IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

特許7011047感光性転写材料、感光性転写材料の製造方法、レジストパターンの製造方法、回路配線の製造方法、タッチパネル、及び、タッチパネル表示装置
<>
  • 特許-感光性転写材料、感光性転写材料の製造方法、レジストパターンの製造方法、回路配線の製造方法、タッチパネル、及び、タッチパネル表示装置 図1
  • 特許-感光性転写材料、感光性転写材料の製造方法、レジストパターンの製造方法、回路配線の製造方法、タッチパネル、及び、タッチパネル表示装置 図2
  • 特許-感光性転写材料、感光性転写材料の製造方法、レジストパターンの製造方法、回路配線の製造方法、タッチパネル、及び、タッチパネル表示装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】感光性転写材料、感光性転写材料の製造方法、レジストパターンの製造方法、回路配線の製造方法、タッチパネル、及び、タッチパネル表示装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20220119BHJP
   G03F 7/039 20060101ALI20220119BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20220119BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20220119BHJP
   B82B 1/00 20060101ALI20220119BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20220119BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
G03F7/11 503
G03F7/039 601
G03F7/004 512
G06F3/041 660
B82B1/00 ZNM
G06F3/041 495
H05K3/06 J
G03F7/20 501
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020509632
(86)(22)【出願日】2018-12-06
(86)【国際出願番号】 JP2018044988
(87)【国際公開番号】W WO2019187365
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2018065545
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】海鉾 洋行
(72)【発明者】
【氏名】小川 恭平
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-207073(JP,A)
【文献】特開2004-020643(JP,A)
【文献】特開2009-092818(JP,A)
【文献】特開昭63-197942(JP,A)
【文献】特開2012-027357(JP,A)
【文献】特開2007-264483(JP,A)
【文献】特開2008-175957(JP,A)
【文献】特開2017-120435(JP,A)
【文献】特開2018-031847(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0008733(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮支持体と、
中間層と、
ポジ型感光性樹脂層と、をこの順で有し、
前記仮支持体と前記中間層とが接しており、
前記中間層の前記仮支持体と接する側の表面における、引っ掻き速度1mm/s、圧子の先端径0.075mm、荷重5gにより測定した引っ掻き試験の引っ掻き深さが0.40μm未満である、
感光性転写材料。
【請求項2】
前記中間層が、セルロースエーテル化合物を含む、請求項1に記載の感光性転写材料。
【請求項3】
前記中間層に含まれる前記セルロースエーテル化合物は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項2に記載の感光性転写材料。
【請求項4】
前記中間層が、粒子を更に含む、請求項1請求項3のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項5】
前記中間層に含まれる前記粒子の平均粒子径が、1nm~200nmである、請求項に記載の感光性転写材料。
【請求項6】
前記中間層と前記ポジ型感光性樹脂層との間に、前記ポジ型感光性樹脂層と接する第二の中間層を更に含み、
前記第二の中間層が、セルロースエーテル化合物及びヒドロキシ基を有するアクリル樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含む、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項7】
前記第二の中間層が、粒子を更に含む、請求項に記載の感光性転写材料。
【請求項8】
前記第二の中間層に含まれる前記粒子の平均粒子径が、1nm~200nmである、請求項に記載の感光性転写材料。
【請求項9】
前記ポジ型感光性樹脂層が、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体と、光酸発生剤とを含む、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の感光性転写材料。
【請求項10】
仮支持体上に中間層形成用組成物を塗布する工程、及び、
前記中間層形成用組成物に感光性樹脂組成物を塗布する工程を含む、
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の感光性転写材料の製造方法。
【請求項11】
カバーフィルム上に感光性樹脂組成物を塗布する工程、
前記感光性樹脂組成物上に中間層形成用組成物を塗布する工程、及び、
前記中間層形成用組成物上に仮支持体を貼り付ける工程を含む、
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の感光性転写材料の製造方法。
【請求項12】
基板に対し、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の感光性転写材料のポジ型感光性樹脂層側の最外層を前記基板に接触させて貼り合わせる工程と、
前記感光性転写材料の仮支持体を剥離する工程と、
仮支持体を剥離した感光性転写材料に対してフォトマスクを接触させて前記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
前記露光する工程後の前記ポジ型感光性樹脂層を現像してレジストパターンを形成する工程と、をこの順に含む
レジストパターンの製造方法。
【請求項13】
基板に対し、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の感光性転写材料の前記ポジ型感光性樹脂層側の最外層を前記基板に接触させて貼り合わせる工程と、
前記感光性転写材料の仮支持体を剥離する工程と、
仮支持体を剥離した感光性転写材料に対してフォトマスクを接触させて前記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
前記ポジ型感光性樹脂層を現像してレジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンが配置されていない領域における前記基板をエッチング処理する工程と、をこの順に含む
回路配線の製造方法。
【請求項14】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載の感光性転写材料を用いて作製した回路配線を備えるタッチパネル。
【請求項15】
請求項14に記載のタッチパネルを備えるタッチパネル表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性転写材料、感光性転写材料の製造方法、レジストパターンの製造方法、回路配線の製造方法、タッチパネル、及び、タッチパネル表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、静電容量型入力装置などのタッチパネルを備えた表示装置(有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置及び液晶表示装置など)では、視認部のセンサーに相当する電極パターン、周辺配線部分及び取り出し配線部分の配線などの導電性層パターンがタッチパネル内部に設けられている。
一般的にパターン化した層の形成には、必要とするパターン形状を得るための工程数が少ないといったことから、感光性転写材料を用いて任意の基板上に設けた感光性樹脂組成物の層に対して、所望のパターンを有するマスクを介して露光した後に現像する方法が広く使用されている。
【0003】
例えば、特許第2832409号公報には、少なくとも、(1)支持体、(2)上記支持体上に設けられた膜厚0.1~5μmの中間層、(3)上記中間層上に設けられたカルボキシル基含有バインダーを含有する光重合性樹脂層、を含む光重合性樹脂材料において、上記中間層にヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むことを特徴とする光重合性樹脂材料が開示されている。
特開2016-57632号公報には、(A)メタクレゾール及びパラクレゾールから得られるノボラック型フェノール樹脂と、(B)オルトクレゾールから得られるノボラック型フェノール樹脂と、(C)光により酸を発生する化合物と、を含有するポジ型感光性樹脂組成物が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
感光性転写材料を用いて基板上にポジ型感光性樹脂層を形成する際において、感光性転写材料を基板に貼り付けることにより、基板と、ポジ型感光性樹脂層と、仮支持体とをこの順に少なくとも有する積層体が形成される。このような積層体を露光した後に、上記ポジ型感光性樹脂層を現像することによりレジストパターンが形成される。
ここで、得られるレジストパターンの解像度の向上等を目的として、上記露光において、上記仮支持体を剥離した後に、積層体の仮支持体が剥離された側の面に、パターンを有するフォトマスク(単に「マスク」ともいう。)を接触させて露光(「コンタクト露光」ともいう。)を行うことが検討されている。
上記のような、マスクを仮支持体の剥離後の積層体に接触させて露光を行う場合には、積層体に含まれる成分によりマスクが汚染されてしまう場合があった。
【0005】
本開示に係る実施形態が解決しようとする課題は、コンタクト露光時のフォトマスクの汚染が抑制される感光性転写材料及びその製造方法を提供することである。
また、本開示に係る別の実施形態が解決しようとする課題は、上記感光性転写材料を用いたレジストパターンの製造方法、回路配線の製造方法、タッチパネル、及び、タッチパネル表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 仮支持体と、
中間層と、
ポジ型感光性樹脂層と、をこの順で有し、
上記仮支持体と上記中間層とが接しており、
上記中間層の上記仮支持体と接する側の表面における、引っ掻き速度1mm/s、圧子の先端径0.075mm、荷重5gにより測定した引っ掻き試験の引っ掻き深さが0.40μm未満である、
感光性転写材料。
<2> 上記中間層が、セルロースエーテル化合物を含む、上記<1>に記載の感光性転写材料。
<3> 上記中間層が、粒子を更に含む、上記<1>又は<2>に記載の感光性転写材料。
<4> 上記中間層に含まれる上記粒子の平均粒子径が、1nm~200nmである、上記<3>に記載の感光性転写材料。
<5> 上記中間層と上記ポジ型感光性樹脂層との間に、上記ポジ型感光性樹脂層と接する第二の中間層を更に含み、
上記第二の中間層が、セルロースエーテル化合物及びヒドロキシ基を有するアクリル樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含む、上記<1>~<4>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<6> 上記第二の中間層が、粒子を更に含む、上記<5>に記載の感光性転写材料。
<7> 上記第二の中間層に含まれる上記粒子の平均粒子径が、1nm~200nmである、上記<6>に記載の感光性転写材料。
<8> 上記ポジ型感光性樹脂層が、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体と、光酸発生剤とを含む、上記<1>~<7>のいずれか1つに記載の感光性転写材料。
<9> 仮支持体上に中間層形成用組成物を塗布する工程、及び、
上記中間層形成用組成物に感光性樹脂組成物を塗布する工程を含む、
上記<1>~<8>のいずれか1つに記載の感光性転写材料の製造方法。
<10> カバーフィルム上に感光性樹脂組成物を塗布する工程、
上記感光性樹脂組成物上に中間層形成用組成物を塗布する工程、及び、
上記中間層形成用組成物上に仮支持体を貼り付ける工程を含む、
上記<1>~<8>のいずれか1つに記載の感光性転写材料の製造方法。
<11> 基板に対し、上記<1>~<8>のいずれか1つに記載の感光性転写材料のポジ型感光性樹脂層を上記基板に接触させて貼り合わせる工程と、
上記感光性転写材料の仮支持体を剥離する工程と、
仮支持体を剥離した感光性転写材料に対してフォトマスクを接触させて上記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
上記露光する工程後の上記ポジ型感光性樹脂層を現像してレジストパターンを形成する工程と、をこの順に含む
レジストパターンの製造方法。
<12> 基板に対し、上記<1>~<8>のいずれか1つに記載の感光性転写材料の上記ポジ型感光性樹脂層を上記基板に接触させて貼り合わせる工程と、
上記感光性転写材料の仮支持体を剥離する工程と、
仮支持体を剥離した感光性転写材料に対してフォトマスクを接触させて上記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
上記ポジ型感光性樹脂層を現像してレジストパターンを形成する工程と、
上記レジストパターンが配置されていない領域における上記基板をエッチング処理する工程と、をこの順に含む
回路配線の製造方法。
<13> 上記<1>~<8>のいずれか1つに記載の感光性転写材料を用いて作製した回路配線を備えるタッチパネル。
<14> 上記<13>に記載のタッチパネルを備えるタッチパネル表示装置。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る実施形態によれば、コンタクト露光時のフォトマスクの汚染が抑制される感光性転写材料及びその製造方法を提供することができる。
また、本開示に係る別の実施形態によれば、上記感光性転写材料を用いたレジストパターンの製造方法、回路配線の製造方法、タッチパネル、及び、タッチパネル表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示に係る感光性転写材料の層構成の一例を示す概略図である。
図2図2は、パターンAを示す概略図である。
図3図3は、パターンBを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の内容について説明する。なお、添付の図面を参照しながら説明するが、符号は省略する場合がある。
本開示における基(原子団)の表記について、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の両方を包含する概念である。
本開示において、ポジ型感光性樹脂層等の層中の各成分の量は、各成分に該当する物質が層中に複数存在する場合、特に断らない限り、層中に存在する上記複数の物質の合計量を意味する。
また、本開示中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。GPCによる重量平均分子量の測定は、測定装置として、HLC(登録商標)-8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel(登録商標)Super HZM-M(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)、Super HZ4000(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)、Super HZ3000(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)、Super HZ2000(4.6mmID×15cm、東ソー(株)製)をそれぞれ1本、直列に連結したものを用い、溶離液として、THF(テトラヒドロフラン)を用いることができる。検量線は、東ソー(株)製の「標準試料TSK standard,polystyrene」:「F-40」、「F-20」、「F-4」、「F-1」、「A-5000」、「A-2500」及び「A-1000」の7サンプルのいずれかを用いて作製できる。
本開示において、全固形分量とは、組成物における溶剤等の揮発性成分を除いた成分の全質量をいう。
本開示における図面中、同一の構成には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
本開示において、「光」は、γ線、β線、電子線、紫外線、可視光線、赤外線といった活性エネルギー線を包含する概念である。
本開示における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線、X線、及びEUV(Extreme ultraviolet)光等による露光のみならず、電子線、及びイオンビーム等の粒子線による露光も含む。
【0010】
(感光性転写材料)
本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体と、中間層と、ポジ型感光性樹脂層と、をこの順で有し、上記仮支持体と上記中間層とが接しており、上記中間層の上記仮支持体と接する側の表面における、引っ掻き速度1mm/s、圧子の先端径0.075mm、荷重5gにより測定した引っ掻き試験の引っ掻き深さが0.40μm未満である。
【0011】
本発明者らは、特許第2832409号公報又は特開2016-57632号公報に記載の感光性転写材料を用いてコンタクト露光を行った場合、マスクに汚染が発生する場合があることを見出した。
特許第2832409号公報に記載の感光性転写材料は、ネガ型感光性樹脂層を有する感光性転写材料であり、ポジ型感光性樹脂層を有する感光性転写材料と比較して柔らかいため、引っ掻き深さが深くなりやすい。また、コンタクト露光時にフォトマスクと中間層が接着されることにより、フォトマスクの剥離時に感光性樹脂層が基板から剥がれてしまい、中間層及び感光性樹脂層の成分によるマスクの汚染が発生してしまう場合がある。
また、特開2016-57632号公報に記載の感光性転写材料は、ポジ型感光性樹脂層を含むが、引っ掻き深さが0.40μm未満である硬い中間層を有しないため、感光性転写材料の塑性変形が抑制されにくく、ポジ型感光性樹脂層に含まれる成分によるマスクの汚染が発生してしまう場合がある。
そこで本発明者らは、鋭意検討した結果、本開示に係る感光性転写材料においては、仮支持体と接する側の表面における、引っ掻き速度1mm/s、圧子の先端径0.075mm、荷重5gにより測定した引っ掻き試験の引っ掻き深さが0.40μm未満である中間層を有することにより、コンタクト露光時のマスクの汚染が抑制されることを見出した。
これは、中間層の引っ掻き深さが上記範囲内であることにより、コンタクト露光時の感光性転写材料の塑性変形が抑制されるためであると考えられる。
【0012】
このように、本開示によれば、コンタクト露光時のマスクの汚染が抑制される。
コンタクト露光を行うことによる利点として、現像後に得られるレジストパターンの形状が良好となる点が挙げられる。
例えば、本発明者らは、従来行われているように、仮支持体上にマスクを配置して露光を行った場合、露光光が基板又はポジ型感光性樹脂層の界面で反射して生じる反射波と入射波との干渉により生じた定在波によって感光性樹脂層が露光され、現像後に得られるレジストパターンの側面部分に階段状の切れ込みが発生することを見出した。
また本発明者らは、上記階段状の切れ込みの発生を抑制するためには、マスクと感光性樹脂層との距離をできるだけ小さくすることが有効であると考え、仮支持体を剥離してコンタクト露光を行うことが好ましいと考えた。
すなわち、本開示に係る感光性転写材料は、コンタクト露光時のマスクの汚染が抑制され、かつ、コンタクト露光を行うことにより上記階段状の切れ込みの発生が抑制されるという点からは、例えば微小なレジストパターンの形成を行う場合にも有用であると考えられる。
以下、本開示に係る感光性転写材料について、詳細に説明する。
【0013】
図1は、本開示に係る感光性転写材料の層構成の一例を概略的に示している。図1に示す感光性転写材料100は、仮支持体10と、中間層12と、ポジ型感光性樹脂層14と、カバーフィルム16とがこの順に積層されている。
中間層12は、仮支持体10と接しており、上記仮支持体と接する側の表面における引っ掻き深さが0.40μm以上である。
【0014】
<中間層>
本開示に係る感光性転写材料は、仮支持体と接し、上記仮支持体と接する側の表面における引っ掻き深さが0.40μm以上である中間層を、仮支持体とポジ型感光性樹脂層との間に有する。
中間層は、仮支持体の剥離後の感光性転写材料において最外層となる層である。
【0015】
〔引っ掻き深さ〕
中間層の上記仮支持体と接する側の表面における、引っ掻き速度1mm/s、圧子の先端径0.075mm、荷重5gにより測定した引っ掻き試験の引っ掻き深さは、0.40μm未満であり、0.38μm未満であることが好ましく、0.36μm未満であることがより好ましい。
中間層の上記引っ掻き深さの下限としては、特に限定されず、0.20μm以上であればよい。
【0016】
上記引っ掻き深さは、下記測定方法により測定される。
感光性転写材料から必要に応じてカバーフィルムを剥離し、ガラス板に感光性転写材料をラミネートし、その後仮支持体を中間層との境界面から剥離し中間層を露出させる。
引っ掻き試験装置として表面性試験機(新東科学(株)製、Type:14DR)を用いる。引っ掻き傷を付ける圧子は球状圧子(ダイヤモンド、先端径0.075mm)を用いる。上記で作製したガラス基板を感光性転写材料面を上にしてセットし、荷重5g、引っ掻き速度1mm/s、引っ掻き距離50mmの条件で実施する。測定環境は室温(23℃)の大気中とする。引っ掻き傷形状観察には走査型白色干渉顕微鏡(Zygo社製、NewView5020)を使用する。NewView5020のデータ解析ソフト(MetroPro)を利用し、Microモード、Z方向スキャン長さを±20μm、それ以外は初期設定の条件で、引っ掻き傷の深さを測定する。5回の測定における測定結果の算術平均値を引っ掻き深さと定義する。
【0017】
〔中間層の物性〕
中間層は、上述の引っ掻き深さが上記範囲内となる限り、どのような材料により形成されていてもよいが、現像により除去される層であることが好ましい。
中間層は、現像により除去されやすいことが好ましい観点から、水溶性又は水分散性の層であることが好ましい。
本開示において、水溶性とは、25℃の水100質量部に対する対象物質の溶解量が0.1質量部以上であることを意味する。
本開示において、水分散性とは、25℃の水100質量部と対象物質0.1質量部を混合した場合に、24時間後の沈殿物の量が0.01質量部未満であることをいう。
【0018】
〔セルロースエーテル化合物〕
中間層は、ポジ型感光性樹脂層との密着性、仮支持体からの剥離性等の観点から、セルロースエーテル化合物を含むことが好ましい。
セルロースエーテル化合物とは、セルロース化合物がエーテル化された構造を有する化合物であり、セルロース化合物とは、複数の無水グルコースが重合した重合体である。
上記セルロースエーテル化合物としては、引っ掻き試験での引っ掻き深さが0.40μm未満であれば特に限定されないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられ、マスク汚染の抑制の観点から、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。
【0019】
上記セルロースエーテル化合物のガラス転移温度(Tg)は、100℃~200℃であることが好ましく、120℃~180℃であることがより好ましい。
本開示において、ガラス転移温度は示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定することができる。
具体的な測定方法は、JIS K 7121(1987年)又はJIS K 6240(2011年)に記載の方法に順じて行う。本明細書におけるガラス転移温度は、補外ガラス転移開始温度(以下、Tigと称することがある)を用いている。
ガラス転移温度の測定方法をより具体的に説明する。
ガラス転移温度を求める場合、予想されるTgより約50℃低い温度にて装置が安定するまで保持した後、加熱速度:20℃/分で、ガラス転移が終了した温度よりも約30℃高い温度まで加熱し,DTA曲線又はDSC曲線を描かせる。
補外ガラス転移開始温度(Tig)、すなわち、本明細書におけるガラス転移温度Tgは、DTA曲線又はDSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度として求める。
【0020】
Tgを、既述の好ましい範囲に調整する方法としては、例えば、目的とする重合体の各構成単位の単独重合体のTgと各構成単位の質量比より、FOX式を指針にして、目的とする特定重合体のTgを制御することが可能である。
FOX式について
重合体に含まれる第1の構成単位の単独重合体のTgをTg1、第1の構成単位の共重合体における質量分率をW1とし、第2の構成単位の単独重合体のTgをTg2とし、第2の構成単位の共重合体における質量分率をW2としたときに、第1の構成単位と第2の構成単位とを含む共重合体のTg0(K)は、以下の式にしたがって推定することが可能である。
FOX式:1/Tg0=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)
既述のFOX式を用いて、共重合体に含まれる各構成単位の種類と質量分率を調整して、所望のTgを有する共重合体を得ることができる。
また、重合体の重量平均分子量を調整することにより、重合体のTgを調整することも可能である。
【0021】
上記セルロースエーテル化合物の重量平均分子量としては、現像性等の観点から、5,000~200,000が好ましく、10,000~100,000がより好ましい。
【0022】
セルロースエーテル化合物としては、市販品を用いてもよく、好ましい市販品としては、メトローズ60SH-03、メトローズ60SH-06、メトローズ60SH-15(いずれも信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0023】
本開示における中間層は、セルロースエーテル化合物を1種単独で含んでもよいし、2種以上を併用してもよい。
セルロースエーテル化合物の含有量は、中間層の全質量に対し、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、25質量%以上であることが特に好ましい。
上記含有量の上限は特に限定されず、100質量%以下であればよい。
【0024】
〔粒子〕
本開示における中間層は、ポジ型感光性樹脂層又は後述する第二の樹脂層との密着性の向上の観点から、粒子を更に含んでもよい。
粒子としては、無機粒子及び樹脂粒子が挙げられ、マスク汚染の抑制の観点から、シリカ粒子、アルミナ粒子又は樹脂粒子であることが好ましく、シリカ粒子又はアルミナ粒子であることがより好ましく、シリカ粒子であることが更に好ましい。
【0025】
無機粒子としては、無機酸化物粒子が挙げられ、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン、酸化セリウム等の粒子を挙げることができる。
【0026】
樹脂粒子としては例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等のアクリル酸系モノマーの単独重合体及び共重合体、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートのようなセルロース系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、塩化ビニル系共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコールのようなビニル系ポリマー及びビニル化合物の共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミドのような縮合系ポリマー、ブタジエン-スチレン共重合体のようなゴム系熱可塑性ポリマー、エポキシ化合物のような光重合性若しくは熱重合性化合物を重合、架橋させたポリマー、メラミン化合物等を挙げることができる。
【0027】
粒子は、分散安定性付与のために表面を有機材料や無機材料で処理することもできる。上記粒子は、表面が親水性の粒子であることが好ましい。例えば、表面が疎水性の粒子の表面を親水化処理する等が挙げられる。
【0028】
粒子の平均粒子径は、10nm~200nmであることが好ましい。
本開示における粒子の平均粒子径の測定方法は、電子顕微鏡により中間層中の任意の粒子200個の粒子径を測定し、その算術平均をいう。また、粒子の形状が球形でない場合には、最大径を径とする。
【0029】
本開示における中間層は、粒子を1種単独で含んでもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記中間層における上記粒子の体積分率(中間層における粒子が占める体積割合)は、中間層と感光層との密着性の観点から、中間層の全体積に対し、5体積%~90体積%であることが好ましく、10体積%~80体積%であることがより好ましく、15体積%~70体積%であることが更に好ましく、20体積%~60体積%であることが特に好ましい。
【0030】
〔その他の添加剤〕
本開示における中間層は、セルロースエーテル化合物に加え、必要に応じて公知の添加剤を含むことができる。
その他の添加剤としては、後述するポジ型感光性樹脂層に用いられるその他の添加剤が好適に挙げられる。
【0031】
〔中間層の厚み〕
上記中間層の厚みは、コンタクト露光による効果をより向上する観点から、0.1μm~10μmが好ましく、0.2μm~8μmがより好ましく、0.5μm~5μmが特に好ましい。
また、上記中間層の厚みは、後述するポジ型感光性樹脂層の厚みより薄いことが好ましい。
【0032】
〔中間層の形成方法〕
中間層の形成方法は、特に制限はないが、例えば中間層形成用組成物を用いることにより形成することができる。
具体的には、中間層に含まれる各成分、及び、溶剤を所定の割合でかつ任意の方法で混合し、撹拌溶解して中間層を形成するための中間層形成用組成物を調製することができる。例えば、各成分を、それぞれ予め溶剤に溶解させた溶液とした後、得られた溶液を所定の割合で混合して組成物を調製することもできる。以上の如くして調製した組成物は、孔径5μmのフィルター等を用いてろ過した後に、使用に供することもできる。
上記中間層形成用組成物を用いた中間層の形成方法の詳細については、後述する本開示に係る感光性転写材料の製造方法において説明する。
【0033】
<第二の中間層>
本開示に係る感光性転写材料は、上記中間層と上記ポジ型感光性樹脂層との間に、上記ポジ型感光性樹脂層と接する第二の中間層を更に含んでもよい。
感光性転写材料が第二の中間層を含むことにより、露光後に時間が経過した場合であっても、現像後に得られるレジストパターンの形状(例えば、パターンの線幅など)が変化しにくくなる。
本開示において、露光後に時間が経過した後に現像しても、レジストパターンの形状が変化しにくいという性質を、「引き置き安定性(PED(post exposure delay))に優れる」ともいう。
また、本開示において、露光した後、現像する前に感光性転写材料を一定の時間静置しておくことを「引き置く(placing after exposure)」といい、例えば露光した後、現像する前に感光性転写材料を3時間静置しておくことを、3時間引き置きする、などという。
第二の中間層を含むことにより、引き置き安定性に優れるという効果が得られる理由は定かではないが、例えば、ポジ型感光性樹脂組成物の露光反応による現像性の増加に対し、何らかの抑制作用を有しているのではないかと推定される。
【0034】
第二の中間層は、水溶性又は水分散性の層であることが好ましい。
【0035】
〔セルロースエーテル化合物又はヒドロキシ基を有するアクリル樹脂〕
第二の中間層は、引き置き安定性の観点から、セルロースエーテル化合物及びヒドロキシ基を有するアクリル樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
【0036】
-セルロースエーテル化合物-
セルロースエーテル化合物としては、特に限定されないが、引き置き安定性向上の観点からは、ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。
【0037】
上記セルロースエーテル化合物の重量平均分子量としては、現像性等の観点から、5,000~200,000が好ましく、10,000~100,000がより好ましい。
【0038】
上記セルロースエーテル化合物としては、市販品を用いてもよく、好ましい市販品としては、HPC-SSL(日本曹達(株)製)等が挙げられる。
【0039】
-ヒドロキシ基を有するアクリル樹脂-
ヒドロキシ基を有するアクリル樹脂としては、ヒドロキシ基を有するモノマー単位を有するアクリル樹脂が好ましい。
上記ヒドロキシ基を有するモノマー単位としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、等のヒドロキシアルキルアクリレート、アルキレングリコールモノアクリレート、ポリアルキレングリコールモノアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が挙げられる。
【0040】
上記アクリル樹脂の重量平均分子量としては、現像性等の観点から、5,000~200,000が好ましく、10,000~100,000がより好ましい。
【0041】
ヒドロキシ基を有するアクリル樹脂は、その他の構成単位として、後述する特定重合体における酸基を有する構成単位B、及び、構成単位C等を有していてもよい。
【0042】
第二の中間層は、セルロースエーテル化合物及びヒドロキシ基を有するアクリル樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を1種単独で含んでもよいし、2種以上を併用してもよい。
セルロースエーテル化合物及びヒドロキシ基を有するアクリル樹脂よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物の含有量(2種以上含む場合は、合計含有量)は、第二の中間層の全質量に対し、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが更に好ましく、25質量%以上であることが特に好ましい。
上記含有量の上限は特に限定されず、100質量%以下であればよい。
【0043】
〔粒子〕
第二の中間層は、中間層とポジ型感光性樹脂層との密着性の観点から、粒子を含むことが好ましい。
第二の中間層に含まれる粒子は、上述した中間層に含まれる粒子と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0044】
<<その他の添加剤>>
第二の中間層は、必要に応じて公知の添加剤を含むことができる。
その他の添加剤としては、後述するポジ型感光性樹脂層に用いられるその他の添加剤が好適に挙げられる。
【0045】
第二の中間層の厚みは、引き置き安定性及びコンタクト露光による効果をより向上する観点から、0.1μm~10μmが好ましく、0.2μm~8μmがより好ましく、0.5μm~5μmが特に好ましい。
また、感光性転写材料が第二の中間層を有する場合、中間層と第二の中間層の合計厚みは、コンタクト露光による効果をさらに向上する観点から、0.1μm~10μmが好ましく、0.2μm~8μmがより好ましく、0.5μm~5μmが特に好ましい。
【0046】
〔第二の中間層の形成方法〕
第二の中間層の形成方法は、特に制限はないが、例えば第二の中間層形成用組成物を用いることにより形成することができる。
具体的には、第二の中間層に含まれる各成分、及び、溶剤を所定の割合でかつ任意の方法で混合し、撹拌溶解して中間層を形成するための第二の中間層形成用組成物を調製することができる。例えば、各成分を、それぞれ予め溶剤に溶解させた溶液とした後、得られた溶液を所定の割合で混合して組成物を調製することもできる。以上の如くして調製した組成物は、孔径5μmのフィルター等を用いてろ過した後に、使用に供することもできる。
上記第二の中間層形成用組成物を用いた中間層の形成方法の詳細については、後述する本開示に係る感光性転写材料の製造方法において説明する。
【0047】
<仮支持体>
仮支持体は、中間層及びポジ型感光性樹脂層を支持し、中間層から剥離可能な支持体である。
仮支持体としては、ガラス基板、樹脂フィルム、紙等が挙げられ、強度及び可撓性等の観点から、樹脂フィルムが特に好ましい。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。中でも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
本開示において、仮支持体は、仮支持体の剥離時に仮支持体と共に剥離される層を有していてもよい。
【0048】
仮支持体の厚みは、特に限定されず、5μm~200μmの範囲が好ましく、取扱い易さ、汎用性などの点で、10μm~150μmの範囲がより好ましい。
仮支持体の厚みは、支持体としての強度、回路配線形成用基板との貼り合わせに求められる可撓性、最初の露光工程で要求される光透過性などの観点から、材質に応じて選択すればよい。
【0049】
仮支持体の好ましい態様については、例えば、特開2014-85643号公報の段落0017~段落0018に記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0050】
<ポジ型感光性樹脂層>
本開示に係る感光性転写材料は、ポジ型感光性樹脂層を有する。
上記ポジ型感光性樹脂層は、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体と、光酸発生剤とを含有することが好ましい。
また、本開示におけるポジ型感光性樹脂層は、化学増幅ポジ型感光性樹脂層であることが好ましい。
後述するオニウム塩やオキシムスルホネート化合物等の光酸発生剤は、活性エネルギー線(活性光線)に感応して生成される酸が、上記特定重合体中の保護された酸基の脱保護に対して触媒として作用するので、1個の光量子の作用で生成した酸が、多数の脱保護反応に寄与し、量子収率は1を超え、例えば、10の数乗のような大きい値となり、いわゆる化学増幅の結果として、高感度が得られる。
一方、活性エネルギー線に感応する光酸発生剤としてキノンジアジド化合物を用いた場合、逐次型光化学反応によりカルボキシ基を生成するが、その量子収率は必ず1以下であり、化学増幅型には該当しない。
【0051】
〔酸分解性で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体を含む重合体成分〕
上記ポジ型感光性樹脂層は、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位(「構成単位A」ともいう。)を有する重合体(「特定重合体」ともいう。)を含むことが好ましい。
また、上記ポジ型感光性樹脂層は、構成単位Aを有する重合体に加え、他の重合体を含んでいてもよい。本開示においては、構成単位Aを有する重合体及び他の重合体をあわせて、「重合体成分」ともいう。
上記特定重合体は、露光により生じる触媒量の酸性物質の作用により、特定重合体中の酸分解性で保護された酸基を有する構成単位Aが脱保護反応を受け酸基となる。この酸基により、硬化反応が可能となる。
【0052】
上記ポジ型感光性樹脂層は、更に、酸分解性で保護された酸基を有する構成単位を有する重合体以外の重合体を含んでいてもよい。
また、上記重合体成分に含まれる全ての重合体がそれぞれ、後述する酸基を有する構成単位を少なくとも有する重合体であることが好ましい。
また、上記化学増幅ポジ型感光性樹脂組成物は、更に、これら以外の重合体を含んでいてもよい。本開示における上記重合体成分は、特に述べない限り、必要に応じて添加される他の重合体を含めたものを意味するものとする。なお、後述する界面活性剤、架橋剤及び分散剤に該当する化合物は、高分子化合物であっても、上記重合体成分に含まないものとする。
【0053】
特定重合体は、付加重合型の樹脂であることが好ましく、(メタ)アクリル酸又はそのエステルに由来する構成単位を有する重合体であることがより好ましい。なお、(メタ)アクリル酸又はそのエステルに由来する構成単位以外の構成単位、例えば、スチレンに由来する構成単位や、ビニル化合物に由来する構成単位等を有していてもよい。
【0054】
上記ポジ型感光性樹脂層は、現像液への溶解性及び転写性等の観点から、特定重合体として、上記構成単位Aとして上記式A1~式A3のいずれかにより表される構成単位を有する重合体(以下、「重合体A-1」ともいう。)を含むことが好ましく、特定重合体として、上記構成単位Aとして上記式A1~式A3のいずれかにより表される構成単位、及び、酸基を有する重合体を含むことがより好ましい。
上記ポジ型感光性樹脂層に含まれる特定重合体は、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0055】
-構成単位A-
上記重合体成分は、酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位Aを少なくとも有する重合体A-1を含むことが好ましい。上記重合体成分が構成単位Aを有する重合体を含むことにより、極めて高感度な化学増幅ポジ型のポジ型感光性樹脂層とすることができる。
本開示における「酸分解性基で保護された酸基」は、酸基及び酸分解性基として公知のものを使用でき、特に限定されない。具体的な酸基としては、カルボキシ基、及び、フェノール性水酸基が好ましく挙げられる。また、酸分解性で保護された酸基としては、酸により比較的分解し易い基(例えば、式A3により表される基で保護されたエステル基、テトラヒドロピラニルエステル基、又は、テトラヒドロフラニルエステル基等のアセタール系官能基)や酸により比較的分解し難い基(例えば、tert-ブチルエステル基等の第三級アルキル基、tert-ブチルカーボネート基等の第三級アルキルカーボネート基)を用いることができる。
これらの中でも、上記酸分解性基としては、アセタールの形で保護された構造を有する基であることが好ましい。
また、酸分解性基としては、得られる回路配線における線幅のバラツキが抑制される観点から、分子量が300以下の酸分解性基であることが好ましい。
【0056】
上記酸分解性基で保護された酸基を有する構成単位Aは、感度及び解像度の観点から、下記式A1~式A3のいずれかにより表される構成単位を含むことが好ましく、後述する式A3-2により表される構成単位を含むことがより好ましい。
【0057】
【化1】

【0058】
式A1中、R11及びR12はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともR11及びR12のいずれか一方がアルキル基又はアリール基であり、R13はアルキル基又はアリール基を表し、R11又はR12と、R13とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R14は水素原子又はメチル基を表し、Xは単結合又は二価の連結基を表し、R15は置換基を表し、nは0~4の整数を表す。
式A2中、R21及びR22はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともR21及びR22のいずれか一方がアルキル基又はアリール基であり、R23はアルキル基又はアリール基を表し、R21又はR22と、R23とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R24はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシアルキル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基又はシクロアルキル基を表し、mは0~3の整数を表す。
式A3中、R31及びR32はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともR31及びR32のいずれか一方がアルキル基又はアリール基であり、R33はアルキル基又はアリール基を表し、R31又はR32と、R33とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R34は水素原子又はメチル基を表し、Xは単結合又はアリーレン基を表し、Yは-S-、又は-O-を表す。
【0059】
<<式A1により表される構成単位の好ましい態様>>
式A1中、R11又はR12がアルキル基の場合、炭素数は1~10のアルキル基が好ましい。R11又はR12がアリール基の場合、フェニル基が好ましい。R11及びR12は、それぞれ、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
式A1中、R13は、アルキル基又はアリール基を表し、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。
また、R11~R13におけるアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。
式A1中、R11又はR12と、R13とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R11又はR12と、R13とが連結して環状エーテルを形成することが好ましい。環状エーテルの環員数は特に制限はないが、5又は6であることが好ましく、5であることがより好ましい。
式A1中、Xは単結合又は二価の連結基を表し、単結合又はアルキレン基、-C(=O)O-、-C(=O)NR-、-O-又はこれらの組み合わせが好ましく、単結合がより好ましい。アルキレン基は、直鎖状でも分岐を有していても環状構造を有していてもよく、置換基を有していてもよい。アルキレン基の炭素数は1~10が好ましく、1~4がより好ましい。Xが-C(=O)O-を含む場合、-C(=O)O-に含まれる炭素原子と、RB4が結合した炭素原子とが直接結合する態様が好ましい。Xが-C(=O)NR-を含む場合、-C(=O)NR-に含まれる炭素原子と、R14が結合した炭素原子とが直接結合する態様が好ましい。Rはアルキル基又は水素原子を表し、炭素数1~4のアルキル基又は水素原子が好ましく、水素原子がより好ましい。
式A1中、R11~R13を含む基と、Xとは、互いにパラ位で結合することが好ましい。
式A1中、R15は置換基を表し、アルキル基又はハロゲン原子が好ましい。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。
式A1中、nは0~4の整数を表し、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0060】
式A1中、R14は水素原子又はメチル基を表し、重合体A-1のTgをより低くし得るという観点から、水素原子であることが好ましい。
より具体的には、重合体A-1に含まれる構成単位Aの全含有量に対し、式A1におけるR14が水素原子である構成単位は20質量%以上であることが好ましい。
なお、構成単位A中の、式A1におけるR14が水素原子である構成単位の含有量(含有割合:質量比)は、13C-核磁気共鳴スペクトル(NMR)測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
【0061】
式A1で表される構成単位の中でも、パターン形状の変形抑制の観点から、下記式A1-2で表される構成単位がより好ましい。
【0062】
【化2】

【0063】
式A1-2中、RB4は水素原子又はメチル基を表し、RB5~RB11はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、RB12は置換基を表し、nは0~4の整数を表す。
式A1-2中、RB4は水素原子が好ましい。
式A1-2中、RB5~RB11は、水素原子が好ましい。
式A1-2、RB12は置換基を表し、アルキル基又はハロゲン原子が好ましい。アルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~4がより好ましい。
式A1-2中、nは0~4の整数を表し、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0064】
式A1で表される構成単位A1の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できる。
【0065】
【化3】

【0066】
<<式A2により表される構成単位の好ましい態様>>
式A2中、R21及びR22がアルキル基の場合、炭素数1~10のアルキル基が好ましい。R21及びR22がアリール基の場合、フェニル基が好ましい。R11及びR12は、それぞれ、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基が好ましく、少なくとも一方が水素原子であることがより好ましい。
上記一般式A2中、R23はアルキル基又はアリール基を表し、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、1~6のアルキル基がより好ましい。
11又はR12と、R13とが連結して環状エーテルを形成してもよい。
式A2中、R24はそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基又は炭素数1~10のアルコキシ基であることが好ましい。R24は、R24と同様の基により更に置換されていてもよい。
式A2中、mは1又は2であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0067】
式A2で表される構成単位A2の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できる。なお、RB4は水素原子又はメチル基を表す。
【0068】
【化4】

【0069】
<<式A3により表される構成単位の好ましい態様>>
式A3中、R31又はR32がアルキル基の場合、炭素数は1~10のアルキル基が好ましい。R31又はR32がアリール基の場合、フェニル基が好ましい。R31及びR32は、それぞれ、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
式A3中、R33は、アルキル基又はアリール基を表し、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましい。
また、R31~R33におけるアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよい。
式A3中、R31又はR32と、R33とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R31又はR32と、R33とが連結して環状エーテルを形成することが好ましい。環状エーテルの環員数は特に制限はないが、5又は6であることが好ましく、5であることがより好ましい。
式A3中、Xは単結合又はアリーレン基を表し、単結合が好ましい。アリーレン基は、置換基を有していてもよい。
式A3中、Yは、-S-、又は-O-を表し、露光感度の観点から、-O-が好ましい。
【0070】
上記式A3で表される構成単位は、酸分解性基で保護されたカルボキシ基を有する構成単位である。重合体A-1が式A3で表される構成単位を含むことで、パターン形成時の感度に優れ、また、解像度より優れる。
式A3中、R34は水素原子又はメチル基を表し、重合体A-1のTgをより低くし得るという観点から、水素原子であることが好ましい。
より具体的には、重合体A-1に含まれる式A3で表される構成単位の全量に対し、式A3におけるR34が水素原子である構成単位は20質量%以上であることが好ましい。
なお、式A3で表される構成単位中の、式A1におけるR34が水素原子である構成単位の含有量(含有割合:質量比)は、13C-核磁気共鳴スペクトル(NMR)測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
【0071】
式A3で表される構成単位の中でも、下記式A3-2で表される構成単位が、パターン形成時の露光感度を更に高める観点からより好ましい。
【0072】
【化5】

【0073】
式A3-2中、R31及びR32はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、少なくともR31及びR32のいずれか一方がアルキル基又はアリール基であり、R33はアルキル基又はアリール基を表し、R31又はR32と、R33とが連結して環状エーテルを形成してもよく、R34は水素原子又はメチル基を表し、Xは単結合又はアリーレン基を表す。
【0074】
式A3-2中、R31、R32、R33、R34及びXはそれぞれ、式A3中のR31、R32、R33、R34及びXと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0075】
式A3で表される構成単位の中でも、下記式A3-3で表される構成単位が、パターン形成時の感度を更に高める観点からより好ましい。
【0076】
【化6】

【0077】
式A3-3中、R34は水素原子又はメチル基を表し、R35~R41はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
式A3-3中、R34は水素原子が好ましい。
式A3-3中、R35~R41は、水素原子が好ましい。
【0078】
式A3で表される、酸分解性基で保護されたカルボキシ基を有する構成単位の好ましい具体例としては、下記の構成単位が例示できる。なお、R34は水素原子又はメチル基を表す。
【0079】
【化7】

【0080】
重合体A-1に含まれる構成単位Aは、1種であっても、2種以上であってもよい。
重合体A-1における構成単位Aの含有量は、重合体A-1の全質量に対して、20質量%以上であることが好ましく、20質量%~90質量%であることがより好ましく、30質量%~70質量%であることが更に好ましい。
重合体A-1における構成単位Aの含有量(含有割合:質量比)は、13C-NMR測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
また、全ての重合体成分を構成単位(モノマー単位)に分解したうえで、構成単位Aの割合は、重合体成分の全質量に対して、5質量%~80質量%であることが好ましく、10質量%~80質量%であることがより好ましく、30質量%~70質量%であることが特に好ましい。
【0081】
-構成単位B-
上記重合体A-1は、酸基を有する構成単位Bを含むことが好ましい。
構成単位Bは、保護基、例えば、酸分解性基で保護されていない酸基、すなわち、保護基を有さない酸基を有する構成単位である。重合体A-1が構成単位Bを含むことで、パターン形成時の感度が良好となり、パターン露光後の現像工程においてアルカリ性の現像液に溶けやすくなり、現像時間の短縮化を図ることができる。
本明細書における酸基とは、pKaが12以下のプロトン解離性基を意味する。酸基は、通常、酸基を形成しうるモノマーを用いて、酸基を有する構成単位(構成単位B)として、重合体に組み込まれる。感度向上の観点から、酸基のpKaは、10以下が好ましく、6以下がより好ましい。また、酸基のpKaは、-5以上であることが好ましい。
【0082】
上記酸基としては、カルボキシ基、スルホンアミド基、ホスホン酸基、スルホン酸基、フェノール性水酸基、及び、スルホニルイミド基等が例示される。中でも、カルボン酸基及びフェノール性水酸基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸基が好ましい。
重合体A-1への酸基を有する構成単位の導入は、酸基を有するモノマーを共重合させること又は酸無水物構造を有するモノマーを共重合させ酸無水物を加水分解することで行うことができる。
構成単位Bである、酸基を有する構成単位は、スチレン化合物に由来する構成単位若しくはビニル化合物に由来する構成単位に対して酸基が置換した構成単位、又は、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位であることがより好ましい。具体的には、カルボキシ基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、4-カルボキシスチレン等が挙げられ、フェノール性水酸基を有するモノマーとしてはp-ヒドロキシスチレン、4-ヒドロキシフェニルメタクリレート等が挙げられ、酸無水物を有するモノマーとしては、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0083】
構成単位Bとしては、カルボン酸基を有する構成単位、又は、フェノール性水酸基を有する構成単位が、パターン形成時の感度がより良好となるという観点から好ましい。
構成単位Bを形成しうる酸基を有するモノマーは既述の例に限定されない。
【0084】
重合体A-1に含まれる構成単位Bは、1種のみであっても、2種以上であってもよい。
重合体A-1は、重合体A-1の全質量に対し、酸基を有する構成単位(構成単位B)を0.1質量%~20質量%含むことが好ましく、0.5質量%~15質量%含むことがより好ましく、1質量%~10質量%含むことが更に好ましい。上記範囲であると、パターン形成性がより良好となる。
重合体A-1における構成単位Bの含有量(含有割合:質量比)は、13C-NMR測定から常法により算出されるピーク強度の強度比により確認することができる。
【0085】
<<その他の構成単位>>
重合体A-1は、既述の構成単位A及び構成単位B以外の、他の構成単位(以下、構成単位Cと称することがある。)を、本開示に係る感光性転写材料の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。
構成単位Cを形成するモノマーとしては、特に制限はなく、例えば、スチレン類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸環状アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、不飽和ジカルボン酸ジエステル、ビシクロ不飽和化合物、マレイミド化合物、不飽和芳香族化合物、共役ジエン系化合物、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸無水物、脂肪族環式骨格を有する基、その他の不飽和化合物を挙げることができる。
構成単位Cを用いて、種類及び含有量の少なくともいずれかを調整することで、重合体A-1の諸特性を調整することができる。特に、構成単位Cを適切に使用することで、重合体A-1のTgを容易に調整することができる。
ガラス転移温度を120℃以下とすることで、重合体A-1を含有するポジ型感光性樹脂層は、転写性、仮支持体からの剥離性を良好なレベルに維持しつつ、パターン形成時の解像度及び感度がより良好となる。
重合体A-1は、構成単位Cを1種のみ含んでもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0086】
構成単位Cは、具体的には、スチレン、tert-ブトキシスチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、アセトキシスチレン、メトキシスチレン、エトキシスチレン、クロロスチレン、ビニル安息香酸メチル、ビニル安息香酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、アクリロニトリル、又は、エチレングリコールモノアセトアセテートモノ(メタ)アクリレートなどを重合して形成される構成単位を挙げることができる。その他、特開2004-264623号公報の段落0021~段落0024に記載の化合物を挙げることができる。
【0087】
また、構成単位Cとしては、芳香環を有する構成単位、又は、脂肪族環式骨格を有する構成単位が、得られる転写材料の電気特性を向上させる観点で好ましい。これら構成単位を形成するモノマーとして、具体的には、スチレン、tert-ブトキシスチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、及び、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、構成単位Cとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート由来の構成単位が好ましく挙げられる。
【0088】
また、構成単位Cを形成するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、密着性の観点で好ましい。中でも、炭素数4~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが密着性の観点でより好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、及び、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが挙げられる。
【0089】
構成単位Cの含有量は、重合体A-1の全質量に対し、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。下限値としては、0質量%でもよいが、1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。上記範囲であると、解像度及び密着性がより向上する。
【0090】
重合体A-1が、構成単位Cとして、上記構成単位Bにおける酸基のエステルを有する構成単位を含むことも、現像液に対する溶解性、及び、上記ポジ型感光性樹脂層の物理物性を最適化する観点から好ましい。
中でも、重合体A-1は、構成単位Bとして、カルボン酸基を有する構成単位を含み、更に、カルボン酸エステル基を含む構成単位Cを共重合成分として含むことが好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸由来の構成単位Bと、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル又は(メタ)アクリル酸n-ブチル由来の構成単位(c)とを含む重合体がより好ましい。
以下、本開示における重合体A-1の好ましい例を挙げるが、本開示は以下の例示に限定されない。なお、下記例示化合物における構成単位の比率、重量平均分子量は、好ましい物性を得るために適宜選択される。
【0091】
【化8】

【0092】
-重合体A-1のガラス転移温度:Tg-
本開示における重合体A-1のガラス転移温度(Tg)は、転写性の観点、及び、上述の加熱工程における加熱温度を調節する観点から、90℃以下であることが好ましく、20℃以上60℃以下であることがより好ましく30℃以上50℃以下であることが更に好ましい。
【0093】
重合体のTgを、既述の好ましい範囲に調整する方法としては、例えば、目的とする重合体の各構成単位の単独重合体のTgと各構成単位の質量比より、FOX式を指針にして、目的とする重合体A-1のTgを制御することが可能である。
FOX式について
重合体に含まれる第1の構成単位の単独重合体のTgをTg1、第1の構成単位の共重合体における質量分率をW1とし、第2の構成単位の単独重合体のTgをTg2とし、第2の構成単位の共重合体における質量分率をW2としたときに、第1の構成単位と第2の構成単位とを含む共重合体のTg0(K)は、以下の式にしたがって推定することが可能である。
FOX式:1/Tg0=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)
既述のFOX式を用いて、共重合体に含まれる各構成単位の種類と質量分率を調整して、所望のTgを有する共重合体を得ることができる。
また、重合体の重量平均分子量を調整することにより、重合体のTgを調整することも可能である。
【0094】
-重合体A-1の酸価-
重合体A-1の酸価は、現像性及び転写性の観点から、0mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることがより好ましい。
【0095】
本開示における重合体の酸価は、重合体1gあたりの酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムの質量を表したものである。具体的には、測定サンプルをテトラヒドロフラン/水=9/1混合溶媒に溶解し、電位差滴定装置(商品名:AT-510、京都電子工業(株)製)を用いて、得られた溶液を25℃において、0.1M水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定する。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点として、次式により酸価を算出する。
A=56.11×Vs×0.1×f/w
A:酸価(mgKOH/g)
Vs:滴定に要した0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液の使用量(mL)
f:0.1mol/l水酸化ナトリウム水溶液の力価
w:測定サンプルの質量(g)(固形分換算)
【0096】
-重合体A-1の分子量:Mw-
重合体A-1の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、60,000以下であることが好ましい。重合体A-1の重量平均分子量が60,000以下であることで、ポジ型感光性樹脂層の溶融粘度を低く抑え、上記基板と貼り合わせる際において低温(例えば130℃以下)での貼り合わせを実現することができる。
また、重合体A-1の重量平均分子量は、2,000~60,000であることが好ましく、3,000~50,000であることがより好ましい。
【0097】
重合体A-1の数平均分子量と重量平均分子量との比(分散度)は、1.0~5.0が好ましく、1.05~3.5がより好ましい。
【0098】
-重合体A-1の製造方法-
重合体A-1の製造方法(合成法)は特に限定されないが、一例を挙げると、式Aで表される構成単位Aを形成するための重合性単量体、酸基を有する構成単位Bを形成するための重合性単量体、更に必要に応じて、その他の構成単位Cを形成するための重合性単量体を含む有機溶剤中、重合開始剤を用いて重合することにより合成することができる。また、いわゆる高分子反応で合成することもできる。
【0099】
本開示における上記ポジ型感光性樹脂層は、上記基板に対して良好な密着性を発現させる観点から、ポジ型感光性樹脂層の全固形分に対し、上記重合体成分を50質量%~99.9質量%の割合で含むことが好ましく、70質量%~98質量%の割合で含むことがより好ましい。
また、上記ポジ型感光性樹脂層は、上記基板に対して良好な密着性を発現させる観点から、ポジ型感光性樹脂層の全固形分に対し、上記重合体A-1を50質量%~99.9質量%の割合で含むことが好ましく、70質量%~98質量%の割合で含むことがより好ましい。
【0100】
〔他の重合体〕
上記ポジ型感光性樹脂層は、重合体成分として、重合体A-1に加え、本開示に係る感光性転写材料の効果を損なわない範囲において、式Aで示される構成単位(a)を含まない重合体(「他の重合体」と称する場合がある。)を更に含んでいてもよい。上記ポジ型感光性樹脂層が他の重合体を含む場合、他の重合体の配合量は、全重合体成分中、50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。
【0101】
上記ポジ型感光性樹脂層は、重合体A-1に加え、他の重合体を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。
他の重合体として、例えばポリヒドロキシスチレンを用いることができ、市販されている、SMA 1000P、SMA 2000P、SMA 3000P、SMA 1440F、SMA 17352P、SMA 2625P、及び、SMA 3840F(以上、サートマー社製)、ARUFON UC-3000、ARUFON UC-3510、ARUFON UC-3900、ARUFON UC-3910、ARUFON UC-3920、及び、ARUFON UC-3080(以上、東亞合成(株)製)、並びに、Joncryl 690、Joncryl 678、Joncryl 67、及び、Joncryl 586(以上、BASF社製)等を用いることもできる。
【0102】
〔光酸発生剤〕
上記ポジ型感光性樹脂層は、光酸発生剤を含有することが好ましい。
本開示で使用される光酸発生剤としては、紫外線、遠紫外線、X線、及び、荷電粒子線等の放射線を照射することにより酸を発生することができる化合物である。
本開示で使用される光酸発生剤としては、波長300nm以上、好ましくは波長300nm~450nmの活性光線に感応し、酸を発生する化合物が好ましいが、その化学構造は制限されない。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない光酸発生剤についても、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線に感応し、酸を発生する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく用いることができる。
本開示で使用される光酸発生剤としては、pKaが4以下の酸を発生する光酸発生剤が好ましく、pKaが3以下の酸を発生する光酸発生剤がより好ましく、pKaが2以下の酸を発生する光酸発生剤が特に好ましい。pKaの下限値は特に定めないが、例えば、-10.0以上であることが好ましい。
【0103】
光酸発生剤としては、イオン性光酸発生剤と、非イオン性光酸発生剤とを挙げることができる。
また、光酸発生剤としては、感度及び解像度の観点から、後述するオニウム塩化合物、及び、後述するオキシムスルホネート化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、オキシムスルホネート化合物を含むことがより好ましい。
【0104】
非イオン性光酸発生剤の例として、トリクロロメチル-s-トリアジン類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及び、オキシムスルホネート化合物などを挙げることができる。これらの中でも、感度、解像度、及び、密着性の観点から、光酸発生剤がオキシムスルホネート化合物であることが好ましい。これら光酸発生剤は、1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。トリクロロメチル-s-トリアジン類、及び、ジアゾメタン誘導体の具体例としては、特開2011-221494号公報の段落0083~段落0088に記載の化合物が例示できる。
【0105】
オキシムスルホネート化合物、すなわち、オキシムスルホネート構造を有する化合物としては、下記式(B1)で表されるオキシムスルホネート構造を有する化合物が好ましい。
【0106】
【化9】

【0107】
式(B1)中、R21は、アルキル基又はアリール基を表し、*は他の原子又は他の基との結合部位を表す。
【0108】
式(B1)で表されるオキシムスルホネート構造を有する化合物は、いずれの基も置換されてもよく、R21におけるアルキル基は、直鎖状であっても、分岐構造を有していても、環構造を有していてもよい。許容される置換基は以下に説明する。
21のアルキル基としては、炭素数1~10の、直鎖状又は分岐状アルキル基が好ましい。R21のアルキル基は、炭素数6~11のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、シクロアルキル基(7,7-ジメチル-2-オキソノルボルニル基などの有橋式脂環基を含む、好ましくはビシクロアルキル基等)、又は、ハロゲン原子で置換されてもよい。
21のアリール基としては、炭素数6~18のアリール基が好ましく、フェニル基又はナフチル基がより好ましい。R21のアリール基は、炭素数1~4のアルキル基、アルコキシ基及びハロゲン原子よりなる群から選ばれた1つ以上の基で置換されてもよい。
【0109】
式(B1)で表されるオキシムスルホネート構造を有する化合物は、特開2014-85643号公報の段落0078~0111に記載のオキシムスルホネート化合物であることも好ましい。
【0110】
イオン性光酸発生剤の例として、ジアリールヨードニウム塩類及びトリアリールスルホニウム塩類等のオニウム塩化合物、第四級アンモニウム塩類等を挙げることができる。これらのうち、オニウム塩化合物が好ましく、トリアリールスルホニウム塩類及びジアリールヨードニウム塩類が特に好ましい。
【0111】
イオン性光酸発生剤としては特開2014-85643号公報の段落0114~0133に記載のイオン性光酸発生剤も好ましく用いることができる。
【0112】
光酸発生剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記ポジ型感光性樹脂層における光酸発生剤の含有量は、感度、解像度の観点から、上記ポジ型感光性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%~10質量%であることが好ましく、0.5質量%~5質量%であることがより好ましい。
【0113】
〔溶剤〕
上記ポジ型感光性樹脂層は、溶剤を含んでいてもよい。
また、上記ポジ型感光性樹脂層を形成する感光性樹脂組成物は、上記ポジ型感光性樹脂層を容易に形成するため、一旦溶剤を含有させて感光性樹脂組成物の粘度を調節し、溶剤を含む感光性樹脂組成物を塗布及び乾燥して、上記ポジ型感光性樹脂層を好適に形成することができる。
本開示に使用される溶剤としては、公知の溶剤を用いることができる。溶剤としては、エチレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコールジアルキルエーテル類、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノアルキルエーテル類、プロピレングリコールジアルキルエーテル類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジエチレングリコールジアルキルエーテル類、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル類、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、エステル類、ケトン類、アミド類、及び、ラクトン類等が例示できる。また、溶剤の具体例としては特開2011-221494号公報の段落0174~段落0178に記載の溶剤も挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0114】
また、既述の溶剤に、更に必要に応じて、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1-オクタノール、1-ノナール、ベンジルアルコール、アニソール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、炭酸エチレン、又は、炭酸プロピレン等の溶剤を添加することもできる。
溶剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上を使用してもよい。
本開示に用いることができる溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種を併用することがより好ましい。溶剤を2種以上使用する場合には、例えば、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類とジアルキルエーテル類との併用、ジアセテート類とジエチレングリコールジアルキルエーテル類との併用、又は、エステル類とブチレングリコールアルキルエーテルアセテート類との併用が好ましい。
【0115】
また、溶剤としては、沸点130℃以上160℃未満の溶剤、沸点160℃以上の溶剤、又は、これらの混合物であることが好ましい。
沸点130℃以上160℃未満の溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(沸点146℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点158℃)、プロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル(沸点155℃)、及び、プロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル(沸点131℃)が例示できる。
沸点160℃以上の溶剤としては、3-エトキシプロピオン酸エチル(沸点170℃)、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(沸点176℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート(沸点160℃)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(沸点213℃)、3-メトキシブチルエーテルアセテート(沸点171℃)、ジエチレングリコールジエチエルエーテル(沸点189℃)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(沸点162℃)、プロピレングリコールジアセテート(沸点190℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(沸点220℃)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(沸点175℃)、及び、1,3-ブチレングリコールジアセテート(沸点232℃)が例示できる。
【0116】
感光性樹脂組成物を塗布する際における溶剤の含有量は、感光性樹脂組成物中の全固形分100質量部あたり、50質量部~1,900質量部であることが好ましく、100質量部~900質量部であることがより好ましい。
また、上記ポジ型感光性樹脂層における溶剤の含有量は、上記ポジ型感光性樹脂層の全質量に対し、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0117】
〔その他の添加剤〕
本開示における上記ポジ型感光性樹脂層は、重合体A-1及び光酸発生剤に加え、必要に応じて公知の添加剤を含むことができる。
【0118】
-可塑剤-
上記ポジ型感光性樹脂層は、可塑性を改良する目的で、可塑剤を含有してもよい。
上記可塑剤は、重合体A-1よりも重量平均分子量が小さいことが好ましい。
可塑剤の重量平均分子量は、可塑性付与の観点から500以上10,000未満が好ましく、700以上5,000未満がより好ましく、800以上4,000未満が更に好ましい。
可塑剤は、重合体A-1と相溶して可塑性を発現する化合物であれば特に限定されないが、可塑性付与の観点から、可塑剤は、分子中にアルキレンオキシ基を有することが好ましい。可塑剤に含まれるアルキレンオキシ基は下記構造を有することが好ましい。
【0119】
【化10】

【0120】
上記式中、Rは炭素数2~8のアルキル基であり、nは1~50の整数を表し、*は他の原子との結合部位を表す。
【0121】
なお、例えば、上記構造のアルキレンオキシ基を有する化合物(「化合物X」とする。)であっても、化合物X、重合体A-1及び光酸発生剤を混合して得た化学増幅ポジ型感光性樹脂組成物が、化合物Xを含まずに形成した化学増幅ポジ型感光性樹脂組成物に比べて可塑性が向上しない場合は、本開示における可塑剤には該当しない。例えば、任意に添加される界面活性剤は、一般に感光性樹脂組成物に可塑性をもたらす量で使用されることはないため、本明細書における可塑剤には該当しない。
【0122】
上記可塑剤としては、例えば、下記構造を有する化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0123】
【化11】

【0124】
可塑剤の含有量は、密着性の観点から、上記ポジ型感光性樹脂層の全質量に対して、1質量%~50質量%であることが好ましく、2質量%~20質量%であることがより好ましい。
上記ポジ型感光性樹脂層は、可塑剤を1種のみを含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0125】
-増感剤-
上記ポジ型感光性樹脂層は、増感剤を更に含むことができる。
増感剤は、活性光線を吸収して電子励起状態となる。電子励起状態となった増感剤は、光酸発生剤と接触して、電子移動、エネルギー移動、及び、発熱などの作用が生じる。これにより光酸発生剤は化学変化を起こして分解し、酸を生成する。
増感剤を含有させることで、露光感度を向上させることができる。
【0126】
増感剤としては、アントラセン誘導体、アクリドン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ベーススチリル誘導体、及び、ジスチリルベンゼン誘導体よりなる群からえらばれた化合物が好ましく、アントラセン誘導体がより好ましい。
アントラセン誘導体としては、アントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジクロロアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9-ヒドロキシメチルアントラセン、9-ブロモアントラセン、9-クロロアントラセン、9,10-ジブロモアントラセン、2-エチルアントラセン、又は、9,10-ジメトキシアントラセンが好ましい。
【0127】
上記増感剤としては、国際公開第2015/093271号の段落0139~段落0141に記載の化合物を挙げることができる。
【0128】
増感剤の含有量は、上記ポジ型感光性樹脂層の全質量に対して、0質量%~10質量%であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましい。
【0129】
-塩基性化合物-
上記ポジ型感光性樹脂層は、塩基性化合物を更に含むことが好ましい。
塩基性化合物としては、化学増幅レジストで用いられる塩基性化合物の中から任意に選択して使用することができる。例えば、脂肪族アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、第四級アンモニウムヒドロキシド、及び、カルボン酸の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。これらの具体例としては、特開2011-221494号公報の段落0204~段落0207に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0130】
具体的には、脂肪族アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、ジ-n-ペンチルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、及び、ジシクロヘキシルメチルアミンなどが挙げられる。
芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、ベンジルアミン、N,N-ジメチルアニリン、及び、ジフェニルアミンなどが挙げられる。
複素環式アミンとしては、例えば、ピリジン、2-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2-エチルピリジン、4-エチルピリジン、2-フェニルピリジン、4-フェニルピリジン、N-メチル-4-フェニルピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2-フェニルベンズイミダゾール、2,4,5-トリフェニルイミダゾール、ニコチン、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、キノリン、8-オキシキノリン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、4-メチルモルホリン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン、及び、1,8-ジアザビシクロ[5.3.0]-7-ウンデセンなどが挙げられる。
第四級アンモニウムヒドロキシドとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ-n-ブチルアンモニウムヒドロキシド、及び、テトラ-n-ヘキシルアンモニウムヒドロキシドなどが挙げられる。
カルボン酸の第四級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラメチルアンモニウムベンゾエート、テトラ-n-ブチルアンモニウムアセテート、及び、テトラ-n-ブチルアンモニウムベンゾエートなどが挙げられる。
【0131】
上記塩基性化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
塩基性化合物の含有量は、上記ポジ型感光性樹脂層の全質量に対して、0.001質量%~5質量%であることが好ましく、0.005質量%~3質量%であることがより好ましい。
【0132】
-ヘテロ環状化合物-
本開示におけるポジ型感光性樹脂層は、ヘテロ環状化合物を含むことができる。
本開示におけるヘテロ環状化合物には、特に制限はない。例えば、以下に述べる分子内にエポキシ基又はオキセタニル基を有する化合物、アルコキシメチル基含有ヘテロ環状化合物、その他、各種環状エーテル、環状エステル(ラクトン)などの含酸素モノマー、環状アミン、オキサゾリンといった含窒素モノマー、更には珪素、硫黄、リン等を有するヘテロ環モノマー等を添加することができる。
【0133】
ポジ型感光性樹脂層中におけるヘテロ環状化合物の添加量は、ヘテロ環状化合物を添加する場合には、上記ポジ型感光性樹脂層の全質量に対し、0.01質量%~50質量%であることが好ましく、0.1質量%~10質量%であることがより好ましく、1質量%~5質量%であることが更に好ましい。上記範囲であると、密着性及びエッチング耐性の観点で好ましい。ヘテロ環状化合物は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用することもできる。
【0134】
分子内にエポキシ基を有する化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0135】
分子内にエポキシ基を有する化合物は市販品として入手できる。例えば、JER828、JER1007、JER157S70(三菱ケミカル(株)製)、JER157S65((株)三菱ケミカルホールディングス製)など、特開2011-221494号公報の段落0189に記載の市販品などが挙げられる。
その他の市販品として、ADEKA RESIN EP-4000S、同EP-4003S、同EP-4010S、同EP-4011S(以上、(株)ADEKA製)、NC-2000、NC-3000、NC-7300、XD-1000、EPPN-501、EPPN-502(以上、(株)ADEKA製)、デナコールEX-611、EX-612、EX-614、EX-614B、EX-622、EX-512、EX-521、EX-411、EX-421、EX-313、EX-314、EX-321、EX-211、EX-212、EX-810、EX-811、EX-850、EX-851、EX-821、EX-830、EX-832、EX-841、EX-911、EX-941、EX-920、EX-931、EX-212L、EX-214L、EX-216L、EX-321L、EX-850L、DLC-201、DLC-203、DLC-204、DLC-205、DLC-206、DLC-301、DLC-402、EX-111,EX-121、EX-141、EX-145、EX-146、EX-147、EX-171、EX-192(以上ナガセケムテック製)、YH-300、YH-301、YH-302、YH-315、YH-324、YH-325(以上、新日鐵住金化学(株)製)セロキサイド2021P、2081、2000、3000、EHPE3150、エポリードGT400、セルビナースB0134、B0177((株)ダイセル製)などが挙げられる。
分子内にエポキシ基を有する化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0136】
分子内にエポキシ基を有する化合物の中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂がより好ましく挙げられ、脂肪族エポキシ樹脂が特に好ましく挙げられる。
【0137】
分子内にオキセタニル基を有する化合物の具体例としては、アロンオキセタンOXT-201、OXT-211、OXT-212、OXT-213、OXT-121、OXT-221、OX-SQ、PNOX(以上、東亞合成(株)製)を用いることができる。
【0138】
また、オキセタニル基を含む化合物は、単独で又はエポキシ基を含む化合物と混合して使用することが好ましい。
【0139】
本開示におけるポジ型感光性樹脂層においては、ヘテロ環状化合物がエポキシ基を有する化合物であることが、エッチング耐性及び線幅安定性の観点から好ましい。
【0140】
-アルコキシシラン化合物-
上記ポジ型感光性樹脂層は、アルコキシシラン化合物を含有してもよい。アルコキシシラン化合物としては、トリアルコキシシラン化合物が好ましく挙げられる。
アルコキシシラン化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリアコキシシラン、γ-グリシドキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリアルコキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルアルキルジアルコキシシラン、γ-クロロプロピルトリアルコキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシランが挙げられる。これらのうち、γ-グリシドキシプロピルトリアルコキシシランやγ-メタクリロキシプロピルトリアルコキシシランがより好ましく、γ-グリシドキシプロピルトリアルコキシシランが更に好ましく、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。これらは1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0141】
-界面活性剤-
上記ポジ型感光性樹脂層は、膜厚均一性の観点から界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系(非イオン系)、又は、両性のいずれでも使用することができるが、好ましい界面活性剤はノニオン界面活性剤である。
ノニオン系界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレン高級アルキルエーテル類、ポリオキシエチレン高級アルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレングリコールの高級脂肪酸ジエステル類、シリコーン系、フッ素系界面活性剤を挙げることができる。また、以下商品名で、KP(信越化学工業(株)製)、ポリフロー(共栄社化学(株)製)、エフトップ(JEMCO社製)、メガファック(登録商標)(DIC(株)製)、フロラード(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード、サーフロン(登録商標)(旭硝子(株)製)、PolyFox(OMNOVA社製)、及び、SH-8400(東レ・ダウコーニング(株)製)等の各シリーズを挙げることができる。
また、界面活性剤として、下記式I-1で表される構成単位A及び構成単位Bを含み、テトラヒドロフラン(THF)を溶剤とした場合のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が1,000以上10,000以下である共重合体を好ましい例として挙げることができる。
【0142】
【化12】

【0143】
式(I-1)中、R401及びR403はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、R402は炭素数1以上4以下の直鎖アルキレン基を表し、R404は水素原子又は炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、Lは炭素数3以上6以下のアルキレン基を表し、p及びqは重合比を表す質量百分率であり、pは10質量%以上80質量%以下の数値を表し、qは20質量%以上90質量%以下の数値を表し、rは1以上18以下の整数を表し、sは1以上10以下の整数を表し、*は他の構造との結合部位を表す。
【0144】
Lは、下記式(I-2)で表される分岐アルキレン基であることが好ましい。式(I-2)におけるR405は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、相溶性と被塗布面に対する濡れ性の点で、炭素数1以上3以下のアルキル基が好ましく、炭素数2又は3のアルキル基がより好ましい。pとqとの和(p+q)は、p+q=100、すなわち、100質量%であることが好ましい。
【0145】
【化13】

【0146】
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1,500以上5,000以下がより好ましい。
【0147】
その他、特許第4502784号公報の段落0017、特開2009-237362号公報の段落0060~段落0071に記載の界面活性剤も用いることができる。
【0148】
界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の添加量は、上記ポジ型感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましく、0.001質量%~10質量%であることがより好ましく、0.01質量%~3質量%であることが更に好ましい。
【0149】
-その他の成分-
本開示におけるポジ型感光性樹脂層には、金属酸化物粒子、酸化防止剤、分散剤、酸増殖剤、現像促進剤、導電性繊維、着色剤、熱ラジカル重合開始剤、熱酸発生剤、紫外線吸収剤、増粘剤、架橋剤、及び、有機又は無機の沈殿防止剤などの公知の添加剤を更に加えることができる。
その他の成分の好ましい態様については特開2014-85643号公報の段落0165~段落0184にそれぞれ記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0150】
〔ポジ型感光性樹脂層の形成方法〕
各成分、及び、溶剤を任意の割合でかつ任意の方法で混合し、撹拌溶解してポジ型感光性樹脂層を形成するための感光性樹脂組成物を調製することができる。例えば、各成分を、それぞれ予め溶剤に溶解させた溶液とした後、得られた溶液を所定の割合で混合して組成物を調製することもできる。以上の如くして調製した組成物は、孔径0.2μmのフィルター等を用いてろ過した後に、使用に供することもできる。
上記感光性樹脂組成物を用いたポジ型感光性樹脂層の形成方法の詳細については、後述する本開示に係る感光性転写材料の製造方法において説明する。
【0151】
<その他の層>
本開示に係る感光性転写材料は、上記ポジ型感光性樹脂層以外の層(以下、「その他の層」と称することがある)を有していてもよい。その他の層としては、コントラストエンハンスメント層、カバーフィルム、上記中間層と上記第二の中間層の間に含まれる他の中間層、公知の紫外線吸収剤を含む層、熱可塑性樹脂層、密着層等を挙げることができる。
上記他の中間層としては、上記中間層又は上記第二の中間層と同様の層が挙げられる。
【0152】
-カバーフィルム-
また、本開示に係る感光性転写材料は、カバーフィルムを有してもよい。
カバーフィルムとしては、樹脂フィルム、紙等が挙げられ、強度及び可撓性等の観点から、樹脂フィルムが特に好ましい。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。
【0153】
カバーフィルムの厚さは特に限定されず、例えば、1μm~2mmのものが好ましく挙げられる。
【0154】
-熱可塑性樹脂層、カバーフィルム等-
本開示に係る感光性転写材料は、転写性の観点から、上記仮支持体と上記中間層との間に、熱可塑性樹脂層を更に有することが好ましい。
上記熱可塑性樹脂層は、仮支持体の剥離時に、中間層と熱可塑性樹脂層との間で剥離することが好ましい。すなわち、熱可塑性樹脂層は、仮支持体と共に剥離されることが好ましい。
また、本開示に係る感光性転写材料は、上記ポジ型感光性樹脂層を保護する目的でカバーフィルムを有していてもよい。
熱可塑性樹脂層の好ましい態様については特開2014-85643号公報の段落0189~段落0193、他の層の好ましい態様については特開2014-85643号公報の段落0194~段落0196にそれぞれ記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
中でも、転写性の観点から、熱可塑性樹脂層が、アクリル樹脂及びスチレン/アクリル共重合体よりなる群から選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。
【0155】
本開示に係る感光性転写材料が、熱可塑性樹脂層等のその他の層を有する場合、特開2006-259138号公報の段落0094~段落0098に記載の感光性転写材料の作製方法に準じて作製することができる。
例えば、熱可塑性樹脂層を有する本開示に係る感光性転写材料を作製する場合には、仮支持体上に、熱可塑性の有機高分子と添加剤とを溶解した溶解液(熱可塑性樹脂層用塗布液)を塗布し、乾燥させて熱可塑性樹脂層を設けた後、得られた熱可塑性樹脂層上に熱可塑性樹脂層を溶解しない溶剤に樹脂及び添加剤を加えて調製した調製液(中間層組成物)を塗布し、乾燥させて中間層を積層する。形成した中間層上に、更に、中間層を溶解しない溶剤を用いて調製した感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥させてポジ型感光性樹脂層を積層することによって、本開示に係る感光性転写材料を好適に作製することができる。
【0156】
-コントラストエンハンスメント層-
本開示に係る感光性転写材料は、上記ポジ型感光性樹脂層に加え、コントラストエンハンスメント層を有することができる。
コントラストエンハンスメント層は、中間層とポジ型感光性樹脂層との間に有することが好ましい。
コントラストエンハンスメント層(Contrast Enhancement Layer;CEL)は、露光前には露光波長に対する吸収が大きいが、露光されるに伴って次第に吸収が小さくなる、すなわち、光の透過率が高くなる材料(光消色性色素成分と称する)を含有する層である。光消色性色素成分としては、ジアゾニウム塩、スチルバゾリウム塩、アリールニトロソ塩類等が知られている。被膜形成成分としては、フェノール系樹脂等が用いられる。
その他、コントラストエンハンスメント層としては、特開平6-97065号公報の段落0004~段落0051、特開平6-332167号公報の段落0012~段落0055、フォトポリマーハンドブック,フォトポリマー懇話会編,工業調査会(1989)、フォトポリマー・テクノロジー,山岡、永松編,(株)日刊工業新聞社(1988)に記載の材料を用いることができる。
【0157】
-紫外線吸収剤を含む層-
本開示に係る感光性転写材料は、紫外線吸収剤を含む層(紫外線吸収層)を有してもよい。
紫外線吸収層は、ポジ型感光性樹脂層の、中間層とは反対の側に含まれることが好ましい。例えば、カバーフィルムとポジ型感光性樹脂層との間に紫外線吸収層を有する態様が挙げられる。
このような紫外線吸収層を有する感光性転写材料を基材に転写した場合、基材とポジ型感光性樹脂層との間に紫外線吸収層が存在することとなる。
このような態様によれば、基材による露光光の反射が低減され、上述の反射波と入射波との干渉により生じた定在波による露光の影響が低減されると考えられる。
紫外線吸収剤としては、特に制限なく公知の紫外線吸収剤が使用可能であり、サリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、ニッケルキレート系、ヒンダードアミン系等の化合物、これらの構造を含むポリマー、又は、金属酸化物等の無機紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0158】
-密着層-
本開示に係る感光性転写材料は、更にその他の層をカバーフィルムとポジ型感光性樹脂層との間に密着層を有していてもよい。
密着層を有することにより、基材等に転写した場合の密着性が良好となる。
【0159】
(感光性転写材料の製造方法)
本開示に係る感光性転写材料の製造方法の第一の態様は、
仮支持体上に中間層形成用組成物を塗布する工程、及び、
上記中間層形成用組成物に感光性樹脂組成物を塗布する工程を含む。
また、本開示に係る感光性転写材料の製造方法の第二の態様は、
カバーフィルム上に感光性樹脂組成物を塗布する工程、
上記感光性樹脂組成物上に中間層形成用組成物を塗布する工程、及び、
上記中間層形成用組成物上に仮支持体を貼り付ける工程を含む。
上記第一の態様及び上記第二の態様のいずれの方法によっても、本開示に係る感光性転写材料が得られる。
【0160】
<第一の態様>
〔中間層塗布工程〕
第一の態様における仮支持体上に中間層形成用組成物を塗布する工程(中間層塗布工程)は、仮支持体上に上述の中間層形成用組成物を塗布する工程である。
塗布方法は、特に限定されず、スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布、インクジェット塗布などの公知の方法で塗布することができる。
上記塗布の後、必要に応じて中間層形成用組成物を乾燥してもよい。乾燥方法としては、特に限定されず、風又は温風による乾燥、加熱による乾燥等が挙げられる。
また、中間層塗布工程においては、仮支持体と接するように中間層形成用組成物を塗布することが好ましい。
【0161】
〔ポジ型感光性樹脂層塗布工程〕
第一の態様における上記中間層形成用組成物に感光性樹脂組成物を塗布する工程(ポジ型感光性樹脂層塗布工程)は、上記塗布された中間層形成用組成物上に上述の感光性樹脂組成物を塗布する工程である。
塗布方法は、特に限定されず、上述の中間層形成用塗布液の塗布方法と同様の方法で塗布することができる。
上記塗布の後、必要に応じて感光性樹脂組成物を乾燥してもよい。乾燥方法としては、特に限定されず、風又は温風による乾燥、加熱による乾燥等が挙げられる。
また、ポジ型感光性樹脂層塗布工程においては、中間層形成用組成物上に第二の中間層形成用組成物がある場合には、第二の中間層形成用組成物と接するように感光性樹脂組成物を塗布することが好ましい。
【0162】
〔第二の中間層塗布工程〕
上記第一の態様は、第二の中間層形成用組成物を、中間層形成組成物上に塗布する工程(第二の中間層塗布工程)を更に含んでもよい。第二の中間層塗布工程は、上記塗布された中間層形成用組成物上に上述の第二の中間層形成用組成物を塗布する工程である。
塗布方法は、特に限定されず、上述の中間層形成用塗布液の塗布方法と同様の方法で塗布することができる。
上記塗布の後、必要に応じて第二の中間層形成用組成物を乾燥してもよい。乾燥方法としては、特に限定されず、風又は温風による乾燥、加熱による乾燥等が挙げられる。
また、第二の中間層塗布工程においては、上記中間層形成用組成物と接するように第二の中間層形成用組成物を塗布してもよいし、中間層形成用組成物上に他の層を形成するための組成物が塗布されている場合には、他の層を形成するための組成物と接するように第二の中間層形成用組成物を塗布してもよい。
【0163】
〔他の層塗布工程〕
上記第一の態様は、他の層の形成に用いられる組成物を塗布する工程(他の層塗布工程)を更に含んでもよい。
他の層としては、上記中間層と第二の中間層の間に形成される他の中間層、又は、ポジ型感光性樹脂層上に形成される公知の紫外線吸収剤を含む層等の層が挙げられる。
他の層の形成に用いられる組成物は、例えば、上記中間層形成用組成物上に、上記第二の中間層形成用組成物の塗布前に塗布される。また、上記感光性樹脂組成物上に他の層の形成に用いられる組成物を塗布してもよい。
塗布方法は、特に限定されず、上述の中間層形成用塗布液の塗布方法と同様の方法で塗布することができる。
上記塗布の後、必要に応じて他の層の形成に用いられる組成物を乾燥してもよい。乾燥方法としては、特に限定されず、風又は温風による乾燥、加熱による乾燥等が挙げられる。
【0164】
〔カバーフィルムを貼り付ける工程〕
上記第一の態様は、ポジ型感光性樹脂層側の最外層にカバーフィルムを貼り付ける工程を更に含んでもよい。
カバーフィルムの貼り付け方法としては、公知の方法が用いられればよく、例えば、公知のラミネート方法等が用いられる。
【0165】
<第二の態様>
〔ポジ型感光性樹脂層塗布工程〕
第二の態様における、カバーフィルム上に感光性樹脂組成物を塗布する工程(感光性樹脂層塗布工程)は、カバーフィルム上に上述の感光性樹脂組成物を塗布する工程である。
塗布方法は、特に限定されず、上述の第一の態様におけるポジ型感光性樹脂層塗布工程における塗布方法と同様の方法により塗布することができる。
上記塗布の後、必要に応じて感光性樹脂組成物を乾燥してもよい。乾燥方法としては、特に限定されず、風又は温風による乾燥、加熱による乾燥等が挙げられる。
また、ポジ型感光性樹脂層塗布工程においては、カバーフィルムと接するように感光性樹脂組成物を塗布してもよいし、カバーフィルム上に他の層の形成に用いられる組成物が塗布されている場合には、上記他の層の形成に用いられる組成物上に塗布してもよい。
【0166】
〔中間層塗布工程〕
第二の態様における上記感光性樹脂組成物上に中間層形成用組成物を塗布する工程(中間層塗布工程)は、上記塗布された感光性樹脂組成物上に上述の中間層形成用組成物を塗布する工程である。
塗布方法は、特に限定されず、上述の第一の態様の中間層塗布工程における塗布方法と同様の方法で塗布することができる。
上記塗布の後、必要に応じて中間層形成用組成物を乾燥してもよい。乾燥方法としては、特に限定されず、風又は温風による乾燥、加熱による乾燥等が挙げられる。
また、中間層塗布工程においては、感光性樹脂組成物上に第二の中間層形成用組成物がある場合には、第二の中間層形成用組成物上に中間層形成用組成物を塗布すればよい。
〔第二の中間層塗布工程〕
上記第二の態様は、第二の中間層形成用組成物を、感光性樹脂組成物上に塗布する工程(第二の中間層塗布工程)を更に含んでもよい。第二の中間層塗布工程は、上記塗布された感光性樹脂組成物上に上述の第二の中間層形成用組成物を塗布する工程である。
塗布方法は、特に限定されず、上述の第一の態様の第二の中間層塗布工程における塗布方法と同様の方法で塗布することができる。
上記塗布の後、必要に応じて第二の中間層形成用組成物を乾燥してもよい。乾燥方法としては、特に限定されず、風又は温風による乾燥、加熱による乾燥等が挙げられる。
また、第二の中間層塗布工程においては、上記感光性樹脂組成物と接するように第二の中間層形成用組成物を塗布することが好ましい。
【0167】
〔他の層塗布工程〕
上記第二の態様は、他の層の形成に用いられる組成物を塗布する工程(他の層塗布工程)を更に含んでもよい。
他の層としては、上記中間層と第二の中間層の間に形成される他の中間層、又は、ポジ型感光性樹脂層上に形成される公知の紫外線吸収剤を含む層等が挙げられる。
他の層の形成に用いられる組成物は、例えば、上記第二の中間層形成用組成物上に、上記中間層形成用組成物の塗布前に塗布される。また、上記カバーフィルム上に、上記感光性樹脂組成物の塗布前に他の層の形成に用いられる組成物を塗布してもよい。
塗布方法は、特に限定されず、上述の第一の態様の他の層塗布工程における塗布方法と同様の方法で塗布することができる。
上記塗布の後、必要に応じて他の層の形成に用いられる組成物を乾燥してもよい。乾燥方法としては、特に限定されず、風又は温風による乾燥、加熱による乾燥等が挙げられる。
【0168】
〔仮支持体を貼り付ける工程〕
上記第二の態様は、中間層形成用組成物上に仮支持体を貼り付ける工程を含む。
仮支持体は、中間層形成用組成物と接するように貼り付けられることが好ましい。
仮支持体の貼り付け方法としては、公知の方法が用いられればよく、例えば、公知のラミネート方法等が用いられる。
【0169】
感光性転写材料は第一、第二の態様のいずれによっても製造することができる。中間層(又は、第二の中間層)とポジ型感光性樹脂層の密着性を向上させたい場合には、中間層(又は、第二の中間層)が粒子を含み、かつ、第一の態様とすることが好ましい。また、中間層と仮支持体の剥離性を向上させたい場合は中間層に粒子を含み、かつ第二の態様とすることが好ましい。
【0170】
(レジストパターンの製造方法、及び、回路配線の製造方法)
本開示に係るレジストパターンの製造方法は、特に制限はないが、
基板に対し、本開示に係る感光性転写材料の上記ポジ型感光性樹脂層側の最外層を上記基板に接触させて貼り合わせる工程と、
上記感光性転写材料の仮支持体を剥離する工程と、
仮支持体を剥離した感光性転写材料に対してフォトマスクを接触させて上記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
上記露光する工程後の上記ポジ型感光性樹脂層を現像してレジストパターンを形成する工程と
、をこの順に含むことが好ましい。
また、本開示に係る回路配線の製造方法は、本開示に係る感光性転写材料を用いた回路配線の製造方法であれば、特に制限はないが、
基板に対し、本開示に係る感光性転写材料の上記ポジ型感光性樹脂層側の最外層を上記基板に接触させて貼り合わせる工程と、
上記感光性転写材料の仮支持体を剥離する工程と、
仮支持体を剥離した感光性転写材料に対してフォトマスクを接触させて上記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程と、
上記ポジ型感光性樹脂層を現像してレジストパターンを形成する工程と、
上記レジストパターンが配置されていない領域における上記基板をエッチング処理する工程と、をこの順に含むことが好ましい。
なお、本開示における感光性転写材料における「ポジ型感光性樹脂層側の最外層」とは、仮支持体、中間層、及び、ポジ型感光性樹脂層をこの順で有している本開示に係る感光性転写材料における、仮支持体側の最外層ではなく、ポジ型感光性樹脂層側の最外層を意味している。また、「ポジ型感光性樹脂層側の最外層」とは、感光性転写材料がカバーフィルムを有する場合には、カバーフィルムの剥離後のポジ型感光性樹脂層側の最外層である。
また、上記支持体を「基材」ともいい、また、上記表面に導電性層を有する支持体を「基板」ともいう。
【0171】
従来、感光性樹脂層は感光システムの違いから、活性光線を照射した部分が像として残るネガ型と、活性光線を照射していない部分を像として残すポジ型とに分けられる。ポジ型では活性光線を照射することにより、例えば活性光線を照射されて酸を発生する感光剤などを用いて露光部の溶解性を高めるため、パターン露光時点では露光部及び未露光部がいずれも硬化せず、得られたパターン形状が不良であった場合には全面露光などによって基板を再利用(リワーク)できる。そのため、いわゆるリワーク性に優れる観点からは、ポジ型感光性樹脂層を用いることが好ましい。また、残存したポジ型感光性樹脂層を再度露光して異なるパターンを作製する、という技術はポジ型のポジ型感光性樹脂層でなければ実現できないため、ポジ型感光性樹脂層を用いる本開示に係るレジストパターンの製造方法、又は、本開示に係る回路配線の製造方法においては、露光を2回以上行う態様も好ましく挙げられる。
【0172】
<貼り合わせ工程>
本開示に係るレジストパターンの製造方法、又は、本開示に係る回路配線の製造方法は、基板に対し、本開示に係る感光性転写材料の上記仮支持体を上記ポジ型感光性樹脂層側の最外層を上記基板に接触させて貼り合わせる工程(貼り合わせ工程)を含むことが好ましい。
本開示に係る感光性転写材料が上記カバーフィルムを有する場合、貼り合わせ工程においては、カバーフィルムを剥離した後に貼り合わせが行われる。
剥離方法としては、特に制限はなく、公知の方法により剥離すればよい。例えば、仮支持体の一部を指又はピンセット等の器具を用いて把持して剥離する方法が挙げられる。
上記貼り合わせ工程においては、上記基板と、上記ポジ型感光性樹脂層側の最外層とが接触するように、基板と、必要に応じてカバーフィルムが剥離された感光性転写材料と、を圧着することが好ましい。上記態様によれば、露光及び現像後のパターン形成されたポジ型感光性樹脂層を、導電性層をエッチングする際のエッチングレジストとして好適に用いることができる。
基板とカバーフィルムが剥離された感光性転写材料とを圧着する方法としては、特に制限はなく、公知の転写方法、及び、ラミネート方法を用いることができる。
具体的には、上記感光性転写材料のポジ型感光性樹脂層側の最外層と導電性層が接するように基板と上記感光性転写材料とを重ね、ロール等による加圧、又は、加圧及び加熱することに行う方法が好ましく挙げられる。貼り合わせには、ラミネータ、真空ラミネータ、及び、より生産性を高めることができるオートカットラミネータ等の公知のラミネータを使用することができる。
上記貼り合わせ工程における圧着圧力及び温度は、特に制限はなく、貼り合せる支持体の表面の材質、例えば、導電性層及びポジ型感光性樹脂層の材質、搬送速度、並びに、使用する圧着機等に応じ、適宜設定することができる。また、感光性転写材料のポジ型感光性樹脂層上にカバーフィルムを有する場合は、ポジ型感光性樹脂層からカバーフィルムを除去した後、圧着すればよい。
上記基材が樹脂フィルムである場合、ロールツーロールでの圧着を行ってもよい。
【0173】
〔支持体(基材)〕
支持体上に導電性層が積層された基板は、支持体がガラス基材又はフィルム基材であることが好ましく、フィルム基材であることがより好ましい。本開示に係る回路配線の製造方法は、タッチパネル用配線である場合、支持体がシート状樹脂組成物であることが特に好ましい。
また、支持体は透明であることが好ましい。
支持体の屈折率は、1.50~1.52であることが好ましい。
支持体は、ガラス基材等の透光性基材で構成されていてもよく、コーニング社のゴリラガラスに代表される強化ガラスなどを用いることができる。また、上述の透明基材としては、特開2010-86684号公報、特開2010-152809号公報及び特開2010-257492号公報に用いられている材料を好ましく用いることができる。
基材としてフィルム基材を用いる場合は、光学的に歪みが少ない基材、及び、透明度が高い基材を用いることがより好ましく、具体的な素材には、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、シクロオレフィンポリマーをあげることができる。
【0174】
〔導電性層〕
支持体上に形成されている導電性層としては、一般的な配線又はタッチパネル配線に用いられる任意の導電性層を挙げることができる。
導電性層は支持体上に複数形成されていることも好ましい。
導電性層の材料としては、金属及び金属酸化物などを挙げることができる。
金属酸化物としては、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、SiO等を挙げることができる。金属としては、Al、Zn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mo等を挙げることができる。
【0175】
本開示に係るレジストパターンの製造方法、又は、本開示に係る回路配線の製造方法は、複数の導電性層のうち少なくとも一つの導電性層が金属酸化物を含むことが好ましい。
導電性層としては、静電容量型タッチパネルに用いられる視認部のセンサーに相当する電極パターン又は周辺取り出し部の配線であることが好ましい。
【0176】
〔基板〕
本開示に用いられる基板(配線形成用基板)は、基材の表面に導電性層を有する基板であることが好ましい。導電性層をパターンニングすることで配線を形成する。本例では、PETなどのフィルム基材に金属酸化物、金属などの複数の導電性層が設けられたものであることが好ましい。
【0177】
<仮支持体剥離工程>
本開示に係るレジストパターンの製造方法、又は、本開示に係る回路配線の製造方法は、上記感光性転写材料の仮支持体を剥離する工程(仮支持体剥離工程)を含むことが好ましい。
上記仮支持体剥離工程における仮支持体を剥離する方法は、特に制限はなく、公知の方法により剥離すればよい。
【0178】
<露光工程>
本開示に係るレジストパターンの製造方法、又は、本開示に係る回路配線の製造方法は、仮支持体を剥離した感光性転写材料に対してフォトマスクを接触させて上記ポジ型感光性樹脂層をパターン露光する工程(露光工程)を含むことが好ましい。
露光工程において、露光マスクは中間層に接触する。
露光マスクと中間層とを接触させて露光を行うことにより、ポジ型感光性樹脂層とマスクとの距離が小さくなるためパターンの解像度が向上する等の利点がある。
上記露光工程では、中間層及びポジ型感光性樹脂層が少なくとも形成された基材に対し、パターンを有するマスクを介して、活性光線を照射することが好ましい。
例えば、本工程において、ポジ型感光性樹脂層に含まれる光酸発生剤が分解し酸が発生し、発生した酸の触媒作用により、塗膜成分中に含まれる酸分解性基が加水分解されて、酸基、例えば、カルボキシ基又はフェノール性水酸基が生成する。
本開示において、マスクにおけるパターンの詳細な配置及び具体的サイズは、特に限定されない。本開示において製造される回路基板を有する入力装置を備えた表示装置(例えば、タッチパネル)の表示品質を高め、また、取り出し配線の占める面積をできるだけ小さくしたいことから、パターンの少なくとも一部(特にタッチパネルの電極パターン及び取り出し配線の部分)は、100μm以下の細線であることが好ましく、70μm以下の細線であることがより好ましい。
【0179】
活性光線としては、可視光、紫外光、及び、電子線が挙げられるが、可視光又は紫外光が好ましく、紫外線が特に好ましい。
活性光線による露光光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、発光ダイオード(LED)光源、エキシマレーザー発生装置などを用いることができ、g線(436nm)、i線(365nm)、h線(405nm)などの波長300nm以上450nm以下の波長を有する活性光線が好ましく使用できる。また、必要に応じて長波長カットフィルター、短波長カットフィルター、バンドパスフィルターのような分光フィルターを通して照射光を調整することもできる。
露光装置としては、ミラープロジェクションアライナー、ステッパー、スキャナー、プロキシミティ、コンタクト、マイクロレンズアレイ、レーザー露光など各種方式の露光機を用いることができる。
露光量は、使用するポジ型感光性樹脂層に応じ、適宜選択すればよいが、5mJ/cm~200mJ/cmであることが好ましく、10mJ/cm~100mJ/cmであることがより好ましい。
また、露光後にパターンの矩形性、直線性を向上させる目的で、現像前に熱処理を行うことも好ましい。いわゆるPEB(Post Exposure Bake)と呼ばれる工程により、露光時にポジ型感光性樹脂層中で生じた定在波によるパターンエッジの荒れを低減することが可能である。
【0180】
<現像工程>
本開示に係るレジストパターンの製造方法、又は、本開示に係る回路配線の製造方法は、上記ポジ型感光性樹脂層を現像してレジストパターンを形成する工程(現像工程)含むことが好ましい。
現像工程により、ポジ型感光性樹脂層における露光部が除去される。
上記現像工程における露光された上記ポジ型感光性樹脂層の現像は、現像液を用いて行うことができる。
現像液としては、上記ポジ型感光性樹脂層を現像することができれば特に制限はなく、例えば、特開平5-72724号公報に記載の現像液など、公知の現像液を使用することができる。なお、現像液は上記ポジ型感光性樹脂層の除去される部分が溶解型の現像挙動をする現像液が好ましい。現像液としては、アルカリ水溶液が好ましく、例えば、pKa=7~13の化合物を0.05mol/L(リットル)~5mol/Lの濃度で含むアルカリ水溶液がより好ましい。現像液は、更に、水と混和性を有する有機溶剤、界面活性剤等を含有してもよい。本開示において好適に用いられる現像液としては、例えば、国際公開第2015/093271号の段落0194に記載の現像液が挙げられる。
【0181】
現像方式としては、特に制限はなくパドル現像、シャワー現像、シャワー及びスピン現像、ディップ現像等のいずれでもよい。ここで、シャワー現像について説明すると、露光後のポジ型感光性樹脂層に現像液をシャワーにより吹き付けることにより、露光部分を除去することができる。また、現像の後に、洗浄剤などをシャワーにより吹き付け、ブラシなどで擦りながら、現像残渣を除去することが好ましい。現像液の液温度は20℃~40℃が好ましい。
また、露光後すぐ現像してもよいが、露光から現像までの時間が、露光から、0.5時間~数時間程度経過していてもよい。
また、本開示に係るレジストパターンの製造方法、又は、本開示に係る回路配線の製造方法は、現像後、水等により洗浄する工程、得られたレジストパターンを有する支持体を乾燥する工程等、公知の工程を含んでいてもよい。
【0182】
更に、現像して得られたレジストパターンを加熱処理するポストベーク工程を有していてもよい。
ポストベークの加熱は8.1kPa以上の環境下で行うことが好ましく、50.66kPa以上の環境下で行うことがより好ましい。一方、121.6kPa以下の環境下で行うことが好ましく、111.46kPa以下の環境下で行うことがより好ましく、101.3kPa以下の環境下で行うことが特に好ましい。
ポストベークの温度は、80℃~250℃であることが好ましく、110℃~170℃であることがより好ましく、130℃~150℃であることが特に好ましい。
ポストベークの時間は、1分間~30分間であることが好ましく、2分間~10分間であることがより好ましく、2分間~4分間であることが特に好ましい。
ポストベークは、空気環境下で行っても、窒素置換環境下で行ってもよい。
【0183】
本開示に係るレジストパターンの製造方法、又は、本開示に係る回路配線の製造方法における各工程時における上記支持体の搬送速度は、特に制限はないが、露光時を除いて、0.5m/min~10m/minであることが好ましく、露光時を除いて、2.0m/min~8.0m/minであることがより好ましい。
【0184】
<エッチング工程>
本開示に係る回路配線の製造方法は、上記レジストパターンが配置されていない領域における上記基板をエッチング処理する工程(エッチング工程)を含むことが好ましい。
上記エッチング工程では、上記現像工程により上記ポジ型感光性樹脂層から形成された上記パターンを、エッチングレジストとして使用し、上記導電性層のエッチング処理を行う。
上記導電性層のエッチングは、特開2010-152155号公報の段落0048~段落0054等に記載の方法、公知のプラズマエッチング等のドライエッチングによる方法など、公知の方法でエッチングを適用することができる。
例えば、エッチングの方法としては、一般的に行われている、エッチング液に浸漬するウェットエッチング法が挙げられる。ウェットエッチングに用いられるエッチング液は、エッチングの対象に合わせて酸性タイプ又はアルカリ性タイプのエッチング液を適宜選択すればよい。
酸性タイプのエッチング液としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、フッ酸、シュウ酸、又は、リン酸等の酸性成分単独の水溶液、酸性成分と塩化第2鉄、フッ化アンモニウム、又は、過マンガン酸カリウム等の塩の混合水溶液等が例示される。酸性成分は、複数の酸性成分を組み合わせた成分を使用してもよい。
アルカリ性タイプのエッチング液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、有機アミン、又は、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドのような有機アミンの塩等のアルカリ成分単独の水溶液、アルカリ成分と過マンガン酸カリウム等の塩の混合水溶液等が例示される。アルカリ成分は、複数のアルカリ成分を組み合わせた成分を使用してもよい。
【0185】
エッチング液の温度は特に限定されないが、45℃以下であることが好ましい。本開示において、エッチングマスク(エッチングパターン)として使用されるパターンは、45℃以下の温度域における酸性及びアルカリ性のエッチング液に対して特に優れた耐性を発揮することが好ましい。したがって、エッチング工程中に上記パターンが剥離することが防止され、上記パターンの存在しない部分が選択的にエッチングされることになる。
【0186】
上記エッチング工程後、工程ラインの汚染を防ぐために、必要に応じて、エッチングされた上記導電性層を有する支持体を洗浄する工程(洗浄工程)、及び、エッチングされた上記導電性層を有する支持体を乾燥する工程(乾燥工程)を行ってもよい。洗浄工程については、例えば常温(10℃~35℃)で純水により10秒~300秒間基板を洗浄することが挙げられる。乾燥工程については、例えばエアブローを使用し、エアブロー圧(好ましくは0.1kg/cm~5kg/cm程度)を適宜調整して乾燥を行えばよい。
【0187】
<エッチングレジスト剥離工程>
本開示に係る回路配線の製造方法は、上記エッチング工程の後に、上記レジストパターンを剥離液を用いて剥離する工程(エッチングレジスト剥離工程)を含むことが好ましい。
上記エッチング工程の終了後、パターン形成された上記ポジ型感光性樹脂層が残存している。上記ポジ型感光性樹脂層が不要であれば、残存する全ての上記ポジ型感光性樹脂層を除去すればよい。
剥離液を用いて剥離する方法としては、例えば、好ましくは30℃~80℃、より好ましくは50℃~80℃にて撹拌中の剥離液に上記ポジ型感光性樹脂層(レジストパターン)などを有する基材を5分~30分間浸漬する方法が挙げられる。
剥離液としては、例えば、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム等の無機アルカリ成分、又は、第三級アミン若しくは第四級アンモニウム塩等の有機アルカリ成分を、水、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、又は、これらの混合溶液に溶解させた剥離液が挙げられる。剥離液を使用し、スプレー法、シャワー法、又は、パドル法等により剥離してもよい。
【0188】
また、本開示に係る回路配線の製造方法は、必要に応じ、露光工程、現像工程及びエッチング工程を2回以上繰り返してもよい。
本開示における露光工程、現像工程及びその他の工程の例としては、特開2006-23696号公報の段落0035~段落0051に記載の方法を、本開示においても好適に用いることができる。
【0189】
本開示に係るレジストパターンの製造方法、又は、本開示に係る回路配線の製造方法は、他の任意の工程を含んでもよい。例えば、以下のような工程が挙げられるが、これらの工程に限定されない。
【0190】
<可視光線反射率を低下させる工程>
本開示に係る回路配線の製造方法は、導電性層の表面、例えば、支持体上に有する導電性層の一部又は全ての表面の可視光線反射率を低下させる処理をする工程を含むことが可能である。
可視光線反射率を低下させる処理としては、酸化処理などを挙げることができる。例えば、銅を酸化処理して酸化銅とすることで、黒化することにより、可視光線反射率を低下させることができる。
可視光線反射率を低下させる処理の好ましい態様については、特開2014-150118号公報の段落0017~段落0025、並びに、特開2013-206315号公報の段落0041、段落0042、段落0048及び段落0058に記載があり、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0191】
<エッチングされた上記導電性層を有する支持体上に絶縁膜を形成する工程、及び、絶縁膜上に新たな導電性層を形成する工程>
本開示に係る回路配線の製造方法は、上記導電性層を有する支持体上、例えば、形成した配線(エッチングされた上記導電性層)上に絶縁膜を形成する工程と、絶縁膜上に新たな導電性層を形成する工程とを含むことも好ましい。
絶縁膜を形成する工程については、特に制限はなく、公知の永久膜を形成する方法を挙げることができる。また、絶縁性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの絶縁膜を形成してもよい。
絶縁膜上に新たな導電性層を形成する工程については、特に制限はない。導電性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの新たな導電性層を形成してもよい。
【0192】
また、本開示に係る回路配線の製造方法は、上記新たな導電性層を、上記と同様な方法によりエッチングレジストを形成してエッチングしてもよいし、別途、公知の方法によりエッチングしてもよい。
本開示に係る回路配線の製造方法により得られる配線基板は、上記基板上に1層のみの配線を有していても、2層以上の配線を有していてもよい。
【0193】
また、本開示に係る回路配線の製造方法は、支持体が両方の表面にそれぞれ複数の導電性層を有し、支持体の両方の表面に形成された導電性層に対して逐次又は同時に回路形成することも好ましい。このような構成により、支持体の一方の表面に第一の導電パターン(第一の配線)、もう一方の表面に第二の導電パターン(第二の配線)を形成した配線、好ましくはタッチパネル用配線を形成することができる。
【0194】
(配線及び配線基板)
本開示に係る配線は、本開示に係る回路配線の製造方法により製造された配線である。また、上記配線としては、回路配線が好ましく挙げられる。
本開示に係る配線基板は、本開示に係る回路配線の製造方法により製造された配線を有する基板である。
本開示に係る配線基板の用途は限定されないが、例えば、タッチパネル用配線基板であることが好ましい。
【0195】
(入力装置及び表示装置)
本開示に係る入力装置は、本開示に係る感光性転写材料を用いて作製した回路配線を備えることが好ましい。本開示に係る感光性転写材料を用いた回路配線の作製方法としては、上述の本開示に係る回路配線の製造方法が挙げられる。
また、本開示に係る入力装置は、静電容量型入力装置であることが好ましい。
本開示に係る入力装置は、本開示に係る回路配線の製造方法により製造される回路配線を備えた入力装置であることが好ましい。
本開示に係る入力装置の製造方法は、本開示に係る回路配線の製造方法を含むことが好ましい。
本開示に係る表示装置は、本開示に係る入力装置を備えることが好ましい。本開示に係る表示装置は、有機EL表示装置、及び、液晶表示装置等の画像表示装置であることが好ましい。
【0196】
(タッチパネル、及び、タッチパネル表示装置)
本開示に係るタッチパネルは、本開示に係る感光性転写材料を用いて作製した回路配線を備えることが好ましい。本開示に係る感光性転写材料を用いた回路配線の作製方法としては、上述の本開示に係る回路配線の製造方法が挙げられる。
また、本開示に係るタッチパネルは、本開示に係る回路配線の製造方法により製造された配線を少なくとも有するタッチパネルであることが好ましい。
本開示に係るタッチパネルの製造方法は、本開示に係る回路配線の製造方法を含むことが好ましい。
また、本開示に係るタッチパネルは、透明基板と、電極と、絶縁層又は保護層とを少なくとも有することが好ましい。
本開示に係るタッチパネル表示装置は、本開示に係る回路配線の製造方法により製造された配線を少なくとも有するタッチパネル表示装置であり、本開示に係るタッチパネルを備えるタッチパネル表示装置であることが好ましい。
本開示に係るタッチパネル表示装置の製造方法は、本開示に係る回路配線の製造方法を含むことが好ましく、本開示に係るタッチパネルの製造方法を含むことがより好ましい。
本開示に係るタッチパネル及び本開示に係るタッチパネル表示装置のおける検出方法としては、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、電磁誘導方式、及び、光学方式など公知の方式いずれでもよい。中でも、静電容量方式が好ましい。
【0197】
タッチパネル型としては、いわゆる、インセル型(例えば、特表2012-517051号公報の図5図6図7図8に記載のもの)、いわゆる、オンセル型(例えば、特開2013-168125号公報の図19に記載のもの、特開2012-89102号公報の図1又は図5に記載のもの)、OGS(One Glass Solution)型、TOL(Touch-on-Lens)型(例えば、特開2013-54727号公報の図2に記載のもの)、その他の構成(例えば、特開2013-164871号公報の図6に記載のもの)、各種アウトセル型(いわゆる、GG、G1・G2、GFF、GF2、GF1、G1Fなど)を挙げることができる。
【0198】
本開示に係るタッチパネル及び本開示に係るタッチパネル表示装置としては、“最新タッチパネル技術”(2009年7月6日、(株)テクノタイムズ社発行)、三谷雄二監修、“タッチパネルの技術と開発”(2004年12月、シーエムシー出版)、FPD International 2009 Forum T-11講演テキストブック、Cypress Semiconductor Corporation アプリケーションノートAN2292等に開示されている構成を適用することができる。
【実施例
【0199】
以下に実施例を挙げて本発明の実施形態を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の実施形態の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の実施形態の範囲は以下に示す具体例に限定されない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0200】
(実施例1)
<感光性樹脂組成物1の作製>
以下の組成で各成分を混合し、感光性樹脂組成物1を作製した。
【0201】
〔感光性樹脂組成物1の組成〕
・特定重合体1(下記化合物、重量平均分子量15,000):9.66質量部
(特定重合体1のTgを既述の方法にて測定したところ、40℃であった。)
・光酸発生剤(下記化合物B):0.25質量部
・界面活性剤(下記化合物C):0.01質量部
・添加剤(下記化合物D):0.08質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート〔溶剤〕:90.00質量部
【0202】

【0203】
上記構造において、各構成単位の数値は、各構成単位の含有量(質量%)を表す。
また、特定重合体1は、特開2018-031847号公報の段落0155~段落0156の記載を参照して合成した。
【0204】
【化14】

【0205】
<中間層形成用組成物1の作製>
以下の組成で各成分を混合し、中間層形成用組成物1を作製した。
【0206】
〔中間層形成用組成物1の組成〕
・純水:33.7質量部
・メタノール:62.7質量部
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業(株)製、メトローズ60SH-03):3.5質量部
・界面活性剤(DIC(株)製 メガファック(登録商標)F444):0.1質量部
【0207】
<感光性転写材料の作製>
仮支持体である厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下「PET(A)」と称する)の上に、スリット状ノズルを用いて中間層形成用組成物1を、乾燥膜厚が2.0μmとなる量で塗布した。上記中間層形成用組成物1の乾燥後、スリット状ノズルを用いて感光性樹脂組成物1を乾燥膜厚が3.0μmとなる量で塗布した。90℃温風にて乾燥させ、最後にカバーフィルムとしてポリエチレンフィルム(トレデガー社製、OSM-N)を圧着して感光性転写材料を作製した。
【0208】
<引っ掻き試験>
長さ10cm×幅5cm×厚み0.7mmのガラスの上に、感光性転写材料からカバーフィルムを剥離し、ラミネートロール温度90℃、線圧0.6MPa、線速度(ラミネート速度)3.6m/minの条件で転写し、仮支持体を剥離してサンプルを準備した。
引っ掻き試験装置としては表面性試験機(新東科学(株)製、Type:14DR)を用いた。引っ掻き傷を付ける圧子は球状圧子(ダイヤモンド、先端径0.075mm)を用いた。上記で作製したガラス基板を感光性転写材料面を上にしてセットし、荷重5 g、引っ掻き速度1mm/s、引っ掻き距離50mmの条件で実施した。測定環境は室温(23℃)の大気中とした。引っ掻き傷形状観察には走査型白色干渉顕微鏡(Zygo社製NewView5020)を使用した。NewView5020のデータ解析ソフト(MetroPro)を利用し、Microモード、Z方向スキャン長さを±20μm、それ以外は初期設定の条件で、引っ掻き傷の深さを測定した。5回の測定における測定結果の算術平均値を引っ掻き深さと定義した。測定結果は表1に記載した。
【0209】
<基板の作製>
厚さ200μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に厚さ250nmでスパッタリング法にて銅層を作製したロール状基板(銅基板)を使用した。
【0210】
<感光性転写材料の評価:マスク汚染の評価>
作製した感光性転写材料からカバーフィルムを剥離し、ラミネートロール温度100℃、線圧0.6MPa、線速度(ラミネート速度)3.6m/minのラミネート条件で上記銅基板にラミネートし、得られたサンプルを10cm角にカットしてサンプル片とした。サンプル片から仮支持体を中間層との境界面から剥離し、アルカリ洗浄したガラス板(コーニング社製、EagleXG)を乗せ、手で軽く押し付けた後、ガラス越しに100mJ/cmの露光量で高圧水銀灯による露光を行った。露光後、ガラス板上に3kgのウェイトを載せ、10分後にガラスをゆっくり剥がし、ガラスへの感光性転写材料に含まれる成分の付着の有無を確認し、コンタクト露光時のマスク汚染性の指標とした。
ガラスへの付着があった場合には、表1中の「マスク汚染」の欄に「有り」と、なかった場合は「無し」と記載した。
【0211】
<感光性転写材料の評価:引き置き安定性の評価>
作製した感光性転写材料からカバーフィルムを剥離し、ラミネートロール温度100℃、線圧0.6MPa、線速度(ラミネート速度)1.0m/minのラミネート条件で上記銅基板にラミネートし、得られたサンプルを10cm角にカットしてサンプル片とした。サンプル片から仮支持体を中間層との境界面から剥離し、ライン/スペース=8μm/8μmのパターンを持つフォトマスクを中間層にコンタクトさせ、100mJ/cmの露光量で高圧水銀灯による露光を行った。露光後、3時間サンプルを引き置きし、1.0%炭酸ナトリウム水溶液を用いて20秒、ディップ現像を行った。
別に、露光後24時間引き置きした以外は同様に作製したサンプルを準備した。得られた引き置き時間の異なるサンプルそれぞれの線幅を基板面内5点測定し、その平均値をライン幅データとした。これを用い、(3時間引き置きしたサンプルのライン幅/24時間引き置きしたサンプルのライン幅)を引き置き安定性の指標値とした。上記指標値が1に近いほど、露光後の引き置き時間が変化した場合であっても線幅のばらつきが小さく、工程適性が高いといえる。指標値は、0.80~1.20であることが好ましく、0.90~1.10であることが更に好ましい。
一般的に、感光性樹脂層がポジ型である場合には、引き置きにより溶解性が向上するためラインが細くなり、上記指標値は1より大きくなる。また、感光性樹脂層がネガ型である場合には引き置きにより感光性樹脂層の溶解性が低下するため上記指標値は1より小さくなる。
評価基準は下記の通りとし、評価結果は表1に記載した。
【0212】
〔評価基準〕
A:0.90以上1.10以下である。
B:0.80以上0.90未満又は1.10を超え1.20以下である。
C:0.80未満又は1.20を超える。
【0213】
<密着性の評価>
作製した感光性転写材料からカバーフィルムを剥離し、ラミネートロール温度100℃、線圧0.6MPa、線速度(ラミネート速度)1.0m/minのラミネート条件で上記銅基板にラミネートした。
次に、仮支持体を剥離して、中間層の表面にテープ(NITTO製PRINTACK)を貼りつけた後に、銅基板/感光層/中間層の積層体を、4.0cm×10cmにカットしてサンプルを作製した。
上記サンプルの銅基板側を資料台の上に固定した。
引張圧縮試験機((株)今田製作所製、SV-55)を用いて、180度の方向に、5.5mm/秒でテープを引っ張って、中間層と感光層との間で剥離して、密着力を測定した。
測定された密着力(N/cm)を密着性の指標とし、下記評価基準に従って評価した。密着力が大きいほど密着性がよいといえる。評価結果は表1に記載した。
【0214】
〔評価基準〕
A:密着力が0.098N/cmを超える。
B:密着力が0.020N/cm~0.098N/cmである。
C:密着力が0.020N/cm未満である。
【0215】
(実施例2)
実施例1において、中間層形成用組成物1の替わりに、下記中間層形成用組成物2を用いた以外は、実施例1と同様に感光性転写材料を作製し、評価を行った。評価結果は表1に記載した。
【0216】
<中間層形成用組成物2の調製>
中間層形成用組成物2は、組成を下記組成とした以外は、中間層形成用組成物1と同様の方法により調製した。
【0217】
〔中間層形成用組成物2の組成〕
・純水:33.7質量部
・メタノール:62.7質量部
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業(株)製 メトローズ60SH-15):3.5質量部
・界面活性剤(DIC(株)製 メガファック(登録商標)F444):0.1質量部
【0218】
(実施例3)
PET(A)の上に、スリット状ノズルを用いて上記中間層形成用組成物1を乾燥膜厚1.0μmとなる量で塗布した。上記中間層形成用組成物1の乾燥後、その上に上記中間層形成用組成物1を、スリット状ノズルを用いて上記中間層形成用組成物1との合計乾燥膜厚が2.0μmとなる量で塗布した。
上記2度目の中間層形成用組成物1の乾燥後、その上に上記感光性樹脂組成物1を乾燥膜厚が3.0μmとなる量で塗布した。
その後、100℃温風にて乾燥させ、最後にカバーフィルムとしてポリエチレンフィルム(トレデガー社製、OSM-N)を圧着して感光性転写材料を作製した。得られた感光性転写材料について、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果は表1に記載した。
【0219】
(実施例4)
<中間層形成用組成物3の調製>
中間層形成用組成物3は、組成を下記組成とした以外は、中間層形成用組成物1と同様の方法により調製した。中間層形成用組成物3は、第二の中間層形成用組成物である。
【0220】
〔中間層形成用組成物3の組成〕
・純水:33.7質量部
・メタノール:61.2質量部
・ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達(株)製 HPC-SSL):5.0質量部
・界面活性剤(DIC(株)製 メガファック(登録商標)F444):0.1質量部
【0221】
<感光性転写材料の作製>
表1の組成物、膜厚となるように塗布する組成物、量を変更した以外は実施例3と同様に感光性転写材料を形成した。
実施例1と同様にして評価を行った。評価結果は表1に記載した。
【0222】
(実施例5)
<中間層形成用組成物4の調製>
中間層形成用組成物4は、組成を下記組成とした以外は、中間層形成用組成物1と同様の方法により調製した。中間層形成用組成物4は、第二の中間層形成用組成物である。
【0223】
〔中間層形成用組成物4の組成〕
・純水:32.3質量部
・メタノール:56.7質量部
・ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達(株)製 HPC-SSL):4.1質量部
・スノーテックス(登録商標)ST-O(シリカ粒子の水分散物、粒子径10~15nm、日産化学工業(株)製):6.8質量部(固形分20質量部)
・界面活性剤(DIC(株)製 メガファック(登録商標)F444):0.1質量部
<感光性転写材料の作製>
表1に記載の組成物、膜厚となるように塗布する組成物、量を変更した以外は実施例3と同様に感光性転写材料を形成した。
【0224】
(実施例6)
表の組成物、膜厚となるように塗布する組成物、量を変更した以外は実施例3と同様に感光性転写材料を形成した。
【0225】
(実施例7)
<中間層形成用組成物7の調製>
中間層形成用組成物7は、組成を下記組成とした以外は、中間層形成用組成物1と同様の方法により調製した。中間層形成用組成物7は、中間層形成用組成物である。
【0226】
〔中間層形成用組成物7の組成〕
・純水:32.3質量部
・メタノール:56.7質量部
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業(株)製 メトローズ60SH-03):4.1質量部
・スノーテックス(登録商標)ST-O(シリカ粒子の水分散物、粒子径10~15nm、日産化学工業(株)製):6.8質量部(固形分20質量部)
・界面活性剤(DIC(株)製 メガファック(登録商標)F444):0.1質量部
【0227】
<感光性転写材料の作製>
表1に記載の組成物、膜厚となるように塗布する組成物、量を変更した以外は実施例1と同様に感光性転写材料を形成した。
【0228】
(実施例8)
<中間層形成用組成物8の調製>
中間層形成用組成物8は、組成を下記組成とした以外は、中間層形成用組成物1と同様の方法により調製した。中間層形成用組成物8は、第二の中間層形成用組成物である。
【0229】
〔中間層形成用組成物8の組成〕
・純水:32.3質量部
・メタノール:56.7質量部
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業(株)製 メトローズ60SH-03):4.1質量部
・スノーテックス(登録商標)ZL シリカ粒子、粒子径70~100nm、日産化学工業(株)製):6.8質量部(固形分40質量部)
・界面活性剤(DIC(株)製 メガファック(登録商標)F444):0.1質量部
【0230】
<感光性転写材料の作製>
表1に記載の組成物、膜厚となるように塗布する組成物、量を変更した以外は実施例3と同様に感光性転写材料を形成した。
【0231】
(実施例9)
カバーフィルムである厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの上に、スリット状ノズルを用いて、感光性樹脂組成物1を乾燥膜厚が3.0μmとなる量で塗布した。90℃温風にて乾燥させた。第二の中間層として中間層形成用組成物4を、乾燥膜厚が1.0μmとなる量で感光性樹脂組成物層上に塗布、乾燥させた。第二の中間層上に、中間層形成用組成物1を、乾燥膜厚が1.0μmとなる量で塗布、乾燥させた。最後に仮支持体として、PET(A)を圧着した。
【0232】
(実施例10)
感光性樹脂組成物1を乾燥膜厚が5.0μmとなる量で塗布したこと以外は実施例1と同様にして感光性転写材料を形成した。
【0233】
(比較例1)
<感光性樹脂組成物2の作製>
以下の組成で各成分を混合し、感光性樹脂組成物2を作製した。
【0234】
〔感光性樹脂組成物2の組成〕
・メタクリル酸メチル/メタクリル酸/アクリル酸2-エチルヘキシル/メタクリル酸ベンジル共重合体(モル比=55/28/12/5,重量平均分子量=80,000の35質量%溶液、溶媒はメチルエチルケトン/1-メトキシ-2-プロパノール=2/1):100.0質量部
・ドデカプロピレングリコールジアクリレート:15.0質量部
・テトラエチレングリコールジメタクリレート:3.5質量部
・p-トルエンスルホンアミド:1.2質量部
・4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン:0.12質量部
・ベンゾフェノン:2.3質量部
・2-(2’-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体(25質量%ジクロロメタン溶液):4.5質量部
・トリブロモメチルフェニルスルホン:0.25質量部
・ロイコクリスタルバイオレット:0.25質量部
・マラカイトグリーン:0.02質量部
【0235】
<感光性転写材料の作製>
PET(A)の上に、スリット状ノズルを用いて上記中間層形成用組成物1を乾燥膜厚3.0μmとなる量で塗布した。上記中間層形成用組成物1の乾燥後、上記感光性樹脂組成物2を乾燥膜厚が3.0μmとなる量で塗布した。100℃温風にて乾燥させ、最後にカバーフィルムとしてポリエチレンフィルム(トレデガー社製、OSM-N)を圧着して感光性転写材料を作製した。
比較例1において形成された感光性樹脂層は、ネガ型感光性樹脂層である。
得られた感光性転写材料について、実施例1と同様にして評価を行った。ただし、引き置き安定性の評価にあっては、ネガ型感光性樹脂層の解像度が不足しており、ライン/スペース=10μm/10μmのパターンを持つフォトマスクを用いたパターン形成が不可能であったため、ライン/スペース=40μm/40μmのパターンを持つフォトマスクを使用した。評価結果は表1に記載した。
【0236】
(比較例2)
実施例1において、中間層形成用組成物1の替わりに、上記中間層形成用組成物3を用いた以外は、実施例1と同様に感光性転写材料を作製し、評価を行った。評価結果は表1に記載した。
【0237】
(比較例3)
実施例1において、中間層形成用組成物1の替わりに、下記中間層形成用組成物45を用いた以外は、実施例1と同様に感光性転写材料を作製し、評価を行った。評価結果は表1に記載した。
【0238】
<中間層形成用組成物5の調製>
中間層形成用組成物5は、組成を下記組成とした以外は、中間層形成用組成物1と同様の方法により調製した。
【0239】
〔中間層形成用組成物5の組成〕
・純水:33.7質量部
・メタノール:62.7質量部
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製、ポバールPVA-205):3.5質量部
・界面活性剤(DIC(株)製、メガファック(登録商標)F444):0.1質量部
【0240】
(比較例4)
実施例1において、中間層形成用組成物1の替わりに、下記中間層形成用組成物6を用いた以外は、実施例1と同様に感光性転写材料を作製し、評価を行った。評価結果は表1に記載した。
【0241】
<中間層形成用組成物6の調製>
中間層形成用組成物6は、組成を下記組成とした以外は、中間層形成用組成物1と同様の方法により調製した。
【0242】
〔中間層形成用組成物6の組成〕
・純水:33.7質量部
・メタノール:62.7質量部
・ヒドロキシエチルセルロース(三晶(株)製、サンヘックL):3.5質量部
・界面活性剤(DIC(株)製、メガファック(登録商標)F444):0.1質量部
【0243】
【表1】

【0244】
表1中、「中間層形成用組成物」の欄の「中間層:1/第二の中間層:3」等の記載は、「中間層の形成には中間層形成用組成物1を、第二の中間層の形成には中間層形成用組成物3をそれぞれ使用した」等を意味している。
また、表1中の略語は下記の通りである。
【0245】
HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロース
HPC:ヒドロキシプロピルセルロース
PVA:ポリビニルアルコール
HEC:ヒドロキシエチルセルロース
【0246】
表1に記載した結果から、本開示に係る感光性転写材料によれば、コンタクト露光時のマスクの汚染が抑制されることがわかる。
また、上記実施例における感光性転写材料は、引き置き安定性にも優れていることがわかる。
比較例1~比較例4においては、中間層の仮支持体と接する側の表面における引っ掻き深さが0.40μm以上であるため、中間層に含まれる成分がガラスに付着した。
【0247】
(実施例101)
100μm厚PET基材上に、第2層の導電性層として酸化インジウムスズ(ITO)をスパッタリングで150nm厚にて成膜し、その上に第1層の導電性層として銅を真空蒸着法で200nm厚にて成膜して、回路形成基板とした。
銅層上に実施例1で得た感光性転写材料をラミネートした(線圧0.8MPa、線速度3.0m/min、ロール温度90℃)。仮支持体を剥離したのちに一方向に導電性層パッドが連結された構成を持つ図2に示すパターン(以下、「パターンA」とも称する。)を設けたフォトマスクを用いてフォトマスクを中間層に接触させてコンタクト露光を行った。
なお、図2に示すパターンAは、実線部SL及びグレー部Gが遮光部であり、点線部DLはアライメント合わせの枠を仮想的に示したものである。
その後仮支持体を剥離し、現像、水洗を行ってパターンAを得た。次いで銅エッチング液(関東化学(株)製Cu-02)を用いて銅層をエッチングした後、ITOエッチング液(関東化学(株)製ITO-02)を用いてITO層をエッチングすることで、銅(実線部SL)とITO(グレー部G)とが共にパターンAで描画された基板を得た。
【0248】
次いで、アライメントを合わせた状態で図3に示すパターン(以下、「パターンB」とも称する。)の開口部を設けたフォトマスクを用いてパターン露光し、現像、水洗を行った。
なお、図3に示すパターンBは、グレー部Gが遮光部であり、点線部DLはアライメント合わせの枠を仮想的に示したものである。
その後、Cu-02を用いて銅層をエッチングし、残ったポジ型感光性樹脂層を剥離液(10質量%水酸化ナトリウム水溶液)を用いて剥離し、回路配線基板を得た。
これにより、回路配線基板を得た。顕微鏡で観察したところ、剥がれや欠けなどは無く、きれいなパターンであった。
【0249】
(実施例102~110)
実施例2~実施例10で得た感光性転写材料をそれぞれ使用し、実施例101と同様の評価を行ったところ、剥がれや欠けなどは無く、きれいなパターンであった。
【符号の説明】
【0250】
10:仮支持体、12:中間層、14:ポジ型感光性樹脂層、16:カバーフィルム、SL:実線部、G:グレー部、DL:点線部
【0251】
2018年3月29日に出願された日本国特許出願2018-65545の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2
図3