には市販のものを用いることができる。市販の重合開始剤としては、イルガキュア(Irgacure)(登録商標)907、184、651、819、250及び、369(BASF社);セイクオール(登録商標)BZ、Z及び、BEE(精工化学(株));カヤキュアー(kayacure)(登録商標)BP100及び、UVI-6992(日本化薬(株));アデカオプトマーSP-152及び、SP-170((株)ADEKA);TAZ-A及び、TAZ-PP(DKSHジャパン(株));及び、TAZ-104((株)三和ケミカル)等が挙げられる。
【0069】
重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物の配向を乱しにくいという観点から、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常0.1~30質量部であり、好ましくは0.5~10質量部であり、より好ましくは0.5~8質量部である。
【0070】
<レベリング剤>
本光吸収異方性膜は、レベリング剤を含有していてもよい。
レベリング剤とは、光吸収異方性組成物の流動性を調整し、光吸収異方性膜をより平坦にする機能を有するものであり、例えば、界面活性剤を挙げることができる。好ましいレベリング剤としては、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤及びフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤が挙げられる。
【0071】
ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤としては、BYK-350、BYK-352、BYK-353、BYK-354、BYK-355、BYK-358N、BYK-361N、BYK-380、BYK-381及び、BYK-392(BYK Chemie社)等が挙げられる。
【0072】
フッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤としては、メガファック(登録商標)R-08、R-30、R-90、F-410、F-411、F-443、F-445、F-470、F-471、F-477、F-479、F-482、F-483(DIC(株));サーフロン(登録商標)S-381、S-382、S-383、S-393、SC-101、SC-105、KH-40及び、SA-100(AGCセイミケミカル(株));E1830及び、E5844(ダイキン工業(株));エフトップEF301、EF303、EF351及び、EF352(三菱マテリアル電子化成(株))等が挙げられる。
【0073】
光吸収異方性膜におけるレベリング剤の含有量は、液晶化合物100質量部に対して、通常0.01質量部以上5質量部以下であり、好ましくは0.1質量部以上3質量部以下である。
レベリング剤の含有量が前記の範囲内であると、得られる液晶硬化膜がより平滑となる傾向があるため好ましい。液晶化合物に対するレベリング剤の含有量が前記の範囲を超えると、得られる液晶硬化膜にムラが生じやすくなったり、水平方向へ配向する傾向があるため好ましくない。光吸収異方性膜は、レベリング剤を2種類以上含有していてもよい。
【0074】
<溶剤>
本光吸収異方性膜を形成させる際に使用する本光吸収異方性組成物は、溶剤を含有していてもよい。
溶剤としては、液晶性化合物を含有する場合には、液晶化合物を完全に溶解し得るものが好ましく、また、該液晶化合物が、重合性液晶化合物である場合には、さらに重合反応に不活性な溶剤であることが好ましい。
【0075】
溶剤としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトンまたはプロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチルなどのエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン及びメチルイソブチルケトンなどのケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリルなどのニトリル溶剤;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタンなどのエーテル溶剤;クロロホルム及びクロロベンゼンなどの塩素含有溶剤;などが挙げられる。これら溶剤は、単独で用いてもよいし、組み合わせてもよい。
【0076】
溶剤の含有量は、光吸収異方性組成物の総量に対して50~98質量%が好ましい。換言すると、光吸収異方性膜成分の割合は、光吸収異方性組成物の総量に対して2~50質量%が好ましい。
光吸収異方性組成物の総量に対して、該固形分が50質量%以下であると、光吸収異方性組成物の粘度が低くなることから、液晶硬化膜の厚みが略均一になることで、当該液晶硬化膜にムラが生じにくくなる傾向がある。また、かかる固形分は、製造しようとする液晶硬化膜の厚みを考慮して定めることができる。
【0077】
<配向膜>
光吸収異方性膜及び基材を有する光学フィルムは、基材と光吸収異方性膜との間に配向膜を含んでいてもよい。
本発明における配向膜とは、二色性色素や液晶化合物を基材に対して垂直の方向に配向させる配向規制力を有するものである。
配向膜としては、光吸収異方性組成物の塗布などにより溶解しない溶剤耐性を有し、また、溶剤の除去や液晶化合物の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。かかる配向膜としては、配向性ポリマーを含む配向膜、光配向膜等が挙げられる。
【0078】
<配向性ポリマーを含む配向膜>
配向性ポリマーとしては、分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミドおよびその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸およびポリアクリル酸エステル類が挙げられる。中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。2種以上の配向性ポリマーを組み合わせて用いてもよい。
【0079】
配向性ポリマーを含む配向膜は、通常、配向性ポリマーが溶剤に溶解した組成物(以下、配向性ポリマー組成物ということがある。)を基材に塗布し、溶剤を除去する、または、配向性ポリマー組成物を基材に塗布し、溶剤を除去し、ラビングする(ラビング法)ことで基材の表面に形成される。
【0080】
前記溶剤としては、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチルなどのエステル溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶剤、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル溶剤、および、クロロホルム、クロロベンゼン等の塩素化炭化水素溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
配向性ポリマー組成物中の配向性ポリマーの濃度は、配向性ポリマー材料が、溶剤に完溶できる範囲であればよいが、溶液に対して固形分換算で0.1~20質量%が好ましく、0.1~10質量%程度がさらに好ましい。
【0082】
配向性ポリマー組成物として、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、サンエバー(登録商標、日産化学工業(株)製)、オプトマー(登録商標、JSR(株)製)などが挙げられる。
【0083】
配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法としては、スピンコーティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、スリットコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法などの塗布法、フレキソ法などの印刷法などの公知の方法が挙げられる。本光吸収異方性膜を、後述するRoll to Roll形式の連続的製造方法により製造する場合、当該塗布方法には通常、グラビアコーティング法、ダイコーティング法またはフレキソ法などの印刷法が採用される。
【0084】
配向性ポリマー組成物に含まれる溶剤を除去する方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥及び減圧乾燥法等が挙げられる。
【0085】
配向膜に配向規制力を付与するために、必要に応じてラビングを行う(ラビング法)。
ラビングする方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御することができる。
【0086】
ラビング法により配向規制力を付与する方法としては、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールに、配向性ポリマー組成物を基材に塗布しアニールすることで基材表面に形成された配向性ポリマーの膜を、接触させる方法が挙げられる。
【0087】
<光配向膜>
光配向膜は、通常、光反応性基を有するポリマーまたはモノマーと溶剤とを含む組成物(以下、「光配向膜形成用組成物」ということがある。)を基材に塗布し、光(好ましくは、偏光UV)を照射することで基材の表面に形成される。光配向膜は、照射する光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御できる点でより好ましい。
【0088】
光反応性基とは、光照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光照射により生じる分子の配向誘起または異性化反応、二量化反応、光架橋反応もしくは光分解反応等の液晶配向能の起源となる光反応に関与する基が挙げられる。中でも、二量化反応または光架橋反応に関与する基が、配向性に優れる点で好ましい。光反応性基として、不飽和結合、特に二重結合を有する基が好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)および炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも一つを有する基が特に好ましい。
【0089】
C=C結合を有する光反応性基としては、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾール基、スチルバゾリウム基、カルコン基およびシンナモイル基が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、芳香族シッフ塩基、芳香族ヒドラゾンなどの構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基、ホルマザン基、および、アゾキシベンゼン構造を有する基が挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基およびマレイミド基が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、ハロゲン化アルキル基などの置換基を有していてもよい。
【0090】
中でも、光二量化反応に関与する光反応性基が好ましく、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向膜が得られやすいという点で、シンナモイル基およびカルコン基が好ましい。光反応性基を有するポリマーとしては、当該ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものが特に好ましい。
【0091】
光配向膜形成用組成物に含まれる溶剤としては、上述の配向性ポリマー組成物に含まれる溶剤と同様のものが挙げられ、光反応性基を有するポリマーあるいはモノマーの溶解性に応じて適宜選択することができる。
【0092】
光配向膜形成用組成物中の光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの含有量は、ポリマーまたはモノマーの種類や目的とする光配向膜の厚みによって適宜調節できるが、少なくとも0.2質量%とすることが好ましく、0.3~10質量%の範囲がより好ましい。光配向膜の特性が著しく損なわれない範囲で、光配向膜形成用組成物は、ポリビニルアルコールやポリイミドなどの高分子材料や光増感剤を含んでいてもよい。
【0093】
光配向膜形成用組成物を基材に塗布する方法としては、配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法と同様の方法が挙げられる。塗布された光配向膜形成用組成物から、溶剤を除去する方法としては、例えば、配向性ポリマー組成物から溶剤を除去する方法と同じ方法が挙げられる。
【0094】
偏光を照射するには、基板上に塗布された光配向膜形成用組成物から、溶剤を除去したものに直接、偏光UVを照射する形式でも、基材側から偏光を照射し、偏光を透過させて照射する形式でもよい。また、当該偏光は、実質的に平行光であると特に好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマーまたはモノマーの光反応性基が、光エネルギーを吸収し得る波長領域のものがよい。具体的には、波長250~400nmの範囲のUV(紫外線)が特に好ましい。当該偏光照射に用いる光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、KrF、ArFなどの紫外光レーザーなどが挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ及びメタルハライドランプがより好ましい。これらのランプは、波長313nmの紫外線の発光強度が大きいため好ましい。前記光源からの光を、適当な偏光子を通過して照射することにより、偏光UVを照射することができる。かかる偏光子としては、偏光フィルターやグラントムソン、グランテーラーなどの偏光プリズムやワイヤーグリッドタイプの偏光子を用いることができる。
【0095】
なお、ラビングまたは偏光照射を行う時に、マスキングを行えば、液晶配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
【0096】
配向膜の厚さは、通常10nm~10000nmであり、好ましくは10nm~1000nmであり、より好ましくは10nm~500nmである。
【0097】
<本光学フィルム及び光吸収異方性膜の製造方法>
本光吸収異方性膜は、二色性色素の吸収軸を膜面に直交した方向に配向させることによって得られる。本光吸収異方性膜のようなホスト-ゲスト型の光吸収異方性膜における二色性色素の吸収軸の方向は、通常、液晶性化合物が配向する方向によって制御される。液晶性化合物の分子長軸の配向方向を膜面に直交した方向にすることによって、通常、二色性色素の吸収軸を膜面に直交した方向に配向させることができる。液晶性化合物の配向方向は、液晶性化合物と二色性色素と溶剤とを含む組成物が塗布される基材、または配向膜の性質、並びに、液晶性化合物の性質によって制御される。すなわち、本光吸収異方性膜は、膜面に直交した方向(垂直の方向)に配向させる配向規制力を有する基材もしくは配向膜を用いることで、または垂直の方向に配向し易い液晶性化合物を用いることで得ることができる。スメクチック液晶相を有する液晶性化合物は、垂直に配向し易い傾向がある。二色性色素の吸収軸を膜面に直交した方向に配向させることによって得られる光吸収異方性膜は、上記式(1)は満たすものの、上記式(2)および(3)を満たさないことがある。液晶性化合物に高次スメクチック液晶相を形成する化合物を用いることで、上記式(2)および(3)をも満たす光吸収異方性膜が得られる傾向がある。
具体的には、本光学フィルムは、下記(1)~(4)の工程を、記載の順におこなうことにより製造することができる。光吸収異方性膜は、光学フィルムを接着剤などを介して他の被着体に転写した後、基材を取り除くことで得ることができる。
(1)基材に液晶性化合物と二色性色素と溶剤とを含有する組成物を塗布して塗布膜を形成する工程。
(2)塗布膜から溶剤を除去して、乾燥膜を形成する工程。
(3)乾燥膜を冷却することにより、液晶相を発現させる工程。
(4)活性エネルギー線を照射し、液晶性化合物を硬化させる工程。
<(1)の工程>
液晶性化合物と二色性色素と溶剤とを含む組成物(光吸収異方性組成物)を基材に塗布する方法としては、配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法として例示したものと同じ方法が挙げられる。
【0098】
<(2)の工程>
光吸収異方性組成物が溶剤を含む場合には、通常、塗布された光吸収異方性組成物から溶剤を除去する。溶剤の除去方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥及び減圧乾燥法等が挙げられる。乾燥膜は、光吸収異方性膜中の残存溶剤が、光吸収異方性膜の全重量に対して1重量%以下となるように乾燥されるのが好ましい。残存溶剤の量は、基材から光吸収異方性膜を剥離して秤量し、得られた光吸収異方性膜をテトラヒドロフラン等の光吸収異方性膜を溶解する溶剤に浸漬し、10分間超音波を照射して溶解成分を抽出した後、この溶液をガスクロマトグラフィーにて分析することで定量することができる。
【0099】
<(3)の工程>
塗布された液晶化合物は、通常、液晶状態あるいは溶液状態に転移する温度以上に加熱し、次いで液晶配向する温度まで冷却することによって配向し液晶相を形成する。
【0100】
塗布された液晶化合物が配向する温度は、予め、当該液晶化合物を含む組成物を用いたテクスチャー観察などにより求めればよい。また、溶剤の除去と液晶配向とを同時に行ってもよい。この際の温度としては、除去する溶媒や含まれる液晶化合物の種類にもよるが、50~200℃の範囲が好ましく、基材が樹脂基材の場合には、80~130℃の範囲がより好ましい。
【0101】
<(4)の工程>
配向した液晶化合物に、活性エネルギー線を照射することにより、液晶化合物を重合する。
【0102】
重合した液晶化合物が光吸収異方性膜となる。スメクチック相の液晶相を保持したまま重合した重合性液晶化合物を含む液晶硬化膜は、従来のホストゲスト型偏光膜、すなわち、ネマチック相の液晶相を保持したままで重合性液晶化合物等を重合して得られる偏光膜と比較して偏光性能が高く、また、二色性色素またはリオトロピック液晶のみを塗布したものと比較して、偏光性能及び、強度に優れる。
【0103】
活性エネルギー線の光源としては、紫外線、電子線、X線等を発生するものであればよい。好ましくは、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等の波長400nm以下に発光分布を有する光源である。
活性エネルギー線は、基材の法線方向に対して平行な紫外線であるとより好ましい。
【0104】
活性エネルギー線の照射エネルギーは、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が10~5000mJ/cm2となるように設定することが好ましく、より好ましくは100~2000mJ/cm2である。照射エネルギーが10mJ/cm2よりも低すぎると液晶化合物の硬化が不十分となる傾向がある。
【0105】
<本光学フィルムの連続的製造方法>
本光学フィルムは、好ましくは、Roll to Roll形式により連続的に製造される。
図2を参照して、Roll to Roll形式により連続的に製造する方法の要部の一例を説明する。なお、以下の説明においては、基材と光吸収異方性膜との間に配向膜を含む場合の製造方法を示すが、本光吸収異方性膜が、配向膜を含まなくてもよいということはいうまでもない。また、以下の説明においては、液晶化合物として重合性液晶化合物を使用した場合の製造方法を示すが、これに限られるものではない。
【0106】
基材が第1の巻芯210Aに巻き取られている第1ロール210は例えば、市場から容易に入手できる。このようなロールの形態で市場から入手できる基材としては、すでに例示した基材の中でも、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートまたはポリメタクリル酸エステルからなるフィルムなどが挙げられる。
【0107】
続いて、前記第1ロール210から基材を巻き出す。基材を巻き出す方法は該第1ロール210の巻芯210Aに適当な回転手段を設置し、当該回転手段により第1ロール210を回転させることにより行われる。また、第1ロール210から基材を搬送する方向に、適当な補助ロール300を設置し、当該補助ロール300の回転手段で基材を巻き出す形式でもよい。さらに、第1の巻芯210A及び補助ロール300ともに回転手段を設置することで、基材に適度な張力を付与しながら、透明基材を巻き出す形式でもよい。
【0108】
前記第1ロール210から巻き出された基材は、塗布装置211Aを通過する際に、その表面上に当該塗布装置211Aにより光配向膜形成用組成物が塗布される。このように連続的に光配向膜形成用組成物を塗布するための塗布装置211Aとしては、グラビアコーティング法、ダイコーティング法及び、フレキソ法が好ましい。
【0109】
塗布装置211Aを通過した基材は、乾燥炉212Aへと搬送され、乾燥炉212Aによって乾燥されて、基材表面に第一の塗布膜が連続的に形成される。乾燥炉212Aには、例えば、通風乾燥法と加熱乾燥法とを組み合わせた熱風式乾燥炉が用いられる。乾燥炉212Aの設定温度は、前記光配向膜形成用組成物に含まれる溶剤の種類などに応じて定められる。乾燥炉212Aは、互いに異なる設定温度の、複数のゾーンからなるものであってもよいし、互いに異なる設定温度の複数の乾燥炉を直列に設置したものであってもよい。
【0110】
得られた第一の塗布膜に、偏光UV照射装置213Aによって偏光を照射することにより、光配向膜が得られる。
【0111】
続いて、光配向膜が形成された基材は、塗布装置211Bを通過する。塗布装置211Bによって光配向膜上に二色性色素と重合性液晶化合物と溶剤とを含む組成物が塗布された後、乾燥炉212Bを通過することにより、該重合性液晶化合物が配向している第二の塗布膜が得られる。乾燥炉212Bは、光配向膜上に塗布された重合性液晶化合物と溶剤とを含む組成物から溶剤を除去する役割とともに、該組成物に含まれる重合性液晶化合物が配向するように熱エネルギーを与える役割とを担う。乾燥炉212Bは、乾燥炉212Aと同様に、互いに異なる設定温度の複数のゾーンからなるものであってもよいし、互いに異なる設定温度の複数の乾燥炉を直列に設置したものであってもよい。
【0112】
第二の塗布膜に含まれる重合性液晶化合物が配向した状態で、活性エネルギー線照射装置213Bへと搬送される。活性エネルギー線照射装置213Bにおいて、活性エネルギー線照射がされる。活性エネルギー線照射装置213Bによる活性エネルギー線照射によって、重合性液晶化合物が配向した状態で重合される。
【0113】
かくして連続的に製造された光学フィルムは、第2の巻芯220Aに巻き取られ、第2ロール220の形態が得られる。なお、巻き取る際には、適当なスペーサを用いた供巻きを行ってもよい。
【0114】
このように、基材が、第1ロール210から、塗布装置211A、乾燥炉212A、偏光UV照射装置213A、塗布装置211B、乾燥炉212B、及び活性エネルギー線照射装置213Bの順で通過することで、Roll to Roll形式により連続的に本光学フィルムを製造することができる。
なお、基材と光吸収異方性膜との間に配向膜を含まない場合、該光学フィルムは、塗布装置211A及び偏光UV照射装置213Aを含まないような同様の製造方法により製造することができる。
【0115】
<3次元光吸収異方性膜>
本光吸収異方性膜と水平偏光膜とを積層させることにより、3次元光吸収異方性膜を形成させることができる。光学フィルムと水平偏光膜とを積層する場合、光学フィルムは、その光吸収異方性膜側で水平偏光膜と積層されていればよく、基材は剥がしてもよい。
3次元光吸収異方性膜は、水平偏光膜の吸収軸をx’軸とし、水平偏光膜の透過軸をy’軸とし、x’軸及びy’軸に直交する軸をz’軸としたときに、下式(6)を満たす。
式(6)中、Ax’、Ay’及びAz’は、いずれも光吸収異方性膜中の二色性色素の吸収極大波長における吸光度を表す。Ax’は、x’方向に振動する直線偏光の吸光度を、Ay’は、y’方向に振動する直線偏光の吸光度を、Az’は、z’方向に振動する直線偏光の吸光度をそれぞれ表す。Ax’及びAy’は、Ax及びAyと同様にして測定することができる。Az’は、下式(7)により、算出される。式中、Ay’(z=60)は、x’軸を回転軸として前記膜を60°回転させたときのy’軸方向に振動する直線偏光の吸光度を表す。
Ax’>Az’>Ay’ (6)
Ay’ (z=60)=Ay’ cos60°+Az’ sin60° (7)
【0116】
<水平偏光膜>
水平偏光膜は、膜面に平行な方向に吸収軸を有する偏光機能を有する。水平偏光膜としては、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルム、または、吸収異方性を有する色素を塗布したフィルム等が挙げられる。吸収異方性を有する色素としては、二色性色素が挙げられる。
【0117】
吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムは通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造される。
【0118】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することによって得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体が挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類等が挙げられる。
【0119】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールも使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000~10,000であり、好ましくは1,500~5,000の範囲である。
【0120】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜して、原反フィルムが得られる。ポリビニルアルコール系樹脂は、公知の方法で製膜することができる。ポリビニルアルコール系原反フィルムの厚みは、10~150μmが好ましい。
【0121】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色の前、染色と同時、または染色の後で行うことができる。一軸延伸を染色の後で行う場合、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常3~8倍である。
【0122】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの二色性色素による染色は、二色性色素を含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬する方法によって行われる。
二色性色素として、ヨウ素や二色性の有機染料が挙げられるが、ヨウ素を使用することが好ましい。二色性の有機染料としては、C.I. DIRECT RED 39等のジスアゾ化合物からなる二色性直接染料及び、トリスアゾ、テトラキスアゾ等の化合物からなる二色性直接染料等が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に、水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
【0123】
二色性色素がヨウ素である場合は通常、ヨウ素及びヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。水溶液におけるヨウ素の含有量は、水100質量部あたり、通常0.01~1質量部である。ヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常0.5~20質量部である。染色に用いる水溶液の温度は、通常20~40℃である。この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常20~1,800秒である。
【0124】
二色性色素が二色性の有機染料である場合は通常、水溶性二色性染料を含む水溶液にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。水溶液における二色性有機染料の含有量は、水100質量部あたり、通常1×10-4~10質量部であり、好ましくは1×10-3~1質量部であり、さらに好ましくは1×10-3~1×10-2質量部である。この水溶液は、硫酸ナトリウムのような無機塩を染色助剤として含んでいてもよい。水溶液の温度は、通常20~80℃である。この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常10~1,800秒である。
【0125】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は通常、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液に浸漬する方法により行うことができる。ホウ酸水溶液におけるホウ酸の含有量は、水100質量部あたり、通常2~15質量部であり、好ましくは5~12質量部である。二色性色素としてヨウ素を用いた場合には、このホウ酸水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましく、ヨウ化カリウムの含有量は、水100質量部あたり、通常0.1~15質量部であり、好ましくは5~12質量部である。ホウ酸水溶液への浸漬時間は、通常 60~1,200秒であり、好ましくは150~600秒、さらに好ましくは200~400秒である。ホウ酸処理の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50~85℃、さらに好ましくは60~80℃である。
【0126】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは通常、水洗処理される。水洗処理は、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬する方法により行うことができる。水洗処理における水の温度は、通常5~40℃である。浸漬時間は、通常1~120秒である。
【0127】
水洗後に乾燥処理が施されて、水平偏光膜が得られる。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行うことができる。乾燥処理の温度は、通常30~100℃であり、好ましくは50~80℃である。乾燥処理の時間は、通常60~600秒であり、好ましくは120~600秒である。乾燥処理により、水平偏光膜の水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は、通常5~20重量%であり、好ましくは8~15重量%である。水分率が5重量%を下回ると、水平偏光膜の可撓性が失われ、水平偏光膜がその乾燥後に損傷したり、破断したりすることがある。水分率が20重量%を上回ると、水平偏光膜の熱安定性が悪くなる可能性がある。
【0128】
こうしてポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、ホウ酸処理、水洗及び乾燥をして得られる水平偏光膜の厚みは好ましくは5~40μmである。
【0129】
吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムとしては、液晶性を有する二色性色素を含む組成物または、二色性色素と重合性液晶とを含む組成物を塗布して得られるフィルム等が挙げられる。二色性色素としては、光吸収異方性膜に含有されるものと同一のものをしようすることが好ましい。
【0130】
吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムは薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。当該フィルムの厚みは、通常20μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.5~3μmである。
【0131】
吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムとしては、具体的には、特開2012-33249号公報等に記載のフィルムが挙げられる。
【0132】
水平偏光膜の少なくとも一方の面に、接着剤を介して透明保護フィルムを積層することにより偏光板が得られる。透明保護フィルムとしては、前述した基材と同様の透明フィルムが好ましい。
【0133】
なお、3次元光吸収異方性膜の構成としては、本光吸収異方性膜及び水平偏光膜の他、例えば防眩層、反射防止層、帯電防止層、光拡散制御層、輝度向上層、反射層及び半透過層などの液晶表示装置の構成に用いられる適宜なものを用いることができる。
【実施例】
【0134】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記ない限り、質量%及び質量部である。
【0135】
実施例1
〔光吸収異方性組成物の製造〕
下記の成分を混合し、80℃で1時間攪拌することで、光吸収異方性組成物を得た。二色性色素には、特開2013-101328号公報の実施例に記載のアゾ系色素を用いた。式(1-6)及び(1-7)で示される重合性液晶化合物は、lub et al., Recl.Trav.Chim.Pays-Bas, 115, 321-328(1996)記載の方法に従って合成した。
重合性液晶化合物:
75部
25部
二色性色素1:
2.8部
重合開始剤;
2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバスペシャルティケミカルズ社製) 6部
レベリング剤;
ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)
0.3部
溶剤;o-キシレン 250部
【0136】
[重合性液晶化合物の相転移温度の測定]
配向膜を形成したガラス基板上で化合物を加熱しながら、偏光顕微鏡(BX-51、オリンパス社製)によるテクスチャー観察によって相転移温度を確認した。式(1-6)で表される重合性液晶化合物は、昇温時において、95℃で結晶相からスメクチックA相を呈し、111℃でネマチック相に相転移し、113℃で等方性液体相へ相転移した。降温時において、112℃でネマチック相に相転移し、110℃でスメクチックA相に相転移し、94℃でスメクチックB相へ相転移したことを確認した。式(1-7)で表される重合性液晶化合物は、昇温時において、81℃で結晶相からスメクチックA相を呈し、121℃でネマチック相に転移し、137℃で等方性液体相へ相転移した。降温時において、133℃でネマチック相に相転移し118℃でスメクチックA相に相転移し、78℃でスメクチックB相へ相転移したことを確認した。
同様にしてBASF社製サーモトロピック性ネマチック液晶LC242のテクスチャー観察を行なった。当該LC242はネマチック相を示し、スメクチック相は示さなかった。
【0137】
[光吸収異方性膜の製造]
50mm×50mmのガラス上に、スピンコーターを用いて光吸収異方性組成物を塗布した後、110℃に設定した乾燥オーブンで1分間乾燥することで、重合性液晶化合物及び二色性色素が配向した乾燥塗膜を得た。この乾燥塗膜を室温まで自然冷却した後に高圧水銀ランプ(ユニキュアVB―15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより、重合性液晶化合物を重合して光吸収異方性膜1を得た。
【0138】
[光吸収異方性膜の評価]
〔3次元吸光度測定〕
光吸収異方性膜1について、以下のようにして吸光度を測定した。
分光光度計(島津製作所株式会社製 UV-3150)にプリズム偏光子付フォルダーをセットした装置を用いて、ダブルビーム法により2nmステップ380~680nmの波長範囲で、極大吸収を示す波長での3次元吸光度を測定した。ここでの3次元吸光度とは、膜面内の任意の方向をx軸、膜面内でx軸に直交する方向をy軸、膜の膜厚方向をz軸としたとき、直線偏光に対する各々の方向の吸光度(Ax、Ay、Az)である。具体的には、測定光である直線偏光に対して、サンプルを回転させる事で測定を行った。また、z方向の吸光度は、定義上サンプル側面からの光入射となるために測定が難しい。よって、測定光である直線偏光の振動面に対して、サンプルのx-y平面を30°及び60°傾けて測定することによりAz方向の吸光度を見積もった。
具体的には、y軸を含むようにサンプルを30°及び60°回転させた状態で、Axを測定したときと同一の直線偏光を入射することによりAx(z=30)及びAx(z=60)を測定し、同様に、x軸を含むようにサンプルを30°及び60°回転させた状態で、Ayを測定したときと同一の直線偏光を入射することによりAy(z=30)及びAy(z=60)を測定した。
なお、x-y平面に吸収異方性がない場合、すなわちAx及びAyが等しい場合においては、Ax(z=30)=Ay(z=30)かつAx(z=60)=Ay(z=60)であるから、Ax(z=30)及びAy(z=30)をA(z=30)とし、Ax(z=60)及びAy(z=60)をA(z=60)とした。
すなわち、A(z=30)<A(z=60)の関係にある場合、A(z=30)<A(z=60)<A(z=90)=Azの関係を満たす。さらに、A(z=30)>(Ax+Ay)/2またはA(z=60)>(Ax+Ay)/2であれば、必然的に下記式(1)を満たす。
Az>(Ax+Ay)/2 (1)
本件実施例1のサンプルを測定した結果、極大吸収波長である波長526nmにおける3次元吸光度は、Ax=0.029、Ay=0.029、A(z=30)=0.146、A(z=60)=0.502であった。
すなわち、光吸収異方性膜1は以下のように式(1)(2)(3)を満たす。
Az> A(z=60)> A(z=30)> (Ax+Ay)/2 (1)
Ax(z=60)/Ax = 17.3 > 5 (2)
Ay(z=60)/Ay = 17.3 > 5 (3)
〔膜厚測定〕
光吸収異方性膜1における液晶硬化膜の厚さを、レーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)を用いて測定したところ1.7μmであった。
【0139】
実施例2
二色性色素1の代わりに二色性色素2を用いた以外は実施例1と同様にして光吸収異方性膜2を作製した。
二色性色素2:
2.8部
【0140】
〔3次元吸光度測定〕
実施例1と同様にして、光吸収異方性膜2の3次元吸光度を測定した結果、極大吸収波長である波長606nmにおける3次元吸光度は、Ax=0.023、Ay=0.023、A(z=30)=0.134、A(z=60)=0.417であった。
すなわち、光吸収異方性膜2は以下のように式(1)(2)(3)を満たす。
Az> A(z=60)> A(z=30)> (Ax+Ay)/2 (1)
Ax(z=60)/Ax = 18.1 > 5 (2)
Ay(z=60)/Ay = 18.1 > 5 (3)
〔膜厚測定〕
光吸収異方性膜2における液晶硬化膜の厚さを、レーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)を用いて測定したところ1.6μmであった。
【0141】
実施例3
二色性色素1の代わりに二色性色素3を用いた以外は実施例1と同様にして光吸収異方性膜3を作製した。
二色性色素3:
2.8部
【0142】
〔3次元吸光度測定〕
実施例1と同様にして、光吸収異方性膜3の3次元吸光度を測定した結果、極大吸収波長である波長620nmにおける3次元吸光度は、Ax=0.050、Ay=0.050、A(z=30)=0.226、A(z=60)=0.647であった。
すなわち、光吸収異方性膜3は以下のように式(1)(2)(3)を満たす。
Az> A(z=60)> A(z=30)> (Ax+Ay)/2 (1)
Ax(z=60)/Ax = 12.9 > 5 (2)
Ay(z=60)/Ay = 12.9 > 5 (3)
〔膜厚測定〕
光吸収異方性膜3における液晶硬化膜の厚さを、レーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)を用いて測定したところ1.8μmであった。
【0143】
実施例4
二色性色素1の代わりに二色性色素4を用いた以外は実施例1と同様にして光吸収異方性膜4を作製した。
二色性色素4:
2.8部
【0144】
〔3次元吸光度測定〕
実施例1と同様にして、光吸収異方性膜4の3次元吸光度を測定した結果、極大吸収波長である波長402nmにおける3次元吸光度は、Ax=0.086、Ay=0.086、A(z=30)=0.193、A(z=60)=0.525であった。
すなわち、光吸収異方性膜4は以下のように式(1)(2)(3)を満たす。
Az> A(z=60)> A(z=30)> (Ax+Ay)/2 (1)
Ax(z=60)/Ax = 6.1 > 5 (2)
Ay(z=60)/Ay = 6.1 > 5 (3)
〔膜厚測定〕
光吸収異方性膜4における液晶硬化膜の厚さを、レーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)を用いて測定したところ1.7μmであった。
【0145】
実施例5
二色性色素1の代わりに二色性色素5を用いた以外は実施例1と同様にして光吸収異方性膜5を作製した。
二色性色素5:
2.8部
【0146】
〔3次元吸光度測定〕
実施例1と同様にして、光吸収異方性膜5の3次元吸光度を測定した結果、極大吸収波長である波長546nmにおける3次元吸光度は、Ax=0.020、Ay=0.020、A(z=30)=0.105、A(z=60)=0.333であった。
すなわち、光吸収異方性膜5は以下のように式(1)(2)(3)を満たす。
Az> A(z=60)> A(z=30)> (Ax+Ay)/2 (1)
Ax(z=60)/Ax = 16.7 > 5 (2)
Ay(z=60)/Ay = 16.7 > 5 (3)
〔膜厚測定〕
光吸収異方性膜5における液晶硬化膜の厚さを、レーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)を用いて測定したところ1.7μmであった。
【0147】
実施例6
[配向膜形成用組成物の製造]
配向性ポリマーに、プロピレングリコールモノメチルエーテルを加えて配向膜形成用組成物を得た。配向性ポリマーの固形分濃度である括弧内の数値は、固形分量を納品仕様書に記載の濃度から換算した。
配向性ポリマー:サンエバー(登録商標)SE-610(日産化学工業株式会社製)
0.3部(1.0%)
プロピレングリコールモノメチルエーテル:27.7部
【0148】
[光吸収異方性膜の製造]
ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製、ダイアホイルT140E25)を80×80mmに切り出し、その表面にコロナ処理(AGF-B10、春日電機株式会社製)を施した。コロナ処理が施されたフィルム表面に、バーコーターを用いて配向膜形成用組成物を塗布した後、120℃に設定した乾燥オーブンで1分間乾燥し、配向膜を得た。得られた配向膜上に、バーコーターを用いて、実施例1で用いたものと同様の液晶硬化膜形成用組成物を塗布した後、110℃に設定した乾燥オーブンで1分間乾燥し、高圧水銀ランプ(ユニキュアVB―15201BY-A、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける積算光量:1000mJ/cm2)することにより、重合性液晶化合物を重合して光吸収異方性膜6を得た。
【0149】
〔3次元吸光度測定〕
実施例1と同様にして、光吸収異方性膜5の3次元吸光度を測定した結果、極大吸収波長である波長526nmにおける3次元吸光度は、Ax=0.040、Ay=0.040、A(z=30)=0.184、A(z=60)=0.602であった。
すなわち、光吸収異方性膜6は以下のように式(1)(2)(3)を満たす。
Az> A(z=60)> A(z=30)> (Ax+Ay)/2 (1)
Ax(z=60)/Ax = 15.1 > 5 (2)
Ay(z=60)/Ay = 15.1 > 5 (3)
〔膜厚測定〕
光吸収異方性膜6における液晶硬化膜の厚さを、レーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)を用いて測定したところ2.2μmであった。
【0150】
実施例7
二色性色素1の代わりに二色性色素2を用いた以外は実施例6と同様にして光吸収異方性膜7を作製した。
【0151】
〔3次元吸光度測定〕
実施例1と同様にして、光吸収異方性膜7の3次元吸光度を測定した結果、極大吸収波長である波長608nmにおける3次元吸光度は、Ax=0.032、Ay=0.032、A(z=30)=0.184、A(z=60)=0.588であった。
すなわち、光吸収異方性膜7は以下のように式(1)(2)(3)を満たす。
Az> A(z=60)> A(z=30)> (Ax+Ay)/2 (1)
Ax(z=60)/Ax = 18.4 > 5 (2)
Ay(z=60)/Ay = 18.4 > 5 (3)
〔膜厚測定〕
光吸収異方性膜7における液晶硬化膜の厚さを、レーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)を用いて測定したところ2.2μmであった。
【0152】
実施例8
二色性色素1の代わりに二色性色素3を用いた以外は実施例6と同様にして光吸収異方性膜8を作製した。
【0153】
〔3次元吸光度測定〕
実施例1と同様にして、光吸収異方性膜8の3次元吸光度を測定した結果、極大吸収波長である波長622nmにおける3次元吸光度は、Ax=0.078、Ay=0.078、A(z=30)=0.291、A(z=60)=0.860であった。
すなわち、光吸収異方性膜8は以下のように式(1)(2)(3)を満たす。
Az> A(z=60)> A(z=30)> (Ax+Ay)/2 (1)
Ax(z=60)/Ax = 11.0 > 5 (2)
Ay(z=60)/Ay = 11.0 > 5 (3)
〔膜厚測定〕
光吸収異方性膜8における液晶硬化膜の厚さを、レーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)を用いて測定したところ2.3μmであった。
【0154】
比較例1
重合性液晶化合物(1-6)及び(1-7)の代わりにBASF社製サーモトロピック性ネマチック液晶LC242を用いた以外は実施例2と同様にして光吸収異方性膜9を作製した。尚、このサンプルは透明性が得られず重合性液晶ならびに二色性色素の分子配向は得られなかった。
【0155】
〔3次元吸光度測定〕
実施例1と同様にして、光吸収異方性膜9の3次元吸光度を測定した結果、極大吸収波長である波長560nmにおける3次元吸光度は、Ax=0.327、Ay=0.327、A(z=30)=0.317、A(z=60)=0.312であった。
すなわち、光吸収異方性膜9は以下のように式(1)(2)(3)を満たさない。
Az< A(z=60)< A(z=30)< (Ax+Ay)/2
Ax(z=60)/Ax = 1.0
Ay(z=60)/Ay = 1.0
〔膜厚測定〕
光吸収異方性膜9における液晶硬化膜の厚さを、レーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)を用いて測定したところ1.7μmであった。
【0156】
比較例2
重合性液晶化合物(1-6)及び(1-7)の代わりにサーモトロピック性ネマチック液晶LC242(BASF社製)を用いた以外は実施例6と同様にして光吸収異方性膜10を作製した。
【0157】
〔3次元吸光度測定〕
実施例1と同様にして、光吸収異方性膜10の3次元吸光度を測定した結果、極大吸収波長である波長488nmにおける3次元吸光度は、Ax=0.072、Ay=0.072、A(z=30)=0.133、A(z=60)=0.275であった。
すなわち、光吸収異方性膜10は以下のように式(1)を満たすものの、(2)(3)を満たさない。
Az>A(z=60)> A(z=30)>(Ax+Ay)/2
Ax(z=60)/Ax = 3.8
Ay(z=60)/Ay = 3.8
〔膜厚測定〕
光吸収異方性膜10における液晶硬化膜の厚さを、レーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)を用いて測定したところ2.1μmであった。
【0158】
比較例3
重合性液晶化合物(1-6)及び(1-7)の代わりにサーモトロピック性ネマチック液晶LC242(BASF社製)を用いた以外は実施例7と同様にして光吸収異方性膜11を作製した。
【0159】
〔3次元吸光度測定〕
実施例1と同様にして、光吸収異方性膜11の3次元吸光度を測定した結果、極大吸収波長である波長560nmにおける3次元吸光度は、Ax=0.071、Ay=0.071、A(z=30)=0.125、A(z=60)=0.275であった。
すなわち、光吸収異方性膜10は以下のように式(1)を満たすものの、(2)(3)を満たさない。
Az>A(z=60)> A(z=30)>(Ax+Ay)/2
Ax(z=60)/Ax = 3.9
Ay(z=60)/Ay = 3.9
〔膜厚測定〕
光吸収異方性膜11における液晶硬化膜の厚さを、レーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)を用いて測定したところ2.1μmであった。
【0160】
比較例4
重合性液晶化合物(1-6)及び(1-7)の代わりにサーモトロピック性ネマチック液晶LC242(BASF社製)を用いた以外は実施例8と同様にして光吸収異方性膜12を作製した。
【0161】
〔3次元吸光度測定〕
実施例1と同様にして、光吸収異方性膜12の3次元吸光度を測定した結果、極大吸収波長である波長594nmにおける3次元吸光度は、Ax=0.133、Ay=0.133、A(z=30)=0.220、A(z=60)=0.460であった。
すなわち、光吸収異方性膜12は以下のように式(1)を満たすものの、(2)(3)を満たさない。
Az>A(z=60)> A(z=30)>(Ax+Ay)/2
Ax(z=60)/Ax = 3.5
Ay(z=60)/Ay = 3.5
〔膜厚測定〕
光吸収異方性膜12における液晶硬化膜の厚さを、レーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)を用いて測定したところ2.1μmであった。
【0162】
実施例9
二色性色素1の代わりに二色性色素1と二色性色素3と二色性色素4とを同時に用いた以外は実施例6と同様にして光吸収異方性膜13を作製した。
【0163】
〔3次元吸光度測定〕
実施例1と同様にして、光吸収異方性膜13の3次元吸光度を測定した結果、3種の色素に由来する極大吸収が得られた。
第一の吸収:
波長400nmにおける3次元吸光度は、Ax=0.115、Ay=0.115、A(z=30)=0.274、A(z=60)=0.692であった。
すなわち、光吸収異方性膜13は以下のように式(1)(2)(3)を満たす。
Az> A(z=60)> A(z=30)> (Ax+Ay)/2 (1)
Ax(z=60)/Ax = 6.0 > 5 (2)
Ay(z=60)/Ay = 6.0 > 5 (3)
第二の吸収:
波長526nmにおける3次元吸光度は、Ax=0.062、Ay=0.062、A(z=30)=0.220、A(z=60)=0.639であった。
すなわち、光吸収異方性膜13は以下のように式(1)(2)(3)を満たす。
Az> A(z=60)> A(z=30)> (Ax+Ay)/2 (1)
Ax(z=60)/Ax = 10.2 > 5 (2)
Ay(z=60)/Ay = 10.2 > 5 (3)
第三の吸収:
波長622nmにおける3次元吸光度は、Ax=0.049、Ay=0.049、A(z=30)=0.187、A(z=60)=0.468であった。
すなわち、光吸収異方性膜13は以下のように式(1)(2)(3)を満たす。
Az> A(z=60)> A(z=30)> (Ax+Ay)/2 (1)
Ax(z=60)/Ax = 11.3 > 5 (2)
Ay(z=60)/Ay = 11.3 > 5 (3)
〔膜厚測定〕
光吸収異方性膜13における液晶硬化膜の厚さを、レーザー顕微鏡(LEXT、オリンパス株式会社製)を用いて測定したところ2.3μmであった。
【0164】
実施例10
[偏光板の製造]
平均重合度約2,400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬してヨウ素染色を行った(ヨウ素染色工程)。ヨウ素染色工程を経たポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に、56.5℃で浸漬してホウ酸処理を行った(ホウ酸処理工程)。ホウ酸処理工程を経たポリビニルアルコールフィルムを8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向している水平偏光膜(延伸後の厚さ27μm)を得た。この際、ヨウ素染色工程とホウ酸処理工程において延伸を行った。かかる延伸におけるトータル延伸倍率は5.3倍であった。得られた水平偏光膜と、ケン化処理されたトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタ製 KC4UYTAC 40μm)とを水系接着剤を介してニップロールで貼り合わせた。得られた貼合物の張力を430N/mの保ちながら、60℃で2分間乾燥して、片面に保護フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムを有する偏光板(1)を得た。尚、前記水系接着剤は水100部に、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール(クラレ製 クラレポバール KL318)3部と、水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(住化ケムテックス製 スミレーズレジン650 固形分濃度30%の水溶液)1.5部を添加して調製した。この偏光板と実施例9で得られた光吸収異方性膜13の液晶硬化膜側を、感圧式粘着剤を介して貼り合わせて、
図3に示すような3次元光吸収異方性膜を作製した。
【0165】
〔3次元吸光度測定〕
得られた複合偏光板について、実施例1と同様に3次元吸光度を測定した。この際の3次元吸光度とは、偏光板の吸収軸をx’、偏光板の透過軸方向をy’、液晶硬化膜の膜厚方向をz’とした際の、各々の方向の吸光度(Ax’、Ay’、Az’)である。
Ax’とAx’(z=60)、ならびにAy’とAy’(z=60)を測定することでAx’、Ay’、Az’の大小関係を決定した。
第二の吸収:
波長526nmにおける3次元吸光度は、Ax’=3.158、Ay’=0.065、Ay’(z=60)=0.614であった。すなわち、
Ay’ (z=60)=Ay’ cos60°+Az’ sin60°の関係であるため、Az’≒ 0.671と計算される。よって、式(6)を満たすことが確認された。
Ax’> Az’> Ay’ (6)
【0166】
図4に示すように、偏光板を液晶パネルのリア側に感圧式粘着剤を介して貼合し、さらに、3次元光吸収異方性膜を、偏光板側がパネル側になるように、感圧式粘着剤を介して液晶パネルのフロント側に貼りつけて見栄えを評価したところ、正面方向からはクリアな視認性を保持する一方で、横方向からの視認性が低下し、覗き見防止機能が得られていることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明の光吸収異方性膜は、薄型で、かつ簡易な製造によって製造でき、携帯電話や銀行ATM等のディスプレイに、より効果的な覗き見防止機能を付与する材料として有用である。
【符号の説明】
【0168】
210 第1ロール
210A 巻芯
220 第2ロール
220A 巻芯
211A,211B 塗布装置
212A,212B 乾燥炉
213A 偏光UV照射装置
213B 活性エネルギー線照射装置
300 補助ロール
1 本光吸収異方性膜
2 粘着剤層
3 水平偏光膜
4 3次元光吸収異方性膜
5 液晶パネル